今、そこにいてください。@フットルース
2012年7月9日 タカラヅカ なんか今、思うんだ。
この芝居、すごくないか?
芝居に正誤はないし、好みによって大きく印象が違ってくる。だからわたしがそう感じるからって、それが世間的な評価とはイコールではない。
それでも、思う。
『フットルース』のレン@キムと、ムーア牧師@まっつの芝居。
クライマックス、心を閉ざしたムーアをレンが口説き、考えを変えさせる場面。
かたくなだったムーアの心が動く。
誰の言葉も聞かず厚い鉄の扉の向こうにいた男が、ノックの音に気づく。
はじめて音を聞き、顔を上げ……はじめて、「世界」を見る。
5年前、扉を閉ざし、同時に彼の「世界」も閉じた。分厚い壁で囲まれた、小さな世界を守ることだけを考えていた男が、少年の声に反応する。
最初は拒絶して、でも拒絶の声さえこの5年、上げていなかったことに気づき……だって誰も、彼の扉をノックしなかった……彼を思いやって、あるいは彼を恐れて。
顔を上げた彼は、おそるおそるドアを開く。
隙間から外を見て、少年の涙を、真実の言葉を聞き、ついには扉を開け放つ。
この場面の演技、すごくない?
引き込まれる。
わたし今まで、キムくんとまっつが役者としての相性が良いとか、思ったことなかったの。
そりゃふたりともうまい人だから、それぞれよくやっていることは、わかっていた。でも、芸質が異質すぎて、「うまい」以上のモノを複合的に創り出すことができているかは、懐疑的だった。
100点+100点=200点。
計算式通り。
キムくんは芝居の熱量の高い人で、相性のいい人と組めば何倍にもなることがわかっているだけに、「まっつ相手じゃあ、100+100にしかなんないよ」と申し訳なく思っていたくらいだ。や、おこがましい話ですが、相手がまっつでなければもっとチガウ爆発っぷりを見られたのに、と、勝手に思ってました。
相性が良い人たちなら、100+100ではなく、100×100になるのに。答えの桁数が違いすぎるのに。
キムくんの熱を、まっつが受け止めて……受け止めるまでは良いけど、こんだけきちんと受けられるだけでもすごいと思っているけど、問題は、そこからさらに上げるのではなく、そのまま流すんだよなあ、まっつ。
さらに爆発させてくれる人と組んで芝居をするキムくんが見たいなあ。
そう思っていた。
や、キムくんもまっつも、単体で好きな人たちだから、好きな人たちを一度に見られるから、組んで芝居してくれるのはうれしい、好き、と思っていたよ。
相乗効果は期待してなくても、ふたりががっつり組む芝居を見られることだけで、うれしかったんだよ。それは本当。
キムくんが「同期のあうんの呼吸」をことあるごとに言ってくれるのも、うれしかった。
演じている彼らにとっては、やりやすさとかが、「相性ばっちり!」なのかもしんない。
ただ、それを客席で観ているだけのわたしは、キムくんが宣伝するほどふたりの相性は良くはない……と思っていた。ええ、ほんと個人の感想です。
だからはじめてなの。
相性を超えて、ふたりの芝居を「いい」と思うの。
えーっとえーっと、なんかすごくない? このふたり。このふたりの、芝居。
音月桂と未涼亜希。
このふたりが、ここまでじっくり繊細に「芝居」として絡む……歌ではなく、正味芝居をしている……えっと、はじめて見る、のかもしれない。
がっつり「芝居」で闘うふたりを見るの。
役者同士が本気で芝居として絡み合い、創り出すモノ。その空気、その「人間」としての姿に、息が詰まる。
このふたり……すごくない? こんなにすごい人たちだったの?
つか、このふたりって、ふたりで「やれ」って箱を与えられて向かい合ったら、こんだけのことをやっちゃう人たちだったの?
ご、ごめんわたし、なんにもわかってなかった。
舞台を観ながら、心臓をどきどきさせている。
今わたし、すごいものを見ている……。
なんかすごい、「役者」の創り出すモノを見ているよ……!!
