それはともかくとして、月組全ツ『Apasionado!!III』、楽しみました。
 全ツ向きではナイと思うし、オカマパレード頼みの雑な作りは気になるけれど、オープニングと主題歌が派手だし、なんといっても「知っている」ゆえの盛り上がりもある。

 『Apasionado!!』といえばオープニングの大階段と、トップスターの小林幸子系の「それは衣装なの? 装置なの?」と聞きたくなる大がかり衣装。
 初演で大階段いっぱいの衣装(装置?)がぱかっと割れて、あさこがキメキメになる冒頭は一気にテンション上がったよな。
 それが博多座で階段が小さくなり……全ツに至っては……。
 大階段使った演出がキモだと、段階踏んでしょぼくなるのが切ないですな。出演者がんばれ。

 『EXCITER!!』もだけど、大階段プロローグのオラオラ系ショーは当時のフジイくんの得意分野だよなあ。うまいなあ、と思う。
 ……が、全ツでは大階段も劇中のセットもほぼ同じ。差別化が難しいため「大階段プロローグ」は効果が薄い。だからこそ、それを踏まえて全体の演出を調整し直す必要があるんだけど……フジイくん、ソレしてないよね……まんまだよね……雑……。

 オープニングあとのドラキュラ伯爵と美少女。
 耽美な場面なのに、過去2作が耽美に見えなくて個人的に消化不良を起こしていた場面。いやその、役者には向き不向きってものがあってだね……、きりやんやみっちゃんに耽美をやらせるなと。違うやろと。
 それでこっそり期待していたのよ。カチャなら耽美OKなんじゃないかって。中性的な美青年なんだしさ。
 期待してたんだけど……うーん。
 カチャだとちょっと、線が細すぎたかなあ。
 黒燕尾じゃなくて、ひらひらコスチュームの方が良かったかも。燕尾のままなら、ヅラではなく地髪の方が端正さが上がったと思うな。
 そして、美少女がカノトキちゃんなのか……。カチャが娘役泣かせの小顔男役なのはともかくとしても、娘役の方が頭部が長いというのは、なんつーか、夢を見にくいですな……。

 この場面はなんつっても、まゆぽんとはーちゃん!
 ふたりともダークでかっけー。すげーオトコマエな歌声ががんがん響く……!

 暁くん推しはいいんだけど、この子を女装させるのはやめようよ、と思った。
 女装させていいのは男役が出来上がってからで、男役になる前に女役ばかりさせていると、男役としての成長が遅れてしまう。
 ついこの間も女役観たばかりだし、「また」になってしまって、レア感もない。
 同じことを、瑠音くんにも思った。また女役ですかー。や、オカマスターを7人出さなきゃいけないから、頭数集めるために仕方ないんだけどさー。

 オカマやっていいのは、としくん、まんちゃんクラスになってからだよなー。
 れんこんとか瑠音くんとか、ふつーに女の子でふつーにかわいいもんなー。優くんはもっと男顔だと思ってたのに、こちらもふつーにかわいいもんなー。やっぱ下級生の女装は意外性に欠けるのよ。

 ……という流れで、無言の黒オカマを演じて存在感を放つ、輝月ゆうまの尊さよ。

 下級生なのに……! まだ新公学年なのに……!
 腰乃リュウ(誤字! 越乃が正解・笑)、寿つかさという剛の者たちが演じた役を、研7のまゆぽんが演じて、任を果たしちゃうんだもの……!
 ガタイ優先ではないのよ。「大女だからおかしい」ではないの。だって越リュウにしろすっしーにしろ、身長はそれほどでもないんだもの。宙組なんか他のオカマたちがまさこ・ちー・大と巨人揃いだったし。
 身体の大きさではなく、「おっさんに見える男役」が選択基準。
 美青年ではなく、イケメンなおっさん。美青年ならヅカにはいくらでもいる、路線スターはほぼすべて美青年だ。そして、美青年が女装しても「きれい」「かわいい」になりがち。
 き、きれいだけど、なんかチガウ……激しくチガウ……! となるのは、おっさん役者ならでは。
 組長が「おっさん」なのはあたりまえ。おっさんであり、管理職があえて女装することで異様な空気を作り出す役割りなのに、そこで組長のナガさんではなく、下級生のまゆぽんに白羽の矢が立つあたり、すばらしいな!
 ナガさんは年配の男役だけどいわゆる立役キャラじゃないからなー。やさしいお父さんキャラだからなー。つか、悪役出来ない人だからなー(笑)。

 ここで正しく笑いを取るまゆぽんを、素晴らしいと思う。

 ちゃぴのゼブラ好き~~。
 こういうのいいなあ。キュートでシャープ、そして物語がある。
 これもアフリカっぽいけど、ファンタジーな分、例のアフリカダンスより好きだな。
 たまきちライオンも説得力。似合うなヲイ!(笑)
 そしてとしくんがかっこいい……。
 コンセプトはいつものフジイくんまんまなんたけどね。ワンパタだけど、ソレはそれで良し。

 オカマ祭り以外にも、「タカラヅカあるある」がこれでもかとてんこ盛り。このサービス精神やよし。

 この緊張感漂う初日を超えて、こなれた頃に観たらきっと、もっともっと楽しい公演になってるんだろうな。
 わたし、『Apasionado!!』は内輪受けショーだから、全ツに不向きだと思うの。

 月組全ツ『Apasionado!!III』観劇。
 「III」と付いているからといって、『Apasionado!!』は『Apasionado!!』、本質が変わるわけでもナイ。

 初演時から、わたしの『Apasionado!!』への評価は低かった。
 だって、いちばんのウリが「男役の女装」って作品どうなの?
 どの場面や振付、センスが秀逸、というのではなく、「女装」がウリ。
 いちばんの盛り上がりがオカマパレードと、トップと女装2番手のダンス。
 イロモノでしかない。

 そもそも初演は「トップ娘役不在」という、イレギュラー状態を誤魔化すために作られた。
 トップ娘役はいない、2番手娘役はいるけれどトップにする気はないからカンチガイさせちゃいけない、という大人の事情ありき。
 ゆえに正統派の男女場面は作れず、女性が理想の男を妄想してあふんあふん言う場面だの、オカマ大作戦になった。
 苦し紛れの力技。通常ならどうよソレなネタ満載。でもそれがウケてしまったから、『Apasionado!!』は人気作、となる。
 特殊体制下ならではの「目新しさ」がウケたのであって、作品自体がいいわけじゃないよ……。
 だけど「人気作」になってしまったので、再演される。
 が、特殊体制下でないとそのまま上演は出来ない。
 安直に、オカマ祭りのクライマックス、トップとオカマ2番手のダンスを、衣装センスそのままトップとトップ娘役に変更。
 男役同士だから迫力があったわけで、ふつーに娘役と踊ったら「ふつーの場面」にしかならない。いちばんの目玉場面が「ふつー」になり、「オカマ祭り」がウリである以上、オカマ度が下がった分、全体が沈んだ。
 また、この「オカマ祭り」というコンセプト自体、「ヅカオタ向き」であり、一般客を想定していない。
 演出家もファンも、ヅカに浸かりきって忘れてる。タカラジェンヌは、全員女の子だ。
 女の子が女性の格好をして歌い踊っても、ふつーだ。
 ヅカファンは、男役と娘役の区別が付くから、「男役の女装だ」とわかる。が、一般客からすれば、髪型や衣装が替われば誰が誰だかわからない、男役と娘役の区別なんか曖昧。ソレが専門職だということすら、知られていない可能性も高い。
 本拠地宝塚大劇場でファン向けにやるならいいが、一般客も多い博多座でやるなっつーの。
 女装した男役が何人も何人も、ただ歌いながら歩くだけ、という「演出つまんねー」場面がいちばんのウリなのよ? 『Apasionado!!』というと「お花たちゃんたちは誰がやるのかしら?」と人の口に上がる、いちばんの場面が、「ただ歩くだけ」なのよ?
 つまり、ジェンヌの知名度とスター性に頼り切った作り。名作ではまったくない。
 固定のお馴染み劇場である博多座ですら、再演には疑問符が飛んだ。
 安直な「オカマ→娘役」の変更、スター頼みのオカマパレードはそのまま。
 そして、このオカマパレードは、総力戦の本公演でないと厳しいんだ。
 全部で何人いるんだっけ。オカマが7人?
 ジェンヌの知名度とスター性頼みの演出で、二手に分かれた別箱公演で、客席のほとんどが「あ、〇〇ちゃんが女装してる、おかしい~~」とか個別認識してくれるスターを7人用意出来るか??
 女装をウリにするからには、名前と顔が一致しているだけじゃ足りない、その男役の芸風や個性も認知されていないと驚きにつながらない。
 お笑い担当のひとりを除き、新公やバウ主演済み男役スターを6人用意しなきゃならないのよ? 別箱公演で可能か?
 主演経歴持ちスターでないと、ライトファンまで個別認識してないもん。組ファンだけが知っている人を使ったって、「誰?」になる。
 知らない人が女装してたって、下級生ロケットと同じで「あの人が女装している!!」という驚きにはならない。
 博多座でもきつかった……主演していない人が入っていたし、宙組は下級生の動く背景時代が長く、スター認知度が他組に比べて低かったので、「ジェンヌの知名度とスター性頼みの演出」の弱点を晒していた。
 それでも、固定の箱でやる分にはまだいいと思う。ジェンヌ頼みというからには、ジェンヌさえ認識出来れば楽しくなるのであって、同じ場所で一月近く興行していれば、固定ファンを得られるかもしれない。
 だがしかし。
 全国ツアーでは、それすら望めない。

 あのスターが女装する、から楽しい演出で、組ファンしか知らないような対外的に無名男役起用とか、ベテラントップ娘役ちゃぴがいるのに、トップ娘役不在演出とか。
 何故『Apasionado!!III』……他に全ツ向きの作品があったろうに。

 いや、わかるんだ。
 カチャへの配慮とか、ちゃぴはまさおの相手役である以上がっつり組めないとか、舞台外の事情ゆえに、『Apasionado!!III』になったことは。

 初演『Apasionado!!』は2番手がトップ娘役も兼ねる公演だった。つまり、2番手の比重が高い。
 下級生主演を支える「本公演でタイトルロールのヒロイン役までしたスター」カチャのために、「ふつうの2番手」でしかないショーは用意出来なかった。
 『Apasionado!!』のいちばんの目玉、トップと女装2番手のダンスを、たまきちとカチャでする……それで、カチャの体面を保った。
 いろんな娘役(女装男も含む)と絡み、トップ娘役を「相手役」にしないことで、現在月組トップスターであり、ちゃぴの相手役であるまさおへの配慮、現在の「月組トップコンビ」の体面を守った。

 仕方ない、仕方ないよ。『Apasionado!!III』しかなかったんだよ。

 そう納得はするけれど。
 初日の客席にいてなお、「お花ちゃん、知らない子がいっぱいいた」「あれ誰と誰?」と聞こえてくるのはどうしたもんかと。
 フジイくんの最近の仕事は、本当に雑だ。
 月組全ツ『激情』を、楽しく観た。
 楽しかったけど……『舞音-MANON-』とかぶりすぎる。

