この星に生まれて。@1万人の第九2009
 ベルリンの壁が崩壊した年。
 東西ドイツの演奏者たちが集まって「第九」を演奏したそうだ。「歓喜」という歌詞を「自由」に変えて。
 それから20年。
 ベルリンの壁が壊される映像からスタートした今年の『1万人の第九』は、ものすごーく、フリーダムだった(笑)。

 第一部には毎年ポップス界からゲストシンガーが出演するんだが、今年のゲストは槇原敬之だった。
 歌うのは新曲の「ムゲンノカナタヘ」と、定番曲「見上げてごらん夜の星を」、マッキーといえばコレでしょ、の、「世界に一つだけの花」。
 ゲストの持ち歌に、1万人の合唱団がコーラスを入れる、てのがこのイベントのお約束。
 今年ももちろん、「世界に一つだけの花」にコーラスを入れることになり、前もって楽譜が配られそれぞれのクラスで練習もしていた。

 が、前日リハーサルのときに。
 『1万人の第九』の指揮者であり総監督の佐渡せんせーが言うわけだ。

「最後のとこは何回やるか決めてないけど、まあいいよね」

 「世界に…」のラストの「♪ラララ~」部分を何回リピートするか、決めないでやるとゆーんだ。まあなんとかなるでしょと。

 ヲイヲイ。
 訓練された少数のコーラス団ぢゃなく、素人×1万人だよ? いいの?

 なんとかなるでしょ、ではじまったリハーサル。
 おとなしく拝聴する「ムゲンノカナタヘ」はともかく、「見上げてごらん夜の星を」は「てきとーに歌ってヨシ」と言われたので、みんな好きなときに勝手に歌い出す。
 そして楽譜もらって練習した唯一の「世界に…」は……みんな、音合ってる?!(笑) けっこーばらばらとやってるよーな気が……。
 そして問題のリフレイン。
 オーケストラも演奏を止め、手拍子だけでアカペラで「ラララ」が続く。
 えーとこれ、どこまでやるの、いつまでやるの? マッキー踊ってるし、佐渡せんせも式台から離れてあおってるし。
 カオスのまま、リハ終了(笑)。

「好きに歌っちゃっていいから。ねえ?」
 世界の佐渡裕はあっけらかんと、そんなことを言う。
 せんせに振られて、マッキーも「ええ」と言う。
「作曲者がイイって言ってるから、イイってことで!」

 いいのかよ?!

 ……で、『1万人の第九』当日。
 ゲネプロ時に合唱指導のせんせがフォローする(笑)。
「オーケストラが演奏やめてアカペラになってる間はGパートを繰り返して、佐渡先生が式台に戻ってオケに合図をしたら演奏はじまるから、そしたらそこからHパートね」
 同じ「ラララ」でもメロディがチガウんだよ、楽譜もらってんだよ(笑)。

 しかし。
 ゲネプロの「ラララ」リフレインは、めちゃくちゃ(笑)。

 わたしと周囲は生真面目にGパート歌ってるんだけど、左スタンドの方からはHパートの「ラララ」が聞こえる。勝手にスタンディングはじめるし、マッキー踊ってるし佐渡せんせもあおってるし……カオス。

 駄目出し来るかなと思ったけれど、それもなくゲネプロ終了。えええ、あれでいいの? コーラスめちゃくちゃでしたよ?!

「ここは『ラララ』で、佐渡先生が式台に上がって伴奏がついてからが『ラララ』よねえ?」
 後ろの席の人たちが、楽譜を開いて首を傾げている。や、あなたたちは合ってます、楽譜を無視して最初から最後までHパートで歌っていた人たちが何百人だか何千人だかいただけで。
 Hパートの方が歌いやすい旋律で、なおかつ盛り上がるのね。編曲した人の意図としては、はじめは押さえ気味の地味なラララで、最後にどかんと派手なラララで盛り上げて感動エンディング!という演出だったと思うの。でも練習不足かつ、「本番も楽譜を見て歌うので、暗譜しなくていいですよ」と練習時間を取れない言い訳にしていた運営側にも問題があると思うの。
 危惧したとおり、楽譜なんて見られなかったもの。演出効果でマッキーのいるステージ以外は真っ暗だもの。楽譜開いても読めない。

 毎年のことだけど、「楽譜見ていいからね」と練習時間を取れないままなし崩しで本番、で、本番は楽譜なんか見られない真っ暗な演出……ての、いい加減やめて欲しい。
 音楽のプロは「この程度、そもそも楽譜なくても1回聴けばできるはず」と思うのかもしれないが、素人×1万人にナニを求めてるんだ。はじめてのことをやらせるんだから、それなりの練習は必要だっつの。
 ゲストの曲にコーラスを入れる都合上、演出が決まり楽譜が出来上がるのがいつも本番直前だからそもそも物理的に時間が取れないことと、本当の意味で練習するにはゲストとも合わせなきゃいけないわけで、んな高名なスター様を素人の練習につきあわせるわけにもいかないので、内輪の事情的にも不可能。つーことで、毎年毎年練習不足。
 そして毎年毎年、練習不足の言い訳は「楽譜見ながら歌っていいからね」……そして本番は照明真っ暗で楽譜見えず、の繰り返し。
 進歩はないのか、運営側。
 どうせテレビ放送するのはほんの一部で編集加工前提なので、ぐたぐだでもいいんだろうな(笑)。

 まあそのへんは毎年のことなのであきらめている。今年も「前言に偽りあり」ですな、MBS。

 ぐだぐだ上等! のまま、いざ本番。

 不思議なことに、本番は合っていた、気がする、コーラス(笑)。
 何故だ(笑)。

 曲の合間合間にMCが入るんだが、マッキーがそこで伴奏している子どもばかりのオーケストラの音について言及していた。
 「見上げて…」は子どもたちばかりが伴奏をしている。彼らの、純粋に「音」と向き合ったゆえに奏でる音に胸を突かれる、よーな意味のことを。途中で佐渡せんせが話を奪っちゃっていたけど、双方そーゆー意味のことを語っていたと思う。

 そう。
 リハもゲネもゆるくて、なんかカオスだった。
 その延長にあるはずの、本番。
 なんだかとても純粋に、剥き出しの「音楽」が、そこにあった。……気がする。

 「ムゲンノ…」を歌うマッキーと、その歌声に集中する空気。1万人の手拍子は鳴っているけれど、ソレとは別に、1万人が耳をそばだてているのがわかる。
 「見上げて…」のマッキーの声にかぶせて、静かにわきあがるコーラス。
 まるで、教会の中のようだ。
 祈りがしんしんと響き、歌声になるような。

 そして、「世界に…」。
 楽譜があるんだかないんだか、守る気があるんだかないんだか。
 がちがちに決める気のない、「余白」の部分、楽譜には印刷されないナニかを解き放った、1曲。フリーダムな、ひととき。

 マッキーが踊り、佐渡せんせが踊る。客席に、1万人の合唱団に、「歌え」と訴えかける。

 歌歌え。歌歌う。
 2009年の『10000人の第九』のサブタイトルは「歌のある星へ」だ。

 「歌はなくても生きていけるけど、歌があると楽しい」……マッキーがそう語るように。

 歌は楽しい。歌は幸せだ。
 歌歌う、今は、楽しい。今は、しあわせだ。

 歌のある星に生まれた幸福を、声にして歌う。
 なくても生きていけるものを、必要として、声を上げる。
 立ち上がり、手を打ち鳴らしながら歌う。

 リフレイン。心のままに、波のままに繰り返されて。
 伴奏もなく、ただひとの声だけで。

 そして。
 子どもたち、学生たちの伴奏を得て、曲は終着する。プロではない、お金のためではなく演奏する者たちの音で、1万人の素人の歌声と共に。

 鳴りやまない拍手。
 マッキーが退場して、第1部は終了、休憩になる予定だ。
 なのに、鳴りやまない。

 こんなの、はじめてだ。
 『1万人の第九』に参加し続けて11年、佐渡せんせと同じ年数やってきたけど、こんなの見たことナイ。聞いたことナイ。

 退場したマッキーが戻ってきた。
 まさかのカーテンコール。
 沸き上がる会場。

 カオス。
 なんかもお、カオスすぎる(笑)。
 いやこれは、フリーダムなのか(笑)。

 
 休憩になったあと、後ろの席の人たちの会話が聞こえた。

「あんまり盛り上がったから、これで『終了』って感じよね」
「ほんとにねー。終わったー、って感じよね」

 同感です。

「ちょっと待って、これからが本番だってば」

 はい。『1万人の第九』ですから。まだ第九歌ってませんから(笑)。
 人間、ナニがツボにハマるかは、わからないわけで。

 『カサブランカ』初日の幕間、わたしはなんか知らんが、

「こんなに負けるなんて、プロとして恥ずかしい」

 という台詞にツボって、なにかと口にしてました。
 この台詞の、どこがそんなに良かったんだろう……別に面白くもなんともない台詞だよねえ? なのに何故か、この台詞が海馬に焼き付いちゃってねえ。(もうひとつ、「ナニを妄想しても構わないが、オレにだけは言わないでくれ」もツボにジャストミートしてましたが、こっちは理由がわかる・笑)

 ちーちゃんの、ディーラー姿っ!!(拳振り上げ)

 わたしは、実はディーラーに弱い。
 その昔、ディーラー姿の龍真咲@当時研3にときめいた過去もあるくらい、ディーラーがツボだったりする。

 だもんで、よりによってちーちゃんがディーラーで、しかも無能ってのが、すごくツボに入ったんだと思う。

 でもってタカラヅカって不思議なとこで、無能なキャラはよく出てくるのに、その無能さを恥じたり反省したりするキャラは、ものすごーく少ない。
 だから登場するなり、泣き言言ってリック@ゆーひに頼り、反省しているエミール@ちーちゃんがツボに入ったんだと思う。

 加えてわたしは、ちーちゃんの、横顔が好きだ。

 男役の横顔は、わたしのチェックポイント。横顔がきれいな人にこそハマる傾向がある。(水しぇんは例外・笑)

 ちーちゃんの横顔は、すっごくきれい。理想的な男の顔。
 だから、ずーーっと客席に横顔を見せているディーラー役は、それだけで眼福。

 
 初見の幕間は、美形で制服姿が素敵な無能ディーラーだと思って「プロとして恥ずかしい」を繰り返して喜んでたんだけど。

 2幕目を観て、びっくり。

 無能ちゃいますがなっ。凄腕ですがなっ。

 ルーレットで、思い通りの位置に玉を止めることができるんだー。
 や、仕掛けがしてあるのは台であって、エミールはスイッチ押すだけなのかもしんないけど。リックの目配せひとつでさらっとイカサマして、しれっとしている姿に、惚れ直しました。

 なんだよなんだよ、かっこいいじゃん!
 リックが、顔だけで選んだのかと思っていたよ(笑)。

 や、リックの店の従業員って、イケメンばっかじゃん?
 てっきりボス、趣味で選んでるのかと。
 ディーラーもバーテンも、面接して「好みだ、採用!」ってやってるのかと。人種肌の色問わず。

 エミールが別に無能ではない、ディーラーとしての腕も良いんだってわかった上で、1幕の「プロとして恥ずかしい」を聞くと、さらに、惚れます。
 アホの子が失敗したんじゃなく、ちゃんと技術を持ったプロが、それでも失敗して、それを素直に認めて反省しているんだと思うと、なんかすごくかっこいいっす。
 潔いっていうかさー。

 それを叱りもせず受け止め許すリックもまた、かっこいいしさー。

 エミールとリックのくだり、好きだなー。

 
 さて、リックの店の従業員といえば、リックの唇を奪う男サッシャ@みーちゃんですが。

 オイシイ奴だな、ヲイ(笑)。

 軽さとゆるさが魅力的な、三枚目キャラ。こーゆー人がいてくれないと、この話重くてやってらんねえ、という。
 つか、みーちゃん、三枚目なんだ……てゆーか、若者なんだ?
 最近おっさんカラーなイメージがあったので、この「いかにもな若者っぷり」にちょっとびびる(笑)。

 まあねえ、主人公が若者グループに慕われないと、イケコ作品ちゃうからなあ。リックの店の若者たちが、いつものイケコ作品の「ヒップホップを踊る若者たち」ポジなんだよねえ?
 で、サッシャがそのリーダー格の子ね。
 基本的な役割は、「主人公ダイスキな弟分」。イケコ作品のお約束。

 かわいいんだけど、「ガッテン!」な軽さばかり目について……と思っていたら、2幕でびっくり、レジスタンスだったんかい。
 
 や、最初はアルバイトで別の役やってんのかと思った。
 でもそうじゃないんだね。
 次に見たとき、バーガー@大ちゃんがラズロ@らんとむと密談しているときに、「会話やめないとあぶないぞ」と割って入ったり、ちゃんとレジスタンスとして行動してるんだ。

 この二面性はいいなあ。
 いいんだけど……シリアスなレジスタンスのときですら、やっぱりサッシャだからか、すごく健康的ぢゃないっすか……?
 見ていて、「まともな子なんだな」というのが、すごくわかる。まともな感覚を持った子だから、「ガッテン!」なバーテンやって、リックにチューして(笑)、そして地下活動やってんだと思える。
 がんばれ、男の子。

  
 しかしリックの店って、レジスタンスの巣窟じゃん?
 従業員みんな地下活動してるって……ええんかいソレ……。
 ルノー@みっちゃんの、胴布団反対。

 『カサブランカ』で、はじめて宝塚歌劇を観る人がいたとして。

 ルノー大尉役の人が、男役3番手だとわかる初心者が、どれくらいいるだろうか。
 サム@萬ケイさんや、フェラーリ@ソルーナさんと同じく、「脇の芸達者なおじさん」だと思ってしまうかもしれない。

 原作重視もいいけどさ、ここはタカラヅカだ。重視するならそもそも女の子だけで舞台化するなって話だし、タカラヅカならではの『カサブランカ』でいいと思うんだ。
 だからイルザ@ののすみだって、彼女が最も美しく見える髪型とアクセサリーで……ぶっちゃけ、アタマの小さく見えるカツラでいいと思うし、ルノーだってスリムでいいと思うんだ。

 てゆーか、ルノー、魅力的すぎるっ。

 あーゆーキャラクタはイイ、オイシイっ。
 すごくすごく、いい役だと思う。

 またみっちゃんがもお、すごくうまい。
 うさんくさい役、たくらんでいる役は、彼の得意分野だと思う。や、『大江山花伝』の善人役よりよっぽどハマってる。

 でもって、あの、声の良さ。

 歌がうまいことはわかっているけれど(つか、歌少ねーよ、もっと歌わせてくれよ)、喋っている声もまた耳に心地いいよね。深みがありながら、滑舌が良くてキモチイイ。

 だからこそ、胴布団が邪魔だ。

 ふつーにヒゲのおっさんであれば、「ルノー」としての任は果たせると思うんだ。原作に対して顔向けが出来るっていうかさ。
 『凱旋門』でタータンが演じたポリス役は、原作では恰幅のいいおじーさんだ。しかしタカラヅカだからっつーことで、若めの設定に変更された。ビジュアルもふつーに二枚目男役の範疇になった。ポリスを美しくしたところで、作品のテーマにも、主人公たちの男の友情にも響かないからだ。
 それならルノーだって、二枚目男役らしい役にしても、いいだろう。

 『Paradise Prince』のときも思ったんだけど、なんで演出家はみっちゃんに二枚目役をやらせないんだ?
 みっちゃんは意識して美形役をやらせないと、美形力が発揮されないぞ?
 タニちゃんとかテルとか、三枚目役をやっても美形でしかない人ならともかく、みっちゃんは放っておくと「みっちゃん」でしかないんだぞ?
 彼のあか抜けない芸風は個性であり、愛すべき部分だと思うけれど、ここがタカラヅカであり、彼が頂点を目指す者である以上、本人のためにも劇団のためにも、美形力を養ってもらわないと。
 みっちゃんが意識して「美形」を演じると、ほんとに美形になるのに。マジ表情チガウもんよ。

 ルノーみたいに癖のある役は、ファンを増やす格好の機会。
 ……ただし、ヒゲのメタボオヤジは、チガウっ。

 ヒゲの美形オヤジぢゃ、どーしてイカンかったんだ、小池!!

