次回のウエクミ新作が楽しみ……と、前日欄の最後に書いた。

 みりお様とかのちゃんで奴隷と王女か~~、夢広がるな(笑)、と思い、まったくのオリジナル新作ゆえにそれ以上ナニも想像は出来ず、かわりに過去作へ気持ちが向く。

 『翼ある人びと』にしろ、『星逢一夜』にしろ、再演不要作だなー、と。

 や、名作の宿命、「〇〇を**さんで観てみたい」ってのが出て来るじゃん。
 あの名作をもう一度、今度はナニ組で、誰々主演で、って。

 でも、『翼ある人びと』も『星逢一夜』も、それを思わない。
 役者と役がぴったりはまっていて、それ以外の配役を思いつかないし、あのときのあの舞台上の空気ごとはまっていたので、それ以外は考えられない。

 と、考え、景子作品と正反対だな、と思う。

 景子タンの作品は、観終わった瞬間から妄想配役OKだもん。
 たとえば『舞音-MANON-』はどの組の誰で再演したらハマるだろう、あー、どの組の誰でもOKだな、あとはお好みでって感じ……てな風に。
 景子タン作品でわたし的に最大のハマり方をした『舞姫-MAIHIME-』だって、公演中からすでに「いつか再演されるんだろうな」と思ったし。作品をどんだけ好きで、そのときの配役をどれほど愛していても、「この作品は今だけのモノ、この役はこのひとのモノ」とは、思わなかった。

 景子作品は、生徒へのアテ書きをしていない。
 まず、「作品」がある。生徒は、その「作品」を演じる役者である。つまり、替えが利く。

 アテ書きする人だったら、ちゃぴにファム・ファタール舞音を、まさおに舞音を愛し破滅する軍人を、やらせないわー。絶対ないわー。
 『舞音-MANON-』は現月組以外でなら、どの組とトップコンビでもハマったと思う。や、トップでなくても、番手スターの別箱でもOK。
 まさちゃぴ以外ならオールオッケー……って、それでなんでまさちゃぴにやらせたし。

 まあそれくらい、景子せんせは生徒の持ち味無視、自分の作品優先な人。

 それは別に、悪いことじゃない。クリエイターなんだから、自分の作品にこだわりと強い愛情を持っていていいと思う。
 それに、景子作品ってどれももれなく美しいから、誰が演じても様になるという最強の特徴を持っている。
 タカラヅカではこれ大事。
 美しい物語で美しい主人公が美しいヒロインと恋をする、美しい作品。「美しい」というテンプレゆえに、美しいタカラジェンヌは誰が演じてもOK。

 アテ書きはしないけれど、ミューズはいた。
 ゆうひくんは景子せんせをわくわくさせる素材だったのだろうなと思う。
 「アテ書き」と「創作意欲」は別だからなー。同じところに着地することが多いから混同されがちだけど、別モノ。
 ゆうひくんにアテ書きする、というより、ゆうひくんという理想の美しい素材を目の前にして意欲をかき立てられて創作したら、ゆうひくんにぴったりの作品になった、というだけのこと。
 あくまでも、「作品」主体だと思うよ。
 わたしの勝手なイメージだけどね。景子作品からは、そうイメージされるんだもの。

 景子タンがアテ書きしたのって、コムまーの『堕天使の涙』だけだと思う……アレだけは、トップコンビの持ち味ナシにはあり得なかった……つか、思いつきもしないだろ、と思う。

 そんな、「誰が演じてもOK」、観終わってすぐに「うちの組でやったら……」とか妄想OK、という作風の景子タン。

 に、比べて、ウエクミ作品の不自由さってば(笑)。
 他のキャスティングによる上演を、想像できないわ……。

 主要3人の人間関係が濃いから、役者が変わったら作品自体が変わってしまう。成り立たない、と思ってしまう。
 『翼ある人びと』も『星逢一夜』も、再演を観たいと思わない。

 ウエクミ作品で唯一「再演希望」だったのは、デビュー作の『月雲の皇子』だ。
 これは単に、その、新公風味だったので、「トップコンビ主演で、大劇場で観たい」と思ったんだ……若手バウだから新公風味なのは当然で、それを言ったらおしまいなんだけど。
 当時もブログに書いたと思うけど、いい作品だったから、うまい人で観たいと思ったんだ。

 まさかそのあと、トップコンビ主演で大劇場で、裏『月雲の皇子』みたいな『星逢一夜』を見せられると思ってなかったからな(笑)。

 『月雲の皇子』の段階で、わたしは「植田景子系?」と首をかしげたんだ。観終わったあとに「他の人で観たい」と思わされたから。
 たまきちと月組バウメンバーいてこその作品だとは思ったけれど、話がバウのスケールに合ってないし、キャラは書き切れてないし、ヒロイン途中で投げ出されるし、ナレーションだけやたら長いし……なにもかも、違和感があって。
 自分のやりたいこと優先で、収まりきらなかった? 初主演のたまきちの許容量、バウホールの許容量、考えずに詰め込んだ?

 デビュー作だから、単に勝手がわかってなかっただけだと思うけど。
 ひょっとしたら、景子タン系かも? って。

 でも今は、景子タンとはまったくチガウ作風のクリエイターだとわかる。

 アテ書き系の作家さんだったんだね。
 正確には、アテ書きではなくて、役者を基点に作品を膨らませる感じ?
 この人ならコレが出来る! という。
 アテ書き作家なら、だいもんに源太役は書き下ろしてない(笑)。でも、だいもんなら、出来る。

 作品基点だと、演じる人は誰でもいい。
 でも、役者基点だと、その人ありきですべてが構築される。

 うわー、わくわくするなあ。
 同じ顔ぶれで公演し続けるタカラヅカならではの楽しみ方ですよ!!
 その作品のために集められた、公演が終わったら解散カンパニーじゃないの。同じ釜の飯を食う、一蓮托生の仲間たちだからこそ存在する「個々のキャラクタ」を元に、新たな物語を書き下ろしてもらえるなら、続けてずっと観ている者には、さらに楽しくなるよね。

 かのちゃんが奴隷でみりおくんが王子じゃない、反対だってのがもう、「キタキタキターー!」って感じ。
 景子タンなら主役は王子様で、誰が演じてもいいように創るだろう。
 身分違いの恋をする王子は誰でもハマるだろうけど、王女への想いを拗らせた奴隷、てのは、みりおくんならではの魅力を感じさせる設定だわ。

 やたら再演作の多いみりおくんだから。
 彼以外誰も出来ない、おいそれと「再演希望」と言えないような、彼だけの作品を見せて欲しい。


 誰が演じても美しい作品、も、タカラヅカならでは。
 主要な役者の関係性に根を下ろした作品、も、同じメンバーで芝居をするタカラヅカならでは。

 景子タンもウエクミも、タカラヅカでずっと活躍してほしいっす。
 あれ、ひょっとして、主役についての感想を書いてない?
 花組『ME AND MY GIRL』
 役替わりとか新公とか、目新しいところを記すのに必死になっちゃって。

 ビル@みりおくん。

 ビジュアルだけでいうなら完璧!に美しいビル。これぞ、タカラヅカで観たいビル!の姿だと思う。

 だけど、この役はものすごーく難しかったのではないかな? みりおくんにとって。
 ビルだから、『ME AND MY GIRL』だから、というのではなく。

 自分自身で演じた役の、再演だから。


 『エリザベート』のときも感じたんだけど、セルフ再演って、すげー難しいよねええ。
 新公時代より、そりゃ技術は上がっている。出来ることは増えている。でも。
 あの当時持っていたナニかを、確実に失っているんだ。

 名作の再演とかもそりゃ大変だろうけど、ある意味「過去の自分」を超えるのは、いちばん困難なことなんじゃないか?

 新人公演でビルを演じたみりおくんを、おぼえている。

 若くてかわいくて、キラキラした男の子だった。
 大人の男には見えず、サリーともども10代のカップルに見えた。
 あのまぶしさと、甘ずっぱさ。

 あれは、下級生だからこその光だ。

 みりおくんはいつまでも若々しいし、美しい人だけど。
 もうこんなに、大人になっていたんだなと。
 ビルの印象の違いに驚く。

 若くて向こう見ずな光は消え、大人がしっかり演技している。
 演技することを、知っている。

 昔は演技していなかったというわけじゃなくて。
 新公だってもちろん精一杯考えて演技していたんだろうけど。
 今はその、演技の向きが違うというか、角度が違うというか。

 新公の頃って、みりおくん、客席に向かって……いや、世界に向かって? 無防備に開いていた気がする。
 ぷわーって全部開いて、ありのままで勝負というか、取り繕う余裕はないっていうか。
 今は大人になり、責任も増え、そんな本能的な姿勢ではなく、がっつり芝居することを学んだというか。
 守りに入っている、気がする。
 ……トップスターなんだから、責任があるんだから、それは必要なんだけど。わかるんだけど。

 新公と同じ役であるから、余計にそれが見える気がして。
 『エリザベート』はまだそれでも、必死さの方が勝っていたから、今回ほど思わなかった。

 新公ビルの方が、自由を感じたな。
 ビルというキャラクタは、魂に自由が必要だと思う。今のビルには、それをあまり感じない。
 ……ビルとしてはともかく、タカラヅカ公演の主役としては、華と光が在るから、ソレでいいのだと思うけど。


 サリー@かのちゃんは、ビルを映す鏡だと思う。
 かわいいかのちゃんが演じているから、もちろんサリーはかわいい。
 だけど、不自由さを感じる。
 ビルがまとう鎖を、サリーもまたまとっている。

 ビルが外へ発散するようになれば、サリーも発散するんじゃないかな。
 わたしの印象では、ふたりして束縛されている感じ。


 ビジュアルはほんと、きれいでかわいい最強カップルなのにな。
 何故だか、ナマで観た方が、ポスターよりもわくわくしなかった。

 あくまでも、わたしは。


 みりおくんは、オリジナルの役と作品が観たいな。新公の役ではなくて。
 次のウエクミ公演が心から楽しみだ。
 ふと気づいた。
 バッグに付けていた、『ME AND MY GIRL』缶バッジがない~~!!

 お気に入りだったのに。コマつんデザインだったのに。
 しょぼん。

 缶バッジって大抵落としてなくすんだよなあ……。
 わたしだけ?

 回転ピンになっているものはともかく、ただのウラピンだと、押したら落ちるよね……。
 なくしそうだから、絶対なくしたくないから、なにか対策を考えなきゃなと思っていた矢先。
 なくなった……。

 どこで落としたかわかんないから、劇場インフォメに言っても仕方ないしな。


 まっつ画像を使ったバッグチャームだっけブローチだっけかを、その昔なくしたんだったわ……と、思い出した。
 一見ヲタグッズだとわからない、手にとってよく見るとまっつだとわかるレベルにデザインした自己満足グッズ。
 鞄に付けたモノってよくなくなるわー……わたしだけ?

