守山遠征日記。@哀しみのコルドバ/Red Hot Sea II
 花組全ツ『哀しみのコルドバ』『Red Hot Sea II』を追いかけて、守山へ。

「守山ってどこ?」
「さあ?」
 ……というわたしは、日本地図を書けない地理音痴です。中1のときだったかな、あるイベントで「日本地図パズルに挑戦」というのがあって、意気揚々とチャレンジしたら、見事に敗退したという……。んで、小学生だった弟が悠々勝ち進み、姉の権威は地に落ちたという……。それから何年も、姉弟ケンカで負けそうになると弟は「**県の県庁所在地は?」とか「**県の東の県の名前は?」とかケンカ内容とはぜんぜん関係ない質問をしてきて「こんなこともわからないヤツに言われたくない」と鼻で笑うよーになったという……。トラウマだよなこれは。
 あのころから、たぶんわたしの地理音痴ぶりは変わっていない。
 大阪から滋賀県守山市へ向かうのに、ごくふつーに神戸方面の電車に乗りかけましたから。
「神戸(西)へ行ってどうする、滋賀は京都(東)の向こうだ」……乗る電車を聞いただけなのに、またしても弟に冷笑される。や、アタマではわかってたんだけど、電車の路線図見るとわかんなくなったのよっ。

 そんなこんなでひとり旅。まっつのためならエンヤコラ。
 

 守山市民ホールは、思いの外、近かったです、大阪から行くにあたって。
 ふつーに家を出て1時間ほどで着くから、阪急で宝塚ムラへ行くのとそれほど時間的には変わらなかった。どんだけ阪急電車が遅いのかって話だな。しかし、交通費は在来線使用なのにおよそ3倍かかったから、どんだけJRは運賃高いかって話だな。

 勝手に「ものすごく遠くへ行く」と思い込んでいて、新快速の中で爆睡していたら、守山到着していてあせった。あわや乗り過ごすとこだった。
 もりやま、と放送を聞いたような気がして覚醒したら、あれほど女性であふれていた車内にわずかな人数のおっさんたちしか乗っていない……状態。確認する間もなく鞄ひっつかんで降りたわ。
 ホームは女性だらけで、改札口には「花組全国ツアー会場 守山市民ホール行き 臨時バス乗り場→」と書いた紙を掲げた男の人が立ってるし、同じ電車を降りた女性たちはみんなそろってそっちへ行くし、駅の階段降りたところには前述と同じ紙を持った人のところに長蛇の列ができてるし。なにか考えるとか駅前探索するとか、なにもできずにふらふらと最後尾に並ぶ。
 わたし、駅から全ツ会場までは歩くのが基本の人なんですが。30分くらいならふつーに徒歩範囲だから。もちろん今回もそうするつもりで、地図は持ってないが向かう方角と交差点の名前だけはチェックしてきたのに(それだけわかりゃあ歩けるだろ、と)。
 そんなわたしがついうっかりバスに乗ってしまう、ほどの完璧なコース案内。徒歩時間を見て到着していたもんだから、会場に早く着きすぎてこまった(笑)。

 
 守山市民ホールは、前回の全ツで行った三重ほど「とんでもない」気はしなかった。
 あんときは、はてしなくなにもない広大な空間に、これまたやたら壮大な施設がどかんどかんと設置され、大阪市内の人口密度・建物密集度との差に感動したもんだ。
 守山市民ホールは施設の規模が大きくないためか、わりと「ふつー」な感じ。よくあるふつーの市民ホール。

 玄関入れば広いわけでもないロビーに、身も蓋もないホワイトボードが置いてあり、「本日の行事案内」が走り書きされている。
 そ、そうか……「練習室」や「リハーサル室」も花組が使ってるのね……。楽屋に入りきれない下級生とか、そんな部屋に押し込まれたりするんだろうか。

 しかし、このテのホールの宿命なのか、小さな喫茶店がひとつあるだけで、周囲に商業施設は皆無、昼夜Wヘッダーする人は食事で困る、と。これはもお、お約束?
 市民ホールの出し物に、わざわざ遠征してきたり、同じ出し物を1日で続けて観たりする変人はいない、という前提でしか施設が作られていないんだよね。
 だから開場までや公演と公演の間、ロビーの椅子はまったく足りないわ、体力のないお年寄りが壁際に坐り込んでいるわ、開演1時間前からトイレが長蛇の列だったりしてるんだよなー。いやあ、居場所がなくて困りますなー。

 サバキはどこでやってたんだろう?
 まったくナイなんてことはないと思うんだが、ざっと見た感じではわからなかった。
 まあ、サバキなんてなくても当日券が山ほ……ゲフンゲフン。

 
 大阪から1時間の場所だから、さぞやムラと同じよーな客層だろうと思っていたが、彼女たちが手にしているチケットを見ると、ご当地発券の見たことない様式の大判サイズばかり、友会やチケぴなどのチケットを持っている人が少なくておどろいた。
 いちお、ふつーに地方公演なんだ、と考えを改める。
 平日昼間だからか女性客が圧倒的で、ある意味ムラより男性率が低かった。夜は少し男性率は上がったが……やはりすごく少ない。ムラは観光としての認知もあるから、団体客とかで年輩男性が一定数いるからなー。

 上演中に、鳴りまくる携帯電話、おしゃべりのやまない客席。うーん、さすが全国ツアー?
 わたしの少し後ろの席にいた年輩おばさまグループは、ずっとたのしそーに喋り続けていたけれど(目に映るもの、心に浮かんだことを全部そのまま口にしないといけない人たちらしい)、とくにショーで妖精さん@みわっちが出てきたときは反応が大きかった。出てくるたびに彼女たちグループがわきたっているのがわかる(笑)。幼い孫の映っているホームビデオを見ている感じで、いろんな擬音を発してはころころと笑い続けていた。すげえなみわっち、幼児語でいっぱい話しかけられていたぞ?(笑)
 まあそれらもまるっと含めて「旅気分」なので、とくに不快でもない。たのしんでいる様子が伝わってくるし。 

 滋賀だからっつーことで、アドリブはひこにゃん。……そうか、守山って滋賀なんだ(アタマでわかっていても、実感として、いまいちわかっていない)。バスの中にゆるキャラフィーチャーした広告が出てたっけ。しまさこにゃんとか。
 

 帰りは現地集合した木ノ実さんと一緒に、出待ちなんぞをしてみる。
 全ツの出待ちなんて、カリンチョさん主演の『ベルサイユのばらーオスカルとアンドレ編ー』の福岡以来だわ。(いつの話だよソレ)
 ホールを出れば「臨時バス乗り場」の紙を持った男の人がいるし、便利だなあ。
 が、出待ち目的のわたしたちは、バス乗り場には行かず、ホールの駐車場出口にスタンバイ。
 会の人たちの後ろからギャラリーするわけですよ。

 福岡のとき(だから何年前だよソレ)は、会場に横付けしたバスやタクシーに乗り込む姿を見られたんだが、守山では大型バスにすでに乗ったあとでした、ジェンヌさんたちの姿を見ることが出来たのは。
 まっつはわかんなかったけど、ゆーひさんはわかった。ので、満足(笑)。

 あれほど臨時バス出してがんばっていたバス会社だが、出待ち終了後はバスも終了していた。
 バス利用するうちの何割かは確実に遠征してきたディープなヅカファンで、出待ちまでが公演なんだから、そこまでフォローしなきゃだわ、詰めが甘いわ(笑)。

 や、わたしは地元民の木ノ実さんに駅まで車で送ってもらうことになっていたので、バスの終了時刻を気にせずに済むから、出待ちしてみたわけだが。

 
 結局1日、雨は降ったり止んだり。
 降水確率は大きかったし、大雨だと言われていたのに、わたしが屋外にいるときは何故か止んでくれた。折りたたみ傘はずっと鞄の中。ラッキー。

「守山、近いでしょ? ね、ムラより近いんじゃないの?」
 と、木ノ実さんは繰り返す。
 うん、たしかにすごく近いよ。ムラよりはさすがに遠いというか運賃高いから大変だけど、それにしたって旅とか言っててごめん。なにしろわたし、地理音痴だから。
 これから全ツの観劇範囲としてふつーにチェックするわ。今まで大阪から日帰りで行った全ツ会場すべての中で、いちばん近いわ。

 ……ところで、あの空席ぶりは平日の全ツのデフォルトよね? 昔ゆーひくん追っかけて行った彦根の会場でも、2階席は数人しか人がいなかったし。水しぇん追っかけた津も後方席は選びたい放題だったし。
 日帰りできてチケットレートが低いとすごく助かるんで、これからもチェックするっす。
 アルバロ@まっつが、なんかますます地味になっていた気がした、花組全国ツアー『哀しみのコルドバ』『Red Hot Sea II』守山公演。
 コメディちっくに大仰にキザることをせず、ふつーに二枚目の範疇でかっこつけるだけだと、ただの脇役としてモブに沈むというかなんというか。
 いやその、脇だからそれでいいのかもしれんが、それにしてもますます脇ぶりが板に付いてきたなと、その役のこなれ方に危惧を感じたり(笑)。
 仕事に忠実な人なんだろーか。そこだけ場を壊してお笑いに徹してもかまわないと思うんだが……。

 それと、祭り場面でなにもしなくなっていた。
 梅芸であれほどめぐむ相手に絡んでたのに。めぐむの横に行って、ただ談笑しているだけ。なにか仕掛けるでなく、小芝居するでなく、自然に背景やってます……。疲れてるのかな。

 ソロ歌は芝居もショーも「まっつ的キメ顔」で朗々と歌ってましたが。
 

 神奈川まで行かないので、これが最後、My楽。
 花組のゆーひくんを見るのは最後、まっつの隣のゆーひくんを見るのも最後。

 そう思うと寂しくて仕方がない。

 そして、また。

 不意に、まっつに会えるのは、あといったい何回あるんだろうと思い、泣きたくなった。

 タカラヅカは有限の楽園。
 誰もが永遠にいられるところじゃない。みんないつかは卒業していく。

 考えたくないけど、まっつもいずれいなくなる。
 いったいあと何回、舞台の上の未涼亜希を見ることができるのか。男役の未涼亜希を見られるのか。
 それを思うと、なんかもー急にかなしくなって。

 ゆーひくんだって、トップが確定したってことはカウントダウンがはじまったってことだし、わたしが彼にはまってから毎公演毎公演集合日が近づくたびに退団の噂が駆けめぐる人だったけど、なんか最近はそんなこともなくなって安心していたのに、そうかこれからはカウントダウンにおびえることになるのかと改めて考えて、こちらもまた悲しくなり。

 どのジェンヌさんも、輝いていられる時間はとても短いのだ、初舞台を踏んでから台詞をもらえ役をもらえ、キャラクタが確立してから卒業まではほんとーに短い間なんだと実感した。

 そうやってタカラヅカは1世紀近く続いてきたとわかってはいるが、なんかもーしみじみと悲しいなあ。

 まっつ、どうかどうか、少しでも長く夢を見させてくださいよ。
 客席でガン見しているだけで、なんの役にも立ってないファンだけどさ。

 
 ほんとに、年を取ると涙もろくて困る。
 いつどこで不意に悲しくなるのやら。
 悲しい場面だとわかっていれば、ハンカチの用意も出来るけど、しあわせそーにきらきらたのしい笑顔場面で泣きたくなる、それじゃ自衛のしようがない。
 降雨確率見て傘の用意しても、無意味みたいな。

  
 まとぶさんは芝居の髪型が微妙に変わっていて、「あのすだれはナニ?!」と、幕間に木ノ実さんと話すことに(笑)。オールバックなんだけど、垂らす前髪量が増えているよーな。
 まとぶんのエリオが好き。彼の狭量さ、純粋なゆえの残酷さも、すごく好き。

 ロメロ@ゆーひくんがかっこよすぎる。研ぎ澄まされた美しさ。
 長い時間を掛けて、たくさん遠回りして、ゆっくりゆっくり磨き抜かれてきた美しさ。
 「大人の男」であること、その矜持に懸けた公正さが、不自由でツボだ。

 このいい男ふたりが、どーしてエバ@彩音ちゃんを取り合うのか、彼女の魅力がいまいちわかっていないのだけが、つらいんだが。
 まあそーゆーこともあるだろう、そーゆーもんなんだろう、と思って見ている。

 今回は意識的にビセント@みわっち凝視。この人の芝居がなんか好き。まともに見ちゃうと彼しか見なくなる危険性があるので(笑)自重していたんだが、最後だからとガン見してみる。
 ふつーに彼主役でスピンオフもありじゃね? と思えるメロドラマっぷりがいいの。
 

 ショーの客席降りのとき、まとぶんとゆーひくんの性格の違いが出ているというか、できるだけたくさんのお客さんにタッチするべく走り回るまとぶんと、マイペースにできるところだけタッチしていくゆーひくん。この差が愛しい(笑)。
 まとぶさんは昼公演ではセンターブロックだけでなく、端から端まで歩いてくれました。夜は上手端ブロックには行き着けずに時間切れ。
 ええ、わたし、中日劇場、前回の全ツ、今回と、3回連続まとぶんに握手してもらいましたっ。タッチというより、もうちょい握手寄りだから、握手に分類(笑)。やっぱり手は冷たかった。まとぶんいい人。

 ゆーひさんのウインク大安売り(彼的に)に感動しつつ、他の人のウインク捕獲にも忙しい。みわさんは相変わらずだが、めおくんやまぁくんもバチバチやってた。もちろんみちるタンもノリノリ。
 まっつは……やってましたか? わたし見てないや。ガン見してたんだがなー。

 てゆーか、最後の1回はオペラいらない席だったにも関わらず、ずーっとまっつ追いかけてて、「引き潮」や「スカートをめくらない男」の場面(そんな名前ではない)でもオペラでまっつのみガン見してたもんで……酔った。
 3D酔い? 視覚から来る乗り物酔い状態。両シーンとも、まっつ舞台中を走り回るもんだから、それをオペラで追い続けると、もお。
 でも、まっつの顔アップなんてスカステでも見られないんだから、今ここで見ておくしかないと、飢餓感と焦燥感にかられて、やむなく……。酔った……まっつに酔った……まっつに酔う……ぽっ。(バカ)

 ゆーひさんの大きな羽が、隣の小さなまっつを攻撃することもなく(あわや、という瞬間はあったが、ちゃんとまっつの後ろに羽が来るよう場所取りしていた、お互い)、狭い舞台にみっちり並んでいました、ゆひまつ。
 大きなゆーひさんと、大きなめおくんの間にはさまれている、コンパクトなまっつの図、にひそかにツボるのだ。

  
 ……次に花組大劇場公演では、ゆーひくん、いないんだ……。

 てゆーか、おーぞらゆーひさん。
 花組でやったショーが、『Red Hot Sea』だけってのは、どうなのよ。
 どんだけ『赤熱海』のプロなのよ。職人なのよ。……と、おサカナさんたち従えてノリノリで踊る姿を見て思った。

 もっともっと、見ていたかった。花組の、ゆーひくんを。

 わたしの全ツが、『哀しみのコルドバ』と『Red Hot Sea II』が、終わっちゃった。
 まっつまっつとうるさいわたしですが、あれほど待ち望んだ『Brilliant Dreams#46「未涼亜希」~personal~』初回放送を捨てて、実は『グイン・サーガ』第1話を取っていました。

 丸かぶりだったんだもんよ、時間帯。
 CSとBSはチューナーがひとつしかないため、W録画も裏録もできない。どちらかをあきらめるしかない。

 ……となれば、リピート放送のあるCSを、まっつをあきらめるしか、なかった。

 おかげで、『ブリドリ』放映当日に感想書けなくて、そーなるともお「いつでもいいか」になって、どんどん感想書くの遅れちゃったさ。

 今のわたしが、再放送があるとはいえ、まっつをあきらめるくらいには、重要だった、『グイン・サーガ』。
 少女のころ、大好きだった作品だから。
 大人になってからは彼女の作品に、そして本人のテンションや考え方について行けなくなり、いつしか無事にクリモト信者から解脱できていたんだが。

