まとぶんに握手してもらって、ちゃーの腰振り真横で観て、ついでにゆまちゃんの太股(in網タイツ)が間近過ぎてくらくらして(ビバ通路際!!)、1列後ろに坐っていたそのかの笑い声がものすごくって(フォンダリ一家、とくにバロット@まっつに反応しまくり)、もちろんまっつはかわいくて素敵で、すげーご機嫌で名古屋の街を歩いていたらチェリさんとモバタカからのメールが同時に届いた。

 かなみちゃん、退団。

 ちょっと待って。
 寝耳に水だよ、だってだって、博多座『ME AND MY GIRL』のサリーはどうなるの?! ビル@きりやんと組んでくれるって期待してたのに。ふたりで歌いまくってくれるって、「ミュージカル」を見せてくれるって、夢見てたのに。
 や、勝手な想像でしかないのはわかってるけてど。でも、観てみたかった。
 わたしは『ミーマイ』好きじゃないんだけど、それでも「ハッピー・ミュージカル」が「きりやん主演」てのはわくわくすることだったし、そこに歌姫かなみちゃんが加わってくれたら最強だと思っていた。
 もちろん、日生でデイジー@『グレート・ギャツビー』だとしてもよいものを見せてくれるだろうと安心できていたし。

 『ロミオとジュリエット’99』の車内吊りポスター見て、「あの美少女は誰?!」と騒然とした。(で、実際の舞台は写真よりはるかに丸くておどろいた・笑)
 あれから10年経つのか……。

 文句なしの実力を持った、大輪の花。太陽と母性とゆー、強さとやわらかさを持つディーヴァ。

 歌声もだけど、なによりあの笑顔が好きだ。
 そこに光が、ただの光線ではなく温度のある、日だまりが広がるような笑顔。まろやかで心地いいやさしさ。

 そして、陽性の強さを持ちながらも、確実に毒や闇も演じられる実力に安堵感があった。
 もっと「芝居」が見たかったな……。

 退団を惜しみつつも、幸福にタカラヅカ生活を締めくくって欲しいと切望します。
 ニケ@『A-“R”ex』の輝度のすごさが今、あらためて胸に刺さるよ……。

 
 花組中日公演初日1回観ただけの感想。まちがっていてもご愛敬。名古屋は遠く、わたしはびんぼー。

 需要があろうとなかろうと、まっつ語りです、HAPPY DAYS!

 中村Bだから期待より不安の方がはるかに大きい『ラブ・シンフォニーII』。案の定微妙と謎のマイナーチェンジ、『2』というより『1.03』とかそんな感じっす。『2』が発売されるまでのつなぎで発売されるアペンド・ディスクみたい。中村Bってそんな人なんでしょう。
 あまりにもオサ様バージョンまんまで、あちこち息が止まります。切なくてつらくてぜえはあします。
 ……それはもう言っても仕方ないことなので、まとぶんと新生花組にキモチを切り替えるようにしてますが。

 てことで、スイッチ切り替えて、まっつまっつ。

 『ラブ・シンフォニー無印』のとき、オープニングとフィナーレでまっつが着ていた黒のアクセント付き白燕尾。観るたび右側だけ多くはだけていて気になった。でもま、これでもう終わりだしいっかー、と、思っていたのに。

 『ラブ・シンフォニーII』OP・ED、まっつだけ衣装同じですか。

 まとぶん、壮くん、みわっちとみな衣装が一段グレードアップしている。でもって、みつる、りせもアップしている。
 上と下の狭間、まっつひとりが衣装据え置き……(笑)。
 まっつ、あの白燕尾4ヶ月間着続けるのかー。そーいや『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』『舞姫』と3ヶ月半同じ学ラン着続けた人だよなあ。

 オープニングの板付きは、まっつは上手。
 『無印』では最初なかなか顔が見えないんだが、今回は横顔とはいえ顔が見える。客席側に顔が見えるように微妙にポーズが変わっている模様。

 で、このあとの「スターひとりずつ登場」場面。
 『無印』ではこの主題歌に載せてひとりずつ登場はオサ様、彩音ちゃん、まとぶんまでで、壮くん、みわっち、まっつはトリオで登場だった。
 それが『II』ではみわさんまでひとりで「スター!!」として登場する。
 だからトリオ登場のセンターはまっつ。
 えーとたしか、『無印』ではトリオのセンター、壮くんはひとりだけ衣装が違い、両脇のみわまつが同じで、いちおー見た目がちと華やかになるよーになっていた、はず。
 それが、まっつ衣装据え置きでセンターやってるから。
 トリオ全員同じ衣装? な、なんか地味?!(笑)
 で、トリオで歌いながら登場するわけだけど、なにしろみつるとりせだ。まっつ、歌がんばれー。負けるなー(笑)。

 でもって再びまとぶさん登場を舞台で迎え……えええ、まとぶん衣装ちがってるー。ナニその真っ赤っか?!
 オサ様が同じ衣装で登場したのに、まとぶさんはお着替え済です。
 オサ様のときはすぐに退場したまっつ、そのまま最後までまとぶさんの周りで歌い踊って暗転。

 うん、『無印』のとき総踊りの途中で消えるのは次の場面のお着替えのためだよねぇ。スーツ組の人たちはみんないなくなるもの。
 それが今回は最後までいたぞ、着替えどーすんだ? と思っていたら。
 まとぶんのソロが、2曲あった。
 新曲で客席練り歩き(きゃー!)、さらに舞台でオサ様の寝そべりソング歌って下手の人にウインクしてた(きゃー!)。

 1曲増えていた分時間も大丈夫、つーことで、次のギャンブラーたちの場面はそのまま。
 センター壮くん、上手にみわっち、下手にまっつ、登場したあとは逆転、まっつは上手。モスグリーンのスーツも、中のギラギラベストも同じ。
 銀橋がないので壮くんはその場で「きーぽんきーぽん」歌ってる。

 でも、他の顔ぶれが微妙に違っているため、画面はなんとなくチガウ。
 つか、まっつの肩を使って登場するのが、さおたさんぢゃないっ。
 カラダをかがめた男の肩に手を置き、次の男たちがカードから登場するシーン。まっつを使うのがさおたさんだったのにぃ。ナニがどうぢゃないが、好きだったのにぃ。
 たしか今回は、らいだったよーな? や、らいが嫌なわけじゃなくて。

