書き切れていない、『私立探偵ケイレブ・ハント』のこと。

 ホレイショー@翔くんがかっこいい。
 ろくになんの書き込みもされてないけど、かっこいいよね!
 アツ過ぎもせず冷たすぎもせず、でも確実に「正しい」。
 上層部が黒い圧力に屈しても、揺らぐことなく正義を貫いている。
 そしてそれを特別視していない。ごくふつーにやっている。

 この「ふつう」さがすごい。

 ぎゃーすかわめいて自分勝手に正義をやるケイレブ@ちぎくんより、淡々と仕事として正義をやっているホレイショーがすごい。わめくケイレブより地味だけど、その地味さこそが、すごい。
 それが彼にとっての「当たり前」であり「日常」だからだ。

 相棒のライアン@ひとことの関係性もいいよなー。
 ライアンはホレイショーほど正義の人ではなく、いちいち嘆くしぼやく。けど、ホレイショーに従う。
 本当に嫌なら、間違っていると思うなら、従いはしないだろう。自分の人生と命がかかっているんだから。上層部に逆らって捜査をすれば刑事としての未来が断たれるし、マフィアに殴り込みかければシンプルに命を絶たれる。その危険性を「ぼやく」のは、「理解している」ということ。理解していてなお、異を唱えない。
 もっとも彼は、ホレイショーが行動しなければ、彼自身が率先して行動しないように見えるので、「ホレイショーが行くなら行く」なんだろう。ぼやきながら。

 ……って、ナニその萌えコンビ。

 ライアンにカノジョがいて、ホレイショーにいなさそうなとこもイイよなー(笑)。ライアンの方が人生を楽しむ気合いを持っている。
 なのに、ライアンの方がホレイショーに惚れ込んでそうなとこが。

 対等のバディも萌えだけど、先輩後輩バディもいいよな。力関係があるけれど相棒っての。

 翔くんほんと、いい男になったなあ……。
 無駄に力の入らない役の方が、彼の美貌が映える。顔立ちがクドい分、芝居が淡白な方が坐りがいいのかも。
 クールなナギショってあんまり記憶にナイもんなー。『ローマの休日』から続いて、ハートを打ち抜いてくれるわ。

 ひとこはふにゃけた役がうまい。ハマる。
 この「調子の良さ」は持って生まれた資質だよな。同じ役をれいこがやってもこののほほんさは出ないはず(笑)。
 人間的なゆるさを魅力として打ち出せるのは、役者として強みだと思う。今回の役、好きだわー。


 ケイレブとホレイショー、ホレイショーとライアンに信頼が見えるのに、ケイレブとジム@だいもんとカズノ@咲ちゃんにそれが見えないのが不思議だ。
 ケイレブ、ジム、カズノの関係性って、ケイレブとライアン程度の関係性に思える。ケイレブの友人はホレイショー、ライアンはホレイショーの相棒だから仲間カウントしていい、ぐらいの感じ。
 なんだろ、この差。一緒に捜査する場面がナイからか?


 ケイレブ、ジム、カズノはそれぞれでかわいいポイントはある。
 撃たれたのがジムだけ、カズノは襲われなかったばかりか、かわいいカノジョまでGETしちゃいそうなところが、キャラクタの差としてかわいい。
 ポーリーン@くらっちがカズノに一目惚れしていて、カズノの方はなんとも思っていないのがイイ。

 偶然助けた若くてかわいい女の子になつかれたら。
 ケイレブはたぶん、それなりに優しい態度を取る。デレるほどじゃなくても、まんざらでもないだろう。
 ジムは絶対デレデレだ(笑)。おじさん、素直に喜ぶだろ。
 ラブラブの恋人がいても、ふたりの男は「女の子からアプローチされている」ことに、プラスの反応を示すだろう。だって、ふつーに「男」だから。

 でもカズノは興味なさそう。強引に関心を示されても心が動いた様子がない。「ふうん?」ぐらいの感じ。
 カズノの不感症っぽいとこがイイ。恋愛に対しての。

 たぶん年数を重ねて「マサツカキャラ」に成長しそうなのはカズノだなあ。ジムは絶対そっちには行かない。

 探偵事務所の3人も、個々には面白いんだ。
 だからなんで、3人のエピソードを描いてくれなかったんだろうと歯がゆく思う。
 「ただの同僚」以上の温度のない関係なんて、つまんない。
 『双頭の鷲』初日観劇。

 この話、トドとみりおんのふたり芝居、あとひとり加えるなら、狂言回しのそらがいれば事足りる。

 あとの役はなくても問題ない。
 解説はそらがやるし、主役ふたりの長々続く会話劇ならではの説明台詞で補完可能。
 ずんちゃんの役はほんとおいしくなくて、リピートがもっともつらいのはずんちゃんファンだろうなと思う。台詞は多いけど、キャラに合ってないし、いなくてもいいし。
 愛ちゃんはスパイス的にいても良いし、と言うか、彼ひとりが「タカラヅカ」で、ここがタカラヅカである以上いてくれなきゃ困るけど、根幹を見れば別にいなくてもいい。

 それに比べて、ストーリーテラー@そらのおいしいこと!
 重要だし、オシャレだし、客席登場して客席いじりして、「スターここにあり!」という扱い。
 番手ではなく、技術で選んでくれて助かる、滑舌重要。そうだよね、『エリザベート』にはルキーニが必要だよね。
 舞台にずっといるし、他のみんなもいることはいるけど、ちゃんと見えるのはそらくんぐらいだし、なんなのこの破格の扱い。びびるわー。
 そらくんスキーのわたしは、彼が活躍してくれることがうれしい。こんなに喋ってくれる彼を見るのがうれしい。
 ありがとう景子せんせ!

 ……けど、わたしがいちばん「いらない」と思った役がそらくんなんだよなあ。
 そして、景子せんせ的に、そらくんの役は、絶対に必要なんだよなあ。
 どれくらい必要かというと、トドとみりおんがいなくても、そらひとりいればOK!……ってくらい、必要。
 そらがひとりでストーリー語って、最後に、テーマを言葉で語る。はい、トドもみりおんもいなくて無問題。
 本末転倒。


 わたしが景子タンのもっとも苦手なところ。
 ラストに、「このお話のまとめ」を解説すること。

 国語テスト。
 Q 作者がこの作品でもっとも伝えたかったことはなにか、20文字以内で答えなさい。
 A ラストシーンで解説役が説明しています。(19文字)

 どの作品も、どの作品も。
 まるでコピーライトかっつーくらい、ラストに「この作品は私のモノ」と景子たん印が押してある。
 どんだけ自分の作品好きなんだ。どんだけ自分好きなんだ。
 作品の見方、感じ方まで、きっちり指図する。自分が意図した以外の感想を持ってはならない。だから、最後に「まとめ」を台詞で入れる。

 せっかく美しい作品を観ても、感動しても、最後の最後で台無し。
 作者自身が舞台上に現れ、作品解説をはじめる。
 いやあのわたし、タカラヅカを観に来たんであって、タカラジェンヌを観に来たんであって、アナタを観に来たわけじゃないっす。もちろん、アナタの作品を観に来たのだけど、アナタ自身をタカラヅカの舞台上で観なくていいっす。

 これが景子タンの芸風で、そうしないことには作品を創れない人なんだろうとは思う。
 それがわかっていてなおわたしは、毎回作品を観ている間そのことを忘れ、作品世界に没入し、別世界で生きて笑って泣いて……そして、もっとも感動するラストシーンで、突然「はい、これは作り事です、私の作品です、出て行きなさい」と景子タンにホウキでお尻叩かれて追い出されるの(笑)。
 そして、ホウキを持って仁王立ちした景子タンが「私の作品はこう感じて観るのです」と説明をはじめるのを、ぽかーんと眺める。
 何度も何度も。
 そりゃあもう、景子作品のたびに。
 何度同じ目に遭っても、学習しないのよ。毎回、ホウキでお尻叩かれるまで、忘れてるの。そんなおっかないおかみさんのいる店だってこと。

 今回もまた、叩き出されてぽかーん。
 そして、幕が下りてようやく、不快感がじわーっとわき上がってくる。
 お客なのに、作品をどう味わうかはお客の自由であるはずなのに、ホウキで叩き出されたわ、ひどい!

 ということで、景子作品の初見は後味が悪い。
 や、忘れているわたしが悪いんだけどね。学習しないんだもん。「今回はラストのまとめがないかも」とか「ラストのまとめ方が、ガチガチじゃなくマシになってるかも」とか、夢を抱いちゃうし。
 でも大抵、「ひどいわー」とがっくり。

 2回目は、「ラストでまとめ来る」とわかった上で観るから、最後まで水を差されずに作品を堪能出来るんだけど。

 「わたしが思っていたこととまったくチガウことを感じろと強制された!」と不快に思っているわけじゃない。
 むしろ逆。
 「ソレ、観てたらわかるよね?」レベルのことを、大上段に解説しはじめるのが、ひたすら、かっこ悪い。
 せっかくの美しい物語が、最後でダサくなる。
 美しいタカラヅカの舞台に、突然、衿口の伸びた毛玉だらけのくたくたスウェット着た一般人が出てくる感じ。
 かっこわる……。

 だけどひょっとしたら、タカラヅカの観客のほとんどはその「ラストのまとめ解説」を必要としていて、みんなソレを聞いてはじめて「ああ、そうなんだ」とか思うものなのかもしれない。
 いや、観客は善良だから、そこで「そういう話だったんだ」と洗脳される? 自分が漠然と感じていたモノを手放し、作者が上から押し付ける「解答」を「自分が感じたモノ」だと塗りかえてしまう?
 景子タン、その確信を得てあえてやっているとか?


 まあともかく、この芝居に必要なのは、主役ふたりとそらくん。
 あとはいなくてもいい。

 それってどうよ。


 ……いやあ、そらくんが「ラストのまとめ解説」はじめたときは、ぽかーんでがーんで、じわじわ不快で、……そしていっそ笑えてきた。
 お約束キターーーー!!
 『ベルばら』のラストにペガ子キターーーー!!的な笑い。待ってました、やんややんや。

 ……この美しい物語で、ラストに作者自ら渾身の自爆芸入れなくてイイのに。
  『双頭の鷲』初日観劇。

 この芝居、トドとみりおんのふたり芝居でよくね?
 と思った。けど、そんなん無理、それじゃチケットさばけない。(ごめん)
 商売として成り立たせるにはスタークラス生徒の出演が必要だし、タカラヅカ的に団体戦要員投入必須。

 しかし、芝居に集中すればするほど、余計な茶々を入れられるのが不快になってくる。
 宙組メンバーの出番の少なさを申し訳なく思うのと同時に、いらねー役だなと思う。

 また、その無理に出番をねじ込んでいるモブ以外のキャラクタ使いが、物語への没入に水を差す。

 あおいちゃんが小娘で、ずんちゃんが壮年?
 何故そんな??

