さて、そんでもっていい加減公演の話いってみよー。

 11日の11時公演は、メル友の晃さんと初顔合わせの日。ドリーさんちでだらだらごろごろ『ベルサイユのばら』(アンドレ@湖月わたる。かっこえー)なんぞを見ていたせいで、東宝に着いたのは結構開演間際。
 遅れるわたしに、「チケットカウンター前にいます」というメールをくれていた晃さんだったが、あれ? 誰もいないぞ?

 彼女は一足先に、劇場内に入ってしまっていたらしい。
 なんでかっちゅーと。

「小泉総理が来てるんですよ!! 思わずガードしちゃいました!」

 チケカウンター前まで出てきてくれた晃さんはそう言う。
 思わぬ来客者にくっついて、劇場内に入ったらしい。やーん、ミーハー(笑)。

 晃さんとはあまり話す時間がないまま、公演時間。
 今度ゆっくりお話しましょーねー。

 さて、小泉首相と一緒にタカラヅカ。

 つってもわたしは2階席だったので、彼と一緒にうっかりテレビに映ってしまうなんてことはないですよ、かめたさん(こんなところでメールの返事・笑)。
 晃さんに譲っていただいたチケットが2階1列目だったんで、1階席の騒ぎはよく見えました。これはこれでたのしいぞっと。

 小泉総理登場でわたしがいちばんどきどきしたのは、『花舞う長安』だけ観て帰らないでくれということでした。
 たとえばYOSHIKI氏は、ショーしか観なかった。自分と関係なかった芝居は観てくれなかった。
 そんなふうに、小泉氏が芝居だけで帰ってしまったらどうしよう。スケジュールの関係とかではじめから決められているにしろ、1部だけで帰ってしまったら、どうしよう。

 あんなものだけを観て、タカラヅカを判断しないでくれ。
 祈るような気持ちだった。
 すっげーどきどきしたよ(笑)。

 べつに小泉氏だからじゃなく、すべての人に対して思うけどな。『長安』だけ観て帰らないでくれ、って。世間に影響力のある人ならことさら。
 あの駄作だけが、ヅカの可能性じゃないから。あれが限界じゃないから。
 『ドルチェ・ヴィータ!』を観てから、タカラヅカを判断してね。お願い。

 結果、小泉氏は最初から最後まで観劇し、そのあともとても愛想よく観客の写真撮影や握手に応えていた。
 政治家ってすげえなー、と思った。
 芸能人も政治家も、同じように人気商売なわけだけど、政治家はここまでサービスいいんだー。へー。
 たぶん1階1列目の大部分の人と、握手をして出て行ったよ、あの人。
 
 わたしはのんきに2階から眺めていただけですが。

          ☆

 およそ2週間ぶりに東宝公演を観ました。
 5公演連続で観たので、記憶は混同、どの公演がどうだったかは、あまりよくわかっていません。

 チェリさんにばらされてしまったので白状しますが、最近芝居で最初から最後まで起きていられたことは1度もありません(笑)。
 カラダにリズムが刻まれているようで、同じところでオチて同じところで目覚めるよーです。すまん。
 いちばん起きていたのは、図らずも農協貸切のときでした。拍手のタイミングや客席の反応がことごとくイレギュラーで、おもしろかったかららしい。

 ショックだったのは、1列目で観劇したときのこと。

 もちろんわたしは、最初から最後まで起きている気、満々でした。
 他の4公演はオチちゃったけど、今回だけは絶対観るもんねっ。誓いの髪飾りも蓮の花もみんなみんな観るんだからっ。
 このチケットを手に入れるために、それなりの労力と手間をかけたんだからっ。元は取るわよー!
 と、息巻いていたのに。

 実際、ちゃんと起きてました。
 観ていました。
 寝た記憶はありません。

 が。

 気がつくと、玄宗が楊貴妃に髪飾りを渡していました。

 あれ?
 なんか、記憶がとんでる?

 おかしい。
 楊貴妃が杯くわえて踊るとこ、観てない。
 てゆーか李亀年の歌、聴いてないぞっ?!

 祭りの夜は観た、梅妃VS楊貴妃も観た、梅妃の「安禄山……!」も聞いた。
 なのに。
 そのあとが何故、「浮気が後ろめたいから、プレゼントでお茶濁し」の髪飾り贈呈シーンになってるの??

 なんで記憶がとんでるの??
 わたし寝てないのに!

「そりゃ寝てたんですよ」

 ドリーさん@今日は仕事で観劇できず、は、すっげー端的に言い切ってくれるし。
「1列目でやっちゃいましたか……」
 って、なまあたたかい目で見るしっ。わーん。

 ごめんよごめんよー。
 そんなつもりはなかったんや〜。

 出演者はいつも熱演ですとも。目にも美しいですとも。
 ただ、どんなにキャストがすばらしくても、作品が破壊されきっているのはつらいんですよ……さめざめ。

 
 ところで2週間ぶりの陳玄礼将軍は、えらく薄くなってました。
 なんで??
 クライマックス、以前ほど傷ついてない。

「情を捨て、義を正されますように!」
 も、えらくあっさりしている。
 ムラでも東宝初日近辺でも、すげえ溜めて言ってたのに。

 『ドルチェ・ヴィータ!』でも、ケロのワタさんやトウコへの愛情表現は控えめになっている。

 ふーん。いつも加速度つけてアツくなる人かと思ってたけど、トーンダウンもするんだー。

 ムラでの「行きすぎた愛情」を知っているだけに、けっこう拍子抜け。
 だってケロの必殺技でしょう? 「公私混同」は。
 素で愛している相手には、つい舞台上でもラヴラヴ光線発しちゃうのよね。微妙に役の範囲内外で。
 そーゆー天然なところ、大好きなんだけどなー。
 役になりきって押さえ過ぎちゃうのって、役者としては正しいけど、「タカラヅカスター」としてはちと物足りない。

 公演も折り返し、あと2週間。
 ヒートアップしてくれることをのぞむ。
 必殺技使っちゃえ、ケロちゃん! キミはいつだって愛の狩人さ!!

 
 唯一ラヴ度が上がっているのが、セーラーのケロしい。

 お前らどこのバカップルですか!!

 初日近辺にわたしを悩殺した「肩組み」や「抱きつき」はなくなってるんですけどね。
 あまり露骨に接触しない分、ラヴラヴ度が上がってて、目眩がします。

「つかまえてごらんなさぁい♪」
「こいつぅ♪」

 を、毎回やるのはどうですか、30男がふたりで! いや、役の年齢設定は知らないけど。ハタチだとしても、変だよ! そんな男たちいねーよ!

 ケロちゃんが、しいちゃんの荷物を持って逃げちゃって、しいちゃんがそれを追いかける、というのは定番になってるよーですね。
 あと、わざと肩やら肘やらをぶつけあって笑っていたり。

 いちゃついてんぢゃねーよ!! と叫びたくなる仲睦まじさ。……てゆーか、恥ずかしいよ、お前ら……。

 5回の観劇のうちいちばんキタのは、きらきらとソロを歌うしいちゃんのことを、真横に坐って、うれしそーに見上げるケロちゃん。
 うれしいのか? そんなにうれしいのかっ?! しいちゃんスマイルを見つめることがっ?! そんなのすでに友情ぢゃねーよ。

 エロスは抑えめ、さわやか路線でホモぶっちぎりのケロちゃんに、めろめろです。

        
 お茶会のあとは、「HOTEL DOLLY」で合宿。
 ドリーさんちは地の利がよく、広くてきれいで、ヅカAV設備完備という完璧さ。すばらしい。
 女の子らしくスパークリングワインで乾杯して、あとは甘いお酒が飛び交っていた。

 いちばんのポイントは、集まったメンバーがケロファンだけじゃないということだろう。

 ムラ楽のときに痛感したんだが、いっそ別のファンの人と一緒にいた方がいいんだ。客観性やある意味突き放した冷静さや、いたわりがあるから。
 ぐずぐずに崩れないでいられるのは、みんながいてくれるから。

 とはいえ。

「今ここにいるメンバーで、星組主要メンバー担当そろっちゃってるよねー。あ、でもトウコ担だけいないか」

 という言葉を笑って聞きながらもわたし、実は首を傾げていたんだよ。
 トウコ以外の星組主要メンバーがそろってる?(ドリーさんは「あたしトウ担でもいいー、トウコちゃんかわいー!」と騒いでました・笑)
 ここにいるのは、ケロとしい、それからまとぶん担当だよねえ? 
 肝心のワタ担がいないじゃん。

 …………すみません。
 kineさんのこと、ナチュラルにしい担だと思ってました。

 そーいやkineさん、ワタさんファンじゃん。素でわかってなかったっ。

 ケロ関連のスカステ映像を途切れることなく流しながら、喋りまくりながら、飲んで食べまくりながら、ひたすらハイテンションに夜は更ける。

 にしても、いちばん愉快だったのは、『JURIの“それってどうなの!?”#6「立樹遥・真飛聖」』を見ているとき。
 しいファンのkineさんとサトリちゃんが最後まで「今日はやめときます、今日はケロさんの日ですから!」と遠慮しまくっていたんだが、深夜3時を過ぎて、わたしが風呂から出てきたときには、ふたりはたのしそーにこの番組に見入っていた。
 ホテル・オーナーのドリーさんはすでにオチているし、その友人のマナさんは帰宅したあとだ。
 リビングの大きなテレビ前に敷いてもらった布団の上で、kineさんとサトリちゃんはしあわせそうにきゃっきゃっやっている。
 元気だなあ。眠くならないのかなあ。てか、若いサトリちゃんはともかく、kineさんわたしと同い年なのに、いつも冷静な人なのに、そのテンションはいったい……(笑)。それにたしか、kineさんだけは素面だったよねえ?

 テレビの中のしいちゃんが、なにか言うたび、表情を動かすたびに、ふたりが歓声をあげてよろこぶんだよー。
 布団の上を転がりまくって、床にアタマぶつけたりしてるの。

 番組よりもしいちゃんよりも。キミら、おもしろすぎ。

「かわいー!!」
 を連発するふたりを眺めながら、「いや、かわいいのはキミらだから!」(微妙にパクらせていただきました、kineさん)と思ってましたよ。

 しあわせな夜でした。

     
「なにやってんですかぁ!!」
 と、後ろから怒鳴られた。
 見れば、ドリーさんとkineさんがいる。
 ケロちゃんのお茶会会場にて。場は握手会の最中で雑然としているときだ。わたしとチェリさんとサトリちゃんのテーブルに、ドリーさんたちがやってきた。

 なにって、あの。

「見てましたよ、なにやってんですか」
 ドリーさんテンション高し。わめくわめく。基本的に穏やかさんなkineさんも、ドリーさんと一緒になってわーわー言っている。

 ドリーさんたちに責められる直前まで、チェリさん他にも責められていたんですが。

 えーと、その。
 よーするに、ケロちゃんと最後の握手をしてもらえるそのときに。
 わたしは、ケロちゃんにお願いをしたんです。

「手を合わせてもらえますか」
 と。

 握手ではなく、手と手を合わせてみたかったの。
 ディナーショーでケロとみなみちゃんがやっていたよーに。

 わたしは、ケロちゃんの手が大好きだった。
 大きくて、セクシーなあの手。

 握手よりも、素直に手を重ねたかった。

 へんなお願いだったんだろー、ケロちゃんは「はあ?」って感じに、それでも快諾して手を合わせてくれた。

 あまり時間を取っては悪いから、じっくり合わせることはできなかった。あわただしくほんの一瞬で終わった。

 舞台であんなに大きく見えるケロちゃんの手は、べつにぜんぜん大きくなかった。
 わたしより小柄な人だから、当然かもしれないけど。
 そうか、べつに大きくないんだ。というのが、おどろきだった。

 どきどきしたまま、お礼だけ言って、逃げるよーに台から降りて。先に握手を済ませていたサトリちゃんのもとへ追いついたら。
「なにやってんですか!」
 あれ?
 わたしのあとから握手をしたチェリさんが、追いかけてきて。
「なにやってんですか!」
 あ、あれ?

 自分の席に戻ったら、次はドリーさんたちが、
「なにやってんですか!」
 あれえ???

 わ、わたしそんなに、変なことしましたか??
 てゆーかみんな、他人の握手するとこなんかちゃんと眺めてるんだ?

