『星影の人』ってさあ、宙組で再演もアリだよねとか、無邪気に考える。
 「少年」スキルをぜひ取り戻して欲しいタニちゃんが沖田、渋い色男らんとむの土方、うめちゃんの玉勇。そしてナニより、桂小五郎@みっちゃん再び!!
 是非女装してください、みっちゃん桂! 衣装同じでいいです、そのくせシリアスに願います。同じ役で同じ衣装、だけどうってかわってドシリアスとなると、腕の見せどころだと思うなぁ。

 なーんて妄想は置いておいて、雪組全国ツアー公演初日、『Joyful!!II』

 幕開け、水しぇんにマイクがなかったのは、気のせいですか?

 びびりました。水くんだけナマ声で。
 あわててオペラで確認したところ、キムもハマコもネクタイにマイク付けてるのに、水くんは付いてない。
 ムラならスタンドマイクが出てくるんだろうけど、梅芸ではフォロー無し。水くんはそのまま歌う。
 キムが自分のソロで声を出すとき、「どこまでやっていいのかな?」と水くんをチラ見していた。マイクのあるキムが全開で歌うと、水先輩の声がかき消されてしまうかもしれないものね。
 その直後、ハマコ先生が容赦なく美声を披露。朗々と。いやあ、ハマコ先生、同期トップに容赦ないなー。ま、たとえ水くんにマイクがあったとして、ハマコ先生の声量に勝てるとは思えないから、いっそ清々しくていいのかな。

 でもってオープニングの水くん、一度出たら、出っぱなしなんだね。一旦袖に引っ込むことがあれば、マイクを付けて出てこられるんだろうけど……その機会ぜんぜんなし。

 水くんの声は、たしかにボリュームは小さかったけれど、2階席にもちゃーんと届いてました。
 めーっちゃ力の入った笑顔が輝いてました。

 そして、よーやく一旦引っ込んだあと、再度登場したときはちゃんと胸にマイク有り、余裕の歌声を聴かせてくれました。よかったよかった。
 ……いやその。水くんのマイクに気を取られて、オープニングよくおぼえてないんだわ……。

 水くんをチラ見するキムと、顧みもせずマイペースに歌うハマコ、に大ウケできたので、それでヨシ。

 
 中日に引き続き、プログラム買ってないし、ムラとちがって場面解説のあるチラシも置いてないし、で、ショーになるとなにがなんやら、どこがどうやら。
 印象だけで感想を残しておく。

 キムが、すごかった。

 ひょっとして、初の2番手?
 はじめて?
 ほんとうに?
 ちなみに今日、初日だよね?

 めーーっちゃ、余裕でした。

 えーと、少なくとも1年以上は単独2番手経験ありだよね? 慣れてるよね? 知ってるよね?
 あたりまえの顔でスターやってました。

 真ん中に立ち、たったひとりで舞台を、客席を含めた広大な劇場空間すべてを埋めなくてはならなくなっても、揺るがない。
 当然である、ように、光を発する。

 トップ娘役をエスコートし、トップスター様に対峙する。
 動き続ける表情、前へ前へ、客席へ、世界へと己の存在を解放する強い力。
 安定した歌唱力、実力に裏打ちされた、自分の武器を自覚した上でのアピール。

 すげえ。
 この子ほんとに、「トップスター」になるために在る子だ。

 途中、水くんと男同士の絡みがあるんだが。
 水しぇん、自分を攻だと思ってちゃダメだってば。
 おさまりが悪く感じられたのは、水くんが「下級生相手だ、ワタシがちゃんと攻をやらなきゃ。リードしてあげなきゃ」と肩に力が入っていたせいだと思う。
 水くん、キミ、受だから。がんばって攻やらなくていいから。傲慢な若い攻に、身も心も任しちゃいなよ(笑)。

 キムが、水くん相手にもまーったく引く気がなく、ガンガンに攻めている様を見て、そう思いましたのことよ。
 ちなみにキムは、小柄でかわいらしい顔立ちのわりに受とかかわいこちゃんとかが似合わない。中性的な美少年とか背徳的な小悪魔とか、コム姫が得意としたものはことごとく似合わない。
 彼の持ち味は骨太な野郎系であり、帝王系だ。王子様でも姫君でもない。
 劇団が誤解してかわいこちゃんだの美少年だのをやらせるから失敗するんじゃん。
 水くんを誘惑するなら、蠱惑的な美少年だとか女のような中性的な小悪魔とか(いつぞやの金歩の「キリエ」みたく)ではなく、強引傲慢S系で攻めたててこそ、だわ。
 それでこそ、水くんのM的魅力が花開くのよ。(水夏希は受攻に関わらず、基本Mだと思っていますがナニか?)

 
 でもって、あちこちで嘆息したこと。

 水、キム、ひろみと来て、さらにその周囲を、らぎ、そら、谷みずせ(必ずフルネーム・笑)と固めるのよ?

 なんなの、この絶対無敵の美しさ。

 美形揃いかよ?! なんつー完璧な布陣だ。
 あまりの美しさに、感動してしまった。
 美形揃いなんだ、雪組……。雪組1の美形・かなめが抜けてさえ、この顔面偏差値の高さ。

 じつはわたし、せしるがいることにほとんど最後近くまで気づいてなくて。
 中詰めが終わって後半戦になってから、「いやー、美しいわー、つくづく、しみじみ美しいわ雪組」と感心しきりだったときに、よーやく気づいたの。
 あれ? あそこにいるのせしるぢゃね? ……えええ、せしるいたの?!

 今まで、せしるはどんなときでも目に飛び込んでくる子だったので、気づかなかったことにびっくり。
 見間違いかな。せしるは出てないのかも。出てたら芝居からわかるはずだし。
 終演後、チェリさんに「せしる出てた?」と聞いても「わかりません」としか返らなかったし……帰宅してから確認したよ、やっぱアレはせしるだったって。

 漠然と「美しい雪組」に感動していたとき、たぶんきっと、せしるも視界に入っていたんだと思うよ。なにしろ顔立ちの美しさでいけば組内五指に入る美少年だからなっ。

 これだけ美形揃いなんだと思うと、これからの雪組観劇がますますたのしみだ。
 彼らの真ん中で君臨するとなみ姫はゴージャスな美女だしさー。
 眼福眼福。

 そーいや中日でいちばん好きだった、赤い花の椅子がないぢゃないですか、全ツ!
 そこに坐るとなみ姫の壮絶な美しさ。
 となみガン見してたら終わっちゃった場面があったはず……(周囲で何が起こっていたかわからない)。

 全ツだもんなあ。セットはショボくて当たり前だよなあ。寿美礼サマの箱だってなくなったもんなあ@『エンレビ』。

 セットのショボさを吹き飛ばしてくれるのは、なんといってもハマコの歌声。

 あああ、帰ってきたなあ。どこへ、とは聞かないでくれ。ハマコのハマコ全開っぷりを見ると、すごく安心するんだ。癒されるんだ。
 まるで、長い旅路の果てに故郷へ帰り着いた旅人のように。

 『Joyful!!II』は「目がいくつあっても足りない」「もっと観たい」という強烈な欲求を残して終了した。

 水くんととなみちゃんはほんとーに、美しいカップルだ。
 芝居であんなにリリカルで初々しいのに、ショーではアダルトかつスタイリッシュな美男美女カップルとして、豊かな輝きを放ってくれる。
 や、リフトはちょっとチガウ意味で息をのむけど、そ、それでもお似合いのカップルだ。

 フィナーレのパレードで、キムが「1年以上前からですが、ナニか?」てなカオで、巨大な2番手羽根を背負っていて、感動した。

 えーと君、はぢめて……だよね? んな大きな羽根背負うの。
 でもって今日初日……だよね?

 めーーっちゃ、余裕でした。

 当然というか、慣れた風情というか。
 すげえなヲイ、と思いつつも。

 あ。
 「銀橋」に並んだつもりで客席に挨拶するとき、キムの羽根が、水くんの羽根より前にずっと出たまま。

 ダメだよキム、それは反則。トップスター様の羽根を隠しちゃダメ。君は一歩後ろに下がらなきゃ。

 ホントに、はじめてなんだ。
 お稽古じゃわからない、本当に羽根を付けて挨拶しなきゃわからない位置関係、身体の角度。

 その昔、博多座ではじめて2番手羽根を背負い、隣に立つまっつのカオを羽根で隠しかけた初日のゆみこを思い出す……みんな、最初は位置や角度がわかんないもんなんだね……。

 余裕で微笑むキムの、そんなささやかな失敗に、ちょっと胸を撫で下ろしました。
 なんだ、やっぱキムも初心者らしいとこあんじゃん。


 体調は、決して良くなかった。
 でもってこれは、体調のせいだろうか。

 雪組全国ツアー『星影の人』初日、泣けて泣けて、しょうがなかった。

 『星影の人』といえば、水くんが沖田総司。あの大人の色男・水夏希が、純情可憐な少年役。中日で観たときもその異様なまでの若作りに心を痛めたものだった。どー見ても沖田より年下の少年たちの間で、少年ぶらなくてはならない痛々しさ。
 これはいったいなんの罰ゲーム? 水くんの魅力は若作りプレイにあるわけぢゃないわ! と、アタマを抱えていた、あの作品。

 名作とかいう噂だけど、そりゃー大昔はコレで良かったのかもしれないが、21世紀にコレは無理だろ、今コレを「新作です、若手が書きました」と言ったらボコボコに叩かれるだろうクオリティ。
 柴田ブランドでめくらましされてるだけぢゃねーの? 柴田作品=名作というすり込みがあるのがタカラヅカ、でもあたしゃ中日初日に観て、「もう観なくていいや」と判断したくらい、どーでもいい作品。

 土方役がゆみこだった中日ですら、水くんの若作りやミスキャスティング感、「ゆみこと水はどう考えても逆だろ、配役」という違和感がぬぐえなかったのに、全ツでは土方役が少年役者のキムだという。
 それって、若作りを超えて水くんに幼児プレイをしろってこと?
 ひでーよ劇団、ナニ考えてんだ。土方はハマコでいいじゃん、その昔ケロが芝居では2番手役で、ショーではタニちゃんが2番手役をやったように、キムを無理矢理土方にしなくていいじゃん。

 と、思っていた、あの『星影の人』で。

 泣いた。
 もー、最初から泣けまくった。

 沖田の、もどかしい「少年の恋」に。

 ……水しぇんなのに。
 大人の色男・水夏希なのに、その「少年ぶり」に、きゅんきゅんきました。

 玉勇@となみと出会ったときの瑞々しい緊張感。中学生の恋のような、純粋さと不器用さ。
 再会と、デートの約束。そして、はじめてのデート。

 沖田と玉勇の心が近づき、おどおどとふれあい、やがて深く結び合わされていくさまに、ヲトメゴコロつつかれまくり!!
 なんなのこのリリカルさ!

 リリカルですよ、リリカル。
 みずいろにとーめいな、れぇすであまれたぽえむのせかいですよ。

 ふたりの恋がかわいらしければかわいらしいほど、結末を知っているだけに切ないのだ。

 おそろしいな、水夏希。ちゃんと少年に見えるよ。若者たちの間で誰より年少キャラを演じているのに、変じゃないよ。
 2階席だったせいかなあ?
 中日はわたし、張り切って前方席Getしてたからなあ。近くで観るとどうあがいても水先輩が若くないことが……ゲフンゲフン。

 いや、水先輩の演技力の賜物だ。そうとも。中日1ヶ月、ムラ・東宝と難役トートをこなした経験が、水くんをさらに成長させたのだ。もともと心のある演技をする人だったのが、なおいっそう役者として高見に到達したのだ。そーだそーだ。

 
 でもって、今回の公演で、ある意味いちばん危惧していたことは、少年役者のキムが土方役だってこと。

 ええ、危惧してたんですよ。前述の通り。
 それが。

 違和感ナシ。

 ど、どういうこと? 土方@キム、沖田@水でおかしくない。ふつーに観られる……って、ナニそれ?
 キムはふつーに「土方」をやっている。
 水しぇんより学年も実年令もはるかに下なのに、違和感ない。
 きっとものすげえことになる、と身構えてたのに……。
 2階席だったせいかなあ?

 わたしだけの目の錯覚かと思っていたら、芝居が終わった直後、一緒に観ていたチェリさんが、「キム、うまいねえぇ。土方で違和感ナシ!!」 とこれまた力強く感動していたので、わたしだけではなかったようだ。

 うん、キムやばい。本気でうまいわこの子。
 むしろゆみこの方が「土方」としては無理があった。見ていていたたまれなかった。

 もちろんソレは、最初に見たのがゆみこ土方であったこと、今回のキム土方は若作り水しぇんに対し、わたしの免疫ができたあとだった、てのも、あると思う。
 でも中日未見のチェリさんも「キムで違和感なかった」って言ってるしなー。免疫は関係ないのかな。
 んじゃ水先輩の「少年らしさ」が上がったことが大きいのかな。

 キムの学年や実年令、「少年役者」だという先入観を持たない、役者の顔なんかわかっていない地方のお客様相手なら、このキャスティングで無問題だ。先入観ゆえにいろいろ言うのはヅカファンだろうから、ファンをメインターゲットとした本公演ではないのなら、キム2番手で大人の男としての扱いも、まちがってはいない。

 
 作品の古さも、粗も、ムカつくところ、許容できずにどーしても引っかかったところも、全部もう「仕方ない」とわかっているから、素直に「沖田の恋」に集中した。
 だからもう、泣けて泣けてしょーがなかったよ。

 
 オープニング、沖田の他の新撰組幹部たちが登場するところ、かっこいいねえ。
 山南@ひろみ、近藤@汝鳥さん、土方@キム、山崎@ハマコが、新撰組のダンダラを着てずらりと並んで登場したとき、あまりの格好良さに息をのんだ。
 てゆーか、ハマコ、かっこいい。なんでこー色男なんだっ。
 中日に引き続いて、「今すぐ外部の舞台に出られる……つか、出て、さらに外部の男性俳優に勝てる」と思える色男ぶり。

 ハマコの巧さ、かっこよさに心酔していたわたしは、幕間に隣の席のチェリさんに「この間まで、ゾフィーやってたのにね」と言われるまで、忘れていたよ。
 そーだった、ゾフィーだったんだ、あの人。
 あの美しい壮年の女性だったんじゃん。

 …………。
 …………。
 …………。

 ハマコ、恐るべしっ。

 
 キャスティングも、誰が出るのかもわかっていないままの観劇だったので、桂@らぎ、におどろいた。
 らぎくんがやってんのかー。
 すげー、美しい〜〜。
 てゆーか、ふつーにうまいし? 『睡れる月』のころからすりゃ、ほんと成長したなあ。

 主要キャラクタはそのまんまなんだなあ。ルーシー@『ホップスコッチ』に芝居が必要な役を与えるのはやめてほしいっす……。や、きれいだから、いてくれるぶんにはいいんだけど、芝居されるとなー……。
 疑問はそれくらいで、あとはたのしく観ました。

 基本、「沖田と玉勇」しか見てませんから!!
 熱のせいかなんか知らんが、泣けて泣けてしょーがなかったから!

