「剣を突きつけるアトスの目が、めーっちゃこわいのー。あんな目で見つめられたら、きついだろうなあ。演技だってわかってても、あそこまでの目を向けられることって人生そうそうないしー」
 てな話を友人たちとしていた。
「そーだねー。でも相手、まなはるだから別に可哀想じゃない」
「まなはる、きっとまったく気にしてない」
「まっつさんすごいから、自分も負けないぞーってめっちゃ張り切ってむしろガンガンに顔芸返してる気がする(注・仮面付けてます)」
 ……という結論になるあたり、わたしとその周辺のまなはる観って。

 まあそんなわけで、ルイ/ダミーはあくまでもキムくんだと思うから萌えるのであって、まなはるだと萌えません……(笑)。

 てなことはともかく。
 『仮面の男』、アトス様語りの続き。

 一大ページェントにてルイ/フィリップの入れ替えに成功した三銃士。
 その前の場面、ダルタニアン@ちぎが上手側で「このダルタニアンの目は誤魔化せないぞ」と、それまでしっかり騙されていたくせにカッコつけてナニこの人変、なことを言っている直後に、下手からアトス登場。
 アトスはわりとシリアス風なんだけど、なにしろポルトス@ヲヅキは陽気な酔っぱらい。なんで酔っぱらいって周りにも酔えと絡むんだろうね。

 さあ、ここがアトスの中の人の、腕の見せどころだ。
 というのも、アトスの人格が、破綻した描かれ方をしている場面だからだ。

 無銭飲食もそうだったんだけどさ……アトスなら絶対しないことをさせられてるんだけどさ……。
 でもそれ以上にひどいんだ。

 アトスは、弟を殺されたばかりだ。
 なのに、陽気に歌い踊れと強要される。
 その上、憎い仇が目の前にいる。
 なのに、陽気に歌い踊れと強要される。

 無茶だろ。酒を飲んで陽気に歌い踊っている場合じゃない。
 暗くなっても仕方ないけど、必要以上に落ち込まないことと、無神経なことはチガウ。
 この演出は、無神経だ。

 まあ、こだまっちは人間の心を理解しない宇宙人だから仕方ないけどね(笑)。

 つらさを忘れるために明るく振る舞うのではなく、ただのギャグシーン、お笑い場面として歌い踊ることを強要されているんだな。
 だから、アトスの中の人が大変。
 アトスが人間の心を持っているなら、ここでこんな風に歌い踊りはしない……のに、しなければならない。
 「ラウルの手紙」場面での演技から、ひとりの人間として演技をつなげなければならない。

 アトスの中の人が選んだのは、開き直りと悪のり、のようだ。
 ナニも考えていないポルトスに飲むよう言われ、アラミス@きんぐまでもがその尻馬に乗っている。
 アトスもそれを受け入れ、とても大袈裟な、ギャグっぽい表情や仕草で歌い踊る。

 ヲヅキを真ん中にして肩を組まれてしまうと、まっつ、ちっちゃい!!

 『H2$』パクリの銀橋もヲヅキセンターでまっつの小ささがよくわかるんだが、ここはただ並んでいるだけじゃなく、肩を組んでいるのでもー、大きさの差が半端なくわかる(笑)。

 そして、陽気な酔っぱらいポルトスが、チューじゃないけど楽しげに顔を近づけてくるので、アトス様はすげー嫌がる(笑)。

 まあなあ、酔っぱらった中年男の顔が眼前じゃあ、嫌だろうて……。
 三銃士の年齢は謎だが、ぴっちぴちの若者ではないらしい。「我らが血気盛んな頃♪」と過去形で歌っているので、今は「血気盛ん」ではないらしい。
 まあそこそこの年齢なんだろう。

 親友だけど、顔近いのは嫌なんだ……(笑)。
 チューっぽく顔を近づけるポルトスに対し、思いっきり嫌な顔をしてのけぞって逃げるアトス様。同じ仕草をするマーキューシオ@ちぎに対し、チューで返したベンヴォーリオ@まっつをなつかしく思い出す。
 そうか……ポルトスとアトスはこうなのね。マーキューシオとベンヴォーリオなら、ああだったけど。
 と、「親友」の関係性の違いを微笑ましく思う(笑)。
 だから三銃士に萌えがナイんだわ……モンタギュートリオは萌えの宝庫だったのに……。

 それともアトスは単なる面食いなのか。顔が近くても、アラミスならいいらしい?
 アラミスとは機嫌良く肩を組んで一緒に歩いている。

 ポルトスの中の人が美形かどうかではなく、「ポルトス」という役は「美形」という設定ではない、という意味で言っているので、念のため。

 なんにせよ、ポルトスの肩組みより、アラミスの方が落ち着きいいっぽいアトス様を、おいしく眺める。

 まるで弟のことも仇のこともアタマにないように、無神経に飲んで歌うアトス様。
 ところでこの場所はどこなんだ、なんの説明もない。でも、アトスがひとり飲んだくれていたセットと同じだから、アトスの家かと思って見ていた。牢が常備してある、アトス様の自宅(笑)。
 ルイ/ダミー@まなはるが捕らえられている真ん前で、飲めや歌えやバカ騒ぎを続ける三銃士たち。

 だがアトスはほんとのとこ、忘れてなんかいないんだ。こだまっちが忘れているだけで。
 新しい酒瓶を手に取る際に、アトスは牢にいるルイと目が合う。

 ルイを見つめる、アトスの目。

 こわい。
 こわすぎですってば、アトス様!!

 それまで陽気に笑っていただけに、温度差すごい。
 瞬間的に氷点下まで下がるの、体感温度が。

 憎しみというより、蔑んでいるよーな、眼。

 憎む、というならある意味、同じ高さに立っていると思う。
 しかしアトス様ってばそうじゃないの。はるか高みから、見下ろしているの。虫けらでも見るように。
 温度のない、見下した眼。蔑み、哀れんでいるかのよーな眼。

 ぞっとする。
 仮面を付けられ、無様に牢に入れられている、その姿を嘲笑っているの。

 こーわーいー。
 こわいよアトス様。

 そして、振り返ったとき、また彼は笑う。先ほどまでと同じ、陽気で無神経な酔っぱらいの大袈裟な笑い。
 ギャグっぽく振る舞っているのが、全部、蔑みの裏返しになる。

 空元気とかあえて楽しんでいるふり、とかならまだ心に熱があると思うけど、アトスはそうじゃない。そんな段階じゃない。
 彼はルイを嘲笑っている。だからルイに見せつけるために、ギャグだよねこれってくらい、くだらない様子で盛り上がって見せているんだ。
 もちろん、仲間たちを好きで、仲間と飲むのが楽しい、てのはあるんだろうけど。
 本来の彼は弟を殺されてすぐに飲んで歌える人格じゃない、でもあえて今ソレをしているのは、復讐の一環なんだ……という。

 こだまっちのアホ演出を逆手に取ってます。こわいですアトス様。フィリップ救出作戦で青白い炎が見えるようだった、銀橋で歌うアトス、それとたしかにイコールでつながる姿。
 怒らせるとマジこわすぎる人だ……。

 あんな眼で見つめられるルイは、仮面の下でナニを思うだろう……。
 蔑みの眼でなんて、今まで見られたことなかったはずだ。

 や、ルイ@キムで考えますよ、妄想しますよ。まなはるぢゃないですよ。だってまなはるだと上記のように、なんかたぶん違った方向にがんばってると思うしな……(笑)。

 アトス×ルイは、なにかと萌えですとも、はい。


 続く。
 『仮面の男』、アトス様@まっつ語りの続き。

 一大ページェントは見どころだらけ。
 ここはアトス氏はおちゃらけナシだもん。

 愉快にのどかにはじまる一大ページェント、突然雷音と共に音楽が変わる。照明も変わる。暗いおどろおどろしい雰囲気になって、後ろのセリが上がってくる。オープニングと同じだね、そこには闇の騎士たちが勢揃い。

 セリが動き出したときから、センターに注目。
 まっつはオープニングと同じ、ど真ん中です、立ち位置。
 闇の騎士たちは全員手で仮面を意味するポーズをしているんだが、まっつの静止ポーズの手が、美しいんだってば。
 だからせり上がりからガン見。うおおお、あの真ん中の人きれー、かっけー、誰~~?!(だからまっつだってば)

 セリが上がりきってから、騎士たちは前へ出て踊るわけだが、ここの仮面ダンス……!!
 ずーっと手で顔を隠すようにした、仮面を表す振付なわけよ。
 ここのまっつがっ、ここのダンスが、美しい。

 この作品でいちばん好きなダンスだー。
 なんせおそろしい闇の騎士たち、だから、冷温に鋭く暗く踊っているの。まっつの得意分野、ど真ん中。
 冴え渡るクールさ、人形のような無表情、キレキレのダンス……冷たく暗いのに、匂い立つ、色気。

 うわあああ。かっけー。

 アタマの後ろに仮面を付けているため、それをルイ@キムに見せつけるために、全員で後ろを向いてぬめぬめ踊る振付もあるんだが、ここの動きもまたいーのー。
 腰の動きがたまらん。ハァハァ。(変態自重)
 ここのダンスは、ずっとまっつセンター。

 仮面を見せられたルイが「コレ、俺様へのいやがらせじゃね?」と気付いて血相を変える。彼の命令で、銃士隊が踊る闇の騎士たちを取り囲む。

 なんだ、やる気か、と戦闘態勢になる三銃士たち。

 ここのアトス様がまたステキ。
 向かってくる武装した銃士隊たちを前に、舌なめずりするかのよーに、不敵に口の端を少し上げる。
 で、指をぽきぽきするかのよーに両手を合わせ、次の瞬間、乱闘開始!
 アトス様の回し蹴り×2!!
 まるでダンスを踊るかのよーに(一大ページェントの一部のふりをしているわけなんだが)、ひとりを蹴り、さらに反対側のひとりを蹴る。
 くる、くる、と回って一瞬でふたり、ですよ。
 軸は左足、右で蹴って、一旦着地、すぐさま反対側を右で蹴る。
 アトスすごい、アトス強い。

 そして下手へはけていく。

 残ったポルトス@ヲヅキとアラミス@きんぐが人間ミラーホール@かおりちゃんを武器にして銃士隊をボコったあと、下手を注目。
 なりゆきを見守っているモリエール@咲ちゃんの横に、アトスがひっそり登場している。
 で、モリエールの肩に手を掛けたりしている。幼なじみだもんね、仲良しなんだよね。
 そのときはわりとおだやかな表情をしているが、取り乱したルイがなんか言い出したときに表情を変える。
 仇を見つめる瞳。きびしい表情。
 そしてまた下手袖へ走っていく。
 台詞がないから、オペラでよそを見ていたら気付かないぞっと。

 大人げないルイが「余は不愉快だ」と出し物に割って入る。
 丸腰の芸人さんたち相手に、剣を抜いて。やな王様だ。

 そこへ、下手の後方からアトス登場。
 ポルトスとアラミスは仮面の男@まなはる入りの太陽イラストの衝立をごろごろ引きずって来ているんだったか。←アトス様ばっか見過ぎでよくわかってない。
 アトスはもちろん丸腰。モリエール一座の芸人の振りをしているわけだから、武器なんて持ってない。
 だけど抜刀したルイを相手に、これまた指を鳴らす感じで不敵に対峙する。斬りかかってくるルイをかわし、ルイの剣を奪う。
 アトスすごい、アトス強い。

 そして、ルイの喉元に剣を突きつける。

 このときのアトスが。

 こわい。アトスさん、こわすぎです!!

 温度を持たない、復讐者の目。
 最愛の弟を殺した男に剣を向ける……今ここで命を奪うことも出来る、その殺気。

 そりゃルイも怖じけて言いなりになるわ……。
 ルイ/フィリップの入れ替えは、アトスの殺気で行われるよーなもの。
 公衆の面前なのに、ルイは悲鳴を上げることもできない。恐怖に息をのんで、三銃士のなすがまま状態。

 一旦ルイは衝立の陰になり、次に登場したときはふたりになり、どちらがどちらか一瞬わからないんだけど、アトスが迷わずひとりに剣を向ける。
 その男に三銃士たちが仮面を付け、帽子を奪い、再度衝立の後ろへ隠す。
 ポルトスとアラミスは衝立係のよーな顔をして両脇に立つけれど、アトスはそれきり姿を現さない。
 衝立が開き、フィリップ@キムが登場、「朕は国家なり」と歌って大団円。
 一大ページェントは終了、ポルトスとアラミスはそのままナニ喰わぬ顔で退場するし、衝立は馬の女の子たちによって下手へと片付けられる。
 ルイ/フィリップの入れ替え完了。

 ここでの萌えはなんつっても、衝立の陰で見えないアトスとルイですよ。

 衝立はそんなに大きな物じゃなく、人が後ろに隠れているとはあまり想像しない程度の大きさだ。閉まっているときは人を隠すのもいいけど、開いたそれぞれの扉の後ろって……そうとう狭いよね?
 なのに、まっつもまなはるも見えないんだよ。ちゃんと収まってるんだよ。
 さすが、ちっちゃなまっつ!! と、失礼な萌え方をしている……(笑)。
 まなはるは公式身長まっつより2cmも大きいんだが、それでもあの狭いところにしっかり収まってるね。
 ともちんやまさこなら、あの板の後ろには入りきらんわ……さすが雪組(笑)。

 そして、物語的にも萌えまくり。

 ふたりぴったり密着しなければならないよーな狭いところで、アトスはルイとふたりきりなわけだ。
 弟の仇と、ふたりきり。
 ……アトス様、どんだけ殺気でギラギラしていたことだろう。
 そしてルイは、どんだけ怯えきっていたことだろう。
 剣を向けられたときの怯え方ったら、なかったもんよ。蛇に睨まれたカエルもかくや、のたらーりたらーり状態。足すくんで動きません、声嗄れて出ません。
 そんなルイと、アトスが密室ふたりきり……。(衝立の裏だけど)

 ここでルイに助けを呼ばれたらおしまいだから、きっと羽交い締めにして首筋に剣を突きつけていると思うの。
 演じているのは仮面の男@まなはるだけど、あくまでもここは「ルイ」なわけで、アトス@まっつがルイ@キムを後ろから抱きしめて、喉元に剣を突きつけているんだと思ったら。
 冷酷さが冴え渡る悪役まっつと、クチビルをゆがめて恐怖に怯えるキムくん! ナニそれすごい。
 萌えまくりっす。


 続く(笑)。

 三銃士って前半出番少ないよねー。
 「ストーリー」以外のところばっかだから、前半。そして、三銃士は「ストーリー」を動かす者。物語がはじまれば、アクションは彼らのもとに集約される。

 『仮面の男』のアトス@まっつ語りの続き。

 無銭飲食場面が終わったら、またしてもなかなか出てこない。
 おちゃらけトリオとしてしか描かれていない、兄弟の絆も関係も描かれていない、なのにいきなり次は「ラウルの手紙」だ。

