『近松・恋の道行』にて、みわっちの「急いでいる」感が、気になった。
 悪い予感というか。
 相手役のみりおんが走れなくても気にせず、自分ひとり走っていた。
 いつものみわっちなら、そんなことにはならないだろうに。
 余裕がないというか……「生き急いでいる」感じがして、不安だった。

 たぶん、そういうことなんだろう、ほんとうにこの人には「時間」がないんだろう。
 そう思った。
 考えたいわけじゃないが、ただもう、そういうことなんだろうと、思った。
2012/06/11

花組 退団者のお知らせ


下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。

 (花組)
  愛音 羽麗
  輝良 まさと
  銀華 水
  愛羽 ふぶき
  雪華 さくら
  

     2012年10月14日(花組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

 青年館で観た人は、「みわさんの退団者オーラが半端ナイ」と言っていた。青年館まで行けば、あの焦燥感は昇華され、光になっていたのかもしれない。
 でもわたしが観たのはバウで、初日と楽の前々日でしかなくて。
 初日はそれほど感じなかったけれど、舞台全体がギアの回ってきた感のある、バウ楽カウントダウン入った頃には、みわさんの余裕のなさが顕著でこちらが焦った。

 みわさんにはどこか行きたいところ、目指しているところがあって、そこに行こうとあがいている。
 だけど相手役のみりおんは、みわっちと同じスピードでは走れない。だからみわっちは自分ひとりで走っていた。みりおんのことはとりあえず抱えて。

 時間がない。
 みりおんの成長を待って一緒に走るとか、彼女のペースに合わせて走るとかは、しない。
 焦燥感がある。なにかに急き立てられているような、余裕のなさ。
 ただもう物理的に、時間がないのだと、思った。

 『近松・恋の道行』という作品で、心中モノで、主役がひとりで走る姿は、落ち着かなかった。
 ただの心中モノではなく、景子せんせの作為的な仕掛けを凝らした舞台だから、それはそれでアリなんだけどね。
 みわっちが「男役人生の途中、まだまだ続く長い道の中のひとつ」として嘉平次役と向き合ってくれていたら、どんな役に、作品になったのだろうか。
 豊太郎@『舞姫』もまた、生き急ぐ状態での初演だったら、あの豊太郎ではなかったんだろうなと、今にして思った。や、エリス@ののすみなら、みわっちが暴走しても、それについていったろうけど。

 退団公演自体はきっと、焦燥感ではなく、もっと落ち着いた豊かな物になるんだろう。
 それこそ、退団者オーラで神々しく発光する。その美しさに胸を締め付けられる。
 そうやって何人も何人も、見送ってきたように。

 そこへたどり着くのはわかっているけれど。

 『近松・恋の道行』で、……つらかったなあ。や、わたしがつらがってどうなの、とは思うけど、みわさんへの愛着半端なく、彼を視てきた時間や記憶や思い出や、いろんなものがごっちゃになって、ただもお、苦しかった。

 バウをあとにして、花組集合日を確認したもの。
 答え合わせの日というか、このなんとも言えない苦しさに、決着がつく日のことを。

 ……ただの杞憂、あれは役に入り込むあまりのことだったのね、と笑い飛ばせる可能性だって、ゼロじゃないし。

 でもたぶん、そういうことなんだろうと、思っていた。

 苦しかったな、『近松・恋の道行』。
 退団者オーラにまで昇華できてなくて、ただ、みわさんの焦燥感に巻き込まれていた。
 それでも、観られて良かった。


 答えは出た。
 行き場のないぐるぐるした感じはとりあえず、終わった。

 あとはただ、さみしい……。


 輝良まさと、銀華水くんも卒業しちゃうのか。ふたりとも若くして大人の男ポジを確立したいい男たちなのに。

 でもって、遅れて気がついた。
 サヨナラショー、ないのか……。

 サヨナラショーの基準がよくわかんないなー。別格スターでもやる人はやるのに。
 わたしがナマで「3番手単独退団」を観納めた記憶がないもんで、前例にうといんですが、友人によると真織さんが3番手としてサヨナラショーやってるので、「劇団の方針として決してあってはならないことだから、断固としてやらないのだ」というわけじゃないんだよね? 3番手はサヨナラショーやっていい立場の人なんだよね?

 わたしにとってみわさんは、そりゃーもー下級生時代から特別扱いされ続けたスターさんだもんで、番手はともかくとしても、サヨナラショーなしで卒業していくのがわかんないです。
 花組をろくに観てないころだって、新進スターとして名前だけは知っていたくらい、10年前の公演ビデオ観たって、ちゃんとスターとして舞台でにこにこしている、一貫した扱いを受けていた人だもの。
 あのころ、まさかこんなに扱いが停滞するなんて、思わなかったさ……。


 『舞姫』に奔走し、『メランコリック・ジゴロ』に鈍行乗り継いで名古屋へ通った、あの日々が懐かしくて……遠くて、とても遠くて、切ない。

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