伝説のロックスター、マイケル。
 主人公アンソニー@ともみんの、憧れの人。

 さんざんマイケルの素晴らしさを語られているので、そのマイケルらしき人がシルエットで登場した瞬間、誰もが思ったはずだ。
 ああ、やっぱりみきちぐなんだ。

 みきちぐはアンソニーが常連しているライブハウスの経営者。この物語で唯一の大人。アンソニーの良き理解者、叱ったりからかったり勇気づけたり。

 キャスト全員見回しても、伝説のスターを演じられる人はみきちぐ以外にいない。
 だからシルエットを見たときに納得、あの小さな姿はみきちぐだろう、やっぱりな。

 伝説のロックシンガー・マイケル!!
 そーやって現れたその人は!! まいける、だった。

「……ギャグ?」

 隣の席の見知らぬ人も、ぼそりとつぶやいていた。

 マイケル@まいけるって……!!
 伝説のスターがまいけるって……!!

 いやその、まいけるはうまい人です、いつもきちんと仕事をこなしてくれる人です、それはわかっています、しかし。
 このキャスティングは……出オチ狙い?(首傾げ)

 
 ツッコミどころ満載、んとに素敵な作品です、『摩天楼狂詩曲』

 作者が若い男性であることが痛感できる、男子的萌えが詰まった作品。ゲームか少年マンガだと思えば問題なし。
 スズキケイの好みの女の子は、学級委員の優等生美少女(もちろんさらさらロングヘア)で野球部のマネージャー、いつも遅くまで練習している彼のことをずっとグラウンドの陰から見守り、疲れた彼にタオルとドリンクを差しだし、「きっと甲子園に行けるわ、私信じてる。ずっとあなたを応援してるわ!」と言ってくれる子なんだね。
 そして、そんな女の子に「甲子園のマウンドで君に捧げる球を投げるよ。そのことを、この白球に誓う。このボールはその誓いの印だ。今日は俺たちの愛の記念日だ」と汗に汚れたボールを差し出す……のを、「かっこいい」と思っているんだろう。んで、女の子が感激の涙で受け取り、ふたりは夕陽の中で固く抱き合うの。
 
 女子からすりゃ、そんな「都合のいい女」、少年マンガかギャルゲーの世界にしか生息しないことはわかっているが、スズキケイはマジなので。マジでそーゆー女の子が好きで、そのテのヒロインばかり描き続けているので(笑)。

 男子脳で構成された、わっかりやすい少年マンガ『摩天楼狂詩曲』。
 主人公はとことんうるさい熱血野郎。ライバルは人格ナシでも「キザでカッコイイ」ことだけ言及。「あなたの夢を応援しているわ」と瞳キラキラ胸の前で両手を組むヒロイン、物理的な説得力はなくても「がんばっている」「熱意」「誠意」で夢が叶ってハッピーエンド。

 いいんじゃないっすか。ファンアイテムってのは、キャストのファンのみが楽しめればそれでOKなもの、世間的に名作である必要はない。リピート前提だから軽くて楽しいのがいちばん。
 
 キャストが魅力的なら、それでいい。

 主役のともみんがその体育会系の持ち味を遺憾なく発揮して、2番手役のふたり、みやるりとしーらんにトンデモな見せ場がある、それだけで役割を果たした作品だと思う。
 客席が笑いに包まれ、ツッコミ入れつつ爆笑失笑しつつ、あたたかい空気に包まれていた。

 しかしこの「夢を叶える」系の物語は、ジャンルによっては見せ方が大変だなと思う。『Paradise Prince』の「300万ドルの絵」のよーに、「成功」を納得させる「成果」を示すのはかなり困難。

 スターを夢見るアンソニーとそのバンド仲間たち。
 彼らはえんえんオーディションにチャレンジ、そして落ち続けている。
 落ちてるんだよね、こんなんじゃ評価できない、歌手デビューできないと。

 なのに、ラストはデビュー決定、スターへの切符を手にした! ハッピーエンド!!

 オーディションに落ち続けた曲と、ラストのレコード会社社長@ギリーの前で披露した曲が別だったのかどうかはおぼえていないが。
 技術的なことや、彼らの持ち味やスター性は、オープニングとラストで、ナニかが決定的に違っているということはない。ともみんの歌唱力も、バンドメンバーの腕も変化ナシ。
 その間、死ぬほど練習したわけでもなく、むしろ恋人とうまくいかずに練習には身が入ってない状態だった。
 なのに、デビュー決定なのよ、人気バンド決定なのよ。

 えーと、悩んだ分、人間に深みが出来て、ソウルのある歌を歌えるよーになった、ということなのかしら?
 本当は実力もスター性もあった、ただそれを見抜く能力のある社長と出会わなかった、悪いのは周りであって、主人公ではない、ということなのかしら?

 もちろん、説明はされている。
 ギリー社長が動いたきっかけは、アンソニーが幻のロックスター・マイケルを崇拝しているということだ。
 伝説で幻なので、今の若い子たちは誰もマイケルを知らないか、興味がないらしい。誰もマイケルの曲をカバーしたり、それに影響された歌を歌わないらしい。
 それってつまり、マイケルに現在の商品価値がない、売り物にならないってことじゃあ……と思うが、社長は大のマイケルファン。マイケルの曲をカバーしたデモCDを聴き、アンソニーに興味を持った。
 そして、アンソニーのナマの歌を聴く前に、彼自身が知らない出生の秘密……ぶっちゃけ、マイケルの息子だということを知る。

 お膳立ては完璧。
 アンソニーとその仲間たちが、オーディションに落ちまくっているときとなんら変わらなくても、社長に認められることになるのは必然。

 社長の大好きなスターの息子だから。
 アンソニー自身に実力も魅力もなくても、マイケルの息子で、マイケルを尊敬し、マイケルのような歌を歌う……これだけでオールオッケー、さあ契約しよう、君たちは明日から大スターだ。大丈夫、宣伝さえすりゃ、スターを作るコトなんて簡単さ。

 たしかに、辻褄は合ってます、スズキせんせ。
 しかしコレっていいのか……? ラストのぶっちぎりぶりに、『落陽のパレルモ』を思い出した(笑)。平民だからダメと言われていたら、ああらびっくり、ほんとはえらい貴族の息子だったから障害全部クリア、ハッピーエンド。って、主人公ナニもしてへんやん!!てな。

 しかも、最後の最後に歌うのがみきちぐで。
 説得力のある歌声で。
 ちょっと待て、ともみんの「この歌で大スター決定??」という微妙な歌をえんえん聴かされたあとに、みきちぐに歌わせるのはどうかと。
 全部、みきちぐが持っていった(笑)。

 いやその、ある意味すごい説得力なんだけども、だから社長はここまでマイケルに入れ込んでいるんだと納得できるけども、それにしてもそこでそーゆー納得をさせるのはどうしたもんかと。やっぱ社長、アンソニー単体にはなんの興味もないんじゃあ……。

 脚本には、ツッコミどころ満載ですよ。
 それでも楽しい『摩天楼狂詩曲』。

 うるさくて人騒がせで歌が微妙でも、アンソニー@ともみんは愛すべきキャラクタだ。
 彼の温度ごと熱意ごと、アレな脚本(笑)をスルーして、抱きしめたくなる。

 なんの説得力も現実味もなくても、「がんばっている」「熱意」「誠意」でハッピーエンドになる世界観を、愛しいと思う。(ただ、スズキケイは恥ずかしいと思う、あちこち・笑)
 えー、星ファンの方々にもキャストファンの方々にも演出家ファンの方々にも、まったく無関係なところでツボっていました、『摩天楼狂詩曲』

 『摩天楼狂詩曲』の感想ではあるが、まったくもって感想としての価値無し、個人的な思いこみ。

 ヒロインのナンシー@はるこちゃんが、まっつに見えた。

 …………ちょ、石投げないでっ!!

 自分でもおどろいたんだからっ。

 わたしがイタいまっつファンで、日々まっつのことばっか考えているから、ありえない妄想を見たのだとしても。
 2時間、みょーに愉快だったのは、事実。

 はるこちゃんの写真を見てもなんとも思わないし、『リラの壁の囚人たち』だってなんとも思わず見ていたわけだし。文化祭で愛希れいかくんを見たときのよーな衝撃はなかった。

 だが、プログラム写真より「おとめ」写真よりずっと頬のほっそりとした、サイドの髪すっきり前髪半分のナンシー役のはるこちゃんは、耳の位置や目の詰まり具合や鼻の付け根の角度など、さらに体型のバランスなども、みょーにまっつを彷彿とさせた。
 あれで鼻を長くすれば完璧じゃん? 鼻を伸ばせば、つまり顔も縦にのびるわけで、そしたらますますまっつに。

 あくまでも、舞台化粧や今回の髪型の効果、素顔はまったく似ていないとしても。

 相似に気づいてしまってからは、なんとも不思議な感覚に。

 まっつがヒロインやったらあんな感じ? いやいや、まっつは男子なのでヒロインはできません。
 まっつが女装したらあんな感じ? いやいや、まっつは男子なので女装したらいたたまれない姿になるでしょう。
 ちっこくてもまつださんは悲しいほど男なので、演出家も彼を女装させたり女役をさせたりは、まったくしませんもの。似合わないことがわかってるだろうし。
 てゆーかなんつっても、声。
 あんなに男らしく低い声をした人は、女の子のふりなんて出来ません。

 舞台の上のナンシーちゃんは、ピンクの似合うかわいいOL。女子度の高いけなげヒロインですよ。男子の夢(笑)が詰まったようなオンナノコ。きれいな女の子らしい声、可憐な仕草。まっつを重ねるのも困難なほど、完璧に女の子、完璧にヒロイン。

 てことで。わたしは首をひねる。

 まっつが女の子に生まれていたら、あんな感じ?

 顔もまっつほど細長くなくて、カラダも曲線のある華奢さで。でも8頭身とかのバーピー体型じゃなくて。
 そっかあ、まっつが女の子だったら、あんな感じかぁ。こんだけ等身バランスに違和感ないのは、ぶっちゃけ、身長も似たよーなもんなんだろうし。(暴言)

 ともみんが相手なら、爪先立ちのラブシーンができるんだね、まっつ……。(妄想が飛躍してきてまつ!)

 
 とまあ、変なところでツボってますが、『摩天楼狂詩曲』は面白かったし、はるこちゃんはうまくて可愛くて、とても素敵なヒロインでした。
 次に見るときにはもうまっつには見えないかもしれないし、や、そもそも見えなくてイイので(笑)、これからも活躍してくれることを期待しています。

 んで、女の子並にちっこくても、まっつが男子なことがうれしいです。
 『摩天楼狂詩曲』って、どんな話?

 スカステで放映している、CMまんまの話(はぁと)。

 ともみんがキザりまくってなんか語ってるCM、あれ、まんまの世界観。

 本日初日、客席はみんな潔く爆笑していたけれど、たぶん作ってる方はアレ、ウケ狙いじゃないから、ネタじゃないから。
 マジだから!!

 という、あちこち、いたたまれない話。

 いやその、とにかくCM見てみて。あれでくすぐったくならない・マジに「夢を追うってすばらしいわ」と感動できる・ナナメにツッコミ入れない、そーゆー人なら、別の受け取り方があると思う。
 でも、CM見てウケまくってあちこちカユくなってツッコミまくった人間には、『摩天楼狂詩曲』はなかなかどーして、腹筋を鍛えられる系の、愛すべきファンアイテムでした。
 なにしろタイトルからして『摩天楼狂詩曲、と書いてニューヨークラプソディーと読む、さらに副題-君に歌う愛-』とキタもんだ。
 どっから突っ込めと(笑)。
 

 1幕終わったときの、ぽかーん感……。

 ストーリーが、ない。

 1幕はたった45分で終わったんだが、登場人物紹介のみで終わった。

 ストーリーがない。なにもはじまってない。出てくる人たちが名前と立ち位置の説明を順番にしただけで幕が下りた! すげえよ鈴木圭!! これってどこの『逆転裁判』?!

 ぶっちゃけ、2幕だけ見れば話はわかります。
 出てくる人たちがゲームキャラ並にスキル別になっていて、「剣を持ってるから勇者ね」「三角帽子だから魔法使いね」てなふーにひとめで役割がわかるの。で、役割通りの仕事をするの。つか、それしかナイの、しないの。
 だから「登場人物紹介」である1幕を観てなくても、物語のある2幕から観ても、全部わかるよ。

 見た通りのキャラが、思った通りのことをして、予想した通りの結末に落ち着く。

 裏切らない物語。

 よくある話だっつー以前に、既視感ばりばり。
 『逆転裁判』で見たわコレ、とか、『THE SECOND LIFE』で見たわコレ、とか。スズキケイ、引き出し少なすぎ……つーか、同じことばかりあえてやるのは、ソレが彼の萌えだからか。

 とりあえず、「夢を語る若いふたりの回想シーン」と「フェミニンなスーツやワンピのOLヒロイン」てのはスズキケイのはずせない萌えらしい。また、『逆裁』『SECOND LIFE』でまいらちゃんのアテ書き固定キャラかと思われた「常識的なヒロイン……の親友の、うるさいトラブルメーカー女」は、ジェンヌの問題ではなく、スズキケイの持ちキャラだったらしい。

 スズキケイが『逆裁』を演出したのは正しい人選だったんだなあ。
 オリジナル書いてもゲームみたいな話になる人なんだ……。

 『逆裁』が面白かった人にはOKだと思います。

 伝説のロックシンガー・マイケルに憧れる売れないロックバンドのヴォーカル、アンソニー@ともみんはいつまでたっても「オレがてっぺんを取るぜ!」と言うばかり。就職もせずに楽なバイトで食いつなぎ、オーディションにも落ちまくっている。
 社長令嬢で母親の会社でOLやっているまともなヒロイン・ナンシー@はるこちゃんは、恋人アンソニーのそんなところが許せない。彼の夢を応援するとは言ったけれど、あれから4年、ナニも変わらないのだ。
 しかもアンソニーは、ふたりの記念日を忘れてるし! 愛を誓った思い出の場所で、「ナンシーに捧げる愛の歌」を毎年歌ってくれる約束なのに、ふたりの愛のアニバーサリーなのに!!(この設定すげえ!! スズキケイのオトメンぶりに拍手・笑)
 しかもナンシーには、母親お勧めの超美形エリート・ビジネスマン、アイス@みやるりが猛烈アタック開始! 彼はナンシー母の会社の協力者なのだ、会社を立て直してくれちゃう救世主なのだ。なにもかもアンソニーとは正反対、大人で経済力があってやさしく紳士なアイス様。
 ナンシーだけでなく、アンソニーもまたアイスを見て揺れ動いてしまう。自分の生き方に疑問を持ってしまう。夢なんか、あきらめるべきなのか……?

