えーとえーと。

 専務@ともちんは、どーしちゃったんでしょう、アレ……?

 宙組全ツ『銀ちゃんの恋』
 花組版では男役の番手は、銀ちゃん>ヤス>橘であり、専務は番手外の脇役だった。とはいえ、当時「この公演でいちばん株を上げたのは、王子かもしれない」と仲間内でささやかれていたように、専務@王子はいい役だった。

 だもんで、発表時に橘@みーちゃん、専務@ともちんという、宙組内での番手が逆転した配役になっていても、疑問はなかった。
 橘がみーちゃんだから、ともちんが落とされたとか、逆にみーちゃんがともちんを抜かしたとか、ポジション的なことはナニも考えなかった。
 わたしはともちんスキーでみーちゃんスキー。
 ふたりにいい役をやってほしい、いい役を演じるふたりが見たい。
 順番通りに橘@ともちんはアリだけど、そうするとみーちゃんの役がなくなる。みーちゃんより専務役に相応しい年配役者はいるわけだから、若いみーちゃんはマコトあたりの役になる? それはいくらなんでも役不足。
 みーちゃんに役を、と考えたら、橘@みー、専務@ともちんはすごくいいキャスティングだ。イシダうまいな! と思った。ともちは老け役もOKだし! 専務は地味にいい役だし!
 ともちに配慮するなら、専務をあそこまでおっさんにしないで、若めにすればいいだけだし。

 と、思って、わくわくしていたのよ。

 それが……。

 カラータイマーと、客席登場ソロに、びびった。

 えーとえーと。

 お、おいしい、のか、アレは……??

 いやもちろん、出番を、見せ場をもらっているんだからオイシイんだと思う。この公演での3番目ポジのスターだということを、内外に知らしめているのもわかる。

 しかし、その空気読めなさぶりっちゅーか、行き過ぎたおちゃらけぶりに、かなりびびった……。
 そうか、イシダだもんな。イシダならこれくらい、あり得るんだよな。
 でもなんか、専務という地味な役であるということ、これまでのイシダ芝居でもそんな扱いはされてこなかったことで、ともちは、大丈夫だと思っていたの。わたしが、勝手に。
 大丈夫、ってのは、ダーイシ菌に汚染されない、とか、そんな感覚。や、各方面に失礼な物言いだが、イシダせんせの悪趣味さとか下品さとかくだらなさを担う場面や台詞をやらされないで済む、せいぜい「デブノート」程度で勘弁してもらえると思っていただけに、ショッキングでした。
 現実としてありえないカラータイマー設定やセクハラ場面、「何故オマエが?!」なソロ、あらゆる意味で「イシダにヤラレた!」と肩を落としました(笑)。

 イシダせんせの悪趣味さとか下品さとかくだらなさはもお、つっこんでも時間の無駄なのであきらめてスルーするとしても。

 おちゃらけが過ぎていて、せっかくのスポンサーを殴るくだりが演出としてパワーダウンして見えたんだ、わたしには。

 橘がスポンサーを殴るところもなんか拍子抜けな感じに見えて「あれ、こんなにあっさりしてたっけ?」と思っていただけに、その直後おちゃらけ専務があとに続いても、さらにさらに、インパクトに欠けて見えて……。
 花組版では、橘と専務、どっちもオイシかったのに! 何故こんな?!

 イシダせんせが悪のりし過ぎているとしか思えん……しょぼん。

 だとしても、ともちんスキーとしては、ともちん単体を眺め、悠未ひろ、新境地開拓?! ということで、納得しまっつ。

 せっかくめがねっこなんだしねっ。二枚目風というより、老眼鏡っぽいけど(笑)。
 こんなアホアホな役、やったことなかったもんね。これも経験、芸幅を広げているんだよね。
 いきなり脱ぎ出すキャラなんだから、割り切ってソレも楽しまなきゃね。ともちんが舞台上で発作的に脱衣するのよー、きゃー(棒読み)。すごいしっかり作った胸板に、「専務、いくつの設定なん……?」ととまどうナリ。
 んで、せっかくカラータイマー鳴らすんだったら、もっとちゃんとキザっているところを見せて欲しかったわ。アホアホ設定だけ見せられて、かっこいい?キザりは寸止めって、なんの嫌がらせ……イシダめ……(笑)。

 
 秘書@ちさきちゃんは素敵でした、こんなに彼女をきれいだと思ったのははじめてだ(笑)。あの役は所作ができあがってないとダメだもんね。
 助監督@あもたま氏が、なんかやたら素敵でした……どうしよう、なんか彼好みだわ!! 出て来るたびにドキドキした!!
 トメさんの華のなさにびっくりし、こーゆー役なのかと思い返してみたり、ジミーがヲカマでもヘタレな男の子でもなく、ただの女のコでアゴが落ちたり、橘の子分たちにワクテカしてみたり。

 全ツだから仕方ないとはいえ、モニターがないことが残念でならない。アレ、あった方が絶対わかりやすくお客さんにウケるだろーに。

 イシダせんせとは致命的に気が合わないので、やっぱりこの作品も好きではないのだけれど、それでも泣けることは確か。
 ヤスの母@邦さんに泣かされ、小夏@ののすみに泣かされ、銀ちゃん@ゆーひさんに意外にも(意外言うな)泣かされた。

 イシダせんせ以外の演出家作品で、ゆーひくんだけを見つめるとしたら、きっときっと、すごく入り込んで楽しむことも出来るだろうなと思った。
 今は演出にあちこちノイズが多すぎて、センスが合わなさすぎて、入り込めない……入りかけるたびに冷水を掛けられる、の繰り返しだから(笑)。それでも泣けるんだけど。

 フィナーレがあるのはうれしいし、最後の銀ちゃんの電飾スーツも健在で、ライトが点く前のステージにあの電飾スーツの銀ちゃんがスタンバってる姿は、それだけで笑えた。

 んで、シャンシャンがあるんだ! ってことに、ひそかにツボった。
 そうだよな、フィナーレ付きで階段付き(笑)で大羽根付きなら、そりゃシャンシャンもあるよな。

 将棋の銀のコマに飾りを付けたシャンシャン……。
 アレ、携帯ストラップにして売ればいいのにー。
 宙組全国ツアー版『銀ちゃんの恋』

 銀ちゃん@ゆーひくん、ぶっちぎり態勢。

 経験者であるところのゆーひくん、そして小夏@すみかちゃんは強い。
 ヤス@みっちゃん、橘@みーちゃんが苦戦している分、このふたりが立ち上がっている。

 すみかに関しては本領発揮だろう(絶世の美女エマ@『TRAFALGAR』よりよっぽど・笑)と安心していたが、ゆーひくんの負けなさ、錆びなさはすごいなと。
 タカラヅカにそぐわないこの作品を、それでも「タカラヅカ」にするのはゆーひくんの仕事。そして彼は、力尽くで、輝いていた。
 それこそ大地に踏ん張って電飾を輝かせる通天閣張りに。

 ああまったく、なんて比重の高さだろう。あの広い肩にのっかっているものの大きさに、胸が熱くなりました。

 DC上演時も、この「なんでタカラヅカでやるのかわかんない」話を、ゆーひくんが力尽くで「タカラヅカ」にしていた。
 基本ファンしか観に来ない、お約束のわかったDCではなく、「タカラヅカって『ベルばら』やってるとこだよね?」程度の全国のヅカファン以外の人々に、「タカラヅカ」を届けなければならない。しかも、微妙にヅカっぽくなくなっているヤスと橘を両脇に従えて。

 その孤軍奮闘ぶりに、見えましたとも、背中に輝く「孤独の『孤』の字」が!!

 小夏ぢゃないけど、「見えるわよおおおっ」と号泣したくなりました(笑)。

 わたしはこの作品をヅカで観たいとは思わないし、全ツに持っていくことにはさらに懐疑的だし、贔屓に出て欲しくない作品だと思っているし、類は友を呼ぶのかわたしの周囲は大体同意見、ゆーひファンですらフクザツな反応を見せる、誰も喜んでいない興行。
 そんな興行の全責任をひっかぶって、男おーぞらゆーひが吠える。

 彼が支えるしか、ない。
 美しいキャラや場面やエピソードのない、昭和のドブ板通りのかほりのするこの作品。

 ここが「タカラヅカ」であることを、彼が示す。ドサ回りの芸人さんではなく、「タカラジェンヌ」という、美しいフェアリーであることを、彼が示す。

 ……芝居とか技術でいうならもちろん、みっちゃんがずば抜けてるんだけどねえ。歌声の安定、芝居の安定は半端ナイ。同じ台詞もみっちゃんが言うことではじめて「あ、そう言ってたんだ、ゆーひくんだと聞き取れなかった」なんてことがゴロゴロある(笑)。
 ただ、芝居がうまいことと、「タカラヅカ」的であることは、イコールではないので。
 あくまでもヅカファンであるわたしは、「どっか別の劇団の人みたいにうまい」みっちゃんの「ヤスという役はこうだよな的きれいじゃなくて地味な佇まい」は、わたしの求めるものではなかった、つーことで。みっちゃんが悪いわけではナイ。
 文句言いたいのは劇団にだ(笑)。
 わたしは『THE LAST PARTY』のアーネスト×スコットで萌えたクチなんですが。肉を喰らう野性的なみっちゃんにドキドキしたクチなんですが。……『銀恋』の焼肉のくだりはまーーったく萌えんわいっ。

 だがまあしかし。

 こんな状態なので、スター・ゆーひさんを眺める分にはイイ。

 意識して、自分で発光しているおーぞらゆーひ。
 覚悟のある男ってのかっこいいやね。

 トンデモ衣装の似合いっぷり、黒燕尾から鼻ティッシュまでこなしてしまうビジュアル王、コスプレまかせろの異世界キャラクタ。
 クールな持ち味、大人な姿で吠えまくる姿のギャップ。

 彼の「単体」っぷりが際立っている。
 てゆーか……誰とも「芝居」してないよーな……?

 最近のゆーひくんは芝居もわりと出来る人になってきた……というか、相変わらず出来ないことはまったく出来ないけれど、出来ることでそれらをフォローできるよーになったというか、「出来ない」ことがマイナスにならない人になってきた、気がしていた。
 もともと芝居のうまい人ではなかったし、出来ない演技がいろいろとある人だった……が、最近は「けっこうイイんぢゃね?」って感じだったの、わりと。(『TRAFALGAR』はどうかと思ったが・笑)

 そんなゆーひくんが、今まで必死に足下見て「芝居」しようとやってきたことを、どーんっとちゃぶ台返ししたように見えた。
 出来る出来ない以前に、「おーぞらゆーひである」という原点に立ち返ったような。
 出来ない、それがどーした、真ん中はオレだ、てな。

 おかげで小夏ともヤスとも芝居が合っていないよーに見えるんだが(笑)、それすら銀ちゃんならアリでしょう。と思う。
 銀ちゃん、と書いて、「トップスター」と読んでくれ。本気と書いてマジと読む!のノリで。

 その単体ぶっちぎり上等!ぶりに、わくわくして、切なくなった。

 ああ、ほんとにこの人は、銀ちゃんなんだ。
 だから銀ちゃんって人は、主役であり、かっこいいんだ。
 (だから、銀ちゃんと書いてトップスターと読んでくれ)

 ゆーひくんはショースターではない。
 彼の持つ陰の魅力はキラキラでもギラギラでもない。歌唱力やダンス力にも欠ける。
 かといって、芝居巧者だとも、やっぱり思えない。ハマる役とそうでない役があり、得意なタイプが少なすぎる。
 それでもゆーひくんは、ショーより芝居で魅力を発揮すると思うから、芝居の人なのか。
 いや、そういうカテゴライズではなく、「タカラヅカ」という舞台で輝きを発する人なんだ。

 てなことを、痛感した。

 
 どんな作品でも、とにかくそこを「タカラヅカ」にし、自分の魅力を発揮する。
 ゆーひくんに、改めて拍手を。

 だがしかし。
 デュエットダンスの謎の歌は、どうかと思うの……。
 何語で歌ってるのかもわかんなかったし(笑)、どこから聞こえてくるのかも、わからなかった。
 あまりに不可思議な音がしているので、舞台上の美しい人が発しているとは思えなかったの。

 ゆーひに歌わせんでええやん、アレ……(笑)。
 宙組全国ツアー『銀ちゃんの恋』、梅芸初日の2回目を観劇。
 いつも初日初回を観るのだけど、今回もまたチケット持ってなくて。サバキ待ちしよーと思っているところに「夜の回ならチケットあるよ」と声を掛けてもらったので、初回はあきらめてそっちを取った。

 わたしはイシダせんせとツボが違いまくるため、彼の作品は苦手。年を重ねるごとに苦手になってきている。イシダはダメ、わたし的に無理! という意識はあるものの、そこはそれとしてもうあきらめていて、それでも『銀ちゃんの恋』はイシダ作品にしてはマシな方、耐えられないほどの嫌悪感はナイので、そのへんは安心して観劇した。
 前回の花組版を観ているので、作品のどこが嫌でどこが楽しいかわかっている。嫌なところは考えないように、楽しいところだけを楽しみにして。
 なにしろ出演者は豪華。トップコンビと3番手と4番手が勢揃いし、きれいどころの中堅・若手も投入されている。出演者数だってはるかに多いし、フィナーレも付くらしい。
 グレードアップした『銀ちゃんの恋』が観られるのだと。

 そして、実際に観劇して。
 首を、かしげた。

 あんまし、お得感が、ナイ……。

 全国ツアーだからセットや演出に制限があるにしろ、このパワーダウンな印象はいったい?
 もちろんそれは、人間の生理として、「最初に観たモノが名作」てのが関係しているだろう。わたしがナマで『銀ちゃんの恋』体験をしたのが花組DC公演なので、わたしにとっての「2度目の邂逅」でしかない宙組版は目新しさがない分、物足りなく映る可能性はある。
 また、わたしが花組ファンでそれゆえの思い入れがあるため、つーのはさらに大いにある。

 それらの事情を自覚してなお。
 どーしたこったい、と思う。

 えーと。
 いちばんの原因は、ヤス@みっちゃんだと思う。

 キャスティングが発表になったとき、実はがっかりしたんだ。
 みっちゃんに不足があるわけじゃない。逆、みっちゃんなら、うまく出来ることがわかりきっているから。観る前から想像できる、すばらしいヤスになる。
 でもわたしは、そんな「わかっている」ヤスを見たいわけじゃなかった。
 また、みっちゃんにこれ以上変な役をして欲しくなかった。ヤスはもちろんいい役なんだけど、役者冥利に尽きる役だけど、もう何作も美形みっちゃんを見ていないので、ここでまたヒゲの不細工男を見たくなかったの。
 ウィリアム@『TRAFALGAR』は美形で色男だったと思ってる。でも、いわゆる「タカラヅカ」の路線スターの役じゃない。別格スターでも専科のおじさまでもいい役だ。ふつーの若いハンサム役を、みっちゃんはもう何作もまともにやっていない。(カイ@『シャングリラ』もわたし的にはルノーやヤスと同等の非ビジュアル役です・笑)
 普段から「若いハンサム」ばかりやっているキラキラ美形様が、不細工おっさんであるヤスを演じるのはいいんだ。意外性もあるし、本人の成長にもつながるし。
 でもみっちゃんはもうさんざん「芸達者な人しかできない不細工おっさん」をやってきたじゃん! 意外性も芸幅を広げることもない、今までの延長でしかない、そんなキャスティングはつまんないー!
 わたしに美形のみっちゃんを見せろ~~!!