 んで歌が終わり、セットが開いてカジノになる。
 まっつはスーツの男たちと共に下手端へ。……って、この下手端の4人組、さおた、みわっち、まっつ、しゅん様って、『無印』まんま?!
 まとぶんがセンター台上に登場し、カードを歌う。
 『無印』とまんま同じに4人組はカード勝負。で、みわさんが勝っていた。
 ヲイヲイヲイ、お前ら3ヶ月勝負しつづけたのち、まださらに1ヶ月戦い続けるの?
 まとぶんの歌に合わせてさおたさんがまっつに肩に手を置いたりするのも同じ。
 でもって、袖にはけていくとき、まっつがさおたさんの肩を抱くのまで同じだった……。
 そ、そうか……さらに1ヶ月、まっつ×さおたなんだ……。そっかー……。

 ところで、『無印』で花道壁に貼り付いていた壮くんは、早々に退場していてここにはいません。
 なんでかっつーと彼は、髪をセンターパーツにしなければならないので、忙しいんです。
 次の「花盗人」は、センターパーツぢゃなきゃいかんのですか? 決まりなんですか?(笑) まとぶんに引き続き壮くんまでわざわざセンターパーツで、大ウケしました。

 ピンクのお花たちが花盗人と共に消えてゆき、かわりに登場する金のパイナポー@彩音ちゃん。両側に登場するテンション高い男たちは、みわっちとまっつ。

 銀橋ないのにある振りでさみしく舞台上をぐるりと回って退場、背景に巨大なちょうちょのセットと、その前に立つまとぶん登場。
 え、オサ様のスキャットも、まとぶんそのままやんの?
 てゆーか、なんなの、このエコー。せっかくのアカペラのスキャットが、謎なまでの機械処理で別物に。響く響く。今ならボタンが落ちても木霊が返るぞ。
 で、足上げダンスはまとぶん→壮くん→みわっちと登場し、全員登場となる。

 ここは衣装変わってないんだけど、ちょっと待て上手と下手変わってるってば。
 まっつ上手だー。なんか変〜〜、見慣れない〜〜。
 彩音ちゃんと女たち登場時も、まっつは上手端へ行ってしまう。『無印』のときは下手端にオサ様と一緒に下がったのにな。オサ様とまっつ、一緒に眺められたっけ……。
 まとぶんは下手なので、まっつ見てたら見られない……。でも、開襟サービスはあるかなっ? と、期待して下手のまとぶん見てたんだけど、彼は胸をはだけてくれなかったっす……サミシス……。
 舞台中央にみんなと戻っても、やっぱりまっつは上手のまま。でもこの位置だと途中退場するまとぶんを見送るとき、最後まで彼の近くにいられるわ。笑顔全開でまとぶさんを見送るまっつはかわいいわ。

 一旦曲が終わり、みんながカラダを二つ折りにして沈黙するところ。『無印』では星育ちのラテン男まとぶんが漢らしい声を響かせてダンス・スタートさせていたけれど、やっぱここ、壮くんがやるの? やるんだよな。やるってば。でもなんか壮くんのイメージぢゃない……。
 と、いらんとこで緊張しつつ、やはり壮くんひとりが顔を上げ「ハァーーーッ」と微妙に歌うよーに声を上げてました。よっしゃー、壮くんはそうでなくっちゃ!!(なにソレ)

 で、赤ジャケまとぶんを迎えた狂乱の「キンバラ」、まっつは上手のまま客席降り。ちょっと待ったぁ、あたしは下手通路際持ってんのよぉ、そっちじゃないわよぉぉおお。

 銀橋でやっていた、あの腰振り、腰回し。アレを客席通路でやってるわけですよ、男も女もとびきり濃いぃい花メンバーがっ。
 うほー。
 絶対そばで見たい。が、きっとそばだと恥ずかしくて正視できない(笑)。

 て、やってるうちに文字数切れ。続くっ。


スピッツ、吠えろ!!@メランコリック・ジゴロ
 パソコンが壊れ、再セットアップ作業中。てゆーかATOKの設定がわからん……。ふつーのWindowsならわかるけど、CEだもんよ……。
 IMEの中でATOKを使うんじゃなく、ATOKしか使いたくないのよあたしは!!
 マニュアルどこやったかな……。

 
 真面目に書いてた全体感想をPCデータと共に消失したので、哀しみを乗り越えるためにも本能のまま、まっつ語り行きます。

 まっつまっつまっつ。まっつを語れば哀しみよサヨウナラ、HAPPY DAYS!!

 つーことでまず、『メランコリック・ジゴロ』

 初演観てません。だって15年前でしょ? わたしそのころまだ小学校入ったばかりだし。観ていたとしてもおぼえてないわ。(大嘘。たんに、見逃してます)
 つーことで初演とは関係なく、今、はじめて観た作品として語る。

 まっつは、バロット役。
 アホで単細胞で暴力しか取り柄のないチンピラ。
 つまり、のーみそまで筋肉な男。

 あのー、もしもし?
 だから、演じているのは、未涼亜希さんです。

 あのー。

 筋肉ゴリラを、まっつが?!!

 や、タカラヅカだからほんとにマッチョな人がやる必要はないが。
 それにしたって柄違いっちゅーもんがある。
 のーみそまで筋肉な男を演じるのなら、せめてふつーの体格は必要でしょう。あとは漢っぽい持ち味。最低限、どちらかは。

 漢一匹らんとむさんが昔、そんな役をやって、ついでに犬になっていたよーななかったよーな?
 小柄でも骨格がしっかりしている霧矢さんが昔、そんな役をやって最後は男と南の島に行っていたよーな?

 まっつは小柄な上、華奢なので。
 いかつい衣装の中でカラダが泳いでるわ、袖口から見える手首が細すぎるわ、その手が握る拳銃の無骨さを強調するわで。
 な、なんだってまっつがこの役??