 もったいない……もったいないよおお。
 見たかったよ、美形なルノー。
 腐った女子諸君も、盛大に萌えてくれただろうに……。

 せっかくリック@ゆーひさんがものすげー傾国の美青年っぷりを発揮しているのに、脚本だけでいったらいちばんの相手役はルノーになるとこなのに、セガール@いりすに持って行かれてますがなっ。
 リックとナニかあるなら、セガールでしょ? ルノーは悪いけどパス、美しくないから! と、腐ったお嬢さんたちがスルーしてしまうぢゃないですか。(ちなみに、サムは聖域・笑)

 まあ、腐った話は置くとして(笑)。
 ルノー@みっちゃんが、マジ巧くてね。
 表情のひとつひとつが、すごく「絵」になってるの。
 それはあのメタボ体型を前提とした表現なの。この体型のこの男だから、この表情をすることで、これを表現する。そのひとつひとつの「巧さ」が卓越していて、感心する。
 ただ台詞を言ってそれに即した表情をしているだけでなく、あの体型、外見をも計算している、「わかって」やっている。

 それがわかるだけに、歯がゆい。

 あの体型だからこの演技ってことは、もしも「二枚目やっていいよ」ってことだったら、どんだけ格好いいルノーが見られたんだろうか?
 そう思うと、くやしい(笑)。

 リックがあまりにわかりやすく「ヒーロー」だから、その脇でちょっとナナメになった二枚目半としてルノーがいたら、「ヒーロー以外にハマる嗜好の女性」たちが、雪崩をうってみっちゃんにハマったんじゃないかと。
 そもそもゆーひくんは、そーゆーポジションで人気を得てきたわけだし。そのあたりの役割に萌える人たちは一定数いるのよ。

 3番手たるもの、ファンを増やす必要があるでしょうに。玄人受けする巧さだけでなく、もっとわっかりやすくキャッチーな集客方法を、劇団が、演出家が、盛り立てるべきだと思うよ。
 ルノーは、ブレイクすることだって出来る役……に、なるのに。「二枚目」として描けば。

 一見さんに「専科のおじさん」だと誤解されるよーなビジュアルの役を、3番手にやらせる意味がわからない。
 胴布団いらねー。ふつーにかっこいいみっちゃんを見せろー。

 今のおでぶなルノーがすごく魅力的なことは認めているし、今のルノーだって好きだけどさっ。
 かわいくてしょーがないけどさっ。
 楽しげに軽々と演じているみっちゃんをすごいと思うけどさっ。

 今のルノー@みっちゃんを否定する意味ではまったくなく、ただ、チガウ描き方だって出来たはずなのに、していないことが不満なのよ。

 今回1本物でショーはないし、フィナーレではみっちゃん群舞のひとりでしかなく、一見さんに「あのメタボオヤジ役の人だよ、ほんとは二枚目なんだよ」とわかりにくいじゃないかっ。
 リナ@『雨に唄えば』だって、男役になって1場面どーんと歌い踊れるから、そのギャップをウリにできるわけで。それがナイんじゃ、なんだかなあと思うのよ。
 タカラヅカなんだから、男役は二枚目でナンボだろーに。
 新公の話が途中ですが、そもそもわたしまだ、本公演の話もろくに書いていないわけで。

 てゆーか。

 シュトラッサー少佐@ともちが、どんだけかっこいいか、まだ語ってませんがなっ。

 『カサブランカ』の悪役少佐、シュトラッサー。悪の権化であるナチス・ドイツの、わっかりやすーい敵役。
 小池作品の悪役は、バックダンサーまで付けて世界征服ソングを歌わなければならない(決定項)わけで、今回ソレがともちだったということが、愉快でなりません。

 大きくなったねえ、ともち……。前回の小池作品ではあーた、ただの高飛び選手だったもんねえ……ほろり。

 小池作品のいいところは、こーゆーお約束というか、アニメ的な役割分担、記号化というか、悪役は単純に悪役で、それ以下でも以上でもないところにありますな。

 そりゃ、一概に世界征服を歌っていても、己れの美学のためだったり野心のためだったり海馬愛ゆえだったり父の意志を継ぐためだったり愛国心ゆえだったりと、それぞれ動機はあるんだろうけど、でもとどのつまりは「悪役であるための悪役」であり、人物像自体はとーっても薄っぺらい(笑)。
 や、いいんだよソレで。大河ドラマならいざ知らず、1時間半~2時間強しかない物語で、悪役つっても所詮主役ではない、脇役なんだから。

 半端に描かれて余計わけわかんなくなったりする(谷せんせの某悪役大佐が脳裏をよぎったりなんだり・笑)より、いっそ記号にしてくれた方が、潔い。
 
 悪役らしく、とことん憎たらしく! 悪役らしく、とことんかっこよく!
 これは矛盾しているよーに見えて、そうではないんだ。悪役が憎たらしく見えないと、それを成敗する主人公がかえって悪く見えてしまうおそれがある。なにしろ日本人は判官贔屓、負ける側を美化する傾向がある。勝つ主人公より、負ける悪役に感情移入されるといけないので、悪役はわかりやすく憎たらしく!
 だからとって、悪役が情けなかったりただのバカだったりしてはいけない。おつむの足りていないみっともない悪役に勝ったところで「当たり前」でしかなく、かえって弱いモノいじめしているみたいで、かっこわるい。
 強くてかっこいい悪役に正々堂々戦って勝つからこそ、主人公はかっこいいのだ。

 とゆーことで、ナチスというのは、タカラヅカで定番の悪役だ。
 ナチスが「悪役」なのは周知のことで、コレを悪役にするのはとてもわかりやすい。
 そして、ナチの軍服は、どれもとーってもかっこよくて、実に舞台映えする。や、ビジュアルが秀でていることも、ナチスの扇動効果の一部だったわけだから、かっこよくて当然だもんよ。

 これらのことから、「かっこいい悪役の、ナチス軍人」が傲慢かつ冷酷に「いかにもな悪役ぶり」を発揮してこそエンターテインメント!

 そして、ともちがもお、とっても素敵にこの「悪役」という役を演じていますことよ!

 軍服似合うってばよ。
 あの長身に、胸板。並ぶとリック@ゆーひさんが小柄(笑)に見える体格差。ラズロ@らんとむさんが可憐(笑)に見える体格差。
 こわそーで物騒そーで、心せまそうで、実に素敵です。

 リックの店のいつもの席(笑)で、えらそーに煙草ふかしている姿が、めちゃくちゃかっこいい。
 なにがどうじゃなく、所作がずしんと重くてかっこいいの。
 
 重さ、というのは重要だと思う。
 昨今、軽いやわらかい美男子がうようよふよふよ生息しているから。
 そーではなく、ずしんと腰の据わった、大芝居なくらい「男役」をやってくれる男が必要なんだ。

 正直、ともちの身長は弱点になっている、と思うこともある。
 彼は大きすぎて、他の人たちとのバランスが悪いんだ。それで「この人、演出家も使いにくいだろうな」と。
 若い好青年役しかやってこなかったころは、つぶしが利かないというか、いろいろ不安な存在だったりもしたけれど。

 悪役専科だと、その大きさが、武器になる。

 立役、攻男ってのは、需要高いからね、マジで。
 放っておくと美形男ってのはみんな受化していくから。

 せっかく稀な体格を持ってタカラヅカにいるんだから、稀な個性を持つスターになって欲しい。

 や、悪役しかできない男って意味じゃなくてさ。悪役を極めた人が演じる二枚目役もまた、味があって素敵なんだしさ。

 二枚目を引きずっていたレオン@『A/L』、背伸び感のあるルカノール@『バレンシアの熱い花』、反日米兵@『黎明の風』やヲカマ(笑)@『Paradise Prince』、レオン系政略結婚策略男@『薔薇に降る雨』と、良い感じに悪役役者になってきたなあと。
 で、悪役ぢゃないけど、悪役スキルの活きる二枚目エッジワース@『逆転裁判2』はあーんな愉快なことになってるしさー。

 でもねでもね、わたし的にいちばんツボなのは、カーテン前でナチス兵たちを従えて「世界征服ソング」を歌うシュトラッサーの、開きすぎた脚ですわ!!(笑)

 や、力入ってるのも、大きく強く見せようとしているのもわかるけど! 脚、開きすぎだから!!(笑) 踏ん張りすぎだから!(笑)

 ともちがあの大きなカラダを持ってして、さらに大きく見せようと、本気で大股開きで踏ん張ってるのがもお、もお、地団駄踏む勢いでツボです。好きです。

 そして、シュトラッサーの名台詞は、「もしもしっ?!」だと思っている(笑)。

 電話と一緒にせり上がってくるともち!(笑) ルノー@みっちゃんに一方的にしてやられて、わけがわからず「もしもしっ?!」と繰り返すまぬけさがたまらん。

 シュトラッサーって、やってること自体はほんとただのまぬけなんだよねえ。えらそーに権威を振りかざしているだけで(キャビアを注文するときの厭ったらしさも注目・笑)、実際のとこ負けと負け惜しみばかり。
 なのに、それでも「かっこいい」のは、ともちの力だと思う。

 彼個人がどんな人かはまったく描かれていないので、いかようにも妄想できるのが素敵だわ。
 ええ、たとえばシュトラッサーが、ラズロLOVEで世界中追っかけている愛の暴走一途男だとか、自由自在(笑)。
 なにしろ彼がカサブランカに来た理由はラズロなわけだし。ラズロへの初対面の挨拶が「お会いできる日を待ち望んでました」だし。
 バーガー@大ちゃんが新聞記事だけでラズロに恋い焦がれていたように(笑)、シュトラッサーも一方的にラズロに恋して追いかけていても、不思議はない。

 シュトラッサー×ラズロ。エッジワース×リックに次いで、またしてもともち×らんとむで、ともちの爆裂片想い。……いいなあ。

 腐った話は置くとして(笑)、ともかくシュトラッサーがかっこいいのー。素敵なのー。
 あの太く重い無骨なかっこよさは、ともちならではのものだと思う。
 いちくんにヒゲを!
 ……と思った、前回の新公『薔薇雨』。

 そして今回の新人公演『カサブランカ』

 いちくんに、ヒゲがある。

 ルノー大尉@いちくん。
 ヒゲキャラじゃん、おっさんキャラじゃん!
 ランジュ男爵(あれ、名前がチガウ?)役のときは、「いっそヒゲ付けて完璧におっさんにしてくれた方が萌えるのに!」と思った彼が、なんと今回はヒゲつけておっさんやってくれてます。専科さん風味だと思った彼が、さらに専科さん風の役をやっている!!

 好みです、ハイ。

 ルノー大尉は技術のある人が演じてはじめてオイシクなる役。腹芸必須、芝居リズム必須、持ち味が路線かどうかよりは、とにかく芝居が出来る人でヨロシク。
 ……と思っているので、いちくんがここできゅっと締めて芝居してくれたことは、すごくうれしいっす。

 男爵役で感じた良い部分を、さらに成長させて見せてくれた感じ。また、男爵役ではがゆいっちゅーか足りないと思った部分は役のせいもあるかもしれんが、あまり見えなくなっていた。
 飄々として抜け目なく、コミカルにされどダンディに、おっさんとして「芝居」してくれるのがイイ。
 男爵役は準トップの演じる役だったので、華やかさとか美形さが必要だったんだが、ごめん、いちくんはそこは足りていなかったと思うんだ。でも今回のルノー大尉役は、華やかさと美形さはなくてもいい、別格スター系の持ち味で勝負できる。
 もともとわたしはそのへんの持ち味とか立ち位置の人が好きなこともあり、いちくん好感度がぶーんと上昇した(笑)。

 いい男だなー、ルノー。好きだわー。

 
 サム@樹茉くんが、すげーかわいかったっ。

 黒塗りで歌いまくる、陽気なおっさん役。リック@カチャの昔馴染みで親友で理解者で、ツンデレなリック(笑)が唯一甘えられる相手。
 すごく難しい役なんだけど、樹茉くんてばもー、すげー空気感で演じていたの。

 あのファニーフェイスをくしゃりとさせて、にっこにこで歌う彼がとても可愛い。
 おっさんには見えなかったけれど、かといって少年でもない青年でもない、フェアリーな人。

 いーなー。かわいーなー。癒されるなー。

 樹茉くん、ウチに来て歌ってくれないかなー。マイナスイオン出てると思うの。聴いてると肌つるつるになりそーだ。
 
 
 ラズロ@かいくんは、強そうだった。

 て、本役のらんとむはどんだけ可憐なんだってことだが(笑)。
 
 かいくんラズロは、素朴な強さ、土に近い大きさを感じた。農家とか牧場とかの出身かもしれない。都会の生まれではなさそうだ。
 一歩一歩地味に確実に前へ進む男のイメージ。
 今は穏やかだけれど、武闘派なんだろうな、結局のとこ。って感じ。
 リックとはいろんな意味で対照的。とゆーことで、正しいんだよな、このキャラ。

 質実剛健。
 真実一路。
 ……うまいんだけど、外に向かって走る光ではない、ような。

 スーツも似合うしふつうにきれいだし……しかし、かいくんを語るとき、いつも「ふつうに」と付けてしまう。 
 タカラヅカって難しいな。

 
 フェラーリ@風羽くんが大層色男でした!

 いやあ、この公演っておっさんスキーにはたまらんもんがあるな、専科さんが素敵なのは当たり前だけど、こうやって新公でおっさん役を魅力的に演じてくれる男の子たちに出会えると、すごくうれしくなる。

 こちらも腹の底の見えないしたたかな玄人役。裏社会でそれなりの地位と富を得ているだろうイタリア男のやらしさと粋さを、闊達に演じてくれたなと。

 
 カール@光海くんがまた、素敵なじじいっぷりでした(笑)。

 てほんとに、おっさんスキーでしかない役名の挙げっぷりだなヲイ。
 光海くんは『薔薇雨』新公以来、なんとなく眺めてきている男の子なんだが、やっぱ好きなタイプなんだと思う。黙っているときと、口を開けたときのギャップも含め(笑)。

 くにゃくにゃした変なじーさんなんだけど、ユーモラスでかわいい。リックの店のマスコット的立ち位置で、あちこちひょこひょこ。いいなー。
 なんかあったかいんだよなー。

 
 おっさんといえば、シュトラッサー少佐@愛月くんはあまり目に入らず。
 きれいだとは思うけど、特に惹かれる部分がなくて。
 つか、あんましうまくないよねえ……と言ったら、宙担のジュンタンに、
「緑野さん、ともちスキーだから」
 と言い切られ、どきんとした(笑)。

 そこか?! そこなのか!
 本役さんを好きなゆえに、知らず新公役くんに点数辛くなってる?!

