友情と依存。@ロミオとジュリエット
2013年6月22日 タカラヅカ 星組再演『ロミオとジュリエット』Bバージョン、ベンヴォーリオ@ベニーとマーキューシオ@みっきーが好み過ぎる!
ということで、勝手にわたしフィルターなふたりを語る!!
マーキューシオVSティボルト@マカゼ。
どっちのふつうの精神状態じゃない。破壊衝動、破滅衝動に駆り立てられ、ぶつかるふたり。
ベンヴォーリオは乱闘になってはじめて、仕方なく仲間たちを助け、またマーキューシオを止めに入る。
とまどったまま、ためらったままだから、その動きは鈍い。
ロミオ@れおんの歌う「誰もが自由に生きる権利がある」に耳をとめ、それに同調するわけだが……このときはじめて心が動いた、ってわけじゃないんだろう。
もっと前から、迷っていた。たまたまこのタイミングで肩を押されただけのこと。
今までことさらお調子者を装ってきた。お笑いキャラとして大袈裟に滑稽に振る舞ってきた。
でも、それは虚勢。
ほんとうのベンヴォーリオは。
マーキューシオの死は、実はベンヴォーリオに責任があるんじゃないか?
孤独なマーキューシオが破壊衝動に駆られていたのが、ベンヴォーリオに突き放されたせいだとして。
さらに、乱闘の最中、ベンヴォーリオは早々にあきらめているように見えた。
もっと力尽くで止めることができたのに、自分をあわれんだりなぐさめたりする気持ちがあって、死にものぐるいにはなっていなかった。なっていても、ところどころゆるんでいた。
もう無理だ、と立ち尽くす瞬間があった。
努力を手放す時間があった。
その間に、マーキューシオは動き、刺された。
いやあ、今回ベンヴォーリオとマーキューシオの関係性が、面白くて。
2個イチ扱いのベンマーが、ここまで別の立ち位置にいるってのが、わたしにとっては新しい。わたしにとっては、はじめて見る。
今思うと雪組のベンマーは、性格は正反対でも似合いの一対だった。クールでシニカルな知性派ベンヴォーリオ、ホットで好戦的、でも実は繊細なマーキューシオ。ふたりはまさに「親友」で、そこは終始一貫揺らがなかった。
今の『ベルばら』でアンドレとオスカルをやっていて、芝居の相性がやたらいいことが示す通り、中の人たちの芸風は違っても、方向性が違和感なく重なるんだろう。
でも星組Bのベンマーは、実は最初から親友ではなく……友情の名を借りた依存関係に思えた。
ベンヴォーリオもマーキューシオも、そのいびつさになんとなく気がついている。
忍び寄る死の影、的に。
「人」という字は、人と人が支え合っているのではなくて、もたれ合って依存しているのです、どちらかが倒れれば、共倒れになります。……そんな感じ?
微妙なバランスで成り立っていた、いびつな関係。
ロミオの裏切りで、ベンヴォーリオとマーキューシオの関係も壊れた。
ベンヴォーリオはすっかり腰が引けて話にならない、マーキューシオは苛つき、周囲に当たり散らす。共に話し合い、支え合って乗り越えなければならない大事件の最中、ふたりは共に手を放した。
もともと支え合ってなかった、相手のためでなく自分のためにもたれかかっていただけだった、だから有事にはまず自分を守ろうと相手から手を放した。……そしたら、ふたりとも、崩れた。
とはいえ、互いを愛していないわけじゃない。
ベンヴォーリオもマーキューシオも、ちゃんと相手のことは思っている。事務的に利用していただけじゃない。
ただきちんと発達していなかった。成長の過程で築くべき人間関係が、構築出来ていなかった。
それはたぶん、ヴェローナのせい。「生まれたときから敵がいる」状況で、是非もなく敵を憎まなくてはならない環境では、健康に発育しなかった。
とりあえず味方同士で固まって、「敵」を攻撃していれば、誰だって「仲間」になりた、「親友」になれた。
そうやって外側だけ出来上がり、内側がついてきていないことに、気づいていなかった。
ベンヴォーリオとマーキューシオ、どちらも、哀れだ。
泣きそうな顔で途方に暮れているベンヴォーリオ。苛つき、破壊衝動に身を任すマーキューシオ。
どちらも、ひとりぼっち。
いずれ、こうなる運命だった。いびつな友人関係だった、性格も価値観も違いすぎた、それでも依存することで一緒にいた。
ロミオとジュリエットの結婚で、ベンマーの依存関係は壊れた。
ふたりは別の方向を向いている。
マーキューシオの孤独が痛い。
ひとりぼっちだとわかってしまった、認めてしまった。
ロミオははじめからマーキューシオのことなんかものの数にも入れていないし、ベンヴォーリオはマーキューシオが必要とするだけマーキューシオを愛してくれていない。
彼の欠乏感、飢餓感は、すべてティボルトへぶつけられる。
「ヤツは俺を昔から蔑み、憎んでる」……マーキューシオの言葉は、ティボルトへ向けられたモノなのか。や、もちろんそうなんだけど。
無意識の領域で、別の人間に言っていないか?
ロミオに? ベンヴォーリオに?
あるいは、自分自身に?
破滅は必定。
ティボルトへ向けた刃は、自分自身へ。
ある意味彼は、解き放たれたのかも。
ずっとずっと彼をむしばんできたゆがみ、孤独から。
うれしかったろうな、ロミオとベンヴォーリオの腕の中で死ねて。
表面だけのつきあいで、内側から病んでいて。いつか壊れる、崩れる、そう恐怖していて。
実際に壊れ、刺され、もうこれ以上悪いことは起こらない。
欲しかったもの……「親友」の腕の中で、「親友」の涙に送られて、命尽きる。
マーさんの最期は、ある意味しあわせだったのでは。
さらに哀れなのは、ベンヴォーリオだ。
つづく。
ということで、勝手にわたしフィルターなふたりを語る!!
