コンスタンスが赤ん坊を抱いて登場するということは。@仮面の男
2011年10月23日 タカラヅカ 東宝版『仮面の男』。
演出が変わることはわかっていたけれど、問題シーンを削除するだけで、肝心の物語部分はそのままなんじゃないかと危惧していた。ほんと、新人公演程度の変更かと思っていたから。
思っていたよりは物語部分も手を加えられている。……前述の「3つの問題点」は改善されていないばかりか、更にひどいことになっているので、いろいろ愉快な作品になっているんだが(笑)。
それはともかく、「物語部分の変更」で、ひとつ意外だったことがある。
「早わかり世界史」のラストに、ムラ版の中詰めのネタばらしをしてしまったことだ。
観客のほとんどは、仮面の男ってのがルイの双子の兄弟だと最初から知って観劇していると思う。それこそ、越後のちりめん問屋のご隠居が水戸黄門だとわかって見ているように。
だけど、この『仮面の男』という物語において、ルイに双子の兄弟がいる、という事実はあえて伏せられていた。
つまり、なんの予備知識もなく客席に坐った人は、トップスターがひとり2役をやっていることも知らず、ただあるがままに舞台上で展開されるモノだけを、与えられる情報だけを受け止めている。
ゆえに、舞台中盤、ラウルが牢獄で偶然仮面の男を目撃し、しかも仮面を取るとルイと瓜二つである……! という場面に来るまで、タイトルの仮面の男が誰とかナニとか、まったくわからずにいるんだ。
ラウルの驚きは観客の驚き。
そしてさらに、ラウルの手紙にてはじめて、仮面の男の正体を知る。すなわち、ルイの双子の兄弟であるということ、トップスターがひとり2役をやっている、ということ。
物語の中詰め、話がよーーーっやく動き出す、そのときまであえて、伏せられているんだ。
こだまっちは、「双子である」ということをわざと観客へ秘密にしていたわけだ。物語の伏線として。
そこまでずっと秘密で、中詰めでばーんと「実は双子なのだ!」とぶちあげる。そーゆー計算。そーゆー作劇。
それがムラ版だ。
なのに東宝版では、オープニングから早々に、「ルイには双子の兄弟がいる」とばらしてしまった。
アンヌ王妃が侍女コンスタンスに、双子の片割れを託す場面が加わっているんだ。
これは「物語」として、相当な変更だ。
物語の半分まで引っ張っていた大きなネタを、いきなり冒頭でばらしちゃったんだもの。
『キャンディ・キャンディ』の1巻で、「丘の上の王子様は、実はアルバートさんなんだよ」とばらしちゃうよーなもんだ。
王子様が誰かわからずに9巻まで読んでいたときと、最初からわかって読むのでは、物語の印象がまったくチガウ。プロットのアプローチも違ってくる。
そういう意味で、まったく別物だなと思う。
といっても、この『仮面の男』に関しては、だからといって別に、どっちでもいいんだけどな(笑)。もともと物語部分が少なすぎて、大きなネタを隠すか先に明かすか、ふつーならすげー変化なんだけど、もし小説なら地の文からなにから全部変更して視点を変えて描写しなきゃいけないくらいの、ものすげー変更なんだが、1観客としてもすでに投げやりになっているので正直どうでもいい(笑)。
ただ、プロットの組み立て部分で大きく作用する変更をしたんだ、へー、ということだけ、記しておく。
でもって、この冒頭のネタばらし。
アンヌ王妃から託されたフィリップ王子を抱くコンスタンス。
この場面の追加により、ある意味、「どーすんだよヲイ」なことになっている(笑)。
ムラ版『仮面の男』にて、最大のタブーがなんだったか、わかるだろうか。
どう考えてもおかしいんだけど、それは突っ込んじゃいけない、出演者も観客も、全員が共犯になって「見て見ぬふり」を決め込んでいたことがある。
それが、この場面追加により、言い訳できない白日の下にさらされてしまった。
すなわち。
ダルタニアンと三銃士の、年齢設定(笑)。
ムラ版では、あえて彼らの年齢には触れられていなかった。
えーっと、コンスタンスはフィリップの世話をするために、ダルタニアンと別れたんだよね? で、フィリップを守ろうとして殺された。それが、「今から数年前」のこと。
クライマックスの影絵で、コンスタンスの最期が描かれているけれど、フィリップはコンスタンスより小柄な、少年だった。つーと、フィリップが仮面をつけられたのは少年のころ。
その少年が今は青年になっている……あの影絵を12歳として、今が18歳だとしたら6年前か。
でもってそもそもコンスタンスはいつからフィリップの世話係になったんだ? 影絵で犬さんだの鳥さんだのを教えられるくらいの年になってからかなあ。10歳のフィリップのところに「新しい侍女です、よろしく」って行ったのかな。
というと、回想シーンのダルタニアンが20歳としても今は28歳、三銃士はそれより10歳上でも38歳、うん、それくらいなら見た目的にも納得。
原作がどうの史実がどうのとかは関係なく、あくまでも宝塚歌劇『仮面の男』においての、年齢や年代設定。