 だってともち、すげーかっこいいんだもんよ。あの軍服姿、椅子に坐っているだけ、煙草吸ってるだけでも、めっちゃかっこいいんだもん!(落ち着け)

 いやその、ともちが海馬に焼き付きすぎていて、それで愛月くんが割を食っている部分はあるのかもしれん。ゆーひ役のカチャがそうであるように。

 ただ、家に帰ってから「おとめ」を見て、愛月くんがまだ研3だと知った。
 研3で初抜擢なら、十分うまかったと思う。宙組詳しくないから、大きな役をやる子はそれなりの学年だと思って見てたから、それにしてはヒゲ似合ってないし、着こなしや立ち居振る舞い含め、あんましうまくないなあと……とくに歌は大変だなあと……。

 つか、中卒研3って、まだハタチかよっ、そりゃおっさん役できなくても仕方ないわ……。(ジェンヌはフェアリーです、年齢はありません)

 せっかく若くてきれいな期待の新人なら、もっと若くて美形な役を……と思い、ふと我に返る。

 この芝居、主な役はおっさんばっかしぢゃん。

 若者は脇キャラしかいないから、期待の美形くんに役を付けるとなると、必然的におっさんになってしまうのだわ……でもおっさん役では美形くんの本来の魅力が出にくいのでわ……? まあ、ジレンマ。

 おっさんばっか活躍していて、おっさんスキーとしては堪らない芝居なんですがねえ(笑)。
 
 と、おっさん語りだけで今回は終わる(笑)。
 凪七瑠海に足りないモノはなんだろう、と思いながら観劇した。

 宙組新人公演『カサブランカ』

 初主演おめでとー!のリック@カチャは、とりたてて破綻している部分もなく、学年的な及第点の実力を持つ子だ。華もあるし、若手スターとして路線コースを歩むのはふつうのことなんだろう。
 現に今までそーやって、華々しい下級生ライフを送っていたはずだ。初舞台からずっと抜擢されてきただけあって、経験値も高いし、技術もある。
 『エリザベート』の特出タイトルロールは今でもどーゆーことなのかさっぱりわからないが、それによって舞台人スキルはさらに上がったことだろう。

 ここまで足場は固められているのに、何故こうも彼は「足りない」のだろう、と首を傾げていた。

 いやそれはやはり、どうごたくを並べたところで、視覚から来るものが理由なんだろうなあ。

 終演後、「カチャに足りないものってなんだろう」とうなるわたしに、友人がすっぱりと「男臭さでしょ」と言い切った。「大人の男に見えないもん」と。

 友人に言い切られるまで、わたしの視覚情報は混乱していた。
 けっこー良席で観ていたので(友会ありがとう)、カチャリックがものすごーく意識して「男役」を作っていることはわかったんだ。
 スーツの着こなしや仕草について、彼はとてもがんばって作っていた。
 その技術と気合いと、でも実際の体型とが同時に目に入るもんだから、混乱必至。

 ふつーあれくらいがんばって着こなして演技していたら、男に見えると思うんだ。それだけのことをしているんだから。
 なのに、ぶっちゃけ、男に見えなかった。女の子がカラダに合わない男物のスーツを着ている、もしくは首から上だけアイコラした画像のようだった。

 これは……混乱するよなあ。

 演技は悪くない……というか、ゆーひのコピーだった。
 初主演する子が、トップを丸コピするのはスタンダードなので別にいい。コピーできる技量があるってことだ。技術のない子はコピーすらできない。

 台詞の言い回しから表情から仕草から、とても真面目に本役をなぞっている分、体型の差が如実に違和感となった。

 あー……難しいなこれは。

 小柄な男役が本人の実力とは別の部分で一般的な美しさにマイナス点が付けられるように、スタイルが良すぎてもマイナスになってしまうのか。
 カチャのスタイルに合った衣装を、彼に合わせて作ってもらえるなら問題はないのかもしれないが、本役さんのコピーデフォの新公だと大変だよな。

 また、娘役泣かせの体型だと痛感した。
 現実男女ならば、身長云々以前に、男の方が顔が大きい。身長が同じ、あるいは女の方が高くても、顔は女の方が小さくて当たり前なんだ。
 だからカチャが男役ならば、それに寄り添う娘役は彼より顔が小さくなくてはならない。身長が170cmでも150cmでもかまわないから、とにかくカチャより小顔でないと、男女のビジュアル比がおかしくなる。パースの狂った絵に見えてしまう。
 相手役のえりちゃんもそれほどスタイルが悪いわけでもないだろうに、割を一気に食ってしまっている。

 同時にカチャは、自分より小顔な女の子と組まないと、ますます男に見えにくくなるということだ。
 た、大変だな……。

 スーツよりもコスチュームもの方が合うのかもな、彼のスタイルは。
 新公は仕方ないとして、主演バウは彼が無理なく男に見える衣装を着せてあげて欲しい。……って、バウも同じ時代だからスーツなのか……?

 歌える子だと思っていたので、歌が思ってたよりアレレで残念だったんだが、何ヶ月も娘役をやっていたせいだろうか。

 で、肝心の芝居だが、前述の通り本役をなぞるのは新公の常だからイイとゆーか、仕方ないんだが……。
 ただ、ゆーひくんの演技はゆーひくんだからもっている、許されている部分が多分にある。アレをまんまコピっても、カチャリックの魅力にはつながりにくい。
 だってゆーひさん、あんまし表情変わんないし、台詞一本調子だし……アレは真似ない方が……ゲフンゲフン。(や、だからアレはゆーひだからイイんだって)

 また、これはエリザベート役のときも感じたんだけど、うまいしふつーに及第点あるんだけど、なんかこう、見ていると途中で飽きてしまう。
 華はあるんだし、主役でいいと思うんだけれど、わたしの好きな芝居ではないんだろう。最初に注目していたほどには、あとになると興味が持てなくなる。注目する集中力や意欲が低下していく。物語は高まっているのに、主役に興味がなくなっていくのは、どーしたもんか。
 芝居ってのは好みが大きく作用するもんなんで、わたし限定かもしれないが。

 それでも、外見が美しければ、そんなもんぶっ飛ばして注目せざるを得なくなるんで、やっぱまず男に見える着こなしが最重要課題か。
 小柄な子はその身長ゆえにさんざん「男役としてかっこよくない」と言われながら、工夫して色男になっていってる。体型ってのは技術で補うことができるので、がんばって欲しい。
 
 
 彼はこの時点ですでに88期の新公主演者、WS主演者3人を抜いた扱いが決定している。プログラムの扱い、単独バウの主演。真意はどうあれ、年功序列を表向きはなかなか崩さないタカラヅカにおいて、ここまで簡単に性急に同組内でポジションを変えてくるのは、そうそうあることじゃない。

 トップスターになることが彼の宿命ならば、その宿命を眺めたいと思う。
 宙組の先代のトップスターもまた、入団と同時にその宿命を背負い、キラキラ笑顔の下でいろんなものと戦ってきた人だった。
 当代のトップスターは反対に、路線外認識から長い時間を掛けて真ん中へたどり着いた人だ。
 いろんなキャラクタがいることが、タカラヅカのおもしろさ、素晴らしさ。
 ジェンヌ人生は一通りではなく、ジェンヌの数だけあっていいと思う。

 だからあとは、これからカチャがどんなスターになっていくのかが注目事項。
 学年相応、ではなく、立場に相応しい実力とかハッタリとかを身につけてほしいと思う。

 自分が前にナニを書いたのか、細部まではおぼえていないので、『Paradise Prince』新公の感想を今になって読み直してみたんだけど、今回と同じこと書いてるよ、オレ……。

>『殉情』でふつーの若者としてあんなにかっこよかったのに、スーツ姿になると
>やはり衣装に「着られている」感が強く、技術がないわけではないのに「女の子
>の男装」になってしまう。体格のハンデが大きいのかな。

 早くスーツを着こなせるようになって欲しいなあ。いやその、すっごく一途に作って、演技していたことはわかるんだけれど。そのがんばりはあっぱれなんだけど。
 がんばっていることが見えないように、ふつーに男として舞台に立ってくれるといいな。
 『雪景色』、主演以外の人たちのことなんぞを、さっくりと。
 

 3幕通してのヒロイン、みみちゃん。

 かわいい。

 ほんとにきれいな子だ、タカラヅカのヒロインという記号を満たす美しい娘役。
 記憶にあるより歌も演技も良くなっている。
 現時点で大劇場ではちょっと地味な感じがするんだけど、バウでは問題なくヒロインだわー。
 このまますくすく育って、美しいヒロイン役者になってください。

 
 で、谷落語モノ作品の影の主役、汝鳥サマ。家主さんは『くらわんか』のあの家主さんだよね(そーいや幽霊の小糸も『くらわんか』の小糸さん?)。うまいわかわいいわ、ほんと素晴らしい人だ。
 汝鳥さんがいてくれてよかった……。
 

 そして、お帰りなさい、ナガさん。

 元気な姿を見られてうれしい。
 ナガさんは芝居はうまくないんだが(すみません)、やっぱり舞台人として目立つ存在の人だもんね。あの通りの良い声でびしりと締めてくれると気持ちいい。

 
 さゆちゃんがもお、うまくて貫禄で迫力で……どこの専科さんかと。

 大劇娘役2番手、新公ヒロイン、バウヒロイン、DCヒロインと独占しまくった人が、その豊富なキャリアを活かして別格として舞台を支えてくれるのは本当にありがたい。
 体型的にヒロインは向かないんだが、脇の女役となるとここまで華やかで頼りがいがあるのかと感動。

 ただあまりに貫禄がありすぎて、ちぎやコマと「幼なじみ」という2幕目の設定は無理があるように見えた……(笑)。
 3幕の姫の身代わりで死ぬ侍女役は、ぱっと目を引く華やかさ。晴れ晴れとした歌声が、さらにあわれを誘って泣けたよ。
 

 でもって、がおりくん。
 谷せんせ、ナニ気にがおり好きだよね?(笑)

 谷作品で新公主演は伊達ぢゃないなー。地道に実力派、のがおりくんを、実にうまく配置している。
 1幕の歌う旦那(悲鳴なのに歌声・笑)の愉快さ、そしてなにより3幕の落武者ソロ。カーテン前で1曲歌いきりだよ、1場面ひとりで担ってるわけだよ、すげースターっぷりだぞヲイ(笑)。このバウでは2番手ポジションなのか。
 やー、人のいい旦那さんも、落武者もステキです。つかかっこいいよねー。

 
 しゅうくんは茶屋の婆の怪演がすごい。つか、ふつーに誰かわからなかった……そもそもしゅうくんが出演していることも知らなかったしなー。大きなカラダをふたつに折って、実にたのしそーに演じていた。

 で、最近しゅう&がおりはいつもコンビで使われてるけど、需要はあるのか?
 男ふたりのコンビっつーと、ふつーは萌え狙いのユニットなわけだが、しゅうくんとがおりくんで萌えている層はどのへんに、どれくらいあるんだろう?
 単品での魅力が、ふたりセットされることでさらに何倍にも乗算されてこそのコンビ売りだと思うんだが、このふたりってそれほど相性が良いように、今のところ思えないんだが……。その、ぶっちゃけ、地味で。
 彼らには、派手めのキャラとコンビを組ませた方が、双方映えると思うんだよなあ。
 つか、演出家が「上からと下からと順番に配役したら、たまたまいつも中堅のこのふたりが残ったので、並べて使っている」感じがして、その消極的なコンビ結成事情が透けて見える気がしてしょぼんだなあ、と。
 勝手にわたしが思っているだけで、世間的に「しゅう&がおりは将来のオサアサよ!」とか「雪組ファンは第2のテルキタとして見守っているのよ!」とかゆーもんなのかもしれませんが。
 たまには、別の人と組んでいる姿も見たいです……と思ったら、フィナーレは、汝鳥さんや組長とデュエットダンスしてるし。
 他の子たちは男女ペアで踊ってるのに、しゅうとがおりだけは、おっさん相手に女役ポジで踊ってますがな青天で!!

 ……演出家は、このふたりをどうしたいんだ……(笑)。

  
 谷せんせのバウは生徒を鍛える場なんだと思う。出演者はかなりしぼられると聞いたことがあるが、主役とそれ以外の扱いの差を、どうかと思う、毎回。
 主役の比重がものすげー大きく、出ずっぱりの喋りっぱなしがデフォ。されどそれ以外は通行人や群舞要員。
 前回の『やらずの雨』のときも、「下級生ただのモブじゃん」と思ったけど、今回も似たよーな印象。
 歌をもらっているさらさちゃんや、役替わりというというにはアレな出番のまるまるトリオはまだマシな方か。まなはるも役名あっても出番あれだけだし、役替わりのある下級生娘役ちゃんなんか、まともに顔も見えないし(走り回っている+客席側にろくに顔を向けない)。

 まるまるトリオ、とひとまとめにしちゃってごめん、後方席からオペラ無しで見ると、ほんと区別つかなくて。3人ともとにかく、丸い。若いから仕方ないんだろうけど……同じくらいの学年でそこまで丸くない子も多くいることを思えば、やはり丸いんだと思うよ。
 
 トリオのなかでいちばんうまいのは、もちろんりんきらなんだけど。咲奈ちゃんもがんばっていたけど。
 
 脇のおじさまを目指すならいくらまるまるむちむちでも構わないと思うんだけど、真ん中寄り・美形役で配置されている以上は、立場や役に相応しいビジュアルが欲しいっす……。
 あの幽玄の美に満ちた3幕目、美しい兄が死に、生き残った美しい弟が守り共に生きる若君がまるまるぱつんぱつんな人だなんて……設定では美青年(美少年)なんぢゃないの、若君って?! おでぶ設定ではないよね? や、彼の影武者もまるまるでオペラ無しだと区別つかなくてまさに影武者だったから、そのへん正しいのかもしんないけど!
 そこだけがすごく残念だったナリ。や、ほんと外見だけの話だけど。でもここタカラヅカだし!
 やせてさえくれたらきっと、みんなきれいな子たちなんだと思う……。
 
 
 あ、『忘れ雪』で「みっさまとケロを足しっぱなし」だと思った彼は、ケロ部分がぬけてとってもみっさま風に見えました。

 まあそんなこんな。

 ま、それはともかく、『雪景色』

 コマちぎW主演で、役替わり公演。

 このふたりの個性の差が、おもしろかった。

 あくまでも私感で、ふたりの感想を語ってみる。

 わたしが最初に観たのは「ちぎコマコマ」で、次が「コマちぎちぎ」。
 最初に観た方が刷り込まれてしまうのは仕方ないことかもしれないが、「ちぎコマコマ」か、あるいは「ちぎコマちぎ」が好みかな。

 1幕目「愛ふたつ」は、小四郎@ちぎ、三五郎@コマの方が好き。
 2幕目「花かんざし」は、伊左次@コマ、吉蔵@ちぎが好き。
 3幕目「夢のなごり」は、三郎@コマ、四郎@ちぎが好きだけど、逆でもいい。

 意外だったのは、コマの方が、芸風が「二枚目」だったことだ。

 わたしはずっと、コマは三枚目系の人かと思っていたんだ。『ノン ノン シュガー!!』千秋楽とか、体当たりで笑いを取ってきた人だし。ハマコといろいろかぶる人だし。

 そして、ちぎくんは外見の美しさから、まんま二枚目役者だと思い込んでいたんだ。

 1幕と2幕のふたつの話の役替わりで、ちぎくんは、とても軽やかに「二枚目以外」を演じていた。

 1幕目の、間男認定後の三五郎役、最初観たコマがとてもかわいらしくどーしよーもなくちょこんと存在していたので、ちぎくんもさぞかしかわいいだろうなと思っていたんだ。
 そしたらちぎはそんなしどころのない役作りではなく、えらく積極的に笑いを取りにいっていた。
 コマが受動態でおかしみがにじみ出ていたのとは対照的に、ちぎは能動態で笑わせていた。

 あれえ、三五郎ってこんな役だっけ? コマとちぎでは、性格チガウ……!