 『王家の紋章』や『ガラスの仮面』と同じように、「ああ、子どものころ読んだ……それでアレ、どうなったんだっけ?」「まだ続いてるらしいよ」「作者、終わらせる気ないんでしょ?」という会話につながる同世代の共通言語。
 誰も「終わる」ことはないとあきらめている、「永遠の、未完の大作」。……終わらないことを期待している、終わって欲しくないのではなく、「あきらめている」あたりが、みんなとてもオトナ(笑)。

 そして『グイン・サーガ』は、本当に「未完の大作」として終わった。

 中学生のとき「長く続いている本だから」という興味だけで読みはじめ、20代最初くらいまで、ほんとにむさぼるように読んでいたよ。
 『グイン・サーガ』だけでなく、栗本作品全読破はヲタクのたしなみだった(笑)。
 そーいやサイン会行ったなあ。我が家のどこかに、栗本氏のサイン本が3冊(3冊かよ!)はあるはず……。

 栗本氏がヅカファン……というか、ヅカに興味がないでもなさそうだったころは、わたしがヅカに興味薄かったので、『グイン・サーガ』あとがきに「ナリス様はシメさんで」とかキャスティングされているのを見ても「ふーん」でしかなかった。
 そして、わたしがヅカファンになったころには、栗本氏は自分の劇団(演劇作品)に夢中でヅカへの興味は失っていた模様。

 その、明らかに興味がなくなってから「歌劇」に栗本氏(中島梓名義)のエッセイを載せるあたり、「歌劇団のエライ人ってズレてるなあ」と思った記憶がある。
 宝塚歌劇団オフィシャル誌で、ヅカへの愛も興味も薄いまま、自分の作品や自分の劇団の宣伝と自慢話に満ちた甘酸っぱい(笑)エッセイを書き続ける栗本氏を、友人たちとたのしく眺めたのも、今となってはなつかしい。

 いろんなことについて行けなくなってはいたけれど、それでも、彼女が偉大なクリエイターであったことは、まちがいない。

 出会いには時期、年齢というものがあり、少女だったわたしは栗本薫に出会って夢中になった。
 今は遠ざかっているけれど、いつかまた時期が来れば彼女の作品に夢中になる日が来るかもしれない。
 わたしが50歳とか60歳になり、考え方や感じ方が変わればまた、新鮮な思いで出会えるかもしれない。
 幸い『グイン・サーガ』はそのころも300巻とか400巻とかでふつーに続いていそうだし?
 ……と、思っていたよ。
 作者本人がもう長くないらしい、とも、聞き及んではいたけれど。

 それでも、ふつーに未来を信じていたよ。

「おばーさんになったわたしの横に、おじーさんになったあなたがいるの」
 と、幸福な未来を語るように。

 いろんなことがイタくて今は読めないけれど、いつかまた、出会えることを信じて。
 ふつーに栗本氏は何十年あとでも執筆活動を続けており、(爆)満載のあとがきを書いていたりするんだと。(あとがき数ページ中に何回(爆)が出てくるか、数えていたころがあった・笑)

 また出会えると、ずっとずっと続いていると、信じていたよ。
 なにも変わらずに。
 続いて、いくのだと。

  
 まっつ初回放送をあきらめてまで録画したアニメ『グイン・サーガ』は、トウコちゃん千秋楽で東京行ってるときに録画失敗(だから、CS・BSはチューナーひとつだから切り替え失敗しやすいんだってば)、今は再放送待ちしてまつ……半年後か1年後には地上波で再放送があると信じて……今『タイタニア』の再放送してるし……。
 いやあ、緊張しました。

 『宝塚巴里祭2009』の、大阪公演発売日ですよ。

 前夜から浅い眠りを繰り返し、目覚まし設定時刻より前に何度も目が覚め……そんな状態で決戦の朝を迎えました(笑)。

 例年の『巴里祭』のチケット販売状況なんぞカケラも知らないので、どの程度チケ取りが大変なのか知らないけれど、わたしはまあその、なんとなくチケ難で困ることはないんじゃないかと勝手に思ってました。
 や、なんの根拠もないけれど。強いて言えばまっつだからとか……その……ゲフンゲフン。

 電話がつながらなくて、発売開始数分で全席完売! ……なんてことはナイだろー、いつか電話はつながって、観に行くことができるだろう、と、そのへんは勝手に楽観しておりました。
 だってにまんろくせんえんもするんだもん。
 この不景気真っ直中、そんなにお金持ちばかりぢゃないわ、と、びんぼーな自分の目線で判断してました、はい。

 自分の経験や他人様からの体験談からしても、DSなんてスターによっては発売開始1時間後だってチケット取れるわけだし。
 オペレータの人数が少なく、手続きに時間が掛かるため、発売開始からけっこー時間が経っていたって、チケットはまだまだ売っていたりする。
 だから「30分かけ続けたけどずっと話し中でつながらなかったから、あきらめた」とか言わず、そのあともずーっとかけ続ければ、いずれは取れる。
 多分、30分くらいで脱落する人が多いっつーのもあるんだろうな。
 や、トップ様の退団DSとかはこの限りではナイだろーけど。

 しつこくあきらめず、かかるまでかけ続ければ、きっとチケットは買える。
 そのへんは心配していない。

 だが。

 わたしが欲しいのは、前方席だ。

 かかるまでかけ続けてそのうちつながって、手に入るよーな席ぢゃ、ダメなのよ。嫌なのよ。

 前で、近くで観たいのっっ(笑)。

 だってだって、まっつなのよ? たぶん、おそらく、最初で最後の主演なのよ?
 や、最後でなくてぜんぜんいいんだけど、これから先何度でもやってくれていいけど、とりあえず今のところはそれくらいのキモチで臨んでおいて問題はないはず。

 前で観たい~~、近くで観たい~~。じたばた。(駄々っ子)

 だからだから、勝負は最初の数分。
 すぐにつながってくれなきゃダメ。
 神様お願い。

 
 と、まあ。


 欲の皮のつっぱらかった思いで、ひとりで勝手にテンパっておりました。
 あー、緊張した。

 数分前からホテル阪急インターナショナルの特電番号を入力し、時報と共に発信……したつもりが、うっかりフライング。気が急いているためだろうなあ。時報のちょっと前にボタンを押してしまったようで。
 エラーが出たんだわ。「この番号はつながりません」かなんかメッセージが出て、一瞬ぴよ?となった。
 番号、入力間違えた?
 で、あわててリダイヤル押して番号を表示させたら……あれ。「ホテル阪急インターナショナル」って名前が出てる。

 知らなかった……わたし、ケータイにHHIの特電番号、メモリしてたんだわ……。いったい、いつ……。
 今回じゃない。
 入力済だとは知らず、HP開いていちいちボタン押したもんよ。

 前になにかで電話掛けしたんだな、きっと。おぼえてないけど。

 つーことで、電話場号は間違ってない。
 そうか、10時ジャストに発信ボタン押したつもりが、コンマ数秒早かったんだ? 定刻前だから回線開いてなかったんだ。

 痛恨のミス。
 「つながらない」というメッセージが出ても、気にせず瞬時リダイヤル攻撃すればよかったっ。

 数秒のロスタイム。
 しかし、時報と同時をはずしてしまっては、そっから先はつながらない……っ。

 もー、心臓ばくばくさせながら、リダイヤルし続けたよ……。

 
 時報と同時を逃してしまったとしても。
 もっとすぐに電話つながると思ってたんだけどな。
 思っていたよりぜんぜんつながらなくて、あせりまくった(笑)。や、どれだけ楽観していたのかと。

 半泣きになってリダイヤルしつつ、「こんなに電話がつながらないくらい、『巴里祭』を観たい人たちがいるんだ」と感動したり、もー、なにがなんだか。テンパり過ぎ。

 つながったときは、すでにPCの前を離れ、ベッドで寝ころんでいたので、あわててPCの前まで行ったよ。メモとかも全部、基本PCに入力しちゃうヒトだから、わたし。

 あー、疲れた。

 席は最良ではないが、わたし的にはよかったかな、ぐらいのところが取れた。いやその、テンパっちゃって座席位置聞くのが精一杯っす。
 そもそも何列(何テーブル)あるとかセンターが何番かとかも知らないまま、位置だけ聞いてもあまり意味がなかったのかもしれないが……。

 とにかく、疲れた。
 決戦だもの。勝負だもの。

 勝った気はあまりせず、なんかモヤモヤしたままベッド入って『モンハン』はじめちゃったけどな(笑)。や、なにも考えたくないときはゲームに限ります。

 
 チケットは郵送だそうです。
 はっ。
 チラシ、三つ折りだか四つ折りだとかされちゃうよねええ?
 あああ、「折り目を付けないで送って下さい」って言うの忘れたっ。送料多く出しますから、って言うつもりだったのに、郵送オンリーの場合は。
 宝ホは出向いていって引き取りが出来たんだよ、チラシ折りたくないから、ケロのときはわざわざ引き取りに行ったんだもん。

 チラシが欲しくて、HHIにはすでに何度も行ってます。花全ツ梅芸の日から、「ポスターがあるってことは、チラシもあるんじゃ?」と、こっそりのぞきに行ってます。
 でも、置いてないんだよ。
 自分では恥ずかしくて聞けないから、nanaタンにお願いしてホテルの人に聞いてもらったりな……。

 そしたら、「チラシは作ってません」と言われたさ……。

 ナイんじゃなくて、作ってないのかよヲイ。
 そんなの嘘だもん、ヤフオクに巴里祭チラシが出品されてたもん。知ってるもん。(落札はしてません、未練たらしくウォッチしてましたが・笑)
 チラシ目当てのヅカファンには、そう言うことになってるのかもしれないなー。

 
 あとはポスターが欲しいんですが。
 保存用と観賞用と、最低2枚。
 抱き合わせ販売、してくれますよね? ホテルメイドのお菓子とか、レストランの特別メニューとかとセットで。
 ポスターのために、ランチでもなんでもしに行きますよっ。祭りですから!!

(決戦日だったので、テンションがオカシイまま終了)
 ジャッキー@壮くんキターーッ!! 

2009/05/25

花組 『ME AND MY GIRL』(梅田芸術劇場メインホール)主な配役と役替わりの実施について


花組公演 『ME AND MY GIRL』(梅田芸術劇場メインホール:7月4日~7月20日)におきまして、主な配役が決定いたしましたのでお知らせ致します。また、本公演では役替わりを行いますので、併せてご案内いたします。

花組公演
ミュージカル
『ME AND MY GIRL』

【主な配役】
ウイリアム・スナイブスン(ビル)・・・真飛 聖
サリー・スミス・・・桜乃 彩音
ジョン卿・・・壮 一帆、愛音 羽麗(役替わり)
ジェラルド・・・愛音 羽麗、朝夏 まなと(役替わり)
ジャッキー・・・壮 一帆、朝夏 まなと(役替わり)
マリア公爵夫人・・・京 三紗
パーチェスター・・・未沙 のえる
ヘザーセット・・・夏美 よう
※その他の配役は、決定次第ご案内いたします。


 『ME AND MY GIRL』自体、わたしにはあまり得意な演目ではないので、専科さんふたりの出演が発表になった段階でかなりテンション落ちてました。
 や、専科さん個々に含みがあるわけではなく、組子で見たかったし、組子でできるだろーし、わざわざ「いつもの」人に出演いただなくてもいいじゃん、と。
 数少ない主要な役の3分の1を「いつもの」人たちで占めるんじゃあ、別の組でやる意味薄いじゃん、と。
 作品信者でない分、目新しさが減ると興味も減るという……。

 これでみわっちがジャッキーだったら、マジで凹むなー、と。チケ取りもせずにおりました。や、友会入力はしたのよ、はずれただけで。(相変わらずのくじ運)

 それが、壮くんがジャッキー! みわさんが男役ONLY!!

> まとぶと彩音ちゃんのビルとサリーはたのしみにしてるけど、さらにジョン卿@壮くんに期
>待かけまくってるけど(笑)、壮くんがジャッキーだったりしたらたのしすぎるけど(笑)。
 ↑ まっつ巴里祭発表日の日記より。

 望み通りの配役ですがな。(鼻息)

 仲間内、どりーず東組のみなさんからも「壮ジャッキーのために遠征するわ!(鼻息)」な声が届いてきてますよ。えりたん、わたしたちのアイドルだから。

 マミさんジャッキー好きなわたしですから、壮くんには期待していますとも、迫力オカマジャッキーを!!

 ビル@まとぶをマジでびびらせてくれ~~。うおー、肉食系女子(女子・笑)なえりたんが、獲物(まとぶ・笑)に襲いかかるのか……た、たのしみ過ぎる……。

 
 みわっちが「男役」であることも、うれしくてならない。
 役替わりがあるだろうなと思っていたけど、みわっちはきっと女役もさせられるだろうと悲観していたので。
 通常、路線男役が女役を振られるのは「オイシイ」ことであり、「スターである」という劇団の意思表示でもある。
 しかしみわっちみたいに毎公演毎公演、女役だの子役だの「男役以外」をさせられるっていうのは、まるで「男役としての価値を認められていない」みたいで嫌だった。
 また、「男役」「娘役」というタカラヅカならではの文化を、劇団自身が軽んじているようで、嫌だった。
 
 「男役」も「娘(女)役」もそれぞれ積み重ねた年月と磨いた技術で成り立つモノで、軽んじていいモノぢゃないんだっ。
 そして、みわさんの「男役」は魅力的なんだっ。

 男役には男役をやらせろ~~!
 みわさんの男役を見せろ~~!

 と、なにかにつれ思ってましたから。や、今の全ツでは男役やってるけど、ショーの大半は子役だしさー。1公演男役ONLYなのって、いつまで遡らないといけないの?状態なんだもんよ。

 みわさんのヒゲのおっさんが見られるかと思うと、それだけでときめきますな……ふふ、ふ……。

 まあその、壮くんとみわっちの恋の相手が京さんだっつーんが、わたし的にはちょっと悲しいんですが……。
 『あさきゆめみしII』のトラウマがね……あれマジですごかったからさー、その、いろいろと……。
 京さんはいい女役さんだけど、トップスター演じる光源氏の恋人役はちょっと……とゆーかかなりミスキャ……ゲフンゲフン。
 
 オサ様に継いで、壮くんもみわっちも、京さんの相手役を務めるわけか……。

 
 まぁくんのジャッキーもたのしみっす。あの長い長い脚で誘惑するのかー。
 てゆーか、まぁくんにきちんと役があり、彼の芝居を見られるのはウレシイな。大劇場ではそんな機会はなかなかないし、彼の場合せっかくのWS主演も彼以外のことで大変なことになっていて、彼の芝居がどうこう以前だったから(笑)。
 ジャッキーはいいけど、ジェラルドがよわよわになりすぎないことを祈る。や、老婆心で。

 
 通常、路線男役が女役を振られるのは「オイシイ」ことであり、「スターである」という劇団の意思表示でもある。
 だから、壮くんやまぁくんの「女役」はオイシイのよ、スターの証明なのよ。ハレルヤ♪

 タカラヅカは不思議なところだよね。
 オサ様の『冬物語』でも思ったけど。

 父と娘を、同一の役者が演じるなんて、ありえない。

 ……ええ、『冬物語』のオサ様の2役を見て、しみじみ思ったもんよ。 
 父と息子を、とか、母と娘を、ぢゃないのよ。父と娘よ?
 おっさんと若い女の子を、ひとりの役者が演じ分けるって、ひとり芝居でもない限り、ありえないから。

 ヒゲのおっさん(ジョン卿)と若いお色気美女(ジャッキー)を、同一の役者が演じるなんて、他ではありえないよなあ(笑)。

 これが「若い男の子」と「若い女の子」だとか、「年輩の男」と「年輩の女」だったら、それほどありえなくもない。
 若いうちは見た目が男女でそれほど変わらない場合もあるし、年を取ればまたさらに性別での外見差がなくなったりもする。
 おじさんなのかおばさんなのか咄嗟にわかりにくい人は世の中いくらでもいるし、きょうびの若い男の子に女の子と見まごう子はいくらでもいる。
 『マンハッタンラブストーリー』の忍ちゃん@塚本高史がふつーに女の子に見えるように、同じ年代の異性を演じるのは、ありえることだ。

 おっさんと、娘世代の女の子を、ひとりの役者が……てのは、タカラヅカならではの醍醐味だ。

 チケットはないが、なにしろ梅芸なのであとからなんとでもなるだろう。
 たのしみだ。

 ……友会全滅した博多座チケットをどーするか、あー、チケットってなんでこう当たらないんだろうなあ。
 
              ☆

 そして。

 明日は決戦の日ですよ。
 まっつ『巴里祭』発売日っ!!

