ひとりで梅田に行くのが寂しいので、Be-Puちゃんとクリスティーナさんをナンパした。
 つか、ふたりとも即OKかい。デートの予定はないのか、独身女たち。
 わーい、会えてうれしいぞー。

 梅田に行く用事は、みっつ。

 1.予約してあるゆーひくんのパーソナルブックの引き取り。
 2.財布を落としたときに、止めてしまったクレカの再発行手続き。
 3.名古屋までの近鉄特急のチケット購入。

 なんやかんやで、ふと気がつくと、「わかった、3人分の特急券買っておくよ」なことになっていてね。
 え? なんでわたしが、代表でわざわざ買いに行くことになってるんだ? 何時の電車がいいの? わたしが勝手に決めていいの? てゆーか、3人分立て替えとなると、いくらだ?

 あまりモノを考えずに生きているので、気がつくと「アレ?」なことになっていたりする。

 ひとりで買い物するのはかまわないけど、なんかさみしいぞー。だって今日、kineさんたちは東京でたのしく『タック』を観ているはずだし。
 わたしひとり大阪なんて、つまんなーい。わたしだって遊ぶぞー。

 とゆーことで、突然思いついて、Be-Puちゃんとクリスティーナさんを呼ぶ。

 Be-Puちゃんは来るよね? 一緒に名古屋に行くんだから。名古屋行きのチケット、買うのつきあってくれてもいいよね。
 クリスティーナさんはこの間、今失業中でヒマだって言ってたよね?

 お久しぶり、Be-Puちゃん、星組ムラ楽の夜、kineさんちの深夜ドライブ以来かな。
 お久しぶり、クリスティーナさん、ケロちゃん交通安全イベントのお誘いを断ってくれたから、会うのほんと何年かぶりだよね(笑)。

 あきれるほど変わらないわたしたち。
 出会ってから10年以上だよ、信じられない。

 
 てなことは置いておいて。

 今ごろになって、とても『あぐり』の、エイスケ×燐太郎に萌えています。

 今ごろ何故っ?!
 だってエイスケすでに死んでるよ?!@再放送。

 アンテナ不備以来、BSの録画ができなくなって、Be-Puちゃんに代わりに録画してもらってたんだもん。
 でもって、Be-Puちゃんに会うの、3ヶ月ぶりだったんだもん。
 つまり、3ヶ月分の『あぐり』を今、見ているところなのよ。

 まだエイスケと燐太郎、健在なのよ! ふたりとも若いのよ!!

 エイスケさんが素敵なのはわかりきったことだったけど、なんなのよ燐太郎のあの素晴らしい耽美オーラはっ(笑)。
 「美青年」と首からプラカードぶらさげているよーな役作りはっ(笑)。

 野村ボビ子のくせにっ(笑)。

 −注− 俳優・野村宏伸のことを、わたしとその周囲の人たちは「野村ボビ子」と呼んできました。彼が『ボビーに首ったけ』(1985年)という映画に出演したことと、そのいかにもカマくさいナヨナヨした風情ゆえに、「ボビ子」と呼んで愛でていました。

 エイスケ@野村萬斎は、言わずとしれた型破りな天才。傍若無人、前人未踏なとらえどころのない飄々とした味のある色男。
 天才ゆえのぶっ壊れ方をした男で、常識も日本語も通じない。だけどとにかく、どこまでも魅力的な男。

 そんなエイスケの横にいる、線の細い芸術家肌の美青年が、辻村燐太郎@野村宏伸。
 なにもかもがエイスケと正反対。
 真面目で礼儀正しく、物腰も柔らかい常識人。好青年の見本みたいな、出来過ぎたにーちゃん。
 欠点のなさが異世界感を醸しだしているほどに、なにもかも持ち合わせた「人格者」の燐太郎青年だが、変人のエイスケを手放しで理解しているあたり、ただの「いい人」ではありえない。
 やっぱこいつも、十分変だ。と思わせるほどには、エイスケの宇宙人っぷりに、なんなくついていっている。

 このエイスケと燐太郎の関係が、ツボで。

 長年連れ添った夫婦みたいに、肌に馴染んでいる関係が……やらしいよな?

 とーぜんこいつら、デキてるよな?
 肉体関係アリまくりだよな?
 そんなもん、共に十代の頃に経験済みだよな?
 そんなの「日常」であり、「前提」であるから、今さら目新しくもなんともない、そーゆー関係だよな?

 エイスケは「NHKの朝ドラのヒロインの相手役が、コレでいいの?」と見ている方がびびるくらい、女関係乱れきってる男だ。
 愛人がいてあたりまえ。複数の女たちを並列にはべらし、愛するのが「ふつー」な男。
 なにしろ天才で宇宙人な感覚の男だから、人間の常識は通用しない。
 こんな男が、男に手を出してないはずがないよな?

 燐太郎も一見まともで、実はじわじわと変な男だから。
 エイスケに手を出されても、すんなり受け入れそうだ。

 エイスケにあぐりという妻がいることも平気だし、あぐりのことも気に入って、親しくしちゃうのも平気だろう、燐太郎。
 そのへんの倫理観は、エイスケ並にコワレていそうだ。

 エイスケの妻はあぐり。親友は燐太郎。
 もしくは、女の妻はあぐり、男の妻は燐太郎。
 エイスケはオトコマエだから、男女ひとりずつの「妻」を持つの。
 それが「ふつー」って感じの、イカシた男。

 てことで、エイスケ×燐太郎。

 どーってことない日常会話しながら、エイスケがふつーに燐太郎押し倒して服脱がせてヨシ。
 燐太郎もその、どーってことない日常会話しながら、ふつーにエイスケの相手をしちゃってヨシ。
 なにしろ「日常」だから。
 ふたりにとっては、文学論のついでとか、お茶を飲むとかと同じ温度の行為だから。

 そこにうっかり森さん@森本レオが飛び込んできたりな。
 でもふたりともべつにあわてないし、森さんもあわてない。布団の中のふたり相手に、これまたふつーに会話を続けちゃったり。

 周囲もみんな知ってて、
「まあ、芸術家にはよくあることなのよね」
 と世津子@草笛光子が、悩むあぐりにしみじみと言ったりね。
 で、あぐりも「そーゆーもんなんだ」とあっさり納得したりな。

 いいなあ、この「大正ロマン」という名のファンタジー。
 日本がもっとも「異世界」だった時代。

 うさんくさいもの、美しいもの、妖しいもの、ありえないもの……なにもかもを、内包する力。

 そのなかにあるんだ。
 エイスケというファンタジー、そして、『あぐり』という作品のファンタジー。

 その一環に、たしかにあるぞ。
 エイスケ×燐太郎。

 わくわく。


 「タック 立樹遥」で検索してきた人が、もれなく1月6日の日記にしか辿り着かない現実に、ちとヘコみつつ。

 『タック』の感想は、公演初日の日付の日記ですから!
 当然でしょう、ファンなんだから! 初日ですよ、初日!!
 1月6日なんて、ぜんぜん関係ない日をわざわざ読みに来なくてもいいじゃないですかっ。クリックする前に気づこうよ。

 せっかく「タック 立樹遥」でやって来てくれた人が目にするのが、「しいちゃん受語り」の1月6日日記だなんて……涙。

 
 まあそれはともかく、現在の緑野姉弟の共通言語はもちろん『バイオハザード4』ですよ!!

 1月27日、友人のリンコさんとごはん食べてお茶して夜中に帰宅したら、弟がキューブとソフト抱えて待ってましたよ。

 『バイオハザード』シリーズ最新作!
 やっぱり発売日に買ってきたか、弟よ。

 つーことで、姉弟そろってプレイ開始。
 以来、ふたりの共通言語は『バイオ4』。その話ばっかしてる。

 えっ、『ドラクエ8』ですか?

 どうも、緑野姉弟は『ドラクエ』にはあまり向いていないらしい。
 発売日から世間の波に乗ってプレイしはじめたはいいが、ちっとも共通言語にならない。
 話してもたのしくないし、大体、話したいと思わないんだ。
 進捗状況を報告し合うくらいで、盛り上がらないったら。

 『ドラクエ』が売れる現代社会を溜息まじりに語ったりはしたか。『ポケモン』が売れる現代社会を溜息まじりに語るよーに。

 『ドラクエ』は、わたしが『サイレントヒル4』を買ってきたその日に息絶えた。

 姉弟そろって『ドラクエ』投げ出し、『静岡4』に夢中(笑)。

 『バイオ4』ははじめたばかりなんで、話はまた今度。
 今日は『サイレントヒル4』の話。

 
 おもしろかったよ、『静岡4』。

 世間の評価は知らない。
 わたしたち姉弟の感想。

 今までの『静岡』シリーズの中で、いちばんおもしろかった。

 どれくらいおもしろいかって言ったら、『静岡』じゃなくてもいいくらいだ(笑)。

 つまり、別モノだったわけだな。ははは。
 『静岡4』というより、『静岡・番外編』って感じだった。

 
 『静岡』シリーズは、誠意のないゲームだ。
 制作姿勢がね。なんか、そんな感じ。
 やりたいことだけ、たのしいことだけてきとーにやって、しんどいことめんどーなことは、「ホラーなんだから、いいでしょ」で全部カタを着けている感じ。
 世界観を愛しているから、ファンであることはたしかだけど、投げやりな風味に引っかかるものがあった。ずっと。

 ところが『4』ではじめて、「やりたいこと、たのしいこと」を真面目に表現しているよう思えた。
 演出がいいのよー。現実と非現実の肌触りがいいのー。

 好みに合った、ってことだと思う。

 『静岡4』のサブタイトルは、『THE ROOM』。
 いまいち情緒に欠ける男ヘンリー(主人公。ちょい若めのおっさん)は、アパートの自分の部屋から出られなくなっていた。
 玄関ドアはありえねーくらい完璧に板や錠前で封鎖され、なにをしても外には出られないし、聞こえないらしい。
 窓の外にはふつーの現実社会が平和に営まれているのが見えるし、玄関ドアののぞき窓からは、廊下の様子が見える。
 部屋の外は、日常。あたりまえの世界。
 しかしヘンリーの部屋の中だけが、異世界と陸続きになってしまったんだ……。

 部屋の外にあったりまえにひろがっている「ふつーの世界」と、ヘンリーの対峙している「とんでもねー世界」の対比が気持ちいい。
 理不尽で、こわくて。

 「日常」に対しての「非日常」であるはずのヘンリーの「部屋」が、悪夢世界と行き来することによって、プレイヤーにとっての「安全地帯」という位置づけになるのがいい。
 「部屋」に帰るとほっとする。
 ああ、安全な我が家に帰ってきた。
 母の子宮へ還ってきた。
 そんな、安心感。

 そんなはずないのにね。
 ヘンリーは「部屋」に閉じこめられていて、すべての怪異の源はこの「部屋」であるはずなのに。
 意識の逆転。
 問題の根源を、取り違えてしまう。

 ところがゲームが進むにつれ、安全地帯であった、母の子宮であったはずの「部屋」が闇に侵されはじめる。
 「部屋」はいちばんこわい場所になる……。

 はじめわたしは、「なんでサブタイトル『ROOM』なのかなあ。『HOLE』の方がいいんじゃあ?」と思っていた。
 安全な「部屋」と危険な悪夢界をつなぐのが「穴」だから。
 部屋を浸食していく「穴」の存在は不気味で、印象が強い。

 でも、中盤を過ぎるころには納得したよ。
 たしかにこのゲームは、『ROOM』だ。『ROOM』というタイトルでなければならない。
 と、心から思った。

 
 あー、それにしても、「部屋」の設定が好きだ……。アイディア一本勝ちだよね。この「部屋」に惚れられるかどうかで、評価が分かれそうだ(笑)。

 ハリーは視野針の先男だったし、ジェイムズは自己中迷惑男だったし、マリアはキ*ガイだった。名前もう忘れちゃった『3』のヒロインは、人の話をまったく聞かない、ハリーそっくりの娘だったし。(あれ? わたし、『3』プレイしたこと、日記に書いたっけ? 書いてないよーな気もする。おもしろくなかったから、書くまでもないっちゅーか)
 ろくな主人公がいない『静岡』シリーズ。

 『4』の主人公ヘンリーは、情緒ナッシング男でした。

 笑えるほど、無味無臭。乾ききった干しわかめのよーな男。
 プレイヤーの視点だからニュートラルなキャラにしようとしたのかもしれないが、ちゃんと顔と名前があって動いて喋ってるんだから、人格ナシはまずいよ。ありえないよ。
 とんでもねーことに巻き込まれているのに、あの冷静さ。……てゆーか、無感動さ。
 笑えるって。

 アイテム所持の不親切さや、同じマップ使い回しなんか、ぜんぜん平気。
 『クーロンズ・ゲート』や『SIREN』に比べれば、そんなの不親切な部類に入らないって!(笑)

 ストーリーがどうこうよりも、やはり「部屋」だなあ。
 あの「異世界/現実」のぞわりとした肌触りを味わえただけで、わたしには意味のある一本だった。

 ヘンリーの無機質っぷりも、かえっていろいろ想像できて萌えだしなー。ふっふっふっ。

 忘れられない1本になりそうだ。

    
 えー、逸翁デーはわたし、大枚はたいて、SS席にいました。
 大枚ってのはそりゃもちろん、1万円ですよ。大金ですよ、わたしにとって。
 逸翁デーは苦手なので、この催しの日を選んだわけではなくて、たんに掲示板でGETしたのが、たまたま逸翁デーだったのだわ。……わたしゃ、ゲストが誰かも知らなかったよ……。

 
 年が明けてからこっち、後方席で慎ましく観劇していたので知らなかったっす。

 銀橋が、遠い!!

 目の当たりにして、びっくりした。
 思わず休憩時間に、銀橋を撫でにいってしまったよ。あまりに遠いので。

 A席でのんびり観劇していたときは、気づかなかったんだ。どのみち舞台も銀橋も遠いから、多少の変化は実感できない。

 しかし1列目に坐って、なにが起こったのかが、ようやくわかった。

 1列目なのに、最前列じゃない!!

 そりゃ知ってたけど。
 0列ができたってことは。
 銀橋のカーブがゆるやかになったってことは。

 でもあたしゃのーみそ少ないから、自分がその立場になってみないと、わからなかったよ。

 こんなに銀橋が遠くなっているなんて。

 そして1列目が、舞台の見えない席だなんて。

 ……0列目は、あとから無理矢理つくった席です。今までなかった場所に、作った席なんです。
 0列目と1列目は、段差ナシなんですよ!!
 オーマイガッ!! 前が見えねーよ!!

 1万円の価値ないよ、1列目!
 お約束だけど、わたしの前の席の人、他の人より座高高いよ! 0列目に坐っているのになんでそんなに、しょっちゅう首をふらふら動かすの? わたしの視界を奪うのが目的?!
 ……てな、ちと哀しい観劇でした。ははは。

 1列目のSS席に坐るくらいなら、おとなしくいつものタケノコ1列目に坐ってます。その方がよっぽど値打ちあるわー。

 でもさ、そのわたしの大好きなタケノコ席の銀橋の遠さは、泣けてくるほどよ……。
 今までタケノコ1列に坐ったときは、銀橋が目の前、足で蹴れそうなところにあったのに。銀橋を通るスターさんは、手を伸ばせば触れそうだったのに。

 今じゃ、座席ひとつ分は意味のない空間がひろがってます……。
 遠い……遠すぎる……。
 タケノコ1列目は、前に座席がないだけで、気分としては2列目だな。

 劇団は値上げをしたい一心で、最前列をセンターとサブの0列目だけにし、その後ろの1列目を全滅させ、タケノコ1列目を2列目にまで価値を落としたのね。
 客のことはなにも考えてないんやな……溜息。

 
 それでもまあ、腐っても1列目。
 舞台は近いんで、目線はいろいろGETできます。

 今回、いちばん目線の大安売りをしてくれたのは、タニちゃんでした……てゆーか、キタよ、ウインクがっ。

 キザりまくったガイ様が、目線絨毯爆撃して、ノリノリで通ってゆかれました。

 …………すまん…………ウインク来るなり、爆笑しそうになって、あわてて口押さえた…………。

 どこに行くんだ、タニちゃん。
 かわいい顔でキザりまくって、口元ゆがめたひょっとこ顔で、どこにいってしまうんだ……かわいいぢゃないかっ。ハァハァ。

 
 しかし、どんなに目線もらっても、ウインクいただけても、タニちゃんにはドキドキしないのだ……。わし、ガキに興味ないけん。
 アイドルよりおっさんが好きなんや。因果な好みじゃのう。

 と、よくわかんねー方言で喋ってしまうくらい、もったいないことですが、ほんとにタニちゃんはサービス満点でした。
 ありがとータニちゃん。

 
 でもわたし的には。
 タニちゃんのウインクよりも、取り乱してしまうことが。

 
 どうしよう、暁郷にウインクされちゃったよーっ。

 
 どどどうしよう。どきどきどき。

 暁郷ですよ、暁郷。
 あのGOですよ!!