 小四郎は笑わせてなんぼの役だから、どっちも積極的にやっていたけれど、それでもやっぱ、ちぎくんの方が崩し方が派手だったと思う。
 あとから観たコマで、「あれ、こんなもんだった?」とおとなしさに首を傾げたもんな。
 
 2幕目の岡っ引きの吉蔵役は、ちぎくんの軽やかさが好きだ。
 「いなせ」という言葉が似合う。
 ひとりでべらべら喋っても、アツクルシサがない。涼やかで心地よい。

 コマくんは微妙に重いんだよなー(笑)。あれだけひとりで喋って押しつけがましいキャラなので、重みがあるとちょっと余分に感じる。

 反面、コマの伊左次はその重さがいい。無骨な感じが役と相俟ってシリアス度というか、深刻でえーらいこっちゃな感じが高い。ものすごく大事を抱えているように見えるのね。その深刻さがいかにも二枚目っぽい。

 ちぎの伊左次は姿が二枚目。あまりにすっきり涼やかな美形なので、背景が見えづらい(笑)。暗さや「犯罪・秘密」に関わる屈折があまりなく、物語が軽くなる気がする。や、重すぎる必要もないので、コマと比べると、というだけ。

 わたしの好みでは、重くシリアスなコマ伊左次と、涼やかいなせなちぎ吉蔵がいいな。

 
 3幕目については、すでに語ったけれど。

 三郎だろうと四郎だろうと、コマの演技の本質は変わってないのね。
 弟役のときの方が、ちょっと幼く作っている気はするけど。どっちにしろ、狂気じみていて、こわい(笑)。

 ちぎくんは、ニュートラル。
 平家物語をタカラヅカでやるなら、こーゆー子が主役で、こーゆー役をするんだよなあ、と思える。
 コマが狂気だの闇だのを色濃く表しているなら、ちぎは哀切を滲ませている。大きく嘆き悲しむのではなく、心の奥に秘めた哀しみが瞳に映り、胸を突かれる。

 ちぎの三郎も、とても好きだ。
 きっとやさしい男なんだろうなと思わせる。このやさしい青年が、集団自決を見守る……最後のひとりになるほどの覚悟を決めるのって、どれほどのことだろう、と思わせる。

 でも、ちぎの四郎は印象薄いなあ。すごく「ふつう」だ。ラスト。想像の範囲内というか、ほんとにただのエピローグ、後日談っていうか、主役とその物語が終わったあとです、って感じ。
 コマの四郎がこわかったからなあ。最後の最後でぐわっと持って行かれたというか、コマの方へ引き寄せられた。あ、こっちの子も主役だった、みたいな。

 ちぎ的には三郎の方が合ってるんだろうな。彼は「主役」が似合う。コマは四郎役でも十分「主役」に食らいついていく(笑)。
 でもコマの三郎も好きなんだよなー。

 だから3幕目は、どっちがどっちの役でもいい。どっちも好き。つか、両方観られてラッキー。
 
 
 それにしてもちぎの声が水しぇんの声に聞こえる(笑)。

 喋りまくる吉蔵@ちぎの声を聞きながら、オペラで伊左次@コマの顔をガン見していたら、まるで水くんの声を聞いているかのよーだった。

 あのいなせな岡っ引きを演じる水くんを見てみたいなあ、なんて思ってしまうくらいには、あの「声」に萌えた(笑)。
 吉蔵@水なら、伊左次@ゆみこだな……。しみじみ。

 それとコマも、なんかすごく「声」が格好良かった。
 コマの声ってこんなだった? いつもは、こもった滑舌の残念な声だと思っていたんだが……日本物だから? 今までなく、良い声だと思った。

 あ、そーいやこの伊左次だけどさあ。

 堅物の伊左次が何故罪を犯したか、なにを隠してひとり去っていこうとしているのか、それをみんなで問いつめていく話じゃん?
 幼いころ両親を失い、今の店に引き去られ、職人として修行している伊左次にとって、店主は大恩人であり、そんな相手の金を盗むはずがない。ではなんの目的があったのか。
 店のお嬢さん・お菊@みみちゃんは、自分との縁談を断る口実に盗みを働いたんじゃないかと詰め寄るよね。そんなに私を嫌いなのかと。

 わたしはずーっと、思ってました。

 伊左次がお菊との縁談を避けたのは、彼が真実愛していた人の娘だからだと。

 伊左次って、親方とデキてたんぢゃね?
 だってもーさっきから親方LOVEな話ばっかじゃん? 伊左次ってファザコンっぽいしさー、父親代わりの親方とああなってこうなってても変ぢゃないっつーか、なにしろ江戸時代だし? 親子ほど年が違うにしろ真剣につきあっていたのに、「俺の娘と結婚しろ」と言われたら、そりゃショックだわ。今さらナニ、オレ捨てられるの? 関係を無かったことにするかわり、身代継がせてやろうってか? 冗談じゃない、オレが愛してるのは親方だけだあああっ。
 と、わざと盗みを働き、江戸を追放される、と。

 そーゆー話かと思って見ていました、伊左次@コマ!!(笑)
 さすが親友、吉蔵@ちぎはなにもかもわかってて誘導尋問している?!(笑)

 「お菊ちゃんが欲しい」と花いちもんめ歌われたときに、びっくりしました。えっ、ほんとにお菊ちゃんの方だったの、好きだったのって?! パパの方じゃなく?!(腐発言はいい加減にしましょう)

 
 あ、そーいや吉蔵@コマは、登場するなり台詞間違えてました。
「妹のお菊ちゃんにも会わねぇで……」

 妹は、お市ちゃんだっ(笑)。
 世間の評価はともかく、実はわたし、谷せんせの落語モノが苦手だ。
 単にわたしは「笑いツボ」が少なくてな。人に迷惑を掛けることや人を騙すこと、人が不幸になることを笑うことができない。
 たとえば三五郎がひとりで全部酒を飲んでしまい、米やんには一滴も飲ませない……とかは、笑いよりもイラっとしてしまう。
 現実にあーゆー人がいるとか、それをことさら大袈裟に滑稽に表現しているのだとか、ごたくはいらん、ただわたしは好きじゃないっつーだけ。
 それは過去の落語作品でもそうだった。

 それでもまだ、萌えのあった『くらわんか』や、やさしい前提のあった『なみだ橋えがお橋』は好きだったし、好きとはいえないもののタカラヅカ的な部分もあった『やらずの雨』はアリだったかなと思う。
 それぞれ、笑いツボが合わず、かなりイラっとしたり不快だったりもしたんだが(笑)、それを乗り越えられる部分があった。

 されどこの『雪景色』

 3本立てなんだもん。

 今までは笑いツボが合わずイラっとした部分を、人情やシリアスな場面で乗り越えられたのに、ソレができないんだもん。

 1幕目「愛ふたつ」。
 小間物屋の小四郎@ちぎ&コマが行商に出ている間に、家主さん@汝鳥サマのカンチガイとお節介で、小四郎が死んだと信じた妻・お咲@みみちゃんは三五郎@ちぎ&コマと再婚してしまった。小四郎が帰ってきたからさあ大変、新旧の夫と妻ひとり、お奉行様@ナガさんに裁いてもらうことに……。

 2幕目「花かんざし」。
 親方の金を盗んだ罪で江戸追放になった飾り職人の伊左次@コマ&ちぎ。堅物正直者の伊左次がそんなつまらない罪を犯すとは思えない、その真実はどこにあるのか……をめぐる物語。

 3幕目「夢のなごり」。
 平家の落武者一行の、華麗かつ壮絶な集団自決物語。前に書いたから割愛。

 笑いとは、いちばん感性の差異が出るところかもしれない。1幕目は、わたしには別に笑えなかった。
 で、笑えないと、すごくつらい。この話(笑)。
 汝鳥さんの個人芸にはくすりとさせられるし、キャストへの愛着から微笑ましさは感じるけれど、「作品」は笑えない。

 初見時は「この伏線はどこにつながるんだろう」とか、構成面に気を取られていた。
 で、伏線でもなんでもない、ただの「笑わせるためにやっただけ」だとわかり、盛大に肩を落とした。
 本筋と関係ない、ただ笑わせるためだけに滑稽なことをするって、アンフェアだと思うんだけどなあ。

 怖がりの小四郎と幽霊の話は、本筋になんの関係もなかった。
 特殊メイク?のおばば@しゅうくんも、情けなくみっともなく振る舞う小四郎も、ただ「笑わせるためだけ」に存在する。「愛ふたつ」という物語には関係ない。
 おばばの話す幽霊話がなにかしらキーとなって、後半にどんでん返しがあるならともかく。

 無意味な三五郎と米やんの場面といい、ただ「ネタを羅列した」だけじゃん。

 笑えれば、ギャグに次ぐギャグの応酬で息をつく間も疑問を持つ間もなく笑い転げてさくさく進む、ってことになるのかもしれないが、そーゆー外部の小劇場系の芝居でもないし。
 まったりとスローペースでネタの羅列されて、しかもそれが笑えないとなると、きついわー。

 三五郎にしてもあまりに唐突な登場で「誰?」だし。

 めちゃくちゃなオチに終着するために、めちゃくちゃが通る世界観を構築する必要があったんだろうけど、それぞれが寄せ集めすぎて、「世界」に酔えない。
 羅列するだけなら誰でも出来る、箇条書きするだけなら素人でも出来る。「物語」まで練ってくれよ。

 今までの谷せんせの落語モノも、まあ大差ない作りなんだけど、それでもこの「笑えない、ただの箇条書き」を、人情とか愛とかで包んであったのね。
 笑えない部分は、わたしはひそかに引いていたんだが、人情部分で底上げされて結局のところ「いい話だわ、ほろり」としていた。単純っすから!

 しかし今回は3本立て。
 「笑い」「人情」「愛」を別々の話で描いてあるもんだから、わたしの苦手な「笑い」だけで独立されてしまった1幕目が、つらい。

 人情のなかでネタの羅列をするならまだアリだったのになあ。笑わせたあとでしんみりじっくりほろりとさせるのはアリなんだけどなあ。
 「愛ふたつ」って、オチまでお笑いじゃん……。

 ファンタジーだとわかって観ているので、小四郎の簡単ぷーな心変わりもアリだと思ってはいるけど、好きな話でもオチでもない。

 
 じゃあ人情だの自己犠牲だのを描いた2幕目「花かんざし」が良かったかというと……ストーリーはともかく、演出をなんとかしてくれと思うし。

 一方的な会話劇。
 伊左次はなにも喋らず、出てくる人たちが次々説明台詞押し付け台詞を垂れ流す。
 それならいっそ、舞台にひとりずつ出て真正面向いてひとり芝居みたいにしてやってくれる方が、ミステリめいていて良かったなと。
 徐々に真実が明らかになる展開なのに、ちっとも活きていない。

 同じトーンで湿った台詞を垂れ流すのが「人情芝居」なんだろうか。

 初見は泣いたけど(単純・笑)、じゃあこれを何回も観たいかというと、おなかいっぱい、もういいです。この演出だと胃もたれします。

 や、コマ&ちぎはじめ、雪組っ子たちは熱演で、彼らを観るだけで楽しめるんだけど。
 コマかっこいい! とかよろこんで観ているわけなんだけど。
 それとは別に、作品が、ね。

 
 3幕目「夢のなごり」だけが、ダイスキだ。3幕目だけなら何回でも観たい、と思った。

 でもこれはわたしのツボだったっつーだけで、やっぱりいびつな構成だよねえ。
 最初のきつねさんたちの騒ぎはアレ、「下級生にも出番が必要」ってだけ? 本編と乖離していて、1幕目と同じその場しのぎの羅列っぷりを感じたんだが。

 
 3本立てというのが、すごく「言い訳」に感じるんだ。

 やりたいネタをきちんと料理して1本の長編にするのを放棄して、おいしいとこだけ手軽に書きました、みたいな。
 都合の良い二次創作みたいに。
 わたしがよくヅカ作品の一部だけ都合良く抜き出して、SSを書くよーなもんで。

 自害することに恍惚を感じる谷せんせが、集団自決する人々を書きたいと思ったとしよう。
 でもその「書きたい」場面を書くためには、彼らがどうしてそこへ行き着いたか、最初から最後までストーリー作って出来事を書いて、表現していかなければならない。
 そーゆーしんどい作業はまるっと投げて、書きたい場面だけ書いて終了。だって3本立てだもん、短編だもん。
 今までの落語モノでは、笑わせることも泣かせることも、全部1本の長編の中に組み込んできたけど、「短編を3つ」にしてしまえば、なんの苦労もなくやりたい場面だけ書ける。
 笑わせて泣かせるとか面倒なことしなくていい。笑いは笑い、泣きは泣き。
 ミュージカルも会話劇も舞踊劇も、ひとつに組み込むのはバランスも構成も大変だけど、別々にしてしまえば楽ちん。

 てなふうに、わたしにはあまり良い意味に取れなかったんだな、今回の3本立て。
 3本立てだからこそ、あえて色を変えた、というには、どれも作りがチープ過ぎて。
 短編3本一気上演つーのは、長編3本書くのと同じ気合いで臨まないと、全体のクオリティが落ちるだけだと思うんだ。
 大劇場で2本立て3本立てをやるとき、演出家が全部ちがっているように、ただ時間を2等分3等分しただけではなく、1本の独立した作品を並列に上演するもんなんだから。

 3本立てで3度オイシイのではなく、3倍に薄まった作品を創られてもこまるなあ、としょんぼりした。

 質より量?
 「1本でも好きなモノがあれば、通ってね」ということ?

 なら成功してるのかな。わたし、3幕目だけはものすごく好きよ。 
 わたしはびんぼーである。
 いいトシこいた大人が胸を張って言うことではないが、ものごっつーびんぼーである。
 だから、いつも観劇回数は減らそうと思っている。

 贔屓の出る公演は回数観ても仕方ないが、それ以外の公演は控えようと、いつも思っている。
 ただでさえ雪組観過ぎだから、反省してあまり観ないようにしよう、と思っている。
 特に本公演でもない、ものすごーく好きな子が出ているわけでもない日本物のバウ公演なんて、1回観ればそれでいいわ、と思っていた。や、コマもちぎも好きだけど、ふつうに好きなだけだし。
 W主演で役替わりなのはわかっているけど、びんぼーが深刻なの、1回しか観られないわ。下調べせずに1回だけ観て、誰が主役のパターンとか気にせずにたまたま行った日のパターンで我慢しよう。

 てなぬるさで観に行って、それがたまたまAバージョンで。

 まさかの、コマ萌え。

 あまりにコマが素敵すぎて、くらくらばくばくしまくって、うろたえた。

 コマが素敵なんぢゃなくて、役が素敵なだけぢゃないの?
 そうよ、あの役がわたし好みだったってだけかもしれないわ。コマごときにわたしがめろめろになるなんて、そんなことありえないわっ。

 という懐疑心ゆえに(笑)、前言撤回、「『雪景色』、もう1回観るもん!!」になった。

 で、Bバージョン、1幕コマ、2幕ちぎ、3幕ちぎが主役。
 やー、コマがあんなに素敵ぢゃなかったら、こっちのバージョンは観てないですよ、マジで。

 何日欄もかけて「コマかっこいい」ばかり書いてますが、ちぎくんがかっこよくないという意味ではまったくないっす。

 「かっこいい」とか「美形」とかゆーなら、ふつーに考えてもちぎくんの方が上だ。
 わたし、ちぎくんはすげー美形だと思ってます。美に対する認識や感覚は個人差があるから、わたしがそう思っているからって世の中のすべてがそう思うとも思ってないが、一般的に見ても、ちぎは美形だよねえ。すごく整った、美しい人だよねえ。最初に見たときから美形だと思ってます。
 だから、ちぎくんが美しいことは常識だったので、こうして主演舞台を見てもそれほど驚きはなくて。
 やっぱりきれいでかっこいいわあ、てなもんで。
 わたしが語るまでもない、世界の常識ってことで、特に語ってません。つか、彼のことはまた別に書くとして。

 今は、コマの話。

 わたしがここまでコマにくらくらキタのは、3幕「夢のなごり」が美しかったから。作品と役が、好みだったから。
 では役がちがえば、どうだろう。
 壮絶に自刃する三郎役がちぎなら、やはりちぎにくらくらしているのだろうか。

 それを確かめるために、びんぼーなのに2回目の観劇に出かけた。

 そして。

 ドツボにハマッて帰った(笑)。

 ダメだ。
 やっぱり、コマが格好いい。コマが素敵。

 役の問題ぢゃない。つか、役に意味はない。コマだ。やべえのは、コマ自身。

 むしろ、役替わりを観てトドメを刺された(笑)。

 というのもだ。
 三郎@ちぎは、明らかにちがうんだ。コマの三郎とは。

 その違いにて、何故わたしがコマに惹かれ、ちぎくんに食指が動かないかを、明確に如実に突きつけられたんだ。

 三郎@ちぎは、正常な人だった。

 狂ってなかった。
 ふつうに、まともに、こころのあるひとだった。

 健康な人だった。

 闇はなかった。毒はなかった。

 自刃する仲間を見つめる瞳には、痛みがあった。冷静に務めながらも哀惜の念が滲んでいた。
 あ、この人まともだ。
 この人の魂は病んでない。
 こころただしいひとが感じるだろうことを感じ、たましいが動くままに動いている。

