花組中日公演『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』初日観劇。

 ……最近とみに日付の感覚がなくなってて、「みりおくんのプレお披露目公演」はまだまだ先だと思い込んでました。漠然と、「まず雪組公演があって、その途中から花組公演がはじまる」というおぼえ方。間違ってない。
 んで、はじまった雪組公演に走り回って。
 ふとスケジュール帳を見ると、6月12日がぽっかり空いている。休みを取ってある、のに、チケットはナニも持ってない。なんでこの日、まるっと空けてあるんだろう? でもまあ、たぶん雪組を観るつもりだったんだろう、と「雪」シールを貼り、「当日券」と書き込む。
 その翌日だかなんだかに、友人がタカラヅカニュースについてつぶやいているのを読んだ。花組『ベルばら』のことを。
 …………?
 『ベルばら』……?

 は……っ!!

 あわてて、確認する。
 6月12日って! 花組初日じゃん!!

 いやあ……びびりました……。

 あんだけ観に行く気満々で、ひと月も前にスケジュール空けてたくせに。
 のーみそもハートも許容量オーバーで、ぽろっと抜け落ちてたみたい。
 や、抜けていたのは、日付感覚。
 みりおくんのお披露目と、だいもんアンドレのことはずっとアタマにあった。
 でも「蘭寿さんが卒業したの、ついこの間だし」という気持ちがずっとあったしなー。
 そ、そうか、もうらんとむさんラストディからひと月経つのか。

 んで、あわててチケット探して。
 日付感覚ほんとにおかしくなっていて、「え? 今日何日だっけ? 今からチケットって無理過ぎね? あれ? 明日が12日だっけ?」と、アタマを抱えたのが9日。……9日の翌日は12日じゃないっすよ……。
 仕事とムラ通いとで日常もなにもあったもんじゃなく、わけわかんなくなってる……。

 それでもなんとか、チケットと近鉄の優待券を押さえて。
 スケジュール帳の「雪」シールをはがして「当日券」の文字を消し、「花」シールを貼りました。


 ともかく、GOGO名古屋!
 行き慣れた旅程、片道4時間!

 みりおくん、トップお披露目おめでとう。

 なんで『ベルばら』、なんでみりおくんでフェルゼン。その思いはあったけれど。
 実際に観てみて、目からウロコが落ちた。

 中日版『フェルゼンとマリー・アントワネット編』ときたら、雪組『フェルゼン編』の焼き直しだった。
 目が点。
 2006年の星組『フェルゼンとマリー・アントワネット編』を焼き直すんだと思っていたよ……。雪組『フェルゼン編』は大駄作、星組『フェルゼンとマリー・アントワネット編』はまだずーっとマシな作りだった。タイトルが『フェルゼンとマリー・アントワネット編』なわけだし、ずっとマシだった星組版をやるんだと思った。何故、わざわざ超駄作の『フェルゼン編』をベースにするんだ……。

 うん、なんとなく、想像はしているんだ。
 植爺はもう、昔の作品はおぼえていないんじゃないかって。
 タイトルが『**編』となっていたって、何年も前の『**編』のことは、おぼえてないし、また資料探して記憶の掘り起こしをするのはめんどくさい。
 それよりも、直前に上演した『※※編』ならまだおぼえてるし、いちいち勉強しなくて済む。だから『**編』であっても、『※※編』を使う。
 宙組『オスカル編』だって、2006年の雪組『オスカル編』は使わず、直前の月組『オスカルとアンドレ編』や数年前の外伝ベースだよね。
 だから今回も、直前の『フェルゼン編』。

 最悪の『フェルゼン編』ベースで、他にもいろいろいろいろ問題山積みで。
 うわ、みりおくん、大変……、と嘆息した。

 それでも。

 みりおくんの、「主役力」に感服した。

 えーらいこっちゃ!になっているのに、その真ん中でみりおくんが、舞台を牽引する。

 なまじわたしは、『フェルゼン編』をアホほど観ていて。脳裏にいろいろ焼き付いているわけで。
 その記憶と二重写しになる「フェルゼン」を、考える。

 えりたんのフェルゼンは、あまりにもえりたんだった。
 タカラヅカの「フェルゼン」という人は、明らかにおかしい。最悪な人間だ。
 だがその最悪さを煙に巻く必要がある。観客に最悪だと気づかせてはならない、観客をムカつかせてはならない、とても難解なミッションがある。
 えりたんは、ハッタリと本人の持つ飄々としたキャラクタゆえに、見事に煙に巻いた。よくわかんないけどアリでしょこの人! と、思わせた。
 いわば、変化球だ。
 どどーん! とか、ばばーん!! とか、少年マンガの描き文字みたいな効果音の似合う、素敵キャラ。破天荒な現実味のなさで、煙に巻く。

 それに比べて。

 みりおフェルゼンは、正統派ヒーローだった。

 正しく、「真ん中」。
 貴公子。王子様。ヒーロー。
 白馬に乗って囚われの姫君を助けに来る系。

 うっわー……。

 口ぽかーん状態っす。
 これが、「フェルゼン」……。
 正しき「真ん中力」で押し切る姿。

 どんだけおかしな台詞を言わされていても、みりゼン様が言うと、「そうなんだ」と思えてしまう。
 有無を言わせぬ、説得力。
 だって彼はヒーロー、だって彼は主人公。世界は彼を中心に回っている。

 フェルゼンが抜き身の剣みたいに、間違った世界をまっすぐに貫き、よそ見をしている暇がない。
 エクスカリバーを抜いたアーサー王を見るような気持ちだ。
 彼の足元に跪き、正しき王を讃えたい。

 植爺による間違いまくった台詞や倫理観を、「この人変。あきらかに変だけど、ま、いっか」と思わせるのがえりたん。
 そして、「変なことを言ってる? ううん、この人は正しいことを言ってるんだわ!」と思わせるのがみりお。

 すげえ……。

 えりたんの、えりたんならではのファンタジックなフェルゼンもいいけれど、みりおくんのヒーローなフェルゼンもいいわ。

 みりおくんは、真ん中に立つために生まれてきた人だなあ。
 そのことを、心底実感した。

 駄作を力技で支える! みりおくんは、タカラヅカのトップスターとしての最初の仕事を見事にこなした!!

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