 水しぇん、となみちゃん!!
 もーダイスキ〜〜。


 ラストはディナーショーのオリジナル曲を2曲続けて歌ってくれた。
 阪急交通社の『「汐美真帆」 スペシャルトークショー』にて。
 お馴染みの「Platinum」と「Good Bye,Good Guy,Good Fellow」。

 「Good Bye,Good Guy,Good Fellow」は、おどろきだった。

 まったく、別の曲に聞こえて。

 わたしにとってこの曲は、「別れの歌」だった。
 だってタイトルが「Good Bye」だし。
 実際別れのときに聴いた曲だし。
 最後のディナーショーのオリジナル曲だし。

 でも、チガウ。

 出会いの曲なんだ。

 めぐりあったこと、触れあったこと、つながりあったこと。
 それを歌った曲なんだ。

 明るい曲調、現役時代よりよく通るようになった(ええっ?)歌声、手拍子で盛り上がる会場。
 手拍子も出来ず、横坐りしていた椅子の背を握りしめて泣いた。

 別れたんじゃない、出会ったんだ。

 すばらしいことばかりだった。
 ケロと出会い、ケロを通して出会えたことのすべて。

 よみがえる想い出は、記憶は、みなやさしい、幸福なものばかりで。

 なんてしあわせなんだろう。
 なんて幸福な出会いだろう。

 ただしあわせで、せつなくて泣いた。

 ケロはご機嫌で、歌いながら客席を練り歩き、わたしたちのテーブルの横でくるりと当時の振付で回ってみたりしていた。
 その姿は、ふつーに女性歌手だったかもしれない。

 「別れ」は今新たに「出会い」としてそこにあり、汐美真帆はわたしの「幸福の象徴」としてそこにあった。
 

 mixiでNY日記を書いていたときから、わたしたちどりーずの間で「誘い受」と呼ばれていたyokoさんは、やっぱり誘い受で「今後の芸能人としての予定・展望」に対し、「呼んでもらったらやります」の一点張りだった。
 あー、自分からつらい思いをして営業したりはしないけど、求められたら応えますよ、てか。求める答えのために、自分で伏線を張るのね。
 まあ、そーゆートホホなところも許容してこそファン。好きでもない人がこーゆー態度だとドン引きするけど、ケロだから「仕方ないな」と思う(笑)。

 ケロには、芸能活動をして欲しいと思う。
 変わっていくぐらいなら、そんな姿は見たくないとか、美しい記憶のままで封印したいとか、考え方はいくらでもあるが。

 わたしが愛したのはyokoさんではなく「舞台人・汐美真帆」なので、舞台でまたその姿を見せてくれるならうれしいと思う。
 
 といって、彼……彼女がこれからどんな活動をするのか、なにしろ誘い受するだけでなにも言わないのでわからないけれど。
 せめて「芝居をやりたい」とか「ダンスに興味がある」とかぐらい言えばいいのに、司会でもOGステージのにぎやかしのゲストでもトークショーでもヨガでもなんでもいい、仕事なら本当になんでもいいので「呼んでくれたらやります」だもんな……。

 ケロが仕事を選ばないなら、わたしが選んで観に行くことになるだろう。
 ケロならなんでもいいとは思えないから。
 や、「芝居をやります、仕事を取るためにこれからがんばります、どんなチョイ役でも命懸けてやります」と言われたら、演歌歌手主演の1部が時代劇、2部が演歌ショウとゆー構成の舞台の超脇役でも、その命がけの芝居を見る価値はあるかもしれないが、「なんでもいい」と言われてしまうと、演目次第かな、と。

 長く愛して行けたらいいと思う。
 大切なひと。
 
 
 ケロは、花園を卒業した最初のご贔屓。
 最初のダーリン。

 「男役は男」と割り切ってバーチャルをたのしむスタンスのわたしの、最初で最後のヒトかもしれない。

 ケロの卒業が引き金になり、バーチャルと割り切ってヅカファンライフを楽しみながらも、「いつか女になる」ことがどこかアタマの隅に巣くうようになった。
 ケロのあとわたしはうっかりまっつにオチたけれど、まっつのことは男だと思っていない。「男役」という職業の女性だと思っている。
 ケロに似た、ケロと同じように男性として愛せそうなそのかにグラつき、オチかけたよーな気もするが寸前でストップして、その横にいたまっつにオチた。

 ケロは、ヅカファンとしてのわたしのスタンスをも変えたと思う。

 本気で好きになるヒトのことは、「バーチャル」だとか「男」だとか夢は見ない。
 いつか女性になっても愛せるように、バランスを取る。

 や、それでもヅカを「虚構」だと思い、それゆえに愛し続けているけれど。

 女性としての姿を受け入れられない最後のヒトは、ゆーひくんだけかなぁ。ケロよりあとに好きになった人は、どこかでセーブが効いているからなー。

 
 もう悲しい歌じゃない、「Good Bye,Good Guy,Good Fellow」。
 わたしもあの人も変わってしまったけれど、それは悲しいことではなく、別れでもなく、幸福な、出会いゆえのことなんだ。

 留まるでなく、つねに進みながら、どこかへ向かいながら、幸福感だけを噛みしめる。
 ケロはわたしのもっとも純粋な「タカラヅカ」であり、幸福の記憶、象徴だ。

 それを変えることも捨てることもなく、歩いて行けたらと思う。
 バランスを取るのはわたしであって、ケロじゃない。ケロはケロの道を、誘い受でもなんでも好きに進んでいけばいい。

 ケロが幸福であることを、いつも祈っている。


 2年半ぶりの、汐美真帆がいた。

 ケロは、謎のウバルド・ヘアで現れた。
 ドレッド? パーマ? ちりちりのロングヘアのサイドを後ろで留め、膝丈のパンツにロングブーツ。はい、膝が出てました。
 膝か。
 ケロの膝。
 髪型よりなにより、そんなことに衝撃を受ける。

 阪急交通社の『「汐美真帆」 スペシャルトークショー』

 髪型については、司会のリンゴさんにも「ウバルド?」と突っ込まれていた。
 「ケロちゃんは太りやすいから」と、チェリさんは卒業後のケロの体型の心配をずーーっとしていたが、それは杞憂だったようだ。ケロの本日のブーツは『巌流』のときの武蔵のブーツなんだって。私物かよっ?! と、ツッコミを入れつつ、現役時のロングブーツが入るってことは、太っていないということ、そのことに拍手だ。

 わたしはナマのケロを知らない。
 ジェンヌを二次元の存在として愛でているので、舞台の上しか知らないし、興味もない。ミーハー的好奇心はあるが、それ以上の気持ちはない。
 ひとりの女性として、ジェンヌを見ることなどない。ぶっちゃけ、性格が悪かろうと下品だろうとどーでもいい。
 ただ、日本刀のように、実用を極めて研ぎ澄まされた存在は、実用を超えて芸術としての美しさを持つと思うので、舞台で誠実な人は人間としても誠実だとドリームを持ってはいる。

 ナマのケロがどんな人か知りようがないし、mixiのNY日記を見る限りかなりトホホな人であるし、別にこの人が人格者であろうとなかろうとどーでもよく、じゃあいったいわたしはどうしたいんだろう? ということに尽きる。

 2年半ぶりの「汐美真帆」を見ながら、考える。

 タカラヅカという夢の花園を卒業し、「男役」という第三の性を捨て、ふつーの「女性」になったはずの人。
 「彼」だと思って愛していたのに、「彼女」になられてしまった……その現実と直面するはず、だった。

 あれ?

 ケロには、違和感がなかった。

 今まで「汐美真帆」という存在を一度も女性だとか生身の人間だとか思ったことのないわたしにとっては、花園を卒業して2年半以上経つ汐美真帆は、違和感なく男でも女でもなかった。

 女性だと思って見るから女性にも見えるし、元男役だから性別関係ないと思って見ればそのようにも見える。
 言葉遣いは丁寧でも、さばさばとした喋り方はどこか突き放した乱暴さがある。この人が「男性的」なのはこの話し方のせいもあるだろう。過去のトークショーでも一貫して、言葉遣いとは別のところで乱暴だった。

 国籍もよくわからない。
 日本人にしては個性的すぎるし、鼻が高いし、でも日本人の顔立ちだし。立派な骨格と体格は日本人的ではないし。

 髪型のとんでもなさも、この人を「ふつー」に見せない一環ではある。

 一般人には見えないし、性別も国籍もわからない。女性寄りで日本人寄りだが、「ちがうよ」と言われても「あ、そうなんだ」で済むあたり。
 たぶん芸能人だろう。別カテゴリの人なんだろう。そんな感じ。

 外見がいかにも「ふつーの女性」になっていないことは、わたしをほっとさせ、また混乱もさせる。
 いっそ「別人」になってくれていれば、すっきりさせることもできるだろうに?

 同じ人なんだからそうそう変わりようがないのだろうが、それにしてもおかしなところで止まっている気がする、この人。

 
 トークの話題は、音楽学校時代から初舞台、雪組、月組、星組時代と劇団卒業まで、ケロの現役時を振り返るモノと、卒業後のNYでのこと、ヨガのインストラクタをやっている現在のこと、年末のOGの舞台にちょろっと出演することなど。
 わたしはケロのFCには入っていないし、ケロ個人のトークを聞く機会もほとんどなかった……が、それでも、たとえば三越のトークショーの「音楽学校から劇団卒業までを振り返る」というトークでは「その話、すでに知ってる」てなことが大半をしめたもんだった。
 なのに今回は、同じ趣旨でも微妙に違う話題で、初耳なことが多かった。司会のリンゴさんがちょっと角度を変えた聞き方をしてくれているためかもしれない。おかげで同じテーマでも別のエピソードをケロが話すことになる。

 そして相も変わらずケロは、トウコのことばかり話していた。

 そんなにトウコが好きかっ(笑)。
 共演者として名前を上げる人は他にもいろいろいたんだけど、話題としてちゃんと話すのはトウコのことばかり。
 月組時代いちばん印象に残る役はフアン・ガルラード@『血と砂』だと言いながら、ゆーひのことは「ダブル主演」として名前を出しただけで、個人的な話は一切なし。皆無。

 ケロトウもそりゃ好きだけど、わたしはケロゆひな人なんですよ。ゆひケロともいうが。
 ゆーひくんのことも話してくださいよ……三越のときも、トウコトウコトウコで、ゆーひのことはひとことも触れなかったよね? ゆーひは初の単独バウ主演中、しかもひとり芝居かよ?ってくらい比重の大きい主演中だったにもかかわらず、ケロのサヨナラディナーショーに2日連続現れたんだぞ? でもって客席でダダ泣きしていったんだぞ? そんなゆーひくんのことも、なにか話してやってくれよぅ。話せないような仲なんだと邪推するぞ?(や、ジェンヌは二次元の存在ですから)

 と、萌えネタにできるくらい、ふつーに「異世界の人」だった、卒業後の汐美真帆さん。

 リンゴさんも今後舞台をやるのやらないのという話の流れで、「まだ男役イケますね」とふつーに振っていたし、現役時代と「どこがチガウの?」だった。

 外見が変わっていない以上、わたしを興奮させたのは「2年半ぶりに会った元カレ」というだけのことで、「元カレが性転換していた」ことではなかった。

 ケロがいる、ケロがそこで話している、それだけでうれしくてなつかしくて、心がざわざわしまくっていた。

 そして。


 好きだった人は、いっぱいいる。
 花園を卒業し、OGとして女性になった姿を見、その「きれーなおねーさん」ぶりにおどろき、またソレを受け止めてきた。

 「女になっても好きでいるよ」と簡単に言えてしまったのは、好意であって恋ではなかったからだ。
 性別で好意は変わらないが、恋愛相手の性別は重要だ。ぶっちゃけ、男でないと困る。や、わたしは(笑)。

 タカラヅカの男役はアニメやマンガ、ゲームのキャラクタと同じフィクションの存在。
 そう割り切って無邪気に恋しているのだから、途中で性別を変えられたら困る。

 ケロが女になっても、愛せるのだろうか?
 その前に、女性としてのケロの存在を許容できるのだろうか?

 ……生身の話ではないよ。本名の青**子さんの話ではなく、また、カルチャースクールの先生の話でもない。
 現実と虚構の区別はついているつもりだ。
 わたしは虚構を虚構と割り切ってたのしんでいるので、生身の女性、本名のジェンヌやインストラクタだとかショップ経営者だとか主婦だとかになった彼女たちに対しては、そもそも近づかない、記憶は現役の時まででストップ、なので関係ない。

 そうではなく、芸能人としての汐美真帆。
 ケロが芸能活動をするとして、わたしはソレを受け入れられるのか、という話。

 
 その疑問に答えを出す第一歩が阪急交通社の『「汐美真帆」 スペシャルトークショー』だった。

 貸切公演の司会は逃げたが、今回は逃げなかった。
 てゆーか、ついに来たか。という、決戦を前にした剣豪のようなキモチだった。

 逃れられないことならば、向かっていくしかないだろう。
 それなら、早いほうがいい。

 ケロのトークショーがある、と聞いて、ふたつ返事だった。「わたしも行く」と。

 まあ、正直なとこ値段にびびったけどな(笑)。

【実施日】2007年9月15日(土)  IN宝塚

★1日満喫プラン★
スペシャルトークショー + 宝塚大劇場1階A席観劇
おひとり様13,000円 (300円お得!)
(トークショー参加費・ティー・ケーキ代・1階A席観劇券・税込)

★トークショーのみプラン★
おひとり様7,800円
(トークショー参加費・ティー・ケーキ代・税込)


 7800円て!!
 お茶会より高いがな!

 だが、わたしが大人になるための儀式だ、金のことなど言ってられない!
 9月15日って、雪全ツ初日だけど、トークショーは夜だからなんとかなる!

 昼間は梅田で雪組観て(水しぇん! 水しぇん!)、夜は宝ホでケロと対面だーっ。

 
 テンション高く。
 熱も高く。

 はい。
 興奮しすぎたのでしょうか。
 当日、ふらふらするなー、変だなー、と思って出かけがけに体温を計ってみると、7度4分ありました。
 どーりで、ふつーに準備をしてても進まないわけだ……ふらふらして動作がスローだった模様。

 たぶん風邪だ、そうにちがいない、と勝手に決めつけ、風邪薬を飲んで出発。
 ま、風邪薬には解熱作用があるから、それで正解だろう。

 
 チェリさんと並んで雪組を観て、そのあと木ノ実さんと合流して、ランチをしてからムラへ移動。
 電車の中では3人揃ってえんえん『ぶつ森』やってたりな(笑)。土曜日はカブを売らなきゃ!

 チェリさんも木ノ実さんも、ディープなケロファン。
 会場ではふたりとも挨拶回りで忙しい。トークショー参加者のほとんどは、とーぜんだが元ケロ会の人たちだからだ。
 舞台のケロのみのファン、会にも入ってないしケロ友もいないわたしは、ひとりでぼーっとしていた。やることがないから、トークショーに付いているケーキを先に食べてた。
 ケーキは硬いタルトで、死ぬほど甘かった。7800円もする催しで出していいクオリティのケーキとは思えん。あまりに甘いので、お茶のお代わりをホテルスタッフに聞いてみたが、却下された。ティーポット持って給仕して回ってるくせに、ひとり1杯限定なんだって。
 アマチュア主催のお茶会ではなく、阪急交通社主催のイベントなのに、7800円もするのに(しつこい)。
 仕方ないから。自前のペットボトルを出し、ミネラルウォータを飲んでいた。わたしの他にも、ケーキの甘さに敗北した人がお茶を頼み、拒絶され、ペットボトルのお世話になっていた。……ホテルの宴会場の光景ぢゃないわ。

 熱のせいもあるのか、いや、熱は言い訳に過ぎないのか。

 トークショーの司会はリンゴさんだった。檀ちゃんの退団カウントダウン中の貸切公演で、ナイスな司会を見せてくれたことも記憶に新しい、元雪組のチャキチャキ姉御。
 そのリンゴさんが、トークショー開始前にケロの経歴を読み上げている段階で、わたしは半泣きだった。

 だって、経歴=当時の想い出なんだもん。
 やべぇよ。どーしろってぇのよ。

 ひと目があるので、必死に我慢。や、取り乱したら、熱のせいにしようとひそかに企む。体調のことは口外していなかったが、いざとなったら全部体調不良のせいにしてやるっ(笑)。

 そしてついに、ケロが現れた。

 2年半ぶりの、汐美真帆がいた。


 ちょっくら長々と自分語りをする。ヅカ絡みの話ではあるが、観劇感想などではまったくないので、今日から数日間の日記は興味ない場合まるっとトバしてやってくれ。
 

 今さら話をすると、わたしがmixiをはじめたのは、そこにケロがいたからだ。

 ケロがmixiをはじめたまさにその日、彼が本名まんま(笑)でミクに登録したことをハイディさんに教えてもらい、その足でわたしも登録した。
 そのころケロの行方はファンの間では「NYに行った」としかわからず、そのくせあちこちの国内の劇場で「客席にケロさんがいた」とデマがとんでいる、そういう状況だった。
 生きて、生活しているケロの姿を知ることができて、マジ泣きした。