 ご贔屓がいなくなって、グッズを作ることがなくなってしまった。
 わたしはご贔屓画像を使ってストラップとか毎公演作ってたんだけど、それをしなくなって久しい。
 つまんないなあ。
 さみしいなあ。
 クラフト大好きなのに、ネタがなくなるなんて。

 またなにか作りたいな。
 ご贔屓じゃなくても、なにか。
 創作意欲を刺激するような作品とか、キャラクタに、出会いたいな。


 オリジナルで作ることがなくなったから、既製品の缶バッジとか付けてたわけよねえ……。さみしいことよ。
 まあ、どっちにしろ、よく落としちゃうんだけどね。とほほ。
 だいもんがゲスト出演する、『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』

 とりあえず、会場に着いて最初に、グッズ売り場でサイリウムを買った。
 ゲスト目当てであるからこそ、お行儀良くせねば。主演さんに敬意を払い、主演さんのファンにも失礼なきようふるまわねば。謎の使命感。

 わたしは井上氏のことを「よちお」と呼んでますが、世間一般の呼び方は知りません……わたしの周囲はよちお呼びなので、それをふつーとして生きてきちゃいました。

 よちおコンサートはじめてだから勝手がわからないんだけど、公演名入りサイリウムだけでも購入しておけば大丈夫よね。みんなが振るところで振ればいいのよね。
 わたしの周りはサイリウム持ってる人少なくて、なんかわたしひとり気合入ったよちおファンみたいに見えたかもしんないが(笑)、前方席の方々に倣ってささやかにサイリウム振りました。

 いやあ、よちお氏云々以前に。

 わたし、ディズニーぜんっぜん知らないんです。

 みっちゃんの『LOVE & DREAM』のときも書いたと思うけど。
 正直、苦手でなー。
 曲がではなく、アニメが。
 ディズニーを見ていたのって、小学校低学年まで? いや、小学校に上がる前? アニメならなんでもいい時代しか、見たことがナイ。
 好き嫌いを判断できるようになると、ディズニーを見ることはなくなった。
 ディズニーアニメ見る時間があるなら、日本のアニメ見る子どもだった。
 それは今も変わらず。アニメはかなりの本数見てるけど、ディズニーは見ないなー。

 知らない曲ばっかだから、神妙に聴いてました。
 よちお氏の歌には全幅の信頼をおいているので、ただもう楽しむのみ。
 1幕は朗読劇仕立て。
 よちお氏が「Mr.イマジネーター」として、女の子手紙を読みつつ、それに応えるカタチで数々のディズニーソングを歌う、という趣向。
 ……なんの予備知識もないので、朗読劇仕立てだということも、よちお氏が「役」を演じていることも知らずに観ていたから、いろいろとまどった(笑)。
 つか、だいもんがいつ出るのかも知らないので、終始どきどきしてた(笑)。←だいもん登場は2幕です。

 1幕は台本ありだけど、2幕は自由に喋くっていた印象。
 よちお氏は「トークが得意」とのこと。
 けっこう毒舌で、いろいろすぱすぱ斬りまくっていた。

 トークが得意、ひとからトークばかり誉められる、ということをトークの中でくり返し言っていたんだけど、わたしにはそれほどうまく思えなかった。
 ……けど、考えてみりゃ、喋りが本職ってわけでもないのに、たったひとりでこれだけひっきりなしにべらべら立て板に水で喋れるんだから、すごいのか。
 客席で見ているとわかんないけど、実際にはすごく難しいことなんだろう……そんな経験、一生することないはずだから、わかんないけど。

 ゲストのだいもんには、ものごっつー気を遣ってくれてました。

 毒舌キャラで通してきて、だいもんにもけっこうずばずば言ってるんだけど、終始気を遣って、持ち上げてくれている。
 だいもんがもう、ガチガチに緊張していて、ぜんっぜん喋れてないのよ! 見ていて「よちおさんすみません」と何度も思った……あたしの立ち位置どこ、我が子を見守る感じ??
 台本にある通り、リハーサルの通りに喋っているだけのだいもんに、その場っぽいノリで会話を投げるよちお氏、台本以外に反応できず、2拍ぐらい遅れて反応し、必要なワードの7割くらいしかひねり出せないだいもん……あああ、なんでこう不器用な返しなのおお、よちおさんすみません~~!(立ち位置!)

 よちおさんの軽い毒のある振りを、だいもんがちゃんと咀嚼して返せないもんだから、言葉の毒だけが残る感じで、見ていてヒヤヒヤした。
 そこはちゃんとユーモアとして返さないと、ブラックになってしまうっすよ、あやこちゃん……。
 ステージがあと何回かあれば、もっとちゃんと会話出来るだろうになあ。この1回きりじゃなあ。
 と、じれじれしました。
 ああ、無駄に手に汗握った(笑)。

 よちお氏にもそのファンのみなさんも、ヅカメイクに黒燕尾で出て来て謎な画面になっていただいもんを、あたたかく迎えてもらってました。
 うれしいねえ。

 よちお氏の舞台は、これからも何度となく観に行くだろうし、てゆーか『エリザベート』行く予定だし。
 コンサートははじめてだったけど、テレビドラマでも最近ちょくちょく見るし、「トライベッカ」も見たし……これでさらに親近感わくなあ。

 あ、それと。
 コーラスガールとして参加していたいまっちが素敵に女性で……というか、見事なちちをしていて、すっげーとまどいました……(笑)。
 いまっちのクチから「のぞ様」呼びが聞けて胸熱。
 『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』に、だいもんは「タカラヅカの男役」として登場した。

 黒燕尾にヅカメイク。

 舞台上の誰もそんな姿してないのに、ひとりだけ。異様かもしんない、でもその心意気が素晴らしい。
 よっしゃっ!!
 わたしは客席で内心拳握ったわ(笑)。さすがだ、だいもん!

「現役タカラジェンヌなので、男役として出演させてもらった」とだいもん自身が語った。

 現役のうちに、男役としてよちお氏と競演するのが夢だった、とだいもん。
 そうか、夢か……。

 そこではじめて、思い至る。
 男役といっても、ふつーに女性であること。
 ふつう、女性として生まれたら、「男」として、男性と競演することは、ナイわな。
 芝居でなら「男の役」をすることは、すべての女性タレントさんにも可能性としてはあるかもしんないけど、その女性タレント「自身」が「男」として本物の男性とコンサートに出る、なんて。
 ありえないわー。

 そのありえないことが、今起こっているんだな。

 「タカラヅカ」という、特殊なジャンルゆえに。
 やっぱ、「タカラヅカ」ってすごいな。しみじみ。

 そしてだいもんは、「タカラヅカの可能性」を体現しているんだ。
 さすがヅカヲタのだいもん。「タカラヅカ」の可能性を信じてる、愛してるんだね。「タカラヅカ」の使い方を知っているんだね!
 男として、男性ミュージカルスターと競演する。役ではなく、だいもん自身で。
 すげえ。

 それは、生半可なことではナイ。
 技術のない人だと、成り立たない。
 色鉛筆の線はペンキの線に負けちゃうからだ。ただ並べて引いた線だと、色鉛筆は見えない。男性と並ぶと、男役は無理がある。

 そこがどこであれ、虚構である「タカラヅカ男役」をくっきり描くことのできる、完成度。
 現実世界では、男役は不利。だから、現実に虚構を創り上げる。無から有を作る。

 そして、卓越した歌唱力。タカラヅカという枠の中だけで通用するものではなく、現実世界でも共通の、高い技術。

 この両方がなかったら、最初から負け戦になる、コンサートを盛り下げてしまう。それじゃ呼んでくれたホストにも、そのファンにも失礼。なんて高難度ミッション。

 だいもん、よく受けたなあ、この仕事。
 そして劇団、よく許可したな(笑)。

 そして、受けること、許可すること、成り立たせてしまうこと、すべてすんなり「さもありなん」と思わせてしまう、今の望海風斗の勢いに、ただただ脱帽する。


 アウェイで歌うだいもんの歌声は、それほどものすごく素晴らしい!!というものではなかった。ほんとのとこ。
 個人名を掲げたコンサートをずっとやってきたスターのステージに、ゲストとしてはじめて1ステージのみ参加して数曲歌うだけの、個人ではコンサートおろかディナーショーすらしたことのない経験不足の今のだいもんは、やっぱよちお氏に比べて、見劣りというか、聴き劣りしていたと思う。
 せっかくの「男同士のデュエット」も、本物の男性歌手がふたりで歌う方が聴き応えあったろうなと思う。

 いや、もちろんうまいよ。
 ホールに響くだいもんの歌声。
 これだけの場所でソロでだいもんの歌を聴けるとか、感動でしかない。
 今のだいもんの立場と経験値で、よくぞここまで聴かせてくれました!と胸が熱くなる。

 ふつうにうまい。
 タカラヅカの人ってやっぱ歌うまいのね! と、知らない人に思ってもらえる、安定の歌唱力。基本値の高さ。
 やっぱだいもんいいなあ! そう思えることの幸福さ。

 ……ただ。
 ただ、これはだいもんの真骨頂ではない。
 剥き出しのだいもんの実力じゃない。

 だいもんの真価って、本領発揮ぶりって、『BUND/NEON 上海』の2幕とか、『アル・カポネ』の裁判シーンとか、ああいうのよね?
 アクセル踏み切ってこの世のモノではなくなる、別次元へ行っちゃって周りが見えなくなる、アレよね?
 ただきれいにうまく、緊張滲ませながら歌っている、コレじゃないよね?