 
 えーとえーと、とりあえずともみん素敵。

 裏切らないともみんがそこにいる。
 想像するままのともみんがいて、力任せに爆走している。いいなあ、ともみん。

 んでもって、みやるりが大変。
 わたしはみや様がどんなキャラなのかよくわかっていないんだが、彼のノーブルな美貌から、ネタキャラよりはシリアスキャラの方が似合う人だと思っている。
 ゲームに出てくる典型的なライバルキャラ、男子マンガに出てくるバラの花をくわえたキザ男(あくまでも、イメージ。そんなシーンはナイ)を演じるみやるりっつーのは、ソレがみやるりであるというだけで、いたたまれなくなる。
 ひょっとしたら本人は悪ノリ大好きで『逆裁』のエッジワースのモノマネを大真面目に髪型や衣装まで自作して宴会で披露するタイプだったりするのかもしれないが(あくまでもイメージ、その事実はナイ)、そーゆーキャラには見えない以上、そんなキャラを演じる様はなかなかスリリングだ。

 一方、しーらんに関しては上記のネタキャラ全部ノリノリ易々とやってのける人物だと、勝手に安心しているため、「この役をしーらんが役替わりでやるのか」ってことについては、なんの疑問もない。
 つか、しーらんならハマるだろうなあ。うまいだろうなあ。ラクラクだろうなあ。……安心出来過ぎて、あまり気にならない。

 そして、現在しーらんが演じているヘタレなバーテン・エディー役を、みやるりがあの美貌で演じるのかと思うと、その方がいたたまれなくて、……気になる(笑)。
 や、しーらんは完璧です。うまいわかわいいわ……絶妙過ぎ。この役替わり、どっちにしろしーらんの方がハマるんじゃないかなと思う。しーらんなら、安心してトンデモキャラとトンデモ世界観に酔えるもの。いやあ、実にいいキャラクタだ、しーらんって。

 てことで、アイス様@みやるり素敵。

 ……文章のつながりがおかしいですが、キニシナイ! しーらんの方が違和感なくハマると予想しつつも、みやるりアイス様のこそばゆさに乾杯!!

 女はべらしてウハウハで指さしダンスで、腰振って回して、バチコーンとウインク決めて。
 友人のkineさんが「スーパーアイス様タイム」とか言ってたけど、まさにソレ。アイス様のアイス様のためだけの、素晴らしい見せ場がある。

 みやるりやしーらんに興味がある人は、是非彼らがアイス様を演じているときに見に行って欲しい。アレは、一見の価値がある(笑)。

 とにかく、作品がどんだけツッコミ満載でも(笑)、ファンアイテムとしてアリだと思うよ。
 キャストのファン、星組のファンなら楽しめる!!
 『EXCITER!!』のMr.SOのロールスロイスのことは、ナニも考えたことはなかった。
 たしかに初演で最初に登場したときは、その小さな車に大人がふたりの押し込まれている姿に笑ったけれど、それ以上にMr.SOの前髪に釘付けで終わっていた。

 が。
 再演になった今。

 壮くんの足コギを、この目で見た!!ときに、震撼した。

 前方上手端にたまたま坐った回があった。
 ここってクラブ場面で絡むえりまつの絶好ビューポイントだよね、てな程度の認識だったんだが。なにしろ端っこだから、舞台ナナメだし。

 「Mr.YU」のミュージカル場面で、車通勤の人たちがいる。小さなベニヤ板製の車に乗った彼らは、すごい勢いで下手から上手へ走ってくるわけなんだが。
 動力が別にあるよーには見えないから、自分たちで動かしているんだろうことは、想像がつく。
 だが、想像がつくことと、実際、この目で見るのでは、破壊力がチガウ。

 ちいさなローラー付きの台のよーなものにまたがった壮さんが、膝から下を高速回転させて、足コギしてるのよ、アレ!!

 上手端だと見える。ベニヤ板の裏が。

 カオは客席の方に向けてMr.SOとして演技してるんだけど、足は高速回転。
 2等身のカラダにえりたんのカオが乗っている、ような違和感。
 そしてその不思議なイキモノが、こちらに向かって爆走してくる!!
 スピード早っ。
 足コギ早っ。

 いやあ、もお……。
 すごいもん見ました。
 思わず口元押さえた……「ぶはっ!!」って、マンガみたいに笑った……爆笑シーンで良かった、みんなも笑ってるからわたしの笑い発作も目立たないはず……あ、あれは破壊力ハンパねえぇぇ……ありえない……。

 えりたんに恋に落ちそうな一瞬でした。

 あの水面下で足掻き続ける白鳥のような姿を見たら、恋に落ちますよ……たまらん……。ハァハァ。

 
 そのえりたんの誕生日にも観劇していたわけなんですが、クラブ場面で壮まつの絡みが多くて眼福でした。

 初日とその翌日、まっつはひとりでぼーっと立っていることが多く、壮くんとはあまり絡まず。
 初演『EXCITER!!』では、なにかといちゃくらしてたのしませてくれた、壮くんとまっつ。東宝になるとフジイくんの了承を得たのか、なんとなくライトも明るくなり、椅子も客席側を向いて置かれ、「さあ、見てくれ!!」と言わんばかりに変更されていて、その慎みのなさにかえって赤面したものですが(笑)。

 なーんだ、再演ではリセットされてる。
 ライト当たってないから暗いし、椅子も舞台側だ。

 まっつもすっかりリセットされて、壮さんには興味ない様子。

 ……が。

 んなこたぁーない。
 回数見るウチに、いろいろキました、小芝居。

 なかでもやっぱ、壮くんの誕生日はやたらめったらいちゃついてました。
 肩に手を置くわ、耳元でなんかささやいてるわ。坐っている壮くんにカオを近づけて、なにか耳元でこそこそ話している姿なんざ、ごちそうさまですよ。

 お互いに接触度高いんですねー。
 まっつはわりと遠慮しぃというか、相手を触っている、風でも実際には何ミリか手が浮いている感じ。衣装を汚しちゃいかんとでも思っているのか。
 壮くんはおかまいなしに、相手に手や腕を置いたりしている感じ。

 別の日だけど、壮くんの席にまっつが勝手に坐っちゃって、壮くんが現れると大仰に席を譲ってみせたり……仲良しだなあ。
 仲良きことは美しきかな、てことで、ほんとに美しいですな。黒タキの色男ふたりがじゃれている姿は。

 ムラ千秋楽とかニュース用カメラしか入らないし、入ってもまとぶんと蘭ちゃん映していて上手端なんて映らないんだから、壮さんいっそ、まっつのこと思い切りいじってくんないかなー、組替えの想い出作りに(笑)。

 
 んで、今度は前方下手端に坐ったときに、はじめて気づいた。
 わたしが上手端の壮まつに釘付けになっているあたりで、下手端ではちゃんとライトもらって、蘭ちゃんにみつるくんとかか絡んでたのねー。
 いいなあ、ライトもらってるから、明るくて見やすくて。
 壮まつなんか暗いから、遠いと見にくいんだよーっ!(本筋ぢゃないんだから当然です)

 はじめて気づいたといえば、まとぶさんの客席降りもね……うふふあはは、「『EXCITER!!』って客席降りないよね?」「ナイナイ、銀橋に階段ついてるけどアレ、ポーズ取るときに使うだけだし!」てな会話をしたまっつメイトなわたしたち。
 まっつ見るのに必死で、まとぶんが客席降りしてるの、マジで失念していた……初演フタ桁見て、再演もリピートしてる立場で。
 自分が前方席で、まとぶんが目の前まで来てくれてはじめて気が付いた……うふふあはは、ソレってボケすぎよ、こあらった。

 だってだって、後ろの隅からオペラでご贔屓だけガン見していたら、他でナニが起こってるかさっぱりわからないんだもん。
 客席降りでかまってもらえるよーな席にはまず坐れないんだしさっ。

 めずらしく坐った前方席で、ふと気づくとまとぶさんが目の前にいて、「え、なんでこんなところにゆうくんが?!」とびびる。(前方席でオペラばっかのぞくのは大概にしましょう)
 そっから先は、まとぶさんに釘付けで、気が付いたらまっつ、銀橋渡って行っちゃってたんだなこれが! あああ、二兎を追う者は一兔をも得ず~~!!

 
 まあそんなこんなで、通ってます。

 167.5cm。

 はるちゃんの、男役時代の身長です。

 で。

 167cm。

 今も男役でがんばっている、まっつの身長です。

 で。
 『EXCITER!!』にて、このふたりは今、恋人同士です(笑)。

 はるちゃんの膝、がんばれ!! まっつより小さくなるんだ、負けるなガッツだ気合いだ!

 韓信様@みわっちに寄り添う桃娘@だいもんぐらい、はるちゃんががんばってくれているのが、いじらしいです(笑)。
 はるちゃんなあ、転向してもしばらくはそのままの身長で通してたから、「組内高身長順一覧(男役は青字、娘役は赤字)」を作ると、まっつより上にいたんだよね、赤い文字で書かれたはるちゃんが……(笑)。

 それが今、改めて彼女の身長をチェックすると。

 164cmになってました。

 立場が変わると、身長も変わるんですよね。

 まっつは雪組に行ったら、身長表記変わるのかなあ……。(その昔、汐美さんは「雪169cm」→「月167cm」と組替え後1年くらいで変更してました。組によってチガウんだね……笑)

 てことで、「2010 Handy Takarazuka Otome Flower Troupe」買いました。
 なぜかこのへっぽこサイトからは、Amazonにリンク貼ることもできませんが。(ふつーの「おとめ」とか「歌劇」とか、水しぇんメモリアルブックとか、いくつかはできるのに。同じAmazon取扱商品なのに……謎)

 まっつ167cm、はるちゃん164cmなぁ……。(含み笑い)

 去年は買わなかったのに、今年買ったのはひとえに、花組のまっつが最後だからです。

 「ハンディおとめ」なんて、「おとめ」持ってたらいらないじゃん、贔屓組はかなりの範囲で顔わかるから携帯型名簿なんて不要だし、顔がわからないよーな他の組、わざわざお金出して買わないし、発売意義がわかんない、と思ってました。
 だから去年はスルー。

 そしたら今年はすげー残念な表紙になっていた……。
 去年の表紙がセンスいいとは特別思わなかったけれど、今年のよりはマシだ……なにあれひどい。
 トップスターさんはみな美しく、彼らが悪いわけではまったくないんだが、とにかくこのデザインはあんまりだ。

 花組のまっつのために、買ったけどさー。ぶつぶつ。

 
 それはまあさておき。

 『EXCITER!!』のハバナの場面では、相手役がはるちゃんになってます。
 まっつに合わせてか、眉を八の字にして儚げに寄り添ってくれてます。ちょっとやりすぎなくらい、たおやかな女の子を演じてくれてます。……もう少しふつうでもいいぞ、はるちゃん?(笑)

 はるちゃんはドリームガールズのときの「イイオンナ」っぷりが大好き。美人でいろいろと大きくていかつくて。あのガツンガツンくるところが大好物。
 その彼女が気合い入れて薄幸キャラを演じているのは、前が薄幸の代名詞だったれみちゃんだったから?
 それとも演出なのかな?

 まっつがあんまし彼女を顧みていない感じなのがまた……。
 このハバナ場面では、女よりも男……もとい、友情重視なのは変わってないようです。
 でも、今回も歌ウマの美人さんが相手役でよかったね、まっつ!

 まっつはいろいろとノリノリで、登場場面で壮さんにアピールしたり、みつるとハイタッチしたり忙しい。

 チャラ男らしく人の女にちょっかいかける壮さんに「やめとけよ」と言うあたりの、ナニ気なスキンシップの高さもツボ。
 触らなくてもいいとこで触ってるのはイイですねー。

 乱闘場面の相手はだいもん。……もうマメはいないもんなあ。
 そして、まっつを抱き留めるのは、またしてもらいらい。

 らいがあの大きなカラダで、ひょいっとまっつを抱き留めてしまうのがイイです。
 まっつがそれを振り払うのもイイです。

 んで、ファヌン様@まとぶん降臨で吹っ飛んだあと。

 前髪ぱらりの角度が、めちゃくちゃ美しい。

 上手から眺めるこのときのまっつが絶品!
 倒れ伏して、上体を起こした態勢のまましばらく伝道ソングを聴いているんだけど、このときの髪の落ち方とその下の輪郭がイイんですよ。
 額から鼻に掛けてのラインの端正さ。

 わたしはまっつの鼻を好きだ好きだとゆーてますが、おでこも好きです。
 理想的なラインですよ。出っ張り過ぎもせず丸過ぎもせず。ナナメとか横顔になったときに、おでこの美しさが光ります。
 そこに、長い黒髪がばさりと落ちているわけですよ。
 乱れた前髪の間から、ファヌン様を見ているわけですよ。
 くうぅ、かっこいー。
 ライトほとんど当たってないけど。角度的に、上手からでないとろくにカオ見えないけど。

 んで、初演に引き続きじゅりあと仲良くして、らいとも仲直りして。
 はるちゃんはじゅりあの向こうにいるのに、一顧だにしない……恋人なのに……。

 初演でも最初はれみちゃんガン無視だったのに、あとからアイコンタクトしたり手を取り合ったりするよーになっていたから、これから変わっていくのかな。
 演出ではとくに、ここでカップルで愛をたしかめあうよーにはなっていないんだと思う。なにしろ人類愛の伝道だから、自分の恋人とかゆー小さな愛ではいかんのでしょー。
 でもやっぱ、女を取り合って刃傷沙汰、の直後、恋人無視して他の女といちゃつくのは変だと思う、フジイせんせー。

 まっつらしからぬ満面の笑顔、恐竜みたいな歯を見せて笑っている姿に癒される。
 あああ、まっつ笑ってるーー、と思ったあとに、例の歌が来ますから。

 あんだけガンガンに踊り狂ったあと、揺るぎもしない声で、歌い出す。
 その正確な歌声にびびる。
 すげえなヲイ。

 泣けといわんばかりの演出をありがとう。
 あざとい、あざといよフジイダイスケ!!(笑)

 でも、そのあざとさに、素直に泣くよ。
 祭りのあとのような寂しさ、夕暮れのような切なさのなか、まっつの声が響き渡る。

 ハバナ場面ではまったくの無関係だった一花を相棒に。
 まっつと一花。
 『EXCITER!!』オープニングで、組んで踊っているふたり。

 『EXCITER!!』全体が、ひとつの物語であり、それを通してまっつと一花はコンビであるかのように。
 それぞれ他の相手と踊るけれど歌うけれど、最終的にここに収束する、みたいな。
 物語が今、終わるような。

 そしてパレードでは、やはりこのふたりがにこにこと歌いながら階段を降りてくるし。

 一花の公称身長は、157cm。活躍しているわ、「ハンディおとめ」(笑)。
 いろいろとありがとう。
 まっつといえば黒髪。黒髪と言えばまっつ。
 タカラジェンヌにあるまじき、黒髪キャラを通す未涼亜希さん。

 初日とその翌日に見たときは、相も変わらぬ真っ黒けぶりで安心し……でも、『麗しのサブリナ』の水色スーツとのバランスの悪さにびびったもんですが。

 1週間後に見たときは、髪の色が変わってました。

 黒は黒なんだけど、真っ黒じゃなくて、茶色っぽい明るい黒になってる。
 ボリュームも抑え気味にして、水色スーツがそこまで変じゃない。

 おお、変えてきましたか!
 舞台人たるもの、板の上で進化していくわけっすね。

 ライナス@まとぶんの秘書、ウィリス@まっつはいかにもまっつらしい役。
 ヘタレ系の愉快な青年役って、若いころはそんな役ばっかやってなかったか? まっつは動きがおもしろいためか、そーゆー役が妙にはまる。

 ウィリスは優秀な秘書なんだと思う。
 そして、堅物のライナスに仕えているだけあって、見た目は重視されていない。

 ウィリスがいまいち野暮ったく見えるのは、スーツのボタンを留めていないこともあると思う。
 中にベスト着用した上でのジャケットのボタン解放はいいけど、ワイシャツだけなのにボタン解放分厚いネクタイ動きまくり状態は、決して美的ではない。

 てゆーか、この作品のリーマンでベスト着用してなくてジャケットのボタン留めてないのって、ただひとりウィリスだけだよね? 『EXCITER!!』のフィットネス会社の面々だってベスト着用してるぞ(笑)。
 ひとりだけなんかおとーさん臭いスーツ姿なのは、そのせいか!(笑)

 仕事もプライベートも充実、女にモテモテ……なエリートではなく、「仕事は出来るけどモテない君」なんだろう。
 相棒のマカードル@一花がまさに「仕事一途で女捨ててます」系のとんがった女史風であるように。

 着こなしが野暮ったい上、KYな明るい水色スーツ。横にいるのは「ザマス喋り」をしそうなインテリ眼鏡の女史。
 このふたりが、無表情にしれっとシンクロした動きをするのが楽しい。
 ライナス様の言動をすべて理解し、短い台詞だけで的確に動く。

 ウィリスの「仕事できます」面はマカードルと共に真面目だからこそ愉快な感じになってる。ミニマムなふたりが無表情に同じ動きをするおかしさ。
 ライナス様の目の前でないところで見せる、「やれやれ」なカオ。
 最初から、ウィリスとマカードルは目配せしたりで、人間的な会話してるんだよね、ふたりだけで。

 そう、ウィリス君はどんどん顔芸が細かくなっていってる。
 まっつなのに、いちいち表情がよく動いてるんだよなあ。

 何年ライナス様の下にいるのか知らないけど、プライベートの話などせず、仕事一直線のライナス様に仕えているんだろう。
 どっかの下院議員のよーに秘書と銀橋に坐り込んで人生語っちゃうよーな関係ではないにしろ、ライナスは専制君主であっても恐怖政治をするわけじゃない。部下は全面的に従って反論もしないけれど、感情は出していいらしい。
 ライナス様、けっこー意見ころころ変えてるわけで、ウィリスはそのたび眉をハの字にしながらリアクションしている。

 驚いていいんだ、感情的でいいんだ。
 そーしてさらに、余計なコメント(意見)をして、いいんだ。

 サブリナ@蘭ちゃんを迎えに行ったウィリスは、彼女をライナスへ引き渡すときにいらん一言を付け加えている。
 女性関係(しかもあんなに年下の若い子)について、部下に突っ込まれるのは嫌だろうに、ウィリスは調子こいてコメントする。
 しかも、カオ近づけすぎて。

 「魅力的なご婦人です」だっけか、これみよがしにサブリナを誉めライナス様にすげー嫌がられるのがイイ。最後の「ね」のタイミングがからかいムードだったり「やべ、余計なこと言った」と離れる瞬間だったりは、そのとき次第なのか?

