1月16日、『インフィニティ』千秋楽。

 祭りの終焉について、まだ語る言葉を持たない。
 わたしはこの公演を、『インフィニティ』という作品を、整理しきれていない。

 だから千秋楽の話ではなく、昨日欄の続きを書く。


 「荒城の月」は美しい曲。
 歌詞も好きだから、まっつの声でいつか聴きたい。

 美しい日本。
 美しいタカラヅカ。
 美しい男役たち。

 タカラヅカのルールに則り、端正にストイックに踊りきったあと、舞台にはまっつひとりが残る。

 黒燕尾姿で、たったひとり。

 ホリゾントのみだった背景に、冒頭で水兵コマが「出航」を告げていた羅針盤と海の幕が下りてくる。
 歌うのは、旅の終わり。

 稲葉くん……大劇場公演の、トップ娘役ナシか、トップスター単独退団公演ショーの作りになってるわ……(笑)。
 ふつーにトップコンビがいるなら、ここはデュエットダンスの位置。
 旅の終わり、出会えた人々、出来事の回想、思い出として胸に刻んでね……てな曲と演出。
 曲名は「限りなき世界」でしょうかね。無限を、永遠を歌いながら、「旅の終わり」と言ってるんですよ。物理的にはこれで終わり、別れ。だけど心の中には永遠に生き続ける、みたいな意味。
 めっちゃ「別れ」演出やん!!(笑)

 そーやってひとり切々と歌い上げたあと、客席に背を向けて、舞台奥へ歩み去る。
 ……これって、大階段を上って去って行くイメージですか……。

 去るまっつと入れ違いに現れるのは、ヒメ。
 エトワールです。
 センターでしばらくひとりで美声を披露。ヒメもいろんな歌い方のできる人だけど、ここではほんとーにど真ん中な、美しい透明な声。エトワールですから。

 で、こっから大階段パレードです。
 朝風くん、カレン姐さんの歌手コンビが歌い継いだあとは、スタークラスが階段を降りながら裏主題歌(笑)の「青い星の上で」を歌う。まさしく大階段パレード、番手順。
 シャンシャンが欲しいくらい、わかりやすい演出。

 えー、ヅカヲタらしく階段降りの順番を記しますと、あゆみ・翔、あゆっち・きんぐとふたり降り、あゆっちはスキャットのみできんぐはソロと、ちょっときんくが格上げされてます。ひとり降りはコマのみ。
 で、全員が舞台で待ち構えるところへ、大羽根背負ってトップスター登場。
 ……という、演出です(笑)。
 バウなんで、階段ナイし、羽根もシャンシャンもナイけどなー。

 上手から、「いかにもタカラヅカ」な、ドリーミングな水色衣装で登場したまっつがソロで歌い継ぎ、ラストは全員のコーラスで終了。
 パレードアレンジせずに済んでいるもんで、正味美しい「聴かせる」リズムです。大劇場だったら、まっつのソロも途中からテンポが変わり、後半は手拍子の入れられるよーにテンポアップされたアレンジになるんだろう。

 んで、一旦幕。

 プログラムに載っているのは、ここまで。
 大劇場のショーと同じ方程式で作られたショーだけど、なにしろここはバウホール。大劇と同じでは終わらない。
 プログラムのあとに、アンコール場面がある。
 プログラムに載っていないアンコール場面があること、までが、別箱の芝居以外公演のお約束。
 幕が下りても客電は点かない。真っ暗な中、拍手を続けると、再び幕が開く。お約束お約束。

 ここまで、大劇場のショー公演と同じ作りにしてきておいて。
 そして、「トップスターのサヨナラ公演」みたいな演出にしておいて。

 最後に、ひっくり返す。

 通常のタカラヅカではできないこと。
 下りた幕を、上げること。
 出演者全員の、本気のアカペラ・コーラス。
 シャンシャンを持ったパレードで定位置に並んで終了、ではできない、みんなでひとつに集まって声を集め、「声」の力を爆発させること。

 歌うのは、主題歌。

 「はじまり」の歌。

 さっき、「旅の終わり」を歌ったやん! まるきし大劇場の、本公演の、サヨナラ公演みたいな顔して。そんな演出と歌詞で。

 なのに、下ろした幕を上げて、「はじまり」を歌う。
 それは、この作品のオープニングと呼応した場面。

 インフィニティ。無限大。

 輪はぐるりとめぐって、最初に戻る。

 終わらない!!

 終わらないんだ。続くんだ。

 まっつは、みんなは、歌う。
「誰にも止められない 今はじまる」と。

 これほどまでに、大劇場と同じ演出、作りだったのは、コレをやりたかったからか!
 いかにもサヨナラ風味な大劇場ショーのふりして一旦幕を下ろし、「終わらないよ! まだまだ続くよ!!」とやる。
 ぐるっと回って最初に戻る。

 これって、バウでしか……大劇場の本公演以外でしか、できないことだ。
 大劇と同じショーを、大劇では決して真ん中に立てないまっつのために、バウで作ってくれた稲葉先生に感謝した。
 しかし、それだけじゃなかったんだ。
 コレって、大劇のルールもバウのルールも逆手に取った、バウでしかできないショーだったんだ。

 おもしろい。
 すごい。

 退団風味な演出もされているわりに、わたしを含め周囲のまっつファンが誰もしんみりとはせず、素直に「主演うれしい! ショー楽しい!」と浮かれていられたのは、この演出のおかげ。
 最後にどーんと持ち上げてくれるので、高揚したまま終わることができる。

 「旅の終わり」を、否定して終わるんだもん。

 そして、まっつは実に生き生きと、たのしそうに舞台にいる。
 雪っこたちも、たのしそうに、そしてキラキラとした目でまっつを見つめてくれている。

 このアンコール場面ではじめて、出演者の個別挨拶がある……んだが、よくある名前紹介(愛称で誰々と呼びかける)はなく、思い思いのポーズで礼をする。
 このとき、挨拶の順番待ちの組子たちが、まっつに絡んでからセンターへ進み出るのが、うれしかった。
 絡むったって、ただ顔を見合わせてにっこりするだけなんだけどね。まっつがすごく優しい顔で、目を線にして、頷き返すの。「行っておいで」みたいに。

 この挨拶パフォーマンス、朝風くんとヒメがいちばん濃くてすごかった……その日替わりっぷりも含め(笑)。

 で、ラストは一列になって、曲が終わるまで……幕が下りるまでなんとなく動き続ける。ここはなかなかにぐたぐた。毎回ちがうんだが、仕込みはしていないらしく、なしくずしにそれぞれチガウことやってる。

 お約束でもう一度幕が開き、主演の挨拶。
 まっつの挨拶が噛み噛みなのはご愛敬。

 このカーテンコール場面の方で、幕が下りる間際の振付が決まっているのは、ニクいなと思う。
 まずまっつがひとりで踊り(投げチュー付き)、それにみんなが従う感じ。挨拶のあとなだけに、さらにまっつを中心に、って感じがして良い。
 幕が下りるころにはフリースペースになってるから、結局ぐたぐたになってるんだけどね(笑)。

 『インフィニティ』、というタイトルに偽りない公演、作品だった。
 めぐる輪、終わりの否定。

 「進めるだけ羽ばたこう」「今はじまる」……そう歌うまっつを信じ、ついていくよ。

コメント

日記内を検索