 よちお氏に、本物のだいもんと競演して欲しいなあ(笑)。
 や、無理なのはわかってるけど。2日欄もかけて、男性と男役が「芝居で」競演は無理だと書いておきながらナニ言うんだ、ってなもんだけど。
 だいもんの真骨頂は、このガチガチの「今ここで歌うための歌」じゃないから。
 芝居だから。
 ミュージカルだから。
 物語の中でそのキャラクタとして生きて、役そのものに憑依して暴走する、そのときの歌だから。

 真骨頂じゃない……歌声を聴きながらそう思ってしまったのは、つまりその、ナニも考えられなくなるほどの最上級の歌声ではなかったってこと。……わたしにとっては。
 だいもんは、まだ上がある。まだまだ。これが実力じゃナイから。これ序の口だから。小手先だから。
 そんな、よくわかんないことがアタマのどこかを回った。
 ……盲目?(笑)

 だいもんに、コンサートをやってほしいなと思った。
 歌だけで、突然劇場を満たす経験が圧倒的に足りてないのなー。ショーの2番手だって、『La Esmeralda』ではじめて経験したんだもん。
 こんな「借りてきた猫」状態で、いきなりトップスピードを出せる人じゃないんだ。今のところ。
 コンサート経験してからだったら、きっとまた違ったんだろうにな。

 なんか、だいもんに対してさらに欲が深まった気がする。
 もっとだいもん。もっともっと。

 まあ、ほんとのとこ、いちばん見たいのは、だいもんがだいもん力を全開にできる芝居と役、だけどな。わたしは芝居が、ミュージカルがいちばん好きだから。
 午前11時ジャストに、モバタカからメールが来た。
 メールタイトルは「組替え(異動)について」

 昨日カチャの専科異動が発表になったばかりなのに、また異動発表?!
★☆★☆★☆★☆★
宝塚プレミアム情報
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5月23日(月)、下記の通り組替え(異動)が決定しましたので、お知らせいたします。

【月組】
凪七 瑠海・・・2016年9月5日付で専科へ異動

※昨日お送りする予定のメールマガジンの配信が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
お客様にいち早く情報をお届けできるよう、努めてまいります。
今後ともモバイルタカラヅカをよろしくお願いいたします。

モバイルタカラヅカ
↓ ↓ ↓ ↓
http://sp.takarazuka.tw/

 …………。

 こんなの、はじめて。

 人事異動お知らせメールが、翌日って。
 わたしのケータイの調子が悪くて、昨日受信するはずのメールを今日受け取った、というわけじゃない。本文に、そのことが書いてある。

 えー、モバタカメールは、情報解禁時刻ジャストに送信されます。異動やラインアップ発表なんかは。通常ならば、午後4時ジャストに。
 情報管理がうるさくなってきてるんだと思う。公式発表と同時に送信される。

 それが、今回はじめて、同時送信できなかった。

 月曜朝10時ジャストの、異例の発表。1ヶ月前に通常通り異動発表されているナガさんと同時に発表するのが筋だろうに、何故かこうなった、ナニかそうせざるを得なかった、通常通りではいけなかった、裏の事情を臭わす発表の翌日。
 「遅くなってすみません」と謝罪付きの、前代未聞のお知らせメール。モバイルタカラヅカは有料サイトなので、情報発信は客への規約、今回はそれを違反したことになる。だから謝罪付き。

 モバタカでお知らせメールを用意できないくらい、急に決まったことなのか……カチャの異動。

 予定通りなら、午後4時にメールとHP同時に発表されていたはず。
 それが、どちらもできなかった……ほどの、ナニかがあった。

 都市伝説?で目に耳にする、「なにも知らされずに行った先が、退団発表会見場だった。嫌でも退団発表するしかなかった」といういうトップスターが過去にいた、という話を思い出したニャ……。
 ネットのある今の時代なら、劇団からの要請を「嫌だ」と断り続けるジェンヌにえんえん交渉し続け、「嫌だ」ではなく「考えます」と言われた瞬間、HPに「人事発表」して、「発表済みだから、もう覆せません」とやる感じ? 午後4時を待たなくても、お知らせメールを用意出来なくても、とにかく公式にだけ載せてしまえば、本人が了承してなくても、もうどうしようもない……。
 なんて、ただの想像ですよ、根拠ないですよ。でもさ、そんな想像をさせるくらい、やってることが胡散臭いんだもん。

 ナニがあるにしてもさあ、なんでもっと取り繕ってくれないかな、劇団。
 こんな「大人の事情のせいです」と看板掲げるようなやり方、しなくていいじゃん。
 うまく騙して欲しい。
 夢を売りにしている劇団なんだから。
 頼むよ。
 朝イチから、爆弾が投下された。
組替え(異動)について
2016/05/23
このたび、下記の通り組替え(異動)が決定しましたので、お知らせいたします。   
月組
凪七 瑠海・・・2016年9月5日付で専科へ異動

 劇団からの発表は通常、午後4時だ。
 なんでそんな時間なのかは知らないが、HPで情報が発信されるようになった現代、そういうことになっている。
 集合日における組子の退団のお知らせ等は4時以外にも発表になるが、それ以外はほぼ4時で統一されている。
 朝イチ……つまり、午前10時に配信される情報は、大抵物販・チケット関係だ。

 それが、突然人事発表があった。

 何故、この時間?
 朝10時って、タカラヅカにおける「始業時刻」だよね? しかも月曜。土日は大きな発表は行われないから、なにか発表したいときは月曜を待つことになる……つまり。
 月曜の始業時刻を待ちかねて、早々にアップした、的な。

 月組公演まであと半月ほど。ふつーにお稽古中、その真っ只中に組子の異動発表って。

 9月5日付で専科に異動、って、ナガさんと同じじゃん? ナガさんは新生月組の演目発表と同じ4月25日、きちんと午後4時送信のメールで発表されたよ? 『NOBUNAGA』が月組最後、『グランドホテル』には出ません、って。

 同じ組で同じ公演に出て同じ日付に同じように専科へ異動するのに、何故カチャだけこのタイミングで発表なの?

 月組からこの公演を最後に専科へ異動、という前提で、ナガさんは月組子たちとお稽古しているわけよね。月組子たちに「最後まで一緒にがんばりましょう」とか挨拶して、組子たちは「専科に行っても遊びに来てくださいね」とか言ってるわけでしょう? その「見送る組子」たちのなかに、カチャもいたわけよね?
 カチャも専科になることが決まっていたのに発表出来ず、「ナニも知らない顔でナガさんを見送る振りをしていた」? なんのために?
 あるいは、ナガさん発表時にはカチャ専科の話は決まってなかった。お稽古中に急遽決まった?

 決まっていたのに秘密にして、すべての人を騙していた、のだとは思えない。そんなことをする益がどこにもないためだ。
 だから、急遽決まったのだと思う。
 9月5日付で専科に異動という人事は、新生月組演目と同時に4月25日に発表済み、今後ナニか異動発表するならそれは9月6日以降のことでないとおかしい、そうでないと新生月組にナニかイレギュラーなことが起こったと内外に知られてしまう……それくらい、経営側は理解しているだろうから、ふつう、しない。
 その「ふつうでないこと」を、今回あえて行った。
 しかも、通常の人事発表時刻を待たない、週明けの始業開始時刻早々に。

 たしか前回の公演の初日前日に、マギーの専科異動が発表になったよね。初日前日って、ファンはどれほど動揺しただろう。ありえんやろ。
 ナガさんの異動発表時期が円満異動の例だとすれば、集合日より前に発表されるはずよね。

 月組からコマが専科異動になり、マギーが専科異動になり、そしてカチャまでもが、って。

 …………。
 ええっと。

 月組こわい。

 も、それに尽きる……。

 マギーの初日前日発表もイレギュラー過ぎて「大人の事情」を感じたけれど、カチャの「朝10時発表」もイレギュラー過ぎて特別なナニかがあったとしか思えん……。

 ひとりずつ消えていく歌みたいなこわさ。
 劇団が生身の人間を使って行う「シミュレーションゲーム」を見せられている感。不要な駒は取り除きます、駒ですよ駒、ゲームですから。

 劇団は営利企業なので、一ファンに過ぎないわたしには理解できない人事を行うことは常だけど、それにしても近年の月組の不可解さは群を抜いてるな。
 そして、不可解な人事が行われるとファンの心が離れるのは過去の例からわかることだと思う。安定している組に人気は付き、理不尽なことが起こっている組は人気を得にくい。
 タカラヅカには5組あるわけだから、そのうちひとつを人事実験組として人気は不問とし、他組で収支を合わせる考えなのかしら……。
 100周年バブル以降、以前の閑古鳥時代と違って概ね盛況ななか、月組の低迷は一目瞭然だもんな……劇場に行くとわかるよー、バブル以前みたいな客入りだもん。

 でも、それも仕方ないわ……月組こわくて感情移入できないもん。
 どんだけ好きになっても、劇団が「トップにすると決めた人」以外はどんな扱いされるかわかんない、と、こう毎回見せつけられたら、こわくて踏み込めないもん……。
 入団時にすべて決まっていて、あとはどんだけ実力を付けても美貌を磨いても人気が出ても、一切報われないとか、わかっていたら、誰も応援しなくなるよー……。
 こわいよー。

 カチャへの好悪や得手不得手とは、別次元の話。
 カチャでなくてもマギーでなくても、他の誰であっても。
 冷水をぶっかけられるような人事は、見たくない。ジェンヌをシミュレーションゲームの駒のように扱う様は見たくない。
 わたしはタカラヅカに、現実の残酷さではなく、夢を、ファンタジーを見たいのよ。

 カチャが今後どうなるのかわかんないけど、より良いカタチに落ち着きますように。
 そして。
 月組がどこに向かうのかまったくわかんないけど、ジェンヌもファンもしあわせになる方向でありますように。

 ……月組、好きなジェンヌ多いんだよ……ほんと、頼んます……ヒリヒリするような人事やめて……うおおぉ。
 だいもんが『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』に外部出演する。

 ということで、「現役タカラヅカ男役の外部出演」についてうだうだ語る。

 タカラヅカの男役が、外部の芝居公演に「女優」として出演するのは微妙。現役のうちはやめてくれ、と思う。
 せっかくの「タカラジェンヌ」という架空の存在を、自ら壊すことになるからだ。
 や、世のヅカファンは誰もそんなこと気にしなくて、「イケメン俳優と競演する、女の子姿のご贔屓が見たい」とか「生チューやリアルな愛憎場面が見たい」とか思うものなのかもしれないが、わたしは「それは卒業後にやってくれ」と思う。OGになってからでも見られるじゃん、宝塚歌劇団在団中にやる必要ない。
 劇団も、それは「男役」としてのブランドに益はないと判断しているのだろう、OG絡みステージ以外で、男役の外部出演はほとんどない。

 今回、だいもんが出るのは芝居ではなく、コンサートだ。
 女優としてよちお氏の舞台に出るわけじゃない。

 コンサートの外部出演例は、すずみんの琵琶コンサートがある。
 琵琶奏者のコンサートに、すずみんは男役として出演した。黒燕尾着て踊っていた。
 だから、よちお氏のコンサートに男役として出ることも可能っちゃ可能。
 ただ、琵琶奏者は女性で、他の出演者もみな女性だった。女性相手に「男役」でいたわけだ。外部の女性と「タカラヅカの男役」ではもちろん異質過ぎてひどい画面になっていたけど。

 しかも今回は、ホストが男性のミュージカルスターだ。生身の男性の前で「男役」をやるのは、相当微妙だと思う……。

 いちばん安全というか、ありがちなのは、女性の姿で登場して数曲歌う、ってやつだな。
 素顔でパンツスーツなんか着て現れて、「現役タカラジェンヌです」「望海さんは男役なんですよね」とか説明されて、「男役講座やってみてくださいよー。かっこいい帽子の被り方」「かっこいい椅子の坐り方」とかやって、客席から「きゃー」と言われる。「さすが男役さんは違いますねー」とかリップサービスされて。
 ……ジェンヌがテレビのバラエティ番組に出たときのお約束。あんな感じ。

 コンサートだろうと芝居だろうと、外部芸能界では、誰もヅカメイクしてないから。ヅカじゃないから当たり前。舞台用に派手になっているとはいえ、基本素顔メイクだから。
 当然、そこへゲストするには素顔メイクになるわな。