 人間外だったコマとはチガウ。

 姫@みみちゃんと舞い、死んでいくところも、ちぎくんは健康だった。身体がではなく、魂が健康だった。

 とっても「タカラヅカ」だった。
 美しくて、安心して観ていられた。

 やっぱちぎくんは真ん中の人だなあ。
 この健康さは、真ん中を生きる人に必要な光だよ。

 自殺する役だから病んでいるのかと思った三郎が、とても真っ当な真っ直ぐな人で。
 そして、生き残る弟・四郎@コマが、病んでいた(笑)。

 兄を含め仲間たちすべてが壮絶に自害して果てたあと、若君@りんきらを連れて逃げる三郎は、源氏の追っ手だと思っていたものがチガウ、カンチガイだったと気づく。
 兄たちは、犬死にしたのだと。

 その瞳に宿る、狂気。

 またしても。
 そこで、コマくんの表情だけで、瞳だけで、ぶわっと涙が出た。
 心臓ばくばくして、治まらなかった。

 ダメだ、認める、オレ、コマ好きだ。
 コマオチした、完敗宣言。
 ここまで好みの演技されたら、どーしよーもない。

 それと同時に、役がちがっても、演技同じかよっ?! と突っ込んだのも事実(笑)。
 演技してないだろ、持ち味だけでやってるだろ(笑)。

 まあ反対に、どっちの役やっても大差ないと思える「まんま」さは、ほんとコマ個人を好きだってことだろう。

 狂った役をやると、こんだけ狂える人だったんだ……。

 闇とか毒とかを表現できる役者は、ヅカには少ない。
 夢の世界を織るタカラヅカには、そんな素質は不要だからだ。そっちの成分が濃い人は真ん中には向かない。そのテの気配を根本的に嫌う人、拒絶反応を持つ人が多分に存在するためだ。
 トウコとか、拒絶反応持つ人が少なくなく、またそーゆー人の反応は激しかったなあ……。

 健康な光を大部分とし、少しばかり毒を持つ、ぐらいが配分として正しいと思う。真っ白なだけだと「いい人」で終わってしまうから。たかちゃんとか、あさこちゃんあたりの濃度がバランスいいんじゃなかろうか。

 コマは今まで興味の対象外(ごめん)だったため、彼の闇濃度を気にしたことなかったし、天下の死神トート閣下をやってあんなに笑わせてくれた人だから、そっちは向いてないのかと思っていたよ。
 まあ、トートで闇全開にしたら洒落にならんから、歴代トート閣下もあんまし闇だの毒だの全開にした人はいなかったなと思うが。(オサ様ぐらい? でもあの人の演技、日替わりだったし・笑)

 とにかく、目からウロコでした。
 こんなにこんなにコマが素敵だとは。
 好みど真ん中だとは。

 ……人生ナニが起こるかわからんねえ。やっぱ、どの公演もちゃんと観なきゃダメだな。
 って、だからあたしはびんぼーなんだってばっ。
 まっつファン的に『相棒』の配役が発表されたことと、『相棒』青年館チケットの友会抽選結果がわかったことで、わたしはどーしたもんかとアタマを抱えております。
 『相棒』という作品と、なにより演出家がイシダせんせであるということがネックになり、まだチケット1枚も持っていない状況で、東京遠征するかどうかなんてわかんないよぅ。観劇して絶望して、「もう2度と見ないっ」とかゆってる可能性もあるんだから。
 と、まことに悩ましい状況です。

 それよりもキモチはみやるり新公主演の方に傾いていて、そっちのチケ取りの方が急務っちゅーか。

 その昔、ベニー新公主演が発表されたときの祭り再びな感じ。
 2008年5月9日の記事に、

>星新公主演がベニーだっつーんで、仲間内祭りだし(笑)

 と書いているよーに、今回も仲間内で盛り上がってる。

 みやるりは好きだ。甘い美貌と、それを裏切る低い男っぽい声。温度が見えにくいわりに、実は奥でめらめらしてそうなとこ(笑)。好きな子が活躍の場を与えられたことがうれしい。
 と同時に、ひとりっ子政策反対であるゆえに、みやるりが最後にすべりこみ主演してくれるのがうれしくてならない。ひとりっ子政策渦中にある、真風個人がどうこうではなく。

 や、ほんとは今年度の新公主演は、89期のみやるりとしーらんで1作ずつ分け合って欲しかったんだよ。
 今のご時世、新公主演したからといって「トップ路線」になるかはわからない。つか、ならない場合の方が多い。
 だけど、とかく若者の成長が遅いこの現代、新公卒業後に魅力が開花する場合だってある。そんなときに、「新公主演の有無」で貴重な才能、金を稼げるスターを「路線じゃないから」と排除する余裕は歌劇団にはないはずだ。
 「新公主演したから路線にしなければならない」と義務とか枷とかマイナスな意味で捉えるんではなく、「これでもしも人気が出たらラッキー、そのときはスター扱いして稼いでやるぜ」と将来への投資だとプラスに考えればいいのに。
 判官贔屓な日本人は、劇団の庇護を所以とするひとりっ子に感情移入しにくく、人気につながらない、と思うんだがな。
 近年のひとりっ子で成功しているのはみりおくんぐらいかな。彼の場合も、まさおという悪役(笑)を置くことで、あからさまなひとりっ子のイメージを隠しているし。
 若い真風に新公主演を独占させ、彼より上級生全員に新公主演をさせないという状態では、彼にかなりの実力と魅力と説得力がない限り、逆風にしかならない。

 ふつーに、しーらんとみやるり、それぞれの主演が見たかったし、特にしーらんは1回でも主演させておけば、これから面白い舞台を見られそうなポテンシャルのある子なのになあ。
 ヅカ的に真ん中が似合いそうなのはみやるりで、キャラ的に真ん中が面白そうなのはしーらんだろう。ベニーと同じように。みやるりよりも、しーらんの方がなにかと派手っちゅーか華やかなキャラクタだし。
 
 と、個性のチガウ89期スターふたり。
 いずれ淘汰されるとしてもそれは今ではなく、もう少しこのふたりには同じ土俵で競わせてみて欲しかった。
 ……前回の新公が真風だった時点で、どちらか片方しか路線切符は得られないとわかっていたわけだが。

 星組はれおんくんの例に倣って、頑ななまでのひとりっ子政策に戻るのかと思った。真風くんの連続主演によって。
 それが今回みやるり主演とわかり、心からうれしいです。

 ヒロインはわかばちゃんかー。
 文化祭で美貌のお姫様役やってたねー。本公演他でもビジュアルの良さで目を惹く子だよねー。
 文化祭ではけっこー棒読みだったと思うんだが、あのお姫様役は前も「美貌だけど棒読み」な子がやっていたんで、わざとそーゆー役作りなのかもしれない、正塚的に。
 この記憶力のないわたしが判別できる貴重な下級生娘役、抜擢がうれしい。

 ……チケット、持ってないんだけどな、新公。

 ここんとこずーっと高確率で新公チケット友会で当たってたんだけど、「見たいっ」とゆーときだけ入手できていないのは何故っ?! あずりんのときもだし、みやるりのときもかよ?!(あずりんは主演ぢゃないでしょーに・笑)
 いやその、今回の星組は入力自体忘れ……ゲフンゲフン。

 最近ほんと忙しくてさあ。遠い目。

 書く予定のこともどんどん溜まっていくばかりだし。
 びっくりした。

2009/11/25

花組トップ娘役・桜乃彩音 退団会見のお知らせ


花組トップ娘役・桜乃彩音が、2010年5月30日の東京宝塚劇場花組公演『虞美人』-新たなる伝説-の千秋楽をもって退団することとなり、2009年11月26日に記者会見を行います。

なお、会見の模様は当ホームページでもお知らせ致します。

 退団の予感はあっても、発表が今日だとは思っていなくて、モバタカからメールを受け取って驚いた。
 となみちゃんの例があるので、退団発表があるならば発表はDC楽後かなあ、と漠然と思っていた。

 娘役の旬は短く、就任・任期にもタイミングやら運やら、目に見えない要素が山ほどある。
 そんななか彩音ちゃんは、若くしてトップになり円熟期まで過ごすことができた人だと思う。

 クラシカルで品のある、「タカラヅカ」の正統派タイプの美しい娘役トップスターだ。
 大作タイトルロールでの退団は、「有限の楽園」タカラヅカを卒業するに相応しいだろう。

 出来ないこともいろいろあったし、足りないともどかしく思うところもいろいろあったけれど、それでも彩音ちゃんだから見られた、彩音ちゃんだからときめいた役がたくさんある。
 オサファンとして、包容力や魔性を感じさせる役を演じたときの彩音ちゃんにどんだけときめき、また癒されたか。聖少女の清らかさと、妖女の毒を無意識に併せ持つ魅力があったんだよなあ。
 キハとか緑川夫人とか、娘役ではなく「女役」スキルの活きる役がステキだったのはたしかだが、わたしは聖少女役にこそときめいたな。
 クリスティーヌやマリー、ジャズの女の無垢な微笑みと知能や年齢とは無関係な包容力が、どんだけ萌えだったか……。

 だからまあ、キムシンが彩音ちゃんにアテ書きした『黒蜥蜴』はあんなことになっちゃったわけだけど。や、良くも悪くも的確ですよ、アテ書きっぷり。戦争なんてなかったら良かったのにね、お兄ちゃん。
 そのキムシンの『虞美人』で、どんな彩音ちゃんに会えるのかを楽しみにしている。
 その前の『相棒』ポスターのコケティッシュさもステキだしさ。

 
 彩音ちゃんもトップになってからもう丸3年以上、つか、退団時には丸4年以上、5年目に入ってるんだねええ。
 そんなに経つのか……時の流れは速い……。
 いつか別れは来るし、4年というのは区切りになりうる期間だと思うけれど、別れはやっぱりさみしいね。

 過去を振り返ってしみじみしちゃうよ。
 『TUXEDO JAZZ』もう一度見たいなあ、あのまんまのキャストで。あのまんまの光と闇と混沌で。
 『EXCITER!!』は全部で11回観劇です、はい。やっぱフタ桁いったか……。芝居がアレだから観劇回数減ると思ったんだけどなー。

 やっぱダイスキだ、『EXCITER!!』。
 東宝楽、いつもまっつしか見ない場面も、できるだけ全体を見たり、マメを見ていたりした。

「前に観たときが貸切だったから、ゆまちゃんのカツラがアフロじゃないのをはじめて見た」
 と言っていたのは、前楽観劇のkineさんだっけ。
 みつるとふたりで銀橋を渡るときのゆまちゃん、貸切のときは思い切ったアフロヘアなんだよねー。最初に目撃したときは目が点になった……のに、誰も笑わないし反応しないしそのままスルーされて、客席でひとりじたばたした(笑)。
 美人だから、アフロでも笑いにならないんだよねえ。もちろん、いつも髪型の方がなお美しいんだが。

 ところでこの、白い衣装のゆまちゃん。『ドルチェ・ヴィータ!』のかのちかちゃんの衣装かな、とひそかに思っているんだが(笑)、チェリさんが最初に観劇したときに、すげーことを言っていたんだな。
 「ゆまちゃんの、胸が」……ゆまちゃんの美貌と豊かすぎるバストを愛でるのは誰もが同じ、だからここで胸の話をする人は少なくないと思う……が、「胸が衣装の脇から見えるのがすごい」と言ってのけるのは、なかなかナイことではなかろーか。

 この場面、みつるくんの目の下のシワを愛でるのに忙しかったわたしは、「ちっ、ゆまちゃんの衣装、あれじゃ谷間が見えないわ」と自己完結してスルーしていたんだが……衣装の、脇ですと?!

 それ以来、銀橋で踊るゆまちゃんの脇に注目ですよ。……ホルターネックゆえ脇から背中が大きく開いているわけで、胸の丸い膨らみがその衣装の脇から見えるという……え、えろい……エロいですよ、ソレ……。単純に谷間を見せるより、巨乳っぷりがわかるというか。
 チェリさんすげえな、よくそんなとこ見てるよなー。(ヲヅキファンでゆまファンってことは、共通項は巨乳?)
 
 この天才デザイナー@はっちさんの場面はみんな好きだ。
 ピンク娘ふたりもすげーかわいいし、銀橋を渡る5組のカップルもそれぞれ個性的で、ニクイ演出。
 まぁくんと実咲ちゃんの「若さスパークリング♪」で「ママの目を盗んで♪」なカップルぶりが、実はものすごーくツボにハマッている(笑)。いいよなー、あーゆー若さってさあ。郷愁。

 
 ところで、らいらいの投げチュー大安売りぶりにウケたんですが(笑)。
 ウインクは振付に入っている(フジイくん……・笑)らしいので、特になんとも思わないんだが、投げチューまでやってくれるとテンション上がりますな。
 らいは相変わらず、自分を世界一の色男だと思っている節があるのが、大変素敵です。
 ……ちくしょーっ、たしかにいい男だよヲイ。

 らいといえば、ハバナでまっつと絡むときの体格差が、わたしのひそかなツボなわけです。らいでけえ、縦にも横も! そしてまっつちっこい、縦にも横にも!(笑)
 らいがまっつを抱き込む……他になんて言うんだ? 暴れてるまっつをカラダごと止めようとするらいと、それを吹っ飛ばすまっつの無理のある演出が好きだ(笑)。

 
 ファヌン様降臨場面で、「みんなケンカはダメだよー、仲良くしなきゃ」な展開で、舞台構成上の粗っちゅーか、「風呂敷は広げるけどたたむ能力ナシ」のフジイくんらしくやりっぱなしだった、ムラ公演。
 まっつ中心の画面しかわたしの中にないんだが、東宝楽ではストーリーに沿った決着がつくよーになってました。

 横恋慕と浮気心ではじまった争乱に、いつもの人類愛だの再生だの新世界やっちゃうフジイくんの「神の手」が降りたあと、まっつはいきなり恋人のれみちゃん放置して、マメのカノジョのはずのじゅりあと抱き合っていた、ムラの初日から半ばまで。
 ヲイヲイ、別の女に手を出す男がいたから、そしてそれに応える女がいたから、そもそもこんな騒ぎになったのに、改心したあとまた同じことを別の男女でやってるってナニ?! そこは恋人同士で抱き合わなきゃダメでしょう?! 人類皆兄弟っつー意味でも、恋人放置して他の女だけってのは、チガウだろ、と。

 フジイくんがナニも考えず思いつきで人員配置して盆を回したりしてるから、そんなことに。や、退団者の見せ場を配置することしか考えてなかったんだろうけど。

 ムラも後半になると、まっつもわざわざ離れた位置にいるれみちゃんと、アイコンタクトしたり軽くハグしたり、するよーになっていたが。

 東宝楽では、ちゃんと最初から恋人同士で喜びを分かち合っていたり、ケンカをしたらいらいとまっつが和解をしていたりしていた。
 すごい、ここでも出演者が自力で演出の粗を補っているわ!(笑)

 
 このハバナの場面で、だいもんがエロかった、と、終演後に友人から聞かされ、「千秋楽で言われても困るよ、もう二度と見られないじゃん!」「私も千秋楽ではじめて気づいたんですよ!」てな、不毛な会話をしました。
 相手役のくまくまちゃんの両手をふさいだままチューしたり、してたそうです。
 えええ、そんなだいもん見たかったよー!!
 聞けば、アーサーとめぐむの歌場面だった……あそこは高確率でアーサーを、たまにめぐむを見ているので、舞台中央は記憶にないっす……惜しいことをした……。

 だいもんはMr.YUのオフィスあたりでよく眺めてました。商品開発で歌ったあと、群舞にまざってからがまたいい感じにリーマンで(笑)。
 ハバナのエロだいもんも見てみたかった……。黒タキでキザっているのとはまたちがったエロだろーなと想像。

 
 いつかこのショーは全ツで再演したりするんだろーな。
 溜息銀橋はきっと、まとぶさんひとりで客席練り歩きお色気タイムになるんだわとか、想像してみる(笑)。や、全ツ出演者のスター上から3人で客席降りでうふんあはんcome on!やってくれても、さらに豪華かつとんでもなくて素敵だけど(笑)。
 こんだけたのしい派手なショーは、今の使い回し事情から察するに、きっとまたどこかで会える。

 それでも、今の花組で、今のみんなで、このショーを楽しめたことがうれしい。

 本当に、楽しかった。良い作品だった。
 元気で、派手で、ギラギラで、そして、エロっぽくて(笑)。
 クリエイターとしてのフジイくんが息切れしていることもよく見える、粗も穴もあちこちある作品だけど、それでも、楽しくてしょーがなかったことは、事実。

 ありがとう。
 東宝楽。
 友人のドリーさんとパクちゃんは、「ブイエ将軍が酒場でオスカルの身分をバラすのだけがわからない」とゆーてました。
 何回も観ることで、あのものすごい『外伝 ベルサイユのばら-アンドレ編-』にも耐性を付け、出演者のがんばりを愛でられるよーになったツワモノをもってしても、ブイエ将軍@星原先輩の行動が理解できないと。
 善人として描かれている今回のブイエ将軍。オスカル@みわっちのことを見守っているよーなことを言ってみたり、アンドレ@まとぶんの過ち選択を叱りとばし「聞かなかったことにしよう」とスルーする人格者でありながら何故、最初の登場時にオスカルを陥れるのか?
 女衒酒場……ぢゃねえ、マリーズ@彩音ちゃんの働いている酒場で、貴族に反感を持つ男たちに捧げるかのよーに、オスカルの身分をばらし、自分の身分は秘密にしてひとりで逃げる。オスカルがあそこで嬲り殺されるのを期待しているとしか思えない。
 あの場面は、たしかに謎。
 わたしも、初日に見たときにアゴを落とした。

 が。
 わかるよ今のわたし、ブイエ将軍の行動の謎。

 3回しか観ていない『ベルばら』の3回目はムラ楽で、しかもSS席だった。この公演中、最良の席。
 舞台に近い席だったから、聞こえたんだ。
「今晩はえらく荒れているじゃないか、美しき近衛隊士くん?」と、オスカルの正体をバラしたあと、意外な出会いにびっくりしているオスカルに、

「シッ、早くここを出るんだ」
 と、ささやいてるんだ、マイク無しで!

