美しいモノを見た。

 舞台というのは、演劇というものは、美しいものなんだねええ。

 と、しみじみしてしまう、『ドン・ジュアン』

 役者個々の話ではなく、舞台全体。や、もちろん出演者も美しいけど、今は舞台の話。
 幕開きの、静かな悲しみに満ちたプロローグ……「今は亡き友」へ語りかける場面の、遺跡っぽいセット……それもまた「過去」「失われたモノ」を象徴している……。
 その聖なる・静なる場面から、巨大な真紅の薔薇のピックアップ、その薔薇から、ドン・ジュアンが登場する、美しさ。視覚効果。
 薔薇があんな風に砕け散る……ばらばらになるとは、夢にも思わないから、その予期せぬパーツの軌跡にも目を奪われる。
 騎士団登場の踏みならす靴の音、遺跡の上に並んだ姿……。
 セリが上下するわけでも盆がぐるぐる回るわけでもないのに、画面は次々変わり、左右と手前奥だけでなく、上下も変化に富む。

 フラメンコの美しさ。女性の美しさ。
 あるのは、野生のエロス。
 褐色の肌と黒髪、濁りのある多彩なドレス。
 暗い色を基調とした舞台だから、「エメ」で白いドレスの女たちが踊り出した瞬間、息を飲む。
 その、美しさに。その、清浄さに。

 美しい音楽が豊かに流れ続け、闇であれ毒であれ、……愛であれ、救いであれ……彩り満たす。
 感情は音楽となり、台詞は歌となり、あるがままに発せられる。

 ミュージカルという、贅沢さ。
 それを存分に味わう。


 いやあ……美しい、って、いいな。
 生田せんせの美意識がこれでもかと注入されてる。ヲタク万歳、厨二万歳。つかこのパソコン、「ちゅうにゅう」を打っている途中、「ちゅうに」で「厨二」と変換するのよせ(笑)。

 美しいものを見られて、大満足だーー。


 よくぞこのメンバーで、この作品を上演してくれました。

 ……とはいえ、ヒロインのマリア@みちるちゃんは、なんか不自由感がつきまとった。足りてないというか、そもそも大きさがチガウ箱の中にいる感じ? その箱の中で手足を伸ばしても、その箱以上の大きさにはならないよ的な。

 そして、ドン・カルロ@咲ちゃん。
 ひとことで言うと、弱い……。
 歌声も、存在感も、ドン・ジュアン@だいもんとの関係性も。
 ドン・ジュアンと肩を並べる存在でなきゃならないのよね? や、火のついてるだいもんに立ち向かえなんて、無理難題だとわかっちゃいるが、どうかもう少し食い下がってくれ。

 このふたりだけかな、主要キャストで気になったの。
 それ以外はほんとにもう、見事に作品世界に酔わせてもらいました。
 まだ初日だしね。みちるちゃんと咲ちゃんも、きっとこれから変わっていくんだと思うし。


 エルヴィラ@くらっち、すげー良かった!
 『銀二貫』のヒロインの芝居に首をかしげたので、不安もあったんだけど、今回はすごくいい。歌声も演技も。
 実力あるっていいよな。

 わたし、ひとこの悪役ってはじめて見るかも。
 ラファエルは別に悪役ってわけじゃないんだけど、善悪で言えば主人公のドン・ジュアンがいちばんの悪だし。
 でも、闇落ちするからなー、ラファエル。明るいあっけらかんとした持ち味のあるひとこが、闇を演じるとこうなるのか。や、期待以上に闇が広がってた!
 この男やばい、そう思わせるものがある。
 いいなあ、ラファエル。

 レオ様、叶くんがいい男で。
 レオ様、男役として落ち着いてきたなあ。「喋らなければオトコマエ」だったのが、喋ってもオトコマエをキープできるようになってきてる。
 叶くんはほんと学年不明だわ。上級生っぽいよね、新公学年なのに(笑)。もっと歌って欲しい。
 縣くんはただひとり、声を発すると「あ、ヘタな子がいる」とわかってしまう。周りがうまい人ばかりで占められているから仕方ないんだけど、せっかくの抜擢続きなんだ、がんばってくれー。

 きゃびいは安定のいいお姉さんぶりだわ。芝居に浮つきがない。締めてくれるとドラマ性が上がる。

 少年ドン・ジュアン@ひまりちゃんがすごい。
 む、娘役だよね……?
 なのに、スミレコードやばい芝居してますよ、男役として!!
 すっげーだいもんに似てる。だいもんらしい芝居をする。
 そのくせ、娘役やってるときはえっちで魅力的な女性として、ドン・ジュアンに絡んでるんですわ。
 ひまりちゃん、今回の衣装と髪型? お化粧? すごく合ってる、いい、めっちゃ美人。モブ女性キャラの中でいちばん好みだ。

 すわっちにソロがあって、翼くんにないことが残念です……や、すわっちに含みはない、彼は良い声です。
 ただ、翼くんの歌も聴きたかった……。

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