 そして「かっこいいパンツスーツのおねーさん」としてディズニーソング歌って、「やっぱりタカラヅカの人は歌うまいですね」とかリップサービスされて終了。ミッションコンプリート。

 これがいちばんふつうで、安全。
 タカラヅカの男役は異質過ぎるから、外部に出るときのテンプレート必須、になるわな。
 うん。


 とまあ、こんだけぐたぐた言うたうえでなんですが、わたしはガチの男役として出演希望。

 スカステイベントやお茶会、テレビのバラエティみたいな、「かっこいいパンツスーツのおねーさん」はいらん。
 黒燕尾にヅカメイクで出て、男として歌ってくれ。
 女性歌手としてよちおと共演したいなら、卒業後にしてくれ。

 色鉛筆とペンキとか、テンプレートとか、さんざん語っておいて、なお。
 それでも。

 現役タカラジェンヌなら、フェアリーであれ。

 外部でもテレビでも、芸を披露するからにはガチにヅカで男役であれ。
 フェアリーであることを貫いてくれ。
 そう思う。

 さすがに芝居は無理だと思うけど。
 しいちゃんに、あの外部芝居『タック』で「男優」として出演しろとはまったくもって思わなかったけど。
 しいちゃんでなくても、ワタさんでもみつるでもちぎくんでもマカゼでも(素で男に見えるチョイス)、誰であっても、外部で「男であれ」とは思わないけど。(トドだけはいけるかもしれんが……)

 外部芝居でリアル男性に混ざって男の役をしろとは言わんけど。
 コンサートなら、まだ、ありじゃね?
 芝居の役ではなく、タカラジェンヌ望海風斗として出演するんだし。

 琵琶奏者の横で踊っていたすずみんを思い出しつつ。
 あのときも違和感ばりばりだったし、今回もまた、相当無理な世界観だと思うけど。
 それでも。

 だいもんにも、「タカラジェンヌ」であることを、期待した。

 そして。

 『井上芳雄 シングス ディズニー』において、だいもんはほんとうに、タカラヅカの男役として出演した。

 黒燕尾にヅカメイクだー!
 ほんとに男役だー!!


 てことで、続く(笑)。
 『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』へ行ってきました。

 場所は大阪フェスティバルホール。
 昔堂島で働いていたので、このへんなつかしい……お店とかずいぶん変わっちゃったけど。阪急梅田から地下街てくてく、昔の通勤路。ドーチカ突き当りから地上へ出て。
 まさか堂島ホテルがなくなるとは思わなかったよなああ、職場の仲間たちと中華よく食べに行ったよな、とか、年寄りの感慨は絶えない。
 そしてやっぱりなつかしいフェスティバルホール。
 わたしは地下のリサイタルホール専門だったけど、建物自体はしょっちゅう来てました、若いころ。

 このホールで、だいもんが歌うんだ……。
 そう思う不思議さ。
 このホールで、だいもんの歌を聴けるんだ。
 そう思う喜び。

 や、ちょー端っこ席なんだけどね、会場に入れただけでもうれしい。自力では取れなかったので、譲ってくれた友人に感謝。

 さて、コンサートの感想を記す前に、ぐたぐた考えたことを書いておく。


 現役男役の外部出演が滅多にないのは、当然のことだ。

 と、今回改めて思った。

 だいもんが、外部出演する。
 劇団からの発表は、
外部出演について『井上芳雄 シングス ディズニー ~ ドリーム・ゴーズ・オン!』
2015/12/18
※雪組の望海 風斗が外部出演することが決定しました。

 ……だけなんすよ。
 それ以上の情報ナシ。

 外部出演って……ナニするの?

 歌うことはわかる。ディズニーコンサートのゲストなんだから、ディズニー歌うんでしょうよ。それはわかる。

 問題は、もっと根本的なこと。

 ……どっちで?

 えー、男役って、実は女性です。

 わたしは男役の三人称を「彼」、呼び方も「男」「男の子」で統一しておりますが、それはタカラヅカを夢の世界、タカラジェンヌをフェアリーと想定しての「ごっこ遊び」のようなもんです。
 フィクションをフィクションだとわかったうえで、楽しんでいる。ババ抜きでもオセロでも、ルールを守らないと遊べないでしょ? 男役は男、夢を楽しむためにルール必要。

 ゲームを楽しむためのルールとして、ツールとして割り切っているけれど、ほんとのとこ、男役は、女性です。

 タカラヅカ以外の世界では、だいもんだってふつーに女の子です。

 女の子として出演するの?

 わたしが今までに観た現役タカラジェンヌの外部出演はふたつだけ、しいちゃんとすずみん。
 しいちゃんは外部のふつーの舞台、ふつーのお芝居に出演だった。「女優」として。少年っぽい女の子の役。タカラヅカの男役、ということに配慮した役だったけど、ぶっちゃけOGでいいような仕事。
 すずみんはもっと謎。琵琶奏者のコンサートに出演し、琵琶の演奏で踊ってた。こちらはあくまでもタカラヅカの男役として。……でも、そもそもなんで琵琶演奏で踊る必要があるのかは不明。演出も、ただふたつを並べただけで融合なんてまったくさせてなかった。(ちなみにこの謎コンサートの演出家はミキティ)

 「タカラヅカ男役」という設定は、外部で使うには難しすぎる。

 しいちゃんのときに思った。
 外部で「女優として」男性俳優と共演すると、「タカラヅカマジック」が消える。
 男役、という架空のキャラが消えて、生身の女性が出てしまう。タカラヅカの舞台で女役をするのとはわけが違う。本物の男性と絡むと、「男役」は通用しないんだ。
 それは、男役が本物の男性に劣る、という意味じゃない。
 色鉛筆で描かれた線が、ペンキの線の横だと見えなくなる、みたいなもんで、「違う道具なんだ」というだけのこと、「色鉛筆がペンキに劣る」わけじゃない。画用紙にペンキは使わないし、壁を塗るのに色鉛筆は使わない。
 しいちゃんの少年っぽい少女役はすっげーかっこよくて、男性俳優にも負けずにガシガシ踊ってアクションしてて惚れ直した。いい役で、いい公演だった。観られて良かった。それは本当。
 だけどやっぱり、「タカラヅカの男役」は現役時に「女優」として外部舞台に立つのは微妙だと思った。

 長い年月をかけて、「タカラジェンヌ」という架空の存在を創り上げるのに、その渦中に「生身の女性」姿を見せるのは得策ではない。
 ……からこそ、現役タカラジェンヌは外部で女優仕事をさせないのだ。
 もしもそれが「商売として益がある」なら、劇団はやってるでしょ、ジェンヌの貸し出し。ばんばんと。
 『TAKE FIVE』みたいなお祭り出演じゃなく、ガチに女優として東宝ミュージカルでもテレビドラマでも出して、俳優とラブシーンさせたり、OGと変わらない仕事させてるんじゃない? スミレコードもなんもない役を。

 女性としての外部出演は、タカラヅカの男役にはマイナス。
 かといって、「男性の俳優」として、本物の男性と共演できるはずもない。本物の男性は、あんな特殊なメイクしてません。
 OGは「男性役」で本物の男性と同じ舞台に立っているけれど、何作かそういう舞台も観に行ったけど、それはOGだからできることだ。タカラヅカまんまじゃなく、別の形を作り出して、別の舞台を作っているんだもの。

 のんきに「だいもん外部出演うれしい」と思ったけど、よくよく考えれば、こりゃ難しいことだなと。

 ということで、ぐだぐだ語りは続く。
 宙組別箱演目発表。
 つか、トップ娘役ナシで全ツ回るのか。変なことするなあ。
 ……ということは、置いておいて。
2016年 公演ラインアップ【全国ツアー】<11月~12月・宙組『バレンシアの熱い花』『HOT EYES!!』>
2016/05/20
5月20日(金)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【全国ツアー】公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
宙組
■主演・・・朝夏 まなと
◆全国ツアー:2016年11月18日(金)~12月11日(日)

ミュージカル・ロマン
『バレンシアの熱い花』

作・演出/柴田 侑宏 演出/中村 暁

『バレンシアの熱い花』は、1976年に榛名由梨を中心とした月組によって上演され大好評を博し、2007年には大和悠河のトップお披露目公演として宙組で再演された名作オリジナルミュージカルです。19世紀初頭のスペインの一地方バレンシアを舞台に、領主であった父を殺された青年が、仲間と共に復讐を果たす姿を、様々な愛の形と共に描き出します。多彩な登場人物達が紡ぎ出す、激しくも切ない大人の恋物語。

ダイナミック・ショー
『HOT EYES!!』

作・演出/藤井 大介

朝夏まなとの大きく真っ直ぐな“瞳”。その瞳に宿る、輝きや情熱から受ける様々なイメージをテーマに、エレガンスとダイナミックさを合わせ持った作品。朝夏率いる宙組の魅力を存分に引き出した、華やかで情熱的なショーをお楽しみ下さい。

 『バレンシアの熱い花』って、主人公がキ〇ガイの、あの最低作よね?

 柴田巨匠の名声に傷を付けるシリーズのひとつ。
 「柴田作品は名作って聞いてたけど、それって単に選択肢の少ない時代だからありがたがられただけで、現代基準だとただの駄作じゃん」と切り捨てられることを前提にしているのか、と思わせるような、潔い駄作をわざわざ再演するよね劇団って。
 ヘタに再演さえしなければ「柴田作品ってあんまり知らないけど、名作ばっかなんでしょ?」と現代のファンを騙せておけるのにね。雉も鳴かずば打たれまいに。

 『バレンシアの熱い花』って、この前の再演時、トップお披露目公演で、2番手と3番手の役替わりまでして、劇場が真っ赤っかの「お客が2階席にほとんどいません!! 1階席も後方席が大変なことに!!」状態だったじゃん。
 その上全ツまでして、わずか数公演しかない梅芸が「2階席・3階席に人がいません! 当日券で1階席の中頃がふつーに買えます!」状態だったじゃん。

 誰も求めてない、ってわかりきった作品を、何故またやる……?
 意味わかんねえ。

 それとも劇団は、前回ガラガラの客入りだったのは、すべてキャストのせいで、作品に罪はないと、本気で思っているのかしら。
 第一級戦犯は作品でしょうに。

 まぁくん乙。がんばれ。アタマおかしいよーなアホな役でも、まぁくんならきっと、なにかしらの説得力を持って演じてくれると思う。
 マカゼはラモン一択だな。ロドリーゴはナイ(笑)。
 イサベラはうらら様、マルガリータはまどかちゃんだなー。キャラだけでいうとまんまハマるわー。

 まあ、全ツでよかったよね……大劇場本公演だったら目も当てられん。不幸中の幸い、最悪の事態だけは逃れられたか。……って、柴田巨匠作品が、植爺爆弾と同じ扱いだわ……劇団も考えればいいのに。
 ぶつぶつ。