 みっちゃんがヤスなのは、ハマリ過ぎ、うますぎて嫌だな、つまんないなと思っていた。見もしないで(笑)。
 そう、見もしないで。
 実際に、見てみたら。
 
 たしかに、うまい。
 もちろん、うまい。
 問題なく、うまい。

 だけど。
 だけど舞台って、芝居って、それだけぢゃないんだ。

 ヤスから光が感じられない。
 うまいけれど、小さく手堅くまとまっている。
 ヤスが薄い、小さい、地味……脇役風味。

 えええ。ほくしょーさんが、地味? 今よりはるかにビジュアルがアレだった新公学年時代だって、地味ではなかったよ、ハマコが地味とは程遠いように、どこにいても目立つ人だった。
 きれいじゃなくても(ごめん)、目立つ人だったよ。存在感のある人だったよ。

 『銀ちゃんの恋』自体がタカラヅカらしくない作品なんだが、そのなかでもヤスはとびきりタカラヅカらしくない。この役を、役のまんま、役割のまんま演じてしまっては、ダメなんだ。タカラヅカから遠ざかってしまう。
 とことんタカラヅカらしくない役だからこそ、とびきりタカラヅカな輝きで演じないと、沈んでしまう。役の持つ重さや濁った色に負けてしまう。

 みっちゃんは、うまい人だ。職人的技術のある人だ。
 だからこそ、うまくヤスを演じてしまい、「タカラヅカ・スター」として沈み込んでしまった。

 そしてここが「タカラヅカ」である以上、2番手役が沈んでいると作品がくすむ。力を失う。

 みっちゃんがヤスをうまく演じることなんか想定内、わかりきっていてしょぼん、だったのに、うまいゆえに期待に満たないモノになってしまうとは、夢にも思ってなかった。
 期待が大きすぎた、とはまたチガウと思うの。うまさと輝きの問題? つかこれって、演出家が考慮すべき部分じゃね?

 
 みっちゃんのヤスに首をかしげ。
 それと、橘@みーちゃんにも、なんつーか、こまったなあ、という感想で。

 キャスティング発表時、みっちゃんヤスにはしょぼんだったけど、純粋にみーちゃん橘にはテンション上がったですよ。
 みーちゃんが橘!! あの愉快な色男! 美少年に迫るシーンはあるし、泣かせる見せ場はあるし、オイシイ役。
 出演者の立ち位置的にともちんが橘かなと勝手に思っていたので意外だったけど、こーゆー意外さは歓迎だ。常々「みーちゃんにもっと出番を! 見せ場を!」と思っているクチなので、素直にわくわくしてました。

 んで実際、橘@みーちゃんは色男です。竜馬コスも素敵、単体で眺める分にはそりゃー眼福なイケメンっす。
 ただ。
 「銀ちゃん」という強烈なキャラクタに対峙するには……ふつー過ぎだ……。

 色男であることはもちろん必要、つか最低条件だけど、それだけじゃダメなんだ、橘って。
 技術とは別の部分でぺかーっと輝くナニか、人騒がせってゆーか迷惑だけど目を離せない、ある意味銀ちゃんに似通った部分が必要なんだ。

 そっかあ、そーいやみーちゃんはそっち系が苦手分野だったね……。ナニやってもうまい人だから、安心しきってた。

 とまあ、みっちゃんとみーちゃん、ふたりとも「うまい」けど、「うまい」ゆえに、『銀ちゃんの恋』という特殊な作品では魅力と才能を正しく発揮できていない印象。

 2番手役と3番手役が沈んでいると、そりゃ作品も沈むわ……。
 せっかくこんなに豪華なキャストが揃っているのに、正しく魅力発揮してないんぢゃ、お得感ナイわ……。

 と、わたしは勝手に肩を落としました。あああもったいないー。(いやそもそもこの題材を「タカラヅカ」で上演すること自体が……と、花組版時代からのループになるので略)

 でもまあそれはソレとして!
 楽しむ!ことは出来るし、実際楽しい部分も十分あるのだから、次はその話。
 蘭寿とむコンサート『“R”ising!!』。 
 とにかく濃密な「タカラヅカ・ショー」で。
 バウという空間の贅沢さを堪能した。

 バウでコンサートやることもそりゃーあるけど、今回いつもよりお金かかってたみたいで(笑)。や、現実にどうなのかは知らないけど、そう見えた。
 だからセットも衣装も照明も外部振付家起用も含め、通常のバウ+東上公演より豪華に仕上がっているなーと。
 バウだけにこれほどお金を掛けられるはずもなく、そーすると人見で平日3日間の興行を付けるとそんだけ利潤率がいいのかとうがってみたり(笑)。
 そしてわたしが観たのはあくまでもバウホールという小さなハコなので、同じコトをあの人見という大きなハコでやって、同じように感じられるのかは謎。「いつもより豪華」に感じたセットだって、人見に置いたらちっぽけかもなー。

 また、場所がバウだから、観客はおとなしく着席したまま、うちわもライトもなく通常のショーを観る感覚でいた。
 が、これが人見になれば、立ち上がって踊るのもうちわもライトもアリぢゃね? と、思った。だって舞台、遠いもん。
 着席したまま得られる舞台との一体感は、バウと人見ではまったくチガウと思う。
 全部が全部スタンディングで騒げってんじゃなく、手振りとJ-POPあたりは無礼講にしてもいいんぢゃないかなー、人見では。
 と、勝手に思った。
 そして、そんな人見に行ってみたいなと、勝手に思った(笑)。

 で、この小さなバウホールという空間で。

 蘭寿とむというスターに、このバウというハコは小さすぎる。
 近くで観られてすっごくお得だったけど、らんとむのスケールだとバウは狭いわ。
 不景気の風吹き渡る世間とヅカの集客だの興行成績だのの話ではなくて、彼個人の「スター」としての大きさ。
 バウの空気を掌握できることはわかっているので、もっと大きなハコでどのように彼が「スター」として君臨するのか興味がある。や、いずれ彼は大劇場の真ん中に立つ人だろうけどな。
 バウと人見で、彼のスター力に酔ってみたいなあ、と心から思うよ。両方行ける人がうらやましい……。いやその、わたしにはお金がないので行けないのです……(笑)。贔屓組公演に通い倒した直後、贔屓組東宝公演前に金銭に余裕があるはずなく……。みんなびんぼーが悪いんや。

 バウの濃密さ、には人数も関係していると思う。
 19人って、多すぎね?!

 今ざーっと最近のコンサート(オサコン、タカコン、かしコン、トドコン、あさコン)を確かめたんだけど、こんなすごい人数のコンサート、他にナイよ?(笑)
 大抵13人(主演と共演者12人。タカコンは主演者が2人勘定なので合計14人)だ。

 通常の1.5倍の人数投入。
 しかも、バウ。
 そりゃ濃いわ。お得だわ。

 そう思うと、梅芸メインホール+人見を13人で構築したオサコンはすげえな……。他の人たちは大きくてもドラマシティ+人見だもの。

 出演者人数が多い分、画面に奥行きがあり、派手になっている。
 んで、人数が多いからといって、らんとむ以外がただの背景に終わる、なんてことはない。演出家的にも、この人数なら十分に掌握できるんだろう、みんなそれぞれ活躍している。
 芝居なら2時間ひとつの話しかないから、主要人物は誰と誰、それ以外は脇、と出番も立ち位置も決められてしまうけれど、2時間ショーだから。場面場面で別物語だから。
 場面ごとにヒロインは別の人だし、下級生たちの役割も変わるし。

 らんとむだけでなく、出演者みんなたくさんの出番と見せ場があり、ベクトルがひとつに向いた濃密な舞台だ、キャストのファンならリピートして楽しめるはず。いいなあ、贔屓もこーゆー公演に出て欲しい……。

 と考え、思い出した。
 そーいやわたし、その昔、やっぱりこーゆー公演に脇として出ている現在のご贔屓にすこーんとオチたんだわ。あんときコンサートがなかったらオチてないんだわ……。大阪でリピートして、東京・人見まで追っかけてリピートしたわ……。オチているという自覚もないまま、アホみたいに通っては、ここでまっつまっつ書いてた。
 そういう「力」があるんだよな。「スター」のコンサートには。他の出演者までガンガンに輝かせる。

 水しぇんをはじめて認識したのは『MIKI in BUDOKAN』だし、みーちゃんをはじめて認識したのも『W-WING-』だったし。
 フォーリンラブまでいかなくても、注目するきっかけになりやすい。

 つーことで、らんとむさんだけでなく、他キャストに興味がある人もオススメですよ。

 
 十ちー大がおいしいのは言うまでもなく。
 
 いりすくんは色悪としての道も歩きはじめている人なので、色っぽいダークな二枚目も演じているし、いつものお笑いキャラも演じてます。今までも『BOXMAN』『ステラマリス』新公他で見せつけてくれていたけれど、この人が、ぼそり、と口を開くとなんでこんなにおかしいんだろう(笑)。

 ちーちゃんはなにしろわたし、顔が好きなので、彼が盛大にイッちゃったカオで踊ってくれて、幸せです。佐助@『殉情』以降、わたしはどうも彼がキモチワルイようで、ますます好きです。
 矛盾してるよーだけど、人間そーゆーことってあるでしょ? ただキレイきれいとか完璧とかじゃ、遠くから「いいわねー」って眺めてるだけだけど、なんか欠点とかムカつくとことか見つけちゃうと、ばぴゅーんとキモチが近くなるっていうか。
 それがちーちゃんに関しては「キモチワルイ」ってことで、彼があの長い顔で自己愛に脳内麻薬出ている感じでちょっと残念な下半身を強調して踊っていたりすると、ムラムラくるんですよ。うわーやっば好きだやべー!てな。

 大ちゃんが女装する、ってのは前から聞いていたし、いろいろと技術がアレな大ちゃんには無理に踊ったり歌わせたりせず、美貌を利用して飾っておくのはいいアイディアだ、と仲間内でもささやかれていたわけですが。
 女装って、アレかよ?!(笑)
 てっきり、マジな女装だと思った、とびきり美形の大ちゃんだから、本気で美女でヒロインやるのかと。
 お笑い女装ばかりでした……(笑)。
 女装(盛り髪バッチリ!)大ちゃんと、ちーちゃん(男。アイドル・笑)のダンスなんか、どーしてくれようかとゆー、腹筋への挑戦。
 んで、男役としても大ちゃんはほら、すごい勢いで踊り、キザってくれる人なので。

 盛りだくさんで濃密な『“R”ising!!』、終了後のわたしの心と瞼に残ったモノは、らんとむさんの恥ずかしいソングでうっかり泣いちゃったことと、大ちゃんのどや顔と、いちくんの股間でした。

 大ちゃんが目の前のことがとても多かったの、座席的に。で、彼が鼻の穴ふくらませてどや顔で踊るのよ。目が離せないのよ。大ちゃんに釘付けになっているとき、ふと気配感じて真横見たら蘭寿さんがいて、あわててハイタッチしてもらった……ああああぶないっ、大ちゃんガン見しててらんとむ客席降り気付いてなかったっっ。

 んで、やはり座席的に女装いちくん、「パイナップルのよーなゴージャスビューティー」ないちくんが、目の前に来ることが多くて。座席の高さの関係で、なんか目の前が彼のハイレグの股間で。
 い、いろいろと衝撃的でした……(笑)。
(ちなみに、今こあらったさんには地味にいちくんブームが来ています)
 すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。

 と、痛感しました。

 蘭寿とむコンサート『“R”ising!!』初日観劇。

 目に痛いよーなギラギラビラビラの衣装で、腰振って回して「クンバンチェロ」を熱唱すべきだ。
 それができてこそ、タカラヅカスタァだ。

 ……いやもお、すごかったです。
 濃ゆいのなんのって。
 なにをどうやっても濃ゆいわ。
 「クンバンチェロ」熱唱なんて、その1部。
 1部だからこそ、ある意味「全体」を表している。

 ラテン衣装着て厚化粧の日本人が「クンバンチェロ」歌って、たぶん今ここだけ切り取って一般人に見せたらドン引きすると思う。
 なんかトンデモナイ、ものすごい世界が展開されていることがわかる。

 でも、そのトンデモナイ、ものすごいモノが、「タカラヅカ」で。

 蘭寿とむは、まぎれもなく「タカラヅカ」のスターだ。

 
 んで、クンバンチェロ。
 これってものすごく、「スター力」を試されると思うのね。
 男役が出来上がっていない若者がやると寒いだけだし、技術があっても衣装や曲に飲まれる人がやると薄くなる。
 色気全開に客席釣りまくってアハン顔して、漢くささ爆発オラオラしまくって、客席を恥ずかしさで身もだえさせてくれないと。恥ずかしいけどかっこいい、と思わせてくれないと。

 たぶん「タカラヅカ」だけに存在する、まちがった「ラテン男」(笑)。ファンタジー、虚構の中の色男。
 現実にこんな男いねーよ、に、リアルに肉付けすることが、タカラヅカ・スターの力!

 だから、すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。
 そーやって培ってきた「スター力」を示してみるといい。スベった人は修行し直し、ってことで(笑)。
 や、いろんなタイプのスターがいていいと思っているので、「クンバンチェロ」でスベって悲しい人、も個性のひとつだろーけど、個性とは別に基本スキルとしてクンバンチェロぐらいこなしてみせろ、とね(笑)。

 ちなみに、すべての娘役スターは、「私のヴァンパイア」を歌うべきだ、と思っている。
 初々しくかわいらしく歌わなければならないこの「かわいこちゃん曲」を、どんだけブリブリに……ぶりっこしてなおかつ女子の反感を買わず共感を生むキャラクタを確立できるか! を競うべきだ、と思っている(笑)。

 
 まあそんな、「スター登竜門」の話はともかく。
 『“R”ising!!』。
 
 えー、内容は、「蘭寿さんと一緒」の、バラエティ・ショー。
 らんとむを地球の中心に置いた、2幕構成のタカラヅカショーっす。

 ラテンもロックもJ-POPも懐メロも耽美(笑)もお笑いも、とにかく全部詰め込んである。全部やってのけている。
 そして、場面ごとにヒロインがチガウ。
 性転換も含め(笑)、いろんな女の子とらんとむが組んで踊っている。

 歌詞のものすごさ、台詞のものすごさもフジイくんクオリティなのかな。えーと、らんとむって松潤よりかわいいのか福山よりかっこいいのか、そうなのか。外タレと比べられても苦笑いだが、現役国内スターを列挙されると同じ地平にいるだけに思考が止まるというか。でもってダンシング・フェアリーなのか……フェアリー……らんとむもふぇありー……た、たしかにそうなんだけど……ふぇありー……。

 客席降りアリ、客席登場アリ、前見たり後ろ見たり忙しい。
 通路際美味しい。

 すずさんとかちゃの女装はマジ、十ちー大の女装はネタ……そして、いちくんの女装は……どっち?!
 ネタなのかマジなのかわかんなくて、口ぽかんと開いてしまったナリ……。

 フジイくんなので、見たことある場面、聴いたことある曲のオンパレード。
 チェンジBOXの代わりが魔法使いのまいらちゃんよねとか(いやその『シンデレラ』パロなのはわかるが)、しいちゃんが十でベニーが美月くんなのねとか(ペニーより有能そうなあたり……笑)、女の子の衣装も同じかいとか。挫折(死)→再生はフジイくんのお約束だとわかっちゃいるが、しかし、あの死に方は……思わず「ソコっ?!」と内心叫んじゃったよ。殺された彼も実際「俺かよ?!」と叫んでんぢゃないかと……。

 客席でうちわを振ったりスタンディングで踊ったりはなかったけれど、手振りはアリですよ。T・O・M・Rって、たぶん明日以降は本編内でファンも手振りするんだろう……よかった、初日で。
 や、初日狙って行ったのは、それ以降だとリピーターの間に入って浮くことになるのがわかりきっていたためです、はい。みんなが踊ってるときに、「はじめて見たからわかんない」と指くわえるのが嫌で(笑)。年寄り故、順応性低くて咄嗟に見よう見まねで混じれない(笑)。