 しかもオカマのミンキーモモ@ロケット姿ですよ!!

 あの顔であの体格で、あの衣装着てカツラかぶって、仁王立ちしてるんですよ。いや、本人は気取ってポーズ取ってるのかもしれないが、客観的にいってソレ、仁王立ちだから! ケンカ売ってるから! てなあのおそろしーGOちゃんがですよ。
 ばちこーん☆ とウインク、トバしてくれたんですよ。

 はうッ!! てなもんでわたし、胸押さえて椅子に沈みましたよ。

 はぁはぁ……寿命縮まったかも……。

 そりゃね、ロケットがはじまるときからずーっと、単独でGOだけ見てましたけどね。
 タニちゃんが真ん中でなにかやってるけど一切浮気せず、視線はGO一筋!! 周囲の客席とひとりだけ顔の向きがちがっても気にしない! わたしはGOを見る!!
 てなふーに、腹くくってGOを見つめていたんですが。

 まさか、ウインクくれるとはな……いい漢だな、GO。

 ガキに興味のないこのわたし、迷わずGOですわ!!
 えっ、GOの学年ですか? 知ってますよもちろん。文化祭だって観に行ったんですから。
 でもGOはわたしのなかで「おやぢ」認定ですから。
 ロケットでミンキーモモやって脚上げてても、おやぢ。
 このままどうか、わたし好みのおやぢに育ってくださいよ。いや、まかりまちがって路線に乗ってくれてもぜんぜんいいけど!

 
 あと、くみちょの髪に飾ってあるのは、花ではなくて鳥でした。
 最初に見たとき、「げっ、薔薇の蕾を髪に飾ってる。蕾ってのがまたイタイな」と思ってたんだけど。
 小鳥さんか……ははは。遠い目。

 思うんだけど、クシダ@まやさんとヨンヨンだっけヤンヤンだっけおぼえてねーや@くみちょの役って、いらないよねえ?

 あのふたりが狂言回ししても、誰もうれしくないやん。宙組の現在にも未来にも、貢献しないやん。
 どうせなら、あひくんとともちんに、スパン燕尾でも着せて狂言回しやらせろよー。新公主演経験者なら、あれぐらいできるって。で、ふつーにショーの場面にも参加させて。
 そうでもしないと、次代のスターのこと、観客は知らないままだよー。
 まやさんとくみちょが美少年・美少女つれて歩いても、所詮子どもは子どもだし。ちゃんと二枚目男役育てなきゃダメだよー。

 
 逸翁デーという催しは、好きではないです、はい。
 逸翁のスライド上映も勘弁して欲しいし、OGの下手なお喋りも苦手です。
 とくに今回のゲストの方は、お喋りが下手で聞いていてつらかった……。主語と目的語が正しく機能しない、話しているウチに論点が迷子になる、主観だけの話をえんえんするのは勘弁してくれ……。
 歌はいいんだけどな。そのお喋りが下手な方も、歌になると俄然かっこよかった。おばーさまなんだけど。

 そしてなにより、逸翁賛歌が苦手。
 はじめて聞いたときは、どこの宗教?? 教祖様を讃える歌? と、怖じ気づいたもんだったよ。
 組子のみなさん、楽譜を見ながら歌うのでろくに顔見えないしな。
 不思議と、水くんがいちばん顔を上げて歌っていた。

 救いは、カナメさんの歌。
 耳が洗われるよーでした。


 わたしは、じじい好きです。
 ガキとじじいなら、断然じじいにときめきます。

 それは、わたしがじーちゃん子だということに端を発している気がします。

 わたしは祖父母と一緒に暮らしていたので、生まれたときから身近にじじいがいたのですよ。

 でもって、うちのおじーちゃん。

 みんなが認める美老人だったのですよ!!

 渋い系のじーさまじゃございません。
 「かわいい系」です。
 近所でも病院でも、アイドルさ。
「かわいいおじいちゃん!!」
 って。
 見知らぬ人に声を掛けられるほどの、かわいらしさ。

 外見の話です。

 うちのじーちゃんは、無口で偏屈だったので、性格はまったくかわいくなかった。
 だから純然たる「外見」のみで、世間様から「かわいい!」と評判。

 そもそもうちのじーちゃんは昔から、顔以外に取り柄のない人だった。
 金もないし、甲斐性もない。堪え性のない、ひねくれ者。無口で温厚だが、そりゃつまり、非社交的な暗い奴だったわけだな。
 ただ、顔だけはよかった。

 以前、古いモノクロ写真を見てわたしは素で言ったことがある。

「この女の人、誰?」

 写真に写っているのは、黒いスーツを着た知的な眼鏡美人。女教師、って風情。

「なに言ってるの、それ、おじーちゃんの若いころでしょうが」

 はいー?
 ここここれ、おじーちゃん?! てかコレ男かよっ?!
 確かにパンツスーツ着てるけどっ。華奢な美人さんにしか見えませんぞ?!

 わたしが生まれたときから、おじーちゃんはすでに「おじーちゃん」だったので、若いころなんぞ想像したこともなかったけど。
 彼はほんとーに、美形だったよーです。

 「ぼくのおじいちゃんのかお」という単語でイメージ検索してください。
 同名の絵本の表紙を見ることができます。
 この俳優さんが、うちのおじーちゃんにそっくり!(笑) 
 わたしはこの俳優さんを存じ上げないのですが、この絵本を書店で見かけたときは、衝動買いしましたね。「うわっ、うちのじーちゃんだ!」と。
 ただし、うちのじーちゃんはこの人よりもはるかにアゴが出ています(笑)。

 絵本購入当時、まだ存命だった祖父に「似てるでしょ?」と見せたところ、彼はちらりと見ただけで、
「ワシには髪の毛がある」
 とひとこと言いました。

 そーいや、絵本のおじーさんは、見事にハゲてるわ……うちのじーちゃんは髪の毛ふさふさだった。
 でも、髪があろーがなかろーが、そんなもん「じじい」というカテゴリにおいてなんの重きも持たないとわたしは思っていたので、祖父のツッコミが意外でした。
 そうか……男にとって、髪のあるなしは、じじいになってなお重要なアイデンティティだったのね。

 うちのじーちゃんは細面で小顔の色白、髪も眉も濃く、目は大きくぱっちり二重、細く尖ったアゴの持ち主でした。おまけに小柄で華奢ときたもんだ。
 90歳を過ぎてなお、お目々はぱっちりぬいぐるみのよーでしたよ。

「おじーちゃんに似れば、アンタも美人だったろうにね」

 と、いろんな人から溜息をつかれながら、わたしは生きてきましたよ!!
 ええわたしゃ、カケラもじーちゃんに似てないもんよ。
 わたしは、おじーちゃんの最初の奥さんにそっくりです。若くして亡くなったそうなので、遺影でしか知らないけど、あまりにそっくりで泣けてくる……でかい丸い顔、細い目……平安時代なら美人だったかもしれない容姿……めそめそ。
 
 
 まあ、そんなこんなで。
 わたしはじーちゃん子で、じーちゃんと猫と一緒に、仲良く暮らしておりました。

 
 そう、そして。
 ここでよーやく、宙組公演『レヴュー伝説』の話になるのだ。

 しみじみ思ったの。

 わたし、水くんの「受け口」が好きだなあ、と。

 
 【こあらさんの豆知識!】
うけ‐ぐち【受(け)口】
1 物を受け入れるためにあけてある口。受け入れ口。「電球の―」
2 《「うけくち」とも》下あごが上あごより前に出ている口。
 「受」についているナニカだとか、「受」についてのナニカだとかではありません!!

−Yahoo!辞書 まんまコピペ!!(一部加筆!)−


 水くんの口元見てると、なんだか触りたくなる……。

 とゆーのもさー。

 水くんてば、うちのおじーちゃんに似ている!!

 特に横顔が。
 てゆーか、口元からアゴが。

 てゆーか。
 三日月なところが!


 MyじじLOVEな緑野の、ハートを直撃する造作。

 そうか、切れ長の細い目が好きなのはわたし個人の好みだけど、長い顔と尖ったアゴに惹かれるのは、じーちゃんLOVEだからなんだわ。
 口元が歪んだ人が好きなのも、うちのじーちゃんの受け口が好きだった発展系?

 三つ子の魂百までも。
 生まれて最初に出会った美形が、うちのじじいだった緑野の深層心理には、かなり根強くインプリンティングされているようです。

 水くんを見ると、ときめきます……ぽわわーん。

 
 『レヴュー伝説』は愉快なショーだけど、わたし的には不満。

 何故ならば、明るく愉快でロマンティックで、健康的なショーだから。

 エロくないんだもの、カケラも!!

 つまんねーよ。
 どきどきさせてくれよー。

 スポーツチームの演舞のよーに健康的なもんだから、色気が必殺技の水くんの魅力がかなり控えめになっている。
 ショーと役のコンセプトを理解しすぎているのか、水くんてば、どこを取っても満面の笑顔! 歯、見せすぎだよ、にーさん……。

 対照的なのが、タニちゃん。
 この子はなにをどうまちがったのか、キザりまくっている。
 対の位置で踊っていても、水くんはにっこにこの笑顔、タニちゃんはにこりともしないしかめっ面。

 えーと。
 あの、君たち、まちがってます。困惑。

 タニちゃんはせっかくのアイドル的持ち味を自分で殺し、似合わない「色気ポーズ」を取るのに必死。
 水くんはせっかくのセクシー持ち味を自分で殺し、似合わない「アイドルポーズ」を取るのに夢中。

 なんでこんなことになってるの……?

 もったいない。
 ただただ、もったいないす。

 既成概念をコワして新しい魅力を、という意気込みはわかるが、それとは別に柔軟性が必要だから。
 持ち味を否定して、全部が全部「新しい魅力開発」に挑んでも、スベるから。持ち味を否定する、ってのは、それまでの自分自身の否定でしょう? ベースは「自分自身」のまま、そこに新しい価値を付加していくべきよ。

 ……頼むよ、タニちゃん。キミは、キミのままでいいんだよ……自分で壊さないでくれよー。
 はっ。水くん語りのつもりが、結局はタニちゃんなのかっ。


 チェリさんは言いました。

「水くん、まりえったさんより色気が少なくなってましたね」

 真顔ですよ!
 真顔で言いますか、まりえったより下だと!!

 逸翁デーとやらの大劇場、芝居が終わったあとの幕間休憩のときの会話ですよ。

 芝居ですよ、芝居。
 通常のまりえったならともかく、今回の芝居のまりえったは、じじい役ですがな!
 そのじじいよりも、色気が少ないと?!!

 ……がっくり。

 否定できないあたり……ううう。

 
 われらが水しぇんの固有スキルは言わずもがな色気ですよ。
 彼の必殺技が、色気なんですよ。
 なのにその固有スキル、必殺技が、じじい以下だとなっ。

 あああ水くん……水くん、水くん、水くん……。(取り乱し、ただ名を呼び続けるの図)

 
 んじゃまた『ホテル ステラマリス』の話をしよう。
 えっ、水くんの話? なんですかソレ。今からするのは、お花様の話です。
 だって宙組と言えばお花様でしょう? にっこり。

 『ホテル ステラマリス』は、冗長かつ退屈なお話。いろいろまちがった作品なので、こればかりはどうしようもない。
 最初に観たときわたしは、「いつになったらオープニングが終わって、本編がはじまるんだろう?」と首を傾げていたもの、中盤を過ぎるまで。

 組子たちがいつも舞台上にたくさんいて、いつもなにかしらがちゃがちゃやっていて、それだけでわたしとしてはたのしい。
 七帆くんの顔はやはり好みなので眺めているとしあわせだし、いりすと暁郷を、珍獣を愛でるハートで眺めたおすのもたのしい。早霧や和などの美形で眼福にひたるもよし。目についてしょーがないカチャと真木薫、すずはるき(なぜかひらがな愛用)もハズせないよねえ。ああ、右京さんは癒し系だわ、いてくれるだけでいいの。みんながペアで踊っているなか、ひとりさみしいはっちゃんとか、ツボだわー。てゆーかメイド・コスのいづみちゃんは信じられないくらいかわいいんですけど、どうなのよ?! とかな。

 ホテル従業員たちをぼーっと眺めているだけの時間が過ぎていく。

 そうなんだよね。
 この作品が退屈なのは、視点が存在しないせいもあるんだよね。

 誰を中心に物語を見ればいいのか、誰に感情移入すればいいのかわからない。

 ウィリアムやステイシーやアレンや、いろんなキャラクタは舞台に出ているのだけど、彼らの描き方が、モブの従業員たちと同じテンションなんだわ。
「プランB!」とか言って、みんなでわいわい踊っている、同じ重さと熱さしかないの。
 ウィリアムが主役らしいことはわかるけど、こんな彼には感情移入できそうにない。

 真ん中はいつもウィリアム、というだけの「ショー」だよなあ。
 ストーリーは感じられない。
 だから「物語」だと思って観ていると、退屈してしまう。

 しかもこのウィリアム、「設定」と「言動」が一致していないためにさらに感情移入不可能になっている。
 ステイシーに気があるの? えっ、ラヴラヴの恋人アリソン? でもやっぱりステイシーにいい顔してる……なにこいつ??