 特にちゃぴ。
 男を破滅させる魔性の女、ファム・ファタール。

 天真爛漫な少女マノンと、野生の女豹カルメンはまったく別キャラだけど、やっていることが同じなのでどうしても比べてしまうし、混同してしまう。

 このカルメンだけ、観たかったなあ……。
 マノンはナシで。

 てゆーか、『舞音-MANON-』上演が決まったときには、『激情』は企画されてなかったんだと思う。
 いくら劇団が、『Ernest in Love』と『ME AND MY GIRL』を続けて上演するような雑なところであったとしても、『舞音-MANON-』と『激情』をわざわざ続けて企画しないと思う。
 魔性の女はタカラヅカのヒロインでは異端だからだ。ふつーのトップ娘役が経験せずに卒業するような汚れ役を、立て続けにひとりのトップ娘役がやる意味わかんないもの。
 イレギュラーだったんだろうな。ナニかしら予定が狂い、『激情』上演が決まった。

 おかげで、かぶるかぶる。

 魔性の女に翻弄され、身を持ち崩す軍人@まさお・たまきち。
 魔性の女@ちゃぴ。
 主人公の軍人の婚約者。清楚で貞淑な美女@わかば。
 主人公の誠実な友人@カチャ。

 主人公がまさおからたまきちに変わっただけで、他の3人の立ち位置が同じって。
 馬鹿げてるわー。こんな企画、する方がおかしい。

 やる方もやりにくかったことだろう。

 わたしはマノン@ちゃぴが理解し切れてなかったので、カルメン@ちゃぴがとても易しかった。
 マノンには革命とか思想とか、余計なモノがこびりついていて、「景子タン、やりたいこと整理してから書いてください」としか思えなくてな……。マノンは咀嚼しづらかったのよ。

 その点カルメンはいいな! とてもシンプルなキャラクタだ。
 だからあとは、カルメンの野生が性に合うかどうかだ。

 ちゃぴの野生の血は、違和感なく受け入れられた。
 この子はたしかに裸足で大地を駆け、本能のままに喰らい、まぐわっていそうだ。
 ねねちゃんのカルメンがダメだったことを思い出した。野生を持たない現代の女子高生が、精一杯強がっている図に見えた。裸足なんてとんでもない、毎日2回以上シャワーを浴びてきれいな服を着て清潔な建物の中でしか遊ばないわ、土とか虫とか無理、触れるわけないじゃないキモチ悪い、お肉って切り分けられてスーパーの棚に並んでいるものでしょう?てな、野生とは対極にいる女子女子した子。
 ちゃぴのカルメンは、下品さ低俗さも含めて、「野生」ゆえ、と思えた。
 ビッチではなく、獣。

 なるほど、ちゃぴにはコレ系合うのか。
 色気や美貌があるかどうかはともかく。近づけば食い殺されそうな獣感がある。カルメンを土臭い野生の女とするのはアリか。

 意外にカルメンが合っていたから、マノンが邪魔だったなあと。
 役者のキャリアを否定するわけではなく、わたしの問題。マノンなしでカルメンを観ていたら、もっとカルメンに集中出来たのに。
 半端だったマノンがちらつくのが不快。

 ……色気がないのは課題かなあ……(笑)。
 カルメンで濃厚なラヴシーンがあってなお、色気に欠けるって、かえってすごい気もするけど。

 ホセ@たまきちがガタイ良しなので、ちゃぴがすっぽり覆われてしまう感じがイイ。
 リアル男女感。


 エスカミリオ@暁くんは、フェルゼン@『1789』に続いてちゃぴに惚れる男の役。
 ちゃぴに貫禄がある分、暁くんは不利。
 しかも今回の役は、ふつーにやってもバカっぽくなる典型的当て馬だからなあ。
 気弱な学生の役ならいいけど、高慢な花形スター役は彼の持ち味になく、柄違いの役を演じられる技術もまた彼にはない。
 ので、……大変だなと。

 最近咲ちゃんがイイ感じに育ってきているので、暁くんも咲ちゃんの学年になる頃にはきっといい感じの青年になるんだと思う。
 咲ちゃんも劇団主導の抜擢につぐ抜擢の不自然な育てられ方をしたスターさん。下級生時代はまるまるぷくぷくの外見と、クラッシャーなお芝居で浮きまくっていたのですよ……。その咲ちゃんが、今あんだけかっこよくなってるからねえ。暁くんも咲ちゃんタイプで、劇団の抜擢が徒になって、かっこよくなる前に露出が上がり過ぎて損してるけど、この抜擢てんこ盛りはいつかきっと花開くはず。
 咲ちゃんは研9、暁くんは研4……咲ちゃんの学年になる頃きっと……あと5年か……この露出の大きさで、重要な役割をやりまくりつつあと5年……長いな……。

 あー、エスカミリオが連れているピカドールのふたり、かなでくんとかおとくん、このふたりのへなちょこさ(笑)も、エスカミリオの男ぶりを下げている、とは思う。
 そうよねえ、若手美形ふたりはこういうところで使うものよね。それはわかるけど、経験値の低い子たちを暁くんに付けると、彼らの場面が事故気味になるなと……(笑)。


 ところでダンカイレ@まゆぽんって!!
 組長がやる役ですがな!!

 エマさんの役をやる、新公学年か……。相変わらずまゆぽん最強。

 そして、かっこいい……!

 ダンカイレってこんな役だった? 色男になってますがな! カルメンなんでこの男に手を出さないの? ガルシア@カチャより確実に強そうですが?(笑)

 まゆぽんのこういう役、ほんと好きだなあ。
 『ドン・ジュアン』ポスターが発表された。
 公式HPにUPされた、そのポスターがなんかもー……やばい。

 いやー……攻めるなあ、だいもんさん。

 『アル・カポネ』に続き、無難という言葉とは真逆の、攻め攻め姿勢ですな。
 大胆な開襟だいもんさんにまとわりつく女性が3人。女性の顔は映っておらず、中央のだいもんだけがどーんと存在感。
 タイトルが人名『ドン・ジュアン』ゆえに、ポスター画像で「主人公はこんな人、この人の物語だよ」と表さなければならない。
 ダークにエロ全開な男と、複数の女。女の顔が映っていないことで、独立した恋人ではなくとりまきだとわかる。
 エロくてインモラルな愛欲の世界を導き出すポスターだ。
 わーい、だいもん得意分野。わーい、大好物(笑)。

 生田せんせ作品は、まずポスターにはずれがなくていいよな。
 凝りすぎてあまりうまく作用していなかったデビュー作『BUND/NEON 上海』からはじまり、これまた凝りすぎてちょい効果の薄れた『ランスロット』に続き、開花したのが『春の雪』、主演のみりお様の魅力爆発、本編の内容よりなによりポスターが最大の出来だった『the WILD Meets the WILD』、かわいらしさに身もだえした『伯爵令嬢』。
 大劇場本公演は別箱ほど無茶出来ないのか抑え気味だけど、やっぱこだわりがゆんゆんしてる、『ラスト・タイクーン』『Shakespeare』。

 そしてこの、『ドン・ジュアン』。
 ほんっとヲタク作家っていいよな! 凝るもんな! 厨二万歳。

 しかし、コレが部屋に貼られるのかー。って、部屋に貼ること前提で見てしまう(笑)。や、今も『アル・カポネ』ポスターがどーんと部屋に貼ってありますから。家族に見られるのが恥ずかしいポスターやな、って、ヅカポスター貼ること自体が恥ずかしいやろ、というツッコミは不可。

 2年連続だいもん主演作品を観られるしあわせを噛みしめていますわ。ありがたいねえ。

 ところでコレ合成じゃなくて、実際に娘役はべらして撮影したのよね? 撮影風景動画が見たいです。心から見たいです。つか見せろ~~!!(笑)
 たまきちは主演に見えた。

 月組全国ツアー公演『激情』『Apasionado!!III』において。

 「トップスター」に見えたのではなく、この芝居、この公演の主演に見えた。

 この芝居にも公演自体にも、彼を脅かすほどの技術や華を持った人はいなかった。いや、技術でなら彼以上の人もいるかもしれない。だが、それは真ん中でスポットライトを浴びている人を凌駕するほどの圧倒的な差ではなかった。
 ならば、芝居の主役で、ショーでいちばん豪華な衣装を着ている人が「主演」に見える。
 至極当然のこと。

 そして、この公演の主演として、たまきちはなんの問題もない。
 問題ないから、たまきちでいいんだと思う。

 トップスターの仕事である全国ツアー主演を務めるたまきちは、まさにトップの器、今現在彼がトップスターでないことが不思議なほどだった……と思うわけでは、ごめん、まったくない。

 や、彼がそんなに華々しい人なら、今まで大劇場公演でもっと説得力のある成果を上げていると思う。
 本公演ではトップさんや上級生スターさんに遠慮して本来の力を出せないんです、てなわけでもないだろう。いつも全力でやって、あの舞台だったわけでしょ?
 全ツ主演したからって、突然化けるわけナイ。

 もっとお祭りムードのある公演なら、華々しく見えたのかもしれない。
 でも今回は、そんな空気じゃなかった。
 ゆえに、その空気に引きずられて、そう見えた、というのも、あるかもしれない。

 全ツ主演のたまきちは、いつものたまきちだった。

 だからといって、出来が悪いということもなく。
 これがバウでもDCでも、たまきちはこうして一定クオリティの舞台を作ってきただろうし、それが今回全ツというだけで、ただの「別箱主演」というだけなら、なんの問題もない。

 問題があるとしたら、次の本公演が終了した翌日から、たまきちが月組トップなのだということ、だけだな。
 別箱主演を破綻なく務める、だけなら、他に出来る人は何人もいるだろうに、それでもあえてたまきちである、という理由が、特に見つからない。

 この全ツで、見つけられたらいいな、と思ったんだけど。
 特にないな~~。

 だがしかし。

 こんな状況で、それでも破綻なく全ツ主演を務められるメンタル含めた頑強さは、頼もしい才能だと思う。

 なんというかね、舞台と客席に漂う緊張感がすごいのよ。
 全ツなんて祭り公演というか、作品だって再演とか本公演からの使い回しが多いし、けっこうゆるい雰囲気あるじゃん? 多少アレでも全ツだから許される、という前提ありきの。無茶な下級生抜擢とかも、全ツならいいじゃん、クオリティなんか気にすんな、「タカラヅカ」とトップスターの看板さえあれば地方の客なんかどうにでもなる的な。
 その全ツならではのゆるさがなくて、みんな緊張してるのよ。

 全国ツアーといっても、梅田スタートだ。観客は圧倒的にタカラヅカファンが占めている。
 つまり、「別格上級生を超えることが出来ずに何年も番手誤魔化しをした挙句、これという決め手もないまま2番手にぽっと出たかと思うとなんの準備も前ふりもないまま突然半年後にトップスターになると決まった」という舞台外のストーリーを知っている人たちがほとんどだということ。
 そんな観客たちを、納得させる舞台を見せなくてはならない。
 こーれーはー、……重圧だろう。
 原作至上主義ファンで埋まった客席で初のミュージカル化舞台を披露する的な緊張? 最初からラインを決められていて、それ以上で当然、1mmでも届かなかったらフルボッコ前提、みたいな?
 悪意のある観客ばかりだとは思わないが、天海祐希以来の逸材と煽られれば、「どんなもんだろう?」と興味を持つのが普通。

 そんな、類を見ない空気の中で、幕は開き、舞台は進んだ。
 とくに破綻もなく、かといって空気を塗り替えるほどの熱狂も称賛もなく。
 粛々と舞台は進み、幕が下りた。
 
 幕が下りてなお、たまきちにゆるみは感じなかった。
 ほっとはしているようだけれど、まだ手放しではない。第一関門クリアとか、そんな感じ。彼の戦いはまだはじまったばかりだ的な?

