『フットルース』が愛しいのは、青春がキラキラしているから。

 失った、もう二度と帰らない「時」が、輝いているから。


 ラストのダンスパーティ。
 ここで主題歌リプライズ。
 プログラムに主題歌「Footloose」の歌詞が載っているけれど、それとは別。プログラム掲載歌詞は、オープニングのもので、登場人物たちがそれぞれ不満を歌い「逃げ出したい」と歌っている。
 それが、レン@キムとの出会い、変化・成長をもって、「I’m Free!」と叫ぶようになり、逃げ出すのではなく、ここで闘うことをおぼえる。
 そうやってたどり着いた主題歌だ。
 同じ「Footloose」という曲。でも、歌詞も役割も、まったくオープニングとはチガウ。

 不満や逃げ出すことを歌うのではなく、オシャレして、好きな人と踊ろう!と歌っている。

 肯定の歌に、なっている。

 素敵なパーティ。素晴らしい人生。
 自分でオシャレをして素敵になって、自分で横にいる大切な人の手を取るの。
 それが、しあわせなの。

 誰だって踊れるさ。
 誰だって、解き放たれるさ。

 本当の自分、本当の人生を、手に入れられるさ。

 肯定の歌を、キラキラ歌う若者たち。


 タキシードを着て背伸びした男の子たちが、愛おしい。

 高校生の男の子が……わたしみたいなおばさんから見たら、ほんとにただの子どもですよ……が、好きな女の子のために、背伸びして正装しているわけですよ。
 ウィラード@コマとか、自分で語ってるけど、父さんの一張羅を借りて、サイズ合わないのを無理矢理補正して着ているわけですよ。実際にコマくんがそんな衣装を着ている、のではなく、物語中の設定ではそういうことになっている。
 そんな風に、それぞれの男の子たちが、懸命に用意したわけでしょ、衣装。
 ダンスを禁止されていた町の子たちが、晴れ着を全員普段から持っているとも思えないし。

 女の子と違って、男の子は晴れ着を着ることに、そんなにわくわく感や楽しみは感じないよね? どう着飾ろうか、美しい僕に萌え~~、なんてことは、あまりないだろう。
 どちらかというと、「ドレスを着て、自分のためにオシャレしてくれるカノジョのために」自分もがんばってタイを締めて、ジャケットを着るんだと思うんですよ。
 好きな女の子と踊るために、カノジョに相応しい正装をする。

 その一生懸命さというか、一途さというか。
 ドキドキしながらタイを締め、大人の男を気取って、カノジョをエスコートする。
「お手をどうぞ」とやる。

 その緊張とときめきを思うだけで、泣けてくる。

 青春だ。
 くそお、青春じゃねえか!!


 ドレスを着て背伸びした女の子たちが、愛おしい。

 女の子たちにとって、「着飾って、カレと踊る」ってだけで、一大イベント。
 ドレス選びから当日の髪型、お化粧、アクセや小物選びまで、もースペクタクルな日々を過ごしたに違いない。
 仲のいい子同士で集まって、ああでもないこうでもない、テンション上がりすぎて口喧嘩になったり泣き出したり、集団心理でちょっとパニック状態になったりしつつも、必死で準備したに違いないっ。
 どのドレス、どのルージュ、考えているだけで、選んでいるだけで、幸福な時間。
 親友たちときゃあきゃあガールズトークを繰り返し、いつ果てるとも知らない時間を過ごす。

 たのしくて、きらめきに満ちていて。

 カレの前で、とびきりきれいで、特別なわたしでいたい。
 その想いだけで、夢中になって用意して。

 女の子たちの、オンナノコである姿が、愛しくてならない。
「きれいだよ」
 そう言ってもらいたい、そのためだけに努力する、そう期待してときめく。緊張した、ぎこちないエスコートに、慣れないヒールを履いてついて行く。

 そう、女の子たちはみんな、それまでヒール履いてないのよ。みんなスニーカーとかなの。
 この最後の場面のために、ヅカのお約束・ハイヒールを封印してあるわけですよ!!

 別に女の子たちはハイヒールにふらつく、ような演技はせず、素直に踊ってるんだけどね。

 スニーカーばかりだった女の子たちが、ロングドレスにヒールを履いて、タキシードの男の子たちの腕の中でくるくる踊るんですよ!

 青春だ。
 くそお、青春じゃねえか!!


 もうわたしなんかが持ちようのない、取り返しのつかない時間の中に、彼らはいるわけですよ!
 うらやましいよ!
 ちくしょー、若いっていいなっ。

 ラストシーン、泣けてしょーがないですよ。
 みんながきらきらきらきら、かわいくて。

 「青春」が愛しくて。

 みんなみんな、いい子たちだしね。


 アリエル@みみちゃんの妄想「HERO」場面にて、男子たちが「白馬の騎士」になって登場するじゃないですか。
 あそこでレンは別人入って「王子さまバージョン、キリッ!」になってるけど、他の子はけっこうそのままっていうか、ウィラードはドジっこだしライル@レオは不良のままだし、ボーモント高校男子のキャラのままやってるよね。

 あの「白馬の騎士」姿になった男の子たち。
 「ヒーロー」の男の子たちは、みんな「囚われのわたしを救い出して」くれるだろう。

 ドジっこのウィラードだって、不良のライルだって、テレながら踊っている大樹くんだって。
 みんなみんな、もしも女の子たちが危機に陥り「助けて!!」って言ったら、助けに来てくれるよ。
 こわがったりベソかいたりするかもしれないけど、一瞬腰引けたりもするかもしれないけど、それでも、絶対助けに来るよ。
 そういう子たちだよ。
 全員が。

 だからこの子たちは、全員が「ヒーロー」だ。

 好きな女の子のために、ヒーローになれる、ふつーの男の子たち。
 計算とか常識とかしがらみとか、大人が持つようなものに汚れてない。
 彼らは「少年」という奇跡。
 少年はいつだって、誰だって、少女のために「白馬の騎士」になる。


 みんなみんな素敵過ぎて、好き過ぎて、たまらない。
 失った時間が、決して戻らない時間が、キラキラまぶしくて。

 切ない。

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