 そんなよくわかんねーウィリアム以外のキャラは、名前のある人たちから名もなき従業員まで、みーんな同じテンションの描き方。
 これで、どんな物語を紡ごうというんだ。盛り上がらないってば。

 まるで、ピントのずれたホームムービーを観ている感じ。
 ピンぼけだから、なにをやっているのか、今ひとつよくわからない。

 そうそして、このボケたスクリーンのピントが、一気に合う瞬間がある。

 輪郭のうすぼんやりしていた白っぽいスクリーンで、一気に画面が鮮明になり、色が輝き出す。

 素人のホームムービーが、まっとーに「物語」として機能しはじめる。

 それが、お花様の力だ。

 ステイシーが倒れ、泣き出すところ。

 今まで誰もが等しく脇役、モブシーンの連続でしかなかったのに、そこではじめて「ステイシーの物語」がはじまるんだ。

 誰が主役かわからない、ピントのボケた物語で、「そうか、この子に感情移入すればいいんだ」とわかる。

 てゆーか、もう。

 ステイシーが主役なんだとわかれば、そっからあとはたのしいぞ。

 傷ついて、思わず弱音・本音吐露して泣き出して、すがって泣いて、抱きついて泣いて。
 だけど男は、やさしいばかりで。
 彼女が求めるものは返してくれなくて。
 でもこのやさしさは、求めるものにつながっているかも? と思っていたら、「婚約者登場」だ。
 失恋のショックと独り相撲のみじめさと、なにもかも目の前で壊れ落ちていく絶望とで、ボロボロになって銀橋で独唱だ。

 気持ちいい……。
 「物語」ってのは、これくらい感情移入させて、気持ちを揺さぶってくれなきゃだわ。

 その他大勢がえんえん歌って踊っているだけじゃ、たのしめないわ。

 この冗長な物語を、実力で「恋愛物語」にしてしまう、お花様はすごい人だ。

 ステイシーっていうのは、リアルにかわいい子だよね。
 真面目で融通が利かなくて、仕事はできるけど生きることは不器用で。
 父親にも幼なじみで婚約者のアレンにも、仕事中は完璧に「仕事用の顔」しか見せないんだよね。
 なれ合いは一切なし。潔いというか、律儀過ぎる。
 ウィリアムに惹かれているのもわかるのに、「ですます調」を一切くずさず、距離を置いたまま。せっかく朝の浜辺でふたりっきり、愛称で呼ぶことにしたってのに、それでもまだ「ですます調」、しかも次の場面ではまた役職で呼んでいるし。
 なんでそー、不器用かな。
 有能なホテルウーマンなのに。

 そんな彼女が、アレンとふたりきりのときは豹変。
 甘えを含んだ若い女の子らしい喋り方。
 これが地だとすれば、「コンシェルジュ」としての彼女はどれほど無理をしているのだろう。
 もちろん、ホテルウーマンは彼女の天職であり、夢のための努力は苦労ではない。律儀なまでの規律正しさと真面目さは、彼女らしさの表れだろう。

 ふだんの幼さやかわいらしさと、ちとローテンションだが完璧なワーキングウーマンぶりと。

 この二面性は、ものすげえ萌えなんですが。

 かわいいよな、ステイシー。
 このかわいい女の子が、ウィリアムなんぞに振られてボロボロになって泣くのよー。もー。たまんないわー。

 目眩起こして倒れるくらい身も心もボロボロなのに、その原因であるアリソンに「ようこそステラマリスへ」って挨拶するのよー。
 その不器用な強さが好き。

 このときのステイシーの姿は、最後のアリソンのキスと関連していると思う。
 強く、美しい女たち。
 頭を上げ、背筋を伸ばして生きる女たち。

 
 『ホテル ステラマリス』の物語がはじまるのは、ステイシーが物語の中心に出てきたときからだ。
 散漫な空気を、一点絞り込む、吸引する、お花様の力。

 やはり、花總まりは、すばらしい役者だと思う。
 好き嫌いを超えて、観ている者を自分の側へ引き込む力を持つ。
 うーむ。


急ぎ連絡。

2005年1月24日 その他
 緑野こあら、財布落としました!!

 大あわてでカード止めたりなんだりしました。
 電話番号聞くために弟に電話したら、

「よく財布落とす人だな」

 と、溜息つかれてヘコみました。
 よく、ってアンタそんな。
 そーいや前にアンタと一緒にいたときも財布落として大騒ぎしたっけ?

 てゆーか弟よ、なんで標準語なの?!!
 「よー財布落とすやっちゃな」じゃなくて、なんで「よく財布落とす人だな」なのよ? 標準語で言われると余計ヘコむんですけどっ?!

 ばたついてはいたけど、実は落としたところは特定できていたのよ。

 だから半信半疑。
 落としたけど、戻ってくるでしょ? くるよね?

 
 結果。

 無事、見つかりました!!

 落とした場所はわかっていたから、その場所の人に、「お願いですから、探してください」って再三頼んでいたんたけど、すぐには探してくれなかったの。
「拾得物はなにも届いてません」
「清掃業者がなにも言ってきてないので、ありません」
 の、繰り返し。

 そーじゃなくて、落とした場所はこの巨大な建物の中の「この一点」で、ここさえ探してくれればあるんだってばー。
 清掃業者は絶対「この一点」はわざわざ掃除してないから。
 かがみ込んで地面に膝ついてのぞき込まないと、わからないところだから。
 お願い、わたしに探させてよ。そこに落としたんだから!!

 願いは叶わず、追い返されました。

 翌日、自宅から電話を掛けて、同じ対応をされ、それでも引き下がらずに「お願いだから、清掃業者の言うことを鵜呑みにしないで、この一点を探して」とお願いしました。
 何度か電話して、さらに数時間待たされて、結果、見つかりました。

 わたしが言った通りの場所に。

 ううう、本人に探させてくれたら、一瞬でカタはついたことなのに。

 落とした場所が東京なので、どうやって送ってもらうかでまた一悶着。通常の宅急便では送れない、って。なにかあったときに責任取れないから、って。
 もちろんそれはわかりますが……あー、大事だなー……。

 てゆーか、カードも作り直しになるから、書類いろいろ書かなきゃなんないしなー。

 もちろん、落としたわたしが、いちばん悪いです。

 しかし……しかし、本人に探させてくれたら、こんなにたくさんの人の手を煩わせずにすんだのに……追い返されたんだもん……。
 カード止めたのも、何度「探してくれ」って言っても「清掃業者がなにもないって言ってますから、ありません」って繰り返されて、仕方なく止めたんだよなー。そうするしかないもんなー。

 あの建物とは、相性悪いのかもしれない。
 救護室の次は、警備室ですよ……ふふふ……遠い目。

 つーことで友人諸氏、ご迷惑&ご心配をおかけしました。

 ドリーさん、次会ったときにお金返すねー。
 あわててるわたしに、「落ち着いて、とりあえずこれ貸しますから」って1万円札握らせてくれて、すっげー助かったよー。ほろほろ。

 
 弟と一緒にいたとき落とした財布も、やはり落とした場所はわかっていて、探しに行ったらちゃんと落とした場所に落ちたままだったよ。
「拾得物はなにも届いてません」
「清掃業者がなにも言ってきてないので、ありません」
 って同じこと言われたけど、本人が探したら、ちゃんとあった。

 座席の下に財布を落とす癖がある、わたしが悪いんだけどな……。

 ……だから、同じ過ちを繰り返すなとゆーに。


 みなさん、ご存じですか?
 もう『ドルチェ・ヴィータ!』はやっていないんですよ。

 そんなことを改めて、考えてしまう東宝宝塚劇場。

 無人のロビー、細長い窓から見下ろした正面道路、空間を埋め尽くす人の群れ。
 白。
 白い人たちが、リボンのように波を作ってひろがっている。

 夜のはずなのに、明るくて。
 そりゃーもー、ぽかーんと明るくてね。

 
 あれは、いつのこと?

「星楽から、まだ1ヶ月経ってないって、知ってましたか?」
 って、言われるまで気づかなかったよ。

 なんだか長い夢を見ているみたいで。

 『ドルチェ・ヴィータ!』がもうやっていないなんて。

 この世界のどこにも、あの美しい悪夢が存在していないなんて。

 そんな絶望が、あるだろうか。

 もうあの青い世界には行けないの?
 あの美しい人たちには、二度と会えないの?

 理不尽な寂寥にかりたてられるよ。
 どこかへ走り出したくなる。
 どこへ行ったって、もう二度と会えないのにね。

 
「嘘みたいだなあ。もう『ドルチェ・ヴィータ!』は観られないんだー」

 と、つぶやきながら、観に行ったのは雪組公演。
 雪組に罪はない。
 むしろ、罪作りは星組の方。

 星組の裏番組でなければ、わたしはもっと雪組に通っていた。

 星東宝に通うために、他のすべてを犠牲にしていたので、雪ムラに通う余裕がまったくなかったのよー。

 大好きだったのに、『夢王国』。

 『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』は、ほんとにツボ直撃の作品だった。

 耽美ホモ3連発、とゆー露骨さも愉快だが、そこまでうっかりかっとばしてしまった、「タカラヅカの可能性」を表していて、感動する。

 女だけで演じる、世界でもまれな劇団。
 その特色ゆえの「可能性」だと思うのよ。「耽美」は。

 少なくとも日本では、タカラヅカ以上に「耽美」を表現できる実写媒体はないと思っている。
 なにしろ日本人の男は、スタイル悪いからなぁ。8等身以上の男を捜すのは無謀だもんよー。顔だけきれいでも意味ナシ。全身像を見たら興醒めしちゃうもんよー。

 女性は通常、男より顔が小さいから、小顔で長身の女性が肩パッド入れて体型補正して「男」になった場合の方が、楽に8等身になれるんだよね。

 女性が演じる「男役」、現実ではありえないスタイルと美貌、そのうえで表現する「耽美」。

 それは、醍醐味ってやつでしょう。
 可能性、追及しちゃってください。

 
 3つのパート、真ん中の齋藤くん演出パートがそこまで「耽美」かと言われるとちとこまるが、アレはアレでアリだと思っている。
 アニメ的にデフォルメされた「耽美」のひとつでしょう。
 日本刀持ってあばれる美青年だの、真っ黒戦隊登場だの。

 他のパートが重いだけだから、笑わせてくれる齋藤くんパートは重宝してるよ。
 必殺ネコ耳(犬だけど)に笑い、カマだのロリータだのナースだのに笑い、なによりやはり、ブラックかしげを筆頭に迫り上がってくる特撮ヒーローものの宿敵、悪の幹部軍団登場っ!! には、手を叩いて笑いたくなるもの。

 『ホテル ステラマリス』が好きなのと同じで、舞台の上のどこを見たらいいかわからない、目がいくつあっても足りない、役をいっぱい割り振られた人海戦術が小気味いい。

 
 「美」の話をしているわけだから、ついでにかっしーの話をしておこう。

 今回かしげ、いいよねっ。
 美しい。
 てゆーか。

 美貌が無駄になっていないかしげを、はじめて見た。

 えーと、わたしがかっしー眺めてもう何年経つ? 雪エリザ新公からだから、10年近く?

 それで、はじめてかよ……。

 ほんまにいつもいつも無駄に美しいだけの男だったもんなー。

 今回は、黒かしげも白かしげも、全部いい仕事してるよね。

 特出してからこっち、1作ごと確実に、かしげは進化している。
 …………遅いよ。
 なんで今ごろになって……新公卒業するあたりで、自分の必殺技ぐらい見極めて、磨いておけよ。

 かっしーの取り柄は、なんつったってそりゃ美しいことでしょ?
 薄いだけの男はもう卒業だ! 髪が薄いのは仕方ないが、持ち味だけはも少し濃くしろー。
 がんばれかっしー。と言い続けて、もう10年目ですか。やれやれ。

 
 でもさ。

 芝居の方で、デニス@かしげがフィンセント@コム姫に髪の毛をいじられて遊ばれちゃうところ。
 かっしーてば、コム姫にキスでもしているよーな接近ぶりだった。
 わざと、アヴなくして見せているんだと思う。ホモっぽく盛り上げて、観客を「きゃあ♪」と言わせようとしているんだと思う。

 しなくていいから、そんなことは!!

 かっしーはホモネタ禁止!
 わたしゃかっしーをそんなふーに育てたおぼえはありません!!
 かっしーは おバカな ちゃなくて、純粋なままいてください。
 安易なホモはいらんから!
 キミはソレ、向いてないから!!

 ノンケ男が無自覚に深みにはまっていく方が、よほど萌えだよ、かっしーのキャラ的には。

 つーことで、へんな意味で濃くならないでね、かっしー。

 
 美を堪能できる『ドリーム・キングダム』。
 星組の裏番組でさえなければ……そして、星組公演で赤貧まっしぐらになっていなければ、もっともっと、観たかったよ。

 
 アニメを想像してくれ。
 主人公たちは街の不良少年グループだ。ちょっとワルでワイルド。
 グループのなかで、いちばんの美形少年。女嫌いで気は荒いが、じつは繊細でハートフルな愛すべき男の子。いつも楽器を持ち歩いている。
 アリでしょ? そーゆーキャラって、あるよねえ?

 それが、しいちゃんでした。
 立樹遥外部出演ミュージカル『タック』

 ふつー外部出演っちゅーと、「女」役じゃないですか。
 女の子が男役をするのは宝塚歌劇ならでは。他の舞台では、男の役は男の人が演じる。だから男役の外部出演は微妙。宝塚に在団している貴重な時間を、女の役なんかで消費して欲しくない。女優は女である限りいつでもできるんだから。
 しいちゃんの役は、「男みたいな女の子の役」だと聞いていた。
 だからヅカの男役が演じても大丈夫、みたいな言い方。
 それでもやっぱり、割り切れないものが残る。男役のしいちゃんが見たいよ。

 つーことで、『タック』初日観劇。わたしとkineさんとサトリちゃん。

 しいちゃんの役は、たしかに「男みたいな女の子」だった。
 でもさー。
 ふつー「男みたいな女の子」ってのは、女だってことをみんな知ってるけど、わざと男ぶって見せたりしている女の子、だよねえ?

 ウクレレ@しいちゃんは、男の子でした。
 だって仲間の男たち、全員彼女を男だと思ってるんだよ?!
 えええ?!
 その「世界」で「男」ってことは、どんなにほんとーは女っていう設定があるにしろ「男役」だよねえ?

 しかもかっこいいんですけどっ。

 ウクレレ少年、めちゃかっこいー。

 「『ガンバの大冒険』でいうところの、イカサマのポジションですよ」と、チェリさんに解説したら、すごく話の通りがよかったぞ(笑)。
 つまりはそーゆー役だ。

 本物の男の人たちの間で、素顔で、なんでそんなに男前なんだ、立樹遥。
 周り、男優だよ? 素顔だよ? なのにしいちゃんがいちばんハンサムでした(笑)。体格も負けてないしな(笑)。やっぱ背高い〜。

 そして、こんなに踊りまくっている立樹遥を、はじめて見た。

 なんだよー、踊れるんじゃん、しいちゃん。
 べつに今まで、踊れない人だとは特に思ったことなかったけどさ。踊れる人だとも思ったことなかったから。
 てゆーか所詮タカラヅカなダンスしか見たことなかったしなー。

 しいちゃんは男の役なので、男たちとほぼ同じダンスをガシガシ踊ってました。
 もちろん、男性の筋力でしかできないアクロバティックなダンスは無理ですが、それ以外の振り付けはほぼ同じ。

 男言葉に乱暴な話し方、低い声。
 くすんだ服、汚した顔。
 ひねくれた、ぎらぎらした瞳。

 かっこいいんですけどっ。

 ど、どーしたんだ立樹遥。
 立樹遥なのにかっこいいぞっ?!
 うろたえ。

 そしてそして、どんなにすさんだ少年の役をやっていても、きらきらしているのよ、しいちゃんの瞳は!!(笑)
 すごい。なんでひとりだけそんなにきらきらしてるのよー。目になんか入れてるのー?(笑)

 サトリちゃんのおかげで4列目センターにいたわたしとkineさんのもとには、目線来まくり。ぐわっ、し、心臓がっ。
 心臓に悪いよ、しいちゃん。かっこよすぎっ。ハァハァ。

 
 なんかふとね、思っちゃったよ。
 こんなにかっこいいのに、きれいなのに、どーしてヅカの舞台では、この何分の一の魅力しか発揮していないんだ、この人は。

 もったいない……。

 もっともっと、たくさんの人に見て欲しい。
 この立樹遥を、見て欲しい。

 この立樹遥を見たら、見直す人、惚れ直す人、続出だろうに。
 でもしいちゃんファン以外、見に来ないよね……しょぼん。

 ウクレレくんがあまりに魅力的な男の子(ほんとは女の子)だから、この子がこれからどんな大人になるのか、知りたくてしょーがないよ。
 てゆーかあの仲間たち、ウクレレがほんとは女だって知ったら、どんなリアクション取るかな。
 恋が生まれるとしたら、どの男とだろう? と、ヲトメハートがうずきますわ(笑)。
 
 
 さて。物語は自体はどーってことのないファンタジー。
 古き良き時代のアメリカ、裏町の不良少年たちの前に、タック@坂元健児という男が現れた。
 トラウマがもとで喋れなくなってしまった少女ミュー@堀内敬子を中心に、生きることに精一杯の貧しく荒んだ少年たちは、タックと出会ったことで、心を開いていくわけだ。
 どーせオレたちなんか、とすねて、ひがんで、あきらめていた少年たちは、誠実でなにごとにも一生懸命なタックの姿に失っていた夢を取り戻すのね。

 ストーリーは単純なので、あとはひたすらダンスと歌、キャラクタの魅力だけに集中できる作りになっている。
 ミューのために、タックが賭けボクシングに手を染める、というストーリーラインからわかるよーに、かなりアクティブなビジュアルの物語だ。動くぞ、ほんとに。汗が飛び散ります系。
 
 単純で普遍的なテーマを、激しい動きでたたみかけるよーに表現するので、いったんその渦に巻き込まれると一緒に翻弄されてしまうので、ものすごーく消耗する。
 集中して、出演者と一緒になって、くたくたになって観るのが醍醐味かと(笑)。

