未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。


「私の年齢がわかりますか」
 バイロン侯爵@ともみんは、BJ@まっつに聞く。

 BJは「いいえ」と返す。

 や、まったくもって、わかりません。

 あなたたちの、年齢設定(笑)。

 バイロン侯爵は「普通じゃない」そうで、生まれたのは1678年。そっから300年近く経ったそうですよ。
 不老不死ではなく、「寿命はあるが、人間の10倍ほども長い」そうです。

 10倍、ってのは、わかりやすくていいです。
 これが8倍とか、4.25倍とかだと、計算しにくくて困る。
 でも10倍だから。

 300年近い、ってことは、そこから0を取れば、ふつーの人間の年齢になるってことっすね。

 つまり、バイロン侯爵は、30前。

 28とか29とか。
 それくらい?

 そして、彼と話しているBJ先生。
 8歳のときに不発弾の事故に巻き込まれ、手足がバラバラになったそうです。
 それから20年経った、と本人が語っています。

 つまり、BJ先生は、28歳。

 ゆえに、バイロン侯爵とBJ先生は、同世代。

 ヘタすると、バイロンさんが年上。29歳と28歳とか。

 そこにさらにもうひとり、BJと同級生、山野@まなはるが加わる。

 つまり、山野も、28歳。

 大学の同級生だから、BJと同い年かどうかはわからない。BJはストレートで入学卒業してそうだが(なにしろ28歳ですでに天才ドクター)、山野はその限りではない。
 にしても、少なくとも28歳以上である。

 バイロン侯爵とBJと山野は、同世代。

 ヘタすると、山野がいちばん年上、ってことも、ありうる……浪人歴ありだったりしたら……。

 まっつとともみんとまなはる。
 みんなまるっと、同い年。とか思うと、…………な、なんか、混乱する。

 なんつーかみなさん、年齢不詳っすね……。

 そこにトラヴィス@ホタテを加えるとだ。

 大統領警護官って、どんなキャリアがあればなれるもんなの? 大卒資格要? 軍隊経験要?
 経験の少ない若造では務まらないだろうから、やっぱ30くらいにはなってる? 最低限、岡田くん@『SP』ぐらい?

 へたすると、トラヴィスがいちばん年上?

 まっつとともみんとまなはるとホタテ。

 えーとえーと。

 なんかほんとにもお、わけわかんないっす。


 いちばんの問題は、BJ@まっつが老けすぎてるってことですけどね。

 まっつLOVE(笑)。

 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 『BJ』が好き。
 今のまんまの『BJ』が好き。
 物語もキャストも、全部愛しい。
 奇跡のような公演、めぐりあえたことが幸福だと言える公演。

 そう思っている。


 それとは、別に、考える。

 わたしがもしも、この『BJ』に好きに加筆修正できる立場なら、どうなったか。
 舞台に対してどうこうできなくても、たとえばこの物語をノベライズするなら。

 主人公BJ、ヒロインはピノコ、そして2番手役はカイトになったろうな。

 最初から、そのバランスでプロットを作る。

 BJとピノコ中心だから、重要キャラはその周辺にいる、トラヴィス、山野、五条。
 彼らの日常に「トラブル」として絡んでくるのがカイト。
 「生まれてくるべきではなかった」……「許されざる者」たるカイトが、ピノコが、そしてBJが、物語の最後に「ハッピーバースデー」と結ぶ。「生まれてきたことを肯定する」ことで、終わる物語。

 1幕はほぼそのままだが、バイロンがBJに手術を依頼するそのときに、一族の秘密を打ち明ける。ここだけは絶対変更。
 「自分は人間ではない、だから内臓全部使ってくれていいので、カテリーナを助けて欲しい」……突拍子もないことなのでBJは半信半疑。でも実際に手術してみると、バイロンのカラダは人間よりはるかに強靱だった……それで安心して移植。
 手術が終わり、カテリーナも助かった、そのあとで改めてカラダの秘密をバイロンに問いただす。

 ピノコを助けるために、バイロンに内臓を提供してくれと頼むときの会話は、全部変更(笑)。
 「命を懸けるから、頼みを聞いてほしい」って、命さえ懸ければナニをしてもいいのか。精神論で道理を曲げるのは植爺だけでたくさん。

 そうではなく、何故ピノコを助けたいのかを話す。
 彼女も自分も「許されざる者」であるということ。バイロンと同じだということ。
 だからこそ、「生きる」ために、彼女を救いたいのだと。

 バイロンとBJ、そしてピノコをリンクさせる。

 バイロンを今後利用したりしない、だって同じ立場なんだもの……同じように「この世界に居場所がない」思いを抱いて生きてきた、同志なんだもの。
 だから1回限りで、あとはすべて忘れるという言葉に、バイロンは納得する。

 2幕は大変更。
 バイロンさんの登場は、最初のピノコの名前説明と、あとはカテリーナとの結婚式のみ。
 彼の物語自体は、1幕のラストで片が付いている。「カテリーナと話し合う。彼女がうんと言うまで、説得する」……こう答えが出ているんだから、それで十分。
 結婚式の招待状をもらったBJが、「説得したんだな」とうなずけば伏線回収、問題なし。

 2幕でクローズアップされるのはカイトと、BJの手の話。

 生きる意味を探すカイトに、BJのレーゾンデートルを絡めてエピソード展開。その合間にピノコとのホームドラマ。
 3番手は山野先生でしょうな。BJの指が動かなくなる話も投げっぱなしにはせず、決着を付けるために。

 クライマックスはカイトを追ってきたヤクザたちとの派手な立ち回り。そこからドラマティックに「生きるか死ぬかの大手術」。
 物理的に、「動き」で場を盛り上げて、ダンスと歌で派手な画面を作りつつ、テーマ部分を挿入する。

 「生きる」こと。
 このくそったれな素晴らしき世界で。

 エピローグ的に、空港(ちょっと短縮)からバイロンの結婚式、カイトのケーキを経て、ラストはもちろん「ハッピーバースデー、ピノコ」。


 全体にメリハリを付けて、起承転結を明確に、クライマックスをとにかく盛り上げる。
 番手の壁だか大人の事情だかはわかんないけど、エピソードの核を絞る。
 書くべきテーマ、必要なキャラクタを整理し、そこを中心にストーリーを組み立てる。

 台詞で解説しまるのはウザいけど、「解説しない」かわりに、同じテーマを何度もだらだら歌ってドヤ顔もチガウと思うの。
 バイロンさん関連の「説明台詞の洪水」も無駄だと思うけど、BJの「命と夜明け」も何度も同じことを歌いすぎだ。
 んなことやってるヒマがあったら、「物語」を展開させようよ。


 んで、キャスティング。

 カイト役はともみんもできるだろうし、てゆーか彼の得意分野だろう。エリ役だって、せしこ余裕だろう。
 番手通りにやるなら、そうなるな。
 で、咲ちゃんのバイロンはハマると思う。若く一途なお貴族様。ひとめでぼっちゃんぼっちゃんしてるの。1幕だけの出番だから、カテリーナはダンスのみで台詞なし、あゆみちゃんは得意のダンスでいろいろ表現してくれるだろう。
 バイロンは4番手以下の役になっちゃうけど、咲ちゃんの学年ならアリだと思うし、フィナーレがあるからフォローになる。


 とはいえ、今のみなさんのキャラが大好きすぎて、いじりたくないっす。

 バイロン@ともみん、カイト@咲ちゃん。
 それがいい。
 カテリーナだってせしこがいいし、エリだってあゆみちゃんがいいの。

 今の『BJ』のキャラクタが好きなの。

 だからといって、ともみんが2番手扱いされないよーな比重の役になるのはいやなの。
 わたしの感覚だとカイトが2番手、バイロンさんは4番手以下の「オイシイ役」扱い。
 物語とテーマから考えるとそうなっちゃうだけで、ともみんに含みはないの。ピラミッドは正しくあるべき。ともみんが2番手なのは譲れない。

 ……ので。

 バイロンさん@ともみん主演で、スピンオフがあればいい。

 300年生きる男の物語。
 主演ともみん、ヒロインせしこ。

 今回のバイロンさんは、ドラマとかによくある「友情出演」。
 どう考えてもこの比重でこの役者が出てるのはおかしいだろ、あ、ラストのテロップ見て納得、友情出演なんだー。

 んで、ともみん主演作に、BJ@まっつも1場面だけ「友情出演」するとか。

 観たいなそれ。
 アツい男バイロンさんの、愛の物語。
 とことんロマンチックに!! とことん暑苦しく!!
 バイロンさん、いいキャラなんだもん、彼の物語もちゃんと観たい~~。


 ということで、わたしの脳内改訂版『BJ』でも、キャストは本家と同じまま。

 あ、でも、ピノコの影だけは、ももちゃん自身か、あるいはるりるりにお願いしたいです。
 BJの影たちが、もっと軽々リフトできるような体格の子がいいです。毎回毎回、持ち上げるのが大変そうで、見ていてハラハラした(笑)。
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 わたしはこの『BJ』を好きだけど、名作かどうかはわかんない。
 欠点というか、「ここはこうしてくれたらいいのに」が、あちこちにある。
 それはわりと、全体にどうこう、って感じなの。
 全体を見て、バランスを整える意味での手直し希望。
 メリハリがないとかクライマックスの作り方がオカシイとか、そういうことであって、部分部分はいいんだもの。
 わずかに手を加えるだけで、名作になるのに、惜しいなあ。もどかしいなあ、てな感じ。

 ただひとつだけ、どーしてもわかんないところがある。
 全体バランス、とかいう、ファジィな問題ではなく、明らかに「おかしいだろこれ」とか「失敗してるだろ」と思える部分。
 ここがあるから、「わずかに手を加えるだけ」と言えなくなるっていうか、大幅な外科手術が必要、骨組みから作り直さないと名作にはなりようがないんぢゃね? と思えるような。

 それが、バイロン侯爵@ともみんのエピソード。

 事故に遭ったカテリーナ@せしこを救うために、BJ@まっつを誘拐。
 自分のカラダを使って、カテ子の治療をしてくれ、と。手術をしてくれ、と。

 バイロンの手術ってつまり、彼の臓器をあれこれカテ子へ移植したのよね? カラダを使う、ってつまり、そういうことよね?
 カテリーナは内臓がいろいろ壊れちゃってる。壊れたままだと助からない。壊れた部分を、壊れてない元気な内臓と取り替えたり、部分的に切り貼りして元気な内臓にする……てのが、BJのやった手術なのよね?

 バイロンさんは「普通じゃない」からナニをしても大丈夫だけど、それがわかったのは手術後。
 結果オーライなだけで、やる前はそんなことわかってなかった。

 なんでBJ、そんな手術引き受けたんだろう?

 たとえば、カテ子さんの胃が壊れていたとして、バイロンさんの胃を移植したら、バイロンさん、胃がなくなっちゃうのよね?
 いずれ生えてくる(!)としても、切り取った瞬間はなくなってるのよね?
 カテ子さんにいろいろあげてたら、バイロンの内臓すっからかんになりそうなんですが。
 すぐに生えてくる(!)としても、BJ先生はそれを知らないわけで。

 いろんな臓器のなくなったバイロンのおなかをとりあえず閉じて、手術完了? いやそれ、ふつーに人殺しぢゃあ……?

 臓器まるまる1個移植ではなく、部分部分だからOKってこと? 胃を3センチ、心臓3センチ、とか、破れてるとこをちょぴっとずつ切り取って交換していっただけ、だから大丈夫、って?

 わたし無知すぎて、医療の常識がよくわかんないからなー。
 人間の臓器のほとんどって、そんなに都合のいい移植がOKなのか。内臓パッチワーク。部品交換。
 BJ先生みたいな「神の手」と、「内臓提供しますよ」っていう生きた人間がいたら、人は不死になれる?
 や、ふつーそんな風に内臓提供したら、ドナーは死んじゃうわけで。だから『輝夜姫』みたいな内臓提供用クローンが必要なわけで。

 ファンタジーとしてそーゆー手術がアリなのはわかるけど、BJが引き受けたのがわからない。
 「やってみて無駄だったら途中でやめる」って言っていたのは、カテ子に必要な臓器が、バイロンさんから切り取ったらヤバイような部分だったら、やらないよ、ってこと?
 たとえば、心臓まるごと取り替えなきゃ無理とか。それをしたらカテ子助かるけど、心臓なくなったらバイロンさん死んじゃうよ、そんなことはできないから、そんときは途中でやめるよ、ってこと?

 だからさ、バイロンが真実を言うタイミングが、理解できないのよ。
 途中でやめられたら、意味ナイじゃん。
 心臓なくなっても大丈夫なんで、どんどん取っちゃってください。すぐに生えてくる(!)んで、無問題っす! ……って、バイロンが最初に言って、それではじめてBJは手術を引き受ける。
 たとえBJが半信半疑だとしても、真実を伝えた上でないと、おかしい。

 生えてくることを知らないBJが、「移植したらカテ子は助かったけど、それじゃバイロン死んじゃうから、途中でやめたよ。それでカテ子死んじゃったけど、仕方ないよね」って結果になったら、どうしたんだ。カテ子は死に損、バイロンはカラダ切り刻まれ損。

 バイロンさんが「人間じゃないから大丈夫」を言わなかったのって、保身のためなんだよね。
 「どんだけ切り取ってもすぐに生えてきます、無限ドナーです!」とバレるとやばい、不死を願う人間に利用される、と恐れているからなのよね?
 だから「切り取っても生えてくる」ことは言わずに、BJに手術をさせた。

 ほんとうにカテリーナを愛しているなら、命にかえても救いたいと思うなら、手術を依頼する段階で、カラダの秘密を打ち明けなきゃだわ。

 たまたまカテ子は助かったけど、今の流れじゃ、「無限ドナーだと知ってたら助けられたのに、知らなかったからカテ子を見殺しにしちゃったよ」となってもおかしくない。

 バイロンさん、カテ子のこと、そこまで大切でもなければ、愛してもいないのね。自分の秘密の方が大事なんだもん。
 あわよくば、自分の秘密は秘密のままで、手術だけ完遂して欲しかったのよね。

 過去に似たような理由から破滅した同族の者がいる、それがわかっていて医者に自分のカラダを使って手術をさせようって段階で、腹くくれよ、と思う。
 秘密がばれて、自分だけでなく一族全部を破滅させてもいい、それでもカテリーナを助けたい。そこまで覚悟しての行動。
 ……それならいいけど。
 バイロンさんってば、「カテリーナは助かって欲しい」「でも自分も、不幸にはなりたくない」……なのに、クチでは「彼女が助かるなら、命を失ってもいい」……ひでえ。
 後半、バイロンさんは自分の中のカテ子への不信がどうのと反省するけど、そーゆー問題じゃないから! 君結局ナニもわかってないってことだよ??

