まず言いたい。
 おめでとう、よかったね。

 『Victorian Jazz』を観たとき、不満だった。初主演がうれしいからあまり考えないようにしていたけれど、この作品は、だいもんには役不足だと思った。↓
  http://koala.diarynote.jp/201211271605082755/ 
   君に、相応しい場所。@Victorian Jazz


 『BUND/NEON 上海』を観た者としては、あの熱量を肌で感じた者としては、作品が浅すぎて「だいもんの無駄遣い」に思えた。
 足りない、これじゃだいもんに足りない。「だいもん」を開放できるような役と作品じゃない。

 主演公演ではなく「主な出演者」とぼかされた『New Wave! -花-』も、実質だいもん主演のような構成だったけど、こちらも作品はビミョー。
 だいもんが力技で成立させていたけれど。
 だいもんが「だいもん」を全開に出来る作品じゃなかった。

 年功序列の花組を出て、よーやく回ってきた2度目の主演作品、『アル・カポネ』は、駄作だった。
 だいもんのリミッター解除能力が上がっていたため、作品がつまらなくても浅くても、だいもんが「だいもん」全開になるため、劇場では底上げされたけど。
 「なんかいいもん観た?」と錯覚させてくれたけど。
 作品レベル的には、『Victorian Jazz』と同程度じゃね?

 タカラジェンヌが、そのフェアリー人生において「主演」できる機会は少ない。
 トップスターを除けば、「路線」と呼ばれる人でも、生涯に一度か二度あるかどうか。(3回以上別箱主演する人は、いずれトップになるだろうからね)

 その「生涯に一度」の機会が「能力全開できない」作品であった、残念さ。
 や、どんな作品でも奇跡を起こす人はいるんだろうけど、そんな100年に一度生まれるかどうかの天才の話ではなくて、現実問題。

 わたしは残念で、そして、じれったかった。

 「おもしろい」とわかっているのに、それをしないことに。

 だいもん主演させようよ、彼が好きなだけ暴走できる作品で。
 駄作ではなく、高品質作品で。
 彼の才能、実力を、存分に発揮し、観客を異世界へかっさらっていく作品を、彼にやらせようよ。
 絶対、面白いよ。
 わたしは、面白いものが観たいよ。

 その昔、「なんでトウコ主演でオギーに新作バウ書かせないんだ」と渇望した、あの感覚。
「もしも宝くじ当たったら、そのお金で劇団にトウコ主演でオギー作品上演するよう掛け合う!」と、言っていたように。
 ご贔屓のまっつに悲願のバウ初主演を! ではなく、トウコ×オギーだった。だってわたしは、面白いものが、観たかったんだもん。
 それから何年かのちになると、「まっつ主演で観たいモノ」も考えるようになったけれど、当時のまっつで望むことは、「いい作品の助演」止まりだった。
 トウコ×オギーほど面白いモノを、当時のまっつが見せてくれるとは、ごめん、まったく思ってなかったから。

 ご贔屓のことはもちろんご贔屓にするくらい好きだけど、「ひとりのヅカファン」「ひとりのエンタメ好き」として、「面白いモノ」が観たかった。
 晩年のまっつには、いろんな夢や可能性、欲も抱いたけどね。表現者としての彼に、魅せられていたから。でも、オギーがヅカにいたころは、まっつはまだ頼りない下級生~中堅だったんだもの。

 あのころの、トウコとオギーに夢見ていた感覚で、思ったんだ。

 だいもん真ん中に置こうよ。
 そして、彼に、彼が好きなだけ暴れられる場を……作品を、与えようよ。
 それって、絶対面白いよ!!

 そう思って……えーと、『BUND/NEON 上海』が2010年1月だから……6年と半年か!!

 ついに、ついに、願いが叶った。

 『ドン・ジュアン』KAAT神奈川芸術劇場初日。

 だいもんが、「だいもん」を全開に出来る作品。
 だいもんのパワーを、受け止められる作品。
 彼がどんだけ暴れ回ってもびくともしない、相乗効果で暴走できる作品。
 『BUND/NEON 上海』の、生田せんせの演出で。

 「だいもん」キターーッ!

 観たかったモノだ。
 これが、わたしの観たかったモノだ。

 是非は置いておいて、評価は置いておいて、激流に、巻き込まれる。
 飲み込まれ、翻弄され、すげー、なんかわかんないけど、すげーっ!! ってなるモノ。

 待ちに待った初主演『Victorian Jazz』で、役不足とか思っちゃったんだよ。だいもん自身はありったけの力で演じていたんだろうに、観客のわたしは「足りない」と思っちゃったんだ。
 切ない目でバウホールを見回すだいもんに、「戻っておいで」と思った。
 舞台の真ん中が、君の生きる場所、君に相応しい場所だから。
 君の「表現欲」を好きなだけ迸らせることの出来る場所へ、君に足りる作品を得て、戻っておいで。
 他の誰でもない、「わたしが」願っている。
 「わたしが」だいもんを欲している。

 だから。

 『ドン・ジュアン』を観て、いちばんに思った。

 おめでとう、よかったね。

 ようやく、佳作にめぐりあえた。
 駄作を力技で支える「タカラヅカあるある」を実践するのではなく、力のある美しい作品を、自在に呼吸できる……役者冥利に尽きるだろうね。
 よかったね、だいもん。

 そして、それ以上に。

 よかったね、わたし。

 観たいモノ、切望してきたモノを、観ることが出来て。

 タカラヅカを好きでよかったよ、だいもんを好きでよかったよ。
 こーゆーのが観たかったんだ。
 客席で胸がざわざわして頭がぎゅいーんって掻き回されて、心臓痛くなってなんかわかんないけど叫びたくなる、そういう感覚を味わいたくて、ヅカオタやってんだ!
 わたしを異次元へ連れて行って!
 唯一無二のファンタジー、「タカラヅカ」だからこそ!

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