 いやそもそも、トドが若者で、みりおんがおばさん、ってとこからおかしい。
 おかしいけど、とりあえずトドは美しさと主役っぷりで補っているし、みりおんも演技で踏みとどまっている。
 このふたりだけならまだ、世界を構築出来る。

 でもそこに、年配にしか見えない「小娘」が加わると、途端カオス。
 やっぱりトドが老けていることがわかっちゃうし、みりおんがお肌つるつるの若い娘であることもわかっちゃう。

 世界観が、壊れるんだ。

 主演ふたりはいい。前提というか、そもそもこのふたりありきで存在する公演だから。
 でも、脇はそうじゃないよね? この舞台、あおいちゃんありきじゃないよね? まずいちばん最初に「宙組副組長が娘2を務める公演をやる」と企画され、「彼女を娘2にするために、主演とヒロインは誰がいいだろう?」とあとから選ばれたわけじゃないよね?
 なのになんで、こんなことに。

 エディット役は、ふつーに若手の娘役でよかったやん。演技が出来ないとダメな役で、へたっぴには無理だけど、ええっと、宙組にもいるよね、芝居出来る女の子。
 エディットが若い女の子なら、ずんちゃんの違和感も緩和されたはず。
 個人的にはららちゃん希望。きっと面白いキャラクタになったろう……彼女、いい意味での毒があるから。

 無理矢理パパラッチという役を作って、しかもそれが無理矢理な大人数で、無理矢理年配副組長を若い娘の役にして、劇団推しの若手スターを無理矢理おっさん役にして、シンプルな作品に、作品以外の事情で無理矢理ごてごてと付け加えている。

 その無理矢理尽くしに「ああ……」と肩を落としてしまう。

 かといって、シンプルなふたり芝居がタカラヅカで観たいかというとそんなことはないのだから、この無理矢理感も正しいのか。

 パパラッチたちも個性があって、彼らだけでも楽しく眺められる。衣装もオシャレだし、美しさにこだわった作品を壊さない配慮はされている。
 だけど、ふたり芝居の長さと密度に、そぐわない。無理矢理だなあ、仕方ないよなあ、と、裏事情に気が行ってしまう。

 だからせめて、トド以外のキャストの年齢は考慮してほしかったなあ。
 ……いや、「トドが若者」という無茶設定を誤魔化すために全力で小細工をした、その結果が「年配者が若者役」「若者が中年役」というキャスティングに落ち着いたのか……?
 綺麗は汚い、キタナイはきれい?
 わけわからん。


 まあ、そんな混乱をよそに。

 年齢の話なんぞと別次元にいる、愛ちゃんのフェアリーぶりの素晴らしさときたら。

 愛ちゃんすげえわ。
 ちぎみゆの退団会見を気にしつつも、バウホールへ。時間の流れは待ったナシだ、 『双頭の鷲』初日。

 舞台に緞帳がなく、なんかすげーきれいなモノが幻想的に剥き出しになっている。
 ビニール? なにか幕がわりのものがあるんだけど、ソレも含めて剥き出し感。

 美しい。

 景子タンの美意識が、美へのこだわりが、これでもかと主張している。
 こんな美しい舞台で、なにを見せてもらえるのか、どれほど美しいモノを見せてもらえるのか、期待が高まる。

 そして。
 1幕。
 美しい。
 とても、美しい。
 こんなに美しい舞台は稀だろう。
 加えて、稀なほどの、
 客席の爆睡率の高さ。

 お隣が盛大に船を漕いでいるのに気づき、ふと周りを見渡せば、落ちている人たちがやたら目に付いた。隣とその隣、通路挟んだあの一帯、頭の角度からして舞台見てない……。

 いや、わかる。わかるけど。
 幕間。
 「よく寝たー!」「こんなにぐっすり寝たのはじめて」……ちょ、みなさん、どんだけ寝たか語り出すのやめて(笑)。
 告白が同時多発したのは、口火を切った人の声を聞いて、「あ、寝たの私だけじゃなかったんだ」と安心したせいかな。

 1幕は、ほぼトドとみりおんのふたり芝居でした。
 動きも歌も少ない会話劇、そりゃ見渡す限り落ちてます状態にもなるわ……。

 わたしはトドファンという立ち位置から、無駄に気を回して、気が気じゃない、気もそぞろ。
 宙組のみなさん、ただのモブ、いなくてかまわないただのにぎやかし、しかも出てこない、って、すみませんすみません。
 わたしが気に病む必要はまったくないんだが。むしろおこがましいんだが。
 それでも、謎の立ち位置で申し訳なく思っていた。
 わたしは美しいトドロキ見られてうれしいけど、トド様美しすぎて「はうっ」て胸押さえて悶えるレベルだけど、ご贔屓が出てるとか組ファンだとかでトド興味ないのに観に来ている人たちに申し訳なさ過ぎる……!

 だからみんな爆睡してるんだよね。いくらきれいでも、興味ない人がえんえんえんえん省エネな単調さで喋っているだけの舞台を、集中力動員して凝視しろとか無茶よね。
 初日なんて、ファンばっかしだろうしなあ。すみませんすみません。

 そうして、2幕。
 またみんな爆睡するのかと思いきや。
 すすり泣き多数。

 大丈夫! 1幕観てなくても、2幕だけで泣けるし感動出来るよ!
 爆睡してたお隣さんも泣いてる。
 ……明日から、2幕だけ観る人が増えたらどうしよう、タカラヅカあるある、芝居のとき空席だったのに、ショーになると埋まっている大劇場、それを一本モノのバウでもあるあるしちゃう?


 いやあ、美しい舞台でした。

 トド様もみりおんもすごかった。
 宙組のみなさんもいい仕事してた。

 でも。

 この芝居、トドとみりおんだけでよくね?

 他の人たちの「水増し感」ひどいわー。不要だわー。

 いや、その水増しする意義はわかっているけれど。それすら美しいけれど。
 景子タンのいいところと悪いところが見事に出た作品だなと。
 初見では、景子タンの「苦手」な部分がぐさりと刺さってきて、どうにもつらい。この人、一生この芸風なのかなあ、と。
 それでもわたしは景子タン作品好きなんだけどなー。期待して観るからこそ、ラストで「ああ、いつもの景子タンだ」と奈落へ落とされて終わるため、観劇直後は大抵評価が良くない。
 「いつもの景子タン」と納得して(あきらめて)観る2回目の方が、素直に楽しめる。……ので、2回目に期待する。

 とりあえず、美しいラストシーンで、王妃の決断に対し「迷惑な人たちだな」と思ったわたしは、この高尚な物語に相応しくないんだろう。
 リアルタイム記述。↓
 http://koalatta.blog48.fc2.com/blog-entry-2398.html


 で、こっちはこっちでわめく。


 だから嫌だったんだ、次の本公演の演目!
 
 たぶん次がちぎくんの退団公演なんだろう、そう予想していたからこそ、嫌だった。
 またしても日本物、しかもタカラヅカ的でない映画原作モノなんて。
 まだまだ続くちぎくんの治世の1作なら仕方ないとあきらめるかもだけど、退団公演がコレは嫌だ。イロモノばっかやってきて、イロモノで卒業とかひどい。
雪組トップスター・早霧 せいな 退団会見のお知らせ
2016/11/21
雪組トップスター・早霧 せいなが、2017年7月23日の東京宝塚劇場公演『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』『Dramatic “S”!』の千秋楽をもって退団することとなり、2016年11月22日(火)に記者会見を行います。

なお、会見の模様は当ホームページでもお知らせ致します。
雪組トップ娘役・咲妃 みゆ 退団会見のお知らせ
2016/11/21
雪組トップ娘役・咲妃 みゆが、2017年7月23日の東京宝塚劇場公演『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』『Dramatic “S”!』の千秋楽をもって退団することとなり、2016年11月22日(火)に記者会見を行います。

なお、会見の模様は当ホームページでもお知らせ致します。  

 救いはショーがあることだけど、中村Bは退団公演ショーのセンスに欠ける人だということは、『ラブ・シンフォニー』や『My Dream TAKARAZUKA』を観てもわかることだしな……。

 流れていく時が、追い立てられるように過ぎていく時間が、さみしく切ない。
 そして、それならせめていい思い出にと願うからこそ。
 ……何故この演目、と歯がみしてしまう。や、フタを開けたら「感謝!!」の神演目なのかもしれないけど。今の時点では。
 『バレンシアの熱い花』って、どんな話?

 http://koalatta.blog48.fc2.com/blog-entry-1402.html
 ↑ こんな話。
 ……いや、まぁ様が演じているとこんな風には思えなかったけど、シンプルに脚本だけ見るとこうだよなと。


 とまあ、作品が最悪なのは置いておいて、キャスト感想。


 ロドリーゴ@あっきー!!
 今回のキャスティングでいちばんうれしかったのが、あっきー。
 ロドリーゴが観たかったの!
 あっきーのノーブルな美貌でお貴族様。愛に生きる男。

 お貴族様が似合うのも、映えるのも、わかってた。知ってた。
 美しいのもかっこいいのも、わかってた。知ってた。
 だからあとは……えーっとその。

 地味だ……。

 ロドリーゴってもっと花形役だと思ってたんだけど、こんなに地味でしどころがなかったっけ? と首をかしげた。
 らんとむもみっちゃんも派手な人たちだったもんなあ……。

 あと、なんつーか、シルヴィア@ららちゃんと合ってないような。芸風というか、役作りというか。
 シルヴィアは、あっきーのロドリーゴにはちょっと強すぎる気がした。鋭角過ぎるというか。
 このロドリーゴは、このシルヴィアは愛さないんじゃないかな……。手に入らなくなったから、意地になったとか、そういうのならアリか。

 はっ。
 ルカノール@すっしーへの対抗心とか、そっちに妄想すれば楽しいのか、あっきーロドリーゴ。(開眼)


 ラモン@マカゼは、いつものマカゼさん。
 ラモンという役が、こんなにもったりした役に見えるとは……マカゼ、おそるべし。
 でもやっぱかっけーなー。


 イサベラ@うらら様はハマってるね、美しい。
 なんか最初からわきまえているというか、別れるの前提で、一度も我を忘れる様子がナイ気がした。温度低い。それはフェルナンド@まぁ様にも問題があるのかもしれない。

 マルガリータ@まどかちゃんもハマり役なんだけど……丸い。もう少しやせてくれたらなあ。


 ルーカス大佐@りくが好みで仕方ない。
 やだこの人、かわいいー。
 かっこつけててやってることバカで、そのくせ美貌でキラキラしてて、キュンキュンするわ。

 ドンファン@もえこは、前回観たときいい役だと思ったんだけど、今回はあんまし思わなかった。なにか演出変わったのかな?


