『一夢庵風流記 前田慶次』を、ちょー個人的ツボ語りする。

 庄司又左衛門@がおりが、カッコよすぎる。
 良い役だなー、いい役者だなー。

 又左さんは原作由来のキャラだから、息子といつも連れ立って登場しているんだけど、このキャラクタのポイントは「二人連れ」ってことよね。
 ひとりだと、又左さんの格好良さはここまで出ていない。
 彼がひとりで登場してべらべらひとりごと言ったり、慶次@えりたん相手に聞かれてもいないことを喋り出したりしたら、興ざめ。男が下がる。
 相棒がいることで、会話が自然になり、情報伝達量が格段に上がる。
 ではその相棒はどんなモノでもいいのか、つーと、んなこたぁーない。やっぱ「男を上げる」には、「優秀な男」が「又左衛門を敬愛している」ことが重要。
 阿呆に惚れ込まれ、持ち上げられてもあまり意味はない。もちろん、微笑ましい図だし、その阿呆が愛すべき三枚目として機能し、場を盛り上げる効果はある(=慶次と重太夫@ともみん)が、それはあくまでも主役サイドで、尺を取ってその関係性を書き込む場合。短い出番と少ない台詞では、相棒が阿呆だと「あんなまぬけにしか認められてない残念な男」という印象になる。
 だから、出番が限られている以上、相棒は「優秀な男」がいい。「あんなに優秀な男が敬服し、付き従っているのか!」という付加価値大事。
 で、出番が短い以上、その「優秀な男」と又左さんの関係をくどくど説明するのは難しい。主従萌えというジャンルが形成されているくらい、ここは重要ポイントなんだが、「部下」だと、「なんで部下がいるの?」ってことになり、説明が煩雑になる。ただでさえ説明することが山ほどある舞台なのに、いらん設定と説明台詞は抑えたい。

 ということからも、「息子」ってのはうまい設定だよなー。
 「こちらは私の息子」とひとこと言うだけで、全説明完了。誰もそれ以上の解説を必要としない。

 や、原作が親子だからということじゃなくてな。庄司親子はオリキャラにオリジナルストーリー扱いだから、こういう描き方をしているのは大野くんだもの。

 又左さんのいちばん多い台詞は「甚内」、そして息子の甚内@かなとのいちばん多い台詞は「父上」、ってくらい、ふたりだけの世界。

 親子でなく、傀儡の衆の長と副官にした方が、腐女子向き設定だけどな(笑)。絶対同人誌出るレベルだけどな(笑)。
 でもここはストイックに親子で!!

 又左さんのいちばんかっこいいところは、わたし的にはラストの立ち回りよりも、いちばん最初の、刀を収めるところ!!

 加賀@ヒメ、国@さらさに鼻の下のばした慶次が反対に襲われちゃって、甚内が捨丸@みゆを取り押さえて、又左衛門は抜刀して慶次の背中を守って。

 緊迫した空気ののち、慶次が寝たふりしている重太夫に蹴り入れつつ訊問しているとき。
 観客がゆかいなともみんを見て大笑いしているそのときですよ、がおりさんがちょーかっけーの!! みんな、上手側のがおりさん見て!!

 無言で刀を鞘に収める姿が、ぞくぞくするくらい、かっこいい。
 おっさん役なのに。白髪入ってるのに。
 いや、おっさんだからこそ、白髪入ってるからこそ、かっこいいのだ!!
 若造ではないからこその、美しさだ。


 『一夢庵風流記 前田慶次』は、とても男性的な物語だと思う。男子の萌えがいっぱい詰まってるから。
 重太夫はまさに「男子向きエンタメのお約束キャラ」だし、この庄司又左衛門というキャラも、恥ずかしいくらいの「男の夢」まんまだ。

 又左さんがこんなキャラになっているのは、大野せんせ主導なのか、それてもがおりさんゆえなのか、知りたいところだ。
 というのも、又左衛門はあまりにも「男子の夢」であり、「女子向き」ではないためだ。

 ぶっちゃけ、この役、専科さんでもよくね? や、専科さんにこれ以上出て欲しいわけじゃない、組子だけで十分、がおりで十分、がおりだからいい。
 そうじゃなくて、「役」があまりにも「専科のおじさま」的。

 役として十分機能しているんだけど、それは男子マンガ的な意味であって、少女マンガとかタカラヅカ的には、ちょっとチガウと思うんだ。
 つまり。
 色気がない。

 庄司又左衛門という役の設定、台詞など、資料だけ渡されたら、もっと色気のある……なんつーんだ、「現役感」のある役を想像すると思うんだ。
 ここまで、男として「枯れた」感じじゃなくて。

 白髪交じりのおっさんでいい、傀儡の長としての重責や思うように生きられない挫折感でうちひしがれていてもいい、それゆえに道を誤ってもいい、……それでもなお、あるだろう、色気が。「美形悪役」的な。

 がおりんてば、なんでこうも枯れてるんだ……。
 本モノの専科のおじさまが演じているようだよ……。

 又左衛門が美形おじさまとして匂い立っていれば、またチガウと思うんだ。
 エロは雪丸@まっつ担当、と決めつける必要はない。色気には娼婦の色気と尼僧の色気と2種類あるんだよ、闇属性の色気はまっつに任せて、がおりんは心正しきゆえの色気を、又左衛門で出すべきだったんじゃないか?

 大野せんせが「又左は男の夢、女向けのフェロモン不要」と指示し、がおりさんは枯れた本専科さんみたいになってるの?
 それとも。
 がおりさんがふつーに又左を演じると、枯れてしまうの……?

 えーと。がおりで、エロエロな役ってなにか、あったかなあ?
 今まで見たことあったっけ……? 『ロシアン・ブルー』新公のラスボスとか……?
 『若き日の唄は忘れじ』の加治様……?
 (どれも大野作品)

 がおりんはとてもうまい人で、得がたい役者さんだと思っている。
 でもなんか、こういう「二枚目役」で、色気を出してこない芸風に、危惧をおぼえる。
 たとえばきんぐなんか、どんだけおっさん役でもちゃんと美形で色っぽいぞ? そういう「スターならでは」の部分をきちんと押さえてるぞ? 同期の朝風くんだって、悪役だろうと善人役だろうと、いつも必ず欠かさずエロいぞ?
 本当に枯れるのは、まだ先でいいじゃん。がおり、90期なんだから。まだ研11なんだから。
 おっさん役が出来るのは強みだし、これからの雪組、そしてタカラヅカに必要だけど、それはそれとして、美形役もおいしく調理出来る脂っぽさを持っていて欲しい。


 ……と言いつつ、今の枯れた又左さん、好きなんだよなー。
 がおり、ほんといい男だわー。だからこそつい、老婆心であれこれ言っちゃうのよ。

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