 世間知らずのおバカなオスカルをたしなめ、守ろうとしているのよ、あそこのブイエ将軍。
 「早くここを出るんだ」と付け加えることで、その直前の台詞もダークじゃなくなる。貴族のお嬢様のくせに治安の悪い場所で飲んだくれているアホさを皮肉っただけで、多少の悪意はあるとしても「オスカルが嬲り殺されればラッキー」という邪悪な衝動ではなく、年長者の親切心で言っているのだとわかる。

 ただ、おつむが若干お花畑なオスカル様は言葉の意味が理解できず、ぼーっとしているから、その後あんなことになるわけだな。

「アレって、そんなこと言ってんのか!」
「ナニか言ってるとは思ってたけど、聞き取れたことなかった!」

 そーなんですよ、びっくりですわねー。

「千秋楽にして、謎が解けた」

 や、わたしも謎が解けたのはムラ楽だし、そっから東宝楽まで観劇予定なかったし、同じ同じ(笑)。

 
 とまあ、出演者が総力を挙げて、植爺脚本のキ○ガイさをカバーしているわけですよ!
 星原先輩までが、アドリブで台詞付け加えたりして、キャラの人格を守ろうとしているんですよ!!
 星原先輩の自発的意志でやっていることなのは、マイクを切られていることでもわかりますな。本来はそんな台詞ナイんですよ。植爺には、あの場でブイエ将軍がオスカルにあんな声を掛けることの意味が理解できていないの。

 はい、ついに『ベルばら』4回目を観劇しました、東宝楽。花組っ子たちのアツいアツい演技を眺めてきました……つかみんな泣き過ぎだ(笑)。

 狂った脚本、狂った演出、それでも出演者たちは健気に心をつないで演技していました。

 東宝版を観て、いちばん感動したことは、カロンヌ伯爵夫人@さおたさん、かっけー!!でした(笑)。

 や、変更点があったことは聞いたよーな気がしていたが、なにしろもうすっかり忘却の彼方。『ベルばら』自体存在も忘れ気味で、ショーしかわたしの海馬に残ってなかったもんで、油断して観ていたらなんかアントワネット親衛隊の台詞が変わっていて、しかも親衛隊長のカロンヌの奥様がもー、すげー格好いいんですよ。
 ナニあの毅然としたオトコマエな大人の女性。絶対貴婦人たちに人気あるだろ、あの人。アントワネット様のシンパなのは建前で、「カロンヌの奥様萌え」でそばに侍っている貴婦人やお嬢様もいると見た(笑)。
 長身できりりとした風情、削げた頬のラインがストイックさを強調。きらきら系ではないものの、落ち着いた美しさがあるし。

 いやあ、この役が男役でキャリアばっちりのさおたさんがやっている意味が、よーっくわかったよ。
 ここまでかっこいい女性がかしずいているなら、王妃様の株も上がろうってもんさ。
 ……植爺は多分ナニも考えてないと思うけど。
 出演者が底上げしてるんだよなあ、ほんと。

 
 フェルゼン@めおくんの大芝居っていうか、ある種異次元入った演技も磨きが掛かっていて素敵だった(笑)。
 まともにやっちゃうと植爺フェルゼンってほんと最悪なだけだから。めおくんぐらいかっとばしてくれるとキモチイイ。
 そりゃこの男にナニ言っても無駄だ、人の話なんか聞いちゃいねえよ! と思わせてくれるのがイイ!

 
 まとぶんと壮くんはなにしろ植爺歌舞伎スキルの高い人たちだから安心して見ていられるし、みわっちは全身全霊でソレに食らいついていく役者スピリッツの持ち主だし、ラストスパートのエンジンの掛かりっぷりはもお、すごかったっす。

 衛兵隊も見事な号泣っぷりだし、酒場のみんなもはじけてたし。

 革命は鳥肌モノの迫力だし。
 
 
 休演者騒動もあったことだし、全員で舞台の上で一途に役を生きている姿に感動しました。
 タカラヅカってすごいね。タカラジェンヌってずこいね。
  
 されど心は『EXCITER!!』を心待ちにしている(笑)。

 日向燦が、美しい。

 えー、マメについては、わたしにとっての出会いから、印象の変化について何度も語ってきました。最初にスカステで見たときにそのまるっこさにびびり、「スカフェって美人がやる仕事じゃないの??」と首を傾げたところからはじまり、舞台でも三枚目一直線であることや、やっぱりまるいフェイスラインとオフのファッションセンスのぶっとび具合や挙動から「外見はアレだが、ハンサムも演じられる人」認識になり。
 最近では「マメ? いい男じゃん」と言い切れるよーになってきていたのだが。

 花組公演、東宝千秋楽。
 袴姿でひまわりのブーケを持ち、挨拶をするまとぶんを見つめるマメのナナメ45度ラインの顔を見ながら、その美しさに、見とれた。

 まぎれもない、「タカラヅカの男役」として美しい人が、そこにいた。

 マメの最後の挨拶は期待を裏切らない愉快なもので、その頭の良さに舌を巻いたし、実際大いにウケた。
 「日向燦を受け入れてくださったみなさま、受け入れざるを得なかったみなさまに感謝を込めて」……うん、ほんとにね、舞台に立つ人、公人であるということは、よくも悪くも観客の立場では受け入れざるを得ないわけで。好きでも嫌いでも、目に入る場所にいるということで。
 すべての人に愛される人なんかいない。光があれば影がある。
 それらをまるっとのみこんで、シビアな真理をさらっと笑いにして、マメはマメらしく卒業していった。

 多くの人が期待するままの「日向燦」を演じて。

 わたしは、ジェンヌとは舞台の上だけものだと思っている。
 もちろん、芸名でいる以上、オフであってもタカラジェンヌという「別のイキモノ」だと思っているので、彼らの背景まで含めて「虚構」だとわかった上で愛でている。
 だから、ジェンヌの真実の顔を想像するのは筋違いだと、自分をセーブしている部分はある。
 マメが本当はナニを求め、ナニを考えていたかなんて知らないし、想像が届くとも思っていない。
 マメが出てきただけで観客が勝手に期待して笑う、シリアスな芝居であってもそーゆー期待と先入観を客が持ってしまっている現状で、その期待に応え続けることを、彼がどう思っていたのかは知らない。「日向燦」というキャラクタを演じることは本願だったろうし、無理をして作っていたわけでもないだろう、それでもその心の奥に負担がなかったのかとか限界を感じなかったのかとかは、一観客であるわたしが考えすぎることでもないはずだ。
 マメがわたしたちに「見せたい」と思っている「日向燦」の姿を、舞台の上の彼を、ただあるがままに受け止める。
 それだけだ。

 マメは、最後までマメだった。「日向燦」だった。

 今までわたしたちが知っていたままの。

 アツすぎる舞台、やりすぎなほどの演技とダンス。
 シャンシャンに似せたお日さま色のブーケを受け取り、それを軽妙に振りながら歩く姿。
 マイクの前で溜息一発、芝居がかった台詞、「余は満足じゃ」。

 「地球に生まれて良かったー!」って、地球かよっ?! というツッコミも含めて。

 最後まで、きちんと演じ通した。観客を、裏切らなかった。
 徹底したエンターティナーだと思う。

 もっともっと、マメを見ていたかった。
 マメのマメらしいお笑いキャラもいいけれど、本当に見たかったのは、二枚目キャラだ。色悪だ。耽美だ。
 毒や狂気、野蛮さを演じられる「役者」だったのに。
 今はまだ、お笑い芸人としてのマメしか求められていないし、活躍の場も限られているけれど、このまま学年が上がれば色気のある大人の男の役割が回ってきただろうに。

 マメらしさを貫いて去っていくマメの、潔さと徹底ぶりに拍手しながらも、心残りが渦巻く。

 
 他の退団者たちもまた、美しい笑顔で去っていった。
 入りから出のパレードまで見届けたけれど、みんなみんなきれいだった。

 みずみずしくきらきらしていた嶺乃くん、いっぱい振り向いていっぱいお辞儀してくれた笑顔のまいちゃん、潔い挨拶と泣き顔のギャップがかわいいレネくん。

 彼らのあとに出てきたマメが、何故か万歳三唱していてほんっとに最後までマメらしくて……だけど袴姿で歩く彼は、とても、美しかった。

 会ったばかりのゆみこファンのお嬢さんと一緒にギャラリーしていたんだけど(なんでこう、世の中ゆみこファンばかりなんだ・笑)、「マメきれい」「きれいですよね」とふたりでさんざん口にする(笑)。

 哀惜を込めて、それでも清々しく楽しく見送っていたつもりだったんだけど。

 最後の最後、車に乗る前にマメは振り返って、沿道を埋めたファンたちに向かって一礼した。

 持っていたブーケをシャンシャンに見立てて、パレードの最後のお辞儀のように。
 いつもいつも、何十回、へたすりゃ3ケタは見てきたかもしれない、いつものお辞儀をしてみせた。
 袴姿で。

 沿道で。
 車の前で。
 最後に。

 決壊。

 笑って、見送っていたのに。平静に、見つめていたのに。
 最後の最後に、ナニをしてくれるんだっ。

 いつもの「またね!」の挨拶を、永遠の別れでするなあああっ(泣)。

 そのエンターティナーぶりがまた、マメで。
 拍手喝采を浴びて去っていくのが、マメで。

 その徹底ぶりに、機知の豊かさに舌を巻くと同時に、ヤラレタ、ちくしょお、という気持ちが残るのはなんだ。
 楔を刺していくというか、ああもお、アンタのこと一生忘れてやらないからねっ、と言いたくなるような攻撃をくらったというか。

 最後の攻撃でぶわっとわたしが泣いていると、一緒にいたお嬢さんも同じように泣いてるし。「アレはないよね」「最後のお辞儀はキた」……マメめ……なんて罪作りなヤツ。

 アンタなんか、アンタなんか、ダイスキなんだからねっ。
 そもそも友人ってのは、感性が似ている場合が多い。
 好きなモノや苦手なモノがかけ離れていると、話が噛み合わなくてつらいからな。
 だから、終演後に語り合う感想が似てしまっても仕方ないのだとは思う。
 思う……が。

「コマが格好良すぎるっ!!」

 と、『雪景色』終演後、ふたり揃って叫んだときは、「まさか」と思ったよ。
 だってあたしたち、並んで『エンカレッジコンサート』を観たとき、ふたりしてコマに大爆笑してたよねえ?
 『雪景色』観劇は、彼女は最前列、わたしはチープに後方で観ていたので、互いがどう感じて観ていたかなんてまったくわかってない。でも、劇場の外で落ち合ったとき、「コマ萌え」と同じ感想をわめくことになり、ふたりして顔を見合わせた(笑)。
 ヲイヲイ、また同じ感想なの? 男の趣味が同じ過ぎるのも考えものよ?
 しかし、

「あんなに青天が似合うなんてっ、かっこいいなんてっ」

 とわめく友人は、筋金入りのゆみこファン。……アータ、単なる青天フェチぢゃあ?
 青天だの町人着物姿を大絶賛するnanaタンとは、よかった、やっぱなにもかも一緒ってわけではないらしい。や、あまりにいつも同じ感想だと気持ち悪いじゃん、お互い(笑)。

 青天コマもかっこよかったけど、わたしは青天フェチではまったくないので、萌えたのは総髪の3幕目です。

 3幕目、タイトルは「夢のなごり」。
 平家落ち武者の最期を、歌と踊りで表現した美しい作品。

 つか、皆殺しの谷キターー!!

 最近丸くなったのか、めっきり殺し率下がってたので、忘れていたよ。そーだった、皆殺しの谷だった。人間の死、しかも自殺にこそ美学を求める人だった。
 昔なつかし『ささら笹舟』オープニングを彷彿とさせる、潔いまでの皆殺しっぷり(笑)。

 なにしろ、集団自決ですから。

 男も女も全員死にますから、自殺しますから。谷がいちばんエクスタシーを感じる死に方なんだろうなー。

 谷せんせの性癖だの嗜好・思考には物申したいこといろいろあるが(笑)、今はソレは置いておく。

 伊予三郎忠嗣@コマ、伊予四郎信嗣@ちぎ。
 このふたりの兄弟が、めちゃくちゃ美しい。

 武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり、とゆー思想に染まった若い男たち。
 三郎四郎(つーと漫才師みたいやな)の名の通り、彼らには兄がいたが、その兄たちはすでに華々しく死んでいる。生き延びることを恥とする彼らは、名誉ある死の瞬間を待ち望んでいる。

 彼らの使命は、主君である平家の若君@りんきらと姫君@みみちゃんを守ること。
 源氏の追っ手が迫った今、ひそかに主を逃がし、影武者たちと集団自決して果てたと追っ手に思わせなければならない。
 若君たちの護衛役はひとりでいい。あとは死ぬことで若君たちを守るのだ。

 この護衛役を、三郎四郎どちらかが務めることになった。それを、立ち会いで決める。

 白刃を手に斬り合う兄弟の、壮絶な美しさ。

 勝った方が死ぬる幸せを、負けた方が生きる苦しみを、得る。

 手加減なしの戦いで、勝利したのは、兄・三郎。
 四郎は若君と姫を連れてその場をあとにし、残った家臣たちはみな自刃していく。
 家臣のしゅうくんとがおり、友同士が互いを刺し、美しい袿をまとって高らかに歌う姫の影武者@さゆちゃんを老武士@汝鳥サマが斬り、返す刀で自刃し、あどけなく歌う若君の影武者@彩風を、三郎自ら手に掛ける。

 残った三郎が自刃しようとしたそのときに、逃げたはずの姫が戻ってくる。
 三郎と姫は愛し合っていた。三郎と共に死ぬために、その手で殺されるために、彼女は戻ってきたんだ。

 愛する姫を懐剣ごと抱きしめることで胸を貫き、姫の血に濡れた刃で自身の首筋を斬る。
 抱き合ったまま、ふたりは雪の中で事切れる。

 ……という、話。

 ここの三郎@コマが。

 好みすぎる。

 『春櫻賦』や『浅茅が宿』でさんざん見かけた衣装てんこ盛りで、画面的に目新しさはなかったんだが、とにかく最初から最後までコマちぎが美しすぎた。
 死の恍惚に取り憑かれた美青年ふたり。
 その破滅の影、濃密な闇の気配に息を飲む。

 が。
 なかでも三郎の闇の深さに、目を見張った。

 愛を語っているときですら、彼の瞳に深淵が見える。
 あの暗さはなに? あの毒はなに?
 途中から、彼から目が離せなくなる。

 もっとも震撼したのは、仲間たちの自刃のとき。

 生死を共にした大切な仲間たちが次々と死んでいく、自殺していく。
 それを一段高いところに立って見つめる三郎。

 死んでいく人たちを見ているヒマ、なかった。
 三郎から視線をはずせない。

 その瞳の、壮絶な闇。

 ぶわーっと、涙が出た。
 ぞくぞくした。
 なんなの、これ。
 なんて眼で、なんて表情で、死を見つめているの。

 憐憫でもない哀惜でもない、運命のような、冷ややかさ。

 たしかに人間でありながら、人間が達してはいけないところにたどり着いてしまったような。

 こわい。
 このおとこ、こわいよ。

 こわくて泣いた。うつくしくて泣いた。

 背筋がぞくぞくして、唇が震える。
 こんな表情、にんげんがしてはいけない……!