 このとき、ライナス様のカオに「近いって!!」と書いてあるのがイイ。
 チューでもできそーなほど、無意味に接近しているのがイイ。
 んで、思いっきり嫌がられて、しれっと身を正すのがイイ。

 そのあと、マカードルとふたりで歌い踊ることになるんだが。

 なにかとシンクロするウィリスとマカードル。
 同じ動きをあったりまえにしちゃうくらい息のあったコンビなのに、それはあくまでも仕事の上のことで。
 息が合いすぎて接触しちゃうと、そのたびに相手を意識して離れる。てのを、繰り返している。

 ……どこの中学生だ(笑)。
 手を握っちゃってあわてて離す、顔やカラダが近づきすぎて、あわてて離れる。
 ふたりの間に言葉はイラナイ的に2コイチで動いているくせに、やっていることは思春期の少年少女。

 その姿が、可愛すぎる。

 んでこのふたりが、ライナスからもらった芝居のチケットでデートをして。
 翌朝はふたり揃って遅刻。ウィリス曰く、「興奮して眠れなかった」ためだとか。

 はにかんで喋るウィリスがキモ可愛い(キモい言うな)んだが、それ以上にツボなのは、マカードルの髪型。

 あれほど「女捨ててます」なキツイ女史風な女性だったのに、恋をするなり髪型変えてるんですよ、乙女ちっくに!(笑)

 なにソレ、まっつのため?! まっつのためにそんな可愛いことしてくれるの、一花?!(落ち着きなさい)

 いやとにかく、このカップルの物語は、ソレだけで十分楽しい。
 どっちも異性に縁がなさそうなので、割れ鍋に綴じ蓋っつーか、手頃なところでくっつけて良かったねっつーか。

 このふたり的に最後の場面は、自分の心に正直になったライナスが、オフィスを飛び出していくところ。

 ライナス様を見送って、ふたりで手を取り合って喜んでるの。

 初日とその翌日は容赦なく暗転されてよく見えなかったけれど、次に見たときはライトが残って、見えるようになっていた。

 照明さん、ありがとう!!

 や、演出家の指示なのかもしれませんが。
 初日とその翌日、「見えねーんだよ、もっとライト残してくれよ!!」と口惜しく思っていただけに、今はナニ気にふたりが見えるようになっていることが、うれしくてならない。他は暗くなってるのに、一瞬とはいえここにライト当ててくれてるもんよ。
 作品の本筋にはまったく無関係で、邪魔にならない小芝居なんだ、あってもなくていいのに、それをちゃんと拾ってくれたのがうれしい。

 なんか、ここもハッピーエンドなんだ、ってわかって、すごくほっこりする。

 女の子とデートをするライナス様を訝しんで歌っていたのに、彼の恋の暴走に小躍りして喜んでるんだよ。
 ライナスのそばにいた秘書ふたりが、彼の恋の応援団になっていることが、うれしい。
 そーやって損得なしに応援したくなるボス、そして恋。……そう思わせることは、ライナスの格を上げるよね。

 
 ウィリスはあちこち可愛くてカユくてたまらんキャラなんだが。マカードルとのコンビぶりが最高なんだが。

 いちばん好きなのは、張良先生ばりのいらんツッコミ「返品できると良いけど」を入れたあとの、満面の営業スマイルだ。 
 胡散臭さNo.1!! ビバまっつ!!
 スケジュール帳を眺めていて気が付いた。

 巻末のスタープロフィール欄。
 2010年スケジュール帳には、2番手が壮くん、ゆみこ、キム、かなめくん、らんとむが載っている。

 雪組にはふたり2番手が載り、月組には2番手がいない。

 ……ほんとーに、現在キムが雪組2番手だ。手帳、間違ってない。正しい。

 そういや以前、2番手欄に壮くんが載らず、月組にゆーひくんときりやんが載っていて、結果としてゆーひくんが花組2番手に収まり、壮くんは3番手据え置きだったりしたっけ。

 年間単位でスケジュールを表す手帳だから、将来を見越した作りになっているのかな。
 まあキムくんは2009年から2番手枠に掲載されていたので、ここに2番手として載ったからってその年のウチにどうこうってもんでもないんだろうけど。

 そして来年、2011年の手帳には、月組にふたりの2番手としてまさおとみりおが載るんだろうな。

 となると。
 ここで疑問を持つわけだ。

 雪組には、2番手が載るのか。

 過去の手帳を見ても、学年が低かったり新米だったりする2番手は、あえて載っていないことがある。

2007年 花-まとぶ、月-ゆうひ・きりやん、星-ナシ、雪-ゆみこ、宙-タニ・らんとむ(トウコは前年11月にトップになったばかり、2月からタニがトップ)
2008年 花-ナシ、月-ゆうひ・きりやん、雪-ゆみこ、星-れおん、宙-らんとむ(1月からゆうひ花)
2009年 花-ゆーひ、月-きりやん、雪-ゆみこ・キム、星-れおん、宙-らんとむ(7月からゆーひがトップ)
2010年 花-壮くん、月-ナシ、雪-ゆみこ・キム、星-かなめ、宙-らんとむ(4月からキムが2番手、9月にはトップ)

 ……らんとむ、2番手長いな。
 来年も2番手なわけだから、ゆみこを抜いて手帳2番手掲載枠最長の人ですな。少なくとも5年分か。

 前年11月にトップになったばかりの星組トウコの2番手が掲載されなかったり、前年12月末にトップになったばかりの月組きりやんの2番手が掲載されなかったりしたわけだから、今年9月からトップになる雪組キムの2番手が来年掲載されない可能性はある。

 なにしろ、手帳の発売は11月だからだ。
 11月現在でまだトップが変わっていない場合は、2番手が掲載されていないようだ。
 また、2番手枠は5枠疑惑がある(笑)ので、月組が2枠独占するため、雪組枠が消失するかも? 花、月、月、星、宙で5枠かも。

 しかし、キムくんは9月からだから、2番手も載るかな。

 いっそとっとと載せて欲しいのですよ。
 ちぎくんが単独2番手でしょう? 劇団の今までの扱いからして、学年が上だからとまっつがちぎくんの上に入るわけないじゃないですか。W2番手すらありえないっしょ。
 
 まっつがもしも2番手としての組替えなら、10月の『サブリナ』東宝楽と来年1月の『ロミジュリ』ムラ初日の間に、ディナーショーやってますって。
 らんとむもかしちゃんもゆーひさんも、栄転で期間の空いている人はみんなやってますって。劇団はスターを遊ばせないもん。
 組替えして間が1ヶ月も空いてるのにお仕事ナシって……あ、ゆみこも花→雪の組替え時、そうだったっけ……。1ヶ月以上軽く空いてたのに、DSはなかったなあ。こんなところにも、劇団の意志が……ぶつぶつ。

 まっつの立ち位置が心配でならないのですが、とりあえず、今年の11月には少しは見えてくるのかなと。
 いいんだ、どんなことになったって、まっつはまっつ、ついていくんだから!

 
 今年の手帳にお茶をぶちまけてしまい、ページががびがびなので、早く新しい手帳が欲しい、というところからこんな話まで発展しましたのことよ。
 嘘と本当がわからない。

 『麗しのサブリナ』がいまいち盛り上がりに欠けるのは、翻訳調の台詞回しや演出の間延び感にあると思う。場面と場面のつなぎの悪さ、暗転の多さ、もったり感は如何ともしがたい。

 それに加えて、ライナス@まとぶんのわかりにくさ。

 はじめは嘘だった、それが真実の恋になる。
 んじゃライナスは、いったいいつからサブリナを愛していたのか。
 またそれを、いつから自覚していたのか。

 作品から見えないのだわ。
 それが原作の縛りで、描くことが禁じられているせいなのかもしれないけど。

 サブリナの心情変化は丁寧に描いてあるんだけど、ライナスはなー。
 映画なら些細な目線や表情で表現可能かもしれんがココ、大劇場だから。2500人収容の国内有数の巨大ホールだから。

 まとぶんはきっと、なにかしら考えて演じているんだと思うが、ごめん、わたしにはわからない。
 ライナスがいつサブリナに本気になったのか。
 最初のテニスコートからかもしれないし、デートのあとに我に返るところかもしれない。
 まとぶさんは基本ハートフルだから。冷酷にはならないから。いつだって愛情があるんだもん、すべてのことに。
 おかげでわっかりにくいったら(笑)。

 主人公の片割れが読みにくいと、そりゃー盛り上がるのが難しいだろうよ。
 カタルシスの少ない、平坦な話になるだろうよ。

 しかし。

 ライナスがわかんないから、イイのだ。

 えー、わたしが問題だと思うところをくどくどつついておりますが、前提として言っておきます。
 わたしは、この作品好きです。

 欠点はあるけれど、とにかくかわいい物語なんだ。何度もそればっか書いてる気がするけど(笑)。
 胸キュンな物語、魅力的なキャラクタ、きれいな画面。
 地味だけどいい作品だと思うのよ。

 てことで、ライナスも、実は今のままで十分たのしんで見ているの。
 彼にこれといった答えが見えないので、勝手に考える。その日の気分で、好きに。
 最初から好きだったのにあえて否定して、とか、無意識に鼻歌は歌っちゃうけどあくまでも仕事だと思い込んで、でもなんか暴走している、とか。

 でもって。
 ライナスがわからない、彼に答えが出ていないと。

 サブリナ視点で、萌える。

 あのイケメンがですよ、弟の代わりで仕方なくつきあってくれているオトナの男が、なんかわたしのこと口説いてくるんですけど? 「キミがいないと」とか「私は弟になりたい」とか。
 口説いてるとしか思えない言葉、熱い視線。
 だけど決して直接的な愛の言葉は口にしない、距離が近づくと身を翻す。

 わからない。
 だから、どきどきする。
 現実の恋と同じように。

 口説かれている、好意を持たれている、でも答えはくれない、全部わたしのカンチガイかも?
 わたしだって恋人がいる、子どもの頃から憧れていた人、それが恋だと思い込んでいた、全部わたしのカンチガイなの?

 ナニが嘘、ナニが本当?
 自分も心も、そして彼の心も。

 んで、ナニがたのしいってあーた、その小娘感なんですよ!

 ものすごーく年上のセレブ男性との恋。
 こっちがテンパっちゃってビルの1階まで来て「やっぱり会えない」って言ってるのに、騙して迎えに来ちゃったり、なにもいらないそれどころじゃないって言ってるのに、「私は飲むぞ」って勝手に飲み物作ったり。
 わたしってなんて子どもなんだろう! 恥ずかしい、こんなの。……そうやって涙が出ちゃうところに、ハンカチ差し出されるとか。
 あーもお、いちいち、わたしが「小娘」だと教えてくれる。
 パリ帰りで垢抜けて、若い男の子たちにちやほやされて。すっかり大人になった気でいたけれど。素敵な男性と対等に恋ができると思ったけれど。
 そんなことぜんぜんない、わたしは悲しいくらい子どもだ。世間知らずの小娘だ。

 てのが楽しくてならない、だってわたし、おばさんだもん(笑)。
 もう、あんな「小娘」として、大人の男性と恋できないよ~~。
 だからこそ、こちらからはまったく真意の見えない、「わからない」ライナスが素敵なの。
 現実では味わえない「背伸びした恋」を疑似体験、ロールプレイングできちゃうんですよ!!

 ゆらゆら揺れるヲトメゴコロがたまらん。
 久しくなかったトキメキ(笑)ですよ!!