 バイロンさんのダブスタっぷりと、BJの謎の行動が、よくわかんないの……。

 や、悪いのはバイロンさんでもBJでもなく、正塚の失敗だと思うけど。

 バイロンの秘密を、1幕ラストに持って来たかった。……それだけの理由だと思う。
 1幕最後の「引き」を作るために。


 バイロンさんがバケモノだとわかった途端の、BJもひどいんだわー。
 「内臓切っても切っても、復活するんだ。それじゃ、金はいらないから内臓ちょうだい」……って。
 内臓あれこれなくなって、生えてくる(!)とはいえ、今現在ぼろぼろのバイロンさんを目の前にして。そっからさらに、筋肉とか皮膚とかおくれ、って。

 バイロンさんを説得するBJの歌も、……意味わかんない。
 「♪私が手術をするときは、命を懸けるつもりです」……って、はぁ? だから、ナニ?
 命を懸けたからどうだっての? そんなのなんの関係もナイ。

 なんでこれで、バイロンさんが納得するのか、さっぱりわかんない。
 まっつの歌声で、全部力尽くで誤魔化した。

 ……だからさあ、DCラストの方、まっつが歌えなかったときは、ロジックの破綻ぶりが丸出し過ぎて、つらかった。
 ふつーに台詞で言っちゃうと、植爺やスズキケイ並にひどい会話。

 誰か止めるモノはおらんかったんか……。や、歌だから誤魔化されちゃうけど、歌っても結局、めちゃくちゃな論理だから。

 バイロン侯爵絡みのエピソードは、とにかく正塚らしくない。
 なにもかも台詞で説明するし、意味なくミュージカルだし、「タカラヅカ」だし。
 植爺とかの悪いところも全部「タカラヅカ」として踏襲している感じ。
 それでも未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 カイト@咲ちゃんの負け犬ソングは好きです。

 別項で細かく書いたのでここでは書かないけど、カイトの弱さが好き。ダメンズだとわかっているけど、そこがいい(笑)。
 つかわたし、「正塚キャラ」好きなのだわ。正塚芝居が好きなんだもん。

 しかし、舞台にただひとりでキャラのテーマソング歌うって、どこの2番手様……。
 大劇場だったらここ、銀橋ソロだねええ。
 1幕が終わったあとの幕間、初日は「咲ちゃん2番手? ともみんじゃないんだ?」って言われてたもんなー。
 結局、2幕もともみんには「銀橋ソロ」的な場面はなかったし。正塚せんせの好みの問題か。

 咲ちゃんを抜擢し続けたのは劇団指示だろうけど、そうやって使い続けながら、正塚せんせも咲ちゃんに情が移っている気はする。
 正塚芝居をまんま叩き込んでるしなー。
 いつか、咲ちゃん主演で正塚作品がありそうだ、と思ったナリ。


 BJ邸でへこんでいるトラヴィス@ホタテが好きです。
 彼がソファーに坐っているのは、この一瞬だけ。あとはBJ先生、絶対トラヴィスを坐らせてあげないもんね。
 BJのソファーに坐って、BJを思っているトラヴィスさん。うなだれて、アタマ抱え込んでるトラヴィスさん。

 BJがいなくなって少なくとも3日は経過している。
 BJの護衛をするためにわざわざ日本にいるっつーのに、対象者を見失って、3日。
 プロとしてあるまじき事態。

 発信機の修理のため、ちょっと不在にしているウチに、BJは消えていた。
 どこへ行ったのかわからない。
 ここのトラヴィスさんのキモチが、とても興味ある(笑)。

 電話がかかってきて「誘拐~~?!!」と驚愕するわけだから、それまではまったくなにも知らずにいたわけだ。
 つまり、BJが自分で姿を消した、という可能性もトラヴィス的には考えられたってこと。

「BJ先生はどこへ行ったんだろう。仕事だろうか? 発信機が役に立たなかったし、僕が無能だから置いて行ったんだろうか。僕がうざいから家に帰らなくなったんだろうか」
 ……いろんなこと考えて、落ち込んだろうなと。
 もちろん、「なにか事故に遭ったんだろうか。なにか事件に巻き込まれたんだろうか」という心配もあったろう。その場合、「自分が付いていて、なんてことだ」と自責の思いに苛まれていただろう。

 鳴らない受信機をえんえん眺めて、苦しんでいたんだろうなと。

 萌えるんですが(笑)。

 日本に来たばかりで右も左もわからない、BJとも信頼関係を築けていない、そんなトラヴィスがひとり、悶々とする図。
 ……山野先生@まなはるに電話一本すりゃ、済む話ですよ。山Pは「大丈夫ですよ、BJのことだから」と明るく答えてくれたろうに。「なんでも誘拐されてるそうですよ」と。
 トラヴィスは、山野先生のことも知らないんだね。
 そんな状態で、放置されてたんだね。

 トラヴィスの唯一の救いは、発信機。
 なにも言わずいなくなったBJは、発信機を持っていると思う。BJがその気になれば、居場所を教えてくれるはず。
 発信機が使われていないということは、危険な状態ではないということ。……つまり、BJは自分の意志で出て行った……トラヴィスにはナニも言わず……それこそがBJの意志……。

 いろいろぐるぐるしてんだろうなあ。
 それで、ソファーでアタマ抱えてんだろうなあ。

 登場するとすぐに電話が鳴っちゃうから、ソファーのトラヴィスはほとんど見ることは出来ないんだけどね。


 電話のひとり芝居は素晴らしい。
 何回観ても楽しい。笑える。また、客席が沸くのを見るのが楽しい。

 ここでひどいなと思うのは、BJが、トラヴィスをものの数としていないこと。

 BJ先生は、五条さん@きゃびいに電話を掛けたつもりなんだ。
 そろそろ五条さんが来ている時間だろう、と思って電話をしたら、出たのがトラヴィスだった。
「なんだキミか。五条さんは?」……BJの冷静な声が聞こえるようだ。トラヴィスは「今どこにいるんですかっ」と叫んでるけど。

 トラヴィスに連絡する、という選択肢はまったくなかったんだね、BJ先生……。
 トラヴィスの宿泊先も知ってるくせに……五条さんを通してでも、伝言できるくせに……。ひでえよ。


 無駄に芝居の細かい正塚芝居なのに、このトラヴィスひとり芝居電話のときの、BJ@まっつが、ろくに芝居していないことが、不満です。

 トラヴィスが黒電話を持って「電池なくなりますよおおおっ」とか騒いでいる後ろに、電話中のBJがバイロン城のセットごとゴロゴロと登場してるんだ。

 そりゃ、まだライト当たってないけどね。
 そちらにカメラが移るのは、BJが電話を切った瞬間であって、電話中はナニもしなくてもかまわないんだけどね。
 でも、舞台に出てきたら、期待するじゃん? トラヴィスと話しているんだ、って、なにかしらリアクションを。

 でもBJは無表情・無感情に受話器を耳に当てているだけ。彼の演技がスタートするのは、電話を切るところから。
 ちぇっ。
 いつかなんかやってくれるかと、毎回登場する瞬間からオペラロックオンしてるのにさ。

 BJはクールだから、とか、ガートルード@るりるりに監視されながらの電話だから、てのは言い訳にならないよ。BJ先生が感情豊かな人であること、電話中もけっこうわかりやすいリアクションする人だってことは、2幕の医師連盟とのやりとりでわかっているし。
 単にあそこは、芝居するよう言われてないんだろうなあ。背景に徹しろというか。ライトが当たってはじめて動けっていうか。


 てことで、トラヴィスの反応しかわかんないわけだけど。

 BJ先生は、騒ぐトラヴィスを無視して「五条さんに替わってくれ」しか言わない。発信機の話をするトラヴィスを無視する。
 なんでかって、BJはちゃんと発信機を使っていたんだ。なのに、なんの役にも立たなかった。だからその話で貴重な電話タイムを消費する気にならない。
 「3日間押しっぱなし」という事実から、見えてくる。

 バイロン侯爵@ともみんに誘拐され、バイロン城で目が覚めた。
 身体検査はされなかったらしい? BJは自分が発信機を持ったままだと気づく。で、意気揚々と、押す。
 音がしない……けど、信号は出ているのかな? 発信機を耳に当てたり、振ってみたり。
 そして、トラヴィスを、待った。
 どうやらここは外国、駆けつけるには時間がかかるだろう……そう思って待って……来ないじゃん。つか、壊れてんじゃん、これ。
 怒って、あきれて、投げ出して。

 あの、役立たず。なにが「私にも信念があります」だ。

 BJ、すっかりヘソを曲げる。トラヴィスに対して、レッテルを貼る。

 だから電話でトラヴィスが騒いでも、彼をなだめることより五条さんと話すことを優先した。

 ……そんなこんなが想像できて、楽しい。「3日間押しっぱなし」。

 トラヴィス……BJ先生、君を待っていたんだよ。だからボタンを押したんだよ。……押しっぱなしなのは、あきらめて放置していただけだろうけどね(笑)。

 うーん、考えれば考えるほどラヴいな、こいつら。
 
 それでも未だに、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 BJ@まっつのダンスシーンは、1幕後半の手術シーンのみ。
 少ない。少なすぎるよ正塚せんせ。
 『スカウト』では歌ナシでダンスばっかだったし、どうしてこう極端なのか。
 それでも、このわずかなダンスシーンが、美しい。

 まっつはなんつっても手の動きが美しい人なんだが、「手術」だからか、手の動きがことさら強調された振付でね-。
 いやあ、素晴らしいです。

 しかし、なにしろまっつなので、舞台後方で踊り、そのまん前でバイロン侯爵@ともみんとカテリーナ@せしこにデュエットダンスされた日にゃあ、かぶっちゃって、まったく見えません(笑)。
 ちっちゃいから。
 半端なく、しばらくナニも見えなくなる。


 不安感や毒のあるダンスシーンで、BJは影たちと一緒に踊っているだけだが、バイロンさんとカテリーナは、死の影@ゆめみちゃん、ありちゃんと踊ってる。
 この、死の影の衣装は、なんとかならんかったんかい。

 カラダの線のまったく出ない布状に広がった白黒衣装。
 華奢な子が、中でカラダを泳がせながら着るならアリなんだろう。しかし……。
 なにしろありちゃんは、雪組1の体積を誇る娘役さんだ。何故ありちゃんに、この衣装を着せるかな。
 ゆめみさんも、タカラジェンヌ基準では華奢ではない。副組長らしい肉が付いた人だ。
 痩せていないふたりに、おでぶに見える衣装を着せて踊らせるのって、誰得……?

 ふたりともダンサーだから、ダンス場面での見せ場なんだろうけど、それならふたりがもっときれいに見える衣装にして欲しかった。
 せっかく耽美な場面なのになー。


 倒れたバイロン侯爵を、BJが助け起こし、上手へ促すところのまっつの力の入り具合が、ツボだ。
 そのあとの、上手へはけていく姿も含め(笑)。


 手術ダンスに、それまでずーっとBJの影役だったレオくんがいません。
 なんでかってえと、その次の場面に、影以外の役で出るため。
 このレオくんが(笑)。

 ある日の幕間、初見の友人がちょーウケていた。
 「影役のレオくんが素敵過ぎる。堕ちるかと思った」、加えて、言う。「でも、チンピラ役を見て、正気に返った」。

 初演『BJ』と違い、今回は影が固定役ではないため、みんなそれぞれいろんな役をしている。影役だけだったらずーっと台詞もなく踊っているだけ、声を出して芝居をして、ということがない。
 その点で今回は良かったね、影役の子もちゃんと芝居の出来る役をもらえて。
 ……という話をしていたんだが、前述の友人は言う。
「レオくんに関しては、影役だけの方が、人気出たんじゃないの?」
 声を出して、台詞を言って、芝居している姿を見たら、百年の恋も冷めると。むしろ逆効果だろうと。

 いやいやいや。
 世の中には「ギャップ萌え」というものもあるしね。黙って踊っているときは超オトコマエ、喋るとギャフンなヘタレ男、てのにクラクラきちゃう場合だってあるよ。……たぶん。
 芝居のヘタさに胸キュンする乙女たちだって、少なからずいるんだと思うよ。……たぶん。

 それか、ダンスだけでうっかり惚れて、あとから芝居を見てショックを受けないように、ダメなところも晒している、マサツカの親切心かもしれない?

 とまあ、ちょー失礼な会話で盛り上がったくらい、レオくん演じるヤクザは、ひどかったです(笑)。

 わたしは『Crossroad』のマヤちゃん演じるギャングを思い出していた。あれもひどかったさ……。オンナノコまんまの声で怒鳴って凄んで。弟分ならともかく、兄貴分役ってのが、なあ。キツさ倍増。

 場面は日本へ移り、BJからもらった聖徳太子の札束を「馬で稼いだ」ととぼけるカイト@咲ちゃん。
 借金の取り立てに来たのが、縦縞黒スーツのレオくんと、革ジャンおーじくん。や、ふたりとも、とってもわかりやすくヤクザさん。

 レオくんの場合、姿が美しい分、声と芝居のダメっぷりが際立つんだと思う……。
 いっそレオくんはほとんど喋らず、おーじくんががんがん喋って会話を進める、でも良かったのかも。レオくんは兄貴分だからクールに構えて、下っ端のおーじくんが兄貴の気持ちを察して動いているんだ、みたいなカタチにすれば。
 ……てなことも、友人たちと話しました。おーじくんは芝居も出来る、器用な下級生だよねえ? 今回台詞ほとんどないけど。

 幕間の話だったので、わたしは友人たちに「2幕のレオくんがまたすごいんだよーっ」と語りたくてうずうずしてました。
 ヤクザレオくんのアレさでこんだけ幕間の話題独占になるなら、2幕の空港職員見たら、さらにさらにレオくんの話題で盛り上がるに違いないっ。

 てくらい、みんな、きらはれおくんが好きなんです(笑)。

 良くも悪くも目立つ。話題になる。
 これは、舞台人として強みである。

 わたしは彼の顔が好みなので、活躍してくれるのはうれしいです。
 早く声変わりしてくれることを切に祈りつつ。


 エリ@あゆみちゃんは、不良なのではなく、単にダンスが好きな女の子なんだろうなと思う。
 不良たちのたまり場としての派手な店に出入りしているのではなく、純粋に「踊る」ため。
 えーと、あの時代だと「ゴーゴー喫茶」っていうんですかね? でも、正塚せんせは時代考証守る気ないみたいなんで、場面名は「クラブ」です(笑)。

 なんかすごい格好の女の子@雛ちゃんと踊るカイトを見かけて、声を掛けてくるのはエリの方。
 最近姿を見せなかったカイトを心配していたと言う。……エリの方が、カイトを好きなんだよね。ちゃんと。
 ただ、カイトのバカはそれに気づいてない。
「他の女と同じ、足が不自由だからオレを相手にしないんだ」と決めつけるカイトに、思わず言い返しかける……けど、思い直してなにも言わずに立ち去る。
 言えないよねええ。
 この流れで、「好きだ」とは。
 悔しすぎるわ。バカバカしすぎるわ。

 店を飛びだしたエリが、泣いている気がする。
 怒りながら、悔し泣きしているんだろう。カイトに。
 そして、自分自身に。


 わたしは咲ちゃんの、ちょっとした表情を好きだと思う。
 彼の、「虚を突かれた顔」。
 『はじめて愛した』のときがそうだった。ヒロインの母@ヒメと話しているときに、まるでわけもわからないまま主人に殴られた犬のような表情をした……何故傷つけられるのかわからない、虚を突かれた顔。

 コンプレックスの固まりのカイトは、「大金」を手にするまで、エリを口説くなんてできなかった。
 今なら言える、とばかりにエリを口説くのだけど、エリはカイトの変心を快く思わない。金を手に入れた途端口説かれたら、「あたしをなんだと思ってるの?」ってなるわな。
「あたし、あんたが思ってるほどすれっからしじゃないのよ」
 エリにそう返されたときの、カイトの顔。
「……そんなこと、思ってないよ」
 カイトにとっては、エリは高嶺の花だ。金でどうこうできるような、安い女だと思ってない。「あたしはお高い女よ」と返された方が、カイト的には驚かなかったろう。

 エリに、エリへの好意を切り捨てられた、その瞬間の表情。
 「あんたが思ってるほど」……カイトがナニを、思ってるって?

 切りつけられた、無垢な顔が、胸に痛い。

 そのあと彼が「他の女と同じだ」とエリを傷つけたのも、仕方ない。だってそれくらい、カイトも傷ついた。エリの言葉で。

 ……って、両思いのくせに、盛大にすれ違い、誤解しまくるふたりがすげーツボです。
 ナニこの少女マンガ!!(笑)
 未だにアタマが『BJ』なんだけど、あれから『オーシャンズ11』も観に行ったし、星中日も観に行ったし、いい加減現実復帰しなきゃなー。仕事も確定申告もしなきゃならんのになー。

 てことで、雪組『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』集合日。

 組内の退団者ナシ。
 モバタカからのメールは、ソルーナさんのみのお知らせでした。

 ソルさん、退団なのか……貴重な大人の色男がまたひとり、花園を去って行く。
 ソルーナさんも、チーム『血と砂』なんだよな、とまたそんな詮無きことを言ってみる。もう綾月くんぐらいしか、残ってないのか……タカラヅカって儚いところだよな。


 さて、わたし的にはアンドレ@まっつが、トップさん特出時になんの役をやるのか、ってことが大問題。

 なつめさん主演だった『フェルゼン編』の記憶が、まったくないのですよ。「大嫌いっ」と作品の酷さに憤慨して、二度と観なかったからなー。
 だから半端にあるのは『フェルゼンとアントワネット編』の記憶。
 そこを中心に考えると、第一希望ジェローデル、第二希望ベルナールでした。
 にしきさんが作品変わってもロベスピエールだったみたいに、まっつもベルナールだったらいいのに、ぐらいに思ってた。

 で、これがまた考えどころっちゅーか、危惧っちゅーか、植爺の『ベルばら』をキライ過ぎるゆえに、大きな役であればあるほど拒絶反応が大きい、ということが、往々にしてあった。
 植爺は役の格付けを「豪華な衣装と何行もの台詞」と思い込んでいるため、空気無視した豪華衣装と、無駄で不快な台詞をだらだらと何行も垂れ流す。
 いっそ台詞が少なければ、ここまで拒絶反応も出ないのに、と。

 つまりだ、台詞の多いだろうアンドレよりも、比重の軽い役替わりの方が観やすいとか、好みだったりしたら、どうすりゃいいんだ、と。
 や、ふつーならかまわないが、今回は『ベルばら』で、特出様の回はチケ難だ。
 特出バージョンの方が好みだわ、と思っても、チケット手に入んないじゃん!! どーすんのよ?!