 なんでもみんな、わたしのことを心配して、なにかと気にかけてくれていたようです。ムラ茶会があまりにぼろぼろだったので。「あの号泣していた人」とかゆー、恥ずかしい指示語をいただいていたくらいだから、チェリさんはじめ周囲の人がなにげに気遣ってくれていた。
「緑野さん、大丈夫かしら、って心配して見てたのに、なにやってんですか!」
 と、いうことらしい。

 東京茶会はムラ茶会のあの濃密な世界とはちがい、わりとイベント的というかしめっぽくならずに終始した。そのおかげもあってわたしも号泣するほどでもなく、しくしく泣く程度ですんでいた。
 しくしくやってはいたし、いろいろ思うところ感じるところはあったわけだが。
 それとはべつのところで、ケロちゃんの手に萌えていた。
 握手できるのなんか、これで最後だし! 会にも入ってない、入り出もしないわたしが、素顔のケロちゃんと会えるのはきっと最後だし! 楽の入り出はするつもりだけど、人混みの後ろの後ろからこっそり見送るだけで、そばには寄れないわけだし!
 ニアミスはただ一度。接近遭遇するのは今生でこの瞬間が最後。

 それなら、あの手が欲しい。

 ……つーことで。
 お願いダーリン。わたしにその手を感じさせて。

「なにやってんですか」
 と、みんなに責められましたが。
 本能のままにわたし、行動してました。悔いはない。ありがとうケロちゃん。

 わりとわたしはモノを考えずに生きてその場その場で行動しているので、いざ手を合わせたときに「はっ、爪塗ってくるべきだったっ」と歯がみしましたが。手を合わせただけだから、ダーリンにわたしの爪は見えないけど。でも、ダーリンの手と合わさった自分の爪が生まれたままの姿だったことに、恥じらいを感じました。

 それを言ったらドリーさんに、
「『長安』なんか観ているからですよ」
 と言われた。
 ドリーさんはわたしが『花舞う長安』を眺めているうちに、美容院に行っていた人だからなー。たしかにヲトメたるもの、『長安』なんか観ている場合じゃないよなー。

 でもさ、「手」って、裸の部分だよねえ。とか言ってみる(笑)。
 せっかく裸なんだから、裸のままでいいか。生まれたままの姿でいいか。変になにか塗ったりつけたりせずに。
 わたしを魅了したあの手に触れて、感じて、そのまんまのわたしでいるのも、オツかもしれない。

 ケロちゃんと合わせた手で、自分の頬に触れてみる。
 そこにもうぬくもりは残ってないけど、記憶は消えないから。
 この手は、あのひとに触れた手。

 ムラ千秋楽で、泣き出したトウコちゃんの手を握っていた、あの手だよな。愛する者をつつむ手なんだよな。

 翌日もそのさらに翌日も公演を観たけれど、そのたびに「ああ、あの手に触ったんだよなー」とぼーっと考えたよ。
 やっぱあの手、好き。

 端正なオールバック姿のケロちゃんは、なんかもー観音様のよーな風情でした。
 きれいとか美しいとかいうより、「正しい」姿だと思った。地球が正しいように、ここにいるこの人が正しいんだ。って、そんな感じ。

 運のないわたしはもちろんなにも当たらないし、グッズ購入特典の福引きでは2分の1の確率でハズレを引くし。たった2枚しか抽選券が残ってなくて、特賞がまだ残っていたにもかかわらず、わざわざハズレを引くのかわたし。なんてハズさないんだ。
 会場は信じられないほど広くて、壇上のケロちゃんは遠いし、わたしたちの席は歌の巡回コースからははずれているし、ムラ茶のあの小さな場所での凝縮された雰囲気からは程遠くある意味拍子抜けして、ある意味ほっとして。

 とりあえず語り継ぐべきコトは、オギーを泣かせた男・汐美真帆ってコトかな。あれっ、女だったけか?(真顔)
 てゆーか、泣くんだオギー。
 ケロのために泣いて、そして、ケロのためにあの泣かせるディナーショーだの、『ドルチェ・ヴィータ!』だの作ったんかい。
 ケロはそれほど「オギー役者」であるとは思っていない。オギーの好みではあるだろうけど、トウコやかよこほどハマっているとは思えない。
 ムラの『ドルチェ・ヴィータ!』では、ケロはケロであるがゆえに、作品を壊していたし(笑)。
 そんなヤツをそれでも愛し、あそこまでの仕事をしてくれたんだと思うと、感動する。

 
 感謝の気持ちが満ちていく。
 いろんなものに、人に。

 9月2日の発表以来。

 かなしい分だけ、やさしさに出会っている。
 ケロちゃんや、舞台の上の人たちにもそうだけど。

 わたしの周囲の人たちや出来事も。

 失う分以上のものを、得ている気がする。

 ねえ、世界ってさあ、こんなにやさしかったかなあ。
 こんなに美しかったかなあ。

 うれしくて、いとしくて、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 いつかわたしも、やさしく強い人になって、傷ついている人になにかしてあげられるよーになりたいと、心から思う。

 ケロちゃんをますます好きになるのは、こんな気持ちを教えてくれたからだ。
 かなしくて、透きとおって、かなしみがうつくしさやいとしさに変わるくらい、昇華してしまうこと。

 なにかを突き抜けたよーにうつくしいお茶会のケロちゃんを見ながら、そんなことを思った。

    
 ケロ尽くし、夢の3日間を過ごし、よーやく帰阪しました。

 どれだけ夢の中だったかとゆーと、この3日間一度も猫のことを思い出さなかったくらいです。
 今までどんな旅行のときも、残してきた猫のことを思い出さない日はなかったんですが。

 帰りのバスの中でみんなの日記読んだんだけど、おもしろすぎだキミら。笑いかみ殺すの、大変だったよ。

 もずえさんにはついに、わたしがドイツ人だってことをバラされちゃうし。はなはなさんはじめ、わたしに会ったことある人たちはみんな、黙ってくれてたのに(笑)。
 
 さえバウ初日は、もずえさんとの初デートでした。
 かわいいイラスト入りのお手紙までもらっちゃった。あの空回り日記のノリの、手書きのお手紙っすよ? すばらしいですよ。感涙必至ですよ。たとえ内容がハトのことに終始していても(笑)。
 しかもこのお手紙、まちかめぐるのイラスト付きなんですよ?! まちかめぐるですよ?! コムちゃんでもトド様でもなく、よりによってまちかめぐる!!
 ……ありがとう、もずえさん。

 もずえさんとは短い逢瀬の間にいろいろ濃くお話したんですが、とくに日記のネタについては盛り上がりましたね。
 もずえさんが「こんなふうに書いたりして」と言ってくれたので、わたしも「じゃあそれを受けて、こんなふうに書くわ」と宣言。
 日記による夢のコラボレーション。ひとつのネタをふたりで展開!! ……なんてね。

 Shout!の誠さんにもちらりとお会いできて、うれしかったです。もずえさんから直前に聞いて「えっ、あのレシートの人?」と心の中で叫んでしまったんですが、ひょっとしてわたし、声に出してました?

 
 そして東宝にて、いつも熱いメールをくださる晃さんとの束の間の逢瀬を経て、怒濤のケロ茶とケロ合宿(ケロしい合宿?) in 「HOTEL DOLLY」。3日間で5公演連続フル観劇、はてしなく濃く熱い時間を過ごして帰宅。

 それにしても、「HOTEL DOLLY」をあとにしたのはわたしがいちばん遅かったわけですが(ドリーさん、ありがとう!)、先に帰宅していた仲間たちの日記にもれなく「お茶会での緑野の行動」の前振りがしてあるのはなんなんですかー。
 わたしそんなになにかやらかしてました? やったとしたら握手の件だけだし、握手だってそんな、思わせぶりな前振りが必要なものでもなし。……ねえ?(誰ともなしに同意を求める)

 この3日間、情報量が多すぎて、みんなと過ごした時間がたのしすぎてせつなくて、なにから書いたらいいのかわかりません。

 みんなみんなありがとう。緑野はすっげえしあわせでした。とてつもなく涙腺弱くなってるので、いろんなとこで泣きが入りますよ。ありがとー、みんなと過ごせた時間やかわした会話を思い出しては、泣けてくるんだよー。笑って話していたことでも、あとになると、泣けてくるの。
 年をとると涙もろくてねえ……さめざめ。

 
 膝の上から降りない猫がいい加減重くて仕方ないので、そろそろベッドへ移動しますわ。日記はぼちぼち書きます。ねーむーいー。

        
 さて、2日連続さえバウ『熱帯夜話』です。今日はプログラム売ってました。みんな当然プログラム買ってます。昨日もらったコピーを眺めているのは、わたしぐらいのもんです(貧乏人)。

 作品的には、退団バウ公演である、という事実ゆえに成り立っている感じ。
 ヒットパレードと、名前をもじった役名、舞台人たちの舞台と楽屋裏の物語、文化祭前夜を思わせる青春のかほり、そして、地球最後の日。

 サエール@さえちゃんを座長とするある劇団。無事に初日の幕が開いて、サエールは仲間たちとある高層ビルに忍び込んで打ち上げをすることになった。何故高層ビル? 何故忍び込む?! ……なんてツッコミは置いておいて。
 劇団内は自由恋愛奨励らしい。
 アーチー@あーちゃんとサエールは、元は恋人同士だったが今は別れて、アーチーには別に恋人がいる。リュウ@越リュウはなんかえらい年離れてないか?の若い団員の女の子ネネ@ねねちゃんとラヴラヴらしーし、お調子者のカーリー@ほっくんはシーナ@たまこちゃんにアタック中。……てな具合に。
 学校の七不思議と同じノリで、この高層ビルにも「幻の90階」が存在するとかで、サエールたちはそれをたしかめることにする。「学校の怪談」じゃないんだから、そんなバカな……というツッコミは置いておいて。
 階段を上がれ上がれ、あれ?なんかみんなと離ればなれ? 螺旋階段は夢かうつつか、感覚をマヒさせて。
 サエールの前にはさっきから、イカレた格好のふたり組、船長@さおたとティンク@れみちゃんが現れてはなつかしい思い出を見せている。ふたりは何者? そしてその目的は?
 それだけで引っ張るのかと思いきや、突然現れたるマギーJr.@マギーが臨時ニュースを読み上げる。巨大隕石が地球に激突するとゆーのだ!! そんなバカな……というツッコミは置いておいて。

 なにしろ劇団の話だから。
 あたりまえに彼らはステージに立ち、またさえちゃん……サエールは人気スターで。彼には、「なつかしい舞台の思い出の役や歌」があり、それを「彩輝直の思い出の役や歌」として再現できる仕組みだ。

 
 それにしても、物語としてなにがやりたかったのか、なにを言っているのか、わたしのアタマではさっぱり理解できませんが、退団バウ公演だから言及せず!(通常公演だったらツッコミまくるぞ、ヲイ)
 さえちゃんのサヨナラを盛り上げる、という至上目的があるから、辻褄あわなくてもポエムがサムくても作者脳内自己完結で観客置き去りでも、とりあえず赦す(笑)。
 全編「オギーを目指して、スベっちゃいました☆」てな作りなのも、赦す(笑)。
 それとも、オギー役者であったさえちゃんのための、オマージュかしら。オギー作品のパロディっぽくなっているのは。

 ストーリーは置いておいて、とにかくさえちゃん。
 いろんなさえちゃんを、「全部見せてやるぜ!」な心意気がうれしい。

 今日も気持ちよく泣いてきました。
 泣けば泣いた分だけ、きれいな道ができる。わたしがさえちゃんを見送るための道。退団者を見送る道。うまく泣けずにいると、未練が積もって、いろんなものが愛せなくなってしまう。きれいな人を見送るために、わたしもきれいになる、そのための涙。退団公演に「泣かせ」演出がしてあるのって、そのためだと思うよ。
 ケロの舞台にしてもそうだけど、泣きポイントって観るたび変わるよね。舞台が生もので、観ているわたしも常に心が動いているせいだと思う。いろんなところでいろんなことを感じて、思って、毎回チガウ涙を流す。

 それにしても、「ローズ」は反則でしょう。
 ついこの間、この歌を歌って「宝塚での最後のお仕事です」とか言っていた人がいたんですけどっ?
 退団する人はみんなこの歌、歌わなきゃなんないの? 決まりなの? しかもふたりとも歌がへ……ゲフンゲフン。

 言葉を濁したあとで言うのもなんですが。
 それにしてもさえちゃんって、ほんと歌下手だよな(笑)。

 彼女が歌い出すたび、ツボに入って笑いそうになる。
 ケロを見ていても思うことなんだけど、「歌が下手」であることをわかったうえで好きになっちゃうと、その「歌の下手さ」すら、チャームポイントになっちゃうんだ。
 うっわー、またしてもすげーことになってんなー。ああでも、いいわあ。ぽわん。……てな感じ。
 下手さが愛しいというかな。こまったな(笑)。

 第1幕は、さえちゃんヒットパレード。
 オスカル、という派手な当たり役を持っているのは強いよな。『ベルばら』はとにかく派手でインパクトのある作品だから。コレでまず一発カマシてくれると、あとのヒットパレードが盛り上がりやすくなる。

 それにしても。

 あああ、ほっくん。
 えーとえーとえーと。

 ほっくんファンの人、今すぐバウホールへ行きましょう。駆けつけましょう。ほっくん、えらいことになってますよ。

 ほっくん、フェルゼンやってますよ!!