 どうしても前回の宙組公演とかぶっちゃうので。

 ルカノール小さい。
と、最後、息絶えたところで痛烈に思っちゃったり。
 いやあ、ともちん、でかかったのだわー。こう、がくり、と息絶えた後のでかさが半端なくてねえ……。

 反対に、ホルヘでかい。
 と、最後まで違和感だったり。や、大きさ以前に、ホルヘがふつーだ。と驚いたり。
 いやその、前回は個性的にキャラ立ちしてたからねえ、ホルヘ。
 や、タカラヅカとしては今回のモンチが正しいですとも!
 モンチはいい仕事してます。


 女たちに歌をねだられるフェルナンド、を、心安らかに観られるっていいなあ、と思ってみたり(笑)。
 あー、そうだねー、『バレンシアの熱い花』ねー、何度も観たよねー……。
 と、思い出した。

 思い出す以前に、忘れていたわけじゃない。
 でも実際目にするとチガウわ、どんどん記憶が甦るわ。

 役替わりに新公に全ツまで観てるんだよ。そりゃ覚えてるわ、記憶に残ってるわ……。
 そうよ、全ツよ。
 同じこの梅芸メインホールだった。ものすげーガラガラぶりで、3階席に人がいなくて寂しかったっけ。友人は当日券で1階真ん中がふつーに買えたと喜んでたなー。
 それを思えばすげー盛況ぶりだ。あのころのタカラヅカはマジ先行き不安だったもんなあ。

 だもんで。
 せーこのセレスティーナ侯爵夫人いいなあ!!
 ……が、いちばんの感想になるという。

 ほんま嫌やったんやな、邦さんのセレスティーナ侯爵夫人……。
 邦さん自身をどうこうではなく、ミスキャストだと思っていたから。
 見た目おばーさんなのに、4番手の昔の恋人って、無理あり過ぎる。
 今でいうなら、雪組の翔くんの恋人が組長のミトさん、ぐらい無茶。翔くんが小学生のときに30代だったミトさんに恋して口説いてたの?っていう。(ミトさんすみません)

 せーこならアリだ、わかる! ルカノール@すっしーも無理なくおじさんだし。
 ともちんルカノールかっこよかったけど、彼をあのタイミングでああいう扱いに落とすなら、周りも固めなきゃいかんよなあ。雑なポジション変更だった。

 作品についてはもう、なにも言う気はない。前回語りつくしたので。わたしがこの作品を嫌いなことは変わらない。


 作品もキャラクタも嫌いだけど、まぁくんには似合っている。……と言ったら、悪口になる?

 主人公フェルナンドは、頭のおかしな男だ。自己中心的で言動に整合性がない。自分の思い通りにならないことはすべて他人のせいにするだけでなく、攻撃し、暴力によって従わせようとする。リーダーシップを執りたがるが思考力はなく、洗脳されやすい。自分のかすり傷には世の終わりのような嘆き方をするが、他人の傷には鈍感。
 ここまでひどいキャラクタを、なんで主人公にしているのか不明だが、これは決定事項なので嘆いても仕方ない。

 この最低男が、今回はふつうに最低に見えたので、わたしにはストレスが少なかった。

 わたしの生理的嫌悪感が発動するケースって、無神経とか偽善者がスイッチなのよねー。
 植爺の世界観「主人公を正義とするために、この世のすべての常識を歪める」のがダメなように。どう考えても狂ってる言動を「正しい」と周囲の人々が讃えるのがダメ。
 フェルナンドは卑劣で愚かな男なのに、高潔な人格者でヒーローと描かれるのが生理的にダメ。無理。

 でも、まぁくんはちゃんと、フェルナンドを「卑劣」に演じてくれた。
 やっていることは愚かでしかないんだけど、本人がそれをわかった上でやっているように見えた。
 あくまでも、「わたしに」そう見えただけ。でも、それが重要。
 偽善者より悪人の方が、「ヒーロー」としては受け入れられる。ダークヒーローもヒーローだもん。

 これは、まぁ様に知性があるためだよなあ。
 前回観たフェルナンドはとびきり美しくてキラキラしていたけれど、知性はなかった。ゆえにレオン将軍に操られ、利用されて自滅するだけの道化に見えた。
 でもまぁくんには知性がある。レオン将軍@まっぷーに利用されているようには、まったく見えなかった。
 本人が自分で考え、自分で行動しているように見えた。

 でもって、これはわたしの持論なんだが、まぁ様には、「毒」がある。ただキレイキレイなだけの芸風ではなく、一筋の濁りを内包する。
 それゆえに、狂ったキャラを演じると重く濁った闇をまとう。

 フェルナンドがちゃんと卑劣で悪人で、筋が通っていた。
 悪人だって悪の心の範囲で悩んだり傷ついたりもする。酒場女と別れるのに苦しんだりするのも、嘘じゃない。婚約者と別れる気も貴族であることを捨てる気もないから、最初から「そのときだけの本気」ってやつだけど。
 指先を切ってしまっただけだとしても、傷は傷、痛みは痛み。恋人を亡くしたロドリーゴと、もともと別れるつもりだった女と別れたフェルナンドの傷は同じ。だって、自分の指の傷は痛いけど、他人の大ケガは別に痛くないもんね。
 フェルナンドはイヤナヤツだけど、現実の範疇の悪人だから気持ち悪くない。悪がなんであるかも理解せず、まったくの無知無自覚で正義を振りかざす方が、この世のものではなくてこわい。

 しかし、大変だなあ、まぁ様。


 それにしても、最低な作品だわ、何度観ても。
 宙組全国ツアー『バレンシアの熱い花』『HOT EYES!!』初日観劇。

 痛切に、思ったこと。

 うらら様、男役のキーでしか歌わないなら、男役になればいいのに。

 今までも、ハンサムなうらら様を見て「男役転向しないかなー」と言い続けてきたけど。
 それまでの「ありえないタワゴト」じゃない。現実問題。

 ショー『HOT EYES!!』にて、うらら様は、潔く地声歌唱だった。裏声なし。や、なしっていうかそもそも出ないんだから仕方ないんだけど。それにしても。

 低い声の娘役がいてもいいじゃないか。
 と、わたしは思わない。
 タカラヅカは女性だけの劇団だ。
 女性のみで、男性も女性も演じる。だからそこには、お約束が必要なんだ。
 男性役の歌は地声基本、女性役は裏声。役割分担しないと、性別がわからなくなる。
 外部なら、アルト声の女性がいても問題ない、男性とは姿も声もチガウから、アルトで歌っても「声が低いけど、性別どっち??」とはならない。
 だがタカラヅカは女性のみ、全員地声で歌うと「結局みんな女性じゃん」とマジックが解けてしまうんだ。

 男役の声で歌う娘役は、タカラヅカの根幹を破壊する恐れがある。
 男役の声で歌うなら、それは男役であるべきだ。
 すなわち、うらら様は男役であるべきだ。

 わたしの個人的な希望、ではなく、論理的に「うらら様は男役」と舞台上で証明された。
 ……全ツ終了後に、転向ニュース来ないかしら。マジで。
 まどかちゃんと、「女同士なのに、男女のようにハモる」とか、タカラヅカ的にあり得ない状況だから。

 うらら様、ここまで来たらトップスター目指して! トップ娘役なんてチイサナモノを目指さずに。


 マカゼ氏が、受キャラ開眼!

 ムラで観たときとぜんぜんチガウ! あの「野郎×野郎」過ぎて目が泳ぐ感じがナイ。
 ちゃんとマカゼが儚げになってる。可憐になってる。

 わたし、マカゼ氏にはそのへんまったく期待してなかったの。
 不感症っぽいというか、でくのぼうというかマグロというか、演出家がどんなにがんばって淫靡な設定をしても、ぬぼー、ゆら~、とするだけだと思っていたの。
 あんなにオトコマエなのに……色気があるのは静止画限定かよ!!って、歯がゆく思ってた。

 なのになのに、あのぬぼーゆら~を、受キャラに進化させるなんて!! まぁ様すごい!!(ソコ?!)

 いやあ、ええもん見ました。受マカゼ、大変好みです!


 大階段は、いらなかった。

 大劇場本公演よりも、収まりの良いショーになってる。
 答えは簡単、いらない物が、舞台上にないからだ。

 あれ?
 そもそも『HOT EYES!!』って、全場大階段仕様が売りのショー作品だったよね?
 なのに、全ツに持って行く段階で、売りがなくなっているということ。あれ? なんか企画段階ですでにおかしい?
 でもって、その「売り」がなくなった方が出来が良い、って。

 無意味どころか不要だと、劇団自身が、演出家自身が、大階段のない全ツで再演する、ということで、証明していた。


 うらら様にしろ大階段にしろ、劇団自ら証明してくれて、潔いな。
 あ、マカゼ氏の受OKも。

 なんか、いろいろな可能性を見せてくれた全ツだった。

 あ、タイトルは語呂がいいからそうしているだけで、ぜんぜん三段論法じゃない。←やろうかなと思ったけど、面倒になってやめた(笑)。
 『私立探偵ケイレブ・ハント』の主要人物でありながら、ハリーワールド外のキャラクタである、ジム@だいもんとカズノ@咲ちゃん。

 そんな「撃たれたこともない」ふつーの市民であるジムとカズノがマフィアに殴り込みをかける決意をするのが、不自然なんだよな。
 ケイレブですら「え、そんな薄い理由で?」なのに、個人的なことはなにも描かれていないジムとカズノに至っては、意味わかんない。
 「怒れよ男なら」って、あのー、相手マフィアですよ? 赤の他人(ハリエット@あんりちゃんに至っては、会ったことすらない)のために、怒って命を懸けるの??
 守りたいモノが自分の矜持であれ、銃社会でわたしたち以上にマフィアの脅威は理解してるだろうに、何故そうまでうすっぺらく決意できるのか。

 マサツカせんせ、雑だわ。
 ジムとカズノもケイレブ@ちぎと共に行動する、という都合が先に決まっていて、そのための理屈すらこねずにとして動かしただけみたいね。
 そんな「頭数合わせ」でしかないキャラなら、出さなくていいのに。
 いや、頭数にもなってないのよ。

 ジムは腕をケガしているのに、ひとりボートに乗って夜の海にいるし。
 モーターボートだとしても、まだ痛みのある包帯姿で、片腕で操縦してるの? ケイレブどんだけ鬼畜?
 操縦する人を雇ったの? マフィアとの戦いに、他人巻き込んだの?
 刑事ふたりは会場入りする必要があるけど、カズノはジムと同行させるべきだったんじゃあ? それじゃポーリーン@くらっちと再会できなくて困るからダメだったんだろうけど。ケガ人にボート操縦ってひどいなと。雑だなと。

 カズノにはほんと、ポーリーンとのくだりは必須だと思うの。
 だって、彼にはそれ以外、個人のエピソードがないから。

 「いてもいなくてもいい役」で、それでもモブと区別させる部分、ってのは、個人的な愛憎が描かれるかどうかなの。
 この物語には、ケイレブとイヴォンヌ@みゆちゃんしか、愛憎が描かれていない。
 他のキャラクタはすべて、「状況説明」があるだけだ。

 ストーリー上必要な情報を伝えているだけで、個人的な愛憎はない。
 マクシミリアン@れいこはアデル@あゆみとつきあっていたけれどウザくなって殺した……というだけで、今現在の彼が「愛してる」と女を抱き寄せるエピソードはない。真の愛憎は描かれていない。
 ライアンにはキャスリンという恋人がいる、という情報はあるけれど、ライアンがそのキャスリンとデートしている場面はない。

 カメラはケイレブとイヴォンヌだけを追っていて、他のキャラクタはすべて「出来事」が画面の端に映るのみだ。

 そんななか、ジムだけが唯一「レイラ」という恋人との関係を描かれている。
 ジムにカメラが向けられる時間があるの。
 それが、ジムがモブではない、というただひとつの証明。救い。

 ほんとレイラには感謝よー。この子がいなかったら、マジでジムはモブと変わらないもん、演出手法的に。

 それと同じ意味で、カズノのポーリーンとの出会いは必要。これがなかったら、カズノも完全モブだもの。

 マサツカェ……。

 ジムと違ってカズノは街の不良少年上がりかなあ。腕っ節も強そうだね。
 ジムは元弁護士とか、お堅い職だったのに、「子どもの頃から探偵に憧れてたんだ」とかで、誘いがあったから前職捨てて探偵事務所開いちゃった、優秀(クラス委員レベル)だけどちょっと残念な人、に見える。

