2002年月組のときとは違い、星組『ガイズ&ドールズ』は「恋愛モノ」として楽しんでいる。

 02年月組は、個人の恋愛というより、もっと大きな愛の真理みたいな、漠然としたモノに感動していた。
 街に生きる人すべて、いや、この世界のすべての男と女、的な。

 でも今回はシンプルにスカイ@みっちゃんとサラ@風ちゃんの恋愛に感情移入してる。

 たぶんわたし、風ちゃんのお芝居好きなんだわ。チャンネルが合う気がする。
 風ちゃんは好みの顔でないため、ふつーにしていると視界に入ってこないというか、観ているけれどそれ以上ではナイ、感じなんだけど、彼女が「主人公」を演じていると強引に視点を合わされるのね。
 他にピントの合ったフレームを眺めているのに、風ちゃんが自力で自分にピントを合わせるの。
 あれ、なんか急に関係ないとこにピント合った……世界の焦点が変わって、自動調整かかった。……そんな感じ。
 関係ないっていうか、彼女はヒロインなんだからむしろ彼女にピント合ってて当然なんだけど、わたしがよそ見してたもんだから。
 で、風ちゃんにピントが合うと、世界が一気にクリアになる。
 当然よ、だってヒロインだもん。彼女を中心に物語が作られているんだから、そこへピントが合えば辻褄が合う。よそを観ていた方がおかしい、物語ってのは主人公に合わせた画面がいちばん楽しめるように設計されている。
 確かにその通りなんだけど、正しく「中心」に合った画面が提供され、「観やすい」ことに驚く。
 へえええ、こんな画面なんだ、こんな世界なんだ。……脇観る癖、端を観る癖が染みついたモノに、「真ん中」の視界を見せつけてくれる。

 強引にそれをされちゃうのが、面白いんだよなあ。

 サラに視点が合うと、こんなに「王道ラブストーリーなのか!」と驚くわー。やだ今まで気づいてなかったーー。
 あとはスカイの外見がもう少しわかりやすい二枚目だったらなお良かったんだけど、存在的にかっこいいからいいのか。
 スカイは二枚目っていうより、柴犬的な愛くるしさがある男なのかも。美形タレントが演じるより、性格俳優が演じる的な? 福山雅治よりも大泉洋的な? 02年が色男キャラだったからそのイメージで観ちゃって混乱したけど。

 サラに感情移入して、スカイに恋をする。
 ドキドキしたり、甘えたり、不安になったりする。
 それが、心地いい。

 フィクションの醍醐味だわー。

 02年月組が恋愛脳ナシに観ていただけに、「世界の凝縮感」が心地いい。
 「人間っていいわね。愛しいわね」とGoogle Earthで俯瞰して世界全体を眺めていたのが、視界がぎゅーんと狭くなって、地図がみるみるうちに拡大されていって、ストリートビューで顔がわかるとこまで持って行かれた感。
 で、そこにいた女の子の物語がはじまった。地図ではなく物語がはじまったの。動き出したの。

 楽しい。

 今回もまた、やっぱり『ガイズ&ドールズ』は楽しい。

 オープニングの街の場面からもお、目が足りなくて大変。
 本編も、ギャンブラーたちもっと観たいのに、なんでいつも一斉に出て来るの(笑)。
 サラ中心の視界だから、ギャンブラーたちとはあまりかぶらなくて、そこは助かってるけどラストの教会はマジ目が足りないし。
 組担は楽しいだろうなあ、リピートするたび発見があって。02年はそうやって楽しんでいたもの。

 アデレイド@ことちゃんが観るたびうまくて……初日はそれでも「男役」感があったのに、公演重ねるとそれもなくなり、かといってタカラヅカの娘役でもなく……「外部のミュージカル女優」になってる。
 めちゃくちゃうまいんだけど、タカラヅカの舞台ではちょっと違和感。この子このまま外部臭付けすぎるとまずいから、早く男役に、タカラヅカに戻してやって!と思う。
 あと、場の空気に馴染まない存在感はみっちゃんと双璧(笑)なので、みっちゃんとガチンコ勝負して欲しいと思った……芝居で。

 ネイサン@ベニーとことちゃんは合っていると思う。
 ベニーは良くも悪くもタカラヅカというか、タカラヅカでないと存在しないスターだと思う。
 だからこそ、そんなベニーの横にいることで、ことちゃんのタカラヅカらしくなさが緩和されている気がした。
 いいカップルだと思う。「ことちゃん、このまま紅さんのお嫁さん(トップ時の相手役、つまりはトップ娘役)になって!」という声があるのに、ある意味納得。
 ……でもやっぱりことちゃんは男役で!(笑)

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