ルドルフ役の、3人の役替わり。

「どのルドルフが見たい?」
 と、ちょうど友人とわたし、合わせて3人いるときに聞いたところ、三者三様、希望は3つに分かれたのでした。
「よかった、これで1パターン見るだけで、あとはどんなだったか聞けるね」
 と完結、「ちょっと待って、劇団は3人で1パターンずつ分けて見てね、と思ってるんじゃなくて、ひとりで3パターン全部見てねって言ってるんだよ?」とツッコミが入るほど、きれーに納得したもんでした。

 わたしが希望したのは、あひルドルフ。

 勝手なイメージだけど、たぶん、「ルドルフ」としていちばん似合っているのはみりおくんだろうなと思っている。だから、みりおルドルフを見てみたいと思う。
 でも、1回しか見ないなら、見てみたいルドルフより、その中でいちばん好きなジェンヌのルドルフを選ぶ。

 ……そーだよ、この3人の中では、あひくんがいちばん好きさ。みりおくんももりえくんも好きだけど、順位を付けるなら、あひくんだ。
 なんつーんですかね、彼には萌えがあるのです、いろいろと。……じれったかったり、苛々したりも、するんだけど。そのマイナス面も合わせて、とどのつまり好きなんだと思う。

 今のところ、月組2回目の『エリザベート』は、1回しか観劇予定はない。や、チケット持ってないし。
 その1回こっきりだからこそ、あひくんを選んだ。ちょうど初日だったしな。

 あひくんの、ルドルフ。
 わたしの不安というか、懸念は、「テルみたいなルドルフは勘弁してくれよ」だった。
 純然たる好みだけの問題で、わたしはかなめくんのルドルフが苦手だった。万引きが見つかって、1回叱られたら自殺しちゃう中学生みたいなルドルフ。
 ルドルフはたしかに「死」に魅入られて自殺しちゃう人だけど、んな弱弱男ぢゃないっ。破滅することと単に弱いことはチガウっ。……と、思っているので。
 ただの個人的な思い込みなので、真実とか世間的見解は知らん。

 自殺する繊細な人を、ただ弱く演じることは簡単なの。
 簡単だからって、まるっとソレをやられたらたまらない。
 表面的な出来事の、その奥を表現してくれ。

 不安だったし、懸念したし、危惧しましたとも。

 ……まさか。

 まさか、アレ以上に弱っちい男で来るとは、思ってなかった。

 テルドルフでも、「これ以上よわよわなルドルフはナイだろ」と溜息をついていたのに、それ以下って……!(笑)

 最初から最後まで、泣き出しそうな30男……。

 革命とか国の未来とか、この男に語らせちゃダメだってば。てゆーかそもそも皇太子にしちゃダメだ。無理だよ、責任なんか与えたら、泣き出しちゃうよ??

 あああ。
 ルドルフって、こーゆーキャラなの、世間的に?

 わたし的には、彼の人となりをいちばんに表す台詞だと思っているのは、シシィに助けを求めるところ。
「最悪の事態に陥ってしまったんだ」
 と歌う彼が、ママに「助けて」と懇願する内容は、「パパがボクを皇位継承者からはずすって言うんだ、大ピンチ! ママから取り直して、ボクの地位を守って!」ではない。
 流れからいって、そう訴えても不思議ではないのに。

 彼が歌うのは、帝国の未来だ。

「今ハプスブルクを滅亡から救える道は、ドナウ連邦しかない」

 この青年は、本気で祖国の未来を考えているんだ。自分の保身よりも、世界の行く末を憂いているんだ。

 この、「政治家」としての「未来の皇帝」としての部分が活きることで、ルドルフというひとりの男の「強さ」になる。

 たしかにマザコンで「ママ、ママ」で、トートに誘惑されて革命家たちに持ち上げられて、後先考えずに行動して破滅するおバカさんだけど。
 それだけではない、一国の皇子としての気骨を持った人物であるということ。
 繊細さとは別。美しさとは別。

 ……と、以前に書いた。テルドルフのときに。

 だけど今回もまた、さらに輪を掛けて弱っちいルドルフ像を見せられると、「ルドルフは弱くてナンボ」だと、演出家が思っているってことかな。

 テルドルフが中学生だったのに、あひルドルフに至っては、小学生ですよ……メンタルが……。

 終始大袈裟に顔を歪めて苦悩というか泣きの演技してまつ。
 「イヤダ! イヤダ!」とデパートの床で大の字になって手足をじたばたしている子どもみたい。

 ジェラルド@『ME AND MY GIRL』を「ヘタレ」を通り越してなにか障害のある人のような感じに演じてしまったのと、同じかほりが……。

 「繊細」に演じようとして、これまたオトナには見えない人になってるよぉ。

 1回しか観ない、つもりだった、『エリザベート』。
 あひくん見た途端、「他のルドルフも、自分で見るべきか?」と思った。
 あひくんの演じるルドルフ像が、演出家の意図なのかどうかを確かめたいと思った。
 こんなに精神発育に問題ありそうなキャラクタなの、世間的なルドルフって?

 二の宮@『夢の浮橋』は、すごく良かったんだよ、あひくん。
 なのにどーして、こんなことに。
 二の宮だって、ある意味あれ、ルドルフキャラだよ? ルドルフよりフランツに近いキャラだけど。挫折する王子の役じゃん。二の宮をあんなに大人っぽく「負けを認める強さ」が切ない男に演じられた人が、どーしてこんなことになってるんだよぉ。
 
 いやその。
 すべてわたしの個人的感想に過ぎないので、ひとが見たら「ぜんぜんチガウじゃん、なにわけわかんないこと言ってんの」かもしれませんが。
 あひくんこそが「ルドルフの中のルドルフ! 歴代『エリザベート』の中で最高の、イメージ通りのルドルフだわ!」てなことだって、あるのかもしれませんが。

 わたしにとってのルドルフは、強さと繊細さを併せ持つ、だからこそその破滅が切ない人なもんで。
 「ママ、寂しいんだ」と歌いながらも、勇気を試すために猫を殺すよーなエキセントリックさも持つわけで。
 「ママはボクの鏡だから」と歌って良い、「もうひとりのエリザベート」なわけで。
 生涯闘い続けたヒロイン・エリザベートと対をなすキャラクタだと思っているので。

 弱い人が弱いまま弱いせいで自殺するんじゃ、なんのカタルシスもないじゃん。そんなの、ただの弱いモノ虐めじゃん、トート閣下。

 あんまり泣き顔一直線で、トートより高い身長を高く見せないためにか姿勢も良くなくて、そんな男が美貌のトート閣下の腕に抱かれて死んでも、萌えなかったっす。

 うおおお、あひくん……。
 なんでこう、気を揉ませるんだ。そこがたまらん、つーのもたしかにあるんだが(笑)。

 あひくんはこれからもこーゆー芸風で行くのかなあ。ジェラルド風っていうか。
 ヘタレでも弱虫でもなく、ふつーにかっこよく演じ方変えてくんないかな……。
 大丈夫、ふつーに二枚目の大人の男に演じても、あひくんならヘタレに見えるから! それぐらいでちょうどいいんだよ、きっと。
 ……て、ダメなのかなあ……。

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