 運命の神様、お願いです。
 電話がすぐにつながりますように!!
 だらだら『エリザベート』感想の続き。

 バートイシュル。……マックス@越リュウかっこいいっす。て、いかん、パパを見ている場合か。

 過去作品と比べるのは不毛だからできるだけ封印しているんだが、記憶が新しすぎてどーしよーもない。
 じゃれあうキムとながかわいかったこと、オレンジを追いかける猫のようなとなみシシィが超絶かわいかったことを、どーしても思い出してしまう。

 ルキーニ@まさおくんは、とてもソツがない。初日から「ルキーニ」の規定演技バリバリ。明瞭に喋り、歌い……そんな自分が大好き!って感じがゆんゆんしていて、とても愉快(笑)。
 たのしそうでいいやね。

 シシィ@カチャが、みなこちゃんに見える……何故だ……新公ロリータ@『ZORRO 仮面のメサイア』に見える……。
 みなこがすでにトップ娘役になって、シシィを演じているような錯覚。

 お見合い場面は背景の兵士に至るまで小芝居しまくりで、目がいくつあっても足りない。

 フランツ@きりやんと、シシィ@カチャ。
 並んでもぎりぎりフランツの方が大きい? という現実に、思わずヒールの高さをチェックしてしまう。
 ……シシィ、ぺたんこ靴だ。エッジソールではないので踵は付いているが、ヒールと呼べる高さ無し。
 ドレスなのに、ぺたんこ靴って……!!

 それって、変だよね。ファッション的にも。
 あさこシシィもでかかったが、トートがそれ以上にでかかったからか、ヒールなしではなかったはず。足元見えたとき変だもの、最低限のヒールは履いていたと思うんだが。

 いやまあその、なんにしろ、きりやさんのキスシーンをオペラでガン見する。
 なんか「いただきます」的で、「殴ったろかコイツ(笑)」と思うよーな顔でチューするんですよこの人。冷静ぶってるわりに、フランツひとり内心けっこー盛り上がっているらしい(笑)。やー、きりやさんのあのチューの顔、好きだなー。

 で、きりやさんの2度目のキスシーンをぼーっと見ていたら、トート閣下@あさこちゃんの銀橋登場シーンを見逃した。
 いかんっ、デバガメトート様、銀橋に登場するんじゃん。現れるところから見たかったのに。

「予定通りいかない」
 の台詞で、きりやさんにデレデレしていたキモチを、「そーだ、『エリザベート』を観るんだ」と切り替える。

 
 結婚式は参列者の点呼を取るだけで終了した。……わたし月組、ぜんせんわからなくなったんだなぁ。名前が一致する人の方がめっちゃ少ない。

 ルドルフ役の人がアルバイトをする場合があるので、ついモブがわさっと出てくるたびに探しちゃうんだけど(親戚たちとか、兵士とか)、考えてみたら今回は役替わり公演だから、アルバイトしている場合じゃないよな。

 あさこちゃんの声には「重さ」がないんだよなあ、と、目で参列者を眺め、耳でトート閣下の声を聞きながら思う。……最後の高笑いが特に気になった。

 初演雪組の印象が強すぎるため、結婚式から舞踏会に場面が変わるときの「間」に慣れない……未だに(笑)。
 初演ではトートの高笑い、ボーンボーンという音、の直後から「結婚は失敗だ♪」の歌がはじまるんだよなー。
 いつのころからか、結婚式のあと、しばーらく待たされるようになったよなあ。
 今回も「あー、まだはじまらない……まだ……まだか……あ、やっとはじまる」って感じ。

 で、ここでもマックス@越リュウですよ、ええ!! かっこいー。いい声~~。
 「マザコン皇帝」がはっきり聞こえる。歌いにくいらしく、誰が歌っても聞き取りにくい歌詞なのに。(ここで「マザコン」という世界観にそぐわない単語が飛び出す違和感もあり、わたしには聞き取りにくい)

 ここでのシュヴァルツェンベルク@マギーがさいこーっす。
 めっちゃ伊達男。かっこつけたまま、「困ったものだよ、まったく」という顔で歌っているの。ユニークに顔を崩したりしているんだけど、それすらダンディな男の余裕めいてる(笑)。

 なんとなく踊るフランツ@きりやさんをぼーっと眺めていたら、それに伴いはじめて?舞踏会出席者たちから黒天使へ変わる様を、フォーメーションを確認できた。
 今までは「いつの間にか」黒天使たちになってしまう、その「騙され感」を愉しんでいたんだな。
 オグリさんが「はっしっ!」と弓を受け止める様を見て、「どういうトリックだろ、あれってただのマジックだよね?」と思うのではなく、「壮くんすごーい、うまーい!」と拍手するよーなもんです。舞台裏は気にせんでヨシ、というか(笑)。

 きりやさんが運動会の小学生のようにくきっと方向転換して、人形のように不自然な走り方で他の貴族さんたちと1列になって走り去っていく様に、ツボってしまった(笑)。
 そうか、あんなふーにはけて行くのか、フランツって。

 そしてたのしいたのしい、「最後のダンス」へ。
 トートはどうにも精彩を欠いて寂しく映るんだが、それでもいざロックがはじまるとノリノリで歌い出します。アクションしていること自体がたのしいのかな。興味深いのかな。
 ここでもうっかりトート閣下ガン見していたので、他の部分はよくわかっていません。てゆーかわたし、黒天使をまったく見ていないことに、このへんで気づく。……気づく、が、結局あさこさんしか見てないです。あれ?

 てゆーか影ソロ誰だ、妙にうまいぞ?
 昔、「最後のダンス」の影ソロはエルマー役の専売特許だった。どーして「最後のダンス」=エルマーなのかわかんないけど、たとえ歌ウマでなくてもそーゆー配役だったから、そーゆーもんなんだと思い込んでいた。
 この間の再演雪『エリザ』はコマだったっけ。だからなにもエルマー限定ではないんだろうけど……もりえの声ぢゃないよね、コレ? と、首を傾げる。

 で、場面変わってなにごともない舞踏会の続き、にて。
 フランツの「皇后らしくするんだ」の台詞が好きです。ナニあの外面大事な言い方!

 フランツはなんつーかこう、「融通の利かないエリートビジネスマン」っぽくて、萌えます。
 謁見の間のときから、すごく外面大事ってゆーか、体面命ってゆーか。本心はともかく、ゾフィーママ@あいちゃんの言いなりになっているのは本人の計算もあるんだろうなっていうか。
 ただ善人とか誠実とかだけでない、マイナス面もふつーにありそうなとこがいいっす。ハァハァ。

 んで、「愛の夜を迎える」ために去っていく新婚カップルを見送る、マックスの表情がステキです。
 あの不安な面持ち……。あああ、越リュウかっけー。

 
 と、リュウ様ではじまりリュウ様で終わり、あとは別欄へ続く~~。
 このブログはじめてから、もう何度目だろうねえ、『エリザベート』の感想書くの。
 まさかこんなにしょっちゅー再演再演しまくる演目になるとは、ブログをはじめた当初は思ってなかったよ……。

 つーことで、月組での2回目の『エリザベート』初日の感想、だらだら書きします。
 
 
 満員の客席、立見もあり。盛況です。
 そんな状態で、上手袖からルキーニ@まさおが登場。
 一斉に上がるオペラグラス。

 ……ルキーニってほんと、すごい役なんだなぁ。この状況、この空気の中で最初に登場し、観客全員が暗記しているであろう台詞を口にしなきゃならないのって。
 ルキーニ役は通常、組の2番手とか3番手が演じる、重要な役……なのは、よくわかる。この重責に押しつぶされないためには、キャリアが必要だ。

 と、改めて思ったのは、「ルキーニ」を演じた生徒の中でもっとも番手が低い、ぶっちゃけ明確な番手もついていない子が、「ルキーニ」なんだ、ということを改めて感じたから。
 
 まさきくんは、とってもまさきくんらしく、戦闘意欲満々でした(笑)。

 臆することなく、むしろ挑み掛かるよーに、ルキーニ。
 負けるつもりがナイあたり、まさおのおもしろいところだなあ。

 しかし、わたしがなにより思ったことは。
 ルキーニ、髪型、変。(白目)
 ……でした(笑)。

 凝りすぎてるんぢゃないですか、まさおさん。そのみょーな立体ちりちり非シンメトリーな髪は……。

 
 霊廟から現れた人々の点呼を取るときに、ああ、ルドルフはあひなんだと再確認。
 ゾフィーがあいちゃんだとか、知っているのに実際目にすると感慨深い。
 てゆーかわたし、キャスティングわかってなさすぎ。越リュウ、シシィパパだったんだ?!

 場が盛り上がったところで登場するトート閣下@あさこちゃんの、「黒い翼を持つ姿」の美しさに見入る。
 やっぱりなんかどっか悲しそうに見えるのよ、トート様……。そこがまた、きれーだわー……。 

 観客の意識がひとつになる。エリザベートの大きな肖像画が運ばれて来たときの、注目度ってば。
 絵が開き、そこからシシィ@カチャが飛び出してきた瞬間の、一斉に上がるオペラグラス。

 ルキーニとシシィだよなあ、オペラの動きが一斉に揃うのって。トート閣下初登場時もオペラは動くけど、全員一斉とまではいかないもんなぁ。

 出てきた瞬間のシシィを見て、思ったことは。

 シシィ、でかっ。(白目)

 短いスカートで半端に脚が見えるせいもあるんだろうけど、すげー違和感だった(笑)。
 顔が小さいので、背の高さがより強調されるというか。

 そして靴が丸見えなので、ヒール無しというか「ソレって踵ぢゃなくて靴底だよね?」という、とことんぺったんこな靴につい目が行く。
 少女時代なので歴代シシィもローヒールだったと記憶しているが、それにしてもバレエシューズ並のぺったんこぶりだぁ。

 目を見張るほどの美少女、というわけじゃ、ない……。
 目を見張るほどの歌声、というわけじゃ、ない……。

 でも、もちろん、ぜんぜん下手じゃない。
 下手じゃないなら、それでイイのか、な……?

 いやそれより、マックス@越リュウですよ。

 どおおお、かっこいいいぃぃ!!
 ヒゲのダンディ!! 仕草のひとつひとつがオシャレ! キザ!!

 み、見たかったリュウ様がそこに……ハァハァ。

 配役チェックをしていないため、新しいキャラが出てくるたびにおどろきです(笑)。
 ルドヴィカ@みっぽーなのか!とか、ヘレネ誰だっけ『SAUDADE』のあの子だよねあの子!とか。
 ヘレネがハンカチ破るアクションはもう見られないのかなあ。毎公演ちがってるけど、それってイケコのこだわり?

 「シシィが木に登ってるわ!」と親戚たちがわいわいやっているその後ろに、セリ穴がぽっかり空いているのが気になって気になって(笑)。
 なんであんなとこに穴が? 今までなかったよね?

 と、思っていたら、そこから豪華椅子にふんぞり返ったトート閣下がせり上がってきた。
 植え込みの後ろから登場ぢゃないんだ?!
 たしかにまあ、黒天使たちに椅子を押させて登場するより、かっこいいか……。

 下手側に登場した椅子は、黒天使たちが移動させ、上手側に静止、そこに一旦気を失ったシシィを坐らせ、そのままベッドへ。
 だから親戚たちとシシィ蘇生は上手側になっていた。

 いやその、ここはトート閣下ガン見していたんで、シシィがナニしてたかイマイチわかってないんだが……。
 トート閣下、クールっていうよりテンション低く見えたので。精彩に欠ける感じが、より目を奪うというか(笑)。

 ただ、シシィが寝かされたベッドが「サイズ的にギリギリ」に見えて、そんなところではらはらした。(余計なお世話です)

 
 でもってはい、謁見の間です、主要人物どどーっと登場です。
 ここでもキャストがわかっていなかったため、重臣ズにいちいちおどろく。

 シュヴァルツェンベルク@マギー、なんなんだありゃ!!(笑)
 シュヴァちゃんは軍人、無骨なイメージがあったんだが。

 かっこつけいちばん、伊達男!!

 いちいち嫌味なほどの二枚目ぶり。ヒゲを撫でつける手つきのいやらしさ、身のこなしのお貴族サマっぷり。
 すげーすげー、こんなシュヴァちゃん、はじめて見たっ。

 専科さんが演じるのが当たり前感のあるグリュンネ伯爵@ルイス……歴代いちばん下級生?
 あまりに若いグリュンネ伯爵にびびっていたんだが、喋っているときはふつーなのに、歌い出すと悪役声で、二度びっくりした(笑)。
 グリュンネ伯爵が黒い~~、グリュンネ伯爵が悪い~~(笑)。

 ラウシャー大司教@綾月せり……髪型も相俟って、ますます丸い。
 ヒューブナー@彩央寿音、ああここに来るのか、と思ったらその横、ケンペン@華央あみり……ここに来ますか、期待のヒゲ男くん! モミアゲもステキ。

 ゾフィー@あいちゃんは……いつもの美女メイクではなく、かといって別人なほど年輩者のメイクをしているわけでもなく。眉に力は入っていたけど……うーん?

 登場時にはフランツ@きりやんってほとんど台詞ないんだねえ……てなことに、今さら気づく。

 
 続く~~。
 月組2回目の『エリザベート』公演、初日観劇。

 痛烈に思ったのは、ふつーだ、ということ。

 ふつーです。
 なんかもー、ものすげーふつーの『エリザベート』です。
 観ながら、ひそかにウケてしまうくらい、ふつーの『エリザベート』です。

 なんでウケるかって。
 前回の、雪組再演『エリザベート』って、やっぱ変だったんだ。と、ゆーことが、わかりすぎるほどわかったからです。

 トート@あさこが、ふつーの人だ。気持ち悪くないっ。

 ……そんなことがツボに入るくらい、水しぇんのトートって気持ち悪かったよなー、と(笑)。
 いや、その気持ち悪いとこを含め、大好きだったけど。その「新しい」トート像に震撼したけど。
 でも、それから間を空けず再演した今回のあさこトートが、「前回の雪組? 爬虫類トート? なにソレ??」な勢いで、ふつーの人間トートを演じているのを見ると、「やっぱアレって、いろいろと特別だったっつーか、やり過ぎてたんだな(笑)」と。
 演出のイケコの180度の方向転換ぶりに、大ウケっす。

 タカラヅカではこれから、こーゆーふつーのトートで行くってことかな。それなら、水しぇんの異色で異端なトートをナマでじっくりいっぱい見ることができて良かったなと。(鈍行列車乗り継いで往復19時間かけて、東宝楽まで観に行ったなあ)

 
 なんというか、とても原点に還ったような、トートだった。

 瀬奈じゅん氏演じる、スミレ色のトート閣下は。
 あくまでもタカラヅカの、男役トップスターの演じる、「死」。
 スマートでかっこいい、クールな美形様。
 ああ、ここはタカラヅカなんだ、としみじみ思った。

 初演で端正に「死」を、「トート」を造形したあと、再演の星組で全部ぶっこわし、「タカラヅカのトート」を作り直した。
 その後の歴代トートたちはみなそれぞれ、「死」らしい表現を模索していた。いくら「死」とはいえ、異質過ぎては観客に伝わらないから、人間ベースに「死」らしく見える演技を工夫していた。
 それがいきなり、再演雪組トートで突き抜けちゃったんだよね。やり過ぎちゃったんだよね。異質異世界全開の「死」。
 ソレを、「ごめん、アレはやっぱやりすぎだった」と軌道修正して、「死」であることより、「タカラヅカ」であることに比重を置いたんだな、きっと。

 「死」らしさより、「タカラヅカの男役」「タカラヅカのトップスター」らしさ優先。原点回帰。

 それはソレでアリだと思う。
 だってここは、タカラヅカだから。わたしは『エリザベート』を観に来たというより、「タカラヅカ」を観に来たのだから。

 トートとしてどうこうより、男役トップスターが魅力的であること、を重要視してイイと思う。……しかしイケコ、極端から極端に行き過ぎだ~~(笑)。

 「死」らしく気持ち悪いトート、ふつーにタカラヅカなトート、どちらかを否定するとかそーゆー意味ではなくて。
 どっちもアリ、どっちもたのしい。
 いつも同じだったら再演する意義がないもの。トップスターごと、組ごとにちがってていいんだ。

