わたし、『Apasionado!!』は内輪受けショーだから、全ツに不向きだと思うの。

 月組全ツ『Apasionado!!III』観劇。
 「III」と付いているからといって、『Apasionado!!』は『Apasionado!!』、本質が変わるわけでもナイ。

 初演時から、わたしの『Apasionado!!』への評価は低かった。
 だって、いちばんのウリが「男役の女装」って作品どうなの?
 どの場面や振付、センスが秀逸、というのではなく、「女装」がウリ。
 いちばんの盛り上がりがオカマパレードと、トップと女装2番手のダンス。
 イロモノでしかない。

 そもそも初演は「トップ娘役不在」という、イレギュラー状態を誤魔化すために作られた。
 トップ娘役はいない、2番手娘役はいるけれどトップにする気はないからカンチガイさせちゃいけない、という大人の事情ありき。
 ゆえに正統派の男女場面は作れず、女性が理想の男を妄想してあふんあふん言う場面だの、オカマ大作戦になった。
 苦し紛れの力技。通常ならどうよソレなネタ満載。でもそれがウケてしまったから、『Apasionado!!』は人気作、となる。
 特殊体制下ならではの「目新しさ」がウケたのであって、作品自体がいいわけじゃないよ……。
 だけど「人気作」になってしまったので、再演される。
 が、特殊体制下でないとそのまま上演は出来ない。
 安直に、オカマ祭りのクライマックス、トップとオカマ2番手のダンスを、衣装センスそのままトップとトップ娘役に変更。
 男役同士だから迫力があったわけで、ふつーに娘役と踊ったら「ふつーの場面」にしかならない。いちばんの目玉場面が「ふつー」になり、「オカマ祭り」がウリである以上、オカマ度が下がった分、全体が沈んだ。
 また、この「オカマ祭り」というコンセプト自体、「ヅカオタ向き」であり、一般客を想定していない。
 演出家もファンも、ヅカに浸かりきって忘れてる。タカラジェンヌは、全員女の子だ。
 女の子が女性の格好をして歌い踊っても、ふつーだ。
 ヅカファンは、男役と娘役の区別が付くから、「男役の女装だ」とわかる。が、一般客からすれば、髪型や衣装が替われば誰が誰だかわからない、男役と娘役の区別なんか曖昧。ソレが専門職だということすら、知られていない可能性も高い。
 本拠地宝塚大劇場でファン向けにやるならいいが、一般客も多い博多座でやるなっつーの。
 女装した男役が何人も何人も、ただ歌いながら歩くだけ、という「演出つまんねー」場面がいちばんのウリなのよ? 『Apasionado!!』というと「お花たちゃんたちは誰がやるのかしら?」と人の口に上がる、いちばんの場面が、「ただ歩くだけ」なのよ?
 つまり、ジェンヌの知名度とスター性に頼り切った作り。名作ではまったくない。
 固定のお馴染み劇場である博多座ですら、再演には疑問符が飛んだ。
 安直な「オカマ→娘役」の変更、スター頼みのオカマパレードはそのまま。
 そして、このオカマパレードは、総力戦の本公演でないと厳しいんだ。
 全部で何人いるんだっけ。オカマが7人?
 ジェンヌの知名度とスター性頼みの演出で、二手に分かれた別箱公演で、客席のほとんどが「あ、〇〇ちゃんが女装してる、おかしい~~」とか個別認識してくれるスターを7人用意出来るか??
 女装をウリにするからには、名前と顔が一致しているだけじゃ足りない、その男役の芸風や個性も認知されていないと驚きにつながらない。
 お笑い担当のひとりを除き、新公やバウ主演済み男役スターを6人用意しなきゃならないのよ? 別箱公演で可能か?
 主演経歴持ちスターでないと、ライトファンまで個別認識してないもん。組ファンだけが知っている人を使ったって、「誰?」になる。
 知らない人が女装してたって、下級生ロケットと同じで「あの人が女装している!!」という驚きにはならない。
 博多座でもきつかった……主演していない人が入っていたし、宙組は下級生の動く背景時代が長く、スター認知度が他組に比べて低かったので、「ジェンヌの知名度とスター性頼みの演出」の弱点を晒していた。
 それでも、固定の箱でやる分にはまだいいと思う。ジェンヌ頼みというからには、ジェンヌさえ認識出来れば楽しくなるのであって、同じ場所で一月近く興行していれば、固定ファンを得られるかもしれない。
 だがしかし。
 全国ツアーでは、それすら望めない。

 あのスターが女装する、から楽しい演出で、組ファンしか知らないような対外的に無名男役起用とか、ベテラントップ娘役ちゃぴがいるのに、トップ娘役不在演出とか。
 何故『Apasionado!!III』……他に全ツ向きの作品があったろうに。

 いや、わかるんだ。
 カチャへの配慮とか、ちゃぴはまさおの相手役である以上がっつり組めないとか、舞台外の事情ゆえに、『Apasionado!!III』になったことは。

 初演『Apasionado!!』は2番手がトップ娘役も兼ねる公演だった。つまり、2番手の比重が高い。
 下級生主演を支える「本公演でタイトルロールのヒロイン役までしたスター」カチャのために、「ふつうの2番手」でしかないショーは用意出来なかった。
 『Apasionado!!』のいちばんの目玉、トップと女装2番手のダンスを、たまきちとカチャでする……それで、カチャの体面を保った。
 いろんな娘役(女装男も含む)と絡み、トップ娘役を「相手役」にしないことで、現在月組トップスターであり、ちゃぴの相手役であるまさおへの配慮、現在の「月組トップコンビ」の体面を守った。

 仕方ない、仕方ないよ。『Apasionado!!III』しかなかったんだよ。

 そう納得はするけれど。
 初日の客席にいてなお、「お花ちゃん、知らない子がいっぱいいた」「あれ誰と誰?」と聞こえてくるのはどうしたもんかと。
 フジイくんの最近の仕事は、本当に雑だ。

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