 当時はまだmixiも今ほどオープンになっていなかったし、ケロがそこで日記を書いていることは公然の秘密、ずいぶん長い間外には出なかった……と思う。
 mixiに、ディープなケロファンがどんどん集結していくのがたのしかった。みんな、口伝てに知り、やってくる。わたしも限られた人にだけ教えた。
 いくらでも芸能人や元芸能人がブログを持つ時代に、mixiで日記をはじめたケロの真意がわからず、このDiaryNoteでケロmixiの話題をすることは控えた。……ので、いろんな見知らぬ方が、「こあらさん、ケロさんならミクシーにいますよ」と教えてくれたりした。や、ありがとうございます。ご心配をおかけしてましたが、緑野こあらはケロちゃんをずーっとまったり見守っていました。
 ケロのファンコミュニティに登録することもなく、もちろんケロの日記にコメントするでなく、ただROMるだけ。遠くで愛し続けるのが、わたしのファンとしてのスタンスだから。
 あまりにゆるいyokoさんの生活ぶりに苦笑したりつっこんだりしつつ、眺めてきた。
 彼がしあわせでいてくれれば、それでよかった。

 ケロが帰国すると宣言したあたりから、考えていた。
 わたしはこれからどうしよう、と。

 日本に戻れば、なにかしら活動をするだろう。
 それをわたしはどう受け止め、かかわっていくか。

 日本でヨガのインストラクタをやる、というのは本人の日記でも、また巷の噂でも耳に入っていた。
 だが、ケロヨガの生徒になる、という選択肢はわたしにはカケラもなかった。
 わたしが愛したのは舞台の上の汐美真帆だ。カルチャースクールの先生じゃない。
 ケロ自身がしあわせにいてくれればそれでいいのだから、ヨガのせんせー生活をたのしそうにしているのを遠くから眺めて、そこで終わっていた。
 舞台人・汐美真帆がいない、という意味では、場所がNYでも東京でも同じだった。ただまったりと、ブログを眺めるだけ。

 うろたえだした(笑)のは、ケロが「舞台に立つ」とわかってからだ。

 といっても、星組貸切公演の「司会」として東宝の舞台に立つ、ということで、舞台人として復活したわけじゃない。
 それでも、司会の仕事は素人はやらせてもらえないし、カルチャースクールの先生もやらせてもらえない。
 プロの司会者か、元ジェンヌを含めたタレントがつとめる。

 元ジェンヌというブランドで、なにかしら芸能生活をする人たちのことを、とてもアバウトに「タレント」だとわたしは思っている。
 や、世間の人たちに言わせれば、「はあ? タカラヅカにいたことがあるってだけの一般人でしょう、その仕事内容と知名度って」てなもんであったとしても、ヅカファンであるわたしからすりゃ、なにかしら芸名で活動している元ジェンヌは立派にタレントだ。

 ケロが、タレント活動をはじめた。
 どうする?

 mixiで写真はずっと見ていたし、主演したというあのビミョーなショートフィルムも見ていたけれど、ナマのケロと会うのは、2005年1月の三越トークショー以来ということになる。

 −−結局わたしは、貸切公演司会のケロをスルーした。観に行かなかった。
 場所がムラなら行っていたかもしれないが、東宝まで、10分あるかどうかのケロの出番のために上京するのは、割に合わない。

 いやその。
 2004年12月26日。
 最後に「宝塚歌劇団 汐美真帆」を見送った場所で、再びケロに会うのは心臓に悪い。
 出待ちするだろうし。
 あの日と、同じように。

 楽屋から出てくるとことか見たら、絶対取り乱すし。
 あの日と、同じように。

 自分で出待ちしておいて、出てきたら平静でいられない、つーのも阿呆な話だが。
 そこにいたら、そうせざるを得ない。
 そうすることで受けるダメージが想像できないので、今回はスルー。

 わたしはびびって逃げたが、ドリーさんたち、どりーず東組は、果敢にも貸切公演に参加、卒業後の生ケロとの対面を果たした。

 ドリーさんの詳細なレポートを読み、ひとりパソコンの前で泣いた。

 ケロファン仲間として、ドリーさんもまたケロとの対面にさまざまな葛藤を持ち、ソレを乗り越え、新しい段階へと進んでいた。

 ケロの出の様子も、どりーずのみんなが報告してくれた。

 ケロの出に、トウコ会がしゃがんだとゆーことに、手を打ってウケた。

 えー、会のガードの人たちは、ジェンヌが来たらしゃがみます。でも、関係者にはしゃがみません。つまり、OGが楽屋から出て来ても、しゃがみません……よね?
 会のことはよく知らないけど、OGが現れても、反応はするし敬意ある目で見送っても、しゃがみはしていなかった、わたしが知る限り。

 そっかぁ、トウコ会、ケロを見たらしゃがんじゃうんだ……条件反射なんだろうなあ。
 手を打って笑って、そして、泣けた。

 あのころ……あの、しあわせだったころと同じように。
 しゃがんで、見送ってくれたトウコ会。

 ありがとう。心から、ありがとう。

 あの膨大なトウコ会が一斉にしゃがみ、拍手で見送ってくれたんだって、ケロの出を。
 ソコをご機嫌で通っていくケロちゃんを思うとうれしくておかしくて、しあわせで、泣けてしょーがない。

 ケロは戻ってきて、現実はソコにあって、時は流れている。
 
 ケロはたぶん、芸能活動をする。
 あたりまえに、ずっと思っていた。
 無名の一般人にはならない。あの人は必ず、スポットライトの中に帰ってくる。

 なんかあたりまえに、そう思い込んでいた。
 や、卒業後の動向を見守ってきた人なら、みんな同じ意見じゃないか?
 芸能活動といってもさまざまで、どこでナニをするか、現実問題として仕事があるのか、プロとして成り立つのか、等は別問題として。

 ケロは、帰ってくる。

 その思いを裏付ける出来事だった。司会であれ、ケロが「汐美真帆」として舞台に立つことは。

 タレント活動をする、ということは、遠くで生存報告ブログを読んで済ませる、ということではなく、実際に「タカラヅカを卒業したケロ」と出会うことになる。
 「男役」ではなくなったケロと出会うことになる。

 わたしはヅカファンで、これからもずっとヅカファンである以上、贔屓の卒業は避けて通れない道だ。
 タカラヅカという特殊な世界を愛してしまったのだから。
 他のナニかでは味わえない葛藤を、噛みしめようじゃないか。

 いやあ、ファン心理なんて、不条理で、一貫性がなくて、愚かなモノだねぇ。
 わたしにとってのケロはフアン・ガルラードであり、ウバルドであり、ビッグ・ジュールである、とびきりの色男なのに。

 女になった彼を愛せるか?

 なんて、他からすりゃありえないことでパニックに陥るわけだからねー。
 ヅカってすごいねー。

 ソコにいるのはたしかにわたしの愛した彼なのに、彼はもうどこにもいない、つーことになるわけだからな。

 過去はただの「昔」ではなく、現在につながり、「今」のわたしを形作り、それによって「これから」のわたしに大きく関わってくる。
 今現在愛しているジェンヌ、これから愛するであろうジェンヌ、すべてが同じ道を通るのだから。

 わたしは考えなくてはならない。
 卒業後のケロとわたし。

 それはすなわち。

 タカラヅカとわたしについて。


 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』初回とラストの東宝組中継有りスペシャル回との感想が混在してますがな、感想、その8。

 銀橋に並んだ4組のウェディング・カップル。

 娘役トップスターたちの、ウェディングドレス姿。

 かっ、かわいい……!
 キョーアクにかわいいっ。

 今のトップ娘役って美少女揃いで、眼福だ〜〜。
 みんなひとりずつデザインのちがうドレスなの。かーわーいーいー。

 エスコートする男たちは、各組3番手……月組はあひくんだ。そっか。ゆーひくんが2番手チームにいるから、あひくんが月組の3番手なんだ……。

 なんか、新鮮なカップリング。
 雪組のキムとな以外は、組替え関係者ばかりで、組内なのに、TCAシャッフル風味(笑)。
 壮あや、あひかな、しいあす。……新鮮な顔ぶれだわ〜〜。
 キムとなは同期+新公その他で何度も組んでます、でも今は人の妻(しかも再婚)とゆー波瀾万丈っぷりなので、それらの歴史を踏まえても感慨深いカップルだし。

 てゆーか花嫁をエスコートしている男たち、あひくん以外3人とも『ホップ・スコッチ』トリオじゃん。
 あの超絶駄作。出演者がひたすら気の毒だった最悪作品、おそらく主演3人の中では黒歴史として経歴から抹殺されているんじゃあ?てな勢いのひでー話。
 あれから何年?
 時は流れ、同じ作品でトリプル主演(……)していた3人の男たちは、TCAで別々の組の3番手として並ぶようになった。ここだけでなく、他でもこの『ホップ・スコッチ』トリオの並びがあるんだよなー。なんか運命的だよなー。
 すげえなあ。

 ウェディング・カップル。みんなみんな、幸福そうなキラキラした人たち。

 女の子が輝いていると、一緒にいる男のオトコマエ度が上がる。
 今回のTCAがたのしいのは、娘役トップスターがないがしろにされることなく、個々がちゃんと輝いていることもあるだろうな。
 あー、みんな美し〜〜、かわい〜〜。
 

 そうやって女のコ最高をやったあと、ダンス競演つーことで男役トップスター、瀬奈じゅんと水夏希がその美を競う。

 なにがすごいって、どこにいても、そのかがわかること。

 そのかはとにかく、目に飛び込んでくる。探さなくても、目に入る。
 水くんの後ろで踊るスーツの男たち、目深に帽子をかぶりアゴしか見えないのに、「あ、アレそのかだ」と、考えるまでもなくわかる。
 帽子のかぶりが深すぎるから、他の男たちを判別することはあきらめた。ヲヅキをチェックしたくらいか。ひたすら、水くんとそのかを見ていたよ。

 あさこちゃんはほんと、スタイルいいよねえ。
 ごめんよ水くん、水くんと並んで踊ってくれるもんだから、あさこちゃんのスタイルの良さがいつもにも増して、よーーっくわかった。
 少女マンガから抜け出てきたような美しさだ。現実にはありえない。

 そして、そんなあさこちゃんの隣で、水しぇんはリアルな体型に思えて、なんだかドキドキする。
 あさこちゃんまでいくと「ありえない、現実にはいない」と思うけど、水くんは「ありえる、生身の男」としての格好良さがあって、妙に落ち着かなかった(笑)。
 あああ、やっぱかっこいいよー、水しぇん。

 
 ダンス対決のあとは、歌対決。
 「Night and Day」を歌うトウコちゃん、「クンバンチェロ」を歌うオサ様。……あれえ? なんか反対?
 持ち歌(笑)を交換して歌うかのようなふたり、歌ウマさんたちはなにを歌っても余裕、そして個性が出る。

 トウコもオサも「歌手」だと思うけれど、ふたりはタイプがまったく違う。
 トウコちゃんは芝居の人であり、オサ様はショーの人だと思う。
 だからトウコちゃんはアウェイで戦うよーなもんで、分が悪かったなあと思う。ふたりのスキャット対決も、寿美礼ちゃんの持ち歌でだったし。
 歌声は豊かに半端なく響くのに、対決するふたりはアフロヘア。

 視覚と聴覚の混乱。
 フザケきった姿と、例を見ないクオリティで響く歌声。

 そのアンバランスさに、彼らのプロ意識を見る。

 アフロよりなにより、わたしがウケたのは、アフロ男ふたりが本気で音の世界で生きているときの、照明。

 何故、ピンク・ハァト。

 銀橋で歌うトウコとオサに、ピンク色のハァト型の照明が当てられ、くるくると回り出す。
 わけわかんねえ!!(笑)

「この演出、絶対藤井だー!!」
 初回観たとき、わたしとサトリちゃんは勝手に決めつけてウケまくってました。……で、誰の演出、コレ?

 さんざん視覚では笑わせてくれたくせに、曲が終わるなりふたりはかぶっていたアフロを客席へ投げつけ(あのアフロ、どーなったの? キャッチした人がもらえるの? そんなん、うらやましすぎ!)、視覚的にも色男に戻り……歌うは「One Heart」、曲だけは名曲だったアレな脚本の某作品の曲。
 曲だけ抜き出せば、ほんとに名曲なんだよ……トウコ&オサが端正に歌う様が、胸に迫る。「♪友を信じて」と、はじめて並び立つことが出来た……そしてこれが最後となる、同期スターが歌う。

 ここでちょっとすごい盛り上がりを見せるもんだから、次の場面への切り替えが出来なくて、しばらくぼーっとしちゃったよ、初回。
 カーテンが開き、そこには大階段。スタンバイしているのは水くん。耳慣れたイントロ。

 あれえ? 「最後のダンス」だ。なんで水くん、いまごろ『エリザベート』の曲歌ってるんだろう?

 それがフィナーレのはじまりだと、マジで気づかなかった。

 本編の続きだと思っているから、そうか、あさこシシィが出てくるんだっ! と、本気でワクテカしました。

 トウコとオサは今さっきまで出てたから無理だけど、あさこちゃんなら着替える時間だってあったもん。まだかなまだかな、わくわくわくっ。いつ出てくるのかなっ。

 ……水くんが歌い終わるまで、あさこちゃんが出てくると待ち続けていたなんて、ナイショです。

 水くんが銀橋を渡り終わって袖へはけていき、続けてトウコちゃんが登場したとき、ようやく現実を知った。

 フィナーレじゃん、コレ!! TCAのお約束、トップスター就任逆順スタートのソロ1曲ずつフィナーレぢゃん!!

 あああ水しぇん。アレ、フィナーレだったんだ……ネタ場面だと信じきって観終わっちゃったよ……あああ、ごめんよぅ。

 フィナーレだと、ネタだとかお笑いだとかではないとわかっただけに、切り替え早いぞ。
 語りかけるように『シークレット・ハンター』の曲を歌ってくれるトウコちゃんに、何故だ、涙が出た。あああ、トウコ好きだーっ。

 あさこちゃんの曲は、いい曲だと思ったけれど知らない曲なので自分的には盛り上がらず。

 そして、トリを務める寿美礼サマの『ファントム』に盛大に泣く。
 「♪神が授けた声だから」というフレーズが、いつまでも胸の中でリフレインを続ける。

 神が授けた声。
 あのひとの歌声こそが、そうだ。

 白い衣装のオサ様は、ウェディングドレス姿にも似て。
 彼を妻に出来るモノがあるとしたら、それはきっと音楽の神だけだな、と思う。

 トップ娘とエスコートする男たちのウェディング・カップルは、みんなみんな、幸福そうにキラキラしていた。
 たったひとり、神に選ばれた花嫁のようなオサ様も正視できないくらいキラキラと輝いていて……彼もきっと、幸福なのだろう。
 もうじき彼は、この場から飛び立っていってしまうけれど。
 幸福でいて下さい。

 それを、祈るばかり。
 

 最後のパレードは、黒燕尾。トップスターはキラキラだけどそれでも燕尾。
 ああそうか、『アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』なんだな、と改めて思う。
 男たちが黒燕尾にシルクハット、娘たちがロングドレス。
 レビューだから。
 「レビュー」の原点だからこそ、このクラシカルな姿なんだ。

 
 たのしいイベントだった。
 今年のTCA。

           ☆ 

 でもって。
 まっつとの絡みがまったくなかったそのかくんが、出のときまっつ会にえらいラヴいことを言っていった、という話はマジですか?
 最近みわまつ萌え(まつみわ?)のわたしに、ふたたびそのまつで萌えろとっ?!


 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』初回とラストの東宝組中継有りスペシャル回との感想が混在してます、感想、その7。

 
 東宝との生中継、生のやりとり。
 意気込みはわかるが、やりたいこともわかるが、技術が追いついていない。いや、足りなかったのは資金だろうか?