 あのいつもぶっちぎり上等暴走あんちゃんのまとぶさんが、抑えたオトナの男やってんですから。彼の場合、そのギャップだけでも十分おいしくいただけます(笑)。

 まとぶんには「愛してる」って真正面から言っちゃうキャラが似合うでしょ? だからいっつもそんな役、愛愛愛愛うるさいくらいに。
 それが今回は、「匂わすけれど、決定打は出さない」んですよ。告白していると同じな態度は取るくせに、言質は取らせないんですよ。
 だから可哀想にサブリナは振り回されちゃうんですよ。期待させられて、突き落とされて。あああ切ないー。

 強引にキスしちゃったり、「私は弟になりたい」「もし君が弟の恋人でなかったら」とか言っておきながら、愛の告白はしない、情熱が見えるのに踏み出さない、寸止めまとぶんですよ?! はじめて見る! ときめく~~!!
 いいわぁ、ライナス……。

 でもなんかまとぶん、回数重ねるごとにエンジン掛かってきてる気がする……。そのうち出会ったときから恋愛ダダ漏れなあんちゃんになるかもなー。それはそれで楽しそうだ。
 今は今のライナスを楽しむ。ナマモノの醍醐味。

 
 あー、恋愛モノはいいですな。
 悪人が出てこない、ハッピーエンドな物語はいいですな。
 ふつーの少女が美女に変身して、セレブな大人の男性と恋に落ちる、シンデレラ・ストーリーはいいですな。

 ドラマティックなカタルシスには欠けるけれど、じんと胸のあたたかくなる物語。
 ちなみに毎回泣けます、わたし(笑)。
 あー、サブリナかわいい~~!! ライナス好き~~!! デイヴィッド萌え~~!!
 ここまで、著作権についてうるさく言われる公演があったろうか。

 『麗しのサブリナ』は、スカイステージにて、前代未聞の放送制限されまくっている。

 今まで『エリザベート』など「3分以上の放映ができない」とかいう制限はあった。そのため通常15分放送していた「ステージ・インフォメーション」が3分の縮小版だったりはした。
 だが、タカラヅカニュースではふつーに放送された。本編3分間であったとしても、フィナーレや挨拶も付けて、ふつうの分数、ふつうの回数。

 それが『麗しのサブリナ』は、ありえない制限。
花組公演『麗しのサブリナ』稽古場、舞台ダイジェスト映像放送予定
●宝塚大劇場公演 稽古場映像
7月29日(木)「タカラヅカニュース」22:00放送回のみ

●宝塚大劇場公演 初日映像
7月31日(土)、8月1日(日)「タカラヅカニュース総集編」で、全ての放送回

●宝塚大劇場公演 新人公演映像
8月19日(木)「タカラヅカニュース」22:00放送回のみ

●宝塚大劇場公演 千秋楽映像
8月31日(火)「タカラヅカニュース」 12:00放送回、22:00放送回の2回
  ↑スカイステージ公式HPより

 名だたる海外ミュージカル以上の制限を付けまくるほどお高いお高い『麗しのサブリナ』様だ、きっと公演本編にも制約が山ほどあったんだろう。
 台詞を変えてはならないとか、場面順を変えてはならないとか、理不尽な制約を突きつけられ、仕方なかった部分も沢山あるんだと思う。

 思う、けどさ。

 もう少しなんとかならなかったのかねえ。

 ……スカステへの文句ではなく、中村A演出についてです、ええ(笑)。

 『麗しのサブリナ』は、とてもかわいい物語だ。
 わたしは好きだ。
 きゅんと切なくて、じんわり泣ける素敵な物語。

 でもさ、全体的な平坦さ、盛り上がらなさと、つなぎの悪さ……よーするに、わかりにくさはどうなの、と思う。

 わかりにくいのよ、全体的に。
 それで盛り上がりにくいのよ。

 なにしろ初っぱなから、ライナス@まとぶんがラヴソングを歌うし。

 物語と無関係なオープニングでなら、ナニを歌ってくれても構わない。それこそ植爺の『ベルばら』みたいに、本編と無関係のドレスきらきら壮大ソングでも。

 だけど『麗しのサブリナ』は、オープニングなし、いきなり本編だ。
 ストーリーテラー@みわっちが人物紹介をする中、ライナスがラヴソングを歌い出す。
 現在進行形の歌だ。今現在、恋人がいる歌だ。

 何故、この歌……?!(白目)

 ライナスの設定は、堅物で女に興味なしの仕事人間だ。妻も恋人も愛人もいない。
 なのに何故、「登場人物紹介」で「ラヴソング」なんだ。どんなキャラかわかんなくなるだろーが。

 そして、サブリナ@蘭ちゃんとの出会い。
 ……使用人の娘だからもちろん知ってはいるけれど、彼女を気に掛けるきっかけとなる事件。
 それが、「締め切ったガレージでたかだか車1台のエンジンを吹かすことで一酸化炭素中毒で死のうとする」サブリナを、そうとは知らず助けてしまうコトなんだが、ここでなんで一言「死ぬ気か?!」とか「扉を開けておかないと死ぬぞ」って言ってくんないのかなー。
 自殺未遂、を台詞で印象づけて欲しいんだが、そのものズバリを言ってはいけないという原作の縛りがあったのか?

 そしてなにかと苦しい「くすりと笑える会話で、とーとつに暗転」。
 洋画によくある手法だけど、ここでは成功しているとは思えない……。オシャレな会話がテンポ良く展開され、ここぞってなときにぶった切るから「くすっ」とできるわけで、もったりした演出とのっそりした暗転では、観客が置き去りにされまつ……。
 それなら会話途中で暗転させず、その後のオチまで芝居を続けてしまえばいいのに。
 フェアチャイルド@はっちさんの「まだ好きです」はいいとしても、デイヴィッド@壮くんとライナスの「女にいくら掛かったか」は空回りが半端ナイっす……。

 第一、その「オシャレな会話」ってのが、現代語ではないっつーか、なめらかに感じられないんですが、あちこち。
 もう少し、「今」わかりやすい表現があるだろうと。
 原作の台詞を変えてはいけないせいなのかもしれんが。

 んで、暗転がのっそりしたイメージなんだが、とにかく場面場面のつなぎが悪い。
 ひとつの場面が終わると、しばらくぼーっとした時間がある。盆が回るのを待たされたり、えんえん暗転だったり。
 ストーリーテラー@みわっちがいるんだが、彼は途中から「ウォーリーを探せ!」的にモブに混ざっている妖精さんになり、ストーリーを語ってくれなくなる。
 時間と場面転換稼ぎの暗転や装置移動させてるときに、語り部さんを使えばいいのにー。あらすじを言わなくてもイイから、前場面と次とをつないでくれるだけでいいのに。

 カーテンの有無と立ち話で話を進める植爺も大概だが、すべての場面ごとに数秒必ずぼーっと待たされるのは、起動の遅いPCやロード時間の長いゲームみたいで、興醒めするんだよなあ。

 それとも場面ごとに数秒黒画面やなにもない画面を入れる、とか、契約条項に入ってるのかしら。

 で、実は物語が平坦になっているいちばんの理由は、主人公の考えていることがわからないことにある(笑)。

 サブリナの気持ちが揺れ動いているのはよくわかる。
 が、いくらタイトルロールがサブリナでも、ここは男役至上主義のタカラヅカ、ライナスがどう考えているかが重要なポイントのはずなんだが。

 女に興味ナシの堅物のはずが、ラヴソングを歌って登場したところからすでに相当アレなんだが、その後も彼は実にわかりにくい。
 彼がいつサブリナを愛したのか、表現する場がナイんだ。

 サブリナ中心で心情が盛り上がって歌、とか、幻想のダンス場面、とかにはなるけど、ライナスの心情中心ではない。
 愛し合っているんだけど、すれ違っている、という図式にならない。ライナスがわかりにくすぎて。

 ふつーここでライナスの心情吐露の歌とか入れるべきだろう!てとこで、のったり暗転、ふつーここで主人公たちの気持ちを盛り上げるだろう!てとこで、のったり暗転。
 おーい。

 板挟みになっているサブリナとライナス、それぞれの苦しい胸の内を歌にするとか、できるだろうに。
 サブリナはともかく、ライナスこそは「騙す立場」である以上、苦悩させておいた方が、それを全部ひっくり返す展開が生きるだろうに。
 ライナスは言動不一致、やることがころころ変わるんだが、そうなるまでの気持ちがわかりにくいので盛り上がらない。

 うん、きっと相当きつい原作縛りがあるんだな。
 映画と舞台、ストレートプレイとミュージカル、表現方法がチガウんだってことを、アタマの固い原作サイドが認めてくれなかったのね。
 それでこんな「映画なら良かったかもしんないけど、舞台でこれはどうよ」な演出がてんこ盛りなんだわ。
 悪いのは著作権とか版権とかそっちの方なのよね、中村せんせ?
 壮一帆が楽しい。

 『麗しのサブリナ』で、いちばんかわいいのは、愛されキャラなのは、実はサブリナ@蘭ちゃんではなく、デイヴィッド@壮くんだ。

 本能と感情とそのときの気分だけで生きているナマケモノ。
 大金持ちの家に生まれ、優秀な兄がすべてを背負ってくれていて、お金と時間と愛情だけ浪費して生きてきた超お気楽モノ、それがデイヴィッドだ。

 悪意のないプレイボーイなえりたん、って、一体何作観てきただろう。どの演出家も壮くんにはそんな役をアテ書きたくなるのか。

 いつものえりたんな役で、目新しさはない。
 陽気なチャラ男で憎めない二枚目、女の子にモテモテでいつも嬌声をあびている、てのは見飽きたくらいだ。

 しかし。
 目新しさがなくても見飽きていても、この愛されキャラっぷりには、感動する。

 デイヴィッドが何故デイヴィッドなのか。
 見ていると、わかるよ。納得するよ。
 3回も結婚して離婚して、4回目の結婚(しかも婚約者を無視してサブリナと)をしようかっていう、この半生。
 定職に就かず、仲間たちと遊び暮らす毎日。
 なんでこんなトンデモナイ男なのか。
 その答えがわかる。

 その、天使の笑顔。

 使用人ズにあきれられたり、パパ@まりんやママ@ちあきさんに叱られたりはしているけれど、それでも見ていればわかる。誰も彼を嫌っていない。結局のところ、愛されている。

 傷ついたお尻をさらして横たわる、なんともみっともない姿でなお、ライナスおにーちゃん@まとぶんに甘える姿。
 自分の頼みを、おにーちゃんが断るとは思っていない。

 彼は疑っていない。
 自分が否定されること。拒絶されること。

 どんだけ愛されてきたんだ、デイヴィッド。
 他人から否定される経験がない30男。(年齢知らんのでえりたん年齢。……って、ジェンヌはフェアリーですってば)
 ただ無条件に愛され、与えられてきた。だから彼は疑わない。天使の笑顔でおねだりをする。

 パパもママも、そしておにーちゃんも、デイヴィッドを愛しまくり、甘やかしまくってきたんだ。
 口先だけできついことを言ったり叱ったりしても、根っこでダダ甘だったんじゃあ、デイヴィッドの性根を鍛えることにはならないって。
 そしてデイヴィッドも、家族のそーゆー愛情を一身に受けてすくすくのびのび育ちまくったんだろう。

 お金持ちのおぼっちゃまである以上、世間の人たちは勝手に彼を甘やかす。ひざまずく。
 さらに美貌の青年である以上、女たちは勝手に彼を甘やかす。寵を争う。

 すべての符丁が一致する。
 愛されまくって、このデイヴィッドというキャラクタが存在する。

 ああ、まったく。

 デイヴィッドが、可愛すぎる。

 あの愛されまくって当然、望む通りに甘やかされて当然、というカオが、超ムカつく。

 ナニこの男、大嫌いっ。地球が自分中心に動くと思い込んでる、なんの悪意も自惚れもなく、自分が愛されると思い込んでる。
 他人が自分のために動くことを、当然だと思っている。
 ムカつくムカつくムカつく。

 大っキライ。

 ムカつきまくって腹を立てて、地団駄踏んで、キライキライキライ、もお、大好きっ!!って感じ。

 思い出すだけでムカつくわー、ナニあの笑顔。くおおおっ、ムカムカムカ、可愛すぎるんじゃ~~!!
 てめー、自分がかわいいと思ってるだろー、くそー、可愛いんじゃー、許せん~~!!(ちゃぶ台返し)

 …………壮一帆さんを好きすぎて、どーにかなりそうです(笑)。

 デイヴィッドのアテ書きぶりが半端ナイ。あれは壮一帆だ。いかにも壮一帆な破壊力だ。

 演じる人によっては、デイヴィッドは嫌な男になると思う。
 悪人ではないものの、あまりに無神経で無責任だからだ。
 それをえりたんはえりたんならではのフェアリーっぷりで、異次元キャラに昇華している。
 ったく、壮一帆パネェよ。

 デイヴィッドの笑顔に、彼の半生が見えるんだ。
 物語上都合良くそーゆーキャラクタになっているのではなく、家族も周囲のモノも、とりまくものすべて経験してきたことすべてが、透けて見える。
 その説得力。

 ただの無神経アホボンではないので、彼はちゃんとサブリナとライナスの真意に気づく。愛の在処に気づき、最善の方法を取る。
 お金でも名誉でもなく、ただ、愛を選ぶ。

 それは彼が、愛されて育った男だからだ。
 いちばん大切なモノを、惜しみなく浴びるよーに与えられて育った。
 そんな彼だからこそ、いちばん大切なモノを見間違わない。

 いざというとき、すべてをひっくり返すのは、「愛」なのだ。

 この殺伐とした世の中。
 それでもわたしたちは信じる。根底にあるのは愛であり、愛がすべてを救うのだと。
 だから物語はハッピーエンドになり、虚構の人々の幸福に、観客は感動するのだと。

 そしてそれこそが、「タカラヅカ」であると。
 人々が「タカラヅカ」を求める所以であると。

 「愛」をバカ正直に大上段に歌い続けるカンパニーが、1世紀近く愛され、必要とされてきたんだと。

 ああだから。

 いざというとき、すべてをひっくり返すのは「壮一帆」なのだ。

 ファンタジーを作り上げる壮くんってのは、「タカラヅカ」まんまな存在だ。

 壮くんってほんと、すごい舞台人だなあ……。演技力がある人だとは、ごめん未だに思えないんだが、それにしたって舞台支配能力が異次元だ。
 あの感覚芝居人間のオサ様とバッチリ噛み合った人だもんなあ、そりゃ計算ではなく本能で存在するタイプだよなあ。

 デイヴィッド@壮くんが大好きだ。
 可愛すぎてムカついてたまらん。ムカつき過ぎてハァハァする(笑)。
 くそお、キライだこんな男!! 好き過ぎて許せん!!
 昔から、微妙なモノに惚れる。
 ど真ん中ではなく、真ん中寄りの脇あたり。

 少年マンガ好きだったんだか、いつも主人公には興味がなく、その仲間の地味な人だったり、敵チームの宿命のライバル、にもなれないあたりの人を好きになった。

 マンガ好きのあと、ドラマ好きになり、かなりの数を見るよーになったが、いつだってわたしの好きなドラマは視聴率が振るわなかった。
 おかげでビデオソフトが発売されなかったり。(『踊る大捜査線』だって、本放送当時は人気がなくてビデオが発売されなかったんだ)

 狙っているわけじゃない。
 わたしだって、勝ち馬に乗りたいさ。好きなモノを言って「なにソレ?」と言われるのが楽しいわけない。需要がないから市場に出回ることがなく、分母が広がらない、いつこのまま消えてもおかしくない……そんなのがいいわけない。
 好きなモノに人気がない、大多数の人から認められない、興味を持たれない、そんな状態はちっともうれしくない。

 みんなが知っていて、みんなが大好きで、世間から求められていて、絶対になくならない、大人気だからいつでも供給され続ける、そーゆーモノのファンでありたいよ。

 
 そんなわたしが今いちばん好きなマンガが、『我間乱』だ。
 マンガ雑誌の発売日をこれほど楽しみにしていたことなんて、10代の頃以来じゃなかろーか。
 毎週毎週わくわく読んで、「次はどうなるんだろう、早く水曜日にならないかなっ」と思う。出てくるキャラクタみんなが大好きで、新しく出るキャラまでみんな好きで(笑)、新キャラが出るたびいろんな意味でわくわくして(笑)、展開にドキドキして、彼らの闘いや生き様を素直に「かっこいい」と思う。
 ついでにいろいろ萌える(笑)。

 しかしこの『我間乱』ってどうなの。人気があるよーには、まったく思えないんだが。
 
 少年マンガ市場はわたしなんか「巨大な歴史の歯車の中では無にも等しい」ってなもんで、自分から働きかけるなんてことはハナからあきらめている。わたしひとりがどんだけ好きでも面白いと思っても、売り上げや人気が変わるはずがない。
 だから今までの人生で、「好き」を表現することなんかなかった。
 や、パロディ同人誌作ってコミケで売ることはあってもだ、マンガの版元である出版社に「この作品がこんなに好きなの!」と意見を出すことは一度もなかったんだ。
 わたしひとりがどうこう言っても、変わらないじゃん?と。

 でもなんかこのままではイカンのかなと思って。
 『我間乱』が大人気、出版社の愛と信頼を受けて自由にいくらでも描かせてもらえる看板作品、だとはとても思えなくて。
 むしろ、いつ打ち切られてもおかしくないあたりの人気や売り上げしかないんじゃないかなと思って。

 何ヶ月前からかな、読者アンケートを出すようにしている。

 「面白かった作品を5つ上げて下さい」「その中から、一番面白かったモノを1つだけ上げて下さい」「今週号のマガジンを買った動機となる作品を1つだけ上げて下さい」……この3つの設問に、全部『我間乱』と答えている。
 や、「面白かった作品」も最初は『我間乱』だけしか入力しなかったんだが、そしたら「最低3作は入力しろ」ってエラー出たから(笑)、仕方なくあと2作品は入力してるけど。

 んで、「今週のマガジンの良かった点・悪かった点など」の意見を書くフリースペースに、「『我間乱』の増ページがうれしかった」とか、ちまちま書いて送信してるんですよ。涙ぐましく。

 雑誌の読者アンケートなんて、友だちの作品が載ってるとき以外で出したことなかったのに!