 修行僧のようだ。
 それも、ただのお坊さんじゃなくて、もっと肉体派の僧兵。僧兵が、技と精神を磨くためにあえて苦行に打ち込んでいる感じ。
 この全ツって苦行とか試練なのかな?
 「全ツ初主演おめでとー!」な感じがまったくしない。はしゃいではダメ、頭を垂れて厳粛に打ち込まなければ不謹慎、てな感じ?
 バウとかドラマシティとか、「初主演公演です!」とか「初のドラマシティ主演です!」とか、おめでとームードで盛り上がるのが初日なのにな。

 このムードが、今のたまきちの現状なんだろう。

 そのなかで、たまきちは破綻なく舞台を務め上げた。
 その肝の据わり方はいい。
 彼に足りないモノは経験値だけなのだから、それはこれから身に付ければいい。

 『激情』のホセ@たまきちは、最初にイメージした通り、とても似合っていた。
 朴訥さに嘘がなく、言動と展開に違和感がナイ。
 このホセならばそうだろうし、こうなるだろう、と思わせる。

 問題は、似合いすぎていて、ファンタジー感に欠けるところ、かな。
 タカラヅカは現実とは異なるからいいのであって、現実にありそうなモノだけを差し出されると首をかしげる。
 ホセは男臭い男でいいのだけど、もう少しキラキラした部分も欲しいなあ。野郎系だけど現実離れしたイケメンであるとか。
 画面が青年誌まんまではなく、もうちょい女性向きに寄ってくれたらいいなと思う。

 ショー『Apasionado!!III』は、とにかく「がんばってた」ことしか印象に残っていない。
 どこが良かったとか悪かった以前に、とにかくがんばってた。むちゃくちゃがんばってた。ナニこの試練、苦悶に耐えるアスリートみたいな人。走り続けた先に栄光のゴールがあるのだ、金メダル目指して努力し続けろ、自分の敵は自分自身だ自分に打ち勝て! 標語の書かれた額縁と必勝ハチマキが見えるようだ。
 タカラヅカって、エンタメって、そういうもんではないと思うんだけど、今はもうこれでいいや。つか、こんだけ血管浮かせてがんばってる人に、なにも言えない。
 ショーの真ん中務めるのは大変なことで、順当に育った路線スターさんだって手こずるもんなんだから、ショートカットで4番手からトップスターに躍り出た人がふつーの人の4倍大変なのは想像出来る。

 ふつうに主演に見えた。
 トップスター、という華々しさは感じなかったとしても。
 今はまだトップじゃないからいいし。
 わたしは、たまきちトップも楽しみだ。これからも、月組を観に行くよ。


 ……男臭い作品がいい、と思ってたけど、それだけだとやばいから、ロマン系がいいかな。たまきちが土臭くなりすぎない役がいい。
 ウエクミ新作キターー!
2016年 公演ラインアップ【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】<2016年11月~2017年2月・花組『雪華抄』『金色の砂漠』>
2016/03/25
3月25日(金)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【宝塚大劇場】【東京宝塚劇場】の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
花組
■主演・・・(花組)明日海 りお、花乃 まりあ

◆宝塚大劇場:2016年11月11日(金)~12月13日(火)
一般前売:2016年10月8日(土)
◆東京宝塚劇場:2017年1月~2月(予定)
一般前売:未定

宝塚舞踊詩
『雪華抄(せっかしょう)』

作・演出/原田 諒
<特別出演>・・・(専科)松本 悠里

花鳥風月──日本ならではの風雅な趣をテーマに、華麗に格調高く繰り広げる舞踊絵巻。華やかな初春の風情に始まり、夏のきらめく波濤、秋の月、そして雪の華が舞う白銀の世界から桜花爛漫の春の讃歌へと、絢爛豪華な場面が次々に展開されます。現代的なエッセンスを加え、宝塚風にアレンジした日本古来の伝説なども織り交ぜながら、四季の美しさと艶やかさを華やかに謳い上げた日本物レビューの意欲作です。

トラジェディ・アラベスク
『金色(こんじき)の砂漠』

作・演出/上田 久美子

昔々、いつかの時代のどこかの国。砂漠の真ん中にあるその王国の王女は、“ギィ”という名の奴隷を持っていた──。

自分がどこから来たのかも知らず、王女タルハーミネの奴隷として育てられた少年、ギィ。常に王女に付き従って世話をする彼は、長じるにつれ、美しく傲慢な王女に心惹かれるようになる。ギィを憎からず思うタルハーミネではあったが、王女の立場と何より彼女自身の矜りが、奴隷を愛することを許さない。タルハーミネはわざと高圧的な態度でギィを虐げる。奴隷でありながら矜り高いギィは、そんな王女を恋の前に屈服させたいと激しい思いを募らせる。
王女を強引に自分のものにしたギィは拷問の憂き目に遭うが、その死の淵で、自らのある忌まわしい過去を知る。灼熱の憎しみと嵐のような報復の果てに、因縁の男と女が見たものとは──。
架空の古代世界を舞台に描き出される、愛と憎しみの壮絶なアラベスク。

 みりお様が奴隷!!

 「虐げる」「強引」「拷問」「因縁」……ナニその萌えワード尽くし。
 ウエクミがなんか、真正面からハーレクインしてる?(笑)

 いやあ、みりお様の特性を突いた、よい設定ですな。美貌の奴隷青年と高慢な王女かー。みりかのでそんな萌え物語を見られるとは、楽しみ過ぎる。
 みりおくんには盛大に拗らせてほしいです。

 原田くんが日本物ショー担当というのは、意外な登板。
 原田せんせに出来るのか、よりも、「これで原田を消化出来る!」という喜びの方が強い。
 本公演の原田登板はロシアンルーレット、おそらく大多数のヅカファンが恐れる事態。花組に登板するなら他組は原田から逃れられたということで万々歳だし、花組にとっての最悪は原田で芝居に当たるということ(ストーリー破綻・組子はモブ、のちに著作権問題で販売BD楽曲カット複数というおまけ付き)だと思うから、最悪だけは逃れられた。日本物ならBDでの楽曲カットもないだろうし。
 『ME AND MY GIRL』のあとだから、ふつーの洋物ショーが観たかったけどね……それでも、最悪じゃない。
 原田くんなら、冒険なしのガチガチのテンプレ「どこかで観た」ようなごくごくふつーの、美しい日本物ショーを作ってくれると思う!

 いやー、しかしなんつってもウエクミでみりおくんで奴隷ですよー。
 わくわくわくわく。
 ひさしぶりの『激情』。最後に観たのはちえねね。生のみ、映像では一切見てない。
 てことで、記憶は遠い。
 もともとポンコツだけど、最近とみに記憶力が衰えてなあ……よぼよぼ。

 初演も再演も観ているし、ストーリーもキャラクタも知っているけれど、なんというかもとても「新しい」気分で客席にいた。
 ストーリーを知っていても、それを観てどう感じるのかまでは、おぼえていない状態、というか。ここはこうあらねばならない、などの思い込みが薄れている。

 そんなわたしは今回の『激情』を観て。

 痛烈に、メリメいらね、と思った。

 カチャさんの問題でなく、脚本。
 なんでそこまで解説する必要があるんだ、そこは芝居自体で表現することだろ、てなことまで、メリメさんが登場するなり立て板に水かっつー勢いでえんえん喋ることに閉口した。
 ひどいなー。まだ録音でなく、生の芝居だからマシか。柴田&正塚作品はなにかっちゃー録音テープ使う、つーイメージ(笑)。録音聞くなら映画でいいじゃん、演劇は生台詞聴かせろ志向のわたしは、アンチ録音テープ。

 せっかく物語に集中しているのに、メリメが出て来て水を差されるのが嫌だった。彼がなにか有益な情報をもたらすならともかく、「そんなの観てたらわかるし」「知ってるし」「それどうでもいい」てんこ盛り。
 『ルパン』のルブラン@みっちゃん的なうざさ。場違い感。

 メリメさんすっきりきれいで、目にはやさしいけど、でも「それだけ」だと、「物語」を楽しみたいわたしには不要としか思えなかった。


 あとから、「以前の『激情』もそうだっけ?」と思い出してみても、納得にはほど遠かった。
 たしか、初演のたかこメリメには、「ナレーション」としての仕事を感じていた。ホセ@ずんことは距離があるというか、主人公するホセと語るメリメには、ビジネスライクな関係以上のモノは感じなかったし、こちらとしてもそれ以上も以下も求めなかった。
 再演のすずみんメリメには、狂言回しとしての妙を感じていた。あざやかに線を引き、割って入る。別次元から語っている……なのにどんどんホセ@れおんの世界に入り込んでくる……ホセに入れ込むあまり近づき過ぎてる、ストップストップ、落ち着いて? と言いたくなる、愉快な人。
 どちらのときも、「メリメいらね」とは思ってない。
 なんで今回に限り、こんなにうざかったんだろう?
 わたしは記憶力に乏しく、初演・再演と今回台詞や演出がどう違っているか、あるいは同じなのか、さっぱりわかってないのよ。
 観た感じ、特に変更らしい変更も気づかなかったけど……。なにか変わってた? メリメの台詞や出番が増えて、元の芝居にないものを付け加えたわけだから、そこが「うざい」と思わせることになっているとか?

 ホセ@たまきちの存在が、メリメを求めていないのかな。
 彼の物語が、解説役を必要としていない。ゆえに、解説にしゃしゃり出てくるメリメの不要感が大きくなった?

 理屈はわからないが、今回はメリメの良さがわからなかった。
 れおんとすずみん、たまきちとカチャ、なら、立ち位置が似通っているので、役割り的にも据わりがいいはずなのにな。
 カチャは品のある青年なので、彼が演じる「紳士」は問題なくハマる。今回もきれいに出ていたと思う。
 のになんで、あんなにしっくりこなかったんだろう。
 芝居は好み部分が大きいので、単純にわたしの好みではなかった、というだけかもしれない。

 メリメではなく、ホセの友人ということにして、最初から最後までずっと「友人」の立場でホセに対峙してくれていたら、また違ったのかもなあ……と思い、それってどこのクリストフ@『舞音-MANON-』。

 うん、そうなのよね。

 『激情』を観た直後に、某所へわたしがつぶやいたこと。

『激情』はおもしろい話なんだけど、『舞音』の直後に観るもんじゃないな…(´・ω・`)(

 コレに尽きる。
 なんかいろいろ発表された!

 『宝塚巴里祭2016』ベニー主演と、『イゾラベッラ サロンコンサート』しーらん出演。
 みっちゃんバウと歌バウの出演者も。
 星組忙しいな。

 歌バウの意義を問い詰めたい名前も入っていたけれど(笑)、それはさておき、もうひとつの発表。
雪組 東京宝塚劇場公演千秋楽 浪漫活劇 『るろうに剣心』 ライブ中継について
~原作 和月伸宏「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ・コミックス刊)~

2016/03/23
以下の通り、雪組東京宝塚劇場公演千秋楽の模様をライブ中継致します。   
日時
2016年5月8日(日)15:30上映開始
※千秋楽挨拶、退団者挨拶の中継はございません。あらかじめ、ご了承ください。   
料金
4,600円(税込/全席指定)
  
会場
※3月31日に発表を予定しております。
  
チケット発売日・発売方法
◆先行抽選販売「プレオーダー」
2016年4月1日(金)11:00~2016年4月11日(月)12:00
e+(イープラス):http://eplus.jp/snowkenshin-lv/(PC、モバイル共通)

◆一般発売
2016年4月24日(日)11:00~2016年5月6日(金)12:00
e+(イープラス):http://eplus.jp/snowkenshin-lv/(PC、モバイル共通)
または、全国のファミリーマート店内のFamiポートにて

 えええ。

 『るろ剣』って、トップ退団公演だっけ??

