「ねえねえそれで結局、『烈火』のヒロインって誰よ?」
「……ニニアン、かなあ?」
「やっぱり? あたしはさあ、リンだと思ってたんだよね……リンがヒロインだって信じてプレイしてたわけよ。期待するじゃない、女ひとりに男ふたりが主役となれば、ラヴい話を! リンはどちらの男と恋に落ちるのかしら、ってわくわくしてたのにっ」
「あー……たしかに。女ひとりと男ふたりならふつー、そう思うよなあ」
「なのにリンってば、色気なさすぎるし。剣の腕のことしか考えてないし。てゆーかめちゃくちゃ強いし」
「強いかあ? ぼくはリンは使えなかったぞ、弱すぎて」
「強いよ。エリウッドより力が強くて速かったんだよ? 最前線に送っても、ひらりひらりと敵の攻撃かわして、必殺の一撃でヌッコロしまくってたよ」
「エリウッド強かったぞ? 力も強いし、防御力も高かったから最前線OKだったし」
「防御力はそこそこあったけど、最前線には向かなかったよ。うちのエリウッドはいつも後方で護衛つけられて、大切に守られてたもん。なかなかクラスチェンジできなかったから、レベル20のまま放置されててさ。女の子のリンが最前線にいるのに、男のエリウッドは後方でお姫様扱い」
「最強キャラは何気に光の魔導師だったな。とにかく魔力高くて、2回攻撃するから無敵」
「光の人は強かったねえ。レベルまだいくらかあるのに、パラメータはとっくにMAX振り切ってたよ。でも、それより強かったのは闇の魔導師」
「使ってねーよ、闇なんか」
「強いよー、闇の人。魔力と速さは光の人にかなわなかったけれどそこそこあったし、なにより防御力高いから、最前線にひとりで送り込んでぜんぜんOK。無傷で敵全員ヌッコロしまくる」
「ぼくはずっと、斧の人使ってたからなあ。あいつら最低。どんなに育てても、使いもんにならない。防御力シスター以下だし、攻撃当たらないし」
「なんでそんなキャラ育てるのよ。あんな地味で不細工な男たちを……」
「バーツは強かったなあ……」
「なつかしい名前を……」
「戦士系の使いにくさが不満だ、『烈火』」
「戦士なんか使ってないから知らない」
「なんで使わないんだ、ロマンだろう、戦士は。敵の攻撃をものともせず持ちこたえ、戦斧の一撃で敵を抹殺する」
「足が遅くて鈍重なキャラは嫌いなんだってば。おまけに戦士系って不細工ばっかだし」
「男を顔で選ぶな」
「選ぶよ。てか、足の速いキャラしか使わないもん。だから竜の人と赤と緑の人は重宝した」
「竜の人、弱くて使えなかった……。飛行系ユニットぜんぜん育ててなかったから、苦労したよ……」
「竜の人、強かったよ? 育てたらぐんぐん強くなった。あと、赤の人は身ぐるみ剥いで囮として利用したなあ」
「ひでえ」
「だって強いんだもの赤の人。手ぶらで最前線に送り込むと、敵がわらわら寄ってきて便利。で、その寄ってきた敵を他の育てたいキャラで殺していく。1MAPまるまる囮にしても、まったくの無傷なんだよ、赤の人。強すぎ」
「まあ、どのタイトルでも、赤と緑のナイトは強いけどさ。……あー、でもやっば最強はヘクトル?」
「ヘクトル。強いよねえ。強すぎてつまんなかった。ネルガル相手でもヘクトル、華麗に攻撃かわしてヌッコロしてたよ」
「……最終MAPは大変だったさ……みんな弱くてさ……」
「えー、うちのは強すぎてあっけなかったよう。全員レベル20ふりきってたし」
「クラスチェンジして?」
「クラスチェンジして。最終のいくつか前のMAPから育てるキャラがいなくなっちゃって、それまでスルーしてた脇キャラまで育てはじめたよ」
「どーゆープレイの仕方をしたんだ」
「生真面目だからねえ、あたしは。とにかく、主人公はヘクトル、リン、エリウッドの順番で強かったな。リンは女の子だけどヒロインというより立派にヒーローで……恋愛なんてありえねーくらい、漢らしい娘だった……。まあ、男たちふたり、エリウッドとヘクトルが愛し合ってるから、リンは恋愛しなくていいのか」
「男たちふたり……たしかに、愛しあってたなあ(苦笑)」

 同じゲームをして、盛り上がって喋ることはできても、弟には言えないことがいろいろある。

 「エリウッドとヘクトルが愛し合っていた」が最低ラインだわ、それ以上は言えないわ!!
 エリウッドとヘクトルに関しては、「友情」を「愛し合っていた」と言い換えるくらいのユーモアを含ませても大丈夫だと思うけど。

 レイヴァンとルセアまで行くと、もうとても腐女子以外には話題を振れない……。

 レイヴァンとルセアって、完璧BLだったよねえ?
 あまりにBLなんで萌える以前にびっくらこいたけど。
 ここまでやらんでもええやろうに……。
 幼なじみで主従で年上受で復讐ですれ違いで、そして最後はプロポーズだよ……。アゴ落ちた……。フルコースですかい……。

 『烈火』のキャラの「相性」って、いちばん上の人のことを、いちばん愛しているってことよね?
 エリウッドとヘクトルはお互いにお互いがいちばん上にきているから、しあわせ両想い。
 レイヴァンとルセアも、ジャファルとニノもそうよね。

 わたし的にツボだったのが、実直な赤の人ケントがいちばん愛しているのが主君のリン姫(姫という呼び方が似合わない娘だ……)で、彼の親友の緑の人セインがいちばん愛しているのが、そのケントだったりすること。
 セインは女好きで軽薄で、相性を見てもケントの他は女の名前しか並んでないのに……。
 並々ならぬ女たちの数を誇りながらも、セインがいちばん好きなのはケントなんだ……。そんでもって片想いなんだ……。ケントの実らぬ恋(主君に恋してもあきませんわな)を応援しちゃったりするんだ……。
 片想いが大好きなわたし的には、ラヴラヴ・カップルのヘクトル×エリウッドやレイヴァン×ルセアより、セイン×ケントに心惹かれましたわよ……。

 なんてことは、弟には言えないしなっ。
 くそー。
 なんで妹じゃないんだー、弟。

「妹だったとしても、オタクじゃなかったら意味ないよ?」

 と言ったのは、誰だっけ? オレンジさん?

 オタクの妹が欲しい(笑)。

 ヘクトルをケロ、エリウッドをトウコで観てみたいわ、とか言える、ヅカファン妹でもヨシ(笑)。

 
 弟、「大友宗麟」を熱く語る。
 母とふたりで、NHKの正月ドラマの再放送を見たそうな。

 すまんなあ、わたしソレ、本放送を20分くらい見て、「つまんねー」と見るのやめちゃったんだよ。
 そう言ったら、傷ついた顔をした。
 ……そうか、語りたかったんだね。

 てかわたし、そのヒト知らないし。知らないヒトの伝記ドラマで、冒頭の設定解説がまだるっこしくてタルくてうざかったんで、見るのやめちゃったんだよ。
 松平健の太りっぷりもつらかったし、財前直見のヅラも似合ってなくてつらかったし。

「まあな、原作読んでないと、わかりづらいかもしんないけど……てゆーか、あの話を2時間でやるには無理があるんだ。ほとんどただのあらすじだったし」

 しかも原作、遠藤周作でしょ? わたし、そのヒト苦手なんだわ。価値観が合わなくてな……。

「原作も、キリスト教マンセーですべてカタをつけるところはどうかと思うが、それまでは異色の戦国モノとしてけっこういいんだ」

 どろどろの人間模様中心の戦国モノ。だそうだ。たしかにそれなら、おもしろいかもしれない。

「ドラマも、はしょりすぎでただのあらすじになってたけど、ちゃんと奥方が狂っていくのを描いてたから、まだよかったよ」

 キャスティングがあそこまで重くなければ、まだ見られたのになあ。

 話すわたしたちの横で、母はひとりで、
「キャスティングがよかったわ。アタシたちの世代が知っている人しか出てなくて!」
 と、よろこんでいる。
 ……年寄り向きだったってことよね?
 大河の『新選組!』には父とふたりで文句しかつけてなかったのに、よろこんでいるところをみると。

 時代劇は、そのうち絶滅する文化だと思う。

 今の時代劇を見ていると、そう思う。
 視聴者がいなくて、実際おもしろくもなくて、先細りになっていずれ消えると思う。
 時代劇を支えているのが、母たちの世代だからだ。
 彼らがいなくなれば、必要がなくなるので、消えるだろう。
 今の子どもたちは、おもしろい時代劇を見ていないので、大人になっても時代劇を見たいと思わないだろう。

 母と父の話を聞いていると、思うんだ。
 彼らが好きなのは「時代劇」ではなくて、「自分たちが若いころに見ていたモノ」なんだ。
 だから、同じ時代劇でも新しい風を含んだモノには拒絶反応を示す。
 石坂浩二の「新しい『水戸黄門』」には誰もついていかなかった。三谷幸喜の『新選組!』もあら探ししかしない。
 自分たちの青春時代に流行っていたモノ、そのものを今も求め、それ以外は必要としない。
 演歌歌手が何十年も前のヒット曲を歌い続け、新しい曲はヒットしないように、みんな「過去」しか求めない。
 世の中が進化していく中、変わり続けていく中、老人たちは「変わらないモノ」を求める。
 だから彼らが支える「時代劇」は、時が止まっている。
 大昔と同じレベルの単純なストーリー。勧善懲悪、お約束、進化なし。お涙頂戴、人情至上主義。
 出演者は何十年同じ顔ぶれ。若者の役を50過ぎの中年が演じる。
 それこそ、先年放映の新選組ドラマの主演、近藤勇役が渡哲也だったように。還暦過ぎた老人が演じる、20代の若者。高橋英樹が未だに織田信長を演じてみたりな。舞台ならそれでもいいけど、テレビではキツイ。せめて、その役の人物の享年より若い役者を使ってくれと、どれほど願ったか。
 ただたんに、「新しいモノ」がキライ。
 自分の知っているモノ以外、認めない。

 いつか時代劇は、絶滅すると思う。

 水は流れないと、腐るから。
 変化を嫌い、新しい要因を排除し、老俳優たちの重厚で大袈裟な演技のみに頼っているなら。
 今の老人たちがいなくなり、世代交代したあかつきには、消え失せていると思う。

 そしてわたしは、それでもいいと思っている。

 消えていいよ、時代劇。

 いや、わたしは時代劇好きだけど。
 人情モノだと大々的に銘打っているモノ以外は、できるだけ見たいと思っているクチだけど。
 今も『必殺仕事人』の再放送を嬉々としてビデオ取りしてDVDに焼いていたりするけど。

 でも、今の時代劇は、消えていいよ。このまま腐っていくなら、なくなってもかまわないよ。

 一度絶滅しても、また復活すると思うから。

 一度絶滅すれば、旧悪を廃して、新しい時代劇が作られると思うから。
 時代劇という異世界ファンタジーのよさを継承し、老人たちへのご機嫌取り部分を捨てた、新しい時代劇が作られる日を、たのしみにしている。

 時代劇と言えば、『零〜紅い蝶〜』。
 ちょんまげ時代ではないにしろ、アレもある意味時代劇。明治か大正か、とりあえずみんな当たり前に着物を着ている時代。
 わたしと弟の話題はそこへ。

「アレって、時代的にはいつなわけ?」
「えーと、1作目のヒロインの祖母にあたるのが八重だろ。で、その八重がまだ少女だから……」
「射影機を作ったのが、宗方の先生なんだよね? 大人になった八重が拾った射影機と同じモノ?」
「アレはハナから氷室邸にあったから、別物じゃないのか?」
「氷室邸のご神体の鏡の破片が入ってるわけだから……うーん、やっぱ別物? 計算合わないよねえ」
「なにも無理して1作目と2作目の話をこじつけなくてもよかったのにな、制作側」
「2作目だけやった人は、八重だけは助かってハッピーエンドだと思うよねえ。1作目であんなことになってるのに」
「八重は自殺、夫の宗方はあんなことに……(笑)」
「あんなことに……(笑)」

 『零』の1作目の名台詞と言えば、宗方氏の「や〜え〜、みこと〜。や〜え〜、みこと〜(エンドレス)」だもんなあ(笑)。

「それにしても、2作目はストーリーがよくなかったな。1作目の方がよかった」
 と、弟。

 えっ?
 わたし、2作目の方がよかったと思ってるよ?

「なんで? 2作目はすべて、『おねーちゃんが電波でした』で終始してるじゃん」

 そ、それを言うと身も蓋もない……。
 いや、その電波っぷりのなかにだね、大人になることを厭う少女のはかなさがあってだね……。

「呪われた村に迷い込んでしまった姉妹が脱出するだけなら、話は簡単だったのに。ややこしくなったのはすべて、おねーちゃんが電波受信して勝手にどこか行っちゃうからだろ。澪はいつも、勝手にどこかへ行ってしまうおねーちゃんを探して走り回ってた」

 それはそうなんだが……。
 1作目はいちおー、キャラの目的ははっきりしてたなあ。
 民俗学的に貴重でもある呪われた屋敷・氷室邸に、某作家が取材に行ったまま行方不明になり、その作家に恩があるおにーちゃんが行方を捜しに行き消息を絶ち、今度は兄を捜してヒロイン美紅が氷室邸に入る……。
 美紅の目的も、氷室邸の怨霊の目的も、クリアだったなあ。
 ついでに、おにーちゃんとその作家の関係を妄想したりして、たのしかったなあ(笑)。

「2はラスボスがアレっても、納得いかない。そりゃあのキャラも怨念持ってるだろうけど、小物すぎ。1の霧絵ほどのインパクトがない」

 あー、霧絵はこわかったねえ。でもって、かなしかったねえ。
 でもそれってやっぱり、「真のエンディング」がさらにあるからじゃない?

「あるだろうな。そっちでは、あのキャラが真のラスボスとして出てくるんじゃないか?」

 予言しておくわ。
 「真のエンディング」とやらでは、おねーちゃんも助かってハッピーエンド。

「今度は『おねーちゃん、早ッ』かよ(笑)」

 1の「真のエンディング」を見た、緑野姉弟の感想は…
 母が言った。
「アタシは今まで、かわいいとかきれいとか言われたことが一度もないわ」
 かなしいことを、胸を張っての断言。
「でもおかげで、嘆くことがなにもないわ」
 はい?
「他のおばさんたちはみんな、『昔は美人だったのに』『若いころは**に自信があったのに』って、嘆いてばかりよ。『今はこんなに衰えてしまった』って。その点アタシは、若いころから容姿に恵まれてなかったから、トシをとっても堂々としたものよ」
 …………。
 いろいろつっこみたいことはあるが、あえて黙す。
 そして母は、さらに言う。

「だからアンタも、大丈夫よ。アタシと同じで、おばさんになってから嘆かずにすむわ」

 そう来ますか!!
 わるかったわね、ブスで!!