 恋敵だってだけで投獄されたラウル@翔くんは、牢獄で仮面の男=フィリップ王子@キムの存在を知ってしまう。それゆえに処刑されることに。
 舞台をふたつに分けてふたつの場面を同時進行、天国への階段を上るがごときラウル、暗い地上に足をつけるアトス。

 洗濯屋の女@リサリサがアトスの家を訪ねてくるところからはじまるわけだが、ここのアトスが、イイ。

 椅子に坐り、闇に沈んでいる。
 誰何する声の荒さと突き放し方。や、マジ色っぽい声なんだこの「誰だ」が。濁り方がプガ様を思い出させる。まっつっていろんな音色の声を持つ人だわー。

 弟が無実の罪で投獄され、アトス兄さん荒れてるんだ。
 助けられないか、出来る限りのことはしたあとなんだろう。
 それでもなんにも出来ず、沈み込んでいる。

 「ル・サンク」が発売され、この場面がどういう時間的位置にあるのかは判明した。
 以前わたしがうだうだ読み解いていたが(http://koala.diarynote.jp/201109191516106069/)、直感通り「ラウルは政治犯として捕らえられただけ。アトスは処刑のこともナニも知らない」が正しかった。やれやれ。

 そこへ、ラウルからの手紙。
 血で書かれていることから、ただならぬ内容だと察する。

 手紙には「ラウルの死」「真犯人」「国王の秘密」とこれまたすげーことが書かれている。 

 手紙を読むアトスが、美しい。

 うつむく額から頬骨のラインの完璧さ。眉間から鼻筋のラインの整い方。ほんっとになんてきれいな骨格なんだろう。
 表情はうつむきすぎていて見えない時間も長いんだが、ときおり顔を上げてくれるのでそれを逃すな。

 いろんな想いが交錯して複雑な表情をしているアトス様だけど、どんどん哀しみが広がっていく。
 大きな瞳に涙が盛り上がり、きらきらしはじめる。
 見どころはなんつっても、「ラウル!」と叫んだあと、ポルトス@ヲヅキとアラミス@きんぐの名を呼ぶところの、表情の変化。

 かなしい顔から、泣きの演技から、すーっと温度が消える。硬質に、クールに変わる。
 被害者から復讐者に変わる瞬間。

 そっからフィリップ救出劇の指揮を執る姿に変わる。
 肉体労働はポルトスとアラミスに任せて、アトスは銀橋。あの一瞬で終わる救出劇にて、ナニが行われているのかを、明瞭滑舌と美声、台詞と歌で完璧に解説。ここ、台詞や歌詞が聞き取れなかったらほんっとにナニがなんだかわからなくなるので、さすがまっつ!な仕事ぶり。

 ここのアトス様が、こわいのなんの。

 冷たく燃え上がる、というのが、よくわかる。
 怒りが激しければ激しいほど、憎しみが深ければ深いほど、冷たく冴え冴えと硬くなるんだこの人。
 周囲にいれば、気温が下がるのがわかるんだろうな。ポルトスとアラミスは、アトスが冷たく凍るときのおそろしさをよーっく知っているんだろう。

 「ただし彼らに鉄の仮面をかぶせて」と歌うときのアトスの冷たい美しさ。
 まっつは手の表現が美しい人なんだが、「仮面」を表す手がすげーきれい。そして、こわい。

 そうまでおそろしい人となり果てているのに、救出作戦が成功しひとりきりになったあと「ラウル、私に遺されたただひとりの家族」と歌うときには硬質さの奥から悲しみがにじみ出る。

 長らくまっつガン見で気付いてなかったが、ここで本舞台はカーテンが下りて、まっつひとりになってるんだね。プロローグの赤薔薇だけに彩られた真っ暗な舞台。
 闇と血の色の薔薇を背にしたアトス。
 誓うのは復讐。口にするのは呪いの言葉。
 ここの演出はきれい。
 そして響き渡る美声、歌声からキメ台詞へ、「次に鉄の仮面をかぶるのは、ルイ、お前自身だ」と指さし、暗転。
 まつださん、人生初の銀橋ひとり渡り。
 下手の座席番号27番あたりです、立ち止まるの。センター脇通路からちょっとサブセンへ寄ったあたりの、いわゆる「立ち止まりポイント」。そこで暗転なので、渡りきっていない……かもしんないけど、ここで暗転なのは演出的にかっこいいのでヨシ。

 今回のまっつ席は絶対上手。
 下手はこの立ち止まり台詞があるのとせり上がりが芝居とショーで2回あるのみ、ビューポイントは上手側にある。
 この立ち止まってのキメ台詞も、下手からセンター方面へ向かっての指さしなので、下手にいたら真正面から見えないよ。
 指をさされたい人は客席の真ん中あたりから、上手後方がいいかしらね。


 ラウル死んだー、国王の双子の兄弟の秘密知ったー、次の瞬間双子の兄を脱獄させたー、で、さらに次の場面ではいきなり一大ページェントで双子入れ替え大作戦。早っ。

 三銃士はモリエール一座の芸人として登場。
 人間ミラーボール@かおりちゃんがキラキラ歌い、馬やらタマネギやらが踊っているその最中、少し落ち着いたときに下手から現れる。仮面舞踏会のような目元だけ隠す持ち手付き仮面で顔を隠しつつ。
 モリエール@咲ちゃんとアトス@まっつが幼なじみ設定……まあ、咲ちゃんヒゲ付けて大人がんばってるからいいのか。中の人の実年齢差とかを考えると「幼なじみは無理だろう」とか思っちゃうけどなー。(ジェンヌはフェアリーですってば)

「俺の計画に失敗はない」
 と、自信たっぷりに美声で言うアトス様……。無銭飲食もアナタの作戦でしたね……とかは、突っ込んじゃいけないのよ。

 一大ページェントとしてのパフォーマンスにかこつけて、ルイとフィリップを入れ替えちゃおうという計画。
 アトスたち三銃士は闇の騎士のコスプレ。オープニングの闇の騎士と同じ衣装なんだけど、後頭部に鉄仮面付き。
 なかなかおちゃめな姿なんだな……。

 ここの衣装のまっつが、なんかツボ。
 アトス様は長い髪をすっぽり服の中に入れて、しかもアタマをすっぽり覆う帽子をかぶっている。
 まっつ、アタマちっちゃ!! 顔ちっちゃ!!
 アタマの後ろに付けている仮面まんまの小ささ……(笑)。
 また、服が大きいのか、衿元に顔が埋まっちゃってるのが、更にぷりちー。
 まっつの首が短いとは今まで特に思ったことがない。それでもアゴが隠れちゃうのは彼の全体が小さいのと、生真面目に衿を完全に立てて着ているためだろう。
 アラミスとかてきとーに衿を折って着こなしてるもん……でもアトスはそんなことしない、ぴしっ、ぱきっ(笑)。
 細くて小さくて、すげーかわいい。こんな人形欲しいよマジ。


 続く~~。
 なんでアトス様ぢゃないのおおおっ?!

 恒例の、「ステージスタジオ」タカラヅカファンタジーにて、ストラップを作りましたの。

 スターとのツーショット写真(合成)が撮れる! という、微妙なアレです。
 キャトルレーヴでふつーに販売しているスチール写真に、自分の写真を合成するだけだから、自宅でいくらでもできることを、わざわざお金を払って人の手を借りてやる、という、とっても無駄な行為。

 記念、と割り切ってます。
 そして、まっつグッズコレクター(笑)として、はずせないと思っています。
 たとえひとりでも「未涼亜希さんでお願いします!」と指名して写真を撮る人間がいたら、メニューからまっつが消えないかもしれないもの。もー、微妙な立場の人を好きになると、心配事の種が尽きない(笑)。
 や、まさかわたしひとりじゃないと思うけど……まっつメイトのみんな、まっつ指名で写真撮ってるよね?

 でもって、まっつは今回はじめて公演スチールが2種類発売されたの。
 芝居と、ショーと。

 今まではずーーっとショーのみだった。
 だからこのステージスタジオのツーショ写真メンバーに入ったときも、ショーの写真しかなかった。
 他のみんなが『ベルばら』な写真なのに、まっつひとりショーの写真だった。
 そんな仕打ちをされていたんですよ。
 仕方ないんだけどね。花組では当時、芝居の扮装写真はみわっちまでと決められていたから。

 1本物のときは芝居しかないわけだから、ふつーに芝居の写真とツーショできたけど。
 それ以外はまっつだけショー写真。

 ……だったのに。
 つ・い・に、今回は芝居のスチールも発売された!
 これでもお、ツーショ写真メニューでも、はみごぢゃない!(はみご、って方言っすか? のけものとか輪に入れない者とかそんな意味、大阪人の使う「アホ」と同じく、あまりきつい意味ではないのよ念のため)

 そう喜び勇んで9月29日、ええ、ワタクシの誕生日にいそいそと撮影に行きましたのよ。記念記念と。

 ああ、なのに。

 写真は、ショーのものオンリーでした……。

 なんでえええっ?!
 なんでショーの方なのよおおお。

 キムくんから全員、ショーのスチール写真。

 ショーなんてほんと「イメージ映像」でしかなくて、本編と関係ない髪型や衣装で撮られているし、どの作品だってどうしても似通ってしまう。
 それよりも、一発でどの作品かわかる芝居……しかも派手なコスチューム物の写真を使ってこそステージスタジオでしょうに。スーツ姿のショー写真オンリーだなんて、ステージスタジオの意味ないじゃん!! なんでそんなことに?

 アトス様とツーショできると思ったのに……。
 しょぼんしょぼんしょぼん。
 はじめてスチール入りしたのにー。『ベルばら』は容赦なくまっつひとりショー写真で、みんなきらびやかなコスチューム写真だったのにー。

 ぶっちゃけショーのスチール写真まっつは汎用性高すぎて、どれも変化が乏しいもんで、値打ちナイのよ……とほほ。


 ところで、雪組公演はなんと8ヶ月ぶりなわけですよ。
 自分でもっといくらでもきれいに作れる合成写真を、お金を出して時間と恥を捨ててスタジオで撮るのは、あくまでもまっつのためのみ。
 だからステージスタジオに足を踏み入れるのも8ヶ月ぶりだったんだけど、ストラップが、2種類選べるようになっていた。

 シンプルタイプと、ラインストーン付きタイプと。
 どちらにしますか、と聞かれてぽかーんだった。そんなもんができていたのか。
 正確には、今まで衣装をつけて撮影したとき用のストラップ作成キットを、ツーショ合成用にも転用することにしたらしい。
 ラインストーン? いや、結構です。反射的に断った。だって自分の顔にそんなもん付けてもしょーがないし、そもそも「記念」というか「出席スタンプを押してもらう」程度のキモチでしかストラップを作らないわけで、まっつを指定して撮ることに意味があり、出来上がったストラップは封印、二度と見ない、てなもんだから。金額上乗せしておまけをつける必要はまったくないなと。
 しかし。

「ラインストーンを付けても付けなくても、値段は同じですよ」

 と言われ、「え、同じなんですか。じゃあお願いします」と言ってしまった、貧乏人。お値段据え置きでおまけ付き!とか言われるとふらふら余計な物を買っちゃうタイプ。

 しかし、なんで同じ値段でラインストーンをプラスできるんだろう、とあとから冷静になって考えた。
 変じゃん。
 んで、見本をよーっく見ると。

 ラインストーン付きタイプは、写真のチャーム加工が、ちゃちだ。

 なるほどー。そういうオチかああ。
 ツーショ写真のシンプルタイプは、思ったよりちゃんとした、かわいいものなんだ。ころんとした手触りがいい感じの。
 合成写真自体は自分でもできるけど、このころんとした加工はできないから、まだお金を出す価値もあるかー、とか思ったもんだった。

 それが、ラインストーン付きタイプだと、素人でもできるような加工。一般店舗で売ってる「オリジナルストラップ作成キット」クオリティ。
 グッズスキーのわたしは、そーゆー作成キットのコーナーをしつこくのぞいて材料漁りしているので、ラインストーンなしのシンプルタイプの加工キットは売っているのを見たことナイ、でもラインストーン付きタイプはいろんなメーカーが出しているのと同じ、と思った。

 ラインストーンでも付けないと、あまりに加工がちゃちいからか……。

 出来上がったストラップを見て後悔(笑)。
 次からはびんぼー根性を出さずに、シンプルタイプにしよう。おまけ付きなのに同じ値段なんて、おかしいに決まってるやん。

 でも次、って、なんなんだろうね?
 雪組の次の本公演、まだ発表されてないし?

 なんにせよ、芝居の写真に統一して欲しいなあ……。いや、ポスターがショー写真なら仕方ないかなと思うけど、ポスターと無関係の写真で「記念品」と言われてもさー、観光客にもキャッチーじゃないと思うよそんなの。
 新人公演『仮面の男』、キャスト感想いろいろ。

 翔くん、あんりちゃん、初新公主演おめでとー。

 とはいえ、なんかつい最近このふたりが主演の舞台を観たところなので、あんまし「初主演!(鼻息)」という感じがしない……(笑)。

 ある意味とてもタカラヅカらしい主演コンビだった。
 外見は華々しくきれい、そして実力は……、という(笑)。

 翔くんは『灼熱の彼方』をやっていて良かったねえぇ。
 ルイはコモドゥスで、フィリップはラウルと、やったことのあるキャラでなんとか乗り切った印象。
 『灼熱の彼方』を観たときは、その潔いまでの大根さにびびったもんだ。若い子たちが軒並み小器用になっている今、ここまで不器用な子もめずらしい、と。
 歌とか芝居とかいろいろと不自由な子だが、それでも翔くんは翔くん比で成長している。
 『灼熱の彼方』の記憶が新しいだけに次にラウルという大きな役をやるとわかったとき、正直不安だったんだが、なんとかやっているし。
 あー、若いっていいなあ、短期間で変わるもんなんだなあ、と。
 しかしまあ、主演となると……大変よね。そうよね。これがいっぱいいっぱいだよね。

 不自由なところは山ほどありましたが、コモドゥスのときも感じた素直な体当たり感は気持ちいいなと。
 そしてやっぱりきれい。顔立ちは華やかできれいで、タカラヅカを見たー!って感じ。
 だからなおさら、スタイルが残念だなー……。バウサイズだと気にならなかったけど、大劇場ではなかなか目立つわ……。
 翔くん見てるとなにかとあひくんを思い出すナリ。


 ヒロインのルイーズ@あんりちゃん。
 『灼熱の彼方』ではうまいもヘタもわからない、なにしろ「お兄さま……」しか言ってないじゃんスズキケイ! というひどい作品だったから、今回はじめてまともに芝居を見たよーな気がする。や、ルイーズも出番少ないんだけど。

 星のわかばちゃんに共通するタイプの子だなあ。
 かわいくて、見た目がとてもヒロイン。さらにあんりちゃんは可憐な小動物系だ。はかない外見だからこそ、時折きゅっと強い表情をするとけなげに見えて、きゅん(笑)。
 初ヒロインとして及第点はあったんじゃないかと。
 というか、なにかと小器用な現代の若い子なら、急な抜擢でもこれくらいはやるだろうなとわたしが勝手に思っているレベルは「ヒロイン」してくれたので満足。
 あとはもお、かわいーかわいーかわいーと鼻の下をのばしてました(笑)。かわいいは正義。

 新人公演は演出変更がいろいろあったものの、影絵はそのまま。
 影絵のウサギとカメの練習に時間を費やすくらいなら、歌のレッスンなりした方が彼らのためになったろうに……こだまっちめ。

 本公演はなにしろ、キムくんがうますぎて。
 少ない出番でルイとフィリップを完璧に演じ分けている……だけではなく、フィリップとルイーズの心のつながり、近づいてゆく様、フィリップの成長まで表現しているからなー。
 同じことを新公でやるのは無理だわなー。
 ただ脚本にあるだけのことを懸命にこなしているので、結果ルイーズの心変わり早っ、てことになる。

 前後のつながりや全体のストーリーは気にせず、ただ場面場面のかわいいふたりを楽しむ感じ?