 今まで、ライブ中継ってのは「〇〇〇ラストディ」と銘打った、トップスターの退団東宝千秋楽のみだった。
 あとは『タカスペ』とかの、イベント。

 通常公演の千秋楽を中継するって……どんだけチケ難設定?

 話題沸騰、されどチケット完売、観たい人たちの手に行き渡らない。
 ゆえにライブ中継敢行ってこと?

 だとしたら英断だなー。
 思い切ったなー。
 や、昔と違ってライブ中継が世の中に浸透して、ヅカだけでなく頻繁にあるものだから、てことなんだろうけど。
 それにしてもすごいな。

 どの程度の規模でやるんだろう。そして、どれくらいの人たちが動くんだろう?
 『るろ剣』ゆえにタカラヅカに興味持ってくれた人たちが、見てくれるといいなあ。
 わくわく。

 わたしも観に行くぞー。
 雪組をスクリーンで見られるなんてうれしい。


 あれ。
 でも挨拶ないのか……。きんぐ……。

 仕方ないか。
 一般人はそんなの関係ないもんな。ヅカヲタ以外に向けてやるんだもんな。
 なんか毎日劇団発表について書くことあるな!
2016年 公演ラインアップ【宝塚バウホール】<10月・月組『FALSTAFF』>
2016/03/22
3月22日(火)、2016年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、【宝塚バウホール】公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。   
月組
■主演・・・(専科)星条 海斗
その他の主な出演者・・・(月組)暁 千星、美園 さくら

◆宝塚バウホール:2016年10月10日(月)~10月21日(金)
一般前売:2016年8月27日(土)
座席料金:全席5,300円

Bow musical
『FALSTAFF』~ロミオとジュリエットの物語に飛び込んだフォルスタッフ~

作・演出/谷 正純

シェイクスピアの「ヘンリー四世」「ウィンザーの陽気な女房たち」の中に登場するイングランドの騎士サー・ジョン・フォルスタッフは、シェイクスピアが生み出した数ある人物の中でも一二を争う強烈な個性の持ち主。大酒飲みで好色、威勢はいいが実は臆病者といった欠点だらけでありながらもウイットに富み、時に警句を吐く、その人間味あふれるキャラクターは多くの人々から愛されています。そんなフォルスタッフがひょんなことで「ロミオとジュリエット」の物語に飛び込んだことにより、ロミオとジュリエットの哀しくも美しい恋物語が思わぬ方向に…。フォルスタッフ役に星条海斗、ロミオ役に暁千星、ジュリエット役に美園さくらを配してお届けするロマンチック・コメディ。

 あきらバウに引き続き、マギーバウ、キターー!

 別格スターのバウ公演はいいですな! 若手には出来ないモノを見せてもらえるから。

 てのはいいけど。

 なんなの、このその他の主な出演者・・・(月組)暁 千星、美園 さくらって……。

 月組ってほんと、売り方ヘタやな……。
 マギー主演だけでいいのに。んで、フタを開けてみたら暁くんすげーおいしかった、にすればいいのに。
 こんな、「暁くんに主演させたかったけど、実力その他足りなさすぎて単独主演させられない、だから名目だけ専科スター主演にして、実質は暁くんのための公演なんだよ」と、銘打たなくていいのに……。

 『1789』初日前日にマギーの専科異動が発表になったり、通常じゃない人事が毎度平気で行われる感じが、すごくこわいっす。

 たまきちとか、暁くんとか、劇団が「トップスターにする」と決めた人以外のファンをやるには、月組はこわすぎて、わたしみたいなチキンには敷居が高すぎる。
 宝塚歌劇団は営利企業なのだから、商売としてやっているわけで、ビジネスライクなのは当然なんだけども、組ごとに売り方が違い、月組はほんっとにビジネスに徹している感じが、お花畑なわたしには戦慄することが多いっす。
 ここまでやるんだから、たまきちさんも暁くんも、実力も人気も兼ね備えたスーパースターに育ってくれることを祈ります。

 や、劇団に恐怖するだけで、ジェンヌさんに含みはないっす。
 暁くんはいろいろ発見のある子なので、アタマを抱えることもあれば、わくわくすることもある。未知数なのはいいことだ。
 ただ、『インフィニティ』が主演・未涼亜希で、その他の主な出演者・彩風咲奈、夢華あみ、と発表されてたらわたし、すっげー凹んでたろうなと。
 もうないかもしれない、と思っていた別格スターの上級生バウ主演が、そういうカタチだったら。
 ……それでも、劇団推し下級生の存在がなければ、そもそもバウ主演はなかっただろうから、とあきらめて、喜んだとは、思う……。

 んでもって、劇団推しスターの悲劇、谷正純キターー!

 劇団は、推したい若手には重鎮演出家をあてがうのだ。
 それが、推しにならないどころか、ファンから敬遠される事態になろうと関係ない。「重鎮が出馬する」ことが権威だから。
 谷先生が筆を取る、なんてありがたいことだ!てな。
 そうやって、劇団推しの若手スターたちが、とんでもない駄作に足を取られ、スタートダッシュでつまずいてきた。

 大変だなあ、暁くん。
 劇団推しってことは、老作家様の書き下ろし駄作の洗礼を受けるってことだ。
 つってもまあ、谷せんせは当たりはずれがあって、とんでもない駄作もあれば、そこそこいける当たり作品もある。
 『FALSTAFF』が佳作かもしんないしな。
 青天モノじゃない分、ビジュアルは期待出来るよな。

 なにはともあれ、マギー主演はうれしい。劇団の思惑がどうあれ、主演は主演だっ。
 楽しみだわ。
 ちょっと待って。
 月組全ツ初日に、こんなニュースが発表になっていた。梅田でちらりと確認したのみで、ちゃんと理解してなかったんだけど。
 友人のつぶやき見てよーやくナニが起こっているか理解した。かなり特殊なことになっている??
花組公演『ME AND MY GIRL』新人公演主な配役と役替わりについて
2016/03/19
花組公演 UCCミュージカル『ME AND MY GIRL』(宝塚大劇場・東京宝塚劇場)新人公演の主な配役と役替わりが決定いたしましたので、お知らせいたします。

宝塚大劇場/5月17日(火)18:00開演
ウィリアム・スナイブスン(ビル)@優波慧/綺城 ひか理
サリー・スミス@城妃美伶/音くり寿
ジョン・トレメイン卿@亜蓮冬馬/飛龍つかさ
ディーン・マリア公爵夫人@春妃うらら/乙羽映見
ジェラルド・ボリングボーク@聖乃あすか
ジャクリーン・カーストン(ジャッキー)@帆純まひろ
セドリック・パーチェスター@矢吹世奈

東京宝塚劇場/7月7日(木)18:30開演
ウィリアム・スナイブスン(ビル)@綺城ひか理/優波慧
サリー・スミス@音くり寿/城妃美伶
ジョン・トレメイン卿@飛龍つかさ/亜蓮冬馬
ディーン・マリア公爵夫人@乙羽映見/春妃うらら
ジェラルド・ボリングボーク@帆純まひろ
ジャクリーン・カーストン(ジャッキー)@聖乃あすか
セドリック・パーチェスター@矢吹世奈

※ジャッキーとジェラルドは、宝塚大劇場・東京宝塚劇場公演で交替します。

 このサイト、表をそのままUP出来ないので、配役表は手打ちした。連名の場合、/の前が1幕、あとが2幕キャスト。

 ニュースのタイトルからして特殊よね。
 「新人公演」で「役替わり」って。
 過去の『ME AND MY GIRL』新公も、お知らせタイトルは「役替わり」表記だった?

 そもそも新人公演『ME AND MY GIRL』ってのは、1幕2幕で別キャストがあたりまえだった。どんだけ役ないねん!てなもんだけど。ほんとに役がないから仕方ない。主要役以外はモブで、新公やっても下級生のスキル上げにならない……どっちにしろモブしかないんだもの。

 2008年の『ME AND MY GIRL』では、ジョン卿とマリアとパーチェスターとジェラルドとヘザーセットがダブルキャストだった。
 つか、主役のビルと、サリーとジャッキー以外は全員ダブルキャストだった。ビル@みりお(本公演ではジャッキー役)が劇団イチオシなのは言うまでもないが、この役替わりだらけのなかで不自然に唯一シングルキャストだったジャッキー@蘭ちゃんの劇団推しっぷりは、その後の蘭ちゃんのジェンヌ人生の強さが垣間見える配役ですな(笑)。
 この場合のダブルキャストは、1幕2幕でキャストが替わる、ということのみ。
 1幕と2幕では、同じ役でも出番や見せ場がまったく違い、おいしさが段違い。だけどそれについてのフォローはなし。

 それがあたりまえなのだと思っていた。
 今回もどうせダブルキャストだろう。1幕2幕で別の人だろう。
 しかし。

 1幕2幕でキャストが替わり、さらにムラと東宝でキャストが替わる??

 えええ?
 ナニその複雑さ!

 しかも、主演すらダブルキャスト?!

 研3で抜擢されたきりやんとかタニちゃんとかがダブルなのはまあ仕方ないか、と思うけど。
 研7と研6でダブルってことは、どちらも単独では主演させられない認識?
 主演をダブルにしちゃったら、ヒロイン以下をシングルには出来ないから、玉突き役替わり発動?
 それにしても、ジャッキーとジェラルドは1幕2幕の役替わりではなくて、ムラと東宝? 聖乃くんのジャッキーはムラでは観られない? 帆純くんは反対に、ムラ新公では2作連続女役?? 男役スターでそれってアリ??

 こんだけ複雑なことをしなければならない演目って……。
 ほんとにもう、『ME AND MY GIRL』は本公演でやらなくていいよ……。

 えーとえーと、とにかく、乙羽ちゃんのマリアが楽しみっす。
 星組初日の日に、こんなニュースも発表になってた。
月組 赤坂ACTシアター/シアター・ドラマシティ公演『Voice』お客様参加型コーナー について
2016/03/18
月組 赤坂ACTシアター/シアター・ドラマシティ公演『Voice』第2幕ではお客様参加コーナーがあり、龍 真咲、光月るう、響れおなの他に、振付をお教えする先生役で下記のメンバーが日替わりで出演いたします。
(以下省略)

 …………。
 …………。
 …………。

 またやるのか。

 どんだけ連続……。


 えー、何度も書いてますが、わたしは客席参加不要論者です(笑)。踊りたい人は外部でどうぞ、タカラヅカは客席に坐って「観劇」するジャンルです。と思ってる。
 はじめて観る人も幕間にお弁当食べるためにやってきた団体さんも、コアでディープなヲタも、等しく楽しめるのがタカラヅカだと思っているクチ。
 ヲタとリピーター以外お断りの客席参加などいらぬ!