          ☆

 ところで、『零〜赤い蝶〜』めちゃくちゃこわいです。
 たいていのホラーじゃ動じないわたしが、震えまくってます。
 つーか、もう真夜中にはやらない。こわすぎ。
 桐生家ではマジ悲鳴あげた……。

 『SIREN』とちがって『零』は易しいゲーム。誰でもプレイできる。アクションは易しいし、謎も決して難解じゃない。ヒントをくれるシステムもあるし、つまづいて先へ進めない、なんてことがないように作られている。ゲームとしてはとても間口が広い。心霊写真のコンプリートなど、クリア後のやりこみ要素は別にちゃんとあるし、広く深く遊べるゲームだ。
 『SIREN』は「1ヶ月かけても終わらないかも」と絶望したけど、『零』は「その気になれば、一晩でクリアできるかも」と思える。
 やろと思えば、とっととクリアできそうなんだ。1プレイにかかる時間なんて、きっと大したことない。
 物理的には。

 精神的に、すごく大変なんだわ……。
 プレイしていると、ゲーム内のキャラクタではなく、わたし自身のHPがじわじわ減っていく気がする。
 ほんの1時間ほどプレイするだけで、ものすごーく消耗する。
 も、いいや。今日はこれぐらいにしておこう。と、スイッチを切ってしまう。

 ああ、こわいー。
 桐生家を歩いてるときなんかね、もーやめたくてやめたくてしょうがなかった。もういやだ、早くここから出たい、安全なところに行きたい。そればっか考えてたよ。
 日本人形、こわすぎ……。振り返るとそこに、女の子の日本人形が無言で立っている……。小さな子どもの霊が笑いながら走り去る。誰もいない部屋に「ころさないで」のすすり泣き。どこかから聞こえる足音、ふすまの閉まる音。人形だらけの部屋、そしてその人形たちは全部一点を凝視している……。「首吊り人形の間」なんて、こわくてこわくて、二度と入りたくなかったよ。中ボスとのバトルフィールドだったから、否応なく再度入るはめになったが。

 今は立花家。押入の中にいる泣いてる女の子の霊とえんえん戦ってる……。押入や戸棚から出てくるなよー。こわいじゃんかよー。高床座敷の鈴の音と女の子の泣き声はこわかったよ。この下に誰かいる、って、誰だよ。畳だよ、ふつーの部屋だよ、下にいるって言ったら霊しかないじゃん。納戸もこわかったよ。「たすけて」「たすけて」って、女の子のすすり泣きが聞こえて、入ってみても誰もいない。なにごともない。で、カメラのファインダーをのぞくと。壁一面に「タスケテ」の文字がびっしり! ここここわいってばーっ。

 『零』は易しいゲーム。ゲームが苦手な人も初心者も、誰でもクリアできる難易度。
 しかし。
 このゲームの真の難易度は、ゲームとはべつのところにある。
 これだけこわかったら、人を選びまくるよなあ。

 でも、『零』は美しいよ。
 真におそろしいものは、美しいものでもあるのだと思う。
 一面の死体なかで、狂気の哄笑に身をよじる血まみれの白い着物の少女だとか。
 血ぬられた儀式に集まる顔を隠した神官たち、オブジェのように吊られた生贄だとか。
 それは、凄惨な美しさ。

 わたしは『零』が大好きだけど……萌えはないんだよなあ。
 萌えたのは、『SIREN』の方。
 未だに弟と『SIREN』の話ばっかりしてる。赤い水とはなんだったのか、キャラたちの語られていない背景の謎、どこがどーしてどうなって……話題は尽きない。
 『SIREN』はパロ小説とかやりたい媒体だよなあ。穴がいっぱいあいてるから、そこを自己流に補完したい。キャラもみんないいしなあ。
 宮田くん(無敵のダークヒーロー、汚れ役上等の青年医師27歳)が好きだけど、その双子の兄、牧野(呼び捨てだ、こんな奴。ゲーム中最弱のヘタレ男、求導師27歳)も好きさ。
 普段のかっこよさと最後のギャップが素敵な竹内教授(ニヒルな民俗学者、何故か拳銃標準装備の34歳)も好き。ツッコミ最高の眼鏡っ娘・依子(竹内先生の金魚のフン。先生ラヴでどこまでも。金属バットはこの娘のためにある、小うるさい女子大生22歳)も愛しい。
 須田少年(ふつーの高校生。いちおー主人公16歳)も、クライマックスの盛り上がりがすごかったしな。志村(猟銃じじい。しぶいぞかっこいいぞ、わけわかんないぞ。走る姿がプリチーな70歳)もいいキャラだー。

 星組で配役するなら(星組かいっ・笑)、宮田くん主役に書き直して、宮田@ワタル、八尾@檀ちゃんで見たいなあ。

 宮田司郎@ワタル…白衣萌え。「さすが双子だな、死に顔も同じだ」(双子姉妹を顔色ひとつ変えずに殺害)とか、「しつこい女だな」(自分が殺した女が屍人として復活してきたのに対して)とかの超クール台詞を言って欲しい……。
 八尾比沙子@檀ちゃん…永遠の時を生きる暗黒の聖女。慈愛の微笑みが美しくもおそろしい……。
 須田恭也@トウコ…ふつーの少年だが、美耶子を守るために戦い、成長していく様をセンシティヴに演じて欲しい。最後の「三十三人殺し事件再現」なんかはもー、超かっこいいでしょう。
 竹内多聞@ケロ…フェロモン中年といえば、コレしかないかと(笑)。ニヒルにかっこよく。でも最後は思い切りヘタレに(笑)。
 牧野慶@しいちゃん…ワタルと双子の役といえば、体格的にこの人しか……。心優しきヘタレ男萌え。
 神代美耶子@うめちゃん…謎の盲目の美少女。華奢ではかなげな外見と反対に、命令形で話す超強気な女の子。少女と少年の中間のような魅力を是非。
 安野依子@……かのちか……? 現代っ子だから、かのちかでもできるか。無神経で押しつけがましい、一見うざい女。でもその明るさは救い。おばかにかわいらしく演じてもらえれば、それでいいかと。

 牧野はケロで見たい気もするが、それだと最後宮田と牧野が「入れ替わる」のは不可能だしな。
 竹内と須田少年は接点があるから、ケロ×トウコ的にもおいしいし。中年ケロと少年トウコ……萌え(笑)。

 あー、妄想配役はたのしいなあ。
 誰にも邪魔されない、自分だけの世界(笑)。

 冬コミ、『SIREN』本あるかなあ(いや、ヅカじゃなくて)。

         
 『SIREN』の医者と神父の話。

 萌えポイントだった、ひたすらクールでダークなかっこいい医者と、ヘタレでどーしよーもない神父。何故かこのふたりは双子なのだ。しかも、別の家で別の環境で育った「光と影」の双子なのだ。
 このふたりの最大の萌えは、「互いを名字にさん付けで呼ぶ」ことなんだわ……。
 「牧野さん」「宮田さん」って、名前にさん付けで呼ぶのよ。双子なのに。同じ顔なのに。ですます調で、他人行儀に話すのよー。双子の兄弟だってことは、お互い知ってるくせに。

 プレイヤー・キャラがどんどん死んでいく物語だから、医者にしろ神父にしろ、死ぬ運命にあることは予想が付く。
 問題は、その死に方だ。
 とくに医者は、絶対に死ぬはずだ。生きて幸福を掴むよーなキャラじゃない。ここまで悪を臆面なく実行できる強い男は、それに相応しい壮絶な最期を遂げてもらわなければ。
 神父の方は、生き残っても死んでも、どっちでもいいし、どっちでもアリだろうと思うけどな。

 最後までプレイして、彼らの最期を確かめた。姉弟で意見交換もさんざんしたし、ネットでの意見や事実も多少は読んだ。

 そのうえで、思うんだよね。
 医者と神父の最大のトリック、アレ、「なかったこと」にしていいよね? と。
 発売からひとつき経つからもう書いちゃうけど、医者と神父、「入れ替わった」ことが「真相」として「事実」として、語られてるよね。
 たしかにそれは事実なのかもしれないが、やっぱりそれは、わたし的には「認めたくない」のだわ。
 理由はひとつ。
 「意味がない」から。

 入れ替わる意味が、わからないんだもの。
 入れ替わらなくても、医者は医者のままやればよかったじゃない、なにもかも。神父の身ぐるみ剥いで変装する必要性が理解できない。変装して、誰を騙したかったんだ?
 制作側のトリックとしか思えない。
 「ほーら、入れ替わってるんだぞー、気づかなかっただろ? 引っかかっただろ?」てな。

 医者はいいんだ。はじめからめちゃくちゃ強い男だから。
 問題は、神父。
 とことんヘタレな、心優しき男。めそめそおどおど、無力で後ろ向き。
 この男が、なにもしないまま死ぬのは、物語として納得できないの。
 いちばん肝心の場面で、医者と入れ替わっていたんじゃあ、神父というキャラの存在意義は「医者と同じ顔をしている」だけになってしまう。
 神父は、変わらなければならない。
 なにもできないから、とあきらめるのではなく、「できること」をやらなければならない。
 神父が物語を通して「成長」しなければ、意味がないと思うんだ。
 それが「物語のルール」ってもんだ。

 実際、ふたりが入れ替わったという事実さえなければ、すっきりするんだけどな。

 医者は、屍人の巣で、自殺した。
 「俺の役目は終わった」と。
 人道からはずれようがどうしようが、この世界を「救う」ために力の限りを尽くした強い男が、自決した。
 彼の最期の言葉は、「兄さん」。
 それまで「牧野さん」と名字で呼んでいた双子の兄を、はじめてそう呼んだ。
 兄の目の前で、自殺した。

 神父は、自覚した。
 双子の弟が「俺の役目は終わった」と目の前で自殺した。
 そのことによって、自覚したんだ。己の「役目」を。自分にしかできないことがある。自分にしか、責任を取れないことがある。と。
 「化け物の役はごめんだ」と言っていた弟の死体を焼き、屍人として復活しないようにしてやる。
 弟の遺した武器を握り、戦う。それまで一度も戦おうとしなかった男が、戦いはじめる。
 神父は、死んだ医者の意志と魂を受け継いだ。おそらくは、その罪をも。自分がヘタレていた間、たったひとりで手を汚し、戦い続けた医者の業をも、神父は背負う。
 神父の前に、屍人となった看護士姉妹が現れる。医者がその手で殺した美しい姉妹。屍人姉妹は、神父に「せんせい」と呼びかける。医者をそう呼んでいたように。
 かつて、医者がそうしたように、神父もまた、姉妹をその手で殺す。
 そののちに、神父は最終武器「宇理炎」を使って己の役目を果たす。自分の命と引き替えに、迷える人々を救う。その昔、彼の父が儀式の失敗をその命で償ったように。
 死にゆく神父を迎えにきたのは、あの看護士姉妹だ。生前の美しい姿で、「せんせい」を迎えにやってきた。
 そう、彼女たちを殺すときに医者は言った。
「さすが双子だな。死に顔も同じだ」
 その言葉通りに、神父の死に顔もまた、双子の弟・医者と同じはずなのだ……。

 てな。
 医者が神父を殺して入れ替わる、意味がわからないんだもんよ。
 ふつーに、素直に、医者は自殺、それによってヘタレ神父が成長、雄々しく戦って散る、でいいじゃん。
 看護士姉妹が神父を「せんせい」と呼ぶのは、医者の「さすが双子だな。死に顔も同じだ」の決め台詞(実際、この台詞には腰が抜けた。かっこよすぎー)を受けているのよー。
 それなら、伏線全部拾った気持ちいい物語になるじゃん。
 医者と神父の入れ替わりネタは、制作者のあざといトリックにしか思えない。入れ替わりに気づかない方が、話がちゃんと通るんだもの。

 また、腐女子的にもな。
 医者と神父、おいしすぎるっつの。
 最期の台詞が「兄さん」って……神父が兄だったのか!!(笑)

 とにかく、医者がかっこよすぎ。
 実際、操作してても強いしさ。打撃系武器での最強キャラだ。

 かっこいいというと、学者も一瞬だけかっこよかったな。
 屍人の巣の水鏡ですか、あそこに生存キャラ全員集まるときの、ムービー。
「遅かったか!!」
 と、叫びながらの登場。えっ、アンタ生きてたの? もっと先の話で神父がアンタの武器持ってたから、てっきりアンタも医者みたいに死んで、武器を神父に託したんだと思ってたよ。
 しかも「遅かったか!!」ってことは、なにもかも知っていて、この場所を目指していたってことよね? 求道女の野望を阻止するために。
 この一瞬だけは、かっこよかったなあ。
 そのあとも、あたりまえにリーダー面して、高校生少年に命令していたし。ヘタレてる神父のことはあっさり見捨てるし(笑)。

 なのに、オチがアレだもんな……。
 学者の最期は語りません。愉快だから、あえて伏せる。
 一瞬とはいえ、主人公のように見えたあとだったから、すごいギャップだったよ、おじさん。

 結局、主人公は高校生少年だったんだなあ。
 彼の「バトロワ?」的ラストは、かっこよかったよ。

 それにしても、ダークな物語。
 13人もプレイヤー・キャラがいて、生き残ったのはたった1人、生死不明が3人、残り全員悲惨としか言えない最期って……なんちゅー暗いゲームだ。

 ホラーとしては、ほとんどこわくありませんでした。
 アクションゲームとして、スリルは山ほど味わったけど。

 舞台が昭和の香りのする日本だったのが、いちばんの勝因だなー。
 やっぱ日本はいいよ。
 建物とか、こわいからさー。
 屍人の巣なんて、マップ見るなりわくわくしちゃった。いちばんたのしかったな。

 これからも、日本を舞台にしたゲームが発売されて欲しい。

 つーことで、なんといっても『零』。
 腐女子萌えはできそーにないゲームだが(笑)、ホラーとしてはやっぱNO.1でしょう。
 日本が舞台って、それだけでも恐怖感UP。

 こわいよー。
 こわいよー。

 まだ最初しかやってないけど、めちゃくちゃこわいよー。

 この演出力は、見習いたいわ。
 そうか、ひとはこんなふうに怖がらせられるのか…
 11月27日といえば、なんの日?

 『零〜紅い蝶〜』の発売日だ!!

 昼過ぎには、弟からメールが入った。
「零とトロのメモリーカード買った」と。

 ホラーゲーム『零〜紅い蝶〜』と、トロ。
 トロというのは、『どこでもいっしょ』のあのトロだ。表情豊か・感情豊かでちとウザい、白い猫。
 そのトロの「顔」がデザインされたメモリーカードが、やはり27日発売なのだ。
 写真で見ただけで、あまりのかわいさに、緑野姉弟大騒ぎ(笑)。絶対買うぞー、と。

「しかし、『零』とトロを一緒に買うなんて……ものすごいミスマッチ」
 と、弟。
 いいじゃん(笑)。

 そして、帰宅した弟から受け取ったトロのメモリーカードは、ほんとにほんとに激カワ。超プリティ。
 メモリーカード自体が、トロの「顔」になってるんだよー。ケースもかわいいしー。

「ほんとに、かわいいよなー」
 と、弟も目尻下げてる。
 ええもちろん、弟は自分のもしっかり買ってます。姉弟でそれぞれひとつずつ買いましたとも。
「このかわいいメモリーカードに、まさか『零』の幽霊写真がセーブされてるなんて、誰も思わないだろうな(笑)」
 『零』専用にする気か、弟よ。

 ということで、発売日の夜から、緑野姉弟念願の『零〜紅い蝶〜』プレイ開始!!