 よわよわなヘタレチンピラはできるだろうけど(ex.『La Esperanza』)、ソレしか能のない乱暴者っつーのは柄違いも甚だしい。

 スピッツにドーベルマンの仕事をしろと言われても。
 犬種のちがいは如何ともしがたい。

 瀟洒なシャム猫なのに、老練なライオンをやらされているみわさんもすごいが、まつださんもナニ気にえらいことをやらされている……正塚キャスティングっていつもながら変(笑)。

 や、文句を言っているのではなくて。

 ドーベルマンの仕事をするスピッツ、可愛すぎ。

 まっつは大真面目に頭の悪い筋肉男を演じている。
 ええ、作り込んでいますとも、ジオラモさんのときのよーに。
 いかつく見えるよう、暴力男に見えるよう、全霊をあげていますとも。

 しかし。

 すでにその姿がおかしいわけで。
 小さくて華奢で(ついでに油断すると薄幸だとか可憐だとかに見えたりする)、ケンカが強そうにはカケラも見えないまっつが「俺は凶暴だぜ、オラオラ」とやっていることがすでにコメディ。

 アホな筋肉男として笑えばいいのか、自分をマッチョだと信じているひ弱い男を笑えばいいのか、今ひとつとまどうっちゅーか困るってゆーか。
 それら全部ひっくるめておもしろいんだけど。

 てか、まっつ、巧いよね。

 作り込んで作り込んで、ほんとに演技してる。
 ジオラモといい今回のバロットといい、なんかハードル高いなぁ。実戦でびしばし鍛えられている感じ。
 男役としての下地を作った上で、あえて引き出しにないものをやらされている。や、ふつーの二枚目キャラがこんな三枚目を……っていうのじゃなく、まっつの場合体格のハンデあるから。
 ジオラモもそうだったけど、ふつーの体格の男役なら、あるいは長身の男役なら、ここまで作り込まなくても体格込みで演じられる。雰囲気でまかなえる部分が大いにある。
 でも、まっつはそうじゃない。
 これから男役としてやっていくなら、ハンデを超えるだけの仕事をしなくちゃならない。
 小柄だから渋い大人の男が出来ないとか、華奢だから筋肉男が出来ないとか、言ってられない。
 役者として伸びるだろう時期に、こーゆー役をやらせてもらえるのって、すごいありがたい。

 てな話は置くとして。

 ただもうたんに、バロットが可愛い。

 もともと「バカ」が好みであるわたしには、バロットのアホさ加減と「ハードボイルド希望」(あくまで「希望」)なとこがたまりません。
 かわいーかわいーかわいー。

 ルシル@いちかの尻に引かれ、あまり大切にされていないっぽいところがまたステキです。
 でもとどのつまりラヴラヴなとこもステキです。

 いやあ、ただの通行人だったり酒場の窓ガラスにへばりついていたり、そんな「画面中央にいない」ところがまたステキです。
 フォンダリ@みわっちと元カノ?@もえりちゃんとのクドくて濃くて目のやり場に困る長〜〜いラヴシーンを眺めているときのバロットが最高っす。
 このときのバロットを絵に描ける人はしりあがり寿しかいないなって勢いです。
 そこまで顔芸極めたあと、ルシルにさくっと無視されるのが、たまりません。

 それと個人的にすっげーツボったんですが、まっつ×えりたん再び?! てことで、またしてもまっつが壮くんの肩抱いてます。壮くん嫌がってます。
 まっつのが小さいのに、無理して肘まで肩に載せてるよおっ(笑)。や、バロットがノリノリでスタン@壮くんの肩を抱いてるの〜〜。抱くっちゅーか、掛けるっちゅーか。
 ま、とにかく、なくてもべつにいいのに、何故かあるスキンシップ(笑)。正塚せんせー、これはわたしへのサービスですかっ?!(笑)

 サービスと言えば、ダニエル@まとぶんのあごを指先で持ち上げるスタン@壮くん、場所はソファの上、つーのも、ソコだけ見ると「BLっ?!」てなノリで大サービスですが(笑)。美味美味。

 初日は全体を観るのでまっつONLY視点ではなかったので、次は是非バロットのみをガン見したいっす。

 
 で。バロットのパパ、フォンダリ氏があまりにステキなので。

 この親子のなれそめが気になります。

 なれそめって日本語おかしいから! 親子には使わないから! ……わかっているけど、あえて使う(笑)。

 フォンダリ氏がまともな子育てしたとは思えないし、そもそもこの親子、普段どーゆー会話してんだ?
 ルシルと出会う前、フォンダリとバロットがふたりきりのときのエピソードとか知りたいっす。
 なんつーか、微妙に会話が成立していない、でも双方気にしてない(気付いてない)、みたいな。

 30歳バツイチ・イケメン、ギトギト濃ゆ濃ゆしたたる色気のヤングなフォンダリ氏@みわさんと、その息子・10歳の生意気盛りバロット@まつださん(半ズボン着用)とか、死ぬほど見てみたいっす。

 や、フォンダリ親子の年齢設定なぞ知りませんのでてきとーですが。

 萌え。

 
 冒頭の写真はいつもの『ぶつ森』、バロット@アズくん。名古屋からの帰りの電車で作った(笑)。


 まとぶん、トップお披露目初日おめでとーございます。

 や、愛用のハンドヘルドPCがぶっ壊れ、1日がかりで書いていたものモロモロ全部ぶっ飛んだのでヘコんでます。

 『メランコリック・ジゴロ』、ダニエル@まとぶんはほんといい男っす。
 かわいーっちゅーかかっこいいっちゅーかもー。
 ほんといい男だなあ。

 『ラブ・シンフォニーII』は、なによりオサ様の想い出がつらくてあちこち息も絶え絶えになりますが(中村Bよ……もう少しなんつーか……)、新生花組がキラキラしていてステキです。

 
 チケ持たずにはるばる名古屋まで行き、2階席ではありますが、無事観劇できました。

 で、2階から全体を俯瞰して来て、まつださんファンとして、超個人的にショックを受けております。

 まっつ客席降り、そっちなの?!