 ただ、今回は本公演じゃない、個人スターの公演だから、一概に「いらぬ!」とは思っていない。
 タカラヅカがなんたるものか知らないような団体さんは来ない公演だから。ヲタ前提の興行だから。
 それなら、客席参加もありでしょ。
 あるだろうなと覚悟してたけど。
 やっぱりあるのか。
 世の中の多数が求めてるのかなあ。そういう時代なのかなあ。生きにくい世の中だなあ。

 まさお個人を好きで、まさおのコンサートに行くわけだから、一緒に盛り上がりたいとは思う。

 それはともかく。

 日替わりって……。
 チケット買う前に発表してくれよぉ。

 みやちゃんかあーさの日に行きたかったニャ……。ぜんぜん関係ない日しか持ってないニャ……。しょぼん。
 月組が、次の時代へと動き出している。
 全国ツアー『激情』『Apasionado!!III』がスタートした。

 主演として全国を回るのはたまきち。次期トップスター。現トップ娘役のちゃぴとコンビを組んで。
 まさおの退団発表のあと、ちゃぴの発表もあるのかとおびえたけれど、ここまでなかったのだから続投、たまちゃぴコンビになるってことだろう。下級生すぎるたまきちを支えるには、ベテランの相手役が必要だものね。

 たまきちの次期発表があってよかったと思う。
「アンタ誰?」「なんでトップでもなんでもない、ただの下級生が主演で全国を回るの?」の宙ぶらりん状態での全ツにならなくて。

 全国ツアーでトップスターの代わりを務める男役スターは、次のトップスターである。……これが、美しいカタチだと思う。わたしだけでなく、劇団もそう思っているからこそ、全ツ前に発表したんだろう。
(だから、本来なら宙組まぁくんも次期発表したかったはずで、星組ベニーに至っては次期であるべきだったんだろう。……これらのことから、みっちゃんの星組トップ就任が、なにかしらイレギュラーな事態であったと推察される)

 正しい、美しいカタチだとは思うが、心穏やかでもない。

 あのカチャが、たまきちの下に甘んじている。
 2009年の『エリザベート』で、新公主演さえしていない無名の下級生男役であったのに、縁もゆかりもない組に「特別出演」してタイトルロールのヒロイン役を本公演でシングルで演じた。トップスターより2番手より長身の男役が、わざわざヒロイン役。
 舞台成果より育成ルールより優先すべき、なにかしらの事情があった、としか思えない珍妙さ。
 夢華さんの研1ヒロインと並ぶ、タカラヅカ100年の黒歴史事項。
 そこまでさせたカチャが、下級生の脇に回っている。

 わたしがたまきちを個別認識したのが、その2009年の『エリザベート』の新人公演だったなあ。
 あのときの本公演タイトルロール役者が、本公演でモブ、新公でようやくジュラだったたまきちの、脇を務めているのか。

 その上。

 エスカミリオ@暁くんだもん……。

 初演で、宙組3番手ワタルのやった役。
 つまり、この全ツの座組は、トップスターたまきち、2番手カチャ、3番手暁くん。

 暁くんが名実伴ったスターならばともかく、まだやっと研4で、学年相応の実力しかなく、これまでにえんえん実力不問で大役を与え続けてきた「晩成予定(現時点ではあくまでも予定、予定は未定にして確定にあらず)の大器」が、ここですでに3番手、という現実は、なかなかにヘヴィだ。
 エスカミリオがベビーフェイスの少年キャラだというならともかく、セクシーな大人の男、花形スターの役だ。
 暁くんの持ち味でない役なのに、それでも番手計算のみで彼にやらせて、持ち味にない役をねじ伏せる技術も経験値もない現状を晒す結果になる、というのは当の暁くんのために心配った結果とも思えないあたりがさらに、わだかまりを作る。

 ルール無視の超特急次期トップスターのたまきち、不可思議なエリザベートだったカチャ2番手、かつてのカチャのように特別扱い爆上げ中の暁くん3番手、って。

 なんというか、すごいっす。
 「タカラヅカ」の闇が集約されていそうで(笑)。

 とまあ、人事面でのもやもやは、ヅカヲタである以上誰もが多かれ少なかれ抱いていると思う。
 それくらい、月組はいびつなことになっている。

 が、それとジェンヌさんたちは切り離して考える。
 人事を行っているのは、渦中でゲームの駒のように動かされているジェンヌたちじゃない。

 魅力のあるジェンヌたちを、どうしてもっとうまく売り出せないのか、プロデュースしないのか、ほんっとにもどかしい。
 月組の集客の苦戦っぷりは、劇団のプロデュース失敗のあおりをモロにくらっている面が大きい。
 2番手切りから夢華さん騒動などで低迷した雪組人気が、番手を明確にし組を安定させて各ジェンヌの実力と個性に合った役と作品をプロデュースすることで上向きになったように。
 人事=劇団への不満、って、客足に響くんだよねえ。

 どんな事情であれ、人事であれ、当のジェンヌたちは真摯に舞台を務めている。自分の役割を果たそうとしている。

 順当昇格のはずなのに、波乱とか逆風とかという言葉を浮かべてしまう船出。
 この状況での全ツ初日、たまきちはアナウンスでも挨拶でも、がんとして無冠のままだった。
 「珠城りょう」としか紹介されず、「珠城りょう」としか名乗らない。
 次期トップと発表済みであることには、一切触れない。
 どんだけのプレッシャーだろうなと。
 順当であるはず、歓喜とエールの空気に包まれるはずのトップ発表後の全ツ初主演で、初日の幕が無事に下りてなお緊張感のまとわりついた空気なんて。

 この状況で、次の月組を背負って立つ覚悟を決めたたまきちと。
 この状況で、たまきちを支えることを選んだカチャと。
 この状況で、揺るがずにトップ娘役であり続けるちゃぴと。

 どうか、彼らの新しい旅が、豊かで喜び多いものになりますように。
 願ってやまない。
 タカラヅカはすごいところだなと。

 星組公演『こうもり』『THE ENTERTAINER!』初日観劇。

 『こうもり』を観ながら感心したんだ。
 つい数日前まで『るろうに剣心』やってた劇場で、コレやってるんだものな。
 別物ぶりというかジャンルの乖離っぷりがものすごかったです。
 この両作品を、ひとつの劇団があったりまえにやってるんだなと。

 なんというか、クラシカル。
 ザ・タカラヅカ。
 時代とセンスが昭和時代から引き継がれた「タカラヅカ」らしい古臭さ。
 うん、そうそう、タカラヅカってお笑い物もやるよね。シリアス悲劇だけじゃなく。昭和時代だってやってたもんね。だからとてもなつかしいテイスト。
 同じコスチューム物のコメディでも、『めぐり会いは再び』とセンスが違い過ぎる……。あれは良くも悪くも現代だった。

 あまりの古臭さにびびったけれど、すぐに慣れた(笑)。

 たしかに古い。
 だが、それがいい。

 とってもこってりタカラヅカ。
 タカラヅカ成分濃い目。
 そういうタカラヅカも必要です。

 大人数わいわい場面も多いので、組ファンは点呼するだけでも楽しいのでは?

 良くも悪くも谷先生作品だな、というのが第一印象。
 谷せんせのいいところも出ているが、悪いところもめーーっちゃ出ている(笑)。
 そして、谷せんせとみっちゃんは相性悪いなと再度思った。や、実はわたし、『THE MERRY WIDOW』でそう思ったクチなので。
 ま、そのへんはまたいずれ語る。


 ショー『THE ENTERTAINER!』は、野口先生。『A-EN』が楽しかったので期待していたのだけど……うーん。

 作品はともかく、とにかく。

 みっちゃんを観ながら震撼した。

 タカラヅカこわいな、って。

 こんなすごいスキルの持ち主が、今後日本ミュージカル界へ出ていくわけですよ。
 タカラヅカ、を温床に育ったものすげー才能。こんな人を生み出しちゃうんだから、やっぱタカラヅカってすごいわと。

 タカラヅカ出身者が全員神才能の持ち主だとは、ごめん、思ってないし、タカラヅカで花開く才能と、外部芸能界で必要とされる才能とがイコールだとも思っていない。
 外部で売れっ子になることがタカラヅカで人気者になることより素晴らしいとも、思ってない。
 タカラヅカと外部って、歌とか芝居とかミュージカルとか、やっていることは同じでも、確実に「ジャンルが違う」と思っている。
 別ジャンルで、今までと同じ実力や魅力を出すのは難しいんだと思う。
 だけど、ジャンル違いというハードルを、軽々越えるだろう、と思わせてくれる桁違いの「実力」を、見せつけてくれる人が、稀にいる。
 みっちゃんがそうだ。

 彼女は「ジャンル:タカラヅカ」じゃないわ。
 越えてるわ。
 超えてるわ。

 このものすごい人が、タカラヅカを出ていくんだ。近い将来。

 すげえな。
 すごいよなタカラヅカ。こんな人をも、生み出してしまうんだ。

 そう思ったよ。

 『THE ENTERTAINER!』はサヨナラ公演みたいな作りで、ここでも「ああ、みっちゃん好き勝手やってるなあ」と思った。
 劇団が、みっちゃんにそれを許しているんだな。双方両思いでやっていることなら、いいじゃないか。みっちゃんはこのまま突っ走ればいい。

 わたしはやっぱりみっちゃんは苦手で、芝居もショーもわたしの苦手とする「みっちゃん」てんこ盛りだった。ということはこれがほんとに、みっちゃんらしさで、彼女のやりたいことなんだろう。
 わー、すげーみっちゃんだー、苦手だーー……と思いながらも、そう思っている人間をも、「みちこ、すげー!!」と感動させる、力。

 ほんとに、すごいスターになったなあ、ほっくん……。
 最近しみじみと、昔のほくしょーさんのことを思い出すよ。「ほっくんにないのは美貌だけだ」と思っていた、新公時代のこととか。「頼む、きれいになってくれ」と願い続けたなあ。
 まさか、ずーーっと同じことを思い続け、トップになってなお、その点の感想が変わらないとか(笑)。
 変わらないまま、それでもここまで来た、そのことにも強い感慨がある。
 頑ななスタイルは、スターの証だ。
 制作発表会つながり。
 『ローマの休日』製作発表会の動画を見た。

 ちぎくんのスーツ!!