 
 それにしても、オープニングがいろいろと恥ずかしくて。
 本人の名前連呼曲は恥ずかしいんですが、それにしてもらんとむ氏が歌う「ザ・青春ソング」が、恥ずかしすぎる。

 ベタなんですよ。歌詞がそのまんますぎる。ええ、本人が作詞作曲してるんですよ……。
 自分のことを歌っているんだって、飾らない正直な言葉なんだって、真のファンはそーゆーモノを聴きたいのかもしれないけれど、ヨゴレたファンハートしか持たないわたしは、客席でそのこっぱずかしさに身もだえしました。
 この歌、アンソニーがナンシーへ、「俺たちの愛の記念日」に歌ってイイ歌だよね、ってゆーかむしろそのものズバリだよね、フジイくんとスズキケイとらんとむさんの夢のコラボ作品だよね? ってくらい、恥ずかしかった。(アンソニーとスズキケイの恥ずかしさについては『摩天楼狂詩曲』感想で語ったので略)

 最初からこんな恥ずかしいモノ見せつけられて、どうしよう困ったな、と。
 「クンバンチェロ」の恥ずかしさはイイんですよ、あれは「タカラヅカ」の恥ずかしさだから。
 しかしこれは……いやこーゆー恥ずかしい歌を臆面もなく披露して「いい話」にしちゃうとこも、ある意味すっごく「タカラヅカ」らしい恥ずかしさだが……。

 と、とまどっていた、蘭寿さんのオリジナル曲。

 ああらびっくり、フィナーレでは泣けた。

 恥ずかしいの。
 ベタでストレートで「歯に衣着せろよ」な歌なのに、オープニングで聴いて「とほほ」だったのに、同じ歌なのに、コンサートの最後に聴くと、泣けるの。
 じんとするの。
 胸にアツいものがこみ上げるの。

 これぞタカラヅカ。これぞ蘭寿とむ。

 外の世界の常識とか目線とかをぶっとばし、異世界を構築する。その場所そのときだけ、別の世界にしてしまう。
 外から来たばかりだったわたしは、オープニングでは「うわっ、恥ずかし(笑)」と思った。それが2時間、彼の創る世界に浸っていると、彼が創るモノだけがすべてになる。外のことなんか忘れる。

 そして、彼の言葉に酔う。
 ベタで、ストレートで、恥ずかしい……飾らない愛と感謝の心に、酔う。

 らんとむ、かっけー。
 『麗しのサブリナ』千秋楽、やたらラヴラヴだったのは、2組。

 ライナスとデイヴィッドと、ウィリスとマカードル。

 秘書コンビがバカップル化しているのはいい。演じているのがまっつだから、バカップルぶりがカユいんだけど、まっついちかは定番コンビだしまっつ組替えだし、なんつっても男女カップルだし。

 男と女がラヴラヴいちゃいちゃしているのはふつーなのでいいんだけど、問題は、もうひと組の方。

 兄と弟で、ナニをいちゃついてますか!!(笑)

 デイヴィッド@壮くんの愛されキャラぶりが、ハンパない。
 愛されていることにカケラの疑問もなく、ライナスにーちゃん@まとぶに甘えきっている。

「助けてくれるよね?」(小首かしげ・上目遣い)ってナニ?! どこの魔性キャラ?!(笑)

 対するライナスが「助けてやらない」とそっぽ向くのは、もちろんわざと。
「頼むよ兄貴。ねえ、兄貴~~(はぁと)」
 と、弟にかわいくおねだりさせるため。

 デイヴィッドのかわいさに負けて、笑いながら「助けてやるよ」とライナスが返すのがお約束。
 お約束なんだけど、千秋楽はほんっとに壮くんのかわいさがハンパなくて、まとぶんの吹き出しぶりも素で。

 初日にあんなに大人でかっこよかったライナスは、演じているのがまとぶんなので、回を重ねるごとに熱を帯びて若返っていき、千秋楽間際になるとかなり変な人になっていた。
 千秋楽はお遊びOKだから台詞が増えたり違ったりしていてもなんとも思わないが、千秋楽前ですでに、勝手に台詞がんがん増やしてるし。土曜日の段階で、増えた台詞14個までは数えたよ。途中でわかんなくなったの、あまりに多すぎて(笑)。
 いちいち相手に相槌打つのよ、「うん」って。本来は相手がひとりで喋っている台詞の合間にいちいち「うん」って入れる。目線と共に「ん?」って返したり。台詞の最後に「うん」って反復や確認の意味のうなずきを付けたり。あとは台詞に付随するツッコミをぼそりと入れたり。
 初日近辺はなかったですよ、ふつーに文章で喋ってました、文章の間や最後に「うん」はなかった。ツッコミもなかった。
 「ふつーの日でコレか(溜息)」な状態だったライナスさん、もちろん楽はさらに変な人で。

 人格が、一定していない。

 その場その場で、感情で突っ走って、なにがなんだか(笑)。

 その一環で、弟ともラヴラヴ。
 ライナスは弟をだましているわけで、あの場面であそこまで罪なくラヴラヴなのはおかしいんだけど、かわいいから、無問題。

 かわいいは正しい、かわいいは正義。

 おねだりする壮くんが、身もだえするほどかわいい。

 そんな壮くんを、たのしそーに見ているまとぶんがかわいい。
 かわいいえりたんが見たくて、それで余計にえりたんをいじってるんだよね? えりたんもそれがわかってて応えてるんだよね?
 ナニそのプレイ!

 おまえら、いちゃつきすぎだーー!!

 でもって、あのかわいいかわいい壮くん、実はまとぶんより実年齢は上だよねええ。年上のくせに、背も高いくせに、弟キャラであんなにあんなにかわいくおねだりしやがってー! くそー、たぎるーー!!(ジェンヌはフェアリーです、年齢なんてありません)

 んで、極め付けが「大好き(はぁと)」ですよ。
 ふたりのいちゃいちゃ場面の最後、暗転のどさくさにデイヴィッドがライナスにーちゃんに言うの。

 ちょっ……!

 30男が30男に言うなーーっ。語尾にハート付けんなーーっ。

 んで、デイヴィッドの「大好き」は罪がないの。アレは天使ってゆーか異次元生命体ソウカズホってナマモノのしていることだから。
 それに対する生身の人間、ライナスにーちゃん、まとぶさんが大変なの。
 告白されて、あわてて自分も返すの、「大好きだよ」って。でもこの告白返しがねー、がんばって、色気出してんの。

 なんつーか、「こう出られたから、負けるもんかとこう返した」というか……壮くんの「大好き」がのほほーんとしている分、まとぶんの「大好きだよ」は「がんばってる感」があるってゆーか。のほほーんと本能で返した風ではない。
 だからまとぶんはさらに「はは、兄弟愛」と付け加える。「大好き」だけでは太刀打ちできなかったのね、壮くんの天然さに。

 壮くんがトンデモナイ生き物で、年々その才能を開花しているのは周知のことだと思うが、彼ひとりではここまで魅力を発揮できていないだろう。
 壮くんの相棒が、まともなまとぶさんであること。それが相乗効果になってるんだよなあ。

 てことで、まとぶんのまともさと不器用さはイイですな。
 壮くんみたいな感覚派、理屈で説明できない世界で生きる人には、相棒はふつーの人がいいんですよ、ホームズとワトソンみたいなもんです。

 そして、天然さんに振り回されるふつーの人、てのは萌えシチュのひとつなわけで、だからこそ世の探偵モノは天才と常識人の組み合わせなわけで。

 壮くんとまとぶんって、いいよな。

 いつもまとぶんが可哀想な感じなのがまた、たまらんのです。
 トップスターがまとぶんで、2番手が壮くんだから、まとぶんが勝利したり恋愛成就したりして、壮くんは負けたり失恋したりする役回りなんだけど、それでもなんかいつも、まとぶんの方が割り食ってる感じが、萌えなのです。
 まとぶんって、可哀想な方が萌えるよなー。ふふふ。

 まとぶんの張り切りすぎて空回りしている感じ、熱演すぎて変な人になってるあたり、いいよなー。
 その横で壮くんがあっけらかーんと、のほほーんとしている感じもまた、いいよなー。

 そんでもって、このいちゃいちゃ兄弟。
 30男ふたりで「大好き(はぁと)」と言い合ったりしている、恥ずかしい兄弟。

 ああそれなのに。

 色気皆無なのは何故。

 ふつートップと2番手がこんだけいちゃいちゃしていたら、耽美とか淫靡とかそっち系の萌えにつながるもんだよ、おさあさとかちかゆみとかそーやって人気獲得していったじゃん。

 なのにまとえりって、どこまでいっても健全……色気ねえぇぇぇ。
 壮くんが異次元すぎるのかなー(笑)。まとぶさんは、相手次第でいい仕事すると思うのに(ヲイ)。

 いちゃいちゃラヴラヴ兄弟。
 作品的に正しいかどうかは置いておいて、千秋楽のふたりのバカップルっぷりは、かわいかったっす。
 『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』千秋楽。

 まっつの、花組最後の大劇場公演。
 終演後に、まっつの挨拶があった。

 まず、幕前のゼロ番に立つまつださん、という事態にも相当混乱(笑)。
 まっつがあんな位置に、マイクの前に立ってる!! うわナニあれ、新公主演挨拶以来の光景?!

 まっつの新公主演は観ている。この劇場で。ちゃんと、この目で。
 まっつは似合わない「キムタクをイメージした」ヘンなカツラ姿で、新公初主演挨拶をした……その姿が、不意に二重写しになった。
 飄々としているっていうか、泣きもせずにふつーに挨拶した、初主演者。大抵の子はいっぱいいっぱいで、泣き出しながら挨拶するのに……。

 今まさか、そんな姿を(しかもよりによって『天使の季節』か、『La Esperanza』ぢゃなく!!)思い出すとは自分でも思ってなくて、うろたえた。

 まっつの組替え挨拶は、「推敲した文章を、舞台人として完璧に読み上げた」ものだった。

 組替えを知った驚き、そこから前向きに受け止め、未来を見ていることを伝え、花組との別れを惜しみつつも今を精一杯生きる。
 家で練習したんかいな、という、抑揚や間まで考えられた、喋りっぷりだった。

 そこに、彼のこだわりと、プライドを見た。
 
 組替え挨拶定型文(今の組への感謝をのべ、その経験を糧に新しい組でもがんばる、*組の**をもよろしくお願いします的なヤツ)だけではなく、そこに組替えという、人事に関する感想を述べた。
 この組替えを、どう捉えているか。……別に言わなくてもいいのに(笑)、わざわざ言った。しかも、芝居っ気入れて、さも事前練習してきました的に。

 どんだけ、言いたかったんだ。

 重要なことだから、ちゃんと伝えたかったんだな。それで、伝えるために、精一杯努力してくれたんだな。

 大丈夫だよ、って。

 まっつが伝えたかったことって、これだよね?
 「花組の未涼亜希」が花組でなくなるなんて、夢にも思ってなかった。花組から卒業していくと思っていた。それが、こんな形で去ることになって。
 しかも、行った先ではどうなるかわからない。番手のある人たちのわっかりやすい栄転ではなく、同期トップを支える立場。下級生2番手のいる組。
 不安ばかりの組替えで、ナニを聞いても見ても、実際来年の本公演を観るまで不安が消えることはない、そんな組替えで。
 それでもまっつは、わたしたちに言うんだ。
 嫌々組替えするんじゃない、納得して受け入れて、いやむしろ自分で引き寄せたことかもしれない、って。

 わたしは、ただのファンにすぎない。
 だから、まっつが見せるもの、口にすることを、受け入れるしかない。信じるしかない。

 まっつは、大丈夫だよ、と言った。
 自分で決めたことだから、これを機にさらに成長したいと思っているから、大丈夫。

 彼がそう言うなら、それを信じる。

 雪組でナニが待っているかではなく、そこにナニがあろうとも、それがまっつの望みであり、彼の糧となることならば、全部受け入れる。

 変わるチャンス、成長するチャンスだと、彼が前向きに受け入れているのだから、わたしもそう思う。
 「お世話になりました、これからもがんぱります」だけでいいのに、わざわざ自分がどう思ったか、どうしたいかを語ってくれた。
 その気持ちを、受け止める。

 トップ娘役不在とか噂の研1ヒロインとか、雪組がいろいろ大変なところにまっつ組替えで、発表当時はわたしも含めたくさんの人がショックを受けたと思う。
 そこでまっつはある意味「悲劇のヒーロー」でもあった。13年も育った組から出て、他組の立て直しに使われるなんて、と。劇団の決めた人事に、生徒が逆らえるはずもない。彼は行くしかないんだ。
 だけどまっつは、それを否定する。「可哀想なんかじゃない」と。悲劇のヒーローの方がある意味おいしいコトもあるのに、「自分で運命を引き寄せた」と芝居気アリで語る。

 そう言わずにいられない、こだわりと、プライドの高さ。

 きっと練習して、完璧に語るはずだったのに、それでもこみ上げるモノに詰まってしまって、拍手もらって破顔して。
 また、気を取り直して自分で決めた台本通りに喋って。

 あの「練習してきました! 隙なんか見せないからな!!」というところと、でも言葉に詰まって結局隙を見せてしまうところ、立ち直って隙を見せずに終わろうとするところ、が、もおいちいちツボでした。
 なんなのあのキャラクタ。
 「キャラ」として美味しすぎますよ、未涼さん! ツンデレ萌え属性の人にはたまらないキャラクタぢゃないですか、アレ?!

 もちろん、その後の場面ではまとぶんが愉快なこと言ってみんなが笑っていても、まっつひとり顔をこわばらせたままで。口角だけ片方あげてるんだけど、笑いの形にはなってなくて、ひとりだけ顔硬直したままで。

 泣いていた、とは、言いません。
 彼はそれを望まないんだろう、と思うから。

 他人を見送るときはボロボロ泣いてる人ですが、自分のことでは泣かない。新公主演だって初DS(巴里祭)主演だって、泣かなかった。だから泣かない。
 歌の相方でもあったちあきさんを見送る涙であっても、自分のことぢゃないんだろう。そうありたい人なんだろう。

 
 ところでわたし、すげー久しぶりに出のギャラリーをしたんだけど。

 まっつ花組最後だし、きっとナニかあるよね、とわくわくしていたら、どうやらファンクラブからまっつへ、レイを贈ることになっていたようだった。ハワイでMr.YUたちが現地美女たちから掛けてもらっていた、花輪。
 わざわざジャンケンして、まっつにレイを進呈する人を決めてた? 遠く花の道から人の頭越しにのぞいていたんでよくわかってないんだが。

 んで、まっつが出てきて。
 モノクロのファッション、めちゃスレンダーでかっこいー花組男役まつださん。彼が自分のファンの前へ行くと、代表者ひとりがレイを差し出す。それがナニを意味するかわかるだろーから、もちろん彼はアタマを低くしてレイを受ける……はずが。

 断りやがった。

 けばけばしい原色のレイを首に掛けるのを、千秋楽の会イベント、ファンから進呈される花輪を、拒否りましたよこの人?!!(爆笑)

 このこだわりとプライド!!(笑)
 未涼亜希たるもの、アホっぽい花輪なんか首から掛けれないんだ!!

 首に掛ける代わりに、腕に巻き付けてた。すでに彼、黄色のレイを腕に巻いて楽屋から出てきてたんだけど……楽屋の中でも「花輪付けろ!」「イヤだ、俺の美学に反する!」ってやりとりがあったのかな。
 ふつージェンヌさんなら、ノリノリで身につけてくれそーなもんなのに。

 キモチは受け取るけど、プライドは売らないのか。
 その融通のきかなさが、ツボすぎるっ。つか、面白いわこの人(笑)。
 『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』千秋楽。

 まっつファンのわたしにとっては、かなり特別な日。
 身構えっぷりがハンパない。落ち着け自分。力みすぎだ自分。

 えーとえーとそれで。
 とりあえず。

 らいらいは、やってくれた。

 壮さんとかみつるきゅんとか、今までなにかしらアクションしていた相手ではなく。相手役として踊るかわいこちゃん、いちかやはるちゃんではなく。
 いきなり、らいだった。

 千秋楽の組替えまっつに対するアドリブ。つか、スタンドプレイ。

 ハバナでファヌン様光臨後、心を入れ替えた人々が争いを捨て、許し合って踊り出す……その場面で、らいがまっつを、抱きしめた。

 ええええ。

 そこ?!