 えっ、この間までやっていたホラーゲーム、『SIREN』ですか?
 数日前に、無事に終了しました。

 ツッコミどころははてしなくあるが、『SIREN』はおもしろいゲームだった。
 ホラーゲームとしては、もちろん『零』に遠く及ばない。
 ただし、「アクションゲーム」としての出来は、すばらしいぞ(笑)。

 あの、絶妙の難易度設定。
 わたしのようなヘボゲーマーでは、ふつーにプレイしているだけじゃあ、絶対にクリアできない。
 だが、同じマップを1時間以上、忍耐と努力で練習しつづければ、かろうじてクリアすることができるのだ。
 うちの弟のような、ふつーレベルのゲーマーでも、何度も死んで自分の腕を上げることによって、なんとかクリアできるというレベル。
 努力しない者は、クリアできない。しかし、努力すれば、かろうじてできる。
 ……てソレ、アクションゲームじゃん。ボタンをうまく押すとかレバー操作の熟練度を上げるとか、アクションゲームに必要なことじゃん。ホラーゲームちがうやん。

 まあなんにせよ、「あと1回。あと1回再チャレンジすれば、勝てるかも」と思わせる難易度設定はすごいと思う。
 アクションゲームなんて、簡単すぎてもおもしろくないし、敵が強すぎても絶望してやる気にならないからねえ。

 一通り終わった、というだけで、真のエンディングとやらは見ていません。
 もう一度やるには、アクションの難易度が高すぎるのよー。アーカイブ・コンプはやる気になんないよー。数時間の努力の末にやっと勝てる、なんて数十個のミッションを、もう一度全部やり直すなんて、ごめんだわ。
 たぶんわたし、総プレイ時間は100時間ほどかかってると思う。
 100時間って……どんな壮大なゲームよ? 『FF7』か?
 とりあえず、記録にあるだけでも40時間を超えてるわけだから。その倍の時間は確実に、死んでたわ。

 救いのない物語も、たのしんだ。
 とにかく、「プレイヤー・キャラ」がどんどん死んでいくからねえ。死ぬだけならいいけど、屍人になっていくからねえ。
 ふつー、プレイヤーである「わたし」が操作するキャラクターは、死なないよね? わたしがヘボだからすぐ殺されてゲームオーバーになるけど、そのときはまたリトライ、1からプレイし直すから、ゲームの物語上では「死んでいない」のがふつう。
 だけどこの『SIREN』ってば、わたしが操作しているキャラクターが、どんどん「物語上で」死んでいく。自殺したり、殺されたり。
 そして、「屍人」というゾンビになって現れる。
 わたしは、さっきまでわたしが操作していたキャラを、今操作しているキャラで「殺さなければならない」。
 この、ブラックさ。
 後味の悪さ。

 とくに、それまで必死に守っていたキャラを殺すのは、なんともダークな展開ですなあ。

 たとえば、クールいちばんの医者がいる。27歳の青年医師だ。彼は、看護士の姉を訪ねてきた美しい女(妹、とわたしたちは呼んでいる。『SIREN』で「妹」と言えば、この看護士を姉に持つ女のことだ)と知り合う。
 村は今、屍人という化け物でいっぱい。まともなのは、医者とその女……妹だけ。
 医者は妹を守り、屍人と戦う。
 そりゃーもー、大変な戦いだ。へたっぴのわたしは、何度も屍人に殺されたし、守らなきゃいけない無防備な連れの妹を殺され、ゲームオーバーになったさ。
 そうやって苦労して、妹を守りながら自分も無事に敵陣を突破して。ああよかった、これで安全なところへ来たんだわ、と思えば。

 妹、屍人になるし。

 医者、めちゃクールに妹を殺すし。

 あんた、今の今まで、必死になって守ってきたんじゃん、その子を!
 物語部分はムービーなので、プレイヤーであるわたしは、ただ見ているだけさ。あんまりな展開に、口が開く。
 それにしても医者、かっこいい……。
 身を盾にして守ってきたか弱い女を、「敵」と認識するなり薄ら笑いのもと惨殺しちゃうんだもんなー。
「さすが双子だな。死に顔も同じだ」
 って、やっぱり彼女の姉を殺したのもアンタなのね?! 自分が殺した看護士と瓜二つの顔をした妹を、なに食わぬ顔で守って戦ってたのね? ソレって人として壊れまくってますがな。クールにもほどがある。
 そして、そうやって守ってきた妹を、こんなに簡単になんの感慨もなく殺しちゃうのね? 壊れまくり。クールにもほどがあるってば。
 ああ、かっこいいぞ、医者……。

 つーことで、『SIREN』の医者の話をしたいんだが、文字数が足りないので翌日欄へ。
 ネタバレで行きます。

 
 『SIREN』難しすぎ……。
 こんなに難しいゲーム、久々だわ……。

 いや、わたしはへたっぴなので、大抵なにやったって難しいんだけどね。アクションは大の苦手だし。
 しかし。
 それにしても、難しいだろ、『SIREN』。

 ケバ女のシナリオで、屍人全滅させろ、というミッションが出たときに、思わず絶望して電源切りました。
 ……できるかっ、そんなこと!!
 一定時間経ったら生き返る敵キャラ相手に、わずかな武器しかなくて、いつも青色吐息でクリアしてるのに、全滅になんかできるもんかーっ。

 それでも、とりあえずそのシナリオもクリアして、現在も鋭意努力中。
 竹内家の墓を見つけるのに数時間かかった……。

 されど。
 されど、わたしはオタク女。腐女子ここにあり。

 ねえねえ、このゲームのあのふたりは、どうなんですか?
 神父と医者ですよ。
 正確には神父じゃなくて求道師という名前なんだけど、見た目はストイックな黒衣の神父。医者は何故かプライベート?なときも白衣着用(何故だ・笑)。職業とコスチュームだけでも萌えですな。
 神父は心優しきヘタレ男。医者はちょいと翳のある強い男。
 しかもこのふたり、生き別れ?の双子の兄弟だとかいうじゃないですか。

 わたしはすでに神父のことを「姫」と呼んでます。
 まだ初日のシナリオをぐるぐる回ってるところなんで、大してストーリーが進んでいるわけじゃないんだが、男キャラの中で唯一「武器を持って戦わない」のが神父。
 女の子キャラと同じ扱い。ただ、逃げる。隠れる。……捕まったら最後、なにもできずに殺されるのみ。
 求道女の膝にすがって泣いてみたり、ゲーム内の悲惨な出来事を前にして、運命に翻弄されるヒロインみたいに絶望してみたり、やることなすことなんてツボなの。

 いちばん萌えたのが、病院でのムービー。
 敵に襲われたとき、神父はただおびえるだけでなにもできない。そんな彼を、あたりまえにかばって戦うのが、医者。
 謝る神父、「仕方ありませんよ、あなたはこーゆーことに慣れてないんだから」てな意味のことをさらりと言って、神父の代わりに戦う医者。……医者だってべつに、戦いに慣れてるわけじゃないと思うんだが。

 姫だ……。
 神父、すでにアンタ、姫だよ。
 女の子キャラよりよっぽど、お姫様してるよ。

 ああ、ケロに演じて欲しいキャラだ……。『血と砂』のフアン再び、てな(笑)。
 となると、医者は誰がいいかなあ。男前な強い人……。

「それにしても……声、ヘタじゃないか、みんな?」
 と、弟が言う。
 ああ、言ってはならんことをっ。
 『SIREN』は役者が実際に演じた姿を元に、キャラの動きや表情を作ってあるらしいんだよね。制作サイドの話なんぞなにも知らないのだが、声はどーゆー人たちがやってるんだ? 役者本人か?

「とくに、学者。アレ、どうよ?」
 と、わたし。
 ああっ、言ってはならんことをっ。
 弟もぶはっと爆笑している。

「学者、いちばん演技ヘタだよなー。アレは正直、すごい。なんであんなにヘタなんだ?」
「いまどき、あんなにヘタだなんてすごいよねえ。大抵の俳優も声優も、そこそこうまいのにねえ」
「学者なんて、いちばん演じやすいキャラだろ。クールでニヒルな男なんだから」
「入り込んで演技しやすいキャラだよね。しかしアレは、意図があってわざと棒読みなの? 滑舌も悪いし。御手洗潔みたいなビジュアルで」
「まだ眼鏡女の方がよっぽどうまいよなあ。『せんせえ、なにしてんですかぁ?』」
「主役?の高校生男子は、演技わりとうまいよね。『その犬、もう死んでるっぽいし』には感心した」

 声の演技は、重要だよなあ。
 わたしたちにはすでにトラウマとなっている、『エコーナイト2』というホラーゲームがあってだな、このゲームの声優が超絶ヘボかったのだわ。
 標準語を話すことができるだけの素人を使ったとしか思えない、完全無欠の棒読みぶり。なまじ、少し感情をこめようとして、「素人ががんばってます」調の、いっそアナウンサーぐらい無感動の方がサムくなくてよかったよ的大失敗をしているのだ。
 あれ以来、ホラーゲームの「声」がどれほど重要かを思い知っているもんでな。『SIREN』の制作にホンモノの役者を使っていると聞いたときから、声の演技力には危惧していたよ。声優ってのは、やっぱり技能職だと思うから。

「なんにせよ、『エコーナイト2』よりマシだから、いいか」
「『エコーナイト2』を越えるヘタ声優は、探す方が大変だろ。つーかアレは、声優全員が『SIREN』の学者レベルだったもんなあ」

 まあ、アニメではなくゲームだから。しかも、画面が実写に近いし。
 多少のヘタ声は、味と言えなくもない。

「それにしても……小野不由美の『屍鬼』に似てるよな。あらゆる意味で」
 と、弟が言う。
 ああ、言ってはならんことをっ。

「あらゆる意味で、やばいくらい似てるよな」
 と、わたし。
 ああ、言ってはならんことをっ。
 『屍鬼』もたしか、宗教家と医者だったよなあ……腐女子の萌えは。宗教家はヘタレで、医者は強かった。

「ところでコレ、『零』の発売日までに終わりそうか?」
「……無理じゃない?」
「シナリオのボリュームだけは、ものすごいしな」
 『零』までのつなぎだったはずなのに。こんなにこんなにプレイしても、まだ初日シナリオだなんて。
 いつ終わるんだ?

 それにしても。
 冬コミの原稿、進まないよ……。

 
 6日に、弟に出したメール。
『SIREN、買うよね?
昨日、阿呆父のせいでいっぱい泣いた、かわいそーな姉のためにも、買ってくるように(笑)。』

 『SIREN』というのは、6日発売のプレステ2のゲームソフトだ。弟は買うかどうか悩んでいる様子だった。
 理由はひとつ。月末に、『零−紅い蝶−』を買う予定だから。忙しい彼は、今新しいソフトを買っても、プレイする時間がない。
 でもでも。わたしはやりたいのよ、『SIREN』が遊びたいの! でもって、びんぼーなわたしは、自分では買えないのよ、それなら弟にねだるしかないでしょう!(笑) 買ってよ買ってよ、そしてわたしにプレイさせてー。

 そしてその昨日、わくわくと弟の帰りを待っていたら。
『いつも行くゲーム屋で、SIREN、売り切れてた』
 と、メールが届いた。
 うっそぉーっ、売り切れ?! つーか、そんなに売れてんの?! 腐ってもソニー・ブランドっ?

「そんなら、別のゲーム屋行きなよ! アンタの職場の近所、ゲーム屋くらいいくらでもあるでしょ」
 あきらめきれないわたしは、帰宅した弟に言いたいことを言っておく。彼は無言で聞いていたが。

 本日、1日遅れで買ってきてくれました、『SIREN』!!
 家庭内でいろいろあり、すっかりぐれていたわたしに、多少同情してくれたのかもしれんな、弟よ。

 ホラーゲーム『SIREN』。
 ドラマ『トリック』の舞台になりそーな山の中の村が舞台。謎の伝承、儀式、迷い込んだ人々と、襲いかかる屍人……「村」と「人間」の描写がリアルでこわそう。
 『ファミ通』の記事を読んで姉弟そろってわくわくしていたソフトだ。腐っても「ソニー・コンピュータ・エンタテインメント」製タイトルだからなっ(いや、ソニー製のタイトルでも、ヘボはいろいろあるが。『レジェンド・オブ・ドラグーン』とか、とか…笑)。『零』と同じ月に発売でさえなければ、弟もなんの躊躇もなく買っていたはず。
 パッケージの写真も、マニュアルもいい感じだ。ああ、この血まみれの老婆なんて、こわくていいよなー。

 ひとしきりパッケージやマニュアルを見ながら、姉弟で喋る。プレイする前にあーだこーだ想像してお喋りするのもたのしいんだよねえ。

「いつもとはチガウ店で買ったわけなんだけど。新発売のタイトルで、いちばん大きくコーナーが作られていたのは『スパロボ』だった」
「そりゃ『スパロボ』でしょ。わたしが店の人でも、『スパロボ』で大々的にコーナー作るよ」
 と言うわたしは元ゲーム屋の店員だ。
「んで、『SIREN』は2番目の扱いだった」
「ほお。それでも2番目なんだ」
「うん、それでその店、『SIREN』に購入特典っつーか、おまけが特別についてたんだ」
 と言って弟は、さらに鞄をがさごそする。

 おまけ? その店独自の? ホラーゲームの「おまけ」なんて、なにがつくのよ? まがまがしいもの?

 出てきたのは、

『零−紅い蝶−』の映像DVDだった。

 爆笑。
 こうきますか!!

「すごいだろ、コレがコレの購入特典だよ? 信じられる?」
「すごいっ、たしかにすごい!!」

 大ウケするわたしたちのそばで、母がぽかんとしている。
「なにがそんなにすごいの?」

 化粧品にたとえて説明しましょう。
 A社の製品を買ったお客さんがいるとします。もしこれにおまけをつけるとしたら、ふつーは、「A社の」試供品だとかノベルティです。資生堂の化粧水買った人に、わざわざカネボウの乳液をおまけであげたりしないってこと。
 メーカーは、自分とこの製品を買ってもらうために、おまけをつけるわけだから。
 『SIREN』はソニー、『零』はTECMOなんだよね。メーカーがチガウの。だから、業界のルールからいうと、おまけにはならない。
 ところが。
 A社の製品を買ったのに、B社の試供品をおまけでもらってしまった。何故か。
 それは、買った製品が、特殊なジャンルだったから。
 A社のダイエット用サプリを買ったら、B社のダイエット用サプリの試供品をおまけでもらってしまった、てな感じです。
 メーカーや商品名を中心に考えて買うのではなく、「ダイエット用サプリ」という特殊な製品を中心に考えた買い物である場合、こーゆーおまけの付け方はアリだよね。
 なにがなんでもダイエットしたい人は、別のダイエット商品だって試してみるだろうから。

 ホラーゲーム『SIREN』を買った人に、ホラーゲーム『零』の宣伝DVDプレゼントか!