 なんか久しぶりに見た気がする……いや、気がする、じゃない、ほんとに久しぶりだ。
 雪組、スーツ物の芝居どんだけやってないんや……。
 そりゃショーでスーツは着るけど、芝居とは違うからな 近年でスーツ物って『アル・カポネ』以外やってないから……ちぎくんのスーツ見るの何年振り?
 『るろ剣』(日本物)、『哀しみのコルドバ』(スペイン・コスプレ)、『星逢一夜』(日本物)、『星影の人』(日本物)、『ルパン三世』(フランス・コスプレ)、『伯爵令嬢』(アメリカ・コスプレ)、『一夢庵風流記』(日本物)、『ベルばら』(コスプレ)、『Shall we ダンス?』は女役だったからチガウし、『若き日の唄は忘れじ』(日本物)、『ベルばら』(コスプレ)、『JIN-仁-』(日本物)、……『双曲線上のカルテ』?
 4年前まで遡るのか!
 てゆーか日本物多すぎ。
 『伯爵令嬢』がまだいちばんスーツ系だったけど、フロックコートだからなー。スーツというよりコスチュームもの。女の子はドレスだし。

 ほんっとにちぎくんのスーツ見るの久しぶりなんだ。
 そりゃ目に新鮮、心に染み渡るわ。
 『双曲線上のカルテ』は変なカツラに変な役だったもの、今回の地髪ちぎくんの美しさ半端ナイ。

 雪組の演目選びのセンスはとてもいい。ちぎみゆで『ローマの休日』なんて、わくわくする。キムくん時代がこれくらい恵まれていたらなあ……。言っても仕方ないことだけど、キムくんは劇団の人事失敗のツケを一身に背負わされたよなあ。

 ちぎみゆで『ローマの休日』!というとわくわくするけど、他の役を思い出せずにいる。
 映画を見たのは大昔だからなあ。
 トップコンビはいいけど、それ以外に男役に役がないと、タカラヅカ向きじゃない。……だからこそ、今まで上演されなかったし、翔くんとかなとくんの役替わりなんだろうけど。オイシイ役がたくさんあれば、役替わりする必要ないもんね。

 楽しみだし、複数回行くつもり満々だけど、演出家にはちょっと不安感。

 あと……みゆちゃん、なんか丸いぞ?(笑) 映像に弱いだけで、舞台ではちゃんとかわいくなってるのよね?
 まさおは、織田信長っぽい。ハマる。
 まさおの破天荒なキャラクタと、キラキラっぷりは、戦国時代きってのスーパースターのイメージに合う。

 まさおと月組で、「ロックミュージカル『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』」を作るならば。
 わたしならまず、史実の信長のビジュアルは無視する。
 脳天ちょんまげにスケベヒゲのおっさんってやつね。
 乙女ゲーのような、ロン毛ヒゲなし美青年にする。
 衣装は基本洋服。一部分だけ和のテイストを入れるけど、イメージ的にはロングジャケット系の軍服。
 信長だけでなく、世界全体が和テイスト有の洋服。編み上げブーツ。ただし、武器は日本刀。
 ロングジャケット軍服に、日本刀。このコントラストは必須。ジャケットをマントのようにひるがし、チャンバラするのよ。間違っても袴ははいちゃ駄目、ダサくなるから。

 まさおにみやちゃんにカチャ。ヒゲのいかついおっさんが似合わない、キラキラ少女マンガ画面の主要キャラを使うんだから、ヒゲダルマ基本の日本の戦国時代風俗は徹底無視。

 キラキラ少女マンガ勢と一線を引くのが、ヒゲオヤジ任せろ!なたまきち。
 こちらはレット・バトラー系ダンディで勝負。
 『PUCK』の過ち再びだけは勘弁。キラキラ若者はみやカチャ、大人の男はたまきち。
 棲み分け大事。

 ちゃぴは和服ドレス。娘役は和服寄りでもイイ。こちらも史実・文化無視で和服にボンデージ風アイテムプラスして、髪も盛りまくって。……『ロミジュリ』のキャピュレットの女たちの和テイストバージョンみたいな。
 ハードに、かっこいいテイストで。

 誰がなんの役になるにしろ、史実も年齢も無視。年代が進むごとに年年老わなくてイイし、「みんな同世代?」って感じでいい。
 信長の醍醐味は天下統一目前の破滅、栄華と灰燼だから、当然本能寺の変まで書くだろうし、それじゃ信長がおっさん過ぎてつまらんし、他の主要人物との年の差で萎える。
 みんな若くて美形。年齢不詳。それでいい。

 史実再現ドラマなんか、タカラヅカとまさおに求めてない。

 というのが、ラインアップ発表を見たときのわたしのイメージ、わたしの期待です。
 「歴史ロマン『織田信長』」ではなく、「ロックミュージカル『NOBUNAGA』」なんだもの。
 ポスターは『シャングリラ-水之城-』みたいな感じ。


 たまきちトップ発表で、思い出した。
 2月15日……ちょうど1ヶ月前に『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』の制作発表があったわけよね。
 ポスターが出て、主な配役が出て。

 いやあ……なにかと衝撃でした。

 わたしは、ポスターのみで「ぎゃふん」な気持ちになり、製作発表会の動画には長らく手を出せずにいました。

 だって……わたしのフェアリーまさおが、最後のポスターなのに、いちばん似合わないことをやらされてる……。
 いかにもな劇画チックな信長像に、顔だけお目々キラキラの女の子……。
 歴史ファンの一般男性に観てほしいと思う舞台ではないが、せめて歴女とか乙女ゲー好きとか、ヲタ属性の人にはアピール性のあるモノをと、期待していたのよ、わたし。『シャングリラ-水之城-』とか、チラシをコミケで配れ!!とか思ったし(笑)。
 なのにこれ、ヲタすら引く造形やわ。タカラヅカを知らない人が「タカラヅカってこんなもんだろ」と笑いながらアイコラしたみたいな世界観……。コーエーの『信長の野望』の劇画パッケージに少女マンガの顔だけ貼り付けました、的な。ケンシロウの顔だけ速水真澄みたいな……。

 帰蝶@ちゃぴの変なレッグウエアがすっげー気になる……「昭和時代に夢想された21世紀の服」みたいなの穿いてるー。

 つか、たまきちの役、ロルテス(ローマ出身の騎士)て、ナナメ上過ぎ……。

 どうしよう。

 不安感しかない(笑)。

 大野せんせというと、地味だけど悪趣味ではない画面作りをする人だという印象だったんだ。
 きれいよねー、地味だけど。
 いいわよねー、地味だけど。
 そんな会話になる舞台作り。
 それでも最近は、大野くん比で派手になってきてたのにな。

 これが、大野せんせの「ロック」イメージ……?

 派手にすると、悪趣味になるの? 一方が上がればもう一方が下がるシーソー才能?

 てゆーか、大野せんせはクリエイターではあっても、プロデューサーとしての才能はあまりないんじゃないかな?
 『NOBUNAGA』ポスターは、どこを狙って作ったのかわからん。せっかく「織田信長」という日本人が大好きな有名キャラクタを使うのに、「一般人お断り、ヅカヲタ専用」なポスター作っちゃうとか、おかしくないか? まさおがヅカヲタだけで大劇場を毎日満員に出来る人気スターなら、ファン以外引くようなポスターでもいいけど。……『舞音-MANON-』の客席を見る限り、元々のヲタ以外にも興味を持たせるプロデュースをするべきじゃ……?

 それともこのポスター、一般人が狂喜乱舞して劇場へ押しかけてくるような出来なの……?


 まさおさんは、独特の個性を持ったスターだ。
 織田信長は、まさおの個性を昇華出来る題材なのにな。
 もっともっと、たくさんの人にまさおを味わってほしいのにな。

 しかし、お目々キラキラ信長とか、まさおらしいというか、まさおでしかありえない感じが、一周回って楽しみではある(笑)。

 わたしは大野くんの日本物ファンでもある。
 どうか、舞台クオリティも見送るファンも両思いになる、良い作品になりますようにと、祈らずにはいられない。
 本公演千秋楽の翌日って、人事発表ある確率高いね。
月組 次期トップスターについて
2016/03/15
この度、月組次期トップスターに月組の珠城 りょうが決定しましたのでお知らせいたします。 

なお、新トップスターとしてのお披露目公演は、2016年10月14日に初日を迎える月組文京シビックホール公演『アーサー王伝説』となります。

 たまきちが次代月組トップスター!!

 よかった……。
 心から、よかった……。

 イレギュラーすぎて月組はもうよくわかんない。
 前例からいけば、来年のスターカレンダーに載ってないたまきちがトップになるとかありえない。
 スターカレンダーは対ファンだけでなく、阪急が企業として取引先に配る「劇団の広告ツール」だ。現にわたしの部屋に飾ってあるスターカレンダーは、一番下に阪急系列の社名入りで、もらいものだもん。そんな企業広告に「トップスター」が未掲載なんて、取引先に失礼じゃん。
 なにかよほど、イレギュラーなことが起こり、結果やむなくこういう人事になっているのだと思う。
 やむなく、ったって、「本来なら存在しない人事」ではなく、「予定が前倒しになった」だけだと思うけどな。
 いずれこうするつもりだったが、急な変更があり、いろいろと準備が間に合わなかった、と。

 どんな事情があったのか知りようもないが、とりあえず組内順当昇格はめでたい。
 ……たまきちが2番手になったのがつい先日からで、それまでの長い長い番手ごまかしと、それゆえに発生している混乱その他に決着がついているのかどうかはひとまず置いておいて。
 表面にあるのは、組の2番手が次代のトップスターと発表された、ということ。

 それは、めでたいことだよね。

 というか、落下傘人事がなくてよかったよ。ないとは思ってたけど、ひそかにおびえてたから(笑)。
 それぞれの組が、それぞれのまま、これからも楽しめるんだね。

 たまきちに関しては、「早すぎる」ということ以外は問題ないスターさんなので、彼のこれからの舞台も楽しみだ。

 てゆーか『アーサー王』!
 よくもまあ、たまきちに合いそうなとこを突いてくるな!(笑)
 たまきちって王様とか英雄とか似合うよね。
 イシダせんせのオリジナルだと不安しかないけど、海外ミュージカルなら安心だ。

 新体制が発表になったわけだけど、組替え発表はないので、月組はこのまま行くってことよね。
 わたしの個人的な感想としては「大丈夫か?」てな思いもあるけど、代替わりが弾みになって、良い方向へ回っていく、と期待されているってことよね。
 
 や、でもほんと、他組はみんなうまく回っているので、月組の代替わりが他組に影響を及ぼすものでなくてよかったよ……。
 そしてついに、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』千秋楽だ。
 なんかすっげーひさしぶりに、チケット入手にばたばたしなかった千秋楽。友だちが友会で当ててくれたチケットなので、並んで観劇。キャッホウ!
 ……『星逢一夜』なんて、幕が上がる数時間前までチケット手に入ってなかったからなー。

 1公演眺めて来て、今回の雪組の変化……調子に乗りっぷりが、とても楽しかった。
 公演の勢いって大切だね。連日満員のお客様、やたら反応のいい、常とはチガウ雰囲気の客席など、質実剛健な雪っこたちが、日に日にちょーしにのっていくの。自分たちのパフォーマンスでたくさんの人が喜ぶ、生の舞台の醍醐味、舞台人の喜びを実感しているんだろう。
 『星逢一夜』のときの「名作を創り上げている自信と誇り」に日に日に満ちていく様子もすごく愛しかったけど、今回の「祭りにちょーしこいてる」感じもまた、愛しい。
 雪組さん、真面目だから。なかなかちょーしこかないのね。おっかなびっくり探り探り周囲の顔色伺って、「はしゃいでいいのかな?」「かな?」とさんざん探りを入れたあと、「完全に大丈夫」とわかるまで制限速度内でしか走らないんだもの。や、ここまで慎重な組は、雪組ならではだよなあ(笑)。
 そんな子たちが、「これはいける」「オレたちすげえ」と思い出してから、どんどん調子に乗っていく様子が微笑ましいやら愛しいやら。
 うんうん、君たちすごいよー。もっともっと、調子に乗っていいんだよー。ついていくよー。
 や、前半は休演者続きでずっと緊張感あったしね。それによる張りつめたギリギリ感がまた、「オレたちすげー」に拍車をかけたと思うよ。