 直前までケンカしていたふたりが、まっつから声を掛けて和解する場面なんだが、いつもなら軽いスキンシップで終わるところを、らいがまっつを抱きにいった。
 真正面からだ。
 まっつはちょっと驚きつつも受け入れ、男ふたりで真正面からハグ。

 らいはなにしろ体格いいんで、まっつはすっぽり腕の中だ(笑)。

(注・らいらいの公式身長は172cmです。花組では長身。かつ、らいのいいところは適度な厚みのある体格だということ)

 まっつの照れた笑顔がくすぐったい。
 そーだよなー、そーゆーことする人じゃないもんなー。『舞姫』千秋楽にみわさんと抱き合ったときも、照れがあったよなああ。

 しかし、相手がらいってゆーのが。
 らいがイヤなわけではない、そんなことあるか、らいは大好物だ。
 ただ、らいはなにしろらいなので、いつもスタンドプレイ上等男なので(笑)、ここぞとばかりに食いついてきたことに、「うわ、らいだ!」という感じがしてイヤン(笑)。
 らい、GJ!!

 らいと抱きしめ合ったあと、すげー勢いで走り出すまつださん。
 時間くっちゃった分、次の位置に急いで行かなきゃいけないんだろうけど、照れ隠しみたいで萌え(笑)。
 やべ、らしくないことしちまった。べ、べつになんでもないからな、あんなこと!! ……てゆーツンデレ様の名に恥じない行動に見えました。

 そっから先のハバナダンスのやけっぱち……もとい、余力計算無し!って感じの本気の踊りっぷりもまた、すごかったです。
 勢いだけで踊りきるっていうか、なんかブチ切れてるってゆーか。

 いつも、この命の革命……フジイくんお約束の新世界場面のラスト、腕を上げたままの静止ポーズで肩で息をするまつださんを見るのが好きだった。

 誠心誠意踊りきって、肩を上下させるほど荒い呼吸で。なのに腕をおろし、ゆっくりと歩きはじめ……「♪ひとりで抱えきれない」と歌い出すときには、乱れなんか微塵もない整い方で。
 あの激しいダンス、そして呼吸……そこから数歩歩いただけで、この声?! この歌?!

 贔屓に惚れ直す一瞬。

 惚れ直すってのもチガウか、やっぱすごい人だ、とうなずく……再確認する。
 それは、しあわせな行為だ。
 公演を繰り返し観る。そしてそのたび、再確認する。この人が、わたしの好きな人だと。

 惚れ直すじゃないけど、「知っていた、素敵だってこと! 知っていた、すごいってこと!」を毎回毎回、観るたびに「うん、そうなんだよ!」と膝を叩く、その感覚。
 なんて幸福なんだろう。

 まっつは、舞台の上で自分の力を出す。
 そしてわたしは客席の片隅で、それを受け取る。

 それは、幸福な両思いだ。
 双方一方通行で、まっつはわたし個人に向けてなんかいないし、わたしがまっつになにか関与できるわけじゃないが、それでもこれは、両思い状態だと思う。
 舞台人としての彼が発するものと、観客であるわたしが受けるもの。
 それが互いを必要とし、つり合う……というか、同じ力量で引き合っているならば。
 同じ力量だよ? まっつが放出するものが大きければ大きいほど、わたしは「まっつすごい!」ってさらにわくわくするんだもの。

 客席にいる人たちみんなに向けて、舞台上の彼らはパワーを発し、観客ひとりずつが受け取っている。
 わたしだけでなく、きっとみんな、ご贔屓さんと「幸福な両思い」になっているんだろう。

 この公演中、わたしは幸福だった。
 まっつをすごいと思い、まっつを好きだと思う。
 会うたびに「好き」と思う……「好き」とか「しあわせ」とか、プラスの感情をもらう。
 それはとても、しあわせなことだ。
 人間として。生きる上で。
 どんだけ、救われることか。

 そして千秋楽。
 ただこの公演が終わるというだけではなく、まっつは組替えする。大好きな花組からいなくなる。
 その、ラストソング……まっつの「歌」を単独で聴ける場面が、命の革命から、明日への革命に移る場面。

 いつもより、肩の上下が少ない気がした。落とされた照明の中、腕を上げて静止したところ。
 あんなにあんなに踊っていたのに。
 どこかにある、緊張感。いつもと同じではない、と。

 人々が三々五々はけていき、舞台にはまっつといちかだけが残る。
 銀橋にはまとぶんと蘭ちゃん。

 夕暮れの光の中。
 まっつの「声」が、響き渡る。

 汗に濡れた頬。額にかかる黒髪。
 本人がどれほどナニを思いナニを抱えているかなんかわかりゃしないが、わたしたちの耳に届く「声」はいつもの澄み切り方で。
 光が差すように、まっすぐに、届いてくる。

 
 幕が下りたあと、組替え挨拶があるのは想定内。
 まだ東宝公演がある場合、組替え挨拶はあるときとないときがある。
 退団者が多ければ、組長が緞帳前で読むメッセージが長くなって時間稼ぎになるけれど、今回はちあきさんひとり。彼女が袴に着替える間を持たせるために、たぶんまっつはかり出される。挨拶をする。
 とはいえ、きっと大したことは言わないだろう。お約束通り、定型文通りのことを言うだけで終わりでしょう? 今の時代、言語統制が激しいから。

 そう思っていただけに。
 彼があんだけ喋るとは、意外だった。

 こだわりと、プライドを見た。
 『麗しのサブリナ』の個人的な目線。ツッコミと楽しみ、続き。

・ララビー邸へ戻ってきたサブリナ@蘭ちゃん。彼女がサブリナだと気づかないデイヴィッド@壮くん、察し悪すぎ。
・メイド@きらり他が「サブリナ」「サブリナ」ってやってるのに、それでも首をかしげてお悩み中。
・フェアチャイルド@はっちさん登場で「お父様」「私の娘」とやってようやく、「あ、思い出した!」……デイヴィッド、アタマわる……(笑)。
・こんだけアホの子ですが、いいんですか? ……いいみたいだ、サブリナ。目がずっとハート。
・サブリナとの再会を喜ぶ場面の執事@ふみか様の空振りっぷりが愛しい。彼があの大きな腕を広げるとどきどきする(笑)。

・サブリナのソロ「月が手を…」は前奏がきれい。
・しかし、あの半端な銀橋の使い方はナニ? 歌い終わってからの長い長い暗転の間、蘭ちゃんがはけていくのが長々見える。銀橋渡りきるか、歌いながら花道に戻らせるかすればいいのに。
・あ、歌いながら花道に戻る、は他でもやってるし、銀橋渡らせることはライナス@まとぶんとの兼ね合いでできないのね。サブリナの心情ばかりが銀橋ソロや独白で表現、ライナスの場面は無し……せめてサブリナに銀橋は渡らせないことで調節。って、ナニそれ。
・蘭ちゃんに銀橋をひとりで渡らせてはならない、だってトップスターはまとぶだから。そんな配慮をするくらいなら、最初からトップスター演じるライナスの銀橋ソロと独白を作ればいいわけで、えんえんサブリナに同じパターン(下手花道と銀橋でソロ・独白)の場面を作るから、まぬけな長い暗転が出来るんだ。

・扇めぐむはどこへ行くのか。ここ数作おっさん道を究めるのかと思われたが、今回はまた青年に戻ってきた。しかもスウィートな美形という、彼的新ジャンルだ。
・実際に彼が甘い二枚目たり得るのか、他人の目にそう映っているのかは置くとして、パーティの歌手を務める彼は、やたら甘ったるい歌い方をしている。お化粧もあえて「美形目指しました」系。
・『EXCITER!!』のハバナで同じように「歌手」として活躍する、長身歌ウマ男、アーサーが鼻息荒くイケメン勝負しているのと対照的に、腰の引けたところでスウィートになっているめぐむさん……まだ芸風模索中? 次の公演ではまたチガウめぐむさんに会えるのかしら。

・エリザベス@あまちゃきがかわいい。デイヴィッドにめろめろで「あなたしか見えない」アピールすごい。
・でもほんとなら、このものすごい台詞の数々に、デイヴィッドはやすやす応えてたんだよな。グレチェン@じゅりあに対してそうであったように。つか、サブリナがいなけりゃ、ふつーに赤面台詞オンパレードだったんじゃあ……。聞いてみたい(笑)。
・サブリナを口説くデイヴィッド友人たち。牽制しあいがすごい。
・サブリナの「困ったわ」は、女が一度は言ってみたい台詞のひとつ。
・「♪けんかをやめて~ふたりを止めて~私のために争わないで~♪」という、素敵ソング(笑)が80年代に流行ったな。
・サブリナがデイヴィッドに駆け寄り、残された男たち……デイヴィッド悪友4人組のその後のフォローの仕方が(笑)。ぎりぎりのタイミングで彼女たちが戻ってくるのな。
・上手花道に登場する使用人ズ。それぞれオーバーアクションで楽しい。結局彼らはサブリナ応援隊、デイヴィッドが応えさえすれば、彼のことは認めるのなー。

・ところで、サブリナとデイヴィッドの年齢差はいくつですか?
・サブリナは9歳のときにデイヴィッドにキスをされ、以来彼にめろめろ。
・気持ちはわかる、彼女は運転手の娘、お屋敷のハンサムなおぼっちゃまに突然キスされたら、舞い上がるじゃん? 運命の相手だと、思いこむじゃん、期待するじゃん。
・そのときからずーーっとデイヴィッドを好きだったというサブリナ。
・デイヴィッドは、その話題を完スルー。絶対、おぼえちゃいない(笑)。
・たわむれか間違いか、意味のないキスだったんだろう。まさかそれによって、ひとりの少女の運命を変えたとも知らずに。
・で、デイヴィッドってそのときいくつよ? サブリナといくつ差よ? バツ3のデイヴィッドはそれなりの年齢よね? ライナスが30代半ばくらいなら、デイヴィッドは30前後くらい? サブリナとの年齢差は6~7歳以上?
・9歳の幼女にチューするって、どんだけロリコン?!

・ララビー家の家族会議はテンション高くて、耳に残る。つか、父@まりんの真似したくなる。(足踏みならし)
・天井の高さがひそかにツボだ。部屋の壁が舞台上方までちゃんとある。タカラヅカに出てくるお金持ちの家の表現。子どものころあこがれた、「広いお屋敷」のイメージを損なわない。

・んで、ここの暗転の長さがいちばんわからない。
・シャンパングラスを割って悲鳴を上げるデイヴィッド、ほくそえんで下手へはけるライナス……のあとえんえん暗転。
・放送事故? つか、セットの可動トラブルで待たされてる? ってくらい長々と暗闇の中盆が回ってがたがた用意している様を見せられる。
・で、ようやくサブリナ登場……だが、彼女はやっぱり暗転待ちしているようで、なにをするでもなく花道にいる。
・やっぱりセットの可動トラブル? 本当ならもう次の場面になってなきゃおかしいのに、遅れているからこんなことに? それとも蘭ちゃんが出るタイミング間違えた? 早く出過ぎちゃってやることなくて困ってる?
・と首をかしげた初日。
・事故かと思った長い暗転とその時間稼ぎにゆらゆら揺れるサブリナ、はデフォらしい。
・「ル・サンク」を読んではじめて知った、待ち合わせのテニスコートで、サブリナは待ちこがれてひとり踊っていたらしい。
・知らなかった。
・蘭ちゃんがゆらゆらしているのは花道だし、まだテニスコートできあがってないし。
・「待ちこがれている」表現と「本舞台は場面転換で時間がかかる」なら、隅っこでゆらゆらさせてないで、銀橋で「待ちこがれている歌」を歌わせるとか、……ああ、ダメなのか、蘭ちゃんに銀橋もソロもこれ以上させられないんだ……って、そんな縛りのために毎度毎度「事故?」な暗転を繰り返す……演出センスのなさ。

・弟の代わり、にシャンパンを飲むのもダンスするのも許容範囲だが、チューするのはNGです、ライナスにーちゃん!!

 てことで、続く。
 『麗しのサブリナ』の個人的な目線。ツッコミと楽しみ。

 ざっくり時系列順に。

・アーサーとあきらを探せ。モブにまぎれているときの彼らが、イケメンすぎる。
・パーティ客の人間模様。らい、おとなしくしてろ(笑)。
・だいもんの色男ぶり。めおくんのキザり。
・グレチェン@じゅりあの笑い声……ありゃたしかにカンに触るわ(笑)。
・執事@ふみかの仕事ぶり。無駄にカッコつけててたまらん。(ふみか様!)
・木の上のサブリナ@蘭ちゃんのかわいさ。そして、娘に対し、木の下で「おいで」と両腕を広げるパパ@はっちさん。
・ちょっと待ってパパ、それって「この胸に飛び込んでおいで?」……木の上から飛び降りていいの? どんなにスレンダーでもハタチの娘が木の上から飛び降りてきたら、パパ受け止めきれずにつぶれると思うの。
・でも、フェアチャイルドさんの「おいで」はステキな破壊力。ぽわわん。
・暗転はここではまだ気にならない。

・「素敵な夜。私たちふたりのための夜ね」「君と素敵な夜に乾杯」……うおお、かゆい、かゆいわ!!(笑) こんなの見せられたら、たしかに死にたくなる(笑)。
・サブリナの表情が、いちいちリアルで痛い。「初恋」の痛さ。切なさ。

・煤で汚れたサブリナの頬を、指で拭くライナス@まとぶ。まったく子ども扱いしてるのがイイ!
・「君は運転手の娘」と歌うライナスがかっこいい。なんか詩的だ。が、そっから一変して株価の歌に豹変するのが楽しい。

・料理学校は目が足りない。どこを見ていいのか。
・シェフ@みわっちステキ。あのクドさと嘘くくさ!(誉めてます)
・オカマのあきらはもちろん、キザりよっちも大好き。ふつーに好青年ならいもかえってめずらしい(笑)。めがねっこかぐらちゃん、なんか恋愛が展開しているのはりおな君か?、なにもしてなくても目立つ柚カレーくん。
・せっかくかわいく盛り上がる場面なのに、次の場面とのつなぎが悪くて盛り下がって終わるのが残念すぎる。

・じゃんっ、と決めポーズで終了、次の瞬間下手花道あたりでサブリナの手紙、でよかったのに。んで、最初の手紙を読んでいる間に盆を回して舞台転換、使用人ズのミュージカル場面は通常通り本舞台で。そーすりゃロスタイムなしで済むのに。
・盆が回る間の、あのどーしよーもない「間」を、客席でもてあます……料理教室ラストで拍手が起こらなかった日(けっこうあった)なんか特に、しーんとしたまま長い暗転に耐えるのはつらい……。(BGM鳴ってりゃいいってもんぢゃない)

・使用人ズはすばらしい。
・執事@ふみかが歌い出すのは別に驚かない。が、いまっちが歌い出したときは正直おどろいた。え、このメンツでいきなりキミが歌うの?! や、うまいけど、うれしいけど!
・さらに、タソが歌い出してびびる。や、うまいけど、うれしいけど!
・そうか、ひとりずつなにかしらソロがあるんだ。
・タソの歌詞までは、流れ的に意味が通じやすいんだが、そっから先は脈絡がなくて一瞬「???」になる。
・特に耳に残る、しゅん様の「♪お屋敷の金魚♪」
・さあやの歌い上げは耳に痛い(笑)が、効果的だ。
・デイヴィッド@壮くんの服は、どうかと思う……。