 目が点になったもんよ……フェルゼンですか! よりによってフェルゼンかよ?!
 びっくりだ。

 いや、歌はすばらしかったですよ。聞き惚れましたともさ。ああ、それにしてもフェルゼンって……。ハマコがフェルゼンやってたら、これぐらいおどろくかな。

 そんでもってほっくん、女装もしてますよ!!
 女になって、さえちゃんと色っぽく踊ってます。
 どどどどどーしよー、あたし、なにを見てるんだろう。ほっくんが女だよー、うわー。

 2幕では、悪の美青年さえちゃんに誘惑される青年をやってますよ。ラヴシーンありっすよ! からんでますよ!!

 はあはあ。ほっくん、すげえ。ほっくん見るだけでも値打ちあるって、マジでコレ!

 あ、つい熱く語ってしまった。
 ほっくんはわたしにとって、月組の「まちかめぐる」の位置にまで出世した子だからなあ。さえちゃんを語るはずが、ついほっくんを語っちまったよ。
 今回ほっくんマジいいから、ぜひ見ておくべきだー。

 
 いかん。思いっきり横道に逸れてしまった。

 えー、とにかく、さえちゃんヒットパレード。
 時の流れと思い出と、「もうお別れなんだ」というこちらの先入観ゆえに、舞台上の「青春のかほり」や、「そのポエムはいったい?!」のさおたさんだの、ピーターパンだの、突然すぎてびっくりの「地球最後の日」も、ついでに最後の楽屋落ちも、「サヨナラさえちゃん」を盛り上げる要因になる。

 めそ。

 
 ところで、夢咲ねねちゃんが新公シシィに抜擢された理由のひとつは、あさこと同じドレスを着られる娘役という要因を満たしているからではないかと。
 ねねちゃんって身長、あさこと同じくらいだよね? 文化祭観たけど、ありえないくらいでかい娘役だった記憶が(笑)。
 とりあえず、脚長っ。いつ見てもボンバーだ。

 
 うっかりほっくんを語りすぎたために、文字数も時間もなくなっちったよ……さあっ、明日はケロ茶だ〜〜!!

     
 わたしにこの芝居を見せろっっ!!(鼻息)
 

 さえちゃん主役で、なにが見たいですか?
 オギー演出のセンシティヴ・ストーリーが見たいです。はかなくも美しいものが見たいです。
 ああ、だけど。

 そうよ、そうなのよ。
 さえちゃんは、ソレだけじゃないのよ。

 さえちゃん主役で、江戸川乱歩『黒蜥蜴』!! しかも黒蜥蜴は美青年でよろしく!

 彩輝直バウ・パフォーマンス『熱帯夜話』初日に行って来ました。
 退団発表ゆえチケットが手に入らないにちがいないとヘコんだわたしでしたが、現実って不思議、バウホール下には「当日券発売中」の文字が。あ、ありえねえよ、そんな……。
 ファンはいくらでも何回でも観ることができるってことだけど、それってうれしいやらかなしいやら……。

 しかもどういうことなの、「プログラム発売延期」。入り口で、キャスト表のコピーを配ってました。これがほんとに、ただのコピー。なんの工夫もない、ただの白黒コピー。事務所のコピー機であわてて刷りました、てなびんぼーくささ。
 プログラム売場では、他に売るものがないので、「彩輝直のクリアファイルいかがですか?」と、おねーちゃんたちが呼び込みをやっていた。

 なんかいろんな意味で、ものがなしい幕開き。

 でもそんなこと、どーでもいいんだ。

 たのしかったからっ!!

 2幕の最初に「劇中劇(ショー)」があるんだけどねっ、これがもー、もろツボ!!

 「美賊・黒薔薇」よ?!

 舞台は大正期くらいの館の舞踏会。
 伯爵夫人だの男爵夫人だのが、ドレス姿で踊っているのよ。カーキ色の軍服を着た帝国軍人もいるわ。振り袖姿の令嬢と、その恋人らしいスーツ姿の青年。
 館の主は、妖艶な和服の美女。
 まさに江戸川乱歩の世界。「黒蜥蜴」の世界。

 美賊・黒薔薇のターゲットは、舞踏会に招待されていた美しい令嬢。

 館の主・黒瀧夫人とは仮の姿。彼女……いや、「彼」こそが、黒薔薇なのだ。

 美しい青年の姿となり、黒薔薇は令嬢を弄ぶ。
 黒薔薇を追う探偵、令嬢を追う恋人の青年。

 令嬢を「コレクション」の一部に加えた黒薔薇は、次に彼女の恋人の青年までを毒牙にかける。妖しいまでの美青年・黒薔薇に翻弄され、恋人青年もまた、彼の「コレクション」に……。

 そして探偵と黒薔薇の戦い。黒薔薇を捕らえるはずの探偵もまた、彼の手のひらの上で踊るのだった……。

 という。

 あるときは妖艶な美女、あるときは美貌の青年……美賊・黒薔薇が、さえちゃん。
 和服姿がたまりません。洋館に和服の女主よ? 螺鈿のよーな暗いきやびやかさ。
 美青年のときはもちろん洋服だしねっ。

 これだけでもたまらないのに。

 いちばんツボを直撃した配役は。

 探偵@越リュウ!!

 ホームズを彷彿とさせるフロッグコートで登場、端正なスーツ姿。
 冷静に館に立ちながらも、次第にかき乱されていく様がもう。

 「探偵と怪盗」ってのは、永遠の萌えシチュエーションよね?!

 究極の愛憎、エロスよね?!

 探偵@越リュウ×美賊@さえちゃんっすよ?!
 大正ロマンっすよ?!

 萌え〜萌え〜萌え〜。

 くるくる回っちゃうわ。
 これぞ耽美ってもんですわ。

 この話を、1本の芝居として見せろっっ!!
 ショーの一場面じゃなくて、バウでいいから、ふつーに芝居として公演として独り立ちさせて。お願い神様。
 観たいよ。観たいよ、この芝居。

 ストーリーはありがちワンパタでいいから。
 ただ美しく妖しく、耽美をきわめてくれればいいの。
 漆に金箔、とかの暗い日本の美しさを見せてくれればそれでいいの。

 悪のさえちゃんと、悪を追うはずがいつの間にか惹かれているリュウ様が見たいの〜〜っ、じたばた。

 他のキャスティングもそのままでいいから。
 黒薔薇に籠絡される青年がほっくんなのは、正直どうよ、と思うけど、それすらそのままでいいぞ。
 ほっくんに耽美は似合わないけど、彼の健康さが「僕ノンケです」と言いたげな真っ当な青年らしさに合っていたとは思うから。

 
 思いがけず、堪能しました、『熱帯夜話』。
 なにをやるのか、どーゆーコンセプトの催しなのかもわからないまま観に行ったんですが。
 素直に、おもしろかった。

 切っても切っても彩輝直、さえちゃんを好きなら至福のとき。
 他のみなさんもみんなそれぞれ見せ場があり、オイシイぞ。

 出演者のファンなら、見て損はないっしょ。
 チケットまだあるみたいだから、行くがよろし。

 とくに、さおたさん、ほっくん、越リュウはオイシイぞ〜〜。
 ヒロインのあーちゃん見るのもひさしぶりだしな。
 新公シシィ役の夢咲ねねちゃんをチェックしたい人も、見るがヨシ。

 あと個人的に愉快だったのが、愛を語る越リュウが見られたこと。

 越リュウってほら、キャラ的に、恋人がいてラヴラヴで、マジに告白して、って役をやらない人じゃん? 脇役者だから、と言ってしまえばそれまでだが。

 しかし今回、劇団員リュウ@越リュウには、恋人がいるんですよ。男一匹、本気で惚れたたったひとりの女なわけですよ。
 その彼女に向かって、愛を語るのよ。

 女の子と向かい合っていちゃつくんじゃなくて、その場にいない恋人に向けて独白するわけだから、客席に向かって、愛を語るのよ。

 リュータロー様の熱っぽい視線が、愛の言葉が、わたしに向かっている?! てなカンチガイをさせてもらえますよ?!(笑)

 愛に濡れる越リュウ……ハァハァ。

 
 濃くていいステージでした。
 他の語りはまたのちほど。

     
 わたしのアタマの中にあるのは、クラスで劇をやろうとするのび太くんたちの姿だ。

ジャイアン「おい、オレの役はいい役だろうな」
のび太@何故か脚本係「も、もちろんいい役だよ」
ジャイアン「台詞が少ないんじゃないか? ここで台詞を増やせよ」
のび太「ええ? でも……」
スネ夫「ここで『このままでは陛下といえども、問題もございます』って入れればいいんじゃないかな。そしたら、ものすごーく難しいことをやる人、みたいじゃない?」
ジャイアン「よし、それだ。それでいこう」
のび太「そんなこと言ったら、物語がおかしくなるんじゃ……」
ジャイアン「なんだと? のび太のくせに逆らうのか?」
スネ夫「のび太のくせに!」

 ……なーんてね、フフ(半ば自棄)。

 『花舞う長安』の台詞重複の話、続き。

 ただでさえ駄作で目も当てられない話だっつーのに、それをさらに耳障りにする重複台詞の山。
 それらのほとんどが、よりによって専科の星原さんの台詞と見せ場なのが、とてもいやな感じ。

 政治的なモノが感じられて。

 なんですか、つまり、星原さんつーのは、ヨイショしないとイカン人なわけですか?
 おべっかつかわないとイカンのですか?

 星原さん自身がそんなこと求めてないとしても、そーゆー風に気を遣って作品壊さなきゃならないよーな立場の人なんですか?

 それとも、酒井せんせが星原さん大好きで、彼の出番を増やしたくて無茶したわけですか?

 星原さんのためだけにしたことだとしても。

 逆効果だから! 余計なコトして、余計高力士をバカっぽく見せているだけだから!!

 政治的だか個人的だかわからないが、なにかしら意図があるんだろう、この偏り方は。
 世の中きれいごとだけじゃ回らないから、それはべつにいいよ。
 ただ問題は、「そーゆーことは、観客にわからないようにやれ」ってことですな。

 こんなにバレバレで、しかも台詞の重複とかゆー、いちばん稚拙な方法で出番水増しして、作品のレベルさらに落として、高力士の賢さにも泥を塗って、なにもかもめちゃくちゃにしてしまっている。

 心から、思うよ。
 酒井ってほんと、バカなんだな。 溜息。

 わたしが星原さんなら、こんなヨイショの仕方はありがた迷惑だわ……。
 重複させない、たった一度の台詞で、ちゃんと重厚さを表現できる人なのに。星原さんに失礼だわ。

 
 重複台詞がバカに見える、見本をあげておきましょう。

すずみん「都、長安へ攻めてくるのも時間の問題かと思います。ヤツは陛下を裏切ったのです!!」
玄宗「わかった。安禄山め。……よくも裏切ったなっっ」

 だからっ、今さっきすずみんが「裏切ったのです」って言ってたじゃん!
 玄宗、人の話聞けよ!!

 ここのやりとりはほんと、玄宗がバカに見えます。
 「裏切った」は、1回だけにしておけ。すずみんか玄宗か、どちらかだけが言え。どっちが言っても問題ない。ただ、重複した場合、あとから言った方がバカに見える。

 あ、すずみんの役名おぼえてないもんでな。ひとりだけ役者名ですまん。

 
 画面だけ眺めていたら害のない舞台なんだけど、この台詞の重複が耳障りで耳障りで。
 こんな言語センスのない台詞は、聞いていてつらいのだわ。
 思わず推敲しろよ、と思ってしまうもん……。つーか、誰も添削してやれないのか……やれないのがヅカだよな……しょぼん。

 博多からこっち、ハコが変わるごとに期待したよ。誰か教えてやれよ、と。重複してるよ、まちがってるよ、と。
 でもずーっと、まちがったまま。
 まあ、某元理事長が「少しも早く」を決め台詞にしているくらいだから、日本語のマチガイなんか、どーでもいーんだよなー。齋藤作品なんか大地に膝をついて脱力するくらい、日本語まちがいまくってるもんなあ。
 それでもいいんだもんなあ……。

 
 重複台詞の例をいちいち抜き書きするのがめんどーで、今まで書かずにおりました。
 他にも耳障りな部分はいろいろあるんですが……も、いいや。

 安禄山@トウコの、

「身分を考えたから、ここまで登りつめてきたのですよ。へっへっへっ、これ以上の肩書きがいるのですか」

 究極の助平笑いですべて、帳消しにしておきますわ。

 へっへっへっ、て……。

 いくら悪役だからって、その笑い方はどうなの……?
 やりすぎ……やりすぎだよ、トウコちゃん!!(笑)

 そのときによって、「ふっふっふっ」だったり「はっはっはっ」だったりするんですがね。
 「へっへっへっ」と言ってるときも、多いっすよ。

 好きだぜ、安禄山!
 その潔い助平ぶりが!!(笑)
 中年はそーでなきゃねっ!!

  
          ☆

 こんなところでなんですが。

 かめたさん、ワインとお茶、ありがとー。
 家族で大喜びしていただいてます。

 ママと弟とわたしとで、乾杯しましたよ。
 弟は、普段絶対に家では飲まないんだけど、あのワイン見たら、のそりとグラス持って来て坐ったよ。ツボに入ったらしい(笑)。
「甘い酒か。甘いのなら飲んでやろう」って。甘党だからな〜〜。

 おいしゅうございました。
 ほんとにありがとう!!