 祭り公演ってのは、必要なんだなと思った。
 全部が全部こんなじゃ嫌だけど、たまには空気を入れ換えて、生徒さんたちに「ライヴ感」を実感してもらうのもいいのかもな。
 や、舞台はすべてナマだし、どんな公演だって客席はナマの反応をしているけれど。
 今回の『るろ剣』は、いろいろと違ってたからなー。
 雪組の真面目でおとなしい舞台を粛々と創っているときとは、違うチャンネルを体験出来て、今後のパフォーマンスの枠が広がったのではないかと思う。
 長年雪組を眺めて来て、なんつーんだ、「ぷはーっ」て息をつく感覚を味わった。ずっとずっと、水中を泳いできて、水の中はきれいだし静かだし息を止めてストイックに泳ぎ続けるのもいいけれど、たまに水面に顔を出して、大きく息をつくのも、気持ちいいよな、必要だよな、って。
 そしてまた、こんどはもっと深くもぐってみたり、速く泳いでみたり、いろんなことができるんじゃないかな、って、そんな風に思った。

 観柳@翔くんのはじけっぷりは気持ちよかったし、毎回アドリブ楽しかった。ジェラール@だいもんといいコンビだよね(笑)。
 観柳のガトガト場面はリピート観劇のお楽しみ、ナニをしてくれるかわくわくしてた。

 雪に来てからのだいもんはアドリブがんばってる人なイメージ(笑)。
 今回も翔くんと一緒になって、楽しそうに、それでもがんばってたなあ。
 最後の「ありガト~~!」は狙いすぎな気も。

 はー。観柳×ジェラール読みてえ。(心の声がつい漏れる)

 そしてなんつっても、蒼紫@れいこ。
 成長したねえええ!! ってナニその上から目線発言。でもでも初日の余裕のないびくびく蒼紫からスタートして、かっこつけつつも申し訳なさそうな感じがしていたあのれいこが、公演を重ねるごとにドヤりだしてね……! 感無量ですわよ。
 この公演でいちばん収穫を得たのってれいこじゃないかな。苦手分野に真っ向から取り組みました感。

 退団者の見せ場には、とびきりあたたかい拍手が送られる。
 あああ、きんぐ……。
 ショーのない公演で退団するなんてなあ。前方席に坐ってきんぐに釣ってもらうのを毎公演楽しみにしてたのにー。
 わたしの癒やし系。わたしの思い出ジェンヌ。きんぐとの別れが、ひたすら寂しい。

 贔屓組の上級生には、それぞれ自分自身の思い出がある。時の流れとタカラヅカはリンクするからだ。
 『黒い瞳』『ロック・オン!』でのタジィ、まだ新公学年なのに副官イヴァン中尉がかっこよすぎて注目した、ショーの客席降りで真横で踊ってくれた、はにかんだ笑顔が「あ、下級生なんだ」と初々しくてこっちもつられて照れた。
 しあわせだった記憶。
 とびきり美形だけど実力がアレな男役、せしるは仲間うちではちょっとネタジェンヌ的に愛でられていた。「あのチャモロ」とか、「せしるがみつる!」とか、役も絡めてよくいじられていたな。それが娘役に転向して、素晴らしい美貌の女役になって。なにしろ美貌だから、組んだ男役の格を上げてくれて。
 しあわせだった記憶。
 かわいい人、と言わしめたきんぐ。ぐたぐたのアフタートーク、いじられてることにすら気づかない天然さ。『仮面の男』『ドン・カルロス』『インフィニティ』『フットルース』……いつもいつも、愛しい光景には、同じフレームの中にきんぐがいた。
 しあわせだった記憶。

 またひとつ、わたしは思い出を失うんだな。
 還る場所を失うんだ。
 そんな気がして、切ない。

 だけど、タカラヅカは続いていく。
 人生が続くように。

 ミトさんが雪組の今後のスケジュールを説明する。

「煌羽レオ以下16名の『Bow Singing Workshop』……」

 …………は?

 いいいいいま、きらはれおって言った??

 全組通して公演される、歌バウこと、『Bow Singing Workshop』。
 その出演者はすでに発表されている。主演はなく、全員横並びの公演、名前はチガウけど早い話が『エンカレッジ・コンサート』。
 主演はいないから、紹介するとき長の生徒名を言うことになる、という理屈はわかる。
 わかるけど、予測してなかったから、めっちゃびびった。

 煌羽レオ以下、って、まるで、レオ様主演みたいだ!
 な、なんかすっげーどきどきする!!
 歌バウというとわたし的には翼くんの歌が聴ける!!ということがいちばん大きかったんだけど、ここでさらに、レオ様が長! レオ様が率いちゃうんだ!!ということが、加わった。
 長ってことは、初日と千秋楽は挨拶しちゃうんだわ。「雪組の煌羽レオです」とか、舞台のセンターで言っちゃうんだわ。わわわ。なにソレなにソレ、感動!
 レオ様新公主演してないし、新公の長の学年のときだって席次的に挨拶ポジションにないから、挨拶してるとこなんて観たことナイし、観ることナイままいつか袴姿を観ることになるのかと漠然と思ってた。
 それが、主演みたく真ん中に立つ舞台がある……。
 わわわ、わわわ、どうしよう、めっちゃドキドキしてきたっ。

 タカラヅカは続く。
 時が流れ、失い、変わっていく。
 時が流れ、出会い、増していく。

 消えない花火はない、終わらない祭りはない。
 それでも、花はまた咲く。
 なんだかんだいって、楽しんでます、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』

 でも、本当の意味で楽しくなったのは、だいもんがだいもん全開になってからだと思う。

 わたしにとっては。
 ひとさまがどうだかは、知りません。

 加納惣三郎@だいもんって、ひどい役じゃないですか。
 ぶっちゃけいらないし、意味わかんないし、バカだし、かっこ悪いし。
 べらべら喋るけど、ナニ言ってんのかマジわかんないし。論理破綻しまくってるし。

 たぶん、だいもんも役のアレはさわかってるんだと思う。や、ふつーのアタマがあれば、「おかしい」ってわかるだろうし。
 どんなにおかしな脚本でも、生徒は先生に「おかしい」とは言えないんだろうな。過去の公演を見ていてもわかる。
 この役はおかしい。それはもう、変えられない現実。ならば、そのおかしい役を、「おかしいと感づかれないように演じる」しかない。過去のありとあらゆる公演で、多くのスターたちがそうしてきたように。
 舞台は役者のもの。アホ脚本を佳作に押し上げるのは、役者だ。

 だいもんが、アクセル踏んだ。

 わたしは大体週1~2回の割合で、バランス良く観てきたつもりなんだけど。
 公演中盤辺りから、だいもんが変わった。

 加納さんの熱量がすごい。
 脚本の粗を、自分が高速回転して発光して発熱して、押し隠すつもりだ。なかったことにするつもりだ。
 加納は脚本の破綻を全部押し付けられている。彼の言動がおかしいからすべての事件が起こる。だから、その元凶である加納さんが「自分のしていることは破綻してない、筋が通っている」と力尽くで主張し、舞台全体の色を決めることで、舞台が変わる。

 すごい。

 ただもう、息を飲んだ。

 力技キターー!

 クライマックスの剣心@ちぎくんVS加納の場面の、あの気合いと覚悟。
 持ってく気だ。
 この作品の闇を全部、ひとりで集約し、ひとりで背負っている。
 主役のちぎくんには背負わせない。ちぎくんはきれいなまま、公演の看板として頂点に立ってくれていればいい。だいもんが発する熱量に、ただ沿ってくれればいい。それが主役の仕事、トップスターの責務。
 駄作に足を取られて、倒れてはいけない。
 悪いのは全部加納。剣心は剣心でありつづける。
 役の役割りとリンクしている。

 だいもんが高速回転している。「だいもん力」を全開で放出している。ほら、『アル・カポネ』の裁判シーンとかで放出する、とんでもない力……「だいもん力」としか言いようのないパワー。
 うおー、ここで「だいもん力」放出しますか、主演舞台以外でここまでやるのって、『BUND/NEON 上海』以来? いや、『BUND/NEON 上海』は本人無意識でしょ、ブレーキの存在を知らなかった幼さゆえの事故みたいなもん。だいもんが全開すぎてまぁくんファンが苦い顔してたっけ。全部持ってくからなー。
 大人になった今は、意識した上でアクセル踏んでいると思う。そこにあるのは2番手としての責任感、そしてちぎくんへの信頼感?
 全開のだいもんに巻き込まれず、ちぎくんは自分のスタンスを貫いている。トップの貫禄。そうよ、巻き込まれちゃいけない、だいもんは良くも悪くも周りを巻き添えにするから。
 ちぎくんなら大丈夫、そう思えるからこそのアクセル全開。

 いやー……涙出た。

 だいもんの「だいもん力」全開ぶりに。
 この人、ここまでやるんだ、と。
 こんなひどい作品なのに……いや、ひどい作品だからこそ、全部背負って走るんだ。
 『BUND/NEON 上海』のときみたいに憑依してるんじゃなくて、あくまでも自分の意志の力であそこまで持って行くことに、胸が痛くなった。

 だいもんは『アル・カポネ』をやったことで、「駄作の背負い方」をおぼえたんだと思う。
 今までどんだけ駄作に出演していても、大きな役をもらってなかったから、背負いようがなかった。
 雪組にやってきてからは、作品に恵まれていたから、そこまでする必要がなかった。
 でも、『アル・カポネ』で「駄作で真ん中を張る」経験をして。どんだけ間違っている脚本でも破綻したキャラクタでも、自分の力で吹っ飛ばせることを体感した。
 その経験が、活きてるんだなぁ。しみじみ。
 「駄作を力技で佳作に変える」のはトップスターの仕事。どんだけ美貌でも技術があっても、このスキルを持たない人は、タカラヅカのトップスターには不向き。
 だいもんはまたひとつ、スキルを取得したんだなあ。

 トップスターが熱量全開にして吠えて暴れて、駄作を力技でねじ伏せる、のが常のタカラヅカ。
 でも今回は、その仕事をだいもんがやっていた。
 ちぎくんにそれが出来ないからだいもんがやった、わけじゃない。
 今回は原作の縛りがあり、剣心役のちぎくんにはその役割りを振れなかったんだ。剣心がそんなにあくせくハイテンションじゃおかしいもの。
 オリキャラで原作の縛りのない加納が、その役を担った。
 そうやって高熱に発光している加納を倒すことで、剣心の大きさも示せる。
 双方に舞台力があり、信頼関係があってこその役割分担だと思う。

 まあ、だいもんが勝手に暴走してるだけかもしんないけど。
 それでもゆるがないちぎくんはオトコマエだ。


 わたしはだいもんがだいもんであると、感動する人なので。
 初日付近の役と作品にとまどっている、手探りっぽいあたりは楽しめなかった。
 覚悟を決めてアクセル踏んでからだ。
 楽しくてたまらないのは。

 いやあ、もお、好きだわ……。
 だいもんのこういうとこ、大好きだわ。

 空気を動かす力。
 それを持っている、ということにも感動するし、それを体感することに快楽をおぼえる。
 でも、それ以上に。
 「空気を動かす」という覚悟を持ち、現に実行している事実、に感動する。
 強い、意志の力。
 ひとを、空気を動かす、……動かすと決めた、力。

 それを持っている人に、感動するんだ。
 泣くんだ。


 はー。
 駄作もいいもんだね。舞台人の底力を見られて。


 ……駄作ではなく、作品も役者も両思いゆえに奇跡を生む、そんな舞台が観たいけどな。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の翼くん語り、その2。