 んで、全ツに出ないトップ娘役のみりおんは、トド様とバウ。
2016年 公演ラインアップ【宝塚バウホール、KAAT神奈川芸術劇場】<11月~12月・宙組『双頭の鷲』>
2016/05/20
5月20日(金)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【宝塚バウホール】【KAAT神奈川芸術劇場】公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
宙組
■主演・・・(専科)轟 悠 (宙組)実咲 凜音

◆宝塚バウホール:2016年11月22日(火)~12月3日(土)
一般前売:2016年10月22日(土)
座席料金:全席6,300円

◆KAAT神奈川芸術劇場:2016年12月9日(金)~12月15日(木)
一般前売:2016年10月30日(日)
座席料金:S席7,800円、A席5,000円

Musical
『双頭の鷲』~ジャン・コクトー「双頭の鷲」 より~

原作/ “L’AIGLE A DEUX TETES” by Jean COCTEAU
著作権代理/(株)フランス著作権事務所
脚本・演出/植田 景子

あらゆる芸術分野で多大な功績を遺したフランスの天才芸術家ジャン・コクトーが、ハプスブルク家皇妃エリザベート暗殺事件に着想を得て1946年に書き上げた戯曲であり、自らの手で映画化も果たした「双頭の鷲」。今なお演劇作品として世界中で高い人気を誇るこの作品をミュージカルとして再構築し、コクトーの生きた時代の空気を漂わせながら、独自の世界観で描き出します。
婚礼の夜に暗殺された国王の十年目の命日、古城で一人、亡き夫を偲ぶ晩餐を始めようとしていた王妃のもとへ、窓から王の肖像画に生き写しの男が飛び込んでくる。その男の名はスタニスラス、王妃を誹謗する詩を秘密出版した無政府主義者であり、王妃暗殺の機会を狙う人物であった。皇族でありながら自由主義に傾倒する王妃と、王族的精神を持つ無政府主義者。孤独の中に生きてきた二人の魂は瞬く間に惹かれ合うが、やがては悲劇的な結末へと突き進んで行く……。
スタニスラス役に専科の轟悠、王妃役に宙組の実咲凜音を配してお届けする、狂おしいまでの熱情に彩られた、耽美的な愛の物語。

 ちょ……、まぁくん全ツとの演目の差がひどいな。
 景子タンの本気の耽美作!! 『バレンシアの熱い花』に出るよりこっちの方が絶対いいはず。

 景子タン×トドロキの『オネーギン』が大好物だったわたしは、わくわくが止まりません。
 トドロキに惚れ直したもんなあ……。そして、それまで興味のなかったみみちゃんに一気に好意を持った。
 物語だけでなく、演じているキャストまで好きになれる作品だった。

 今回もまた期待。
 新しいトドロキを見せて、そして、みりおんをさらに好きにさせて。


 何故、わざわざトップ娘役不在で全ツを回るのか、思うことはあるけれど、とりあえず今は触れない。
 劇団が変なことをするときは、大抵大人の事情がある。そんなもんがなけりゃ、ふつーのことをふつーにするだけで済むもの。
 ふつーのことをふつーにできない事情があるんだ。
 だからもう、ナニも触れずにおくわ。
 花組新人公演『ME AND MY GIRL』感想あれこれ。

 つかさくん、なんかかっこよくなってきてない?

 ふたりのジョン卿。あれんくんとつかさくん。
 あれんくんは美形枠……顔がガイジン系なのでタカラヅカ的にはストレートな美形ではないけれど(ガイジンさんはヅカメイクと相性いまいち。薄い顔の方が映える)、それでもわたしは美形さんだと思っていた。
 そして、つかさくんは、もっと脇っぽい顔というか……真ん中に寄るには、なにかいろいろ足りてないキャラだなあ、と思っていた。正統派の美形!ってわけじゃないよねえ。もちろん、ジェンヌさんはみんなきれいだけど、そのきれいな人たちの中での区別というか分担というか。

 つかさくんがきれいにジョン卿やってて、なんか「おおっ」と思った。
 ジョン卿は2番手役だけど、本専科のおじさまや、組長さんもやる別格役でもある。ジョン卿もだけど、フランツ@『エリザベート』とかキャリエール@ファントムとか、海外ミュージカルの年配2番手役は新公では路線外の場合も多いし、つかさくんがジョン卿でも「すごい、2番手役だ!」とは思わなかったの。
 脇の子もやる役だものね、と特にナニも思わずにいた。
 それが、なんかちゃんときれいに「タカラヅカのジョン卿」をやっていて、イイ感じ。
 ヘタじゃないし、このままどんどん垢抜けて実力も付けていって、いいスターさんになってくれるといいな。

 あれんくんには特にナニも感じず……っていうと言葉悪い? きれいだし歌えるし、なんの問題もなく、発見もなかったというか。
 マサツカ芝居の方が意外性あったなー。足りてないのに、うまいわけじゃないのに、それでもなんか気になる、という。
 『スターダム』でわくわくしたので今回注目していたんだけど、……マサツカ芝居してないときのあれんくんは、わたし的にひっかかるものがない模様。
 新公だから、周りと比べて足りてないという印象もなく、うまくやっていたので余計に見逃しちゃったのかも。
 きれいで歌える若手だから、今後も要注目。


 マリア役のふたり、1幕がうららちゃんで2幕が映見ちゃん。

 映見ちゃんに役が付くのがうれしい。
 なんか気になる彼女、今のところ気になるだけでそれ以上を知れずにいるから。もっと知りたい。

 彼女は真面目な人なんだろうか。
 なんかすごーく真面目に、四角四面な役作りをしているように見えた。
 もう少しゆるめてくれてもいいんだけどな、と思えるほどに、キリキリ強く引き絞ったような演技。

 わりと悲壮感漂うのが持ち味なのかな? 今までの、わたしみたいなライトな人間でも区別が付くような、大きめの役を思い返してみれば、いつも悲壮感というか、可哀想な感じがあるような……?
 単に余裕がないだけかな。学年が上がって、常時それなりの役付きが得られるようになったら、も少し余裕のある芸風になるかな。
 うまいのに、何故かいつも切羽詰まっているような印象。
 それはそれで萌える持ち味だが(笑)。

 うららちゃんは、いつも思うがほんっと顔が好みだ。
 宙組のうらら様といい、「うらら」という名はわたし好みの顔を持つものなのか(笑)。
 うららちゃんの高く大きな鼻が好き。顔立ちはおねーちゃんよりくどいよね? そこがいい。……だからほんと、そのきれいな顔が、かなり大きめなことが惜しい……。顔というか、頭部全体が大きいのかなあ……こんなにこんなにきれいなのになあ。舞台って大変。

 不思議なんだが、わたしはうららちゃんに不感症っぽさを感じる。感情があるのだと目では見えているはずなのに、起伏具合、心の跳ね返り具合が希薄なイメージ。何故だ。
 豆腐を思い浮かべたりもする。やわらかいのに、表面をつつくとぷるぷる揺れるだけで、崩れない。ちゃんと立っている。中にはかなりの振動が走っているだろうに、表面はあまり変わらない、みたいな。
 何故そんなイメージを持つのかは、わからない。

 マリアもまた、豆腐みたいで。
 やわらかいのに、四角い切り口を見せて、立っている。

 えー、わたしこのマリア、すごく泣かせてみたいです(笑)。彼女が崩れるところが観てみたい。
 何故そんな風に思うのかわからない。
 謎だ(笑)。

 あ、映見ちゃんのマリアにはソレ思わない。
 もともとギリギリっぽく見えるので、これ以上プレッシャーかけたいとは思わない。映見ちゃんマリアには、とんとん、と肩を叩いて、大丈夫だよ、と優しくしたい。
 うららちゃんが余裕バリバリに見えるわけでもないし……この感じ方の差はなんなんだ。
 映見ちゃんもうららちゃんも、どっちも魅力的な娘役さんたち。ふたりとも気になるので、今後もまったり眺めたい。


 しかし、主演でもない比重と出番のWキャスト×2だと、キャラクタ同士の関連性まではわからないわ……わたしには。
 ジョン卿はジョン卿、マリアはマリア、単体の芝居しか印象に残らない。
 抜粋場面のつぎはぎで1幕2幕別人で1回限りの上演。
 ……観る側のハードル高すぎるわ。
 新人公演『ME AND MY GIRL』、役替わりのため、主演はふたり。
 1幕のゆーなみくんと、2幕のあかちゃん。

 ゆーなみくんはずーーーーっと抜擢され続けてきた人だから、今さら特にナニも語ることがなく……。
 あんだけ何年も何年も「下級生のスター位置」に置いておきながら、今さらよーやく、しかも0.5主演って。劇団は相変わらず育てるのヘタやなあ。
 月組の85期トリオを思い出す。何年も何年も同じ面子で新公の番手役を分け合って、どの公演観ても同じ顔ぶれで、結局誰ひとりトップスターにも、明確な番手付きスターにもならなかった、という。
 や、トリオのみなさんは、それぞれ味のある別格スターさんになったけれど、劇団的には「結果、別格」にしたかったわけじゃないだろうに。育てたかったのは「トップスター」だろうに。
 抜擢だけ早くても、ずーーっと同じ立場、同じ露出で据え置くと、人気出ないんだよねえ……。やっぱ明らかな変化、ギャップがないと。

 で、ゆーなみさんは雪の夢華さんといろいろかぶる。
 「劇団が、早期抜擢している・したがっている」けれど、「一気にポジションアップさせられず、半端な扱いをしては様子見をしている」という点と。
 わたし個人が、「実力はあるけど、真ん中向きではナイ」人だと思っている、という点において。

 うまいけどさー、わたしには美形に見えないんだもん……ゆーなみさんも夢華さんも。ビジュアル問わず、というなら、もっと圧倒的な実力が欲しい。それこそ、音くりレベルくらいには。

 「ふつーにうまい」くらいだと、「脇でよくね?」と思ってしまうのよ……ごめんよー。
 や、ゆーなみさんが、今はじめて抜擢されて、「あの子誰? 前にどんな役やってた? ぜんぜん知らない」てな無名の子なら、「これだけふつーにうまいなら、十分じゃん。ビジュアルはこれから磨けばいいんだし!」となるけれど。
 抜擢され続けてすでに何年?だもん……。路線スター役だとか、本公演ショーの少人数口とか、ふつーに「スター枠」に居続けている人だから、評価が辛くなってしまうのよ。

 わたしはゆーなみさん、別にキライでも苦手でもなく、興味のなさから本公演では目に入らないんだけど、新公ではもう「すでにいっぱい観た」気になっている。
 歌える人は好き・音痴は苦手、なので、歌のうまいゆーなみさんには期待していた部分もあったんだけど……今のところ、歌でわたしをねじ伏せてくれたことはないしなあ。

 今回も、うまかった。悪くなかった。
 ゆーなみさん比で、きれいになっている。

 でも、ときめかないなあ。
 ここいらでどーんとギャップ萌えとか、あればいいのに。今まで興味ナイとか言っててごめん! なんかすっげー萌えた!! てなことになればいいのに。