 そこへ、彼の愛する姫が戻ってきた。
 彼の顔に、人間らしさが戻る。しかし、共に死ぬ答えを知っているから、彼はまた、人間とは別のところへ行ってしまう。

 姫君もまた、愛する男の手に掛かって死ぬ恍惚に憑かれている。トリップ状態で舞い、酩酊したまま懐剣を出し、男の胸に飛び込んでいく。

 愛する女と最期の舞いを踊る三郎は、やはりもうひとではなくて。
 彼個人の人格を超えたなにかに支配されているようで。

 美しくて、こわくて。

 愛する女を抱擁することで殺し、自らも死するその瞬間。

 恍惚の表情でわらう彼が、こわすぎる。

 …………し、消耗した……っ。
 このもっとも短い3幕目で、心臓ばくばく、涙だーだー、頬ばりばりで、息も絶え絶え。
 勘弁してくれ、予想外だ。つか、お気楽お笑い落語モノぢゃなかったのかよーっ。
 こんなにこんなにこわい話だって、知らなかったよおおお。

 つか、コマってこんなだった? こんな芸風だったっけ? アツくて空回りしてるお笑いキャラぢゃなかった? ネタジェンヌぢゃなかった?

 こんなに耽美ど真ん中な人だった??

 ありえねー。コマなのに。コマなのに~~!!

 狂気と毒と闇。恐怖と紙一重の美。
 わたしが求める「耽美」、「日本物」のすべてが、そこにあった。

 コマ、すげえ。
 思い出すだけで、心拍数上がるわ。
 コマが、かっこいいっ!!

 雪組バウホール公演『雪景色』、Aバージョン観劇。
 この短期間公演で4パターン役替わりって心から勘弁してほしいんだけど。W主演だから、っつーなら、せめてWSみたいに前半後半で主演を替える程度にしてよ。

 おかげで、自分がこれから観る芝居の主役が誰なのか、なにがどうなっているのか、さっぱりわかってないままサバキでチケット買って観劇したさ。

 わたしが観たのは、1幕ちぎ、2幕コマ、3幕コマが主役バージョンだった。……なんてことを知ったのは観劇後であり、観ているときはどっちが主役か知らないままだったさ。
 
 谷せんせの落語モノで3本立て。ヒロインはミミちゃん。主演以外にも、雪組まるまるトリオがなんか役替わりしているらしい、ということぐらいしか予備知識ナシ。
 それだけで観劇して。

 盛大に、コマにときめく。

 な、何故コマ?! 今さらどーしてコマ?!

 もともと雪担だったこともあり、コマのことは長く眺めて来ている。
 最初の記憶は民放のニュース番組の初舞台生特集コーナーだ。首席入団の美少女、花組にそののち配属された瑠音舞佳ちゃんに密着した番組で、彼女のインタビューやら練習風景やらが中心の映像だった。そこに、次席入団のコマも映り込んでいた。
 瑠音ちゃんはたしかにとてもかわいかったけれど、首席だから実力もあるんだろうけど、あまりにふつーに「美少女」だったので、男役なんだし、もう少し少年っぽい方がいいなあ、と漠然と思った。その横にいた、まるまるつやつやしてはいるけど、ちゃんと少年っぽかった黒いレオタード姿のコマくんのことは、記憶に残った。
 その後コマは雪組に配属、順調に抜擢され、早くから路線スターとして位置づけられて来た。タニちゃんみたいな華々しい抜擢ではないが、組ファンならわかるプッシュ具合でいつもいい位置にいる男の子。

 顔立ちはあさこ・きりやん・れおんに似ているという、超路線ぶり。しかし体型と芸風はハマコ似という、すごいんだか残念なんだかという個性、学年を経て見えてくるそのやたらアツい芸風と愉快な空回りっぷり。

 長い間コマは、ネタジェンヌだった、わたしにとって。
 『エンカレッジコンサート』も『エリザベート』新公も、爆笑させてもらった。や、悪い意味ではなく、その力任せの爆走ぶりが愉快でなー。失敗をおそれて制限速度以下でしか走れない人より、クラッシュをおそれずアクセル全開にぶっ飛ばす人の方が好きだ。
 そーゆー意味でコマは、わたしに気持ちのいい笑いをくれる人だった。終演後に友だちと肩を叩き合って「コマ、さいこーっ」と叫ぶ、愛されキャラだった。

 が、いつもコマならなんでもいいってわけじゃなくて。たとえば『凍てついた明日』のデキは、わたし的にはかなりがっかりで、そこでコマ株が暴落したりとそのときどきで印象は違っていた。

 新公でトートとオスカルを演じたものすげースターっぷりのはずなんだが、そのオスカル写真が新聞に載っているのを見て、素で「ベルナール@ハマコがなんでこんな1ページまるまる使ってばーんとカラーで載ってるんだろう?」と首を傾げた過去もある。や、オスカル@コマだとマジに気づかなかったんだ、ごめんよごめんよ。
 頼むコマ、痩せてくれ……!! と、このブログでも何度か書いたよーな気がする。脇の色男は恰幅良くてもいいんだが、路線スター様はスリムな方がいいと思うの、わたし。

 芸風が愉快なことといろいろとハマコ似なこともあり、コマの容姿がどうこうとは、特に思わないまま来た。
 コマってひょっとしてきれいじゃん? と思ったのは、実は『「カラマーゾフの兄弟」トークショー』のときがはじめてだ。ごめんよごめんよ、それまでなんだと思ってたんだ、てなもんだがほんとにねぇもぉ。

 カラマトークショーのときのコマは、美青年風の髪型とロングジャケット効果もあってか、なんかとても涼しげなハンサムくんだったのだわ。
 それで好感度アップしていたところへ、『カラマーゾフの兄弟』本編。

 感想ちゃんと書いてないが、実は『カラマーゾフの兄弟』は、アリョーシャ@コマ萌えだった(笑)、わたし。や、ミーチャ@水くんがいちばん素敵なのは言うまでもないことですけど!

 アリョーシャ、すげーイイ感じなんですけど? ナニ、あのステキな攻男!
 ……ことあるごとに語ってますが、わたしは攻キャラスキー、男は攻認定されたときに好きメーターが動きます。
 三男×長男で、腐った萌え心が燃え上がりました(笑)。

 てなことはあったけれど、その後別段コマをいいと思うこともなく、現在に至る。
 ……至っていた、のに。

 キタ。
 この期に及んで、キタ。

 空前絶後の、コマ萌え(笑)。

 かっこいい~~っっ。
 コマがかっこいい、ステキ過ぎる。

 1幕の横恋慕男がまず、かわいかった。
 小四郎@ちぎのえんえん独壇場のあと、忘れたころに突然登場する、三五郎@コマ。なんかそのときすでに、「ん、なんかかっこいいぞ?」とは思ったけどかっこつけてるときよりも、小四郎が戻ってきて「間男」扱いになってしまってからがもお、かわいすぎる。
 両膝そろえてちょこんと坐り、うなだれている様が……。登場時の二枚目風とは打って変わったヘタレっぷり! お咲@みみちゃんに捨てられるんぢゃないかとおろおろうろうろ、かわいいかわいいかわいい。

 なんかコマがかわいかったわあ、ヘタレ男似合うのかしら、と思っているところへ2幕。
 こちらは正反対のど真ん中クール・ヒーロー。
 罪を犯し、故郷を追われる飾り職人・伊左次@コマ。
 「不器用な男ですから……」と、高倉健さんがやりそーな骨太の二枚目。仲間の罪をかぶり、言い訳せず取り繕うこともなく、すべてひとりを背負って黙って消えていこうとする、そーゆー男。
 無口でクールな彼をめぐって、まー次々と登場してくるの、喋りまくる人たちが(笑)。
 親友の岡っ引き@ちぎがひとりで喋りまくったかと思うと、伊左次に片思いのお嬢様@みみちゃんが出てきて喋りまくり、さゆちゃん他わさわさ出てきてまたしても喋りまくる。

 そんななか、ひとり喋らない彼。
 遠い目なんかして、ふっと「はないちもんめ」を口ずさんだりする彼。

 かかかかかっこいいんですけど、なんかすごくっ?!

 コマだよ? これコマなのに、なんでこんなにかっこいいの?
 涼しげで端正。清潔さがにじむ着物姿にりりしい髷。

 ……日本物だから? じつはコマくん、青天が似合いまくる人だったの? それでこんなにかっこいいの?

 と、ここでも首を傾げていたが。
 ここまではまあ、どーってことなかったんだ、わたし的に。

 本当の意味で、ショックだったのは、コマ萌えしたのは、第3幕。

 うわ、前振りだけで3000字超えちゃった。翌日欄へ続く(笑)。
 年間公演スケジュール一覧を見て、「このバウの主演は誰かしら」と予想したり希望したりするのは、ファンの楽しみのひとつ。

 つーことで、勝手に、ひそかに、ナイショで、夢見てました。

 …………ともちんの、バウ主演…………。

 劇団のやり方として、「売りたい若手」というのがまず念頭にあり、でもこの若手だけじゃとても興行は打てない、実力とか集客とかいろんな意味で、てなときに、都合良くベテランを使ったりする。
 別格スター主演にして、「主演じゃないけどオイシイ役」で「売りたい若手」を出演させるとかな。
 チケットノルマその他の興行責任は主演の仕事、でも劇団が売りたいのは主演じゃなくて別の子。主演は風よけ、その陰で育てたい子に大切に水と肥料をやる……てな、すごく「大人のやり方」を、劇団は容赦なくやったりする。

 劇団がカチャを売りたいことはよーっくわかる、でも彼は(当時)まだ新公主演もしていない身、ひとりっ子で大切に育てられた月組のみりおくんすらやっていない単独主演はいきなり荷が重いだろう。
 ここはひとつ、劇団の過去のやり方に倣って、別格スター主演でカチャ2番手、ポスターにもどーんと載って、彼がいちばん魅力的に見えるオイシイ役で地道に足場を固めるのはアリじゃん?!
 みーちゃんと大ちゃんのW主演とかもいいけど、彼らと2番手カチャだとワークショップ風味になっちゃうかもしんないから、ここはどーんと中堅のともちを……!! 『逆転裁判2』であのくそでかい暑苦しいエッジワースに興味持ったお嬢さんやらお兄さんやら、来るかもしんないじゃないか!!

 と、夢を見ていました。
 ええ、ともちスキーの、ささやかな夢ですわ(笑)。好きな人の主演を希望するのはファンの常。
 番手とか現実とか関係ないもん。わたしが見たいだけだもん。

 番手と現実は、シビアです。

2009/11/19
宙組 
■主演…(宙組)凪七 瑠海

◆宝塚バウホール:2010年3月18日(木)~3月29日(月)
ミュージカル
『Je Chante(ジュ シャント)』
-終わりなき喝采-
作・演出/原田 諒

星組
■主演…(星組)凰稀 かなめ

◆宝塚バウホール:2010年5月7日(金)~5月18日(火)
◆東京特別(日本青年館):2010年5月24日(月)~5月31日(月)
バウ・ミュージカル
『リラの壁の囚人たち』
作/小原弘稔  演出/中村一徳

 いやまあ、ともちのことはわたしひとりが勝手に夢見ていただけで、ふつーに順番から行けば88期の新公主演者みーちゃんと大ちゃんだろうとは思ってました。
 カチャもいずれは主演するスター候補生だし、初舞台からずっとスターだったのは知ってるけど、劇団的に同組内に新公主演した上級生スターがいる場合はあまり急に露骨に逆転させることは避けるのが常なので、みー大のふたりを「今」抜くかどうかは未定だよなと。
 そうか、「今」だったか。
 『エリザベート』主演で対外的に名前を売ったからこそ、「10年に1度のスター」を外側から作り上げるには、『エリザベート』の宣伝効果が薄れないうちにさらに売り込むべきだ。戦略としては正しい。
 だからこそ、あとは中身がついていくかだよなー。
 新人演出家のデビュー作かあ。いい作品になるといいね。

 
 でもって、かなめくんで『リラの壁の囚人たち』かぁ。
 たしかビデオかテレビかで見た、トドロキ目当てに。先にナマで『ツーロンの薔薇』を観ていたため、その前の話になるという『リラ壁』は絶対に観なければならない作品だった、わたし的に(笑)。
 トドの出番の少なさと下手さ、天海の下手さにびっくりして終わった。……ストーリーはぜんっぜんおぼえてない(笑)。
 良い作品だったんでしょーか……おぼえていない、ってことは、とくにおもしろかったわけでもないと思うんだが……。
 ただ時代的にヅカが得意とするあたりなので、「男役」としての美しさを期待できるかなと。

 しかし対ナチス物ブームでも来てるの? 今大劇場で『カサブランカ』やってて、宙バウ雪バウで対ナチス物やるって、あまりに偏りすぎてる気がする。
 レジスタンス3部作の1作目上演ってことは、残りの2作もどっかでやるのだろーか。とするとまたしても偏ったことに……。

 ビデオがどっかにあるはずなんだが、探してみよーかなー。

 
 今回のラインアップ発表で、いちばんアタマを抱えた演目は、宙DC小柳せんせ作品です。

宙組
■主演…(宙組)大空 祐飛、野々 すみ花

◆梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ:2010年3月9日(火)~3月21日(日)
◆東京特別(日本青年館):2010年3月26日(金)~4月2日(金)

ミュージカル
『シャングリラ・水の城(仮題)』
作・演出/小柳奈穂子

近未来。核戦争によって水が汚染され、人々が安全な水源を求めて争いを繰り返す世界。龍王という暴君が水源を支配する国。旅芸人一座に助けられた記憶喪失の男・空(ソラ)は、過去を知るために、一座の踊り子・美雨(ミウ)と共に龍王の宮殿“シャングリラ”へと向かう旅に出る。やがて心を通わすようになる二人。だが、“シャングリラ”で二人を待ち受けていたのは過酷な運命だった……。人間にとって必要不可欠な“水”をテーマに、荒廃した世界の中で運命に立ち向かう人々の姿を描く近未来ミュージカル・ロマン。

 ラノベ作家を夢見る女子高生が書いてそうな話……。
 小柳タンは『シルバー・ローズ・クロニクル』で腐っても小池の弟子であることを見せつけた。つまり、吸血鬼と世界征服とマッドサイエンティストと薬と若者グループという、イケコ・オリジナルの悪いところだけを見事に踏襲してみせた。ヲタクのゆみこはかわいかったが、バンパイアのテルは美しかったが、ソレだけ。ストーリーは破綻していた。

 そっか……あれをまたやるのか……さらに厨な設定てんこ盛りで……。遠い目。

 おもしろいはなしになってくれるといいなあ。(棒読み)

 
星組
■主演・・・(星組)柚希 礼音、夢咲 ねね

◆全国ツアー:2010年4月24日(土)~5月23日(日)

