つれづれに『かもめ』感想。
 初日観たあとにだだーっと書いたメモ書きを元にしてあるんで、文章のつながりがいつもにも増して独善的。自分だけにわかればいいてな、不親切な書き方だけど、再構築する気力がない。
 のでそのままUPする。


 とにもかくにも、トリゴーリン@みっきぃがカッコ良かった。

 なにあの悪い男。
 悪人ではなく、悪い男。

 悪意の欠如、あるいは欠如していると本人が思っていること、それこそがいちばん大きな罪である。
 や、罪という言葉は近くないな。違うんじゃなくて、遠いんじゃなくて、近くない。

 迷惑。
 そう、傍迷惑っす。

 これはみっきぃに限らず、登場人物全員にいえること。つまりそれは、人間すべてにいえること。ああほんとに意識の向きってば難しい。人間は難しい。

 や、ともかく。
 この「悪い男」を演じて、「悪人」にならないところが、みっきぃの功績。てゆーか、トリゴーリン、めちゃ魅力的ですがな。

 みっきぃはイイ男になったなあああ。
 昔は美形ゆえに顔立ちのキツさが目立って、ある種たくらみ顔に見えたんだけど。意欲が空回っていたというか。
 昔に比べて頬が削げ、ラインでいえばますまずシャープになっているにも関わらず、芸風にはまろやかさが出てきた。
 ゆるさというか、遊びの部分。遊びってのは、正解の線一本だけじゃなく、こっからここまで揺れてイイ幅があるとか、そっちの遊びね。

 トリゴーリンの「悪さ」は、カテゴリを超えたところにあると思う。
 人物紹介に書く描写、以外の部分。そこからこぼれた部分。
 言葉にならないエラーなところが、彼の魅力を色濃くしていると思う。

 彼が愛されキャラなのは、彼が小説家だからでもなく美形だからでもなく、もっとどーでもいい、ささやかで、そしてどうしようもなくいびつな部分ゆえだと思う。
 こーゆー芸風に開眼した男役は強い。トリゴーリンをおかしくかっこよく、愛すべきキャラとして昇華したみっきぃの男役としての可能性にわくわくする。

 やっぱアレだなー、「きらいきらい、だいきらい!」って泣きながら抱きしめずにはいられない男ってさー、大人ヲトメの永遠の王子様だよなー。白馬の王子ぢゃなくてさー、王子なんだけどダメ男でさー、ダメさはキャラによっていろいろなんだけど、とにかく少女のころ夢見た完全無欠の王子様像とは違ってて、だけどやっぱり王子様でしかないっていうさー、たまらんよなー。

 てことで、みっきぃ氏が好み過ぎてたまりませんでした。はい。


 主要4役のうちのひとりがコロちゃんだと聞いたときから、え、それってつまり、コロちゃん無双状態になるんじゃないの? と思ったんだけど、舞台観てやっぱり、思った通りだった。
 アルカージナ@コロちゃんの無双っぷり。

 なんかわたし、最初から最後まで、『アンナ・カレーニナ』を思い出していた。
 なつかしいなあ、あれって何年前?
 主演が丸顔かわい子ちゃんな男役で、ヒロインが美人顔の芸達者で。どいちゃんがしぶくて、そしてコロちゃんが堂々たる女役っぷりで。

 コロちゃんの役は『アンナ・カレーニナ』の公爵夫人とはまーーったくキャラがチガウんだけど、出てきた瞬間から強いデジャヴ。
 こういう「強い」役をやるコロちゃん、わたしにとっては久しぶりで、なつかしかったからだと思う。強いっていうのは性格がではなくて、作品に置ける根っこの太さみたいなもん。

 大役を自在に呼吸するコロちゃんは見ていて気持ちいい。
 ここまで出来る人なんだから、他の公演でも役割が欲しいと思う。

 ただ。
 なんていうんだろう……主演のことちゃんと、あまり合ってなかった気がする……。

 コロちゃんと、シャムラーエフ@美城れん氏の芝居が、この作品のまとまりに待ったをかけていた……気がした。

 ふたりがずば抜けてうまい、ということだけではなくて。

 うまいというなら、ソーリン@ちーくんは浮いてない。ことちゃんと呼吸が合っている。
 そういう役だから、ということではなくて……いや、役の関わり合いのせいもあるんだろうけど……しかしちょっと違和感あったなー。


 ヒロイン、ニーナ@みれいちゃんは、うまかった、かわいかった。
 ジュリエットより若返った気がする(笑)。
 それとも、ことちゃんとの年齢差が縮まった?

 ニーナに視点を合わせて描かれていなくても、彼女が出て来るたびに彼女のドラマがわかる。
 この子のドラマをもっと観たい、と思わせるのがいいよなー。トリゴーリンもそうなんだけど、「このキャラ主役に観てみたい」と思わせてくれる断片っぷりが気持ちいい。
 や、実際に彼ら主役だと、それはそれでめんどくさい話になりそうだが。(ニーナやトリゴーリンを「主役」として「今の魅力」と同じモノを描くのは、作る側にすっげー力量が必要なはず)


 マーシャ@はるこちゃんが相変わらずいい女優っぷりで……うわああ、この子やだあ、たまらんー。
 出てきた瞬間から「ドラマ開始」するんだもん。きっちり世界観背負って登場するから、意識がそっち行っちゃって、戻って来にくくなるんだもん。
 主役が登場しても、「さっきの喪服の美女はどうしたのかしら」って、散漫になっちゃうんだもん。

 マーシャに惚れてる残念なハンサムくん@せおっちがまた、素敵に残念でなあ(笑)。余計に彼らの物語が気になるのよ。
 てゆーかわたしの辞書、「世界観瀬央って」って変換するのやめてよ、見直さなかったらそのままUPしてたわよ(笑)。

 はるこちゃんとせおっちのカップルが、いろいろツボ過ぎて……うおお、あのヘタレわんこな田舎教師、わたしにください~~。


 タカラヅカとしてこれを観たいかというと「べつに……」だけど、贔屓が出ている・贔屓組公演であるってことでリピートする分には、楽しいと思う。
 繰り返し観ることによって発見があり、自分の視点を見つけて楽しめるだろうから。
 それって原作がそうだからなの? 小柳タンの力なの? そのへんの区別がわたしにはつかない。
 わたしならもっと、タカラヅカ寄りの仕掛けをして、とっつきよくして、その実けっこー泥沼的中毒性あるのよって方向で仕掛けを考えたかな……って思って、あ、それってなんか景子タンっぽい、と思った。景子せんせならもっと、景子せんせならではの「クリエイター視点!!」を押し出してくるだろうなと。
 んー、ああいう理屈っぽさとくどさが、わたしは欲しかったのかもしんない?


 あと、わたしは初日しか観ないけど(とゆーか、観られない、だってチケ難公演なんだもん!!)、このまま回を重ねてお笑い部分が突出したら嫌だなあ、と思った……。
 一部、「笑うために笑う」空気を感じて。

 やるせなさや滑稽さはいいんだけど、客席ウケを目的に大仰になっていったら、そーゆーのは苦手だなあ。
 初日は笑いさえも手探り状態だったので、そこがこなれてくれるのはいいんだけど。
 わたしの杞憂かもしれないし、そもそも大仰に道化てどっかんどっかん爆笑を誘うのが正しいのかもしれないし。
 や、ただの好みの問題っす。

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