ちぎみゆの退団会見を気にしつつも、バウホールへ。時間の流れは待ったナシだ、 『双頭の鷲』初日。

 舞台に緞帳がなく、なんかすげーきれいなモノが幻想的に剥き出しになっている。
 ビニール? なにか幕がわりのものがあるんだけど、ソレも含めて剥き出し感。

 美しい。

 景子タンの美意識が、美へのこだわりが、これでもかと主張している。
 こんな美しい舞台で、なにを見せてもらえるのか、どれほど美しいモノを見せてもらえるのか、期待が高まる。

 そして。
 1幕。
 美しい。
 とても、美しい。
 こんなに美しい舞台は稀だろう。
 加えて、稀なほどの、
 客席の爆睡率の高さ。

 お隣が盛大に船を漕いでいるのに気づき、ふと周りを見渡せば、落ちている人たちがやたら目に付いた。隣とその隣、通路挟んだあの一帯、頭の角度からして舞台見てない……。

 いや、わかる。わかるけど。
 幕間。
 「よく寝たー!」「こんなにぐっすり寝たのはじめて」……ちょ、みなさん、どんだけ寝たか語り出すのやめて(笑)。
 告白が同時多発したのは、口火を切った人の声を聞いて、「あ、寝たの私だけじゃなかったんだ」と安心したせいかな。

 1幕は、ほぼトドとみりおんのふたり芝居でした。
 動きも歌も少ない会話劇、そりゃ見渡す限り落ちてます状態にもなるわ……。

 わたしはトドファンという立ち位置から、無駄に気を回して、気が気じゃない、気もそぞろ。
 宙組のみなさん、ただのモブ、いなくてかまわないただのにぎやかし、しかも出てこない、って、すみませんすみません。
 わたしが気に病む必要はまったくないんだが。むしろおこがましいんだが。
 それでも、謎の立ち位置で申し訳なく思っていた。
 わたしは美しいトドロキ見られてうれしいけど、トド様美しすぎて「はうっ」て胸押さえて悶えるレベルだけど、ご贔屓が出てるとか組ファンだとかでトド興味ないのに観に来ている人たちに申し訳なさ過ぎる……!

 だからみんな爆睡してるんだよね。いくらきれいでも、興味ない人がえんえんえんえん省エネな単調さで喋っているだけの舞台を、集中力動員して凝視しろとか無茶よね。
 初日なんて、ファンばっかしだろうしなあ。すみませんすみません。

 そうして、2幕。
 またみんな爆睡するのかと思いきや。
 すすり泣き多数。

 大丈夫! 1幕観てなくても、2幕だけで泣けるし感動出来るよ!
 爆睡してたお隣さんも泣いてる。
 ……明日から、2幕だけ観る人が増えたらどうしよう、タカラヅカあるある、芝居のとき空席だったのに、ショーになると埋まっている大劇場、それを一本モノのバウでもあるあるしちゃう?


 いやあ、美しい舞台でした。

 トド様もみりおんもすごかった。
 宙組のみなさんもいい仕事してた。

 でも。

 この芝居、トドとみりおんだけでよくね?

 他の人たちの「水増し感」ひどいわー。不要だわー。

 いや、その水増しする意義はわかっているけれど。それすら美しいけれど。
 景子タンのいいところと悪いところが見事に出た作品だなと。
 初見では、景子タンの「苦手」な部分がぐさりと刺さってきて、どうにもつらい。この人、一生この芸風なのかなあ、と。
 それでもわたしは景子タン作品好きなんだけどなー。期待して観るからこそ、ラストで「ああ、いつもの景子タンだ」と奈落へ落とされて終わるため、観劇直後は大抵評価が良くない。
 「いつもの景子タン」と納得して(あきらめて)観る2回目の方が、素直に楽しめる。……ので、2回目に期待する。

 とりあえず、美しいラストシーンで、王妃の決断に対し「迷惑な人たちだな」と思ったわたしは、この高尚な物語に相応しくないんだろう。

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