 「あの戦争」で誇り高く強靱に闘い抜いた戦士ケイレブとは別の世界の、ふつーの人たち。
 だけど、この世界でしあわせになれるのは、ジムみたいな平凡な人なんだろうなと思う。カズノも調子よく生きていきそう。

 ケイレブはこれからも貧乏くじ引き続けるような、損な生き方をするんだろう。
 ソレこそがマサツカのこだわり、ロマンなんだろうなと思いつつ。
 だからこそジムには興味ないんだろうなっていうか。
 カズノも「いつもの咲ちゃんの役」止まりなんだろうなっていうか。

 演出家の趣味が全開に出ていて、あきれるというか苦笑いというか、でもそーゆーとこも含めてハリーワールド好きだなというか。
 『私立探偵ケイレブ・ハント』の登場人物たちってみんな、かわいいよね。
 言いたいことは山ほどあるが、キャラクタたちは好きよ。マサツカせんせの描く人たちは、みんなどこかリアルっちゅーか、現実という名の泥臭さがあって憎めない。

 ジムという役は、だいもんには役不足だと思う。なにしろ、いてもいなくてもいい役だ。
 そんな役なのに、しっかり血肉を感じさせる辺り、マサツカのキャラクタだなと思う。

 コーヒー好きで、出ないコーヒーメーカー相手に「んん?」ってやっていたりするわりに、たぶんこの人コーヒーの味とかあんましわかってなさそう、って感じとか。
 細かいところにこだわって整理したがるくせに、整理さえつけばそれで納得、その意味はあまり考えないとことか。
 理論派とか頭脳派とか、そっち系を目指しているというか、自分のことそう思っていそうなのに、実はけっこう感覚派で思いつきで動いちゃって論理的でないこととか。
 人の名前をおぼえるのが苦手なとことか。

 挙げていくと、いちいち、かわいい(笑)。

 そして、こんなタイプのおじさんが、よりによっておバカタイプの金髪美人とつきあっていることとか。

 いやあ、レイラ@のぞみちゃんがかわいすぎる。
 のぞみちゃんってほんと、破壊力のある大根役者。声を発するだけで空気を壊す力がある。うわ、ひとりだけ素人がいる!てな。
 だが、そこがいい(笑)。
 大根過ぎておつむの足りない女の子っぽくなっているのが、またかわいいんだ。

 そりゃあ、ジムみたいな四角四面なおじさん(顔のカタチじゃないよ)からすれば、かわいくてたまらんだろうよ……。惚れるわ、デレデレになるわ……。

 レイラはおバカだけど、そこに計算だとか毒だとかがない。
 ほんとに見たままの子なんだ。
 ジムの帰りを待ってアパートの前で寝ちゃったことも、変だとも苦だとも思ってない。恋人に会いたくて待ち続けて、眠ってしまうくらい待たされても、なんとも思わない。
「会えたからいいよ」って素で言っちゃう女の子。
 ……いい子だ……。
 ジムがごはん食べてきた、と聞いてはじめて不機嫌になるのもかわいい。待ちぼうけは平気なくせに、ごはんは別なんだ。
 ……かわいいいい……。

 撃たれたジムとケイレブ@ちぎくん、ホレイショー@翔くんが事件について話し出して、ひとり完全蚊帳の外で、びーびー泣いてライアン@ひとこに怒鳴られてまた泣いて、のくだりが神。かわいすぎて苦しい。

 あー、ジムとレイラ、大好きだ。


 ジムは、ケイレブとは別の星の住人だと思う。

 物語において、登場人物の「比重」って「主人公との気持ちの重さ」のことだと思う。
 たとえ出番が極少でも、主人公が特別に思っている人は、比重の高いキャラクタ。

 ジムを「いらない役」だと思うのは、主人公ケイレブが、ジムのことを、なんとも思ってないから。
 同僚だけど、共同経営者だけど、ただ、それだけ。
 個人的に特別な好意も興味も持ってない。事務所のみんなと同じ。横並び一列。

 初見では「このままのはずがない、どこかで親友っぽいエピソードが入るはずだ」と期待をかけ……裏切られた(笑)。
 ジムが撃たれた、とケイレブは病院へ駆けつけるけれど、レイラに責められて鼻白むけれど、それは相手がジムだからではなく、この世のすべての人間に対し同じようにするよねケイレブ誠実だから、って感じ。

 そして、その病院のレイラとふたりっきりの場面で、ジムがハリーワールドの人間ではないってわかるんだ。

 車椅子に乗ってレイラに押してもらいながら、どこか呆然としたジムの、「撃たれたのはじめてなんだ」という台詞。

 ああ、そうか。ここか。
 ジムは「あの戦争」を知らないんだ。

 マサツカ作品に必ずってほど出て来る「あの戦争」。主人公は「あの戦争」で従軍し、心に深い傷を負っている。
 つか、そうでなきゃ主人公にはなれないし、主要人物になれない。

 「あの戦争」を知らないジムは、マサツカと……もとい、ケイレブと、分かち合うことが出来ないんだ。共通言語を持たない、別の星の人間なんだ。

 ケイレブが特別視するのは、「あの戦争」の戦友ナイジェル@がおり。
 戦争経験者かどうかはわからないけれど、今現在命を懸けて生きている刑事ホレイショー。

 ジムとカズノはそこでふるい落とされているのか。
 ジムはぼんぼんっぽいし、うまいこと召集を免れたクチかな。もしくは最前線に行く前に戦争が終わっちゃった的な。
 ケイレブとジムより若そうなカズノは、年齢的な問題で前の大戦は知らなさそう。

 だから、ジムとカズノは「いなくてもいい」キャラクタなんだ。
 ハリーワールドとして、筋が通っている。
 『私立探偵ケイレブ・ハント』を作り直してみる、その2。
 ストーリーラインはそのままで、ケイレブに探偵させて、命を懸けるだけの理由(恋人の親友を助ける)を加えて。
 その上で、本編ではまったく描かれていなかった「真の敵」側を描く。
 http://koala.diarynote.jp/201709281248092543/ からの続き。


 ケイレブ@ちぎとナイジェル@だいもん。
「あの戦争」で命を預け合ったふたりの男。
 ケイレブはコーヒーメーカーの買い換えでぎゃーすか揉める事務所の仲間に振り回されたり、友人のホレイショー@翔と情報交換したり一緒に捜査したり、恋人のイヴォンヌ@みゆといちゃいちゃしたり、ケンカしたりしている。
 ケイレブはいつも、誰かと共に。
 そして、誰かのために、奔走している。
 ナイジェルはいつもひとり。マフィアのボス@咲に話しかけられたり、命令されたりしているけれど、「会話」はしていない。
 マサツカあるあるの、陰鬱なひとりごとソングを歌ってみたり。
 誰のためでも、自分のためでもなく……ただ、生きている。

 マクシミリアン@れいことの対決の前の、「雑踏を歩きながら登場人物たちがそれぞれ思いを歌う」マサツカのお約束はそのまま。
 ジムとカズノがいないから、その代わりにナイジェルとボスのソロが入る。

 ケイレブは、ナイジェルを友だと思っている。
 ナイジェルも、ケイレブを嫌ってはいないはずだ。
 だが、ふたりは今や、敵同士だ。

 ケイレブはマクシミリアンを倒すためにパーティへ乗り込む。
 ナイジェルもまた、ボスに連れられパーティへ向かう。会場へは足を踏み入れず、スナイパーである彼は、ボートの上から獲物を狙う。

 ケイレブVSマクシミリアンは本編そのままで。
 マクシミリアンが本性を現した瞬間射殺される、のも同じでいい。
 ただ、ここでケイレブがナニもしないのは主人公としてどうよ。だから、彼は咄嗟に動く。「この銃弾の角度は……海から?!」混乱する人々のなか、ケイレブだけが冷静に思考をめぐらせている。元兵士ゆえに。
 確実にマクシミリアンとその部下だけを狙った銃弾。その腕の確かさに、彼はある人物を思い描く。
 そして、まっすぐにスナイパーがいるだろう方向へ向き直る。
「ナイジェル……?」
 ライトが落ちて、舞台は闇に沈んでいく。ただひとり、ケイレブを残して。
 そのケイレブに、ターゲットスコープのカタチをしたライトが当たる。最初は大きく、だんだん小さく、心臓を狙うように。
 暗転と共に、銃声のエフェクト入れるくらいのあざとさがあっていいよね(笑)。

 さらにあざとく、イヴォンヌに歌ってもらう。
 対決前の「雑踏ソング」のリフレイン。

 えっ、ケイレブ死んじゃったの?! ナイジェル、本当に友だちを撃ったの……?!
 と、思わせておいて。

 そこから、フレンチレストランでのデートへ、本編通り。平和でラヴラヴ、なーんだ、やっぱりケイレブ生きてんじゃん! じゃああの銃声は? 答えは、お礼のワインで察して。
 「レストランのオーナーから、お礼です」とケイレブにワインが手渡される。そのワインを渡すのが、ボス自身。自分がその「レストランのオーナー」だとは明かさずに。
 ケイレブたちが去って行くときに、レストランのマネージャー@朝風くんが「オーナー、どうして……?」と問いかけることで、ボスがその「レストランのオーナー」だと観客にわからせる。ボスは「まあまあ」といなして笑っている。ケイレブのこと殺すつもりだったくせに、手のひら返したんだよ、彼のことが気に入って。
 ボスはクズだけど憎めない色男。

 探偵社場面はなしで、そのまま空港場面へ。
 ケイレブとナイジェルの素っ気ない会話もそのまま。あれってハリーのこだわり、男のロマン(笑)だと思うから。

 ボスから止められなかったら、ほんとにケイレブを撃っていたの? ケイレブを守るためにマクシミリアンを撃ったくらいだから、ケイレブを殺す気なんてなかったのよね?
 ナイジェルの真意は説明されないまま終わるのがポイント。
 そしてまた、ケイレブがなーんにも知らないままだというのも、ポイント。

 本編まんま、ケイレブとイヴォンヌのラヴラヴ銀橋デートで終わる。

 ちなみに、オープニングは「ありもしない映画の1場面」ではなく、マフィア抗争イメージで。
 ひたすらクールに踊るケイレブ。
 ボスもナイジェルも登場。マクシミリアンやその部下たちも。刑事ホレイショーとライアンも。
 全員オープニングのスーツで。衣装関係なく、本編での人間関係、立ち位置をダンスで表現。
 本編とリンクしている……んだけど、最終的には「映画の撮影ですよ」と逃げて、アデルの死へつなげていいから。

 マクシミリアンのパーティでは、ボスにノリノリで踊ってもらいましょう。招待客ですから。
 マクシミリアンと火花散らしつつも、表面上はにこやかに。
 そして、ポーリーン@くらっちを口説いてもらおう。カズノとポーリーンがカップル期待、という感じだったから、役が変わってもそこは同じ。
 ケイレブがマクシミリアンを脅しているときとか、ポーリーンを口説いていちゃつきつつ、様子をうかがっている。