   
 わたしはプログラムは買わない人なんで、売場でもスルーすることが多い。
 だが今回は思わず、手に取ってしまった。

 表紙のトート@あさこちゃんに、惹かれて。

 美しい、ことは、わかっている。
 男・瀬奈じゅん様が美しいことなんか、最初からわかっている。それだけなら別になんとも思わない。

 静謐な悲しさを、たたえた瞳をしていた。

 ずきゅん。
 なんかこう、胸に来るものがあって(笑)。
 スルーするつもりだったのに、立ち止まって手に取っちゃったよ。中の写真が見たくなって。

 表紙をめくったとこのトート様もまた、静かでどこかしら悲しい瞳の色をしていて。
 なななななんなのコレ、なんでこんな表情してるのトート様、トートなのに?!
 と、うろたえました。
 いやその、贔屓組すら買ってないのに、他組のプログラムは買いませんが。
 にしても、あの写真は反則っすよ。うっかりときめいたぢゃないか(笑)。

 
 そのイメージがあったからかもしれないが、あさこトートはとても、寂しく悲しい人に見えた。

 とりまきに囲まれているけれど、いつもひとりで、しんとした哀しみを奥に抱いている……そんな男に見えた。
 ぶっちゃけ「死」には見えないんだけど、ふつーの人間まんまに見えたけど、それはどーでもいい。要は、魅力的かどうか、だから。

 わたしは、トートから目が離せなかった。
 その悲しげな風情が、気になって。

 シシィ@カチャを愛したのかどうかはわからない。でも、彼女になんらかのキモチは動いたのだろう。
 ずーっとクール……というか、テンション低めで朧気な人なんだが、エリザベートに拒絶されるたびに少しずつコワレていく(笑)。
 アンニュイな大富豪の青年が、目新しいタイプの少女にコナかけて振られた……ことを認められず、以来ずーっとちょっかいかけつづけている、ような。
 クールなはず、アンニュイなはずだったのに、少女にいやがらせしているときだけは笑っていたり、テンション上がってたりするの。
 それならいっそ、少女を本当に愛していれば、いいんだけど。
 本当に愛しているのかな? いやがらせをしていないときとか、またいつものクールで悲しげな顔に戻っていたりして……愛するふりをしても、満たされないんだとゆー感じで。

 ヒロインをあまり愛しているように見えないのはタカラヅカ的にどうか、という面はあるにしろ、とりあえず主役のトップスター様が耽美イケメンで、コスプレも豪華で眼福だし、ザ・タカラヅカな『エリザベート』だわ~~。

 正直、『エリザベート』はもう食傷気味で、「雪組でついこの間観たとこだし、月組だってほぼ同じ顔ぶれでこの間観たとこだし」と期待感は薄かったんだが、やっぱ何度観ても魅力のある作品だよなあ。
 でもって、オサ様のときに「好きな人がトート役だと、めちゃくちゃ楽しい!」と開眼し(笑)、水しぇんのときもソレを堪能した。そのためか、「トート閣下をガン見」する視界がわたしの中に確立してしまったようで。
 今回もそりゃーもお、あさこトート様をガン見していました。あああ、やっぱトートっていいよなあ。たのしいよなあ。彼の心の動きを追うのはトキメキですのよ。
「アーサーがすごいの。アーサーの声からはじまって、最後のカゲソロもアーサーなの。声がいいってのは、強いね。なにをするにも声音のクリアさと滑舌の良さ、なめらかな男役声が武器になって、目を引くのよ。そして声だけでなく姿もね、なんかキラキラしててね、アイドル的なものがあるのよ」

 と、わたしは『オグリ!』のことを語っておりました。壮くんを語り、ののすみを語り、そして話題はアーサーのことに。
 ハイディさん、nanaタンと『中田聖子・ヴァージナル・ライヴ』を聴きに行ったあと、ランチしながらだらだらしているときのことです。
 nanaタンは『オグリ!』観劇済、ハイディさんは未見、観劇予定無し。
 なにしろ『オグリ!』は人に語りたくなる、黙っていられない作品なので、観ていない人にもその魅力を伝えたくて伝えたくてたまりません。

「はああ、そんなにすごい新人さんが出てきたんですね。それは観てみるべきなのかしら」

 素直なハイディさんは、とても素直な声をあげてくれます。
 しかし。

「いや別に、アーサーそれほどすごくないし。声も歌もいいけど、別にキラキラしてないし、アイドルでもないし、ぶっちゃけ地味だし」

 nanaタンがニラニラしながらそう言います。

「えええ? アーサーいいじゃん、美形だしスタイルもいいし、アイドルっぽいじゃん」
「アーサーは好きだけど、地味な職人だし、芝居は能面だし、美形って感じでもないし」

 言い合うわたしたちに、素直なハイディさんが、素直な声をあげてくれます。

「あのう、おふたりの話されている人が、同じ人のことだとは思えません……」

 混乱させてごめん。
 でもでもっ、わたしの目にはアーサーがキラキラな若手かわいこちゃんに見えるのよ!(笑)

「ソレ、緑野さんの目がフィルターかかってるせいだから」

 そ、そうなの? わたしだけなの?
 たじろぐわたしに、nanaタンはさらに言う。

「アーサーって私には、めぐむと同カテゴリに見える。花組では長身で歌ウマで職人系実力派で、若さがなくて」

 めぐむかよっ?!(笑)

「そうよ、めぐむよ。アーサーがアイドルなら、めぐむもアイドルってことになるわよ?」

 …………すすすすみません、アレと同じだと言われると口が裂けてもアイドル・カテゴリとは……。
 いやその、めぐむくん大好きですけど。そしてnanaタンもアーサー大好きなはずですけど。好きだからこそ言いたい放題なわけですけど。

 歌ウマ職人かあ……。アーサーには是非新公主演してほしーんだけどなあ。カテゴリ違うのかなあ。

 『オグリ!』にて、アーサーってば大活躍です。数名をのぞいて全員何役も兼ねまくり、いろな役でいろんなところに出てきて大忙し!……なんですが、なかでもアーサーはいい役です。
 なにしろ「悪役」ですから。
 ただの悪役ぢゃないですよ? 美形悪役ですよ?!

「だから美形だと思うのは緑野さんが……」

 と言うnanaタンは置いておいて、わたし的にはほんと美形悪役なんだから!(笑)

 真の悪役というか、ラスボスはふみかなんだけど、その兄弟のアーサーもちゃんと悪役なんだってば。ふみかが色男なのはいつものことだけど、アーサーだって二枚目なんだってば。

 烏帽子姿も端正だけど、地獄場面だっけ、鬼コスプレしているときなんかもー、すげえビジュアル系で。
 能面だった顔にも、いろんな表情を浮かべることができるようになって。
 いやその、能面が基本の彼だから、小悪魔ぶった演技しているとことか、「アーサーのくせにそんな顔して!(笑)」と、ただそれだけで大ウケしてしまっているんですけどねええ。
 過剰反応しちゃってるだけなのかなあ。

 まっつオチして以来、「歌」と「声」への比重が大きくなってるんだよな、わたし的に(笑)。
 アーサーの「声」は大変好みであります。

 そーいやアーサー、キムシンの迷作『明智小五郎の事件簿』新公で、すげーソロ歌もらってたねえ……腹抱えて笑ったあのころは、まさかこんなにアーサーをかっこいいと思う日が来るとは、夢にも思ってなかったわ……。

 
 好きな生徒さんがたくさん出ている公演なので、目がいくつあっても足りなかった。萌子の役くらい目玉があれば、全部見られるんだろーか……てゆーかあの萌子の妖怪衣装にはびっくらしたが(笑)。

 ふみかの悪役っぷりは、「待ってました!」な感じ。悪役をたのしそーに極めていく彼が大好きです。
 まりん&さあや夫婦もまた「待ってました!」な感じ。こーゆー役で舞台を締めることのできる彼らがいるから、花組の未来は安泰だと思える。
 よっちはどんどん愛されキャラになっていってる気がする……(笑)。
 オグリ親衛隊はみんなイケメンぞろいだが、なかでも瀬戸くんがえらくオトコマエで眼福。顔立ちだけじゃなく、体格もいいよね、彼。逞しいというよりも、イマ風の細身おにーちゃん的体型が観ていて心地いい。

 マメ&じゅりあ夫婦もすばらしかったし、アドリブ含め彼らがたのしくて仕方ない!と息づいていることがわかり、それもたのしい。
 でもわたし、マメは悪徳夫婦役よりも、ちらりと出てくるだけの観音様とかの方がツボったわ(笑)。仰々しくポーズ取ってるだけで、納得させられてしまう!

 萬ケイ様もまたステキに色男で。やっぱ日本物はいいわあ。ぽわわん。

 もうひとりの専科さん、藤さんの存在に、「タカラヅカ」の奥の深さを感じる。この物語の語り部である藤さんは、男でも女でもない、不思議なオーラがあった。

 なんつーんだ、この『オグリ!』は、駄菓子屋で売っている得体の知れない蛍光色のお菓子みたいな感じなの。高級店のショーケースに鎮座している高価な芸術的なお菓子様ではなく、裸電球に照らされた縁台の上なんかに置かれているのよ。
 テラテラとしたきれいなんだか毒々しいんだか区別のつかない、あざやかな色の原材料のわかんないお菓子。どんだけそのチープさに大人が眉をひそめても、子どもにとっては宝物みたいな、この世のモノとは思えない美しい素晴らしいお菓子。
 どんな高級菓子よりも価値のある、「夢」と同意語のお菓子。
 ……藤さんの存在は、そのお菓子……物語を包むセロファンだな、と。
 セロファン越しに見える、あの色がいいの。触ったときの、手触りがいいの。

 
 すごくたのしかったけど、原作ゆえかまだるっこしくてダレる部分もあったし、主人公に感情移入するどころぢゃないし(笑)、いつものキムシン作ほどの中毒性はわたしにとってはなかったんだけど、そーゆーことも全部壮くんがぶっ飛ばしていったから、とりあえず拍手喝采。

 ただ、みつるの扱いだけは、もったいなかったと思う。
 今さらですが、『オグリ! ~小栗判官物語より~』の話。

 これ以上ないほどの、「壮一帆」の正しい使い方。

 壮くんは「タカラヅカ・スタァ」の中でもちょっと変わったキャラクタを持つ。使い方を誤ると、彼の魅力は激減してしまうのだ。
 雪組時代はそのために悪目立ちしたり芝居の空気を壊したり、いろいろあった。
 それが花組に戻ってきてから、彼の個性と組……というか、組のカラーを決める当時のトップスター、オサ様と相性が良かったこともあり、すんなりと馴染んだ。
 空気の合った花組で、イキイキと「壮一帆」をやっているえりたん。脂がのった今、彼とこれまた相性のいい演出家、キムシンの書き下ろし作品で主演。

 人が「時」と出会い、「人」と出会う。
 その気持ちよさに浸った。

 今このとき、この人がこの人と出会うことで創り上げられる、奇跡。

 壮一帆という特異なキャラクタを、キムシンが絶妙の活かし方をしている。

 トウコちゃん主演の『花吹雪恋吹雪』を観たときみたいだ。
 よくぞこの人でこの作品を作った!! と、体温がぐはーっと上がる感じ。

 
 もともとわたしはキムシンファンで、彼の作品が大好きだ。また、壮くん単体が好きだし、キムシン作品の壮くんも好きだった。つーことで、公演が決まったときからわくわくしっぱなしだったけれど、ここまで正しく「壮一帆!」な作品に仕上げてくるとは(笑)。

 原作はカケラも存じません。説教節ってなんだ?レベル。てゆーか「説教節」ってふつーに「え、キムシンの作風?」って思っちゃうよ?(笑) 作品中で自分の主義主張を叫んで、観ている人に説教たれる勢いな、キムシン作品を揶揄しているの?って。

 京都・二条の大納言様のおぼっちゃまである小栗@壮くんは、文武両道以上にとにかく美貌のお貴族サマ。その美貌でなにをしても許される。嫁を72人使い捨てしても、ヘビと契ってもなんでもアリ、OK、OK、壮くんならアリだ! ……ちがう、壮くんじゃなくてオグリさんオグリさん(笑)。
 しかしまあ、さすがにやりすぎで外聞悪いっつーんで東国へ追放される。でも、ぜんぜん平気。追放された先でも美男子な親衛隊をはべらしてお山の大将としてのさばりまくり。人生ちょろい。
 互いの顔も知らないままのネット交際……もとい、文通で愛をはぐくんだ照手姫@すみかちゃんとラヴラヴ・ゴールインしたはいいが、照手ちゃんの家族の猛反発を喰らう。
 人生いつでもちょろかったオグリだが、ついに年貢の収め時。照手パパたちの奸計により、親衛隊ともども毒殺されてしまう。……て、ヲイ、主人公死んじゃったよ? 残りの時間どーするんだ??

 荒唐無稽なんでもありーのの音楽劇。
 舞台中央にずーっと鎮座している巨大な馬の首。
 この首がもお、無駄にリアルで(笑)。てゆーか、泣くし。
 泣くのかよ?!(笑)
 頭の上に、壮くん乗るし。いやその、縮尺いくらなんでも変だからっ!(笑)
 馬とオグリのすごさを語るからくり絵本というかおもちゃ?のすばらしさ。ああ、昔あったよなこーゆーの。
 優美な曲線の仏掌。
 仏様も閻魔様も目玉オバケも貞子もなんでもアリ!!

 常識なんて狭い枠組みは取っ払って、力尽くな異世界に酔う。

 それはまさに、「壮一帆」で。

 観たかった「壮一帆」がそこにいた。

 そして、なにしろ主人公途中で死んじゃうので(笑)、タイトルロールのオグリが唯一無二の主人公なのはたしかだけれど、実はヒロイン照手姫も、十分ピンで張ってる主人公なのだわ。
 途中から、「あれ、この話って主人公どっちだっけ?」てくらい、ののすみが主人公として場を支配する。

 次々と降りかかる苦難を、美しい心で誠実に務めて乗り越えていく、由緒正しい日本人好みのヒロイン、照手。
 彼女のけなげさに落涙必至。

 巨大怪獣オグリ@壮くんがどっかんどっかんミニチュアの街を壊しまくって、そのオグリの暴れている街の中、合成だと丸わかりの巨大オグリを背景に、老舗旅館の下働き照手@ののすみが緻密でリアルな演技をしている感じ。
 巨大怪獣オグリはこの下働きの娘と見つめ合い、ラヴラヴ・デュエットを繰り広げるのよ。

 それはひとつの、異種格闘戦。だけどそれぞれがたしかな「世界」を持っているから、「異次元」ぶりは同じで、わたしたちとは別の次元で確実なフィクションを創り上げている。
 壮くんもののすみも、ぶっとんでいることは同じ。

 彼らが作り出す「本気のファンタジー」が、心地よくてならない。

 
 理屈はともかく、「壮一帆」というイキモノが好きな人には堪えられないオモシロさ。
 観た人の口から口へ、「オグリすげえ! えりたんすげえ!!(笑)」と伝わっていく、その強さ。
 喋らずにはいられない作品って、実は滅多にないよ? 見終わってから「誰かに話したい、誰かと共有したい」とじたばたするパワーを持つ作品なんて。誰彼構わず「いいから観て! 観てくんなきゃ話せなくてつまんないっ」と、感動の共有を求め、強要しちゃうほどの強さって。

 わたしは初日から数日観劇できなかったんだけど、あちこちから「早く観て!!」とせっつかれた(笑)。「この興奮をアナタにも!」てなもんで。

 仲間内で総見するべきだったね、『さすらいの果てに』や『忘れ雪』のときのように。
 みんなで一緒に観て、みんなで悶絶するべきだった。

 
 壮くんはわたしにとってなくてはならない癒しの君。
 あったかくほんのり包んで癒してくれるのではなく、闇とか絶望とか哀しみとか寂寥とか、抱え込んでいるいろんなものをかこーんっとぶっ飛ばしてくれる(ベースボールなユニフォームを着た壮一帆がホームランをかっとばしている図をアメコミ調の絵柄で想像してください)、そーゆー癒し方。
 巨大怪獣がミニチュアの作り物の街を踏みつぶしていく、あのノリで、全部まるっとぶっ壊す。
 あまりにトンデモな方法で来るので、抱えていた闇も忘れて爆笑したり、アタマの上で星がちかちか舞ったりするんだ。

