『仮面の男』東宝版を観てあれこれ、続き。

 ムラ→東宝でもっとも変わったのはサンマール@コマ。
 ムラ版ではギャグマンガ系変態だったのが、東宝ではシリアス系変態になってた!
 どっちも変質的というか、エロいのは、コマつん仕様です。

 服装からしてチガウ。
 ムラ版のキラキラピンク衣装はお蔵入りかあ。
 看守なのに、銃士隊の赤い服。……まあ、わかりやすくていいやね。

 拷問や死刑に狂喜乱舞するアホアホギャグマンガの変態キャラだったのが、出自にコンプレックスがあるゆえの暗い情熱を持つ男になってた。変わりすぎだろヲイ。
 いや、変わってよかった。
 わたしはムラ版のサンマールさん自体、別に嫌いじゃなかった。もちろん、倫理的にひどい役と場面なので、それに対する憤りはあるが、そーゆーのとは別チャンネルで、サンマールというキャラクタだけ抜き出して考えると、なかなかおもしろい人だったので、けっこー好きだった。
 絶好調で歌い踊るコマくんガン見してたもんなあ。
 胡散臭さといやらしさ。そして、華。
 コマくんの高温多湿粘度高めな持ち味ゆえ、ムラ版もあんな演出なのになんとか成り立っていたし、東宝版はとても魅力的な男になっていた。

 「仮面の男」の取り扱いを誉められ、看守長に出世した、ってことで、機嫌をよくしたサンマールが、フィリップ@キムを自室へ呼び出し、仮面をはずして打ち明け話という趣向。
 ここではじめて主人公であるフィリップが観客の前に現れ、設定の説明をされるわけだ。
 ……主人公の初登場がサンタクロースひげ姿……。かわいい美少年キムくんに、なにさらすんじゃい演出家、という気がしないでもない(笑)。でもま、仕方ないのか、フィリップのひげは。

 ここで判明する事実は、早わかり世界史に登場していた赤ん坊が、何故か牢獄でひげもじゃで登場、ということ。コンスタンスは殺され、フィリップは王子なのに鉄仮面。……もうここで、黒幕はルイ@キムだと言っているよーなもんだよなあ……。別にいいのか、ルイは最初から悪者としてしか書かれていないし。

 一見ストーリーの肉付けにはなっているのだが。

 結局のところ、ある疑問は解けていない。
 すなわち、サンマールは誰の部下か。
 ムラ版でのサンマールは、最後の最後でダルタニアン大好きアピールをする。もともと銃士隊員で、ダルタニアンの部下だから、彼に従うと。
 変わり身に早さは変だけど、どんだけ変でもおかしくないくらい、変な人だったから、気にならなかった。

 しかし東宝版では、サンマールはふつうの人になっている。ねっとりと変質的だけど、あくまでもふつうの人。そして、フィリップの面倒を見ているから、という理由で看守長に昇進。
 サンマールの立ち位置がわからない。ダルタニアンは「仮面の男」の陰謀を、なにも知らなかったんだ。コンスタンスの任務も、何故殺されたのかも。しかしサンマールは仮面の男の正体を知っていた。ルイやルーヴォアから命令を受けて看守長をやっていたのだろう。
 もともとは銃士隊でダルタニアンの部下でも、フィリップを受け入れたときからルイ側だよね? ダルタニアンの部下じゃないよねえ。
 なのにラストでころっと変心するのは、サンマールがふつうの感覚の人になっているだけに、余計しっくりこないことに。

 ほんとに、荒い変更だと思う。

 まあともかく、ラウル@翔くんがフィリップの顔を見てしまうくだりは良くなった。
 ムラ版は何故ラウルが獄中を外出着のままいつまでもうろうろしているのか説得力なさすぎたし、せっかくフィリップの顔を見ても、それがどういうことなのか説明になっていなかった。
 東宝では、フィリップの顔を見て「陛下?!」と驚愕しているので、ラウルが何故殺されなければならないか、よーっくわかる。

 サンマールはちゃんと部下たちにはフィリップの顔を見せないようにしてるんだよねえ。仮面の男の正体を知っているのは、この牢獄ではサンマールひとり、だからこそ彼が看守長になったわけだもんねえ。
 ちゃんとこうして「秘密は、秘密」としているのに。
 なんでクライマックスは平隊士に至るまで、全員の前で顔をさらすんだろう……。

 しかし、ムラ版と東宝版で、出番が削除なしで増えたのって、コンスタンスとアンヌ王妃と、ラウルのみなんだよねえ。あとの人は、トップスターですら出番が削られてたりするのに(笑)。
 コンスタンスとアンヌさんはともかく、ラウル、強いな(笑)。


 ラウルが処刑され、復讐に燃えるアトス@まっつと三銃士がフィリップを助け出すのは同じ。
 ただ、その直後に、三銃士によるフィリップいじめのシーンが追加されている。

 フィリップは別に助けてくれなんて頼んでないのに、勝手に誘拐し、「1ヶ月後のイベントでルイと入れ替える」と宣言。
 泣いて嫌がるフィリップを、大の男が3人がかりで恫喝、言うことを聞かせるという。
 アトスなんて剣まで持ち出してる。

 三銃士、酷い。

 書かなければならないのは、フィリップと三銃士の心の絆なのに、一方的に暴力で支配する様しか書かないって……作者が人の心を理解していないことが、こんなところにも現れている(笑)。
 この三銃士とフィリップの場面、この作品でもっともかっこいいラストバトルと呼応する演出にしてあるのに、演出の良さも「心のなさ」で台無し。
 こだまっちに必要なのは技術ではなく、人間の心だとか常識なんだよなあ、とまた痛感する。

 ムラ版の爆笑ポイントのひとつだった、フィリップを笑顔で恫喝するアラミス@きんぐの場面。
 フィリップと三銃士の心が通じている状態ならばともかく、フィリップを「ただの道具」としか扱っていない状態でそれを言えばただの鬼畜、ってな会話を、さもハートウォーミングな様子で交わす、とても電波な場面。
 ここがなんの変更もされないまま、東宝でもあった。
 ムラ版でも「アラミス酷い!」という、人としての間違いっぷりに笑うしかない場面だったのに、東宝版はその前にもっと冷酷な鬼畜場面がわざわざ付け加えられているもんだから。

 さらに、アラミスこわい! アラミス酷い!!(笑)

 剣を突きつけて脅しておいて、「運命だ。使い捨てて死んでもヨシ」と笑顔で言うアラミスがこわすぎる。

 いろいろと変更された東宝版だけど、ムラ版より酷くなったのは、三銃士だと思う。
 まさか、さらに悪くなるなんてねえ。こだまっち、すげえや。

 続く。

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