 えーと。

 全部、杞憂ですかね。

 ランベスク公爵って、ナニ??

 知らない人だー。
 この期に及んで、知らない人になるとは、思ってなかったー。

 本役が大ちゃんってことは、歌はないんだろうなあ。


 月組『オスカルとアンドレ編』では、役替わりするのが準トップのみりお様だったから、配役も気を遣われていたけれど、そっか、雪組『フェルゼン編』は2番手と3番手だから、そこまで気を遣われないのか。2番手のちぎくんはともかく、3番手のまっつはなあ……。
 むしろ、準トップの役ではなく、2番手と3番手の役で特出していただく、他組トップスター様に気を遣う、と。
 理には適ってるけど、うれしくない(笑)。


 ただ、まっつと大ちゃんが同じ役と思うと、ちょっとツボります。
 だってさー、まず、身長、何十センチ差?!(笑)

 見た目も持ち味もキャラクタも、なにもかも正反対。
 かすりもしない。

 これで役替わりって……どうしよう、面白すぎる。

 衣装は絶対別だよなー。
 同じデザインで大小作ってもらえたりしたら、それはそれで愉快だなー。
 並んでみて欲しい……。

 そして、同じ台詞を言っても同じ演出を受けても、絶対、別モノになる。別モノにしかならない。
 ちょっとそれ、楽しみだわー。


 つっても、これで冷静に雪組『ベルばら』祭りを眺められるかも。
 チケ難みたいだから、観たくても観られないかもだし。
 『BJ』で踊りすぎたので、ちょっとおとなしくしよう(笑)。サイフも身体もがったがただわ~~。

 『巴里祭』を思い出すなあ。主演公演で盛り上がりまくったあとに、台詞2文字だけだっけ。
 吊り橋効果抜群。余計に愛が燃え上がる感じ? めらめら(笑)。


 新人公演の配役は、えーっと。
 なにはともあれ、オスカル@レオくん、アンドレ@ホタテにがっつきます!!
 ジェローデル@あすくんもうれしーぞー。


 未だしつこくアタマが『ブラック・ジャック』なんだけど、星組中日公演『宝塚ジャポニズム~序破急~』『怪盗楚留香外伝-花盗人-』『Étoile de TAKARAZUKA』初日に行きました。

 3月の中日公演っていいね!!

 感動した。名古屋が近い!!

 というのも、3月は「青春18きっぷ」が使えるのよ~。大阪-名古屋が往復2300円。近鉄の在来線で行くより安い。
 しかも、早い。
 近鉄だと4時間覚悟なのに、JRだと3時間かからない。や、うち阪急沿線なんで、そもそも近鉄の駅までかなり遠いし、交通費かかるからねー。JRは徒歩圏内にあるので、最寄り駅から即18きっぷで済むしねー。
 半分近い値段で、1時間以上も早く着く……3月って素晴らしい!!
 通常の中日公演が3月で、3週間やってくれるなら、贔屓が出演してるなら、ストレスなくがんがん通えるってもんなのにねー。(2月の中日でも、あんだけ通ったもんな・笑)

 なにはともあれ、1ヶ月ぶりの中日公演。
 あのときはまだ、父が存命だったなとか『BJ』ははじまってなかったとか、いやそもそも去年のゆーひくんの中日初日が、我が家にとって最後の平安日だったんだよなあとか、いろいろ思いを馳せながら名古屋の街を歩き、中日劇場へ。


 『宝塚ジャポニズム~序破急~』って、ほんとに台湾へ持って行くんだねええ。
 今さら、しみじみと、感心する。あきれる、とも言う。
 変更されてないかな、改稿されてないかな、いくら植爺がアレな人でも、不評は耳に届いているだろうし、タカラヅカの未来のために進言する人だっているだろうし……と、一縷の望みを持っていたのだけど。

 さすが植爺、さすが宝塚歌劇団。
 変更しないんだ。

 どんだけ不評でも、お客から拒否されていても、そのまま放置するんだ。強行するんだ。

 未来のない劇団だなあ、とまたしても暗いキモチになる。
 わたしはタカラヅカFOREVERな人なので、なくなってほしくないのですよ。
 なんで当たり前のことが出来ないんだろうなあ。
 『仮面の男』レベルの非人道的な事態にならないと、動かないらしい。
 いや、『仮面の男』が植爺作だったら、どれだけ人道的に間違っていても、改稿はされなかったのかもしれない。ぶるぶる。

 変更がないことに絶望したけれど、それはさておき、『宝塚ジャポニズム~序破急~』。
 大劇場より、ずっと良かった。

 少ない人数と小さな劇場。
 それなら、わたしが許せないと思った部分の何割かは、気にならなくなる。

 本拠地宝塚大劇場で上演してはならない作品……ってそれ、まったくもって「タカラヅカ」の王道ではないってことなんだけどな。別箱でなら、そんな実験作品をやってくれてもぜんぜんかまわないんだけどな。
 「タカラヅカ」の看板を背負って海外へ持って行くよーなもんじゃないんだけどな。

 「このままじゃいけない」と危機感を持っているのは、現場の人たちだけなのかな? 効果音とかがんばって、ひどい作品をなんとかマシにしようとしてくれた結果、ムラのときより見やすくなっていた、ほんと。


 お楽しみの『怪盗楚留香外伝-花盗人-』。正直、コレがなかったら中日まで来てない。
 中日・台湾公演限定の、オリジナルミュージカル。原作付きでも、ヅカがオリジナルで作った作品は、オリジナルですのよ。

 どんな話なのか、いつも以上に予備知識なし。つか、タイトルすらちゃんと読んだことなかった。……ぱっと見、読めないんだもん……どこで切るのかもわかりにくい……楚留香ってナニ? 字面からそれがモノなのか地名なのかすら、想像もつかない。
 そっかあ、人名だったのか。怪盗のあとに付く単語だからふつーは人名だけど、なにしろ読めないし「香」だし、「花」盗人だし、アホの子にはなにがなんだか。

 そんな状態で見ても、楽しいお芝居でした。

 ストーリーだけなら、他愛なく楽しい。
 が、「タカラヅカ」なので、いろいろと驚いた。

 トップ娘役が、ヒロインじゃない。

 ……びっくりした……。

 ねね様がヒロインじゃない。
 ヒロインは、礼くんでした。

 えーとこれ、外国に、「宝塚歌劇団です」って持って行くんだよね?
 『宝塚ジャポニズム』がすでにタカラヅカじゃないし、トップ娘役はマツモト大先生様です、って作りなのに、その上芝居がコレ?? ここでもトップ娘役無視?
 わざわざ外国に、「タカラヅカってこういうものです」って持って行くんだよね??

 劇団がナニをやりたいのかわからなくて、そこのところは盛大に頭を抱えました。

 それを置いておくと、あとは楽しかった。

 ねね様の剣舞!! ねね様の二刀流!!

 ねねちゃんがもー、美しくてカッコ良くて!! いやもう、素晴らしい。

 アタマ悪いので固有名詞とか人名とか、1回見ただけじゃなんにもおぼえられなかったんだけど、星組さんの顔が見えるというか、それぞれのキャラがわかっているから、そのまま楽しめた。

 いやあ、いかにもヲタクが書いた作品だわ。
 キャラ付けの素敵なこと。
 がやがやしている周囲の人たちまで、なにかしらアニメ的なキャラが付いている。
 そうそう、そういうとこにこだわるのがヲタなのよ~~。で、ヲタはそーゆーところを眺めて楽しむんだもん、真ん中とは別に。

 ところでベニーさんはうまくなったのかしら?
 『ジャン・ルイ・ファージョン』に続いての辛抱役というか、抑えた感じの青年役……つまり、ベニーお得意のお笑いキャラとか発狂キャラぢゃないわけなんだが。
 『ジャン・ルイ…』のときより、ずーーーっとはまってる!! 無理なく見られる!

 つか、このベニーさんが好み過ぎて困りました。
 父との確執とか、もっと見たいです(笑)。

 パパ役のまさこさんがまた、かっこよくて……。

 れおんくんは安定のヒーローぶりだし。妹分トリオがかわいすぎるし。


 楽しかったけれど、あまりよく出来た「作品」だとは思えなかった。
 初日だったせいかもしれないけど……なんだろう、この学芸会的な雰囲気は。
 内輪ウケに終始した感じというか、練られていない感じというか。
 まだ未完成、習作、これから手を加えて数ヶ月後に、本公演をやります的というか。
 試しに書いただけ、まだ推敲してないです、って感じ。
 小柳たんに時間がなかったんだろうか。

 もっとちゃんと手を加えて、本気でやればいい作品になるだろうに、「時間切れ~~、まだ途中だけどいっか」って感じに提出された作品みたい。
 そこが、残念。

 どこか別の機会に、本気で作ったモノを観てみたい。


 『Étoile de TAKARAZUKA』でおどろいたのは、ちゃんとベニーが2番手であること。
 歌が得意というわけじゃなくても、彼の歌で1場面やっちゃうとか、「タカラヅカ」のピラミッドを守った作りになっていた。

 どんだけ歌ウマでも、専科さんと職人さんたちだけで1場面とか、わたしは「タカラヅカ」として疑問だったので、こっちの方がいいっす。


 あー、そういやロケットでレイラが大変なことになっていて、そっからしばらく彼しか見られなかった(笑)。


 楽しい公演でした。
 台湾公演にも期待。
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 最初に見たとき、素でびびった。
 マンガのように、目の玉が飛び出ていたことだろう。
 まさかの、ともみん×まっつ。
 BJ@まっつの家にやって来たバイロン侯爵@ともみんが、銃を突きつけ同行を強制する。BJはもちろんそんなもんでびびらない。
 が。バイロン侯爵はさらに実力行使に出る。

 BJ誘拐のために、後ろからクロロホルムを嗅がせるの図。

 でかくぶアツいともみんが、小さくて薄いまっつを襲う。
 すっぽり。
 まっつ、すっぽり。ともみんの腕の中。

 まさつかェ……。
 さすが、アンソニー@トウコを、フレッド@ワタさんに後ろから抱きしめさせた男だわ……。
 ここぞ、ってときに、最終兵器を投入してくる。

 ともみんに後ろから抱きかかえられ、必死に抵抗するまっつ。

 まさか、こんなサービスショットを見られるとは思ってなかったっす。

 ともみんの腕を振り払い、なおも逃げようとするけれど、クロロホルムを嗅がされたためカラダが自由に動かないまっつ。
 床に倒れるまっつがまた、素敵ななポージング。腰が上がるように膝を折っていてね……ナニあれ、美形様横たわり図?

 這うように逃げるまっつに追いすがり、仰向けに転がして馬乗りになり、さらに襲いかかるともみん。
 ともみんのカラダの下で、意識を失うまっつ。

 抵抗していた腕が力を失い、床に落ちる。

 瞼を閉じたBJ先生の、人形のような美しさ。

 白い髪ってすげえな。人形度が増す。
 顔の横に投げ出された右手がやばい。可憐。

 侯爵の部下、ゴンチャロフ@ザッキーとセバスチャン@イリヤくんが意識のないBJを運び出すんだけど。

 軽そうで、萌える(笑)。

 なんかすごくひょいっと、抱え上げられてしまう、主役様。ザッキーとイリヤくんだって、別に大柄ってわけじゃないのに。そんな彼らに、ひょいっと。……軽いんだろうなあ、まっつって。平均的な男役と比べて。

 ところでこの場面のバイロン侯爵が、なかなか愉快なことになっていて。
 ピノコ@ももちゃんから超能力攻撃を受けているのに、ものともしない。
 カイト@咲ちゃんは止められたのに、ともみんは止められない。

 ……そりゃそうだよなあ。あのともみんだよ? 超能力ぐらいで、どーにかなる相手じゃないよ。ゴジラとか連れてこないと、ともみんには勝てないよ。
 そう思わせてしまうともみんが、すごい。

 ひとりでものすげー勢いで吠えまくるともみんに、あるとき隣の席の見知らぬ人が、なんかツボったらしくここで盛大に吹き出していた。いやここはべつに、笑うところじゃないと思う。たぶん。

 てゆーか最初のうち、わたしは盛大に泣いていた。
 2回目の観劇時は、確実に泣いたなー。
「私は止められん。無駄なことだ!」と吠える侯爵に、泣けた。
 正気ではない、行きすぎたその姿は……愛ゆえに。
 カイトみたいな半端な男はすぐに音を上げた。でもバイロン侯爵はチガウ。彼は殺されたって、あきらめない。彼が「人間じゃない」から耐えられたのではないと思う。
 意志の力ゆえに、カテリーナ@せしこを愛するゆえに、耐えられたんだ。

 そう思ったら、泣けて泣けて。


 影たちのダンス、りーしゃセンターなんだねえ、としみじみしつつ。
 五条さん@きゃびいへの電話を経て、バイロンの城へ舞台は移る。

 きゃびいのひとり芝居もうまいよなー。
 彼女の自宅へ直接電話してるんだよね、BJ先生。「山野先生はご存じなんですか?」とあるように、山野病院は通していない、個人的な依頼らしい。
 某国大統領治療のための留守を頼んだのは、山野を通してだったらしいのに、今回は五条さん直接。

 山Pのあの性格からして、彼に連絡すると話がまだるっこしくなるから、直接五条さんなんだろうな。
 誘拐され、ピノコの看護に必要な連絡事項以外は伝えられない……そうわかっていての電話で、話が脱線しそうな山野先生は連絡相手に不適格。
 BJ先生、ドライだわ。や、いい判断です。


 バイロン家の使用人たち。
 ガートルード@るりるり、ゴンチャロフ、セバスチャン。
 ガートルードはほんとにいいキャラ。『マジシャンの憂鬱』のトウカさんまんま(笑)。トウカさんは上級生だけど、るりるりはまだ若い。……ほんとるりるり、うまいよなあ。

 「ゴンスの人」ザッキーは素晴らしいインパクトのある役。
 別の役だけど、「ゴンスの人」としてザッキーが登場する、そのおかしさ。
 手塚治虫ってそうだったよねえ、と。

 『BJ』全体を通して、もっとも役不足で首をかしげるのが、イリヤくんの扱い。
 セバスチャンって、これだけ??
 出番も台詞もほとんどないし、アルバイトだってモブばっかだし。
 イリヤくんより下級生たちの方が、ずっといい役をもらっているので、学年順ということでもない。
 正塚の好みの問題なのか。

 なんかますますフェイスラインが丸くなった気がする。『フットルース』のころはもう少しすっきりしていたような?
 痩せていたら、影役にも入れたり、したのかなあ。ヤクザのメンバーに入れたり、したのかなあ。声は学年のわりにいいのに、披露する場がほとんどなかったね。

 他の「はじめてこんなに喋った」的な下級生たちが、どんどん目に見えて成長していったので、「舞台上の経験値」ってのはほんと役者をもっとも成長させるモノなんだなあと思う。
 その機会が、全員万遍ないわけでもなかったんだよなあ、と。


 バイロン侯爵に誘拐されたBJ。
 不思議なことに彼は、本当の意味で怒っていない。

 お茶会でまっつが「BJは警戒心の強い人ではない」と言っていたけれど、ほんとにそうだ。

 迷惑がっているだけで、バイロン侯爵を忌み嫌ってはいないんだ。
 大統領側近たちに同じことをされたら、絶対もっと態度違ってる。
 自分の保身ゆえに指図してくる側近たちと、愛する女性を助けたくてテンパっているバイロン侯爵では、評価が違うんだろうなと思う。


 しかし、まあ、クロロホルムで眠らせたBJを、自家用ジェットでヨーロッパの自宅(お城)まで運んだバイロンさん。
 きっとジェット機の中では眠るBJを傍らに置いて、ずーーっと寝顔を眺めていたんだろうなとか、丁重に運ぶよう指示して、思い直して自分で抱き上げて運んだんじゃないかとか、夢が膨らみますな。

 や、だって、侯爵様自ら手を下して、拉致した大切な命綱ですよ?
 他人の手に任せたりしないとか、いつも目の届くところに置くとか、基本じゃないですか?
 ねえ?(笑)
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 ピノコ@ももちゃんの「ぐにゅ~~」は素晴らしいです。
 ほんと、最初見たとき驚いた。
 動くとは思わなかったもの!
 人形だと思ってた。
 人間が入っていて、しかも、ピノコ自身だなんて、まったく考えてなかった。

 しかしあの格好であの体勢であの角度にカラダをひねって静止、って、どんだけ腹筋勝負……。

 ホラーとして、素敵な演出。
 ……でもやっぱり、ピノコ自身にやらせなくても、ピノコの影がももちゃん自身でも、いいと思うの……。

 実際にあの格好でベッドにいて、BJ@まっつの声を聴ける、ってのはうらやましいし、役作りに有効なのかもしんないけど。


 BJがカイト@咲ちゃんへ突きつける札束が、聖徳太子だってことに、ちょっとツボる。
 そうだよなああ、ゲンナマといえば、札束といえば、聖徳太子だよな(笑)。
 咲ちゃんって平成生まれだよね。昭和のお札って、本物見たことないかもしんないもんなあ。

 厚み1センチくらいのまとまった額を渡しているので、BJ先生宅には、100万円くらいふつーに置いてあるらしいとわかる。
 70年代の100万円って、それなりに大金な気がするんですが。や、わたしにとっては現在も大金ですが。
 玄関に鍵もかけないのに、まんま置いてあるんだ……。
 そりゃ、200万ドルの男からすりゃ「現金はない」レベルのはした金なんだろうけどさー。

 「私たちの生活費」を全部渡しちゃって、明日からBJ先生どうするつもりなんだろう、とちと不安になる。
 やっぱり銀行にたんまり貯めてるのか。そりゃそーだよな、200万ドルは口座へ入金だろうし。BJ先生の華奢なカラダで、そんな重いもの持てるわけない。(そこ?!)