「さすが、日本橋のゲーム屋はチガウねえ」
「オタクの街だからなあ。店員がゲームの内容を理解してなきゃ、できない特典だよなー」
「『SIREN』買う人が『零』の映像見たら、そりゃ買うでしょう!」
 ぱちぱち。すばらしいおまけです。

 とゆーわけで、緑野姉弟は本日から『SIREN』のプレイをはじめました。

 まず、最初にやるのは購入者である弟。
 深夜にわたしの部屋にソフトを配達に来た彼は、差し出しながら、
「なかなかいい感じ。……しかし、むずい。アクションがかなりシビア」
 と、言う。
 ア、アクションがシビア? ちょっと待て、アクションゲームなの?
「かなりアクションだな」
 ……あたし、できるかな?
「さあ? 苦労するんじゃない?(にやり)」

 弟が見学している前で、とりあえずプレイしてみる。みる……が。

 スタート1分で死んだ……。

 ななななにこれ。あっ、また死んだ。またやりなおし。ええっ、なにこれえっ。

「どうも、死んでおぼえるゲームらしいな」
 ひええ、マジっすか。
 ゲームオーバー、リトライの連続!!

「まあ、がんばれ」
 死に続けるわたしに、にやにや笑いを遺して、弟は自分の家に帰っていった。

 ホラーゲーム『SIREN』。
 こわいというより、忙しい……。

 
 昨日に引き続き、『クロックタワー3』の感想。
 とゆーのも、花組青年館の並びに行く前にプレイしていたのよ。並びに出かける時間の関係で、寝るのはあきらめていたしな。
 第4話の後半から、エンディングまで一気にプレイしました。

 痛切に思ったのは、スタッフが「恐怖をはき違えていること」だ。
 あるいは、わたしが感じる「恐怖」と、スタッフの求める「恐怖」が別のモノだったということだろう。

 全5話構成のこのゲームでわたしがおもしろかったのは、2話まで。3話以降は別。

 2話までの物語にあったのは、「精神的なこわさ」だった。
 見知らぬ夜の街を、自分の足で歩く恐怖。
 美しい町並みなのに、あちこちに残る惨劇の痕。
 死体や血痕から、そこで起こった出来事を想像し、ぞっとしながらも次へ進む。
 これって、精神的な恐怖なのね。人間に想像力があるからこその、こわさ。なにも痛い目には遭ってないにもかかわらず、こわい。
 現れる殺人鬼も、ギリギリ現実の範疇。「まさか、そんな」と思わせる、現実の陰惨な事件の凶悪犯レベル。実際、街で拾う新聞に「連続殺人」として事件が載っていたりする。
 現実だからこそ、こわい。
 幽霊も出てくるし、殺人鬼もどうやら生身の人間ではなく化け物らしいけれど、それでもまだリアリティは存在している。殺人鬼が化け物であっても、それに襲われるのは現実世界の人々だから。ふつうの生活をしている人たちだから。
 日常を徘徊する殺人鬼という恐怖。
 ゴシックロマンに満ちた前世紀のロンドンの街並みに、それはとても美しく融合する。

 ところが、3話以降はがらりと変わる。
 ここでの恐怖は、「追い立てられる恐怖」だ。「実際に痛めつけられる恐怖」だ。
 精神ではなく、「肉体的な恐怖」。
 舞台も場所もどーでもいい。とにかく素っ頓狂なクリーチャーが出てきて、奇声を発しながらヒロインを追いかけ回す。攻撃する。
 ゴシックロマンはどこへ行ったのおぉぉ?!
 魔と日常のあやうい均衡は?
 精神的などきどきは?
 現実にいるかもしれない、とぞっとさせる「殺人鬼」は?
 ……すべてを物語自身がかなぐり捨て、ただの悪趣味なアクションものに変貌。

 先にプレイしていた弟が、
「今、第3話の途中。斧男があまりにバカなんで、途中で止まってる」
 と言って、ソフトを貸してくれた。
 第1話の殺人鬼・ハンマー男も第2話の硫酸男も、十分バカだったのに、なにを今さらなことを言ってるんだ、と思ったよ。
 でも、プレイしてみて納得。
 あまりにバカだ、斧男。
 第2話までの殺人鬼たちは、とんでもない外見をしてはいたけれど、それでもぎりぎり現実の範疇。霧のロンドンを徘徊していてもなんとかOKだった。
 しかし、第3話の斧男は、現実なんかどこにも残ってなかった。異世界ファンタジーRPGのモンスターと同じ。しかも陽気な電波系。舞台もロンドンから、異世界に移転。
 あの、コレ、こわいっすか……? ただのバカに見えますが……。

「3話の斧男にしろ、4話のシザーズ兄妹にしろ、うざすぎ。もっとじっくり探検したいのに、すぐにあいつらが奇声あげながら出てきて、なにもたのしめない」
 はじめて歩く城の中とか、じっくり見てみたいじゃん。ぞっとしたいじゃん。精神的なこわさを堪能したいじゃん。
 なのに、精神的にぞっとしているヒマがない。殺人鬼が陽気にバカ丸出しに現れるので、逃げなくてはならない。
「スタッフはアレを『恐怖』だと思ってるんだろ」
 弟は言い捨てる。
 バカ丸出しの敵(露出狂の変態を想像してくれてOK。そいつらが、「ジョキジョキ〜〜(はぁと)」と叫びながらハサミを振り回したりするノリ)が突然現れて追いかけ回す、アレがスタッフの求める「恐怖」。
 精神的にぞっとさせるのではなく、肉体的にびっくりさせる。それが、このゲームでいうところの「恐怖」。
 びっくり、てのは別に、「恐怖」ではないんだがなあ。
 後ろから「わっ!」とおどかされたら、そりゃドキッとはするけど、ソレ恐怖チガウやん……。

 でもそもそも、『クロックタワー』シリーズというのは、そういうゲームなのかもしれない。
 シザーマンに追いかけられるゲームらしいから。

 それでもまあ、1回限りならどこでびっくりさせられるかわからないから、素直にびっくりどっきりしながらプレイ。そこそこたのしめる。
 でも、2回目はいらねーや。

 それにしてもアクションというのは、自分が成長しなければ勝てないんだよね。
 何度も死んで、自力でコツをおぼえ、腕を上げていく。
 ……だからわたしはへぼゲーマーなんだってば! アクションはダメなのよ、勝てないのよ!
 ラスボス相手に3時間……。
 戦い方を覚えたから、もう一度やればもっと楽に勝てると思うけど、2度と戦いたくないわ。

 2話まではたのしかったし、3話以降もストーリーにツッコミ入れつつ、それなりにたのしくプレイしました。

 『クロックタワー3』からの教訓……「所詮、似たもの家族」。
 正義の女戦士の家系であるという、アリッサの血脈。どうやら彼女の一族は、いろんな意味でやばい人ばかりみたいです。
 悲劇というより、立派な喜劇。
 ツッコミを待つ、捨て身の誘い受ファミリーです。

 そして、花組青年館の発売日。

 結果は、聞かないでください……るーるーるー(涙)。

 
 『クロックタワー3』終了。
 ラスボス倒すのに3時間かかった……指痛え。

 ツッコミどころは多々あれど、たのしかったよ、『クロックタワー3』。

 やはり、いちばんのツッコミは、マニュアルの最初のページを見開き使って、

 監督 深作欣二

 とだけ書いてあることかしらね。

 最初に見たとき、爆笑しましたわよ。
 だってコレ、「ゲーム」なわけよ。そしてコレは「ゲームの遊び方説明書」なわけよ。
 なのに、ゲームの操作説明はまったくせずに、「監督 深作欣二」よ。
 ゲームとしてまちがっているとしか、思えない。

 で、さらに次のページ。
 見開き使って、深作監督のプロフィール。
 だからこれは「ゲームの遊び方説明書」であって……以下略。

 さらに次のページ。
 ゲームを作った人たちが「写真付き」で解説されている。
 だからこれは「ゲームの遊び方説明書」であって……以下略。

 その次のページ。
 シーン紹介として、ゲームの画面写真が載っている。
 まあ、これはまだいい。なくてもぜんぜんかまわないものだがな。

 次のページ。
 ストーリーの冒頭部分の紹介。舞台がロンドンであることの説明。……まあ、こーゆーのはどんなゲームにも載っている。
 問題は、次だ。

 シナリオ担当者(もちろん写真付き)が「テーマを語る」。
 なんだそりゃ?
 だからこれは「ゲームの遊び方説明書」であって……以下略。

 ゲーム・クリエイターが説明書でテーマを語るなよ……。
 それがどんな作品であれ、作者自身がテーマを語ると痛くて寒いだけさ。だって、テーマというのはその作品に触れた人が、作品のなかから独自に感じ取るものであって、作者が解説するのはかっこわるいことこのうえない。作品でテーマを表現する能力がないから、口で言ってます、みたいな。
 しかも、ネタバレしてるし。
 これは「ゲームの遊び方説明書」だから、ゲームをする前に読むモノだ。小説の「あとがき」とはわけがチガウ。
 作者の「テーマ語り」を読んだら、オチもラスボスもなにもかもわかります。……そうでなくてもバレバレの話だけど、説明書で書く必要はないだろう。
 もちろん、雑誌のインタビューだとかコラムだとかでテーマを語るのは別よ。それはそれでひとつの仕事。ただ、作品本体に「テーマはこれこれです。すごいでしょ?」と書くのはやめろ。恥ずかしい。

 めくってもめくっても、「ゲームの遊び方説明」が出てこないんだ、この説明書。
 2ページも使って「レビュー」まであるし。
 作品本体に、「こんなにすばらしい作品なんですよ!」って宣伝エッセイが付いてるの。

 なんつーか……。
 スタッフの顔が見える作品ってのは、総じてヘボ度が高くなるよなあ。

 たとえば書店でさ、「あら、この本おもしろそう」と思って買った途端、
「お買いあげありがとうございます、それ、わたしが書いたんですよ! すごくおもしろいんですよ! テーマは**で、苦労した点は**で……、とくにここ! ここは味わって読んでくださいよ! いいこと書いてあるんだから!」
 と語られたら、引くよねえ?
 そんなこと言われなくても、おもしろければ内容で評価するよねえ? むしろ、作者がしゃしゃり出て語れば語るほど、「言わなきゃわかんないよーな駄作なのか?」と疑うよねえ?

 内容で勝負しようよ。
 大切に作った作品だからこそ、語りたくなる気持ちはわかるけどさあ。

 深作監督を持ってきた以上、彼を持ち上げなきゃならない、てのもあるのかね。
 ゲームの遊び方説明書ではなく、「映画のパンフレット」を意識した作りだってのも、わかるよ。
 でもさ。
 コレ、「ゲームの遊び方説明書」なんだよ。映画のパンフレットじゃなく。
 映画みたいにしたかったのなら、2冊に分ければよかったのに。「ゲームの遊び方説明書」と、おまけの「作品解説パンフレット」。
 1冊のなかでやるから、「自分の作品を自分で褒め称える寒い説明書」になるんじゃん。

 とまあ、ゲーム以前にツッコミどころ満載。

 もっともわたし、マニュアルあんまし読まない人なんで、あとから読んであきれたクチなんですが(笑)。
 基本操作だけチェックしてプレイして、「そんなことできるの? あたし知らなかったよー!」と言って弟によく「マニュアル読め。マニュアルに書いてある」と言われるなあ。

 んでもって、ゲーム自体の感想。
 いちばんの印象は、

 キャラクターの動きがリアル

 ってこと。
 深作監督が演出した生身の人間をモーションキャプチャリングして、作られているらしい。
 これほどリアルなキャラクタを見たのははじめてだ。
 リアクションのひとつひとつが、すっげーリアル。
 そしてヒロイン・アリッサの声がまた、すごいリアル。バーチャルでありながら、生身のような質感。声優さんなのか役者さんなか、ぜんぜん知らないんだけど、うまい人だー。

 ヒロイン・アリッサはなかなかいいキャラだ。
 なんせ「ゲームの遊び方説明書」において、いろいろ語られている。クリエイターによる「設定秘話」が載ってるの。こうこうこうだから、こうしました、てな。テーマとはべつに、キャラまで口で説明してくれてるのさ。
 それによると彼女は「清純な乙女」らしい。
 たしかに見た目はそうだ。しかし、実際にゲームをプレイしてみると……。

 ふつーの女の子のハズのアリッサは、魔のモノとの戦いに否応なくまきこまれていく。
 第1話では、なにがどーなってるのかわからないものの、彼女は前向きに化け物と戦い、勝利する。
 そして第2話。アリッサが魔のモノと戦うことになったのは、すべて宿命だったことが判明。彼女の家系は「正義の女戦士」の家系で、大昔からずーーっと魔のモノと戦い続けてきたのだ。
 ここでアリッサ、いきなり開眼。
「わたし、正義の味方だったんだわっ」
 ええっ? ふつーショック受けませんか? これからずっと化け物と戦うのよ? しかも、大人になったら次の戦士を生むために、結婚して女の子を産むことまで宿命づけられているのよ?
「よーしっ、化け物倒しちゃうぞーっ、だってわたし、正義の味方だもんねーっ!!」
 やる気満々。
 清純な乙女って……。
 こーゆー「戦う宿命」モノの主人公ってさ、最初はまず、その宿命に悩まないか? 正義の心がないわけじゃなくて、人としてさ……。それまでふつーの中学生でしかなかった女の子が、ある日突然、
「あなたは正義の女戦士です。あなたの一生はすでに決められています。さあ、化け物と戦いなさい!」
 って言われたら、悩んだりヘコんだり反発したりするよねえ?
 それでも最後にはその宿命を受け入れ、世界の平和のために雄々しく戦ったりして、感動を呼ぶのがセオリーよね?
 アリッサって……いいキャラだ……。
 第2話からすでに、やる気満々、「かかってきなさい!(鼻息)」状態。
 清純な乙女って、すげえなあ。笑わせてもらったわ。

 全5話構成なんだけど、2話まではとても好みで、おもしろかった。
 アリッサの自宅にはツッコミどころが多すぎて笑いナシでは語れないが、彼女が魔のモノと戦うことになる街は、とてもロマンがあった。
 20世紀半ばのロンドンの街と、夜と霧と殺人鬼という設定は、とても好み。
 昭和の戦後すぐぐらいまで存在した、魔と現実が融合した摩訶不思議空間の香りがするのね。
 石畳の街を自分で歩く高揚感。夜の闇と、街灯の明かり、ぽつぽつと放置されている死体と血のあと。鳴り響くピアノの音。彷徨い続ける、思い…
 わたしはへっぽこゲーマーである。
 ゲームは大好きだが、とにかくへたっぴだ。
 そのくせ、細かいことが好きだったりする。コンプリートとか完全攻略とかが大好きだ。
 アクションは超絶苦手で、なにもできない。死にまくる。つまり、時間がかかる。
 かといってロープレやシミュレーションなどは、ちまちまコツコツ積み上げていくのが好きだったりする。つまり、時間がかかる。
 なにをやっても、ひとより遅い、時間がかかるのだ。
 なんせ、へっぽこだから!