 壮くんのそーゆーところが全編に渡って全開で、ゲラゲラ笑いながらも、泣けて仕方なかった。

 常識の枠なんかぶっとばして、壮一帆が君臨する。
 ぺかーっとか、てかーっとか、擬音付きの光を発して。

 ちょっと不自然な、でもわかりやすくまぶしいその光で、彼はわたしを救ってくれるんだ。
 なにから救うのかもわかんないけど、とにかく救ってくれるんだ。

 いやあもお、とにかくたのしかったよ、『オグリ!』。
 タニちゃんの千秋楽映像をスカステで見て、「退団は本当のことなんだなあ」とぼんやり思う。

 シューマッハのかわいい末っ子は、輝度はそのままになんだかずいぶん面変わりして、すっかり大人になって卒業していくんだな。

                   ☆
 
 快晴の予報と裏腹、適度に雲多し、さわやかになんかちと肌寒いよーな中、はるばる行って来ました、飛鳥へ。

 ええ、まっつグッズを求めてですよ。

 劇団が朱雀と青龍という、謎のチョイスによるグッズしか売ってくれなかったので、無視された玄武グッズを買いたくてあちこち探し回っておりました。

 ヒョンゴ@まっつは、玄武の神器の守り主ですから!
 今年の元旦からずーーっと、玄武グッズを探していたんですよ、あたしゃ。

 今の日本で四神といえば、奈良のキトラ古墳ですよね。
 キトラ古墳関連の場所に行けば、玄武グッズがあるにちがいないっ。
 つーことで、別に考古学に興味あるわけでもないのに、飛鳥資料館の『キトラ古墳壁画・青龍と白虎特別公開』へ行って来ました。

 あー……飛鳥に行ったのは、確実に十何年ぶりっすよ……。わたし以外の家族はしょっちゅう行ってるし、歴史ヲタクの弟は、「飛鳥には年3回以上、歴史的見解や資料が新しく出るたびに行くのが当たり前だろう!」と言い切ってますけどね……。ふつーは一生に1回行けばいい方なんぢゃないの? わたしはすでに5回以上は確実に行ってるから、珍しい方の人間だと思うんだけど。

 飛鳥は若い頃の記憶にあるとおり、やたらめったら広かったっす……歩いて回れる距離ぢゃねええ。
 しかし、諸般の事情により、歩いたっす……飛鳥駅から資料館まで……途中で鬼のせっちんだの亀石だの見ながら、ひたすら田舎道を歩き続けたっす……。つ、つかれた……っ。

 しかしさすが飛鳥は四神フィーチャーされててたのしいっすな。あちこちに当たり前に玄武があります。四神って意外に日常で目にすることがある……わりに、いつも玄武だけは迫害されているもんなんだが、飛鳥では平等! 玄武もちゃんとある!

 橋の欄干にも、ふつーに玄武。
 あちこちの看板、装飾にも玄武。
 ファンシーないちごそふとくりーむショップのパステルな壁にも、玄武。

 いいなあ、飛鳥(笑)。

 つーことで、念願のグッズ購入。

 4つそろっているととてもかっこいいんだが、微妙な大きさだし、どこに使うんだコレ、なピンバッチ、ひとつ800円。四神そろえると3200円。とりあえず玄武のみ購入。

 ピンバッチは小さめの500円のものもあったが、そっちはデザインがイマイチ。使い道がなくても、800円の方がいい。

 チャチさがゴールドメッキとともにまぶしいストラップ、380円。

 あと造形はいいんだが使い道がなくて悩んだ玄武スタンプ500円……。このペーパーレスな時代に、今さらスタンプは使わないよな……。はっ、まっつにファンレター書けばいいのか?!(書きません。こんなイタいファンがいることを、本人に知られたくないっす)

 固くて固くて「どーやって使うんだコレ」「洗濯できんのか?」と疑問しかなかったハンカチ、と同柄の手触りはいいが、やはり使うにはどうよコレ、な手ぬぐい(手ぬぐいはなー、持って歩けないじゃん?)。420円と735円だっけかな。

 公式グッズショップにあったのは以上ナリ。
 あとは図録とか書籍関連。

 玄武とは関係ないけど、キトラ古墳ならではの十二支の獣頭人身像の、自分の干支のストラップを買いました。いやあ、コレすげえかわいいっすよ。もともとの壁画デザインが秀逸で。
 去年のキトラ古墳の壁画公開ではこの獣頭人身像の展示をやっていて、入館時にもらうパンフレットその他もろもろセット(手提げ袋に入れて配布している)に入っていた新聞には、「どこのゲームキャラ(悪役)?!」な彼らのイラストが載っていて大ウケしたもんだ。(わたし以外の家族は奈良の正倉院展と飛鳥のキトラ古墳壁画公開には毎年行っている……去年もパンフレットを見せられた)

 今年のキトラ古墳壁画の本物展示は、青龍と白虎。玄武は資料のみ。
 四神にしろその周囲の獣頭人身像にしろ、いいデザインだよなあ。現代でもOKなセンスだと思うわ。

 歩き過ぎてくたくたになったけど、念願の玄武グッズが手に入ってほくほくナリ。
 さっそく身につけようと思っているが。

 家に帰って改めて開いた入館時にもらったパンフレット群。その中に『太王四神記 Ver.II』のでかいカラー広告があってぎゃふんでしわ。
 そ、そっか、四神か……四神だもんな……四神なんだよ……。
 キトラ古墳ファンが「ほほお、韓国の四神モノかあ」と興味を持つ、かもしれない、ので、ここに広告がんばっちゃうのは、まちがいではない。
 現に『太王四神記』→キトラ古墳と、逆矢印でやってきているわたしもいるわけだし。

 しかし。
 まっつはすでに闘牛士のアルバロであって、ヒョンゴ村長ではない。ヅカの『太王四神記』といえば、今は星組だ。

 ……今ごろ玄武グッズをよろこんで身につけていると、英真なおきファン認定ってことよね……。
 
 ま、まっつまっつまっつっ!
 そーいやまだ、他キャストの感想を書いていない気がする、『哀しみのコルドバ』

 キャラ立てがはっきりしていて、それぞれが(「タカラヅカ」であるゆえのゆがみはあるにしろ)正しく機能しているので、みんな見ていて気持ちがイイのだけど。

 唯一、ヒロインのエバ@彩音ちゃんには、引っかかってます。

 大人っぽいのは最初だけで、あとはいつもの「妹キャラ」の彩音ちゃんだしなあ。
 これは黒蜥蜴@『明智小五郎の事件簿』のときもそうだったけど。
 どんどんかわいく幼くなるのは、演出家指示なのか彼女の芸風なのか。

 その大人っぽい最初の場面でも、大人っぽいゆえに引っかかる部分がある。
 エリオ@まとぶんと再会し、スウィート・セブンティーンのころの思い出話をはじめるのですよ。そのときの、
「教会の裏で……ふふふっ」
 というエバの笑い方に、すごくヤラシイものを感じます。
 よりによって録音だから、演じ方がずっと変わらないんだよね。ナマの演技ならそのときどきにちがっていただろうけど、初日以前に吹き込んだ台詞じゃ、いつ聞いても同じ。
 この台詞にこの笑いがつながることが、けっこうイヤだったりします。下卑な印象を受けてしまって。
 実際にエバという女性が下品で卑しく、過去の性体験を思い出し笑いと共に語るよーな性格である、という設定で、それを表現するためにあえてやっているなら仕方ないと思うけど、ただ単にタカラヅカで、彩音ちゃんにそんな笑い方して欲しくないなという、わたし個人のドリームゆえのことなんですがね。
 んなことしなくても、「下卑な女性」の表現方法はあると思うし。てゆーか別に、エバをそこまでいやらしい女に描かなくてもいいじゃないか。ああほんとになんであの台詞にあんな笑い方するんだろう。

 いつもの少女演技の彩音ちゃんなら、同じ台詞のあとに思い出し笑いしてくれても、こんなにイヤラシクないだろうになあ。

 エバの印象がまとまらなくって。
 未亡人でパトロンのいる女性として、一貫してくれていたら良かったんだけど。
 エリオと愛し合うことで、失われた時間を取り戻したこと、エリオの前では17歳のときのように無邪気にふるまえるんだ、ということは、「単純に別人になる」ことではナイと思うんだな。現在があった上での、「エリオだけに見せるエバの素顔」なわけで……ううむ。

 まあ、愛人のロメロ氏@ゆーひのことを、エリオに婚約者がいる段階では「リカルド」と名前で呼び、エリオのキモチが自分に向かっているとわかるなり「ロメロさん」と名字にさん付けする、計算高い女だからな、エバ(笑)。

 愛人にオトコが出来るなり、突然「ロメロさん」と超他人行儀な呼びかけされた日にゃあ、そりゃロメロさんもビンタの一発喰らわすでしょうよ。
 呼び方をいきなり変えるのは、ひどいと思うよ。冷水浴びせられるよーなもんじゃん?

 故意か偶然の産物か、けっこうエバって「それはどうよ」な描き方をされている。
 彼女自身が主役になる場面がないため、他人の目を通したり、個々の出来事の中でしかキャラクタが表現できないし。
 さらに、重要なエリオとの再会場面がえんえん録音テープの再生で、ナマの演技が出来ないときてる。
 演技の幅の狭い彩音ちゃんには、いろいろいろいろ大変な役だと思うよ。

 それでも。
 いろいろとアレな部分のある女なのに、健気さで泣かせるのは、やっぱエバ@彩音ちゃんすげえと思う。

 コルドバまでエリオをストーキングしてきたエバの、立て板に水の「恥ずかしい告白」、アレ好きだー。
 ツンからデレに流れ落ちる瞬間、なわけでしょ。
 だからこそエバにはもっとツンツンしていてほしかったんだが(笑)、それでも、婚約者のいる男に、自分から言い寄らずにはいられない彼女が、愛しくてならない。

 また、最後の舞台の前、教会で愛と未来を語るエリオの腕の中で泣き出すエバも、すごくいじらしい。
 幸福の絶頂で、それでもなにかしら胸騒ぎを感じていたりするのだろうけど、それでも目の前の恋人の言葉を信じ、彼が与える言葉を、愛をあるがまま受け取って。

 健気とかいじらしいとか、彩音ちゃんはこーゆーのハマるよなー。

 悲劇の予感に胸をざわめかせながらも、ふたりの美しさに毎回ダダ泣きさせてもらいました。

 ラストシーン、絶命する直前のエリオくんが見る幻のエバの張り付いた笑顔がコワイことは、まあ、ご愛敬でしょう(笑)。

 
 2番手娘役、エリオに捨てられてしまう婚約者アンフェリータ@一花。
 本来「大人のエバ」に対照的なキャラクタということで、年若い少女ってことになってるんだろう。や、この辺お約束。

 一花がもお、可愛すぎ。
 のびのび育った現代っ子で、ドラマティックな恋に憧れる、ちょっとKYな発言もする女の子。
 エリオとはラヴラヴな恋人同士というより、兄妹みたい。実際、そんな関係からスタートして、父のアントン@はっちさんの仲立ちで婚約に至ったんだろうなと推察させるキャラ立て。
 まっすぐな女の子だから、彼女の嘆きがかなしいし、感情移入して一緒にうるうるできる。
 一方的に裏切られてなお、エリオのために助言する強さと優しさ。ほんっとにいい子で、ブレないでグレないで、かわいくて仕方ない。

 一花はほんと、いい娘役だなあ。

 
 男役だ、というだけでうれしいビセント@みわさん。

 ……こんな基本的なことがうれしい、ってどうなの。みわさんは男役なのにー!!(初見時はまだ『ME AND MY GIRL』配役は発表になってません)

 彼から漂う、クラシカルな雰囲気がたまりません。
 ねっとりしてるの、存在そのものが。
 終始テンション高くて、濃くて、「みわさんを見たわ(笑)」というキモチにさせてくれる。

 相手役のメリッサ@きらりがまた、そのクラシカルさと濃ゆさに、負けていない。つか、ついて行っている。
 ふたりして、別世界へGO! ふたりだけの世界へGO!

 それくらいの勢いがあってこそ、「もうひとりのエリオ」として道先案内人たり得るのですよ。

 
 フェリーペ@めおくんの、軍服姿の美しさ。
 「透明人間」が芸風だった彼、最近はもうそんなことはまったく過去のこととして、別の売りを持って華麗に花開いてますな。
 
 美しくて誠実で寛大でかっこいい青年……の、はずなのに。

 胡散臭いのは何故?(笑)

 や、ソコがいいんです彼は。
 たしかにいいこと言ってるし、それに嘘も間違いもないんだけど、わかってるんだけど、それでもなんか胡散臭くて、笑える。(誉めてます)
 その、ただきれいなだけ、二枚目なだけで終わらないところ、笑えてしまえるほどの男ぶりこそが、彼の魅力だと思う。

 いやあ、ほんといいよなー、フェリーペ大尉(笑)。←(笑)がつくところがイイのっ!

 
 まあ、そんなこんな。
 『哀しみのコルドバ』は「エリオ」という男の物語である。

 彼の恋の物語だが、恋愛モノのわりに、ヒロインの比重が低い。

 物語はいちおー三人称で描かれているが、概ね主人公であるエリオの視点で固定されている。
 必要に応じて彼以外の者の場面も存在するが、それらは展開の説明場面でしかない。

 にもかかわらず、いきなりエリオの婚約者アンフェリータ@いちかの一人称場面が長々と挿入されたり、構成的には明らかな間違いもある。
 三人称一視点で書いてるんだからさ、いきなり関係ない人の一人称を、そこだけ入れるのやめようよ……(笑)。

 まあこれは、アルバロ@まっつがエリオの決闘の介添人をしているのと同じ「タカラヅカであるゆえの事情」によるいびつさなので、言っても仕方ないんだろう。
 だが、「仕方ない」ゆがみなら、ゆがみが目立たないように他でバランス取ればいいのに、ゆがみが剥き出しになってるから引っかかる。柴田せんせって繊細な部分と杜撰な部分の差が大きいよなー。

 バランスを取るのは、簡単だ。

 脇役の婚約者に一人称カマさせるヒマがあるなら、ヒロインにも同じだけ一人称カマさせろ、と。
 そーすりゃゆがみも目立たないのに……。

 この物語では、実はヒロインのエバの目線というのはほとんど描かれていないのね。彼女がどう思い、どう行動するのかは、エリオの目を通してしか描かれていない。
 エバ自身の場面はナイの。アンフェリータにはあるのに(笑)。

 エリオの物語である、ゆえにエバはエリオを通してしか描かれない、というなら、アンフェリータに一場面歌わせちゃいかんわ。
 「タカラヅカ的事情」ゆえに、初演時にアンフェリータに1曲歌わせなきゃならなかったなら、エバにも歌わせりゃ良かったんだよ、作劇的に。

 恋愛モノなのに、ヒロインの「軽さ」はどーしたもんか。

 アンフェリータの場面をバッサリ短くして(本当ならなくしてもイイ)、その分エバの葛藤をメインに、そのパトロンであるロメロ@ゆーひと絡む場面作れば良かったのに。

 アンフェリータのひまわりの歌が好きとかいい場面とか、うおお一花かわいい健気で切ない~~!! てな感想とは別に、あくまでも、物語のバランスとして。

 「一人称場面がない」ということではアンフェリータ以下の扱いである、ヒロインのエバ。
 ピンで立つことはなく、彼女の歌やダンスはみんな相手役あってのもの。

 その上このヒロインは、決定的な部分で「物語の外側」に置かれている。

 肝心の部分、物語の核になる秘密とそれに対するエリオの行動を、彼女はまったく知らないままなんだ。

 彼女に知らせないために死を選ぶことが「エリオ」という男であり、「エリオの物語」である『哀しみのコルドバ』のカタルシスなわけだが。
 構造上仕方ないことはわかっているし、ナニも知らない彼女の哀れさもまた、この作品の重要なパーツのひとつだとわかっているが。