 会話にならないほどの時差があるんだ。
 地球の裏側とでも会話しているのか? 最近のニュース番組とかでここまでの時差は見たことないぞ。昭和時代の『ザ・ベストテン』の海外中継か?てなノリ。

 あまりの時差に場が引きまくるんだが、それをマミさんが力尽くで引っ張る。まとめる。
 相方を務めるのは我らがトウコ。
 マミさんもわかってるよな。寿美礼ちゃんが挨拶をしているっつーに、横から時差についてぼそりと突っ込んだトウコのひとことを逃がさず、ソコに食いついた。
 ムラにいる4人の中で、この「企画自体まちがってる、光回線中継ってなんだよソレ、クオリティに問題ありすぎ」場面を盛り上げる、つなぎとめることができるのはトウコのみ。
 エンターティナー・マミさんと、お笑いテイスト・トウコが力業を披露。

 このふたりがいなかったら、どーなってたんだほんと。台本があったって会話が成り立たないほどの時差なんて、21世紀の中継技術ではありえないだろ。
 よほど経費節約して、通常の中継方法を取らなかった結果だろうか。

 あと、すげーなつかしかったのは、トドの、トウコへの冷たい言葉。
 う・わー。
 トド様相変わらず、トウコにはキツイなー。
 トド様基本気ィ使いィさんだと思うんだが、昔からトウコには容赦がない。
 淡々とキツイ言葉を投げかける。
 トウコも別に、気にした様子はない。なにしろ「なつかしい」と思うくらいには見慣れた光景(笑)。
 機会があったら、『スターの小部屋』の『アナジ』座談会を見てやって。あれほど空気の凍った座談会はめずらしいから。トドとトウコの関係にミステリを感じることができますわよ。

 このふたりの仲がいいのか悪いのか、かれこれ10年は謎のままだニャ(笑)。
 仲がいいから容赦がないのだと、信じておこう。

 
 それはともかく。

 あまりの時差に会話が出来ないくらいなのに、最後はムラと東宝で一緒に歌うんだそうですよ。

 無理。

 すげー素で、突っ込んだ。
 ソレ、無理だから。ありえないから。

 企画段階では、ここまで時差があるってわかってなかったんだろう。
 わかった段階で、プログラムを変更しようよ……。現場でフレキシブルに指揮を執れるだけの人がいないのかねえ、タカラヅカ。

 もう「音が合わない」ことはどうしようもないので、ムラと東宝で合唱、なんて無理だとムラの出演者たちはまるっとあきらめていたと思う。
 実際どのへんが合唱になっているのかわからなかった。
 寿美礼サマたち出演者は、ふつーに歌って客席に微笑みかけていました。

 中継が終わってほっとしたなあ。ストレス溜まるもんよ、時差で空白の出来る会話や、白くぼやけて見たいモノが見えない映像なんて。
 それと、東宝オケのトランペットの、信じられない雑音ぶりを、スピーカを通して聴かされるのはつらいっす。ほんとにヘタやなー。ナマでなく、時差つきで聴かされたらたまらんわー。

 盛り下がりがちだった中継を乗り切り、舞台上のスターたちで微妙だったテンションを盛り返し、なんとか幕。

 がんばった、がんばったねみんなっ(笑)。

 
 コレに懲りてもう二度と、光回線とやらで同時中継はしないと思う……しないでくれよ、歌劇団。
 時差のあまり生じない、ふつーの中継ならしてヨシ。
 
 
 さて、2幕はディスコ・メドレーでスタート。
 蛍光ピンクとイエローまぶしいロングコート姿の2番手が4人、銀橋にて歌い出す。

 そう、参加しているのは4組、だから2番手も4人。数は合っている。
 合っている……が。あれ?
 まとぶ、きりやん、ゆうひ、ゆみこ……花・月・雪……星は?

 星組は、2番手不在。
 なんてあからさまな……。

 イカレた配色の衣装を着こなし、絵になっているのは、なんつってもビジュアル系のゆーひくん、そして美形のまとぶん。
 熱量で着こなすきりやんはいいとして、……ごめん、やっぱりどーしても微妙だ、ゆみこ……。だがゆみこはその微妙っぷりがいいのだ(笑)。

 ディスコだディスコだ、つーことで、髪型がえらいことになっている人たち多数。髪の毛が三日月のように曲線描いてハネてますよ。超人ロックとかサイボーグ009とか、アレ系です。

 3番手4人、ということで、組順に壮・キムが並んで歌い踊ることがみょーにうれしい。
 このふたり、ついこの間までふつーに同じ組で対で踊っていたんだよ。こうやって。
 しい・すずはいつもコンビ売り。この安定感がいいよね。

 ラストの回はしいちゃんに隠れてまっつがまったく見えないてなことになって大ウケしたりしていたが、よく知っているノリのいい曲のメドレーと、各組期待のスターがバックダンサー全員集合状態、つーのは無駄に豪華ですばらしいです。

 
 「あさこー」「まさちゃーん」ではじまったオサあさコーナーは、初回よりさらにぐだぐだになっていた。
 ほんとに3回ともちがう話題だったようだが、ラストの回がいちばんつまんなかったような。
 や、だって「私のことどう思ってる?」という、オサとあさこの告白タイムでしかなかったのな。
 や、それはもうわかってる(笑)から、それよりもっと「会話」が聞きたかったなー。
 ほんとのとこ、会話より「ショー」が見たかったんだけどな。
 寿美礼サマが目を線にして笑っているから、それだけでファンとしては幸福なんだけど。

 いつもまで経ってもだらだらぐたぐたしているトークコーナーに、終了を示す雷が何度か鳴る。
 そしてついには、トウコ様の、冷めた声@マミさんお墨付き、が降る。
 名乗らないけど、この声はもちろんトウコ様。カミナリ様より強烈。

 トウコはもう、「こーゆーキャラ」として確立しているんだねええ。

 
 次は「ヒロイン競演」というテーマで、各組娘役トップスターが、自組の男役たちと有名ミュージカルナンバーを歌う、という場面。

 花組が『ME AND MY GIRL』、月組が『サウンド・オブ・ミュージック』、雪組が『マイ・フェア・レディ』、星組が『キス・ミー・ケイト』。

 月組が、謎です。

 何故ラテン黄色フリフリ衣装で「ドレミの歌」?? てか、よりによって「ソは、そのかのソ!」なの? 客席、静まりかえってましたよ?
 かなみちゃんは超ブリブリ演技。や、かわいいからこそ、そーゆーことをさせたくなるのはわかるが、せっかく今の公演で素敵な大人の等身大女性を演じているのに、またこのワンパタ・イメージをかなみんに押しつけますか、演出家よ。
 1部のアラビアンに引き続き、衣装が謎のままだ、月組さん。

 雪組はここでもやはり大人っぽく、星組はここでもやはり、何故なのかあすかちゃんがいまいち目立たない作りになっているよーな気がする……。

 組ごとに演出家が同じなのか? なんか1幕も2幕も組ごとに同じよーなことをやっている印象。
 統一感を狙っているのかなあ?

 まだ続く〜〜。


 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』初回とラストの東宝組中継有りスペシャル回との感想が混在してます、感想。でも今回はラストの回の話のみ。

 もーすっかり中継のことなんか忘れてたから、スクリーンが登場していることに首を傾げていたよ、ラストの回。
 んで、東宝のマミさんと映像がつながっているのがわかるのだが……。

 映像、悪すぎ。

 照明を煌々とつけた部屋で映画を見ている感じ?
 ぼやけてしまって、見にくい。なにも見えない、というほどではないが、見えそうで見えない、ストレスの溜まる映像。
 てゆーかコレ、金取って客に見せていいような映像か?

 東宝組のショーが映し出されるのだけど、真ん中で歌う、アップになる人以外顔の判別不可。
 アップになる人だって、誰かを理解して見なければわからなくなるレベル。

 現に、幕間に合流したサトリちゃんは真顔で「ウメと一緒に歌ってたの、誰っすか?」と聞いてきた。
 1曲限りとはいえ、トップ娘役とデュエットした男の顔すら判別が難しいほどの、ぼやけきった映像。
 いやその、「トップ娘役がひとりで歌った」あとに登場し、「彼女とデュエットするスター男役」っていったらふつーソレってトップスターでしょう。わたしもてっきりタニちゃんが登場するもんだと思い込んでいた。
 ……が、現れたのは、ともちだった。
 びっくりした。
 びっくりして目を疑い、「と、ともち、退団しちゃったりしないよね? ね?」と1曲まるまる不安と戦った。や、だって、最近の彼の扱いから、ありえない厚遇なんだもんよ……し、心臓に悪いよ。

 「ここで現れるのはトップスター」という先入観があったにしろ、ともちがともちだとわかってもらえないほどの、映像クオリティだったのよ。
「ええー、ともち? ほんとにアレ、ともちですか? ちがうんじゃない?」
 と、本気で言われると、ともちスキーのわたしですら、「え、チガウ? あたしなんか勘違いしてる?!」と途端自信をなくすよーな、そんなぼやけた画面だったのよ。
 や、「ともちが、トップスターみたいな扱いを受けるわけない」という先入観が大きいとはいえ。

 ほっくんの歌う『エンター・ザ・レビュー』の主題歌は、クリアすぎて、なんの歌だかしばらくわからなかった。
 こ、こんな歌だっけ?
 オサ様のねっとり歌唱がデフォルトになってるもんで、譜面通りって感じのクリアヴォイスほっくんが歌うと、別物……。

 トド様はなつかしの『Stylish!』の主題歌。うわー、うわー、なつかしいなあ、もう5年経つのかぁ。
 信じられないチケ難公演だったねえ。ふつーに1階中頃席が10万超えでねぇ。オークション眺めながら絶望したもんだったよ……このままぢゃあたし、トド様観に行けない、って。
 専科になって最初のコンサート。未来も、向かう方角もわからず、ファンも混乱していたころだ。
 このチケットがありえないほど高騰、チケ難になっていたため、ダフ屋が勘違いしたんだよなあ……その後の『花供養』の価格暴落ぶりときたら……ああ、なつかしいなあ……。遠い目。

 トド様は声がえらいことになっていた。
 ちょっと待て、先日『Kean』を観に行ったときは、こんなことにはなってなかったぞ? たった数日で、このしゃがれっぷりはどうしたことだ。
 ぜんぜん声が出ていないトド様に、胸が痛む。……大変なんだろうなあ、あの舞台。魂すり減らしてるよね、絶対。

 だからこそ、同期のマミさんとのくだけたやりとりがうれしい。
 「轟理事」が、「末っ子のイシちゃん」になる瞬間。
 同期トップ4人で一緒にいるとき、トドはいつも末っ子のいじられ役だった。
 それが今は、こんなところにいるんだねえ。

 マミとトドの「アマール・アマール」デュエットは、たのしかった。
 トドは黒燕尾に舞台化粧、と「男役」としてのディテールを作り上げている。だけど、マミさんを前にして素の「女の子」部分がのぞく。
 一方マミさんは素顔化粧に女性としての服装。ジーンズ姿で、アクティヴな印象とはいえ、あくまでも女性の範疇。なのに、歌いはじめると、一気に「男役」に入り込む。
 ジェンダーの混乱。
 外見と内面の錯誤。
 トドの中の女性と、マミさんの中の男性。
 すげえなヲイ。
 交錯する性は、やがてたしかな歴史と技術で創られた「男役」という型に収束される。

 ……つまりトドが、無事にエンジンかけられたようで。マミさんとデュエット、ってことであの人、なかなか「男役」に、「轟悠」になれなかったみたい。しばらくは「イシちゃん」のまま歌ってた。
 そんなトドを見守り、精神的に抱擁し、「男役」でありつづける真琴つばさのかっこいいこと!!

 最初の背中を向けた横顔がアップになったとき、その入り込みっぷりに、大劇場では笑いが起こった……ことはナイショです(笑)。

 入り込みっぷりといえば、タニちゃんもすごかった。
 アップになった顔は、目をすがめたいつもの「陶酔」しきった表情。タニちゃん的「セクスィ決め顔」なんでせう。いやあ、ドアップですよ、どうしましょう。
 歌うは持ち歌「Life」。……歌は、よかったよ。タニちゃんほんとうまくなった。
 だけどいろいろいろいろ、道を間違えているよーなタニオカさん……胸にもやもやを抱えながら眺めていたら、マミさんが快刀乱麻、スパッと言い切ってくれた。

「そのなんとも言えないキザりは相変わらずね」
(場内爆笑。大拍手)

「タニちゃんに合うキザり方を、今度トドロキユウさん……」(教えてあげて、と続くハズ。場内爆笑。大拍手)

「かわいいんですよ、ほんとうは」

 言い切ったよ、ヲイ!! さすがマミさん!
 タニちゃんの現在のキザり方が、おかしいって。合ってないって。かわいいことが本来の持ち味だって。
 すげーなー。みんな思っていても、口に出して言えないであろうことを、全国何カ所かの会場で生中継しているよーなイベントで、スカステでお茶の間生中継しているよーなイベントで、DVDにも残るイベントで、言い切っちゃったよー。

 会場内、大ウケなんですが。
 みんな手を打ち鳴らして賛同している。

 それぞれの会場での場面はまだ、映像がぼやけぼやけでシルエットモード的だとしても、慣れもあってなんとかなっていたんだが。

 大劇場と東宝でリアルタイムでやりとりをするとなると、もー大変。

 時差が。

 はい、続きますよ〜〜。


 さて、いい加減花組以外のことも書いてみよう、『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』

 組カラーをまとって登場するプロローグ。
 オサ様を中心にパステルピンクで統一された組子たちのラストのキメポーズが、ピースサインという不思議。
 燕尾でやっても似合わない……けど、『天の鼓』とか千秋楽のカーテンコールでみんなこーやって真ん中に寄り集まってピースしていたなー、とか、なつかしく思い出す。

 月組はちゃーんとそれぞれ両手を広げた「レビューらしいポーズ」で決める。
 あ、なんだ、こんなふうにまともなことしてよかったんだ、んじゃやっぱり花組は……?

 雪組の並びの違和感に、今さらおどろく。
 水にとなみにゆみこ、って……。ゆ、雪組なのか、コレ。
 や、ほんと今さらだけど。こういう組対抗のイベントだと、事実がさらに容赦なく突きつけられるっていうか。
 この3人の並びを嫌だとか変だとか、マイナスの意味で言っているのではなく、ただ、長い間雪組を見てきた者として、純粋に、素直に、おどろいた。

 ヘビとカエルとかっぱ……?
 みんな緑色のイキモノ……そっかぁ、組カラーかぁ。運命的だなぁ……。
 そんな失礼なことを、ぼーっと考える。

 星組はラストシーンで星形作ってるよね? ね?
 真面目な顔してナニやってんだか(笑)。

 
 トップ4人のMCは、初回の方がおもしろかった。
 いろんな国の言葉で「私のパリ」って言うの、てっきり毎回やるんだと思ったのに、初回だけ?
 おぼえてきた台詞を大真面目に言う寿美礼ちゃん、ラストの回ではせっかくちゃんと言えていたのに、途中で吹き出しちゃってぐたぐたに。

 でもねでもね、アレって寿美礼ちゃんのせいじゃないよ。トウコがひとりで笑い出しちゃったから、寿美礼ちゃんがつられたんだよね?
 トウコが笑ったのは、初回の台詞忘れ寿美礼ちゃんを思い出したからだろうか。完璧に思い出し笑いしていたと思うんだけどなー。
 でもパッと見には、オサ様が勝手に笑い出して、台詞が言えなくなっちゃった、としか見えないんぢゃなかろうか?
 や、かわいいけどな。同期ふたりで真面目にやろうとして、笑い出してダメになっちゃうの。

 ちなみに、オサ様が退場したあとのトウコ・あさこ・水のトークも、初回の方がおもしろかった。
 毎回変えてくれたのはうれしかったけれど、ラストの回はここもまたぐたぐた風になっていたような。
 すっかり末っ子ムードで聞き役に徹する水しぇんがかわいいの。客席の方もちょっとは見ようよ。横顔ばっかだよ(笑)。

 
 組別レビュー誕生トリビュート場面、花組のイタリアはすっかりオサ様プレ・サヨナラショー。や、すばらしい。

 月組はアラビア。
 こちらはふつーにショー作品の一場面のよう。4組中ストーリー性いちばん。
 ハレムものなので、気怠く色っぽく。
 そのかがかなみ姫と踊っていたりでびっくりだー。
 てゆーか、かなみん、れみ、ねねってなにごと?な美しさだわ。
 ん、あいちゃんがいないぞ? と思ったら、「ひょっとして彼女がヒロイン?」てな別扱いで登場するし。
 どの組も歌中心の構成だった中、月組は異色でいい感じ。ゆーひくん、エロいの似合うしー。

 でも、衣装がいちばん謎だった、月組さん。

 うって変わって雪組のアメリカン。ジャズですよ、ジャズ。
 水くん、キムと小粋で軽快な音楽とダンスが似合いまくり。うわーん、かっこいー。
 見ていると、こっちもカラダが揺れてしまいそう。

 だからこそ、ゆみこのすべりっぷりに、胸がアツくなる。

 そ、そうか……ゆみこってジャズ、似合わないんだ……。
 いやその、曲にもよるんだろうけど。
 カラッと陽気な、テンション高い曲は、なんつーかこう、いたたまれない気恥ずかしさがある。
 腕をアタマの上で振ってノリノリなゆみこが、痛々しくて正視できない……本人に苦手意識がこれっぽちもなく、また、たしかに歌唱力が余裕でありまくるあたりが、キャラちがいの功罪を印象づけるというか。
 うわーうわーうわー。

 初回終演後、サトリちゃんとチェリさんと、「ノリノリゆみこ」の痛々しさについてうなずき合ったわ……そっかみんな、同じこと感じてたんだねぇ……。

 でもさー、ゆみこちゃんって、ソコがいいんだよね?