 なのに弟ときたら、どんどん新しいゲームを買ってくるのよ!
 自分はさくさくクリアできるからって!
 転勤して仕事が楽になったからって!(以前の仕事が過労死必至レベルだったから、たんに人並みの仕事量になった程度だが)

 遊ぶ時間ができたことと、転勤先の周囲にゲーム屋だの大型書店だのと彼の好きな文化を販売する店が多くあるらしく、最近弟は機嫌良く気前よくいろいろ買ってくる。

 ついこの間は、『バイオハザード』の初版を買ってきた。
 いちばん最初の『バイオ』だ。まだあんなに売れるとも、シリーズ化して一大サーガになる果てることも、爪の先ほども考えられていなかった、初期設定版。
 ふたりで説明書を読んだんだが、それだけですでに爆笑だった。
 弟はすぐにプレイして、「腰が抜けそうなほど笑える」と言っていた。現在の壮大な物語から考えると、つじつまが合わなさすぎておもしろいらしい。

「とりあえずジル編はクリアした。まずクリス編のOPムービーを見たあとに、ジル編をプレイしろ。笑えるから」
 という注釈付きで、『バイオハザード初版』はわたしの部屋に届けられた。

 わかった、プレイしてみるよー。つーかまず、メモリーカード探さなきゃ。PS1だろ? 空きブロックあったかなあ。

 そうこうしているうちに。
 本日、さらにもう1枚、新しいソフトが届けられた。

 弟、また買ってきやがんの。

 今度のは『クロックタワー3』だ。

「『クロックタワー』シリーズって、やったことないよ。そこそこ人気あったよね?」
「ぼくもやったことない。でも、パッケージやファミ通の記事ではけっこういい感じ」
「『1』や『2』にくらべて、『3』ってどうなの?」
「シリーズ通してのファンからは、ブーイングがあるみたいだな。基本的に『クロックタワー』は敵から逃げるスリルを味わうゲームだから。『3』は敵と戦うらしい」
「ええ? 戦ったら『バイオ』にならない? メーカーも同じカプコンだし」
「レーベルが同じでも、制作チームが同じということにはならんから、それはどうかな? ま、過去作品をやってないから、『3』もふつうにたのしめるんじゃないかな」

 てな会話をした数時間あとに、弟がわたしの部屋に現れた。
 『クロックタワー3』を持って。

「とりあえず、ひとつめのボス戦までやった。ねーちゃんもそこまでやれ」

 ……わたしも今すぐやるんですか? ソレ、決定事項なの?

 というわたしはそのとき、ニンテンドウ64のコントローラを握っていた。
 ええ、Be-Puちゃんから借りたままの『オウガバトル64』を1からやりなおしてるのよ。前のデータは古すぎるから捨てて、現在のヅカ事情でやりなおし。
 最強は水くん率いるチーム。ウィザードの水くんと、クレリックのかなみちゃんがいいコンビでね。
 ファランクスのケロは、クレリックのトウコと組んでラブラブ道中かと思いきや、ウィザードのゆうひも同じチームなので、まあトライアングル(笑)。てゆーか、ケロはアライメントがカオス寄りなキャラなので言動が荒くて……ウバルドにーさんのやうだわ。
 アサコはアライメントがロウなのでめっちゃ礼儀正しい。とゆーのも、騎士様オサとずっとコンビを組ませていたせいなんだよねえ。
 そしてふと気づくと、たかこがいない……お花様もいない……何故? 水くんとかなみちゃんがいて、どーしてトップコンビを作るのを忘れてるの?! あと、エミクラがいるのにリカちゃんがいなかったりな。チャルさんとか越リュウとかまでいるのに! なんか妙な面子で戦争してるわ、わたし。

 てな取り込み中のわたしの横に立って、弟は『クロックタワー3』を語る。

「感触は『バイオ』というよりも……アレに近いな」
「アレ?」
「……『エコーナイト』」

 はあっ?!

「『バイオ』に似てたらソレ、名作かもしんないけど、『エコーナイト』に似てたりしたらソレ、クソゲーってことぢゃ……っ?!」
「うん、でもなんか、あちこちすげー似てる……」
 弟の顔は微妙に笑っている。
 『エコーナイト』。よりによって『エコーナイト』ですか!
 ファミ通のクロレビで何故か高得点取って殿堂入りしていた、とってもなまぬるい笑いをもよおすホラーゲーム。
 愛すべきクソゲーというか、ヘタレをたのしむゲームというか……わたしたちはけっこー好きだったりするが、アレは客観的に言ってかなりヘタレ感やびんぼー臭さが漂うゲーム。

 弟はわたしの部屋から動こうとしない。
 どうやら今すぐわたしに、彼の目の前で『クロックタワー3』をやってみせろというつもりらしい。
「あの、でも……とりあえずこのマップが終わらないと、セーブできないし」
 だからわたしは今、64やってんだよーっ。『オウガ64』てばリアルタイムバトルだから、一瞬も目が離せない、反射神経必至のゲームなんだってば。手が離せないんだよ、他のゲームどころじゃないんだってばよ。
 弟はすごすご帰っていきました。『クロックタワー3』をわたしに渡し、「明日までに最初のボス戦までやれ」と命令して。
 しかも。
「かなりアクションはシビアだから、ねーちゃんにできるかな(にやり)」
 と、捨てぜりふを残して。
 むっきー。
 明日の夜、弟が仕事から帰るまでに言われたところまでやっておかないと、なんか言われるんだわ! どーせわたしはへっぽこだけど! 弟もわかって言ってるんだろーけど!

 てゆーか弟よ。
 あたしはあんたの何倍も時間がかかるんだってば、なにごとも。
 この間渡された『バイオハザード初版』だってまだ、1度もプレイしてないのに!
 このうえ『クロックタワー』ですか?
 終わらない、終わらないよそんなの!

 そもそも、『オウガバトル64』がちっとも進みません! まだ第1章なのに、ひとつのマップに5時間とかかかってるんですけど? 尋常でないほど遅いよね?! コレ、いったい何章まであるの? 終わるの?

 うわーん。
 ゲームの腕が欲しいよー。

 とりあえず、『クロックタワー3』これからプレイします。

 
「ちょっとぉ、遊び終わったらDISC元にもどしておいてよ! 『バイオ』をやろうと思ったら、“DISC1を入れて下さい”ってメッセージが出るのよ! アンタはもうDISC2だけど、あたしはまだ1なんだからね! いざ戦うぜ!な気分に水を差されるのよ、DISC変更にごそごそするのって!」

「同じ『バイオハザード』のDISC1と2なんて、かわいいもんじゃないか。ねーちゃんこそ、遊び終わったらDISCを元に戻せ。『バイオ』をやろと思ってスイッチ入れて、『どうぶつの森+』がはじまる、あのとほほ感……マジ、腰砕けるぞ」

 緑野家のゲームキューブでは、『バイオハザードCODE:Veronica』(DISC1、2)と、『どうぶつの森+』がプレイされていた。
 片や血みどろ殺し合い、片やほのぼの癒し系。
 1台のハードと、2組のソフトが2軒の家を行き来する。

 
「『ベロニカ』だけどさあ、いちばん美しいのってひょっとして、ウェスカーなんじゃないの?」
 と、言ってみたら、
「たしかにな」
 と、弟も同意した。

 『バイオハザード CODE:Veronica』。
 まず弟がクリアし、ついでわたしも無事クリアした。

 『ベロニカ』をプレイしていちばんおどろいたことは、ヒロイン・クレアのかわいくなさだ。
 どーしたんだクレア?
 ヒロインなんだぞ?
 プレイヤーの分身なんだぞ?
 なんでそんなに、かわいくないんだ?

「クレアがおばさんに見える」
 先にプレイした弟が、首を傾げてそう言ったんだ。
 おばさん?
 『バイオ』シリーズの中で最年少ヒロインをつかまえて、おばさんはないだろ。
 そう思ってはみたものの。
 たしかに……おばさんだわ、こりゃ。

「ジル(バイオハザード3)はきれいだったし、レベッカ(バイオハザード0)はかわいかったよね?」
「ああ、レベッカなんか、すごくかわいかった」
「なのになんで、クレアはこんなにぶさいくなの?」
「どこが女子大生なんだ、こんな老けた女子大生アリか」

 髪型がイカンのか? いかにもおばさんめいた、真ん中分け。

「てゆーかさ、クレアってあんまし、制作者に愛されてない? ふつー、ヒロインはもっと気を遣ってかわいく描くよねえ? 髪の毛とか一本一本揺れていたりさー。なのにクレアの髪、べたっとしたまま、のりで貼ってあるみたいに一切揺れないよ」
「表情も乏しいしな」
「それに比べて、悲劇キャラのスティーブの美しいこと。彼はすごく気を遣って描かれてるよね」
「あとはまあ、アレクシアか。美女っていう設定だからな」
「美しい順番で行けば、ウェスカー、スティーブ、アレクシア?」
「クリスは……美しい、というのとはチガウけど……クリスも変わってないか? あんなに二枚目だったっけか?」

 クリスといえば、マッチョなタフガイ。いかにもなアメリカ人。
 なのにクリスってば、マッチョでなくなってるのよーっ。
 すらりとした男前になってるのよーっ。

「なんか、アメリカ人というより、日本男児って感じになってたね……」
「そう、それだ。日本製のゲームにありがちな、日本人のヒーローになってた」
「順番で行くと、ウェスカー、スティーブ、アレクシア、クリス……?」
「その、いちばんのウェスカーだけどな、なんか若返ってなかったか?」
「若返ってた! たしか中年だったはずなのに、やたら若くなってておどろいたっ」
「……どこぞの組織で改造人間になって、ついでに美青年になって戻ってきたのか……ウェスカー……」
 ハズさない。どこまでもハズさないヤツだっ、ウェスカー。

 しかしこのゲームにおいて、ウェスカーへの気合いの入った書き込み方は、すばらしいものがあるぞ。
 なんせ彼は美しいのだ。
 『バイオハザード1』において、チンケな小悪党であったはずのウェスカーが、シリーズを重ねるごとに美しく大物悪役になっていく。

「しかしクリス、間抜けだよなー。登場シーンから腹抱えて笑ったぞ」
「あー、崖を這い登ってたね……たったひとりで。なんでひとりで来るんだ、部隊率いてくれば、こんなに苦労しないのに」
「ウェスカーにアレクシアの始末を押しつけられるし。これだから、脳みそまで筋肉の男は」
「クリスがまぬけなのに加えて、ウェスカーの調子が良すぎるんだと思う……」

 『王家に捧ぐ歌』にどっぷりなわたしは、クリスがラダメスとかぶるよ。どっちもマッチョでのーみそまで筋肉でできたナイスガイ。
 最強の戦士であるにもかかわらず、巻き込まれ型の災難体質。
 星組でやるなら、クリスはワタルくんだよなあ。んでクレアがトウコ(えっ、また女役っ?!)、絶世の美女アレクシアは檀ちゃん。んでもって、双子のアルフレッドも檀ちゃんで見たいなー。檀ちゃん初の男役。軍服姿が見たいぞー。んで、クレアに恋する少年スティーブはまとぶんで。
 しかし……ウェスカー俳優がいない……。ケロ? オヤジなウェスカーならイメージだけど、今作のウェスカーは美しすぎるから、ケロじゃないよーな(ケロファンの台詞?!)。

「それにしてもクレアさあ、変わり身早すぎない? あれだけ武器持ってぼこばこ敵を皆殺しにしてきた最強の女が、クリスに出会うなり豹変」
「いきなりか弱い女の子になってたな。思わずつっこんだぞ、なにが『きゃっ』だ、って」
「クレアってさ……ひょっとして、ブラコン?」

 『バイオ』シリーズは男女コンビで事件にのぞむのがお約束。
 男が主人公なら女の子が相棒になるし、女の子が主人公なら男がナイトに現れる。
 そして、大抵の場合、この男女はいい感じになるのだ。

「『バイオ』はいっつも“吊り橋恋愛”ばっかだよね」
 正確にはなんといったっけ? はらはらどきどきしているときに、男女は恋に落ちやすいんだよね?
「でもクレアは、そうだっけ……?」
「『バイオ2』では、レオンとゆー美青年と知り合うけど……クレア、レオンのことなーーんとも、カケラも、思ってなかったよね」
「ひたすら、クリスのことばっか考えてた」
「でもって今回は、美少年スティーブがこの“吊り橋恋愛”にどっぷりハマって、何故かクレアに恋。……しかしクレア、まったく心動かず」
「クリスのことばっか」
「そして、あれほど強く戦いまくっていたくせに、クリスに会うなり豹変、突如か弱くかわいい女の子になる」
「ぶりまくってたよな……クリスと再会してからは、クレアはまったく戦わず、守られてやんの。下手したらクリスより強いくせに」
「いるんだ、そーゆー女。好きな男の前に出ると、人格変わるの」
「クリス、絶対だまされてるよな……クレアのこと、か弱い女の子だと思ってる……」
「か弱い女の子が悪の秘密基地奇襲するかっての」

 クリア後のご褒美イラスト?は、クリスとデートするクレアの図でした。クリスの私服のダサさ加減がもう……。

 そっかクレアはおにーちゃん大好きバカ娘か……。
 悪の秘密基地に武装して突入するのも、おにーちゃんに会いたさゆえ、か。
 そして、そこまでやっておきながら、おにーちゃんの前ではギャルゲーのやうな「妹キャラ」に変身か。
 すげえや。

「それにしても、ウェスカーは最後まで笑わせてくれるよなあ」
「ほんとにねえ」

 と、弟とたのしく会話してはいるんだけど。

 弟には言えない。
 言えないけど、このゲームでいちばんたのしかったことは。

 ウェスカーの爆裂片思いっぷりよおおおっ(笑)。

 そうかウェスカー、そんなにそんなに、クリスが好きか。
 別の任務で来たはずなのに、「クリスに会えたから、そっちはもうどーでもいい」とか言っちゃいますか。
 クレアをいぢめるのも、「お前が死ねば、クリスが悲しむだろうな」だし、「お前を助けに、クリスがやってくるはずだ」なのね。
 クリスのことストーカーして、プレゼント贈って気を引いて(これがまた、ろんなもんぢゃねえ・笑)、ついには告白しちゃいますか。
 「お前が憎い」ってのは、「あいらびゅーん」と同じ言葉だよね、旦那?!(笑)
 せっかく捕まえたクレアのことも、クリスが「クレアを離せ。お前の目的は俺のハズだ」と言ったら、「そうだな」ってあっさり解放しちゃうし。ほんとに、クリスのことしかアタマにないのね。

 わざわざクリスにもう一度会うために、改造人間?になって、10歳くらい若返って、そのうえ美形になって戻ってきたアルバート・ウェスカー。
 笑えるくらいの爆裂片思いぶり。
 のーみそまで筋肉のクリスは、まーーったく気づいちゃいねえ。