 ヒロインが、主人公「エリオ」という男の真の姿を知らないまま、つーのは、寂しい話だよな。
 いちばん知って欲しい姿なのにな。あの激しい愛だからこそ。知ることが出来ないゆえに激しさの表れであるわけだが……って、ニワトリと卵なみのループになるな。

 エバにもふつーに比重を掛けられているなら、死を決意したあとのエリオと対比するカタチで、しあわせ絶頂のエバのソロとか入れられるんだけどな。彼女が無邪気に未来を信じているからこそ、悲劇が際立つわけだし。

 だけどこれはほんっとーに、「エリオ」の物語で。

 エリオの「決断」と「その最期」に焦点を合わせた作劇である以上、その2点において蚊帳の外に置かれたヒロインよりも、すべてを知り得た人たちに興味が湧く。

 騙されて守られている人の哀しさもイイが、騙すことで守ろうとする人々の悲しい強さに、なお惹かれるんだ。

 あのきーきーうるさい母親たちもどんだけつらかったかと思うし、中でもエリオの母@京さんなんか生き地獄だろうよ、これから。
 それを支えるエリオ妹@れみちゃんも、二度とあんな無邪気な下町少女には戻れないんじゃないかと思う。

 エリオの一方的な恋敵、とはいえ、個人的な関係性の薄いフェリーペ@めおくんはまあ、いいとして。
 

 「エリオの共犯者」となったロメロ氏。
 静かにエリオを見守った……その生き様を「見届けた」大人の男は、これからエバをどう守って生きていくのか。

 エバの愛をめぐってエリオと決闘までしようとした彼は、図らずもエバに対して「秘密」を持つことになった。
 彼女とその初恋の相手エリオの、出生の秘密。覆せない事実。
 エリオがその生命と共に事実を葬り去り、ロメロはエリオの隠蔽工作に荷担した。事実をなかったこととして、完璧に消去すること。

 ロメロもまた、罪にその手を汚した。
 エリオにすべての罪を着せ、死出の旅を見送った。それがエリオの望みだとしても、罪は罪。 

 エバを愛しているなら、彼女を地獄に突き落とす真実は隠し通さなければならない。
 その上で、恋人を事故で失ったと悲嘆にくれている彼女を慰め、支えなければならない。
 共犯者エリオのためにも。

 
 ……て、すごい萌えなんですけど。

 「エバを守る」という1点に置いて、エバのために生命をかけて戦おうとした男たちは、手を結ぶのですよ。なんの打ち合わせもないまま、共犯者となるのですよ。

 アンフェリータ以下の描き方しかする気のないヒロインなら、いっそエバの比重もっと下げて、ロメロをクローズアップすりゃいいのに、とも思いますよ(笑)。
 や、エリオの目を通すことでエバのこともちゃんと描いてあるのはわかってるけど、アンフェリータとのバランス的におかしいことも事実だし。
 それならいっそ……と。
 わたしにエバの魅力がいまいちわかっていないのも、大きいと思うが。


 んで、ふつーはロメロ氏だけで十分だと思うけど。
 さらにもうひとり、「真実」を知りながら口を閉ざす男がいる。

 エリオの同僚であり、友人であったアルバロ@まっつ。
 彼はエバになんの思い入れもないので、ただエリオへの友情ゆえに秘密を守るわけだな。
 ロメロ氏ほどちゃんと描かれていない……とゆーか、ぶっちゃけなんにも描いてもらっていない脇役ゆえに、妄想イロイロ、好きに動かせるのでそーゆー意味では彼もすげえたのしいです。

 腐ったバージョンをすでに1本考えてあるんだけど、そこでのアルバロさんはクールなS男です(笑)。普段はわざとチャラ男ぶってるけど、本質はシリアスな人で、けっこードロドロしてます。
 真実を知り、打ちのめされているエリオくんを、さらに追いつめ、ついでにちょっくら手も出してしまう人です。
 そこに、大人のロメロさんが絡んできて……と。
 エバを中心に向かい合うエリオとロメロ、エリオを中心に対角に立つロメロとアルバロ。ねっとり濃くエロい心情を、ねとねと描きたいわー。
 ヒマさえあれば同人誌でも作りたい勢いで(笑)。ロメロ氏目線版とアルバロ目線版、2本立てて1冊ね。とにかくエリオくん受でヨロシク。

 
 まあ妄想は置くとして。
 罪だと知った男の苦悩と決断、そしてそんな男を見届けた人々に、萌えまくりっす。
 えー、下世話な話で申し訳ないですが。
 
 8年前、18歳と17歳だったという、エリオくん@まとぶとエバちゃん@彩音。
 当時のふたりは、どこまで進んでいたのでしょうか。

 ぶっちゃけ、ヤッてたかどうかです。

 ……なんか緑野こあらさんってそんな話ばっかしてる気がするけど、世のキヨラカな方々は気にならないのかしら、気にするこあらさんがオカシイのかしら、たしかにこあらさんって腐った思考のすけべさんだけど。

 それともそんなこといちいち考えるまでもなく、答えは明白、「誰が見たってそうじゃん」だから、なにも言わないのかなあ?

 世の中的にどうかは知らないけれど、わたしの偏った視界には、あのふたりはデキあがってたんだろうなと映ります。

 はじめての恋、はじめてのキス、と言ってますが、はぢめてはソレだけじゃないだろう、それ以上もしているだろう、と。

 というのも、26歳と25歳で再会したときは、ヤッてないだろうと思うからです。
 や、単に、物理的に時間がなさそうだから。

 出生の秘密を知ったエリオの嘆きの深さ、苦悩の大きさは、ただ「愛する人と結ばれない」ということだけでなく、「人間としての禁忌を犯した」こともあると思うのですよ。
 実の妹と契ってしまった罪。……ただの三角関係で別れる、とかのレベルじゃない。地獄行き決定ですよ、宗教観もわたしたちとチガウわけだし。生きていても、そして死んだあとも、苦しみ続けること必至。

 だからこそ、ふたりの母親は秘密を明かすことができなかった。
 子どもたちに地獄を味わせたくなくて。8年前、彼女たちが気づいたときには、もう子どもたちはデキあがっていたんだろうね。

 だからこそ、エリオは死ぬしかなかった。
 自殺は大罪だけど、愛する人を守るためにはそれしかなかった。
 なんの問題もなく愛し合い、薔薇色の未来が待っていたのに、仕事中の事故で亡くなってしまったのだから、どーしよーもない、不幸だったね可哀想だね、で済むように。ただの「不幸」で終わらせるために。「地獄」にしないために。
 他の理由では別れることにエバが納得しない、いつか彼女の耳に真実が届くかもしれない。そのためには、エリオがすべて背負うしかなかった。最愛の女性であり、妹でもある人の罪も。

 あとはエリオが命がけで守った秘密を、誰もエバに知らせないように、みんなで守っていくしかない。エリオを犬死にさせないために。

 とゆーことで、8年前にデキあがっていた派です。(派?)

 いったんデキていたなら、現在もすぐヤッちゃっても同じこと、雨に濡れたのならそのままプールに飛び込んでも同じことじゃん、とは思いません。

 すでに関係アリのふたり、だけど再会してからは、プラトニックつーのが、萌えなのです。

 10代のころはサカっててくれてもイイですが、いろいろあって半端に大人になっている今は、そんなすぐにベッドインしちゃ嫌ですよ。ジャスティンとイヴェット@『薔薇に降る雨』とは逆でなきゃ。

 エバはどーか知りませんが、とりあえずエリオは真面目で誠実な青年だと思うので、自分の婚約者のことや、エバのパトロンのことを思えば、いくら再会して盛り上がったからって、すぐさまどうこうしていないと思う。
 ロメロ@ゆーひに対峙できるのも、アントン@はっちさんに正面切って事情を話すことが出来るのも、エバとの関係がプラトニックだから、ということもあると思う。
 大人だからこそ、肉欲ではないところで求め合っているのだということが、意味を持つ。

 もっとも、パッショネイトなおふたりさんですから、コルドバで再会したあと、ロメロの襲撃を受けなかったら、「想い出の教会裏で……ふふふ♪」となだれ込んでいたかもしれませんが。
 物理的にそーゆー時間を取れなかったので、とりあえず関係は清いまま。だから結果的に、「どの面下げて」な要求も、かろうじて堂々と出来る。

 そーやって現在はプラトニック。
 本気で将来を考えていたから、むやみにサカりはしない。

 エリオを突き落とすのは、8年前のこと。
 無邪気に永遠を信じていた、終わらぬ愛を信じていたからこそ、互いにはじめて抱き合った……その、うつくしくきよらかな想いが、神聖な行為が、許されざる大罪として、今のエリオを打ちのめす。

 無邪気できれいだったころの、いちばん美しい出来事が、年数を重ねてキズだのヨゴレだのを抱えた今の自分の、必死にかき集めた美しいものを、粉々に砕け散らせる。

 その皮肉さ。
 その残酷さ。

 
 まとぶさんはなんつっても悲劇の似合う男なので、エリオとして最高にわたしを萌えさせてくれます(笑)。さすがドMという、トップスターに稀有なスキルを持った人だわ!

 直接的な台詞はないので、彼らの関係がどのようなものか、8年前・現在含めていつどこでどーしたかはわからないけれど、わたしは勝手にこう思って萌えてます。
 『哀しみのコルドバ』のアルバロ@まっつの役について、勝手にいろいろ考える、続き。

 脚本に描かれていることから、アルバロ像を考えると、大きく分けてふたつのパターンが導き出される。
 

その1.エリオLOVEなアルバロさん。

 エリオ@まとぶを熱愛し、それゆえに彼の周囲をうろちょろしている人。
 エリオの前ではふつーに同僚の顔だが、彼がいないところでは絶賛しまくり。エリオを誉める人がいるとうれしい。

 エリオに対しての野心もあるから、ビセント@みわっちが邪魔。こいつさえいなけりゃオレがエリオの親友になれる、てなもんでビセントの不倫をアントン@はっちさんに密告。騒ぎを大きくしてエリオの耳にも入れ、真面目なエリオがビセントと決裂するよーにし向ける。
 ビセントのラヴシーンを目撃したのは、本人が「見た」と言っているから、アルバロなのよ。最初に騒ぎ出したのはアルバロなのよ。ビセント自身に忠告すれば済むことなのに、アントンに報告し、ぺぺ@めぐむに知らせ、アンフェリータ@いちかにも教える。そこまで言いふらして大事にしたあとで、さも大事だと言わんばかりにエリオに言いに来るって、すげえよ。
 アルバロがビセントを良く思っていない……あるいはどーでもいいと思っているのは、よくわかるよな。
 ビセントの決闘を心配する仲間たちの間で、深刻な話題をチャラけたお笑いで終了させているし。

 ビセントがいなくなり、チームでの自分のポジションも上がるし、エリオの親友にもなれるし一石二鳥の完全勝利。
 と思っていたら、今度はエリオが女とのごたごたでチームを辞めるという。ちょっと待て、それじゃオレの苦労は?!
 若手たちと一緒になって「そりゃないよエリオ!」とやるけれど、責めることはせずにすぐさま「オレだけはお前の味方だ」って言いに行ったんだろう。
 だからエリオの決闘に立ち合うことになった。

 そしてエリオの事情をたったひとり知ることになり、もちろんエリオの希望通り誰にも秘密は漏らさずにいる。
 エリオを愛するがゆえに、アルバロの心中もいろいろ複雑なはず。それでも頭を切り換えて舞台に臨み……エリオの死を目の当たりにして号泣するところでエンド。

 エリオの覚悟をアルバロがどこまで察していたのか。
 エリオの決心を遂げさせてやりたいと思ったか、これからの人生を友人として支えることを望んでいたのにあんなカタチで裏切られてしまったのか。
 このへんはいくらでも展開できるが、大筋としては、「エリオLOVE」なアルバロ。
 友愛でも心酔でも、ずばり恋愛でもイイ(笑)。

 ほんとに脚本から考えると、アルバロの言動はそーゆーことになるよなー。冒頭の「エリオ万歳ソング」からラストの「這いつくばって慟哭」まで一貫して。

 
その2.エリオアンチのアルバロさん。

 愛と憎しみは裏表。愛の反対語は憎しみではなく無関心。
 エリオが最後、自ら死を選ぶかもしれない……のに、それを止めることが出来た唯一の男が、アルバロである。
 だが彼は、止めなかった。
 それって……。

 エリオの出生の秘密判明愁嘆に居合わせた者たちの中で、誰がエリオを止めることが出来た?
 家族たちは当事者で精神的にいっぱいいっぱい、ロメロ@ゆーひとその甥フェリーペ@めおはエリオがその後どうしようが口を出せる立場じゃない。
 ロメロはそれでも、わざわざ闘牛場の控え室にまで来て、エリオに言葉を掛けている。彼は十分紳士的だし、やれる範囲のことをしている。

 エリオが選ぶ結末を、予感することができた人……その中で直接、「バカなことは考えるな」と止めることが出来たのは、アルバロだけだった。言葉だけではなく、実力行使だってできた。

 ビセントのときは迷わずアントンに報告したくせに、このときのアルバロはナニもしない。
 エリオが「誰にも言うな」と言ったことは関係ない、出生の秘密には触れずに、「エリオが自殺するかもしれないから、闘牛には出すな」とアントンに言えば、それで済んだはず。

 だがアルバロはそうしなかった。
 黙って、エリオの好きにさせた。

 …………これが故意に、だとしたら?

 エリオを見殺しにする。それこそが、アルバロの望みだったとしたら?

 「その1」で書いた「エリオ大好き」な部分が全部、本心の裏返しになる。

 「エリオ万歳ソング」を歌って、エリオに憧れる人々を鷹揚と眺めるのも、実は彼を憎んでいるから。心の中に鬼を棲まわせ、表面では微笑む。憎しみが深いからこそ誉め称える。本心でないからこそ、なんでも言える。

 エリオの親友ビセントを陥れ、エリオの傍から消し去る。エリオを精神的に孤立させる。
 相談できる親友がすぐそばにいれば、エリオもパトロン持ちの女と三角関係にならなかったかもしれない。

 仲間たちからも糾弾され、後ろ盾も婚約者も失ったひとりぼっちのエリオに近づき、決闘の介添えを申し出る。
 彼の最期を、見届けるために。

 決闘で死ぬことはなかったけれど、出生の秘密を知り絶望したエリオが死を決意したことを察しつつも、口を出さない。
 自らの手は汚さず、敵が自滅するのを待つ。

 ……憎む相手のことは、なんでも知っているから。万歳ソングを歌うくらい、エリオのことばかり見つめて、知り尽くしているから。
 エリオなら、こうするだろう。ビセントのときも、エバ@彩音に対してどう恋するかも、そして秘密を知ってしまったこのときも、エリオがどうするか、アルバロにはすべてわかる。
 恋人より家族より、この世の誰よりエリオを見つめ続けてきたのだから。憎しみを持って。

 すべては、エリオのために。
 エリオを、憎むがゆえに。

 その死に膝を折り慟哭しながら……ライトの当たらない、陰になってしまい誰にも見えないあのラストシーン、最後の最後に唇の端をわずかに上げて、嗤っているかも、しれない。

 ねえ?
 脚本から考えると、アルバロの言動はそーゆーことにだって、なるよなー。冒頭の「エリオ万歳ソング」からラストの「這いつくばって慟哭」まで一貫して。

 もちろん、憎しみゆえに全部やって来たけど、最後の最後、実際にエリオを失ってはじめて「憎んでいたんじゃない、実は愛していたんだ」と気づき、号泣しているのでもかまいません(笑)。
 また、憎しみの理由がコンプレックスだとか、人間の人間ゆえの汚いドロドロしたもので、最後はそんな自分の醜さに号泣しているのであっても、かまいません(笑)。