 カイトがさんざんひどいことを言っていったあとの、ピノコへの語り掛けが切ない。

「助けたくて もどかしくて 標さえ見えない」

 生まれてきた。生きようとしている。
 ただそれだけなのに、否定され、排除される。

 さっきの夢ゆめしいピノコドリームとうってかわって、ダークな世界観で、ピノコの影@ゆきのちゃんが踊る。

 ピノコの存在に、BJが自分自身を重ねて見ている……のだとしたら、ほんとうに、切ない。
 精一杯の叫びに、悲鳴に、誰にも気づいてもらえなかったのは、BJ自身なのか……。
 だからこそ、ピノコの手を離さない。「お前を見捨てない」と繰り返す。


 というところで、間の悪い男トラヴィス@ホタテが現れる。
「命に代えてもお守りします!」の金髪のボディガード、我らがホタテマン。
 ……BJ、ついさっき(昨夜)、命の危機だったんですが……。

 BJ、するっとトラヴィスのこと忘れてるし。発信機を忘れていたように。
 おぼえていたら、カイトに銃を突きつけられているときに、愚痴るはずだ。なにしろBJ先生愚痴っぽいし。
 ちなみに発信機は、昨夜トラヴィスに旅館の名刺を渡す折に、タンスの上に置き去りにしたまま。

 で、あわてて発信機を探すBJがかわいい。

 いたずらを見つかった子どものよう、というか。
「どこへやったかな~?」
 と、誤魔化すように探し出すのが、おかしい。

 「いつも身につけている約束」だから、当然トラヴィスはぎゃーぎゃー言う。
 だから、発信機を見つけたときの「あった」は幾分誤魔化しとかわいこぶりっこが入っている。自分の方が悪いのを隠すために。

 この「あった」が、めちゃくちゃ好き。

 かわいすぎる。もだえる(笑)。

 そのあとの「たまたまだよ」も含め、媚びと甘えの入った感じがたまらん。
 だってさー、BJってさー、無意識にやってるんだよ?
 自分の都合が悪くなると、甘えた様子になるんだよ?

 そして、発信機が不良品だとわかった途端の、手のひら返し。
 自分が弱い立場のときは甘え口調、優位に立つなり、ぴしっとドライに突き放す。

 ひどい。
 BJ先生、ひどすぎる~~!!

 しかし、こうやって見ると、たしかにBJはここでもうトラヴィスに心を許してるんだな。
 トラヴィスに甘えてるもんよ……。
 もしも、同じ会話を某国大統領側近たち@りーしゃや雛ちゃんたちとするなら、あんなかわいい返しはしないはずだ。皮肉たっぷりに斬りつけているだろう。

 この「修理が済んだら言ってくれ」とトラヴィスを突き放すツンデレぶりが、ちゃんと伏線になっている。
 発信機の修理のために、トラヴィスはそのあと必然的にBJ邸からいなくなるんだよね。

 しかしBJはトラヴィスをなんだと思っているんだろう。
 ボディガードだと思っているなら、カイトのことを報告するだろうに。
 ……カイトを物の数にも入れてない、ってことかな。


 山野@まなはると五条さん@きゃびいの会話をはさんで、再びBJ邸。
 時代錯誤ないでたちのバイロン侯爵@ともみんが現れる。
 ……BJ邸の玄関に、鍵はかかっていないらしい。その上、呼び鈴も故障しいる、と。……BJ先生……。

 ここで何故かBJ先生は生着替えプレイ付き。

 ベスト姿で現れて、舞台上でジャケットを着る。
 正塚先生すごいわー。いちいちファンのツボをくすぐる。
 この「上着を無造作に着る」という動作がまた、いいのだわ。かっこいいのだわ。

 青年館トークショーにて、ともみんが語っていた。バイロン侯爵がBJとはじめて会う、「ああこの人が」と姿を認めるその瞬間、そういう役柄でストーリーなのだということだけでなく、ほっとするのだと。まっつと目が合う、そのときに。
 安心できるのだと。
 「この人なら大丈夫」と思う、役柄と中の人の感情がシンクロするらしい。

 大変良い話なのだが、ふたりの体格差と温度差を考えるとちょっと楽しい(笑)。
 でかくていろいろとアツい大男が、小柄で冷静な薄いカラダの男を見つけ、ほっと安心する図。

 バイロンさんの、「それは重々承知していますが」の「重々」の言い方がいつも「ガイジンさん喋り」っぽくて耳に残る。ルロンさん@『JIN-仁-』的というか。……ふつーに日本語話してるのにね。

 なんかひとりでテンパっているバイロンさんは、BJに銃を突きつける。
 BJの「またか」がイイ。
 銃を突きつけられても、BJは怯えるのではなく、あきれるんだよね。で、「どいつもこいつも」とぶつぶつ。愚痴っぽい人ですから。

 で、1幕最大のサービスショットに続く(笑)。
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 BJ@まっつの腐った萌えポイント。

 ピノコにテレパシー攻撃され、苦しむときの、呻き声。と、吐息。

 BJ自宅のミイラ人間は、ピノコ@ももちゃん。
 まだ「足りないモノがいっぱいある」ために、人間として生活することは出来ない。
 代わりに超能力があり、気に入らんことがあると相手のアタマの中で暴れるらしい。テレパシーというか、サイコキネシス?

 BJ先生は「いててて」と、わりとコミカルに苦しむんだけど、最終的にちょっと、わずかだけど、呻き声を上げる。
 「あ……っ」とか「う……」とか、そのような音の混じった吐息とか。

 それが、萌えです。たまりません(笑)。


 演出家諸氏に問いたい。
 何故、美声の持ち主、未涼亜希氏を、喘がせないのか。

 まっつさんは今まで「死ぬ役」をやってません。
 モブでわーっと斬られちゃうとかではなく、主人公の腕の中でなにかしら言い残しつつ、がくり、とやるやつ。
 エンタメに置いて「死」は見せ場なので、路線スター様にしか、そういうオイシイ見せ場は回ってこない。ゆえにまつださんは、死ぬ役が回ってこない。

 ところが前回の大劇場公演『JIN-仁-』では、そのチャンスがあったのですよ。
 まっつ演じる恭太郎さんは、原作では死ぬし、そこまで描いてもらえないにしろ、主人公がタイムスリップして最初に出会う相手で、そのときに生死を彷徨うのだから、「主人公の腕の中で云々」があったのですよ。

 なのに。
 なーぜーかー、演出家は、まっつを、喘がせなかった。

 恭太郎さんは、ケガの痛みにはぁはぁやってましたが、音声なしでした。

 なんでえええ?
 そこは盛大に、マイク入れるとこだろー?!!

 未涼亜希の喘ぎ声を聞かせるべきだろー?!!

 ……無意味に色っぽくなりすぎて、ドラマに不要と却下されたのかもしれませんが。

 とにかく、わたしなら「ファンサービス」として、まっつ氏の「はぁはぁ」は入れますね。演出に盛り込みますね! 1作品1回は入れる所存ですね! キリッ。

 てことで正塚先生。

 薄いっ、まっつはぁはぁが、薄いっ。もっとどーんと喘がせてくれて良かったのに!!

 ……まあ、正塚せんせは「まっつ萌え」を理解してくれているようなので(笑)、この程度でも喘がせてくれたのかもしれません……。


 ヘンタイ発言はともかく。

 ミイラ人間に語りかけるBJ先生が、やさしすぎて、やばいです。

 ここでピノコの影@ゆきのちゃんが登場するわけなんだが……。

 でかい。

 最初に観たとき驚愕したし、何度観てもやっぱり慣れなかった……。

 とにかく、でかいのだ。
 縦にも、横にも。

 健康的な太り方ではあるんだが……かわいいんだとは思うが……もう少し華奢な子を使えなかったのかと。

 不思議に肉感的というか、幼児ファッションがアキバ系コスプレめいていて、いろいろ困った。サリーちゃん足とか、すげえよ。
 影の男の子たちも決して体格は良くないので、縮尺が間違っているような感じ。ピノコだけ100%で、男たちは70%縮小かかってるトリック映像みたいな。
 もっとも体格のいい影@真地くんと絡むときだけが、マシに見えたかなあ。

 なにより、BJ@まっつと絡むときが……!(笑)

 まっつをゆきのちゃんが後ろから抱きしめる振付があるんだが、ここがひどい。
 ピノコなのに、BJ先生を後ろから抱きしめて、腕が、余っている。

 ピノコの両手はBJの腹の前に回っている。両手の指が、当たりそうなくらい、ちゃんとBJの胴を一回りしている。
 なのに、ピノコのカラダは、BJのカラダのずっと後ろにある。
 ピノコとBJの間には、空間がある。

 女子が男性に後ろから抱きついて、こんだけ腕が余るって……!!

 や、まっつが悪いよ? まっつが、細すぎるの。華奢すぎるの。内臓どこにあるんですかってくらい、細いのが悪いの。
 でもさ、まっつよりどう見ても縦にも横にもでかいぷくぷくした女の子を、後ろから抱きつかせなくてもいいじゃないか(笑)。

 ここも絶対縮尺まちがってる。
 BJ先生より巨大なピノコってなんだそりゃ。


 ゆきのちゃんは美少女だと思うし、医師連盟のところとかかわいいし、体型だってこれからしぼられていくんだろうと思う。
 ただ、ピノコ役は、チガウだろと。
 ゆきのちゃんの「リアル女子」っぽいところが、ピノコの影という幻想場面とひどくミスマッチ。
 あんなにニクニクしてなくていいと思うの、ピノコって……。
 ピノコの影であって、本物ではないとはいえ……。

 ピノコの影とピノコは同時に出ないんだから、どっちもももちゃんで良かったのに。なんであかんかったんやろー?

 いやまあそれでも、そんなところもまるっと含めて、楽しんでたけどね。

 ピノコでけえ! BJちっちぇえ!! と(笑)。


 んで、「まっつ萌え」を理解している正塚先生。
 まっつの寝顔を真正面からどうぞ、を、おいしくいただきましたっ!!

 プログラムにある、テーブルに足を投げ出して眠るBJ先生。
 それを、劇中でもやってくれました。
 しかも、真正面から。

 くはあ~~。

 まつださんにオペラロックオンで、他が見えません。
 おかげで、「がたんっ」てな引き出しの音に一緒になってぴっくりしますよ!(笑)

 カイト@咲ちゃん登場。

 最初から強盗するつもりで、銃持参。
 空き巣ではなく、強盗だから、タンスの漁り方がなってないのね。タンスは下から引き出して、開けたらそのままにしておくものよ。上から引き出すから、いちいち閉めなきゃいけないの。んで、閉める音で住人に気づかれちゃうのよ。

 正直、足が不自由だってこと、彼の台詞がないとわかりませんでした。
 けっこー自在に動いている気がする。

 放送禁止用語のせいで、ここの台詞が不自然極まりないんだろうなあ。
 「オレの身体が不自由だから」……突然の説明台詞。日常会話、しかも切羽詰まったときにコレはない。ふつーなら「オレが○っ○だから」だよなあ。

 『はみだしっ子』の文庫版で、アンジーへの台詞が全部「松葉杖」に変更されていたことを思い出す。「なによ、松葉杖のくせに!」「松葉杖のどこが悪い!」……言葉だけ狩ったところで、無意味だと思うんだけどなあ。

 んで、咲ちゃん、うまくなったなあ。
 いきなりこのテンションマックスの会話。正塚節でよく演じている。
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 今回、セットが美しいと思う。
 鳥かごのような儚さと、檻のような哀しさを感じさせる細い格子のパネルで、さまざなものを表現している。

 正塚せんせはほんと、中劇場向きの人だなあ。
 同じことを大劇場でやっても、地味なだけだろう。
 千人規模の劇場だから、このシンプルさが美しい。


 舞台変わって、BJの自宅。
 ミイラのような包帯ぐるぐる巻き人間が奥に横たわっていて、看護師の五条さん@きゃびいが立ち働いている。
 戻ってきたBJ@まっつが、言葉少なに彼女へ敬意を払っているのが、心地いい。

 それまでが、大統領側近たちとか、トラヴィス@ホタテたちとか相手に、すごくイヤな態度を取ってるじゃん。
 なにも知らない人が見たら、どんだけえらそーで自分勝手な男かと思うじゃん。

 そうじゃないんだ、相手によっては敵意や悪意を平気でむき出しにするだけで(大人げない……笑)、すべての人に対してそんな態度を取る人じゃない。

 留守中に患者の容態を看てくれていた五条さんに対して、大袈裟にありがとう連発しないけど、事務的に連絡事項確認だけしているみたいだけど、すごくやさしい、信頼のこもった目を向けている。
 こんな瞳で見つめられるなら、礼を言われるのなら、わたしが五条さんならよろこんで仕事しますよ。

 でもってこの五条さんが、部屋を出たときドアのところに立っているトラヴィスに気づいて、悲鳴を上げる。
 そりゃそーだよな、誰もいないと思っていたのに、金髪の外人さんが立ってるんだもん。……でもすぐに、BJ先生が外人さんを連れて帰国したんだろうと思い直して、それ以上騒がず去って行く。

 この、「騒がず去って行く」のがいいなあ。

 見知らぬ人が家の中にいる!って悲鳴上げて「泥棒?! 強盗?!」って大騒ぎして、ホウキで殴りかかったりヒステリックな反応を取る女性、って、フィクションの定番だもん。
 その方が面白いと思ってるんだろうけど、わたしアレ、好きじゃない。面白くない。
 現実問題、「見知らぬ人」=「犯罪者! 攻撃しなければ!」なんて思考はしないっしょ? 「なにか事情があってここにいるのかしら?」とまずは現状認識へ気持ちが動くよね? 平和で善良な日本人なら。「躊躇したら殺される!! 即攻撃しなければ!」なんて日常ではないんだし。

 悲鳴を上げる五条さんに対し、トラヴィスの返しが「Hi」なのがイイですな。
 うわ、アメリカ人だー!と思う(笑)。

 や、某合衆国であって、アメリカとは言われてませんけどね、作中。

 で、このやりとりを奥の部屋で聞いているBJの反応がいいの。

 BJ先生ってば、トラヴィスの存在を忘れてるのね。
 五条さんに会い、患者の容態を聞いて、あとは患者のことだけしか考えなくなっている。
 そこへ、ドアの外から悲鳴と「Hi」が聞こえ……「ああ、そうだ。あいつがいるんだった」と思い出す。