 そういや、若いふたり用の演出なのか、最後の銀橋でおでここっつんこしてにこにこ笑うところがあり、すごーくかわいかった。


 コンスタンス@えーちゃんはちょっと意外だった。
 その、ビジュアルの微妙さが。
 どーしたんだ、かわいこちゃんなのに??
 お化粧失敗したのか髪型のせいなのか。あのウサギちゃんのかわいこちゃんと同一人物とは思えない……。
 東宝では改善されているといいな。
 歌と演技にはなにも引っかかりはなく……ビジュアルに首を傾げているうちに終わってしまった。出番短いわな、コンスタンス。

 アンヌ王妃@あゆちゃんが、さすがの存在感とうまさでした。
 ヒロイン経験者がこうやって脇に回ったときに出す風格ってすごいね。
 ちなみに終演後の挨拶でもあゆっちはこの迫力ドレス姿で、ルイーズよりもはるかに豪華な衣装であることもあり、どっちがヒロインかわからないほどでした……。

 洗濯女@すずちゃんは本役とはチガウ役作りで、「監獄そばで洗濯屋を営む文盲の女」としての闇っぷりを出していた。たぶん、かなりえぐい仕事をしている、最下層の人間なんだよね……毎日のように囚人が責め殺されている監獄の洗濯物を扱っている仕事なんて。
 背中のこぶと年老いた感じがもお……ここまでやるかと。たしかにこの女なら文盲だろうし、アトスも「すまない」と言うしかないわなー。説得力。

 ミレディ@るりちゃん、うまかったー。こわくて色っぽい。

 大女優@さらさちゃん、期待通りの歌声。しかしこの人間ミラーボールってばライトのアタリ方が微妙なため、顔がえーらいこっちゃな光線になっちゃうんだよね。本役さんもそうなんだけど。美女が台無しだ、顔がきれいに見えるライトにしてくれよ。

 マリー・アントワネット@のあちゃん、歌が大変。しかししょっぱなからどーん!と体当たりで見せてくれるなあ(笑)。

 看守フェルゼン@ザッキーがいつもにも増して、愉快なイキモノだった(笑)。
 いやー、ノリノリ。楽しそうだねええ。サンマール@レオくんとふたりして、かっ飛ばして帰って来ねえ(笑)。

 ロシュフォール@りんきらはこれまた堅実というか。うまいけど地に足付いて脇を固めています風味が強い。本役さんがアニメ的キラキラ美形隻眼男だから、ギャップすげえ。
 出過ぎない感じは、これはこれでアリかも。

 ラウル@橘くんは、いろいろがんばれ。ビジュアルも技術も、まだ研2だからこれからでしょうな。


 『仮面の男』は問題ありまくりのトンデモ作品だが、役が多くて下級生たちまであちこちで活躍しているのは長所。だから組ファンはなんだかんだ言ってもリピートできる。
 新公も役や出番が多くて、目がいくつあっても足りない。うおー。
 新人公演『仮面の男』のキャスト感想続き。

 まなはるを、考える。

 まなはるくんは組ファンの認知度も高く、また愛されているキャラクタだと思う。
 きれいだし、タカラヅカ的な実力もある。なによりパワーとパッションがある。収まりきらないうるささとあつくるしさがある。

 画面の隅でも視界に入ってくる、いや、入ろうとアピールしてくる、その芸風ゆえに「早いことこの子に新公主演させてやってくれ」と思っていた。
 身長、美貌、実力、どれも学年的に早熟な出来上がりぶりじゃないか。こーゆー子は若いウチに真ん中を経験させて、スキルを上げさせてやってくれ。

 だから期待していたんだ。
 あのまなはるが、よーやく、よーーっやく、2番手役をする。
 お笑いとか名前だけのどーでもいい役とかじゃなくて、真の主役みたいなダルタニアン役だ。本気で二枚目、クールな大人の男の役だ。
 あのまなはるは、この「真ん中」に立つ役をどう演じるのか。

 えーっと。

 わたしはまなはるに、ナニを求めていたんだろう。
 新公でダルタニアンを演じるまなはるを見て、しみじみ考えた。

 まなはるはいつだって、面白かった。
 どこにいても、ナニをしていても、面白い。
 お笑いとかギャグとかじゃなく、彼の舞台姿はとても興味深い、わたしの目を惹きつける光と熱があった。
 どんな役も平板にはならない、まなはるならではのナニか、「面白い!」と思えるナニかがあった。

 だからわたしは無邪気に期待していた。
 限られた出番や役割しかない役をやっていて、あんだけ面白いんだ、準主役を演じれば、まなはるはどんだけ面白いものを見せてくれるだろうかと。

 ダルタニアンは……面白くなかった。

 ダルタニアンはシリアス一直線の役、笑わせる役じゃないよ!という意味ではなくて。
 まなはるなら、ナニかしら面白い……interestingなダルタニアンになると思ったんだ。

 なんか……ふつーだった。
 ふつーのダルタニアン。

 そして。

 あんなどーでもいい程度の書き込みの、わけわかんない脚本のまんま演じてしまうと……ほんとに、ただわけわかんない人になるんだ、ダルタニアン……。

 本役のちぎくんは、それでもスター力でねじ伏せてるんだね。あの変な役を。

 そしてなんつってもダルタニアンは、抑えたクールな役。
 まなはるは、顔芸を禁じられた。……まなはるピンチ! 得意技を禁じられた。魔法を使えなくなった魔法使いみたいなもん、そんな状態でバトルしても勝てないって!!

 まなはるダルタニアンは、ずっと同じ顔をしていた。
 最初から最後まで、怒った顔。
 あの特徴的な弧を描いた眉を強く跳ね上げて、ずーっとずーっと同じ顔。

 もちろんまなはるだから、いつも力一杯。抜きどころなく全力投球。
 全力で……力入りまくりで……同じ顔。

 たぶん彼は、全力でクールなダルタニアン、苦悩しているダルタニアン、黒いダルタニアンを演じていたのだと思う。
 しかし、いつものにぎやかな顔芸、なにをしでかすかわからない跳ねっ返り感を封じられたまなはるは、ただの不自由な人だった。

 なんなんだ、この「足りていない」芝居は。
 まなはるに感じたことのない印象。
 だっていつだってまなはるは、器からはみ出るような「やりすぎ」芝居の人だった。足りてないなんて、真逆じゃん……。

 まなはるの「やりすぎ」ぶりは微笑ましく、もともときれいな子だから余計に光となって目についていた。
 派手な芸風の子だと思っていた。

 現に、本公演で彼が演じている仮面の男。
 フィリップ/ルイ@キムの影武者で、同じ衣装で仮面を付け、素顔は決して見えない。
 でも仮面の男は、派手だ。主役の影武者だけあって、主役に負けない華を持って大暴れしている。
 顔が見えないのに、顔芸すげえ! 鼻息すげえ! さすがまなはる!
 ……なのに。
 仮面ナシで準主役を演じて、仮面の男より地味ってどういうこと? 地味というか……光っていない。

 それまで脇しかやってこなかった星組のベニーが、突然『スカーレット・ピンパーネル』で主演して、その「面白い」芸風を全開に花開いたように、まなはるにも期待していた。脇しかやってきてないけど、その脇姿がものすごーく面白いから、真ん中に立ったらさらに面白いんじゃないかって。
 役が悪かったのか。
 いやしかし、どんな役でも「面白く」してくれると思ったし、それでこそのキャラだと期待していたんだが……。

 タカラヅカの「真ん中」ってほんと、難しいんだなああ。

 まなはるも、もっと下級生時代、今よりもっともっと向こう見ずではねっかえっていた頃に抜擢していたら、違っていたんだろうか。
 脇で、少ない出番と小さな役割でのみ、自由に面白く演じられる人、脇で小芝居をする人、になっちゃったんだろうか。積んできた経験ゆえに。
 もちろんそれもいい、それも大切な役者さん。
 でも『銀薔薇』や『凍てついた明日』の頃は、すげーわくわくしたんだけどなああ。

 いやその、なにを勝手に夢を見てたんだ、つー話ですが。
 そしてなにを勝手に肩を落としてるんだって話ですが。

 すべてわたしの思い込みでしかなく、世間的には「まなはるダルタニアンは素晴らしい華と輝きで劇場を圧倒、誰もが新スターの誕生に歓声を上げた」ってことになっているのかもしれませんが。
 「まなはる、意外に地味だったね」「仮面付けてる方が派手ってどうなのよ」という感想を交わしていたのは、わたしの周囲だけなのかもしれないし。

 わたしがひとり勝手に「まなはるなら、きっと面白い」と思い込んでいて、思っていた通りのモノが見られなかった、というだけのこと。
 芝居として悪くなかったはずだし、ふつーに脚本にある通りのことはできていたんだと思う。あ、歌はひどかったけど(笑)。ダルタニアンの銀橋の歌、いい曲なのに、正しいメロディで一度も聴けない……(笑)。
 はじめての大きな役で、彼は十分によくやっていたのだと思う。
 なのにすっきりしない、ゆえにわたしは考えたよ。わたしはまなはるに、ナニを求めていたんだろう、って。

 タカラヅカってほんとに、すごいところだ。
 真ん中に立つ、って、どれほど難しいことなんだろう。
 『おかしな二人』千秋楽。
 かわいらしさをヒートアップさせて、幕は下りた。

 過剰なアドリブでぐちゃぐちゃになることもなく、ノリノリの会話やアクションが飛び交い、盛り上がって終幕した。
 キャラクタたちはさらに息づき、テンポよく、同じ板の上で全力っぷりを見せてくれた。

 たのしかったー!!

 みっきーのいじられっぷりがかわいかったなあ。なんかますますみっきー好きだわー(笑)。

 マヤさんの「マイウェイ」はさらにしみじみと響きわたり。
 客席すすり泣き状態だし。
 わたしはフィナーレ開始でトド様登場時から泣きまくってましたが。だってもお、トド様愛しすぎる。


 今さらだけど、この作品が可愛く感じられることについて、考えてみる。

 仲間たちの溜まり場になっている、オスカー@トドの部屋。
 彼は売れっ子のスポーツ記者で、部屋が8つもある高層アパートでひとり暮らし。それじゃ必然的に溜まり場になるわな。 集まる仲間たちは職業も経済状況も年齢も、そして性格や価値観も様々。だけどポーカー好きという共通の趣味があるから盛り上がれる。
 自分と仲間たちに照らし合わせても、納得の設定。
 オスカーみたいな境遇でかつムラの近所に住んでる子がいたら、ヅカ友たちの溜まり場になっているのが目に見える。なにかっちゃー集まって上映会とかやってるの(笑)。年齢も職業もファッションセンスもまったくバラバラの女たちが集まってきゃーきゃーやれるなんて、共通の趣味(ヅカ)がないとありえないわー。

 そんな部屋に住んでいられるだけの高給取りなんだけど、オスカーの生活はびんぼー。
 だらしない性格で、稼いだお金は酒にギャンブルに湯水のごとく使っちゃう。
 あああ、この辺もリアル、どんだけ高給取りになっても、全部ヅカに使っちゃってびんぼー生活している自信あるわ、わたし!(情けない自慢はよせ)

 部屋は汚れまくり、服装だっていい加減。
 もちろん、奥さんも愛想をつかして出ていった。息子の養育費の支払いに追われる日々。
 でも彼は仲間たちとそれなりに楽しく暮らしている。

 そんなある日、ポーカー仲間のひとり、フィリックス@マヤさんが奥さんから三行半を突きつけられ、オスカーの部屋に転がり込んできた。
 もともと友だちだけど、週に一度趣味の集まりで会うのと、一緒に暮らすのは違う。潔癖性のフィリックスはいー加減なオスカーの神経を苛つかせる。
 生活スタイルをめぐってのふたりの攻防戦が物語のメイン。

 この物語がいやな感じにならないのは、成り行きで一緒に暮らすふたりの、転がり込んできた方が、押し掛けてきたわけじゃないってことが大きいな。
 わたしはドラマ好きでドラマもかなりの数見ているんだけど、わたしの逆ツボ、これをやられたらそのドラマを見る気がなくなる、っていうシチュエーションに「押しつけ同居」がある。
 ひとり暮らしを満喫している主人公のところへ、強引に押し掛けて居着いてしまう自分勝手なトラブルメーカーの肉親、親友、元恋人や元配偶者、郷里の人。勝手にそんなことをして平気な性格の人だから問題起こしまくりで、それに振り回される主人公をおもしろおかしく描くってやつ。でも憎めないところがあって主人公が助けられることもありほっこり、とか。
 この発展系で更に嫌いなのが、子どもや赤ん坊を押しつけていくこと。子どもなんか育てたことのない独身の主人公が、子ども相手にわたわたする様をおもしろおかしく描くってやつ。でもなにしろ子どもネタなのですぐほっこりとかハートフルになって……とか。
 役に立つことがあろうが、小さいからかわいかろうが、迷惑は迷惑なんじゃ、押しかけるな押しつけるな。やっていいことと悪いことがある、とそのシチュエーションだけでわたしには無理。楽しめない。

 しかし『おかしな二人』は、独身貴族のオスカーが、行く当てのないフィリックスを口説く、「一緒に住もう」と。フィリックスが辞退するのを半ば強引に口説く。
 居候が強引にやってきたわけじゃないから、次の場面で同居を迷惑がるオスカーは勝手なんだけど、そこがリアルでいい。

 オスカーがフィリックスを好きなことも、失意のまま行く当てもない彼を心配したことも、友だちとの同居にわくわくしていたことも、全部本当。でも、実際暮らしてみたら、嫌なことが多かった、と。それでブチ切れるオスカーは勝手だけど、仕方ないよ~~、あり得るよ~~。
 オスカーの責めに対し、隷属を宣言するフィリックス。するとこれまたオスカーは前言を撤回、「自分がいつも正しいとは限らないから、盲目的に従わなくてもイイ」とすねたように返す。
 これが。こっ、れっ、がっ、すごく好き。