 わたし、まさに逆、シンメ位置の通路際持ってるのよおーっ。
 わーんわーんわーんっ、まっつが遠いよおっ。
 客席降り逆だったら、まっつの腰振りが目の前だったのにっっ。

 という、超個人的なショックです。かなしみです。
 前方通路際、すげーがんばって入手したんだよ……「まっつ降りてきてくれないかしらっ」と、チケット眺めては夢を描いていたのだよ……しくしくしく。

 バロット@まっつは、盛大に笑われていました。

 役として、芝居としておかしいのか、まっつだから笑われているのか、ずっぽりファンのわたしにはわかりません。
 お披露目初日だもん、客席は組ファンで埋まってるから、「ファンならではの反応」だらけだし。

 バロット、イケてましたか??
 わたしの目には、愛らしいイキモノにしか映らないので、客観的判断が出来ません。

 
 なにしろ書いたものがみんななくなったので、今日はこのへんで筆を置きます。
 明日、気を取り直して書くよ……。
 『ハリラバ』3つと雪新公もなくなっちゃったなー……もう一度書ける日は来るのか……? 遠い目。


 月組WS『ホフマン物語』の感想を、簡単に記しておきます。

 わたしが観たのは、みりおくん主演のAバージョンと、もりえくん主演の楽。ええ、結局両方観ました。

 みりおくんは、とにかくかわいかったっす。
 理想の美少年がここにいる。大仰なフリルびらびらキンキラのコスチュームが栄える栄える。
 なんて綺麗な男のコ。これぞタカラヅカの醍醐味。現実にはあり得ないファンタジーな存在。
 破綻ない実力で、一生懸命丁寧に演じている。
 ホフマン役のときはかなりテンパっていたように見えたけど、ニクラウス役はナチュラルに見えた。

 いいなあ、この子。
 成長を見守りたい。

 ただ、ふたつの役の演じ方自体はそれほど差異が感じられなかったし、ニクラウスはともかく、ホフマンはどーゆー人なのかわたしにはあまり伝わってこなかった。
 あと、どちらの役も大人の男には見えなかったが……もともと少年の役なのかもしれないから、いいのか。(原作とか設定とか知らないっす)

 
 もりえくんは、ほんとスタイル美しいよなー。
 悪魔役のときに、それを痛感した。
 でも、ホフマン役の方が好き。なにがうまい人だとか、とくに思ったことはないんだが、ほっこりあたたかくなるよーな演技をする。
 あー、アイシテルんだなあ、と感じられるときが、ふっとやってくるので油断がならない(笑)。いつも同じテンションならこっちも構えられるけど、ときどきなんかツボにハマるから(笑)。
 こーゆー制約だらけの作品より、もっと現代的ででろでろに甘いラヴ・ストーリーが観たいなー。
 あ、もりえくんは「いい人」役で。白い役がハマる持ち味の人だと思う。

 あとは……お化粧がんばってくれ……。

 あ、でもスカステの『ミル!シル!のえる』のもりえくんは、美人さんでした。舞台でもあれくらいきれいなら……あうう。

 
 マギーは悪魔がいちばん。
 恋敵役のときはまだいいんだけど、それ以外のいろーんな役をやっているときは、いまいち空気読んでないというか、悪目立ち気味というか。あー、そもそもそういう役だったのかなぁ。でも同じ役を青葉みちるちゃんがやっているときは、そんな役には感じなかったしなぁ。
 でも、その微妙に浮いてる感が好きだったりする(どっちだよヲイ・笑)。あー、マギー見た〜〜、ってキモチになるから。
 悪魔はもっとすごいことになるかと思っていたけど、わりにふつうで、そっちにびっくり。ホフマン食っちゃうくらい、やりすぎてくれてもよかったんだけど。ちゃんとホフマンが、もりえが主役だった。

 
 ねねちゃんはほんと、かわいかったっす。
 初見時はAバージョンだったんで、彼女の役はオランピアだけだったんだけど、もりえくん楽に見たときは、ヒロイン3役全部ひとりでやってたんで、さあ大変。
 ……みりおくん、もりえくんのためのWSというよりは、ねねちゃんを鍛えるためのWSだった印象。そんな急激に育てなきゃいかんのか?? 劇団のやることは、よくわからん……。
 がんばれ、ねねちゃん。あでやかで華やかな、大輪の華。見るたびに輝きと美貌が増している気がして、たのしみっす。

 
 青葉みちるちゃんが、ほんとうまかった。
 初見時は悪の華、ジュリエッタ役。やー、ヒロイン3人目にして、ほんとに歌のうまい人が現れて、どれだけほっとしたか(笑)。
 脇に回ったもりえくん主演時も、うまくてきれいで、いい仕事してました。

 
 悪魔の手下役、物言わぬダンサーふたり、流輝一斗くんと麗百愛ちゃんが麗しかったっす。
 百愛ちゃんはほんと、踊っているときは絶世の美少女だなー。『ハロダン』のときより、お化粧もうまくなっていたと思う。

 
 みりおくん主演版を観たときに、「落ち着きの悪いキャスティングだな」と思ったところが全部、もりえくん主演版で解決していた。
 ホフマン@もりえ、悪魔@マギー、ニクラウス@みりお、ヒロイン@ねねちゃん(わたしはヒロイン3役とも同一人物が演じるのが正しいと思う、この作品)というのが、やっぱベストだと思った。技術だけでなく、持ち味も含め。

 そして、勉強とか冒険とかいうならば、もりえ主演版の悪魔役を、みりおくんで見たかったよ。
 ニクラウスや女神は、今までのみりおくんで、なんとかなる。歌や台詞などの技術的な面の勉強が主、というだけ。
 いっそ引き出しにない、持ち味と逆の役をさせてみてほしかった。
 

 出演者はがんばっていたし、もりえくんの楽では挨拶でもらい泣きもした。
 退団者も組替え者も、これからもがんばれ、しあわせになれ。……と、心から祈るし、月組若手くんたちの未来にもエールを送る。

 が、「作品」には疑問だらけだ。
 「お勉強」が目的のWSだということは、わかるけど。それにしても。
 若手WSで役替わり数パターンありと一見意欲的に見えるが、何役も務めるのはメインの人たちだけで、脇の下級生はモブばかり。足りていないひよっこたちにまで全員になにかしら見せ場を作ってあげる、バウでの谷せんせらしくない作劇。
 なんでこんなことになってるんだろう?