 引き続き患者を診たいのに、仕方なく応接間に出てくる。だから不機嫌というか、トラヴィスに対してひどく突き放した態度になっている。

 この感情の流れが自然で。
 五条さんにはイイ顔して、トラヴィスには冷淡。それはただの裏表ではなくて、「大切な患者」を中心においての自然な感情の動きである、という。

 正塚作品は「台詞にない」部分のリアルさがいいよな。


 で、GPS発信器のくだりになるんだけど。

 70年代だと、GPSが軍事機密らしい。BJ先生が「GPS」を知っているとは思えないので、「知らない単語はスルー」した模様。ここで「ジーピーエス? なんだそれ」「Global Positioning Systemの略で……」とかやられたらうざい。
 実際そんなもんが当時あったかどうかはともかく、「らしい雰囲気」が伝わればヨシ。

 なので、トラヴィスがどや顔で出した発信器の「ちゃちさ」がイイ(笑)。

 テレビリモコンみたいな細長い箱に、わざとらしい赤い大きなボタン。
 『ヤッターマン』でボヤッキーが「ぽちっとな」しそうな、脱力デザイン。

 そんなしょーもない機械を手に、大の男がふたり、真面目に会話。

 わたし、BJ先生の「これは秘密兵器ってわけか」が好き。発信器片手にトラヴィスと話しているときの顔が、大好き過ぎる(笑)。
 揶揄しながらも、ちょっとわくわくしている感じっていうか。
 男の子ってこーゆー秘密兵器とかスパイグッズとか、好きだよね(笑)。

 そして、「わかったわかった(棒読み)」が超好き。悶える(笑)。

 「秘密兵器(笑)」を無表情(を、装いつつ)に、ポケットへしまう仕草が好きで、いつもガン見。

 男役のズボンは、通常の男性のそれとカタチが違っている。股上がめちゃくちゃ深いのよね。だから、ふつーの男性がズボンのポケットに入れるようには、入れられない。ポケットの位置や、タックの位置がチガウから。
 それでもさも「ふつーの男性」としてポケットに入れる、その一連の仕草が好き。
 不自然に股上の深い「男役ズボン」がむき出しになるのも含めて(笑)。

 トラヴィスを追い払ったあと、完全にひとりになったと確認するや、ポケットから発信器を取り出し、しげしげと眺め……あ、やっぱ興味津々だったんだ……と思っていたら、先生、おもむろにボタンを押すし。
 押しちゃうんだ!
 音が鳴り出して、「え、どうしよう」とうろたえ出して。いや、無表情なんだけど。

「どうしましたーーっ!!」とトラヴィスは血相変えて走り込んで来るし、ぴーぴー鳴り続けているし。なんか大騒ぎな感じで。

 それを引き起こしちゃったBJの、「ちょっと、試してみた」が、かわいすぎる。

 BJは終始こんな感じだよなー。ラストのトラヴィスとの別れにしたって、不思議なリズムと行間の余韻がある。

 ここのくだりは何回観てもかわいくて面白くて、飽きることがなかった。
 正塚芝居だから、アドリブ一切禁止だもんねー。決められた台詞と演出だけで、毎回ずーっと大爆笑させてくれた。

 しかしBJ先生、ここでもうトラヴィスのこと好きだった……心を許していた、てのは(お茶会談)、なんですかい、この受信機持って「ぐおおおっ!!」と走り込んできた、その姿を見てですかい。
 たしかに真面目で一生懸命で、かわいい姿だけどさ。これで……って、警戒心、なさ過ぎ(笑)。いや、人を見る目がある、ってことか。

 あ、正塚脚本の「無意味なこだわり」と思う部分が、ここにひとつある。
 BJに旅館の名刺を渡されたトラヴィスが、一瞬「ありがとうござ……!」と言いかけて、やめる。
 うれしそうに礼を言いかけて、途中でやめて、「それでは」と去って行く、そのこだわりがわかんない。
 そりゃ、任務中のトラヴィスは感情的にならないよう自制しているわけで、素の純真青年ぶりを出してはならない、だからつい素でよろこんじゃったけど、途中で「いかん、仕事中だ」と冷静になろうとした……と、説明は付く。
 でも、そこまで細かくせんでも、と思う。
 正塚脚本の自然さ、細かさは好きだけどさー。リアルにこだわるあまり、無駄にややこしくしている部分もあると思うの。わざわざ流れを止めてまでやることか、という。
 観客としては、わざわざ前言撤回されると、そこに引っかかっちゃうのね。ナニか重要なメッセージが隠されているのではないか、って。

 『La Esperanza』で、喫茶店に入ってオーダーする、それだけのことなのに、わざわざ一旦オーダー撤回するくだりを思い出した。
 「オレン……アップルジュース」って。
 わざわざ言い直す意味がどこにあるのかと。そりゃ日常ではそういうことは往々にしてあるけど、舞台でわざわざやる意味があるのかと。
 ここで「オレンジジュース」を頼もうとして、思いとどまり、「アップルジュース」にした、それにナニか意味はあるのか。これは伏線なのか?
 ……ただの「日常にあるリアルさ」を描きたいだけなら、こーゆーのは不要だと思う。
 他にもっとこだわるとこあるだろ、と。
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 プロローグのささやかなツボ。
 手術室に戻ったBJ@まっつは、ベンリー・キッチンジャー@りーしゃ、ペロリー・クリキントン@雛ちゃんたちがあーだこーだやっている後ろで、ひっそりセットごとはけていく。
 客席に背中を向けたまま、あのゴロゴロうるさいセットごと、下手に収納されるのよ。
 その背中が、ツボ。

 うおおお、白衣ーー! 白衣ーー!
 ちっちゃいーー!!(禁句!)


 で、オープニング。
 ミュージカル風というか、歌って踊って設定説明!

 楽しい。
 まっつ出てこないなあ、BJ踊らないんだなあ、とは思うけど。
 それでも、楽しい。

 最初一瞬だけ、大樹くんがセンターなのも、楽しい(笑)。……青年館では、彼のセンター時間が短縮されちゃった気がするんだが……DCではも少しセンターにいたよねえ?
 あとは学年順で、何故かゆめみさんがずーっといい位置にいる、不思議なダンスシーンなんだけどなー。主要キャラのひとりなのに、トラヴィス@ホタテは隅っこです。
 学年順じゃなく、主要度で立ち位置決めようよ……タカラヅカって(笑)。

 ここのあゆみちゃんの衣装がすごい。

 初日に見たとき「……ふんどし?」と思ったくらいだ。

 ロングのタイトスカートを穿いているんだけど、このスカートの、スリットがひどい。
 足の付け根まであるの。しかも、両側。
 スカートを穿いている、というより、カラダの前面とお尻側に、長い布を2枚垂らしているだけって感じ。
 だから、ふんどしみたいに思えた。

 めちゃくちゃセクシーな衣装だと思うし、あゆみさんの脚線美をこれでもかと強調する衣装だと思うけど……さすがにちょっと、やり過ぎな気もする(笑)。

 あと、せしこの白黒ワンピースが好き。
 カラダの凹凸が女性らしくきれいに見えるなあと。

 きゃびいの細さにびびる。脚、痩せすぎだろ……みやるりの脚を思い出した@全ツの女装。

 言葉遊びのような歌詞、正塚好きだよねー。
 BJを都合良く讃え、都合良く糺弾する人々のエゴが見える。

 初見では「長っ」と思ったプロローグ、観れば観るほど癖になる(笑)。

 無責任な群衆たちが行き交い、マントを羽織ったBJの影たちも、わざわざマントを脱いでスーツ姿になって群衆に交ざり、BJ@まっつ登場。

 いわゆる「BJ」な姿。
 黒スーツにマント風の黒コート、黒いリボンタイ。

 名曲「かわらぬ思い」を歌う。
 「はるか群衆をひとりあとにして」だから、群衆必須。

 まっつが、「かわらぬ思い」を歌う。それだけで、「勝った!」も同然。

 なにがどうじゃなく、もう「そういうことだろう」と思う(笑)。
 だからこそまっつで『BJ』という企画がスタートしたんだろうし。


 主題歌を歌ったあとは、そのまま芝居に入る。
 なんでコートまで装着してたかというと、旅支度だったらしい。

 場所はホテルらしい。
 りーしゃと雛ちゃんがぎゃーすか言うなか、我関知せずのBJ。
 無造作に腕時計を付けるBJが、イイです。そーゆー何気ない「男の日常仕草」が美しいです。
 リアルで、嘘がなくて、どきどきする。

 ところでプロローグからずっと、コロスたちがぎゃーぎゃー声を出すのでめんどくさい。
 大統領側近のりーしゃたちの心の声をコロスたちが高音で、BJの心の声を影たちが低音で、いちいち口に出す。
 初日は正直、うざかった。
 これ、いつまで続くの? まさか全編この調子じゃないでしょうね?

 幸い、某国にいたとき限定の演出だったけど。

 しかし、回を追うごとにこのコロスのみなさんがうまくなっていって、英語の発音はよくなっていくわ、声がぴたりと揃って聞き取りやすくなるわ、進化っぷりがすごかった(笑)。

 また、青年館版では影の声を出すタイミングが見直され、わかりやすくなっていた。
 DC版では影の声とBJ&トラヴィスの会話がかぶって、双方聞き取りづらいだけだった。

 DCだと、
「大統領警護官のトラヴィスです。大臣から、あなたの身辺警護を仰せつかりました」
 てなトラヴィスの台詞と同時に「♪大統領の 身辺警護」と影が歌っていた。
 トラヴィスの台詞も聞き取りにくいし、影の歌も聞こえにくい。
 めっちゃうざかった。「影、黙れ」と思った(笑)。

 それが青年館だと、

「大統領警護官のトラヴィスです」
「♪大統領の」
「大臣から、あなたの身辺警護を仰せつかりました」
「♪身辺警護」
 みたいな感じで、台詞の合間に歌が入るようになっていた。

 おかげで、

「先生は必ず私がお守りします」
「よく言うよ。大統領を守れなかったくせに」

 というトラヴィスとBJのやりとりで、青年館では笑いが起こっていた。

 DCではこの会話にも影の歌がかぶっていたので、BJたちがなにを話しているか、よく聞こえなかったの。
 何回もリピートしてたら聞き分けられるけど、1回じゃ無理。

 なんでトラヴィスがBJにくっついてくるのか、説明する大切な会話なのに、ろくに聞こえないとか、バカなんぢゃないのと思ったでゴンス。
 コロスに心の声を歌わせる、というアイディアに酔って、芝居の基本をおろそかにした結果だなあと。

 青年館では効果的に使われていた。よかった。


 ところでこのBJの影。
 固定ではなく、手の空いている男の子たちが交代で演じているんだけど、「男役全員」がやっているわけじゃない。
 学年順でもなく、やる子とやらない子の差は……輪郭?
 ぷくぷくちゃんにはやらせない、ってことかなあ。
 だって「BJ」の影だもんなあ。

 影役を固定しないことで、影くんたちもいろんな役で、それぞれ「声」を出すことが出来る。
 喋らずに踊るだけでは、寂しいし、せっかくの少人数公演で成長の機会を逃すことになるもんね。
 みんな自分の役が別にあるから、下級生ファンも二度おいしいんだと思う。

 てことで、大きな役の付いているともみんと咲ちゃんはここで影役卒業、あとは本役のみ。

 影のレギュラーメンバーっぽい、まなはる・レオくん・おーじ、真地くん。
 下手で1列に並んで歌い踊るところで、いつも必ずおーじくんの動きがズレているのが気になった。
 わざと、なんだよね? 4人の動きをぴったり揃えない、という振付なんだよね? だからおーじくんだけわざとチガウ動きなんだよね?
 未だに『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。

 書きたいことがあり過ぎて、ちっともまとまらないので、最初から。

 はじまり方は『JIN-仁-』とかぶる。
 舞台中央に手術台、一般人が一生口にすることのないオペ開始の台詞。……キムくんの台詞の難しさは半端なかったなと(録音だけど)。

 ↑ と、最初書いていたけど、情報いただきました。キムくんのあのめちゃくちゃ難しい台詞、録音じゃなくて生台詞なんだって!! 本人舞台にいないけど、いるのはダミーだけど、声は生なんだって! すげえ!! なんであんなものすごい台詞、一度も噛まずに言えるんだ?! ……さすがキムくんだわ……。

 このはじまり方に、「ああ、雪組は医療ものがつづくな」としみじみする。
 ……まっつは医者役者、これで何回目の医者役?

 まずBJの手術開始の台詞からはじまり、開演アナウンスはそのあと。

 手術シーンはスクリーン越しのシルエットで表現。
 その前で、「BJの影」が踊る。
 えーと。今回「影」多すぎ(笑)。しかも、随時入れ替わる。
 オープニングのBJの影は豪華キャスティング。ともみんや咲ちゃんまで入ってる。
 ここのともみんがすげーかっこいい。黒髪! 黒髪!

 一度だけ、この「手術室」のスクリーンが、降りてこないアクシデントがあった。たしか、よりによってヤンさんがモニターで見ていた日(笑)。
 わたしはぼんやりさんなので、最初スクリーンが降りてないことに気づかなかった。BJの影さん見てたら、舞台セットの動きなんか気にならないもの。
 ふつーは、影たちの登場と共にスクリーンが降りてくるのに、それがナイ。
 あれ、なんかライトがまぶしい……舞台上にあるライトが、客席を直撃して目が痛い……。
 と思って、はじめて「あるべきものがナイ」ことに気づいた。
 その目を直撃するライトは、スクリーンにシルエットを映し出すための投影機の役割のものだった。

 ちょ……っ、手術室むき出しっ。
 BJ@まっつ、むき出しっ。

 えーと。
 やっぱ、変な姿です。いくら舞台とはいえ、手術している人たちと、なんか踊ってる人たちが同じ場所にいるのは。
 スクリーンはなくてはならないねー。

 シルエットとはいえ、生で演じているわけだから、スクリーンがあってもなくてもまっつは同じように手術の演技をしている。
 その姿を、ガン見しました。ライトまぶしかったけどっ。

 背中っ、背中っ、白衣まっつの背中っ。
 手の動きっ、白衣まっつの手の動きっ。
 手袋を取って、こちらへ向き直って。

 えーと、演じている人たちはいつ、「やべーよ、スクリーンねえよ!!」って気づいたんだろう。
 あるべきはずのセットがないと、いろいろ困るよね。どうフォローすればいいのか、びびるよね。

 しかしBJはんなこたぁおくびにも出さず、「BJ」のまま正面に向き直る。

 ふつーなら、スクリーンを両手でかき分けて出てくるのに、ナニもないから、そのまま前へ。

 BJが料金交渉を大臣たちとしている間、看護師役のふたりはちょースピードでそれぞれ袖にはけていくんだが、「手術は中断しているだけ、また続けますよ」という内容なので、それって変だよなあ。
 なのにスクリーンがないから、空っぽの手術室が丸見えのまま。
 ……大変だニャ。


 まあ、それはともかく。
 ベンリー・キッチンジャー@りーしゃ、ペロリー・クリキントン@雛ちゃん、マトマラン大臣@大樹くんという、役名が発表になったとき「大丈夫か」と思った、あの人たち登場の場面。
 名前を遊んでいるだけで、至極まともでした。
 ……まあねえ、舞台上で呼び合うことがなければ、名前なんてただの記号だから、なんだっていいわけなんだけど。

 りーしゃはもう中堅なんだねえ……。
 若手ばっかのこの舞台で、いろいろがんばってました。
 雛ちゃんは無理なくいい女、大人の女。

 金にがめついBJに、がんがん噛みつくヒステリックなふたりと違い、大臣は冷静です。
 大樹くん、いいなあ。2幕のいかにもイマドキの若者って感じのチャラい空港職員との差別化がいい。

 友人に「あの大臣と空港職員やってた子って……」と聞かれたときに、意気揚々と「『フットルース』でハンバーガー食べてた子! つか、いつもなにかしら食べてばっかいた子!」と評して、友人を困惑させてしまいました。
 そんなんじゃ、伝わらないよねええ。
 『フットルース』のみみちゃんの妄想場面で、下手端で踊ってた子、と言うべきだったか。(伝わらない?)