     
 いつか書こう、と思いつつ、めんどくせーので先送りしてきた話題。

 あの有名駄作『花舞う長安』にも、いいところはちゃんとある。
 主役カップルがラヴラヴなことや、衣装が美しく豪華であり、安禄山以外はみんな似合っていること(好きだけどな、あの似合ってなさが・笑)や、舞台上に目にたのしい美しさを全編保っていることなど。
 つまり、脚本以外の部分だけにしか取り柄がない、物語以前の作品であることには変わりないんだがな。

 物語としてはまず成立すらしていないので、なにも語る気にはなれないが、アタマを空っぽにして「これは物語ではない。これは物語ではない。これは物語ではない」と自分に言い聞かせて眺める分には、美しくていいのかもしれない。
 観葉植物とか、水槽の熱帯魚を眺めるハートで。

 そう思ってわたしはなまあたたかく眺めてきたんだが、どーしても耳障りな台詞がある。
 言い回しがどうとか、正誤だとか、時代考証だとか、そんな小難しい話ではない。

 台詞の重複が耳障りなんだ。

 なんでそう、同じことを繰り返し言うの?
 それも、ふつーの台詞じゃなくて、説明台詞を。
 説明台詞ってのは通常、「あまりやってはいけないこと」だよねえ?
 他の部分で表現すべきことを、時間がないとか技術がないだとか、もろもろの理由で「台詞で説明する」なんてこと。
 台詞ってのは人間の会話のはずで、ふつーに生きていたらそんな不自然なことは言わないが、芝居の進行上仕方なく、だらだら説明させる。技法としてアリだけど、あまり格好のいいものじゃない。下手な作家ほど説明台詞を多用する。
 1回言わせるだけでもかっこわるいっちゅーのに。
 それを何回も繰り返すのは、なんの意味があるの?
 2度繰り返さないと、観客が理解できないと思っている?
 しかし、それほど難解な事柄を説明しているわけではないので、よーするに作者がバカなんじゃないの? と、わたしは思っちゃうんだよなあ。

寿王「玉環は、私の妃となる女です」
玄宗「わかっている。お前には追ってもっと素晴らしい他の妃を迎えるようにしてやろう。高力士、お前に任せる」
高力士「と申されても、玉環様は寿王様の妃におなりになられるお方でございます」

 このノリで、台詞は重複しまくり。
 この場合、高力士の「玉環様は寿王様の妃におなりになられるお方でございます」は、いらない。その直前に寿王が説明しているんだから、ここで繰り返す意味はない。むしろまちがっている。
 「と、申されても……」で、止めておけよ。一から十まで説明するから、作品がよりバカっぽく見えるんだ。

玄宗「安禄山が言うには、その方が世にもまれなる宝を手に入れたというので(略)」−−1
玄宗「玉環のことを知らせたのは、安禄山とお前(高力士)ではないか」−−2
玄宗「お前(高力士)が、武恵妃に瓜二つの娘がいるゆえ、ごらんになりませんかと言った(略)」−−3&C

 玉環のことを聞いた、ってだけのことを、なんで立て続けに3回も言わなきゃならないの?
 1回で十分だ。

 しかも、

玄宗「本当によく似ている、瞳が武恵妃に生き写しだ」−−A
高力士「陛下、いくら武恵妃様によく似ているとはいえ、玉環様をお連れになるとは……」−−B

 の台詞のあとに、前述の−−3&Cの台詞を言っているので、ここでも重複。なんで3回立て続けに「武恵妃に似ている」ってふたりで言うの?

 言語感覚が鈍い、としか思えない。
 無駄なんだもの。説明台詞の重複なんつーもんは。

 基本技術として、台詞重複は耳障りでしかないというのに、その「失敗例」がほとんど高力士@星原さんに集中しているっていう事実がまた、いやな感じがするんだよな。

 たったひとりに集中するのって、変じゃないか? 主役ならまだしも、ただの脇役だよ? 狂言回しでもナレーターでもないんだよ?

 そんな偶然はあり得ない。
 作為があるから、こんな結果になったとしか思えない。

 例を出そう。

玄宗「しばらくは高力士の言葉に従うといい」
高力士「このままでは陛下といえども、問題もございます」
玄宗「だから、お前に任せると言っているではないか」
高力士「玉環様を芳楽公主様のもとにお預けしましょう」

 これは台詞自体は重複していないが、やりとりとしてはまったく無駄だ。
 玄宗は高力士を信頼し、はじめから彼に「任せる」と言ってる。なのにわざわざ高力士が異を唱え、玄宗に同じ意味の言葉を繰り返させ、結局は「高力士にお任せください」という結論に至る。
 だーかーらー、はじめから任せる、了解、で済むことを、なんでこんなにまわりくどく意味の重複をさせなきゃならないのよ?

 この無駄なやりとりで得をするのは、高力士だ。
 まっすぐなロープに結び目を作ってそこで流れを止める。物語としては無様になるが、高力士というキャラクタに「見せ場」ができる。
 とりあえず、高力士が有能である、ということを印象づけるエピソードになる、だろう(わたし的には疑問だが、いちおーな)。

 だが、なんのために?
 高力士は主役ではない。わざわざ物語の流れを堰き止めてまで、見せ場を作る必要はない。
 内容を重複させなくても、高力士が有能であることは表現できている。なのに何故、ことさらにまだるっこしいことをする?

玄宗「しばらくは高力士の言葉に従うといい。高力士、任せたぞ」
高力士「わかりました、玉環様を芳楽公主様のもとにお預けしましょう」
玄宗「なに、姉のところに? (略)さすがは高力士だ」

 と、ちゃんと話はつながるのに。
 わざわざ重複させる真意は?

高力士「お妃様は、いかなることにも、見えない振り、聞かない振り、ましてやご政情に関することは一切お話になってはなりませぬ」
楊貴妃「それは何故?」
高力士「宮廷では、見猿、聞か猿、話さ猿」
楊貴妃「……わかりました」

 それは何故、ってなんでいちいち聞き直させる?
 聞き直させて、どんなすごいことを教えてくれるのかと思いきや、「同じことの繰り返し」。意味ないじゃん。

 ここも、先述の例と同じ。
 台詞を重複させ、流れを堰き止め、やっていることは、高力士の見せ場作り。

高力士「お妃様は、いかなることにも、見えない振り、聞かない振り、ましてやご政情に関することは一切お話になってはなりませぬ」
楊貴妃「……わかりました」

 で、いいじゃん。わざわざ重複させなくても、十分高力士が有能だということはわかるって。
 むしろ、重複させることでよりバカっぽくなってるんですけど。

 無駄な、意味のない重複。
 それがみな、高力士のスタンドプレイ・シーン。

 このことが、さらに作品の質を下げている。

 なんかコレって……すごーくヤな感じなんですけど……。

続く

    
 わたしがちょっとSさんと長電話している間に、みなさん次々とブログを更新して、しかも交換日記みたいになってるし……。

 えー、まずドリーさんのドルチェ・ヴィータ@Sさんの名前、せっかく「S」という素敵なイニシャルを活かさないテはないので(同じよーに「M」だとしても素敵なイニシャルだとわたしは言ったでしょう・笑)、サトリさんでどないですか。サテリコンにも音が近いし♪ サテュロスといえばすずみんだし♪(えっ?)
 いつも、本人にも周囲にもお伺い立てずに、勝手に日記で名前つけて書いちゃうんですけどね。今回なんか出遅れたわ……。
 てゆーか、そんなにあちこちに出没して、みんなに会いまくっているSさん……もとい、サトリさんが悪いんですよーっ。名前つけるの間に合わないじゃん。

 名前をつける権利はわたしにあるんだいっ。サトリちゃんと最初に知り合ったのわたしだもん! と、先住権を主張してみる(笑)。

 あ、ドリーさん、サトリさんちゃんと新公行ってたそうですよ。

 
 んで、交換日記。
 とゆーか、交換日記。

 「み」さんもドリーさんも、なんかすごい日記書いてません……?
 わたし、なにもんですか……。
 ただの日記書きにすぎないんですから、わたしがブックマークしたからとか、「ひみつ日記」でどうこうとか、わたしたち以外の人はきっとぜんぜん気にしてませんって!!
 だからこんなふーにブログ上で「交換日記」もできるんだし。

 緑野はお友だちが増えてうれしいのだーっ。

     
 リンクはしない主義だったのに……。
 てゆーか、このサイトの「二重リンク」が理解できなかったの。
 リンクしてくださる方のところには、ひとつリンクがあれば読みに行けるじゃないですか。なんで、自分と相手と、二重にリンクしなければならないの? いわゆるHPの相互リンクとはチガウわけだし。無駄じゃん? って、思ってたのにー。

 なによなによ、「み」さん、kineさん、ドリーさんだけでたのしそーにお喋りしてるー。
 わたしも入れてよ〜〜。じたばた。

 とゆーことで、はじめてブックマークしましたっ。
 気分はフランツ・ヨーゼフです。

「愛のために、信念を破ろう!!」

 なるほどなあ、ブログが限られたメンバーだけの掲示板になるんだ……。へーーーー。

      
 お茶会のために上京するのは何ヶ月も前に決まっていたことなのに、交通機関の予約をきれーさっぱり忘れていた。
 いつものバスが売り切れ!!
 あわてて他のバスを探す。
 ……がっ、すべて売り切れてるってばよ。びっくりだ。
 ネットで探せるところは上から順に空席情報をクリックしていったけれど、全部「残席数0」。

 仕方ないなー、めんどくせーけどあそこにするか。

 と、昔何度か使ったバス会社に電話する。今どき電話。HPなし。

「はい、あと40席ほどありますので、大丈夫ですよ」

 ……あれほど、他社のバスは売り切れてるのに、40席ってそんな……(笑)。
 いつもいつも、ここのバスは「売り切れることはまずないですから、ご安心を」って素敵なセールストークしてるもんな。それってどうなの?(笑)

「では、チケットを買いに店頭まで来てください」

 と言われるので、めんどくせーのだ。この現代に、現金持って買いに出かけなきゃならないなんて。自宅でネット入金とかさせてくれよー。

 いつも絶対売り切れない、という安心感があるから、好きは好きだけどな(笑)。

          ☆

 さて、DVDレコーダが復活したので(修理のにーちゃんを迎え入れるための掃除に疲れ果てた)、さっそく『花舞う長安』を見ました。
 ええ、発売前日にいそいそキャトレに買いに行きましたわよ。

「あっ、やっぱりもう売ってる。買わねばっ」
 とよろこぶわたしに、Be-Puちゃんがひとこと。
「でも今日、見られないのよね」

 …………そーよ、見られないわよっ。レコーダ故障してるからなっ。泣。

 でも買う。

「どーせ今見られないなら、先にあたしに貸してよ。レコーダが直った日に電話くれたら、緑野さんちまで届けに行くから」

 やだっ。封を切るのもいちばん最初に見るのも、購入したわたしだ〜〜っ。

 がるがると吠えるわたしに、Be-Puちゃんは「はいはい」といなしてくれる。
「んじゃレコーダ復活したら、教えてよ。見に行くから」
 それならヨシ。上映会するかい?

