あー、そうだねー、『バレンシアの熱い花』ねー、何度も観たよねー……。
 と、思い出した。

 思い出す以前に、忘れていたわけじゃない。
 でも実際目にするとチガウわ、どんどん記憶が甦るわ。

 役替わりに新公に全ツまで観てるんだよ。そりゃ覚えてるわ、記憶に残ってるわ……。
 そうよ、全ツよ。
 同じこの梅芸メインホールだった。ものすげーガラガラぶりで、3階席に人がいなくて寂しかったっけ。友人は当日券で1階真ん中がふつーに買えたと喜んでたなー。
 それを思えばすげー盛況ぶりだ。あのころのタカラヅカはマジ先行き不安だったもんなあ。

 だもんで。
 せーこのセレスティーナ侯爵夫人いいなあ!!
 ……が、いちばんの感想になるという。

 ほんま嫌やったんやな、邦さんのセレスティーナ侯爵夫人……。
 邦さん自身をどうこうではなく、ミスキャストだと思っていたから。
 見た目おばーさんなのに、4番手の昔の恋人って、無理あり過ぎる。
 今でいうなら、雪組の翔くんの恋人が組長のミトさん、ぐらい無茶。翔くんが小学生のときに30代だったミトさんに恋して口説いてたの?っていう。(ミトさんすみません)

 せーこならアリだ、わかる! ルカノール@すっしーも無理なくおじさんだし。
 ともちんルカノールかっこよかったけど、彼をあのタイミングでああいう扱いに落とすなら、周りも固めなきゃいかんよなあ。雑なポジション変更だった。

 作品についてはもう、なにも言う気はない。前回語りつくしたので。わたしがこの作品を嫌いなことは変わらない。


 作品もキャラクタも嫌いだけど、まぁくんには似合っている。……と言ったら、悪口になる?

 主人公フェルナンドは、頭のおかしな男だ。自己中心的で言動に整合性がない。自分の思い通りにならないことはすべて他人のせいにするだけでなく、攻撃し、暴力によって従わせようとする。リーダーシップを執りたがるが思考力はなく、洗脳されやすい。自分のかすり傷には世の終わりのような嘆き方をするが、他人の傷には鈍感。
 ここまでひどいキャラクタを、なんで主人公にしているのか不明だが、これは決定事項なので嘆いても仕方ない。

 この最低男が、今回はふつうに最低に見えたので、わたしにはストレスが少なかった。

 わたしの生理的嫌悪感が発動するケースって、無神経とか偽善者がスイッチなのよねー。
 植爺の世界観「主人公を正義とするために、この世のすべての常識を歪める」のがダメなように。どう考えても狂ってる言動を「正しい」と周囲の人々が讃えるのがダメ。
 フェルナンドは卑劣で愚かな男なのに、高潔な人格者でヒーローと描かれるのが生理的にダメ。無理。

 でも、まぁくんはちゃんと、フェルナンドを「卑劣」に演じてくれた。
 やっていることは愚かでしかないんだけど、本人がそれをわかった上でやっているように見えた。
 あくまでも、「わたしに」そう見えただけ。でも、それが重要。
 偽善者より悪人の方が、「ヒーロー」としては受け入れられる。ダークヒーローもヒーローだもん。

 これは、まぁ様に知性があるためだよなあ。
 前回観たフェルナンドはとびきり美しくてキラキラしていたけれど、知性はなかった。ゆえにレオン将軍に操られ、利用されて自滅するだけの道化に見えた。
 でもまぁくんには知性がある。レオン将軍@まっぷーに利用されているようには、まったく見えなかった。
 本人が自分で考え、自分で行動しているように見えた。

 でもって、これはわたしの持論なんだが、まぁ様には、「毒」がある。ただキレイキレイなだけの芸風ではなく、一筋の濁りを内包する。
 それゆえに、狂ったキャラを演じると重く濁った闇をまとう。

 フェルナンドがちゃんと卑劣で悪人で、筋が通っていた。
 悪人だって悪の心の範囲で悩んだり傷ついたりもする。酒場女と別れるのに苦しんだりするのも、嘘じゃない。婚約者と別れる気も貴族であることを捨てる気もないから、最初から「そのときだけの本気」ってやつだけど。
 指先を切ってしまっただけだとしても、傷は傷、痛みは痛み。恋人を亡くしたロドリーゴと、もともと別れるつもりだった女と別れたフェルナンドの傷は同じ。だって、自分の指の傷は痛いけど、他人の大ケガは別に痛くないもんね。
 フェルナンドはイヤナヤツだけど、現実の範疇の悪人だから気持ち悪くない。悪がなんであるかも理解せず、まったくの無知無自覚で正義を振りかざす方が、この世のものではなくてこわい。

 しかし、大変だなあ、まぁ様。


 それにしても、最低な作品だわ、何度観ても。

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