 2幕のあかちゃんは……なんというか。

 可憐だった。

 ゆーなみさんもそうだったんだけど、今回、女の子たちが強くて。
 美伶ちゃんはまだしも、音くりちゃんが相手だと、あかちゃんはなんかとっても色が薄く、存在が弱々しかった。
 美伶ちゃんと音くりちゃんの壮絶な殴り合いの後ろで、男たちは可憐に震えているイメージ。
 ただでさえ2幕のビルはおとなしいしね。

 きれいで歌も歌えて、王子様的な雰囲気もあって。
 いいんだけど、どうにも弱々しい。役がどうこうじゃなくて、存在が。
 おくゆかしい性格なのかな? 前に出て来ないというか。

 まだゆーなみさんの方が、「主演」っぽかったなあ。
 いちばん「主演」らしいのは音くりちゃんだけど(笑)。


 しかし、4人の主演さんたちが、全員歌ウマだってのは素晴らしい時代になったもんだねえ。
 ほんの数年前まで、「音痴でないと路線スターになれない」ぐらいの勢いだったのに。

 うまい人たちは歓迎なので、よろこばしいことです。
 新人公演『ME AND MY GIRL』、無事観劇。行けばなんとかなるのが、ムラのいいところ(笑)。

 ムラの新公は、
ビル
一幕 優波慧 / 二幕 綺城ひか理
サリー
一幕 城妃美伶 / 二幕 音くり寿
ジョン卿
一幕 亜蓮冬馬 / 二幕 飛龍つかさ
マリア
一幕 春妃うらら / 二幕 乙羽映見
ジェラルド 聖乃あすか
ジャッキー 帆純まひろ

 1幕2幕で別人だと、落ち着かない。
 なんか、「主演」を観た、って気がしないわー。

 そのせいかもしれないけど、通常ならもっとも比重が大きい主演男役についての印象は薄く、

 美伶VS音くりのガチンコ勝負!! に、思えた(笑)。

 ビルもサリーも1幕の方が比重高い気がする。2幕はあっちゅー間に終わるっていうか。ジョン卿くらいかな、2幕の方に見せ場があるの。
 1幕は最大の盛り上がり場面、ランベス・ウォークもあるしねえ。1幕で華々しく盛り上がって、2幕は収束に向かっておとなしく進行する、というイメージ。全場面あるわけじゃない、短縮版の新人公演だからね。

 それゆえ、1幕でサリーをやる美伶ちゃんの方が有利。
 が、今回の新公は1幕と2幕のつなぎを、2幕のサリーである音くりちゃんが「銀橋ソロ」というカタチで務めている。

 銀橋ソロ。

 えー、海外ミュージカルである『ME AND MY GIRL』には、基本「銀橋ソロ」はありません。

 存在しないモノが、突然現れる。
 そのインパクト。

 無用の長物、舞台と客席を遠ざける障害物でしかなかった銀橋が「舞台と観客をつなぐ」「スターの見せ場」として脚光を浴びる。

 しかも、歌う音くりちゃんがすげえ歌ウマ! 易々と、悠々と、歌ってのける。
 えーと、音くり、初ヒロインだよね? 銀橋ソロ、はじめてだよね?
 なんでこんな「10年前から銀橋ソロやってますがナニか?」てな様子で客席に向かって歌ってるの??
 自分だけで歌ってるわけじゃなくて、ちゃんと客席観てるの、自分がなんのためにそこにいるのか、わかってるの。
 ふつーの抜擢下級生新米ヒロインはそんなことできないよ? 歌うだけでいっぱいいっぱい、銀橋渡るだけでいっぱいいっぱい、そもそも役者として板の上にいることだけでもいっぱいいっぱい……なのに。
 完璧に「主演スター」として、そこにいるの。

 えー、ビル役のゆーなみさんも、あかちゃんも、「主演してます、がんばってます」はあったけれど、「主演スターです!」はなかったよ?
 美伶ちゃんも「ヒロインです!!」はあったけど、「主演スターです!!」ではなかった。

 だからもう、びっくり。
 音くり寿、ナニモノ??

 舞台度胸ありまくりだわ、歌も芝居も巧いわで、すごい子が出て来たなと。

 ……ただ、ごめん、わたしはほんと、好みじゃない……。
 『Ernest in Love』のときはまだ顔が苦手なだけだったけど、今回の新公で芝居も苦手感が高まっちゃったわ……。
 すっげーうまいんだけど、タカラヅカじゃないよね……?

 ことちゃんとか真彩ちゃんとか、「児童劇団出身かな」と思わせる芸風の子はいるけれど、音くりちゃんは「児童劇団出身」ではなく「今現在、児童劇団所属」みたいに感じる……。


 んで、美伶ちゃんも実力と押し出しの良さで、男役を吹っ飛ばし気味の持ち味の娘役さん。
 ただ美伶ちゃんは「あたし、ヒロイン☆」芸風っていうか、なんかすげー「ヒロイン☆(キラキラ~~)」という自分大好き!タイプに思えていて。
 や、勝手なイメージで、本人の考えも世間様の評価も知りませんが。

 今回もまた、すげーヒロインやってる自分が好きそうで、素敵なヒロインっぷりだった。わたしにはそう思えて、「このサリー、ビルよりビルを好きな自分が好きだよねー」とニラニラしておりました。
 や、美伶ちゃんの芸風は今のところキライじゃない、これ以上行きすぎるとわかんないけど、今現在、この自己中さは舞台人としてアリだと思ってる。
 ので、「このサリーを受け止めなきゃなんない、ゆーなみさん大変だ(笑)」と思って見てたんだけど。

 や、ある意味、美伶ちゃんも大概っていうか、「ヲイヲイ」な部分を感じていたところに。

 「ヒロイン」ですらない、「私が主演スターよおおお!!」という、音くり登場で、客席でうひゃああ、とのけぞった(笑)。

 やだなにコレ、美伶VS音くり! 女同士のガチバトル!
 おもしれーー!!

 美伶ちゃんと音くりちゃんの殴り合いが壮絶で、観ていてすっげーわくわくした! 滾った!

 美伶ちゃん、それでもまだ「ヒロイン」としてセーブしてたよね? でも、「主演!」とぶちかました音くりを観て、どう思った? ねーねー、「あたしももっとやればよかった!」とか、「見てなさいよ、東宝では……!!」とか思った??
 東宝では美伶ちゃんがやり返すかも?
 えええ、なにソレ観たいーー!!

 ……すみません。
 すべて、勝手な妄想です。
 舞台から、わたしが勝手にそう感じたというだけで、真実ではありません。真実なんて誰にもわかりません。

 でも、タカラヅカも芸能界、こういう女の闘いが繰り広げられるのは、楽しいな。マヤと亜弓さんみたい。
 美伶ちゃんも音くりちゃんも、実力ありまくりの女優さんたちだからねえ。
 ただここ、タカラヅカだからなあ。女優じゃなくて、娘役。主演じゃなくて、ヒロイン。ソコは理解して欲しいなあ……。
 でもま、今は新公だし。やりすぎ上等。
 このふたりが、壮絶に殴り合いしてでもなんでも、どんどん磨かれて、素晴らしい娘役スターさんになってくれれば、一ファンとしてはうれしい限り。
 ……音くりちゃんも、苦手ではなくなるかもしんないし。

 なんにせよ、興味深い娘役さんたちだ。
 最近、チケットが手に入りません……。
 って、最近もナニも、まず手に入りやすかった時代があったのかっていう話だけど。
 クジ運ナイことをネタにできるくらい、わたしゃチケット当たらない人なんですが。
 それでも、自分比で、最近はチケットが当たらない。

 今の友会のシステムになってから、何故か新公だけは当たってたのね。パーフェクトではもちろんないけど、けっこう高確率で。
 新公以外当たらないから、やっぱりいつも「チケットない~~、当たらない~~」と言ってましたが。

 それがさー、最近はその新公すら当たらなくなっちゃって。

 100周年過ぎてから、友会のはずれっぶりに拍車がかかったなと。
 ちなみにわたし、ステータスはダイアモンドなんですが。ご贔屓いなくても劇場には依然通ってるし、ライトなヲタなので、友会しかチケット入手手段ナイし。ってことで、ステータスだけは高い……一般発売でも他プレイガイドではなく、ふつーに友会サイトで買ってるし。←抽選が当たらないから、一般発売も利用するしかない。

 やっぱりヅカファンが増えたんだろうなあ。

 それゆえに、新公のレートが上がったような気がする。

 新公はレアな公演ではあるけれど、大半の人は興味を持たないモノ、だったのになあ。
 前はムラ新公ってオケピでふつーに「譲ります」がわらわら出ていたし、へたすりゃ値下げの嵐だったよなあ。
 新公なんて、観たい人しか興味自体持たないモノだった。無名で未熟な人たちによる興行なんてもん、ヲタしか必要としない。そして、ヲタならば会や友人・知人を通して手に入れる・手に入る。必要とする人には行き渡っている。
 だから、友会でヘタに2枚入力なんかして当たっちゃった場合、友人に断られたら最後、さばけないよ! てなもんだったのになー。(こわいからいつも1枚でしか入力しない、ムラの平日なめんな、ふつーの人は行けない場所と時間!)
 交換手札にもなりゃしないし、実際にムラへ行けばサバキがいっぱい、「500円でいいです」とか言ってたたき売り状態だったりしたのになー。(実際、ワンコインでよく観たなー。2階の端や後方はずらーっと空席だったなー)

 そんな状態だったから、人気のない新公だけ当たるダイアモンド、って、微妙……。

 だったのが、今はその新公すら当たらないもんなあ。
 オケピにもあまり出ないし。なんかすげー高価値商品として、交換手札にされてるし。
 ヲタが会や知人を通して入手しているのは変わらないと思うので、それ以外の層が100周年以降増えたってことだな。オケピの交換手札を見ると「1回しかないからレア公演、トップサヨナラショー付き公演と同じくらいの価値」的な考え方らしい。えええ?