 オスカーが、イイ奴なの。ほんとに愛すべき奴なの。
 可哀想な友人を口説いて一緒に住むことにして、でも勝手に「家主はオレだ」とブチ切れて、「じゃあすべて家主様の言う通りにする」と言われれば「オマエが正しいことだってあるんだから、すべてオレの言う通りにする必要はない」と言う……この流れが好き。
 ほんとによくあるパターンだと、前述のように居候が勝手に押しかけて来たわけだから、家主である主人公がキレるのは当然、なのに居候はさも被害者ぶるし、売り言葉に買い言葉で主人公も「家主はオレだ、すべてオレに従え!」と理不尽発言、ますます居候が正義、主人公が悪になり、結局居候がそのまま居座る口実に……みたいな流れになる。
 わたしの逆ツボとはチガウ、自然な流れなの。
 オスカーにもフィリックスにも欠点はある。それでも、歩み寄り、妥協点を探りながら暮らしている。
 それはとてもリアルで……愛しいこと。
 ひととひとが、他人同士が、互いの違いにとまどいながら摩擦を生みながら、それでも手を取り合おうとする姿。
 それはとても、愛しい。

 そのあとオスカーとフィリックスは、致命的な大喧嘩をし、同居解消に至るわけだけど。
 どちらも聖人でも悪人でもない、等身大のダメ男。いや、ふつうの、人間たち。
 修復不可能なくらい傷つけ合っても、結局オスカーはフィリックスを心配するし、フィリックスもオスカーを好きなんだろう。

 ラストは互いが互いを認め、影響し合い、それぞれが良い方向へ変化していく。
 ああもお、なんてあたたかいんだろう。作品を通しての、「人間」を見つめる目が。

 オスカーの誰彼なく口説きまくるチャラ男ぶりがステキだし、そんな彼が、妻と離婚した当初のことを話す哀しさは胸に痛いし。
 ポーカー仲間たちも、口ではいろいろ言っていても、みんなとてもやさしい。友だちなんだ、マジで。

 出てくる人々がみんなみんな、リアルにやさしい。
 「やさしい」が基点なのよ、そこから発展しているのよ。
 だからこんなに、やさしい物語になる。


 ミサノエールが彼らしさを発揮しつつ縦横無尽に暴れ回る、このあったかい作品で主演できたことがうれしい。
 トド様が彼らしさを超えて新しい顔を見せて、このやさしい作品で主演できたことがうれしい。

 ほんとに、かわいくて大好きだ。愛しくて、大好きだ。

 千秋楽、いつまでも手を叩き続けた。
 キャラクタのせいか衣装のせいか、いつものトド様ではアリエナイ、おかしな腰の揺らし方で踊り続けるトド様に、泣き笑いしながら。

 しあわせな時間だった。
 新人公演『仮面の男』、キャスト感想続き。

 ポルトス@ホタテくんを見て、つくづくうまい子だと思う。

 とゆーのもだ、ポルトスが「役」だったからだ。
 本役のヲヅキさんは、芝居をしているとか役を演じているというよりも、自分自身のカラーでそこに在る、という色合いが強い。
 実はヲヅキ氏が深遠な計算と精密な作り込みにより繊細に芝居をしてポルトスを演じているのかもしれないが、わたしの目には「いつものヲヅキ」「ヲヅキさんならではのポルトス」に見える。
 それが悪いワケじゃない。ヲヅキさんのキャラクタ自体が魅力的であり、演出家も観客もヲヅキのヲヅキらしさを求めている。彼はそれに応じた仕事をしているんだ。

 しかし新公でポルトスを演じるホタっちゃんはヲヅキではない。
 アテ書きでヲヅキの個性におんぶに抱っこ、それ以外はナニも書かれていない「ポルトス」をどうするか。
 ヲヅキのコピーをすることは出来る。キャラクタとして確立されている「ヲヅキトオマ」を真似ることは、難しくない。
 模倣も勉強のひとつ。それはソレでアリだろう。
 しかし。
 ホタテくんは模倣して勉強する段階は過ぎている。
 だから自分で、「ポルトス」を演じた。

 本役とは別。というか、関係ない。
 ヲヅキさんの影はなく、最初から「ポルトス」という役を考えて作ったらこうなった、って感じ。
 ああなるほど、と、すとんと腑に落ちるポルトスだ。

 キャラ頼みではない、芝居のポルトス。
 なんか新鮮。

 ただ、あまりアタマ悪そうには見えない。まともでおおらかな、愉快な人だ。
 頼りがいあるよなー。なんか、リーダーっぽい……。

 ポルトスが近藤勇で、アトス@あすくんが土方歳三みたいだった。

 ところでこの三銃士。
 すごく、地味だったんですが(笑)。

 他のふたりにも問題はあるが、本公演に比べていちばん輝度が下がったのは、ポルトスだと思う。

 ヲヅキさんって、派手な人なんだよなあ。
 華とか輝き、とかとはまた違うかもしれないが、とりあえず彼は昔から目立つ人ではあった。今ほど出来上がっておらず、丸いぱんぱんの顔とお尻で舞台の端にいたときから、とりあえず目立つ人だった。
 なんつーんだ、輪郭の濃さというか、色合いのえぐみというか。
 パステルカラーの多い中、微妙に黒の混ざった濃い色を持っているというか。

 本公演の三銃士は、ヲヅキの派手さで底上げされている感があるんだなあ。

 だもんで新公、ホタっちゃんはうまいんだけど、輝度の高い人ではなく職人的な艶のある人なので、同系統のあすくんと共にどうにも沈みがち。
 三銃士が本公演ほど目立たないというか、おいしくない……いや本公演でもアレな役なんだけど、それにしてもなおさら。

 アラミス@イリヤくんは、「アラミス」以前に「男役」としてそこにいるだけで「やり遂げた」感があったというか。
 役を語れるところまで行っていないというか。
 経験値も少ないのだろうから、これからがんばってくれ。
 イリヤくんは『RSF』のすげーうれしそーな顔で歌い踊る姿とか印象に残ってるんだが……やっぱもう少し痩せてくれるといいなあ。

 美貌という点ではアトスが群を抜いてると思う。男役としての線の太さ、出来上がりぶりではポルトス。いろいろお勉強中のアラミス。
 てな3人は、なーんか地味だったなああ。
 だがその反面、とても、カラーが統一されていた。

 本公演の三銃士が、どんだけバラバラかわかるっちゅーか(笑)。
 あいつら好き勝手な個性で存在してるもんなー。

 みんなさらに男っぷりを磨いてくれ。


 ところで、ルーヴォア@咲ちゃんがかっこいい。

 ルイ@翔くんの腰巾着ではナイですあの人、絶対凄腕の軍人です。
 文官じゃないよ、だって誰よりも強そうだもの。

 最後のところででかい剣を持って登場するじゃないですか。
 うわっ、強そう!
 本公演では加勢がないと絶対やられちゃうことが丸わかりな小柄で華奢な人だったけど、新公では誰より体格いい。
 逃げてダルタニアン@まなはる、逃げて~~!! 絶対かなわないよ、勝てるわけナイよ!

 咲ちゃんの男役としての出来上がりっぷりは、こういった新公やワークショップでは顕著ですな。
 衣装の着方もわかってない、立ち方ひとつわかってない、そんな下級生たちの中では群を抜いてかっこいいっす。

 本公演のモリエール役もそうだけど、咲ちゃん、ヒゲ似合うね! ヒゲ姿だと丸顔も引き締め効果アリ、すげー色男っす。

 彼が登場すると「スター来た!」と思えるからすごい。
 彼の育て方、抜擢の仕方には物申したいことがいろいろいろいろあるんだが、素質はあるんだから間違えずに育てて欲しいと、心から思ったナリ。


 ハウルは水戸黄門……。
 91期はこれが最後の新公だよね、それで役が水戸黄門……。

 いやその、登場した途端、あまりに小さな黄門サマで、娘役がやってるのかと思った……声も甲高いのでさらに女の子かと……顔を見たらハウルだった……。
 わざと甲高い声でやっているのでしょう。よりわかりやすいギャグ場面として。
 うまかった。
 『ZORRO 仮面のメサイア』の新公を思い出した。
 かわいかったし、こーゆー役はうまいのだと思う。
 素顔の美貌とうまく折り合いを付けて、落としどころを見つけて、長くこの花園にいて欲しいと、心から思う。
 ハウル好きだー、かわいいー。


 最近とっても大好きな央雅くん。
 酒場の主人がイケメン。
 優男風つーか、よわっちいのがまたステキ。
 しかし、ほとんどモブばっかで、本公演と変わらない気がする……残念、もっと役を演じる彼が見たかった。


 モリエール@りーしゃがうまくてびっくり。
 りーしゃというと美貌担当の人、というイメージで、芝居とか声とか気にしたことなかった。(失礼な)
 こんなにうまい人だったのか。
 滑舌しっかり、明瞭な歌声で、「早わかり世界史」がとてもよく聞き取れた。
 台詞間違えちゃったのはまあアレだが、こんなにおいしく成長してくれていたんだと、忘れ去りたい『忘れ雪』で台詞もろくにないバーテン姿で客席のケロファンの話題をさらった彼を、感慨深く見つめる。


 ところでわたし、やっぱ翼くん好きっぽいです(笑)。
 今回はボール係と神父、そして囚人、声を聴くたびにいい感じだわーと思う。
 顔はぶっちゃけ好みではナイんだが、そんなのまだ若いからこれからどう変わるかわかんないし。つか、確実に公演ごとにいい顔になってきてるし。
 みやたんに似ていると個人的に思っているので、モブでも目につくしなー。
 まったり眺めてます、がんばってくれー。
 新人公演『仮面の男』キャスト感想続き。

 あすくんはなんつーか、もったいない子だなあ。

 彼を見ていると、心がもやもやヒリヒリする。
 きれいで歌ウマで声がよくて、男役としての着こなしも芝居も悪くない。この学年にしちゃーできている、うまい。ダンスだってできる。
 こんだけ何拍子もそろっていながら……足りないモノがある。
 まず、身長。
 そして、華。

 あああ。
 なんですかコレ、誰に対しての評価ですか、どこかの誰かさんが世間的に評されているのと同じじゃないですか?
 そしてそのどこかの誰かさんの役を、新公でやっちゃうわけですよ。

 アトス@あすくん。本役まっつ。

 うまかったです。
 ほんとに、うまかった。
 声もいいし、かっこよかった。きちんと芝居していて、こんな話なのにアトスとして気持ちをつなぎ、違和感のない作りになっていた。
 きれいだし、歌うまいし。
 文句ない新公ぶり。
 なのに。

 アトスって、こんなに地味な役だったんだなあ、と思った……。
 本役もそうなのかな。わたしがまっつ贔屓ゆえに気付いてないだけ? こんなに出番なくてしどころのない、地味な役だっけか。
 や、この狂った作品、みんなしどころない役ばっかだけど。

 『ロミオとジュリエット』新公で、まっつを見慣れた目には、新公のがおりベンヴォーリオのサイズの違いが驚きだった。がおりでかい、スタイルいい、かっけー。
 その、大抵誰がやっても、まっつより大きくて当然なので(まっつは男役としては80期以降の公式最低身長っすから!)、新公ではわりとサイズ感の違いに驚くもんなんだけど。
 今回は、見慣れたサイズ感だった。
 違和感ナイわー、声も似てるわー。

 小柄な歌ウマさんって、ほんっと出遅れるんだよね。
 長身さんやダンス売りの人たちなら、群舞のすみっこ、ただ舞台にいるだけでも注目してもらえるけど、歌は場を与えられないと発揮できないから。数人口ですらダメ、ソロでないと。
 本公演でソロをもらえる立場になんて、いつになったらもらえるのよ? それじゃ観客に認識されないから人気も出ない、それゆえますます立ち位置も上がらない……負のスパイラル。
 新公やバウで歌ったところで、一部の人にしか届かない。タカラヅカはなんつったって本公演で活躍してナンボだから。
 そーやってはがゆい思いをしてきたファン人生。なんかいろいろとかぶる……ああ、心がひりひりする。

 『ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』で4人口に入り、銀橋にも乗っちゃってるレオくんと、その他大勢として本舞台にいるあすくんに、ちょっとアタマを抱える。
 基礎的な実力があるのはあすくんだと思うんだけどなあ。
 タカラヅカ的な美貌は、「**の場面にいた**の衣装の子はなんて名前? きれいだった」と人から聞かれるくらい、ふたりとも美形。
 最近の彼らに差がついてきたとしたら、それはひとえに「経験値」かなあ。
 全ツ『黒い瞳』『ロック・オン!』、ワークショップ『灼熱の彼方』でちゃんとした役と出番とセンターに立つ経験を与えられたレオくんと、『ニジンスキー』『H2$』とその他大勢のモブしかできなかったあすくんの違い?
 吸収率のいい若い子は、この時期にナニを与えられたかで成長率がどんと変わるよなああ。

 と、話が逸れたが。
 サンマール@レオくんの輝きっぷり(少々トンデモ風味)と、アトス@あすくんの堅実ぶりが興味深くてなあ。
 サンマールが3番手役に見えたんだもん……。本公演も、新公と同じ演出でコマが銀橋渡ったら、彼が3番手に見えるのかしら……まっつより芸風派手だもんな、コマくん……あああ。(自虐)

 なんかいろいろと悩ましいです。
 そして、わたしは、あすくんが好きです。

 なーんか地味なアトスを見ながら、しみじみ思った。
 うわー、この子好きだー。すごい心臓ハクハクする(笑)。

 いや、地味っつっても十分スターなのよ?
 ある程度の華はある、もちろん。
 ただこの作品の中心になるほどの閃光ではなく、それゆえに作品をぶっこわすこともなく、自分の仕事をきっちりこなした上でそれに相応しいだけの光を出している、というのが。
 そのまともさというか、まじめさというか、はじけられなさというか。
 いちいち、好みだ(笑)。

 光は経験によって変わるので、これからあすくんがばーーんと輝いてくれるといいな。

 てゆーか劇団様、同期売りしようよ同期売り!!
 こだまっちは欠陥だらけの人だけど、『冬物語』がそうであるように、商売になる並びを作ることができる人なのよ。
 本公演のボール係、あすレオの可愛らしさに注目している人たち多いんだから!
 「作品も場面も最悪だったけど、とりあえずボール係の男の子ふたりはうまいし可愛かった」ってみんな言うもの!!

 と。
 なんか新公感想というより、あすくん(と、レオくん)を好きだという話になってしまっているような。ありゃりゃ。


 あすくんアトスは、ルイ@翔くんをまったく許していない風なのが良かったです。
 脚本のせいで、弟が死んだばかりだというのにアトスは歌い踊らなきゃならないんだけど、あすくんは心底笑っていない様子。
 まっつの老練さのあるアトスとはまた違う、とことん硬質な感じが鋼の男風で格好良かった。
 『DARK SOULS』に夢中になるあまり、ますます更新が遅れていますが(笑)、新人公演『仮面の男』のキャスト感想行きます。

 煌羽レオが、スターだ。

 びっくりした。

 『仮面の男』初日を観たとき、あまりのことに新公を憂いた。
 コレを、舞台人スキルの低い下級生たちが演じるのか……。
 特に、看守長役。
 初日の観客のドン引きっぷりはすごかった。さぁーっと血の気が引き、温度が下がる。だけど舞台の上でがんばっているジェンヌさんへの愛情は有り余っているから、引いちゃいけない、それじゃジェンヌさんが可哀想だ、でもコレは無理、心が凍るのを止められない、でもダメ、がんばって観なきゃジェンヌさんが痛々しい……と、葛藤がそのまま劇場内に広がり、満ち、ますますサンマール@コマが大変なことになっていた。

 新公でコレやるの、誰……?
 コマくんでさえあんなことになっていたのに、下級生がコレやるの……?