 ちまちまアンケート出して、コミックスを買って。
 別に欲しくないけど、オリジナルグッズ・プレゼントにも応募するかな……応募数少なかったら「人気がない」と思われるかもしんないし。

 好きなら、なにかしなきゃいけないんだろうなと思って。
 好きだってこと、なくなってほしくないってこと、意思表示しておくべきなんだろうなって。
 今まで「どーせわたしひとりがアンケート出したって、ナニも変わらない」って思い込んで、ナニもしたことなかったけど。
 わたしの好きになるモノって、いつも微妙で、人気がなくて物語の途中で打ち切られるんだもの。

 『我間乱』の他は、いつも『ベイビーステップ』と『課長令嬢』を入力、他は気が向いたらなにか入力(『A-BOUT!』も好きだ)、てなスタンスだっただけに、『課長令嬢』の終了が地味にショックだった……(笑)。
 『ベイビーステップ』も地味なテニスマンガなんだが、最初から好きで「打ち切られませんように」と祈りながら読んでいた。や、『我間乱』の好き度とは次元がチガウにしろ。

 『我間乱』と『ベイビーステップ』がこれからも続いていく週マガでありますように。(柏手&祈祷)

 あ、もしも興味持って読んでくれる人がいたら、『我間乱』が俄然面白くなるのは3話からです、1・2話まで読んで途中で1巻を投げ出さないでね(笑)。絵もどんどんきれいになるから、女子でも読めるよ~~。特に真さんと直善さんはどんどん美人になるよ(笑)。

 
 以前、『我間乱』の妄想配役をさらっと書いたけど、直善さん@まっつはどうかという気がしてきた……。
 最近直善さん大変なことになってるけど、それにしても兄弟子公認+お姫様抱っこにはアゴが落ちたので……。あそこまでヒロイン化すると、まっつだと気恥ずかしい(笑)。こまったなあ。
 善丸@ヲヅキで、真さん@かなめくんで見たいんだけどなあ。テルキタ、テルキタ! 天然ボケで美貌の剣士のかなめくん、その相方、ツッコミ担当で苦労性(笑)の善丸がヲヅキで。そしてこの流れだと、かなめくんがキムまっつを公認し、ヲヅキがまっつを姫抱っこすることになるのか……やはりまっつがミスマッチだな(笑)。でも我間@キムは譲れないし。
 配役のポイントは同期。

 
 てなことを書くのは、「『我間乱』打ち切られないよね、どきどき」と毎週思うのと、「まっつ、退団しないよね、どきどき」と思うのと共通しているというか。

 大好き、失いたくない、と思う……でも、世間的に大人気とか会社が「ドル箱スターだ、大事にしよう」と思っている節も感じられないというか。
 なんでこんな、微妙なあたりにばっか惚れるんだろう。もちろんいっそ、人気も実力もなくてすぐに消えてなくなる人や作品にははじめから惚れないもんよ。
 わたしからすりゃ魅力も実力もあるんだが、世間一般のニーズど真ん中かというとそうとは思えない感じ……? そんなあたりに、わたしのツボがあるんだろう。

 
 てゆーかそもそも、宝塚歌劇団なんてもんを大好きなあたり、微妙な趣味だよな。
 劇団の名前だけは知っていても、実際に劇場で観たことがある人は少ないだろうし、みんなが大好きというわけでも、世間から求められているわけでも、絶対になくならない、大人気だからいつでも供給され続ける、そーゆーモノではない、よな。
 一部のコアな人にだけ愛されている文化だよな。

 みんなが知っていて、みんなが大好きで、世間から求められていて、絶対になくならない、大人気だからいつでも供給され続ける、そーゆーモノのファンでありたいよ。

 タカラヅカの斜陽ぶりに危機感を持つ今日このごろ。いや、斜陽だと言い続けてずいぶん経つが、それにしても最近また顕著だなと。

 好きだからちまちまと、チケットを買い続けているわけですが。
 まっつの写真とかも、発売されるたびに買い求めているわけですが。

 好きなんだよ、応援しているんだよ。
 それを示すために。
 「巨大な歴史の歯車の中では無にも等しい」って、わかっているけどさ。
 『EXCITER!!』再演による大発見。

 みちるタソと姫花は、似ている。

 新しくなった場面、ハワイにてチェンジBOXが活躍するわけなんだが、今回はミセスファット@ちあきさんが変身するわけじゃない。
 ミセスファットは最初からスリムな美女。前回のチェンジBOXで美しく変身したままだ。

 変身するのはハワイのおでぶおばさん@みちるタソだ。
 堂々たる横幅顔幅の美声おばさんで、いかにも「いるいる、ハワイにいる!」てな迫力のある女性。

 その女性がミセスファットの太鼓判のもと、チェンジBOXに入ると……。

 ああら不思議、出てきたのは姫花だ!!

 すげえ、横幅顔幅、なにもかもミニマムになってる!
 だけど歌声は変わらず美声。どすこいアルト。

 えーと。
 みちるタソが、姫花に。

 ありえないことなんだが、なんか納得してしまうのは、ふたりの顔立ちが決してかけ離れてはいない……むしろ同系統なのだという、事実。似ている、わけじゃないけど、変身して出てくるのに納得してしまう部分があるという、真実。(口ぽかーん)
 タソだって、顔立ちはかわいいんだよ。ただ、お肉に埋もれてしまっているだけで。
 声が良くて歌が上手くて芝居ができて。彼にないのは美貌……というか、ジェンヌらしいスリムな顔とカラダだけ。
 そして姫花といえば。
 百花繚乱の花娘たちの間でも一際輝く美貌の娘役。フィギュアのようなプロポーションの美少女。彼女にないのは、きれいな声と歌唱力と演技力。
 正反対の92期、このふたりを「使用前」「使用後」に使うなんて……!!
 そして実は、裏表のように、なんか共通点のある顔立ちだったなんて……!!

 フジイダイスケ、おそるべし!
 そんな真実にたどりつくなんて。

 
 前回より5分上演時間が延びた『EXCITER!!』、新しい場面が増えるのではなく、それぞれの場面が間延びしてました……。とくに「Mr.YU」のミュージカル場面の間延びっぷりはどうかと思う。前回でも大概だったんだが(笑)。いや、1回観るだけの一見さんにはいいのかもしれないけどなー……フタ桁観るのはテンポの悪さがなー……。

 でもって、物語が思いっきり「前回の続編」。……いいのか?
 チェリーちゃんが結婚退職した、とかいうのが続編だからどうこうと言っているわけじゃない。たしかにそこも続編な部分だけど、そーゆーことじゃなくて。
 フィットネス商品を開発している会社の話だということが、説明されてないのよ。よく聞くとそれらしきことは言ってるんだろうけど、ごめん、そんなこと1回観ただけじゃわかんないよ、聞き取れないよ。
 ダメリーマンが何故かハワイでいきなりチェンジBOXになってるよ。
 チェンジBOXがなにかの説明もない。なんでハワイで?
 あくまでも「前回のオフィスでのやりとりを知っている人向け」に作られている。なのに、前回イケメンに変身したはずのMr.YUはダメ男のまま。
 前回そのままでもないし、続編でもない。前回を知って観ている人にとって変だし、はじめて観る人には不親切。
 フジイくんの「物語をたたむ能力欠如」がこんなところでも発揮されている(笑)。作っていて、途中でわけわかんなくなるんだろーなぁ。

 んで、前回「せっかくイケメンに変身したMr.YUの活躍の場がない」「こんだけ長々変身ものを描いて、オチがない」と嘆いていた部分を、フジイくん的には改善しようとしたんだと思う。
 エキサイターに変身したあと、銀橋でパンダちゃんケータイを出して「クラブ?」と言っているから、そのあとの黒タキ祭りに登場するエキサイターは、Mr.YUだと言っているんでしょう。

 ……で?

 クラブ場面とつなげたところで、なんの解決になってないっつーの。
 Mr.YUをバカにした女の子や会社の人たちをあっと言わせてオチになるのに、別世界でブイブイ言わせてもただの外弁慶、「知らない人の間でしかかっこつけられない残念な人」でしかないよ~~!

 むしろ、次の場面の邪魔になってるんですが……。
 本舞台のカーテンが開いて、黒タキ男たちがかっこよく登場しているのに、銀橋にて音楽に負けじと台詞を言われ、前回の、イケメンに変身!→バーンッとかっこいいシーン! という舞台転換のカタルシスが削がれている。
 
 エキサイターに台詞を言わせて話をつなげるなら、クラブで踊っているのもMr.SO@壮くんとランラン@蘭ちゃんであるべきだ。なのにセクシーガイ@壮くんとセクシードール@蘭ちゃんなんだもの、そこでかっこつけてもMr.YU的にはなんの関係も発展もない。

 ただ台詞で「これからクラブに行きますよ」とだけ言わせて、オチを作った気になっている安直さにアゴが落ちました……フジイくんってほんとに「物語」の構成力がナイんやなー……。

 
 そしてこのミュージカル場面からわかった、もうひとつの発見。

 フジイダイスケは、可愛い女の子に「変態クン」と言われると萌えるらしい。

 初演『EXCITER!!』で、痴漢の冤罪をきせられたMr.YUが憧れのチェリーちゃん@彩音から「変態クン」と罵られる。
 痴漢行為と冤罪を笑いにする演出に賛否両論っつーか疑問視する声はかなりあったと思うんだが、今回もそこは改善されず、わざわざ同じことをしていた。

 ヒロインから誤解され、罵られる、というシチュエーションがストーリー的に必要なのはわかる。
 それだけなら別に痴漢行為でなくてもいいはずだ。鈍くさい大失敗をして秘書@さあやに「この役立たず」と罵られるよーに、ランランちゃんにも「役立たずクン」と言われればそれで済む。
 でも、役立たずとかおバカとかではイカンのだろう、フジイくん的に。

 あくまでも「変態」と罵られなければならない。譲れないこだわり。

 女の子が男を変態呼ばわりするには、ナニがある? 限られた時間でソレを表現するなら、やはり痴漢行為が手っ取り早い。

 観ている側からすりゃ、変態でも役立たずでもおバカでも同じよーなもんなんだが、演出家はあくまでも「変態」にこだわった。「変態」と呼ばせたいのだ。

 とゆーことで結論。フジイくんは、「変態クン」と罵られるのが萌え。
 ツンデレ萌えとかに通じる感じでしょう、あくまでも「可愛い女の子」だから許される、キツい言葉。「こんなコに、こんな言葉を言われるなんて、キュ~~ン☆」な感じ?
 フジイダイスケ、おそるべし!

 ……痴漢行為萌えだとは思いたくないので、そーゆー方向で納得しておきますわ(笑)。
 8ヶ月ぶりの、『EXCITER!!』です。

 最後に『EXCITER!!』を観たのが、2009年11月22日。で、今回観たのが2010年7月30日。……1年経ってねええぇ。

 そして、彩音ちゃんのサヨナラショーで『EXCITER!!』主題歌部分をムラと東宝で2回観て、彩音ちゃんのMSでムラと東京で3回観て。

 あたしいったい何回『EXCITER!!』観てるの?!!
 と、がっくり大地に膝を付きたくなります。

 過去は忘れる人間なので、何回観劇したのかマジでおぼえてないんですが、『ベルサイユのばら』の3~4倍は観ているはず。大人げないので、芝居観ないでショーだけ観劇に通ったんだよなー。公演時間50分でS席8000円という、やたら高い公演だったわ。びんぼーなんでS席は観劇回数の半分くらいだったけど。(SS? なにソレ、どーやったら買えるの??)

 そうやってたかだか8ヶ月前に十何回、2~3ヶ月前に5回観た作品。

 なつかしい、というよりは、「あー、はいはい」って感じなのは、どーしよーもない。
 あー、はいはい、そうだったわね、そうよね、って。


 それでも、さおたさん先頭に男たちが大階段を降りてくるオープニングでは、血がたぎる。

 お帰りなさい、さおたさん。でもって、やっぱこのオープニングは秀逸だと再確認。

 問答無用で、カッコイイ!!

 これぞタカラヅカ、これぞ花組!!

 壮くんから歌い継ぎ、まっつのソロまで息を詰める勢いでガン見しているよー(笑)。

 で、そのあとの主題歌。
 特撮ソングなガチガチバチバチ、ウインク指さしてんこ盛り。これがもお、条件反射で楽しい、テンション上がる。

 やっぱたのしいなあ、『EXCITER!!』。

 ……ただどうしても、その直後の蘭はなちゃんの主題歌はパワーダウン。
 や、無理だからふつう、大劇場の真ん中に立ったことのない子にいきなり銀橋センターなんて。新公ヒロやバウヒロ独占してきたお披露目かなみちゃんとか、トップ前には経験少なくてもトップになって4年経ちましたな彩音ちゃんならできることでも、蘭ちゃんには荷が重すぎるでしょー。
 ハバナのソロダンスはいいんだけど、オープニングの勢いでセンターを務めなければならないこの場面は、蘭ちゃん試練のときだなと。
 や、なにしろここ、ダンスではなくだし。

 蘭ちゃんの最大のウィークポイント、歌唱力。
 『麗しのサブリナ』ではそれほど気にならなかったけれど、『EXCITER!!』主題歌では手に汗握った。声量のなさ、音程のやばさ、発声のあやうさ。うわー、えらいことに(笑)。

 この作品は、円熟期に入った娘トップ彩音ちゃんならではの作品だったんだな。
 キーとなるオープニングと中詰めがセクシー・ワイルド系だったもんよ。

 彩音ちゃんは女豹としての迫力があった。代表作が黒トカゲやキハだったよーに、彼女は妹キャラではなく、大人の女、魔性の女こそが最大の魅力を発揮できるスターだった。
 「カッコイイ」女役になれる人だった。

 だが今の蘭ちゃんはチガウ。
 蘭ちゃんの最大の魅力はマデレーネに代表されるよーな、「小悪魔」だと思っている。あくまでも、今の。将来的には大人になるんだろうけど、今の蘭ちゃんだからこそ持っている魅力、色気。
 少女であるがゆえの毒。
 なのに、中詰めの黒タキ場面など、彩音ちゃんが演じていた大人のセクシー美女にそのままスライドさせても、残念感が残る。彩音ちゃんは色っぽかったなあ、と。

 せっかくの蘭ちゃんお披露目なんだから、蘭ちゃん用にキャラ設定を変えてくれればよかったのに。「Mr.YU」場面の蘭ちゃんのキャラ変更よりも、よっぽど重要だと思うんだがな、フジイくん。

 黒タキ場面、セクシードール@蘭ちゃんを小悪魔な少女にしてエキサイター@まとぶんに絡ませたら、同じ場面、同じ振付でもすげー印象変わると思うんだが。
 少女に過ぎない蘭ちゃんが、大人の女たちを従え、まとぶんを挑発する……って、想像するだけでぞくぞくするけどなー。

 んで、その少女にかしずくよーに、みわっち他の黒タキ男たちが絡む、と。

 そーゆー倒錯感あふれる場面、作ってくれないかなぁ。蘭ちゃんが大人になってしまう前に、是非。今の危うい少女の魅力全開に。フジイくんより、三木せんせの方が得意か、そーゆーの?