 ああそしてわたしは。
 わたしは……。

 どうしよう、ウェスカーさんが「受」に見えます〜〜っっ。

 シリーズ1作目から、ウェスカー×クリスだったのに。ウェスカーは鬼畜攻だったのに。
 今では、空回り受に見えます……。
 なまじウェスカー、美人になっちゃったし。クリスもすっきりとした男前になっちゃったし(なんなのよ、あの長い脚は)。
 当初の「狡猾そうな中年男」の鬼畜攻と、「のーみそまで筋肉のマッチョ青年」受、という構図が崩れたからねえ。
 マッチョじゃないクリスなんか、受にしてもたのしくないわ(をい)。

 クリスなんかひと思いに殺せるだろうに(それくらい強くなってるのよ、メカ・ウェスカーは。スタッフの愛が彼には詰まってる)、何故かそうはしないウェスカー。
 じわじわいたぶりたかったのに、途中でやめる。
 この、やめる理由がすごい。
 ウェスカーの美しい顔が、突発事故で炎に焼かれちゃったの。彼は人間じゃないから、顔が焼けても平気らしーんだが。
「こんな醜い顔で、クリスの前にいられない!」
 ってことでしょうな。突然、「次に会うときは必ず地獄に送ってやる!」とか言い出すの。次の約束かよっ?!
 まだまだ戦えるのに、顔が焼けたからって退却ですか。……ヲトメ……。

 最初から最後まで、なにひとつハズすことなく、爆笑させてくれました、ウェスカーさん。
 すばらしい。

 
 ああでも、このいちばんのお笑いのツボを、弟に話せないなんて〜〜。つらいわー(笑)。


 さて、今やっているゲームは『バイオハザード CODE:Veronica』だ。

 姉弟で『静岡2』をやっていたはずなんだが、弟が『ベロニカ』を買ってくるなり『静岡』は放り出してしまった。
 わたしはまだ、『静岡2』は2回クリアしていたからともかく、弟は1回しかクリアしてないのよ? しかもその1回はわたしの1回目と同じく、自殺ENDだったのよ? なのにもう投げ出すの?
「『バイオ』があったら、『静岡』なんかやる気になるわけない」
 とのこと。

 そうして、またしても姉弟で『バイオ』をやりながら、つらつらと話すんだ。

 『静岡』ってのは、システムが『バイオ』と似ているから『バイオ』系だと思ってたけど、ほんとのところは『クーロンズ・ゲート』系だよねえ?
 『バイオ』がSFとすれば、『静岡』はホラーなんだよね。
 ホラーだからなんでもありなんだよね。
「なんで化物が出てきて、主人公を襲うの?」
「だってホラーだもん! 化物くらい出なきゃ」
「その化物はどうやって生まれたの? そのカタチになった理由は?」
「だってホラーだもん! とにかくこわがらせればいいのよ」
「どうして主人公以外に人間がいないの?」
「だってホラーだもん! 他に人がいたらこわくなくなっちゃうでしょ」
「どうして主人公は、わざわざこんな変なところへやってきたの?」
「だってホラーだもん! そういうことになってるのよ」
「どうして主人公はこういう行動を取るの? 彼の行動は、たとえば膝が逆に曲がるくらい、人間の生理としてはおかしな行動だけど?」
「だってホラーだもん!」
 ……すばらしい免罪符だな。「だってホラーだもん!」で全部通っちゃうんだ。設定のいい加減さが。
 『静岡』のヘボさは、そのいい加減さにつきると思う。

 『静岡2』は、主人公たちの悪夢の世界だ。
 ジェイムス、アンジェラ、エディー、彼らは全員罪人だ。
 罪を犯したからこそ、もうひとつの「サイレントヒル」に迷い込んだ。呼ばれた。
 ……それはわかる。わかるよ。
 だけどな。
 「悪夢の世界」だからなんでもアリ、てのはないだろ?
 『静岡』ってつまり、そーゆー世界観じゃん。どーせ夢の中なんだから、なにやってもいいじゃん、理由も原因もなくていいじゃん、なところ。
 ほんとーの夢ならそれでいいけど、ゲームであり、人間が作ったエンタメである以上、整合性が欲しいよ。ルールがほしいよ。最初からそういったものを放棄しているのって、なんつーかこう、「誠意」がなくていやだ。

 そう、誠意だ。わたしが『静岡』に引っかかる最大の難点は、作品に誠意が欠けていることなんだわ……。
 たとえば、はじめから日本で売ることは放棄した、外国人に媚びた作りとか。
 はじめから詳細な設定なんか作っていなさそうなところとか。
 はじめから作品にもキャラにも愛がなさそうなところとか。
 愛がないから、手を抜けるところで手を抜くための努力だけはしていそうなところとか。
 制作者の誠意の欠如が感じられるから。
 だから、いやなんだわ。

 だけど、それでもやはり、わたしはこの作品のファンなのだと思う。

 制作者に誠意は感じられないにしろ、そのうえシステム的にもゲームとしてのクオリティ的にもかなり難ありだとしても、『静岡』には魅力がある。
 やはりそれは、『クーロン』的なダーク感だろう。
 悪夢の中での小学校、病院、遊園地。これらの存在感はすばらしい。
 いつか見た悪夢、を美術として表現するゲーム。それがあるから、わたしはこのシリーズのファンである。

 ……にしても、やっぱヘボいよ『静岡』。ムカつくよ『静岡』。
 文句言いながらも、これからも買い続けると思うけどな。『3』だって絶対プレイするけどな。
 このムカつき加減や、ツッコミ加減がまた、絶妙にわたしたち姉弟のハートを射抜いているのかもしれない。
 

 そして、『バイオハザード』。
 このシリーズはほんとうによくできていると思う。
 といっても、完全無欠だと思ってるわけじゃないさ。
 こちらもツッコミどころ満載。
 ただそのツッコミどころが、『静岡』とはレベルがちがうっちゅーだけのことでな。

「笑えるぞ」
 弟はにやりと笑いながら、わたしにキューブ本体ごと『ベロニカ』を貸してくれた。
 ゲームをプレイしてすぐに、弟の言った意味がわかった。
 笑えるわ、こりゃ。

 主人公はクレアという「女子大生」。
 女子大生だよ? たしかまだ18歳だったはずよね?
 アメリカの女子大生だから、銃の撃ち方ぐらいは知っているかもしれない。でも、あくまでも、「ふつーの女子大生」という設定らしい。
 だけどこのふつーの女子大生、悪の結社の秘密基地に潜入し、プロの戦闘員たちを相手に華麗な銃撃戦を展開、余裕で勝利している。
 何十人もの戦闘員に銃を突きつけられ、両手を挙げて降参、手にしていた銃を捨てる……ふりをし、落下する銃を拾いざまに発砲、敵の後ろのタンクを破壊し、壊滅させる……なんてことを、ふつーの女子大生ができるわけですか。
 オープニングから爆笑させてもらった。
 すげえなクレア。
 なんの訓練もなくここまでできるなら、たぶんアンタは天才を通り越して化物だよ。アンブレラもウイルスの研究なんかしてないで、この娘を研究した方がいいって。

「だいたい、なんだってクレアはあんなところにいたのかねえ?」
「『2』のときは、にーちゃんの住んでいる街にやって来たら、街ごとバイオハザードで化物づくしになっていて、身を守るためにとりあえず戦うしかなかった、てのでわかるけど。今回はいきなり、敵の秘密基地を攻撃してるよね?」
「にーちゃんを探すため、ってのは変だよね。にーちゃんが地球規模の戦いに巻き込まれていることがわかった時点で、ふつーの女子大生は手を引くよね。軍隊や警察、あるいは政府の仕事であって、女子大生の出る幕じゃない。そもそもにーちゃんは特殊部隊の隊員なんだから。彼の任務は国家機密系でしょ? 民間人の妹が、そんな兄を助けに行くなんてこと、ありえない」
「なのに、敵の基地にいるんだよな。しかも、たったひとりで潜入」
「政府の特殊部隊の人間よりも、クレアひとりの方が優秀らしい。彼らにできないことが、クレアには簡単にできる。たったひとりで」
「立派に戦ってる」
「何人殺してるのかな。100人や200人じゃないよね?」
「ふつーの女子大生なのに、大量殺人。『2』のときはゾンビや化物相手だったけど、敵の基地にいる戦闘員たちはふつーの人間。ふつーの人間を相手に、クレアは銃を乱射して戦ってる」
「しかも、勝ってるし(笑)」
「強すぎ。プロの戦闘員の立場ナシ(笑)」

 ジルやレベッカは、もともと特殊部隊の隊員。特殊部隊ったってたかが警察機構の一端だから変だよなー、とは思っても、それでもとりあえずは戦闘のプロ。彼女たちが華麗に戦うことに異議はない。
 だが、クレアはどうよ?
 クレアをヒロインにするの、変だよ。ふつーの女子大生が敵の秘密基地にたったひとりで潜入、って、変すぎだって。
 いっそ、女子大生とは仮の姿、どこぞの機関の秘密諜報員だった、とかいうことにしようよ。そうでもしないと、彼女の場合設定自体やばいって。

 とまあ、爆笑必至の『ベロニカ』。

「気分はすでに、『北斗の拳』を愛する感じ」
「短編のつもりだったのに、まさかの大人気で連載長期化、後付けの設定だらけで、1話との矛盾が山ほど」
「回想シーンになるほどシンは美形になるし、ユリアは南斗六聖のひとりだし」
「北斗四兄弟はいつの間にか三兄弟だし」
「ジャギの存在は抹殺。つーか、アミバとトキをまちがえるなんてありえねー」
「後付け設定だとわかってて、1話の時点では『そんなのナイナイ(笑)』とわかってて、それでもそのめちゃくちゃな展開を愛する(笑)」
「まさに、そーゆー感じだ、『バイオハザード』(笑)」

 そして、『バイオ』シリーズでいちばん人気あるのって、やっぱウェスカーだよね? 『ガンダム』においてのシャア、『北斗の拳』においてのラオウ様だよね?
 ツッコミどころの多さにかけて、シリーズ中ウェスカーを超えるキャラはいないよね?
 出てくるだけで爆笑だよ。さすがだウェスカー様。
「目ェ光ってたよね?」
「さすが地獄からよみがえってきただけのことはある! メカ・ウェスカーになって再登場とは! なんてはずさない男だ!」
「最初の登場の最後のとこ、足とか背中からロケット噴射して逃げるのかと期待しちゃったよー(笑)」
 姉弟そろってウェスカーファン。

 ……ただし。
 腐女子な姉は、弟には言えない意味でもウェスカーのファンなのだ……。
 ウェスカー×クリスでよろしく。マッチョ受上等。
 クリスに会いたいがために、クレアをいぢめるウェスカーに萌え。いや、妹をいぢめなくても、直接クリスに「会いたい」って連絡取ればいいじゃん。アンタ彼の元上司なんだから、連絡方法ぐらいあるでしょ。クリス、絶対アンタに会いに来るってば。
 天然なウェスカーが愛しいです(笑)。


 『静岡2』が終わりました。
 ………………主人公、自殺しちゃいましたが………………これ、バッド・エンディングですか?
 亡き妻メアリーから手紙を受け取り、「まさか、メアリーが生きている……?」と、ふたりの思い出の地、サイレント・ヒルにやってきたジェイムス。
 さんざんいやな目に遭って、冒険して、殺して殺されて、よーやくたどりついた答えが、
「そうだ、こうすればメアリーに会えるんだ」
 って、自殺しやがった……。

 そ・れ・な・ら、最初からやっておけ。

 やっぱりバッド・エンディング??
 謎はなにひとつ解けないままだったんですけど。ローラってなに? アンジェラはなによ?? そもそもマリアってなによーっ。
 わたしのプレイの仕方が悪かったの……?

「ほんと、ろくなゲームじゃないよな、静岡」
「ストレス溜まるばっかで、爽快感がない」
「こわくないよね。嫌な気持ちになるだけで」
「生理的に嫌なものばかりを書き込んである」
「システムへぼいし、設定はいい加減。その場限りの演出ばかり」
「キャラクターは電波なヤツばかり」
「ストーリーはこじつけ。必然性もリアリティもない」
「ひどいゲームだ」

 それじゃなんでやるんだ、『静岡』。
 デキの悪さを理不尽さをアンフェアさをツッコミながら、文句たらたらプレイするのがたのしみ方か。
 わたしも弟も、『静岡』の話になると文句ばかりさ。そして、『バイオハザード』のクオリティの高さやセンスの良さをなつかしく語ってしまうのだ。『バイオ』だって、つっこむところは多分にあるんだがな。……それでも、『静岡』に比べれば、あちらはパラダイスさ。

 ところで、弟とふたりでメシ食いに行こうとしたら、わたしの自転車が消えてました。
 犯人は父。
 勝手にひとの自転車、乗っていきやがった……。ひ、ひとこと断れ。わたしと弟は、焼きたてパン食べ放題の某レストランに行く約束してたのに。そこまで行くには、自転車が必需品だったのに。

 仕方なく、もうずいぶん誰も使っていない、折りたたみ自転車を引っ張り出しました。
 こ、こわっ。
 メンテされていない折りたたみ自転車は、不吉な音をたてつづける。えーとコレ、大丈夫? 途中で分解したりしない? どきどき。

 某レストランが、いつもよりずっと遠く感じられました……。

 
 ここ数日はずっと、読書とゲームと長電話の日々(笑)。オレンジとはほんとによく喋ってるなあ。東京−大阪なのになあ。

 さて、ゲームはただいま、『サイレント・ヒル2』です。
 転勤みやげに弟が買ってきた。ありがとう弟。

 やっぱりヘボいぞ、『静岡2』! 期待を裏切らないゲームだ。
 主人公はやはりオヤジ。今回は死んだ妻を捜している。
 最初から日本で売る気はあまりないのかしらね。海外で売るためには、主人公が未成年ではいけませんもの。いたいけな少女が武器を持って血みどろになって戦うのは、海外ではNG。……そう考えると日本ってのはすごい国だ。血みどろになって戦う主人公が「大人の男」であることに違和感を持つくらい、めずらしいことなんだもの。
 日本で売るためには、主人公はいたいけな少女でなくちゃねえ。彼女が残酷に殺されなきゃダメなのよねー。アクションゲームは死んでなんぼだからねー。最終的にハッピーエンドでも、その課程でめちゃくちゃ悲惨な目に遭うもんだからねー。
 ふつーのオヤジが主人公である、日本ではめずらしいゲーム、『静岡』。(マッチョなヒーローが主人公のゲームならまだあるが、ひ弱なオヤジが主人公ってのは、ほんとにめずらしい)
 めずらしいだけに、ヘボさが目立つ。
 だって、他に類がないってのは「求められていない」ってことだからねえ。
 かわいい女の子なら許される能力の低さも、かわいくないオヤジだと、見ていてたのしくないでしょ?
 強い男ならプレイしていて壮快だけど、よわよわ男だとストレスなだけでしょ?
 『静岡』は不思議なほど、世間のニーズを無視してるよなあ。

 ま、わたしはオタク女だから、「ふつーのオヤジ」が「はぁはぁ」とあえぎまくっているのも、それなりにたのしめますが。
 オヤジ受属性のある人は、まだたのしめるか? 主人公はそこそこ男前で虚弱なオヤジで、ちょっと走るとすぐあえぎだしますぜー。

 ふつーの男たちは、このゲームをプレイしてたのしいのかしら……。男のあえぎ声をえんえん聞き続けるゲーム……。

 アクションは4段階、謎解きは3段階の難易度切り替えがあるので、わたしはアクションをEASY、謎解きをNORMALでプレイ。
 前作でアクションをNORMALでプレイしたら、2回目以降のプレイでめちゃくちゃ苦しんだからさ(2回目以降のプレイは、自動的に難易度が上がりやがったのよ。下手っぴのわたしが、HARDモードなんかできるわけないじゃない! 死にまくったわ)。
 そしたらこのEASYモード、激ぬる。簡単すぎるよ、死なないどころか危機にも陥らないよ……つ、つまんねー。でも2回目以降を考えたら、ここは我慢しておくべきか。
 しかしEASYでこのぬるさでは、その下のBEGINNERモードはどこまですごいことになってんだ?