 
 いやあ、たのしいなあ、アルバロさん。
 なんかいろいろこねくり回してほざいていますがよーするに。

 這いつくばって慟哭するラストシーンのアルバロさんが好きだ。

 ということに尽きます、はい。

 全ツ再々演『哀しみのコルドバ』のアルバロ@まっつ。

 舞台暗いし、ライトあたらないし、所詮背景的な扱いで、そのつもりで見ないとどれがアルバロかもわかんないよーな状態なんで、ファン以外見ていないと思うけど。
 ファンだからこそ、シルエットだけで「あれってまっつだよね?」と見分けてガン見して、その嘆きの深さにびびるわけですよ。お笑い担当のチャラ男、とはかけ離れた「まっつっぷり」に(笑)。や、「オレってモテモテ☆」とポーズ決めてるより、こっちの方が似合ってますから(笑)。

 苦痛に歪んだ顔が好み過ぎます。
 身をふたつに折って、大の男が地面に這いつくばって慟哭するんですよ? どんだけの哀しみですかソレ?
 あんな嘆き方をする男だからこそ、普段とのギャップについていろいろいろいろ妄想しちゃいますよ。

 ラストシーンのアルバロさんを見るためだけに、最前列坐りたいなあ(笑)。
 センターのちょい下手寄り。下手に振りすぎると顔が見えなくなりそうだから、やっぱセンターでないとなあ。
 ライトが当たらないから、後方席だと光が届かなくて顔が見えにくいの。演出意図としては這いつくばるシルエットさえ見えればいいんであって(背景だから・笑)、顔や表情はどーでもいいんですよ。や、エリオ@まとぶんの物語で、主人公が絶命するドラマティック場面なんだから、それを盛り上げる背景としてはソレでいいのよ。美しい演出だと思いますよ。
 ただわたしはまっつファンなので、まっつ渾身の泣き演技を見たいのよ。
 舞台の光源が視界に届くあたりの座席で、まっつの表情が闇に沈んでしまわない位置で、その演技を、顔を、ガン見したいのー。
 舞台奥でやられていたらまったく見えなかっただろうけど、ありがたいことにいちばん手前でやってくれてるしね。

 あ、まっつがどれかわからない人のために、見つけ方。
 ロメロ@ゆーひさんの最終ポジション(上手から歩いて登場するよね、彼)の斜め前にいます、まっつ。
 ゆーひさんガン見しているみなさま、彼の足元に這いつくばっている男がまっつです(笑)。
 後方からオペラで見る場合、ゆーひくんとまっつをひとつのフレームに収めることが可能だった。
 ゆーひさんにはライト当たってるけど、まっつにはナイ。

 
 まっつの演技には物足りないところがあるにしろ(ヲイ)、「アルバロ」という役自体は相当好みです。
 まっつよりも、もっと暑苦しい、スタンドプレイ好きな人が演じた方が栄えただろうなと思う。

 今回の公演では、まっつが最初の「エリオ万歳ソング」歌ってるじゃないですか。
 アレをアルバロが歌っているのだと考えれば、ますます愉快なことになるわけですよ。

 エリオがどんだけすごいかを語り、周りの者たちが追従する様を上から目線で受け止める。自分こそが語り部、エリオの理解者のように。なにもかもいちばん知っているかのように。
 まっつ的スカシきった顔で「ふふふ、エリオはこんなにすごいんだぞ」「そうか、みんなそんなにエリオが好きか、よしよし」とやってるのが、「アルバロ」ならば、とんでもなく興味深いです。

 ……同じ職場の仲間に対して、ですよ。普段はふつーにタメ口きいてる相手のことを、本人いないとこでは「オレのエリオってすげえだろ」と自慢しまくってるって、どーゆーことですか。

 
 とゆーことで、アルバロさん像を考える。

 闘牛士だけど花形ではまったくなく、パーティで紹介されるときも形容詞はナシ(笑)。でも、パーティに呼んでもらえる立場ではあるらしい。
 女に手が早い軽薄なプレイボーイ設定、らしい。
 チームの若手たちからは「兄貴」と呼ばれ、まさに兄貴風を吹かしてはいい気になっている。
 なにしろ赤い水玉のブラウス着て踊っちゃうよーな、愉快にピエロポジだ。や、あの衣装はアルバロの責任じゃないかもしんないけど、「アントン・チームのその他大勢の真ん中」つーだけで「真ん中はやっぱ赤だよね」ってだけのことだとは思うけど、それにしてもすごくトホホなセンスだし。

 そんなどーしよーもない感じの男なのに。
 エリオが闘牛士を辞めると言い出したときには糾弾側に立ち、立ってはいるが、裏切られたショックを表しているだけで、他の者たちとは違い直接的にエリオを責めることはせず、決闘の介添人をして出生の秘密と大愁嘆場に居合わせ、最後は膝を折って号泣。 
 
 まっつがどうこうとは切り離しても、アルバロさんの役回りは実に愉快だ。

 脚本上にあることだけ取り出しても、浮かび上がってくる「アルバロ」像は。

 「エリオを愛してる場合」と、逆に「憎んでいる場合」が考えられる(笑)。

 
 文字数が半端だから、翌日欄へ続く。
 アルバロ@まっつは、知っていたのだろうか。

 エリオ@まとぶんの決意を。
 つまり、エバ@あやねちゃんと兄妹だと知ったエリオが、最後の舞台で死を選ぶことを。

 エリオの出生の秘密がわかる場面にて、その場にいる「部外者」はアルバロだけだ。
 エリオ一家とエバ母@ちあきさん、エバのパトロンであり彼女を巡る決闘相手のロメロ@ゆーひと、その甥フェリーペ@めおくん。フェリーペはエリオの捨てた婚約者アンフェリータ@いちかに惚れているという事情もある。
 そんな濃いぃ人間関係の中、アルバロひとりしがらみナシ。エリオの同僚ってだけ。

 ひとりだけ部外者で、いきなりあの騒動ですよ?
 アルバロが真のチャラ男なら、絶対逃げ出してますって。

 友だちに「告白のつきそい」を頼まれてついて行った校舎裏、ふつーに「好きです、つきあってください」で済むと思っていたら、母だの妹だの乱入してきて「オマエたちは実の兄妹~~!」とか「実は腹違いの~~」とか、他人のお家事情全開で慟哭されたら、泣いて逃げ出しますよあたしなら。ごめんなさい勘弁してくださいそんな濃ゆい世界に巻き込まないでください、聞かされても困ります背負い切れません。

 なのにアルバロ、その場にとどまって、全部聞いてるし。受け入れてるし。

 そもそもなんでアルバロが、エリオの決闘の立会人になったのか。
 下手したら、死を看取る相手なわけでしょ? 半端な人には頼めない。チーム・アントンはどの規模の団体なのかわかんないけど、人手不足だよな、明らかに。
 ビセント@みわっちが去り、ここでエリオがいなくなったら、もう正闘牛士はアルバロしかいないという(笑)。てゆーか、3人しかいないのか? あとは剣係とか見習いとかだよねえ?
 最初のパーティで正闘牛士として招待・紹介されたのが3人だけだったので、あとわいのわいのと何人もいるメンバーは、見習いかと思ったけど、実はらいらいやしゅん様も正式なマタドールなのか? プロとしてデビュー済で、アリーナにひとりで立っているのか?
 アルバロに光の衣装を着せていたマリオ@鳳くんは、剣係であって闘牛士ではないよね。正闘牛士はそんなことしないだろーから。だからマリオと同等あたりの男たちはみんな、アントンの弟子ではあっても闘牛士ではないはず。そりゃ彼らも衣装着て舞台には出るけど、主役じゃない。
 なんにせよ、同じ職場で立会人をしてくれるのが、アルバロしかいなかったのか?

 このへんの関係が明記されていないので(笑)、「他にいなかったから仕方ない」と消去法でアルバロなのではなく、たくさんいる中からあえてアルバロだった、としても。

 どっちから申し込んだんですか、エリオとアルバロ。
 エリオが「立会人になってくれ」とアルバロに頼んだの? それともアルバロが自発的にエリオに名乗り出たの?

 そんな重要な役を頼むような、間柄だったのか。

 エリオは信頼厚い人なので、彼の「トクベツ」になりたがる男たちは大勢いるんだろうけど、なにしろ「闘牛より仲間より、恋が大事、女が大事」と言ってのけて、仲間たちからつるし上げ食らっていた直後だ。
 このタイミングでエリオの味方になるのって……。

 知らなかったなあ、アルバロってエリオの親友だったんだ?(やっぱり消去法なんぢゃ……?笑)
 エリオとアルバロが、どっちが年上なのか、先輩なのかも、作中からはわかりません。お互いタメ口だよね。
 同期で同じ組、しかし片方トップスターで片方脇の職人とか、そんな感じ? 親友というほどべたべたしてないけど、同期だからいざというときは助け合う、みたいな? みんな退団していき、今は同期ふたりだけだよ、みたいな?

 とにもかくにも、実はエリオとアルバロが親友だった、つーことだとして。
 最初の疑問にたどりつくわけだ。

 アルバロは、知っていたのだろうか。
 エリオが、最後の舞台で死を選ぶことを。

 知る、とまで明確な思いはなくても、予感はあったんじゃないだろうか。
 エリオがなにかしら決着をつけるつもりだろう、と。

 だからこそ、光の衣装を身につけて現れたエリオと、無言で頷き合っているのだろう、と。

 エリオの秘密を知ってしまったという点では、ロメロとフェリーペも同じだが、彼らはエリオのことをよく知らない。今回知り合ったばかりの他人だ。
 同じ釜の飯を食ってきたアルバロとはチガウ。

 友人の秘密を知り、彼がなんらかの決着を……最悪の場合は死を選ぶだろうことを受け止めた上で、覚悟した上で、見守る、ってのは。

 担っているモノはものすげー重さと濃さなのに、あくまでもメインフレームに入らないところにいるからこそ、注目すると、たのしい。

 や、ほんとのとこがどうなのかは、なにしろ脇役ゆえに本編中で言及されていないので、観ているモノが勝手に妄想していいわけですよ。フリーダムですよ。

 エリオの決心に気づいていなかったとしていろんな展開をシミュレーションするのも、気づいていたとして心情をロールプレイングするのも、いちいちたのしすぎます。

 気づいてなかったら、いきなり自殺されてショック受けるだろうねえ。どーして気づかなかったのか、事情を知るただひとりの人間だった自分を責めるだろうねえ。
 気づいていたら、どれほどの痛みを持って最後の舞台を見守ったのか。なにを超えてなにをひきずって、受け入れたのか。純にも腐にも想像の翼がはばたいて、帰ってこられません(笑)。
 たーのーしーいー。

 アルバロさん主役で小説書けます、こんだけおいしい設定だと。
 『哀しみのコルドバ』という、同じタイトル、同じ出来事を使って。
 ただ、演じているのがまっつだから、あまりわかりやすく腐ってくれないっつーか、せいぜいキスシーン入れられるかどうか、てな軽い腐り具合になりそうだ。ちぇっ。まっつってあまり腐女子的にオイシイ人ではないと思うのですよ、そっち方面での色気やゆるさに欠けるってゆーかね。
 ……てのは、ただのひとりごとですから、深く考えないように。アルバロ×エリオ、とか、ただのひとりごとですから、深く考えないように。あー、やっぱ攻キャラが好きだなー。と、いかんいかん、ひとりごとが長いぞオレ。

 主人公がやたら盛り上がって大騒ぎで大変(笑)な場面で、台詞もないアルバロをガン見しているのがたのしいです。
 一旦背中向けて、だけどまた振り返って。表情もそんなに変わらないんだけど、顔芸とゆーよーなわかりやすい派手なことはしていないんだけど、たしかに感情が見える、相変わらず地味に堅実に仕事をしている様が、すげえツボです(笑)。



 どうしても気になるのは、アルバロ@まっつのことです。

 ふつーに観ていたら別にどーってことのない役で、どーってことのない人なんだけど、なにしろこちとらまっつファンで。まっつ中心の視界になっているわけで。

 アルバロはストーリーには絡まないけど、いや、絡まないからこそ、妙なスタンスでストーリーに……というか、主人公に関わっています。
 いっそまったく関わってなければそーゆーもんだと思うのに、アルバロが主人公サイドを向いている……ために、彼に着目すると「それでいったいどーなってるの?」と疑問がわいてきます。

 『哀しみのコルドバ』はわかりやすい話で、主人公たち主要キャラも、彼らを取り巻く脇の人たちも、言動がとてもクリアで澱みがない。
 どーしてこの人がここでこんなことを言うのか、するのか、観ていてストレスがないの。うんうん、そうだよね、ああ思ったからこうしたんだよね、といちいち納得できる。(ヅカでは超絶貴重。激レア)

 そのわかりやすい人たちの中で、アルバロは「作者がちゃんと描写する気がない」脇のその他大勢でありながら、「主人公の出生の秘密、物語のクライマックスに立ち合う」という、唯一無二の、「変な位置にいるキャラクタ」だ。

 とゆーことで、アルバロさんが気になります。

 短編小説としてきちんと収めるのなら、プロット時にアルバロは「その他の名前のある脇役」欄に分類し、決して意味のある場面には登場させない。
 登場人物の役割が絞りきれないと、物語が散漫になり、盛り上がりに欠けるためだ。
 エリオ@まとぶんの出生の秘密がわかる場面には、脇役など立ち合わせてはならない。
 決闘の立会人が必要だというなら、第2グループの主要キャラ、ビセント@みわっちを1日早くコルドバへ到着させて、彼を立会人にすればいい。
 ビセントは先にエリオとまったく同じ状況で決闘をしているのだから、彼が立会人をする方が、物語がはるかに盛り上がる。

 しかし、80人もの出演者にできるだけ役と出番を作らなければならない宝塚歌劇なので、物語としてのクオリティを犠牲にしても、他の人に出番を作らなければならない。
 そのシステム上の欠陥ゆえに、ビセントではなくアルバロが立会人をしているのだろう。
 今回は全ツでそれほどの数の出演者はいないが、もとが大劇場用作品だったわけだし。演出はそのままだろうし。

 タカラヅカのシステムを今さらどーこー言っても仕方ないので、設定的にまちがっている……とまでいかないが、最善ではまったくなくても、とにかくここはアルバロの出番となった。

 この整然とした物語の中、システム上のゆがみで配置されたアルバロの、キャラクタのどっちつかずさが、気になる(笑)。

 ゆがみ部分なんだから、役者のフリースペースだと思うんだけどなー。
 まっつはそーゆー「空白」を埋める演技は得意ではなさそうだ。経験不足もあるだろうけど。(設定が壊れていることが気になるくらいの、ちゃんとした役やったことあんましないよなあ。壊れていないちゃんとした役なら、バウとかでやったことあっても)

 まっつがどーゆーつもりで役作りして、どう演技しているのか、ほんとのところはわからない。
 が、とりあえず、わたしには。

 アルバロの女好きは、ただのポーズに見える。

 や、キライぢゃないだろうがな(笑)。
 でも、ことさら女好きをアピールするのは、すごく嘘くせー。モテモテぶるのも、嘘くせー。

 もちろんソレは、まっつの芸風に合っていないせいもある。まっつがやると、いたたまれないよーなみょーな空気になるし。
 わたしは初見時で吹き出したけど、とりあえず2回目以降は笑わなかった。でも、周囲の人はまっつがキザってるとほんとに笑うんだもんよ。吹き出すんだもんよ。
 二枚目ぶって笑われるって、どうなのよまっつ、男役スターのひとりとして。や、路線様だけがスタァぢゃない、まっつももちろんスターカテゴリの人でしょお?

 まっつの芸風に「モテモテのチャラ男」ってのが合っていない。それも理由のひとつだが……若手闘牛士たちとの場面でのアルバロと、エリオに対するときのアルバロが、あまりに別人過ぎて。
 場面場面で別人、つーのは、どっちちかが「演技」だと思えるでしょう?

 で、どちらが真実の顔かというと、やはりこの物語の核心に触れている部分で見せている顔でしょう。

 つまり。

 エリオの決闘に立ち会い、はからずもその出生の秘密(と、一家の愁嘆場)を知ってしまう。
 そのあとのエリオの最後の舞台、その死を目の当たりにしての号泣。

 ここで見せるドシリアスな骨太な男の姿こそが、本来のアルバロなんぢゃねーの?