 初日はなんの先入観もないままだったので、客席が凍り付くのを誰も止められなかったけれど、「そーゆーもの」とわかってしまえば二度とあんな空気にはならなかった。
 いやはや、貴重な体験をした。
 空気って凍るんだよ、マジ(笑)。そして、それでも舞台で歌い踊るジェンヌさんへの愛情ゆえに葛藤する、そのとまどいも空気には現れる。
 タカラヅカってすごいね。舞台も、そして観客も。

 本公演は3回観れば慣れるので、コアな観客はもう監獄場面で引かない。
 そーゆーもの、とわかって観ている。
 だから本公演初日のコマくんほどの大きなハードルは、新公にはない。
 観客はみんな味方だからだ。

 しかし、サンマールが大変な役なのは、確か。

 観客がドン引きして当たり前、の場面を牽引しなければならない。
 これは歌や芝居の技術や実力「以外」の能力が試される。

 つまり、タカラヅカ力。

 華とか輝きとか、ハッタリとか、そーゆー部分。

 本役のコマくんは、華のあるスターだ。だからこそ力技で持っていった。支えきった。
 どんだけ実力があろうと、ハッタリの利かない地味な人は無理。さらに痛々しくなって、観客がつらくなる。

 ある意味、この場面をこなせるかどうかで、そのジェンヌが真ん中向きかどうかわかる。
 技術よりも華とハッタリを試されるのだから。

 そして。

 煌羽レオは、やってのけた。

 ちょ……マジやってのけた! こなした、乗り切った、盛り上げた!

 しかも演出が替わり、本公演よりサンマールは派手になっている。
 銀橋に出てきたときはどーしたことかと(笑)。新公ではサンマールが3番手役なのか?

 観客を味方に付け、レオくんサンマールは銀橋で歌い踊った。
 手拍子を力にしているのがわかる。後押しされているのがわかる。
 彼がどんどん「前」に出てくるのがわかる。
 物理的な前方という意味の前ではなくて、キモチの上での「前」。

 この子、スターなんだ。

 スターとしての素質を持った子なんだ。
 それは技術や後天的な努力でどうにかなる部分じゃない、持って生まれたモノ。

 過去の「華」だけで存在していたスターたちに比べるとあまり華やかな力ではないんだけど、質実剛健が売りの雪組では、レオくんの華は十分あざやかだ。

 うわ、おもしれぇ。

 シンプルに、そう思った。
 この子、やっぱ面白いわー。

 それに、成長度合いが半端ナイ。
 『ロジェ』新公のオンナノコゴエ棒読みっぷりっから、毎公演成長し続けている。
 本公演のボール係にしろ、ショーでの姿にしろ、今ここで、というところできちんと注目を集めている。

 こんだけ毎公演成長してくれたら、観ている方は楽しいよなあ。応援しがいがあるよなあ。
 観客の手拍子で、応援のキモチで、「前」へ出てくるなんて、堪らないよなー、「うわ、今わたしたちがこの子を育ててる?!」みたいな錯覚を与えてくれるよなー。そーゆーキモチを与えてくれる子は強いよ、だって応援したくなるじゃん。

 最初から技術点の高い同期のあすくんと好対照。
 あすくんとコンビ売りしたら売れると思うんだけどなー。雪組って新人の売り方ヘタすぎるから無理なんだろうか。
 もったいない、じれったい。

 監獄場面でスターとしてのハッタリを見せたあとは、「黒い役」としてちょーカッコつけて舞台にいるのがニクい(笑)。
 大階段立ち回り場面とか、黙って立っている姿、ナニあれカッコつけすぎ。
 こいつ、絶対自分をカッコイイと思ってるわー、やだー、かっこいー(笑)。

 そして、最後の最後に笑わせてくれたのが、幕が下りたあと。
 この大変な芝居が終わり、緞帳が下りました。本公演では何故か下りない幕が下りた。(本公演は暗転で終了、何故か幕を下ろさない)

 再び幕が開くと出演者全員が並んでご挨拶になる。
 そこでは好きな衣装を着ていいらしい。着替える時間のない人は仕方ないにしても、自分で選べるのだと聞いた。
 『麗しのサブリナ』新公で、アーサーが場違いな総スパン衣装を着ていたよーに、どの衣装を選ぶかでそのジェンヌの性格や思い入れが見えたりする。

 レオくんは幕が下りる直前まで舞台にいたので、ふつーに最後の場面に着ていた銃士隊の赤い軍服姿だろう。アレかっこいいし、十分だよね……と、思っていたら。

 サンマールのキンキラ衣装に着替えてきやがった(笑)。

 まさかの早変わり!(白目)
 時間ほとんどなかったろうに、早変わりしてまでその衣装!!
 そうまでしてその衣装!!

 ロココな世界観の中に、突然キンキラショー衣装。たったひとりでキンキラ衣装。
 そりゃ、水戸黄門もいるけどさー。そっちも十分変だけど、とりあえずあのひとたちは地味だからさー。
 キラキラスパン衣装は、ひとりだけ浮きまくってる(笑)。

 ウケました。
 その自己顕示欲っちゅーか、やる気っぷりに。
 スターたるもの、空気なんか読んでちゃダメだよねー。主役より派手な衣装で挨拶するくらいの勢いがなきゃ。(立ち位置は学年順だから端の方・笑)

 面白いなあ、レオくん。
 劇団様、この子にすぱっと新公主演させてみてくださいよ。調子に乗らせた方が面白いタイプだと思うので、勢いづいてるままに抜擢して欲しい。
 1観客として、そう思う。
 待ちに待った『DARK SOULS』が発売になり、無我夢中でプレイしていたので、へとへとっす。てゆーか『DARK SOULS』の祭っぷりときたら……。オンラインプレイを楽しみにしていたので、そこはがっくりですよ。

 てことで、すっかり出遅れたけど。
2011/09/22

『タカラヅカスペシャル2011 ~明日に架ける夢~』について(追)
※その他の出演者が決定いたしました。

『タカラヅカスペシャル2011 ~明日に架ける夢~』
監修・構成・演出/三木章雄
構成・演出/中村暁、中村一徳

【出演者】
(専科)轟 悠、未沙のえる
(花組)蘭寿とむ、壮 一帆、愛音羽麗、桜 一花、華形ひかる、朝夏まなと
     望海風斗、瀬戸かずや、鳳 真由、蘭乃はな、月野姫花、実咲凜音
(月組)霧矢大夢、青樹 泉、星条海斗、龍 真咲、光月るう、明日海りお
     蒼乃夕妃、彩星りおん、宇月 颯、紫門ゆりや、煌月爽矢、花陽みら
     愛風ゆめ、珠城りょう、愛希れいか
(雪組)未涼亜希、沙央くらま、蓮城まこと、愛加あゆ、彩凪 翔
(星組)涼 紫央、柚希礼音、夢乃聖夏、紅ゆずる、夢咲ねね、白華れみ
     壱城あずさ、美弥るりか、音波みのり、真風涼帆、芹香斗亜、華雅りりか
     早乙女わかば、麻央侑希
コーラス(星組)礼 真琴、紫 りら、妃海 風、真衣ひなの、紫藤りゅう、五條まりな        

※宙組は東京宝塚劇場公演中のため出演いたしません。


 まっつ、『タカスペ』出演!!

 マジっすか。
 ほとんどあきらめていたので、うれしい驚き。

 10月アタマに『仮面の男』が終わって、それきり来年まで3ヶ月も会えないのかと、がっくり来てたもん。……東宝遠征する気力が、作品ゆえにわいてこなくてね……チケットもないしさ……いやそれでも、結局寂しくなって行くんだろうけどさ……。

 でも12月に会えるんだー。ブランクは2ヶ月で済むんだー。んじゃ東宝行かなくて済むかなー。
 って、言いつつ東宝も行ってるんだろうけどさ……。(往生際悪い)

 雪組は5人だけの出演だから、パロディ1場面はナシで歌だけかな。去年の月組みたいに。あうう、キムくんたちも出て欲しいよー。
 『ロミジュリ』パロ見たいなー。作品パロ見たいなー。がっつり1場面見たいなー。

 と、考えて。

 今、本公演で、イベントのパロディ芝居みたいな出し物、やってんじゃん。
 そっかあ、雪組は『タカスペ』でパロディ場面に参加できないから、それでこだまっちは気を利かせて本公演でパロディやらせてくれたんだね! わーい、毎日が『タカスペ』だあ。
 ……なわけないだろう、こだまっちめ……(笑)。

 まっつが『タカスペ』に出てくれてうれしいのは、もちろん彼を見られる機会が多くなることへの喜びがいちばんなんだが、さらにもうひとつ。

 雪組デビュー1周年だということ。

 去年の『タカラヅカスペシャル2010』でまっつは、はじめて雪組生として舞台に立ったんだ。
 ナース姿で。

 プログラムで3番手位置に写真掲載され、芝居アリの第1部では雪組の3番目位置、第2部のショーになるとその他大勢扱いという、今の公演と同じじゃんという扱いをされてましたなー。その点一貫してるのか、劇団の態度は。
 今年もプログラムの3番手位置に載るかどうかはわかんないけど、個人的に雪組デビュー1周年を祝いたい。

 他のみんなもスター盛りだくさん!
 あきらが入ったのがうれしいなー。去年は下級生のまゆくんは出ていたのに、あきらはトバされていたもんなあ。
 娘役も例年に比べてたくさん出るし。

 マヤさんも出演。
 トドとコンビで『おかしな二人』コーナー有りなのかな。
 ……マヤさんと『タカスペ』というと、マルグリットの印象が強くてな……(笑)。

 なんにせよ、楽しみです。
 演出が大幅に変更されていた。

 雪組新人公演『仮面の男』

 演出刷新っす、これまた前代未聞。
 1本モノの本公演を95分にまとめる、以外でここまで演出の変更になった新公を観たことがない。
 どんだけ不評なんだ、本公演『仮面の男』の演出。

 新人公演で大きく変更になっていたのは、「ルイの悪趣味」場面と、「監獄」場面。
 その他でもいろいろ小さな変更はある。
 ルイ13世の顔が窓から見えたり、無銭飲食の黒子が動かす瓶の軌道と、それによって起こるドタバタが違ったり、メガネっ子のドジ店員がいたり。
 小さな変更はお遊びの類で、通常の新公にもあるレベル。
 やはり問題は、大きく変更された場面の「意味」だろう。

 一般的に「不評」とされている部分が、変更されていた。

 一般っつったって、統計があるわけじゃないけどさ。わたしが見聞きする範囲で一般。

 ルイの夜のお相手選びの「人間ボウリング」にて、淑女たちがボウリングピンを表すおかしなかぶり物ナシ、ふつーだった。
 そのため数字がないので、巨大メガホンが読み上げるのは数字ではなく、名前だった。ちなみに勝者はカトリーヌというらしい。

 勝者とルイのラブシーンにて、その周囲で貴族男と淑女がダンスをするんだが、ここの淑女がふつーだった。
 淑女は自分の足で踊っていた。
 本公演ではふくらんだスカートの中でローラーのついた低い台に坐り、がに股でその台を滑らせるように踊っていた。それによって子どものようないびつな体型の貴婦人が出来上がる。
 正視に耐えない姿だった。当時の女性観とか扱いとかを風刺しているつもりかもしれないが、その描き方は倫理に触れるというか、「それはやっちゃいけないことだよ、こだまっち」と言いたくなるよーな生理的な不快感を持つ表現。
 それが変更されていた。

 ルイーズの初登場、電光矢印はナシ。ふつーに登場。

 ルイーズを見初めたルイに対し、「めずらしい」と歌う淑女たちは唇のパペットなし、ふつーだった。
 アニメ声の歌は同じ、だけど毒々しいクチビルの代わりに扇を持って登場。
 クチビルしか出ない窓や扉の中から、ちゃんと淑女たちが顔をのぞかせて噂話をする。扇で口元を隠しひそひそ話風に、扇をひらひら回しいかにもゴシップに夢中な上流階級の人々といった風に。

 もっとも大変更されていたのが、サンマール司令官の大囚人ナンバー。

 生々しいうめき声のコーラスではなく、わかりやすいお笑い風のアクションに変更。
 本公演の、鞭打つ→うめく、ではなく、鞭打つ→おかしな格好で飛び上がる・ポーズを付ける、なので、あまり痛そうじゃないというか、コントっぽくなっていて、苦しがられるより観ていて楽。

 首つりロープとダチョウ倶楽部ネタはカット。
 そこまでの携帯電話×2はあるんだけど。
 「白状しなければ処刑だ! ……これがなんだかわかるか?」と、囚人たちに首つりロープを配る……ところからカット。ロープ無し。
 ゴーストバスターを踊ったあと、調子に乗ったサンマールが「グー?(goodの意味のグー。オレってイケてる?系の確認を周囲にする)グー……グ、グ、グ、グランドフィナーレ!!」と、無理矢理つなげていた。
 正直苦しい。「グー?」から「グランドフィナーレ」って……このつなげ方は無茶。でも、イイ。よくやった(笑)。

 処刑された囚人が天使の羽根を背負って笑顔で踊ることもなく、首からロープをかけた囚人たちが踊ることもなく、ふつーに生きて元気な人たちが歌い踊っていた。
 場面の時間調整に必要なのか、サンマールが銀橋でパフォーマンスすることになっていたけれど(笑)。

 あと、目立つところでは、ミラーボールが、回らなかった。
 一大ページェントの大女優が人間ミラーボールとなってつり上げられるところ。スカートを開くとそこにミラーボールが!! ……までは同じ、本公演では大女優自身が手でミラーボールを回すんだけど、それはナシ。
 ただミラーボール風の衣装を着ている、というだけになっていた。


 これだけ「不評」なところの変更なので、新公演出担当の原田くん個人の変更ではなく、劇団指示が入ったとみるべきだろう。
 基本的には95分モノの新公は「お遊び」「独自の解釈」は入れても「変更」はしない。
 本公演と新公の演出家が同じの場合は、キャストに合わせて役の比重やキャラクタを変えたり全体のカラーを変えたりといじってくることはあるけれど。それでも「変更」ではない。

 新人公演の演出変更は、あくまでもはみ出した箇所の修正でしかない。
 色を塗っていて、枠からはみだしちゃった、てなとこを修正液で訂正しただけのこと。
 根本は、直っていない。
 はみだしたところだけ修正液塗っても、そもそもその絵自体間違ってるから!