レンとムーア。
同じ傷を抱いた男たち。
光と影、この物語の主人公と裏主役。
レンによって、扉を開け放ったムーア。
開いた扉から飛び込んできたのは、「世界」。
5年間拒絶していた、閉め出していた、「世界」が一気に彼を打ちのめす。翻弄する。
うずくまる彼を癒すのは、娘アリエル@みみ。
彼女が「父さんを信じている」と抱きしめてくれるから、彼はそれでも立ち上がる。
歩き出す。
クライマックス、起承転結の「転」が、レンではなくムーアだっつーあたり、物語的にちょっと待てそれでいいのか、と思うところではあるが(笑)、とにかくムーアが変わることで、物語は結末へと進む。
レンとムーアが、この物語の、核。
それを、同期のふたりが見事に演じきっている。
このふたりの「芝居」を、見られるのが最後かもしれないって、どういうこと? それって、ものすげーもったいないことなんじゃないの??
キムくん退団については相変わらず、「辞めるのやめてくんないかな」とアタマ悪く願い続けてますが、それはキムくん本人を好きで、キムくんトップの雪組が好きだから。
そこに加えて。
キムとまっつの芝居って、すげーいいじゃん!てのが加わったんですが?
ちょ、これで最後ってなに? わたし、最後にしてはじめて気づいたの? もう手遅れ? なによそれ~~!! じたばた。
本公演では、トップと3番手がここまでがっつり芝居で絡むことは、そうそうない。
『ドン・カルロス』でも似たよーなことやっていたけど、やっぱり3番手を物語の核にするわけにはいかないから、比重を落としてあった。作品的に不自然であっても、タカラヅカの番手制度は絶対だ。絶対であるべきだと思っている。
本公演では無理、またどこかの別箱公演でないと! 第一、次回本公演はトップコンビ退団だし、専科のお客様もいるしで、まっつがトップさんとじっくり芝居する余地はないはず。まっつより上の立場の人をdisるわけではなく、ただ事実としてそうだと思っている。
だからほんとに、今回が最初で最後なんだ。や、わたしにとって。
なんてこったい……。
こんだけいい芝居をするコンビが、これで解散って、あんまりだよ歌劇団。
ああますます、「キムくん、辞めるのやめて」!!
物語スキーとして、これだけ濃密な好みの物語を創り上げられる役者を、コンビを失うのは、つらすぎる。
この芝居、すごくないか?
芝居に正誤はないし、好みによって大きく印象が違ってくる。だからわたしがそう感じるからって、それが世間的な評価とはイコールではない。
それでも、思う。
『フットルース』のレン@キムと、ムーア牧師@まっつの芝居。
クライマックス、心を閉ざしたムーアをレンが口説き、考えを変えさせる場面。
かたくなだったムーアの心が動く。
誰の言葉も聞かず厚い鉄の扉の向こうにいた男が、ノックの音に気づく。
はじめて音を聞き、顔を上げ……はじめて、「世界」を見る。
5年前、扉を閉ざし、同時に彼の「世界」も閉じた。分厚い壁で囲まれた、小さな世界を守ることだけを考えていた男が、少年の声に反応する。
最初は拒絶して、でも拒絶の声さえこの5年、上げていなかったことに気づき……だって誰も、彼の扉をノックしなかった……彼を思いやって、あるいは彼を恐れて。
顔を上げた彼は、おそるおそるドアを開く。
隙間から外を見て、少年の涙を、真実の言葉を聞き、ついには扉を開け放つ。
この場面の演技、すごくない?
