「役作りは深く考えない。台本に書いてあるままを演じる。必要なことはみんな台本に書いてある」
 てな意味のことを語ったまっつさん。

 あとになって、あれ?と、わたしは首をひねった。

 前回の『仮面の男』のときは、そうじゃなかったよね?
 役作りに悩んで、ミュージカル『三銃士』の橋本さとし氏のアトスを見て開眼した、吹っ切れたみたいなことを、語ってた、よ、ね……?

 こだまっち……。
 このまっつを、あそこまで混乱させたの、か……。

 てことで、未涼亜希『ドン・カルロス』『Shining Rhythm!』お茶会の感想、続き。

 前回『仮面の男』『RSF』のお茶会で、ジャック船長の髪型のこだわり、「自分でアクセサリーを作った」くだりを長々語ったまっつさん。
 実際に物作りした点については、よく喋るんだなあ。

 というのも、フェリペ二世の「金髪のヒゲ」はかなり、苦労して作ったらしいよ。

 わたしも、同期のキムくんの父親役だから、ヒゲは付けるだろうと思っていた。
 でもきっと黒髪で黒ヒゲだろうなと。
 スペイン王のイメージは黒だし、肖像画も黒だし、また、タカラヅカにおいて口ひげは黒が基本。金ヒゲは難易度が高く、小さなヒゲだとわかりにくい。サンタクロースヒゲなら金でもいいけど、おしゃれな口ひげは黒でないと絵にならない。
 髪がプラチナブロンドでも、睫毛や眉毛を白銀にしないのと同じ。リアリティより、画面としての説得力。

 金髪でヒゲ、しかも小さな口ひげ顎ヒゲ……そりゃ苦労しただろう。

 役作り、芝居についての苦労や工夫は語る言葉を持たないのに、物理的な、目に見えるモノに関しては、事細かに語る。
 そんなところに、性格が表れていて、にやにやが止まらない。←

 おかげで、どう苦労したのか、よくおぼえてない。
 やたら長々語る、その部分を堪能した。
 あー、まっつかわいー。


 あと、やはり芝居としてではない部分でやたら語っていたなと思うのは。

 フェリペ二世と似た部分はあるか、みたいな質問に対して。
 えーと、フェリペ二世の弱さに対して、似た部分があるか?みたいな聞き方だったと思う。

 そしたらまつださん、語る語る。
 人は誰しも弱い部分があるモノだ、みたいなことを。

 んで、そんだけ語るくせに、質問には答えないの。

 弱さゆえに人を疑っちゃうフェリペ二世に、似ているか?
 あくまでも一般論として語ってるのに、ウケた。

 なんなの? わざと? 無意識?
 「わかりますねー。人間ってみんな、そーゆー部分は多かれ少なかれあるじゃないですか」みたいな言い方すら、しない。
 むしろ「理解できません。私は人を疑うなんて生まれてこの方一度も経験がありません。弱さは悪です」と言う方が、人としてやばいのだから、共感を示しても、誰にも責められないと思うんだが。
 で、実際それだけ「人間の弱さ」を「あるもの」として語るのだから、肯定しているのと同じなんだけど、言葉にはしない。

 その潔癖さというか、「強く、正しく」あろうとする姿勢に、くすぐられる。

 つい悪い方へ考えちゃったりとか、心が弱くなるときは、誰だって、ある。
 問題はそのとき、どうするかだ。
 ほんとうに悪い方へなだれてしまうか、自分を律することが出来るか。

 まっつは、律したいと強く願っている人なんだろう。
 高い自尊心にかけて、背筋を伸ばして。


 で、反対に、あまり語らなかった……語りたくなさそうだったこと。

 あゆみちゃんへの、指輪について。

 えー、舞台にて、イサベル王妃@あゆみちゃんは、結婚指輪をしています。
 もちろん、フェリペ二世@まっつとお揃いです。
 あの指輪は、どうしたの?

 タカラヅカでは、芝居での相手役に、男役から指輪を贈る、という風習があります。
 さて、我らがツンデレ大王まっつさんは、妻に指輪を贈ったのでしょうか?

「私があげました」

 って、この言い方が「結論だけ言います」って感、ありあり。

 で、語るのは「指輪」へのこだわり。
 舞台での小道具としての、こだわり。前述のヒゲと同じノリで、デザインがどーの、色がどーの。
 あの……誰もそんなこと、聞いてません。ジャック船長のビーズだとか、金色ヒゲの工夫と同じ温度で語って欲しいなんて、言ってねーよっ!!

 どうやって渡したんだよ、相手の反応はどうだったんだよ、そこんとこだよ、聞きたいのはっ。
 なのにまっつ……ピントのずれたことを、ぺらぺらと。

 で。
 指輪のこだわりだけさんざん話して、「以上です」。

 ちがーーうっ!!

 参加者の心がひとつになった瞬間(笑)。
 司会者さんが、苦笑をにじませながら、「渡したときのエピソードを」を突っ込んでくれた。
 ほんと、突っ込んでくれなかったら、終わってたよ。
 まっつ…………(笑)。

 ここまで具体的に質問されて、このツンデレ男はよーやく口を開いた。

「舞台稽古のはじまる前に、『はい』って」

 えー、このニュアンスを、文字で伝えるのは、難しい。
 突っ込まれてまっつは仕方なしに、話してくれたわけだ。急に、早口になった。
 「舞台稽古のはじまる前に」まで、早口。
 で、次の「はい」が、超なげやり。

 なにか忙しく作業をしながら、立ち去りざまに「どーでもいいもの」を投げ渡すよーな、そんな感じ。

 場内、爆笑。

「…………照れ隠しですか?」司会さん、GJなツッコミ!

「急いでたんです。やることがいっぱいあって!」

 そりゃ、舞台稽古の日ですから。忙しいでしょうよ。
 まっつは、衣装がどうのさっき語ったヒゲがどうのと、自分がどれほど忙しかったかを語る。
 向こうも忙しいだろうし、と言う。
 そりゃあゆみちゃんも、忙しいでしょうよ。

 問題はさ。
 その忙しいとわかっている日に、わざわざ渡したのよ? それまでも毎日会ってるくせに。

 舞台稽古ですよ。本番と同じ姿で仕事するわけですよ。指輪を渡す、最後の機会じゃないですか。これより遅れたら、相手に迷惑っすよ。自分でなにか用意しちゃうかもだし。
 そんなぎりぎりまで、なんで渡さないの?

 で、ぎりぎりになって、「忙しいから」と、相手の目も見ないような渡し方……。

 わたしも言いたい。
「照れ隠しですか?」

 これ以上まっつは、がんとして口を割らない。喋らない。
 どんな指輪かは事細かに語ったくせに、どうしてそんな風に渡すはめになったのか、相手の反応はどうだったのか。
 いわゆる「指輪をプレゼントしたときのエピソード」は、がんとして語らないっ!!
 意志を持って、語らない!
 司会者もそれ以上突っ込めない。そりゃあねえ……(笑)。

 爆笑。
 もーみんな、腹抱えて笑っている。
 それが、まっつ。

 なんて、期待を裏切らない人(笑)。

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