 TCAは見られなかったけれど、終演後ごはん一緒したnanaタンも力強く語っていたわ。
 そーゆーところがタマラナイのだ、彩吹さんは。

 水くんととなみちゃんは、アダルトで濃いぃ、デュエット・ダンス。
 ああ、ほんとうに美しいふたりだ……。

 ラストの星組はフランス。
 トウコちゃんが「モン・パリ」を銀橋で歌い、背景のスクリーンには見飽きた見慣れた『モン・パリ』の白黒写真。あのブルマみたいな衣装の踊り子さんたちが、手でアーチ作ったりしているヤツね。
 で、そのまま幕が開くと。

 しい・すずが、『モン・パリ』ポーズしてますがな。

 パロディ? さらりとやってのけてるけど、さり気に変だよね、星組?(笑)
 すずみさんのタメにタメた、濃すぎる熱唱がツボを直撃し、初回わたしは大ウケしてしまい、一緒に立ち見していたサトリちゃんに叱られた。や、だって、素敵なんだもん、すずみん!
 そしてさらに、鳳蘭サマですか?な舌巻きっぱなし、コブシ回しっぱなしの、しいちゃんが歌う「ろくでなし」に、めろめろになる。
 男役というより、昭和時代の「男装の麗人」テイストなの。やーん、しいちゃん素敵〜〜!

 花・月・雪とそれぞれ趣のちがったトップコンビのデュエット・ダンスがあったから、星組でも期待していたんだけど……。
 トウコちゃんとあすかちゃんのデュエット・ダンスはなかった。
 だからなんか、あすかちゃんの影が薄い。
 星組だけ、トップスターが組子の誰とも絡んでいないの。
 出し物として、4つの場面にそれぞれ特色を持たせるために、こういった構成の組があるのはわかるけれど、寂しいなあ。

 誰とも絡まないトウコちゃんは、ひとりNHKの歌謡ショウ・テイストで「愛の賛歌」を熱唱。
 白いガウンみたいな衣装がまた、とっても歌謡ショウ。
 ……すごい演出だなヲイ。目を点にしているウチに、1幕のフィナーレに突入するわけなんだが。

 最後の回は東宝劇場と中継でつながる特別仕様だった。

 ……いやあ、この中継がさあ、微妙すぎて。

 誰だよ、こんな企画出したの。
 絶対深く考えずに机上だけで計画して、実際にリハとかでぐだぐたになるしかないことに気づいて、でも今さらどーすることもできなくて、とにかく決行、誰も責任取る気ナシ、出演者がなんとかしろ!てなノリでやっただろ?
 と、勝手に考えてしまうくらい、タカラヅカらしいダメっぷり企画でした(笑顔)。

 つーことで、続く〜〜。


 たとえばゆみこちゃんは、組んだ相手をも地味にする、無敵の「地味パワー」の持ち主だった。

 まっつの場合。

 まっつ単体でもなにかしらかなしそうっていうか、不幸そうなのに、組んだ相手をも薄幸そうに見せる、無敵の「薄幸オーラ」を持っている。

 と、思ったんですが、どうでしょう。

 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』にて。

 1幕の「アリベテルチ・ローマ」では、すみかちゃんとデュエット・ダンス。
 2幕のディスコ場面では、その他大勢が一斉に現れごちゃごちゃ踊っているんだけど、まっつは主に月組のれみちゃんと組んでいる。

 いやあ、薄幸そうでたまりません(笑)。

 まっつ個人だけではなく、相手役も含めて薄幸そうなの。
 笑顔で見つめ合って踊っていても、「うわ、不幸そう」と思ってしまうの。

 クラシカルなデュエット・ダンスと、ノリのいいディスコ・ダンス。
 衣装も含めてまっつはクラシカルな方が合ってる。

 ドレスのすみかちゃんと踊る、白燕尾まっつの美しいこと。
 美しいんですってば。異議は認めません(笑)。
 まっつは燕尾です、燕尾がいいんです。あと白衣と学ランも美しいですけどね。とにかく今は、燕尾です。

 すみかちゃんとくるくる踊るまっつは、これからふたりで冬の空気に溶けていってしまいそう。あー、秋とか冬とかが似合いますね。夕暮れとか、終わりを匂わせるモノのすべて。

 一方、ディスコ・ダンスの紫衣装まっつは、ええっと、似合ってなくて痛々しくて素敵です。
 本人ははじけて踊ってるんですが。
 や、ノリノリだけでなく、れみちゃんとムーディに踊っていたり、いろいろなんだけど。

 れみちゃんは、バウ等でまさきの相手役だったりしたときは、元気な今どきの女の子に見えたのにな。
 まっつと組むと、薄幸の少女に見える……何故(笑)。
 まっつとまさきは舞台姿は似ているのになー。キャラが正反対だから、イメージ的に似ていると思いにくいけど、造作自体は似ているのに……相手役への作用すら正反対か……愉快すぎる。

 
 でもねでもね、2幕の『ME AND MY GIRL』のときは、薄幸オーラは小さくなっているのよ?

 かわりに、ヘタレオーラが燦然と輝いているけど!!(笑)

 めーっさかわいいサリー@彩音が『ME AND MY GIRL』主題歌をちらりと歌い、そっからあとは「ランベス・ウォーク」になる。
 まずは色男ぶったみわっちが歯をキラリとさせながら、彩音ちゃんをエスコート。
 それをまっつがソロパートを歌いながら割って入る。
 や、割って入るまでの、タイミングをうかがうところとか素敵です。今か、今か、って感じで(笑)。

 美少女を取り合う、野郎ふたり。
 わーい、みわまつ、みわまつ!!

 真っ赤なドレスの彩音ちゃんに、花男たちは黒タキです。
 黒タキまっつは素敵です。
 匂い立つヘタレオーラ!! 果敢に美少女へアタックする様が彼の魅力をかき立てます!

 やーんもー、まっつかわいー。

 
 とまあ、まっつのまっつらしい魅力について、今年の『TCA』から抜粋して語ってみました。

 明るいジャズをノリノリで歌うゆみこちゃんが、なーんか痛々しくてドキドキするのと同じように、薄幸オーラを漂わせながら女の子と踊るまっつに心臓をハクハクさせるのが、たまらないんですよ(笑)。

 1幕の花組場面の最後、銀橋でコーラスする一同の中から、まっつの声を聴きわける醍醐味、とか(2回目の観劇は1階S席だったんで、まっつの声を拾うことも可能)、それでも2幕の「One Heart」で聴きわけることは不可能だった敗北感、とか(だって真ん中でオサ&トウコのダブル歌ウマーさんが歌ってんだもん……)、たのしみは尽きないものの。

 じつは、いちばん、ものすごーく、ウケまくったことは。
 その2回目の観劇時。
 ありがたいことに1階席だったのはいいんだが、じつはチケットを手にしたときから危惧していたの。
 舞台に近いのはうれしいけれど、まっつを見るというコトに関してだけは、2階席の方がいいんぢゃないかって。
 スターさんを見るのには1階席がもちろんいいけれど、バックダンサーを見るには、手前に障害物のない2階席がよいのではないかと。

 ええ。
 予感的中。

 2幕のディスコ・ダンスのラスト。
 「One Night Only」を歌い狂うトップ以外の出演者たち。舞台上はすげー人口密度。

 そして、まっつは。

 しいちゃんのカラダにすっぽり隠れて、完璧に見えません!!

 しいちゃん、でかっ。
 まっつ、小さっ。

 まるでマトリョーシカみたい。

 しいちゃんのきらきら笑顔がまぶしい。
 しいちゃんの中に、すっぽりまっつ。

 待てど暮らせど、きらきらしいちゃん。まっつの姿は現れず。
 太陽が月をすっかり隠してしまった、ああら大変。

 ウケました。

 あまりのすっぽりぶりに。

 さすが不幸キャラまっつ! ナイスなキャラ立ち!(笑)


 今年のTCAはたのしかった。
 どーしてこんなにたのしかったのだろう。
 例年と比べて、そんなにちがったのか?

 つーことで、『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』の感想。

 TCAを2回観るという贅沢。いや、ありがたや。
 初日、「アリベテルチ・ローマ」で号泣、オサ様プレ・サヨナラショー仕様に号泣、まっつの声が聴けて感動、とかいろいろあり、取り乱したり舞い上がったりしていたんだけど。

 さすがに2回目になると落ち着いて、「アリベテルチ」も歌詞を聴く余裕もでき、泣くこともなく……結局、花組場面ラストで号泣。

 や、だってさ。
 オサ様がすげーくつろいだ顔で歌ってて。
 やわらかな、やさしい顔で。
 銀橋に一列に並んだ花組メンバー、その中央で、自在に歌うオサ様。
 魚は水がないと生きていけない。オサ様は自在に泳ぐ魚で、組子たちが水。どっちが主であるという話ではなく、その「自然」な姿が美しくて、やすらいだ表情で歌うオサ様に、神妙な顔で歌い続ける組子たちに、涙が止まらなかった。

 えー、花組場面、って、TCAの最初なの。1幕のプロローグのあとなの。

 最初に号泣すると、あとが続きません。

 精神的にも体力的にも、けっこうタイトです、今年のTCA(笑)。

 
 とまあ、最初にがーんと来ちゃうから、すげーすばらしい公演だったような気がしてならないんだが、さて、例年と比べてそんなによかったのか?

 TCAのおたのしみは、各組シャッフルだ。
 タカラヅカは組ごとでの行動が基本。組がちがえば接点がない。
 そんな、それぞれ独立したスターたちが、ひとつの舞台で共演するたのしみ。
 TCAはソレに尽きる。
 ただ同じ舞台にいる、だけじゃ意味がない。共にナニかしてくれなきゃ。

 そーゆー意味でいえば、今年のTCAは拍子抜け。
 結局組ごとの場面しかない。
 1幕は組ごとのショーシーン、2幕は娘役トップと組ごとの場面。組子シャッフルは、ほとんどなし。

 1幕にしろ2幕にしろ組ごとの場面は、それぞれの組でふつーの公演でやってもおかしくない。TCAだからできるものでは、まったくなかった。
 一口ずついろんな種類が食べられるから値打ちあるけど、ひとつずつの料理をこれだけひとり前として出されるんだとしたら、わざわざこの店に食事には行かないな、って感じ。

 1幕はトップを中心とした組ごとの場面でもいいけど、せめて2幕の娘役トップを中心とした場面は、各組男役をシャッフルして絡めてくれなきゃだわ。いつものメンバーがいつもと同じことをしているだけじゃん。

 と、考えると、べつに今年のTCAってヨクナイよなー。

 完璧に組ごと組単位行動なので、組を超えた並びがない。
 オサ様とゆみこが同じ舞台に立つ最後の公演だっつーに、このふたりが同じフレームにはいることはついぞなかったし、そのかとまっつも同じフレームにはいることはなかった。
 わたしはオサ様とまっつ中心のフレームしか持ってないからこんな例のあげ方になるけど、他の人にしてもそうだったと思うよ。
 組替えになった誰々ちゃんと組子の誰々ちゃんの並びを期待して、とか、何組にいる贔屓と何組にいる気になる彼が並んだところが見られるかしらと期待して、一度もなかった、と肩を落とす。そんな人は大勢いたのでは?
 その他大勢のバックダンサーとしてまざっていたり、フィナーレの階段降りが全員参加で組別ぢゃなかった、なんて志の低い話ではなく、ちゃんとした組シャッフル場面がなかった、という意味で。

 今年の目玉はトップスター競演。
 あさこと水のダンス競演、オサとトウコの歌競演。

 すべては、コレに尽きる。
 TCAらしい仕掛けは、ここだけだもの。

 トップスターに興味がなく、下級生の自分の贔屓だけを目当てに行っていたら、唯一の目玉すら目玉にならず、たのしめなかったんじゃないだろうか。

 
 「TCAらしい」たのしみは希薄だった。
 せっかく4組合同企画なのに、1組ごとでやっても変わらない構成・演出。

 それでもたのしかったのは、「TCAらしい」魅力はなくても、「ショーとして魅力的」だったからではないだろうか。

 
 歌える人が歌って、踊れる人が踊る。
 ……あたりまえのことなんだが、ヅカではありえないこと。

 歌が得意な人が歌で魅了し、ダンスが得意な人がダンスで魅力をふりまく。
 美しい娘役が、耳慣れた名曲を歌い男たちと絡む。華やかに夢の世界を見せる。

 そういう、「ショー」であたりまえにやってほしいことを、やっていた。

 「TCA」だと思うと良い構成でも演出でもないんだが、「ショー」として魅力的だった。

 
 それぞれの得意分野を活かしたショーである、だけに。
 やっぱトップスターってのは一芸が必要なんだと痛感した。突出した力、わかりやすいウリ。
 その部分だけにお金払っても惜しくない、と思える魅力。

 オサ様とトウコちゃんの、歌対決の素晴らしさ。

 トウコちゃんは初回、歌を抑え気味だったと思う。とくに1幕。
 2幕にコレだけ歌わなければならないんだから、ソレは仕方ないかな(いつも自在全開のオサ様は異星人だから一緒にしてはならない・笑)。

 でもトウコちゃん、ラストの回は1幕もちゃんと歌っていたし、2幕の歌対決はさらに声が出ていた。

 ふたりのスキャットをナマで聴くことができた。
 それだけでも、苦労してチケットを手に入れた価値があった。

 
 正直、オサアサ・コーナーには疑問がある。
 わたしはオサファンだからたのしいけれど、それでもプロの舞台人としてやることではないなと思う。
 ふたりでコーナーを与えられ、4分間自由にしていいというなら、舞台人としてなにかするべきだったと思う。
 楽な方に逃げたな、と思うよ。
 歌ったり踊ったり演技したりするの、しんどかったんだろうな、と。
 それより喋った方が楽だから、そうした。
 トップスターが重労働であり、その負担の大きさに胸を痛めたり心配したりするのは別次元。
 オサちゃんとあさちゃんがたのしくお喋りをする、それをわたしはたのしんだし、ふたりのお喋りをもっと聞きたいと思う気持ちとは、別次元。
 オサ様もあさこちゃんも、そのあとの場面できちんと「プロとして」の顔を見せてくれているだけに、ふたりの場面でもそれなりのものを見たかった。
 
 
 でもまー、なんだかんだいったって、今回のTCAはオサファンにはたのしくてたまらないと思うよ。
 わたしはオサ様のあれこれを思うだけで、幸福になれるもの。
 むしろ、こんなにたのしくてしあわせでいいかしら、つーくらいだ。TCAなのに、4組合同イベントなのに、オサ様プレ・サヨナラショーでいいのかしら。

 わたしがオサ様と花組ファンだから、例年以上に楽しんだ。
 というのが、FAという気がする。


 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』初日の感想、続き。
 出来の悪いわたし海馬に残ったものなので、真実とちがっている可能性大、それでも自分のために残しておきたくて、突貫工事で記す。
 花組の感想だけなんで、他の組の人のことは書いてないっす。それはまあ、日を改めていつか書くだろう。てゆーか明日(8日)も観劇予定だし。だから今、残しておかなくては。明日もう一度観たら、感想が上書きされてしまうもの!!