 まあそれでも、大変なことになっているオープニングでは、とりあえず歌詞を変えてました。
 彩音ちゃんが女豹なら、蘭ちゃんはシンデレラ。そのへんはうまいなと思うんだけど、なにしろココ、歌が聞こえねえ(笑)。歌詞が、じゃなく、歌とか声とかのレベルで聞こえないので大変っす(笑)。がんばれ蘭ちゃん。

 個人的に、彩音ちゃんの女豹サマでさらにガーーッとテンション上がった記憶が新しいので、ココでがくんと盛り下がるのが悲しい。
 蘭ちゃんのせいではなく、演出が悪いと思う。蘭ちゃんひとりでなく、歌える娘役スターを両側に付けるだけでぜんぜん違ったのに……蘭ちゃんには要所要所で数小節ソロを歌わせるぐらいで、あとはポーズキメさせておくだけで良かったのに。
 お披露目作品のオープニングから弱点をさらけださなくても……。

 
 彩音ちゃん→蘭ちゃんの変更がいちばん大きく感じるとして、他にもやっぱり「いた人が、いない」ことは寂しかった。
 や、大劇場で時間をおかずに再演、なんて経験、ヅカファンになってから一度もなかったから、はじめてのことだから。
 何年か経っているなら主要メンバー自体が変わっているだろうし、全ツならはじめから人数がチガウ。
 まったく同じ劇場と顔ぶれでたった8ヶ月後にやっているから、いなくなった人が目立つ。
 覚悟していた目立つ場面ではなく、油断している群舞のときにすごく感じる。

 ここに、いたのに。
 今は、いない。

 いちいち考えるのではなく、無意識に記憶との相違が浮かび上がるから、きつい。切ない。

 
 そして。
 そして、どーしても、まっつが、いなくなってしまうということが、悲しい。
 ここから、この人たちの間から、まっつがいなくなる。
 タカラヅカはひとつだとか新しい組での出会いがとか、そーゆーことは置いておいて、ただもお、大好きな花組からまっつがいなくなってしまうのが寂しい。

 ずっとずっと、ここにいると思ってたんだもん。
 この組から、卒業していくと思ってたんだもん。

 前に『EXCITER!!』を見ていたときは、ここからまっつが消えるなんて夢にも思わず無邪気に楽しんでいたな、なんて考えるとさらに切なくてたまらなくなる。

 
 それでも『EXCITER!!』は楽しい。主題歌が流れると、テンションが上がる。
 過去と現在、そして未来、いろんなものが交差して、さらにテンションが上がる。
 生理的嫌悪感だの思考停止させられるよーな破綻だのがない、薄くて可愛らしい作品は、キャストの魅力だけで、楽しめる。

 罪なくほっこりかわいい物語『麗しのサブリナ』は、いろいろとありがたい作品だ。

 リピートもしやすいし、ひとにも薦めやすい。『EXCITER!!』という派手で楽しいショーと2本立てのこともあり、まあいっぺん観てみてよ、「タカラヅカ」体験にいいっすよ、と。
 客席には家族連れ・子ども連れも多いし、若い学生たちの姿も多い。夏休みの演目として最適だと思う。
 てゆーかいいなあ、学割チケット……。
 2階10列目が2000円で買えるんだよ? そこってつい数年前まで5500円だった席だよ? 学生さんがうらやましすぎる! わたしが学生だった頃はそんな割引なかったし!

 まあ、わたしの若いころとは時代があらゆる意味で違い、今はヅカ自体が斜陽で、割引チケットでも出さなきゃやってらんないんだろうと思う。全組通して平日・土日ともに万遍なく観劇する身としては客席の現状が目に胸に痛いさ……。
 
 
 なにはともあれ、『麗しのサブリナ』はキャストがかわいい。

 ヒロインのサブリナ@蘭ちゃんがキュートであることは言うまでもなく。
 童顔ゆえ気づいてなかったけれど、意外に背が高いというか、バランスの良いプロポーションなんだ。
 今は可愛らしさが前面に出ているけれど、これからどんどん美女になっていくんだろうなあ、そう思わせる素材の良さに期待感が高まる。

 んで、その若く可愛らしいサブリナに惹かれていく大人の男、ライナス@まとぶん。

 大人のまとぶんがかっこいい。

 少女にめろめろになるおじさん、というとアレな感じになりがちだけど、まとぶんだとそうはならない。
 仕事一途過ぎて女性に興味がなかったんだとわかる。だってめちゃイケメンだもんよ、モテないはずがない。
 そして、女の子の扱いも知らないわけじゃない、堅物設定のわりにやることけっこー強引、てのがねー、ポイント高いんですよー。

 ああそして、デイヴィッド@壮くん。
 女好きのチャラ男を何公演続けてるんですか、女たちの嬌声とえりたんはデフォルトですかそうですか。
 そのケーハクぶり、タラシぶりがもお、板につきすぎて(笑)。

 デイヴィッドがかわいすぎる。

 お尻の手当てとか、すみれコード的にアレなはずなんだが、えりたんなら平気。ぜんぜんOK、ふつーにアリ。
 彼のあっけらかーーんとした明るい光が、すべてを肯定する。

 壮くんって、ものすごい舞台人かもしれない。
 彼には「ありえない」がないの。どんな荒唐無稽なことでも、これやっちゃシャレならんでしょなことが、ナイの。
 全部全部、壮一帆ならアリだと思わせる。

 舞台の上に、ファンタジーを作り上げる。

 つくづくおそろしい人だ……(笑)。

 デイヴィッドの、「株のことはわからないが、キスならわかる」の台詞が好き。
 いい男だ、デイヴィッド。

 
 主人公3人いればカタがつくよーな話なんだが。

 ストーリーテラー@みわっちはオイシイ役。
 いろんな場面でいろんなコスプレして、いろんな役をしている。
 そのいろいろな姿を見られるのはオイシイ。
 ショータイムとしてたのしい料理学校場面や、クラブの歌手としてねっとり(笑)1曲ソロ、さらにくまちゃんとアダルトにエロ絡みアリ。
 よぼよぼ医者の可愛らしさもいいんだが、ツボというか、ある意味「みわっちキターー!」と笑えるのは、意味なく登場する電話の男と、最後の船員ですな。
 いやその、胡散臭すぎて、ツボに入る。みわっちならではですわ、あの無駄な濃さ。(力一杯誉め言葉)

 
 んで、料理学校場面がみょーーに楽しい。
 オープニングがショーになっておらずそのまま物語スタートだったこともあり、ミュージカルっぽい最初の場面になるんだよね。パーティで紳士淑女が踊っているのはある意味ふつーだもん。

 ここのキャラクタが、誰を見ていいのか目がいくつあっても足りない。

 オカマのあきらと、キザよっちはもお、どうしてくれようかと。

 ナニあいつら?!
 面白すぎるっ。

 瀬戸くんは若くして男役として出来上がっているので、シナを作られると素直にキモい(誉めてます)。カオもキツイ系の美形なので、オネエ喋りが活きる(誉めてます)。

 よっちはよっちだというだけで点数高いんだが、あのよっちがキザな俺様キャラで盛大にカッコつけているというと、「よっちがエライコトになってる!!」と、花担たちを震撼させる結果に。
 あああ、よっちに『摩天楼狂詩曲』CMのともみんの役やってほしー!! いたたまれなくなって地団駄踏みたい~~!!

 
 場面としてオイシイのは料理教室だけど、モブのグループとしてオイシイのは、ララビー家の使用人たち。
 執事@ふみかが若い! てっきりヒゲじーさんで来るのかと思ったら、現役色男で来ましたよ!
 さあや&きらりが芸達者にメイドとして目立ち、いまっち&みちるタソがコミカル部門担当、かわいこちゃんポジがまゆくん……で、しゅん様がんばれ、食われてる食われてる!(笑)

 つか、女たち強いですよ……(笑)。

 
 デイヴィッドの恋人、グレチェン@じゅりあとエリザベス@あまちゃき。
 壮×じゅりあはこの間まで、おそろしい夫婦だったような……? 「あなたのせいなのです!」てな。そのギャップも楽しみつつ(笑)。
 あまちゃきはすげーかわいい。記号的にかわいい。おかしい。おもしろい。「サブリナって誰?!」の台形グチがたまらん。
 
 
 もう少し書きようがあったのになあ、と思うのはデイヴィッドの友人たち。みつる、めお、まぁ、だいもん。
 銀橋に出てくる場面がある程度で、濃度的には使用人ズと変わらない……。

 パーティとかクラブとか、大人数で華やかにしている場面には登場するので「モブとして」愛でるのは楽しいのだけど、彼らはモブで見たい人たちじゃない、「役」が見たいんだ。
 彼らが新公学年の若者たちなら、あるいは路線外の人たちなら、モブでの人間関係や小芝居を探して眺めて本筋そっちのけで仲間内で盛り上がったりはアリだろうけど……彼らのポジションを思えば切ない。
 せっかくそれぞれカノジョ持ちで、今をときめく美形娘たちと組んでいるのになあ。

 あと5分彼らに割いて、ひとり(ひと組)ずつ見せ場を作ることは出来なかったのか、中村せんせ……。
 いつも全員同じ扱いで横並び登場はあんまりですよ。
 
 扱いへの不満はともかく、カップルでいちゃついていたり、男同士でじゃれていたりする彼らを見るのはたのしい。4組のカップルの人間関係とか、リピートすればするほど見えてくるものがあって、たのしいんだろうな。

 
 真ん中にしか役がないので、結局のところそれ以外はグループ芝居か、モブ。そして、実はグループやモブの出番は多い。
 みんなでがちゃがちゃなにかしら歌い踊るなので、目は忙しい。
 パーティが2回、学校場面が2回、オフィスにクラブに幻想のダンスと、大人数場面がいろいろある。ストーリーがシンプルな分、歌い踊っていて、すごくかわいい。
 いやあ、ほんと『虞美人』とのギャップが大きいわ……。

 このくすぐったいキラキラ感と、罪のないハッピーストーリーが気持ちいいんだほんと。
 んで、改めて。

 蘭ちゃん花組娘役トップ、まと×蘭・新生花組スタートおめでとう。

 『麗しのサブリナ』はタイトル通り、サブリナ@蘭はなちゃんが主人公。
 そう、どう足掻いても『虹のナターシャ』の主人公がナタ公で、三条さんが主役にはなれなかったように、『麗しのサブリナ』もサブリナが主人公だ。

 運転手の娘サブリナ@蘭ちゃんは、お屋敷のおぼっちゃまデイヴィッド@壮くんに片想い。バツ3の女ったらしデイヴィッドには、お子ちゃまのサブリナなんて眼中にない。思いあまったサブリナは自殺しようとするが、デイヴィッドの兄ライナス@まとぶんに偶然助けられてしまう。
 パリの料理学校に留学、帰国したサブリナは美しいレディに変身。今度はデイヴィッドがサブリナに一目惚れ。だが仕事一筋のライナスが、デイヴィッドを政略結婚させようとしていたため、運転手の娘サブリナとくっつかれては困るっつーんで、横恋慕をはじめた。ケガをしたデイヴィッドの代わりにライナスがサブリナをデートに誘い、口説きはじめるが……。

 なんといっても、サブリナがかわいい。
 いちばん最初の、木の上の蘭ちゃんがベリキュート! 恋愛ドラマの「ヒロイン」として納得のかわいらしさ。

 サブリナはつくづく若く、初々しく、可愛らしい。
 なにしろ演じている蘭ちゃんのキャリアが圧倒的に少ない。バウヒロ経験があるだけで、大劇場でのヒロインは新公1回のみ……しかも、娘トップ不在組でのヒロインだ。『エリザベート』新公とか経験できていればちがったんだろうけど、浮舟だけだもんなあ。
 広い大劇場の真ん中に立つ訓練が足りていないところへもってきて、いきなりタイトルロールだ。『EXCITER!!』もそうだが、劇団は蘭ちゃんに大きな期待を持っているのか単に無神経なのか、そのスパルタぶりがハンパない。経験不足の女の子に、いきなりナニやらせてんだ?!の重責ぶり。

 等身大の若い女の子として存在できる、初々しさ・かわいらしさ勝負の最初はいいんだけど、物語が進むとそれだけでは立ち行かないため、後半になると大変さが増す。
 がんばれ蘭ちゃん! きっとこの経験が彼女を急激に成長させるはず。

 とまあ、素質はあってもそれをまだ生かし切れていないヒロインを支え、ライナス@まとぶんの男ぶりが上がっている。

 なにが驚きって、まとぶんが、大人の男なんですよ。

 大人を演じるまとぶさんを見るのは、はじめてだと思うんです、わたし。
 星組時代からずーっと眺めて来ているけれど、彼が「あんちゃん」でないことなんて、初体験ぢゃなかろーか。
 あんちゃん、てのは「お兄さん」ではなくて、若い血気盛んなにーちゃん、という意味。
 まとぶんの特質というか持ち味は、永遠の若者というか、ナニを演じても結局のところ「あんちゃん」になること。王子様でも貴族でも、何故かいつも血気盛んで爆走上等の下町のにーちゃん的アツさを持つ。

 それがデフォルトだと脳内に染みこんでいるから、ついつい無意識に「いつライナスはあんちゃんになるのかしら」と思って見てしまった(笑)。
 ところがどっこい、ライナスは大人だった。
 少なくとも、初日とその翌日は大人のままだった。
 このまま千秋楽まで、大人でいるのかしら。

 まとぶさんの「なにを演じても結局はあんちゃん」という特質は、愛すべきところだと思っている。
 芝居に正しいも間違ってるもないので、彼のそーゆー持ち味を好きか嫌いかだけでしょう、問題は。
 美貌と変幻自在の声と破綻ない実力を持ちながら、まとぶんてば芸幅が意外なほど狭いんですよ、ナニやってもあんちゃんになるので。
 その「ナニをやっても」ってのは、ソレを好きな人にはたまらない魅力だろうし、そこを認められない人には観劇意欲につながらないだろう、両刃の剣。
 わたしはもお、まとぶんのそーゆーところはアリだと染みこんでいるので、彼があんちゃんでないことに逆に驚いてしまうという(笑)。

 まとぶんが、大人の男だ。
 抑えた声で話し、暴走していない。

 相手役が変わる、ってのは、こーゆーことなのか。

 それはとても新鮮な驚きだ。
 このまま大人でいてくれるのか、結局はあんちゃんとして暴走をはじめるのか、見守るのが楽しみです。……どっちでも楽しめる自信がある! まるごとまとぶんだもん!

 作品的には、悪くない小品になっていると思う。

 かわいらしく、オシャレにまとまっている。
 気軽に口に出来る小さなお菓子。3度の食事とは別に、いつでもお茶してよし、みたいな。
 くすくすと笑えるし、女の子が好きなドレスもパーティも出てくるし、悪人のいないハートウォーミングなラヴストーリーだし。
 画面もキレイだし、嫌味はないし、破綻もない。

 ただ……劇的に盛り上がるかというと、そーでもない。

 演出家のキャラクタが出ているのかもしれない。
 こじんまりして平坦、という。加点法ではなく減点法で作劇というか。冒険はしないので減点されない、結果として合格点だけど、最初から満点は取れないことがわかっているというか。
 爆発的に盛り上がるところがない、クライマックスがない、同じテンションで終始する。
 派手にとんがらない分、かわいくオシャレである、と辻褄は合っている。
 濃くないから、口当たりは悪くなく、激しい感動はなくても「いいんじゃない?」という感想にはつながりやすい。

 主人公はあくまでもサブリナだが、現在彼女は経験の浅い初心者ヒロインが悪戦苦闘中であり、また男役至上主義のタカラヅカである以上、視点をサブリナ一本に出来ずライナスにも振る必要があるため分散、二足のわらじを履いた結果すべてが薄くなる。……ということなのかもしれないが。

 演出で盛り上がることはない。そして、演出が邪魔をしてドン引きすることもない。良くも悪くも、とっても中村Aな作品。
 いや、奥行き皆無の紙芝居作品だの前後のつながりの悪すぎる破綻作品を作り続ける演出家なので、もっとわけのわからないモノが出てくるのではないかと危惧していただけに、この「ドラマティックではないが、悪くもない」作品は「良かった」と言えるのではなかろーか。

「で、この『サブリナ』って、面白いの?」
 と、という疑問を何度か聞いた。
 未観劇の人が言うんじゃないの、今観終わった人が、言うのよ(笑)。

 面白くないとかキライとか不快とかは、特にナイ。ただ、面白いのかどうかわからないだけで(笑)。
 楽しく観られるし、最後はちょっと泣けたりもするんだけど、なにしろ爆発的にどーんっと来るモノはないので。観劇直後に「面白かったっ、この作品すごい!」と叫ぶよーなモノではないので。

 ある意味、可能性がある、のかもしれない。
 土台がベーシックで大きな穴がないなら、いくらでも化けられる。演じている人たちもそうだし、観ている側もそうだ。

 全部、差し出されているんだ。
 料理みたいに。
 まっつは、黒髪でした。

 ……って、ソコから?!
 でも大切なことでしょう?
 宝塚戦隊flower7のフラワー・ブラックは、今回もまた黒髪でした!

