そして、1年ぶりの『ベルばら』。

 宙組全ツ版を観ていないので、花組中日版以来です、花組梅田芸術劇場公演『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』

 2014年って、6月に中日で『フェルゼンとマリー・アントワネット編』やって、8月に全ツで『フェルゼンとマリー・アントワネット編』やってるのか。
 んで、『フェルゼン編』は2013年にもやってるし。
 『ベルばら』でファンが好きなのは・よろこぶのは『オスカルとアンドレ編』または『アンドレとオスカル編』、好まれていない・よろこばれないのが、『フェルゼンとアントワネット編』……なのに、海外へ持って行くのはその人気のない『フェルゼンとアントワネット編』なんだな。韓国公演もそうだった。
 たぶん植爺が好きなのが、『フェルゼンとアントワネット編』なんだろう。植爺最大萌えポイント「若者に説教する、えらい年寄り」「子どものために身を犠牲にする母」「あえて言わず・言わさず、よよよと耐える」があるためじゃないかと想像。

 植爺ってマザコンだよなあ。男女の恋愛よりも、母と息子の愛情に興味がある。名乗らぬ親子ネタ大好きだし。親だと言わず、子だと言わず、あえて耐える、みたいな。日本芸能にある古来からのモチーフだから、というのは言い訳でしょ、星の数ほどある「古来からのモチーフ」の、母子愛だけに執着し続けるってのは。
 恋人の誘いを「母なんです」と息子を理由に拒絶する女、てのが植爺が『フェルゼンとアントワネット編』を好きな理由のひとつだろうなあ。たとえそれまで子どものことを一瞬たりとも思い出さなかった2013年『フェルゼン編』のアントワネットも、何故か突然子どもを理由に「よよよ」と泣いて耐える。
 母息子愛を描けない『オスカルとアンドレ編』は、ペガサスだのガラスの馬車だのを飛ばしてイロモノにする。植爺的に萌えるモノがないから、遊園地的なびっくり感が必要だと思うんだろう。

 ヅカファンにしろ原作ファンにしろ、いちばん求めているのは、観たいのは、ソコじゃないのになあ。

 母親にのみ興味と幻想を持つ老人に、恋愛大河ロマンを演出させるなっつー。

 ……と、文句言いつつ、結局のところわたしは植爺『ベルばら』マニアなので(ヲイ)、宙組全ツ版を観られなかったことが大変残念です。
 毎回必ず改稿し、ファンをびっくりさせてくれる植爺の、その改稿のセンスを味わいたいのです。


 てことで、1年ぶりの植爺『ベルばら』。
 同じ花組で同じ『フェルゼンとアントワネット編』だから、気分的には同じ、なんだけど、そっか、今回は1幕モノなんだな。中日版はいらんモノばかりてんこ盛りだったけど、それを短縮したからといって、いらんモノを削るとは限らないのが植爺だ! むしろ、いらんモノだけを残し、必要なモノを全部削っているかもしれない! いやむしろそっちの可能性の方が高いのが植爺クオリティ! やば、テンション上がる!!

 ……すみません、贔屓組でなく、ただ1回だけ観る分には、イベント感覚で楽しめるんです。『タカラヅカスペシャル』でどんなコントやるのかなっ?! 楽しみだなっ!! ……と、同じ感覚で。植爺『ベルばら』ってイベントのコントと同じだよね?(素)
 そんなイベントのコントと同じレベルのモノが贔屓組で上演させられる悲劇、絶望、阿鼻叫喚は過去何度も何度も何度も経験してますから、ファンの方々の心痛には共感しますが、それはそれとして。
 今回は、楽しむモードで。

 でもって今回の『ベルばら』、わりといい出来じゃないっすか?

 もちろん、いらんとこ山盛りで、ツッコミの嵐ではありますが。
 2005年の韓国公演前提の1幕モノ全ツだった、サブタイトルないけど中身は『フェルゼンとアントワネット編』だったアレよりも。
 いらんモノだらけの中日版よりも。

 いつもいつも最低最悪のさらにその下を発掘してくる植爺にしては、ぜんぜんマシな作りかと。

 オスカルとアンドレの描き方がひどすぎ、メルシー伯爵のお説教を削って、その分オスカルとアンドレを描こうよ……って、『フェルゼンとアントワネット編』でもれなく完璧に一度も欠かさず言い続けていることは、そのままだけど。
 もれなく完璧に一度も欠かさず、いちばん不要かつ害悪な「メルシー伯爵のお説教」を入れ続けている植爺になんの期待もしていないので、そこはもうアンタッチャブル、言っても仕方ない。

 メルシー伯爵が悪くない、庭から現れたのには理由がある、というためだけに、新しい場面を書き起こし、1幕モノの貴重な時間を割くとか、アタマがおかしいとしか思えないこともするけれど、植爺の「いちばん描きたいのが、若者に説教するえらい年寄り(=自分)」なんだから仕方ない、とあきらめている。
 や、宙全ツ版にあった新場面だからって、1幕しかない台湾公演版になんで入れなきゃなんないの、アンドレが出番ほとんどないのにメルシー伯爵の方が大事ってどう考えてもおかしいじゃんとか、言っても仕方ない、植爺にはフェルゼンよりアンドレよりオスカルより、メルシー伯爵が大事なんだもん。
 ああ、アントワネットは不貞女だから愛情も興味もなし。唯一、母親で最後は男より子どもを選ぶ、ということにのみ価値を認めている、というわかりやすい姿勢。
 だからそのへんはもう、置いておいて。

 そんな植爺にしては、まだ良かった。
 良い『ベルばら』だったと思う。

 謎のド・ブロイ元帥とか出て来ないし! スウェーデン国王が「フランスの王妃さらってこい! かまうもんか、愛があればナニをしてもいい!!」と言ったりしないし、フランス宮廷の公の場で「相手に迷惑だから身を引く」と堂々と宣言して迷惑かけまくることを美談にしないし!
 いい『ベルばら』だと思うよ?

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