 エンタメの基本、見終わったあとに「生きることはつらいけど、でも、わたしもまたがんばって生きていこう」と思わせること。
 それをちゃんと体現してくれる作品。

 なにかしら、背中をぽんっと押してくれる作品。

 
 見終わったあとに、隣の席のkineさんが、
「私もやりなおせるかなぁ」
 とつぶやいた。

 なんだよ、泣かせること言うなよ。

 やりなおせるに決まってるじゃんか。
 人生いつだって握り拳だ。

 と、ひとごとなら言っちゃうけどな。
 自分はいつも停滞前線。てへ。

 
 マジにいい作品なんで、機会を作れるよーならぜひ観てくださいよ〜。

 残念ながらわたし好みの「毒」はないので、萌えないけどな。
 ストレートな陽だまり作品。
 あるのは「天使の翼」、「闇」や「棘」はない。
 ……あまりに饒舌にテーマをまくしたてるので、ちと赤面する感はあるが、こーゆー「正しい」作品は好きだ。

 前へすすめ、翼を持たない天使たち。

 
 わたしの欠点は、短い文章を書けないことである。

 要点だけまとめられないのよねえ。こまったわねえ。

 つーことで、まだまだ『ホテル ステラマリス』の話。

 物語はべつに、まちがってない。
 ただ、「いいかげんな作り」だから、「つまらない」「盛り上がらない」「退屈」「冗長」「主人公が不誠実」という印象を与えるだけで。

 いいかげんに端折られてしまった部分をきちんと描き、あちこち整理すれば、ちゃんといい話になると思うんだけどなー。やれやれ。

 ずいぶんな文字数をかけて、文句ばかり書いてきたけど、ここでひとつ、断言させてくれ。

 わたしは、この作品が好きだ。

 ええ、好きなんですよー。ほほほ。

 だって、たのしいもん。

 『デパートメント・ストア』が好きだったのと同じ理由。
 キャラクタがごちゃごちゃ出まくってて、それぞれ舞台の上で「人生」しているのは、見ていてたのしい。だから大好き。

 わたしはニュートラルに「タカラヅカ」ってもんを愛していると、自分では思っている。
 だから、タカラジェンヌたちが舞台でたのしそーに創意工夫して、「存在」しているのを見るのが、うれしくてしょーがない。

 『ステラマリス』の従業員たちってば、なんてたのしそうなの。
 それぞれ「自分の役」があって、ひとりずつなにかしらやっている。
 
 目がいくつあっても足りないよー。
 誰を見ればいいの? メイドのひとりひとり、ボーイのひとりひとりを見ているだけで、たのしいんですけど。

 宙組下級生ファンのデイジーちゃんが、すごい勢いでリピートかけてるのがわかる。
 コレ、組ファンにはたのしいわ。
 画面の隅々まで、おいしいんだもの。

 役者たちが「背景」でしかなかった某中国物芝居を数ヶ月見続けた後遺症かしらねー。
 役者たち全員が活き活きと「存在」しているこの芝居が、泣けるほど愛しいわ。

 …………あくまでも、「宙組全体」を眺めた場合の話よ。
 組子の顔の区別もつかない、1回ふつーに芝居を観るだけの人からしたら、退屈な作品だってことは、たしかよ。

 
 さて、最後に主人公の話。

 ウィリアム@たかこって、ほんとうはいい男だと思う。
 肝心の場面が何故か省略されていて、描かれていないので、不誠実な二股男に成り下がってるけど、たぶんふつーに「善い男」だと思う。
 彼の誠実さが現れているのが、何故か社長@まやさん相手なんだよね。
 ふつー、ヒロイン相手に発揮しないか、そーゆー一面は。
 石頭社長と本音で口論するウィリアムは、いい奴だ。それまでただのひょうひょうとしたにーちゃんだったのが、信じるに値する男だということが、ここでわかる。
 外野からホテルの経営に口を出してへらへらしていた「大学教授」ではなく、「経営者」として、本気で叫ぶシーン。
 ホテルのことも、従業員のことも、そしてその未来をも、全部見据えた上で、義務と責任を覚悟している男。

 このシーンを見て、ヒロインが本格的に彼に恋をする、とかだと、わかりやすいのになあ。

 何故か、このウィリアムの人格を顕著にしているシーンをのぞき見ているのは、ヒロイン・ステイシーではなく、アレン@水くんなんだよなー(笑)。

 ウィリアムの「本気」を目の当たりにしたら、そりゃ見直すって。つーか、惚れるって。

 現にアレンは、「私はアナタを信じます」ってすかさず告ってますがな。

 アレンをオトしてどーするよ、ウィリアム。つーか、正塚。
 ヒロインが恋に落ちるべきシーンで、恋敵の男をオトしてどーする。
 やっぱ正塚の作劇は変だよな(笑)。

 ステイシー@お花様とウィリアムの恋は、きっかけらしいきっかけを観客に見せないまま、あくまでも「自然に」浸透していくわけだ。
 そこにこだわりたかった気持ちはわかるが、なにしろ作品がいいかげんな作りだから、表現が足りてないのな。やれやれ。

 ウィリアムが愛すべき青年である以上、「不実な二股男」にしか見えない展開はまちがってる。

 わたしたちの目に映る「ウィリアム」は、いい男である。
 だけど「作品全体」として見ていると、ひどい男。

 これが混乱のもとなんだよなー。

 他のなにをまちがっていてもいいから、主人公の人格だけ正してくれよー。
 いい男なら、全体の行動もいい男にしてくれよー。

 今のままじゃウィリアムは、作者のアタマの中にだけ「いい男」として存在しているよ。
 見ているモノには、わかんないよ。

 主人公の行動に辻褄が合えば、それだけで作品の辻褄も合うのになー。

 
 ウィリアムの恋愛面は変だけど、それ以外はふつうにいい男なので、たかこファンのわたしは見ていてたのしめる。
 ほんとに、恋愛話全部カットしてくんないかなー。
 いいじゃん、ステイシーの片想いで。ウィリアムはホテル再建だけ考えてるビジネスマンで。

 彼の恋愛話があまりに中途半端だから、脳内変換するしかないじゃん。
 すなわち、もともとウィリアムは、女を愛せない男だったが、その現実から逃れるためにアリソンにプロポーズしていた。とかゆー設定を、捻出するしかなくなるわけだよ(笑)。
 ウィリアムの狙いは、アリソンではなくその父親@ハゲタカファイナンスの社長だった、とか。すでに社長の愛人だった、とか。
 でも「ステラマリス」に来て、うっかりステイシーパパ@まやさんと恋に落ちたとか、おやぢ好きのウィリアム的にはぜんぜん好みじゃないからスルーしていたアレン@水しぇんがウィリアムにオチて、めろめろになっていたとか。
 海洋学者@すっしーも同類で、「同じゲイ同士、一緒に食事でもどうだね!」とか、口説いてくるし。いや、いくらおやぢ好きとはいえ、オレにも選ぶ権利はあるから! とウィリアムくんは必死に逃げていたなあ、とか。
 パパに惚れたから、その娘のステイシーにも好意的だったんだわ、とか。
 アリソンへの不実さを、そんなふーに想像力で補ってみたりするしかないよなー。ははは。

 まあ絵ヅラ的にいちばん好みなのは、もちろんウィリアム×アレンですが。

 
 よーするに、ウィリアムのあの微妙なナチュラル・クラゲ・テイスト(てきとーに命名)が、けっこー好きだったりするのよ、わたし。
 

 クラゲっぽいのは、たかこの持ち味っつー気もするけどな……。

 
 なんにせよ、見ていてたのしいから好きよ、『ホテル ステラマリス』。

 
 『ホテル ステラマリス』の話。

 『デパメン』の焼き直しに近い話だっつーことは、もう置いておくとして。
 『デパメン』の「落ちぶれたデパート再建」が「精神論」で終わって、観客は全員「ヲイヲイ」と突っ込んだことだと思う。精神論でお客が増えるかっつーの。誠心誠意「夢の空間」を作るべく努力したって、それがそのまま営業成績になるわけないでしょう。
 『ステラマリス』の「落ちぶれたホテル再建」が「ワークシェアリング」で終わったことも、観客は「ヲイヲイ」と突っ込むよ。それじゃ「現状維持」はできても、借金は減らないでしょう?? なにもプラスになってないじゃないすか。ジリ貧が先延ばしになった、つーだけで。

 正塚氏の事業計画はよくわからん。

 まあ『ステラマリス』は結局、金満企業がホテルを売却することになったから、現実的な流れとしては正しいけどな。

 
 ホテル再建モノとして観るならまだ、マシなんだ。「精神論」でお客がウハウハやってくるよーになった、というオチではないので。敵の戦闘機を竹槍で落とせ! 強い信念があればできる!でハッピーエンドにされてもこまるからさ。
 伏線もオチもなんのヒネリもないので、予定調和っちゅーかご都合主義まんまで、おもしろみがない分、破綻もない。
 青く輝く海、をウリにして、これからホテルは繁盛するんでしょうよ。

 だから問題は、「恋愛部分」なんだよなー。

 なんでウィリアム@たかこは、アリソン@かなみんを捨てて、ステイシー@花ちゃんを選ばなければならなかったの?

 もちろん、世の中そーゆー恋愛はあるよ。
 ひとは心変わりする生き物さ。浮気は文化だそうだしな。

 でも、「世の中、そーゆーこともあるじゃん」で、物語は成り立たないでしょう?

 そんなことしたら、「物語」の意味がなくなるじゃん。
 貧しい主人公がなんの脈絡もなく道端で大金拾って億万長者、ハッピーエンド。「世の中、そーゆーこともあるじゃん」
 なんの取り柄もない女の子の前に、白馬に乗った王子様が突然たまたま現れ彼女に一目惚れ、ハッピーエンド。「世の中、そーゆーこともあるじゃん」
 てなふーに、なんでも「アリ」になってしまうよ。
 スタート地点とゴール地点が同じでも、その途中経過をどう書くか、が「物語」ってもんでしょう?

 なんの取り柄もない女の子、の前にどーして王子様が現れたのか。ふたりがどんなふーに惹かれ合い、想いを伝え合ったか。どんな障害があり、それを乗り越えていくのか。
 そこを書くのが醍醐味でしょう。

 ウィリアムには、アリソンという恋人がいた。
 金のためでも名誉のためでもなく、ふつーに恋愛しているラヴラヴなハニーちゃんだ。
 彼女との結婚のために、仕事で一山当てたくて、「ステラマリス」に来た。

 そこで何故、他の女に惚れる?

 いくらなんでもそんな男、不実過ぎるだろう。

 夫のいるマリー・アントワネットがフェルゼンと不倫して許されるのは、彼女が「愛のない政略結婚」を強いられた女だからだ。「道具」としての人生を強いられた女だからだ。
 彼女がルイ16世とラヴラヴ恋愛結婚で、夫に愛をささやいたその次の瞬間フェルゼンに愛を打ち明けていたら、読者は許してないって。
 そんなのただの「二股」じゃん。

 もちろん、同時にふたりの人間を愛してしまった主人公の葛藤を描く物語は、アリだ。
 主人公がどちらを選ぶのか、読者も観客も、はらはらどきどきして見守るさ。

 しかしこの『ステラマリス』は、そーゆー話じゃないだろう? ウィリアムは、そーゆー恋愛をしていないだろう?

 ラヴラヴな恋人を捨てて、他の女を取る、そーゆー男として描くのならば、それようの描き方があるはずだ。
 よっぽど彼の中で「なにか」なくてはならない。
 それを性根を入れて表現するつもりがないならば、そんなややこしい男を主人公にするべきではない。

 ウィリアムの内面をくどくど描く気がないならば、彼の恋愛事情の方を単純化するしかない。
 アリソンとは、他に目的があってつきあってた。社長の椅子が欲しかっただけだ。しかしステイシーに出会い、真実の愛に目覚めた、てなふーに。

 正塚氏が、べたべたなラヴロマンスを嫌いだということはわかる。
 ナチュラルに、流れのまま人の心が動いていくことや、惹かれていくことに重きを置いているんだろうさ。
 わざとらしい事件や、空々しいロマンチックな展開は嫌なんだろうさ。
 真のドラマは、そんな韓国ドラマか昼メロみたいなジェットコースター的展開にはなく、みんなが取るに足らないと思い込んでいる「日常」こそにある。そう言いたいんだろうさ。

 それでもいいよ。
 アリだと思うよ。

 でもそれならばこそ、その「日常」のなかでの心の動きを、丁寧に表現しようよ。
 必要なエピソードはきちんと消化しようよ。

 逃げないでさ。

 たのしいミュージカル、として歌って踊ってしているわりに、この物語には「肝心なシーン」が抜け落ちている。

 ウィリアムが、心変わりを自覚するシーン。
 そこには葛藤がなくてはならない。
 それまでの生き方を捨て、愛していたはずの女性を傷つける決意。
 アリソンを傷つけることが平気な男では、ないはずだから。

 ウィリアムが、アリソンに別れを告げるシーン。
 悪いのは一方的にウィリアムである。きれいになんかいかないだろう、きっとひどいシーンになる。
 ふたりがきちんと向かい合い、話し合ったからこそ、最後の「ステイシーにキスをするアリソン」にたどりつくはずだ。

 他にも必要なエピソードはいろいろあるが、これだけは絶対になければならないはず。
 そうでないと、ウィリアムという男はあまりに不実すぎる。
 とくになにも悩まずに心変わりをし、アリソンには「態度でわかるだろ、オレもうお前の他に好きな女ができたんだ」という曖昧さで、面と向かって罵られないようにする。
 もちろんステイシーにも、自分からはなにも言わない。「態度でわかれよ、言質とられるのヤなんだよ、損だから」ってか。

 いちばん描くのが大変そーなシーンを描かずに、てきとーにたのしく歌って踊って終わる。

 物語のクライマックスは、あくまでも「ホテル再建」のことだけで、ウィリアムの「恋愛」についてはなにもない。

 ナチュラル志向、というより、逃げているだけな気がする。
 きちんと描くのが、めんどーだから。

 とりあえず、たか花だから、なんとかなるだろー。
 そんな感じ?

 
 ウィリアムの恋愛をきちんと逃げずに描く気がないのなら、はじめから描かなければよかったのに。
 描きたかったのは「ホテル再建」だけ。
 今の「宝塚歌劇」に対しての皮肉を言わせたかっただけ。
 それだけなんでしょ?

 不実なのは、ウィリアムとゆーより、正塚自身だな、こりゃ。

 
 18日は、キティちゃんと宙公演観劇デートでした。
 つーことでいそいそムラへ行ったわけですよ。
 でもって1階席のドアの前で、キティちゃんに会ったわけですよ。
 そしたらキティちゃん、言うわけですよ。

「あれ? 今日、緑野と一緒だっけ?」

 ひーどーいー。
 一緒にチケット買ったんじゃない、「一緒に観に行こうね」って!!
 それを忘れる? 忘れるのっ?!
 アナタあたしのこと愛してないわねっ!!

 
「終わったら、お茶つきあうから!」
 と、めずらしく自分から言うキティちゃん。彼女はいつも「今日必要な分」しか現金を持ち歩かないので「お茶するとかごはんするとかは、前もって言ってよ? でないとお金持ってないからね!」な生き方をしている人です。
 お金がないわけじゃなく、現金を持っていると、全部使ってしまうからあえて持たないようにしてるんだって。ちなみに彼女はわたしより年上ですが。……小学生みたいやぞ、ソレ。

「ねえ、そんならついでに新公も観ようよー。デイジーちゃんとは新公の前に待ち合わせしてるし。デイジーちゃんにも会っていきなよー」
 と誘ったら、
「あと1000円しかないから無理」
 と、断られた。
「貸したげるよ?」
「借りたら、返さなきゃいけないから嫌」
 えーと。
 
 キティちゃんは結局誘いを振り切り、お茶だけして帰ってしまいました。
 そのことをデイジーちゃんに言うと、
「1000円あれば観れましたよ」
 と、話は価格破壊の方へ。
 ええ。たぶん、1000円でも観られたと思う。昨今見ないほどの、ものすごいサバキの山だったから。

 観たい人は、みんな無事に観られたんじゃないかな、今回の新公。

 
 ま、新公の話はもういいとして。
 そんなこんなで2回目の宙組観劇。

 正塚晴彦作『ホテル ステラマリス』

 この芝居を観ていちばん思い出したのは、『デパートメント・ストア』だ。
 焼き直し、とまでは言わないが、同じ話だよね?