 もちろんソレは、まっつの芸風に合っているせいもある。
 友情に厚い、真面目で真っ当な男って、ソレどこの相沢くん(笑)。まっつの得意分野。
 誠実な男の方が演じやすいんだろう、チャラ男より。

 相沢くん寄りになってはいるが、文官の相沢くんと違って闘牛士だから、しっかり骨太なんだよね。ずっと男らしい。
 エリオ一家が泣くわわめくわもー大変、な状態になっているとき、黙ってそれを見つめているアルバロのオトコマエなこと。

 それがそのあとに、闘牛士として「光の衣装」を身につける、あのストイックな横顔につながるんだよな。

 
 アルバロの二面性を考えると、仕方なかったんだろうなと思う。

 同じ事務所に所属するタレントでさ、同世代に天才がいて、才能だけでなく性格も良くて、ひとりの人間として自分では到底叶わない……となったら、身の振り方考えるじゃん?
 別の事務所に移籍して、天才くんとはぶつからないですむところで生きるか、同じ場所にいるなら、別のキャラ立てを狙うか。
 アルバロは、エリオとかぶらないキャラを演じるしかなかったんだなあ。
 エリオが真面目で誠実、女にも慎重だから、軽薄で自慢しぃの女好きを装う。エリオに負けていてもキニシナイ、だってチャラ男だもん。……そんなポーズを、取り続けるしか。

 なにかあればすぐエリオに頼りに行くとか(ビセントの不倫現場を目撃したのはアルバロだよな、台詞からして)、エリオがアントン・チームから出て行く(結果、闘牛士を辞める?)となったときのショック具合からして、アルバロがエリオを好きだったのは間違いないだろう。
 エリオを失う、いなくなってしまう、てなときになってよーやく、もとの真面目で誠実な、強い顔になって決闘に立ち合う。もうチャラぶる必要はないから。
 

 ……と。
 アルバロはゆがみ部分にいるキャラクタだから、存在自体「え、そんな人いたっけ?」ってくらい無視しても、『哀しみのコルドバ』という作品は成立しているが、彼に着目して作品を眺めると、それはそれですげーおもしろいんですが。
 いくらでも、別の物語が見えてくるから。
 『哀しみのコルドバ』は、再演初日を2回観た。
 1回は、大劇場初日。まだヅカファン初心者で、地道にスキル上げをしているころで、「トップさんの退団公演の初日」をはじめて観る、つーんで興奮していた記憶がある。……思ってたよりぜんぜんふつーの「初日」で、拍子抜けした(笑)。ヤンさんはクールだし。今のようにスカステはないし(WOWOWはあったが、毎日ニュース流しているわけじゃない)ネットは発達していないし、挨拶やカーテンコールもイベント的な意識はなかったと思う。

 次に、劇場飛天の初日を観た。
 あの年、阪神大震災が起こり、宝塚大劇場は閉鎖された。上演中だったヤンさんの退団公演は途中で打ち切られ、ゆりちゃんの月組公演はまるっと全部なくなった。
 新聞に書かれた「関西芸能界、壊滅」の文字は忘れられない。

 本当なら、もう一度観る予定だった。はじめて一緒に観に行く友だちと3人で並んで観るはずだったんだ、楽前に。
 それが、叶わなくなった。チケットは払い戻し。

 そのあと、中断された退団公演を急遽飛天で上演する、つーんで、またあわてて梅田のプレイガイドに発売日に並びに行った。

 運良くチケットを取ることが出来、1回だけ、初日に観た。
 公演が終わり、主演のヤンさんがマイクの前に立ち、挨拶をはじめた。ムラ初日「こんなもん?」と思った、どーってことのない挨拶をしたあのヤンさんが……「つらかったです」と言葉をしぼりだし、泣き出した。

 あのころはまだ、よくわかっていなかった。退団公演の重要さ。トップスターの背負うものの大きさ。
 流す涙の重さ。

 あれから10年以上。
 劇場飛天はころころ名前を変え、設備のみ古くなって現在に至る。

 その同じ劇場で、再び『哀しみのコルドバ』を観る。同じ花組公演として。

 開演アナウンス前に流れ出した音楽に、あれ? 今から『Red Hot Sea』がはじまるの? と思った(笑)。
 なるほど、『Red Hot Sea II』の曲が差し替えになったとか言っていたのはこのためか。同じ曲なんだね。

 10年以上前に観たっきりだから、細部まではおぼえていない。ストーリーと主要キャラ、そして有名すぎる主題歌。なにより、ふたつの初日の、異なった緊迫感を強くおぼえている。
 兄妹オチと母親のウザさ、三重唱×2のドラマティックさと、突然空気を変えて歌い出すひまわり娘@純名のすばらしい歌唱力とKYさ(笑)、ストーカーみたいにここぞってとこになにかと現れ、見守る系のイイ台詞を言うリカちゃんを見て「嘘くせー」とつっこんだこと……(笑)。いやその、天下のシブキジュン様ですから、んなおとなしいイイ人なわけがないっつーかえーっと……ゲフンゲフン。

 そして、衝撃的なラストシーン。

 今回の全ツ梅芸初見時、再演の頃ですら幼児以下だよな、という年齢の制服姿の女の子が私の隣の席で母親らしい女性と一緒に観ていたが、芝居が終わって客電が点いたとき、その女の子はひとこと、「びっくりした……」とつぶやき、ハンカチを出して涙をぬぐっていた。

 うん。びっくりするよね、あれは。
 

 花形闘牛士エリオ@まとぶんは、8年前突然姿を消した恋人エバ@あやねに再会した。彼女は母親の急な再婚で生まれ故郷コルドバをあとにするしかなかったのだ。なんか無茶な理由だなヲイ……そう、無茶なんだよママンは。なにしろわざとだし……というのはあとでわかること。
 ママンの画策はさておき、もともとラヴラヴだったふたりは、再会するなり昔以上にラヴラヴ絶好調になったが、ちょっと待て、エリオにはアンフェリータ@いちかという婚約者が、エバにはロメロ@ゆーひというパトロンがいる身。愛は暴走特急、ふたりはしがらみを清算し、ふたりで生きようとするが……。

 主役のカラーは、ここまで物語を変えるのだなと痛感。
 ヤンさん主演のときと、なんかぜんぜん違うんですけど、話(笑)。

 エリオが、アツい。

 なんかもー、クドくてアツくて、かわいい男がいますよ(笑)。
 どんだけグランなエリオなのかわかんないけど、とりあえず彼が仲間たちから慕われているのは、闘牛士としての実力の他に、人柄ゆえだということがわかった。

 いい奴だ、エリオ。かわいい奴だ、エリオ。
 ついでに若いぞエリオ。現代の26歳はまだ若者であって、「大人」ではない。平気でモラトリアムやってられる年齢だ。15年前の26歳は「大人」だったけど。初演の頃はさらに上の感覚だったかもしれないし。時代がチガウんだから、きっとこれでいいんだろう。
 まだまだ青い、コドモなエリオ。だからこそ、恋にすべてを懸けられる。
 彼の若さがまぶしく、せつない。

 わたしが年を取ったせいかもしれないし、今現在ヅカにディープにハマっていて、花組ファンであるからかもしれない。

 再演を大劇場で観たときより、今回のエリオに感情移入した。

 冷静沈着な大人なエリオより、若くて一途で激情なエリオに。

 ああ、このエリオならあの決断もわかるよ、と。なんかすごくすとんと納得した。

 エバを苦しめないために、なにもかもひとりで背負って死ぬしかないと、「いや、ちょっと待て早まるな、他に方法はあるだろう、あるはずだ、考えようじゃないか……ってヲイ、人の話を聞け!」な暴走エリオなら納得ですよ。
 若さゆえのアツさ、無謀さがもお、キラキラして切なくて。

 ……15年前はわたしも若かったので。ヤンさんはひたすら大人に見えたし、エリオとエバは十分「大人の恋」に見えたのですよ。

 それが今や、正反対。
 エリオの恋は、無謀な若者の恋。若いからこそありえる、若さゆえの特権である、その暴走っぷりを若くないモノが愛でる物語として受け取った。ああ、時の流れって容赦ないわね。

 失われた時は、みな愛しい。当時は石ころでも、15年後に眺めりゃ宝石、ソレが青春。
 エリオの若さが愛しい。

 エバを抱きしめて「家を建てよう」とか、ありえない未来を語るエリオにダダ泣きっす。
 ♪もしも私が家を建てたなら、小さな家を建てたでしょう。大きな窓と小さなドアと、部屋には古い暖炉があるのよ。真赤なバラと白いパンジー、子犬の横にはあなた♪
 なんて夢見るヲトメなんだ、エリオ。

 すべての想いを飲み込んで、ラストシーンになる。
 大劇場で観たラスト、盆は回るわセリは上がるわで大スベクタルだった記憶があるし、飛天で観たときも違和感ない演出だった気がしたんだが。
 全ツで毎回会場チガウから、盆もセリも使わない方針なんだよな。

 セリの上で絶命するはずのエリオは、床で終了。

 それでも、そのラストが衝撃的なのはまちがいなく。
 はじめて観た高校生の女の子が、「びっくりした」とつぶやくのは当然だ。

 エリオが正しいかどうかではなく、彼がそうまでして守ろうとした真実が、そしてその行為が、エバを傷つけないことを、追いつめないことを、祈るばかり。

 
 震災の年、たくさんの人の願いゆえに、劇場を移して上演された、ヤンさんの『哀しみのコルドバ』。
 今このトシになって改めて、もう一度、あのままの舞台を、ナマで観てみたいと思う。
 若くない今のわたしには、どんな風に映るのだろう。

 この作品を、好きだと思うからこそ。
 ゆーひさんのこうげきに、まっつはたじろいだ。
 だがしかし、まっつはまけなかった。
 かてないことはわかっているが、まけずにほほえんだ。

 ゆーひさんのこうげきはつづく。
 まっつはまけない。まっつはほほえむ。
 ほほえみまっつ。がんばるまっつ。まけないまっつ。
 まけない……けど、たいへんだ。
 たいへんだったら、たいへんだ。

 
 ある日の梅芸メインホール。
 フィナーレのパレードたけなわ。
 銀橋がそこにあるつもり、で舞台手前端に1列に並んだタカラヅカ・スターたち。
 ヅカと言えば、羽、羽、羽。
 全国ツアーだ、一見さん大喜びの羽はお約束だ。
 みんな羽付けてるけど、真ん中から1、2、3の羽は特に大きい。

 その大きな羽根を付けた人の「隣」にいる人が、大きな羽根と戦っていた。

 大きな羽根を付けた大きなゆーひさん。隣に立つ、小さな羽根を付けた小さなまっつ。
 ゆーひさんの大きな羽根が一房、まっつの顔に当たりそうになっていた。

 他の部分の羽は、大丈夫なの。まっつの背負う小さな羽が前に来ていて、ゆーひさんの羽はまっつの後ろになっているので、誰にも当たらない。

 されど狭い舞台のこと、整列するとぎゅうぎゅうで、どーしても隣の人と羽同士が重なることになる。
 同じ大きさの羽ならいいんだが、まっつの場合、隣の人が羽もカラダも大きくて……よりによって顔の高さの羽が、飛び出して来てるのだわ。

 あっ、羽が顔に当たる……! てとこで、まっつは必死になって顔を傾け、ビンタされるのを逃れる。
 顔を傾けたまま、それでも笑顔まっつ。

 羽が当たる?! よけるまっつ。
 羽が首筋こちょこちょ?! よけるまっつ。

 それでも笑顔。
 真正面向いて、笑顔笑顔。

 …………もお。
 もおっ、もおっ、もおっ。

 客席で、悶え狂いました。

 かわいいっ。
 かわいすぎるぞまっつ!!

 ゆーひさんはそりゃーもーきれいな笑顔で客席に笑いかけていて、その横でまっつが人知れず戦っていることには気づいてないの。
 気づいてないよな? 気づいてて羽こちょこちょしてるんだったら、余計萌えるぞ(笑)。

 まっつの「本気モード」の全開笑顔と、その顔で!ゆーひさんの羽との戦いっぷりがもー、地団駄踏んで転げ回りたいくらいかわいかったっ。

 大羽の人の横なんか、立ち慣れてないもんな、まっつ。全ツで毎回会場チガウから、車間距離難しいよな、まっつ。

 いやあ、ええもん見ました。ありがとう、ゆーひさん。ありがとう、まっつ。

 
 結局のところ、まっつは芝居でゆーひくんと絡むことがないまま終わった。
 ゆーひくんは花組に長くはいないだろうと予想はしていたけれど、その間にまっつと絡むところが見たいと……一応、たぶん、せっかくだから、思っていたのだけど、結局は叶わなかった。

 ゆーひくんには思い入れがありすぎて、「好き」のひとことでは済まない(笑)。
 そんな人が花組にやってきて、わたしの現在のご贔屓と同じ舞台に立っているなんて、いろいろいろいろ思うところがありすぎて(笑)。

 今回のNOWONでもそうだったが、ゆーひくんとまっつが隣同士に坐っている、とゆーだけで、「どうしよう」って気分になる。
 や、だってさ。元カレの弟で、実は浮気相手だったりする人が、今カレと並んで「あ、今同じ職場なんだ」とか言って家に現れたら、平静ではいられないでしょう?!(イタい喩えはやめなさい)

 こうして、舞台で隣同士に並んでいるのを見て、しかも「これが最後なんだ」とか思うと、さらにさらに感慨深くて。

 ゆーひくんとまっつがふたりでいて会話がなくなって、しーんとしているとことか、見てみたいなあ。(ナニその偏った妄想)
 で、とりあえずそのかの話題をしてみるふたり。
 ……なんか、ふたりの共通の話題ってソレくらいしか思いつかない……(笑)。
  
 ゆーひくんの隣のまっつ、も感慨深いが、ゆーひくんの前に立つまっつも、興味深い図だ。

 梅芸公演では、全ツ恒例の「ご当地ジェンヌ紹介」があり、カーテンコールの幕が上がると、トップスターまとぶさんと大阪出身者が一歩前に出ている。

 まっつはもちろん、ゆーひさんの前だ。

 ゆーひくんの前に立つまっつ。
 小さなまっつの後ろに、大きなゆーひくん。

 名前を呼ばれたまっつは、シャンシャンを持ったまま両手を上げて「グリコ」のポーズ。
 それでも後ろのゆーひくんが見えなくなることはない(笑)。

 あああ。
 もう2度と見られない光景。
 ゆーひくんは、花組からいなくなる。
 さみしいよお。
 
 元カレの弟と今カレの、どこかいたたまれない並びを、もっともっと見ていたかった。(まだそのイタい喩えを使うか)

 
 まっつといえば、アドリブで大きな男と絡む場合が多い気がしているのだが、今回も大男とばかり絡んでいた。

 大男……めぐむさんです、ええ。

 『哀しみのコルドバ』稽古場映像ではだいもんと絡んでいた場面で、「あれはフェイクだったの?」てくらい、だいもんには近づかず、めぐむ氏とばかり絡んでます。

 最初に見たとき、小さなまっつが、大きなめぐむを回していて、おどろきました。

 ダンスで男の腕の中で女の子をくるくるターンさせる振りがあるでしょ? 片手は高く頭の上で女の子の手を握り、てやつ。
 アレを、めぐむ相手にやってた。
 大きなめぐむを、小さなまっつがリードしてくるくる回していた。

 手、届いたんだ。(素朴な感嘆)

 めぐむくんの頭の上の手を、まっつさんが握ってるわけですから。

 あとは、めぐむさんと恋人同士のように見つめ合って手を握り合ってうっとりしていたり?(そのあとすぐに、キモッて感じに振り払う)
 手を取り合ってターンしようとして、失敗してぶつかったり。(失敗するなよ……)

 めぐむといちゃこらしたあと、時間があればしゅん様に絡みに行く、と。(時間がなければめぐむだけで終わる)

 同じくらいの体格の男たちには興味ないようで、でかい男にばかり攻め込むアルバロ@まっつさん……。

 『Red Hot Sea II』の、カモメ場面での、愉快な「海へ行こうぜ」トリオの体格差がえらいことになっていて、たのしかったっす。
 大きなゆーひくんに、大きなまぁくん。そして、ひとり明らかにミニマムなまっつ。(でも声はいちばん低い)

 ゆーひくんとの体格差が好きです。くすくす。ああ、かわいい。(盲目)

 
 ところでこのパソコン、なんで「ゆーひさ」まで打つと、「ゆーひさんにキス」って予測変換するの?! なんの願望?!(願望なのか?)

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