 
 『花舞う長安』を見た、といっても、バスの残席探ししながら流していただけだから、集中して見ていたわけじゃない。このソフトはひとえに、『ドルチェ・ヴィータ!』のためだけに買ったので、『花舞う長安』は不可抗力で勝手にくっついていただけ。まあ、おまけ程度の気持ちで眺めた。
 おかげで、アングルが気に入らないとかの不満もない。熱意もない。まー、こんなもんぢゃろ、って感じ。

 
 さて、その『花舞う長安』で。

 わたしのいちばん好きな、玄宗の台詞を白状しましょう。

 安禄山が反乱を起こし、玄宗たちは敗走、「悪の源は楊貴妃にあり、楊貴妃を殺せ」と民衆が言ってるよん、と最後の忠臣たちが玄宗を説得しているシーンにて。

 玄宗が言う、

「黙れ! このたびの事件、お前たちにも責任があろう」

 という台詞。

 いやーもー、すばらしい台詞ですね。
 それまで玄宗は人畜無害のバカだったんですが、この台詞で傍迷惑なバカに成り下がるという、決定打台詞ですよ。
 てめーの阿呆さを弱い立場のモノに押しつけ、自分を正当化するいやらしさ。
 ……ここまでバカだったのかっ!! と、観客を絶望の谷に突き落とす、究極の最悪台詞。

 ワタさんファンはきっと、この台詞を憎んでいると思います。
 せめてこの台詞がなければ、最低限玄宗の人格をフォローすることができるのに、と、ハンケチを噛みしめていると思います。

 でもわたしは、この台詞が大好きなのだ。

 だって。
 愛する玄宗にこう言われたときの、陳玄礼@ケロの傷ついた表情が絶品だから。

 いやあ、いいですよ、玄宗。もっと言っちゃって!! ひどいこと言って、陳玄礼を傷つけてくれっ!
 おちゃめなこと言って笑っているときより、目つき鋭く悪だくみしているときより、陳玄礼……というかケロちゃんは、傷ついた顔をしているときの方が、色っぽいから。

 だもんでこのシーンは、終始ケロの表情が絶妙です。
 陳玄礼、傷つきまくり、苦しみまくりだから。

「貴妃を殺すなら、私を殺せ!」
 も、いいですな。
 このときの陳玄礼がまた、いい顔します。

 そっか……そんなに玄宗が好きか……。
 この阿呆男に惚れきってるのか……。ほろり。

 DVDにはもちろん、ろくに映ってませんがな。玄宗とか楊貴妃とか映しているから。
 しかも玄宗、「ぼーぜん」バージョンじゃん、これ。絶叫しないし、崩れ落ちないんだ……。

 ぼーぜんバージョンの玄宗と、それを最後まで見守る陳玄礼は、「玄宗のヤツ、絶対陳玄礼のこと逆恨みするぞ」と思えて、それはそれでたのしかった。
 玄宗の弱っちぶりと、小物ぶり、なさけなさが実にいい。なにしろ「このたびの事件、お前たちにも責任があろう」とか言っちゃう人ですから! 楊貴妃が殺されたのは、自分以外の誰かのせいにするにちがいない! ってことで!
 ぜひそのことで、陳玄礼を責めてくれ。
 ソレって完璧にただの言いがかりじゃん、てなことで責められ、耐える陳玄礼が見たいっ。ハァハァ。

 ムラの後半の、絶叫バージョンはねえ。あまりにも玄宗が痛々しいのと、最後まで陳玄礼が後ろに立っているのがわかるよーになんとなくライトが残るよーになったせいもあり、「なにをしているアンドレ、ぢゃねえ、陳玄礼、そこで玄宗を抱きしめろ」と、拳を握っちゃうのだわ。
 そのまま別次元・別物語突入していいからっ。抱きしめろ、傷ついた小鳥ちゃん(ばかデカイが・笑)を抱いてなぐさめてやれっ、と思う。
 抱きしめたら、すがりついてくるよね、アレは(笑)。そのまま、ヤっちゃえるよねえ? そんなときでもすけべ心ではなく、あくまでも玄宗の心だけを思いやり、耐える表情の陳玄礼が見たい。ハァハァ。

 
 えーと、まあとどのつまり。

 ワタルくんがやっているから、玄宗のことは好きよ。他の人だったら、好きになれなかっただろうさ。
 ケロちゃんがやっているから、陳玄礼を好きなのと同じで。

 玄宗がワタさんで、陳玄礼がケロだから、とりあえず力一杯萌えておきます。

         
 毎年恒例、こーなりゃすでに年中行事だ、の、『1万人の第九』の日でした。

 毎年爆睡こいてるあらっちは準備万端、席が決まるなり足元に紙を敷き、そこに持参したスリッパを出した。

「だって、疲れない? 靴履いたままだと」

 今年も熟睡するつもり満々だ。

「クラシック音楽はやっぱり、癒しの音楽よね。よく眠れるわ」
「オーケストラの生演奏を子守歌にするなんて、とびきりの贅沢よねえ」
「これで座席がリクライニングだと言うことないんだけど」

 どこまで本気かわからない会話をしつつ、今年も素敵にコンサート。

 
 わたしはたしか今年で6回目の参加だけど、なにしろケロちゃんがらみでレッスンに最後の2回続けて参加できなかった。
 例年よりさらに練習不足が祟っている感じ。

 なのになんでだろ。

 すごーく、声の調子がよかった。

 あれー? なんか気持ちいいぞー。
 機嫌良く歌えちゃうぞ。

 や、もちろんわたしは、中学のとき音楽教師に「音痴」だとレッテルを貼られた音楽的才能欠如人間っす、本人が気持ちよくても下手っぴなのは変えようのない事実だが。
 音痴は音痴なりに、「なんか気持ちよくない」と「おおっ、今日は調子がいいぞ」ってのがあるんだわ。

 不思議なことに今日は、声も気持ちもノリノリだった。

 リハではとても自然に笑っていた。
 「歓喜の歌」を歌いながら、微笑んでいる。
 たのしい。
 なんかしんないけど、たのしい。

 でもって本番では。

 なんでだー。
 泣けてきたー。

 ラストのハイスピード、ざいとぅむしゅるんげん、が、泣けて歌えないー。なんでだー。
 踊り出しそうな声を引き締めて、クライマックス、ふろいでしぇーねるげってるふんけん。

 ぜえぜえ。なんかすっげえ消耗してる。

 
 なにがどうじゃないんだけど。

 年を経るごとに、合唱席の温度が上がっているのがわかるんだな。
 舞台の上から、えらい先生が指示をする、合唱席のわたしたちは黙ってソレに従う。
 が、去年あたりから、双方向性になっている。
 合唱席から、声が挙がる。舞台にいるせんせーへ、「**は**だから、**してください」と、要望が出る。
 場所は城ホールだ。タカラヅカファンなら知っているだろう、大運動会のあったあの広大な空間。あのスタンド席から、アリーナ中央へ向かって、個人が意見を叫ぶんだぜ。
 声を聞いたせんせーや、スタッフがそれに応えてすぐさま動くんだ。
「テノールからは**が**で見えません、なんとかしてください」
 という声が挙がり、先生たちが困惑していると、
「アルトからはそんなことありません、大丈夫です」
 と声が挙がる。
「それよりも**が**でこまります」
 と、ソプラノから声が挙がる。

 なにがどうじゃないんだけど。
 受動態じゃない。みんなが、「参加している」。

 コンサートの間、演奏が途切れるたびに、会場内から咳が聞こえるんだよね。
 途切れる、つーのは、まさに曲と曲の間、だ。
 みんな、演奏中は必死で咳を我慢してるんだ。こんな季節だもん、風邪の人は多かろう。でもオーケストラの演奏中は静まりかえってるの。
 そして、曲が終わると途端に咳。ごほんごほん。

 なにがどうじゃないんだけど。
 咳を飲み込んで、つらいだろーにそれでも音楽に聴き入ってるんだよなあ、とか思うとな。

 第4楽章がはじまるなり、合唱席に走る緊張。近づいてくる足音に耳を澄ますような。
 打ち鳴らされるティンパニ、照らされるライト、ざっ、と音がする一斉に立ち上がる瞬間。
 わたしの席は指揮台のほぼ真正面、限りなくてっぺんに近い通路際。
 なにもかも「見える」気がする。

 なにがどうじゃないんだけど。
 美しいと思うの。この、「すべてのひとが、ひとつになった」光景。

 最初に声を出すのは男性陣。
 わたしたちの席の真下。
 黒スーツに蝶ネクタイのおじさん・おじいさんたちが、一途に指揮者を見つめて最初のフレーズを歌う。
「ふろいで!」
 歓喜の歌。

 なにがどうじゃないんだけど。
 その背中が、声と共に大きく震えることなんかが。

 音を、音楽を聴いているわたしと、次の歌詞を確認しているわたし、歌っているわたし、会場内を見回しているわたし、なんか他のことを考えているわたし、が、すべて同時に存在している。
 なんか、前のめりに倒れそうだな。
 高所恐怖症の人は、つらいんじゃないか、こんな高い位置に立つの。あ、わたしが通路にはみ出て歌ってるせい? だって座席は狭いしな。てか、わたしの身長のせいか? 他の人たちはみんな高い位置まで前の列の背もたれがきているけど、わたしにはなんか、ものすげー低く感じるし。
 コケたら最後、一番下まで転げ落ちそうだな。てゆーか、倒れるなよわたし。

 なにがどうじゃないんだけど。
 自分の背が、いつもより高いような、世界が低いところに広がっているような気がして。

 こんなに、視界はクリアーだったかな?
 こんなに、なにもかも見えたかな?
 指揮者、オーケストラ、ソプラノ、アルト、テノール、バス、ソリスト、観客席、招待席。
 会場内が、まるっと全部、見えている。
 音が聞こえる。各パートの歌声。
 どきどきしてる。
 前のめりに転がりそうだぞ。
 すげーどきどきしてる。

 そして、泣けてきた。

 やべえ。
 気を引き締めて、最後まで。

 音が切れた瞬間の断絶感、そして、拍手までの空白。
 拍手。
 拍手か。
 360度の拍手。
 合唱席も観客席も、全員だ。

 抱きあう指揮者と演奏者たち。
 あー、佐渡せんせ、ふるふるしてるー。ソプラノパートで一緒に歌ったユンソナは、泣いている。
 わたしたちは、拍手拍手、ただ拍手。

 みんな、声出すんだよなあ。佐渡せんせが退場するときに合唱席の近くに来ると、「おおーっ」て声が挙がるの。
 拍手だけじゃなくてさ。
 双方向なんだよな。与えて、与えられて、返して、返されて。

 なにがどうじゃないんだけど。

 なんつーかすげえ、ありがたい空間と、ありがたい時間を得たんじゃないかと、思うんだ。

 
 ティンパニ奏者の人は、3年連続参加のウィーン交響楽団とやらの人。彼は去年のこの『1万人の第九』が終わったときに、佐渡せんせに言ったらしい。
「子どものころ、はじめて虹を見たときのようだ」
 と。

 わたしはティンパニのこともなにも知らないんだが、音あわせのときって、ティンパニに耳をつけるよーにして調律するものなのかな?
 見るたびに、彼は大きなティンパニに、耳をつけるように覆い被さっていた。
「ねえほら見て、ティンパニの人。あんなふうにして、音を合わせるもんなの?」
 わたしが聞くと、隣の席のきんどーさんは、
「ああ、あの虹を見た人?」
 と、返し、「ほんとだー、あんなふうにして調律するのかなあ」と、同じように無邪気に言った。

 虹を見た人。
 なんかすごく、ロマンなふたつ名だな(笑)。だってわたしたち、何度紹介されても外国のえらい奏者だという彼らの名前、おぼえられないし。
 名前がわからないなら、わたしたちだけで通じる別の名前が必要。

 
 毎年自分の出番までは爆睡しているあらっち。スリッパまで持参のあらっち。

「なんでだろう。今年はずっと起きていたわ」

 君も、虹を見たのかな。
<…
 『ドラクエ8』をはじめるにあたって、とまどったこと。

 PS2が動かないっ!

 正確には、ソフトを読み込んでくれない。ブラウザ画面が出てしまう。
 何度やってもダメ。
 ためしに、『サイレントヒル3』(じつはPS2に入れっぱなしになっていた)を入れてみると、ちゃんと読み込む。動く。
 『ドラクエ』だけ動かない。

 もとから、かなり不安定ではあったんだ。わたしのPS2。なんせうれしがって発売日に買った初期ロットだからなー。祭りにはとりあえず参加しておけ!がモットーなので、やりたいソフトもないのに、わざわざ予約して買ったんだもんよ、平成12年3月4日。
 世の中がPS2新発売で大騒ぎしているときに、その買ったばかりのPS2で『バロック』をプレイしていたという、「そんなヤツ世界でただひとり」の自信があるこのわたし。
 もう5年も使ってるんだもんなあ、そりゃやばくもなるわ……。

 数えていられないほどリセットを繰り返していると、よーやく読み込みに成功したよ、『ドラクエ』。

 そのことを弟に報告すると、ヤツはにやりと笑い、

「じゃあPSXだな」

 と言う。
 やめてよ、買わないわよ、そんなもの!
 PSXは今ずいぶん安くなっているらしい。とくに容量の小さい方。
 でも今さらDVD-RWなんて欲しくない。それならパナか東芝のDVDレコーダの新しいヤツを買うわ……って、DVDレコーダの話じゃない、ゲームの話だってば。

 それでも今のとこ、いちおー動いているよ、PS2。リセットしまくりでしか、読み込んでくれないけどな。

 そうこうしているうちに。

 
 何故なの……DVDレコーダが動かなくなった。

 修理センターに電話をしても、つながらない。リダイアルするだけで、昨日は受付時間が終わってしまった。
 つーことで今日は朝から電話。よーやくつながったはいいが。

「土日は予約がいっぱいなので、修理にお伺いできるのは週明けになります」

 ……DVDレコーダがないとこまることが、山ほどあるんですよ、わし、ヲタクじゃけん……。泣。

 とりあえずBe-Puちゃんに「かわりにBS録画して」のメールだけは出す。ほろほろ。
 ケロちゃんDSを手にすることができるのはいつなの、わたし。

 DVDレコーダ故障のことを弟に報告すると、ヤツは再びにやりと笑う。

「じゃあPSXだな」

「いやよ、そんなもの買わないわっ」
「PSXでネトゲ・デビューするんだろ?」
「しないっ、ネトゲだけは手を出さないっ」
「『アウトブレイク』でラクーン・シティを脱出だ」
「そんなコアな人たちばかりいそうなところへ、行くもんかぁ。初心者が入ってどんなふーに扱われるかこわいじゃんよ! ただでさえアクション下手なのに」
「連邦軍に入って、ガンダムに乗るんだろ?」
「そんな男率バリ高そーな宇宙には行かないっ。見た目には男女半々でも、絶対リアルでは男ばっかのはずだっ」
「モビルスーツの型番で会話が成立する宇宙だ」
「ロボットの見分けなんかつかないもん! スパロボでどれだけ苦労したか」

 ネットワーク・ゲームにだけは手を出しません。
 これ以上、引きこもりヲタクのレベルを上げてどうする。
 弟よ、うれしそーに姉にネトゲを勧めるなっ。自分だって手を染めてないくせに。

 なにはともあれ、DVDレコーダ故障は痛い……。生活的にも痛いし、修理代も痛い……。

 
 『ドラクエ』はぜんぜんすすんでないしな……やっぱまじめに道を歩いてないせい?
 フィールド走り回ってるだけで時間が過ぎていくぞ。

 いつもなら主人公に「ケロ」って名前をつけるんだが、今回はなんか、つけられない。しょぼんな気持ちなので。

 とりあえず、ククールはカリスマしかスキルを上げていないんだが、こんな育て方はアリなんだろーか?