 なにしろテーマが同じだから。

 デパートorホテル再建、という意味じゃないよ。
 それはコンセプトが同じ、つーだけ。

 デパートorホテルを、「タカラヅカ」と替えてOKなところ。

 現実を忘れ、ここにいる間だけ夢を見ることができる場所。
 伝統と現実の対比。
 理想と現実、伝統と現実、それでも「夢を見る場所」を守ろうとする人々。
 あくまでも、夢を見る場所を「作る側」の話。

 テーマはコレでしょ?

 べつにデパートでもホテルでも遊園地でもあるいはどこかの歌劇団でも、なんでもいいんだよね。このテーマを表現できるなら。

 でもデパートはやっちゃったし、遊園地もこの間使った。
 だからホテル。

 作品のコンセプトは『デパメン』と同じ「おちぶれた伝統ある商業施設の再建」、そしてプロットは『デパメン』とまったく同じ。シーンや曲、台詞まで似ているのは、わざとなのか無意識なのか。

 正塚氏は今のタカラヅカによほどなにか、言いたいことがあるのかねえ。
 同じテーマの話を同じコンセプトで、ショーと芝居で2度も書くなんて。

 同じテーマを書くのが悪いわけじゃない。
 書いていいさ、もちろん。
 何度だって。
 死ぬまで同じことを書き続けたっていい。

 ただ、それならコンセプトは変えろ。
 とゆーだけのことで(にっこり)。

 
 『ステラマリス』の失敗ひとつは、そこにもあるよなー。
 セルフ・コピーはスベると悲惨。
 前作を超えなくちゃ、書き直す意味がないっちゅーの。

 なまじ、『デパメン』はショーだった。
 ショーを芝居に焼き直したわけだから、いろいろ不都合が出る。
 まんま同じタイトルなら問題ない部分も、「別作品」と謳ったからには手を加えなければならない。
 ので、めんどーが生じる。

 『ステラマリス』は、とても冗長で間延びした話だった。
 わたしはいったいいつ、本編がはじまるんだろう? と首を傾げていたよ。
 いつまでたってもプロローグにしか見えなくて。
 よーやくプロローグのショー部分が終わって、本編がはじまったと思ったのは、ウィリアム@たかこが正体をばらしたあたりだ。
 ちょっと待て、それってはじまってから何十分後だよ。
 ストーリーが動き出した、と思ったのは、ホテル閉鎖が決まってからだ。
 ちょっと待て、それってはじまってから何十分後だよ。てゆーかソレ、ほとんど終わりの方じゃあ?

 原作がショー作品だから、こんなことになってるのか……?

 もちろん正塚氏が、新しい作風を模索している、というのもあるかと思う。
 ストレートプレイでもいいじゃん? みたいなストーリー重視系から、ショーに近いよーなミュージカル系に作風を変えたいのかもしれねーよ。

 にしても、あまりにもコレ、習作っぽいぞ。
 ただの下書きでしょ? 練習でしょ?
 完成品じゃないよね……?

 
 ダンスと歌ですすめるならば、そこに大きなストーリーが必要だった。
 ストーリーがあまり動かない部分ばかりを、ダンスと歌でだらだら続けるもんだから、ただ冗長になる。
 ふつーに芝居でやったら数分で終わるのに、歌って踊るから何倍もかかるんだよね。

 最初の「再建のためのアイディア」だけで、何回同じこと言って踊ってた?
 しかもこのときは、「ただのアイディア」でしかなく、ホテル買収のことも、ウィリアムの立場も伏せられている。だからせっかくの長い長いダンスシーンも、「ストーリー以外の出来事」でしかない。
  
 せっかくミュージカルなんだから、ストーリーが劇的に変化する部分こそを、ダンスや歌で盛り上げるべきなのでは?
 ホテル閉鎖にしろ、主役ふたりの恋愛にしろ、ストーリーが変化する場面は淡々と進み、変化の乏しいところやサブエピソードが長々とミュージカルとして盛り上げられているよね。

 そりゃ、退屈な作品になるわ。

 なんか基本的なところで、組み立てをまちがっている気がする。

 作品全体の構成がね。
 それをひっくるめて言うと、「下書き」とか「習作」ってことなんだけど。とても完成した作品だとは思えないっていう。

 正塚作品は総じていつも「似ている」けど、今回ほど「焼き直し」と思ったことはなかった。
 シーンや表現方法が似ているのは、「作風」としてアリだと思っている。
 植田作品がカーテン前でえんえん芝居することや、主要人物が登場するときに音楽が鳴ったり、「誰だ? 出てこい」とみんなで探したりするのと同じ。
 正塚作品の群衆の使い方や、合唱は「作風」。何度同じ表現をしてもそれはアリだと思う。

 しかし、テーマもコンセプトもプロットも同じ、つーのはなあ。
 曲や台詞まで同じライン、つーのはなあ。
 そのうえ「下書き」にしか見えない低レベルっぷりとはなあ。

 どーしたんだ、正塚晴彦。

 

 カーテンコール、ないんだ……。

 びっくりしたよ、宙組新人公演『ホテル ステラマリス』

 タカラヅカの悪しき風習、よその組、よそのスターがやったらウチもやらなきゃ沽券に関わる! のかなんなのか、右へならえで拍手合戦。カーテンコールやスタンディングオベーション。
 それはもう、あきらめていたので、どの新公も絶対カーテンコールがあるんだと思っていた。

 なのに、なかった。

 そのことに、感動した。

 なんだ、FCの面子の問題で絶対強要されるよーなもんじゃなかったんだ。
 ごめん、誤解してた。

 と、カーテンコールがなかったことにほっとするくらい、アレな出来の新公でした。

 この新公でカーテンコールがあったら、ほんとーにカーテンコールは「ただのお約束」になっちゃうだろう。それじゃ、ほんとにすばらしい出来のときに、どうすればいいの。
 ってことになるから、よかったよ。カーテンコールがなくて。

 
 思ったことは、正塚芝居は、ほんとーに難しいってことだ。

 前回の『ファントム』と出演者はほとんど変わっていないはずなのに、このレベルの差。

 タカラヅカという「ファンタジー」を作り出す劇団において、真に困難なモノは「ナチュラル」なんだということが、よくわかった。

 楽曲だけでいうなら、『ファントム』の方がはるかにむずかしいだろう。
 「あの歌を、歌いこなせるか」とか、重要視されていたよね。

 譜面だとかの目に見える部分での難易度は、『ファントム』などの海外ミュージカルの方が高いだろうよ。
 だけど、『ファントム』と『ステラマリス』なら、後者の方が難易度が高いんだ。「宝塚歌劇」としては。

 『ファントム』で一定レベルの姿を見せてくれた七帆くんが、2度目の主役である『ステラマリス』では、哀しいかな前回ほど魅力を発揮できなかった。
 ふつーに考えれば、有名海外ミュージカルで初主役だった前回の方が、あらゆる意味で大変だったろうに。
 自爆していたのは、今回の方。

 そうか、ほんとに難しいんだ、正塚芝居。
 花組新公がひどいことになっていたのも、無理はないか。『La Esperanza』は主役のふたり以外は学芸会テイストだったもんなー。
 キム、まっつ、あすかは、ほんとにうまい人たちなんだなー。新公で正塚芝居をふつーに演じられるんだもんなー。
 彼らを見直し、改めて正塚芝居というものについて、考えたよ。

 
 『ステラマリス』という作品について、言いたいことは山ほどある。
 その山ほどある引っかかりを、力尽くでなめらかにしているのが出演者たちだ。
 ヒロインお花様のうまさは言うまでもないが、主人公たかちゃんもアレで相当がんばっていたんだなあ、と見直したよ。

 
 脚本・演出に変化ナシ。
 最近、アレンジされた新公ばかり見ていたけど、今回は本公まんまだった。正塚作品だから、下手な変更は許されないだろうとは思っていたけど。
 
 なまじ本公まんまだから、つらい。

 下級生たちが、本役レベルを演じられるはずがないからだ。

 ウィリアム@七帆くん。
 少ない、と思った。

 つたない、でも、薄い、でもない。
 少ない。

 ウィリアムというよくわかんねーややこしい(あるいはなにも考えてない)男を演じるにあたって、彼の演技は「少ない」気がした。
 君が「ウィリアムである」というには、少ないんだよ。「ニンじゃない」ことも大きいだろうけどな。能面みたいだよ、なんだか。
 やりたいこと、やるべきことが、「演技」まで達していないよーな。

 うーむ。
 ほんとに大変なんやな、正塚芝居……。

 ステイシー@咲花杏ちゃんは……あうー……まず、「大人の女性」に見えない……。話し方も声も姿も。かわいいんだけどなー。
 オーナーの娘でコンシェルジュで仕事に意欲がある、ように見えなくてつらかった。
 夏休みにアルバイトしている女子大生みたいっす。
 気品のなさも、つらい……。

 あと、テープでえんえん喋らなければならないのも、気の毒だったな。
 テレビ俳優が洋画の吹き替えをやったら悲惨なことになるように、「声だけの演技」ってのはまた別のスキルだし、相当うまくなきゃできないことだ。
 ステイシーはテープでのモノローグが多々あるので、キャリアの少ない杏ちゃんには荷が重すぎた模様。

 うーむ。
 ほんとに大変なんやな、正塚芝居……。

 と、それに尽きるわ、ほんと。

 アレン@和くんだって、『ファントム』のときの方がよかったよ……。
 まだキャラがはっきりしている分、主役ふたりよりやりやすそうだったけどな。

 主役ふたりがえらいことになっていた分、救いだったのはガイ@早霧とマクファーソン@十輝。
 どっちもいい味出してた。

 早霧せいなはこのままスター街道を走ってくれ。と、心から思う。
 十輝いりすは……ええと。
 この人の向かう道は、どこだろう?
 『BOXMAN』でも『ステラマリス』本公でも新公でも、とにかくイロモノとしての輝きはすばらしいんですが。
 このままイロモノでいくの? それとも二枚目なの?

 
 出来はともあれ、がんばっている若者たちを見るのは大好きなので、とてもたのしく、有意義な時間でした。

 そしてつくづく、七帆ひかるの顔は好みだ、と思い、暁郷は素敵だ、と思いましたのことよ。えっ、暁郷と同列に語ることなの?!

 
 しつこくてすまんね、まだ『宝塚歌劇チャリティーコンサート』の話。

 だってまだ、トウコちゃんの話してないし。

 なにしろ微妙な構成の急場しのぎっぽいイベントなので、出演者の扱いもなんかアレですわ。

 通常の組の枠を超えたイベントならば、「スター顔見せ」が最初にあり、半ばにあり、それとは別にそれぞれの見せ場がある。
 しかし今回は時間の都合なのかなんなのか、十分な「顔見せ」がない。
 ので、後半に出演する「トップスター以外の人」は、影が薄かった。

 それはふたりの娘役トップスター、花ちゃんと檀ちゃんのことでもあり、2番手スターのなかでもどうやら別格らしいトウコとあさこ(このふたりはトップや新専科と同等に銀橋付き)のことでもある。

 出番遅いから、待ちくたびれちゃったよー(笑)。

  
 トウコちゃんの歌は、何故か『心の翼』でした。

 どーやら持ち歌じゃなくてもいいんだな、歌いたい歌でいいんだな、という選曲権の在処を教えてくれるよーな歌。
 トウコちゃんの持ち歌なら、それこそ他にいくらでもチャリコンっぽいものがあったろうに、わざわざ『心の翼』。

 大抵の人は、この歌を好きなんだと思う。
 だからトウコが選んでも、大切に大切に熱唱しても、不思議はないと思う。

 思うけど。

 わたしは、痛いケロファンだから。
 なんでもまずケロに結びつけて考えるから。

 ケロが最後のムラ茶会で泣きながら歌った『心の翼』を、トウコが今ここでわざわざ歌いますか!!

 すみません、アタマの中、勝手にケロトウで盛り上がってました。
 てゆーか、ケロちゃんのこと考えて、べーべー泣きました。

 ありがとうトウコ。
 すばらしい歌声だ。
 聴きたかった歌声だ。
 ありがとう。べそべそ。

 ……ちょっと眉毛長すぎた気もするけどな。>トウコちゃん

 
 こーゆーイベントで、たかちゃん真ん中、というのも新鮮でした。
 てゆーかはじめて。
 5年トップやってて、はじめて。
 そうか、トドがいないとこーゆーことになるんだ……。

 たかこは、「真ん中」でした。
 違和感なく。

 隣にワタルみたいなでーっかいおにーちゃんがいてなお、たかこが真ん中なのがよくわかった。
 ああ、時は流れてるんだなあ。そうしみじみ思った。

 つーか本来なら、たかこの隣にはワタルがいたんだ……。
 好きだったけどなあ、宙組発足時のジャンボくんトリオ。色気はまったくないけど、健康的でかわいくて。

 ただ、わたし的にたかこもワタルも攻キャラなんで、当時は捕食順で悩んだなあ(←悩むな)。あー、ちなみに『望郷』のときは海人×蔵人で、ワタさんが受でした、わたし的に。さえちゃんの蔵人も見たかったなー。

 トリを飾るのがたかこだというのも、ただただ新鮮で。

 ここぞとばかりに聴かせてくれますよ、『ファントム』!!
 あれー?
 なんかたかちゃん、歌うまいぞー。
 今宙組公演中で、言っちゃなんだけど、たかちゃん歌はいまひとつな感じなのに……『ファントム』だとここまで聴かせてくれるの? 歌に費やしたレッスン量とかがダンチなのかしら。たんに正塚ソングと相性悪いのかもしれんが(前にもそーゆーことがあった)。

 もういちどあの繊細な青年エリックの歌声を聴くことができて、素直にうれしかったです。

 
 最後の『見上げてごらん夜の星を』は、入場時に配られていたペンライトを振りながら。
 なんだけど。
 最後の曲で振れと指示されていたから、みんないそいそ従ったんだよね。

 なのに、歌いながら銀橋に出てきたさえちゃんが、「みなさまお手元のサイリュームに灯をともしてください」とわざわざ言うもんだから、場内爆笑。
 みんなもう、とっくに灯をともしてるんですが。
 そんなことは見たらわかるだろーに、いかにも台本通りって感じに言われたら、そりゃウケますわいな。
 何故そこで、台詞を変えないんだ、さえこ。
 「まだの方は」とひとこと付け加えるだけで、ギャグにならずにすんだのに。

 その機転の利かなさというかどんくささと、きれいな笑顔がツボですよ。
「かわいいっ!!」
 と、わたしたちは大騒ぎ(笑)。

 そうそう、kineさんはほんとに歌ってました、隣で。
「みなさんご一緒に」
 とか言われても、誰も歌ってないのに。
 さすがだkineさん。

 
 震災時と復興後のスライド上映があったんだけど、これは正直興醒めな色が濃かったっす、わたしとしては。

 だって完璧に、阪急電鉄の宣伝だったんだもん。

 あのー、被災したのも復興したのも、伊丹駅と三宮駅だけじゃないっすが……。
 せっかくの「チャリティーコンサート」が、所詮企業の宣伝でしかない現実を、見せつけてくれてしょぼんな気持ちになった瞬間でした。
 いや、宣伝だということはわかってるよ。売名行為だろ。マスコミ呼んで、イメージアップしてるんだろ? わかってるよ、大人の世界はそんなもんさ。
 でも、今ここに集まっている人たちの気持ちは、ただの宣伝じゃないし、「スターさん素敵♪」だけでもないんだよ。
 なんでそれを、自分でぶちこわしにするかなあ。
 阪急って、宝塚って、やっぱ商売下手だ……てゆーか、ひとの心をわかってない。

 そんな「大人の世界」を見せられたあとに、理事長登場でわざわざ日本赤十字のえらい人に目録を渡すパフォーマンスまであったもんだから、余計「宣伝なんだ……」と心が冷えたわ……。

 自分たちの会社に関係ない被災地はどーでもいー、というなら、宝塚大劇場とその関連だけスライド上映すればよかったのに。それならべつに変じゃないのに。
 伊丹駅も三宮駅も、宝塚歌劇とは直接関係ないのに、そこだけ話題にされてもなー。大人って汚いなー。

 そうまでして捨て身で宣伝してるから、さぞやマスコミに取り上げられているかと思ったら、そうでもなかったし。
 やっぱ商売下手……。

 
 コンサート部分は、よかったですよ、ほんと。
 だからなおさら、蛇足的に宣伝した部分が目についちゃっただけ。

 
 チャリコンのあとは、kineさん、ハイディさん夫妻とごはん。
 たのしかったです。きらきら。

 ちょーど電話していて話題に入れなかったからこんなとこで言っちゃいますが、ハイディさんの年賀状、すばらしかったっす。
 てか、似てる!!(笑) って、届いたとき奮えたもん。

 またぜひ、遊んでください〜〜。

    

 『宝塚歌劇チャリティーコンサート』

 ニュースになっているかと思いきや、今日の新聞にはろくに載ってませんでした。
 某藪氏がタカラヅカ記事の連載してるってのに、写真もナシかい、スポニチ。
 ちなみにこのコンサートの収益金は約1000万円だそーだ。

 さて。
 美しげな曲名の並ぶプログラムですでに、奇異の目を引いていた八犬士のテーマ・・・・水夏希。
 せめて曲名だけでももっときらきらしていたなら、よかったのかも。
 直球も直球、八犬士。

 公演を一度観たっきりのわたしには、それがどんな歌だったか思い出せません。

 それまでのステージとは曲調ががらりと変わり、勇ましげな前奏が響く。
 現れたのは、水夏希様だ!