 まあともかく、ここでのポイントは、金の話をするBJ先生の、下卑た表情です。

 まつださん……。

 まっつさんは、貴族キャラ、知的キャラです。プガチョフを演じたときに「品がありすぎる」ことがマイナスになったくらい、「品」を標準装備している人です。

 でもまっつってさー、ときどきすっごく野卑な表情するよねー。
 全ツ『Red Hot Sea II』の縄の男とかさー。

 下劣!って感じの、いやな笑い。
 露悪的というか。
 この男、マジやばい。そう思わせる、いやらしさ。

 わたしは、大好物です。

 まっつってさー、マジな悪役似合うと思うのー。
 プガチョフみたいな「英雄」でもなく、海馬教授みたいな「マッド・サイエンティスト」でもなく、張良みたいな「信念の人」でもなく。
 ほんとーにどうしようもない、唾棄すべき悪人。「ほんとはいい人なんです」も「彼がこうなったのは、仕方のないことなんだ」もなく、ほんとに容赦なく、ただの悪人。
 観客がなんの遠慮もなく憎み、ムカつける人。主人公がやっつけて「すーっとした!」と思える人。
 ……あー、でもやっぱ、まっつだと「やっつけられて、かわいそう」になっちゃうのかなあ? 体格が華奢だしなあ。

 でも、ほんとに下卑た表情得意だよなあ。惚れぼれ。

 BJが手術室に戻ったあと、大統領の側近たち@りーしゃ・雛ちゃんがBJを罵るわけだが。
 ここのポイントは、トラヴィス@ホタテはBJを罵らないことですわ。
 大臣にくっついて登場した、大統領警護官トラヴィス。彼が口を出す立場でないことはわかるが、これだけ感情的に誰もがBJを罵っている場面だ、それに乗ることは可能。
 口を出さなくても、表情で感情を表すことはできる。
 しかしトラヴィスはBJを責めない。悪意や嫌悪などの先入観はないようだ。

 トラヴィスはただ、困惑している。

 これって、重要なことだと思う。
 このあと、この同じメンバーで「オープニング・ショー」がはじまる。
 BJがどんだけ悪どい医者であるかを、されど天才であるかを、ミュージカル的に表現。
 もちろんトラヴィスも一緒になって歌い踊る。だから、その前段階で、彼もBJを責めていても、おかしくはないんだ。

 でも、それをしない。

 みんながBJを罵っている場面で、中立であること。
 これが、その後のトラヴィスというキャラクタに大きく影響する。
 ここでりーしゃたちと同じようにしていたら、そのあとのBJの警護の、意味が違ってくるもの。
 役替わり祭りは、覚悟していました。

 星組『ロミオとジュリエット』配役。

 過去の例を見ても、同じ組で時を空けずに再演ということにしても。
 主役のロミオとジュリエットが役替わりする、という、トップスター制度への冒涜、世界一有名なラヴストーリーの否定、をしない限り、もうなんでもいいよ、という気分。

 役替わりは仕方ない。
 だが、どうせやるなら、効果的な役替わりを、と思う。

 わたしが感情的に納得できないのは、やはり「トップスター」の役替わり。
 タカラヅカのトップスターは特別なポジション。ここだけは、絶対に役替わりしてはならない。
 同時に、トップ娘役の役替わり。
 トップスターと愛し合うのは、トップスターの相手役は、トップ娘役でなくてはならない。

 宝塚歌劇団を愛し、これからの繁栄を願うからこそ、ここだけは侵してはならないと思う。

 ……劇団も、「トップスターが役替わりするのはオカシイ」と思ってるんだよね?
 それを「正しい」と思っているなら、今頃全組「トップスター」と「準トップ」制度になっているはず。
 短絡的な集客につながった月組の「準トップ制度」を1年で解消し、他組では一切やらなかったことから、それがなんらかの事情による「暫定処置」だったと想像する。

 感情もさることながら、「意味がない」役替わり、これもまた納得できない。
 意味、とは、興行的な成功を差す。

 役替わりをやる目的はなんだろう。
 わたしは、集客だと思っていた。
 固定キャストならば、1回観劇して終わる人が、役替わりの数だけ観劇回数を増やす可能性がある。それを期待してやるのだと。

 だから役替わりは、観客の観劇意欲を刺激するモノでなくてはならない。

 役替わりはどうしてもキャストに負担を掛けるし、シングルキャストでじっくり演じ続け、作り上げた舞台よりも薄くなるため、作品レベルも落ちる。
 そういったデメリットを超えて、あえてやるのだから、相当のメリットが見込めない限り、やる意味がない。

 最近では、月組の『ME AND MY GIRL』の役替わり・配役は、謎だ。
 みやるりとかちゃのジャッキー役替わり、マギーとコマのパーチェスター役替わりに、集客効果がどれくらいあるんだろう?
 舞台で女役経験のある男役が今さらジャッキーをやっても意外性はないし、タカラヅカの特性として、「路線役」以外の脇役が役替わりしたところで、話題性に欠けるんだ。
 『ノバ・ボサ・ノバ』のマダムガートを実力派女役が3パターン役替わりしていても話題にならないし、『ベルばら』の衛兵隊士役を若手男役が役替わりしていても、認識されない。

 華々しい路線スターの役を役替わりするからこそ、注目される。すなわち、集客につながる。

 『ME AND MY GIRL』の2番手役はジョン卿だろう。
 わたしは中日版の汝鳥伶様のジョン卿から入った人間なので、路線スター以外がやってはならない・やったことがない役だとは言わない。
 だが、「過去に例があった」ことと、現在どうであるかは、関係ない。

 2番手役を、路線スターが演じない。
 現月組で誰が路線スターなのか、序列がどうなっているのか不明だが、それにしても、「路線扱い」しているスターたちが複数いるのに、彼らに誰ひとり「2番手役」をさせない、というのは、どう考えてもいびつだ。

 路線スターの境界線は、新人公演主演の有無。次に、ワークショップ以上の主演有無。
 『ME AND MY GIRL』出演者には、マギー、コマ、みやるり、かちゃ、宇月くん、ゆりやくん、ゆうきくんと、新公主演経験者がひしめいている。
 中でもかちゃは大劇場ヒロイン(トップ娘役相当)と単独バウ主演を果たしているし、コマくんはW主演だがバウ・青年館主演を経験している。また、みやるりは全ツ2番手を務めている。
 マギーは主演こそないものの、重要な役を多くこなし、華と実力を持った別格スターだ。

 これだけ「2番手役」をしても不思議ではない人材が集まっているのに、彼ら全員を否定した。

 純粋に集客を考えるなら、路線スターに大きな役の、役替わりをさせる。
 意外性に富み、観客の興味を引き立てるものであるべき。

 ……なのに、こういう配役になったということは、だ。

 マギー、コマ、みやるり、かちゃの誰が2番手役をやるよりも、月組組長リュウ様が2番手を務めた方が、観客が喜び、集客できる、と判断したってことか。

 たしかにリュウ様はかっこいいしエロいし、『ベルばら』のオープニングで「かっこいい貴族様がいる!」と注目したらそれはリュウ様だった、えーっと他の若者たちがんばれよ……てなもんだったさ。
 同じ衣装で踊る『ベルばら』オープニングで、群を抜いて美しくカッコイイのは、リュウ様とマギーだったさ……。

 リュウ様に美貌と実力と存在感と色気があることは認める。てゆーか大好きだリュウ様!!
 だけど。
 だけど、彼は組長だ。

 新しい月組で、組長は2番手を兼任するんでしょうか。
 将来のトップスターたまきちが育つまで?
 なにかあった場合は、リュウ様が暫定的にトップスターになる未来もあり?

 いやあ、すごいな月組。新しいわ。

 越リュウのトップ構想がないのなら、将来を考えた上で配役するべきだと思う。
 トップ娘役相当の役を経験済みのかちゃに、今さら女役をさせても本人のスキル的にも、また観客の興味という点でも意味はない。
 みやるりもまた、大作で準ヒロイン役を経験済みだ。今さら女役をさせても以下略。
 マギーは以前パーチェスターを演じているし、コマはここ数年同じ系統の役ばかりだ。スキル的にも、また観客の興味以下略。

 集客か、あるいは将来の月組の展望か、どちらかがわかる配役なら、理解できた。
 将来月組トップになるのがかちゃだというなら、かちゃにジョン卿を。シングルではなく、ダブル以上の役替わりでいいから。
 このメンバーの誰も将来の月組トップはいないのだ、カンチガイされてはならないので誰も2番手役はさせないのだ、というならば、観客の興味を引く……集客のみに焦点を当てた配役を。
 ジョン卿とジャッキーを、マギー・コマで役替わり。なんならみやるりも加えて、トリプルキャスト。
 マリアとパーチェスターを、かちゃ・みやるりで役替わり。なんならコマも加えて、トリプルキャスト。
 これくらいやっちゃえば、とりあえず「祭り!」になるのに。

 想像もつかない、どうなるの? か、あるいは、番手の壁があって観ることが出来ないと思っていた、観てみたい配役。
 どちらかを満たせば、祭りになる。


 そして。

 今回の星組『ロミジュリ』配役。

 うまいな、と思った。

 すでに『ノバ・ボサ・ノバ』でやってしまった、ベニーとマカゼの役替わりだけでは、観客の興味を引かない。だがふたりはガチな路線スターであり、路線の役しかさせられない。
 星組の展望的に、目新しいことが出来ない以上、できることは、もうひとつの方法。

 つまり、想像もつかない、どうなるの? か、あるいは、番手の壁があって観ることが出来ないと思っていた、観てみたい配役。

 劇団が一方的に「将来のトップスター」と決めて特別扱いするスターは、人気が出にくい。彼らに主要役を独占させると、組の人気が下降する。だが、どんなに人気や実力がなくても、劇団は「決めた」スター以外に役を付けない。
 そうやって劇団は、現在の状況になった。

 そこで、役替わりだ。
 劇団が認定した路線スター以外の、「人気・実力がある」中堅スターを主要キャストに入れる。
 番手の壁を越えて、別格スターを大切にする。

 そうすれば、大きな役を得られた別格ファンはよろこんで観劇するし、劇団が大切なスター様も大きな役をやったという実績は残る。


 役替わりが当たり前になる、今の状態を望ましいとは思っていない。
 でも、そうしなければならない現状もわかる。

 それならせめて、「意味のある」役替わりをして欲しい。
 将来の展望(未来の組のカタチに、どうしても必要!!)とか、集客(ファンがよろこぶ!)とか。
 どっちのためにもならない役替わりなら、やるだけ無駄だ。

 ……てことで、雪組『ロミジュリ』役替わりが、史上最低だと、今も思ってます。
 未来の役にも立たなかったし、集客にもマイナスだった。なんのための役替わりか、未だもってわからない。
 
 『ブラック・ジャック』から、頭も切り替わっていないうちに。
 なんか、公演ラインアップが発表になっていました。
2013/02/28

2013年 公演ラインアップ【全国ツアー】<8~9月・雪組『若き日の唄は忘れじ』『ナルシス・ノアールII』>


2月28日(木)、2013年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、全国ツアーの上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

雪組
■主演・・・(雪組)壮 一帆、愛加あゆ

◆全国ツアー:2013年8月23日(金)~9月16日(月)

ミュージカル・ロマンス
『若き日の唄は忘れじ』

~藤沢周平作「蟬しぐれ」(文春文庫)より~
※一部のPCでは「蟬」の文字がご覧頂けない場合がございますが、「蝉」の旧字体です。
脚本/大関弘政 演出/大野拓史

1994年、紫苑ゆう、白城あやかを中心とした星組で初演。藩の権力争いに巻き込まれた藩士の波乱に満ちた半生と、彼を慕う武家娘との淡い恋心を切々と描いた藤沢文学の香り高い名作。2月中日劇場公演で、壮一帆、愛加あゆの雪組新トップコンビのお披露目公演として上演し大好評を博し、全国ツアー公演における再演が決定。

ロマンチック・レビュー
『ナルシス・ノアールII』
作・演出/岡田敬二

ナルシストの様々な願望、悲しみ、美への憧れ、自己陶酔などを美しい音楽と華麗なコスチュームで表現した耽美的なレビュー。1991年に星組により上演され好評を博した作品を、新生雪組のために新場面も加えながら構成し、『ナルシス・ノアールII』としてご覧頂きます。

 あー、『ベルばら』じゃないんだ。

 とりあえずは、ソコですな。

 『ベルばら』はほんっとにヤだからなー。できれば生涯関わり合いになりたくないレベルだもんなー。
 んで、前にも書いたことあるけど、『ベルばら』は台風とかと同じ天災なので、この世に存在するのは仕方ない、それならせめて、出来るだけ直撃は避けたいとか被害が少ないといいとか、そーゆーもん。

 だから、本公演で十分被害をこうむるわけだから、せめてそれだけで済みますように、てのが望みだった。

 全ツまで『ベルばら』じゃなくて良かった。

 しかし。

 『若き日の唄は忘れじ』かよ……。

 いやその、いい作品ですよ。泣きますよ。それはそうなんだけど、ついこの間観た作品だし、もともと得意な話じゃないんだわ……いじめ描写がえんえんある作品って、苦手なんだよなー。

 全ツが再演モノなのは仕方ないにしろ、学年的に長期政権だと安心できるトップさんじゃない場合、また同じ作品、同じ役、って、えりたんスキー的にも、あまり上向きにならない演目だわ。

 そして、なんつっても、自分の贔屓を中心に考えたとき。

 役がない。

 ってのが、なかなかに不安を煽りますな。

 上から順番に考えれば、文四郎@えりたん、逸平@ちぎくん、与之助@まっつ、なんだけど……ええっと……今さらまっつみたいな人が、与之助をやるだろうか?? まっつみたいな人ってのは、まあぶっちゃけ、おっさんが、ってことなんですが(笑)。←笑ってる場合?
 やってくれたらいっそ痛快だけど、はてさて、そんな配役を劇団がするかなあ。

 専科さんの役とか、きんぐ・がおりあたりの役になる可能性もある?

 ……心ふさぐ想像だわ……(笑)。

 ショーが『ナルシス・ノアールII』ですか……。

 大好きでした、1公演1回が基本だった当時のわたしが、たしか複数回観に行った。つっても20年以上前っしょ? わたしアホの子だから、よくおぼえてない……。
 唯一おぼえていた、がっついていたマタドールの場面はついこの間立て続けに焼き直し再演されちゃったし。
 たしかヒロさんの美声に酔いしれたのと、女同士の絡みがすごかったのをおぼえてるんだが、それってえーと、『ナルシス・ノアール』で合ってる?

 『ナルシス・ノアールII』単品でなら、楽しみ、と言えるけど。

 贔屓を中心に考えると、不安感しかない(笑)。

 まっつ、岡田作品だとすごいことになるからなー。『RSF』並に出番も役もないかも……こわい……こわすぎる~~。

 芝居もショーも、他の組なら、贔屓関係ないなら、「楽しみ!」なんだけどなあ。
 あと何回男役を観られるのかとガクブルする身としては、なかなかキビシイ演目と演出家だ……。


 あとのラインアップは、どれも楽しみです!