 がおちゃんは、探偵事務所に出入りしている情報屋とかで登場かな。なにしろケイレブの個人事務所だから、情報屋必要。

・探偵ケイレブ・ハントに、探偵をさせる。
・役の比重と番手の整理。
・イヴォンヌとの恋愛パートは全部そのまま。
・ケイレブが事件を追う理由、命を懸ける理由を明示。
・ふたつのマフィアとケイレブという三つ巴構造。
・ナイジェルと対比させることで、ケイレブの魅力を描く。

 ……こんな感じかな。

 要するにだいもんの役が気に入らないだけでしょ、と思う人もいるかもしんないけど。
 たしかに、「いなくてもいい役」しかだいもんにやらせないことには不満があるけど。
 それだけだったら、ここまでは思わない。
 役者が誰であれ、「物語が必要とするモノ」を、作者が正しく構築出来ていないことが、不快なの。ボタンがずれたまま外出してる人を見る感じ? スカートのファスナー全開で歩いている人を見ちゃった感じ? うわ、失敗してますよ、直して直して! 口を出さずにいられない。

 物語をかみ砕いて再構築する、アタマの体操は楽しいし。
 ウエクミ新作、花組『金色の砂漠』の幕が開いた。
 三つ子の魂なのか、デビュー作から抜けきらない印象の作風。
 賊の女首領じゅりあってアレだよね、『月雲の皇子』のチューちゃんの役だよね。チューちゃんもかっこよかったなああ。

 と、思っていたところに。
月組 退団者のお知らせ
2016/11/14
下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。   
月組
貴千 碧
咲希 あかね
煌海 ルイセ
美里 夢乃

2017年3月26日(月組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

 チューちゃん退団……!
 美貌のおねーさま役者が。
 『紫子』のときとか、「かっこいい女」もハマるステキな女役さん。

 そして、まんちゃん……!
 まんちゃんは文化祭から眺めて来た子、てゆーか、91期文化祭プログラムのまんちゃんの写真見てくれ、絶対「え?!」と記憶に刻まれるから!
 次にまさおの『Young Bloods!!』2幕ででべらべら喋ってるとこ、まさおの愛称が「まさお」だってそのときはじめて知ったよ……わたしのまさお呼びはそこからだよ……!
 芝居はアレだけど、かっこいいダンサー。最近は芝居も二度見するレベルではなくなってきて、ますます男ぶりが上がってたのに。

 寂しいなあ。


 そして。
 博多座『長崎しぐれ坂』のトドの相手役チューちゃん、の夢が潰えたのでした……。すーさん一択……。
 『金色の砂漠』面白いなあ。
 と思った。

 なんといっても、キャラクタが良い。
 どのキャラもすごく立っている。二次創作できるくらい。

 ヒロインのタルハーミネがいいキャラクタだ。高慢でわがままで冷酷な女……でありながら、ヒロインたり得る魅力のあるキャラ。
 こういう女性を描くのは楽しいなあ。

 と、思うから。

 あー、わたし、ここに来てようやく知った。自覚した。
 わたし、かのちゃんダメだー……。

 『仮面のロマネスク』がダメだったの。かのちゃんのメルトゥイユ夫人。
 かのちゃんをダメだと思ったのがそのときはじめてだったので、たまたまかなと思った。この役は難しいから、大人の女の役だし、若いかのちゃんにはキャリア的に無理があるし、柄違いだし。
 単に、メルトゥイユ夫人がダメだっただけ。わたし、初演ヲタでメルトゥイユ夫人にこだわりあるせいだな、うん。

 そう思っていたけど。
 オリジナル作品でもダメ、つーのは、相性悪いんだわ……。

 サリー@『ME AND MY GIRL』は合ってたと思う。ふつうにかわいかった。
 藤壷@『新源氏物語』は、顔を観た覚えがナイ……。
 アリシア@『カリスタの海に抱かれて』は記憶にナイ……。
 グウェンドレン@『Ernest in Love』はかわいかった。

 思い返してみれば、最初の『Ernest in Love』で「かわいい」と納得して、それ以降は興味がなくて観てなくて、『仮面のロマネスク』ではじめてちゃんと観て違和感持って、今回ようやく苦手だと気づいた、と。
 遅い……。

 わたしは、好きな人を観るだけでいっぱいいっぱい、視野ものーみそのメモリも極少だから、苦手な人を観る余裕がない。だからいつもしあわせ、タカラヅカは好きなモノだけで出来ている。
 ブログで名前出していじる人は、書き方がどうあれ好意を持っている人、そうでなければ目に入らない。

 だから、ほんと気づいてなくて。
 退団発表のときだって、まだちゃんと見た気がしていないから、これからもっとちゃんと見たいのに、早すぎる、と惜しんだ。マジで、気づいてなかったんだってば。
 無自覚だったから、けっこう衝撃だった。そうだったのか!と。
 役の比重が大きいと、どうしても観ちゃうから、ちゃんと見たら、苦手なタイプだった、と。
 ……ふーちゃんのときと似てるなあ。なんでこの芝居?!と、芝居の理解出来なさにようやく「苦手」だと悟ったのが『マラケシュ・紅の墓標』のときだった……遅い……組んで何作目よ……それまではあんまし興味なかったから、気にしてなかった……。

 タルハーミネは、疑問だった。
 え、どうしてそこでその表情?
 泣いてるの? 笑ってるの?
 歯茎の印象強い……姫君なのに……。

 タルハーミネの演技で、物語がぶつ切りされることが続いた。

 脚本から想像するタルハーミネと、目の前のタルハーミネの芝居が違う。
 や、まったくチガウとか、かけ離れているとかではないよ。
 ささやかな違いなの。違和感レベルなの。でも、こういう繊細な心理表現が続く展開だと、その違和感は物語に水を差すのよ。

 芝居は、相性だからなあ。
 かのちゃんがどうというより、わたしの問題。
 わたしが、かのちゃんと波長が合わないのだわー。

 コレを言うとアレだけど、「この役がみゆちゃんだったなあ」と思ってしまった。
 みゆちゃんは、わたしと波長が合う。

 役者さんとの相性って、「堰」のようなものだと思う。
 物語は流れる水流、曲がりくねったり狭くなったり広くなったり、滝があったり。あるがままに流れていく。流れることを楽しむ。
 でも、相性の悪い役者がいると、その流れを堰き止められる。
 『星逢一夜』のたんぼにあったアレみたいなやつ。水路がそこで止められる。
 かのちゃんは芝居で、たとえばうらら様は消える歌唱力で、ばっこんばっこん堰を下ろしてくれる。
 そのたびわたしは、堰にぶつかって行き場のない水流をいなしながら、自力で堰を切り、また流れに身を任せる。でもまた堰を下ろされ、水がぶつかって逆流したり水路外にこぼれたりするのを見ながらあわてて堰を切る……そのくり返し。
 あんまり何度も堰き止められたら、最初は豊かに勢いよく流れていた水も、下流になるころにはちょろっとしかなくなっちゃってるよ……物語自体がつまんなくなっちゃってるよ……。

 反対に、相性のいい人って、あらゆる堰を開けちゃう人なのね。
 たくさんある支流とか全部堰なしで合流してきて、どんどん水は豊かに流れ、海にまで広がるの。地球全部を覆うくらい、無限に広がっていくの。
 書き込み自体が少なくても、そのキャラクタのドラマが見えるの。物語が広がるの。

 ……だから、ほんと相性の問題。
 わたしにとって堰でも、誰かにとってはそうではない。その逆も然り。

 ただわたしは、せっかくの萌えな物語とキャラクタなのに、相性の悪い役者さんだったことを残念に思うっす……。

 タルハーミネは、かのちゃんアテ書きだと思う。かのちゃんに似合う役だと思う。表面的な強(こわ)さの内に、切ない繊細さを持つところが、似合うと思う。
 美貌だし華やかだし、衣装も似合っている。みりおくん、カレーくんとの並びもクラクラするほどきれい。
 ……外見もキャラクタも合っていると思うのに……アテ書きだからまんまでよさそうなものなのに……何故「チガウ」と思うんだろう。技術の問題かなあ。この色を出すための混色方法がわからない、だから似て非なる色になってしまった、とか。

 しっくりこないことが残念。や、わたしが。
 『金色の砂漠』面白かった。

 「王族には異性の奴隷を付ける」という設定がどうしても「そんなことあるかーい!」と受け入れられないことを除けば、好きなプロットだ。
 ……だからほんと、この同人誌的な設定が惜しい。

 同人誌は萌え優先だから、トンデモ設定なんでもアリなの。今流行りの「〇〇しないと出られない部屋」とか、ストーリー組み立てる必要なく、萌えな場面だけ書ければいい、ってことで、トンデモ設定ぶち込むけど、プロがそれやっちゃうのはどうかと思う。
 あれ? 「〇〇しないと出られない部屋」って説明必要か?

 たとえば、『エリザベート』の1幕時点で、まぁ様トートと、みりおんシシィのラブシーンが観たい、と思っても、あの時点のふたりでソレはないよね。
 そういうときに「恋人のようにラブラブにキスしないと出られない部屋」に、ふたりを閉じ込める。
 どんな部屋だよ?というツッコミはナシ。そういう設定なの。
 どうやっても出られない、出るための方法はひとつだけ……となると、さあ、どうする? トートは「カモーン!!」だけど、シシィは「ふざけんな!」だよね、だけど内心は彼に惹かれているわけで、絶対嫌だけど、でも今はこれしか方法がないんだからしょうがなく……という体で、しても、いい、か、な……?
 てな、純粋に「見たい場面だけ」書ける、便利ツール。
 同じ部屋に、「りくエルマーと、ずんシュテファン」を閉じ込めた場合とか、「あっきールドルフと、りくエルマー」を閉じ込めた場合とか……考え出すと止まらなくなるくらい、楽しいぞ(笑)。

 王女に男の奴隷を付ける、という設定が、この「〇〇しないと出られない部屋」と同様の同人設定に思えるの。
 ありえないけど、萌え場面を描くために必要だから、とにかくそういうことにしました、ツッコミ不要、としているのが。


 他にナニか、いい設定はなかったのかなあ。
 観ながら、ソレに気を取られちゃった。面白い話だから、設定の荒さが気になる……。


 そして、『星逢一夜』をサルのようにリピートした者としては、進化してる!! と、『星逢一夜』より良い点を数え上げるのに忙しかった(笑)。

 第一に。
 役が多い。

 すごいすごい、3人いれば事足りる、3番手ですら「村人その1」だった『星逢一夜』とぜんぜんチガウ!!
 と、感動。

 主役カップルと当て馬男、2番手カップルと当て馬男、王様と王妃、と、愛憎だけでこんだけ描ける、登場人物がいる。
 『星逢一夜』の3倍くらい役があるよ……いきなり3倍か、ウエクミすげー進化してるんだなあ。1作ごと進化するってすごいなああ。

 第二に。
 やっぱり「最後はナニも成し遂げずに逃げ出す」主人公なんだけど、その理由が『星逢一夜』より納得出来る。
 愛のためにすべて投げ出すのは、タカラヅカなんだからアリだ。わたし的に。
 「ただ自分がこれ以上傷つきたくないから、すべて捨てて逃げる」晴興@『星逢一夜』主人公に、めっちゃ疑問持ってたから。