 操作性の悪さ、世界観のずるさと薄っぺらさ、ストーリーのいびつさ。
 いやあ、さすが『静岡』だ。前作からまったく進歩してない。
 でもなぜか、たのしかったりするんだよなあ。ヘボゲーなのになー。
 少年ジャンプ的なヘボさだから、たのしいのかな。穴がありすぎて、ツッコミが前提ってのが。

 あ、アドバンスの方では『MOTHER2』です。『MOTHER1』はけっこーあっさり簡単に終わりました。
 『MOTHER2』もキャラの名前は全部同じ。主人公はケロ、そのガールフレンドはトウコ、ひ弱な男友だちがユウヒ、マッチョな男友だちがワタル。
 『2』ではワタル、王様なんだねー。なんか笑っちゃったよ。

 
 わあぁぁあん、わあぁぁあん。

 どせいさんストラップが、なくなってしまったぁぁ。

 レイトショーを見るために会ったわたしとWHITEちゃん。晩ごはんを食べながら、わたしは「どせいさん」を自慢しようとしました。
 そしたら。
 な、ないっ。
 ストラップから、どせいさんがなくなっている!!

 ショック。
 あんなにかわいかった、どせいさん。
 わたしが『MOTHER1+2』を買う原動力のひとつだったどせいさん。
 哀しみに取り乱しながら、わたしは弟にメール。
 ひょっとしたらまだ、手に入るかも。なんかのはずみで残っている商品があるかも。一縷の願いを込めて、販売店勤務の身内にSOSを出した。

 帰宅したのは、12時過ぎ。
 弟は、母の書斎で奮闘中だった。
 とゆーのも、ついに母のパソコンが大破しましてな。昼間、わたしは母に呼びつけられ、触ってみたんだか、わたしの手にはまったくおよばないくらいぶっ壊れていたので「弟に見てもらいなよ」とスルーしたのよね。
 残業して帰ってきて、さらに母のためにこんな時間までパソいじりか……あわれなヤツ。
 母の壊れたパソコンはもうご臨終で、仕方ないのでわたしのお古のマシンを使い回すために大移動をしているところだった。弟を働かせながら、母はすでに白河夜船。とっくに就寝。
 パソコン相手に奮闘する弟に、わたしは
「メール見た?」
 と、訊ねた。
 すると彼は、「ふっふっふっ」と笑い出す。

「今日の昼のことだ。ぼくのどせいさんストラップも、ふと見ると肝心のどせいさんが、なくなってたんだ」
「ええっ、あんたのも?!」
「どせいさんはボールチェーンでストラップにつけられてただろ? それがはずれて、ボールチェーンだけが残っている状態になっていた」
「そうそう! あたしもそうだよ。チェーンだけが残ってたの!」
「……ショックだった。でも、休憩が終わってロッカーを見ると、どせいさんが落ちていた」
「じゃあ、みつかったの?」
「そう。ロッカーを使ったときにたまたま落としたらしい。付属のチェーンが落ちやすいということを知ったわけだから、それをはずして、自力で強固に付け直した。これで二度とはずれないはずだ」
「あたしはいつどこで落としたかわかんないから、出てこないよ!」
「落としたショックは、こちらはすでに体験済みだ」
 弟はにやりと笑う。
「もう二度と、落とさない」
「だから、あたしは落としたんだってばーっ。手に入らないの? なんとかして!」
「無理を言うな。二度と手に入らないから『限定』っていうんだ」
 って、なにを勝ち誇った顔で言うか!! むきーっ。
「どせいさん、かわいいなあ」
「どーせあたしはなくしたわよっ、くやしーっ」
「ふっふっふっ」
「きーっ」

 てな、1日の終わりでした。なんてすがすがしいのかしら。

 ああ、それにしてもどせいさん……。
 ショックだよー。めそめそ。

 つーことで、今日見た映画の話はまた後日。

 
 猫が帰ってきません。

 洗濯日和だったので、親の家の庭で洗濯物を干していたんですが。

 ……と書くと、庭に出た猫が、そのままどこかへ逃げ出したみたいだな。

 そうじゃなくて、洗濯をするために親の家に行こうとしたら、猫が「どこに行くんだ、オレも連れて行け」とうるさいので、連れて行ったのね。
 親の家に。

 そしたらそこに、居着いてしまったの。

 いつもなら、すぐに「やっぱり家に帰りたい」と言い出すのに。
 のんきにゴロゴロしているから、猫を親の家に置き去りにして、わたしひとり自宅へ帰ったの。うちの両親は猫のことを溺愛していて、置いていった方がよろこぶから。猫を親の家に連れて行くのは、ささやかな親孝行の意味もあるっちゅーか。
 そうやっていつもなら、猫が家に帰りたがったら、母親がわたしの家まで運んでくるから、置いていっても問題なしなのね。
 しかし今日は。
 もう夜だってのに、まだ帰ってこないぞ、猫。
 さっきビールを取りにやってきた父が「猫は機嫌良くウチにいる。帰りたいとは言わない」とうれしそーに報告していった。
 ……わたしが迎えに行くまで、帰らないつもりか、あの猫。

 あ、「父がビールを取りに」ってのは、わたしの家を両親が「倉庫」として利用しているせいです。もともと3人で暮らしていた家に、今はわたしひとりで住んでいるため、部屋が余ってるのね。んで、彼らは自分の家に置ききれないモノを、わたしの家で保管しているのよ。
 わたし、ビールなんか飲まないのに! 酒屋さんは、わざわざわたしの家に配達に来るのよ、わたしの親の指示で。瓶ビールをケース買いしている独身女の家、ってどうよ?!

          ☆

 今日よーやく、『逆転裁判』が終わった。

 「トノサマン事件」の途中で放りだしていたのを、数日前から再開、よーやくよおおおおやく、終了しました。

 ……やっぱりわたし、笑えない……。

 たしかにね、第3話ですか、最後の事件はオタク女的にたのしい展開ですけどね。ナルホド×ミツルギを読みたいとか思うけどね。
 でもやっぱり、基本的にダメだよ、この世界観!!

 キチガイばっかり!!

 気持ち悪いよー、登場人物の考え方全部。
 出来事と、それに対する反応、言葉、なにもかも気持ち悪い。

 ミステリとしては、超低レベル。
 事件とトリックと犯人は、誰にでもわかる。
 そのせいなの?
 真相に、わざとたどりつけないように、出てくる人間たちがみんなキチガイ。
 証拠があってもそれを無視する。……無視しなければ、そこで事件解決なのに。ぜんぜん関係ない方向へ、話をねじ曲げる。その繰り返し。つーか、全部がソレ。

 このゲームの「推理」とは、事件の真相を推理することではなく、出てくるキチガイたちの、気のちがった行動を予測すること。
 なんせキチガイなので、常識は通用しない。冷静にゲーム制作者の意図を読み、あえて真相から遠ざかるようにキチガイたちの次の言動をミスリードしていかなければならない。

 ああ、つかれた。

 わたし、アタマ固いのよ。どうしても「常識」で考えてしまうから、「犯人はこいつなのに」「証拠はコレなのに」って、いちいち思ってしまうから、ストレスがたまる。
 わざとバカな答えをさがしつづけるのが、こんなに苦痛だなんて。

 どーして『逆転裁判』の世界に入りそびれたのかしら。

 わたし、ファンタジーは好きなのに。
 ファンタジーってのは、すなわち「嘘」の世界。
 なにも異世界や未来だけがファンタジーじゃない。現代が舞台でも、ファンタジーは存在する。
 「嘘」がすみずみまで、きちんと構築されていれば、それは「ファンタジー」だ。

 『逆転裁判』も、その点きちんとした「ファンタジー」だ。
 「嘘」で構築された世界だ。
 べつのルールを持つ、ちゃんとした「別の世界」だ。

 わかってるけど、だめだったんだよなあ。
 これはもう、好みの問題だろう。
 わたしの逆ツボだったってことか。しょぼん。

 同じよーに、バカ・ミステリ・ゲームといえば、『YAKATA』を思い出す。
 綾辻行人監修の、とんでもない作品。

 孤島にある館で起きた、密室殺人事件。犯人は館の中の誰か。記憶喪失の主人公は、真犯人を見つけることができるのかッ?!

 てなゲーム。

 今でも、「最悪なオチの密室殺人事件」として、弟と笑い話にしているゲームだ。
 ほんとにものすごいトリックなんだよ。密室殺人モノとしては、最強じゃないかな?

 ミステリとしては最悪だけど、このゲームはほんと、大ウケした。爆笑して、たのしめた。

 『YAKATA』がOKなのに、どーして『逆転裁判』はダメだったんかいな?

 どーでもいいが、『逆転裁判』をやっていたら、『はみだしっ子』が読みたくなってしまった……。リッチーの裁判のくだりを。
 しかし、実際に本を開くと、のーみそのシワが減っているせいか疲れているせいか、読み通すことができずにまた本棚に戻してしまった。
 やれやれ。
 
 
「恐るべし、任天堂」

 と、弟は言った。

 
 先日弟が、新しいゲームソフトを手に入れた。
 ゲームは天下の回りもの、いろいろ貸してもらえるんだもの。
 彼が新たに借りたゲームは、キューブの『どうぶつの森+』だった。

 一時期、ゲーム売り場も担当していた弟は、首をひねっていた。
「この『どうぶつの森+』ってのはいったいなんなんだ? やたら売れるんだが」
 ゲームではなく、トレカ。ぜんぜん知らないタイトルなのに、とてもよく売れる。
 どうやら同名のゲームが人気で、それゆえに新発売のトレカもよく売れるらしい。
 ゲームの方は知らない。そのゲームが発売されたころは、弟はゲーム売り場担当ではなかった。
 あまりにトレカが売れるので、アンテナを伸ばしてみると、どうやら『どうぶつの森+』というゲーム自体がとてもよくできていて、おもしろいらしい。
 絵を見る限りでも、なかなか愉快そうな世界観だ。
 さて?

 姉弟そろって「一度やってみたいよねえ」と言っていたゲームだ。
 よーやくプレイすることができる、つーんで、期待も高まる。

 一足先にプレイした弟に、
「『どうぶつの森+』は、どうよ?」
 と聞くと、彼はにやりと笑った。

「恐るべし、任天堂」

 腐っても鯛。
 腐っても任天堂。

「もしも子どものときにこのゲームがあれば、絶対ハマってたと思う。……よくもこれだけ、子どもがたのしめるものを考えつくもんだ」
 素直に賞賛した。
 そして、
「ねえちゃんもすぐにプレイしてくれ。アレは大人がひとりでやるにはつらい」
 と言う。

「ていうか、大人がやるようにはできてない。仕事が終わってから、さあやってみよう、ってスイッチ入れたら、村は夜中で、動物はみんな寝てた」
 彼は速攻リセットし、キューブの時計設定を12時間進ませた。つまり、昼と夜を逆転させたわけだ。
「子どもがプレイするのが前提だから、子どもが遊べる時間に合わせて作ってある。働いている大人がプレイすることは念頭に置いてない」
 ゲーム中には、わたしたちの世界と同じように時間が流れているらしい。
「昼夜逆転、ねーちゃんも夜中にプレイしてくれ。ゲーム世界ではそれが昼間だ」
 ……大人は大変だ。

「プレイヤーはどうぶつの森のある村に家を借りて、そこで生活するんだ。村にはどうぶつたちがいて、勝手に生活している。プレイヤーは村の一員となり、アルバイトをしたり他の村人とおしゃべりをしたりして過ごすんだ。手紙を書いたりもできる」
「バーチャルライフをたのしむってわけね」
「そう。すごいのは、同じ村にプレイヤーが4人まで住めるってこと」
「バーチャルな世界を共有できるの?」
「そう。しかも、べつのメモリーカードを使えば、チガウ村を作ることもできるし、またそこに遊びに行くこともできる。つまり、ひとつの家庭で、兄弟で同じ村に住んでそこで遊び、友だちの作っている村に遊びに行くこともできるってわけだ」
「ゲームというより、コミュニケーション・ツールなわけだ」
「そういうこと」

 ゲームばかりしている子どもは、友だちが作れない。
 ……とゆーのは、ゲームを知らない年寄りの考えること。
 現実のゲームは、「対他人」。ひとりだけじゃたのしめない。自分以外の誰かがいてこそ、たのしめるもんなんだ。
 話を聞いていると、たしかにおもしろそうだ。
 ひとつの家庭でひとつの村。兄弟や親子で協力して村を発展させていく。
 そして、友だちの村に遊びに行ったり、友だちが遊びにきたりする。共通の異世界、だけど「自分」が関与しなかった世界をたのしむ。
 ……それって、すごいかも。
 子ども、という現実。
 まず、家庭。それをひとつの村として表現。
 そして、子どもが次に接する現実。
 友だち。それを別の村として表現。
 家庭という社会、友だちという社会。それをゲームのなかの「バーチャル・ワールド」にもってくるか。
 発想がすごいな。
 

 とゆーことで、わたしもさっそくプレイしてみた。
 弟からキューブ本体ごと借りて。

 後ろで弟が見物しているなか、スイッチを入れる。
 サイケな色彩の奇妙な動物が、わたしを出迎える。
 わたしの名前は「ポスト」。……いや、なんとなく(笑)。意味がなくて字面と音がかわいいから。
 弟の名前は「だいぶつ」。大昔、彼がいちばん太っていたころにつけられた渾名で、当時はそう呼ばれるのを嫌がっていたが、大人になってからも何故かその渾名をゲームのキャラにつけている。実は気に入ってたのか?
 弟のネーミングセンスは微妙に奇妙で、村の名前は「まめさまむら」だった。まめ、というのはわたしが飼っている猫の名前だ。何故、わたしの猫の名に「さま」をつけて村の名前にするかな……。字面も音も変だ……。