ミュージカル・ロマン
『激情』 
-ホセとカルメン-
脚本/柴田侑宏  演出・振付/謝 珠栄

グラン・ファンタジー
『BOLERO』
-ある愛-
作・演出/草野 旦

 ちえねねで『激情』はすごーくたのしみっす。
 初演時、わたし的にはカルメン@お花様はそのかっこよさに拍手喝采だったけど、ホセ@ずんちゃんがどうにも大こ……ゲフンゲフン、ずんちゃん以外で見てみたかったんだ。や、ずんちゃんの歌はほんっとーに素晴らしかったのだけど。
 あの役をれおんで見られるなんて、願ったり叶ったり。ねねちゃんは……どうなるのか、たのしみにしてまつ。

 
 あと、前回のラインアップ発表時、花組だけで文字数いっぱいだったので書けなかった、月組きりやんお披露目公演『スカーレット・ピンパーネル』
 わたしはきりやんショーヴランを見たかったクチです、黒いきりやん大好物。なので、そのへんはちょっと残念なんだけど、力のある作品をまた観られるのはうれしい。……何年かあとだったらもっとうれしかったと思うけど。や、きりやんと月組に含みはなく、たんに間を置かずの再演を歓迎しない性格だとゆーだけっす。

 きりやん月組の2番手がはっきりしていないので妄想配役もしにくいんだが、そのかはやっぱあかしの役になるんすかね? つか、『Apasionado!!』のお花ちゃんたち、ほとんどはみんなまた女装?(笑)

 月組楽が近づくにつれ、当日券の抽選ついて情報を求める人たちの検索が、このよーな僻地ブログにもぱらぱら現れるようになっていた。過去の例から、未来を予測したいのは人の常。トウコちゃん楽の記録があるもんだから、そこにたどり着いている模様。
 やっぱり、少しでも情報が欲しいもんな。
 老後の楽しみに書いているこの日記、レポ能力はなく、自分の感想・思ったことしか書けないわたしだが、ところどころで自分自身で知ることが出来たことは記録として残したい。
 ……なにしろトシのため、記憶力の低下も著しくてな……よぼよぼ。

 つーことで、月組ムラ楽、当日券事情。

 前楽 当日券詳細確認忘れたので謎(情報求む)、並んだ人数1000人ほど。
 大楽 座席券42枚、立見券100枚、バウ500枚、並んだ人数1400人弱。

 自分がバウで見られたので心からありがたかったが、自分が見られなかったトウコちゃんのときに、なんでバウがなかったのか残念でしょーがない。

 642人が見られたんですよ、月組楽。
 確率0.46。自分が最後尾だったから知ってるけど、1400に満たない数字で終了していたから、正確に計算すればさらにわずかに確率は上昇。
 ふたりにひとり、に近い確率で最後の祭りに参加できた。……映像は所詮映像でしかないから、ほんとのとこ「観劇」できた人の人数はどの楽も等しいんだけど、ナイよりマシの映像参加、バウホール中継有無の基準ってよくわからない。

 ちなみに、トウコちゃんの星楽の記録。

 前楽 座席券55枚、立見券140枚、並んだ人数1100人ほど。
 大楽 座席券42枚 立見券100枚、エスプリ220枚、並んだ人数1500人ほど。

 大楽を見られた人は、たった362人だったんですよ。あさこちゃんの約半分の座席数。
 確率0.24。4人にひとり以下しか、参加することが出来なかった。

 しかもエスプリって環境が劣悪で、画面の映りは悪いわ、座席に段差がないからまともに画面が見えるのはほんの一部の人だけだわで、最悪。「音だけ聞くために行く」みたいなところ。

 この差はなんなんだろう。
 過ぎたことだから言っても仕方ないが、頼むよ劇団、どのスターさんも最後はバウ中継してくれよ、どーせバウ空いてるのに。翌日スカステで放送するために、プロの映像スタッフが劇場内でふつーにカメラ回してるから、映像自体はあるのに。

 これから先のトップさん退団時に、バウ中継があることを、心から祈る。希望する。

 ……今後のチケ取りの参考にする、という意味では、インフル騒動真っ直中だったタニちゃん楽はイレギュラーだと思うので、あまり参考にならないかもしれない。遠出や人混みへの外出を自粛した人、急遽行けなくなった人も多かったろうからなー。
 でもま、忘れてしまわないうちに記録だけ残しておく。

 前楽、大楽のチケット販売数は、座席・立見・エスプリ鑑賞とトウコのときと同数だったと記憶している。
 そして前楽に並んだ人の数は300人、大楽は並びの資料無し。ただ大楽のサバキは買い手市場で、席が悪いとなかなか売れなかったとか。
 たぶん、当日劇場まで行った人たちのほとんどが、エスプリも含めてなんらかのカタチで観劇できたんじゃないかな。インフル騒動のなか、それでも駆けつけた、本気で観たかった人たちがちゃんと観ることができたなら、良かったと思う。

 
 で、実はこの記事の日付(11月18日)の翌日に、ラインアップと一緒にあさこちゃんのラストディ中継についての第一報が出たんだ。
 ブログ書くのが周回遅れになって久しいので、続報が出た今となってはちょっと意味がないんだが、11月19日当日に書いたテキストを元に、うだうだ書いておく。

 『ラストディ』中継は、劇団のサービスなんだと、わたしは思っている。
 儲けなんか大して出ないけれど、ヅカファンへのサービスと宣伝・広告の意味でやっているんだと思う。

 大体サヨナラショー付き公演自体、チケット代は通常まんまのサービスだもんな。やらなくてもかまわないのに、サービスでえんえんえんえんやっているんだから、どんなものでも観られるだけラッキー、やってもらえるだけラッキー。昔のサヨナラショーはもっと簡素にチープにやって終了だったし。
 ソフト化して儲ける前提ができてからだ、あんなにちゃんとした「ショー」になったのは。
 そもそもスタート地点は、ファンサービスだったはず。

 で、その無料のおまけであるサヨナラショーを、そして千秋楽公演自体を中継で全国各地で見られるようにする、ってのは、やっぱりサービスの延長なんだろうなと。
 儲けがすごーく出るからとソレを目的にやっている……と見るには、あまりに消極的だから。
 商売目的なら、商売になるというなら、そのときどきで会場減らしたりとかせず、もっと積極的に「売る」ことを考えるだろう。
 
 それまでナントカ会館とかを使って中継をしていたが、オサ様のときに試験的に映画館を使うことになった。
 グループ企業に映画館があるんだから、ソレを利用しない手はないってことだろう。オサ様のときは試験運転だったので、やたら会場数が多かった。それも、東宝グループの主力映画館を使って、だ。ヅカだけでなく今後もなにかしらそのノウハウを流用することを視野に入れての試みなんだと思った。

 それに安心・期待していたら、なんと、トウコちゃんのときは不可解なほど会場を減らされた。
 東京は劇場から遠く離れた場所。……東京宝塚劇場横だって映画館なのに! 徒歩圏内に映画館あるのに!

 そして関西は、西宮1箇所だけだった。

 いやあ、この仕打ちはひどかったよ。
 関西中継チケットは、プラチナ扱いとなった。
 わたしの周囲は誰ひとり手に入れられなかった。

「中継見るためだけに、東京まで行ったの?!」
 と、驚かれたりあきれられたりしたが、仕方ないじゃん。

 大阪(西宮だが)の中継チケット代 > 大阪-東京の往復交通費+チケット定価 だったんだもの!!

 大阪の中継チケットを買う甲斐性はなかった、そんなにお金持ちぢゃないよ、それなら東京まで行って、定価のチケットで中継を見るよ。涙。
 わたしが行ったのは西新井とゆー、関西人からすりゃ「どこ?」な場所だったけど、それでもサバキ待ちの人たちがずらりと並んでたな、お財布持って。(郊外型ショッピングセンター内で、異様な風景)

 東宝の主力映画館はすべてはずし、多分客足が余り良くない、郊外型のハコばかりを中継に使った模様。関西の東宝シネコンは地価の高い、稼働率のいい一等地ばかりだもんな……だからあえて僻地の西宮1館きりにしたんだ……と、わたしは思った。
 ヅカファンのために、稼げる利便性の高い映画館は使わない。そんなことしたら、映画の本来の儲けが少なくなる。もともと客のいないところを使えよ、ヅカファンはどんなに不便なとこでもわざわざ出かけて行くだろうし? てなもん。

 劇団がサービスでやっていることだから、仕方ないんだろう、と、思った。サヨナラショーやパレードと同じ意味で、伝統だからとファンサービスしているだけだから。

 そして、その「サービス」が低下していること、「ファンなんかこの程度の扱いでいいや」と劇団が思っていそうなことが、不穏な感じだった。
 
 ……トウコのときに懲りたので、タニちゃんのラストディはプレと一般で取れなかったときにあきらめた。東京まではとても行けないよ。
 関西は相変わらず西宮1館だけだったからチケ難、高騰はしてないものの一般で取れなかった人間が定価で見るのは難しかった。で、複数会場があった東京のチケットが、掲示板で値引きされているのを指をくわえて見ていたさ……。

 
 あさこちゃんのラストディ中継も、きっとトウコと同じくらいチケ難になるだろう。西宮1館だけなら、絶対わたしのよーな一般人の手には入らない。
 そう思ったから、多少無理をしても、ムラ楽の当日券に並んだ。
 東宝中継より、ムラをナマで見られる可能性の方が高いって、なんか変。オサ様以前では、ありえないことが今、起こっているんだ。

 
 や、なにしろ周回遅れで書いてるわけだから。
 12月5日の続報で、あさこちゃんの関西中継は2館に増えていたよ。よかったよかった。(でも、オサ様の何分の1? ワタさんやコムちゃんの何分の1?)
 『カサブランカ』は、キャラ萌え作品である。

 つーことで、盛大に萌えてます。

 ラズロ@らんとむ萌え。

 ナニ、あの色男!!

 今までもらんとむさんのことは好きだったと思うし、十分愛でてきたつもりだが。
 しかし、今ここで、この役で、過去最大の萌えが来るとは思わなかったっ。こあらったのらんとむスキー歴において、今最大風速キてます!

 反ナチス運動の指導者、ヴィクター・ラズロ氏。
 ぶっちゃけ出番は少ないわ、見せ場は少ないわ、心情含めて動きが乏しいわ地味だわで、辛抱役だと思う。
 ふつー2番手役ってもっとオイシイもんぢゃないの? ここまで主役主役主役で2番手に割喰わせるってどうなの? と、思うこともたしか。

 されどこの、出番少なくて見せ場少なくて動きの乏しい地味なラズ郎さんに、ハァトがきゅううぅぅんとしますのよ!!(笑)

 ……ギュンター@『マラケシュ』がギュン太だったように、らんとむさんキャラはつい日本名で呼んでしまいます、ラズ郎。理由はないけど、なんとなく。

 や、この役イイって! すげー萌えな役だって! 贔屓でやって欲しい役だって!
 いわばラズロって、フランツ@『エリザベート』キャラじゃん? 難しいことばっかやらされてるわりに美味しくない辛抱役。寝取られ男というか、振られ男というか、優等生ゆえに貧乏くじ引きまくり人生というか、「振られても踏みにじられても君だけを愛している」キャラというか。
 まっつファンのわたしと、某ゆみこファンがハァト撃ち抜かれてハァハァしちゃうわけですよ、こんなキャラクタ好みど真ん中だってば(笑)。

 らんとむの、枯れっぷりがイイ!!

 アツいらんとむはもうさんざん見てきたから。大人で適度に枯れていて、でも情熱がその奥にあるという男は、すげーかっこいいっす。

 ラズロは反ナチス勢力のカリスマ。ヒーロー。
 ……という触れ込みなんだが、ごめん、あんましそんな風に見えないんだ。
 すげー枯れて見えるからかなあ。
 彼のかっこいいところも、リーダーらしいところも描かれているんだけど、一瞬だけで、あとは逃げ回るか人に頼み事をしているか女のことでなんだかんだしているかで、ヘタレ>かっこいい で、ヘタレなイメージの方がかっこいいを上回ってしまっているんだよなー、わたし的に。

 いつも一緒にいるイルザ@ののすみが強く見えるせいだろうか。てゆーか、危険な脱出行にカノジョ連れってあたりですでに、公私混同のダメヲくんっぽく映るとゆーか。
 このへん民族性の違いかな、たとえば日本の英雄なら、戦場に妻は連れてこない。どれだけ妻を愛していも、ソレは心にしまって口には出さず、ひとりで戦いに行く。女連れの指導者なんて、それだけで株が下がる。……良くも悪くも、そーゆー風潮。
 イルザもレジスタンスの女闘士なのかもしれないが、田舎から出てきた世間知らずな女の子に理想だの革命だの植え付けて洗脳して、ついでにちゃっかり手を出しちゃったみたいに聞こえるんだけど、彼らのなれそめ。

 だから、どんだけ台詞でラズロを英雄だと説明されても、なーんかぴんと来ない。
 つか、ラズロって、イルザに依存してるよね?
 イルザはラズロの母に瓜ふたつとかゆー裏設定あるんじゃなかろうか、と勘ぐるくらい、不健康なゆがみを感じる。

「君を愛しているから」
 と告げるラズロのいたいけさときたら……!!

 ちょっとちょっと、わたしを萌え死にさせる気ですか。
 大人の、枯れた男が、大人として口にする愛の言葉が、いたいけな少年の言葉のように聞こえるのですよ、見えるのですよ。
 うっわ、この男マジやべえ。イルザいなかったら、壊れちゃうよ。

 そりゃイルザも、放っておけないでしょうよ……この男のために、昔の男ダマして通行証奪おうとするでしょうよ……。
 自分は愛してもいない男(リック@ゆーひのことだな・笑)に身を捧げてでも、せめてラズロだけでも逃がしたいと思い詰めるでしょうよ。

 なんなのこの、被虐オーラゆんゆんの色男はっ。

 拷問ってナニされたのよ、収容所でナニされたのよ、とオロオロしてしまうくらいの、しどけない色香はなんなのよ。

 ルノー@みっちゃん、シュトラッサー@ともちん、そしてイルザと、攻キャラばかりに囲まれている、可憐なラズロに萌えまくりっす。

 や、ルノーの本命はリックだと思うけど、彼好色S体質だから、目の前にドMな獲物がいたらつい、弄びたくなるんぢゃ? つまみ食いダイスキだし?(笑)

 あー、らんとむさん相手に「可憐」とかいう単語使っちゃう日が来ようとはねえ。長生きはするもんだわ。

 そうやってイルザに精神的に依存しているくせに、彼女がいなければ戦うことなんかできっこないのに、それでも、イルザのために身を引こうとする……その寛大さというか、自分の見えていなさ加減もまた、萌えなのよ(笑)。
 イルザ失ったらアンタ、どれだけボロボロになると思ってんのよ、絶対待ってるのは破滅だってばさ! と総ツッコミ入るだろーに、本人は「イルザがいなくても大丈夫、イルザには幸せになって欲しい」とか、心底思ってるのよ。
 その自覚のなさ、見通しの甘さがもお、ダメダメで愛しすぎる。

 リックも気づいたと思うよ、「あ、この男ダメだ」って。
 なんか聞いてた話とぜんぜん違うぞ、英雄で豪傑なんぢゃねーの? こんな可憐で枯れた色男なわけ? イルザいないとダメじゃん、こいつ。
 ……この男からイルザを奪うわけにはいかないし、イルザもまたこの男から離れられないだろう。

 オレが身を引くしかないじゃん、と、リックも悟るだろう、そりゃあ(笑)。

 天才がなにかしら欠けているのは、世の常で。
 ラズロは世界を救うという使命を天から与えられてこの地に立ったかわりに、根本的なナニかを持たずに生きている、のかもしれない。
 それを埋めるために、愛が……イルザが必要なんだろう。

 ラズ郎さん主役でスピンオフ希望。
 イケコ・オリジナルで、是非!!

 「キミの瞳に乾杯」ならぬ、「オレの守護天使(ガーディアン・エンジェル)」とイルザにささやいてほしいですな。
 イルザも大変だ、彼女を口説く男たちはみんなトンデモな台詞でキメまくる(笑)。
 で、ナチスの軍服二枚目2番手役が、銀橋で世界征服ソングを歌う。
 マッド・サイエンティストと薬と若者グループも忘れずに。

 ラズロさん、ダイスキです。 

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