 
 オサ様、プレ・サヨナラショーですか?

 というノリの、今年の『TCA』。いちいちオサファンを泣かせてくれる演出で。

 てゆーか1幕のトリ、スミレちゃん@『エンター・ザ・レビュー』じゃん!!

 オサ様がねーっとりと「パリ・パナム」を歌い出した瞬間、胸の奥がざわざわ動くのを感じた。

 真夏の博多。ただただしあわせだった記憶。
 『マラケシュ』と『エンレビ』。特別な、特別すぎる時間。
 まさかもう一度、ここで今、聴けるなんて。

 オサ様の歌に合わせ、出演者全員登場、合唱になる。
 こ、ここまでオサ様仕様なの? んで、「すみれの花咲く頃」で幕、ってナニそれ?!

 し、消耗した……。
 幕間に合流したチェリさんに、サトリちゃんが「緑野さん、『アリベテルチ・ローマ』で号泣するんですよ」と報告、チェリさんには「はあ? なんで? 歌詞ぜんぜんチガウし!」とかあきれられたけど。

 オサ様退団なんだよ? 正気なわけないじゃん!!
 オサ様を失う現実と闘っているときに、「アリベテルチ・ローマ」なんか聴かされた日にゃあ……。ぜえぜえ。

 
 2幕もなんかオサ様仕様で。
 なにしろ場面名が「OSA&ASA」……。
 なにをするのかと思えば、オサとあさこのトーク。
 こ、このグタグダぶりはいいの?(笑)
 たのしいんだけどね。オサ様とあさこちゃんがじゃれあっている、それだけでうれしい。
 あさこちゃんの本日の睫毛は、オサ様からもらったものらしい。くそー、ラヴラヴ見せつけやがって(笑)。

 退団イベントのないオサ様。
 ここであさこちゃんが、退団についての話題を振った。
 オサ様はわたしたちに、ファンに向かって、退団についての言葉を述べた。……や、なんとなくカラダがあさこちゃんの方を向いていたよーな気もするが。
 ここでてらいなくカメラ目線できれいな挨拶を出来る人じゃない。だからいいんだ。

 オサ様から、言葉を聞けたんだから。

 ほんとはもう、あさこちゃんがオサちゃんに退団について話を振った段階で時間切れだったんだけどね。
 無理矢理、続けてしまった……。GJ!

 
 トップ娘役と3番手以下の男たちの場面(花組は『ME AND MY GIRL』。まっつ歌い継ぎの短いソロあり! うおーっ、うれしー)を経て。

 なんといっても、オサ様とトウコちゃんの歌対決!!

 オサ様は、自在に音で遊ぶ。

 これもーオサ様の持ち歌だよね?てな「It Don’t Mean a Thing」だし!!
 今までのオサ様アドリブ?(「博多座オマエに抱かれたい」とか、わけわかんねーヤツ・笑)ごと記憶がアタマの中をぐるぐる回って、もーどーしよーかと。

 トウコちゃんが歌ウマさんでよかった。
 対等の力がなければ、このスキャットは響かない。

 続いてトウコちゃんと『One Heart』熱唱。なんか、元歌というか、記憶に残っている歌声と別物過ぎてウケる。

 あ、ここで寿美礼サマのバックに登場するまっつが、衣装に埋もれ気味なのも愛しい。耽美系衣装なの。やーん、似合わないー。(うれしいらしい)

 で、油断しているウチにフィナーレ突入。トップさんがひとりずつ持ち歌を歌う。
 水しぇんが「最後のダンス」、トウコちゃんが「Eres mi amor−大切な人−」、あさこちゃんだけ知らない曲(いろいろ聞いたが誰も知らなかった。謎の選曲……みんなが知っている曲の方があさこちゃん的にもお得だろうに)、そしてオサ様は。

 「Where in The World」……『ファントム』だった。

 白いドレスのような衣装を着たオサ様は、白い花の精のようで、可憐だった。

 たよりなげで、思わず手をさしのべたくなる、いたいけなひと。

 だけどその歌声は澄んで、豊かに響き渡り。

 はい、もー、なんなのこの構成。サヨナラショーぢゃないっつーの。
 泣かせるのが目的なのか、このイベント?!(逆ギレ)

 もー、消耗が激しくて、終わるなり「おなかすいた」って言っていた(笑)。

 寿美礼サマとまっつだけで、息も絶え絶え。や、他もいろいろ観てはいるんだけど……余裕がないっつーか。
 あー、まっつがいちばん似合う衣装は、黒燕尾ですよ、シルクハットですよ、と再確認。
 2幕冒頭のディスコの紫服、サイズ合ってない? なんか服の中でカラダ泳いでないか? とか、そんなどーでもいいことが気になる(笑)。

 まっつねえ、黒髪なんですよー。わーい。なにがどうぢゃないが、わーい。
 クラシカルな場面でも、ギンギラディスコでも、同じ髪型なのが、じつにまっつらしい。みわさんとか気合い入れて変えてるのにさー。

 まっつとそのかが、ただの一度も並ばないことが心残り。まっつはゆかりくんと並ぶことが多かった(同期ですから)。

 ゆみこの後ろのまっつとか、寿美礼サマの後ろのまっつとか、ひとつのフレームにオイシイ並びで収まってくれることが多々あり、感涙。

 
 今日のところは簡単に、覚え書き程度に。
 きっと覚え間違いが山ほどあるはず。でもま、それも含めてわたしの海馬に残ったモノだから、大切にしたいのだ。

 明日はエンカレのサバキ待ちするぞぉーっ。無事に大劇とバウとハシゴできますように!!


 「アリベテルチ・ローマ」に撃沈。

 『TCAスペシャル2007 アロー!レビュー!−「モン・パリ」80周年記念−』(長いよ)に行ってきました。

 なんですかコレ。

 オサ様、プレ・サヨナラショーですか?

 泣かせることが目的ですか? そうですか。

 いやその。
 わたしの視点が偏っているだけかもしんないけどさ。
 あまりにオサ様サヨナラ仕様で、びびった。てか、泣いた。

 幕開きから、大階段にただひとり立つ、端正なシルエット。
 オサ様だ。
 組カラーの衣装で、くしゃりと笑い、歌い出す。

 ここでもう、涙腺ダムにひびが入る。落ち着けわたし。「オサ様だ」「オサ様が笑ってる」「オサ様が歌ってる」って、それだけで泣いてどうする。

 オープニングはどの組も組カラー衣装、組順(花月雪星)で登場。
 あああ、まっつ、ベビーピンク似合わねぇ。
 何故花組は最後のキメポーズがピースサインなんだ??(笑)

 トップだけが残り、MCスタート。てゆーか、オサアサ。
 トークテーマが「私とパリ」なんだけど、オサちゃんはCSであさこと行ったパリの想い出を語る。移動のバスの中、空気のきれいな田舎を走っているときはあさこ爆睡、街の中にやってくると窓にはりついてはしゃぎだす……というエピソード暴露。
「私が田舎モノみたいぢゃないですか!」
 と、あさちゃん。
 いやそのソコは、あさこの寝顔を見つめるオサ様とかを想像して萌えておくべきかと(笑)。
 オサ様はすぐに時間切れ、次の組場面の準備に消えてしまうんだけど、残ったあさこが語る「私とパリ」はもちろん、オサ様との想い出。
 パリまで行っておきながら、オサ様がしゃぶしゃぶだの中華だの、「何故今ココでソレを食す?!」みたいなものばかりを食べたがる、という話。……でもどうやら、オサ様のリクエスト優先で、それらを食したようです。……のろけ?
 なんか、トーク全体、オサアサ色が強かったような。つまりソレって、オサ様の話題が多かったってことになるわけで。
 そーいやオサ様、台詞忘れてトウコちゃんに助け船出されてたなー。トウコが教えてくれた台詞を、しれっと何事もなかったかのように言い直す姿がツボ。

 あああオサ様オサ様。オサ様の話、エピソード。それだけでわくわくドキドキ、せつなくなる。

 トップMCが終わり、花組場面。
 彼らは「イタリア」担当。

 オサ様がひとり登場、銀橋で悠々と歌う。本舞台には大きなスクリーンが降り、なんか大昔の関連舞台写真がスライド上映。

 ここでもう、涙腺ダムのひびが大きくなる。落ち着けわたし。「オサ様だ」「オサ様が笑ってる」「オサ様が歌ってる」って、それだけで泣いてどうする。
 豊かな声。どこかに微笑が含まれているような、包み込むよーな歌声。

 スクリーンが上がって、本舞台にて組子たち登場、花組担当の歌劇「イタリヤーナ」の曲を使って、短い場面が続くレヴュー。

 それぞれ少人数口で歌い継ぐよーなカタチ。

 てゆーか、オサ様と組子場面。順番がどこだったかすでに記憶がないが、男たちがそれぞれワンフレーズずつ歌い継ぎ、オサ様と絡むのだわ。
 コレって、どう見てもサヨナラショーの1シーンぢゃん?!

 ダム決壊秒読み段階。
 まっつにワンフレーズとはいえ歌があった、さらにそこでオサ様に絡む(かなり浅いが)、なんてもー、あたしに泣けって言ってるよーなもんじゃん?!
 勘弁してよーっ、今日はお祭りなんでしょう? オサファン泣かせるのが目的なの?

 しかし、それとは別に壮一帆ソロに、身もだえしていた。

 壮くんはひとりで1曲だったの。
 ド金髪をぴたりとリーマン風に撫でつけて、不思議な振りで踊る。

 なんなの、あのダンス? ぴょこぴょこしているというか、あの足サバキはナニ?!

 わたしはつい爆笑し……そうになるのを必死で押さえた。や、どうも声が漏れていたらしく、一緒に見ていたサトリちゃんに「声出して笑わないで下さいっ」て叱られたけどな(笑)。

 ブラボー、壮一帆。
 オサ様見て泣きそうだったのに、笑いでぶっ飛ばしてくれた。
 あああ、どうしてここに「壮一帆を愛でる会」メイトのパクちゃんがいないのぉ?! 一緒に笑いに震えたかったよぉ。

 そうやって、壮くんに癒されていたというのに。

 次はまとぶの場面、なんかどっかで聴いた曲のイントロが流れる……?

 「アリベテルチ・ローマ」だった。

 一瞬で、アタマがタイムスリップした。
 そう、この曲、「アリベテルチ・ローマ」。
 2004年、『ドルチェ・ヴィータ!』で使われていた曲だ。

 エンディがオペラ歌手のように堂々と歌い、3組の紳士淑女のカップルが踊る。
 真ん中のカップルはともかくとして、その後ろの2組のカップルの男たちは、この作品で別れることが決まっていた。
 退団する、別れる男女が、踊る。

 別れの曲にのって、もう二度と帰れない、この場所にこの顔ぶれでいることは出来ない男女が踊る。男は去り、女が残る。

 まとぶも出ていたね、あの公演、『ドルチェ・ヴィータ!』。この場面は退団者仕様だったから、いなかったけれど。

 「アリベテルチ・ローマ」は、強すぎる想い出の曲だ。
 わたしにとって。
 ただひたすら、ひとりだけを見つめた。
 美しい人。男役としての美を一点に昇華させた人。
 そのひとの、最後の舞台。

 それが今、また、目の前にある。

 や、別のモノだよ。関係ないことはわかっているけれど。

 まとぶがセンターで「アリベテルチ・ローマ」を歌い、3組のカップルが、その周囲で踊る。
 
 わたしは見る。
 デジャヴ。
 あのとき、あの公演、あの人がいた場所を。

 3組のカップルの、下手側のふたり。
 ケロとみなみちゃんが踊っていた場所を。

 そこに、まっつがいた。

 曲だけでね、すでにダメだったのよ。
 涙腺ダム決壊、だーだー泣いていたんだけど。

 ケロと同じ場所に、まっつがいる。
 ケロと同じように、踊っている。

 ……ダメだから。
 もう、許容量オーバーだから。

 「アリベテルチ・ローマ」で、まっつが踊る。

 そんなの、ありえないから!!
 なんなのコレ。なんでよりによってコレなの? この曲目、この演出なの?!

 号泣。

 一緒にいたサトリちゃんを心配させるくらいには、取り乱す。

 ダメージが大きすぎて、そのあとしばらく立ち直れず。
 や、ラストシーンはオサ様中心に、組子全員が銀橋に整列。
 自由自在に歌うオサ様を、組子たちがコーラスで彩る。
 なんなのこの構成。
 オサ様の歌声ののびやかさ。それを盛り立てる仲間たち。すげえすげえすげえ。
 そこまでは気力で押さえたが、その次の月組場面は半ばまで記憶がない(笑)。

 花組だけの感想だから、さくっと短く終わるつもりだったのに、終わらないよー、続く!!


 劇団は轟悠に、どこまで求めるのだろう。

 日生劇場公演『Kean(キーン)』
 じつに興味深い作品なのだが、「コレをタカラヅカで上演する意味はあるのか?」という疑問が終始消えなかった。

 シェークスピア役者の物語で、観客に基礎知識を必要とする、ということも疑問のひとつではあるが、わたし的にはソレはどーってことない。
 だってわたしはシェークスピアなんかなんにも知らない知力の低いイキモノだが、物語を理解する、たのしむうえで、それは特別マイナスにはならなかった。わけわかんない台詞や比喩も、「そんなもん」だと思って流していて問題ないし。「ATフィールドってナニ?」「で、人類補完計画ってナニよ?」とかゆーレベルでも、テレビ本放送当時ふつーに『エヴァンゲリオン』をたのしめたよーなもんだ。些末なことがわからなくても、大局を理解するのには関係ないと思う。

 ……もっとも、主役の台詞が聞き取れない場合は、なにひとつわかんなくても仕方ないが。(トド様、滑舌最悪だからなー)
 わたしは慣れなのか愛(笑)なのか、トドの台詞は集中すれば聞き取れるのでそこは問題ない。

 ま、滑舌の問題は置くとして。今は作品の話。

 シェイクスピア云々というよりも、この作品のテーマと表現方法(ストーリー)が、タカラヅカ的ではないということこそが、引っかかる。

 役者キーンの苦悩と狂気なんてもん、何故ヅカで描く必要がある?
 恋愛も歌もダンスも、おまけ的なもので、本質とは関係ない。

 たとえば下品な石田昌也作品を「タカラヅカ的ではない」というのとは、別の意味だ。
 前へ、と能動的に進む男視点の物語は、女性からすると女性蔑視・女なんてただの道具としか認識していないため、不快である。
 だが勧善懲悪であったりサクセスストーリーであったり、男視点ゆえの大味で単純な「ヒーローを描く」という意味でタカラヅカにまったくそぐわないワケじゃない。
 タカラヅカは「少年ジャンプ」的、ヒーローがかっこよければソレでヨシな面が多分にある。

 だが『Kean』は、ひとりの人間の「内側」の物語だ。勧善懲悪でもサクセスストーリーでもなく、壊れていく男の、ギリギリの闘いが描かれる。
 前へも進まない、上にものぼらない。
 ただ中へ、中へ……内側へ浸食していく物語。

 そんなもん、ヅカで上演してどーするんだ。

 誰も求めてないじゃん。
 そんな、あきらかにカテゴリエラーな作品を与えられ。

 轟悠が、えらいことになっていた。

 劇団は、トドロキにナニを求めているんだ?