登場人物は若く美しいに越したことはない。三銃士はルイ14世の父親に仕えていたんだから、今はもうじじいじゃん、とか考えちゃいけない。歴史の勉強がしたいわけではなく、「タカラヅカ」を観たいのだから、そのへんはてきとーにいじくって、とにかく主要人物が若いハンサムという設定にしてくれる方がいい。
と、すべての人が同じ思いでスルーしていたはず。ダルタニアンと三銃士の年齢。
なんとか辻褄を合わせ、思い込みでも妄想でも、とにかく「三銃士はまだぴっちぴちの30代よ!」「ダルタニアンだって若くて美貌の青年なのよ!」ってことにしていたはずだ、ヅカファンのみなさんは。
それが。
コンスタンスが、赤ん坊のフィリップを抱いてますがな。
フィリップとルイが生まれたとき、彼女はもう大人。そして、ダルタニアンからペンダントを渡されている。
……ええっと、あのときのダルタニアン、少年じゃなかったよ、ね……大人の喋り方だった、よ、ね……ぎりぎり20歳だったとして、あのとき生まれた赤ん坊が……ええっと。
そう、ダルタニアンが言い訳もできないくらいふつーに「大人」だったときに生まれた赤ん坊が、妻と山ほどの愛人を持ち、取っ替え引っ替えしている! 人間ボウリングとかで誤魔化してない、正味妻と愛人の紹介されちゃったよ! あんだけの愛人はべらすのは18歳じゃ無理だ。
ちょっと待て、あれから何年経ってるの、ルイ/フィリップはもうかなり大人なの? それじゃあダルタニアンはいくつなの? そしてさらに、ダルタニアンより年上の三銃士は……?!!
「歌劇」の座談会で、アトス氏は「30代後半」だと答えています。
わたしたち観客も、それくらいの年齢だろうと、見た目や芝居から思っていたはずです。
それが、無理!なことになってますよ、東宝公演(笑)。
あの赤ん坊がこの大きさになってるってことは、アトスいくつよ? ルイ/フィリップが25歳としたら、どう考えても三銃士は50代、へたすりゃ60代……あの時代の50、60ってすでにおじーさん……。
キャラの年齢や年代、時の流れについて、ムラ版では総力を挙げて誤魔化してたのにねええ。
言い訳できない展開になっちゃったね。
ナニも知らずに見ている人は、混乱するだろうなあ。
「あの赤ちゃんがこの王様で、赤ちゃんの双子の兄弟を抱いていた女性の恋人がこの青年……ってことは、えええ、この青年、50歳くらいなの?!」
……大変だニャ。
でもそれが「タカラヅカ」。
演出が変わることはわかっていたけれど、問題シーンを削除するだけで、肝心の物語部分はそのままなんじゃないかと危惧していた。ほんと、新人公演程度の変更かと思っていたから。
思っていたよりは物語部分も手を加えられている。……前述の「3つの問題点」は改善されていないばかりか、更にひどいことになっているので、いろいろ愉快な作品になっているんだが(笑)。
それはともかく、「物語部分の変更」で、ひとつ意外だったことがある。
「早わかり世界史」のラストに、ムラ版の中詰めのネタばらしをしてしまったことだ。
観客のほとんどは、仮面の男ってのがルイの双子の兄弟だと最初から知って観劇していると思う。それこそ、越後のちりめん問屋のご隠居が水戸黄門だとわかって見ているように。
だけど、この『仮面の男』という物語において、ルイに双子の兄弟がいる、という事実はあえて伏せられていた。
つまり、なんの予備知識もなく客席に坐った人は、トップスターがひとり2役をやっていることも知らず、ただあるがままに舞台上で展開されるモノだけを、与えられる情報だけを受け止めている。
ゆえに、舞台中盤、ラウルが牢獄で偶然仮面の男を目撃し、しかも仮面を取るとルイと瓜二つである……! という場面に来るまで、タイトルの仮面の男が誰とかナニとか、まったくわからずにいるんだ。
ラウルの驚きは観客の驚き。
そしてさらに、ラウルの手紙にてはじめて、仮面の男の正体を知る。すなわち、ルイの双子の兄弟であるということ、トップスターがひとり2役をやっている、ということ。
物語の中詰め、話がよーーーっやく動き出す、そのときまであえて、伏せられているんだ。
こだまっちは、「双子である」ということをわざと観客へ秘密にしていたわけだ。物語の伏線として。
そこまでずっと秘密で、中詰めでばーんと「実は双子なのだ!」とぶちあげる。そーゆー計算。そーゆー作劇。
それがムラ版だ。
なのに東宝版では、オープニングから早々に、「ルイには双子の兄弟がいる」とばらしてしまった。
アンヌ王妃が侍女コンスタンスに、双子の片割れを託す場面が加わっているんだ。
これは「物語」として、相当な変更だ。
物語の半分まで引っ張っていた大きなネタを、いきなり冒頭でばらしちゃったんだもの。
『キャンディ・キャンディ』の1巻で、「丘の上の王子様は、実はアルバートさんなんだよ」とばらしちゃうよーなもんだ。