 第三に。
 画面がきれい。
 王宮は良いですな。なんちゃってアラブもの、異世界モノはいいですな。
 王子様にお姫様、いいですな。奴隷役でもきれいなお衣装、いいですな。
 びんぼーな農民しか出てこない作品は、やっぱ観てて寂しい……。どんなに栄養があっておいしくても、茶色いおかずばっかのお弁当より、カラフルキラキラ夢いっぱいのキャラ弁がいい……。

 第四に。
 舞台機構の使い方が、ドラマチック。
 セットが良く動くわー。多彩だわー。『星逢一夜』って平面的だったよなああ。


 役が多い=ドラマが多層、大劇場ならではの画面、主人公の行動がセーフ。
 ……ということで、うらやましい限りです。

 や、それでも好きだけどね。『星逢一夜』。
 隣の芝生は青いのさ(笑)。
 お楽しみのウエクミ新作だーー!
 花組『雪華抄』『金色の砂漠』初日。

 『雪華抄』は、取り急ぎ原田くんは今後ショー作家に転向してくれ。とのみ言及し、『金色の砂漠』の話。

 みりお様が奴隷! 拗らせ系! ということで、楽しみ過ぎた作品。

 ……初日に観に行って良かった、と思うのは、冒頭のある場面。
 タルハーミネ@かのちゃんが輿から降りるときに、ギィ@みりおくんを、踏み台にする。

 これは……。

 劇場内の空気が、動いたね。

 あの空気を、どう言えばいいんだろう。

 それは純粋に、驚愕なんだと思う。
 トップスターがトップ娘役の足元にうずくまり、その背中を踏んで、トップ娘役が輿から降りる。
 そんなことが起こるとは思ってないから、みんな驚いた。

 驚愕は素直に声となって漏れていたし、かのちゃんがみりおくんを踏んだのは一瞬のことで、そのまま芝居は進んでいくんだけど、しばらく客席はざわざわしていた。

 いやあ、「タカラヅカ」ってすごいね。
 トップ娘役に、トップスターが踏まれた。
 これだけのことに、驚愕するんだ。本人たちどうこうじゃなく、「芝居」の中の話なのに。そこで悲鳴上げるくらいには、「トップスターは特別な存在」と、ファンが認識している。
 トップスターが「踏み台」にされることなどあり得ない。……「太陽が東から昇る」くらい当たり前に刷り込まれているもんだから、「え、今、西から太陽昇った?? え?!」って驚く。
 「タカラヅカ」すごい。

 もちろん、初日の客席の何割かは確実にみりおくんのファンで、「愛するみりお様が踏み台にされた!」ということにシンプルにショックを受けた人も、そんな演出をされたことに憤りを感じた人もいたと思う。
 でも、「誰が」ということよりもまず、「トップスターが」ということに、反射的に驚くと思う。みりおくんのファンだって、まさかトップスターになってそんな扱いされると思ってないだろうし。
 名もなき下級生なら、こんな反応にはならない。トップスターだからだ。

 「タカラヅカ」ってすごい……と、改めて思いながら、そのすごい「タカラヅカ」で、よくこんなことさせたな、ウエクミ。と、思った……。

 奴隷役だとわかっていてなお、あくまでも芝居の中で踏み台にされる、というだけのことで客席がマジにびびる、そんな客層の劇団で、コレをわざわざやらせるって。
 挑戦的だなあ。

 初日に観られて良かった。
 ナニも知らずにこの場面を見られて良かった。
 驚愕の声と、そのあともざわつく客席。

 まず、驚愕。そして、困惑。

 え、今、踏んだよね。踏まれたよね。え? え? ……いいの?

 いやあ、いい体験だった。ざわざわざわ。


 でもって、とても美しい物語だった。

 みりおくんが楽器弾いてて、かのちゃんがカレーくん膝枕してるとことか。
 あまりの美しさに、大漁旗でも振って叫びたいくらいだった。「これが『タカラヅカ』だーー!」と。
 これほどまでに美しいのが、「タカラヅカ」という文化。世界。現実にこんな美しいものがあるなんて。

 タカラヅカを好きでよかった。ヅカヲタでよかった。こんなに美しいものが観られるなんて。
 と、瞬間メーターぶっちぎるくらい、美しさに感動した。
 この一場面の美しさだけでしばらく生きていけるわ的な。美しいは正義。


 しかし、「王族には異性の奴隷を付ける」という設定には終始違和感。どう考えてもソレはない……おかしい……。
 王子に女性の奴隷を付けるまではギリギリありかもしんないが、王女に男の奴隷はナイわ……付けるなら去勢しなきゃだわ……。
 物語の根っこ部分に納得出来ないのがつらい。


 つっみどころはいろいろあるけど、さすがに女盗賊じゅりあの「アツいね、アンタの剣は!」で、吹き出した。
 そーれーはー(笑)。
 やりたいことはわかるけど、トンデモ過ぎるわ、その展開。
 素直に、「いい男じゃないか、気に入ったよ」でいいじゃん。周りの男たちに「また悪い癖がはじまった」とか言わせておけばいい。手下たちも顔で選んでるの丸わかりだから、説得力ある。

 ギィが女首領の男妾になって、賊を率いるようになったんじゃない、あくまでも実力と人望ゆえだと、その後の会話でフォローすればいい。
 つか、むしろ台詞で「実力ゆえに」と説明出来るようになるから、最初は美貌ゆえに首領に気に入られた、ということにした方がよくないか?
 だって、どんだけ「アツいね、アンタの剣は」ってスピリッツに惚れたみたいなこと言っても、肉食系おねーさまじゅりあに、おいしくいただかれちゃってるよね、子ウサギみりお様、と思えるもん……。虎がウサギ捕まえてる図にしか見えん。


 あきらの喋り方が変だ、なんか変だ、まさかと思うが若い役なのか、若いのか、てゆーかちょっと待て、この国の奴隷設定だと、あきらと音くり同世代?! え、あきらまさかの小学生役?! え、それなんのプレイ? どのへんに需要が??

 べーちゃん、長女じゃないの? どう見てもかのちゃんよりおねーさんだろ。
 タソがいいヤツ過ぎる……。

 ジャハンギール王@ちなっちゃんが、かっこいい……!!
 ちょっとどうしよう!! どきどき。


 とかまあ、いろいろ。
 それはともかく、帰り道の電車降り際に、わたしはふと溜息をついた。

「いい人の役をやって、ちゃんと『いい人』に見えるっていいよね……」

 固有名詞は一切出してない、ただのひとりごとめいたつぶやきだったのに。

「どうしてああなっちゃんだろうね。『オーシャンズ11』初日なんか、悪役が出来なくて大変なことになってたのに」

 間髪入れず、的確に同意した花担友人すごい。

 ほんと、どうしてこうなった。「いい人」役をやってもそう見えない、悪者に見えるなんて……なーぜーだー。
 昔はナニやっても「いい人」で、『オーシャンズ11』初日は「ただの生真面目な苦労人やん。同情しちゃって、主人公チームが非道に見えるからよせ」と頭抱えたのにーー。
 と、さらに固有名詞を出さずに書く(笑)。

 えーとその、要するに、キキちゃんのいい人オーラに感動しました、まる。
 てことで、『私立探偵ケイレブ・ハント』を作り直してみる。
 ストーリーラインはそのままで。

 ただし、本編のままだとケイレブが「探偵」じゃなく「ただの変な人」なので、前日欄に書いた通りのネタをぶっ込み「探偵」にする。
 メキシコ人夫婦から、娘アデルの捜索を「依頼」された。ゆえにケイレブは「探偵として」動き出す。
 また、アデルの友人ハリエットは、ケイレブの恋人イヴォンヌの親友だった。ハリエットを救うのは、イヴォンヌのためでもある。……というのが、前日欄の話ね。

 で、前日欄の展開だと、ジムとカズノがいない。だって、この役いらないからな。
 いらない役に尺を取って作品を壊さない。番手スターには重要な役をやらせる。
 ……ってことで、キャラクタ整理。

 主人公ケイレブ@ちぎくん。
 その恋人イヴォンヌ@みゆちゃん。
 ここまでは同じ。

 ナイジェル@だいもん。
 2番手だから、2番手の役をやる。

 物語がマフィア抗争を軸としているから、3番手役はマフィアのボス。マクシミリアンなんて雑魚ではなくて、自分は表に出ず手も汚さず、勝利を独り占めしたマフィアA……ケイレブとイヴォンヌがデートで行ったフレンチレストランのオーナーね。
 それが、咲ちゃん。

 4番手はケイレブの友人、刑事ホレイショー@翔くんそのまま。

 トップと4番手がペアで、2番手と3番手がペアで、ひとつの出来事を軸として、別の角度から関わる。絡む。スターの比重的にもいい感じ。

 マサツカは咲ちゃんにずーっと同じタイプの役ばかりやらせる。『ロジェ』『はじめて愛した』『ブラック・ジャック』そして『ケイレブ・ハント』……みんなちょいアタマ悪い系の不良青年。カズノってケイレブやジムとは毛色が違うよね、いつもの「マサツカ作品の咲ちゃん」っぽいよね。
 同じタイプしかさせたくないのかなあ。だからカズノだったのかなあ。
 でもここはひとつ『はじめて愛した』のアホボンの上位互換キャラってことで、マフィアのボス役を。
 若くその地位に就いた、エキセントリックな男。職業柄っつーか立場柄というか、基本クズで威圧的。でも美形、というロマンの詰まった役。
 寡黙なナイジェルとのコントラストも良い感じで。

 ちなみに、5番手マクシミリアン@れいこ、6番手ライアン@ひとこもそのまま。

 で、本編からジムとカズノの場面を削る。
 探偵事務所の場面はあっていいけど、「トップスター、2番手、3番手勢揃い」の場面だからこそ歌だのダンスだのを使って尺を取っていたんだ、「ケイレブには仲間がいる」「ほっこり」という用途で挿入されるだけなら、大した時間は取らずに済む。

 代わりに入れるのが、マフィアのボスとナイジェルの場面だ。
 本編の物語を、マフィア側の視点を入れることで補完する。

 本編のミステリ部分である「アデルの死を調査し、謎解きするケイレブ」の流れは、「アデルと両親を殺したのは誰?」→「悪いのはマクシミリアンだ!」→「マクシミリアンと対決」となっている。
 この合間にナイジェルがうろちょろしているわけだが、それだけでは、伏線として機能していない。

 だから、ナイジェルが「なんでうろちょろしているのか」を描く。

 ケイレブが「マックスアクターズプローションがいろんな事件に絡んでいる」とわかるタイミングで、マフィアのボスがナイジェルに「マックスアクターズプローションが目障りだ」と話している。
 イヴォンヌがマクシミリアンのリゾートクラブのアニバーサリーパーティのプロデュースを任された、というくだりで、マフィアのボスが「俺も招待されている。お前も付いてこい」とナイジェルに話している。
 てな風に。
 あくまでもケイレブの物語、本編はそのまま使うので、ナイジェルとボスの出番は短く挿入。ボスは登場するたびチガウ美女をはべらしてたりするといいな(笑)。