 正塚せんせーのルパン!! 原作付き!!
 『BJ』効果で今、正塚株がとーっても上がっているので、すごく楽しみです。わくわくっ。

 ちー・カイのバウ!!
 超路線様だけでない、彼らのようなポジションの子たちに、バウ主演があるってことがまた、すごくうれしい。

 さらに、生田せんせの新作が観られる!! ってことがまた、すごくうれしい。
 楽しみだなー。

 翔くんのバウ!
 劇団が力を入れている原田せんせだもの、ほんと翔くんを大事にするつもりなんだろうなあ。
 原田作品は、翔くんにはかえって演じやすいかもしれない。
 今さら歌がうまくなるとか芝居がうまくなるとか、翔くんに関しては、ごめん、あんまり思ってないけど、だからこそこうなりゃ、他がなんでもかまわないくらいの魅力を、ばーーんっと見せつける、そんなスターさんになって欲しい。

 全ツとバウの振り分けは、どうなるんだろうなあ。

 と、まっつの『ベルばら』退団がないことだけは、前提として友人と話してましたニャ。
 あの人が『ベルばら』で辞めるわけない。
 千秋楽の日は、雨だった。

 晴れ男まっつのおかげで、彼の主演公演中は傘いらずが当たり前。
 なのにこの日だけ雨が降る、しかも午後からは晴れそうな予報、ってことは。

 誰もが思った通り、楽日の昼公演は天下の雨男・キムくんが、みみちゃんと一緒にご観劇でした。

 キムみみ、2ヶ月前とまったく印象変わらない。妖精さんのままの美しさと透明感。

 終演後のカーテンコール、まっつがキムくんの話をしたくて待ちきれない風なのが、見ていておかしかった。
 「我が愛する同期……」って、決まり文句を言おうとしているのに、途中で笑い出しちゃって。
 音月桂さん、舞羽美海さん、って、ちゃんとさん付けする律儀さ。タカラヅカって、たとえトップスターでも特別出演の専科さんでも、下級生は呼び捨てするのにね。(あれ、つねづね不思議だ)

 キムくんの雨男ぶりを、素で「すごいね」とコメントするあたりもまた。


 キムくんが行ってしまえば、もちろん雨はやむ。つか、空は晴れていく。まっつは晴れ男ですから。青空がお友だちですから。

 友だちとランチして、わりとぎりぎりに劇場へ戻る。
 千秋楽。
 最後の公演。
 もう二度と、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』には会えない。

 まっつは憑依型の役者ではなく、理性と技術で距離感を持って役を作り、演じる。
 そのまっつをして、「BJが自分なのか、自分がBJなのか、わからなくなる」と言わしめた公演。
 前楽の雨について、カテコで雨男キムに触れ、また「『BJ』と別れたくない私の涙雨」とまで言った公演。

 その、最後の幕が上がった。


 月曜日の公演で、今まで声が聞こえなかった1幕ラストで、まっつの声が響いた。
 このまま声はさらに出るようになるのかも、と期待したが、その翌日はまた、いつものコーラスに戻っていた。
 前日のトークショーであれだけ喋っていたし、コンディションは悪くないのだろう。快方に向かっているのだろう。
 だけど一朝一夕にぽーんと治るわけじゃなく、一進一退をくり返しているのかもしれない。

 キムくんが客席にいる前楽だって、演出はそのままだった。
 たぶんこのまま行くんだろう。

 BJ@まっつから、強い意志を、オーラを感じる。
 熱量を感じる。
 最後の公演である、という決意、覚悟のようなもの。

 だけど歌はやはり、カゲコ付きだし、ピノコへの歌はラストが台詞のままだ。

 歌も芝居も、演出は青年館版のまま通すんだろう。今さらDC版に戻すなんて、混乱のもとってもん。
 やたらと怒鳴らないBJはカッコイイし、ソロを盛り立てるカゲコのハモりもきれい。

 このまま青年館演出の集大成として、進み、終わるのだと思った。

 それが。

 1幕、ラスト。

 物語が一旦区切りを迎え、中詰めのショー場面になる。
 アツいアツいバイロン侯爵@ともみんのソロ。
 ずっとあきらめてきた、ただ嘆くだけだった、だが今、彼女への愛のために立ち上がる……! そう決意を歌う。

 それを受けて、影たちが現れ、振り返るとセンターにBJ@まっつがいる。

 ここでカゲコーラスによるテーマ曲……「からわぬ思い」が『BJ』全体の主題歌なら、今回の『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』のテーマ曲ポジはこの曲なんだろうな、という、フィナーレでも使われているあの曲。
 カゲコーラスのなか、BJが身振り手振りだけするのが青年館演出。

 ここで、BJが、歌った。

 歌まるまるカットだった部分を、まっつが歌った。
 カゲコのフォローもなく、完全にひとりで。

 まさかの、DC演出版……!!

 ぞわぞわと、肌が粟立った。
 鳥肌立った。

 その、力強さ。
 動き出した物語を、BJが歌の力で収束する、中心としてそびえ立つ、その演出。
 それに応えきった瞬間。

 そのあとの、青年館ではコーラス付きになっていた部分も、まっつはソロで歌いきった。
 それに呼応して、コーラスがはじまる。
 全員の合唱になってなお、まっつの歌声が耳に届く。響く。

 『BJ』だ。『BJ』が、還ってきた!!


 1幕ラストの変更が残念だ、と常々もらしていたわたしは、まさか最後の最後になって完璧なモノを見せられ、息が止まるかと思った。

 しかも、その熱量たるや、半端ナイ。
 今までこらえてきたモノ、熟成されてきたモノを、一気にぶつけてきた感じ。

 ナニが起こっているんだ、この舞台……。


 歌カットだったところが復活しているってことは、2幕もそうなのか? それとも1幕で無理をしたから2幕はセーブするの?
 予測が付かないまま、2幕。

 2幕がまた、すごかった……!

 BJ@まっつの、やわらかさ。

 彼が、この「世界」を愛していることが、わかる。伝わる。
 この空気を吸い、この空間で、自在に存在している。
 怒りも苛立ちも、喜びも安心も、全部全部、自然にある。
 やわらかい。
 それが、自然だから。あるがままだから。

 舞台に満ちる空気は密度を増し、研ぎ澄まされていく。
 目に見える大きさを超え、ブラックホールでも形成しそうな密度を深めている。

 舞台は、イキモノだ。
 今ここで、目の前で、呼吸している。
 肺が、心臓が、動いている。
 それがわかる。
 伝わる。

 生きている。
 『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』というイキモノが、いる。

 まっつの歌声は力強く復活した。

 美しくあれ この世のすべて……響き渡る、祈り。

 あの日以来歌えていなかった夜明けの歌を、台詞に変更されていた歌いあげの部分を、堂々と、歌いきった。

 あるがままに立ち向かい めぐるままに悔しがり
 過ぎるままに失って 打ちのめされて つまずきながらひとり


 あるがままに。
 ただ、あるがままに。

 祈りが高まり、爆発するように。

 BJひとりの祈りじゃない。
 ただのDC版じゃない。
 カゲコも入る。か細い声を支えるためではなく、曲を多層的に盛り上げるためのコーラス、ハーモニーだ。

 まっつひとりじゃない。
 みんなが。
 出演者みんなが、声を上げている。

 高まり、祈っている。

 この世界に。
 美しい世界に。
 愛しい人々に。

 DCからアクシデントにより演出変更され、新しく青年館版になり、そして。
 DC版でも青年館版でもない、新たなものが、ここで生まれた。


 未涼亜希、完全復活。

 それは奇しくも、「指が動かなくなる」と絶望を口にしたBJが、復活するように。作中には描かれていないけれど、明言はされていないけれど、想像させる作りになっている……BJの復活……まさに、そのままに。

 最後の、最後に。
 いや、最後だからこそ。
 今まで「主演として、公演をやり遂げる」ためにセーブしてきたもの全部、ここで解放した。

 画面が集約し、ひとりしか見えなくなる。
 オーラが出る、って、こういうこと?
 フレームが動いた。
 空気が動いた。

 そこからラストまで、高密度なまま舞台は走る。

 ざわざわと鳥肌が立ち、治まらない。
 舞台が動く。
 舞台がイキモノとして、立ち上がる。

 そのさまを、見た。


 すごかった。
 ただもお、すごかった。

 自分の感情をもてあまして、逃げるように劇場を出た。

 外はすっかり晴れていて、夕暮れになっていた。
 BJが「美しくあれ」と歌ったような、空。


 世界は、美しい。

 泣きながら、思った。

 世界は、美しいよ、BJ先生。
 わたしはこの世界に、生まれて良かったよ。
 終演後に行われる、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』ミニトークショー

 青年館のトークショー参加がはじめてのわたしは、とっても楽しみにしていた……最初。
 でもなんか、公演自体に夢中で、いつの間にかトークショーの存在、忘れてたなあ。
 えーっとたしか、今日だったよね? くらいの温度。
 該当公演が終わったあとも、えっと、このあとあるんだよね? まだ席にいていいんだよね?

 あんまし宣伝されていないというか、アナウンスされてなかった印象。
 DCなんかあちこちにぺたぺたとイベント関係の手作りポスターが貼られてたのに。(自分たちで作成してプリントアウトしたのが丸わかりの・笑)

 その、「ミニトークショー」。
 告知されていたのは、

>出演者:未涼亜希・夢乃聖夏・桃花ひな・彩風咲奈
>司会:早花まこ

 それが終演後、「今日、あるんだよね??」と不安になる時間があるくらい、ちょっと間を置いてからトークショー開催のアナウンスがあった。
 「出演者は未涼亜希・夢乃聖夏・早花まこ・桃花ひな・彩風咲奈と案内しておりましたが……」とアナウンスが流れたとき、は、出演者変更?! まっつ、出ないの?!と、びびっちゃったよ……。

 変更じゃなかった。

 追加、だった。

 「特別に、真那春人・帆風成海も出演します」と続いた。

 ちょ……っ、山野せんせとトラヴィス!!

 場内、大拍手。

 わたし、青年館自体ほとんど行ったことないし、青年館トークショーはじめてなんだけど、こんなことってよくあるの?
 当日、なんの告知もなく出演者増えたりって、当たり前にあることなの?

 まあ、ここで考えることはひとつだ。
 まっつの調子が、悪い?

 まっつ出ない? と、咄嗟に思ってガクブルしちゃうくらいに。
 出演者が増える=まっつの喋る時間を減らす→まっつの負担を減らす、ってことかと。
 そう考えるじゃないですか。

 ところが。

 ……ところが、なんですわ。

 まっつの負担を減らす、まっつが喉を使って喋らないで済ませる……ために人数を増やしたとしたら、意味がなかった。

 だってさ、公式に告知されていたのは「ミニトークショー」なんですよ?
 終演後、出演者5人で約20分のトークだったんですよ?

 1時間近く、喋ってました。

 喉の調子が悪いから、5人で約20分を、7人で約60分に変更しました、なんて、計算おかしいやん!!(笑)
 むしろ負担増えてるやん!!


 まっつはよく突っ込み、よく喋ってました。

 ……楽しかった……めちゃくちゃお得だった……。

 ぜんぜんミニとちがう、スカステの「NOW ON STAGE」よりがっつりトーク番組でした。

 「NOW ON STAGE」は45分しかないもんなー。「ほっぷあっぷ」だって30分だもんなー。

 まさか終演時刻が1時間以上押すとは思ってなくて、そのあと予定(一応、仕事絡み)があったわたしは盛大にあわてましたのことよ。


 大劇場と違って、ショー、パレードがあるわけじゃないから、みんな役の衣装のまま。

 ピノコ@ももちゃんが、ピノコ喋りではなく、ふつーに大人の女性として喋っている、不可思議さ。

 画面としてまずね……そこがね……(笑)。

 そして、このメンバーでのトークにて、いちばん「役とのギャップ」を感じたのが、ホタテマンだ。

 舞台上でとてつもなく芸達者な下級生って、リアルでも器用というか、小技が効くというか、愉快なキャラであることが多いじゃないですか。
 花組のいまっちとかタソとか。
 下級生なのに舞台であれだけ自由に芝居が出来るのは、もともと物怖じしない確固たるキャラがあって、その延長線上に舞台もある、というか。
 すみ花ちゃんみたいな路線ど真ん中の不思議ちゃんではなく、脇の芸達者さん、同期や下級生スターを支えて花開いてます的な子は。

 トラヴィス@ホタテくんは、舞台ではもー、ぶっちぎりの巧さ。
 ただ者ではない感が漲っている。

 オイシイ役を勢いとか若さだけで「おいしく」しているのではなく、ガチに技術、実力で盛り立てているんだ。
 こんなに素晴らしい実力を持つ下級生は、きっと中の人も器用で話術が巧みで、愉快な人なんだろう。
 たのしいお喋りをして、観客をわかせてくれることだろう……。

 ……なんてイメージが、間違いだったことが、よーーっくわかりましたっ。

 ホタテ、見事にだめっこぶり発揮!!(笑)

 あわあわぼそぼそ、まともに話せない。
 喋りながら、ナニを言いたいのかわからなくなって、そのまま話題消滅、オチがつかないばかりか、終話のタイミングも不明。

 うわー……。

 ホタテくんのトークは、去年の『トークスペシャル in 東京』で生で観ている。まっつ・あゆみ・ホタテの3人で『ドン・カルロス』『Shining Rhythm!』について語っていた。

 そのときも大抵あわあわ、なにがなんだか大変そうだったけど。

 あっちはまだ、予告されていて心の準備も出来ていたろうし、プロの司会者がいて、話すことはある程度予測が付いていたのかもしれないし……なんにせよ、今回ほどひどくなかった。

 きゃびいは文才のある人だけど、司会者としての機微に富んだ人ではない、という印象。会話に入るタイミングとか、場の空気を壊さないように操ったり集約したりは、不得手だと思う。
 つまり、きゃびいに司会としての助けは期待できないってことだ。

 それで余計に、去年のトークショーよりぐたぐただったんだろうな、ホタテくん。

 舞台上であんだけ上手なのに……どこの上級生? 研いくつ?ってくらいなのに。
 一歩役を離れると、このだめっこぶり。

 どうしよう……ツボ過ぎる……ホタテかわいいよホタテ!!


 まっつも楽しそうに、ホタテくんをいじっていた。
 つか、ツッコミ鋭いと、ホタテくんは硬直しちゃって、返すどころか会話が止まっちゃうんですけど? まっつ、手加減、手加減!!(笑)

 そして、まさかのトラヴィスの演技を、まっつ実演。
 電話ひとり芝居のとこ。
 ……やりましたよこの人、立ち上がって。


 まっつがどれだけこの公演を、BJという役を愛しているのかがわかる。
 楽しくて仕方がないみたい。

 そして、一緒にこの公演を創り上げている、仲間たちを愛しいと思っているのかがわかる。
 うれしくて仕方ないみたい。

 お茶会でも、下級生たちの役への取り組みが、成長していく様を見るのがうれしい、というようなことを不自由な声で一生懸命語っていた。
 舞台はひとりでは作れない。
 この公演で、この役で、まっつはほんとうに、一回りも二回りも、役者としてだけでなく、大きくなったんだなと思う。


 ともみんのアツさが安定クオリティ、この人ほんと素敵、ブレない、ハズさない!!
 咲ちゃんはぽわわんした雰囲気をかもしつつも、物怖じしない。場に負けない子だなー。
 まなはるは、期待通りのまなはるぶり(笑)。ちょっと空回り風味がまた愛しい、愉快なにーちゃん。
 きゃびいはクール。司会、という立場もあるだろうけど、輪に入らない、一線を画する態度に意志を感じる。

 ももちゃんがかわいくて、まっつがももちゃんに向ける眼差しが優しすぎて、ちょっともおコレどうしよう!!(笑)


 素晴らしいイベントでした。ありがとうありがとう。
 前日行われた未涼亜希『ブラック・ジャック』青年館公演お茶会、わたしたちは「きっと筆談」だと覚悟していた。
 劇場で会う友人たち、まっつメイトたち、みんな同じ思いだった。

 無理に声を出してくれとは思わない。筆談でいいよ、顔を見られるだけでいいよ。

 や、お茶会自体中止でも仕方ないと思うけど、中止する方が大変なんだろうとも思う、イベントの規模として。

 きっとファンの人からたくさん手紙をもらったりして、エールは受け取っているだろうけれど、わたしみたいにただ客席から眺めるだけの人間もいるわけで、そんなゆるい立場のファンが「応援しています」と駆けつけられるのが、個人名義のイベント、お茶会なわけで。

 筆談でもいい、なにもなくていい、ただ姿を見せてくれるだけで。
 ……てなキモチだったんですが、わたしの思い込みに反し、まっつは喋ってくれました。

 てゆーか、「ふつーにお茶会」だった。
 まっつの喉の調子についてのアナウンスもなし。司会者はふつーに公演についての質問をし、まっつがそれに答える。

 まっつの声は、ひどい。
 舞台であれだけ美声で話しているのが、嘘のよう。
 かすれて、小さく、聞き取りにくい。
 音程が取りにくいらしく、棒読みというか、ぶっきらぼうになっている。

 もちろん、無理して喋って公演に差し支える、ような容態ではないんだろう。快方に向かっているのだろう。
 お茶会でトークをしても問題はない、と判断したからだろう。
 だけど、声も話し方も、健康体のそれではない。

 こんな状況で、容態で、あれだけの舞台を見せているのか。
 そのことに、驚く。

 そして。

 こんな状態なのに、不調についての説明・言い訳、一切なし。
 通常のお茶会を進行する。

 お茶会は、言い訳の場でも、泣き言の場でもない。

 そのプロ根性というか、プライドというか。

 ボロボロだったDC楽前日、言い訳などなく、ただ決意を語った挨拶を思い出した。

 ただしここは、ファンだけのイベントの場なので。
 なにも語らなくても、まっつが不調であることは、わかっている。それを押して、平気な振りで、マイクを握っているのだということも、わかっている。
 だから彼がどんだけ聞き取りにくいぼそぼそ喋りでも、感情の見えない一本調子になっても、お茶会自体コンパクトに短くまとめられて、まっつにできるだけ負担を掛けない内容になっていても、まるっと受け止めている。