 ストーリーがほとんどなく、本筋と無関係のどーでもいい場面がえんえんえんえん続いているのは同じ。水戸黄門が出てくるのも看守長がえんえん歌い踊り携帯電話が出てくるのも同じ。主役ふたりが銀橋でえんえん影絵をしているのも同じ。

 いやだなあ、と思ったのは、「みんなが文句言うから、その嫌だってところを修正しましたよ、これで満足でしょ?」と、てきとーにあしらわれたよーな感じの作りだったこと。

 たしかに嫌だったところ、明らかに不快を感じる人が多いだろう、こだまっちの異次元感覚ゆえの場面は修正された。
 でも、そーゆー問題じゃない。
 なんつーんだ、「料理に虫が入ってた? すみませんね、んじゃ新しい料理に取り替えますよ、これで文句ないでしょ」って虫の入っていない皿に替えてくれても、そもそもコレ、料理ちゃうやん、食べられへんやん!な部分はスルーされた感ゆんゆんというか。

 こだまっちの『仮面の男』は、作品全体の作り、土台の部分が間違っている。
 だからその上の表層の飾り部分だけ修正したって、その場しのぎでしかない。
 土台から変更をしないことには、無意味なんだ。

 とゆーことが、よくわかった。

 だってさあ。
 物語も登場人物もまったく描けてなくて、力が入っているのはわけのわからん「留学帰りのワタシを見て! ほめて!」というこだまっち自己顕示欲場面なわけよ。
 で、作品的に力の入っている部分を「不評だから」と全部修正液で塗りつぶしていったら。

 すげー地味。

 もっとも力のある部分を否定し、おざなりな部分だけにすると、作品自体が沈む。
 こだまっちの悪趣味がいいわけではまったくないが、そこがいちばん力の入った場面、という作りであることは確か。そこを否定し、ちまちまと修正したら、ただの地味なつまらないだけの作品になる。
 ただひたすらふつーにするだけ。メリハリの派手な部分だけ削っていく作業。ただ平坦に。根本の歪みは無視して。
 だってストーリーが「ない」のは変わってないのよ?

 塗りつぶしばかりの本なんて読めたもんじゃない。
 本文の大半をただ黒く塗りつぶしただけの本を、「改訂版出ました、どうぞお買い求めください」と商品として発売するのか、この会社。

 や、今回は新公だから、それでもいいけど。
 ただ、今後演出が変わり、新公と同じになるだけなら、それはそれでアタマを抱えるわ。

 修正が入ったことは、うれしい。
 世の中的に本当に不評であり、間違った演出なのだ……と、劇団も理解したということだろうから。
 てゆーか、それを理解すること自体、前代未聞。劇団はどんだけひでー作品も、観客の声なんざ見ざる聞かざるを決め込んで完全スルーだったもの。
 だからこれは快挙。
 ありえないレベルの出来事。

 しかし、この小手先だけ、口先だけの逃げ口上、臭いものに蓋、で、してやったりと思われていたら、嫌だなあ。

 問題は、解決されていないのに。
 『インフィニティ』の解説ページに、画像がUPされました。

 ちょ……び、びみょー……。

 赤? 何故に赤。まっつに赤。つか濃ピンク? 気合いのオペラレッド、気合いの口紅。
 やっぱ地味すぎるから色だけも派手にした結果?
 それとも稲葉せんせ、「まっつは黒髪だから、黒に映えるように」と赤を用意していたら、まっつ今パツ金だからさらにぼやけた?
 てゆーかジャケット、サイズ合ってなくね? 小さい方の腰まで映ってる画像、服の中でカラダが泳いでる気が……。
 小さいからちょっとでも大きく見せようと?(ヲイ)

 なんだろう、この全体に漂うダサ感は……と、まっつメイトにメールしたら、「地方のホストっぽい」と的確な表現が。
 あー、たしかに……。チェーンネックレスがまた……。

 稲葉せんせ、まっつは今まで稲葉せんせが仕事してきたスターさんたちと違って撮影慣れてないんですよ、すでにあるイメージ踏襲の再演じゃないオリジナルポスターなんて、巴里祭しか知らない人なんですから! そして巴里祭もとってもアレなことになっていた人なんですから!(ヲイ)

 しかし、内容のわからない画像だわ。
 ジャケットのとんでもない色はタカラヅカだから度外視するとしても、開襟黒シャツにチェーンネックレス、黒のポケットチーフの男って、ちんぴらかホスト以外にナイよなあ。

>人間が持つ「声」。そしてその声が折り重なり生まれる「ハーモニー」。それは人に愛や
>癒し、明日への活力を伝えることが出来る。“インフィニティ”とは無限大と言った意味
>であり、「声」が生み出す無限大の力を、世界中の名曲に乗せてお届けするショー・エン
>ターテイメント。

 とゆー解説で何故こうもちんぴら……(笑)。
 ふつーに黒燕尾でよかったんですよ、稲葉せんせ……。

 しかし、あまりに花組っぽいのでウケた。
 まっつってば花男だよなああ。

 この画像(まったく同じでないにしろ)に、あと何人か雪っこたちが加わるんでしょ? みんなそれぞれポーズ付けて立ってるだけのコラージュ? どうあがいてもお洒落にはならない予感。
 み、みんながんばれー。つか、稲葉せんせがんばって。

 公式サイトの「公演案内」、一覧の画像を見ると、雪組だけ「ただ突っ立って撮影しました」ばかりでちょっとツボる。
 『仮面の男』も『SAMOURAI』も『インフィニティ』も、ただ立ってますよ。他組画像はポーズ付けたりいろいろなのになー。こーゆーとこ、雪組っぽいなー(笑)。


 今日は新公なんだが、この天気でサバキは出ているだろーか。←相変わらずチケット持ってない人。
 みっきーの美形っぷりに、拍車が掛かっている気がする……。

 出演者の少ない『おかしな二人』、二枚目キャラはスピード@りまくんだけだと思うんだが……。
 オスカー@トド様はキャラは三枚目だが、なにしろ姿が美形過ぎて。ナニをやっても美形なのでもお別ジャンルとしても。

 会計士で黒いアームカバー姿のロイ@みっきーは、キャラクタ的には別に二枚目ってわけじゃないと思う。
 だからこそかっこつけることを、オスカーに突っ込まれるわけだし。

 恐妻家のヴィニー@れんたはわかりやすく三枚目、警官のマレー@みきちぐはかっこいいけど冴えないおっさんというカテゴリをきちんと守っている。

 しかしみっきーは、ひとりでキラキラしている、気がする(笑)。
 わたしの欲目?
 アーサー王@『ランスロット』を経て、さらに美貌に磨きが掛かったというか。見せ方がうまくなってきたというか。
 今回の出演者は小柄な人ばっかなので、みっきーの身長も違和感なかったし。

 いいなあ、うまいなあ、みっきー。きれいだなあ、みっきー。
 役には合っていない気がしたけれど、トドロキ氏のオスカーには合っていたからいいと思う。つまり、役と関係なくキラキラした美形、という点で(笑)。
 タカラヅカなんだもん、アリでしょそんな人。


 そしてやっぱり、みきちぐのうまさとかっこよさが際立っていた。
 二枚目のちーくん、いいよなまったく。
 そりゃしょっちゅうおっさん役はやっているけど、若者世代が主役でその親世代としてのおっさんばかりだもん。
 そうではなく、おっさん主人公の物語でおっさん役なのは、ふつーに「ときめき守備範囲」であり、ちーくんの芝居もちゃんと「恋愛現役です」的な色気が加わっていて、うれしい。
 あああかっこいー。このビジュアルとこの温度感、惚れるわー。


 れんたはほんとに芝居が好きなんだろうなと。
 三枚目役が多いけど、どれもみんな楽しそう。「きれいな自分」に執着なさげなとこがイイ。れんたきれいなのに。惜しげもなく崩した表情にきゅんきゅんする(笑)。

 りまくんにはわたし、もどかしい思いがずっとあって、今回もそれは変わってなかった、ごめんよ。
 研ルイスに抱いていたもどかしさと共通。
 温度負けしているようなところかなあ。やるべきことはわかっていて、本人もやろうとしているし、舞台人としての技術がないわけでもないのに、どうにも足りていないというか、どこか吹っ切れていないというか。
 わたしの偏った思い込みでしかないわけだが。

 ぽっぽー姉妹@ゆあちゃん、あんるは、いい仕事してた!
 ナニこれ可愛い! バカだけど可愛い!(笑)
 わたしはもともと「ぽっぽー」とかゆーくだらないギャグは付いていけない、蛇足だと思う人なので、最初の1回だけなら引いたけど、何度も繰り返されるうちに慣れて、さらにはないと物足りなくなった(笑)。全体的にギャグ満載だから、コレももういいか的な。
 姉妹のキャラの差はわかんなかったけど、わからなくてヨシなのかな。なにしろ「ぽっぽー」だし。


 トドとマヤさんという、年代がまーーったくチガウ人たちなのに、同等に芝居していてすごい。
 ちゃんと男たちは仲間に見えたし、かわいこちゃん姉妹は恋愛対象に見えた。

 この濃密な空間で、濃密な芝居をして。
 若者たちにとって、どんだけ大きな経験となったか、彼らの今後が楽しみで仕方ない。
 『おかしな二人』は、トド&マヤさんコンビで良かった。

 いや、マヤさんだからこそ良かった。
 と、わたしは個人的に思う。
 わたしの言う個人的だ。

 つまり。

 マヤさんだと、ホモになりようがない。

 この脚本、この演出。
 ホモ話としか思えない。
 原題はCoupleだし?

 男が書く男の友情って、ホモだよなあと思う。
 少年マンガやヤクザものが特に顕著だけど。
 そーやってその昔、男が「女無用」で書いた「男の世界」に萌えるところから腐女子というものが生まれ、今では市民権を得すぎていて、最初からそっちを狙った男同士モノが書かれ、昔気質の腐女子を萎えさせているこの現代。

 この『おかしな二人』をホモにせずに演じられるのは、マヤさんだけだと思う!

 陣内氏と段田氏でも、ふつーにホモだと思うわ。(わたしの中では、段田氏は可憐系カテゴリだし・笑)
 ガイジンさんがやればもっとふつーにファンタジーかかるから、ホモに見えると思うわ。

 腐女子のいうところのホモは、「ファンタジー」なので、現実の同性愛とは別です。
 本気で『おかしな二人』をホモの痴話喧嘩話だと思っているわけじゃないので、誤解なきよう。

 この『おかしな二人』を、他の男役で観たら、イマドキの「少年ジャンプ」みたいというか、「腐女子を釣ることが目的の男の友情モノ」みたいなモニョり感を持つだろうなと思った。
 若くてきれいな、背が高くてスマートで脚の長い、イマドキの男の子たちがふたりで「プロポーズ」だの「オマエと一緒に住みたいんだ」とかやってるの。片方はフリルのエプロンなんか着ちゃって、女性的な仕草をしたりするの。
 うわー……観たくない……。

 本当に男役を極めた、BLにはならない、さぶになる類いの人なら、やってヨシ。……それでもさぶだから、つまりはホモだってことなんだけど。

 少女マンガの美青年、にこれをやられたら嫌だなあ。それってつまり、BLだもんなあ。
 タカラヅカの男役は少女マンガの美青年だから、彼らがやるとBLまんまになってしまう。

 わたしは昔気質のヲタクであり腐女子であるので、据え膳は好きじゃない。「ほーら、腐女子はこんなのが好きなんだろー?」と上から目線で差し出された「男同士の絡み」には萎えてしまう。
 作者にそんな意識はカケラもなく、「男っていいよな畜生!」と鼻息荒く書いている、恥ずかしいモノにこそ萌える。


 そんなわたしの、とっても個人的な感想。
 ミサノエールで良かった。

 マヤさんはつくづく聖域だなあ。
 年齢じゃないんだ、体型でもないんだ。こちとら年季の入った腐女子だ、じじい同士だって萌るときゃー萌える。(ドラマ『ひらり』のじじいふたり、『年下の男』のW高橋にどれほど萌えたか……!)
 専科さんで腐った萌えの入らない、数少ないお人だ。
 ええ、専科のおじさまたちだって萌え対象ですから! 萬ケイ様、チャル様、汝鳥サマ、ソルーナさん、ヒロさん、立さんと萌えカテゴリ。萌えないのはミサノエールと星原先輩ぐらいのもんです。
 星原先輩の色気は、わたしが萌えに必要とするタイプの色気ではなかったため枠外だったわけだが、マヤさんはまた違った意味で聖域な人だなあ。マヤさんも十分色気のある男役さんなんだけど。

 ヘタな腐女子センサーを発動せずに見られる、ありがたい人。
 『おかしな二人』はホモ萌えしたいわけじゃないから、素直に友情として見られて助かった。
 他の誰でもダメだった、マヤさんだから良かった。
 生身の男ですらダメなのに、ミサノエールすげえよ。わたしの腐女子センサーを動かさないであの役ができるんだから!!


 マヤさんだからこそ、とは思うが、ほんとのところ、フィリックス役はチガウんじゃないと思う。
 フィリックスって、あーゆーキャラじゃないだろうと。
 あれはミサノエールであって、フィリックスじゃない。
 ミサノエールはなにをやってもミサノエール、ほんとのところ芝居はできていない気もする。

 でも、それでいい。
 わたしたちはニール・サイモン作品を観に行ったのでも、フィリックスを観に行ったのでもなく、宝塚歌劇を、タカラジェンヌのミサノエールを観に行ったのだから。
 わたしは原作は原作でしかないと思う派。それを下敷きに、オリジナルを作り上げてヨシと思う。
 だから原作にあるフィリックスと、ミサノエールのフィリックスが別人でも、ぶっちゃけフィリックスを言い訳にしただけのただのミサノエールであってもヨシ。
 ミサノエールが好きだからだ。


 ミサノエールならば、ナニをやってもホモにならない。
 だからこそ言う。

 トドとマヤさんの、デュエットダンスが見たかった。

 双方黒燕尾か黒タキで。
 端正に決めて、でも全体的にコミカルに。
 カッコイイ、と、面白い、を絶妙の配分で。

 タカラヅカだからこそできること。
 トドロキとマヤさんだから、できること。

 それを見たかったなああ。
 フィナーレがはじまったときは期待したんだ。主役ふたりのデュエダンが見られるのか?!と。
 トドひとりの歌を削って、マヤさんにも絡んでもらおーよー。


 いや、ほんと。
 このふたりだからこその、『おかしな二人』だったなと。
 わたしは基本無知であるし、無教養である。自慢できたことじゃないが、事実なので仕方ない。

 『おかしな二人』が原作付きであることはわかっているが、ストレートプレイだとは、わかっていなかった。

 や、原作がそうなのは常識で理解している。
 そうじゃなく、ヅカの舞台に脚色して上げるのだから、その辺はヅカ仕様になっているのかと思っていた。
 出演者がみんな歌ウマだし。
 台詞をはっきり歌で聴かせるミュージカルをやるのかと思った。