引き込まれる。
わたし今まで、キムくんとまっつが役者としての相性が良いとか、思ったことなかったの。
そりゃふたりともうまい人だから、それぞれよくやっていることは、わかっていた。でも、芸質が異質すぎて、「うまい」以上のモノを複合的に創り出すことができているかは、懐疑的だった。
100点+100点=200点。
計算式通り。
キムくんは芝居の熱量の高い人で、相性のいい人と組めば何倍にもなることがわかっているだけに、「まっつ相手じゃあ、100+100にしかなんないよ」と申し訳なく思っていたくらいだ。や、おこがましい話ですが、相手がまっつでなければもっとチガウ爆発っぷりを見られたのに、と、勝手に思ってました。
相性が良い人たちなら、100+100ではなく、100×100になるのに。答えの桁数が違いすぎるのに。
キムくんの熱を、まっつが受け止めて……受け止めるまでは良いけど、こんだけきちんと受けられるだけでもすごいと思っているけど、問題は、そこからさらに上げるのではなく、そのまま流すんだよなあ、まっつ。
さらに爆発させてくれる人と組んで芝居をするキムくんが見たいなあ。
そう思っていた。
や、キムくんもまっつも、単体で好きな人たちだから、好きな人たちを一度に見られるから、組んで芝居してくれるのはうれしい、好き、と思っていたよ。
相乗効果は期待してなくても、ふたりががっつり組む芝居を見られることだけで、うれしかったんだよ。それは本当。
キムくんが「同期のあうんの呼吸」をことあるごとに言ってくれるのも、うれしかった。
演じている彼らにとっては、やりやすさとかが、「相性ばっちり!」なのかもしんない。
ただ、それを客席で観ているだけのわたしは、キムくんが宣伝するほどふたりの相性は良くはない……と思っていた。ええ、ほんと個人の感想です。
だからはじめてなの。
相性を超えて、ふたりの芝居を「いい」と思うの。
えーっとえーっと、なんかすごくない? このふたり。このふたりの、芝居。
音月桂と未涼亜希。
このふたりが、ここまでじっくり繊細に「芝居」として絡む……歌ではなく、正味芝居をしている……えっと、はじめて見る、のかもしれない。
がっつり「芝居」で闘うふたりを見るの。
役者同士が本気で芝居として絡み合い、創り出すモノ。その空気、その「人間」としての姿に、息が詰まる。
このふたり……すごくない? こんなにすごい人たちだったの?
つか、このふたりって、ふたりで「やれ」って箱を与えられて向かい合ったら、こんだけのことをやっちゃう人たちだったの?
ご、ごめんわたし、なんにもわかってなかった。
舞台を観ながら、心臓をどきどきさせている。
今わたし、すごいものを見ている……。
なんかすごい、「役者」の創り出すモノを見ているよ……!!
レンとムーア。
同じ傷を抱いた男たち。
光と影、この物語の主人公と裏主役。
レンによって、扉を開け放ったムーア。
開いた扉から飛び込んできたのは、「世界」。
5年間拒絶していた、閉め出していた、「世界」が一気に彼を打ちのめす。翻弄する。
うずくまる彼を癒すのは、娘アリエル@みみ。
彼女が「父さんを信じている」と抱きしめてくれるから、彼はそれでも立ち上がる。
歩き出す。
クライマックス、起承転結の「転」が、レンではなくムーアだっつーあたり、物語的にちょっと待てそれでいいのか、と思うところではあるが(笑)、とにかくムーアが変わることで、物語は結末へと進む。
レンとムーアが、この物語の、核。
それを、同期のふたりが見事に演じきっている。
このふたりの「芝居」を、見られるのが最後かもしれないって、どういうこと? それって、ものすげーもったいないことなんじゃないの??
キムくん退団については相変わらず、「辞めるのやめてくんないかな」とアタマ悪く願い続けてますが、それはキムくん本人を好きで、キムくんトップの雪組が好きだから。
そこに加えて。
キムとまっつの芝居って、すげーいいじゃん!てのが加わったんですが?
ちょ、これで最後ってなに? わたし、最後にしてはじめて気づいたの? もう手遅れ? なによそれ~~!! じたばた。
本公演では、トップと3番手がここまでがっつり芝居で絡むことは、そうそうない。
『ドン・カルロス』でも似たよーなことやっていたけど、やっぱり3番手を物語の核にするわけにはいかないから、比重を落としてあった。作品的に不自然であっても、タカラヅカの番手制度は絶対だ。絶対であるべきだと思っている。
本公演では無理、またどこかの別箱公演でないと! 第一、次回本公演はトップコンビ退団だし、専科のお客様もいるしで、まっつがトップさんとじっくり芝居する余地はないはず。まっつより上の立場の人をdisるわけではなく、ただ事実としてそうだと思っている。
だからほんとに、今回が最初で最後なんだ。や、わたしにとって。
なんてこったい……。
こんだけいい芝居をするコンビが、これで解散って、あんまりだよ歌劇団。
ああますます、「キムくん、辞めるのやめて」!!
物語スキーとして、これだけ濃密な好みの物語を創り上げられる役者を、コンビを失うのは、つらすぎる。
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