王子様が誰かわからずに9巻まで読んでいたときと、最初からわかって読むのでは、物語の印象がまったくチガウ。プロットのアプローチも違ってくる。
そういう意味で、まったく別物だなと思う。
といっても、この『仮面の男』に関しては、だからといって別に、どっちでもいいんだけどな(笑)。もともと物語部分が少なすぎて、大きなネタを隠すか先に明かすか、ふつーならすげー変化なんだけど、もし小説なら地の文からなにから全部変更して視点を変えて描写しなきゃいけないくらいの、ものすげー変更なんだが、1観客としてもすでに投げやりになっているので正直どうでもいい(笑)。
ただ、プロットの組み立て部分で大きく作用する変更をしたんだ、へー、ということだけ、記しておく。
でもって、この冒頭のネタばらし。
アンヌ王妃から託されたフィリップ王子を抱くコンスタンス。
この場面の追加により、ある意味、「どーすんだよヲイ」なことになっている(笑)。
ムラ版『仮面の男』にて、最大のタブーがなんだったか、わかるだろうか。
どう考えてもおかしいんだけど、それは突っ込んじゃいけない、出演者も観客も、全員が共犯になって「見て見ぬふり」を決め込んでいたことがある。
それが、この場面追加により、言い訳できない白日の下にさらされてしまった。
すなわち。
ダルタニアンと三銃士の、年齢設定(笑)。
ムラ版では、あえて彼らの年齢には触れられていなかった。
えーっと、コンスタンスはフィリップの世話をするために、ダルタニアンと別れたんだよね? で、フィリップを守ろうとして殺された。それが、「今から数年前」のこと。
クライマックスの影絵で、コンスタンスの最期が描かれているけれど、フィリップはコンスタンスより小柄な、少年だった。つーと、フィリップが仮面をつけられたのは少年のころ。
その少年が今は青年になっている……あの影絵を12歳として、今が18歳だとしたら6年前か。
でもってそもそもコンスタンスはいつからフィリップの世話係になったんだ? 影絵で犬さんだの鳥さんだのを教えられるくらいの年になってからかなあ。10歳のフィリップのところに「新しい侍女です、よろしく」って行ったのかな。
というと、回想シーンのダルタニアンが20歳としても今は28歳、三銃士はそれより10歳上でも38歳、うん、それくらいなら見た目的にも納得。
原作がどうの史実がどうのとかは関係なく、あくまでも宝塚歌劇『仮面の男』においての、年齢や年代設定。
登場人物は若く美しいに越したことはない。三銃士はルイ14世の父親に仕えていたんだから、今はもうじじいじゃん、とか考えちゃいけない。歴史の勉強がしたいわけではなく、「タカラヅカ」を観たいのだから、そのへんはてきとーにいじくって、とにかく主要人物が若いハンサムという設定にしてくれる方がいい。
と、すべての人が同じ思いでスルーしていたはず。ダルタニアンと三銃士の年齢。
なんとか辻褄を合わせ、思い込みでも妄想でも、とにかく「三銃士はまだぴっちぴちの30代よ!」「ダルタニアンだって若くて美貌の青年なのよ!」ってことにしていたはずだ、ヅカファンのみなさんは。
それが。
コンスタンスが、赤ん坊のフィリップを抱いてますがな。
フィリップとルイが生まれたとき、彼女はもう大人。そして、ダルタニアンからペンダントを渡されている。
……ええっと、あのときのダルタニアン、少年じゃなかったよ、ね……大人の喋り方だった、よ、ね……ぎりぎり20歳だったとして、あのとき生まれた赤ん坊が……ええっと。
そう、ダルタニアンが言い訳もできないくらいふつーに「大人」だったときに生まれた赤ん坊が、妻と山ほどの愛人を持ち、取っ替え引っ替えしている! 人間ボウリングとかで誤魔化してない、正味妻と愛人の紹介されちゃったよ! あんだけの愛人はべらすのは18歳じゃ無理だ。
ちょっと待て、あれから何年経ってるの、ルイ/フィリップはもうかなり大人なの? それじゃあダルタニアンはいくつなの? そしてさらに、ダルタニアンより年上の三銃士は……?!!
「歌劇」の座談会で、アトス氏は「30代後半」だと答えています。
わたしたち観客も、それくらいの年齢だろうと、見た目や芝居から思っていたはずです。
それが、無理!なことになってますよ、東宝公演(笑)。
あの赤ん坊がこの大きさになってるってことは、アトスいくつよ? ルイ/フィリップが25歳としたら、どう考えても三銃士は50代、へたすりゃ60代……あの時代の50、60ってすでにおじーさん……。
キャラの年齢や年代、時の流れについて、ムラ版では総力を挙げて誤魔化してたのにねええ。
言い訳できない展開になっちゃったね。
ナニも知らずに見ている人は、混乱するだろうなあ。
「あの赤ちゃんがこの王様で、赤ちゃんの双子の兄弟を抱いていた女性の恋人がこの青年……ってことは、えええ、この青年、50歳くらいなの?!」
……大変だニャ。
でもそれが「タカラヅカ」。
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