 原作は原作でしかなく、演出家が好きにいじっていいと、わたしは思っている。
 版権ガチガチで台詞の1語、動作のひとつも変えてはならないという契約での上演なら仕方ないけど。
 そうではない、ふつーの「原作付き」なら、好きにしてよし。原作まんまじゃないからとクレームを言う人は原作だけ見てろ、メディアミックスされた別ジャンルに足を運ぶなと思う口。
 たとえば、隣の劇場で今上演されている『仮面の男』も、デュマの原作とまったく違うこと自体は、どーでもいーと思っている。原作とも映画とも別、原作はただの原作、アイディア部分でしかなく、作品全体はそれを作った作家のオリジナルだ。『仮面の男』が問題なのは原作とかけ離れていることではなく、そのオリジナル部分がつまらなさすぎる、芝居として間違いまくっていることであり、ぶっちゃけ原作無しのオリジナル作品であっても失敗部分は同じだ。

 『おかしな二人』がどこまで版権ガチガチなのか知らないが、もっとタカラヅカ的にやるのかと思っていたんだ。

 ストレートプレイである、と気がついたのは1幕が終わってから。
 1幕の間は、ぜんぜん気付いてなかった(笑)。
 繰り出されるものを夢中で受け止めているだけで、歌やダンスがないことに気が回っていなかった。
 休憩時間になってから、あれ、そーいや誰も歌ってないし踊ってないぞ、と思った。
 ひょっとしてコレ、ストレートプレイなの? えええ、せっかく歌える人ばっかり集めたのに、マジかよ、と。

 まあ大体「歌える人」っていうのは芝居もできる人が多いので、歌手を集めたんじゃなくて、芝居巧者を集めたってことなんだろうが。
 もったいないわー。
 あ、わたしゆあちゃんだけ歌の実力わかってません。出演者が発表になったとき、彼女はビジュアル枠だとすんなり思い込んだ……そして結局歌がなかったので、彼女の歌唱力はよくわかっていない。

 や、歌がなくても無問題なんですけどね。

 ちゃんと芝居だけで楽しかった。
 ミュージカルじゃないからと文句を言う気はまったくない。
 歌もダンスもない、芝居だけだからこその作品だということもわかる。
 ないことに気が付かないくらい、芝居だけで面白い。
 てゆーかもー、誰も彼も可愛すぎる。愛しすぎる。楽しい楽しい楽しい。

 とても満足して、拍手して、3幕目の終演を迎えた。

 ふつーならここで再度幕が上がり、出演者たちが一礼して終了だ。
 良い芝居だったので、それで終わってくれていい。もちろんそれもありだと思う。
 だけど。

 ミラーボールが回り出したとき、血が沸き立った。

 やったっ!! フィナーレありだ!!
 興奮した。
 めーっちゃ興奮した(笑)。

 ふつうなら、ここで幕。ここでおしまい。
 だけど、そこで終わりじゃないのが「タカラヅカ」。
 そして、ここは「タカラヅカ」。

 カジュアルな格好しかしていなかったぽっぽー姉妹が、ゴージャスなドレスに着替えて、ミラーボールの光が舞い踊る中、歌いながら客席登場。

 三枚目に徹していたトド様が、ヅカ的びらびらの付いたキラキラ衣装で踊る。
 歌う。

 笑わせてくれていた星男たちが、キザりながら踊る。ザ・タカラヅカを見せる。

 うわああ、タカラヅカだ~~。やっぱここはタカラヅカだー。
 やっぱタカラヅカはいいなあ。

 そして、ある意味究極のタカラヅカなのが、最後に登場するマヤさんだ。
 お玉をマイクにして「マイウェイ」を歌う彼は、……この曲、この場面を彼のために作る、それはもお、「タカラヅカ」でしかありえないことだ。
 ヅカファンならば誰もが理解する、別れの時が近付いているのだと。それゆえの演出であると。
 出演者も口にしない、観客も声には出さない、だけどみんながわかってそこにいる。
 タカラヅカって、そういうところだ。

 「愛する舞台」と歌うマヤさんに、劇場が揺れるくらいの大きな拍手が送られる。

 DVDにもならないんだっけか、そんな版権のきびしいらしい、よそからの締め付けのあるこの舞台もまた、まぎれもなく「タカラヅカ」だ。


 ところでこの公演、とても時間が短かった。
 こんなところにも、歌とダンスの有無を思う。

 同じテキスト量だとして、歌とダンスがあれば通常のバウホール公演時間になったんだと思う。
 3幕モノでもなく、ふつーに2幕になっただろうし。
 大体3幕モノったって、実際は4幕+フィナーレだったし。2幕の途中に幕が下り、えんえん音楽だけ聴かされる時間があったので、あそこで一旦途切れている。休憩を挟んでいないってだけで。
 起承転結の4コママンガみたいな作りなんだもんなー。
 歌とダンスを挿入すれば、いちいち幕を下ろして休憩、3幕モノにしなくても、カーテン前の歌やダンスでしのいで、次の場面に行けたもんよ。2幕で済んだわ。

 原作の縛りがどの程度あるのか知らないけど、今度はいっそミュージカルバージョンでやっちゃって欲しい(笑)。
 ふたりの掛け合いが歌になるの。途中でダンスもしちゃうの。
 それはそれで、楽しいと思うな。

 ストレートプレイである今回の『おかしな二人』を否定する意味ではまったくなく、「タカラヅカ」の可能性の話として。
 カレンダーの掲載月が発表された。
2011/09/16

2012年版宝塚カレンダーの発売について(追)

※各詳細を追加いたしました。

1.宝塚スターカレンダー
表紙  (星組)夢咲ねね、(月組)明日海りお
1月   (月組)霧矢大夢
2月   (月組)蒼乃夕妃、(宙組)野々すみ花
3月   (花組)蘭寿とむ
4月   (雪組)早霧せいな
5月   (花組)壮 一帆
6月   (宙組)大空祐飛
7月   (花組)蘭乃はな、(雪組)舞羽美海
8月   (月組)龍 真咲
9月   (宙組)凰稀かなめ
10月  (雪組)音月 桂
11月  (星組)柚希礼音
12月  (専科)轟 悠

2.宝塚卓上カレンダー
表紙  (星組)真風涼帆、(雪組)彩風咲奈
       A面         B面
1月   (花組)壮 一帆/(星組)涼 紫央
2月   (月組)明日海りお/(花組)華形ひかる
3月   (雪組)音月 桂/(花組)愛音羽麗
4月   (月組)霧矢大夢/(月組)青樹 泉
5月   (宙組)大空祐飛/(雪組)緒月遠麻
6月   (星組)柚希礼音/(宙組)悠未ひろ
7月   (専科)轟 悠/(星組)夢乃聖夏
8月   (花組)蘭寿とむ/(花組)朝夏まなと
9月   (宙組)北翔海莉/(宙組)凪七瑠海
10月  (月組)龍 真咲/(花組)望海風斗
11月  (宙組)凰稀かなめ/(星組)紅ゆずる
12月  (雪組)早霧せいな/(雪組)未涼亜希 ←

3.宝塚ステージカレンダー
      A面            B面
表紙  (星組)紅ゆずる/(雪組)舞羽美海
1月  (星組)柚希礼音/(花組)愛音羽麗
2月  (月組)霧矢大夢/(花組)壮 一帆
3月  (花組)朝夏まなと/(専科)轟 悠
4月  (宙組)大空祐飛/(月組)蒼乃夕妃
5月  (星組)涼 紫央/(宙組)凰稀かなめ
6月  (宙組)北翔海莉/(星組)夢咲ねね
7月  (雪組)早霧せいな/(月組)龍 真咲
8月  (花組)蘭乃はな/(月組)青樹 泉
9月  (花組)華形ひかる/(宙組)野々すみ花
10月  (宙組)悠未ひろ/(花組)蘭寿とむ
11月  (月組)明日海りお/(宙組)凪七瑠海
12月  (雪組)音月 桂/(星組)夢乃聖夏

 カレンダーでわかるのは「掲載された月までは在団していること」。
 掲載月は基本的に出演公演にリンク。
 退団予定がすでにわかっている者は、退団後の月には載せない。

 とゆーことで、我らがまつださんは来年いっぱいは在団予定です。よっしゃ!!

 もちろん過去にカレンダー掲載月を待たずに卒業した人もいる。が、それはあくまでもイレギュラー、何年かにひとり出るかどうか。
 カレンダー掲載者・1年30人強 × 数年、の間にひとり、って、どんだけ少ない確率よ?
 掲載月発表後によほどのことが起こり、急遽予定変更して退団、でない限りはカレンダー掲載時期までは在団している。

 100年近く続く劇団で、「過去にはこんな例があった、だから通例なんか信じられない」なんてのはナンセンス。
 そりゃ100年のうちにはいろんなケースがあるわ。でもそのほんのわずかのイレギュラーが、それ以外の大多数である通例の信憑性を損なうことにはならない。事故に遭うかもしれないから車には乗らない、落ちるかもしれないから飛行機には乗らない、と主張するよーなもん。

 とゆーことであくまでも前向きに。
 あえて積極的に前向きに!


 てゆーかさー、まっつが後半公演に合わせた日程でカレンダーに載ってるのって、はじめてじゃないかい?
 毎年毎年前半日程に載っているから、不安を持ったもんだったよ……。

 んで。
 カレンダー用の写真撮影がいつなのか知りませんが、今気になっていることは。

 髪の色は、何色だろう。

 黒ですか、金ですか。
 なにしろもう何年も黒以外見たことナイので、舞台の上で金髪見てても、ナマの未涼さん見たことないんで(入り出待ちしてません)、どーもぴんと来てません。
 『スカウト』千秋楽の出が最後か……金髪のまっつ見たのって……。

 でもって卓上カレンダーのまっつって、そりゃあもお判で押したように同じ感じでね……ここ何年「同じ写真の焼き増し」的な冒険心のなさでね……髪色が変われば、少しは印象の違うカレンダーになってるのかしら。

 黒髪まっつが好きですけどね(笑)。

 にしても、A面ちぎくんで、B面まっつかあ。
 表がちぎ、裏がまっつ。
 上がちぎ、下がまっつ。ちぎまつかあ。ふふ…ふ。(自重!!)
 トド様は、タカラヅカでの初恋の人だ。
 わたしがまだ若かった頃、舞台の上のトド様にオチた。
 それが最初、それがきっかけ。
 トド様なくしては、今のわたしはありえない。

 初恋は初恋であるというか、はじめてのご贔屓はゆっくりと良い思い出になってゆき、次のご贔屓へとときめきは移っていった。
 トドはご贔屓という位置にはいなくなったけれど、愛着は半端ナイ大切な人。
 見るたびに「やっぱり好きだなあ」と思う人。

 そーやって俯瞰していたはずなのに。
 去年『オネーギン』でまさかの再燃。しばらく忘れていたときめきを感じ、舞い上がった。
 わたしがかつて愛したあの人は、こんなに素敵な人だったんだ……! と、同窓会で焼けぼっくいに火がつく的な状態ではあった。
 だから次の彼の出演作が楽しみでならなかった。

 もともとそーやって、わたしの中のトド様株は上がっていたんだ。
 マヤさんとW主演とか楽しみすぎる、うれしすぎるとは思っていた。

 そして、ポスターが発表されたとき。

 惚れ直した。

 専科公演『おかしな二人』
 今まで見たことのない表情をする轟悠@劇団理事研27男役に、刮目した。

 今ここにきて、ここまできて、この顔をするのか。
 彫刻のような美しい顔を武器に下級生時代からやってきた人が。
 理事なんてもんになってからはなおさら、いわゆる「二枚目」から逸脱しない役ばかりやっていたのに。

 男役を極めた今だからこそ。

 つーことでもう、チケ取りは必死でしたよ。「なにがなんでも観たい!」と。
 トド様トド様!!

 んで待ちに待った初日。いつもはスルーするプログラム売り場に直行、プログラムだって絶対買うんだからー!
 んでこのプログラムがまた。

 かわいいっ。

 かわいーよーかわいーよーうわーん。

 トド様がかわいすぎるっ。
 そしてミサノエールもまた、めっちゃぷりちー(笑)。

 星組っこたちも全員スチール、よくある「直前公演の写真使い回し」じゃない。
 役になりきっての写真がかわいいし、きれい。

 演出はイシダせんせ。
 わたしは彼が描くところのトドロキが好きじゃない。
 最初はよかった。初演『再会』の頃は。それでも、新鮮だったから。
 でも、イシダせんせの「男性的無神経さ」ばかりを押しつけられる姿を何年も何作も見せられ続け、心から辟易した。たしかに、姿の良い中性的な男役が主流になってきた今のタカラヅカで、イシダの「男らしい男」を演じられる男役は減り、トドの肩にばかりのしかかってしまったのだろう。
 おかげでトドは「いつも同じ」人になってしまった。イシダ、植爺、谷と、偏った「英雄」像、「男らしさ」を押しつけられ、酒井の「耽美嗜好」「女性目線の型」を押しつけられた。
 いや、押しつけではないか。トド自身もそれでいいと思い、何年も過ごしてきたのかもしれないし。
 その「変わらない」姿は「究極の男役」なのかもしれない。極めた、ということは、そこで終わり、それ以上は変わらないということだ。
 変わらない、ことももちろん必要だ。そーゆーものも好きだ。
 でもそれだと、「たまに、思い出したときに見ればいい」ものになる。
 思い出のアルバムや、DVDと同じ。大切だけど、「今」必要じゃない。
 理事という肩書きのついてしまったトドは、それでいいんだろうか。一線を退いたのだから、「変わらない」ことだけを守ってこれから先も10年20年と同じことをしていろと?
 や、そういう人も、存在も、必要だけど。現にわたしも、今のご贔屓と生活との中、ふとなつかしくなって昔のDVD見たりするし、それと同じようにたまにあるトド様主演公演のチケット取って、彼が雪トップだった頃と変わらないイメージの「スター」である様を見、ああなつかしいと自分の青春時代を思い、しみじみする……そういう需要も、たしかにあるのだけど。

 トド様は、それでイイの?