 なんかドスのきいた歌声だぞ!

 里見がどうの珠がどうのと歌ってますぞ。
 伝説がどうのと歌ってますぞ。

 背景の電飾も、これでもかと派手に瞬く。
 コンサート全編通していちばん派手だったのが、この歌のときだ。

 えーっとコレって……ひょっとして戦いの歌なんぢゃあ……?
 てゆーか、ヒーローソングだよね?

 チャリコンでヒーローソングを歌ってはいけない、とはべつに思わない。
 コンサートの意図をくんで集まったお客のために、お客が「よろこぶ」歌を歌うのは、正しいと思うから。
 お客は期待しているよ、スターが「持ち歌」を歌うことを。なつかしい思い出の歌を歌ってくれることを。
 チャリコンだからって、お客をないがしろにしていいわけじゃないから。ファンサービスは正しい姿勢。

 ただ。
 他の人がみんな、持ち歌の中からチャリコンっぽいものを選んでいるのに、そーゆーことに無頓着に「主演作の主題歌」をチョイスした水兄貴の漢ぶりに、ウケただけだ(笑)。

 他にいくらでもあるだろーになあ、チャリコンっぽい歌。
 なにも考えなかったんだろーなぁ。

 最近の彼の持ち歌っていうアレだしな。
 アオセトナ様の、『欲しいモノを言ってごらん』。

 いっそのこと水しぇんがエロエロにフェロモンかっとばしながら、「欲〜しいモノを言ってごらん♪」って客席練り歩いたら、ものすごいことになるだろーに。
 おばさまがた、みんな財布開けてエロセトナ様にお布施しちゃうよ。
 彼が1階席を歩くだけで、100万くらいは軽く集まりそうな気がする。
 ベルトとか襟口とかに、札を突っ込むのね……お札でできたレイとかを首にかけちゃったりするんだわ……ハァハァ。
 お布施をしてくれた人に造花の薔薇でも手渡したりしたら、完璧ね。エロセトナ様へのお布施だけで数100万はいくねっ。

 と。
 妄想してしまうくらい、水しぇんはふつーに大真面目に、ヒーローソング歌ってました。

 宙組に戻ってきた水くんは、確実に色気が落ちている……。
 おそるべし宙組の薄味健康パワー。

 
 続く樹里ちゃんは、音響さんやりすぎですか?って感じの大音響、ガイチは朗々と『宇宙戦艦ヤマト』……布施明だっけの歌。
 新専科のふたりは銀橋アリ。

 わたしは日本語以外さっぱりわからんので、全編英語の樹里ちゃんの歌はあまり響かないんだけど、ガイチのストレートな「愛ッ!」の歌は大変響きました(笑)。
 なにしろ同世代、フルコーラス歌えるんだもん(笑)。kineさんも映画の内容まで語っていたし。みんな『ヤマト』知ってるよなあ。

 
 でもいちばんすばらしかったのは、かなみちゃんの歌。

 泣けました。
 素直に。

 『千の風になって』という歌。
 はじめて聴く歌だったけど、かなみちゃんの慈愛に満ちた涼やかな歌声が、耳に馴染み、心に落ちる。

 癒しの歌声だった。

 今、膝を折って泣いている人の肩をやさしく包むような歌。
 生きることへの、肯定の歌。

 震災に限らず、大切な人を亡くしたことのない人なんて、いないと思う。
 その大切な人が、千の風……空気になり自然になり、この地球になり、今わたしを見守ってくれているんだと思うと、それだけで、救われる。
 感謝する。

 ひとの心は、すばらしいものだと思う。
 

 えーと。

 わたしは単純な人間なので、この歌を聴いて、思いました。

 わたしも死んだら、千の風になる。

 絶対なる。
 そしてみんなのこと、見守るから。
 みんなって誰だ、とにかくみんな。
 わたし人間大好きだから。猫とか犬とか、動物もおおむね好きだから。虫とか魚とか嫌いだけど、死んだあとならきっとわたしでも寛大になって、好きになれると思うから、地球全部を見守る風になる。
 わたしがいないあとでも、みんながふつーに豊かにしあわせに、タカラヅカを観られる平和な世界であればいいと思うから。
 死んだら、千の風になる。

 と。
 とても単純に、思いましたよ。

 生きている今は、煩悩まみれだけどな(笑)。
 

 10年前のあの日についてのMCのあと、トップスター3人で歌う『風になりたい』。

 ……歌のうまい人に一度歌って欲しい歌No.1かもしれんわ、この歌……。
 なにしろ耳に残っているのは、マリコ@タカラヅカきってのジャイアン、の歌声だもん……もしくはワタル@星組の伝統を受け継ぐジャイアン、の歌声だもん……。
 あと、わが友キティちゃんが歌う、「マリコの真似」で、わざと音をはずして歌う歌声……。

 思い出と共に聴く。
 桜の咲いていた花の道。震災の生々しい爪痕。

 黒燕尾の男役たちの美しさ。
 そう、「美しい」ことは偉大だ。
 その美しさで、世界を救ってくれ。
 少なくとも今このとき、チャリコンを開くことができるのは、彼らの美しさを愛でる人たちがいるから。
 美しさは、救いだから。
 癒しだから。
 

 ただ「美しい」だけより、そこに「愛」が加わると、最強だよね。

 どこの誰とも知らない美しい人が歌っているより、大好きな美しい人が歌っている方が、より感動する。

 だから檀ちゃん、ワタルくんが『王家に捧ぐ歌』をひっさげて登場してくれたときは、うれしかったよ。
 感動したよ。

 スターが「持ち歌」を披露してくれるのは、こんなにうれしい。
 なつかしくて、愛しくて。

 そこに「過去」があるから、「思い出」があるから。
 過ぎた時間、帰らない時間。

 かえらないひと。

 なにもかもひっくるめて、愛しいから。

 
 だからほんとのとこ、どんな曲でもいいんだけどね。
 愛の歌でも希望の歌でも、ヒーローソングでも(笑)。

 それを歌う人に、それを聴く人たちに、愛という共通意識があるから。

 
 意義のある催しだったと思う。
 チャリティーコンサート。

 
 阪神大震災のことで、記憶はいろいろあるものの、忘れられないもののひとつ。

 関西芸能界、壊滅。

 という見出しの記事があった。
 某スポーツ新聞だ。半面以上使っての、大きな記事だった。

 宝塚大劇場半壊、吉本喜劇も大打撃、復興の目途立たず。関西芸能界は、文字通りの壊滅と言える。

 そーゆー内容だった。

 かなしかったよ。
 わたしがヅカファンだからというだけじゃなくて。
 ただ、かなしかった。

 宝塚歌劇復興第一弾の『国境のない地図』を観に行った。

 なにがおどろいたって、花の道の周囲の風景だ。
 花の道の両脇は、古き良き時代の木造家屋が並んでいた。行楽地によくある、おみやげ屋さんだ。

 それらが、なくなっていた。

 あるものは倒壊したまま無惨な姿をさらしており、あるものは更地になっていた。

 花の道もあちこち崩れたり、隆起や陥没があった。

 それでも、桜が咲いていた。

 
 さて、あの日から10年。
 今日は『宝塚歌劇チャリティーコンサート』だ。

 新専科スターと花と雪以外のトップコンビ+2番手勢揃いのコンサート、予定時間はたった1時間。
 うわー、見るからに微妙(笑)。
 きっとひとり1曲持ち歌披露するだけで終わるぞー。どんな構成にするんだろ。

 入口でペンライトとプログラムをもらう。
 ペンライト、太っ。サイリュームなので折って発光させるんだけど、コレを折るのはけっこう大変かもしれない……。

 kineさんとふたり、座席についてプログラムを開き、ふたりそろって首を傾げた。

 八犬士のテーマ・・・・・・・・水夏希

 八犬士? って、『里見八犬伝』かよ。
 チャリティーコンサートで何故、『八犬伝』……っ!

 他の出演者はみんなそろってバラード系、「愛」や「希望」系の歌でまとめてきている。
 そんななかで、水くんひとり『八犬伝』……。

 ……なあ、ハズしてないか、水夏希?

 どうやら曲目は本人の選択らしい。お茶会で言っていたそーだ。

 ……なあ、ハズしてないか、水夏希?

 でもまあ、他の出演者の歌も、つっこみどころはいろいろありそうだ。
 ガイチは『宇宙戦艦ヤマト』だし。
 あさこは、さだまさしだし。
 『国境のない地図』はワタルやさえこ(+たかこ)で歌うというし。
 何故かトウコは『心の翼』だし。

 プログラムに『見上げてごらん夜の星を』の歌詞が載っているところを見ると、最後はわたしたちも歌わされそうだし。

 てゆーか、最初の曲が、タニだし。

 1曲目がタニ?!
 いいのかソレ。
 そんなコンサートってアリなのか?

 まあタニちゃんの曲目は『Life』で、この間までバウホールで歌っていた持ち歌だからきっと他の歌よりは歌い込んであってレベル的にも大丈夫かもしれないし、曲自体はいいんだから、しっとり歌ってくれればいいか。

 とか。
 プログラムを見ただけで、話が弾む。

 
 幕が上がれば、大階段。
 ミラーボール・セットオン。

 中央に立つのは、さえこ・たかこ・ワタル。

 う・わー。
 豪華だ。

 素直に眼福。
 曲は『見上げてごらん夜の星を』。

 しっとりと歌い上げたところで、司会者のまやさんタキちゃん登場、観客全員で起立して黙祷を捧げたりと、おごそかなムード。

 その次の瞬間に。

 幕が開き、タニちゃん登場!!

 あ、あの。
 えーっと。

 誰か教えてください、大和悠河は、どこへ行くんでしょう??

 タニちゃんは、アクセル全開でした。
 幕が開くなり、そこには「イッちゃってるポーズ」のタニちゃん。

 ノリノリっす。
 腰振ってます。
 タメまくって歌ってます。

 しっとり、なんてもんじゃございません。

「ここはオレ様のライヴ会場、素敵なオレ様を見て失神するなよお嬢ちゃんたち!!」なノリのタニ様ですよ。

 あの、さっきまでわたしたち、黙祷したりなんだりで、とってもおごそかだったんですが。

 幕が開くなりトップテンションのアナタは、なんなんですかっ!(笑)

 『ステラマリス』のキャラまんまというか、どっかまちがったままのタニちゃんがそこに。
「オレ様はセクスィ〜〜スタァ」
 と、キメまくるタニちゃんがそこに。

 わたしはツボを直撃され、笑いをこらえるあまり、呼吸困難に。
 隣を見れば、デイジーちゃんも同じように必死に声を殺して笑っている。

 教えてください、タニちゃんはどこへ行こうとしているのですか?
 彼の固定スキルは「アイドル」だったよね?
 なのに最近、ちがうスキルを目指しているよーなんですが。
 「色気のある大人の男」だけが許されるポーズを取りまくってますが……どどどどうしよう。
 見てはいけないものを見ているよーな気がする……。

 ほんとにもー、かわいすぎだぞ、大和悠河!!

 カケラも似合ってないのに、場の空気も一切無視して腰振って歌う姿に、胸が熱くなりました。

 てゆーか、このコンサート全部が、このノリだったらどうしよう……?

 きりやんも水くんも、かなみちゃんやお花様まで、みんながみんな「ノッてるかいっ?! イェ〜〜イ!(ウインク、ばちこ〜ん!)」なノリだったら、どうしようっ?!!

 
 おびえましたとも。

 まったく、罪が重いぞ、タニ。

 次に登場したきりやんは、ふつーに情感たっぷりにしっとりと歌い上げてくれました。

 なんだよ、ふつーに歌っていいんじゃん!!
 アレはタニだけか。タニが独自にやっていることなのか。
 ああもおっ、タニったら!(笑) かわいいぞタニ!!

 西城秀樹のよーなパフォーマンスのおかげで、タニちゃんの歌が下手だったのかどうかまで、わたしの五感はとても感知できませんでした。

 手堅いきりやんの次は、いよいよ水夏希の登場です!

 続く!
 

 10年前のあの日。

 大阪在住のわたしは大した被災もしていない。そう思っていた。
 が。
 今ごろになって思う。

 ……運が悪かったら、死んでたかも?

 と、思ったのは先日防災テーマの番組を見たとき。
 阪神大震災で亡くなった人の何割かは、倒れてきた家具が原因であるらしい。

 そーいやわたしの部屋も、家具は倒れたなあ。
 てゆーか、部屋の家具すべてが倒れた。
 ひとりでは持ち上げられない重さのテレビも、本棚も、オーディオもなにもかも。

 そうか……テレビや本棚の下で寝てたら、死んでたんだ……。
 テレビの下なら確実だな。うちのテレビ、わりと高い位置にあるから、あの高さからあの重さのものが落ちたら、潰れるわ。

 家は外壁が落ちて、結局改装工事したっけ。市から震災の補助金、いただいたわ……うわ、けっこう被災してたんだ??

 隣の市では建物が倒壊していたわけだから、そこから大して離れていない我が家もそれなりにひどいことにはなっていたんだろう。

 でも、自分のことなんかぜんぜんぴんとこない。
 被災した部類に入らない。
 テレビでは、毎日もっと大変な目に遭っている人たちのニュースが流れていたもの。
 

 あの日わたしは、休みを取っていた。

 バウホール公演『グッバイ・メリーゴーランド』を観るために。

 揺れているので目が覚めて、そのうちおさまるかと黙ってベッドにいたら、ぜんぜんおさまらない。
 えっ、長いよ?
 長いってば。
 えっ、えっ、いつまでつづくの?
 ベッドから出るなんてこと、カケラも考えなかったなあ。
 地震なんかすぐにおさまるって、無意識に思ってたから。
 いつまでも揺れていることにおどろいていた。

 そしたら、本棚が倒れた。

 びっくりだ。
 倒れるか? 本棚だよ? めちゃくちゃ重いんだよ?