 
 タカラヅカは、特殊な世界だ。
 いくつものお約束に守られ、長い年月を掛けて研ぎ澄まされてきた「型」を継承することで、独特の世界を形作る。
 閉じられた世界、その箱庭の中だけで成立する「ファンタジー」だ。

 それがいい悪いは関係ない。前提だからだ。
 タカラヅカは、タカラヅカだけが持つ魅力がある。箱庭から出る必要はないし、ファンタジーを壊す必要もない。
 なのに。
 トドロキに与えられたキーンという役は、タカラヅカの方程式では解けないものだ。
 タカラヅカのお約束では表現しきれない、そもそも表現する必要のないものだ。

 たとえば、「雨」が一切降らない世界には、「雨」という、そのものをさす単語はないだろう。存在しないものを表す言葉は必要ないからだ。
 もし雨が降ったとしても、それはただの「空から落ちる水」というような表現になる。ソレに近い言葉をつなげて表現する。

 トドロキが『Kean』でやっていることは、そーゆーことだ。

 キーン役は、ヅカの世界には存在しない概念だ。
 外の演劇界他、マンガやアニメ、文学だの映画だのには存在するかもしれないが、とりあえずヅカにはない。そもそも必要ないから、存在しない。
 その、存在しないものを、タカラヅカの世界にある他のもので表現しようとしている。

 えらいこっちゃ。

 この特殊な世界で、主演役者(に、なる前のひよっこ時代も、そうなるための道を歩いていたわけだから、含める)として20年以上生きてきた轟悠という人は、ある意味この特殊な世界を代表する人だ。
 歌・芝居・ダンス等、個々の実力をどう評価するかは個人の自由だが、「タカラヅカというファンタジーを形成する」という面において、トドの能力は高いだろう。
 職人の手が、工具を握るために堅く変形するかのごとく、長い年月をかけて「タカラヅカの男役」という遡源にたどり着いた人。
 彼が持つ「タカラヅカ」という力。
 箱庭の中で、お約束の中で、「ファンタジー」を織る力。
 その「タカラヅカ」力を駆使して。タカラヅカに存在しないものを、表現しようとしている。

 「雨」の存在しない世界で。突然降ってきた「雨」を、どう表現する?
 そーゆー「あり得ない状態」になっていた。

 
 だからわからない。
 劇団が、トドロキにナニをさせたいのか。

 新しい可能性を探っているんだろうか?
 「雨」が存在しないのは必要ないからなのに、わざわざないものを表現させて、ナニがしたいんだろう。

 わかったことは、劇団が、どれほど轟悠を評価しているかだ。

 たとえば『花供養』で、ヅカの世界観の究極の位置にあるものを、トドに演じさせた。究極過ぎて、現代のファンは誰も求めてなかったけど、まぁそれはともかく。
 「型」を伝えること、極めることで1世紀近く続いてきた文化の、集大成をトドに演じさせたのは、まちがいなく信頼の証だろう。

 そして今、タカラヅカを極めた男が、タカラヅカにないものを、タカラヅカで培った技術を武器に、勝負をさせられている。

 どんだけ期待されてるんだ。すげぇなヲイ。
 

 トドは基本舞台に変化のない人で、初日から完成に近いものを出してくる。
 完成度が高いわけだからいいっちゃいいんだが、いつ見ても同じ、面白みのない人でもある。
 だから、初日が開いてすぐ、1回しか観られないし、花組との兼ね合いがあるからさっさと観に行っちゃおう!なスケジュールで観劇してしまえるわけだ。
 そーやって、作品の善し悪しに不安はあっても、トド個人の出来映えにはなんの危惧もなく劇場に駆けつけて。

 悪戦苦闘しているトドロキに、驚いた。

 え、えーと?
 あの轟悠が、苦戦している?
 いつも及第点を面白味なく作り上げてくる、あのトド様が?

 もちろん、このカテゴリエラーな難作を、トドは力尽くで支えていた。
 引っ張っていた。
 だが、チガウんだ。いつものトドぢゃない。

 ヲイヲイ、すげえことになってんな。

 ギリギリの、轟悠。
 今まさに、舞台の上で苦悩している轟悠。

 この人は、どこへ行くんだろう。

 キーンが持つ狂気。
 トドロキはそれに近づき、それを乗りこなすべく闘っている。

 でもトドロキさん。ヘタをすると、ソレはパンドラの箱だよ。
 開けてはならない箱だよ。
 アナタはソレを開ける力を持っているかもしれない。でも、開けてしまったら……どうなるの?

 ここは「タカラヅカ」だ。箱庭だ。パンドラの箱は、開けてはならない。

 劇団はわかったうえで、トドロキを闘わせているのか?

 
 昼公演を観て、サバキでいいのがあったら夜公演も観ようかと思っていたんだけど。
 サバキ、1枚も出てねぇ。
 あきらめて、1回限りの観劇で帰路についた。
 や、当日券があるのは知ってるよ。でも、後方席で観たいわけじゃない。

 それより、後半日程でもう一度観てみたいと思った。

 轟悠がどこへ行くのかが、知りたい。

 初日も楽もみーんな同じのトド様に対し、はじめて持った感想だ。

 だってほんとコレ。
 すごいものかもしれないよ? ……カテゴリエラーだから、求められていないけど。や、だからこそ、今見逃すと、ヅカの歴史では二度とこんな試みはされないかもしれないよ?

 金がないから、もう観られないと思うけどな……ううう。びんぼーのバカーっ。


「……それで? それで結局のところ、殿下はなにをお望みで?」
 役者は疲れた顔で坐り込む。
 殿下、と呼ばれた若い男は役者の傍らに立ち、傲慢な輝きに満ち言い捨てる。
「お前が欲しい」
「……私?」
 役者は笑う。
「いいでしょう、差し上げましょうとも。さて、殿下のお好みはハムレットですか? それともぐっと若くロミオがよろしい? お好きな私を差し上げましょう」
「……それらすべてを含め、お前自身が欲しい、エドモンド・キーン」
 殿下と呼ばれた男が、手にしたステッキの先で役者の顎を持ち上げる。役者の目が、はじめて男に向けられる。
「あるいは。それらすべてを必要としない、お前自身が欲しい」
 すべてを持つ男が言い放ち、彼の手の中の、自分自身すら持たない男は年若い征服者を鋭く見据え……やがて、その瞳を閉じた。
「お望みのままに……殿下」

                  ☆

 なんかもー、すげー萌えだったんですけど?!

 日生劇場公演『Kean(キーン)』

 はい、いつものよーに予備知識ナシ、誰が出るのかもわかっちゃいねー、記者会見に出ていた4人しか知らないよ状態で行ってきました。
 ので、幕開きからあまりの歌のアレさにべっくらこきましたが……。れ、れんたがんばれ……。

 あるシェイクスピア役者の物語。大人気で市民はおろか、貴族のサロンでもモテモテのエドモンド・キーン@トドロキ。
 しかしデンマーク大使夫人、エレナ・デ・コーバーグ公爵夫人@みなみとの不倫がきっかけで、話は転がりはじめる。
 キーンのパトロンであるプリンス・オブ・ウェールズ@れおんが、エレナをめぐってキーンの敵となったのだ。彼はあの手この手でキーンを追いつめていく。
 プリンスが道具として用意したのは、キーンにあこがれきっている豪商の娘アンナ・ダンビー@まりもで、キーンと彼女をくっつけて、エレナに愛想をつかさせようとする。
 エレナの夫、デンマーク大使@にしきさんや、アンナの婚約者@一輝慎も巻き込んで決闘だったり乱闘だったり未遂だったり口八丁だったり。まあいろいろと。
 客席であてつけるアンナとプリンスにキレたキーンは、舞台の上でプリンスを罵倒し、なにもかも失うことになるが……。

 
 えー、わたしは浅学なもので、シェークスピアなんてカケラも知りません。何回か観に行ったことはあるが、大抵爆睡したクチだ。学生時代、読もうとしたこともあるが、早々に挫折したくらい、肌に合いません。
 むしろ、シェイクスピア信者うぜぇ、と思っているクチです(笑)。や、自分が理解できないもんだから、ただの負け惜しみですが。

 それでもとくに問題なく、たのしく観劇できました。これでシェイクスピアに詳しい人なら、きっともっとたのしめるのだろうと思う。

 ただ、「この作品をタカラヅカでやる意義って、なんなんだろう」とは思いました。
 ヅカファンはこの作品を求めてないだろ……。

 まあ思うところはいろいろあるが、それらはあとに回すとして、今はまずミーハー感想。

 柚希礼音は、鬼畜でナンボの男です。

 いやー、久々に来ましたね、れおん万歳。
 ちえちゃんは鬼畜男を演じた方がツボります。
 健康的で大味すぎるれおんくん、わたしの好みからはかけ離れているんだが、唯一『龍星』ではわくわくさせてくれた。
 そーなのよ、「健康的で大味」じゃあダメなのよ。彼には「ゆがみ」がないとそそらないのよ。
 健康的で大味、路線として将来を約束された男。だからこそ持つ「ゆがみ」……それが感じられたとき、すげーそそるのよ、ドキドキするのよ。

 プリンス・オブ・ウェールズ最高っす。
 キーンを追いつめていく風情が、鬼畜でたまりません。
 苦悩するキーンを見つめる瞳に、愛情と憎悪が満ちています。自分で突き落としておきながら、やわらかな表情で彼を見守ったりしてます。

 もーね、1幕から「これって、プリンス×キーン? えええ、れおん×トドロキ? マジっすか?!!」と、うろたえていたんだけど。
 2幕がまたぶっちぎりでエロかったっす! プリンスったら鬼畜!!

 攻スキーなわたしのハートにジャストミートです、れおん殿下!

 殿下ったらね、キーンが女たちに贈った恋文の文章をそらんじているのよ。毎回同じ文面だからだって殿下は言うけどさ、毎回いちいち入手して読んでたんかいって、あたしゃ盛大に突っ込んだよ。
 これまでキーンがどんな女たちと遊んでいても、気にもとめなかった殿下。しかしエレナとの恋だけは、許せず割り込んできた。キーンが「これは真実の恋」と思い込んでいたせいだね。
 遊びの恋なら俯瞰もするが、本気ならば許さない。キーンが真実欲しいと思う女を、横からかすめ取っていく。
 しかも、キーンが唯一手にしている「舞台」という神聖な場で、キーンからその「舞台」すら奪っていく。

 どこまで鬼畜なんだ。
 キーンが自分を好きだということ……友人として愛していることを知っていながら。

 うん、キーンはプリンスを好きだと思う。
 下層階級の自分に劣等感を持ちながらも、それでも高貴な年下の友人を愛していたと思う。
 そんなキーンの複雑に屈折した心を知りながら、それでもなお、手のひらの上で転がそうとするんだ、プリンス・オブ・ウェールズったら!

 キーンがもっとも嫌う「身分の違い」を見せつけ、権力で彼を追いつめるんだ。

 キーンは「友人」だと信じていた相手に裏切られ、陥れられ、なにもかもなくすんだよ。
 そして、「舞台」の上に引きずり出され、辱められる。

 ……転げ回りたいくらい、エロいんですけど、あのふたりの関係。

 殿下はキーンを精神的にレイプしてるよねえ、アレ。「役者」を「舞台」の上で破滅させ、「舞台」の上で謝罪させるなんて、レイプだよ。
 魂の尊厳を踏みにじり、強姦してるんですけど。残酷だー。鬼畜だー。

 キーンの苦悩、プリンスに見せる憔悴と倦怠がいい。相手が彼だから……友人として心を許した相手だからこそ、その許した心のやわらかいところを傷つけられ、生命力に陰りを見せる。

 もういいよ、キーン。殿下の手の中に堕ちちゃいな。殿下はどんな姿のあなたも愛してくれるよ。

 と、心から萌えでした。

 トドロキとふたりのヒロインもの、みなみちゃんヒロインだなんてうれしー! とか思って観に行ったんだが。

 みなみちゃんはヒロインというほどでもなく、どっちかっつーとまりもちゃんがヒロイン、みなみちゃんはオイシイ2番手の女役って感じかな。
 そして、ほんとのところ、女ふたりはヒロインではあっても、「相手役」ではなかった。

 トドロキの相手役は、れおんでした。

 ふたりの男の、愛憎物語。真正面から向き合う物語。屈折しまくりながら、ね。

 いやあ、すばらしいっ。


 はい、さらに、グッズ話です。しつこいですね。

 恥ずかしくて買えない、とじたばたしていたまっつブックマークは、パクちゃんに代わりに買ってもらうことで、事なきを得ました。ふぅ。

 でも考えてみれば、オサ様とか水くんとか、他の人のブクマも買うんだから、そこにまっつがまざっていたからって、どーってことはないはずなんだが。
 わたしはいつも大抵、複数のスター写真を一度に買うので、贔屓が誰かなんて誰にもわからないだろうに。それでも、まっつグッズを買うのは恥ずかしいという不思議。

 なんつーか、エロビデオだけではレンタルできず、ふつーの洋画をまぜてカウンターへ持っていく男子のようですね。

 でも先日の『舞姫』のときは、わたしもすっげー舞い上がっていたから、「『舞姫』まっつ写真全買い」+「梅田キャトレに在庫として置いてあったバーナードくん@『NAKED CITY』まで買い」という、前代未聞の一気買いをしてしまいました。
 いやあ、勇気だったね! 快挙だったね! オレってすごいよね! 自画自賛だね!

 しばらくは、あんな勇気は出せそうにない……はぁはぁ。

 
 そうやって無事入手したブックマーク。
 デカ過ぎる、栞として使えねー、と本末転倒な評判を耳にしていた通りの微妙なグッズではありますが。

 わたしはひとつ、発見しました。

 ブクマはたしかにでかい。しかし。

 タカラヅカスケジュール帳に、ぴったりサイズ!!

 キャトレで売っている、B6サイズのあのスケジュール帳ですよ。ビニールカバーがキャトレ販売の舞台写真とぴったりサイズ、「あなたの好きなスター写真でカスタマイズしてね(にっこり)」の、あの手帳。
 そうかブクマって、この手帳に合わせて作ってあるんだ。

 タカラヅカスケジュール帳は昨年から使っているけれど、ブクマとサイズを合わせてあるなんて、気づかなかった。
 だって昨年は、まっつブクマ発売されてなかったもん。
 まっつ尽くし手帳にゆーひくんブクマを使えるはずもなく、まっつ写真(会グッズ。FCに入ってないけど、友人に頼んでわたしの分も購入してもらった)を、透明フィルムに入れて、手作りブクマとして、使っていた。涙ぐましいですね。

 もう、手作りしなくていいの。
 まっつのブクマが、公式グッズとして売っているの。

 まっつ写真でカスタマイズした手帳に、まっつ公式ブクマをセットすると、だね。

 まっつ手帳が、公式販売されたような錯覚に陥る。

 ブクマが紙製でないことが、ポイント。
 捨てるときの分別はなんになるんだ? と思うよーな、微妙なプラスチック製。
 素人の手作りではなく、ふつーに販売物だとわかるクオリティ。

 これを挟み込むことで、スケジュール帳のまっつ尽くしごと、「グッズ」としての統一感が上がるの。

 すげえ。
 ブックマークは、スケジュール帳のカスタマイズパーツだったんだ。
 発売から10ヶ月も経ってから、追加パーツが発売されるなんて、すげぇなヲイ(笑)。あと2ヶ月で、来年の手帳が発売されるんだと思うけど……ブクマは引き続き使えるから問題ないか。

 まっつだけに限らず。
 ブクマが発売されている40人のジェンヌのファンは、スケジュール帳とブクマをコーディネイトして、「**ちゃん尽くし手帳」を作れるんですよ!!
 そのか手帳でも、となみ手帳でも、マギー手帳でも、ゆかり手帳でも。自由自在。ブクマが挟んであるだけで、ぐーんとプロ仕様(笑)。

 ブクマ万歳!!
  

 さて、グッズの話、第3弾。
 いやその、今ちょっと個人的に「グッズを考える」モードなのよ。いろいろとな(笑)。

 グッズを買うのって、恥ずかしくないですか?

 わたしは、恥ずかしい。
 グッズは好きで、欲しいけれど、いざお店で買うのは恥ずかしいのだ。
 
 今年のブックマークだけどさぁ、現物が店頭に置いてなくて、カウンターで店のおねーさんに「誰それさんのブックマークをください」って申告しなきゃいけないんだって聞いたんだけど、ほんとう?

 キャトレへ言って、「未涼亜希さんのブックマークを1枚ください」って言わなきゃいけないの?

 ナニそれ。
 その羞恥プレイは、なんの罰ゲームなのっ?!

 羞恥プレイでしょう? 恥ずかしくて恥ずかしくて、たまらないよね?
 まだね、陳列してある商品を勝手に手に取り、レジを持っていくことならできるの。それでもけっこう恥ずかしいんだけど、それならまだなんとか行動できる。
 レジで「未涼亜希さんのブックマーク1枚ですね」って読み上げられたりしないでしょう?