 勉強が必要なことは、わかっている。
 誰だって最初から読み書きが出来るワケじゃない。

 小学校の頃はもちろん、「あいうえお」から勉強させられたさ。や、たしか幼稚園でひらがなの読み書きその他の基本の基本勉強は終わっているはずだけど、わたしの通った小学校では、1年生で「あいうえお」から再スタートだった。なんでかは知らん。

 そうやって勉強するのが当然なのはわかっている。
 でも。

 わたしには、「かきとりれんしゅう あいうえお」という、ひらがなのテキストブック見せられても、「あ あ あ あ あ」「い い い い い」って書いてあるだけなので、たのしめない。
 最初のページのひらがなはすごーくヘタだけど、最後のページはそれなりにうまくなっている……としても、それはひらがな50音でしかないわけで。
 必要なことも、努力もわかる。でもこれ、ただの50音書き取りブックでしかないわけで。

 読んでも、たのしくない。

 もっともコレが、我が子の書いた「あ い う え お」だったら、それだけで愛しくてうれしくて、何度眺めてもあきないかな。

 じゃあ、「かきとりれんしゅう あいうえお」を丸1冊眺めて、そこに意義も喜びも快感もカタルシスも、なにも感じられなかったのは、わたしに愛が足りないってことだろう。

 ただ、つまらなかった。
 小説を読むつもりでページをめくっちゃったもんだから、つたない字で「あ あ あ あ あ」「い い い い い」って書いてあるだけだから、びっくりしちゃったんだ。
 や、つたないことはわかっていたの。字を書きはじめたばかりの子が書いたものだって知っていたし。
 字がうまくないのは想定内。ただ、「あいうえお」ではなく、「小説」をテキストにして、文字の練習をしていると思っていたの。
 字が汚くて読みにくいとしても、小説だからたのしむことはできるかな、って。

 そしたら、まったくちがってた。

 あうー。

 すごく、こまっちゃったよ。
 「字がうまくない」ことと、「あいうえお」しか書いてないことは別問題だもん。
 「字がうまくない」ならせめて、写している文章は「おもしろい小説」にしてくれよ。

 だってこの「かきとりれんしゅう あいうえお」を眺めるには、4500円必要なんだよ?

 や、どーせあたしはプロパー払ってないけど、それにしてもびっくりしたのよ、「内容」に。

 繰り返すが、字が下手なのはいいのよ。まだ書きはじめたばかりの子だって知ってるから。それはもう納得の上でその子が書く文字が見たかったんだから。
 なんで「あいうえお」なの? 字が下手ならせめて、内容をおもしろいモノにしてよぅ。しくしくしく。

 でさ、こまったことにこの「かきとりれんしゅう あいうえお」は上巻だったの。下巻があるのよ!!

 どうしよう。
 「あ あ あ あ あ」「い い い い い」をもう1冊読むの? ちなみに定価は4500円。

 全10巻、上下巻×5タイトルのシリーズものなのよ。
 わたし、全巻読むつもり満々でまず1巻を手に取ったんだけど……。

 途方に暮れました。

 小説が読みたい……。
 50音じゃ、つまんない……。

 下巻読むの、やめようかな……。
 2巻はとばして、3巻を読むことにしようか。3巻は別の話の上巻だから、「かきとりれんしゅう あいうえお」じゃないし。たぶん、小説のはずだし。同じぐらい下手な字だとしても、そっちの方が絶対たのしめる。

 わたしに愛が足りないのがいけないんだわ。
 たとえ「かきとりれんしゅう あいうえお」でも感動できるほど、字を書いた子を愛していればよかったんだ。
 下巻を書いた子のこともそれくらい愛していれば、なんの問題もないのに……。

 内容のない文字の羅列をたのしめるほど、わたし、愛してない……。
 うおお、敗北感。

 
 それにしても、どうして1巻目からこんなことになってるんだろう?
 おもしろい小説だったら、多少の字の下手さなんか気にならないのに。
 それに、本当のところ、あの子に字の練習をさせたいわけじゃないんでしょう? 「本の読み方」「小説の愉しみ方」とかをおぼえるためにも、書き取りをさせるはずだったんでしょう?
 なんで1巻と2巻は50音の書き取りなんだろう。3巻以降は別の子が書き取りをするんで、1巻と2巻の子は50音しかやらせてもらってないぞ?

 わけわかんねえや。

 
 ほんと、なにがどうというより、困った。
 コレ見せられてもわたし、こまる……。

 
 ……とゆーのが、『ホフマン物語』初見の感想です。


 昨日、もりえバウ楽を観たあと、梅田に出てチェリさんとお茶をしていた。
 や、『どうぶつの森』の通信をするためだったりするんだけどね。(いい大人がわざわざ会う理由?!)
 そのうち雪大劇Wヘッダ後のnanaタンも合流して。
 アルガン様ステキ(笑)とか、『ベルばら』のオスカルは誰だとか、他愛ない話をしていた。
 さんざん喋って笑って、えーと次会うのいつになる? てなことになって。
 次のわたしの観劇予定はもちろん中日初日だが、みんなは名古屋まで初日だからと行かないよね、んじゃその次は宙初日だな。
 今回わたしはすでに宙初日チケットは購入済ですよ。いつもいきあたりばったりな身としてはめずらしいっす。つか、中日初日チケットまだ持ってないんですけど。なんでこーいきあたりばったりなのか。中日初日は早めに行ってサバキ待ち予定っす。

 別れ際の台詞は、「じゃ、宙初日ね」……お会いしましょう、かの夢の地で。

 来る未来を、無邪気にたのしみにしていた。

 それがほんと、昨日のこと。みんなでわいわい話してた。
 それが。

>宝塚大劇場 宙組公演における主演娘役 陽月 華の休演について(2008/01/30)
> 宙組主演娘役の陽月 華は、宝塚大劇場 宙組公演『黎明の風−侍ジェントルマン 白洲次郎の挑戦−』『Passion 愛の旅』に出演を予定致しておりましたが、本公演の稽古中に左足首を骨折致しましたため、休演させて頂くことになりました。
 