 そしてわたしの視界は、そこでブラックアウト。
 アタマの上に、本が降ってきたからだ。

 ベッドの枕元も、本棚だった。
 ただしこちらは作りつけ。壁に打ち付けてあるので、本棚は倒れない、はずれようがない。
 かわりに本棚に詰めていた本、500冊が全部わたしの上に落ちてきた。

 500冊……すみません……全部コミックです……。

 マンガ本で命拾いした。
 百科事典とか文学全集とか、格調高く単価も高く、本自体重いものなら、絶対ひどいことになっていた。
 あ、コミケカタログだったりしても、やはりただではすまなかったろうな。アレが顔に直撃とかしたら、大ケガ必至(コミケカタログなんぞ保管していません)。

 ブラックアウトしたまま、音だけを聞いていた。
 部屋中のものが、倒れる音がする。とくにテレビが落下する音は、大きかった。
 倒れる音と、壊れる音。
 てか、いつまで続くの??

 揺れがおさまったあとも、しばらくは動けなかった。

 実際問題として、500冊の本の下敷きだと、身動きとれなかったのよ。わーん、誰か助け起こしてくれえ。

 なんとか本の山から起きあがって。

 見回した部屋の、すごかったこと。

 部屋の中の家具という家具すべてが、部屋の中央に向けて倒れている。
 無事なものなどひとつもない。
 壁が剥き出し。
 本棚の後ろの壁なんて、見たのいつ以来だ……?
 棚の上のものも全部落ちているし、斜めになったタンスは引き出しが開き中身をぶちまけている。

 忘れられない光景。

 ええ。
 なにもかも落ちて倒れているというのに。

 カーテンレールの上に飾っていた轟悠の写真だけが、無事だった。

 忘れられませんとも。
 めちゃくちゃになった部屋の中で、なにごともなく微笑むトドロキ様!!(笑)

 おそるべしトドロキ!!
 同じよーにカーテンレールの上に飾っていた他のものは全部落ちてるのに。トド様だけ無事ってのは何故?
 お守りにしたら効果があるかもしれない、トドロキ様。

 
 我が家は停電してるしガスも止まっているので、親の家に避難した。
 親の家で見ていたNHKでは、「地震に驚き、道路で転倒してケガをした人」のニュースを繰り返していた。
 朝6時。その時点では、ケガ人はその人だけだった。
 そう、まだ事態がわかっていなかったんだ。

 転んでケガをした人がいる、という話をえんえん繰り返すニュースを眺めているより、わたしには心配事があった。

 今日のバウのチケット、どこよ??

 部屋はめちゃくちゃ。
 あのなにもかも倒れて落ちて足の踏み場もなくなった部屋のどこに、チケットがあるんだ??

 2時半の開演までに、チケット探してコンタクトレンズ探さなきゃ。
 オペラグラスはいらないわ、今日は2列目だから。

 停電しているから、探し物は外が明るくなってからだ。
 まずわたしは親の家にあったビデオカメラで、いろんなものを撮影して回った。
 だってわたしの部屋、ほんとにめちゃくちゃだもの! ここは記念に撮っておくべきでしょう!!

 自分の家やら親の家やら、近所の風景を撮影しました。
 いや、なんとなく。
 当時のわたしは、なにかっちゃービデオカメラを持ち歩いて、撮影するのが大好きな奴でした。

 「転んでケガをした人」のニュースをぼんやり眺めている、わたしの家族の姿も撮影。

 
 陽が昇ってから、母を連れて自分の部屋へ。

 母は未だに言う。
「震災の朝、アタシがいちばん最初にした仕事は、『娘の眼鏡を探すこと』!」
 だって、眼鏡がないとなんにも見えないんだってば!
 そして、眼鏡を置いていた本棚は倒れてちゃって、ひとりでは起こせないんだもの。
 ふたりがかりで本棚を起こし、散乱したモノの中から、母に眼鏡を探し出してもらった。
 眼鏡をかけて、改めてふたりで他の家具を元に戻す。ひとりでは持ち上げられないもん、手伝ってもらうしかない。

 まあ、母はわたしの部屋に入るなり、
「アンタよく生きてたね」
 と感心していたので、文句言いつつも手伝ってくれた。自分の家の片付けもあったのにさ。

 ガスは止まったままだったけど、電気は昼前にはついたんだっけな。
我が家の暖房はガスONLYだったので、凍えながら部屋を片付けたなー。

 それでもわたしは、タカラヅカに行くつもりだった。

 現状がわからなかったから。
 なんせテレビでは「転んでケガをした人がひとり」と言っているだけだし。近所のひとたちもみんな無事で、挨拶したし。
 きっと大した地震じゃなかったんだ。
 我が家がボロいから、こんなことになっているだけで、他のちゃんとした家はどーってことなかったんだ。
 さあ、チケット探さなきゃ! タカネくんのバウを観るぞぉーっ。

 つけっぱなしにしていたテレビのニュースが、だんだん現実に追いついてきた。

 被害者の数が、数分おきに増える。
 燃え続ける街の映像が映る。

 あ、あれ?
 転んでケガした人ひとりだったはずなのに。
 死者の数が、増え続けてる。
 高速道路、ひっくり返ってる? 電車、脱線してる? ええっ??

 
 ここまで大きな事件だと、公的な情報がどれだけ遅いかがわかりました。

 地震から何時間かあとまで、わたしはタカラヅカを観るつもりでいたんだもん。
 ふつーに。

 
 結局丸1日、部屋を片付けながらニュースを見ていたな。
 あの日。

 
 宙組公演『レヴュー伝説』の感想。

 予備知識はありません。
 まったく。

 ただ、kineさんとふたりで、休憩時間にロビーのスカステお稽古映像を見たかな、ちらりと。
 たかちゃんがお花様を派手に持ち上げてリフトしていたのが「すげえ」と思ったのと、なにげにその後ろの人たちも派手に相手を持ち上げてリフトしていたので「そっちもすげえ」と思ったことぐらいか。

 あ、あとふたりして素顔のお花様に「かわい〜〜!!」と歓声あげていたっけか。

 
 それにしても。

 今さら、在位12年の花總様が「薄幸の少女」を演じるとは、夢にも思っていませんでした。

 そしてなにがおどろいたかってあーた。

 今さら、在位12年の花總様演じる「薄幸の少女」が、めーっちゃかわいいことですよ!!

 いやあ、さすがだ花ちゃん!!
 わたしとkineさんの大ウケポイントはそこでした。

 薄幸の少女ジジ@花ちゃんてば、マジかわええ。

 ケロと同期で、ここまで幼い役を違和感なく演じるなんてすごいよ!(そこか!)
 そーいやお花様って、ケロより年上だよね?

 なんだかんだいって花ちゃんはすごい人だよ。
 芝居でもあんなどーしよーもない「下書き」作品でしかないのに、彼女の演技と存在感で引き締めていたし。
 ショーでも納得の美しさと存在感。
 「スター」だわ。

 たかこと花ちゃんを見ると、「タカラヅカを見た」って気がする。
 「美しいものを見た」……ココロがささくれ立っているときなんか、涙が出る美しさだよ……。

 
 そうそして、たかこも今回すごいことになってる(笑)。

 星の王子オーレリアン@たかこ、ってなんですかありゃ!!

 いかにもな王子様然として出てこられた日にゃあ、爆笑ツボ直撃で憤死しそーになったよ。

 オーレリアン様素敵♪(顔の前で手を組む。目には星でよろしく)

 なんなの今回のショー。
 笑わせるのが目的ですか。
 やーん、たのしー(笑)。

 王子様たかこと薄幸の少女花ちゃんに、ときめいちゃったじゃないのー(笑)。

 いいなあ、こいつら。
 千年王国の王子様とお姫様。
 永遠に美しい妖精たち。

 タカラヅカは夢の世界なんだから、これくらいかっとばして「夢」を見せてくれるカップルがいてもいいと思う。

 
 それとは別に。

 宙組は、若手を売る気がないのか??

 4番手以下の「売りドキ」な男たちの場面が一切ないことに、心から疑問を持った。

 えーと。
 他の組ならすでにもう、あひくんクラスの男たちは、場面もらってるよねえ?
 若手3人とかで銀橋渡ったりとか、たとえ数小節であろうとセンターでソロ歌って他の人にバトンタッチしたりとか。
 若手中心のシーンの、真ん中にいたりするよねえ??

 なんで宙の若手たちは、ただのバックダンサーでしかないの?

「これでも、ものすごーく使ってもらえるようになったんですよ」
 と、宙組下級生ファンのデイジーちゃんは言う。
「出番が増えた、立ち位置がよくなってる、って、ファンは泣いてよろこんでるんですよ」

 出番とか立ち位置とか言ってもソレ、あくまでもスターの後ろででしょう?
 一般人はバックダンサーやコーラスグループなんか見ないって。
 短くても他愛なくても、ピンで立たなきゃダメだよ。
 真ん中でライトあびてこそ、「あれ誰?」って言ってもらえるのに。どんなにいい位置で踊ってたって、真ん中にスターがいたら一般客はその真ん中のスターしか見てないってば。他はみんな「同じ顔」としか思ってもらえないよー。

 たとえば星のれおんなんか、ロケットの真ん中でひとりくるくる回ってひとりで拍手あびてるんだよ。
 あーゆー扱いしてこそ、「ねえアレ誰?」って思ってもらえるんじゃん。

 後ろの下級生必死で見るのはコアなヅカファンだけだってば。
 一般客惹きつけなきゃ、未来につながらないよー。

 なにやってんだ宙組。
 あひくん以下を売り出すつもりないのか??

 たか花、水くん、タニちゃん、この3人(たか花はふたりでひとり勘定かい)が順番に出て引っ込むだけ。他は全部その他大勢でしかない。

 宙組の「売り」が「たか花」だということはわかったうえで、それでも思うよ。
 若手の出番を増やせ。と。

 このままじゃ宙組は先細り必死だよ……。
 若手を売る気がないんじゃさ。

 とりあえず、たか花のデュエット1回減らして、組長の出番減らして、若手の場面を作ろうよ〜〜。
 わたしが「企業」ならそうするよ。「商売」のために考えたって、それがいちばん正しいよ。
 なんでまともに「商売」考えずに、組長に髪に花をつけさせて真ん中で踊らせたりしてるんだろう……。
 わっかんねーよ、タカラヅカ。

 
 そーいやわたしたちが観たのは貸切公演で、終演後に「スターに花束贈呈」てのがあったんだが。
 これが、トップスターと娘役トップスターと、2番手に花束贈呈、だったんだな。

 当然、たかちゃんと花ちゃんと、水くんだった。

 たしか劇団は未だに宙組はW2番手とか、うそぶいてたよね……。

 タニちゃん、本気で3番手落ちしてたんや……。
 劇団発行以外の雑誌や新聞ではすでに「宙組2番手・水夏希」になって久しかったけどな。
 舞台の上でも、こんな扱いか。

 まあ、水しぇん組替えで、タニちゃんの立場も持ち直すからいいのかな。
  
 
 あ。
 あともいっこ、じつはめっちゃ不満がひとつ。

 たか水なシーンがないっっ。

 たかこと水を絡ませろ〜〜。
 最後なんだぞ、たか水を見せろー。
 たかこってばお花様とばっか絡んでるから、つまんねーよー。

 草野には腐女子ハートは伝わらないってわかってるけどさ。

       
 気になったのは、正塚晴彦は、水夏希を嫌いなのか好きなのか、どっちかってことだ。

 観たのが1週間前なので記憶が風化している宙組公演『ホテル ステラマリス』の話。

 由緒正しき素敵ホテルの「ステラマリス」も不況の波にはかなわない。倒産寸前のホテルにやってきた学者らしー男ウィリアム@たかこは、実は金満企業の回し者。ホテル再建がお仕事だった。
 なんで騙すかな。そうとは知らずに彼の案内役をしていたステラマリス・オーナーの娘ステイシー@花ちゃんは複雑。オーナー@まやさんも支配人のアレン@水くんも、ウィリアムの正体は知っていたのに。
 企業の回し者のわりにウィリアムはいいヤツで、真摯にホテル再建を模索している様子。みんな一丸となって、ホテルを存続させようじゃないか、えいえいおーっ。
 ……という話らしい。首傾げ。

 
 他のなにより気になったのは、アレン@水くんのキャラクタだった。

 また同じキャラかいっ!!

 ムジャヒド、ベニートときて、さらにまた同じ役?!
 クールな外見と暑苦しい愛情を持つ、二枚目半の善人かよ。都合のいいお友だちタイプの男かよ。

 3作連続同じタイプの役ってのは、水くんのことが好きだから「このタイプ以外やらせたくない」の? それとも嫌いだから「どーでもいー。てきとーにやってろ」ってことなの??

 座付き作者としてどうなのそれって。
 正塚は水くんに、なんの期待もしてないの??

 …………そんなことがいちばん気になったわたしは、相当な水ファンでしょうか……。

 
 にしても、かっこよかったです、水くん。
 アレンじゃなくて、ベニートだって言われても「そっかあベニート、ダンサー辞めて実家に帰ったんだね。ステイシーっていう幼なじみがいたのかー」とぜんぜん違和感なく話がつながりますが。

 そしてナチュラルに水くんと、主役のたかちゃん中心に「これでたか水見納めなんだ……」と思って観てたらさー……。

 どうしよう、ウィリアム@たかことアレン@水のラヴストーリーに見えてしまった。

 ベニートってば愛情過多な男だからさー、親友のこと愛しすぎてるっつーの。
 あれ? ベニートじゃなかったっけ、こいつ。そうそう、親友じゃなくて、大企業からやってきた外様副支配人のことを、愛しすぎてるのよねー。そんなに一途に見つめるなよー、問答無用で信頼するなよー。
 ほら、幼なじみの許嫁が、その外様くんに惚れちゃったじゃん。で、そこで身を引きますか、さすがベニート。
 ってゆーか、「あの男に惚れる気持ちはわかる」ってことだよね。わかるのかベニート。てゆーか、もう惚れてるのか。それで自分は男だから身を引いて、自分の好きなふたりをくっつけよーという自虐的な博愛精神発動してるな?

 片想い萌えというツボを持つわたしは、ベニートのこの片想いっぷりが大変ツボでした。
 あんたが好きなのはステイシーじゃなくてウィリアムでしょー。幼なじみだから、親愛を恋だとカンチガイしてただけで。
 大丈夫、まだウィリアムとステイシーはできあがってないから、行け行けベニート、まだ君にも未来はある!!

 なんにせよ、ウィリアムに片想いしているベニート……ぢゃねえ、アレンに萌え♪ ですわ。

 
 と、途中からアタマが別方向へ働きだしたので、それはそれなりにたのしく眺めていたんですが。

 「作品」としてはどうなのよコレ。

 感じたことをひとことで言うと冗長でした。

 めりはりに欠ける、ただだらだら流れていくだけのよーな感じ。
 もちろんオシャレな画面やらたのしいダンスナンバーやらで彩ってはあるんだけど。

 ミュージカルシーン以外の、「芝居」としてのこの物語は、「下書き」みたいな気がした。

 絵でいうなら、スケッチブックにえんぴつで軽く書いてみました、っていうか。
 花瓶に生けられた花の絵だとしたら、どんな花がどんな位置でどんな大きさでどんな花瓶に挿されているか、おおまかなアウトラインだけ書きました。これをもとに、ひとつひとつの花や、花瓶を書き込んで、さらに色を塗ります。
 今でようやく20%かな、できあがって人に見せていい姿になるまでは、あと80%は手を加えなきゃな。

 てゆー感じ。
 まだ下書き、どこになにを書くか、とりあえず印を入れただけのモノ。

 できあがりはきっと素敵なんだろーな、とは思えるけど……でも所詮下書きだしな、コレだけ見せられてもなに言っていいかわかんないや、できあがったら見せてよ。
 て、言いたいわ……。

 でもコレ、すでに商業作品としてお金取ってるんだよね。

 なんかさあ、アレみたいだよ。
 コミック雑誌でまれにあるじゃん。
 えんぴつ書きまんまのマンガが載せられてることって。

 ふつうマンガってのは、ペンで書かれていて、えんぴつは下書きなの。ペンでなぞったあとは消してしまうものなの。
 でも時間がないとかいろんな理由でペンを入れて完成させることができなかったマンガを、下書きのえんぴつのまま雑誌に載せたりするのね。
 えんぴつ書きだから当然、線は汚い。背景もろくにないし、ベタもトーンもない。かろうじて人物の顔がかいてあるし、台詞は写植が貼ってあるので「読む」ことはできる。
 どうしてもその作品が読みたい人とかには、たとえそんな状態でも、雑誌に掲載されていたらうれしいのかもしれない。

 しかしそれって、「商品」として、プロのクリエイターが作る「作品」として、どうなのよ。

 『ホテル ステラマリス』はミュージカルシーンはマメにつくってあるから、「えんぴつ書きの下書きに、スクリーントーンだけ貼ったマンガ」みたいなもんかな。
 スクリーントーンはふつう、ペン入れをしたあとで貼るものなので、下書きの上に貼るもんじゃない。下書きまでしか書けなかった、でも時間がないからこの上からトーンだけ貼ってお茶濁しちゃえ! てな感じで。

 やれやれ。
 下書き見せられちゃったかー。

 てゆーかコレ、下書きだよね?
 手を抜いたんだよね?
 ほんとうならこれから肉付けして仕掛けして、いろいろ書き込んで美しく仕上げるはずだったんだけど、ソレがかなわなかったから、「もういいや」ってことでトーンだけてきとーに貼って雑誌に載せちゃったマンガだよね?

