『心中・恋の大和路』は、名作である。すばらしい作品であり、今回の再演もすばらしい公演だった。
 ……というのは前提として。

 初日に感じた違和感を、どうやって伝えよう。つか、どう説明できるだろう。
 組子たちの演技は期待よりはるかに良く、雪組あっぱれ!な気持ちだった。
 首をかしげたのは、えりたんとまっつの演技に、だ。

 わたしはえりたんの忠兵衛に、とてもわくわくしていた。えりたんならきっと、愉快な忠兵衛になると。
 愉快ってのは、笑えるってことではなく、魅力的な、興味深い、という意味だ。
 特に、1幕のクライマックス、封印切場面なんて、えりたんの暴れん坊キャラと相まって、さぞや素敵になるだろうと。
 わくわくしていたけれど……実際に観てみると、なんか、チガウ。
 16年前は封印切でダーダー泣けたんだけど、今回は首をひねっているうちに終わっちゃうし。
 なんなんだ、この違和感……。

 えりたんへの違和感は、結局初日では答えが出なかった。

 そして、まっつ……。

 まっつの仕事には、いつも全幅の信頼を置いている。どんな役でも堅実に仕事をするだろうと。
 でも実際に観てみると。

 なんかチガウ。

 とにかく登場した瞬間から「おおっ」と思った。
 八右衛門は場が温まってからわりとさりげなく……つーか、モブっぽく登場する。
 話の中心が忠兵衛と与平@かなとくんで、そこだけを観ていると「いつ出てきたの??」てなもんで、メインの横から口を挟む人で、ジャジャーン!!という登場はしないので、演出だけ観るとメイン人物とは思えない。
 そんな登場の仕方で、舞台奥の忠兵衛と会話をするため、客席からは顔もろくに見えない。後頭部や横顔ばかり。
 なのに、みなぎる、「トクベツ」感。
 なんか「トクベツな人」が出てきましたよ。
 わたしはまっつファンなので、単純によろこんだ。わーいまっつだ。まっつが出てきて喋ってるー。相変わらずイイ声ー。
 なんかまっつ、存在感増したなあ。声の通りが群を抜いてる。ひとりだけなんか、格が違う感じ。
 ……ヲタなので、最初はよろこんだ。
 が。
 この格の違いってゆーか、世界の違いってゆーか……あれ?
 まっつって……こんなだった?

 みっちゃんによく感じる「格別さ」だった。
 みっちゃんはうまい。特に、声の良さは半端ナイ。タカラヅカ的かどうかはともかく、存在が派手で押し出しがいい。……押しつけがましいともいう。
 それはみっちゃんの個性で、良い方に作用すれば大きな武器になる。マイナスに作用すると、空気を読まない舞台クラッシャーだが。

 その、みっちゃんと同じ格別さを、まっつに感じる……。

 うまいよ。めっちゃうまいよ。
 でもさ、個人が巧いことと、「芝居をする」ってことは、チガウよね?
 君が巧いことはわかるし、自分でも巧いと思ってることもわかるし、びんびんに伝わってくるけど……君ひとりで芝居してるわけじゃないから!! 他を置き去りにしていいわけじゃないから!!

 びっくりした。

 まっつというと、地味なまでに役目忠実に、脇の芝居をする人じゃん?
 周囲から浮き上がるよーな、押しつけがましい芝居する人じゃないし、そもそもそんなこと出来なかったよね?
 巧くても、地味。地味だから、浮かない。むしろ、舞台世界に沈む。
 悪目立ちするって、ナニゴト。

 所詮わたしはヲタなので、まず、感心した。
 『BJ』で真ん中経験したのは、伊達じゃないな。と。
 まっつ、すっげ真ん中芝居してる。
 まるで主役みたいな芝居。ふえー、こんなこと出来たんだー。つか、出来るようになったんだー。
 今までは、やれっつっても出来なかったじゃん? なのに今ここに来て、すげー真ん中芝居だわー、みっちゃんみたいだわー。みっちゃんはこの押し出しの良さがあるからこそ「スター!!」なのが納得なのよねえ。
 進化してるんだねえ。出来なかったことが出来るようになってるんだねえ。階段を上がってるんだねえ。
 と、最初は感心。
 そして。
 次に、アタマを抱えた。

 ダメだろ、これ。

 どーしちゃったの、まっつ。こんな空気読まない俺様芝居。
 たしかに目立つよ、目立ってるよ、格別だよ、ひとりだけすげーよ。

 まっつは暴走してるし、えりたんはそれに負けずトバしてるし。
 なんだこの芝居……。

 初日はわたし、けっこう混乱してた。

 こんなまっつははじめてで、新しいまっつ!ってことで、ヲタ的には注目で、いいっちゃいいんだけど。
 まいったなあ。泣く気で来たのに、泣けない……。

 それが、汝鳥サマとあゆっちの場面で一気に決壊、泣きました(笑)。
 やっぱ汝鳥サマすげー。

 えりたんとまっつはよくわかんないけど、汝鳥サマとあゆっちはいいわー。
 ……てなもんだったのが、ラストのまっつの絶唱に、全部持って行かれる。

 全編通して違和感に首かしげてたんだけど、全部吹っ飛んだ。
 まっつらしからぬ、すげー歌だった。


 違和感過ぎてわけわかんないけど、とにかくこのメンバー、この舞台がすごい力を持っていることはわかる。
 それで初日を観たあと、「わたしが神様なら、『心中・恋の大和路』メンバーで、あと何公演か興行させるのに」とべそべそやってたんだな。(初日感想参照)

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