          ☆

 んで、私信の嵐。

 ドリーさん、ブログ開始おめでとう。つか、このサイト、ブログサイトとしてはかなり下位に位置する不便サイトだと思うんだけど……いいのか〜。
 みなさん、「魔法のエレベータ」のドリーさんがブログはじめましたよー。
 にしても、「師匠」という呼び方が定着しそうでこわい、チキンハート。

 kineさん、しいちゃんへの愛がすばらしいっす……ほろり。週末の日記たのしみにしてます。

 S川さん(まだ名前が決まっていないらしい)、ケロ&しいビデオを貸してほしいっす。次にお会いするときに……すんません、よろしくお願いします。

 晃様、お礼にケロちゃん語りなんでもします。テーマのリクエスト受付中。

 
 明日は早朝から月エリザの並びだし、第九のリハだし、風邪気味だし、レコーダ故障はかなしいし、で、個別にメール書く気力がないまま、今日はもうオチます。おやすみなさい。

    
「緑野さん今回は、まちかめぐるの立ち位置、教えてくれないんですか?」

 と、かねすきさん。明日雪組を観るそうです。

「いつも、頼んでもいないのに立ち位置を全部解説してくれるでしょう?」

 えっ。
 なになに、語っていいの? 言っていいなら、言うよ? まちかめぐるの立ち位置! 芝居もショーも、がんがん語っちゃうよっ?! わたしは初日に1回観ただけだけど、まちかめぐるのことはいくらでも語れるぞーっ。

「やめてください、聞きたくないですってば。聞かなくても、どうせ目に入ってくるんだから!」

 やだわー、かねすきさんたら。いつの間にかあなたもまちかめぐるの虜なのよね。わたしの呪い? なにソレ。呪ってなんかいませんわよう。
 伝染病かもしれない、とは思ってるけどな。

 ところでまちかめぐるって、チェ・ジウに似てると思うんだけど、わたしの欲目?

          ☆

 雪組公演『青い鳥を捜して』の感想。

 なにはともあれ、ブレンダ@となみちゃん。

 かわいい。かーわーいーいー。
 もうめろめろっすよ!!
 のーみそ破壊されそうなかわいさ!!

 となみファンにはたまりません……。
 このとなみちゃんを見るだけでも、価値があります、この芝居。
 今んとこわたし、2回観たんですがね、My No.1はとなみちゃんですよ。
 個人的にいちばんキたのは、「プンプン」って台詞。
 ぐはあっ、て感じ。オレ男なら鼻血吹いてるよ……かわいすぎ……。

 このやりすぎたギャグキャラが、下品にならないのがとなみちゃんの持ち味。バカっぽいのも持ち味(笑)。

 ブレンダのかわいさは、デニス@かしげの阿呆さと相まって実にすばらしいハーモニーになっている。

 かしげ、いいよねえ。
 実際出てきたときはまたムジャヒドかよ、ってがっかりしたんだけどな。
 どーして演出家はすぐかしげに薄いバカ役をやらせるの? 人の善いバカキャラって、かしげのキャラまんまじゃん。
 正直もう見飽きたよ……。
 そう思っていたらなんと。
 最後の最後でかっとばしてくれるじゃないですか!!

 クリーム舐めのシーンっすよ!!

 それまでただのバカ、美貌の無駄遣いの薄い人(いや髪の毛のコトじゃなくて)でしかなかったのに。

 ブレンダのクリームを舐めて笑うデニスは、突然オトコマエですよ!

 うわっ、こんなにかっこよかったんだ?!
 人間、言動や浮かべる表情で、顔立ちなんて変わって見えるもんなんだ。
 デニスはやっぱなさけなさが前面に出ていて、ちっとも美形じゃない。実際この男をハンサムだと思って見ている人は少ないだろう。

 それがあるとき突然、美形様になる。

 それまでただの友だちだったのに、あるとき突然、ときめいてしまうよーな。
 その一瞬を境に人生が変わってしまうよーな。

 なさけないふにゃ男くんだったのに、突然包容力あふれる美青年に変身して恋の主導権を握ってくれちゃったりしたら。

 オチます。
 堕ちますよ、かっしー!!

 ときめきました。
 かっしーラ〜ヴ。

 作品自体嫌いだし、どーでもいいと思っている芝居だけど、ブレンダとデニスだけは好き。となみとかしげは萌え。

 
 ひさしぶりのトド様には……えーとえーと、なんとも言えない気恥ずかしさがあった。
 なつかしいし、会えることはうれしいんだけど……なんだろう、この気恥ずかしさは。
 やっぱ卒業して社会人になったのに、今さらこの年で高校の制服着て余興やらされている人を見ているよーな気持ちになるからですかね……。
 時代物ならきっと、ここまで気恥ずかしくはならないんだろうな。
 でも、トド様のスーツ物が見られてうれしかったのよ。スーツ姿も好きだもんよ。

 ただもう少し、年相応の役をやってくれればな……。

 演出家はナニ考えて、『再会』の焼き直しみたいな話とキャラをトド様にやらせたかな。
 たしかに『再会』のトド様は評価されていたよ。当時、思いがけず好評を得ていたはず。それまで重い話や役ばかりで、気軽なコメディをやっていなかった人だったし、ぐんちゃんとのラヴラヴぶりも微笑ましくて、えらくウケていたさ。
 過去に好評だったからって、それをもう一度やらせてどうするんだ。言っておくけどトドって、同じキャラをやらせたら、ほんとーに同じよーにしかやらないぞっ?! 別人格だから、って、演じ方変えたりしないぞ。くそ真面目に同じ引き出しで勝負してくるぞ。融通利かないからっ。
 ……つーことで、いろいろとつらい役と姿だわ、ジェイク@トド様。

 女と恋愛させるより、血のつながらない弟@コムと  恋愛  ぢゃなくて どっぷり兄弟愛させた方がよかったよ。わたし的に。

 リアルな現代スーツ物、というカテゴリより、時代物が似合うのと同じハート。
 兄弟愛憎モノとかは、現代ラヴコメに比べたらはるかに異世界ファンタジー・カテゴリだもんよ。リアリティとは別の次元で勝負、だからさ。
 トド様の個性でイケると思うの。

 親子モノでお涙頂戴させるぐらいならさー、兄弟モノやろーよー。需要あると思うけどなあ。

 てかさ、トドとコムを並べたら、ついそっちを刺激されないか?
 耽美やりたくなるじゃん? ホモやりたくなるじゃん?

 わたしだけが腐ってるのかと思ってたけど、どうやらコレ、多数派意見だったみたいだし。

 その証拠が、『ドリーム・キングダム』でしょ?

 3人の演出家に、トドコム使って好きに演出しろ、って言ったら、3人が3人とも耽美ホモ作ってきたのよね。
 そっかあ、誰でもそうなんだー。みんな同じこと考えるんだー。

 でも石田だけが別なんだよね。だって耽美属性皆無のオヤジだから。

 ショーが耽美ホモ3連発だから、芝居まで耽美じゃ胸ヤケするから、無理だけどさ。わかってるけど、芝居でも見てみたいなあ。トドコム愛憎モノ。齋藤演出あたりで(笑)。

 
 コムちゃんはひどい脚本とキャラであるにもかかわらず、健闘してました。
 いい男になったよなあ、コム姫。こんなに懐の深い男に成長するとは、思ってなかったよー。
 トップにして正解の人だったんだなあ。

 Myツボは、うずくまるフィンセント@コム姫を、軽く抱え上げるよーに肩を抱いて立たせてしまうジェイクにーちゃん@トド。

 新公では、キムくんは触れているだけで、かなめくんが自分で立ち上がるのね。だって体格的に、抱き起こすのは無理だもの(笑)。
 でかい弟に小さな兄、は個人的に萌えだったけどな、新公。

 
 いやらしい下品な脚本であるだけに、救いなのがケイト@まーちゃんの清潔さ。
 まーちゃんは凛と咲く白百合のよーな女性だねえ。ああ、ほっとするわ。
 トドとの並びは悪くないけど(てゆーか、誰とでも合わせることができるんだよね。いよっ、娘役芸!)、やっぱコムちゃんとのカップルを見たいと思ってしまう。
 いいコンビなんだな、コムとまーちゃん。異分子が入った公演だからこそ、再確認したよ。

       
 他の作家の名前を出してしまったので、フォローの意味も込めて、もう少し石田昌也語り。

 石田せんせは「タカラヅカ」としてはエラーな作家だと思っている。
 だが、「作家」としては、ふつーだと思っている。
 出来事を起こして物語を回す、という、ごく基本を知っているってことで。それがうまく機能しているとか、破綻していないかとかはこの際置いておいて。

 酒井澄夫は逆。
 「タカラヅカ」としては正しい。ちゃんと美しいものを作れるから。
 ただ、「作家」としてはお話にならない。素人のリレー小説以下の整合性。日本語のセンスもおかしい。
 二度と芝居を書いて欲しくない。ショーだけ作っててくれ。

 
 さて、石田せんせは女を軽んじているので、ほんとうの意味での「恋愛」を書くことが出来ない人だと思う。
 どんなにペットのわんちゃんを愛していても、わんちゃん相手に本気の恋愛物語は書けないでしょう? だって所詮相手は犬なんだもん。同等の存在じゃないんだもん。それと同じ。
 タカラヅカらしくないものを新規客開拓のために「あえて」作り続けているというのは、ただの言い訳に聞こえる。作らないんじゃなくて、作れない。彼の中に、素養がないから。
 ただ「女嫌い」というわけじゃないので、恋愛から逃げたカタチのラブストーリーならかろうじて書ける。むしろ女は大好きなんだろーなー、てな感じの下世話なものなら。

 恋愛モノ、が基本であるタカラヅカにおいて、どんな恋愛をするか、は、その主人公の「生き様」に関わってくる。
 つまらない恋愛しかしない男はかっこわるいし、真摯な恋をする男はかっこいい。
 石田昌也作品が「タカラヅカらしくない」最大の理由は、コレを理解していないせいじゃないかと思う。

 いい女を愛し、愛されている男はそれだけでかっこいいんだけどな。
 どんな女とどんな恋愛をしているかで、その男の価値が決まるんだけどな。

 石田作品の男たちがかっこよくないのは、ろくな恋愛をしていないから。
 どーでもいい女とどーでもいい恋愛を上辺だけでしているから。

 もちろん、他のジャンルでならそれもアリだ。仕事や野心、歴史スペクタル、いろんなものをメインに据えていい。
 だがここはタカラヅカだ。歴史大作であろーと、ピカレスクロマンであろーと、主人公は真摯な恋愛をしていなければならない。

 女をなめている人に、「いい男」は書けない。
 女はアクセサリでもなければ、便利屋でもないんだよ。
 男の価値を上げることができる、人生のパートナーなの。

 これほどの女に惚れられているのか!!
 これほどの女を愛しているのか!!
 ……ごてごて飾らなくてもその姿が、男の生き様を輝かせる。

 根本を理解しないまま、「タカラヅカらしくないのが作風」とうそぶいているのが、嫌だわ。
 作家として、というより、「男として」嫌いなタイプだと思う(笑)。おとなしく男向けジャンルで、男に都合のいい下世話な話を書いていればいいのに、と思う。

 
 さて、そーゆーわけでわたしとは趣味が合わない石田作品。
 嫌い、というよりはほんと、「趣味が合わない」。カテゴリエラーであるにも関わらず、ヅカとして存在していることが嫌なだけ。

 されど石田作品にもいいところはある。
 下級生ウォッチはたのしい。
 ごちゃごちゃした無駄な作りなので、そのぶんいろんな子たちが板の上にいる。それを眺め、本筋とは関係ない小芝居を見るのはたのしい。
 こだわりをもって作り込むこともしないんだろうラフな作風なので、板の上の役者たちに自由がある。
 それは、いいことだと思うよ。「作品より人を見る」タカラヅカにおいて。