 時代は変わる……。
 早く今の時代に慣れなきゃなー。
 年寄りは自分の時代の感覚にしがみつくからやーねぇ。


 ということで、明日の花新公もチケットないのですが。
 行けばなんとかなると信じて、ムラまで行く。トップサヨナラショー付き公演はどうにもならないけど、新公なら大抵なんとかなるんじゃ? と、昔の感覚のまま(笑)。
 花組『ME AND MY GIRL』の役替わりを観てあれこれ思ったことを、つらつら語る。

 現在の花組の別格娘役スター、仙名さんとべーちゃんって、キャラが対照的でいい。
 べーちゃんは、かわいい・庶民的・善人・包容力、と、持ち味が少女マンガのヒロイン系。びんぼーでドジっこだけど、いつも明るくて一生懸命、人気者で周囲に笑いが絶えない、的な。
 仙名さんは、美人・孤高・辛辣・高みにいる、と、持ち味が少女マンガのヒロインのライバル系。お金持ちで美人で頭が良くて、性格もきついから誤解されがち、取り巻きはいても親友はいない的な。

 だから、このふたりがマリア公爵夫人をやるとわかったとき、キャラ的に合っているのは仙名さんだと思った。べーちゃんだと優しすぎる。
 仙名さんはその持ち味のまま演じるだけで「いかにもなマリア」になる。

 持ち味がマリアとは正反対のペーちゃんが「基本忠実なマリア」で、持ち味がマリアまんまな仙名さんが「まったく別のマリア」でくるあたりが、ますますどこかの演劇マンガみたいだ。アルディスとオリゲルドか(笑)。

 仙名さんは最初から別格コースの人だけど、べーちゃんは新公ヒロインもして、路線娘役としての道もあったはずなんだが、今はふたりして別格スター。
 キャラのかぶらないお姉様スターがいるっていうのは、いいな。彼女たちがたとえば『Ernest in Love』のセシリィみたいな役を独占し続けるならば若手娘役の活躍機会を奪うことになるけど、『ミーマイ』のマリアのような役をやる分には問題ないはず。
 そしてわたしは、役が少なく、若者役は少ないどころか僅少の海外ミュージカルで、少ない役を「大人役だから」と専科のおばさまに振るよりは、組子で回して欲しいと思うので、大人を演じられるお姉様が組にいるのはいいと思う。

 ビルとサリーだけでなく、ジョン卿とマリアにもきゅんきゅんしたいもの。マリアはおばあさんではなく、大人の女性がいい~~。

 べーちゃんと仙名さん、ふたりのマリアを観られて良かった。

 いつかこのふたりで、VSモノ観たいなあ……。それこそ、アルディスとオリゲルドみたいな(笑)。
 花組『ME AND MY GIRL』、AもBもひっくるめて、役替わりキャストについてあれこれ。

 ちなつくんって、もっと美女じゃなかったっけ?

 わたしのただの思い込み?
 ちなっちゃんは女役もできる、スタイルのよさと、なかでもとびきりの美脚の持ち主。美女になってスターと絡んじゃうのもOKな人! という認識だった。
 素顔はともかく、舞台では美男子だし。イケメンは女装しても美形よね、美女になれるよね。

 だから、ちなっちゃんがジャッキーだーのランベス・クイーンだのやるのは、なんの疑問も不安もなかった。
 むしろ、また女役かー、できるのわかってるんだから、新鮮味ナイ配役やめろ、と思ったくらいだ。

 でもさ。
 まず、Aバージョンのランベス・クイーンで目を剥いたのよ。
 えっ……、って。

 ランベス・クイーンって……ドラァグクイーンのことだったのか!!

 ランベスってそういうとこ? 実際そうなのかもしんないけど、今までのヅカ『ミーマイ』ではそういう表現なかっただけに、びびるわー。
 誰もナニも言わないの、アレ、男だよね? 男の女王だよね??

 ランベス・クイーンがごつい系ヲカマさんという新解釈だったとしても、ジャッキーは女性役だから、ちゃんと美しい女性にしてくれるよね……?
 と、思ったら。

 ……ジャッキーって、実は男……?

 やはり女に見えない。
 女性だとしたら、女に見えないって段階で、まず、確実に、美しくはナイ……よな?

 踊ってくれると、美しい脚が見えて眼福なんだけど。
 ふつうにしていると、少なくとも「美女」じゃない……。

 いやあ、素晴らしいですな!!

 美女にならない、ヲカマで、しかもいかつい系とか、さすがですよ!
 上級生男役ならではですがな。
 研10超えて、ナチュラルに美女になっちゃったら、そっちの方が問題(笑)。や、フェアリータイプの美少年ならアリでも、ふつーの男なら三十路になって女装が似合ったりしないよ。
 ちなつくんが美女にならないことに、すげーウケました、喜びました。

 これでもう、むやみやたらと女役を振られることはなくなるだろう、わたしは男前なちなつくんが見たいんだーー!! 次は絶対色男で頼むぜ。


 反対に、マイティーがかわいくて美人なのは、どうしたもんか(笑)。

 マイティーはあのマデレーネ@『エリザベート』の黒歴史がある。女子プロレスラーのような筋骨逞しい肉体をさらし、競走馬のような力強さでおじさんに迫っていた、あのいたたまれない画面。
 誰でも彼でも女装させればいいってもんちゃうがな……という、見本のような姿だった。
 その記憶が強すぎるせいか。

 ランベス・クィーン姿が、ふつーにチャーミングに見えた。

 えええ?? マイティーなのに??

 マイティーよりずっと女装スキルの高そうなちなっちゃんがやって、破壊力抜群のドラァグクイーンぶりだったのに、いやむしろマイティーがやるからこそ、ちなつくんもソレに合わせて迫力のゴテゴテヲカマクイーンという役作りにしたのかも? と思うくらいだったのに。

 マイティーなのに、かわいい……。そんなバカな……。

 マデレーネがアレ過ぎたために、基準値がおかしくなっているのかもしれない。
 加えて、ちなつクイーンがアレだったために、さらに。

 観る前は、ちなっちゃんは美女でマイティーはイロモノ、そう思っていただけに、いやあ、観てみるまでわかんないもんだな!と、反省しました。
 はい。

 えーと、誤解なきように付け加えますと、わたしはちなっちゃんもマイティーも好きです。好きな人にしか言えない、こんなの(笑)。
 かつてのケロゆひファンですから! マイティーとちなつ、ふたりの並びにハクハクする人種なのです。
 花組『ME AND MY GIRL』Bバージョン感想あれこれ。

 パーチェスター@カレーくんは、かわいかった。

 なんかみょーに彼を小さく感じた。おかしな小動物っていうか。
 指でつまんで持って帰りたい。
 うまくないのはわかってる。歌えないのもわかってる。出すべき声を、芝居の範囲内で「出せる声」に変更しちゃってるのも、アリだと思う。
 わかってるから、がっかりしない。
 Bバージョンはお祭り公演だから。本配役のAバージョンのおまけ的に楽しめばいい、こっちのバージョンも観られてラッキー♪認識だから、技術は気にならない。

 ……となるとほんと、イロモノの方が技術関係なく自由にできるんだなあ。
 同じ「うまくない」でも、あきらのジョン卿は「がんばれ」と思ったのに、カレーくんのパーちゃんは「コレもアリ」だと思う、その認識の差は。
 役割りの差によって、受け取り方が違うよなあ。

 パーチェスターはお笑いを任された三枚目役だけど、やっぱこの役には華が必要なんだと思った。
 地味にやっちゃうと、ただのお笑い担当の脇役になる。儲け役にするのは、本人の技術よりも、「押し出し」「華」「存在感」だと思った。

 わたしは、ただでさえ役が少ないのに、その貴重な役のひとつを「脇の美しくないおっさん」にするのは反対。原作がどうであれ、タカラヅカでは美形にしてくんなきゃだわ。おっさんでも肉布団巻いて「お笑い体型」にするのではなく、見た目はふつーにかっこいいおっさんで、なおかつ笑いを取るようにしてほしい。美形トップスターが演じるファントムが「バケモノのように醜い」ということになっているように、見た目まで滑稽にする必要ない。(某演出家の笑い表現の「鼻水メイク」「鼻くそホクロ」とかで顔を汚して三枚目をやるとか、大嫌い)
 だから、どんなにうまくても、本専科さんが「美しさと関係なく」やってしまうのは、残念だと思う。過去の名優をdisりたいのではなく、今現在の話。
 パーチェスターもふつうに、路線スターがやればいい。とにかく、役がないんだから。美しくない役こそ、美形がやらなきゃタカラヅカの意味がない。

 ということで、マギーやコマつんのパーちゃん配役も賛成だった。
 マギーは空気クラッシュ系のイロモノ得意だし、コマはトリッキーな三枚目得意だし、と。
 でも、フタを開けてみると、マギーのひとり勝ちっていうか、コマのパーちゃんは役に合ってなかった。芝居が出来るのはコマつんだろうに、パーチェスターに関しては、足りてないと思ったもんじゃった……。

 繊細に芝居するキャラじゃないんだ、パーチェスター。空気壊して自分がセンターで歌い踊って当然!的な、押しつけがましさがいるんだ。
 役の派手さに助けられはするけれど、圧倒的な技術があるならともかく、他のスターと同等程度なら、あとは華勝負だ。空気読んじゃダメ、跳ね上がって飛びだして、周囲から止められるくらいでないと。

 うまいのはAバージョンのPちゃんだろうに、役の「強さ」に合っているのはカレーくんだなあ、と思った……。

 目が行かなきゃいけないんだもん、パーチェスターって。空気壊すくらい、華やかで押し出しよくないといけないんだもん……。
 地味な人は向かん役だ……。
 本専科さんになると、年齢も体型も路線スターさんたちとは違うから、物理的に差別化できるんだけどね。
 年齢も体型も技術も大体同じ、そこで空気支配して1曲締めねばならん、って、そりゃ、脇の人より、路線スター向きの役だわ。三枚目のおじさん役だからって、路線外に振られちゃうけど。

 ああしかし、これでカレーくんに技術があればなあ(笑)。
 ぱっと明るく、そこに目が行く。なんかよくわかんないけど、うまくないけど、なんかおもしろい人がいる、的な。
 この素質を生かすために、どうかどうか、技術を磨いてくれ。たのんます。

 最初はなんかおっかなびっくり感があったのに、あとになるほど楽しそうに見えたので、このまま調子に乗って舞台の上で暴れて欲しいなあ、パーチェスターとして。
 それができるキャラクタだから。
 雪組別箱『ローマの休日』『ドン・ジュアン』集合日だったらしい。
 最近ほんと、ヅカの「今」にうとくて。ご贔屓いないと、公演しか記憶しなくなっちゃって、モバタカメールで「え、今日集合日だったのか」と気づくパターンばかり。
 『ローマの休日』にて、つくしちゃん退団。『フットルース』組がまたひとり去るか……。つくしちゃんというと、『BJ』組でもあったしなあ。
 しかし『ローマの休日』、役少ないなー。わかっちゃいたが。

 『ドン・ジュアン』は、主な配役が出たときにHPをコピッてあったんだが。
主な配役
ドン・ジュアン望海 風斗
マリア彩 みちる
ドン・カルロ彩風 咲奈
ドン・ルイ英真 なおき
イザベル美穂 圭子
騎士団長/亡霊香綾 しずる
ラファエル永久輝 せあ
エルヴィラ有沙 瞳
※その他の配役は決定次第、ご案内いたします。

 あ、このサイトだと、罫線消えてただのベタ打ちになるなー。
 だいもん、みちるちゃん、咲ちゃんの3人だけ別枠記載だったのよ。咲ちゃんの名前の下に線が引かれていて。

 それが、全配役発表になると、線の上はだいもんのみになり、ただの学年順になってる……。
 つまり、ヒロインのみちるちゃんも、2番手の咲ちゃんも、「その他」に混ざってしまった。
 みちるちゃんがヒロインでなくなったというわけではないだろうし、咲ちゃんが2番手なのは磐石だろうし、なんでこんなことするんだろう。いつもながら、めんどくさい劇団だな(笑)。

 翼くんに役がある!とか、縣くんすげえなとか、思うところはあるけれどなんといっても、

 フェルナンド/アンダルシアの美女 煌羽レオってナニ?!