・男爵@王子の説得力。「優しくて賢くてオペラの特別席と名画と葡萄園を持っている」ことがわかる、老紳士。
・でも男爵、気づいてたなら、レンジのスイッチを入れ忘れているの、教えてあげようよ……。

・シンクロしたり、スキンシップ度が高かったり、いまっちとタソのコンビが楽しい。
・ふみか様。ああふみか様。
・きらりの怪演はどんどん突き抜けていく(笑)。

・下手花道注目、よーやくまっつ登場。
・ウィリス@まっつ、マカードル@いちか、ミニマム秘書コンビ最強。
・強引なデイヴィッドに、目を見合わせお手上げ顔ののち、わざとらしい能面で「おめでとうございます」。
・わざとらしい能面のまま、両手で耳をふさぐ。
・シンクロする動きのおかしさ。

・「私が結婚すれば、ハネムーンに秘書と弁護士を連れて行くだろう」……まっつといちかを連れて行くんですね?!
・ハワイへ向かうライナス様。後ろの座席には、ウィリスとマカードル@いちゃいちゃバージョン。「水着買っちゃった」「へえ、どんな?」「見たい?」「見たい見たい」「ヒ・ミ・ツ♪」「……(肘でつつく)」「……(つつき返す)」ライナス様の咳払いでぴしっと姿勢を正す秘書ズ。「誰の新婚旅行だ……」つぶやくライナス様@まだ恋愛してないバージョン。
・秘書と弁護士を連れて行く、のは恋愛していない状態のライナス様で、サブリナとのハネムーンにはそんなことしないだろう(だってバリ行きだし)から、冷徹ライナス様にいちゃいちゃバージョンの秘書ズはありえないパラレルなんだが、そこは置いておいて。
・弁護士は誰かしら♪

・プラスチック・ダンス最高。

・まっつの足裁き。
・まっつのハイキック。男子でひとりだけ女子と同じ腕組みポーズ。
・まっつの2回転。くるくる回って移動します。

・圧力テストのマカードルのマッチョ・ポーズがかっこよすぎる。
・あまり見る暇がないんだが(まっつばっかし見過ぎです)、重役アーサーが不敵に若くて美形。アレで重役ってナニ? どんなテを使って彼はそんな立場に?! 美貌?
・輝良まさとのメガネ。メガネの輝良まさと。(好物らしい)
・デイヴィッドの服は、どうかと思う……。

・「♪僕はドンファンなんかじゃない 理想の恋人を求めてるだけの ロマンチスト♪」
・この説得力。
・歌詞があちこちよくわからないんだが(笑)、この歌の壮くんが好きすぎる。
・デイヴィッド友人たちの個々のキャラクタが、結局よくわかっていない。みんな一様に育ちの良いチャラ男に見える。
・「エリザベスとなら、僕が結婚したい」と横にいたみつるに迫るめおくん。初日はもっとリアルだったのに、回を重ねるごとにお笑い度が増した。……リアルなままでも良かったのに、アヴなくて(笑)。
・しかし、彼らの服も、どうかと思う……。
・恋人ちゃんズは、とびきりの美女揃い。うおー。
・でも、彼女たちの服も……。
・ひとつずつはかわいいんだけど、4人並ぶと柄がうるさくて、地味。それに、男子4人が加わると、もお……。中村Aってなかなか強烈な色彩センス?
・それでも、オンナノコのふくらんだスカートとその下で揺れるペチコートは大好物。

・「サブリナのパリでのクッキングスクールも2年にわたり、ついにロングアイランドに戻るときが来たのです」と、解説するストーリーテラー@みわっち。
・ここでいつも引っかかる。「戻るときが来たのです」ではなく、「戻って来ました」じゃいかんのかい。だってサブリナ、ストーリーテラーがそう語る前からララビー邸の前にいるんだもん! 「ついに戻るときが来た!」だと、これから銀橋でも渡りながら「戻る」のかと思う。

・ここで大変身したサブリナの美しさにどっきり! しなきゃいけないんだが、ごめん、そこまでのインパクトはやっぱりない。
・正直、「あ、こんなもんか」と思う。まあ、がんばってるよなあ、とか。ナニその上から目線、ごめんよう。
・でもでも、サブリナの魅力、蘭ちゃんの魅力は黙って立って美貌で圧倒!ではナイから。サブリナに感情移入してどきどきできる、その繊細な芝居にあるんだから。

 つーことで、つづく。……パソコン臨終前、最後に打っていたテキスト……(笑)。
 つらつら『麗しのサブリナ』の感想だの、それに付随した昔語りなんぞを書いていたら、パソコンが、死んだ。

 びっくりした。
 突然、ブラックアウト、電源まで切れた。

 今まで画面が固まったり、ソフトやブラウザの強制終了くらうことは数知れずあったけれど、パソコンが息を引き取るときって、こーやって潔く逝くもんなんだ?
 そっから先は起動せず。起動画面の2つ目くらいで謎のアルファベットを羅列して沈黙。

 いや、それまでも調子悪くて、だましだまし使ってたんですけどねー。
 こんな逝き方ははじめてで。

 
 さて、来年のラインアップがちまちまと小出しにされていますな。
 モバタカに届いたメールを見て、勝手にせつなくなりました。

 組替えって、こんなに根を下ろす感覚だったんだなあ。

>[花組]の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

 大好きな花組の次の公演のニュースだ、わくわく! として、そこに、まっつがいないことに、ヘコむ。

 全ツの振り分けが出たときも、じつはしょんぼりしていたんだ。どっちにもまっつの名前がない、って。

 退団するわけじゃない、これからも男役のまっつが見られる、組替えで新しいまっつに会える、それはちゃんと楽しみにしている。
 組替えにどういう意図があるにしろ、まっつは、タカラジェンヌは、みんな前向きに、自分の意志で、自分の仕事を果たしている。
 それはわかっている。今さら「組替えいやだ~~!(ばたばた)」と言っているわけではなくて。

 ただ、寂しいんだ。

 大好きな花組に、大好きな人たちの間に、まっつがいないのだということが。
 ただ、寂しい。

 でもでも、気を取り直して。
 まっつがいなくても、花組は花組、大好きな組。わくわくと公式をチェックして。
2010/08/27
2011年 公演ラインアップ【宝塚大劇場、東京宝塚劇場】<2月~4月・花組『愛のプレリュード』『Le Paradis!!』>


8月27日(金)、2011年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚大劇場、東京宝塚劇場の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

花組
■主演…(花組)真飛 聖、蘭乃 はな

◆宝塚大劇場:2011年2月4日(金)~3月7日(月)
一般前売:2011年1月8日(土)
◆東京宝塚劇場:2011年3月25日(金)~4月24日(日)
一般前売:2011年2月20日(日)

ミュージカル・ロマン
『愛のプレリュード』

作・演出/鈴木 圭

サンタモニカを舞台にした純愛物語。演出家・鈴木圭の宝塚大劇場デビュー作。

レビュー
『Le Paradis!!(ル パラディ)』

作・演出/藤井大介

パリの魅力を現代的な視線で捉えたレビュー。

 ……え?

 1行?

>ミュージカル・ロマン
>『愛のプレリュード』

>作・演出/鈴木 圭
>
>サンタモニカを舞台にした純愛物語。演出家・鈴木圭の宝塚大劇場デビュー作。
>
>レビュー
>『Le Paradis!!(ル パラディ)』

>作・演出/藤井大介
>
>パリの魅力を現代的な視線で捉えたレビュー。

 1行どころか、1文? 「サンタモニカを舞台にした純愛物語。」「パリの魅力を現代的な視線で捉えたレビュー。」

 正塚せんせの、名前ではなく「ヒロイン」表記のあらすじもひでーもんだったが、それをまるっと超えた。

 これは、まだお客様に差し出していいようなレベルの話ではないだろう。
 今までなら、会議の前段階、提出する企画書の前振り、「次どんなものを考えてる?」「そーですねー、サンタモニカを舞台にした純愛物語とか?」「んじゃそれ、ちゃんと企画書書いて」「はーい」レベルだよな?
 こっからちゃんとした書面にして、会議に掛けて、いろいろ修正入って思惑入って、その上で見えた全体像から、「お客様に興味を持ってもらうための宣伝を兼ねた文章」を作って、はじめて公式に発表するよな?

 「ラインアップ発表」として公式に載せる文章なのだから、「客の目」を考えて当然なのに、今までも「これって企画書の文章そのまま転記で、『宣伝を兼ねて発表する』文章ぢゃないよな……?」と首をひねる状態ではあったけれど。
 「商売する気あんのか?」という状態ではあったけれど。

 それにしても、コレはひどいわ……。

 内容がどうとか以前に、「作品を作る余裕がない」「宣伝をする余裕がない」と看板掲げているよーだ……。

 企画書の前段階、口先でとりあえず言ったよーな言葉を、そのまま載せる。てのは、企画自体まだナイも同然、自転車操業なのでそんな先のことまで考えていられない! という、倒産間際の会社のやることみたいだ。
 また、プロによる宣伝文章を載せる金銭的余裕もない、というのもまた、倒産間際の……。

 前回のラインアップ発表の『メイちゃんの執事』で、「年寄り向き古すぎ映画と古すぎ再演しかしない、自分のしっぽを自分で食べているよーな先細り感に満ちていたタカラヅカも、まだナニかやろうって気持ちあったんじゃん! よかった!!」とほっとしたばかりだったのに。

 またしても、「大丈夫かタカラヅカ。そんなに経営苦しいんか」とうなだれた。
 今まで使えていただけの資金も用意できない、時間も人材も含めて。
 あああ、なんて気持ちの沈むラインアップ発表……。

 って、前回の花組のラインアップ発表でも、同じように震撼してたっけ。
 1年もたたずに同じ作品の再演って、どんだけお金ナイんや、と。

 今回と同じ演出家でやるのは、大人数が動き回るショーではなじみのない演出家だと生徒の把握に時間がかかるから、人件費他の節約でフジイくんが引き続きやるのかと思っちゃったし。
 芝居のスズキケイは大御所大先生よりギャラ安くすみそうだし?

 そんなにお金ナイのか、歌劇団……。

 や、若手作家作品の方が、大御所大先生様作品よりも、大昔のコケの生えた再演よりも、絶対絶対ありがたいので、それはもおラッキー!てなもんです、ありがとう。
 スズキせんせのオリジナル作品には不安もありまくりますが(笑)、少なくともパワーと新しさはある。んで、フジイくんのショーも手堅いので続きすぎることの他は問題ないわけだし。

 楽しみですよ。
 絶対観に行きますよ。
 まっつは、いなくても。

 お金がナイのか経営がどうなのかはわからないけれど。
 とりあえずわかることは、劇団の、誠意のなさですな。……あんな1文発表を「お客様に」出す企業姿勢(笑)。
 まあわたしたち「ファン」は「ファン」であって、劇団からすれば「お客様」ではナイのかもしれんがのう。
 千秋楽まで1週間を切り。

 予想していたこととはいえ、まとぶさんがトバしています。

 まとぶんが大人だ! と驚いた、『麗しのサブリナ』初日。
 いつもナニやっても「あんちゃん」な、我らが愛すべきまとぶさん。
 大人のままではいられなかったらしく、変な人になってます。

 コメディの虫がうずくのかなあ。
 なにかしらおちゃめをしないと気が済まないみたいだ。

 もったいつけた喋り方をしてみたり、台本にないツッコミやおちゃらけ台詞を入れてみたり、とってもまとぶさんです。
 ホットでハートフル、アツくるしいライナスさんです。
 感情の起伏が大きく、わかりやすい。全部顔に出る。これで敏腕実業家って嘘やん……てくらい、正直者。
 サブリナとのデートの楽しみっぷり、そして苦悩っぷりも大きいです。なんつーか、にぎやかな人だ。

 いやそれも、イイんですよ。
 舞台は役者のモノだし、ナマモノなんだから、変わっていってもヨシ。主役であるまとぶさんが自由にいじってヨシ。

 でもこの人ほんと、「大人」は演じられないんだなあ、としみじみしました(笑)。

 それを悪いとはまったく思ってなくて、かえって面白いなと。
 タニちゃんは大人のなり方をいろいろまちがってしまって大変だったジェンヌさんだったけれど、同期のまとぶんもまた愉快にピーターパンだなあ。

 されどまとぶさんの、ハプニングに対するフォローはオトコマエですな。
 『愛と死のアラビア』のとき、カツラが取れてしまった彩音ちゃんを衣装で隠すようにして平然とお芝居を続けたところなんか、その最たるモノでしたが。

 今回の『麗しのサブリナ』では、サブリナ@蘭ちゃんが「遺書」を落としそびれたことがありまして。

 え、遺書落ちてないよ、どうすんの? エアー遺書で芝居すんの? と思っていたら、ライナスさんはなにごともなかったかのように株価の歌を歌い、遺書を読む演技はナシで、代わりに「彼女はナニを持っていたんだ?」とサブリナの行動に興味を持ったよーな台詞に変えてました。
 その後ライナスが、サブリナをデイヴィッドから引きはがすのに、まわりくどい手段に訴えたのは、サブリナが「自殺を考えるほどデイヴィッドを愛している」と知っているからこそ……という伏線にはならないけれど、「遺書がない」状態では最良のアドリブだったかと。

 同じ日の『EXCITER!!』では、キザな空港職員@らいらいが、Mr.YU@まとぶんの、携帯を壊した(笑)。
 厄日だな、まとぶん(笑)。周囲の失敗で、彼が大変。

 空港にて、セキュリティチェック・ゲートをくぐるとエラーブザーの鳴り響くMr.YU。

 空港職員らいに個別に調べられ、エラーが出ているのがパンダちゃんの付いた携帯と判明。
 「これか!」とらいがパンダ携帯をMr.YUの尻ポケットから引っこ抜き、「ああっ、ボクのパンダちゃん、パンダちゃん返して」とMr.YUが取り返す……という演出のところで。

 パンダちゃん携帯を引っこ抜いたらいが手を滑らせ、携帯は勢いよく床に激突。
 フタがはずれて、中の電池も飛び出した。
「ああ~~っ、パンダちゃんがっっ!!」
 ばらばらに飛び散ったケータイ本体とフタと電池を拾い集めるMr.YU。おろおろするらい。
 集めて手に持ったけれど、咄嗟にうまく電池がはまらない、元に戻らない。
 通常ならキャリーバッグのポケットに押し込めてゲートを強引にくぐるんだが、分解したままではそうもいかない。

 飛行機は待ってくれない……というか、音楽は待ってくれない、早く次へ進まないと!!

 90度の角度でお辞儀を繰り返す、素で謝ってるだろ?!というらいらい(笑)と、バラバラのケータイ鷲掴みのままフラフープ持ってキャリーバッグ持って、とにかく走り出すまとぶ!!(笑)

「なんでいつもギリギリなのよ?!」
 と怒る秘書@さあやもびっくりの、間一髪のギリギリっぷりだ。

 他のみんなが歌を進めている間も、Mr.YUは携帯をいじっている。や、だってこのケータイで、エキサイターに変身したMr.YUはクラブへ行く電話を受けるんだもの、壊れたところを観客に見せてしまったのだから、直すところまで舞台の上でやらないと!
 飛行機の座席でよーやく携帯を元に戻すことに成功。

 電池を入れてフタを閉めるだけのことなんだけど、焦っていると簡単には出来ないもんなんだねええ。

 てゆーか。

 あのケータイ、電池パック入ってたんだ。

 モックアップぢゃないんだ……?
 ふつーに誰かのケータイ(お古とか?)だったりするんだ……?

