はーやれやれ、『仮面の男』ムラ版の感想、続き。

 一方、フィリップ@キムたち。
 主役のはずなのに、フィリップが三銃士と合流する場面はなく、なんか気がついたら済し崩しに一緒にいるという。作者が構成の基本理解してないから、主役サイドの話が脇になってます、ええ。
 サンマール@コマの変態さはイイ。フィリップのおどおど感と相俟って(笑)。
 突然三銃士の命乞いをするフィリップ……ええ子やなあ、自分を利用しただけの連中のことまで考えて。
 フィリップと三銃士になんの絆もないため、せっかくの感動的な提案が「フィリップ、アタマ弱い子」みたいに見えるのはどうかと思うが。

 で、遅れて登場したルイ@キムは、自ら投降したフィリップを幽閉し、三銃士たちを殺せと言う。
 国王陛下自ら、捕り物に参加したんだ……ってのはまあ、いいとして。

 国王が双子だというのはトップシークレット、知り得た者を皆殺しにしなければならないほどの重大な秘密。実際コンスタンス@あゆっちもラウル@翔もそれで殺された。
 だから、この期に及んでなお、ルイとフィリップが双子であるということは、クチにしてはならないのよ。
 サンマールが「フィリップ王子」と言ってしまっているのがまず、おかしい。彼は確かに看守長としてフィリップの正体を知っていたわけだろうけど、それは彼だけが知る秘密でしょう。部下たちみんなが知っていたはずもない。
 銃士隊だって、知らないはず。

 銃士隊はどんな説明を受けて、この任務についているんだ?
 たまたま同じ顔の男を使って国王誘拐を企てた、三銃士を捕らえろ? 偽物の同じ顔をした男を捕らえろ?
 「国王は双子」がトップシークレットだから、そこまでしか命令できないよね?

 たった数時間とはいえ、一大ページェントのあと、ルイとフィリップは入れ替わっていた。
 こんなことが可能だと知られてはならないから、フィリップは長年仮面の男として幽閉されてきたんだろうに。
 たとえば他国に知られてごらんなさいよ、フランス終了ですよ。顔が同じってだけで、王様別人じゃあ、示しが付かない。
 それで、総力を挙げて追ってきた。

 ただの「同じ顔の男、三銃士の陰謀」なら、それで済む。
 悪者をやっつければいいだけのこと。

 しかし、その「同じ顔の男」が正式なフランス王家の王子様だったら、話は別だ。

 お家騒動になる。
 まさに国家転覆の危機だ。
 同じ顔、まではセーフでも、双子だってのは、誰にも知られてはならない。ルイ/フィリップが生まれたときに行われた計画と心中する覚悟のある、国政の中枢の者しか、知ってはならない最高機密だ。

 平の近衛兵ごときが知っていいことじゃない。
 ……なのに、銃士隊全員の前で、サンマールはあっけなく国家機密をクチにする。

 それでもぎりぎり、サンマールはサンマールだから、ヘンタイの愉快なおじさんだから、ってことで、うやむやにすることはできるかもしれない。
 勝手に変なことを言っているだけだよ、国王陛下に双子の兄弟なんているわけないじゃん、と。
 フィリップや三銃士がナニを言っても「罪人の戯れ言」で通せる。

 しかし。
 ルイ14世陛下自身が言うんだ。フィリップに、「兄上」と。

 ちょ……っ!!
 その秘密のために、コンスタンスもラウルも殺されたんでしょ? それゆえにこの物語ははじまったんでしょ?
 どこでも誰の前でも、べらべら喋っていいことだったんかい?!

 このことからも、やっぱりルイはコンスタンスを殺していない。
 フィリップを知るものは皆殺しと年端もいかぬ頃に命令できた人物なら、大人の今、銃士隊の目の前でフィリップの正体を自分で明かさないし、それでも明かしたのなら銃士隊は皆殺しにする前提だってことだからだ。
 それとも、三銃士を殺した後、銃士隊は別の機会に殺すつもりか? この場から移動したら、なにしろ人数が多すぎるため、その分秘密が漏れる恐れがある、ここで殺さなきゃおかしいだろう。

 ルイはたしかに暴君かもしれないが、コンスタンス殺しに関しては無実だろう。

 ああ、なのに。

 主君であるはずのルイを、平気で裏切るダルタニアン。どう考えてもルイは犯人じゃないのに、なんの証拠もないのにルイだと思い込み。

 まったくの私怨で剣を向けるくせに、「暴君だから」とキレイゴトを言う。
 その暴君に仕え、一緒になって手を汚してきたくせに。「見ていただけです、僕はいじめはしていません」てか?

 ひどすぎるダルタニアン……。

 こんなものすごい状況なのに、このわけわかんない変心をすんなり受け入れる三銃士も、変。
 なんとなく「いい話」っぽくまとめているけど、お前らみんな人としておかしいよ……。

 で。
 さらにおかしいことは。

 国王が双子、っていうだけでも関係者皆殺しなのに。
 銃士隊の目の前での国王入れ替え、って。

 銃士隊って、全員がこれから何十年、この秘密を抱えて生きていけるほどの人々なの? 国の根幹に関わる秘密よ?
 それともこのあと銃士隊は皆殺しになったの? それとも全員どこかへ幽閉するの?

 大変だなあ。あの場にいたあの人数を、これからフィリップとダルタニアンは、見張り続けなきゃいけないんだよね。殺さないなら、幽閉しないなら、代わりに、どこかで情報が漏れないか、完璧に見張り続けなきゃね。
 退役もできないね、辞めたあとどこでなにを喋られるかわからないし。
 いつどこで、誰が国家転覆を考えるかわからないね? こんなすごい情報、敵国へ持ち込めばどれだけ大金を得られるだろうねえ。

 ……すべては、作品のテーマであり、いちばん重要な展開を銃士隊の見守る中でやったことが敗因でしょう。

 銃士隊が国家への忠誠心に厚い素晴らしい人々だと描いてあるならともかく、強い者に命令されるたびに風向きを変える、アタマが弱い・あるいは卑怯者の集まり、として描かれている以上は。
 わざわざロシュフォール@せしるの命令で、隊長のダルタニアンを無視して行動するところを描いてあったもの。
 で、ルイだのサンマールだのの命令でフィリップに剣を向け、ダルタニアンがルイを追いつめたら今度はルイに剣を向ける。
 誰でもいいんですよ、あの人たち、強い者にしっぽ振るの。
 そんな連中に、国家の最大の弱みを握られちゃったんだ……フランス、終わりだな。

 なんだってこんなアホなことになっているんだろう。
 コンスタンスやラウルが殺されたことから、ダルタニアンが動きアトス@まっつが動き、物語がはじまったのに。
 それを全部否定してしまう演出をするなんて。

 秘密の根幹部分だけは、外野無しの関係者だけの場面にすれば済むことなのに。
 ほんとにアホや……。

 続く。
 

コメント

日記内を検索