 互いにわかっていて、あえて、言葉にはしない。
 いやもお、その空気感。
 まっつは最後に「普段の10分の1も喋れていない」と残念そうに言っていた。彼が自分の体調に関することで、口にしたのは、これだけ。
 どんだけ申し訳なく思っていても、くやしくてもかなしくても、それを言葉にすることはできない。
 生の舞台は、その1回1回がすべて。そのときの最良のモノを創り上げているのだから、「足りなくてすみません」などあってはならない。最良なのだ、と胸を張らなければ、お客様に失礼だ。

 アクシデントはアクシデントとして、ペナルティはペナルティとして、受け止めた上で、より高見を目指して、あがき続けている。
 結果はすべて、舞台の上。
 賞賛も批判もすべて、舞台の上。

 その覚悟の決め方、舞台人としての揺るがなさに震撼する。


 てなことはともかく。

 お茶会開始して、「えっ、筆談じゃないの? まっつ喋るの?」とこっちがまだ心構えできてない状態なのに、司会はしれーーっと「では公演のお話ですが、トラヴィスさんと最後に別れるとき……」と、いきなりソコっ?!な話になったのが、たまらんかった(笑)。

 いきなり、トラヴィス@ホタテ。

 や、初の東上公演おめでとう、ってな前振りはあり、これが最後の青年館出演だってな話があったけど。(青年館は取り壊し決定済みだそーですよ)
 公演の話は、いきなりトラヴィス……。
 ナニをさておいても、これだけは聞かなきゃならんことなのか、トラヴィス……。

 みんなどんだけ、トラヴィス好きなんっ?!(笑)

 トラヴィスが帰国するとわかったときの「お前はもういないのか……(byオスカル)」的なBJ先生のやり取りから、トラヴィスとはどうなのよ?という質問。

 えー、大事なことだからメモメモ。

 BJ先生は、トラヴィスが好き。

 真面目で一生懸命だから。1年も一緒にいて、情もわいている。心を開くことが出来る。

 まっつから「好き」という言葉を聞けるとわっ。
 キャラクタの愛憎に関しては、口の重い人、慎重な人、というイメージなんだが。
 むしろ「恋人ですよね?」「違います」と、否定するコメントをよく聞くイメージ……えええ、恋人だと思ってたのに、チガウのかー、と。

 いつから好きだったのか、と突っ込む司会者に、「旅館の名刺を渡したときには、もう好意を持っていた」という意味の回答。
 BJは警戒心の強い人ではないので、わりにさっくり好悪で心を動かすようですな。
 それはわかるけど。カイトくん@咲ちゃんに対しても、バイロンさん@ともみんに対しても、わりにころっと好意的になっているし。

 でもさー、名刺のくだりってさー。

 発信器のあれやこれやは、名刺のあと、ですよ?
 発信器が直りましたー!! とやって来て、やっぱダメだ、「修理が済んだら教えてくれ」と切り捨て!とか、好きになっている相手に、やってたのか!!

 なんつープレイだ……っ!!(笑)

 そのあとのあんなことも、こんなことも、すでに心を許していながら、ツンツンしてたってことですか、BJ先生。

 なんなのその萌え設定。

 BJの中の人はそのへん理解していないようですが、それって相当おいしいです、ありがとうございます。ごちそうさまです。


 もひとつ、とんでもなくツボったのは、プログラムの裏表紙の話。
 BJ@まっつが、テーブルに足を投げ出して眠っている写真。
 あれってなに? ナニか意味とかストーリーとかあんの?

「正塚先生がやれって言うから、やりました」

 ノープラン。ナニか深い意味があるでなし。

 えーと、つまりだ。

 正塚先生の、まっつドリーム。

 まっつにBJって合うんぢゃね? からはじまっただけのことはある!
 まっつBJがこんなことしたら、萌えんぢゃね? トキメクんぢゃね? やっちってもよくね?的な?

 正塚先生、握手握手!! あのポスターといい、ほんっとにまっつの魅力をわかってくれてまっつ!!


 声が不自由でも、「伝えたい」という気持ちのこもったお茶会だった。
 ピノコのこと、他の出演者たちのこと、いろいろ話していた。

 ああ、話したいんだろうなあ、と思うのは、お茶会が進むにつれ、声が出るようになっていくこと。
 最初のしわがれ方はびびったけど、話しているうちに、本人の熱意的に「声」が出るようになっていくのね。伝えたい、という思いがあるから。


 あんだけがんばって話して、コンディションはどうなんだろう。
 大丈夫かな。
 そう思って観劇した、月曜日。
 休みなしぶっ通し10公演の、ちょうど真ん中。

 初日からずっと歌声がろくに聞こえなかった、1幕ラストのコーラス部分で、BJの歌声がすーっと響いた。

 あきらめていない。
 この人はまだ、なにもあきらめてない。
 まだ、前へ進もうとしている。
 あがき続けている。

 出来ることを。
 今の最上を。


 泣いた。
 『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』青年館でまっつは、DC楽の「ほとんど歌わない」状態から、「ほとんど歌う」状態になった。

 それはほんとに良かった。
 どーなることかと思ったもの。
 歌全カットで芝居に変更とか、そういうことも考えられたもんなー。

 青年館初日、DCで歌詞朗読だったところを歌い出すたびに、客席から「歌った!!」という空気が立ち上る。なんとレアな雰囲気(笑)。はじめてだこんな経験。

 まっつが歌うたびに「歌った」ことへの驚きと安堵があり、加えて「美声」に酔う。
 いろいろと抑え目ではあっても、十分美声で音程も確か。
 なんだよ、ふつーに歌ってんじゃん……と思うから、本来歌である部分が唐突に台詞になると、びびる。

 1幕の2曲目のピノコへの歌の、ラストにて、最後の歌いあげ部分のみが台詞に変更。
 あ、やっぱり調子悪いんだ。ふつーにきれいに歌ってるから、もういいのかと思った、てな。

 本調子ではない、無理をしてやっている……状態でも、こんだけうまいんだから、すごいわな。

 ふつーに舞台が進み、バイロン侯爵@ともみんとの掛け合いのソロもふつーにがんがん行ってたし。
 その勢いのまま、1幕のエンディング、「2幕に続くぜ!」という派手な中詰めショー場面になり……歌カットに、心から驚いた。

 えっ、ここカット? DCでは歌ってたとこだよね? あのひどい状態でも歌ってたのに、回復してるっぽい今、歌わないんだ??

 バイロンのソロのあと、BJ@まっつが影たちと共に登場、短いけれど力強いソロを歌う……場面。
 そこから曲調はがらりとかわり、ピノコへのやさしい歌になる。

 その力強いソロがなくなり、カゲコーラスの響く中、まっつは無言で身振り手振りしていた。

 その直後のピノコの歌は、歌う。
 語り掛け調の歌だから、台詞になっていても違和感なさそーなとこなのに、こっちは歌うんだ……。

 カイト@咲ちゃんの絶望のソロ、バイロンの諦観のソロ、それを引き継ぎ、BJが主題を強く歌いあげる……部分が、コーラスになっていた。BJも歌っているようだが、声はほとんど聞こえない。
 そっから全員の合唱、ピノコ@ももちゃん登場、になり、1幕は終了する。

 1幕ラストの、この変更が、心から残念で。

 たたみかけるように主題を歌い継ぐこの中詰めが、実はいちばん好きだったんだ。
 物語として観ればツボは他にもあるが、「作品」として観た場合、もっとも盛り上がるのはここだ。

 なにしろこの作品、クライマックスが、ない。
 「正塚復活!」な、とってもハリーらしい作品で、それゆえにハリーの欠点「クライマックスなし」もしっかり盛り込まれてます(笑)。

 だから2幕には盛り上がるところが、クライマックスがない。ただ淡々と進んで、終わる。
 1幕ラスト、ここだけが真っ当に盛り上がってるのなー。
 2幕で肩すかしされるとわかっている以上、ほんっとに貴重なんですよ、この派手に盛り上がる1幕ラスト。
 その、唯一無二の派手な場面で……主役が声を出さない。

 ……これは、痛いわー。


 単純に不思議だった。
 なんでこんな半端な演出になっているんだろう?

 ソロがまるまるカットになっているところ、歌ナシならそれでもいいから、代わりにダンスソロにしちゃえばいいのに。
 影たちが周囲を囲んで踊っているなか、真ん中のBJがナニもしてない、って、変。
 一応身振り手振りしているけれど、ダンスではなく、「ソロを歌うときの振り付け」でしかない。
 歌ってないのに「歌用の動き」だと、どうあがいても物足りない。

 もともとBJにはダンスが少なすぎるんだ、踊らせろ~~、まっつのダンスを見させろ~~。じたばた。

 ダンス場面へとぱきっと変更してくれていたら、なんの不満もなかったんだけどなあ。
 カイトとバイロンががんがん歌って踊っているなか、主役のBJだけ歌いも踊りもしないんじゃ、なんとも寂しい。カイトたちのソロのとき、BJも舞台隅でちょっと踊ってはいるけどね、ほんとちょっとだけだしね。それだけじゃね。
 なまじ作品中もっともドラマティックな場面であるだけに……。

 ダンスに変更してくれないんだったら、他の歌削ってでも、ここは歌わせて欲しかったよ、正塚せんせ……。

 青年館初日、幕間休憩時はちょっとしょぼんでした。
 いちばんぐわーっと盛り上がる1幕ラストで「えっ、歌カット、代わりのダンスもなし? BJ中心に盛り上がる演出もせず、これで終わるの??」と。

 肩すかしくらった……。

 なまじ1幕、ほとんど歌っていたし、美声だったし。
 このまま行ってくれるのかと思っていたら、まさかのクライマックスのカット……。
 これじゃ2幕も期待できない……さらに肝心な部分がカットされたりしてるかも……?

 心配に反して、2幕はしっかり歌っていた。
 高く歌いあげる夜明けの歌の真ん中部分のみ台詞に変更、それ以外は全部歌った。

 わたしが「まっつの歌声が必須」と思っていたのは、1幕ラストと、2幕の夕暮れの歌だ。
 1幕ラストは残念なことになっていたけれど、2幕はちゃんと歌ってくれた。

 赤く染まる空、ピノコとトラヴィス@ホタテくんのシルエット。
 「家族」を眺めながら、BJが優しい瞳で歌う。

 美しくあれ この世のすべて

 「権威」ある人たちから存在を、生き方を否定され、糾弾されたあと。
 それでもBJは、「世界」をやさしい瞳で見つめる。
 愛しい者たちがいる、この世界を。


 2幕の2曲って、同じテーマを歌ってるよね。
 人生肯定。命の肯定。
 主題歌「かわらぬ思い」と同じ。

 同じ意味の歌なので、そのうちどっちか1曲だけ歌って、1曲は歌詞朗読になるとして、夕暮れの歌の方が歌でうれしい、と思うのは、わたし個人の趣味。

 夕焼け空とトラヴィスとピノコ、徐々に暮れてゆく空、星の瞬き、手をつなぐトラヴィスとピノコ……。

 ピノコをひとりにするのは不安だ、と言ったBJが、ピノコが勝手に駆け出すのを放っておいている。トラヴィスがいるから。彼に、すべてを任せて。
 BJの様子をうかがってから、ピノコのあとを追うトラヴィス。彼の任務はBJの護衛、なのにBJを残してピノコを追う。
 ここでもう、BJはトラヴィスを信じきっているし、トラヴィスは任務とは関係なくBJのそばにいる。
 ふたりの心の距離がわかる場面。

 BJが愛しい者たちを遠く眺めながら、あわく微笑みながら歌う。

「美しくあれ この世のすべて」

 BJの影たちは、まるで祈るかのように両手を合わせる。
 美しくあれ。幸せであれ。
 すべての、命あるものたち。

 許されて、いるのだから。

「どんな人間でも、いつかは幸せになれるかもしれないってことだ」


 DCで歌詞朗読になっていたこの歌を、まっつが朗々と歌いあげたとき、ぞくぞくした。

 歌った……!
 ここ、ちゃんと歌ってくれた……!!

 ってことで、もう1曲の方は一部朗読でもいっか、という気分。
 どっちにしろ、人生肯定ソングにはトラヴィスが不可欠なんだよね。夜明けの歌が終わると「おはようございます」ってトラヴィスが現れるの。
 そしてBJは「よう」って、すげー当たり前にしているの。
 ったく、いちゃいちゃしやがって(笑)。


 あとはふつーに歌っているし、ほんと、残念なのは1幕ラストの歌カットのみなのよー。

 とはいえ。

 青年館初見の人たちは、1幕ラストになんの不満も持っていないようだし、DC版を知らなかったら歌カットされてるとかわからないくらい、ちゃんと演出されてるし。

 残念なのは、わたしの好みの問題なんだろう。

 1幕ラストの歌い継ぎが、好きだったんだ。

 ということだけ。
 『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』青年館版の演出が良くなっていた……のは確か。
 だからといって、完全にこちらが良いわけじゃない。

 なにしろわたしは、まっつファンなので。


 DCの最初の演出では、なにかにつれ、まっつの歌唱力・技術力頼みの演出だったんだ。伴奏も音響も、まっつソロの邪魔をしない。つまり、なんの底上げもなく、ただまっつの声だけが響く作りだった。
 作品の構成自体が、まっつの歌う「主題」にて、物語すべてを集約させる作りだしね。目に見える起承転結がないわけだしね。
 いろんな意味で、いろんな部分が、まっつに丸投げされたような作り。

 まっつの声が好き、歌が好き、な者からすりゃ、この「完全ファンアイテム」的な構成は、楽しかった。

 まっつの声にも歌にも思い入れのない人には、青年館演出の方がいいんじゃないかな。コーラスや編曲によって、まっつソロコンサートみたいな作りじゃなくなってる。

 青年館が初見の人は、予備知識がない限り変更点はわかんないだろう。
 そうなっているのは、青年館版の方がわりと「ふつー」の作りで、DC版は偏っていたせいだなーと思う。
 正塚せんせ、ほんとにまっつを好きで、まっつを信頼しているんだなあ。
 その半端ナイ比重で声を出し続けることが出来なかったのは残念だけど、それゆえに「まっつのBJ」が「みんなのBJ」になった印象。
 主題を担うのがまっつだけでなく、カゲコーラスのみんなも一緒になって担う。
 それは、BJが言葉にはしない部分の主題を、図らずも表現する結果になったのではないか。

 ……と思ってはいるけど、なにしろわたしはまっつファンなので。
 主題をまっつが独り占め、まっつの声だけにすべてを託されていたDC版は、心地よかったなあ、と(笑)。
 まっつが歌うときは余計なモノ一切なし、ただまっつの声だけを楽しむ作り、って、ヲタが夢見るまっつですよ!


 まあその、ヲタ以外には、まっつはいろいろと「薄い」とか「小さい」とか言われる人だし。身長のことだけじゃなくて。
 爆発的になにを表現する人ではなく、しみじみと内側が何層にもなる、浸透系の芝居をする人で。

 染みるのではなく爆発することを求める人には、伝わる部分が少ない芸風だろうなあと思う。
 歌声も、しかり。

 だから、まっつ個人技中心のDCより、青年館の方が「作品として」進化したと思うんだ。

 また、まっつ自身も。
 本調子じゃないから、派手な歌い上げはない。そのかわり、いつもにも増して「演技」して歌う。
 地味で小さくて温度の伝わりにくいまっつが、全霊をあげて「芝居」をしていた。ここまで大きく演じることがかつてあっただろうか、って勢いで、表現することに必死になっていた。
 内側に向かいがちな芸風の人が、外側へと意志を持って新しい表現を模索していた。

 ……また一皮剥けたんじゃないか、この人。

 2009年辺りから、変化が毎回すごい人なんだけど。なんかまたさらに、役者としてタカラヅカスターとして、レベルアップした気がする。
 いや今まさに、変わりつつあるさまを、目撃しているんじゃないかと思った。

 舞台に立つ組子たちの熱量もすごいし。
 まっつにアクシデントがあった分、彼らの「まっつさんを支え、作品を共に作り上げる!!」という意識が、ベクトルが、より強くクリアになった感じ。
 それまでが足りていなかったということではなく、余分なモノが振り落とされ、研磨され、鏡面になった矢印が自然と光を乱反射している。

 青年館版が、えらいことになっている。
 いや、今、なっている途中。

 そこに立ち会っていることに、ぞくぞくする。


 とはいえ、やっぱどーしても残念な部分もあって。
 まっつの「声」を堪能できた、DCがなつかしいですのよ……。
 欲張りですなー。

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