 気になったのは、プチ・ガルニエにて。翼くんの役名は「客の男」。……はい、安定のモブです。
 ……なんだけど、この客の男って、警官2と同一人物?
 斎藤他、関係者に挨拶してるのね、すごく恐縮した様子で。
 プチ・ガルニエに招待されるからには、なにかしら地位や財産のある人のはずなのに、みょーにへこへこして下っ端感漂わせてるのは、そのせいか!
 警官だからどさくさにまぎれて招待状GETしたのね。ひょっとして、斎藤から「俺はいらん、オマエ行け」って突きつけられたのかも。斎藤さんは自ら警備を買って出て。こういう場は妻帯者の方がいいってのもあるだろうし。
 でもって警官2の奥さんはひーこかよ! 美人の嫁もらいやがって(笑)。
 翼くんとひーこのカップルがかわいいんだ。翼くんはいつもの情けない顔、ひーこは八の字眉毛で、おっかなびっくり踊ってて。

 途中出てこないなと思ったら、従僕役で登場。
 イケコのモブのキャスティングは変わってる。客の男たちに従僕もやらせてるんだもの。従僕は戦闘シーンがあるから人数必要、というなら、単独で登場する従僕だけは客の男とかぶらせないようにすればいいのに、変なとこで学年順。
 おかげで翼くん大忙し。
 さっきまで客の男でへこへこおどおどしていたのに、クールな従僕になって出て来てチャンバラして、さっきまで斎藤相手にチャンバラしていたからと思ったら、斎藤の部下の警官として登場するし。
 どっちやねん。

 それでも、へこへこ翼くん以外を見られるから、従僕役はありがたい(笑)。
 加納さんが指示する従僕は、中堅の出番確保のため(ミもフタもない……)毎回別の人が出て来るんだけど、翼くんは女性案内用かな。たぶん、加納さんちの従僕でいちばん線が細いからだな……とか考えたり。おーじくんとか、小さくても強そうだもんな……。

 最後の乱闘では、上手で斎藤さんと闘ってる。牙突で「うわーーっ」てやられてるうちのひとり。
 しかし斎藤さんの牙突、も少しなんとかならんかったんか……(笑)。壇上から、足もと気をつけながらだだっと走る、だけって。映画みたいにワイヤーで飛ぶわけにはいかんけど、あの「段差注意」な様子はどうにも……。足もと気にせずに走れるよう、平らなとこでやらせてやればまだマシだったんじゃ……? 最初牙突だと気づかなかったよ……。

 客の男=警官2説を唱える私は、加納あぼーん後に登場する警官2は、客として奥さんと一緒に来た警官2が、慣れないダンスでへとへとになりつつ帰宅した途端、招集かけられたんだと想像。
「えっ、今からプチ・ガルニエ……? 今そこから帰って来たのに……」でもタジィ先輩にどやしつけられて、あわてて着替えて。


 フィナーレの大階段ダンスは、下手のいちばん上。……ほんとに、いつもいつも、笑えるくらいご丁寧に端っこだよな、もう中堅学年なのに。
 いちばん上ってさ、B席だと見切れるよね。顔から上、見えないよね。

 なのにさ。
 そのすみっこでさ。

 ばちこーん☆って、2階席へ向かってウインク飛ばすよね。

 いやも、のけぞったよ、2階で見てたとき!(笑)
 あんな端っこで、2階席の半分からは見えないような位置で、それでも気合いたっぷりにウインク飛ばしやがる!!

 はー。
 好きやわー……。

 あのくしゃっとした笑顔がかわいい。癒される。
 美形ではないけれど、鼻スキーのわたしからすると好みからはずれてすぎているんだけど、横顔とかペコちゃん系だけど……それでも、かわいいからいいんだっ。
 あんな顔と芸風で、ウインク魔なのもいいじゃないか。

 翼くんのおかげで、わたしにとっての『るろ剣』テンションMAXがオープニングの剣心VS新選組になってたりして、心臓に悪い。
 翼くんの死に芝居にきゅーん☆として、胸がどきどき、涙じわ~~、で、いやお芝居これからだから、まだなんにもはじまってないから! とセルフツッコミ忙しい。

 翼くんの死に芝居ね、たまにやりすぎというか、「あ、今日のあざとい」って思うこともあったわ。
 力入ってる、この死に芝居に命懸けてるのはわかるんだけど、それが表に出すぎてしまうと、あざとく見える。
 斬られたあとがくんって倒れるの、今絶対大袈裟にやりすぎたよねー、って。すでに絶命してるんですよ、そのあと重力で身体が崩れるんですよ、ってことを、観客にアピールするみたいに見えて、オペラでガン見しつつ「翼くんやりすぎ」とか、内心ツッコミ入れたりな。

 慟哭芝居は派手でいい。心が折れて、身体が折れる。それを見るのが好き。
 ……おかげでざんばら髪のだいもんさんをあまり見られなくなった……最大ニアミス席で見られなかったのは痛恨だったけど、それ以外でもな……や、だいもん見たいから、だいもんの声がしたらあわてて上手へオペラ向けるんだけど、銀橋短いんだもん……。
 でもまあ、だいもんさんはテレビカメラが映してくれるからね……つばさくんは、ナマで見てても暗くてろくに見えないしね……。


 そんなこんなで、なんか今すっげー翼くんブームです。
 つか、翼くんだけでこんなに文字数書いてるよ。1日欄で終わるつもりだったのに、入らないよ! 2日分に分けるはめになったよ!(笑)

 翼くんのモブ芝居が好きなわけですが、いちいちモブと銘打っているのは、役としての芝居をちゃんと見たことがナイからです。そりゃまあ、新公や別箱などでなら名前と台詞のある役はやってるけど、芝居の好き嫌いを語れるほどの役じゃないというか、それだけだとわたしにはわかんないというか。
 翼くんには、長くいて欲しいです。
 学年が上がれば、別箱でストーリーに関係ある通し役とか、来るかもしんないし。一度彼のマジな芝居を見てみたいっす。心から。
 『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』にて、えらいことになってます。
 わたしのなかの、「翼くんスキー度」が上がりすぎて、えーらいこっちゃ!になってるんです(笑)。

 もともと翼くんスキーなので、雪組公演観劇時は彼のことをよく見ています。
 なんで好きなんだろね? 間違いなく顔は好みじゃない(笑)。でも好き。
 初日からごく自然に、日課として、舞台で翼くんを探す。
 ああ、翼くん新選組なんだ。と、わかったからといって、彼だけを見て他を一切見なくなる、わけじゃない。ふつーに全体を見ているし、主役のちぎくんを見ている。他の隊士たちの点呼もするし。
 所詮彼はモブだから、同じ羽織を着た隊士たちの乱戦の最中、見失ってしまう。見失ったら見失ったで別にいいや、今はちゃんとストーリー追って、余裕が出来たらまた探そう……程度。
 大人数の殺陣はめまぐるしいから、全体を眺めることが多いかな。

 2回か3回目あたりかな、剣心@ちぎに斬られて死ぬ新選組隊士のひとりが気になった。斬りかかるところは後ろ姿だけだし、斬られたあとは正面向くけど、ライト当たってないから肉眼では顔まで見えないし。
 でも、斬られて死ぬ、……斬られたあと、倒れるまでの芝居に引きつけられた。
 え、今の子すごくない? 斬られたあとのリアクション……絶命から崩れ落ちるまでがすごい説得力。
 シルエットだから誰かわかんない……けど、立ち位置的に翼くんのような気もする。次はちゃんと確認しよう、真ん中で斬られて死ぬあの子は誰?

 それで、意志を持って殺陣を見た。抜刀斎時代の剣心の強さを表す場面だから、新選組がわんさか出て次々ぶった斬られるのを、ひとりずつ確認する。この子じゃない、この位置じゃない、そうここ、ここで斬られて死ぬ子、……翼くん!!
 顔を確認した瞬間、翼くんは斬られていた。

 剣心の腕は凄まじく、一刀で致命に至る。
 一撃で彼は絶命するが、身体はまだ立ったままだ。慣性で動いてはいるが、やがてがくんと崩れ落ちる。
 ……ってことが、暗い中わかる、って、どんだけ。

 ぶっちゃけ、誰も見てないでしょ。たくさんいるモブ敵のひとり。顔のないショッカーの雑魚みたいなもん。出て来て、斬られて、倒れる。
 それだけの仕事。
 なのに、この演技。
 斬られたあとはライトも当たらないから、どんな風に倒れてどんな風に死ぬかなんて、オペラでガン見しなきゃわかんないのに。映像ならさらに真っ暗で映ることすらないだろうに。
 それでも、ここまでやるか。

 感動した。
 胸がじんと熱くなって、涙出た。

 あの生々しい倒れ方を習得するまでに、どんだけお稽古したんだろうね。
 斬られる側・倒れる側がうまければうまいほど、主役がかっこよく見える。個別認識されなくても、ライトも当たらないシルエットだけだとしても、棒演技で倒れるよりも主役を引き立てることになるはず……日本物と殺陣に慣れた雪っこたちは、みんなきっと真剣にお稽古している。
 前にキムくんが話してた、最下級生たちもが、斬られて死ぬ芝居をえんえん鏡の前でやっているのを見て、雪組の矜持を感じた的なことを。
 翼くんだけではない、他の名もなきモブの子たちもみんなやってはいるんだろうけど。

 けど、わたしは翼くんの芝居に惹きつけられた。
 翼くんだから、ではなく、惹きつけられた芝居をする子が、翼くんだった。
 つか、翼くんだとわかって、ああ、そっか、と思った。
 もともと好きってのは、波長が合うんだろう。
 わたしは、翼くんのモブ芝居が好きなんだ。

 斬られて死んだはずの翼くんは、幕末血風録でも登場、新選組として踊っている。
 そして、最終的には幕府の敗北に号泣している。

 ……ほんとにもう、いつもいつも、感心するくらい端っこでさ。ライト当たらないしさ。見えねえっつの。追いかけるの大変だっつの。

 膝を付いて叫ぶ翼くんを見るために必死にオペラグラスにかじりつき……なんか目の端に障害物があるな、と思ってオペラを下げたら、加納さん@だいもんが去って行くところで……だいもんの銀橋見逃した!!と、盛大に凹んだりもしました……。
 どうせ翼くんは、どこの席からでも見にくいのよ。どの席から見たって同じなのよ。なのになのに、上手タケノコに坐ったときに何故、下手舞台奥の翼くん見るのに必死になるかな。それで上手側の銀橋に出て来るだいもん見逃すとか……だいもんがすぐ目の前に立っている貴重な時間だったのに……あたしのバカバカバカーー!!

 えー、新選組隊士は所詮アルバイト、翼くんの本役は、唯一台詞のある「警官2」でしょうね。
 斎藤@咲ちゃんに怒られるだけの、まぬけな警官。
 とっても翼くんらしい役。
 へこへこした下っ端三枚目は、翼くんの得意の役よね……。情けない、とか、まぬけ、とか、得意よね……。つくづく、翼くんの芸風って……。
 警官役は、実はわりとどうでもいい感じで見ている。いかにもなマンガ的キャラクタ。やることが決まっているので、何度見てもあまり発見はない。

 赤べこのモブはかわいい。
 ここも弱々しい、いつもの翼くん。罪なく故もなく、いつもの自分のニュートラルキャラでやってる感じ? にっこにこの笑顔と、丸い帽子がかわいいの。赤べこの人形(置物?)持ってるのもまたかわいー。
 あとは比留間組だの左之助@大ちゃんだのに、驚いたりびびったり、遠巻きに見物しているだけ。ほんっとに、いつもの翼くんだ。

 気になったのは、プチ・ガルニエにて。

 文字数足りないので、続く。

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