 ……ですわな。

 マデレーネ@マイティ的な?
 筋肉質ダンサーに女役やらせちゃいますよブーム?

 いやはや、たのしみです。こわいものは大好きです。(失礼な)
 『ME AND MY GIRL』Bバージョン、マリア@仙名さんが、意外なほど面白かった。

 閉じた世界で生きてきた少女が、ビル@みりおくんという「異生物」と出会い、「え? わたしが知らないモノも、この世には存在している??」と気づかされる物語。
 頑固ばあさんではなく、無垢な少女。年齢は大人でも、心は幼いまま、夢の世界に住んでいる。
 そんなマリアは、正直ちょっとこわかった(笑)。ちょっとホラーじゃん? 目の前にいるビルを通り越して、どこかこの世のモノではないところを見ながら、「うふふ♪ あはは♪」と微笑んでいる女性って。
 でも、そんな彼女が徐々に「世界」と出会って、大人になっていくさまが、興味深かった。

 世界を変えられることにパニックになるのではなく、「?」と首をかしげている感じなのが、「ホンモノだ」と思える。
 パニックになったりキーキーわめいて破壊行動に出たりするのって、どこかに「嘘」を隠しているから、後ろめたいところや、弱いモノを深層心理で認めているから、それを守るために過剰反応しちゃうんだと思う。
 イメージとしての「少女」って、自分の世界が侵されると、キーキーヒステリックにわめくじゃん。赤の女王@『アリスの恋人』みたいな感じで。ホンモノの少女ではなく、イメージの「少女」ね。
 でも、ほんものの「少女」……それも、お姫様育ちで黒いことをなにひとつ知らずに育った「少女」は、そんな過剰反応はしない。だって幼く素直な彼女はナニにも凝り固まっていない、これからいくらでも変化していくスタート地点にいるんだもの。
 あ、ほんとにわからないんだな。……そう思えるから、マリアはホンモノのお姫様なんだなー。貴族ってこうなんだなー。

 『ミーマイ』のマリアは、ビルに反抗されようがどうしようが、ヒステリックになったりしないものね。知性と慎みを持って、ぶつかっていくのよね。
 それを「分別のある大人」として描いてきたのに、「無垢な少女」としてきたことが、とても興味深かった。わくわくした。


 だからかなあ。

 ジョン卿@あきらが、物足りなかった。

 あきらのジョン卿……「ふつー」なんだもん。

 ジョン卿らしいジョン卿。
 今までフタ桁は観てきたいろんなジョン卿の、いちばん中庸の、テンプレートみたいなジョン卿。
 や、テンプレでもいいよ? 基本大事。
 でもさ。
 モロ中庸狙い、平均的狙いだと……技術のなさが、つらい。

 うーん。
 100点満点狙って70点しか取れないならともかく、最初から70点狙って、40点しか取れてないのって、ええっと。
 あきらさんがどのへん狙ってたのか知りようもないけど、なんかふつーのジョン卿で、だとしたらあきらさん、いろいろとうまくない人なので、それが悪目立ちするっていうか。

 や、技術ないんだからイロモノ狙え!と言ってるわけじゃないっすよ。

 ただ、仙名さんがこんだけふつーでないマリアやってるのに、相手役のジョン卿がふつーど真ん中っていうのは……。
 合ってないっす。
 このマリアを何十年見守り、愛しているジョン卿なら、あきらのジョン卿とは別人だろう、と思う。

 ふつーでない仙名さんが悪いのか? でも仙名さんはマリア作っちゃってるし。ジョン卿としてまだ作り切れてない……いろいろ足りてないあきらさんが歩み寄ってもいいんでは??

 あきら、かっこいいんだけどなあ。
 わたしはあきらスキーで、ずっと彼を眺めて来てはいるんだけどさぁ。
 ほんと彼、うまくならないねええ。
 ジョン卿も黙っていればかっこいいけど、や、動いても喋ってもかっこいいけど、動いて喋るならもっともっと!かっこよくなってほしいっす。せっかくの2番手役なんだもの。

 キキくんのジョン卿と、仙名さんのマリアも見てみたかったな。
 キキくんはみょーな包容力というか、輪郭の曖昧な柔軟性があるから、仙名さんの尖った部分を受け止められるのかもしれない。


 あ、でもあきらジョン卿は、みりおビルとは合っている気がした。テンプレキャラだから、当然かもしんないけど、でもでも、美しさもゆるい空気(笑)も、なんかかわいらしく似合っていた。
 主役と合っているんだから、それでいいのかも。

 ただわたしが、「頼むあきら! 正念場だ、もっと見せてくれ!!」とじれじれしているせいかもしれぬ。
 もっとあきらが見たい、もっと活躍して欲しい。だから。
 だから、うまくなってほしい。
 花組『ME AND MY GIRL』、Bバージョン初日観劇。

 ジョン卿@あきら!!
 というのが、Bバージョンのお楽しみ。別格の上級生が、本公演で2番手役をやることがあるなんて……胸熱。
 そして、パーチェスター@カレーというトンデモ配役にはわくわく。

 正当配役はAバージョン。でも役が極少の演目ゆえに、もうひとつ「ファンサービスバージョン」も作りました。……そんな感じ?
 別箱ならともかく、組子全員出演の本公演だからねえ。主な役が片手で収まるほどしかないのに、別格がそこに入るなんて、本来ならあり得ない。
 ファン心理を突くいい配役(笑)。

 あきらとカレー目当てだったのに。
 そりゃ、仙名さんもちなっちゃんも好きだけどさー。このふたりに関しては「観る前から予想が付く」ので、あきらとカレーよりも「わくわく」という点では下だった。

 お祭り公演だから、深くは考えない、軽く楽しめればヨシ。そんな気分だったのに。

 わたしの目を奪ったのは、マリア@仙名さんでした。

 最初は小さな違和感。なにがどうとは言えないんだけど、あれ? と思う。
 わたしは『ミーマイ』ファンじゃないし、「マリア」に対して「こうあらねばならぬ!」的なこだわりがあるわけでもないし、細やかな差異に気づくほどでもない。
 それでもなんか、あれ? と思った。
 それは、軽い落胆になった。なーんだ、こんなもんか、と。

 わたしは仙名さんに対し、みょーに大きな期待をし、実際に観たときに「思ったほどじゃなかった」と肩を落とす。なんなんだろう、これは。毎回地味に同じことを繰り返している気がする。わたしが仙名さん好きなだけか。
 今回もまた、仙名さんならすごくうまいマリアを見せてくれる、年増女まかせろだし、歌まかせろだし、美人で気品があって、スリムなのも厳格おばさまのビジュアルイメージに合うし、とにかく「こわい女」って得意分野だろうからこりゃ楽しみだー、てな。前述の通り、「観る前から予想」していたの。

 似合うだろう、得意分野だろう……そう思うからだろうか。
 実際に観てみて「あれ? こんなもん?」と思った。
 持ち味でやれちゃうものは、妄想配役だけで「そうそう!」とイメージできちゃうものは、かえって難しい?
 持ち味を超える、イメージを超えるものを、出さなくてはならないから?

 いちばん最初は、落胆。持ち味まんまでできるのに、それすら下回っている感覚。

 だけど、ビル@みりおくんが登場してから、マリアに感じた違和感は、無視できないほど大きくなる。
 あ、あれ……?
 このマリア、変だ……。
 それほどこだわりも知識もないが、それでも再演からずっとヅカの『ミーマイ』を観てきて、新公も入れたら2ケタ余裕のマリア観てきて、なんとなく「マリアってこんなん」というイメージはある、そのイメージからどんどん遠ざかる。
 なんだ? このマリア?

 いやあ。
 ぞっとしました。

 「仙名さんのマリア」に気づいたとき。
 ぞっとする、って言葉は悪いけど、そう表現するのが一番近い。
 背筋がぞわっとする、あの感じなー。

 マリアは、誰とも会話してなかった。

 彼女の中には「貴族とはこういうもの」という思い込みがあり、それ以外はまったく耳にも目にも入ってないの。
 思い込み、という言葉も当てはまらない。
 彼女には彼女の「常識」があり、それ以外のモノが存在する、なんて可能性すら、感じていないの。

 マリアはずっと、わたしたちとは違う世界を観ている。

 そこには、夢見る少女がいた。
 貴族のお姫様として生まれ、育った、それしか知らない少女。知らないから、想像もしない。
「パンがなくて飢えて死にそうだ」と嘆く人に、「おかしなことを言うのね。パンがなければお菓子を食べればいいのに」と慈愛の微笑みで言うような感じ。

 ビルがどんだけ下品でわけわからないことを言っても、マリアには見えていない。「血筋がものを言う」のだから、今ここでナニかしているビルは、仮の姿、教育さえ与えれば本来の姿になる。
 それが当然のことだから、下品なビルを見てもまったく動じない。ふわふわと夢見るような、慈愛の瞳で見守っている。

 マリアがいくつであっても関係ない。彼女は「少女」だ。
 ジョン卿にしろ、周囲の大人たちにしろ、誰も彼女に「大人になれ。見たくないモノも見ろ」とは言わなかったんだ。
 だから彼女は、少女の心のまま、大人になった。

 ……から、こわい。
 ひとの話まったく聞いてねええぇ!!な、慈愛の微笑みに心底ぞっとした(笑)。

 このマリアこわい。
 そう思ったからもう、マリアから目が離せない。

 2幕のご先祖様のとこだってさー、マリア、目ェいっちゃってるままだもんなー。
 彼女の心を傷つけない、彼女の望むままの世界を、うっとりと見つめている……。

 このマリアは、たぶん『ミーマイ』のマリア像とはまったく違うアプローチだと思う。
 マリアってもっと聡明で頑固な人だよねえ。夢の国の住人ではなく、現実主義ゆえに規律を求める常識人だよねえ。「貴族とはナニか」を論理立てて理解している人。
 明らかに違う。だがしかし、このマリアも、アリじゃね?

 「マリア」を構成するパーツ自体は、まちがってないんだもの。

 観ていて思ったんだ。

 この物語は、ビルの物語でもあるけれど、それと同時に、夢の世界に閉じこもっていた少女が、外の世界に気づく物語なんだ、って。

 最初、ビルの言葉なんてまったく聞き流していたマリアが、だんだん会話するようになっていくの。
 聞きたい言葉しか耳に入らなかったのに、そうでない言葉にも、耳を貸すようになってきたの。
 いや、「聞きたくない言葉もこの世に在る」ことに、はじめて気づいたみたいなの。

 幼い少女が、はじめて聴く音に「あら? なにかしら?」とおっとり耳を傾けるように。

 えええ、おもしろいわ、このマリア。

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