かく言うわたしも、外見に騙されていたクチ。
 みりおくんがこれまで演じてきた役から、彼が骨太で地に足着いた、リアルな男性を魅力的に見せてくれていたこと、正統派の光を放つ真ん中タイプの子だということを、つい、失念。
 だって彼はあまりに美少年。
 美しいみりおくんが、ファンタジックなコスプレして、『不思議の国のアリス』をやるって言うと、それだけでわくわくした。

 そのわくわく感だけで、『アリスの恋人』を観劇して。

 ごめん、なキモチになる。

 ごめん、みりおくん。美少年美少年言って。美少年だから『不思議の国のアリス』似合うよねとか言って。
 いや、もちろん似合うよ? 外見だけで言うなら、これでもかってな似合いっぷり。
 しかし。

 今さら高校生の少年やって似合うって喜ばれて、それでいいんだろうか?

 わたしはキムくんが『ME AND MY GIRL』のビルが似合う、キムみみで『ME AND MY GIRL』再演希望、と罪なく言われるのがすごーく嫌だ。
 たしかに、キムくんの「外見」「外側の持ち味」には似合う。しかし、彼個人の持ち味、キャラクタの「魅力を引き出す」役でも作品でも、カケラもない。
 キムみみで『ME AND MY GIRL』を上演しても、観に行く人は少ないだろう。キムくんは抜擢が早く、少年時代からスターであったため、「少年」であるがゆえに振られるタイプの役は一通りやり尽くしている。
 そのため、今さらビルをやっても「似合う」ことはわかっているが、わかっているからこそ「お金を出してまで観たい」と思われない。
 扮装写真やタカスペの余興で十分だ。
 トップスターであり、興行である以上、集客できる演目が必要。「タカスペの余興で十分」なものをわざわざ1公演かけてする必要はどこにもない。
 現に『H2$』の集客がそれを物語っている。あれもまた『ミーマイ』系、外見や外側の持ち味のみで罪なく「似合う」「観てみたい」と言われる役であり、作品だった。「似合う」程度では商売にならない。「観る前にわかる」「だから観に行かない」に通じる。

 もちろん、主演者に爆発的な人気があれば「似合う」程度でも大丈夫だろう。今のれおんくんならナニやってもいいんじゃね?とか、みりおくんにアリスなら、現にチケ難だし?とか。
 いや、キムくんだって研9で単独初主演でバウホールで『不思議の国のアリス』なら、ふつーに「似合う」だけで売れたんぢゃね?とか。

 だけど結局のところ、わたしがガチファンだったら、外側の「似合う」だけでメルヘンなものを押しつけられたら、楽しむことは楽しむけど、もにょるかなあ、と思った。
 外野が可愛いだの美少年だのと騒いでるからこんな演目と役で、贔屓の真の持ち味はチガウのに、浅い人たちは黙っててよ的なじれったさを感じるかなあ。
 や、とても傲慢発言ですが。
 みりおくんは真にメルヘンでファミリーミュージカルや10代の少年少女向けジュヴナイルが持ち味ど真ん中なのかもしれません。わたしが間違ったイメージを勝手に彼に持っているだけかも。

 世の中とどんだけズレているのか知らないけど、わたしはわたしだけの感想を語ると、最初「みりおくんでアリス! わーい、うれしい!」と思っていたことを、ごめんねなキモチになりました。

 これは……チガウなあ、と。


 『アリスの恋人』という作品全体に感じる、違和感。
 それはなんといっても、出演者全員、「組」に合っていないということが大きかった。

 いちばんうるさいキャラクタである、赤の女王@ゆめちゃん。
 彼女がまず、致命的に似合っていない。
 年端もいかない少女である赤の女王は、この物語のキモというか、カラーを決定づけるキャラクタだ。この子がどれだけファンタスティックな存在であるかに、世界観が掛かっている。
 とことんアニメ、ゲームキャラ的でなくてはならない。
 なのに、そこにいるのは現実のわがまま幼女でしかない。
 地上から数㎝浮かび上がったフェアリーじゃない。
 彼女の言動を元にストーリーが展開する『アリスの恋人』なのに、この子が現実のヒステリックな少女のままでは、メルヘン世界は構築できない。

 ゆめちゃんだけが問題なら、彼女ひとり悪目立ちで済む。
 が、彼女だけ、とは思えないくらいに、それなりにゆめちゃんも舞台に馴染んでいる。
 彼女が浮かないほどに、他のキャラクタも現実的なんだ。
 それは、夢夢しいコスプレが似合っている・いないでもなく、可愛いかどうかでもなく。

 だから湧き上がる、「コスプレ芝居」感。
 高校生以上の子たちが、お芝居をしている感じ。ヘタだとかいう意味じゃないよ? 肌に合わない感じが、っていうかな。
 『不思議の国』ではなく、あくまでも「ただの芝居」である興醒め感。
 ファンタジックな道具立てをしているのに、ちっともファンタジーじゃない、メルヘンじゃない。
 現実の人間が、ファンタジーやメルヘンを演じている。
 世界に没入できない。

 なんとも、堅実。
 すごく真面目に、「演劇」。
 『STUDIO 54』 でも感じたけど、月組って、ヲタクと相性悪い……。

 とまあ、「世界」自体が大変な感じの中。

 ルイス・キャロル@みりおくんは、良かった。

 何故ならば、この物語自体が、高校生の少年が見ている夢、という設定だからだ。
 みりおくんだけは、「リアル」でもいいんだ。
 だから彼の持ち味、地に足着いたリアルな存在は、間違っていなかった。

 ルイス・キャロルはリアルで、生身の男の子っぽくていい。
 演出家が本当にそれを理解していたのか、それを狙っていたのかはわからない。
 みりおくんのファンタスティックな外見と、骨太な持ち味のギャップを狙って『アリスの恋人』というファンタジー世界で迷子になる現実の少年の物語を書いたのか。

 だが、それを活かすためには、『不思議の国』をちゃんとファンタジーにする必要があった。耳やしっぽを付けて語尾をアニメにしたところで、役者と組の持ち味の堅実さは覆せない。

 なんとも、いたたまれないものがあった。

 そして思ったわけだ、みりおくん、ごめん、と。
 彼が本当に魅力を発揮できるのは、高校生とかかわいこちゃんとかじゃないだろと。
 かわいい、じゃなくて、かっこいい、と思わせる役が、少年から大人になろうとしている彼には必要なんだろうに、と。

 いや、それでもブレザー姿のみりおくんのかわいさは鼻血もので、背伸びして年上のおねーさん@ちゃぴ(って設定どうなの)に強がる姿はたまりません!でしたが。

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