 彫刻で言ったらまだ面取りの状態だよね?
 これから彫るんだよね?

 料理で言ったらレシピ通りに材料刻んだとこだよね?
 これから調理をはじめるんだよね?

 こんなにこんなに冗長なのは、まだ下書きだからだよね?
 これから練り上げて、おもしろくするんだよね?

 
 とりあえず、主人公の人格ぐらいは、書き込もうよ。

 なんか、わざとか? ってくらい、主人公の人格が謎になる演出がしてあるんだけど……下書きだからだよね?
 ほんとうは、あんなに散漫じゃないし、無意味な演出もしてないんだよね?

 そうだよね、正塚せんせ?

                    
 さて。
 観てからもう1週間経っているので記憶の風化が著しい、ムラ公演の感想いっときます。

 往復夜行バス使用の車中2泊日帰りでケロトークショーを見て、その翌朝はムラで大劇とバウのダブルヘッダーっすよ。正気とは思えないスケジュール。
 さすがにテンションの落ちているわたしは、友人と約束でもなけりゃ、ムラまで出向く気力がないのだわ。
 kineさんと一緒だー! というおたのしみのみで、老体に鞭打ってムラまで遠征しました。
 うっかり阪急電車で熟睡してて、宝塚駅に着いてることに気づかなかったよ……気がついたときは車両に誰もいないの。焦ったわ。

 えーっと、どっちを先に観たんだっけか。本気でもう記憶が薄れている……。

 たしか、花組バウホール公演『くらわんか』を観たんだっけな。主演・蘭寿とむ、演出・谷正純。

 上方落語原作の、人情喜劇。
 出演者は若手のみ、主役を含めた役替わりありまくりの、落ち着きのない企画。
 わたしが観たのはパターン2です。

 主人公の八五郎@らんとむは、老若男女、人間妖怪神様問わずなんでも来い!なタラシ男。2時間の舞台の間に、いったい何人の男女をタラシていただろう。
 初っぱなから、梅川@城火呂絵、甚兵衛@汝鳥伶というばーさんとオジサマをタラシていたので、目眩がした。
 じじばばから行きますか!! すげえや八五郎!
 てゆーか、汝鳥伶様にプロポーズするらんとむ! そしてそれにときめく汝鳥伶様!! うわー、いいもん観た……ってゆーかディープ……。
 最初にばーさまとラヴシーンで、次がじじい相手にプロポーズだから、もうなにもこわくないよね。
 八五郎の次のお相手は、貧乏神@朝夏まなとだった。
 えーと、性別は「オス」です、念のため。貧乏神は男性。びんぼくさい気弱なイケメンにーちゃん。
 この気弱なイケメンにーちゃんを、八五郎さんてば手込めに……じゃねえ、口手八丁で虜にしちゃうんですわ。
 敵の刺客だったマライヒを、自白させたあと恋人にしちゃったバンコランを彷彿とさせますわ。
 「ろんりー・ぷあ・ごっど」と哀しげに歌うビンちゃん@貧乏神に、色男ビーム炸裂で「ろんりー・ぴゅあ・ごっど」と歌い返す八五郎の凶悪なこと!! うっわー、ビンちゃん堕ちちゃったよー、「あなたの妻になります、どうなとしてください」って崩れ落ちちゃったよ。動揺。

 てなふーに、ストーリーはただひたすら鬼畜色男八五郎の総攻ハーレム物語。
 出てくるキャラクタほぼ全員、八五郎のラヴァーです。
 どれだけ八五郎が凶悪にハーレムの王様をしているか、ってだけで、話が進んでいく。
 なにしろ八五郎には親衛隊がいるしな。
 「八五郎LOVE」って書いたハチマキとはっぴをおそろいであつらえた男たちがいるのよ。彼らは八五郎のためだけに生き、彼の言動に奔走するの。どれだけ八五郎が最悪でも、人の道を外れていようとも、その愛のかけらも恵んでもらえなくても、親衛隊の男たちは八五郎のために生きる! 罪を犯す! ドロボウ上等! 愛する八五郎のためだイェイイェイ!!

 えーと、八五郎の凶悪色男ぶりを眺めているだけで、気がついたら幕が下りてました。

 で結局この物語のヒロインは、ビンちゃんだよねえ?

 八五郎の妻になった、気弱なイケメンにーちゃん。
 なし崩しにカラダを奪われ、気がついたらココロまで奪われてました、なんかオレの人生まちがってるよーな気もするけど……彼の笑顔を見たらそれだけでとろけちゃうから、ま、いっか。
 てゆー話だよねえ?

 抱腹絶倒でした、そーゆー意味で。

 
 喜劇としては、わたしはあまり笑えなかったんだけどな。
 ギャグの先が読めるし、バカで笑わせるのは好きじゃないんだ。低脳な人間には、笑う前に怒りがわく方だから。
 でも年配の方たちにとてもウケていたので、それはそれでアリかな。
 笑うところまでいかなくても、おもしろい芝居ではあったし。

 それにしても、ものすげー大阪弁を聞いたって感じ。
 本気でコテコテだぁ。
 関東人のkineさんにはわからない言葉が多かったそうだ。そりゃそーだろー。
 わたしは大阪土着民なので、ヒアリングもできるし翻訳もできるけど、使ったこともなければ、日常ではすでに死滅している言語を立て板に水であびせられて、感心したわ。
 てゆーか、なつかしかった。
 うちのおばーちゃん、あんな単語使ってたわ……そうかアレ、大阪弁だったんだ……おばーちゃん以外口にする人いなかったから、てっきりおばーちゃんの造語だと思ってた。
 大阪土着民ですらひるむ、死滅した言語による芝居。もちろん、それはそれで意味のあることだ。
 DVD出すときは、標準語字幕入れてもいいんじゃないかな。バイリンガル芝居DVD。

 
 八五郎@らんとむは、熱演でした。
 彼が実力派だということは、知っている。これまでの実績からいって手堅い芝居を見せてくれるだろーことは、予想がついていたさ。
 期待に違わぬ主役ぶりでした。
 てゆーかよくやったな……2時間出ずっぱりの台詞の洪水。
 らんとむならさもありなん、とは思いつつも、やっぱよくやった。
 鬼畜男ぶりも板に付いてたよ。そーだよな、攻キャラをやってなんぼだよな、いよっ、オトコマエ!

 予備知識ナシで観に行くのが通常なので、今回もそうだったんだが、たじろぐほど、出演者がわからなかった。
 知ってる人がいない……見分けがつかない……誰なのアナタ……。
 唯一わかったのは、幽霊小糸@きほちゃんだけでした。
 らんとむときほちゃんだけ? それ以外まったく知らない、わからないなんて……。

 小糸@きほちゃんは、納得のうまさ。
 ほっとする堅実なヒロイン芸。声からしてチガウよ。
 スタイルいいから、幽霊姿がコワいぞ(笑)。

 休憩時間にkineさんとふたりで出演者表の前で、ぼーぜんとしましたさ。
 名前を見ても、ぜんぜんわかんないんだもんよ。
 顔の見分け云々以前に、ほんとに知らないんだわ。

 2番手位置の役である貧乏神@朝夏まなとだって、名前ひとつ知りませんでした。2002年初舞台って……そりゃ知らんわ……。中卒だから本気で若いってばよ。

 花組といえば、新人公演の低レベルさに目眩がした組ですが、この公演ではそれほど下手だと思わなかった。
 たぶん、時代劇だからだと思う。「別世界フィルター」かかってるんだな。男役の声や立ち居振る舞いができてない女子校の文化祭だったとしても、大阪弁だし時代劇だし、勢いでなんとかなるんだと思う。
 『La Esperanza』みたいなナチュラル系現代スーツ芝居だと、同じレベルだと目も当てられないものになっちゃうんだなあ。

  
 おもしろかったので、別キャスティングでまた観てみたいわ。
 しかし。

 コレって、ワークショップだよね? 料金もワークショップ料金にした方が、よかったんじゃないのか?

           
 ケロちゃんトークショーのあと、わたしたちは「HOTEL DOLLY」に移動した。

 なつかしの「HOTEL DOLLY」……っていうか。
 11月の終わりから毎週末、泊まりに来てたわけですな。いなかったのは第九コンサートの日と、お正月だけで。
 マナさんに「ドリーんちには、いつも緑野さんがいる気がする」と言われるわけだわ……。

 いやはや、お世話になりました。
 と言いつつ、すでに次の宿泊予約を入れているあたり……しかも本人の承諾なしに、kineさんの宿泊予約まで入れてるあたり、まったく懲りてません。

 さて、今回ドリーさんちに行った理由のひとつは、『ノバ・ボサ・ノバ』雪組新人公演ビデオ鑑賞。

 いつだっけか、ドリーさんちで『ノバボサ』新公ビデオを見たのだわ。んで、ぜひサトリちゃんやkineさんというしい担たちと一緒に見たいもんだと思ったんだ。
 ドリーさんとふたりで流し見したときは、「舞台上で衣装が脱げてしまったしいちゃん」を確認するためだったのよねえ。
 ええ、目的はしいちゃんだったのよ。確実に。
 なのに何故わたし、まちかめぐるの立ち位置を必死に解説していますかっ?!(泣)
 しいちゃん主役ビデオなのに、何故まちかめぐる……!
 しいちゃんの話をするはずが、ああっ、勝手に口が、まちかめぐるを語っている……!! おそるべし、まちかめぐる!

 とゆーことがあったのだわ。

 でも今回はサトリちゃんという、まごうことなきしい担と一緒。
 今度こそ、しいちゃんの話題に終始できるはず。

 
 ………………。

 
 なーぜーだー!!

 何故みんなしてまちかめぐるを語っているの?!

「まちかだ、まちかが出たーっ」
「ハダシってのは、罪が重いねえ。ハダシのまちか……」
「リリカルね、『ハダシのまちか』」
「恋するまちか」
「うわー、ディープなもの見てる? 恋するまちか」
「恋してますよ、まちかなのに!」
「すべての女には、まちかを捨ててレアちゃんを選ぶ権利があると思う……」
「あのハチマキ、凶悪。テキ屋にしか見えない」
「テキ屋のまちか」
「逆ギレまちか」
「悲しみのまちか」
「まちか、よろこびの舞!!」

 なんかみょーに盛り上がったわ……まちかめぐる、おそろしい子!!(白目)

 そんななかでも、サトリちゃんはひとり目に星をきらきらさせながら、しいちゃんを見つめていました。

 わたしは『ノバボサ』新公は生で1回観たっきり、映像をこうやってまともに見るのははじめてだったんで、あらためておどろいた。

 しいちゃん、かっこいい!!

 こんなにきれいで、こんなにかっこよくて、こんなにきらきらしていたのね。忘れてたわ。
 この新公を観た当時は、しいちゃんはばりばり路線の上昇気流の男の子だと信じていたもん。
 それくらい、あたりまえにすてきな男の子だった。

 『ラ・ヴィール』のロケットボーイ、新公2番手、そして『ノバボサ』本公演のドアボーイ、前夜祭で某OGに「ドアボーイ役をやる人は、将来トップスターになるのよ」と言われ、「ああ、劇団もこの子をトップスターにするつもりなんだな」と内外にわかる扱いをし、そしてついに新公主役。
 これ以上なく、波に乗っていた。
 躍進するものの輝きが満ちていた。

 なんの疑問もなく、眺めていたよ。
 「未来のトップスター」を。

 そして、そうあってもまったくおかしくない、魅力あふれた若者が、そこにいたよ。

 …………えーと。
 どこでまちがえたんですか?(涙)

 『ノバボサ』新公、マジで悪くないです。
 実際に観たとき、「よっしゃあ!」って思ったもん。
 たとえ、衣装が脱げそうになっても。

 むずかしいショーの新公、しかも『ノバボサ』で、ここまでやれれば合格点じゃん。
 なにがいけなかったの?
 きりやんなの……? 同じ作品で新公主役をやったきりやんの評価が高いから、相対的に落ちたってことなの? でもそんなの、しいちゃんと関係ないやん。

 ひさびさに見て、しいちゃんの魅力を再確認しました。
 てゆーかわたしのなかではすでにしいちゃんは不動のヘタレキャラなので、新公のしいちゃんがあまりにかっこいいことに、うろたえました。

 ええっ、こんなにかっこよかったらソレ、わたしの大好きなヘタレ男ぢゃないわ!!
 わたしがしいちゃんに惚れたのはヘタレてからなので、ちょっと複雑っす。

 てゆーかさ……今より大人っぽい表情してるのは、何故なのよしいちゃん。

 トシとともに若返ってる……? 妖精属だからですか。

 わたしはものすごーく素で「天海祐希に似てる」と言い、ドリーさんに「ソレ誉めすぎ」とビシリと言われちゃいました。
 えー、でも似てるよねえ??

 
 全編かっこよくてすてきなソール@しいちゃんですが、サトリちゃんがとくにツボったよーでリピートかけたのは腰を振るしいちゃんでした。
 何度も巻き戻して見たので(笑)、今も目にやきついてます。
 回すよーに腰を振るシーンがありましてね……あの腰つきは、今の「さわやかしいちゃん」にはないものですな(笑)。
 わたしの爆笑ツボ直撃。腹が痛くなるほど笑ったわー。

 衣装が脱げかけてしまうところは、もとの衣装が白なのと、引きぎみのカメラワークで助けられ、あまり映ってません。生で見たときはすごかったんだけどなー。
 てゆーかこの新公ビデオ、全体的にロングショット多すぎ。主役のことはもっと映してよー(不満)。
 まちかはみょーに映ってるしさっ。

 
 『ノバボサ』新公で歌がうまいのは、ハマコとキムのふたりだけでした。まちかめぐるさえ、うまくない。そうかまちか、成長したんだね……ほろり。
 ハマコはともかく、まだ研2のキムのできあがりぶりはどうなのよ。すげえや。

  
 さて、ドリーさんはサトリちゃんのために『ノバボサ』雪新公をスカステで録画していたんだと、思い込んでいた。
 だからこのままサトリちゃんにあげちゃえばいいのに、とわたしは思っていた。スカステはワンスコピーだから、ダビング不可。データの移譲あるのみ。
「再放送があったら、録画してあげる。このビデオは、わたしが持っていたいからあげられない」
 これから先誰を好きになるかわからないから、できるだけいろんなビデオを保存しておきたいんだって。なるほどなー。
 新公ビデオをそういう意味で保存しておくのは、とても通なことだ。さすがドリーさん、と思って聞いていたのだが。
 サトリちゃんは言ったさ。

「わかりました。ドリーさんがしいちゃんを好きになったときのために、持っていなくちゃいけませんもんね」

 さすがだピュアファン・サトリ! めっちゃ無邪気に言いますか!

 そしてこのときの、「ならねーよ」という言葉を飲み込んだ、ドリーさんの複雑な顔が、ツボに入って床を叩いて笑いそうになった緑野です。

    

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