 みんな、恥ずかしくない?
 贔屓の名前を公の場で口にするのよ? 口にしなくても、購入するという行動で示すのよ? 恥ずかしくない?

 ……恥ずかしくないのかなあ、世の中の人って?

 考えてみれば、若い頃は比較的平気だったの。
 ヅカにハマりたてのころ、まだ新公学年だったトドの写真を買いあさっていたわ。そのころはべつに、恥ずかしくはなかったと思う。
 さらに昔、中高生のころだと、アニメショップで好きなアニメのグッズを買ったりしていたけれど、ぜんぜん恥ずかしくなかった。

 どうやら、年齢とともに恥ずかしくなってきているようだ。高校を卒業したあとは、ヲタクであることに変化はなくても、アニメショップに行くことすら恥ずかしかったもんなあ。

 それはやはり、キャラクタグッズ等を持つのは子どもだけ、大人がしてはならないという意識があり、ソレを破ることは恥ずかしいことだと思うからか。

 そういう「一般常識と照らし合わせて恥ずかしい」と思うキモチならば、まだわかる。
 だがその場合は、キャトレで売っているモノを買うのは、すべて恥ずかしいということでなければおかしい。
 プログラムや『歌劇』などの書籍、DVDなどはグッズではなく、ふつーに映画や小説と同じ文化商品カテゴリということにしてのぞくとしても。
 それ以外の、個人のスターグッズを購入することはすべて恥ずかしい、と思わなくてはおかしい。

 でもさ。
 べつに、恥ずかしくないの。まっつ以外の人のグッズなら。

 頼まれモノの買い物は平気だもん。誰の写真やポスカを何枚買ってきて、と言われてもぜんぜん恥ずかしくないわ。

 アニメの絵のついたグッズを買うのは大人として恥ずかしい、ということなら、すべてのアニメグッズを恥ずかしいと思うのがふつーだろう。
 タカラヅカスターの写真グッズを買うのが恥ずかしいというなら、すべてのジェンヌ写真が恥ずかしいもんだろう。
 特定の人のグッズだけ恥ずかしいというのは、判断基準が「大人だから」ではないということになる。

 わかっている。
 贔屓だから恥ずかしい。
 なんとも思ってないとか、好きとはいっても特別というほどでもない、ふつーに好き程度の人のグッズを買うのは、ちっとも恥ずかしくない。

 何故だ。

 まっつだと思うと、恥ずかしいの。「きゃあ〜〜っっ☆」なキモチになるの。
 レジカウンターで、店のおねーさんに、「未涼亜希さんのブックマークを1枚ください」なんて、言えないよおっ。

 だから、舞台写真とか、注文番号で店のおねーさんに商品を出してもらう方式、キライなの。
 まっつ写真が欲しくて、「えーと、401と402と403ね」と思って注文用紙にその番号を記入する。それをレジでおねーさんに渡す。
 するとおねーさんは番号を見て、奥の引き出しから該当番号の写真を出してきて、わたし見せる。
「こちらのお写真で、まちがいありませんか?」

 うわあぁぁあんっ。
 見せるなよ、確認するなよっ。まっつの写真ばっかぞろりと見せるなよぉーっ。

 逃げ帰りたくなるだろおっ?!
 内心心臓ばくばくなのに、平静を装って「はい」と答え、会計を済ませる。
 あああ、もー、大嫌いだ、この方式!!

 商品は、すべて陳列しろ。そして、客が勝手に手に取り、レジへ持っていくよーにしろ。
 そーでなきゃ恥ずかしくて買えない人だっているんだよぉ。

 なんつーかさー。
 勇気を振り絞って、好きなアイドルの水着写真集を買う少年のキモチ……?
 店内の他の客の様子を伺いながら目当ての水着ちゃんを1冊手に取り、ダッシュでレジへ行って会計してもらう、よーな恥ずかしさ。やましいことはナニもない、ただ好きなだけなのに……何故か、いたたまれないほど恥ずかしい。
 ふつーに買うのでも勇気なのに。
 注文書に書名を書かされ、レジのおねーさんに「こちらの写真集でよろしいですか」と水着でにっこり表紙を前に確認させられちゃったりしたら、もお……。二度とこの店には来られない、つーぐらい恥ずかしいわな。
 そのうえ。
 レジで「****ちゃんの『****』っていう写真集を1冊下さい」って言わないと購入できない店だったりしたら……「はい、****の『****』ですね。こちらでよろしいですか」(復唱。そのうえ現物を掲示して確認)だったりしたら……その店、絶対売り上げ落ちるって。

 あああ。
 好きの度合いが大きくなると、それを対外的に示すことになる「グッズを購入する」という行為が恥ずかしすぎるの。

 みんなは平気なのかなぁ。

 好きの度合いが高くても、たとえばゆーひくんや水しぇんや、寿美礼サマのグッズは平気。
 だって彼らは「こんなに素晴らしい人を好きで、グッズが欲しくても当たり前のこと」とか、思っちゃうしなー……。
 寿美礼サマの写真を山ほど持ってレジに並んでいる人とか見ても、「うんうん、そうよね、寿美礼サマの写真は全部欲しくて当然よね」とか思っちゃうしな。ゆーひくんでも水くんでも、「こんなに美しいんだから、欲しくて当然よね」とか思うし。

 でももし、まっつ写真を山ほど購入している人を見かけたら、びびるだろうなぁ……何故まっつ?! って。
 いやその、まっつは素敵ですよ、もちろんそうですよ、まっつを悪くとか下にとか思っているわけでは絶対なくて、まっつを素敵だと思って好きだと思って購入する人がいて当然で、だってわたしがそうなんだし、世界にはまっつファンがたくさんいて当然で、でも、えっと……。
 ああダメだ、他人が購入しているのでも、わたしが恥ずかしくなる〜〜。
 何故だ〜〜。

 「好き」という、ココロのやわらかい部分が剥き出しになってしまうため、触っただけ、擦れただけでも、痛むのかもしれない。

 グッズ自体ダイスキで、部屋に飾ったり写真を持ち歩いたりという、イタい行為は平気なくせにね。
 何故か、グッズを買うのは恥ずかしい……。

 他の誰のグッズでも平気なのに、いちばんの贔屓だけは、恥ずかしくて買えない。買いにくい。
 これは、特殊なことなんだろうか。こんな人、めったにいないんだろうか?

「汐美真帆さんのグッズを買うのは恥ずかしくても、未涼亜希さんのを買うのは恥ずかしくない」
「彩吹真央さんのグッズを買うのは恥ずかしくても、未涼亜希さんのを買うのは恥ずかしくない」

 ……友人2名が、賛同してくれました。
 ええ、ふたりとも贔屓グッズは恥ずかしくて買えないけど、まっつ程度なら平気だって!
 賛同はうれしいが、べつにふたりとも、買うのが恥ずかしいくらい、まっつを好きになってくれていいのよ? ねえっ?!


 なにしろわたしは、グッズ好き。
 非売品とか限定とか言われると、欲しくて仕方なくなる物欲まみれの小市民。
 そして今、わたしが欲しくて仕方ないモノ、どーやって入手するかアタマを抱えているモノ……それは。

 『非売品写真集「2008 Takarazuka Calendar Another Shots」(仮称)』だ。

 内容は、「来年の宝塚スターカレンダー、宝塚卓上カレンダーに登場する生徒のカレンダー未掲載写真を集める。B5判でオールカラー、48ページの予定。一般には販売しないプレミアム写真集」(4月16日ENAKより)。

 よーするに、来年のカレンダーの、別アングル写真集。『「宝塚本を集めよう」キャンペーン』の景品。

 ええもちろん、まっつ目当てです。

 まっつだけぢゃなく、もちろん水くんやゆーひくんも目当てではあるんだが。
 劇団が山ほどグッズを発売してくれる、メディアにもばんばん登場する人たちとは、切実度がチガウ。

 まっつ写真がこの世の中に掲載されることなんて、1年に何回あるよ?

 すみっこに写り込んでいるのではなく、ちゃんとひとりでポーズ撮ってプロカメラマンに撮影してもらうことって。
 『歌劇』に2回くらい? 『GRAPH』は1回あるかどうかくらい?
 よくわかんねーけど、レアだよね? 貴重だよね?

 まっつの写真が載る写真集なら、絶対欲しい。
 1年に何枚も存在しない、貴重な貴重な1枚なのだから。

 この企画が最初に発表されたとき、もちろんわたしのグッズスキーはぁとがときめいた。
 入手すべく、努力を開始すべきだと思った。

 入手方法は、1年間に阪急コミュニケーションズ発行予定のヅカ書籍、35冊中、31冊を買うこと。
 必須なのが『宝塚おとめ 2007年度版』『TAKARAZUKA REVUE 2007』の2冊。あと、『歌劇』12冊、『GRAPH』12冊、『ル・サンク』8冊、『2007年 宝塚Satge Album』から好きなモノを29冊選ぶ。

 ……すげー殿様商売だなヲイ。31冊はすごすぎないか? と、思うが仕方ない。
 『宝塚おとめ 2007年度版』『TAKARAZUKA REVUE 2007』は購入したし、『ル・サンク』もぼちぼち買っている。
 だが、肝心の『歌劇』と『GRAPH』を買う踏ん切りがつかなかった。

 だって。
 大きな問題があったんだ。

 来年のカレンダーに、まっつは掲載されるの?

 ……わかんないじゃん? 寿美礼サマと同時なら、来年はいないわけだよ?
 まっつ写真目当てに、読みもしない雑誌を毎月2冊買い続け、その行為がすべて無駄になってしまったら?
 ダメージでかすぎ。

 つーことでわたしは、このキャンペーンに参加できずにおりました。はい。

 8月7日、集合日。まっつが来年もとりあえず在団していることがわかり、非売品写真集に卓上カレンダーの別ショットが載るだろうことがわかった。
 や、カレンダーは1度掲載されたら、在団している限りは載り続けるだろうという、前提の元で。
 そのあと正式に8月23日、カレンダー掲載メンバー発表。
 まっつは無事に「卓上カレンダーに載る」=「非売品写真集に写真が載る」ことがわかった。

 4月に発売される関連書籍からスタートしていたキャンペーンだ。
 9月になってから、参加可能なのか? ヲイ。

 出遅れた感に充ち満ちている。

 や、友人たちの厚意にすがろうと画策してはおりますが……ふふふ。

 非売品写真集ってどんなもんなんだろーねぇ。
 B5判でオールカラー、48ページ……ひとり1ページだよねえ?
 スターカレンダー16人、卓上カレンダー26人……。頼みますよ、まっつをB5サイズでひとり写りで拝ませてくださいよ。
 ちゃちい冊子なのかねえ、やっぱ。タダでくれるもんなんてねぇ。たとえ31冊分の応募券が必要だとしても。あの劇団のやることだからなー……遠い目。

 それでも、まっつまっつなわたしには、十分なニンジンですよ。走りますよ、ええ。

 卓上カレンダーのまっつが素敵でありますように。

 そして。

 非売品写真集のまっつもまた、とーっても素敵でありますように!

 
 まっつまっつまっつ。


 さて、本日はブックマーク発売日。

 ポケットカレンダーといい、ブックマークといい、「売り切れご免、再販無し」の安価写真系グッズは瞬発力勝負。
 発売日にキャトレへ行かなければ、全種類販売しているところは見ることすらできない。大抵発売当日から売り切れるものが出るんだから。

 映画の日の土曜日だ、映画を見るついでにキャトレへ寄るのも悪くない。
 そう思ったけれど……。

 まだ夏休みだしな、ガキども……いやその、お子さま方がたくさんはびこっていて、梅田がどれほど不快な状況になっているか、想像するとうんざりしたので、あきらめてしまった。
 もう若くないから……。体力気力ともに衰えていてな……よぼよぼ。

 発売日に無理して行かなくても、大丈夫、まっつは売り切れないよ。(いい笑顔)

 ええついに、まっつが、ブクマメンバー入りしましたっ。

 2年前の2005-10-27の日記に、ブクマのこといろいろ書いてますよわたし。ははは、そのときにまっつのブクマが出たら!とゆーてるんですねー。でもってあのときは、「出るわけないよねー(笑)」なんてキモチ半分だったりしたんですけどねー。
 いやあ、まっつブクマが発売される日が来るなんて、すばらしいわー、ありえないわー。

 ブクマの絵柄はネットで確認できる。
 2年前に発売された最初のブクマは悪趣味さに目眩がするほどのヅカらしいダサダサコラージュのひでーものだったが、去年から写真ひとつに紗をかけたよーな処理をほどこし、十分きれーなものになっていた。

 今年のブクマも、みんなきれーだ。いい写真を使っている。
 『エリザベート』画像をグッズ化するわけにいかないのか、雪組だけ前回の本公演(の、本編内)写真を一切使っていないのがさみしい。トート@水しぇん写真が欲しかったなー。
 キャトレのサイトを必死で眺めながら、誰のブクマを購入するか、本気で悩む。だって1枚500円もするんだよ? びんぼー人には痛い出費だ。グッズを買いすぎてチケットが買えなくなったら本末転倒。グッズに使っていい金額は、チケット代以下と自制している。……もともとグッズスキーなので、際限がなくなるんだもんよ。

 ゆーひくんと水くんは、デフォルト。
 このふたりの売り切り写真系グッズは全部買う。わたしは彼らのビジュアルが大好きなのだ。
 加えて、トド様は惰性っちゅーか「継続することに意義がある」って感じに大昔から買い続けている。まあ、今年のポケカレは最悪凶悪『オクラホマ!』だったので購入できなかったけれど、それ以外は全部買ってきてるしな。今回のブクマはとてもトド様らしい色男写真だ、コレはうれしい。買いだ買い。
 あと、ここ数年はオサ様も全買いになってきてるんだよなー……。オサ様ラヴ度が上がりっぱなしで、ナニを見てもときめいてしまう。あああ、このブクマのオサ様もかっこいー。買わなければっ。

 これにまっつを加えて、すでに5枚。2500円……立ち見料金だ。
 グッズ上限は、チケット代まで。いつかお金持ちになったら欲望のままになんでも買っていいけど、びんぼーなんだから自制しなければっ。
 ……ああでも、座席チケット料金を上限とすれば、あと2枚は買えるなー、誰にしよ〜。

 って。
 あきまへんがなっ。

 やはり、発売日からキャトレへ駆けつけるのはやめておこう。実物を見たら、スイッチ入っちゃって、本能のままに手に取ってしまうかもしれん……。

 わたしが次にキャトレに行くことができるのは、日生へ『Kean』を観に行くとき。
 そのときまで、残ってくれてるかなぁ。去年は出遅れちゃって、ゆーひくんしか買えなかったんだよなあ。ビジュアル王のゆーひくんはそりゃあ発売枚数がチガウだろうから、出遅れた客の手にも入る可能性が高いけど……退団が決まっているオサ様とか、どれだけ発売枚数が多くても早々になくなっちゃうかも?
 先に買いに行くべきか……ううむ。

 まぁ、まっつは残ってるだろうから、いいか。あと、トド様も楽勝だよな、毎年の感じからして。

 思いは千々に乱れ、てゆーか悩みがこんなことってのは、大人としてどうなのよ、という話ですわな。いやあ、日本も緑野こあらも平和ですな。平和ってすばらしい。世界が平和でありますように、みんながしあわせでありますように。

 せっかくの映画の日の土曜日。結局チャリンコに乗って近所のシネコンへ。
 同じ化粧をした舞台のタカラジェンヌの見分けが付くのに、イマドキの女子高生の顔の見分けが付かないつーのは、どうなのよ……と肩を落とした『伝染歌』。どれがヒロインか、その親友か、さっぱりわからん……。女子高生ばかり一度に10人単位で出てくるよ……ありえねーよ……。
 伊勢谷友介はキレた役だとすげーかっこいー。
 安いホラーでカケラもこわくない(つーかあちこち萎えて笑える)が、伊勢谷の美貌と松田龍平のうさんくささ、矢島健一(実は相当好き)のヘタレ受くささだけで1000円の価値アリ(笑)。


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