初日からずっと、「雪丸様、わけわかんねえ(笑)」と書いてきました。
 稲妻とともに登場して、すっげえ大物感ゆんゆんなのに、やってることバカっぽいし、女の子と力比べして負けるし、腕斬られたぐらいで取り乱すし、黒幕の名前連呼して台無しにするし。
 「なにを致すのかは、この傷が教えてくれよう」とか、思わせぶりなこと言ってるくせに、やってることむちゃくちゃだし。

 脚本の粗を全部押しつけられちゃったんだろうなあ。
 わけわかんない人になってるなあ。
 でもま、かっこいいから、いっか。
 てな人だった、雪丸様。

 それが、『一夢庵風流記 前田慶次』東宝千秋楽。
 すべての線が、つながった。

 納得がいった。
 答えを得た。

 わけわかんなかった、すべてのこと。

 楽の数日前から上京、ヅカ三昧まっつ三昧な日々を送っており、ラストスパートに入った雪丸様の演技がますます磨き抜かれていたことは、わかってたんですが。
 方向性としてそちらに向かっていたことは、わかっていたんですが。

 ラストアクトにて。

 雪丸様の狂気が、ハンパなかった。

 あ、この人、狂ってる。

 まともに見えるし、実際ちゃんと生活……というか、忍びの頭領もやれてるんだけど。
 根っこのところが、最初からすでに壊れてる。

 この人が引き起こした一連の出来事、行動は、そういうことなんだ……。

 てことで、2014年8月31日に、わたしが見た雪丸様@まっつ像語りの続き、行きます!


 雪丸のキャラクタがもっとも出るのって、加奈との場面だと思うのね。
 本心が見える場面というか。
 だから、「セクシー立ち回り」と「Wラヴシーン」が重要なの。ここでの雪丸様は、最高に美しく色っぽい、というだけでなく、本心が垣間見えるから。

 わたしはいつもまっつをあなどっているというか、毎回「ごめん」な気持ちになる。わたしが思っているよりすごいものを、彼はどんと出してくるんだなこれが。
 今回もそうだ。
 退団公演だし、なんかめちゃくちゃな役だし、これが限界……というか、ここまでやってくれたらもう十分だよな的な枠を、わたしは勝手にはめて見ていたらしい。
 差し出されるモノで十分、楽しかったし。
 不満があるとすれば退団することだけだもん。それさえなかったら、なんの問題もない出来。

 なのに。
 最後の最後に、すごいもんキタ。

 芝居で、演技で、ここまで表現するのか。

 加奈と指を「ぎゅっ」と握り合ってセリ下がっていく雪丸様を見て、死にそうになった。

 あたし今まで、なにを見ていたんだろう??

 この芝居は、雪丸の物語だ。
 カットされまくったそうで、雪丸の出番も見せ場も当初の台本とは掛け離れ、わけわかんない変な人になっているらしいよ、ひどいよ大野くん! でもま、エロ見せ場があるからそれでいいか、てな落とし方ではなくて。
 そんな半端な描き方しかされていないのに……中の人は、まっつは、ガチに勝負懸けてる。
 「雪丸」という男の生涯を、描いている。

 加奈との場面だけで、「雪丸」の人生を浮き彫りにしてきた。

 そのまっつの芝居に、まさに雷に打たれたようになった。
 心臓ばくばくアタマがんがん、涙でオペラグラスが曇る。
 アタマが切り替わらない。次の場面になっているのに、目には映っているのに、神経に届かない。

 むしろ、不思議だった。今、舞台の上にあるモノが。
 わたしには、雪丸しか見えない。
 なのに、雪丸がいない舞台で、なにかやっている?

 いやいやいや、これは『一夢庵風流記 前田慶次』というお芝居で、慶次が主役、でもってえりたん最後なんだからえりたん見なきゃ、あたしがどんだけえりたんスキーで来たと思うのよ、『タランテラ!』ではずしきった音とリズムで歌うあの銀橋の壮くんのぺかーっとした笑顔に救われたのよ命の恩人なのよ……理性はそう解説するけど。
 けど、ダメだ。
 ごめんえりたん。
 えりたん好きだけど、今は無理。

 わたしは、まっつが好き。いちばん好き。

 まっつの芝居と、波長が合うのだと思う。
 彼ほどわたしに感動をくれる役者はいない。今のとこ。
 想像力と萌えをくれる役者はいない。

 そのまっつが、消えてしまう。
 いなくなってしまう。
 それだけでも重大事件だっつーに、そのうえ彼は、最後の舞台で最大級の爆弾を落としてきた。
 今まで見た、最高の芝居をしてきた。

 それはもう、受けるしかないでしょう。
 受け止めるしかないでしょう。

 他は、見ない。
 決めた。腹をくくった。切り替えた。

 これは、「雪丸」の物語。他は、不要。

 いい悪いじゃない。わたしには、それだけのキャパしかない。
 二兎を追って自滅する猶予はない。まっつのラストアクトなんだ。
 ふだんのわたしなら、そこまで極端なことはしない。えりたんえりたん、えりたんへの愛着、過ごしてきた日々が悲鳴をあげる。
 だけど、人生が取捨選択で成り立っていることを知っている、ひとつしか選べないというなら、わたしはまっつを選ぶ。

 続く。

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