マーキューシオVSティボルト@マカゼ。
どっちのふつうの精神状態じゃない。破壊衝動、破滅衝動に駆り立てられ、ぶつかるふたり。
ベンヴォーリオは乱闘になってはじめて、仕方なく仲間たちを助け、またマーキューシオを止めに入る。
とまどったまま、ためらったままだから、その動きは鈍い。
ロミオ@れおんの歌う「誰もが自由に生きる権利がある」に耳をとめ、それに同調するわけだが……このときはじめて心が動いた、ってわけじゃないんだろう。
もっと前から、迷っていた。たまたまこのタイミングで肩を押されただけのこと。
今までことさらお調子者を装ってきた。お笑いキャラとして大袈裟に滑稽に振る舞ってきた。
でも、それは虚勢。
ほんとうのベンヴォーリオは。
マーキューシオの死は、実はベンヴォーリオに責任があるんじゃないか?
孤独なマーキューシオが破壊衝動に駆られていたのが、ベンヴォーリオに突き放されたせいだとして。
さらに、乱闘の最中、ベンヴォーリオは早々にあきらめているように見えた。
もっと力尽くで止めることができたのに、自分をあわれんだりなぐさめたりする気持ちがあって、死にものぐるいにはなっていなかった。なっていても、ところどころゆるんでいた。
もう無理だ、と立ち尽くす瞬間があった。
努力を手放す時間があった。
その間に、マーキューシオは動き、刺された。
いやあ、今回ベンヴォーリオとマーキューシオの関係性が、面白くて。
2個イチ扱いのベンマーが、ここまで別の立ち位置にいるってのが、わたしにとっては新しい。わたしにとっては、はじめて見る。
今思うと雪組のベンマーは、性格は正反対でも似合いの一対だった。クールでシニカルな知性派ベンヴォーリオ、ホットで好戦的、でも実は繊細なマーキューシオ。ふたりはまさに「親友」で、そこは終始一貫揺らがなかった。
今の『ベルばら』でアンドレとオスカルをやっていて、芝居の相性がやたらいいことが示す通り、中の人たちの芸風は違っても、方向性が違和感なく重なるんだろう。
でも星組Bのベンマーは、実は最初から親友ではなく……友情の名を借りた依存関係に思えた。
ベンヴォーリオもマーキューシオも、そのいびつさになんとなく気がついている。
忍び寄る死の影、的に。
「人」という字は、人と人が支え合っているのではなくて、もたれ合って依存しているのです、どちらかが倒れれば、共倒れになります。……そんな感じ?
微妙なバランスで成り立っていた、いびつな関係。
ロミオの裏切りで、ベンヴォーリオとマーキューシオの関係も壊れた。
ベンヴォーリオはすっかり腰が引けて話にならない、マーキューシオは苛つき、周囲に当たり散らす。共に話し合い、支え合って乗り越えなければならない大事件の最中、ふたりは共に手を放した。
もともと支え合ってなかった、相手のためでなく自分のためにもたれかかっていただけだった、だから有事にはまず自分を守ろうと相手から手を放した。……そしたら、ふたりとも、崩れた。
とはいえ、互いを愛していないわけじゃない。
ベンヴォーリオもマーキューシオも、ちゃんと相手のことは思っている。事務的に利用していただけじゃない。
ただきちんと発達していなかった。成長の過程で築くべき人間関係が、構築出来ていなかった。
それはたぶん、ヴェローナのせい。「生まれたときから敵がいる」状況で、是非もなく敵を憎まなくてはならない環境では、健康に発育しなかった。
とりあえず味方同士で固まって、「敵」を攻撃していれば、誰だって「仲間」になりた、「親友」になれた。
そうやって外側だけ出来上がり、内側がついてきていないことに、気づいていなかった。
ベンヴォーリオとマーキューシオ、どちらも、哀れだ。
泣きそうな顔で途方に暮れているベンヴォーリオ。苛つき、破壊衝動に身を任すマーキューシオ。
どちらも、ひとりぼっち。
いずれ、こうなる運命だった。いびつな友人関係だった、性格も価値観も違いすぎた、それでも依存することで一緒にいた。
ロミオとジュリエットの結婚で、ベンマーの依存関係は壊れた。
ふたりは別の方向を向いている。
マーキューシオの孤独が痛い。
ひとりぼっちだとわかってしまった、認めてしまった。
ロミオははじめからマーキューシオのことなんかものの数にも入れていないし、ベンヴォーリオはマーキューシオが必要とするだけマーキューシオを愛してくれていない。
彼の欠乏感、飢餓感は、すべてティボルトへぶつけられる。
「ヤツは俺を昔から蔑み、憎んでる」……マーキューシオの言葉は、ティボルトへ向けられたモノなのか。や、もちろんそうなんだけど。
無意識の領域で、別の人間に言っていないか?
ロミオに? ベンヴォーリオに?
あるいは、自分自身に?
破滅は必定。
ティボルトへ向けた刃は、自分自身へ。
ある意味彼は、解き放たれたのかも。
ずっとずっと彼をむしばんできたゆがみ、孤独から。
うれしかったろうな、ロミオとベンヴォーリオの腕の中で死ねて。
表面だけのつきあいで、内側から病んでいて。いつか壊れる、崩れる、そう恐怖していて。
実際に壊れ、刺され、もうこれ以上悪いことは起こらない。
欲しかったもの……「親友」の腕の中で、「親友」の涙に送られて、命尽きる。
マーさんの最期は、ある意味しあわせだったのでは。
さらに哀れなのは、ベンヴォーリオだ。
つづく。
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