 ケイレブからはマクシミリアンしか見えていないし、たしかにマクシミリアンは悪だけれど、そこにもうひとつ、大きな悪の力が伸びようとしている……それを知っているのは観客だけ……逃げてケイレブ! てな。
 そして、動向を読めないのが、ナイジェルという男だ。
 ケイレブがマフィア抗争に巻き込まれないよう忠告したってことは、彼はケイレブの味方? でも彼はマフィアのボスに従っている。
「マクシミリアンの周囲を嗅ぎ回っている探偵、邪魔だからマクシミリアンごと殺っちまえ」ボスの言葉に、ナイジェルはうなずいたのか? 答えがわからないままライトが落ちる。


 11月15日欄へ続く。
 私立探偵である意味がまったくない『私立探偵ケイレブ・ハント』、どうしてこうなった。
 11月6日(http://koala.diarynote.jp/201709261659301745/)からの続き。


 わたしならどうするか。

 答えはシンプル。
 探偵が探偵する話にする、『私立探偵ケイレブ・ハント』。

 メキシコ人夫婦の「娘の捜索依頼」を「探偵の仕事として」受ける。

 たとえ依頼人がその直後事故死しても、「受けてしまった仕事だから」と投げ出すことはしない。
 だって俺は「探偵」だから。

 恋人のイヴォンヌが「探偵と付き合うこと」に迷いを持っていても、仕方ない。探偵をやめる気はない。

 相手がマフィアだとわかっても、逃げ出さない。一旦受けた仕事はやり遂げる。命を懸けることになっても仕方ない。
 仕事ってそういうもんだろ。軍人だって刑事だって、同じように仕事してる。医者だってパイロットだって役者だって、ときにはいろんなものを懸けて犠牲にして、それでも仕事を全うするだろ。
 俺は探偵だから、探偵するよ。

 ……という、タイトルに嘘偽りナイ物語にする。

 でも、「いくら仕事だって命まで懸けるのおかしい」と思う層を納得させるために、「心」の部分でも「命を懸ける理由」を作る。

 男を動かす手っ取り早い理由は、「女の涙」だ。
 てことで、「死んだアデルの友人ハリエットは、実はイヴォンヌの親友だった」という設定を投入。

 せっかくの誕生日、待ち合わせに遅れてレストランへ行ったケイレブは、イヴォンヌよりもハリエットに責められる。こんな日にイヴォンヌを待ちぼうけさせるなんて、と。元女優志望で今はメイクアップの勉強中のハリエットは、この店でアルバイトしていた。
 ハリエットという存在、イヴォンヌとの関係をしっかり打ち出して、あとは本編通りのケイレブとイヴォンヌのデートへ。

 ケイレブは本編と同じタイミングで、アデルの部屋でハリエットと鉢合わせる。
 ハリエットが「荒らされた友だちの部屋にいる知らない男」をそのまま信じ、なんでもかんでもぺらぺら喋る、という本編の不自然さはこれで解消。ハリエットが喋ったのは、ケイレブと知り合いだったからだ。
 昨日きつい言い方をしてごめんなさい、とハリエット。彼女がびりびりしていたのは、アデルの死で傷ついていたからだったんだ。
 でもせっかく誕生日でデートを楽しみにしているイヴォンヌに、あそこで言うべきではないから、自分の哀しみは言わなかった。
 イヴォンヌは友だちだからとか、あの子には幸せになって欲しいとか、だから泣かせたら許さないとか、死んでしまった友だちの部屋で拳を握りながらぽつぽつ喋るハリエット。死んだ友だちの大切にしていた花を助けるためにやってきたハリエット。

 ハリエットがいい子だと、ケイレブにも観客にも示す。
 コレ大事。

 イヴォンヌ自身はアデルに会ったことがない。だから、アデル事故死時に同じスタジオにいたけれど、ぴんときていなかった。翌日になってハリエットから「アデルとは友だちだった」と聞かされて驚く。
 ケイレブがアデルの事件を調べているとハリエットから聞かされるけれど、それがマクシミリアンと関係しているとは思っていないから、マクシミリアンの仕事を受けて彼の屋敷へ出入りしている。

 本編通りにマクシミリアン邸でケイレブと会い、彼に半ば強引に連れ出されたイヴォンヌは、そこでマクシミリアンがマフィアだとケイレブに聞かされるが、信じない。それどころか、ケイレブと微妙な空気になる。
 その後、本編通りハリエットが誰かに連れ出されたと知ったケイレブは、まずイヴォンヌにハリエットのことを尋ねる。下宿屋の管理人が言うように彼氏と出かけたのかどうか、確認しなきゃ。
 ハリエットにそんな彼氏はいない、やはり彼女は誘拐されたのだ、とケイレブは結論づけるけれど、イヴォンヌは半信半疑。
 直接マクシミリアンに、ナニかの誤解だ話せばわかると会いに行き、「ハリエットを返して」と直談判し……ケイレブの言っていたことが本当だと知る。
 マクシミリアンはとぼけるし、ケイレブが止めて力尽くでイヴォンヌを連れ帰るが、彼女は収まらない。
「ハリエットを助けて!」

 そして、本編のホテルの場面へつなげる。マクシミリアンに楯突いたからには、もう自宅へは帰せない、危険だ、ってことでホテルへ避難。
 激情のままにハリエットを助けてと泣きついたものの、それはつまりケイレブにマフィアと戦えと言っているわけで、そんな危険なことはしてほしくないと、イヴォンヌの心は乱れる。
 そんな彼女の苦しみごと、ケイレブは全部背負って、戦いへ赴く。

 ケイレブの仲間は刑事ホレイショーとその相棒ライアンのみ。「ケイレブ・ハント探偵社」はケイレブひとりで立ち上げた探偵社だ。ただし、事務員だの秘書だの使い走りだのはいる、明るくにぎやかな事務所だ。
 ケイレブはホレイショーとライアンと3人でマクシミリアン邸のパーティへ乗り込む。

 アデルの死の真相を突き止めることは、死んだ依頼人へ仁義を通すことだ。探偵としての矜持だ。
 そして、イヴォンヌの親友を助けることは、彼女への愛ゆえだ。
 さらに、ハリエット自身もいい子だ。見殺しになんて出来ない。
 3つの理由をわかりやすく背負って、探偵ケイレブは歩き出す。前へ。


 これくらい理由があれば、マフィアと正面衝突するのもわかるんだけどなあ。
 だって、『私立探偵ケイレブ・ハント』だし。
 探偵として生き、ひとりの男としてイヴォンヌを愛している、のだから。

 でもマサツカせんせは、逆に考えるのかもしれない。
 探偵だから探偵するのは不純だ。依頼されたから動くのは不純だ。
 恋人の頼みだから助けるのは不純だ。
 いい子だから見殺しに出来ないなんて不純だ。

 職業なんか関係なく、仕事でもなく、誰かに頼まれたのでもなく、赤の他人のために、なんの思い入れもない知らない誰かを助けるために、命を懸ける。
 これこそが、もっと尊い、かっこいい行いだ。
 それこそが、描きたかったケイレブ・ハントという男だ。

 ……って。
 まあそういうのも、わかるけど。

 でもわたしは、「行動」に「理由」を作りたい。
 対外的な理由と、心の理由と。
 そしてなにより、タイトルを大切にしたい。

 『私立探偵ケイレブ・ハント』なんだから、彼は「探偵」であるべきだ。
 月DC『アーサー王伝説』2回目にしてMy楽。

 アーサー王キューピー当たった。

 すごい。
 『BJ』以来だわ。
 ……って、『BJ』は全公演制覇だから、確率がまったくチガウ。

 それにしても、だいもんアル・カポネのタルキューピーはわけわからんわ……。なんであんな、誰も喜ばないデザインにした……。(『アル・カポネ』は全プレなので抽選じゃないっす)


 当たりといえば、94期総見(?)に当たった。

 総見というには人数少ないかもしれないけど。
 ぞろぞろと組を超えて94期のみなさんが現れて、「おおっ!!」でしたわ。みんな泣いてた? 目元ぬぐいながら席を立っていたような。
 あすくん、レオ様は昨日千秋楽だったのに、フットワーク軽い。
 ……94期文化祭を観たときは、たまきちはどこにいたのか、まったく認識できてなかった。レオ様はばっちり覚えて帰ったのになあ。
 あ、94期文化祭でいちばん記憶に残ったのは仙名さん、それから和海くんとレイラですな。あとレオ様とびっく、わかばちゃん。たまきちも麻央くんも存在すら知らなかったという。麻央くんは文化祭が終わったあとマスコミが書き立てていて「??」となった……そんな子、いた? 観てない、って。
(文化祭は演劇がダブルキャストなので、わたしは和海くんとレイラの回を観ていて、たまきちと麻央くんの回を観ていないのだ)


 ともあれ、2回目なので視界は自由、ストーリーわかってるから好きなとこ観るぞーー!
 てことで、からんくんロックオン。
 じーさま好きや~~!
 おしゃれな髪型してるよね。ところどころおちゃめでもあるよね。
 しかし出番自体は少ないよなー。

 わかばちゃん・くらげちゃんの美少女コンビ堪能。
 踊るふたりがすごい好き。わかばちゃん、美しすぎて嘘くさい。ナニあれ二次元美少女がそのまま舞台にいるよ……!
 そしてやっぱ、くらげちゃんのコケティッシュさが好き。やだ萌える。滾る。
 くらげちゃんは、コスプレだ!!
 『A-EN』も好きだった。そうか、コスプレだ、アニメ・ゲーム系だとハマるんだ。ふつーのタカラヅカだと地味で老けて見えるけど、アニキャラやると美貌と器用さがまんま武器になる。
 夢が広がるわ。

 たまきちVSまゆぽんとか、逃げ場がない感じで焦るなあ。
 逃げ場ってその、野郎感剥き出しで、もう少しこう、タカラヅカ的な、ファンシーさがあっていいんじゃないかとか(笑)。

 ゆりやくんが彼にしてはめずらしい感じの役で、このままただの脇役なのかと初見では焦ったなあ。後半、まだ見せ場っちゅーか役割があってほっとした。
 学年的に貫禄が必要になってきたんだね。持ち味のやさしさとあたたかさを活かしつつ、大人の貫禄が出せるようになったら大きな武器になるんだ。と、気づかせてもらった、今回の役。

 てゆーかわたし、たまきちだと萌えないらしい……。
 立ち位置的には、アーサー×メリアグランスとか、ガウェイン×アーサーとか、カップリングよりどりみどりなのに、思考がストップするっす……。
 ガタイは関係ないわ、役によってはワタさんだって受OKだったし。
 あのユウジロウ・イシハラ感がネックなんだろうか……。

 れいこが組替えになることだし、あーさがいなくなる前に、95期の色男たちを並べてみてほしいなあ。
 れいこ・あーさ・まゆぽんを同じ舞台で観たい!!
 博多座はショー付きだから、全員が博多座なら夢の舞台を観られるか。きっと3人で1場面あるよね。
 ちゃぴ姫を取り合ってくれてもいい(笑)。

 2回目だから耐性が付いたのか、ちゃぴの人形ダンスと発狂芝居、初見ほどびびらなかった。「すごいの来るぞ」と構えて観ちゃったせいか、「あれ、こんなもん?」だったのは、もったいないことしたなわたし。気負い過ぎ。
 でもやっぱちゃぴうまいわー。かわいいわー。
 でもってやっぱグィネヴィアは感情移入しにくい役だわー。

 あとわたし、モブでキザってるジョーを見るのが好きです……ポッ。

 斗希矢 くんのやる気あるんだかないんだかのひょろっとしたモブ姿も眺めつつ。
 兵士たちがみんなキラキラしてて目が足りない。
 まだ作品語り終わってない……けど、千秋楽になっちゃった。

 『私立探偵ケイレブ・ハント』『Greatest HITS!』の盛況ぶりがこわい。
 マサツカ作品だから人気ナイはず、というのが公演はじまる前の見方だったのになあ。
 楽もマサツカだし、チケットあるだろと思ってたのに、まさかの立見まで完売だし。
 それと、帰宅してから知ったんだけど、
雪組 東京宝塚劇場公演『私立探偵ケイレブ・ハント』『Greatest HITS!』千秋楽 ライブ中継について
2016/11/07
以下の通り、雪組東京宝塚劇場公演千秋楽の模様をライブ中継致します。   
日時
2016年12月25日(日)15:30上映開始
※公演本編に続き、退団者挨拶、千秋楽挨拶まで中継をする予定です。

以下略

 東宝楽中継するのか!!