 うわわわああん、ウメちゃん!!
 ケガもカラダも心配だが、ココロも心配だ。かなしいんだろうな、つらいんだろうな、と、勝手にオロオロする。

 無邪気にたのしみにしていた、宙組公演。
 休演するウメちゃんも、それを乗り越えて公演をする宙組のみんなも、すっごく大変な思いをしているんだろう。
 なんかわたしは「タカラヅカが観られる」って、次々と「新しい夢」が与えられるって、「あたりまえ」に思っていたなあ。
 生身のジェンヌたちががんばって、作り上げている世界なんだよね。や、あたりまえのことなんだけど、その「あたりまえ」の贅沢さに改めて気付かされたような。

 みんなどうか身も心もすこやかに、舞台を作り上げてくださいまし。
 ウメちゃんはゆっくり養生してください。また舞台で、元気なウメちゃんに会いたいから。

 
 なんかオロオロでしょぼんだっただけに、しいちゃんから公演挨拶状(てゆーの?「公演中はありがとうございました」って書かれたポストカード。お茶会参加したから送られてくるヤツ)が届いてて、その大きな笑顔に救われた。
 あああ、しいちゃ〜〜ん。でもって『フェット・アンペリアル』のしいウメ思い出してホロホロしたり。(落ち着け)

 宙初日、客席からいっぱい拍手するぞぉ。キモチで応援するしかできないけど、精一杯エールを送る。


 てゆーか、「メドゥーサの鏡」萌え。

 ショー作品のいいところって、「どこかひとつだけでもツボな場面があれば、ソレだけで通える」ことにある……よな?

 雪組公演『ミロワール』の中の1場面。

 初見では、どーゆーストーリーなのかさーーっぱりわかりませんでした。
 予備知識ナシだし、場面タイトルすら知らないし。

 つーことで以下、初見時の大変まちがった、アホウな感想。

 
 突然現れた、黒尽くめヲヅキ!!

 うきゃ〜〜っ、かっこいいっ、ステキステキステキ!!
 つかヲヅキ、どさくさにまぎれて銀橋渡ってる?!

 ヲヅキ、そらくん、しゅうくんって、ナニ? なんなの、その濃い面子。

 てゆーかわたし、そらくんがマミさんに見えます……きれーだー。

 ヲヅキに気を取られていたので、水先輩登場見逃しました……。
 拍手がすげーから視線を真ん中へ戻したら、そこにマトリックスな水しぇんがいた……うわわ、こちらもまたかっこいー。

 なになに、テイスト同じ、つーことは、みんなお仲間?

 ……はい、ここですでに認識まちがってます。
 ブラック戦隊、隊長・水先輩! とか、思っちゃったもんよ……。

 だから物語が、まったく理解不能に(笑)。

 本舞台にわらわらスカート仕様学ラン(ちがいます)の人たちが現れて。
 不穏な雰囲気だがなんだろう? と思っていたら、みんな次々と「ぴきっ」と固まっていくし。

 水先輩が人々を石にしてしまっていることだけはわかる。が、水先輩と人々の関係性がわからない。どーやらお友だちではないらしい。(気づくの遅っ)
 敵っぽいけど、敵ならぴしぱし石にしてけばいいじゃん。水先輩無敵。かっこいー。
 なのになんでくるくる苦悩してるんだろう?

 最初に出てきたヲヅキたち3人は仲間なのかなとか、いつまでも「ブラック戦隊、隊長・水先輩!」という冒頭の思い込みにとらわれ、わけがわからない。

 みんな石になっちゃって、最後に残ったのはヲヅキ。

 え?
 思わず、誰が登場するんだろう? と、思った。
 だって、ヲヅキだよ? ヲヅキが水くんと対峙するわけないじゃん?
 今までの彼の扱いからしても、トップスター様の敵役なんてもんは……えええ、なんで誰も出てこないの?
 ヲヅキは前座の下っ端で、ボスとしてゆみことか出てくるんぢゃないの?!

 に、にばんて?
 この場面限定だけど、ヲヅキさん2番手ですか?!

 どーやらヲヅキも敵らしい、とわかった途端、この事態だ。気がつけば舞台に水くんとヲヅキふたりっきり。(石ならいっぱいいます)

 なんか戦ってるー。
 かかかかかっこいいっ。

 ヲヅキがかっこいいよちょっとおぉー。
 あの体格、あの顔。
 彼が「敵」であることで、それに対峙する水くんもさらにシャープに美しく見える。
 相乗効果。
 いいな、このふたり。

 と、すげーよろこんでるのに、ヲヅキ氏もあっちゅー間に石に。
 ……なんか、一騎打ち短くなかったっすか? こんなもんですか? こんなもんだよな。

 しかしストーリーはまったくわからん。
 水先輩はなんかしら苦悩してらっさるし。

 関係性がわからないから、さらに空気読めない女@となみの登場に混乱する。

 や、だって、明らかに彼女だけ雰囲気チガウし!
 今までのハードボイルドな黒黒世界に、ぱっと咲くパステル・ピンクの花……。

 あのー、今ここ戦場なんですけど、すごーくお気楽な人がやってきましたよ。

 つか、ヲヅキをハンガーにしたっっ。

 石になったヲヅキに、水先輩のコートを「るんっ♪」って感じに引っかけてしまうとなみ嬢……す、すげえ。
 水先輩は彼女のぴんくおーらにほだされたようだが、それでもやっぱ雰囲気ハードボイルドだし、苦悩引きずってるし。

 この異世界女、どーするんだ?

 と、思ってたら、となみちゃんも石になった。
 水先輩のサングラスをはずそうとした、まぬけなポーズで。

 ハードボイルドな敵も、空気読めないお気楽美女も、等しく石になる。
 そして水くんは突然にやりと笑い、終了。

 
 どーゆー話だったんだ?

 …………(思考中)。
 …………(思考中)。

 そうか。

 苦悩してるふりで、じつは心底ブラックな超人水先輩の物語だったんだ!!

 石になんかしたくないんだ〜〜、というポーズを取りながら、実は石にするのぜんぜんOKだったんだ。
 「苦悩してると思った? 嘘だよーん」と笑って終わるんだ。いやーん先輩、ブラック〜〜。ステキ〜〜。

 
 ちがいます。

 
 終わったあとに、「黒尽くめのヲヅキと水くんが戦う場面が格好良かった」とわたしが言うと、誰だったかがさらりと「ああ、『メドゥーサ』ね」と返してくれた。

 そんなタイトルだったんだー。てゆーか水くんアレ、メドゥーサだったんだ。
 メドゥーサといえば目を見ると石になるってアレだよな。あー、なるほどぉ。

 …………(思考中)。
 …………(思考中)。

 なんかわたし、ハゲシクまちがった見方してなかったか?