 ストーリーやキャラクタが無神経なのは、作者が女性を軽視し、それゆえに恋愛自体を軽視しているせい。それをあきらめ、無視し、役者の個性のみをたのしむ。
 ご都合主義や、浮いている台詞と展開、品のなさと整理されていないエピソードとキャラクタ位置、そーゆーものも全部無視、気にしない気にしない。
 生徒さんの演技だけを、たのしみましょう。

 それはそれで、なんとかなるもんだから。

 タカラヅカってすごいわ……。

 
 とゆーことで次は、キャラ語りいってみよー。
 翌日欄へ続く。

     
 存在を無視してきましたが、いちおー感想ぐらいは書いておこうかと思います。
 雪組公演『青い鳥を捜して』

 初日に観たにもかかわらず、感想を書く気にもならなかったのは、たんに趣味じゃない話だったせいですわ。

 どう趣味じゃないかというと、下品だから。

 昔、レンタルビデオ屋でバイトしていたことがありました。
 そのとき受けた電話に、こーゆーのがあった。
「お電話ありがとうございます、レンタルビデオ**です」
『あのー、探しているビデオがあるんですが、在庫があるかどうか、調べてもらえますか』
「わかりました。なんてタイトルですか?」

 レンタルビデオ屋なんで、とーぜんアダルトビデオも扱ってます。すでにそんなもんで照れたり躊躇したりはいたしません。
 仕事ですから。
 お客にアダルトビデオのことで問い合わせを受けたって、とってもふつーに応対します。
 この電話で、訊ねられたのはアダルトビデオの在庫についてでした。

『〜〜、っていうやつと、〜〜っていうやつと、それから〜〜っていうやつなんですが。在庫はありますか?』
「えーと、〜〜と〜〜と〜〜ですね」

 もー、あからさまなアホみたいなぐちょぐちょぬるぬる系のタイトルですよ。下手に例を出して日記に書くと、男性陣の検索に引っかかるだろーから書かないけど(笑)。

『ちがいます。〜〜です』
「え、だから〜〜ですよね?」
『ちょっとちがうみたいです。〜〜……もう一度言ってください』
「〜〜、ですよね?」
『もう一度』
「〜〜」

 ええ。会話しているうちにね、わかってきましたよ。
 この電話の客は、ビデオの問い合わせがしたいんじゃなくて、わたしにその「あからさまなアホみたいなぐちょぐちょぬるぬる系」のタイトルを言わせたいだけなの。
 電話の向こうで、どんどん息荒くなってるしね。

 受話器握りながら、わたしのアタマにあったのは「アホかこいつ」でした。
 いやらしい言葉を女の子に言わせて、それでひとりでハァハァしてやんの。
 それはまあ、気持ちがわからんでもない、つーか、べつにわたしはそーゆー趣味はないが、そんなこともあるだろうよ、とは思う。
 しかしそれは、いやらしいことをしているときにいやらしいことを言う、なら、わからんでもない、という意味だ。
 こっちは仕事でタイトルをメモしながら読み上げてるだけだよ? 感情こもってるわけでなし、事務的に棒読みしているだけなのに。
 そんなもんで興奮するのって、あまりにもバカバカしい。つか、虚しい。
 そんなつもりもない女の子に、無理矢理いやらしい言葉を言わせることで、陵辱した気持ちになってるんだろーか。こっちはお客からの電話だと思っているから、無碍にもできなくて、真面目に相手してさ。拒否権のない無力な女の子に、強制させることでなにか倒錯した快感を得ているんだろーか。
 まだハタチそこそこだったわたしは、怒りだとか嫌悪だとかいう前に、ひどく脱力した。あー、あーゆー感情を、「憐れみ」っていうんだなあ、と、今にして思うよ。

 石田昌也作品が趣味に合わないのは、その電話をかけてきた孤独な変態さんに近い感想を持つせいだと思う。
 電話の変態さんは人知れず1対1の関係でしていたことだけど、石田はその電話と同じことを「舞台」という公の場で大勢の人に見せているからなあ。ムカつくのはそれもあるだろーなー。

 あー、つまり。
 石田ってさ、ジェンヌにいやらしい台詞言わせるのが快感で、わざと下品な脚本書いてんじゃないの? と、思ってしまうからさ。

 世の中、いろんな性癖の人がいるからねえ。バイトの女の子にアダルトビデオのタイトル音読させて、自家発電しちゃう人がいるくらいなんだから。
 「清く正しく美しく」の秘密の花園で、わざわざテレビドラマ以下のいやらしい台詞を連発させることで悦に入る演出家がいても、不思議じゃない、と思ってしまうことよ。

 基本的に石田先生は、女好きで、そして女を見下しているんだと思う。
 それは彼の作品にじつによく現れている。
 女は抱くモノ・支配するモノであって、そこに対等な信頼や尊敬は成立しない。
 愛は与えてやるモノであって、対等に分け合う・育むモノではない。
 いつも男尊女卑が前提。

 作品ってこわいよねえ。1作2作ならごまかせても、天才じゃない限り、そこにどーしても作者の人間性や価値観が出ちゃうからねえ。
 もちろん、多少歪んだ価値観の持ち主でも、アンチすらつっこめないよーなおもしろいものを書ければそれで、なんの問題もないんだけどね。
 石田せんせ、そこまで天才じゃないし、職人でもないからなー。

 石田作品の女たちは、いつも悲惨だ。
 誠意のない描かれ方をしている。

 そして男たちは、そんな汚れた女たちを、一段上から「愛してやる」んだよなー。
 「愛する」んじゃないの。「愛して・あげる」。ほどこしなのよ。
 こんな女を愛してやるオレって、なんて寛大ないい男なんだろう。……という意識が絶対にある。やれやれ。

 同じよーに女を描くのが下手な作家といえば、谷せんせがそうだけど、彼の作品には男尊女卑は感じられない。谷せんせの場合はたんなる「恋愛下手」だと思う。理想の男を描くことばかりに熱中していて、恋愛を描けない。女というものがよくわからない。
 出てくる女性キャラに魅力がない、恋愛が絵に描いた餅状態、と、いろいろ欠点はあるものの、谷せんせの作品の失敗ぶりは微笑ましかったりする。少年ジャンプを大好きな男の子が書いた話みたいで。(キャラを殺してお涙頂戴するのは嫌い。でもそーゆーとこも少年ジャンプだなとは思う)

 石田は少年ジャンプじゃないからなー。
 オヤジ向けエロマンガ系。オヤジ頭で都合がいいよーにしか、描かれていない。
 少年マンガなら女の子も読めるけど、オヤジ向けマンガは女の子は読めない。少年マンガには愛と夢が必要だが、オヤジ向けマンガには欲望と下世話さの方が必要だからだ。
 ジャンルがチガウんだから、仕方ないわな。

 『青い鳥を捜して』もまた、このジャンルちがいを噛みしめたさ。

 石田昌也……なんでこの人は、タカラヅカにいるんだろう??
 もっと他に、才能を活かせる場所があるだろうに。

 わたしは酒井澄夫を作家として認めないけど、石田昌也はアリだと思っている。
 石田せんせはたんに、カテゴリエラーなだけ。
 ヅカとしてまちがってるだけで、作家としてまちがってるわけじゃない。
 もちろん、うまい作家だとは思ってないけどさー。作品を創ることもできない酒井と比べたら、「作家」としての仕事は石田せんせの方がはるかにまともだからさー。

 タカラヅカでなければ、もっと評価される作家だろーに。
 なんでヅカの座付きやってんだろう?
 男の人が演じる、ふつーのカンパニーでやった方が活きる脚本だと思うよ? 石田作品って。
 もちろん対象観客も、男の人でさ。
 男が観て都合よくて、男が観てたのしい話。
 ……なんで、女性客相手に「女を貶める話」を書き続けてるんだ、この人? 夢と美を看板にしている美しい劇団で、「下品な話」を書き続けてるんだ?
 それが理解できないからつい、考えちゃうのさ。
 ジェンヌにいやらしい台詞言わせるのが快感で、座付きを辞められないんじゃないの? と。

 不思議な人だ。

       
 まずは、猫を膝の上にセッティング。

 アニマルセラピーというほどちゃんとしたものじゃないにしろ、猫は不可欠。
 膝の上に、やわらかい、あたたかい、愛するものを載せて、その重みと体温を噛みしめ、豊かな毛並みを撫でる。
 そうやって、テレビの前で待つのさ。

 ケロちゃんの番組。

 頭痛がするのは、たぶん精神的なもの。心とカラダがつながっている証拠。

 あたたかい飲み物用意して、猫を撫でながら、テレビを見る。

 やっぱりテレビはテレビでしかなくて、なんだか寂しくなったけど。
 やっぱり映像は映像でしかなくて、今すぐ生のケロちゃんが観たくて、東京に飛んでいきたくて、なんだか哀しくなったけど。

 まあ、別の意味でもヘコんだというか、ショックを受けて、テレビ見ながらチェリさんに泣き言メール打ってみたり。しばらくはヘコみつづけるわ……。

 それでも気を取り直して、画面見て。
 猫を撫でて。

 猫のほっぺたぐにゅぐにゅして。耳をいじって、頬ずりして。
 あっ、逃げられたっ。

 ほら、ヨーグルトだよ、食べたいでしょ? テレビの上から降りておいで。
 食べ物で釣って、また膝に載せて。

 膝の上でいびきかいてる猫を撫でつづけて。
 猫は不可欠。
 絶対必要。
 この世でもっとも手触りのいい生き物。「愛」だけで存在している生き物。

 泣きべそかきながら、テレビ見て。

 …………まあ、そんな日。

    
 ほんの数日前のこと。
 お友だちのデイジーちゃんからメールが来た。

「雪組を観ていて、好みの顔の子を見つけたんですが、ショーの**のシーンで**にいる男役、名前わかりますか?」

 んなこと言われても、**のシーンの**なんて、わかんねーよ。こちとら今東宝だい。雪組は初日に一度観ただけだし。下級生男役の立ち位置全部把握しているわけもなし。

 立ち位置の話はさっぱりわかんねーが、とにかく返事を出す。

「雪組で好みの顔って言えば、谷みずせじゃないかな?」

 なにしろ、わたしとデイジーちゃんは男の好みが一緒。いつだって同じ顔にハマる。
 雪組を見回して、顔だけでまず注目してしまう下級生といえば、そりゃ谷みずせだろう。と思ってメールした。

 でもデイジーちゃんからの返事は。

「ちがうと思います。**って子かなあ、と思ってはいるんですけど……」

 と、チガウ名前を挙げていた。

 
 そして今日、新人公演『青い鳥を捜して』を観たあと。

 デイジーちゃんからメールが来た。

「この間言っていた、好みの顔の子、ずばり谷みずせで正解でした(笑)」

 やっぱり。

 わたし、デイジーちゃんが惚れるタイプの顔、百発百中で的中できちゃうのねっ(笑)。
 えらいわ、わたし!
 てゆーか。

 ほんとに、顔の好み一緒やんな……(笑)。

 
 さて、雪組新人公演『青い鳥を捜して』。
 本公演の感想すら書いてない状態ですがな。

 ははははは。

 本公と、別物でした。

 演出は鈴木圭。あの『ファントム』新公の演出家ですなっ。

 キャラや演出、そればかりか台詞までいちいちチガウことよりも。
 いちばんの大きなちがいは、新公が、少女マンガだったということだと思う。

 もちろん、原作(原作とかいうし)が石田昌也なので下品なのは同じだけど、新公は少女マンガ寄りにアレンジされていた。

 女優ブレンダ@晴華みどりは、常識の範疇にいる、わがままお嬢様だった。
 本公のよーな、不思議ちゃんではなかった。
 だから「ひとりぼっちの誕生日」を迎える彼女は、ふつうにせつない女の子だった。もちろん、顔に黒パックをしていたりしない。クリームを顔にぬりたくってぎゃあぎゃあ泣いたりもしない。きれいな顔のまま、ひとりで泣き、愛に気づく。
 マネージャーのデニス@オヅキも三の線ではあるが、これまた常識の範疇。ふつーに人の善い青年。泣いているブレンダの涙をなめて「しょっぱい!」と叫び、反論するブレンダの言葉を封じるようにキスをする。
 ……う・わー……少女マンガだー……。

 シモーヌ@シナちゃんは小柄でかわいい女の子。ただし、やたらと声が大きく、また夢見がちでよく喋るという特徴アリ。
 本公のよーに空手使いで腹筋が6つに割れているわけでもない。
 大声と調子の良さを利用して、ケイトをたきつけたり、フィンセントにアタックしたり。なんかふつーにかわいいんですけど。
 フィンセント@かなめくんは、おおっとワイルドです。登場するなりひげ面で場を沸かせてくれた。そうよね、山男だもん、こんな感じよねえ。でも性格は大きな身体に反してナイーヴ。
 ふたりが再会するところが、じつにかわいい。お互い恋人同士でもなんでもなくて、なにも言わずに別れたはずなのに、再会してつい、抱きあっちゃうの。本公みたいにシモーヌがフィンセントをリフトして笑いを取ったりしない。よろこびに思わず抱きしめてしまい、はっとして身を離す。
 ……う・わー……少女マンガだー……。