 ずーっと「Mr.YU」のままで、携帯と格闘するまとぶさんはオトコマエでした。内心はかなり焦ってたろうになあ。
 わたしが「ル・サンク」のまっつにきゃーきゃー言ってる間に、来年のカレンダーについて公式発表があったようです。
(1)宝塚スターカレンダー
◎掲載メンバー(計16名) ※下線は今回初登場者
(専科)轟 悠
(花組)真飛 聖・蘭乃はな・壮 一帆
(月組)霧矢大夢・蒼乃夕妃龍 真咲明日海りお
(雪組)音月 桂・早霧せいな
(星組)柚希礼音・夢咲ねね・凰稀かなめ
(宙組)大空祐飛・野々すみ花・蘭寿とむ

(2)宝塚卓上カレンダー
◎掲載メンバー(計25名) ※下線は今回初登場者
(専科)轟 悠
(花組)真飛 聖・壮 一帆・愛音羽麗・未涼亜希・華形ひかる・真野すがた・朝夏まなと
(月組)霧矢大夢・桐生園加・青樹 泉・龍 真咲・明日海りお
(雪組)音月 桂・早霧せいな  
(星組)柚希礼音・涼 紫央・凰稀かなめ・夢乃聖夏・紅 ゆずる
(宙組)大空祐飛・蘭寿とむ・悠未ひろ・北翔海莉・凪七瑠海

(3)宝塚ステージカレンダー
◎掲載メンバー(計26名) ※下線は今回初登場者
(専科)轟 悠
(花組)真飛 聖・蘭乃はな・壮 一帆・愛音羽麗・華形ひかる・真野すがた・朝夏まなと
(月組)霧矢大夢・蒼乃夕妃・青樹 泉・龍 真咲・明日海りお
(雪組)音月 桂・早霧せいな 
(星組)柚希礼音・夢咲ねね・涼 紫央・凰稀かなめ・夢乃聖夏
(宙組)大空祐飛・野々すみ花・蘭寿とむ・悠未ひろ・北翔海莉・凪七瑠海
  
(4)宝塚パーソナルカレンダー(全12種類)
◎発売メンバー ※下線は今回初登場者
(専科)轟 悠
(花組)真飛 聖・壮 一帆
(月組)霧矢大夢・龍 真咲明日海りお
(雪組)音月 桂・早霧せいな
(星組)柚希礼音・凰稀かなめ
(宙組)大空祐飛・蘭寿とむ

公式より抜粋。

 雪組、少なっ。

 すべてにおいて、トップと2番手だけしか「スター」がいないなんて……。
 つか、卓上カレンダーって別格や若手も入る枠だよね? なんで雪組はいないの?

 えー、その昔、「ステージカレンダー」にまっつが入らないことにヘコんだことがありました。
 そのときに、「ステージカレンダー」の掲載基準ってなんだろ? と考えたんですよ。
 「ステージ」だから、やっぱ主演経験者なんだなと、納得に至ったのです。
 まっつ、主演してないもんなあ。
 ワークショップを含め、なんらかの主演を経験したスターのみが掲載される、それが「ステージカレンダー」。だからまっつは載らず、めおくんやみつるくんが載るのだと。枠に限りがあるから、学年順だったりWS1回だけより通常バウ1回を優先したりはするけれど。

 それはまあ、わかりやすい基準なのでアリだなあと思いました。
 劇団がバウ主演をさせる人は、路線スターとして期待している人だろうし、ひとつの公演で座長を務めたスターならば、「ステージカレンダー」に載るに相応しい。
 ので今回、新たにバウ主演をしたかちゃが入っていることは納得だし、すでにWS経験済みでさらに通常バウ主演も果たしたまぁくんとちぎが加わることも、納得だ。「ステージカレンダー」はあくまでも「主演者」という意味だから、どんだけ人気があってもみーちゃんたち宙組88期は入れない……残念だけど。

 と、ここで疑問。

 主演経験者を掲載、ならば何故、雪組にコマがいない?

 花組のみつるがW主演1回きりなのに掲載されていることからして、Wでもバウ主演すればOKなはずだ。そして、前回のまぁくんのように、学年と組の人数的に入りきらなかった場合はあるだろうけれど。雪組、枠ぜんぜん空いてるし。他組とのバランス悪すぎるし。

 とゆーと、「ステージカレンダー」の掲載基準には「新公主演した、バウ主演経験者」の他にもうひとつ、「卓上カレンダー掲載者」ってのが加わるのか?

 いきなり「ステージカレンダー」に登場するなら、「卓上カレンダー」にも同時に登場するはずだ。
 バウ主演するようなスターならば、ふつーはその前から「卓上カレンダー」には載っているもんだし。

 「ステージカレンダー」に掲載されてもおかしくない人でも、「卓上カレンダー」の人数制限に引っかかっちゃったのか?
 んじゃ「卓上カレンダー」の掲載基準はなんだってことなるけど。……こっちはグレー過ぎてわからん(笑)。新公主演してなくても載るし、してても載らない人多数だし。

 まあ、よーするに劇団の意志ってことに尽きるのだけど。
 ゆーひくんやキムくんが、番手にかかわらず掲載されたり「パーソナルカレンダー」が出ていたように、明確な「基準」なんてナイのかもしれない。
 だけど、微妙路線のファン(笑)である以上、そこになにかしらのルールを探したくなるのですよ。
 劇団の気まぐれで載らない、ではなく、こういう理由(まっつで言うなら、「主演していない」)があって(「ステージカレンダー」には)載らない、と。……その理由を作っているのが劇団であり、それゆえに劇団の意志(まっつに主演はさせませんよっと、だって別格だもーん)が見えたとしても。
 ルールがわかることは、安心につながる。
 ファンとしては、そのなかで覚悟を決めて応援できる。

 だから、暗黙の了解に過ぎなくても、劇団には通例を守って欲しいのですよ。
 2番手は次にトップになるとか、組には男役トップと娘役トップがいるとか、大劇場本公演でヒロインを務められるのはそれまでのキャリアや実力のあるスターだとか。
 通例無視の行いは、心をどこに持っていけばいいかわからなくなる。

 ふたりだけしか名前のない、雪組カレンダー掲載者を見て、なんでこんなことになってるのか、さみしく思う。
 新人公演『麗しのサブリナ』の演出は、あちこちイラッとさせられることが多かった。

 出演者の問題ではなく、演出。

 あのテンポの悪さはナニ?

 特に前半、コメディ場面が軒並み冗長になっていた。
 下級生たちにコメディをやらせるのは難しいから、スベると可哀想だから、時間をたっぷり取ってお笑いをやる時間を与えようっていう、親心?

 すっと流せばいいところを、わざわざ何拍もとって「笑わせる」ための台詞や芝居をさせることに、すごい違和感。

 ふつーにやらせろよー。
 「本公演とはチガウ笑いを」とか、余計なことは考えなくていいから。
 や、少しは考えてもいいけど、前半全部いちいちソレってのは、ウザ過ぎ。

 料理教室、使用人たち、ララビー家もタイソン家も、とにかくみんながみんな、もれなく全員が「笑わせる」ために芝居の流れを止める勢いでナニかやる。
 アドリブではなく、そーゆー演出と脚本に書き換えてある。

 1箇所2箇所なら「新公のお遊び」で楽しめるし、またアドリブならその場の勢いで楽しめることもある。
 が、もともとの演出がソレで、必死にお稽古して披露しているのがわかるだけに、もお。

 本公演も決してテンポがいいとは言えない、盛り上がりに欠けるかったるい芝居だ。
 それをさらにテンポを悪くする、って、演出家はナニ考えてんだ?
 センスがないにも程がある。

 ……ちなみに、新公演出も中村A自身でした……なんて筋の通ったアレっぷり(笑)。

 料理教室のシェフ@アーサーなんか、中村Aのいらん演出がなくても十分愉快に輝けたろうに、テンポが悪くなっているもんだから、やりすぎ感があった。
 生徒たちのキャラが全員本公演と違っているのとかは面白いんだけど、それとテンポの悪さは別。

 なかでも最悪の改編が、デイヴィッド@まゆくんの家族説得場面。

 サブリナ@みりおんとのデートに行くため、タキシードの尻ポケットにシャンパングラスを入れたデイヴィッド。
 彼を家族が説得するわけだが、デイヴィッドは聞く耳持たず。サブリナとのデートに行こうとする。
 それを、ライナス@あきらが引き留めて、わざとソファに坐らせ、グラスを割らせるわけなんだが。

 1回はソファに坐り掛け、でも坐らずに出て行こうとするデイヴィッド。それをライナスが「いいから坐れ」と言い、「わかったよ、味方は兄貴だけだ」とデイヴィッドが坐る。んで、グラスがぱりん!
 ……というのが、本公演の流れ。

 その「用があるから行くよ」「いいから坐れ」を、さらにもう1回やっんたんだ、新公。

 坐り掛けて、思い直して出ていこうとするデイヴィッド、「坐れ」と言うライナス、「坐りたくない気分なんだ」と言うデイヴィッド、さらに「坐れ」と言うライナス……。

 なんのために?

 ここでももちろん、無駄な繰り返しのためにテンポが悪くなっている。同じやりとりを繰り返すことに、意味なんかない。
 演出家は、「笑わせよう」と思ってやっているんだと思う。「志村、後ろ!」じゃないけど、危険がわかっていてそれに気づかないキャラクタを、観客が笑う場面にしているんだよね。

 でも、無邪気な「志村、後ろ!」ではなく、実の兄が弟に大ケガをさせる場面だ。気ままな弟の足止めとおしおきの意味もあるにしろ、23針も縫う大ケガをさせる件を、ギャグとして繰り返すのは、わたしには笑えない。
 さらっとやるからライナスの咄嗟の機転、笑いの範疇なわけで、何度も何度も確信的にケガをさせるよう導くのは、悪意を感じて気持ちが悪い。

 いや、「用があるから」「いいから坐れ」を何回繰り返してもいい。
 「坐りたくない気分なんだ」と言わせるのがわからない。

 坐りたくない、とデイヴィッドが言うことによって、彼がお尻にグラスを入れていることを思い出した? と、わたしには見えた。
 そんなはずはない、だってお尻にケガをしないと話が進まないんだ。そう思っていてなお、一旦坐り掛けて腰を上げ、さらに「坐りたくない」と言葉にして意思表示するってのは、よほどの坐れない事情があるのかと思う。
 サブリナとのデートはナイショだから、グラスを2つ隠し持っていることは家族に知られたくない。だからグラスを取り出すことは出来ないし、かといってお尻に入れたまま坐ったら大惨事になる。だから、坐れない、坐りたくない。
 そーゆー事情かと。

 それを、ライナスが3度坐るように命令する。「味方は兄貴だけだ」……パワーハラスメントによって。
 坐ったら大惨事、大ケガする……命令する方もされる方も、それがわかっていて、する。

「カウリ剣の儀式を要請します」
「疑わしき者の心臓に剣を突き刺し、生き延びれば無罪となる!」
「神の裁きを!!」

「尻ポケットにグラスなんか入れてないんだろう? それなら椅子に坐れ、できるはずだ」
「何度も坐れと命令するのは、尻ポケットにグラスを入れていることを知っているんだ。それでも、無実を示したかったら、椅子に坐れと……大ケガをすることで、彼女への愛を示せという命令? いや、自分の事業を台無しにするボクへの復讐? 兄はそこまでボクを憎んでいるのか……!!」
「神の裁きを!!」

 てなことかと思いました。

 殺すことが目的で行われるカウリ剣の儀式、大ケガさせることが目的で行われるグラスを入れたままの着席。

 なんて残酷な。

 まあそれはうがちすぎ、考えすぎだとしても。

 坐ったら大変なことになるのに、何度も坐りそうになって、その都度セーフなデイヴィッド、で笑わそうとする……って、そのセンスのなさにドン引きした。

 それで笑わせていいのは、「このままじゃケガをしちゃうから、助けるために周囲があたふたする」という繰り返しのみだ。
 助けよう、教えようとしているのに、おバカなデイヴィッドが何度も坐りそうになる、ああ~~坐っちゃダメだデイヴィッド!! よかった間一髪セーフ、てなこと言ってる間にまたピンチ、ダメだってば~~!!
 ならいいけど、今回はその反対。
 デイヴィッドにケガをさせるために、何度も何度も繰り返させる。「危ない!」じゃなくて、「惜しい、もうちょっとで大ケガだったのに!(舌打ち)」って、なんなの、このダークな心理。これをギャグだと思っている演出家にドン引き。

 終始この調子で、改悪されてました、新公の演出。
 笑いを取るために、大切なモノを捨ててしまった模様。
 シリアス場面は変わってないのでいいんだけど、コメディ場面、楽しい場面が悲しいことに……。
 笑いっていちばんセンスや人間性が出るよね。
 そんでもってアーサー。
 毎度思うことだが、彼は、センターで歌い踊るときの輝きが半端ナイ。

 新人公演『麗しのサブリナ』にて。

 公演がはじまる前はストーリーテラーという役自体に期待したんだが、ストーリーテラーをするのは最初だけで、あとはモブにまざってしまうので、アーサー的には残念。
 彼の得意とする、センターを取るミュージカル場面が1箇所だけなんだもの。

 唯一のセンター、料理教室場面では本領発揮、がなりを入れた余裕の歌声。

 でもモブに混ざってしまうと、やっぱりモブになってしまう。
 もともとストーリーテラーがそういう役だというのを差し引いても、あれ?という感じ。

 モブ生活の長い人だからかなあ?
 本公演でも新公でもバウでも、ぜんぜん役が付かなくて、その他大勢ばっかやってきた雑草育ちの人だから?
 前回の『虞美人』新公ぐらいだよね、「役」を演じたのって。

 1~2場面にちょろっと出るだけの「役名」のある役はやったことあっても、結局はアルバイトのモブの方がたくさん出ている状態、みたいな。
 本公演でも新公でもバウでも、とにかく「役」がつかないよね、アーサー。起承転結・物語・作品を通して必要な、生きた「役」。

 本公演は仕方ないとして、新公やバウでも、ろくに通し役もらったことない人なんだ……。
 張良せんせやコ将軍は通し役だし、いい役ではあるけれど、やっぱ場面ぶった切りでボツボツ出る役だったし新公自体ダイジェスト版だったし、なんかじっくり芝居しているアーサーを見たことがない印象。

 やっぱ本気で「役」を演じているアーサーを見てみたいっす。
 ストーリーテラーは、今までやって来たモブのアルバイトとあんまし変わらなくて、研7の新公最後の役がコレだったってのは、残念かなあ。や、『麗しのサブリナ』には役自体ほとんどナイので、ストーリーテラーが出来たことはとてもありがたいのだけど。

 新人公演『外伝 ベルサイユのばら-アンドレ編-』の革命場面のベルナールとか、本公演『虞美人』の馬と鹿の居酒屋場面とか、アーサーの真ん中スキルはすごいと思う。
 真ん中で「好きにやっていいよ」となると、不遜な輝き方をする。

 でも、脇に退くと、脇の顔になってしまう。
 戦闘意欲があることは伝わるんだけど、それはモブのときも感じるので、ストーリーテラーとしての目新しさはない。
 モブなんて本公演でもどこでもやってんじゃん、その場限りのおかしな医者役とか、今までもこれからもありそうじゃん。なにもここで今やらなくても……てな。

 アーサーの主演が見たかったよ……この人を大劇場の真ん中に立たせたらどうなるのか、心から見たかった。
 モブのときと真ん中のときと、派手さや輝度がぜんぜんチガウんだもんよー。ナニこの不自由な特性。

 モブになってしまうとはいえ、ストーリーテラーはオイシイ役でもあるので、クラブの歌手もノリノリだったし、医者のコミカルさも楽しそうに、退場時に突然二枚目に戻るあたりトート閣下を意識してる?な感じだったし(笑)、電話ボックスの男も船員もキザでかっこよかったさ。

 んで、船員として数分前に登場していたにもかかわらず、最後の挨拶時に、紫の総スパンに着替えて出てきたのは、なんなんだ(笑)。
 客席からも勢いよく笑われていたぞ。
 つか、挨拶時のその他大勢に過ぎない人が出オチで笑い取るって、はじめて見た。

 挨拶のときって、好きな衣装を着ていいものなの?
 たしかにみんな、最後の場面出来ていたモブの衣装ではなく、役がある人は役の衣装に着替えていたりするけど。

 好きな衣装を着てよし、で、アーサーはわざわざアレを選んだの??