 『麗しのサブリナ』『EXCITER!!』初日。

 組替えが発表になってからの、はじめてのまっつ。
 よかった、プログラムの写真が前回『EXCITER!!』の使い回しぢゃない。や、撮り直すだろうとは思っていたけど、一応確認(笑)。衣装も違ってる。
 でもって、「ステージスタジオ」もまっつまで入ってた! よっしゃ、ストラップ作るぞぉ。

 
 そして、公演は。

 まっつ×一花でした。

 『麗しのサブリナ』は、ライナス@まとぶんの秘書ウィリス役で、いつも同じく秘書のマカードル@一花と一緒。

 人物相関図が発表になったときに、まっつと一花が共に秘書役っつーんで期待はしたけれど、それは単に同じ場面に出るとか絡みがあるとか、その程度だった。

 タカラヅカではトップコンビ以外は明確な「相手役」は存在せず、ラヴもない。それがふつう。
 わかっていても、まっつと一花は組むことが多く、なんとなく「相手役」なイメージだった。
 組替えが決まり、これが最後の花組公演となるなら、せめて一花と同じ場面に出てくれるのはうれしいな……そう、思っていた。

 実際、ウィリスとマカードルはいつも一緒に出てくる。共に有能な秘書(ただし、マカードルは料理が壊滅的)。

 ふたりがこちょこちょ一緒にいるのは、それだけで楽しかった。

 それが。

 まさかの、カーテン前デュエット。

 秘書ふたりで歌い踊る。
 いやその、コミカルな場面なんだが。

 なにコレ、ここまでまつ×いちがっつり見せてくれるなんて、思ってなかったよ?!

 それだけでも、感涙モノなのに。

 さらにこのふたり。

 ラヴがあります。

 ライナス氏にもらったチケットで、ちゃっかりデートして、その夜はふたりして眠れなかったそうで……。

 恋に落ちる、まっつ×いちか!!

 なんなのこの展開?!
 予想だにしなかったっ。

 何度も書いているけれど、1時間半で主人公とヒロインが出会って愛し合って障害乗り越えてハッピーエンドにならなきゃいけないタカラヅカでは、脇役まで恋愛しているヒマがない。
 だから通常、トップさんや路線スターさんしか、恋愛はできない。
 「愛」がテーマの劇団のわりに、団員のほとんどが芝居では恋愛もラヴシーンも経験できないという。

 だからわたしもとーぜん、ご贔屓が恋愛しているところを見たことがなかった。
 本公演はただの脇だから仕方ないとして、バウやDCで2番手やっても海馬ヲタクだったり親友を溺愛していたりで、まともに恋愛してねえ。
 バロット@『メランコリック・ジゴロ』は妻がいたけど、正塚芝居では折ってたたんで裏返しな夫婦関係だし、ウラジミール@『マラケシュ』ぐらいか、まっつが女の子とハッピーエンドな役って?

 それくらい、女の子にも恋愛にも縁がなかった、まつださん。
 相手役、と言えるくらいよく組んでいる一花ちゃんがいてなお、そうだった、まつださん。

 それが、最後の最後になって。

 相手役+恋愛アリかよっ!!

 見たかったんだ、一花ちゃんと恋するまっつ。
 ラヴラヴなまっつ。

 かわいいよおおお。

 いやその、所詮脇役な人たちなんで、出番もエピソードもあるわけじゃないんだけど。
 少ない出番で、それでもまさかの扱いですよ、ありがとう!!

 正直、ウィリスのスーツは、どうかと思います。

 最初に着てる、明るいブルーのスーツなんか、似合わなさに眩暈がするっす……(笑)。
 すげーアホっぽいっちゅーか、カラダに合ってないっちゅーか。
 スーツのトンデモカラーと、まっつの重い黒髪、さらにボリュームのある髪型がなんともミスマッチ。せめて髪型、なんとかならんのかなー。

 そして、「うわっ、似合ってねー」と絶句したその姿で。

 踊るは、プラスチック・ダンス!!

 未涼亜希の真骨頂。
 あの動き、あの表情。

 重役たち秘書たち、十数人で踊るわけなんだが、なにしろ表現しているのが「プラスチック」。
 すげー愉快な動き、振りなのよ。

 そのクキクキしたダンス、足捌きがもおっ、まっつのまっつらしさ全開。

 あの人、なんであーゆー動きをさせたらあんなに面白いんだろう……。

 幕間で、まっつメイト以外にも「まっつのプラスチック・ダンス!!(笑)」と爆笑されたさ……あれは突っ込むところだろう、うん。

 ブルーのスーツの似合わなさがすごいので一見わかりにくいけど、実はひそかにもう一着スーツあるのね、一花ちゃんとデュエットのときはグリーンのスーツになっている。こっちは材質も色も形もずっとマシ、ずっとイイ。

 
 『EXCITER!!』はエトワールでなくなっていることをのぞけば、微妙な差はあれど、ほぼ前回通りなんだけど。

 ただ、ひとつだけ、大きな違いがあった。

 ハバナのシーンの、ラスト。
 蘭はなちゃんの娘役トップお披露目公演なので、まとぶんと蘭はなちゃんが銀橋で寄り添ってエンドになる。

 ハバナというと、定番の「ひとりの女を取り合って男ふたりが争い、片方が凶器を出す」展開。
 ふつーはそこで男のどっちか(大抵女の恋人の方)が殺されたり、恋人をかばって女が死んだりするんだけど、『EXCITER!!』ではまさかのファヌン様降臨エンド。
 グローバルな愛を歌って、争っていた人たちがみんなでわーきゃーしあわせー!と歌い踊って終わる。

 それが、今回の『EXCITER!!』ではさらに続きがあり、人々がそれぞれ解散していく中、ファヌン様@まとぶと争いの元だった美女@蘭はな、そして何故かその他大勢に過ぎなかったまっつと一花が残る。

 で。

 まっつといちかが、愛の歌を歌う。
 ファヌン様の伝道ソングを。

 その歌声にのって、銀橋でまとぶんと蘭ちゃんが寄り添うわけだ。

 この、歌が。

 まっつが組替えする、この場所、このメンバーの間からいなくなる、そうわかった上で聴くと……クる。かなり、来る。
 まっつファンはここで涙腺決壊します、マジで。

 千秋楽とか、泣かせるつもりでこの演出したんぢゃ、フジイくん?!
 ファンの泣かせツボを熟知してるもんな?!

 ここでも、まっつ×一花で。
 そして、こんなに美しい愛の歌を歌わせてくれて。

 ありがとうありがとう。
 花組のまっつを見納めるよ。
 みんなの愛でまさかの快晴、その日の宝塚ムラは丸一日暑かった。

 こんなに汗をかいたのは、ひさしぶりだ。
 軟弱な生活をしているので、汗をかくよーな事態にならないんだ、いつもは。
 それが、入り待ちからはじまって、最後のパレードまで暑くて暑くて大変だった(笑)。

 前楽、千秋楽と当日券抽選から参加しての立見観劇なので、並びもギャラリーも観劇も、早朝から夜まで2日間つり革もない満員電車で立ちっぱなしのよーなもんなんだが、それでもなんとか乗り切った。
 人間、気力次第でなんとかなるもんだな。

 チケットを買って楽屋口に駆けつけたとき、ちょうどあずりんが入るところだった。
 スカイフェアリーズをやっている彼の美貌に一目惚れして以来、「カオが好き」「素顔が好き」と言い続けてきたわりに、彼の素顔をナマで見たことがなかったんだ。
 当日抽選に参加していると下級生の入りは見られないとあきらめていたんだが、なんとか間に合った。
 はじめて見た、あずりん。

 背中に「7」と書かれた白いパーカー姿のあずりんは、とてもキュートだった。
 うおお、スタイルいい、アタマちっこい。
 やっぱあのカオ好き、見ているだけでうれしい。

 なんで「7」なのか本気でわからなかったけれど、他の人たちを見ているうちにわかった、退団者たちが背番号付けてるんだ。ちなみに水しぇんが「1」だった。

 トップさんと同時退団なら中継があるっつっても、トップさん以外はろくに映像に映らない。あひくんですらそうだったんだから、あずりんが映るはずもないと覚悟を決めて、ナマ観劇に、劇場の中に入ることにこだわった。
 最後の男役姿、入魂のシケ一本のオールバック姿を目に焼き付けたよ。モブでも探してオペラで追ったよ。気合いの入ったキメ顔をしていたね。やさしい目で女の子を見ていたね。

 最後の、袴姿のパレードにて、あずりんはやたらめったらゆっくり歩いていた。
 パレードとはいっても、みんなわりとふつーの速度で歩くから、あずりんの速度にはちょっとびっくりする。
 そこに見えているのに、なかなか近づいてこないんだもの(笑)。おかげで、長い間眺めていられたけれど。

 ゆっくりと、ゆっくりと。
 周囲を見回し、噛みしめるように、歩いていた。

 はじめて見るナマあずりんが、最後の姿だなんて。
 これからもっともっと活躍してくれる人だと単純に思い込んでたからなあ。長くいてくれれば、ナマ姿を拝める機会もあるだろうと、のんきに構えていた。

 最初から最後まで、ずっとずっと好みで、ずっとずっといい男でいてくれた。
 雪組を見るたのしみのひとつだったんだ、ありがとう。

 
 舞台で見ると超オトコマエのそらくんは、お茶会に参加したという友人から聞く限り、かなり愉快な人で。えーとその、天然っちゅーか、川原泉の世界的愛らしい美男子というか。
 伝え聞くそらくんと、舞台のギャップ……それとまあ、スカステで見るいろいろテンパっている姿などから、彼に対しては心の落としどころがよくわかっていないんだが、それにしたって愛しいキャラだ。
 彼の卒業が残念でならない。
 『春麗の淡き光に』新公の四天王役で、その美貌に瞠目した。それ以来、ずっと愛でてきた美貌の君。

 袴姿のそらくんはもちろん目が覚めるほど美しく……そして、ボケていた。

 川原泉のマンガに出てきそうな、あの感じで……。

 いやあ、マスコミブースを完スルーして車に乗ろうとしたジェンヌ、はじめて見た。

 えー、ムラでのパレードにはマスコミ用の足場がセッティングされており、上下2段にぎっしりカメラマンが詰め込まれています。
 そのマスコミブースの真ん前に車が停まっていて、すべての卒業ジェンヌは車に乗る前に、カメラマンたちに写真を撮ってもらうのです。「目線お願いしまーす」とか、「手を振ってくださーい」とか注文つけられながら。
 新聞に載っているトップスターの退団記事、車の前で手を振っている写真は、そうやって撮られている。

 なにしろ自分が乗る車の真ん前に、工事現場みたいな足場が組まれ、でかいカメラを構えた人々が10数人いるんだよ? 嫌でも目に入るじゃん?

 だけどそらくんは、大物だった。

 おっきな目を見開いて、沿道を埋め尽くした人々に手を振りながら歩いてきて……ふつーに、車に乗ろうとした。
 自分で、ドア開いて。

 ちょっと待って、ドア開くの別の人の仕事だし、つか、目の前で君を待っているマスコミの人たちはっ?!

 ドアは通常、おとーちゃんと呼ばれる生徒監のおじさんが開けるのかな? わたしはそーゆー風習をよくわかっていないんだが、そんなイメージだ。卒業するジェンヌさんと一緒に歩いて、代表さんは運転席へ、おとーちゃんが助手席のドアを開ける。

 なのにそらくんが自分で車に乗ろうとしたから、おとーちゃんもあわてて。
 チガウから、まだだから!
 カメラマンのみなさんに挨拶して、ほら!

 そらくんは、大きな目をぱちくり。

 あああかわいい。かわいすぎるっ。

 ちゃんと謝ってました、カメラマンさんたちに。
 んで、写真撮ってもらって。

 おとーちゃんが、「向こう側の人たちにもご挨拶を」と指示する。
 するとそらくんは、言われるがままにちょこちょこ歩き出し、車の反対側や、門の外に集まった人たちの方向にも挨拶を……って、ちょっと!
 
 ふつーのジェンヌさんは、「向こう側の人たちにもご挨拶を」と言われたら、車の脇や前で、そちらの方向に向かってお辞儀をしたり手を振ったりするんだ。それですぐに車に乗り込むんだ。

 なのにそらくんは、とことこと歩き出し、歩き続け、……おとーちゃんが必死で止める。行き過ぎ、戻って、戻って!!
 そらくんは「ぴよ?」というカオで振り返ってました。

 あああかわいい。かわいすぎるっ。

 止められなかったらきっと、門の外まで行ってたぞアレは……(笑)。

 
 みなこちゃんも歩みはゆっくりだった。
 きれいになったねえええ。以前、駅前ですれ違ったときと印象がまったくチガウ……若い娘さんはまたたく間にきれいになるから、見ていてたのしいね。
 きれいで礼儀正しくて……そして彼女も「向こう側の人たちにもご挨拶を」と言われたら、行き過ぎちゃっておとーちゃんに止められていた(笑)。

 
 そして、最後が水しぇん。
 一般ギャラリーでしかない身なので、奥の方で行われる退団者と会の人たちのイベント……というか、声掛けとかの様子はわからない。

 ただ水しぇんはあまりに、ふつーに現れた。

 周囲の人たちも、わりと油断してなかったか?
 まだまだだよね、拍手とか聞こえるけど、きっとまだまだ姿は見えないよね、って雰囲気があったのに、水しぇんはめっちゃふつーに現れた。
 あわてて、周囲のカメラが上がる。

 もったいつけることなく、ナニか特別なことがあるわけでなく。

 水くんはしゃきしゃき歩いて手を振って、やること全部やって、車に乗った。

 しかも車、ふつーだし。

 車がセッティングされたときに、残念な声があがったんだ。
 トップさんの車って大抵オープンカーだから。
 人混みの後ろの人にも、門の外の人にも、その晴れ姿がよーっく見える車だったから。
 それを期待していただけに、ふつーの車が出てきて、びっくりした。

 わたしたちは歩く水くんが見えるから良いけど、車より後ろや門の外の人たちは、ナマの水くんが見えないんだ……。

「車の屋根に乗ったりしないのかな」
「実は屋根が取れる仕組みなんじゃ?」
 そんな人々の期待(いや、ありえねーって)をよそに、水くんはふつーに車に乗り込み、ふつーに行ってしまった。

