いい加減飽きてきたので、さくっといく、『仮面の男』東宝版のあれこれ感想。

 フィリップ@キムとルイーズ@みみの逃避行銀橋はいろいろと台詞が追加されていた。

 ここの台詞追加で良かったことは、ルイーズがフィリップを逃がす手引きをしたのだとわかったこと。
 ムラ版では「正体がバレる→フィリップ・ルイーズ逃避行」で、なんでそんなことになっているのかわからなかった。
 あの王は偽物だ、と捕り物がはじまったとき、ルイーズが機転を利かせてフィリップを逃がしたという変更はいい。王宮について無知(なにしろ入れ替わってまだ数時間)のフィリップが、兵士たちの目を盗んで簡単に逃げ出せるはずもない。ルイーズが手引きしたなら説得力。

 が、良かったのは、コレだけだ。
 残りの追加台詞は全部、蛇足だと思った。

 こだまっちは「ムラ版はストーリー部分がわかりにくいとの声を聞いたので、東宝版で手直しをした」てなことを語っている。
 人道的・倫理的に酷いから変更させられたのだ、とは言っていない。事情があって言えないのか、本当に理解していないのかはわからない。

 しかし、「ストーリーをわかりやすく変更」というなら、素直にストーリー部分だけ加筆してくれ。

 フィリップとルイーズの銀橋で、だらだらと台詞を連ねて心の動きを解説って、なんだそりゃあ。

 必要なのはストーリー加筆であって、心情の台詞解説じゃないっ。

 そのキャラがナニを思っているかなんて、台詞で説明することじゃない。キムみみなめんな、そんなもんはあのぐたぐた最悪なムラ版でもちゃんとやってのけていた。
 作品の酷さにアゴを落としながられでも、観客はキムみみ銀橋に涙していた。

 ルイーズの「心変わり、早っ」をそう思わせないための加筆は、「こんなふうに思ったんですよ」と台詞で言わせることじゃない。それまでのストーリーで表現することだ。

 どう思った、それを聞いてどう思った、と、だらだら台詞で「思ったこと」を説明され解説され、より、感動が限定された。
 言葉によってしばられ、それ以上の広がりがなくなった。

 言葉にされなければ、その言葉も含めた、もっと大きなモノを感じられたのに。
 ひとつの台詞から100も200も感じられたことが、10で止まってしまった。だって台詞で「10」と言ってしまったから。

 台詞の足りない分、辻褄の合っていない分は、役者のフリースペースだった。キムみみの演技でいくらでもふくらませ、色を変えることが出来た。
 しかし、付け加えられた言葉で限定されてしまったので、役者のフリースペースは削られた。脚本にある通りのことしか表現できない。

 情緒のナイ奴は脚本書くな、と思いました(笑)。

 そして、さらにわたしが嫌だったのは、この「付け加えられた、無駄な説明台詞」がなんのためにあるのか、邪推できること。
 謙虚に、邪推といっておきます。

 「ウサギとカメ」を正当化するための説明台詞を、精魂込めてダラダラと付け加えたように見えるんですが。

 ムラ版での影絵「ウサギとカメ」の浮きっぷりは半端なかった。
 みみちゃんの歌声はきれいだし、影絵をするキムみみはかわいいけれど、観終わったあと誰もが口を揃えていった。

「で、『ウサギとカメ』って、ナニ?」

 なんのたとえ話にもなっていない。
 フィリップにもルイーズにもなんの関係もない。いきなりまったく別の話。現在の物語にかすりもしていない。
 だから余計に非難囂々、「ウサギとカメ」いらない! 「ウサギとカメ」排斥運動! NO MORE「ウサギとカメ」!!

 ……こだまっちは、ソレが許せなかったのではないか。

 「アタシのいちばん大切なhand shadowを理解しないなんて! 影絵じゃないわよ、hand shadowよ、高尚なのよ! これだから愚民相手は嫌なのよ、説明してあげないと!」てなもんで、なんでそこで突然「ウサギとカメ」なのかを、台詞で解説。
 心情をえんえん台詞で説明するという、いらんお世話なことをうだうだ続け、なにがなんでも「ウサギとカメ」を正当化する。

 そもそも、「ウサギとカメ」いらないから! ということが、どうしてもわからないらしい。
 説明台詞がなくても、フィリップとルイーズの心情は、役者ふたりの演技でわかっていた。
 なのに彼らの演技を削ってまで台詞を増やし、いらない影絵の正当化に必死になる。

 こだまっちにとっていちばん大切なのが影絵(に代表される、パフォーマンス)であり、ストーリーもキャラクタも場面も役者も、なにもかも、どーでもいいことなんだ。
 ということが、とてもよくわかる変更部分だった。

 いろいろ変更されており、いいも悪いも両方あるけど、とりあえず、よくこれだけ変更したな、と思って観ていたこと、全部、吹っ飛んだ(笑)。

 ああ、やっぱこだまっち、なんも変わってない。なんもわかってない。
 こだまっちは、こだまっち。
 ははは。(笑う)


 そのあとの変更は、わずか。
 三銃士の船から海中のシーンがなくなり、ダルタニアン@ちぎやサンマール@コマなど、微妙に台詞が違っている。
 でも、ムラ版での疑問、問題点はそのまま。

 唯一の改善は、高笑いから登場するルイ@キムの、衣装がチガウ。
 ムラ版では、何故かここでルイとフィリップは同じ衣装だったのなー。不自然ですよ、逃亡者と王様の衣装がそっくり同じなんて。「ひとり二役なので入れ替わる都合で仕方ないんですよ」という裏の事情まんま見せつけられている感じだった。
 それが東宝では別衣装だったので、問題解消。入れ替わりの衣装替えは大変だろうけど、この変更はいい。


 ムラ版はもちろんひどかったけれど、東宝版が手放しで良くなったわけでもない。
 ムラ版は酷い、東宝版はつまらない。……ハードにリピートする人ほど、東宝版の方が寝てしまう率高い、ムラ版は眠くはなかった、と言うのもわかる。わたしは東宝を大した回数観ていないので、眠るヒマはなかったが。

 こだまっちはこれからどうなるのかな。
 できればもう二度と、キムみみと雪組とは無関係のところにいてほしいです(笑)。

コメント

日記内を検索