 えーと。
 煌雅あさひって、そーゆーキャラ?(首傾げ)

 下級生時代からアーサーアーサー言って眺めて来ているけど、彼のキャラクタなんかカケラも知らないままだからなー。
 最初に眺めるようになったときって、表情ナッシングでガチガチに固まったまま「やらされている」「振付を懸命にこなしている」だけの、実に不器用なシンガーだったわけだし。
 こんだけ表情のナイ子が、よく舞台人を目指す気になったなと、ある意味感心したくらいに。

 その、顔が固まったまま懸命に歌っていた子が、いつの間にか笑えるようになり、客を釣れるよーになり、舞台真ん中でぱーっと輝くようになり。

 でもって、意味なく紫の総スパンか。

 ……ヘンナヤツ(笑)。
 世の中が星組ラインアップで盛り上がっているところ、わたしの関心事はひたすら別口にございます。
 や、『愛するには短すぎる』も『ル・ポァゾン』も『メイちゃんの執事』もみんな楽しみでございます。
 『愛短』への思い入れは並々ならぬ……つか、アンソニー@かなめくんを想像していろんな意味で眩暈がしました(笑)。幕開きから彼のソロですか、れおんくんに後ろから抱きしめられるわけですか、とかまあその。
 『ル・ポァゾン』は観たことはございませんが、音だけはえんえん聴いておりましたので、不思議な愛着がございます。昔々、有線放送に「タカラヅカch」というモノがございましてね、毎日24時間ヅカのCDを流していたのでございますよ。わたしはバイトしながらひとりのときは大抵ソレを聴いておりましてね……観ていなくても、何度も何度も聴きましたのよ。
 『メイちゃんの執事』は原作マンガは存じませんが、ドラマは全部見ました。「実写はキツイなあ、マンガなら面白いのかも」と思った記憶がございます……キツかったのは実は、ドラマの中の美少女たちの「ファンタジーのなさ」、でした。あんなふつーのかわいこちゃんばっかじゃつまらんぶっちゃけふつーすぎて見分けもつかん、もっと異世界的な美少女ぢゃないと、と(笑)。その点ヅカならファンタジーとして異世界構築できるんじゃないでしょうか。ベニー主演もうれしいです。

 しかし。
 本日わたしの心を占めたのは、別の情報です。
2010/08/19

『タカラヅカスペシャル2010 ~FOREVER TAKARAZUKA~』について


『タカラヅカスペシャル2010 ~FOREVER TAKARAZUKA~』
構成・演出/三木章雄、中村暁、中村一徳

【会場】
梅田芸術劇場メインホール

【開催日時】
2010年12月 18日(土) 14時・★18時
2010年12月 19日(日) ★12時・16時
※18日18時、19日12時公演は宝塚友の会優先公演となります。
※公演時間は(第1部:約50分、休憩:25分、第2部:約50分)合計125分の予定です。

【内容】
第1部では、今年の大劇場を中心に各組公演を振り返り、各組のスターたちが顔を合わせ、名場面をパロディも交えてお届けするバラエティーショー。
第2部では、海外公演のエピソードも交えつつ、海外公演の場面やその都市をテーマにしたショーでお楽しみいただきます。

【出演】
(専科)轟悠 他 
(花組)真飛 聖 他
(月組)未定
(雪組)音月 桂 他
(宙組)大空 祐飛 他
※星組は東京宝塚劇場公演中のため出演いたしません。
[演奏:宝塚歌劇オーケストラ]

【座席料金】
S席10,000円、A席7,000円、B席5,000円(税込)

【宝塚友の会・会員先行販売】
(抽選申込み) 2010年10月11日(月・祝)10:00 ~10月14日(木)17:00
(抽選結果照会) 2010年10月18日(月)10:00 ~10月20日(水)17:00

【一般前売】
2010年11月13日(土) 10:00~


 『タカラヅカスペシャル2010』12月開催!!

 ……16時3分にモバタカメールが来て、ベッドでごろごろしていたのを飛び起きて(笑)、PCをチェック、星組ラインアップの他に『ヅカスペ』も発表されているのを知り、とりあえずいつもの癖でデータだけ保存して、そのあと出かけた。
 アタマの中は『ヅカスペ』でぐーるぐる。

 なのに、帰宅してから公式見たら、『ヅカスペ』の新着記事消えてる?
 なんで?

 今までもフライング掲載はあったから、それだけのことかな。翌日にはナニゴトもなかったように掲載されるのかしら。ふーちゃん退団とか、『ベルばら』主な配役とか、一瞬だけアップされて、すぐに消されたよなー。

 『ヅカスペ』が12月に梅芸で開催されることなんて、通例になっているので今さら驚くことじゃない。
 わたしだって、今までそんなこと特にどうとも思ったことはなかった。

 まっつが、組替えする、とわかるまでは。

 12月開催ですよ、『ヅカスペ』。
 そして、出演は、花・雪・宙。月は未定、星は不参加。

 次に、まっつの組替えお知らせ記事を確認する。

>未涼 亜希・・・2010年10月18日付で雪組へ

 12月は、雪組子ですがな!!
 まっつの雪お披露目は来年の『ロミオとジュリエット』じゃなく、今年の『ヅカスペ』?!

 オープニングでさっそくキムと並ぶの? 緑色の燕尾なんか着ちゃうの?

 そしてそして。

>第1部では、今年の大劇場を中心に各組公演を振り返り、各組のスターたちが
>顔を合わせ、名場面をパロディも交えてお届けするバラエティーショー。

 大劇作品のパロディに、雪組子として、ナニするの??!!

 雪組の大劇作品っつたら、『ソルフェリーノの夜明け』と『ロジェ』だよな。作品的に『ロジェ』はパロディにしにくいから、『ソルフェリーノの夜明け』?
 「タカラヅカ1白衣の似合う男」として、医者のひとりでまざるのか??

 ……眩暈がする。

 それとも、前回の『ヅカスペ』では花組のまぁくん・だいもん・れみちゃんは星組のパロディ『太王四神記 Ver.II』に混ざっていた……ように、まっつもナニ食わぬ顔で花組のパロディに混ざるんだろうか。

 花組の大劇作品は『虞美人』と『麗しのサブリナ』、版権問題で『サブリナ』はいじれないだろうから、『虞美人』で来るだろう。
 すでに雪組子になった張良先生が、しれっとまざってパロやるんだろーか。

 ……眩暈がする。

 てことで、アタマの中ぐーるぐる。
 や、こちとらイタいまっつファンですから。いつもまっつまっつですから。

 まさか、出ないってことはないよな。
 花で4番目、雪で3番目なら、出るだろふつー。
 『麗しのサブリナ』が10月17日終了後、来年1月1日まで出番のない人なんですよ、お仕事入れて下さいよ。
 こちとら大阪人ですよ、8月30日に千秋楽で、次にまっつに会えるのが来年って、8月なのにもう今年は会えないって関西公演ナシなんてなんじゃそりゃあな状態だったんですよ。
 今年のウチにまっつに会えるんだ、大阪で会えるんだ。

 てことで、アタマの中ぐーるぐる。
 や、こちとらイタいまっつファンですから。いつもまっつまっつですから。

 あああ、『ヅカスペ』ナニやるんだろう。
 ぐるぐるぐる。
 新人公演を観ることで、見えてくることがある。
 その作品について。

 新人公演『麗しのサブリナ』は、本公演とはいろいろ違っていて。
 その「違い」はひとえに、主役カップルの、「恋愛」の違いだった。

 てことで、みりおん初新公ヒロインおめでとー!!
 美貌と実力を兼ね備えた若手のデビューに拍手。
 なにより、歌。
 サブリナの銀橋の歌が、あーゆー曲だとは、新公観るまで知らなかった(笑)。歌えるって強いね。

 サブリナ@みりおんが歌唱力で本役の蘭はなちゃんを上回っているのは、予想できたことだった。
 歌えるヒロインってのはいいなあ、と素直に感動。

 まあその、ぶっちゃけ蘭ちゃんも今、本公演で「毎日が新人公演!」て感じに初心者マーク付けて奮闘しているわけで。
 娘役は若さが勝負、出来上がりが早くて当然、なところがあるから、みりおんの早熟さも意味のあることだろう。

 みりおんのサブリナは、大人っぽかった。

 ロリータのかほりはしない(笑)。若い女性だった。
 そして彼女は、とても素直に存在し、恋をしている。

 それはライナス@瀬戸くんとの関係性もある。
 ライナスは冷静なおっさんで、度を過ぎることがない。女性の扱いにも慣れ、暴走することはない。

 新公のライナスとサブリナは、大人同士の恋愛で、不器用な大人と少女の恋という印象はあまりなかった。
 蘭ちゃんのサブリナが終始とまどい、思い詰めている様子なのに対し、みりおんのサブリナは楽しそうに恋をしている。そしてふと思い出したように、悩む。
 まとぶんのライナスは内なる情熱との葛藤が大きく、いろんなところで熱情がほとばしりそうになっているんだが、瀬戸ライナスは感情の揺れが少ない。作戦遂行も恋情も予定ラインからはみ出ない。

 新公のふたりの方が、より大人で、より「おしゃれ」なのかもしれない。
 泥臭い激情に支配されず、淡々と恋愛している。

 そしてこのふたりに、「ふつーにイイ子」な弟、デイヴィッド@まゆくんが絡む。

 まゆくんはどんどんうまくなるなあ。
 声とか佇まいとか、安心できるわー。
 今回は主演じゃない分余裕もあるのか、前回の切羽詰まった感はなく、とてもナチュラルにイキイキしていた感じ。

 ただ、まゆくんのデイヴィッドは、プレイボーイには見えない。
 陽気で善良な若い男の子に見える。まだ若いので自覚がなくフラフラしている20代。大学出てフリーターしてますな感じ。
 トラブルメーカーには見えない、気の良い青年。
 3度の結婚とやらも、金目当ての年上の女に騙されたんだなと思う。まだ子どもだから、世の中のことがよくわかっていない感じ。
 「ボクはドンファンなんかじゃない」と歌うのも、かっこつけたい年頃なんだな(笑)と。誰も君をそんな風に思ってないよ、背伸びしてワルぶってみせても、コドモなのは見たらわかるから大丈夫、てな。
 さらに、髪を切ったサブリナと同世代に見える。サブリナがどんどん大人びていくので「キスしてデイヴィッド」「喋り続けて」のあたりでは、デイヴィッドの方が幼く見えてしまう。

 サブリナとライナスの恋に、ふつーのイイ子であるデイヴィッドは置いて行かれちゃうのな。あっちは大人だから。

 大人ぶって口説いた年上の女の子を、大人の兄貴に取られてしまった。
 そして大人だから、サブリナもライナスも立場に囚われてはっきりしない。それを若さの特権、アツい拳一発吹っ飛ばしてしまうデイヴィッド。
 好きなら行けよ、彼女の後を追って。……ああもお、大人って面倒くさいな。

 って、そんな話だっけ、『麗しのサブリナ』。
 ストーリーも設定も同じなのに、演じている人たちの違いだけで、えらく変わるもんだ。

 やっぱまとぶんって、どんだけ抑えててもにぎやかな芸風なんだなあ。葛藤の幅が大きいし、サブリナへの愛情、傷つけたときの傷つき方がすごく深い。
 そんなまとぶんと恋をする蘭ちゃんは、重い感情を背負わされる分必然的にいろいろ悩み、追いつめられることになるんだな。
 そしてなんつっても、壮くん。あの異次元っぷりは、他の追従を許さないんだなと(笑)。

 つま先立ちの少女の恋、であり、そんな少女に本気で恋してしまいテンパってる男の物語である、本公演の『麗しのサブリナ』。
 若い女性の初恋、であり、立場のある男が自分のスタンスと恋愛の位置取りにとまどう物語である、新公『麗しのサブリナ』。

 「恋愛」というセンシティヴな部分で、ずいぶん別物になっているなと。

 みりおんのまっすぐでくったくない恋愛は、大劇場向きの資質かも、と思った。
 蘭ちゃんの繊細さが、ある意味バウ向きな気もしているのと対照的に。

 そしてみりおんは、お化粧や着こなし等、娘役スキルは足りない部分が多々あるので、これから経験を積めばさらにあか抜けてキレイになるはず。『EXCITER!!』の銀橋が、再演の今の方がキュートであるように。
 でもって、持ち味が大人っぽいだけに、早く大人になりすぎないことを祈る。娘役の旬は短いし、タイミングが難しいからなあ。
 次のバウヒロも楽しみだー。
 かわいいは正しい、かわいいは正義。
 わたしは何度となく、このフレーズを使っている。

 だがここで、新しいフレーズを導入しよう。

 おっさんは正しい、おっさんは正義。

 ……いやその、ほんとに身もフタもないおっさんっつーんじゃなくて、「大人の男」って意味なんだけど。
 大人も範囲広いから、若造に毛が生えた程度とか、子どもじゃない程度でも「大人」に入っちゃう場合がある。
 そうじゃなく、ほんとに大人ってことで、あえて「おっさん」と書く。

 花組新人公演『麗しのサブリナ』にて、瀬戸かずやのおっさんぶりを讃えよう!!

 つーことで、瀬戸くん、新公初主演おめでとー。

 路線人生を歩んできたとは思えず、なんか微妙に脇から最後に新公主演にすべり込んだ人、というイメージがある瀬戸くん。
 正直路線だとはまったく思ってなくて、「路線だったらいいのになー」と思っていた。や、だって彼、ハンサムだから。

 瀬戸くんにナニがあるのか、ナニができるのか、わからない。
 ただそのビジュアルの良さだけに着目し、「もっと出番が、活躍の場があればいいな」と思っていた。

 まさかほんとに新公主演来ちゃうとは思ってなかったよー。前回の『虞美人』2番手が到達点だと思っていた。その上があったとは。

 めっちゃうれしーです。あきら主演だー、わーいわーい!!

 ビジュアルの良さだけに着目してきた、と書いた。
 ビジュアルなんて、人の好みで最も左右される部分だ。彼を美しいと思わない人だっているだろう。
 ただわたしにとって彼は、とても美しい人だ。

 何故なら彼は、大人である。

 若者の成長が遅くなった現代において、下級生男役たちの成長もとても遅い。健康的なまるまるぷくぷくしたふくよかなオンナノコたちが男装している、そんな新人公演、そんなバウ公演、そんな大劇場モブ、の中で、すらりと整った瀬戸くんはとても美しく見えた。
 男役として早熟な、がっしり男らしい体型。シャープな頬。
 男役未満の技術の足りないオンナノコたちが言い訳にする、フェアリータイプだとかアイドル系とか美少年とかゆージャンルを一顧だにせず、最初から漢くさい路線を進む姿が、目にとまった。

 本人が実は「オレってアイドル系☆」とか目指していたかどうかは定かではないが、中性的な少年たちの間で異質なビジュアルに映った……あくまでも、わたしには。

 その恵まれたガタイとか、いかつい顔立ちとかが目に付くだけで、どんな子なのかはよくわかんない……だって、ろくに台詞も出番もないし。うまいのかヘタなのかわからん、ちっとも役つかないから。
 だから密かにビジュを楽しむだけの生徒だった。

 顔立ち自体はそれほど美形とも、好みとも、実は思ってナイんだが。
 ときどきおばさんに見えるしなあ(笑)。
 でも彼は、「姿」が美しいの。舞台人はやっぱ顔だけではなく、全身で勝負ですよ。
 あきらの体型が、わたしにはとても美しい人だと思えるのですよ。

 そんな彼の、まさかの新公主演。
 下級生時代から大人びたビジュアルが好みだった彼が、主役を演じる。しかも、作品が『麗しのサブリナ』。それも、ライナスという、おっさん役!!

