やっと……やっと……まぁくんに、佳作がキターー!(感涙)

 抜擢が早くて、えんえん新公主演して、えんえんバウ主演していたまぁくん。
 劇団がどんだけ売り出したくても、どんだけ人気をつけたくても、「売り方」と「作品」が悪ければうまくいかない。
 本公演では年功序列でいなくてもいいよーな端役、新公と別箱では主演独占、って「間違った売り出し方」の見本。
 本公演で端役だと「一般客」は目に留めない。新公と別箱公演は「一般客」は観に行かない。ライト層にファンや好意的な人が増えず、偏った劇団の姿勢に対する不満や疑問により、組ファン内にもファンや好意的な人が増えにくくなる。
 この魔のスパイラルを脱するのは、「作品」。
 「一般客」が「観に行こうかしら」と思うほどの「良作」を別箱でやる。バウなんて基本、ファンしか観に行かない。一般客の重い腰を上げさせるのは、「作品」だ。
 なのにまぁくんはバウ主演作品も駄作続き。「売り方」が間違っていて、その上「駄作」ばかりって……劇団のプロデュースのヘタさがあからさますぎてこわい。

 ようやく、まぁくんに良作が来た。
 作品が破綻しておらず、主要キャストがキャラ的にも実力的にも役に合っていて、「タカラヅカ」的に正しい世界観で、主人公がちゃんとかっこよくて物語の中心にいて、恋愛していて、美しい物語。

 ようやく……ようやく、まぁくんに……。(感涙)

 期待の星、上田久美子先生の新作、『翼ある人びと―ブラームスとクララ・シューマン―』
 もちろん初日に駆けつけました。

 相変わらず、予備知識なし。
 その上、毎度のことながら無教養ゆえ、ブラームスもクララ・シューマンもよく知りません。ちゃんと史実や知識として知っているのではなく、フィクションから得たんだと思うが、「えーと、先生の奥さんと恋愛しちゃう不倫話だっけ?」ぐらいの、とてもいーかげんなイメージを持っているのみ。
 で、不倫上等(『ベルばら』が至宝の劇団)のタカラヅカですから、なんのタブーも感じず、「まぁくん、不倫モノやるんだー。ロマンねえ」と思いました。
 三角関係は恋愛モノの王道、よろめきモノは需要高いっしょ? ヅカの主な客層は女子高生ではなく、高いチケット代を支払える大人の女性だから。テレビドラマを見回しても、大人の女性ターゲットの、主婦が年下のイケメンにときめく話があふれている。
 まあそんな、無知丸出しの意識で劇場へ行きました。

 不倫話とちがったんか……!

 わたしがどっかで見知っていた話は、ふつーに不倫だったぞ? どこでナニを見たんだ……?

 や、ブラームス@まぁくんはクララ@うららちゃんを愛しているので、不倫っちゃー不倫の範疇ですか。でも、いわゆる「不倫モノ」ではない。
 そうすることも出来る設定だから(史実云々ではなく、立ち位置)、不倫モノや三角関係が得意な「タカラヅカ」なら、フィクションとして「大恋愛モノ!!」として盛り上げることはできたと思うんだ。
 でも、そうはしなかった。

 ドロドロの不倫モノにしちゃった方が、わかりやすく盛り上がったろうに。
 恋愛を超えたところにテーマがあるから、ある意味地味になっちゃったかなとは思う。

 名声はある、しかしすでに「過去の人」になりつつある作曲家シューマン@ヲヅキのところへ、無名の若き音楽家が訪ねてきた。みすぼらしい上に無愛想なその若者……ブラームス@まぁくんは言葉以上に「音楽」で語る。ブラームスの才能に惚れ込んだシューマンとその妻でピアニストのクララ@うららちゃんは、自分たちで彼を世に出そうと考えた。
 シューマン家に住み込むことになったブラームスは、シューマンの弟子として、家族のひとりとして、愛と音楽に満ちた日々を過ごす。そして彼は、年上のクララに惹かれていくわけだ。

 まぁくんが、カッコイイ。

 繊細な、野生の若き獣。不器用で、逃げ方を知らない。身をかわすことさえできれば済むことなのに、それを思いつかないから、敵の牙を自分の牙で受ける。そうして傷つく。血を流す。
 そんな、痛々しさのある若者。
 本物の才能と、それゆえの強さを、傷つきやすい繊細さの奥に潜ませている。
 ヨハネス・ブラームス@まぁくんは、その「野生」と「繊細さ」を美しさを持って体現している。

 つか、まぁくんに必要なモノは、前髪だってば。

 前髪のあるまぁくん最強!!


 うららちゃんが、美しい。

 大人のヒロイン、クララ・シューマン@うららちゃん。よかった。すっげーよかったっ。

 納得の美しさ。
 期待するだけの美しさ。
 この「美しい」物語には、絶対的美貌のヒロインが必要なの。脚本上でだけ「美しい」「美貌」と繰り返されるのではなく、客席からひと目見て「美しい!!」と瞠目する、その力が必要なの。

 美しいだけでなく、落ち着いた、品がある。
 凛とした潔さがある。
 そして。
 静かな、哀しみがある。

 美しい音楽そのものが、カタチになったような女性。

 見事です、うららちゃん。

 いやもお、これで歌がなければ、完璧だった。

 歌い出した途端……大変なことに。
 最初のソロは椅子から転げ落ちるかと思った(笑)。歌唱力の不自由な人の多いタカラヅカでも、椅子から落ちそうになるソロって、実はあまり多くない。
 えーと、最後に椅子から落ちるかと思ったのは、中日のちぎくんソロか……ああ、もう1年も前になるのね。
 前日の花組大劇場公演初日でも、蘭ちゃんの歌にかなりびっくりしたけれど、同じくらい破壊力のある歌だったとしても、クララというキャラクタとその見事な演じっぷりゆえに、落差を大きく感じてしまったのだと思う。

 とにかくすごかったのは最初のソロで、その他の歌はマシになっていっていたので、きっとこれから良くなっていくのだと思いたい。


 そして、ヲヅキ。
 ああ、ヲヅキ。

 ヲヅキが、すごすぎる。

 光と闇を彷徨う、ロベルト・シューマン@ヲヅキ。
 あたたかくやさしい、そして人間らしい脆さを持った人。

 主人公のヨハネスは、路線スターならある程度誰でも演じられる役だと思う。(もちろん、その人ならではの魅力によって色づけされるので、まぁくんのヨハネスが魅力的なのはまぁくんだからで、替えが利くという意味じゃない)

 だけどロベルトは……この役は、マジに「芝居」ができる人でないと、無理だ。
 演技力、表現技術、男役力。
 加えて、「温かさ」と「やわらかさ」。

 ヤン@『銀英伝』のときもそうだけど、ヲヅキの持つ「やわらかさ」が、唯一無二の力を発揮している。

 最初の「良き父・良き夫」である姿や、「師」としての寛大さ、「芸術家」であるがゆえの子どものような無邪気さ。
 そこから「闇」に浸食されていく姿、ラストの「闇」を抜け「聖」にたどり着く姿。

 すげえ。


 ヨハネス、クララ、ロベルト。
 この3人を、よくぞこのキャストにした。
 そして。
 よくぞ、演じきった。

 すごい。

 『翼ある人びと』マジすごいって。
 まぁくんにようやく良作キターーッ!

 …………『CODE HERO』でなく『翼ある人びと』だったら、まぁくんのジェンヌ人生も違ってたかなあ。

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