 本人がどう思っているかは、知るよしもないが。

 今になって、わたしは「男役轟悠」の底力を知る。
 『Kean』でその兆しはあったけれど、そのあとまた元に戻っていたし。
 彼が自分の引き出しの中で、「いつものトドロキ」で出来る役ではない作品が来たときに、彼は変化する。だから「いつもの」作品をあてられると、彼は元に戻る。
 ゆえに、『オネーギン』では、新しいトドロキがいた。
 はじめて組む演出家だったためだろうか。

 しかし今回はイシダせんせ。「いつもの」筆頭だ。
 そして彼は、他の「いつもの」演出家と違い、トドに「下品」な意味での男らしさを求める。
 コメディ作品である『おかしな二人』も、そちらへ突出したら嫌だなと、それだけが不安だった。
 はじめて『再会』を見たときの、英雄や美形しかやってこなかったトドロキの、等身大の若者姿、笑ってすねて落ち込む滑稽な顔をいろいろ見せてくれた、そのことに感激し、驚喜した……それを再び得られることを、期待した。

 その期待に、応えてくれた。

 まるまる1作、見慣れないトドロキがいる。

 歌もダンスもないストレートプレイ、正味芝居だけ、間だけでやりとりが成立する。
 華美な衣装も幻想もなく、現実にあるものだけで展開する。
 舞台はオスカー@トドのマンションの居間、これだけ。最初から最後まで、これだけ。
 小さな世界。小さな宇宙。
 そこだけで、物語がはじまり、終わる。

 男役って、すごいな。

 しみじみ思う。
 なんでこんなことができるんだろう。

 誤魔化しのきかないガチンコ勝負だ、小手先でどうこうできない。
 「男役」としての型が、動きが完璧に入っている人しか、できない。
 かといってそれは、現実の男性ではないんだ。
 ナマの男が見たいなら、外で見ればいい。ミュージカルでもキラキラしい夢世界でもないこんな芝居、外でいくらでもふつーに男性俳優がやっている。
 でも、そうじゃない。

 これは、「タカラヅカ」だ。

 トド様は、泣けるほど「タカラヅカ」で、「男役」だった。
 彼が30年近くかけて作り上げてきたモノがまずそこにあり、基盤としてずっしりと存在し、その上で「タカラヅカらしくない芝居」をしている。

 すごい。
 こんなこともできるんだ。
 タカラヅカって、男役って、こんなところまで到達できるんだ。

 わたしはアメリカ人の感覚がとことん理解できないので、「アメリカの喜劇」を心底楽しめるわけではないのだけど、それでもコレは大丈夫だった! 大劇場でスベりまくったこだまっちギャグを見続けているせいかもしんないけど、ちゃんと面白かった(笑)。

 もちろん、マヤさんがうますぎるせいもある。
 星っこたちも良かった、この子たち大好き!

 個人的に、みっきーにポップコーン投げつけるトド様に身もだえした……可愛すぎる!!

 3幕途中から、なんか涙腺壊れて泣きっぱなしだった(笑)。
 周り誰も泣いてないし、泣くような話じゃないし。(最後までコメディですってば)

 でも、なんつーか、愛しすぎて泣けた。
 両手の上に、大切に載せていたい公演だ。
 ギャグシーンやつまらないパフォーマンスで時間を費やし、肝心のストーリーが描けていない……てゆーか描くつもりもないのか、『仮面の男』

 ダルタニアンや三銃士の年齢設定や舞台上の時間の流れなど、わからないことはいろいろあるが、わたし的にいちばん気になるのが「ラウルの手紙」時点での、アトス@まっつの立ち位置。

 わたしたち観客は、

1.女好きのルイ@キムが、美女ルイーズ@みみを見初めた。
2.ルイーズを手に入れるために、その恋人ラウル@翔を政治犯として投獄した。
3.ラウルを人質に取り、ルイがルイーズを脅迫して侍女にした。
4.ラウルが牢獄で「仮面の男」の秘密を知り、それゆえに処刑された。

 ということを知っている。

 しかし銃士隊を辞め、市井で無銭飲食なんかして食いつないでいるアトス兄さんが、これらのことをどこまで知り得ただろう。
 一般的に告知されるのは「ラウルは政治犯である。そのために投獄された」ということのみ。
 もちろんアトスはラウルが国家転覆をたくらんでいたなんて、思ってない。
 国王が密偵を使って言論統制・弾圧していることは周知だから、その流れで「なにかの間違い」で疑われたと思うだろう。

 まず最初の「1」を知らなければ、これがルイの陰謀だなんて思わない。
 ラウル逮捕とルイを結びつけはしないだろう。

 当事者であるルイーズならば、直接ルイから口説かれたときに察したかもしれないが、彼女はそのことをアトスに告げただろうか。
 「国王に直訴したら、再調査の見返りに侍女になるよう命令された」ぐらいは報告するかな。
 ルイは自分がはかりごとの張本人だとは、明言していない。なのに「私を手に入れたくて、ラウルを投獄したのよ!」ってルイーズが自分から言い出したら、なかなかイタい女に見える……いやソレが事実なんだけど、自分で言うのはなかなか(笑)。
 賢く慎ましいルイーズは、そう察したとしても他人には言わないだろうなあ。ひとり、自分のせいなのかと思い詰めていそう。

 真実は上記の「1~3」だが、アトスから見えていることは、

A.ラウルが政治犯として投獄された。
B.再調査をルイに直訴したルイーズは、彼の侍女として仕えることになった。

 ……これだけ。

 ルイが女好きなのは知っているから、直訴に現れたルイーズの美貌を見て下心を出したと思うのが関の山。
 「ルイは君を狙っているかもしれないから、気を付けるんだ」くらいのことは、ルイーズに言っただろう。でも、ルイーズが侍女になることは止めない。まさかそれがルイの狙いだとは知らないから、ルイーズの美貌によろめいて、普段なら気にも留めない木っ端罪人の処遇を考え直してくれるならこれ幸い、てなもんか。

 ここまでは流れ的に想像がつく。
 気になるのは真実「4」の扱いだ。

 アトスが飲んだくれている時点で、ラウルの死は公表されていたのか?

 アトスがすさんでいる理由が説明されていないため、わからないんだ。

 全体的にこの作品は「時間の流れ」が理解できない。
 最初に「早わかり世界史」とかやって、さも時代や時の流れを丁寧に考えている振りをして、実はいちばんぞんざい……というか、ぶっちゃけ、ナニも考えてないんだろう。
 論理的な思考の出来ない人が、思いつきだけでエピソードを並べているため、話はなにがなんだかわからなくなっている。
 それこそ、「早わかり世界史」がタイトルに反してぐちゃぐちゃで歴史がまったくわからない、ことに象徴されているように。

 なにしろ後半の「ルイとフィリップ入れ替え大作戦」からラストシーンまで、一晩の出来事みたいだし?
 「時間」をまともに描くことをしないのは、「心」を軽んじているためだ。
 時間経過と出来事が正しく作用し、人の心は変化する。こだまっちはそれを理解していない。

 てことで、わかりやすい「泣かせどころ」である「ラウルの手紙」の時間的背景がわからない。

 アトスが酒瓶片手に坐り込んでいるのは、

a.投獄されたラウルがどうしているかは、外の人間にはわからない。心配。
b.投獄されたラウルが、処刑されると発表された。動揺。
c.投獄されたラウルが処刑されてしまった。絶望。

 の、どれだろうか?
 そしてここで、手紙が届く。

 「a」ならばアトスは手紙ではじめて「政治犯でっちあげの真犯人」「仮面の男の秘密」「ラウルの死」を知る。手紙を読むまでは、ラウルはふつーの罪人として収監されているだけ、いずれ助け出すことも可能と思っていた。
 背景のラウルの姿は「過去」。もう彼はこの世にはいない。

 「b」ならばアトスが手紙で知るのは「ラウル処刑の真の理由」「仮面の男の秘密」。政治犯として処刑されると思っていたから、なんとか助命できないかと走り回っていた、しかしこんな理由なら無理だ、ルイを倒さない限りラウルは救えない。
 背景のラウルは「現在進行形」。今まさに処刑される姿。

 「c」ならばアトスが受け取った手紙は「死者からのメッセージ」。政治犯として処刑されたと聞いていたが、そうではなかった。「ラウル処刑の真の理由」「仮面の男の秘密」。
 背景のラウルの姿は「過去」。もう彼はこの世にはいない。

 これだけ受け取り方の違うパターンがあるんだから、わかるように描くのが当然だろう、こだまっち。

 わたしは「a」だと思っているけれど、なにしろ答えがないため違うかもしれない。

 わたしが「a」……アトスがナニも知らない、と思うのは以下の理由からだ。

・ルイの目的は、ラウルをルイーズから遠ざけること。
・ラウルを生かして人質にし、ルイーズに言うことを聞かせる。
・今のところは明言していないが、ルイーズがルイを拒めば、わかりやすくラウルの命を楯に関係を迫るだろう。

 → ラウルを殺すことは考えていない。

・ラウル処刑は突発的なことである。
・人質として有効利用するはずが、アクシデント発生により仕方なく殺すことになった。

 → ラウル処刑は、突発的な、大急ぎのやっつけ仕事である。

・フィリップのことは秘密である。万が一にも漏れてはならない。
・言及される恐れのあることは、最初からナニも発表しない。

 → ラウル処刑は告知しない。あくまでも政治犯として収監、面会不可で一定期間沈黙、そののちに「病死した」と発表。

 若く健康なラウルが病死してもおかしくないくらいの期間はおいてから、その死だけを結果として発表するだろう。
 アトスがいち早く真実を知ったのは手紙があったから。本当なら半年くらいは「投獄されたラウルは無事だろうか」と、アトスもルイーズもラウルがもうこの世にいないことも知らずに心配して暮らしただろう。

 それに、アトスならば、

 「b」のように処刑宣告があったなら、ただ飲んだくれてはいないと思う。ただ投獄されているのと、何日に殺されますよ、では必死さが違う、うなだれるヒマがあったらもっとナニかしているだろう。

 「c」のように「すでに処刑されました」だったら、やはり坐り込んでないと思う。速攻処刑されなければならないほどの罪を犯したというなら、裏になにかあるはずと疑っただろう。

 だから答えは「a」。
 ラウルは単に政治犯として投獄されているだけ、いつ出られるかわからないし、中で酷い目に遭っているんじゃないかと心配している状態。
 おにーちゃんは自分の出来るすべてのことをやってみて、今壁にぶち当たって飲んだくれているところ。

 そこへラウルの手紙が届き、まず、「血で書かれた」ことにただならぬモノを感じ、読み進めると「国家を揺るがす秘密」が書いてあり、それを知ってしまったゆえに殺される……いや、この手紙からして、「弟がすでにこの世にない」ことを知る。

 手紙を読むまでは、ナニも知らなかったんだよね?
 ドラマとかでよくある「はっ、この手紙は3日前に殺された被害者からのものだ!」とかじゃないよね。
 ナニも知らなかったのに、手紙を読むことですべてを知り、読み終わるなり大作戦発動!だったのよね。あれだけのことができちゃうんだから、事件の断片なり知っていたら、手紙が着く前にもなにかしらしてるもんね。


 いや、いちいちこんなことを読み解くまでもなく、「ナニも知らないアトスは、ラウルからの手紙を読んで、はじめて、すべてを知った」と思って見ていたんだけど。
 なにしろこだまっちなので、よくわからない(笑)。
 んで、考えたのよ。
 なんでわたし、平気なんだろう、って。
 こだまっち作『仮面の男』
 「二度と繰り返してはならない過ちだ」と言い切れるくらいヒドイ作品なのに。
 リピート観劇平気だし、面白いと思うし、楽しいと思っているし。

 たびたび例に出しているけれど、植爺の「呪いのドングリ」……『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』なんか、観ることも出来なかったのね。
 初見の1回はキャストへの愛で観られるけど、2回目以降はごめん、どんだけ出演者を好きでも苦痛すぎる、と思った。

 わたしの脳みその問題だろう。

 わたしは植爺の「間違った言葉」が耐えられないらしい。
 文法がどうこうではなく、人間の生理とか常識とか論理とかが間違いまくったモノ。
 いくらアタマを空っぽにして、台詞じゃない、人間の言葉じゃない、日本語じゃない、あれはただの「音」、ジェンヌさんが出している美しい「音」なのよ、と思おうとしても、ダメだった。
 わたしのアタマは勝手に言葉を言葉として認識し、「この言葉にこの言葉を返すのはおかしい」とか「こんなことを言うのは人としておかしい」とか、いちいちいちいち気になって、引っかかって、心が悲鳴を上げ続けた。
 どう考えても人としておかしい、狂ったことを言っているのに、「これこそが正義、すばらしい、愛愛愛」とやられると、耐えられない。
 噛み合わない会話もダメだ。ひとりずつが意味のわからないことを熱弁し、キャッチボールがまったく成り立っていないのに進んでいく電波会話が、耐えられない。
 植爺作品はこれらの要素が多く含まれているんだが、なかでも『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』はそれのみで出来上がっているといっても過言ではないレベルのものすげー作品だった。
 それゆえにわたしはどこにも逃げ場がなく、この作品を観ること自体出来なかった。


 一方、こだまっちの『仮面の男』は。
 この作品のもっとも間違っているところは言葉の問題じゃない。

 最悪だと思う、監獄の場面。
 囚人たちへの拷問や処刑をお笑いにしている。
 また、ただお笑いにする、愉快なパフォーマンスにするにしても、センスが悪すぎて笑えないし、見た目もよくない。

 これは「拷問や処刑をお笑いにする」ことの是非や、するにしても「センス悪すぎ」であることが問題なのであって、「この言葉にこの言葉を返すのはおかしい」とか「こんなことを言うのは人としておかしい」とかでは、ナイんだ。
 「拷問や処刑をお笑いにしている」のだから、何故ここでこの言葉を? とか、人としてこれってないんじゃない? は、その前提の中では「正しい」から、わたしの脳みそは悲鳴を上げない。「間違ったこと」を描いているのだから、間違った会話が展開されて当然。
 「正義」「美談」として交わされる会話が電波である植爺とは、立っている次元が違う。

 人間ボーリングにしろ唇ベッドにしろ「悪趣味」と銘打ってやっている。
 ロジックは間違っていない。
 そもそも最初からそんな場面をやるな、という、まったく違う次元の間違いをしているだけで。

 『H2$』パロにしろ影絵にしろ「最初からやるな」であって、そこだけ取り出してみて言葉が成り立っていないわけじゃないんだ。

 わたしが耐えられないモノは「間違った言葉」「間違ったロジック」。
 ルールと情を混同する考え方。(例・「愛があればナニをしてもいい」……よくねーよ)

 植爺は人間なんだと思う。
 だから彼とは気が合わない。

 こだまっちは宇宙人なんだと思う。
 だからコノヒトの考えていることはわからない。

 人間のことは「嫌い」とか「ぷんぷん」とか思えるけど、宇宙人にはただただ「近寄りたくない」。
 人間の作ったモノはそれゆえに許せないことがあるけれど、宇宙人の作ったモノは理解できないので思考が働かない。


 てことで、『仮面の男』はリピートできるんだなああ。
 いや、所詮芝居部分だって脚本書いてるのこだまっちだから、意味わかんないことが多分にあるんだけど、なにしろ芝居部分が少なすぎて目立たないの(笑)。
 まともに1時間半芝居やってたら、耐えられない部分も出てくるんだろうけど、今は何しろ芝居は95分中40分くらいしかナイわけだからねええ。
 今のとこ平気。


 だからわたしにとっては、『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』よりはずーーっとずーーっとマシな作品。
 よかった、『仮面の男』で。よかった、こだまっちで。
 って、「最悪」とはナニかで考えて、こっちがマシだからって、喜ぶ基準が間違っている。でもそれがタカラヅカ。

 つーことで『仮面の男』はふつーに通っている。
 わたしにとって、耐えられるモノと耐えられないモノ、それだけのこと。きっとそれは、人それぞれだろう。


 だけど。
 『外伝ベルサイユのばら-アンドレ編-』は許されても、『仮面の男』は許されちゃいけないとは、変わらずに思っているよ。
 耐えられるとか、そーゆー次元ではなくて、だってコレ、そもそも芝居ぢゃないもん(笑)。

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