 初期入力が終わると、そこは列車の中だった。
 列車の中、見知らぬ猫がわたしのところへやってくる。
「あなた、まめさまむらにいくの?」
 うん。よくわかんないけど、そうみたい。
 ひとなつこい猫は、いろいろ世話を焼いてくれ、住むところまで紹介してくれた。
 列車が駅に着き、わたしはホームに降りる。
 極彩色の世界。「うっきー」と語尾につけるサルの駅員が迎えてくれる。
 雑貨屋を営むたぬきに案内され、4軒ある小さな家を見て回る。好きな家に住むといい、と。

「あ、そこはぼくの家」
 4つある家のうちのひとつ。緑色の屋根の家を指して、弟は言う。
 中に入ってみると、みょーちくりんな家具がいろいろ置いてあった。
「どうだ、広いだろう」
 ……そうなの?
「改築して広げたんだ」
 へー。
「屋根だって、わざわざ塗り直したんだぞ」
 だから緑なのか。

 わたしは弟の家の向かいの、黄色い屋根の家を借りることにした。

 まだなんにもない、小さな小さな家。
 そしてまずはアルバイト。家賃を払わなければならない。たぬきの雑貨屋で働く。

「ぼくの家の前、花が植えてあるだろう。あれは自分で植えたんだから、蹴散らさないでくれよ。それから、雑貨屋の裏の木は勝手に切り倒さないこと。果樹園にするつもりで実のなる木を植えたんだから」
 いろいろとうるさい。
 昔、『どこでもいっしょ』というゲームをふたりでやっていたころを思い出すなぁ。

 すでに弟が数日分創り上げた世界だったので、彼としてはいろいろ注意事項があったようだが、知るか。弟が自宅に帰ったあとは、自由に走り回らせてもらった(笑)。

 ひとつのゲームソフトは、キューブ本体ごと2軒の家を行き来する。
 わたしの家と弟の家。
 1日1回、手渡すのだ。

 そして、ゲーム中でも「だいぶつ」さんから「ポスト」さんに手紙が届く。
 最初に手紙を書いたのはわたし。そしたら弟からの手紙には「プレゼントをやろう」と言って、リボンのついた箱が付属していた。
 なんだろう、と開けてみたら……長靴だった。これって、ゴミじゃん……たぬきの雑貨屋に売りに行ったら断られたよ。
 その旨を手紙に書いたら、「アレを売りに行くか……」とあきれられた。ふん、なんでもいちおー、まずは金になるかどうかを確認するだろう、人として!

 わたしはそうそうに仕立屋に行き、「オリジナルデザイン」の服と傘を作りましたわ。「デザインする」のコマンドを選んだら、ドットを埋める升目が出てきて目眩がしたけど。
 オリジナルの布は、弟にもお裾分け。
「そうとう暇だな……初日からこんなもんを作るなんて」
 うるさい。ひとつのデザイン作るのに1時間もかかったわよ。

 そうやって、日々は流れていく。

 後日、弟からクレームがきた。
「ぼくの植えた花を、散らせただろう(怒)」

 だって、わたしの通り道に植えてあるんだもん。わざわざ避けて通るのうざいから、気にせず花の上を通ってたら、いつの間にか散っちゃったのよ。

 さらに後日、弟からクレームがきた。
「ぼくの植えた桃を、勝手に採ったな(怒)」

 だって、採ってくださいとばかりに実ってたんだもん。ウマー、といただきましたわよ。

「採った桃は、ちゃんと植えただろうな(怒)」

 ええ? もちろん、たぬきの店にたたき売ったわよ。いい金額で売れたわ。わたしの懐が潤ったわ。

「なんてことを! 採れた果実は埋めて育てて増やすのが基本だろう! 次は植えろ(怒)」

 ひとつの世界を共有するのは大変です(笑)。

 ここはバーチャルな世界。
 ひとつの社会。
 協力しあい、足を引っ張ったりしながらも、仲良く生きていく。
 

 なにがどう、じゃないけど、たのしいよう。
 お金を貯めて、家を改築するのが生き甲斐になりつつある……やべえ。

 恐るべし任天堂。
 腐っても鯛。
 腐っても任天堂。

 大人でコレだから、子どもだったらもっとたのしいぞ?
 バーチャルな隣人たちと、マジにコミュニケーションをたのしめるもの。

 恐るべし。


 ちくしょー。
 どうせわたしには「笑い」の才能がないよ。「笑いのツボ」が狭いよ。

 おもしろいと巷で評判のアドバンス用ソフト『逆転裁判』が、ダメだったんだわ。
 どんなにおもしろいんだろう、とわくわくしてプレイしたのに。

 顎が落ちた。

 キチガイばっかしだ……。

 笑えない。
 笑えないよ、ママン。
 ムカつくだけだ。

 何故そこでそういう台詞になる?
 何故そこで話をそちらにねじ曲げる?
 何故そこでソレにこだわる?
 何故そこでそういう反応になる?

 人間として納得できない。
 人間としての「知性」と「常識」を持つならば、そんな言動は取らないはずだ。

 ご都合主義の言い訳に、くだらないギャグに逃げているよーにしか思えなかった……。

 これが笑えないと、イカンのか。
 世間はコレで笑っているのか。

 とほほ。

 わたしは「世間体」とか「ふつう」とかが大好きな人間なので、ひとさまとチガウ反応を取りたくないのよ。
 どーせなら、みんなが好きなものを自分も好きになって、いっしょに「あれってイイよねっ」と盛り上がりたいよ。

 『逆転裁判』をベタ褒めしている我が相棒オレンジに、
「そっかー、緑野は『逆転裁判』の世界に入りそびれたんだね……」
 と、さびしそーに憐れむよーに言われてしまい、しょぼん。

 わたしとオレンジはおおむね趣味が合うのだが、「笑い」に関してはよくすれ違う。
 わたしが「笑い」の才能を持ち合わせないからだ。
 オレンジや世間の人が「笑える」のもが、わたしには「ムカつく」だけだったりする。

 くそー。
 ものすごく、損をしている気分だ。
 みんながたのしんでいるものを、たのしめないなんて。

 でも。
 すっげームカつくぞ、『逆転裁判』。

 
 40時間を超えているのに、ストーリーがちっとも進まない……。

 FFTAのことっす。
 ゲームボーイアドバンス用シミュレーションRPG『ファイナルファンタジータクティクスアドバンス』(長い……)。

 テレビゲームはひたすらヴィジュアル重視。華麗なCGばかりがウリになり、味のあるドット絵は携帯ゲーム機に押しやられた。
 わたしや弟は、不気味なマネキンが喋り動くCGよりも、2Dのドット絵を愛しています。CGなんぞどーでもいいから、おもしろいゲームをやらせてくれよ……が本音。意味のない3D化には辟易さ。

 縁あって、10とTA、ふたつのFFを同時にプレイしているのだけど、FF10に関してはもー……アレ、ゲームちゃうやん、映画やん、という感想に終始しますな。
 自分でプレイする、という要因が少なすぎる。
 コントローラから手を離して、何分もぼーっとテレビ画面を見ている。たまに操作しなくてはいけなくなっても、ただ主人公キャラをまっすぐ前に進ませ、ドアを開けるだけ。ドアを開けたあとはまた何分もただぼーっと画面を眺めている。……んじゃ、ドアを開けるのも、わたしがやる必要ないじゃん。無理にプレーヤーにやらせるなよ。
 ストーリーは一本道、キャラの成長もそれほど自由にはならず。つーかスフィア板って見た目より自由度断然低いよねえ。

 ゲームが作りたい、のではなく、映画が作りたい、のよね。制作者。
 ゲームを利用されているみたいで、やな感じだ……。やりたいことは別にあるけど、そっちはできないからとりあえずこっちでやっておこう、みたいな。
 ほんとはマンガが描きたいんだけど、絵が描けないから小説でも書いていよう、とか。
 芸術作品を作りたいんだけど、金にならないから大衆作品を作っておこう、とか。
 そーゆー腰掛け意識って、やだなあ。
 どーせなら、「コレがやりたいんだ、コレが好きなんだ、他はなにもできなくていいから、おれにコレを作らせろ!」とゆー気合いとか愛情が見えるものが好きだなあ。同じ失敗作でも、そこに恥ずかしいほどの思い入れがある方が、微笑ましいよ。
 

 わたしはゲーム文化を知らずに成人し、うっかりゲームショップで働くことになって必然的にゲームと出会った。

 そして、最初にプレイしたゲームが『ロマンシング・サガ』だったんだわ……。

 三つ子の魂百まで。
 よりによって最初が『ロマサガ』。

 おかげで、おどろくことがいろいろあった。

「えっ、RPGってストーリーがあるの?」
「えっ、RPGって敵の姿が見えないの?」
「えっ、RPGって装備品が決まってるの?」

 ストーリーが一本道。
 ……てのがいちばんショックだったかな。
 ゲームっていうのはストーリーがなく、自分で冒険するものなんだって思いこんでたから。
 ストーリーがあるなら、映画とかマンガとかでいいじゃん。……て、本気で首を傾げたさ。
 ストーリーを主人公になって追体験するものがRPGだったのね。追体験なら映画でもマンガでもいいじゃん……とも思うけど。
 そうそう、ゲームの主人公に自分の名前をつけるという文化が、わたしには理解できないし。
 主人公が「自分」でないと仮想現実をたのしめないのか……。
 わたしはそんなことしなくても、いくらでも別人になってたのしめるけどなあ。映像文化でも文字文化でも。
 ゲームの買い取りをしていて、動作チェックをするときに主人公の名前が自然と見えるのだけど、みんな自分の名前つけてやってるよなあ。

 まー、とにかく。
 最初にプレイしたゲームが、ストーリーはなし、どこへ行ってなにをしてもヨシ、装備品は誰でもなんでも自由、育て方も一切自由、敵の姿が見えるので戦いたくなければ避けるも逃げるも自由、というものだったもんで。
 それが当たり前だと思っていたのよ。

 A地点にいたら、次はB地点に行くしかなくて、C地点にはBをクリアしてからでなくては行けない、なんてショックだった。決められた道を歩くんじゃ、「わたし」がプレイする意味ないじゃん……がーん……。
 なにもない道を歩いていたら、突然エンカウント、戦闘開始。ななななんで? 敵なんかどこにもいなかったのに? それが「ふつう」だなんて知らなかったもの。ザコ敵とはそーやって無意味に戦い続けるしかないんだって。
 剣や槍や杖や弓。装備できるものがひとりずつ決まっているなんて。主人公の若者は大抵剣。弓は持てないのね。ヒロインは大抵魔法使いで杖。拳でがしがし戦ったりしないのね。ひとりずつ持てる武器が決まっていたら、同じよーにしか成長しないじゃん。それじゃ「わたし」がプレイする意味ないじゃん……がーん……。

 まあそのかわり、「次にナニをすればいいのかわからない」と途方に暮れたり、「出会い頭に全滅」とか「プレイして15分、最初に出会った敵に瞬殺ゲームオーバー」とかいうめには遭わないんだろうけどさ。

 生まれてはじめてコントローラ握って、よくわからないまま「グレイ」を主人公にプレイをはじめ、最初の戦闘で全滅、ゲームオーバー。
 呆然。
 この間、15分弱。
 ……よく、ゲーム嫌いにならなかったものだ。ほんとに、わけわかんなかったよ。ストーリーないし、なにをしていいかわからないし。最初に出会った敵は、自分のキャラの10倍のHPを持ち、自分のキャラのHPをはるかに超える攻撃力を持っていた……敵の攻撃一回で全滅。なにもできない。
 そのソフトを貸してくれたBe-Puちゃんは「15分やったけど、わけわかんないから、二度とやってない」と言っていたし。
 ほんとに、不親切きわまりないゲームだったよ。

「『ロマサガ』は初心者がやっちゃイカンの」
 と、弟には笑われたけどさっ。
「ふつーのロープレをたくさんやったあとに『ロマサガ』をやると『おおっ、こんな世界が』と感動するけど、最初にやったらイカン」
「それって、御手洗シリーズを『異邦の騎士』から読むよーなもん?」
 と言ったら、ウケられてしまった。
 ……ええわたし、御手洗シリーズは『異邦の騎士』から読みましたのよ。新刊だったんだもん。シリーズだなんて知らなかったんだもん。

 
 『ロマサガ』はたしかに、いろいろ問題のあるゲームだった。
 だが、わたしにはそれが初体験。
 最初のオトコは忘れられないわ、てなもんで、「自由度」の高さがわたし的「ゲームの愉快さ」に大きく関係している。

 つーことで、同時にプレイをはじめたふたつのFF。
 おもしろいのはTAの方。

 …………にしてもFFTA、ストーリーなさ過ぎだぞー(笑)。

 FFだからストーリーが一本道だってのは知ってるけどさ。
 そのストーリーがぜんぜん進まないよ。
 他のことばっかだよ。
 ああ、ジョブを極めたいよ、アビリティをマスターしたいよ。うわーん、クエストアイテムがちっともそろわないよー。わたしのプレイの仕方がまずいの??

「モーグリがちっとも仲間にならない」
 と弟。
「モーグリがいないから、曲芸士のイベントができない」
 なんでモーグリ不足? うち、いっぱいいるよ?
 弟のデータを見せてもらったら、女の子ばっかりだった。
「なんでこんなに女の子がいるの? うち、ひとりもいないよ?」
「知るか。勝手に仲間になってくるんだから。そっちこそなんでそんなにモーグリがいるんだ」
「知らないよ。勝手に仲間になってくるんだから。最近は断ってるよ」
「なんてもったいない」
 ……仲間になるキャラはランダムなんだよね? わたしの方はモーグリと人間ばっかが仲間になるよ。ウサ耳の女の子たち、ひとりも出てこないっす。最初にいたひとりだけだよ。うわーん、専用のジョブがマスターできないよー。
「こっちはムーミンとウサ耳ばっか出てくる」
 ウサ耳は使い勝手がいいからいいけど、ムーミンは使いづらいよねえ。

 そして弟には言えないけど……弟のキャラたち、名前がいいよーっ。
 うらやましいー。
 キャラの名前もランダムなんだよね?
 弟のキャラには「グレアム」とか「シシィ」とかいるのよ。そんな名前の子が仲間になったら、わたし、絶対大切に育てるわ。
 うちなんかさ……「イカボット」だよ?
 モーグリの時魔道士が仲間になったんだけど……名前がイカボット。
 ……いやだ。イカボットなんて名前、いやだーっ。
 時魔道士がそいつしかいないんだけど、使う気にならない。
 イカボットなんて名前のモーグリ、愛せないわ!!

 今わたしが比較的お気に入りに育てているのはシーフのレスターと、白魔道士のマーティ。
 つーのもだ、アイテム禁止のときにマーティが戦闘不能、仕方なくレスターがアイテムを使ってマーティを復活させ、かわりにペナルティを受けた。
 仲間を助けるために犠牲を払った……ってシチュに萌え♪ なんですわ。以来、レスターとマーティは一緒に行動させています(笑)。
 だがこれも、弟には言えない……。不純な愛情。
 

「通信用ケーブル買うか……? キャラの交換できるぞ?」
 と、弟。
 携帯ゲーム機で通信でキャラ交換で。……いやな姉弟だな……このトシで。


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