 ああ、そんなところがまた、水夏希らしいのかな、と思ってみたり。

 てゆーか。

「大雨を想定していたから、オープンカーは無理だったんじゃね?」
「屋根付いてないとだめだよね、他ならぬ水さんだし」

 あああ、なんともまったく、水夏希!!(笑)
 もったいぶらず、もったいつけず、きれいな笑顔を残して行ってしまいましたよ。

 
 なんかいまいち、現実感ナイ……。
 水しぇん、ほんとに卒業しちゃうの?
 きんいろの草原がきらきら揺れて、そこをあの人が笑顔で走っていったの。

 『水夏希サヨナラショー』で、息を飲んだ。
 『RIO DE BRAVO!!』コーナーになり、舞台にはみなこちゃんを中心とした組子たち、そして彼らとノリノリでポンポンを振っていると、いつの間にか客席に水しぇんが! という趣向。

 下手扉から現れた彼は、22列目前の通路を通って、41番座席横の通路を直進して銀橋へ行く。

 客席降りしているわけだから、客電が何割か点き、劇場内は明るくなっている。

 みんなでポンポンを振っているところだから、ライトを浴びて客席全体が金色に輝いている。水しぇん登場でさらに興奮、わーっと歓声が上がり、さらにポンポンが揺れる。

 金色が揺れている。
 さらさらさらさら、わっしゃわっしゃ。

 見渡す限り。

 1階席のいちばん後ろ、立見位置にいたわたしからは、1階客席全部が見回せた。
 灯りが点いた途端、金色が浮かび上がるのを見た。

 きれいなんですけど。
 もーめちゃくちゃ、きれいなんですけど。

 泣けるんですけど。
 みんなの心がひとつで、金色の草原になった空間。

 そしてその光の草原を、水しぇんが駆け抜けていく。
 うれしそーに、大きな口をにかりと広げて。

 金色の草原を、きらきらの魔法使いが渡っていくみたいだ。

 両手を広げて、飛ぶみたいに、空気を切るみたいに、駆け抜けていく。

 仲間たちが待っている、光あふれる舞台の上に。

 前楽、千秋楽ともに、同じ位置(立ち位置まで・笑)からその光景を見た。
 揺れるポンポン、その波の中を走り抜ける水夏希。

 こんな光景、ありえない。
 客席全部がポンポン振って、ライトが点いてて、水しぇんひとりが走り抜ける。
 それを、劇場のいちばん後ろから全部眺める、なんて。
 どれひとつ取っても特別すぎて、それら全部がそろった奇跡、いつか見た夢みたいな現実感のなさ。

 なにがどう、じゃなくて、きれいで泣けた。

 ここは、美しい処だ。

 雪組公演千秋楽、トップスター水夏希の退団公演最終日、サヨナラショー。
 キモチの詰まった、美しい処だ。

 
 金色の草原は次に、闇に光る青いペンライトの海になった。
 名前と公演名と日付の入った透明な板が、中に入っているタイプ。スイッチを入れると青いライトが点き、中の文字が浮かび上がる。

 これほど、動きの揃ったペンライトをはじめて見た。

 千秋楽(昔は前楽も)でペンライトを振る経験は10回以上軽くあるけれど、動きはいつでもけっこーバラバラで。
 この列は右左、こっから一部は左右、とバラバラなのが当たり前。隣の人に合わそうと思っても、両隣の人が逆に振っていてどちらに合わせて良いか混乱したり。
 前の人に合わせて振るようにすれば全員揃えることは可能なはずだが、まず揃わない。周囲関係なく勝手に振る人は必ずいるし、揃えたいと思っていても一旦リズムに乗り、その周囲がきれいに同じ動きになっていたら、そこだけが逆だとしても途中から修正できない。
 前もって練習しているわけでも「この列の人の動きに合わせて」と指令があるわけでなし。一期一会の4ケタもの他人の集まりで、動きがシンクロするはずがない。

 なのに、さすが雪組。

 ポンポンの振付で、「みんなで同じ動きをする」ことに慣れている。
 最初はふつーにバラバラ、列単位、群れ単位で勝手に揺れていたペンライトが、どんどん「前へならえ」で揃っていく。
 自分だけが勝手に振るのではなく、周囲を見回し、ナニが起こっているかを判断し、決断する。
 わたしの前の人はオペラグラスをのぞくのに必死で、ペンライトの向きなんか気にしていない。そのためしばらくひとりで逆に振っていたけれど、いつの間にかちゃんと周囲に合わせて振るようになった。
 そうやって、ひとりひとりが「参加」していく。
 自覚を持って。

 水しぇんを送る、この美しい場所にいること。

 すごい、きれい。
 1階席の千何百本ものペンライトが、一斉に同じ動きをしている。
 1000人以上の心がひとつになって、調和している。

 水夏希の歌声に。

 2階席はわかんないけれど、きっと同じように美しい波を作っているんだろうね。
 水しぇんに見せるために。

 いろんな思いを込めて。

 
 劇場のいちばん後ろから見る光景は、舞台の上だけでなく、客席まで全部が全部、美しくて愛しいものだった。

 金色の草原も、青い波も、拍手と手拍子に揺れる人たちも。
 なにもかも。
 トップ娘役の資質ってなんなんだろう。
 いろんな要因があるとは思うけれど。
 いつもヒロインを演じ、いつも同じ男役の相手役を務める。それだけは決まっている。

 決まっているからこそ。
 どれだけ「感情移入できる女の子」かどうか、ってのが、必要な資質のひとつではないだろうか。

 水くんが退団してしまう、っつーんで、『ロジェ』ではわたし、アホみたく水くんばっか見てた。オペラグラスピン撮り、ロジェって役は好きじゃないし共感もないんだけど、ただただその美しさ、格好良さに見とれていた。

 それが前楽になってはじめて、レア@みなこちゃんを見た。
 そうだ、みなこも最後なんだ、ちゃんと見ておかなきゃ、と思って。
 前楽が最後だと思うからこそ、いろんなところを見ておかなきゃと思って。

 それではじめて、レアを見て。

 何故、彼女がヒロインなのかがわかった。

 物語的にレアって別にいらなくね? と思っていた。主人公が誰も愛していない(バシュレとシュミット除く)状態なので、取るに足らない扱いをされているレアは、いなくても問題ない。
 ただみなこちゃんに似合う役や仕事を書いたら、こーゆー立場の女性になったんだな、いなくてもシュミット探し出来たけど。
 今までの正塚芝居なら、杏奈ちゃんがやっていた女上司あたりがヒロインじゃね? 仕事のことで対等にぶつかり合い、怒鳴り合いながらお互いのことを見つめ合っていく。んで、協力して事件を捜査するのさ。……正塚のヒロイン衣装着てたし(笑)。

 ロジェが水くんをイメージ的に格好良く描いたものであるように、レアもみなこちゃんをイメージ的に鉄の女に描いただけのものかなと。正塚がどう思っていようと関係なく、そんな風にわたしは受け取っていた。

 でも、最後の最後になって。
 レアに注目して見てみると。

 レアが、ヒロインだとわかる。

 物語的にはいなくてもいい役。本筋にも絡まないし、主人公にも特別に愛されていないし。
 されど、そんなことは関係ないんだ。

 レアが、ロジェに恋しているから。

 レアを見ていると、彼女の物語が浮かび上がってくる。彼女がロジェと出会い、恋に落ちる様が見えるんだ。
 ロジェだけ見てるとわかんないけど。なにしろロジェさん、レアに(勝手な思い込み以外)興味ないから。

 ロジェはロジェでなんか勝手にやってる。それはいい。レアはレアで、彼女個人で、彼女ひとりで、ひそかに恋をしているんだ。
 彼女は、彼女自身の物語の主人公なんだ。

 レアを見ているのが、快感だった。

 恋に落ちる、快感。

 日常ではもうさっぱりなくなった(笑)、情熱的なトキメキがずどんとくる。レアになり、ロジェに恋をする。
 彼女の心の動きがリアルで、いちいち痛い。切ない。

 復讐しか興味なくて、自分がそうだからと他人もそうだと決めつけて、狭い狭い自分だけの世界で完結してイキがっている、アホな男。哀れで滑稽な男。
 見れば見るほどロジェさんてばだめんずなんだが、そんなロジェに恋するレアの、リアルさときたら。

 心象風景ダンサーまで動員してカッコつけて歌ってるけど、ゆってる内容ダメダメだよね?なロジェをただ見つめるレア。
 彼女の恋が見える。わかる。
 彼女を通して視る、ロジェという男は、たしかにアホで哀れで滑稽なんだけど、なんだけど、なんかもう、めちゃくちゃ愛しい。

 レアになって、ロジェに恋をする。

 ロジェ単体で見ているときより、はるかに切なく、愛しい。レアを通して見る方が。
 ロジェを好きで、なにかしたくてできることをするしかなくて、自爆しながら自嘲しながら、「殴るぞ!」とかウザがられながら、それでも懸命に食いついていく様が、痛々しくリアル。胸に迫る。
 こんな恋しかできない、その不器用さに泣けてくる。

 タカラヅカのトップ娘役の資質ってなんだろう。
 キラキラしてて夢が見られる、異次元存在。二次元のお姫様みたいな、現実離れした存在。
 それもたしかにそうなんだけど。

 感情移入して、リアルに恋が出来るってのも、重要な資質のひとつじゃないだろうか。

 いやその、リアル過ぎてタカラヅカじゃない、部分はあるかもしれないけれど。日常にありそうな痛さや切なさなんかいらない、おとぎ話のような恋をしたいのよ、てのはあるかもしれないが。
 わたしはリアルな恋ってのも、すでにファンタジーとしてアリだと思っているので、膝を打ちましたよ。
 何故レアがヒロインかわかった、って。

 彼女になって恋すればいいんだ、ロジェに。
 ただ素直に。

 現実でだって、恋した相手の本筋に絡むことなんてそうそうないじゃん。勝手に出会って勝手に恋して、相手の意識が動いてからようやく、本筋に絡めるかなってなもんで、最初から絡んでいたらソレただの吊り橋恋愛、ハリウッド映画になっちゃうよ。
 
 『ロシアン・ブルー』のときも千秋楽になってはじめて、そんなことに気づいたと書いていたような……あああ、わたしって鈍すぎる。ついつい、水くんばっか見ちゃってるから。

 ロジェがどんだけ残念な人でも、それでもなお、愛しくてならない。
 好きで好きでたまらない。
 見ているだけで、泣けてくる。
 それは水くんが卒業しちゃうとか会えなくなるとか、そんな外側のことじゃなくて。

 ロジェが、恋しくて泣ける。

 水くんではなく、ロジェが。
 それが、ヒロインの意味。ヒロインの資質。

 うわあああん、ロジェが好きだああ。愛しい。切ない。苦しい。
 そして、そんな痛みごと、うれしくて仕方がない。

 恋を、トキメキを、ありがとう。
 それはたしかに、わたしがタカラヅカに求めるモノだよ。
 まさかの晴天。

 いやその、信じていたから、水夏希の最強雨男伝説を。4月後半に雪を降らせる、その力を。

「雨、降らないねー」
「あたしいちおー、傘持って来たんだよ、いつどひゃーって降るかもしんないから」
 前楽の日、当日抽選を終えたわたしとnanaタンは大橋を歩きながら話していた。
 水夏希の記念日が雨・雪・台風以外のナニかであるはずがない。わたしはその昔コミケの快晴伝説を信じていたよーに、水先輩を信じていた。

 水夏希は、地球をも動かせるのだと(笑)。

 どんだけ晴れていても、天気予報がどうでも、突然ゲリラ豪雨がやってくるはずだ、それこそ水くんの千秋楽だっ。

「きっと明日は雨だよ」
「だよねー」

 晴天、とはこのような日を言う、という見本のような青空、猛暑の最中そう話した。

「きっと上演中にざーっと一雨来て、雨上がりで気温も下がったなか、パレードになるんだよ」

 そうあってほしい。
 雨のパレードは寂しい……し、場所取りしている人たちが大変だ。かといって、この猛暑炎天下での場所取りも大変……水しぇんが厩戸皇子みたいに雨雲をつれて来て、みんなさわやかにラストディを迎えられるといい。

 そう願っていたんだが。

 7月26日、『ロジェ』『ロック・オン!』千秋楽。

 まさかの、晴天。
 広がる青空、ゆらゆら空気が揺れるほどの、猛暑。
 水しぇんのムラ楽なのにー?

 
 その謎は解けた。
 水夏希最強雨男伝説を打ち破るほどのソーラーパワーが、宝塚大劇場にて、局地的に発せられていたんだ。

 劇場の楽屋口に、わらわら現れる、白いフードに白いケープ姿の人々。巻き付けているモノもそれぞれ、スカート風だったり布風だったり、手作り感あふれまくる姿。や、中でもヲヅキ氏のでかい(ちょっと黄色がかった)フード姿は異様だった(笑)。
 飾り立てられた台車も出てくる。これまた高校の文化祭的装飾の、白い花だのリボンだの、手作り感満載。
 この晴天に、みなこちゃんは雨傘まで持っている。傘には水しぇんの写真がべたべた貼ってある、これまたチープな手作り感あふれるシロモノ。

 白装束集団たちに、「てるてる坊主」の歌声がかぶる。

 ……て、てるてる坊主なのか、アレ?!

 拡声器にラジカセ持参、ギャラリーへの挨拶も抜かりナイ。
 花の道にいるわたしたちにも、ちゃんと音楽も声も聞こえるようにしてくれてるの、GJ!

 数年前、同じようにこの位置から(わたしはいつも同じ位置・笑)、見送り部隊を指揮する水先輩を見ていたっけ、となつかしく思い出す。コム姫を迎えるために、水くんがそりゃーオトコマエに仕切っていましたよ、尻ポケットから携帯を取り出して、なにやら話をして。
 
 あのときの水くんの立場が、キムくんだった。
 水先輩は「仕事の出来る、大人の男!」って感じに生真面目に、緊張感バリバリに仕切っていたけれど、キムくんはまたチガウ。
 もちろん真面目に緊張感を持って臨んでいるんだろうけど、なにしろ見た目が若い。元気な男の子が仲間たちとなにやら準備している感じ。

 車から降りた水しぇんが、キムたちを見て爆笑した。
 キムが黒いコートを羽織らせ、みなこちゃんが大真面目に傘を差し掛けるし……だからこの、晴天にっ!

 ああそうか、大雨の中の入り、を想定して演出してあるんだっ。

 なにしろ最強雨男伝説の持ち主だから。

「ちかさんの入りのイベント、どうする?」「きっと当日は大雨だよねえ」「んじゃ、雨でも大丈夫なイベントにしないと」……ってところからスタートしたんだ、コレ。

 ミズはモテモテ、ロックオンミズ、数々の替え歌と共に、てるてる坊主たちが揺れる。
 お花で飾られた台車に乗って凱旋した水しぇんは、拡声器を渡され、開口一番。

「絶対雨降ると思ってたでしょ!」

 オゥイエーッ!! てるてる坊主たちも、観客も歓声。

「こんだけの生テルテル坊主のおかげで、晴れだっ!」

 そうか。
 そうなのか。

 水夏希最強雨男伝説を打ち破ったのは、組子たちの愛なのか。

 雨を呼び、嵐を呼ぶ男、水夏希。
 地球をも動かす最終兵器、アクアの地球、みんなの水夏希の雨っパワーは健在、ナニモノにも揺るがないラスボスぷり。
 しかし、ついに伝説は破られるときが来た。

 それが、愛によってだ。

 物語の結末は、いつだって、愛。
 退団者に美しく爽快に最後の日を迎えて欲しいという、雪組メンバーたちの愛によって、雨雲が蹴散らされたんだ。

 野獣が愛によって王子様に戻るように、雨の伝説の奥に囚われていた黄泉の帝王ミズナツキは、愛によって封印を解かれ、わたしたちの前に現れたんだ。

 青い空と、白い雲を背に。
 輝く太陽を浴びて。

 
 …………愛の力、強すぎです、みんな。
 暑くて死にそうな1日だった(笑)。

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