 
 つーことで、「物語」を理解したのは2回目観劇時。

 「苦悩してると思った? 嘘だよーん」と笑って終わる、ブラック水先輩……の、物語ぢゃないっ。

 
 最後のアレ、自殺してんじゃん。

 目を見れば石になる……それがわかっていて、鏡を見る、つーのは。
 初見は鏡を見落としていた。水くんがこっち向いて凄惨な笑いを浮かべるところしか見てなかった。

 己れの意志とは無関係に、人々を石に変えてしまうメドゥーサ。
 それゆえに永遠の孤独のなかにいる男。
 敵ですら、彼と同じ世界にはいてくれない。

 そんなメドゥーサの前に現れた女。
 孤独の底にいたメドゥーサに屈託なく笑いかけ、愛を告げる。

「愛しているから、素顔を見せて」

 と、某クリスティーヌのように女は訴える。
 エリックなら顔を見せても逃げられるだけで済むけど、メドゥーサはマジやばいから。石になっちゃうから。でも、自分を化け物だと告白することはできない。

「ダメダメ、愛していても素顔は見せられないよベイビー」
「やーん、いぢわるっ。……ええいっ、隙アリ!!」

 いちゃいちゃエンドレスの最中、恋人はメドゥーサのサングラスを取ってしまった。
 開けてはならない玉手箱は開けられるし、のぞいてはいけない機織り部屋はのぞかれてしまうもんなんだ。

 あわれ恋人は冷たい石に。

 慟哭するメドゥーサは、絶望の中鏡を見つける。
 そこに破滅という名の救いを見出し、彼は自らの呪われた宿命に幕を下ろす。

 ……て、話だよねコレ?

 そーいえばコレ、『ミロワール』って作品じゃん。忘れてた。

 鏡だ鏡、鏡がキーとなったショーだった。メドゥーサといえば鏡じゃん。ねえ?

 いやあ、清々しいまでに、まちがってましたなあ。はっはっは。

 そののち『JURIのどんだけGOGO5!?』に行き、樹里ちゃんも、「メドゥーサの鏡」の物語をまーったく理解していないことを知り、胸を撫で下ろしました。
 初見で見当違いのこと思うの、わたしだけぢゃないや! よかったー。
 「鏡を見て自殺する」メドゥーサに対し、「髪の毛セットしよーとしてうっかり鏡見たら、石になってもーたりして大変やん」みたいなことを言って、豪快に笑っていた樹里ちゃん、ダイスキだ(笑)。
 そして、あまりにも理解されていないことに対し、一瞬鼻白みながらも、「そうですよね、大変ですよね」と必死になって話を合わせる水しぇんもダイスキだ(笑)。

 
 起承転結アリ、ひとつの物語としてたのしめ、さらに登場人物全部かっこいいこの場面がダイスキだ。
 苦悩する水くんが好き。黒いヲヅキが好き。清浄な光を放つとなみちゃんが好き。それから「ひょっとしてヲヅキをもあやつる女ボス?」と思わせるハードにかっこいいいづるんも好きだー(笑)。

 や、他の場面もいっぱい好きなとこあるし。
 『ミロワール』はたのしいわー。


 子どものころ「タカラヅカ」を最初に観たとき、感動したことのひとつに、「流れが途切れない」ことがあった。

 それまで観たことのあるお芝居とかは大抵、ひとつの場面が終わると次の場面に行くために待たされたもの。
 学校で問答無用に見せられる「児童向けのお芝居」とか、おばーちゃんに連れられていく時代劇のお芝居とか。市民ホールに毎年やって来る「よい子のためのファミリー・ミュージカル」とか。児童劇団?のお芝居とか。
 場面が変わるたびにカーテンが一瞬閉まったり、真っ暗になったり。
 カーテンの向こう、暗闇の向こうでは、大きな音がしていて「ああ、セットを移動させたりしているんだな」と、子どもにも察せられた。
 つか、待たされるのがあたりまえだと思っていた。

 もしくは1幕もので舞台装置には一切変化ナシ。船の上だとしても、島に着いたあとだとしても同じセットで、役者がここはどこで置いてあるモノがなんなのか、演技や台詞で教えていた。

 そーゆーものしか知らなかったから。

 タカラヅカってすごいなあ、どんどん場面が変わる。
 まず、それだけのことに感動した。ストーリーとか演技とか役者とか以前の話。
 ただもお、次々変わっていく世界に口ぽかーん。

 まるで、手品みたいだー。
 マジシャンがステッキを振ったら花が出るとか、そーゆーイメージ。
 次々となにか出てくる。「待つ」ということをしなくていい。

 や、カーテンいったい何枚あるんだろう? ……とか、現実的なことに思いを馳せたりしていたが(笑)。

 ちなみに、植爺作品だって感動したさ。
 本舞台→カーテン前→本舞台という流れは、今まで知らなかったんだもん。カーテンが降りたのに、まだお芝居続いてる! すごーい! カーテン開いたら別の場面になってる! すごーい!