 瀬戸くんの得意分野は「野郎」だと思っているので、『虞美人』の項羽のようなどーんっと漢くさく発散する系で主演してくれた方が魅力を放出しやすかったと思う。長身でスタイルがいいので、コスプレ似合うし。
 だから新公主演が決まったときは、「まゆくんと逆だったら良かったのに」と思った。まゆくんは瀬戸くんと反対に、かわいいタイプでスタイルはいまいちなのでコスプレが似合わないし。

 でも、『サブリナ』本公演を観て、これならアリかも、と思った。
 ライナスは「大人」の役だ。求められるのは「青さ」や「熱さ」ではなく、スーツを着こなす「大人の男度」だ。
 熱さを禁じられるのは残念だが、大人度……ぶっちゃけ、おっさん臭さでは、有利なんじゃないかと思った。

 実際、スーツ姿、かっけーー!!

 長身小顔が映えるわー。
 肩幅と背中に萌えるわー。

 それほど歌えるわけでもない、声がいいわけでも、芝居がうまいわけでもない。
 でも、どれも破綻はない。

 ならばもお、ビジュアル勝負でしょう。
 純粋に、そのスーツ姿を堪能しました。
 着せられてる感がなく、ふつーにスーツ着た大人の男ですよ。

 最初の銀橋ソロは危なっかしかったけれど、あとは良くなっていったし。
 サブリナ@みりおんとの最初のデートで、舞台でナマ着替えしたジャケット、ボタン留め忘れたのか途中ではずれたのか、中が見えちゃって格好悪かったけど(笑)。
 車の運転が荒くて、ちょっとびびったけど(笑)。

 舞台が進むにつれ、どんどん落ち着いていくんですよ。
 クライマックスの夜のオフィスでは、しみじみ思いました。

 研7にして、ここまで重役デスクの似合う男がいるだろうか。と(笑)。

 びしりとスーツ着込んで、どでかい椅子に坐り、どでかいデスクに腕を付いている姿が、似合いすぎる。
 ナニあの貫禄。

 ライナスは中年ではないし、瀬戸くんだってそんな風には演じていない。
 イケメンで女の扱いに慣れた(たぶん、本役ライナスより慣れてる・笑)、今が人生旬の大人の男。
 断じておっさんではない。いわば、青年だ。

 が、しかし、あえて言おう。
 青年、とかゆー、ふつーの表現ではなく、今後の期待を込めておっさんと。

 新公学年で、ナチュラルにかっこいいおっさんを演じられる人は、真ん中に少ないんだもの。
 かっこよくない、ただのおっさんならヒゲや衣装で底上げして演じることが可能だし、脇にいくらでもいるし、かといってハンサムを演じようとすると青臭くなる。
 ハンサムでありながら、大人の男、おっさんであるというのは、この現代では珍種である。月組のたまきちと共に、保護して欲しい人だわ。

 実力に特に破綻はないけど、どれも特にうまくはないので、これから場数を踏んで磨いていって欲しい。
 せっかくせっかく、素敵なビジュアルを、武器を持ってるんだから。

 そして。

 このライナスって、女遊びは適度にしているよね、と思わせる芸風も、キープしていって欲しいっす!!(笑)
 まとぶライナスはほんとに堅物だと思うけど、あきらライナスはふつーにつまみ食いしてるぞ、と思わせるピュアでない感じ(笑)を、大切にしてほしい! そーゆーとこ好きだ(笑)。
『麗しのサブリナ』は好きだ。
 が、あちこち残念なのも事実。

 原作の縛りなんぞ知らん。
 言いたいことを言うぞー。

 とりあえず、ストーリーテラー@みわっちに、ストーリーテラーをさせようよ。

 コスプレみわっちを見るのは楽しいし、ツボでもあるんだが、途中からストーリーテラーでなくなってしまうのがもったいない。
 暗転で使う時間をみわっちタイムにしちゃえばいいのに。暗転長くてうんざりするから、そこにみわっちと、その前後の場面の関係者何人か連れてきて、出番の少なさを改善するとかさー。

 そして、ライナス@まとぶんにも、主役っぽいことをさせる。

 心が揺れ動いて歌になる、てのが、見事なまでにサブリナ@蘭ちゃん中心なのな。
 サブリナがデイヴィッド@壮くんとライナスとの間で揺れ動く→サブリナの独白or歌。てのは何度も繰り返されるのに。
 ライナスが騙しているはずのサブリナに惹かれていく→ナニも無し。ラストにとりあえずあるのみ。
 最後の分かり切ったところだけじゃなくて、途中の「揺れ動く」ところにこそ必要なんですよ。

 サブリナの場面1個削って、ライナスにしようよ。

 騙しているだけだ作戦なんだ、惹かれてなんかない……でもいいし、どーして弟の恋人なんだ、オレじゃダメなんかい……でもいい、挿入する位置に相応しい心の爆発ソロを入れる。
 出番の少ない人々のためにライナス銀橋ソロの間、本舞台に人いっぱい出していいから。ララビー社のテキパキリーマンズと華やか女性秘書たち、取引相手のタイソン@さおたさん一家も是非。ライナスさんの背負っているモノの表現、台詞ナシで踊ってるだけでイイから。

 で、どんだけソロで苦悩しても、ライナスさんはサブリナを騙す現実に立ち戻っていくのですよ。……切ないじゃないですか、もどかしいじゃないですか。
 観客は「どーして自分の気持ちに気づかない(正直にならない)のよ?!」とやきもきする、と。

 んで、クライマックスをベタに盛り上げたい。

 ここはタカラヅカ。タカラヅカならではの、お約束の展開ってのがあるじゃないですか。
 ライナスに惹かれてしまい、混乱するサブリナ。
 サブリナをこれ以上騙せなくて、真実を告げてしまうライナス。
 突然サブリナから別れのキスをされたデイヴィッド。
 三角関係モノで、主人公3人がそれぞれ決定的な出来事があり、眠れない夜を過ごしているんですよ。

 ここはもちろん、愛の三重唱でしょう。

 ララビーオフィスにて、ライナスとサブリナの会話だけでだらだら時間を取らないで、サブリナがデイヴィッドに別れのキスをする場面を舞台端でいいから挿入。
 デイヴィッドのとまどいのソロ、サブリナの嘆きのソロ、ライナスの苦悩と決意のソロ、それがついには三重唱になる。
 本舞台銀橋花道全部使って、派手にとことん盛り上げる。ここがクライマックス!! みんなどーなっちゃうの?! と、観客の涙をあおり、ハンカチをきりきり噛みしめさせるのですよ!

 んで、ライナスに集約、あとは今と同じ朝のオフィスへ着地。
 涙ながら旅立つサブリナも、「抜糸したっ、新品同様だーー!!」とキラキラ現れるデイヴィッドも同じ。

 兄弟の言い争いも「株のことはわからないが、キスならわかる。別れのキスだった」というデイヴィッドの台詞も、そのままつながる。

 誰が主役なのかはっきりしないまま、いつも同じテンションで物語が流れ、ストーリーテラーがいつの間にかモブになり、クライマックスがどこかもわかんない……今のままは、もったいないなあと。
 原作映画通り、カケラも変えてはいけないという契約なのかもしれんが。
 それにしても、立ち話だけのクライマックスはナイよなあ。

 
 今のままでも、実はいちばん泣けるのが、サブリナが真実を知る、夜のオフィス場面なんですがね。

 好きな男に、ここまでやられたら、パリに行くしかないよなああ。

 ライナスに惹かれていることに混乱して、このままじゃいけないと自分を律しているところに、ふたり分のパリ行きチケット。
 愛されてたんだ! 弟の恋人をパリにさらって逃げるほどに。
 ライナスは私の気持ちなんかお見通しだった。だからもう私は、迷わず彼についていけばいいんだ。

 そう舞い上がった直後に。
 全部嘘だったと告げられる。

「君が障害だった」

 障害て。障害って。
 や、たしかにそうなんだろうけど、好きな男にそう言われるって。

 デイヴィッドを忘れさせるために、心変わりさせるために、口説かれていた。
 ふたりの間で揺れ動いたのはとーぜん、だってそのつもりで踊らされていたんだもの。

 んで、完璧にただの嘘、騙されただけだとわかれば、怒るだけで済むが。

 ライナスが苦しんでいることまで、わかってしまうから。
 彼の誠実さ、自分を傷つけまいと今種明かしをしてしまったこと、そんなことが全部わかってしまうから。

 救われない。

 空っぽの船室に花と別れの手紙(代筆)が置いてある、と洞察したサブリナに、「それだけじゃない!」とあわてるライナスが哀れだ。「アパートと車と銀行口座と」傷つけたくなくて、誠意を尽くしたくて、でもその方向が間違っている仕事人間。そーやって、愛する少女を自分の手で、ずたずたに傷つけて。
「寛大ね」
 とつぶやくサブリナを見る、ライナスの目が。顔が。
 哀れで、滑稽で、切ない。

 ふたりともが、ふたり分、傷ついた。

 翌朝の、父@はっちさんと別れるときのサブリナが、いい女だ。
 たった一晩で、彼女は「女」の顔になっている。少女ではなくて。
 自分の傷を、真実を、誰にも告げず、全部ひとりで飲み込んで、旅立っていく。

 てのがなあ。
 切なくていいんだよなあ。

 もともと大好きな場面だから、今のままでもいいっちゃーいいんだが。
 ミュージカルとして、「タカラヅカ」として、盛り上げることは可能なのにな、と。
 それでもわたしは、キライではないのだ。
 ストーリーナッシングの、設定だけで出来上がった物語が。

 ハッピーになれるナニかが、そこにあるならば。

 『摩天楼狂詩曲』にあるのは、そのアホらしい物語に「温度」を加える力だ。

 主役アンソニー@ともみんの力は大きい。

 彼を見ていると、信じられるんだ。
 アホらしいとか恥ずかしいとか、彼がカケラも思っていないこと。むしろ、本気で「感動物語」だと信じて演じていること。

 1観客としては「マジっすか??」の連続、笑っていいのかネタ公演としてやっているのか、スタッフ側のスタンスを疑うくらい恥ずかしい作品に見えるんだけど、少なくともともみんを見れば、彼がネタなんてとんでもない大マジだってわかる。
 だからもお、それでいいのだ。
 彼を信じ、彼についていけばいいんだ。

 てことで、ツッコミは入れつつも、素直に楽しんだんだ。

 
 ストーリーやスズキケイの恥ずかしさについてはもう、いくら語っても同じことの繰り返しになるので(そしていくら語っても語り足りないくらいなので・笑)置くとして、メイン以外のキャストの感想。プログラム買ってないんで、わかる範囲で。

 レコード会社社長@ギリーが、大人だった。
 『ワルフザケ』のときの、嘉月さんを思い出した。マミさん相手に、年配役をやってたよなあ。あのおっさん社長を思い出していた……カオの重心とか似てるか。
 美少年顔であるために、立ち位置の難しい人だったんだが、イイ感じに大人になってくれた。おっさんOKだったら活躍の場が広がるよね。やる気……というか、鼻息の荒い人というイメージなので(笑)、これからも意欲的に舞台で活躍して欲しい。

 ヒロインの友だち、クレア@せあら。
 うまい。
 とにかく、うまい。
 華と美貌と実力、さらにヒロイン経験、すべてを持ち合わせている彼女が脇に回っていることで、舞台が華やかに底上げされた。
 ……あまりに、彼女ひとりの肩に多くのものがのっかってる危惧はあるが……せあらなら大丈夫だよね。

 ノーマン@りまくん。
 ごめん、なんか最初からツボに入って笑えた。わたしは彼を内心「ぱんだくん」と勝手に呼んで愛でているのだが、その可愛らしい顔でクールなビジネスマンをやっているところからツボだったんだ……しかも後半あんなことになってるし。

 個人的にすごーくすごーく気に入っているのが、アイス様@みやるりが、ノーマンの鞄を蹴るところ。
 めっちゃ練習して、ふたりでタイミング計って、「今だ」「よしっ」で蹴ったのがわかる、あの微妙な空気にウケた。ここがあまりに嘘くさくて、先の展開が読めるのも、どーかと思うが……。
 スズキせんせ、恥ずかしいよなあ。アレ、やらせなきゃならなかったのか。生田せんせがだいもんにテーブル滑らせたよーに、みやるりにもアレが必要だったのか(笑)。

 デザイナーのトーマス@まいける。
 まいけるといえば、出オチの伝説のロックシンガー・マイケル役がありますが(笑)……あっちはアルバイトで、本役はデザイナー君だよね?
 台詞もないときから、通行人として目立っていた。

 かわいいんだもん。

 なんか、ゆーひさん系のファニーフェイスだぞ……どうしよう、かわいい。
 派手な衣装で目を引くってばよ。
 ヲカマさんとか、なにかしら強烈なキャラクタなのかなと勝手に思っていたら、ふつーの人だった。
 子役専科の彼は、立ち位置探しをする頃なんだよな。どうか良い位置に落ち着きますように。

 アンソニーのバンド仲間たち、朝都、十碧、麻央はオイシイのかそうでないのか、いまいちわからないというか。
 『逆転裁判』の陪審員や『THE SECOND LIFE』のマフィア仲間たちよりは、人数が少ない分イイのか。
 個別認識できるエピソードもないので、そのうちのひとりが「喋った!!」と驚く場面で、え、喋ってなかったっけ?と、こっちが驚いたもんよ。朝都くんは顔の目立つ子なので、モブでも目に残るんだが、喋らない設定のキャラだとは気づいてなかったよ。

 紅一点のメグ@華雅ちゃんは、ナンシー@はるこちゃんと役替わりする子なんだね。
 スカフェのやり過ぎっぷりからイメージするまんまの舞台姿に、潔さを感じた(笑)。器用で鼻息荒くて早熟で。男子でこのテのキャラはアリだが、さて、女の子ではどうだろう。
 ナンシー役にこそ注目だな。こっちも鼻息荒かったら、いっそ素敵かも(笑)。

 ところで、バンドシーンは彼らが実際に弾いてるんですか。見てたらわかるもんなんですか。
 わたし、見ててもわからなかったし、てゆーか、そんなことだけは絶対にあり得ないと思い込んで、いつ生バンドがカーテン奥から登場するんだと待ちかまえてたんですが。や、ナマだってことだけはわかったので、後ろにバンドの人がいるのかなと。うまいヘタではなく、音の勢いだけで。

 ナンシー母@柚長が、アイス様@みやるりをはべらしている姿に、強烈なデジャヴ。
 こーやっておねーさまは、若いツバメをはべらしてましたっけねえ、『ヘイズ・コード』。や、あれはツバメではなく秘書って名前でしたっけ。
 わずかな間に、大人になったなあ、みやるり……。

 アイス様のカユさは、癖になりそうな類だと思っています。
 アイス役は、ふつーにこなしちゃうと面白くない。みやるりみたいにいたたまれない感じをかもしだすか、しーらんみたいに赤面レベルまで行くべきでしょう。(見てないくせに、しーらんを語るか!)
 前者はかなめ姫とかきんぐとか、後者はらんとむ氏とかだいもんとか。(2番手と89期で当てはめてみました)
 盛大に客席を爆笑悶絶させておいて、え、出番アレで終わり?な尻切れトンボ感もまた、素晴らしいです、アイス様。

 つかナンシー母、「社員の裏切りはわかんないダメ社長だけど、娘のことならわかるわ!」とどや顔で言うのはどうかと思います(笑)。社員のことは信じて騙されて、娘のことは疑って騙すのか。騙す前に、問いただせよ、会話しろよ。……嫌な母娘だ(笑)。

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