わたしにとってえりたんは、無属性の人なんだなあ。

 無属性。
 えーと、その、腐女子的に。
 受でも攻でもない。そーゆー対象にならない。
 ある意味聖域?

 『一夢庵風流記 前田慶次』を観てしみじみと、えりたんとちぎくんって、芝居が合わないなあ、と思う。

 というか、えりたんが特殊なんだと思う。

 誰とも交じり合わない、独特の色と光、そして質感。
 だからこそ彼はファンタジーであり、タカラヅカのトップスターに相応しい人だと思う。

(今の雪組内でえりたんといちばん芸風が合うのって、ある意味ともみんじゃないかとも思う……。それが正しい作用かどうかは置いておいて)

 ともかく。

 慶次@えりたんと助右衛門@ちぎくんの関係、って、すごく萌えだと思うのね。腐女子的に。
 てゆーか、ちぎくんの片想いぶりがすごい。
 ちぎくんはああいう演技似合うね。得意だね。
 でも、相手が悪い。
 相手がえりたんだと……から回る。

 クライマックスで助右衛門が慶次に「お前が好きだ」と言うから、腐女子的においしいとか、そんなことじゃない。
 むしろ、言わない方が萌えだ。言っちゃダメだろ、と思う。
 だから問題はそこじゃない。

 慶次ってさ、徹頭徹尾、一貫して助右衛門に「ひどい」よね?

 助さんがいちいち「慶次ラブ」って言動に表しても、慶次は一切応えない。てゆーか、全スルーする。

 いちいち。ひとつひとつ。ご丁寧に。

 ここまでやったらわかるだろ? オレはお前の気持ちには応えられないんだよ、てゆーか困ってんだよ、迷惑なんだよ、な、わかれよ?

 でも助さんはまーーったく、へこたれない。

 鈍感なの? バカなの? わかっててそれでもやってるの? え、それってすでに嫌がらせの域?

 という、ふたりの関係。
 「だって私たちは、莫逆の友」(奥村助右衛門・談)


 まず、最初の場面。
 助さんは慶次に「しばらくふたりで飲みに行っていない」と言う。慶次は「厄介者(慶次)がご家老様(助右衛門)を誘うのはなにかと面倒だ」と答える。
 はい、1回目、断りましたー。
 助さんはまったく意に介さず、「面倒でも誘え」と言う。それに対し慶次は、スルー。返事をしない。
 はい、2回目、断りましたー。
 ふつー、1回誘って断られ、重ねて誘ってスルーされたら、わかるよな? 空気読むよな?
 慶次は話を変えて、助さんに笛を吹いてくれと言う。この話の流れでコレって……。
 「これ以上絡まれると面倒だから、喋らせたくない」ってことだよな?
 ちょ、慶次ひどい!! これって3回目の拒絶だよね?
 なのに助さん快諾、それどころか「お前の茶は美味いなあ」……ダメだこの人、まったく堪えてない!! てゆーかこの状況で料理の腕(お茶だけど)誉めるとか、女の子口説くときの常套手段をしれっと使ってますよ!!
 で、それに対して慶次、2度目のスルー入りましたーー!!
 返事しないの。「キミ料理うまいね。一生キミの手料理が食べたいなあ」てな男に、笑顔だけ返して、答えない。黙って部屋を出て行く。

 な、なんなのことのふたり!!
 このやりとり、というか、攻防戦?!

 そして、利家@にわにわと一悶着、慶次は金沢を出ることになる。
 ここでまた、駆け引きスタート。
 旅立つと言う慶次に、「私まで共に行きたくなる」と助さん。
 えーと、これって「貴方と駆け落ちしたい」って意味よね?
 もちろん慶次、華麗にスルー!!


 物語最初の場面からすでに、ふたりの駆け引きのものすごさに、息も絶え絶えでしたよあたしゃ(笑)。
 てか、慶次ひどい。
 ここまでいちいち、否定して回らなくてもいいだろう?

 キライなの? 助さんのこと、そんなにキライなの?!!

 いや、嫌いではないんだろうが、線引きがはっきりしている。
 ここまではいい、でもこっから先は、入ってくんな。

 つまり。
 友だちならいいけど、それ以上は勘弁な。ホモとかオレ、マジ無理だから!
 って……、……慶次……。

 万事この調子だもんなあ。
 くだんの「私はお前が好きだ!」にしても、慶次、華麗にスルー!!

 絶対、答えない。
 是非も可否も、絶対口にしない。むしろ、聞かなかったことにする。
 助右衛門の言葉自体、「なかったこと」にする。

 徹底してるわ……。

 ここまで無視され続けて、まったくへこたれない助さんもまた、すごすぎる。


 ああほんとーに、ほんっとーにわたしは、口惜しい。
 これでこれで、慶次が、えりたんでなかったら!!
 他の役者さんならきっと、萌え狂っていたと思うの!
 こんなオイシイ設定ナイよ?! 最高の萌えシチュエーションよ?!
 またちぎくんは、この空回りラブが板に付いてる。つか、めっちゃ得意! 不幸で報われなくて、ひとりじれじれ蒸れているのが、最高に似合う! よっ、このM属性!! 硬質で潔癖そうなのに、漏れる色気、誘い受の極意。
 しかし。

 相手が、えりたん……。

 えりたんは、チガウの……。
 薔薇とか耽美とかとは、別の次元にいる人なの……。

 健康に鞭を持って爆笑してるのが似合う人なの。丸首白シャツ着て青空の下で素振りしているのが似合う人なの。

 や、他の人にとってどうかは知りませんが、わたしにとって。
 ダークで救いのない美しい世界を、ぴかー、とか、ぺかー、とかいう光で照らし、そこでうずくまって泣いていたわたしを、救い出してくれる人なの!!

 らんとむが戻って来てからどーんと大人になり、まとぶ時代の弟キャラ、トゥスン@『愛と死のアラビア』やデイヴィッド@『麗しのサブリナ』とは別の人になっちゃったけれど、それでもえりたんはえりたんなの。
 他の誰ともチガウ、特別な光を持った人。

 ちぎくんのBLオーラとは相容れないっ!!


 慶次はえりたんでなきゃあり得ないと思っているけれど、対助右衛門だけは、えりたんはチガウと思う……。
 いや、えりたんを中心に考えるなら、ちぎくんの助さんが「チガウ」ってことになるのか? 大野くんはどう思ってあんな脚本演出にしてるんだ?

 考えてみれば、えりちぎががっつり芝居で組むの観るの、はじめてか。
 プレお披露目の『若き日の唄は忘れじ』はまだそこまで思わなかったし、逸平役はちぎくんに合ってなくて、ちぎくんが大変そうだった。(ともみんにぴったり合う役は、ちぎくんのカラーじゃないよな)
 『ベルばら』はカウント外だし、『Shall we ダンス?』はちぎくんが女役で、しかも恋愛モノでもない。
 えりたんの相手役って、ずーーっとともみんだった印象……。そして、ともみんが合うってことは、ちぎくんはチガウということ……。(対照的な同期)

 なんか、最後の最後で、「あー……そっかぁ」って感じだ。
 ちぎくんはいっそ、えりたんの敵役をやる方が映えたんじゃないかな。

 まあともかく、わたしは腐女子なので、このキャスティングは残念であり、また、愉快でもある……。

 えりたんのえりたんらしさ、ちぎくんのちぎくんらしさが、これでもか!!と際立って見えるから(笑)。

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