 ケイト@となみちゃんは、まるみのある雰囲気の女の子。本公で笑いを取ることだけに費やされているささやかな場面で、彼女がジェイクを好きなんだということが垣間見える。笑いよりも彼女の恋を優先して描いてある。
 ジェイク@キムは、えらくふつー。プレイボーイには見えません。真面目で仕事熱心な男に見えるので、ブレンダとのカタチだけの婚約がちと不自然。「運命の人」を素直に信じて奔走する純真な青年。
 別れたあとに修道院で再会した、ケイトとジェイク。どちらも真面目で不器用だから、「あとひとこと」が言えずにじれじれしている。強がるケイト、それがただの強がりだとわかるから、彼女へ一歩近づこうとするジェイク……そこへ空気読まずに登場するフィンセント、ああっ、喉元まで出かかっていた「あとひとこと」が消えちゃったよ、もう! この絶妙のじれったさ!
 ……う・わー……少女マンガだー……。

 スーザン@リサちゃんは、普段はガチガチの色気ナシ秘書。だけどノリノリではじけてみたり、恋するデニスを思いやってみたりとなかなか情緒豊か。ミルボン@くらまくんとは、わっかりやすく恋に落ちていた。
 だって彼女、眼鏡を取ると美人なんだよ? なんなのその設定(笑)。
 ……う・わー……少女マンガだー……。

 新喜劇のノリで悪のりした笑いを取ることばかりに必死になっている本公とちがい、無理にお笑いにしなかった部分が全部、ラヴストーリーになっている。

 だから別物。
 テイストは、少女マンガ。

 ギャグマンガのよーな醜いオカマも出てこない。ヅカの範疇である「女装した男」が出てくるだけ。
 男役が男役の化粧と声のまま、女の服を着ておねえ喋りをすることでも、十分笑いは取れる。ハゲヅラなんぞかぶる必要はない。美青年のままでOK。

 少女マンガで「ファンタジー」だからこそ、ラストシーンでは、主役カップルの真後ろで、青い鳥と鳥占いの老人が、中央でせり上がっている。
 よりかわいらしい、タカラヅカらしいラストシーンになる。

 
 ……別物……。

 『ファントム』も別物だったけど、今回も別物ですか、鈴木圭。なんか愉快な仕事してますな、鈴木せんせー。

 タカラヅカと呼ぶにはつらいものがある石田の原作を、懸命にタカラヅカに作り直したのね。ほろり。
 
 
 別物として、素直に愉しみました。
 キムくんうまいし、正直今すぐ本役と交代してくれてもいいんだけど(笑)、ちょっと手堅すぎる気もする。
 となみちゃんはニンに合わない役だけど、それでもかわいく演じていた。小突いてやりたいかわいさは、この子の持ち味だよなあ。
 かなめくんは、今回もまたビジュアルへのこだわりがすばらしい。前回のピエロメイクも感心したけど、今回のひげ面には、ヒゲフェチのわたしはハートを撃ち抜かれたわー。ジーンズ姿がかっこいー。
 メインどころの人たちは、みんなうまい。何故なんだ、みんな破綻なく演じているぞ(笑)。名前のある役でやばいかなと思ったのは、カーク@そらくんぐらいか。
 谷みずせくんの美貌と、オカマの迫力には脱帽(笑)。青い鳥はちとせくんなのね、娘役に見える……。

 組によって、こんなに新公にレベルの差があっていいのかと思ってみたりな(笑)。
 思いがけず少女マンガを味わえて、得した気持ちです。

    
 クラス分けってのは、けっこー教師の自由になるもんなんだな、と思った小学5年生の春。
 わたしの通っていた小学校は、2年ごとにクラス替えがあった。新入学のときと3年生のときと5年生のとき。

 4年生も半ばを過ぎれば、わたしたち児童の間ではクラス替えの話題がことあるごとに出ていた。4年生といえばもうオトナと同じ社会生活基盤と意識ができている。林間・臨海学習や修学旅行などのある高学年のクラス分けがどうなるかは重要事項だ。女の子はすでに愛だ恋だとやっているだけに、好きな男の子と同じクラスになれるかは人生を分けるくらいの出来事だしな。
 わたしも、どーしても同じクラスになりたい子がいた。親友にも打ち明けたことがなかったが、好きな男の子がいたんだ。その子と、同じクラスになりたかった。どーしても、なりたかった。
 ついでに、今現在の担任教師も大好きだったので、わたしとしては「アズマくんと同じクラスで、担任がヨシチカ先生」が理想だった。親友と同じクラスになることは、二の次だった。……ひでー女だ(笑)。
 4年生の1年間は、わたしにとって最高の時間だった。好きな男の子がいて、その男の子といちばん仲のいい女子はわたしで、大好きな先生がいて、その先生はわたしのことを気に入ってくれていて。クラス替えなんかなく、このまま卒業まで過ごせればいいのに、と、切実に思っていた。

 そんなとき、教壇で1枚の紙を見つけた。先生の筆跡で、わたしたちクラス全員の名前が五つのグループに分けられている。
「クラス分け表だ!」
 わたしたちは誰ともなしにそう言い出して、大騒ぎになった。
 すぐに、やってきた先生にその紙は取り上げられてしまったけれど。先生は「これは、次の理科の実験のグループ分けだ」って言っていたけど。

 わたしは、願っていた。希望し、また半分確信していた。
 あれって絶対、クラス分け表だ。
 だって、わたしとアズマくんが同じグループだったもの。来年はあの通りのクラスになるんだ。なるんだってば! ならなきゃやだ。

 ……結果。
 5年生でわたしはほんとーに、アズマ君と同じクラスになった。ついでに、担任もヨシチカ先生だった。
 見回せば、あのときちらりと見た紙に書いてあった通りのメンバーが同じクラスになっている。
 やっぱりアレって、クラス分け表だったんじゃん。そう思ったけれど、口には出さなかった。半年も前に一瞬見た紙切れのことなんて、もう誰も口にしてなかったし。

 てゆーか。
 「言ってはならないこと」な気がした。

 だって、同じクラスになった子たちは、わたしやアズマ君も含め、みーんなヨシチカせんせーのお気に入りの児童だったんだもん。
 仲のいい子とばかり同じクラスになれたわ、ラッキー。というより、わたしが仲がよかった子って大抵、ヨシチカ先生と仲がよかったんだよな。先生大好きで、彼を囲んできゃーきゃーやっていた。ヨシチカ先生のいちばんのお気に入りはアズマ君で、次がわたしぐらいの順番だった、と思う。アズマ君は性格で先生に気に入られていたし、わたしの場合は、わたし個人以前に、ヨシチカ先生とわたしの親が仲良しだったんだわ。

 ヨシチカ先生……思いっきり、私情で受け持ち児童選んでないか……?

 まあ、全部でクラスは5つあったわけだから、5分の1の児童をお気に入りで固めたところで、残りは全部知らないよそのクラスだった子たちが来るわけだから、それほど大きな問題ではないのかもしれない。
 てゆーか、それぞれの先生たち、みんな同じようにやっていたのかも? わたしたち児童にとってもクラス替えは死活問題だったけど、先生にとってもものすげー大変なことだったと思う。どの児童を受け持つのかは。
 自分で選べる5分の1だけでも、気心の知れたお気に入りの児童で固めなきゃ、残りの5分の4のはじめて出会う児童たちに適切なケアができなかったのかも。わたしたちのことは、ある程度放っておいても大丈夫だもんな。
 今となっては、そーゆー事情もわかる。

 でも当時は、共犯者の気分だったよ、ヨシチカせんせー。

 お気に入りの子だけで固めたでしょ、せんせ。あのとき見た紙、あれってクラス分け表だったでしょ。わたし、知ってるんだから。
 わたしはせんせを好きだし、なによりアズマ君と同じクラスになれたから、なにも言わないけどね。秘密にしておくけどね。
 気分は共犯者。

 
 あれから軽く四半世紀。
 学校でいちばんハンサムで人気のあったのっぽのヨシチカ先生は、太りもせずハゲもせず、ハンサムなまま年をとり、長身でロマンスグレーなおじさまになった。
 白髪になるのが早かったせいで、それほどの年じゃないだろうに、今じゃすっかりおじーさんって感じ。いくつかの小学校に転勤し、校長までつとめたあと、今は悠々自適な生活。
「ああ、こあら君、合同レッスンには行ったの?」
 そして相変わらずうちの親と仲がいいので、ちょくちょく我が家に顔を出す。わたしが生まれる前からのつきあいだもんなあ。
「あー、昨日行きました」
「昨日? 僕も昨日だったんだよ! 会えなかったね」
 先生も「1万人の第九」に毎年参加しているもんで、この季節に会うと必ずその話になる。
「わたしは4時の回でしたから」
「えー? 僕はその前の回だったよ」
 合同レッスンは10回に分かれてるんですってば。同じ回なわけないっすよ。
「毎年参加しているのに、一度も会えないね。どこのクラスか、パンフレットを見ればわかるけど、こあら君はどこに載っていたの?」
「知りません。パンフレット、買ってないですから」
「ええっ、なんで買わないの?」
「だって高いもん」
「ビデオは?」
「買ったことないです」
「ええっ? ふつー買うでしょ?」
「わたしの周りも誰も買ってないですよー」
「じゃあ見たことないの? 毎年?」
「ないです」
「よし、それじゃ僕が貸してあげるよ。今から取ってくるから」
「え? えーと……ありがとうございます」
 でもせんせー、わたしこれからタカラヅカに行くんですよ。今から出かけるから、こんな格好してるんですってば。せんせ、聞いてます?

 大好きだった先生は、昔と変わらない笑顔で自転車で疾走していく。すっかり白くなった髪、目尻のシワ。誰よりも背が高かった、遠く大きく見上げていた人なのに、「こあら君、あんまり僕と身長変わらないね」なんて「せんせソレ失礼。むきっ」なことを言ってしまうよーになっちゃった。せんせ、絶対身長縮んだよ。わたしが大きすぎるわけじゃないよ。
 大好きだったアズマ君は、転校してしまってそれっきり。今ごろどうしているのかな。ちなみにアズマ君は、わたしよりずーっと背が低かったんだよなあ。おかげでわたしは長い間、身長にコンプレックス持ったままだった。
 時は流れて、人は変わって。
「こあら君、お母さんのお手伝いしなきゃダメだよ」
 それでもヨシチカ先生は、小学生のわたしに話したのと同じように話す。
 どれだけなにが変わろうとも。
 ヨシチカ先生はわたしの先生で、密かな共犯者だ。

        
 日記が消えてしまったので、軽くヘコんでました。

 せっかく張り切って書いたのに、「檀れい様・賛美」。どれほど檀ちゃんが美しいか、わたしが彼女にめろめろかを、鼻息荒く書いた。
 ……消えてしまったのは、きっと運命。
 あまりに「檀ちゃんラヴ」と書きすぎたので、太腿だのスリットだの書きすぎたので、「ちょっとやばい?」てな危惧はあった。

 かねすきさんには、わたしの檀ちゃん好きがすでにネタにされているし(笑)。

「緑野さんだって女好きじゃないですか。檀ちゃんにおねだりされたら、なんでも言うこときいちゃうでしょ?」

 ……きいちゃいますともっ。檀ちゃんに「お願い(はぁと)」なんてされたら、わたしなんでもしますわよっ。
「緑野さん、わたし、ワタルさんとトウコさんでゲロ甘のやほひが読みたいわ♪」
 とか言われちゃったら、
「わたし清純だからやほひなんて書けません、書けないけど、ああっ、檀ちゃんの頼みなら書いちゃいますっっ!!」
 てなもんですわよ。←腐り済み。

 檀れい様は美しい。
 ドルチェ・ヴィータも、船上の淑女も。
 「女」という生き物の美しさに、どれほど心乱されているか。
 あああっ、女性というのは、こんなにも美しいものなのかっ。
 こんなにこんなに、陶酔できるものなのかっ。
 檀れい様・賛美。
 わたしを幸福にしてくれる、美貌の君。

 てな内容を3000字かけて書き散らかしていたんだが。
 運命ですか?
 消えてしまいました。

 美しさは、救いなの。
 別れの物語を、かなしいだけで終わらさないために。

 
              ☆

 東京では、劇場の内でも外でも星組尽くしケロケロ尽くし、とても幸福な時間を過ごしました。ありがとうドリーさん、kineさん、それからまだあだ名未定のしいちゃんファンのお嬢さん(名前のリクエスト受付中っす・笑)。

 帰宅したわたしに、ひさしぶりに会った弟が言う。

「で、祭りには参加する?」

 祭り? なにそれ?

「ドラクエ祭り」

 あ。
 なるほどー。

 わたしにとって今月末は星組東宝公演開始でしかなかったけど、世の中的にはそーゆーことになってたのね。
 わかったよ、参加するよー。今わたしけっこー時間ないんだけど、祭りは参加してナンボ、リアルタイムでナンボだかんな。

 ということで、これからしばらく、緑野姉弟の共通言語はドラクエになる予定。

         
 

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