 『るろ剣』からはじまった楽中継、大作のみじゃなかったの?
 『るろ剣』で成功して、大作である『ME AND MY GIRL』『エリザベート』を中継することにした。トップ退団の『NOBUNAGA<信長>』『桜華に舞え』はもともとラストデイとして中継していたからともかく。
 通常公演は中継しないんだと思ってた。全公演するんだったら、『こうもり』もしたはず。

 大作でもない、タカラヅカオリジナル2本立て公演でも中継することにしたんだ! やってもいいと決断させるくらい、今の雪組の人気っつーか勢いがすごいってことか。

 なんでそうなのか、渦中にいる者にはピンとこない。ずっと雪担で、今も昔もスターさんたちの魅力や実力に大差はないと思うので……時代とタイミングか。

 ともあれ、『私立探偵ケイレブ・ハント』の中継はうれしい。

 『エリザベート』の中継を見て、「映像はダメだ、ナマで見ないと」と思い、中継に興味をなくした。
 でもそれは、『エリザベート』だったからだ。『エリザ』はそんな、平面的に見ていい作品じゃない。
 反対に、マサツカ作品は、映像で見たい。
 舞台でなくても構わないくらいには、板の上の情報量が少ないから。むしろ、演者の表情がアップで見られる方が情報量が多くなるだろう。
 広い舞台で主人公とヒロインがえんえん向かい合って話すだけ、とかなら、映像でふたりアップのみ、の方ががらーんとした舞台に集中力が切れ睡魔が襲う、なんてことがなくなっていいはず。

 いや、『ケイレブ・ハント』好きなのよ。ケイレブ@ちぎとイヴォンヌ@みゆちゃんが好き。だからふたりの芝居をじっくりスクリーンで堪能したい。


 さて、その好きな『ケイレブ・ハント』、そして大好きなケイレブとイヴォンヌ、ふたりだけの場面。

 ……だんだん、好きな感じじゃなくなってきた。

 ちぎくんの芝居が変わっちゃったのだわ……。

 マサツカ芝居はアドリブ禁止。規定会話で笑わせる芝居。
 そして、後半リピーターだらけになると、公演最初の方で取れていた笑いが取れなくなっている。
 笑わせるはずの場面で、笑いが起こらない。これは、演者にとってひどいプレッシャーなんだと思う。
 ちぎくんはどんどん、芝居を変えた。笑わせるために。

 ……これがわたし、苦手で。

 観に行くたびに、ちぎくんの芝居が大袈裟に、滑稽になっていくの。
 笑わせるための、滑稽さ。自然に結果的に滑稽に見えてしまう、ではなく、お笑い芸人のボケ的な、笑わせるためだけの滑稽さ。
 そして、ちぎくんの芝居が変わればみゆちゃんの芝居も変わる。ちぎくんがやりやすいように、彼女も大袈裟になっていく。

 初日辺りの、「ごくありきたりな恋人同士の会話」にある、「リアルな笑い」が好きだった。どっちも真面目に、ふつーに喋っているだけなのに、おかしい。それが、膝を打つ勢いで、好きだった。これぞマサツカ!って。

 ちぎくんの芝居がどう変わったかを、花担友人に説明したら、一発で納得してくれた。
「まとぶみたいになってた」
 まとぶさんも、真面目で熱い人だった。客席を沸かせたくて笑わせたくて、どんどん演技が過剰になり、音をたてるくらい見事に空回っていた。
 ……あのまとぶんを、思い出す。
 苦手だった。まとぶんのそういうところ。いや、本人のキャラとしては愛しかったけれど、作品的には無用だと思ってたから、そっちへ転がるとつらかった。

 ちぎくんもまとぶ系の人だけど、役柄的に悪い方向には転がらなかったのに。
 まさかマサツカ芝居でまとぶ化するとは……。
 難しいんだろうな、マサツカ芝居。

 いちばん顕著だったのが、サンタモニカのカフェ。
「でも、好きなのに」
「ありがとう、俺も好きだよ」
 のくだりね。
 初日でいちばん好きなところだったから、ここが日に日に崩れていくのが、残念で残念で。


 ところで、退団者が最後にお花を真っ二つに割るのは、雪組名物として定着するのかしら。
 えーちゃんがはじめて、その後の退団者が引き継いだ。
 「かっこいい娘役」だった、オトコマエなえーちゃんがやるぶんには良かったけど、今後すべての退団者が、お花を真っ二つにするのを見るのは、わたしはうれしくないなあ。
 袴姿で最後の大階段を降りて、組からと同期生から花を受け取り、ふたつを合わせて盾型にする。そして、最後の挨拶をする。その後の楽屋出でもそのお花を持って歩く。……というのは、タカラヅカの伝統。
 そのお花を真っ二つにするのはなあ、なんかチガウというか、結びつけられたキモチを裂かれるようで、美しく思えない。

 「絆、絆」は両手が必要、なのはわかるけど。
 お花はそのまま割らずに片手持ちするとか、退団者だけは両手を合わせたまま「絆、絆」するとか、してくんないかなあ。

 このまま雪組の伝統になったら嫌だな。わたしだけかもしんないけど。


 朝風くんの卒業が寂しい。
 雪組の大人のエロ男、ショーでその艶姿を眺めるのが好きだった。

 ……役の少ない芝居で、それでもちぎくんと絡みがあるのは救いか、千秋楽くらい思い入れのある芝居がナニかできるかと期待したけど、……マサツカ芝居だもんなああ、そんなもん、あるわけないよなああ。いつも通りさらっと終了……。
 『私立探偵ケイレブ・ハント』についてあれこれ。

 素朴な疑問なんだけど、ケイレブが命を懸ける理由、世の中的にアレはアリなの?

 「私立探偵」ケイレブ・ハント@ちぎは、「依頼されてもいない」事件を個人的に引っかかるから、と調べている。
 という段階でもう、矛盾している。
 せっかく私立探偵なんだから、「依頼された仕事」でいいじゃん。なんで探偵設定を無視するような話にするんだろう?

 ある夫婦が、ケイレブの事務所に娘アデル@あゆみちゃんの捜索を依頼しに来た。ケイレブは入れ違いに事務所を出ているので、この夫婦の対応はしていない。紹介者ナシの仕事は受けない方針なので、ジム@だいもんが話を聞くのみで、依頼は受けなかった。
 翌日になってから、夫婦の探している娘アデルが事故で亡くなった女優だとケイレブが気づく。娘の死をジムが夫婦へ伝えに行くと、彼らはすでに事故死したと刑事ホレイショー@翔くんに伝えられる。
 一方ケイレブはアデルの部屋へ行き、そこが荒らされていることを知る。アデルの友人ハリエット@あんりちゃんと話す。

 娘と両親がほぼ同時に事故死、荒らされた娘の部屋、娘が所属していた芸能プロダクションは、他の恐喝事件などでも名前が挙がっている曰く付き、そして駄目押しに、そのプロダクションはマフィアだとケイレブの戦友ナイジェル@がおりが教えてくれた。
 ここまできたら、アデルや両親がマフィアに殺されたことは見当が付く。

 それでもなお、ケイレブはプロダクションを調べようとする。
 繰り返すが、依頼人はいないので、ただの興味で。

 ケイレブは、アデルともその両親とも会ったことがない。両親とはすれ違っただけなので、「会った」うちにはカウントしなくていいだろう。
 赤の他人がマフィアに殺された。……というだけで、マフィアの本拠地へ乗り込んでいく。

 乗り込む理由は「ボロを出すかもしれないから」。
 ジムが「蛮勇だ」と怒っていたけれど、わたしは怒る以前に理由がわからない。ケイレブが「そこまで」しなくてはならない理由。

 乗り込んだ先でマクシミリアン@れいこに会い、恋人のイヴォンヌ@みゆちゃんがプロダクションの仕事を受けていたこともあり、ケイレブは私情により敵意剥き出しになり、マクシミリアンからはめでたく危険人物として認識される。

 そのために、ジムが襲われ、イヴォンヌも誘拐されかかる。

 イヴォンヌは探偵であるケイレブとの溝を感じ、「愛しているけれど、共に生きることの難しさ」を改めて思い悩む。それまでも齟齬を感じていただけに。
 イヴォンヌが止めても、ケイレブは危険へと飛び込んで行くのだ。

 ちょっと待った。
 やたらと「探偵だから」とイヴォンヌはこだわっているけれど。
 今回の件は探偵関係ないから。

 探偵の仕事じゃない。
 依頼人はいない。
 ケイレブがただの趣味でやっているだけだ。

 マクシミリアンに誘拐されたハリエットを救い出すために、ケイレブは無謀と知りつつ仲間たちと共に、パーティ会場へ乗り込んでいく。
 命を懸けて。泣く恋人を置いて。
 男には、行かねばならないときがある。


 えーと。
 だからそもそもなんで、命を懸けるの?

 会ったこともない赤の他人のために命を懸ける。
 恋人や仲間に迷惑をかけても、赤の他人の無念を晴らしたいと思う。
 一度会話しただけの女の子を助けるために、命を懸ける。
 恋人を泣かせても、別れることになっても、刑事に事の次第を伝えてあっても、「自分で」助けに行く。

 これって、万人が納得する理由?

 しかも、タイトルは『私立探偵ケイレブ・ハント』。
 タイトル無視っぷりもひどい。
 だって探偵である必要が、カケラもない。

 依頼人でもない、ただの赤の他人のために個人的感情のみで捜査するのだから、『パン屋ケイレブ・ハント』『課長ケイレブ・ハント』でも、なんでもいい。
 職業と関係ない。
 パン屋でも、「いつもパンを配達に行く撮影所で女優が事故死したって」「さっきパンを買いに来た夫婦が、娘を探してるって写真見せられた、死んだのはあの写真の子だ」……で、今とまったく同じ展開になる。
 役所勤めでも商社勤めでも、幼稚園の先生でもなんでいい。だって仕事とは無関係のところでやっていることだもの。

 「事件」とケイレブの関わり方がぽかーんでした。彼が事件に関わり、命まで懸ける理由がわからない。

 ほんと、素朴な疑問。

 探偵が探偵する物語に何故しなかったんだろう、『私立探偵ケイレブ・ハント』。

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