 ……お安い子どもですな。そんなことで感動って。

 
 とまあ、そんなとこに原点があるもんだから。

 三つ子の魂ってことで、わたしはとにかく「暗転」がキライ(笑)。
 オギー、正塚、小池なんかほんと暗転使わないしな。キムシンも暗転率は低い。好き作家の条件には、暗転を使わない人、とゆーのがある(ただし植爺除く・笑)。

 小柳タン作品とか、暗転の多さにむきーっとなった感想を、ここで書いていたりもしている。(忘れられない、芝居の間に暗転がある、というより、暗転の合間に芝居をしている駄作『アメリカン・パイ』……)

 演出としての暗転はアリなんだけどね。たとえば主役の絶望感を表すためにあえて真っ暗にし、しばらく経ってから別の場面に移る、とか。
 なにか表現するためならいいの。
 ただの「舞台転換」で暗転されると、作品の評価が下がる。……わたし的に。
 
 芝居はそれでも、舞台セットを全取り替えとかしなきゃいけなかったり制約があるから仕方ないと思ってもいるんだけど、ショーで暗転多用は「作者の手抜き?」と思う。
 創意工夫でなくすことができるのに、それをしないってことだから。

 ショーの本舞台のセット転換の間、保たせる方法なんかいくらでもある。
 暗転でもカーテンでもいいけど本舞台を見えなくして、かわりに誰かカーテン前か花道に残しておけばいい。
 芝居なら物語を続けるために台詞とか役とか必要だけど、ショーならてきとーに揺れてるだけでもOKじゃん。
 スタークラスは着替えがある、とかなら、中堅でも下級生でも、5〜6人くらい、花道でポーズつけさせるだけでもいいんだし。
 実際、今までの公演はそうやって乗り切ってきたんだろう、装置転換やスターの着替え。草野作品なら絶対狂言回しが登場するしな。

 いいや、「演出」の暗転だ。場面ごとを区切るためにわざと、全部暗転させているのだ。
 ……としたら、その演出家とは好みが合わない、つーことで終了。
 いくら「演出」で「効果」だとしても、全場面同じ効果しか使わないってどんな演出家だそりゃ。
 
 それにわたし、場面ごとのぶつ切り、って好きじゃないんだ。メリハリはほしいけど、統一感も大切だから。
 バラエティ・ショーだったとしても、ぶつ切りではなく、流れるように、手品のように、次々と展開していって欲しい。

 暗転されると、そこでテンション落ちるんだよ。
 高揚に水を差されるんだよ。

 
 ……あくまでも、わたしは。

 気にならない人は、まったく気にならないんだと思う。
 でもわたしの「演出」の評価ポイントのひとつに、場面から次の場面へどうつなぐか、というのがあるんだわ。安直な暗転は最下位評価。

 つーことで。

 いやあ、初日観たとき驚きました、『ミロワール』

 金ぴかオープニングの直後、ヅカでは、とくにショー作品ではありえないくらいの、長時間暗転。
 ラジオでは何秒喋らないと放送事故になるんだっけ? ヅカでも、演出効果ではなくただの暗転が何秒続いたら進行事故とか、決まりがあったら引っかかってるんじゃあ? つーくらい、無意味に長かった。
 や、繰り返すが芝居ではなくショーだから。しかもオープニングの直後だ。
 オープニングで盛り上がったキモチをぶった切られ、かなりしょぼんなテンションになったのはたしか。
 しかも暗転はこの1回きりではなく、とにかく場面ごとにあったので、わたし的にこの作品の評価は低い(笑)。

 
 初日はとくに長かったのかな、最初の暗転。
 2回目以降は、たしかに正味暗転してはいるけど、「進行事故?」と思うほど長くはなかった……と、思う。
 ショー作品で長い暗転はない、と思い込んでいるから、余計に長く感じただけかな。

 なんにせよ、びっくりした。

 プロローグ直後って……。

 
 とまあ、盛大に引っかかっている部分はあるにしろ。

 今回の雪組公演、わたし的にたのしみなのはキムシンの芝居のみで、ショーにはまったく期待していなかった。
 だから、どんな作品であってもべつにかまわないっちゃかまわなかったんだが。

 意外にたのしくて、得した気分だ。

 暗転さえ気にしなければ、ふつーにたのしいショーだ。わくわくわくっ。

 今回1階でしか観ていないのだけど、友人たち曰く、「2階で観ると、すっごくきれい」なんだそうだ。
 ほほお。2階席にやさしいショーは、いいショーだぞ。あ、でも客席降りあるから、真の意味ではやさしくないな(笑)。

 タカラヅカらしく、美しくて夢を見ることの出来る、たのしい作品だ。
 オーソドックスで目新しいことはないけれど、ソコが良いんだと思う。

 『ラブ・シンフォニー』、『レビュー・オルキス―蘭の星―』とわたしの好みに合わないショー作品が続いてかなしかっただけに、『ミロワール』はおいしくいただきました。はい。


 その昔、友会抽選にて、わたしは雪組だけは運がよかった。けっこー当たるし、これまた良席が来たりする。
 それが、水くんが雪にやって来るなり、わたしの雪組運は消滅した。かわりに、水くんがいなくなった宙組が当たり出した。

 そう。ケロと水くんの出演する公演のチケットは、手に入らない。
 それがわたしの背負うカルマだった。

 愛の深さとチケ運は反比例するのかしら。運命の女神が嫉妬するのかしら。と、真面目に考えたもんさ。

 で、友会で手に入らないもんだから、一般発売でがんばったり、チケット掲示板やオークションで入手すべく努力したりする。

 友会で手に入っていればしなくていい苦労なので、一般発売以降に入手するのは、わたし的に「敗者復活戦」だ。

 友会はただの運頼みだけど、この「敗者復活戦」は努力(使う時間も金も含めて)によって左右できる。
 そーやっていつもぎりぎり綱渡り、いったん敗北したのちに這い上がってくる日々。

 はー。
 そーやって今回もまた、最前列のすみっこチケットを入手しておりました。
 いつもの下手端、みんなの大嫌いなタケノコ席っすよ。タケノコでも最前列ならわたしは好きなんだけど、それでも「キライ」って言う人すげー多い(笑)。

 あたしゃミーハーファンなので、水しぇん含めジェンヌさんたちの顔を間近で見ていられるだけでシアワセなんだもんっ。

 
 つーことで『君を愛してる−Je t’aime−』『ミロワール』で、下手タケノコ1列目にて観劇時、いちばんウケたのは、なんつっても苦悩全開アルセストだ。

 下手袖から登場するアルセスト@かなめ。
「♪ボクはこわいんだ。だから決められない」

 どよどよ〜〜ん。
 く、暗いっ。
 空気が暗いっ。
 この人からなんか出てますよ。

 『ちびまるこちゃん』みたいに、顔に縦線入りまくってますよ。つか、背景に黒い人魂が飛んでますよ。

 かなめくん、ハマってるなあ。
 ヘタレ役だとこんなに生き生きするんだ。
 ヘタレてはいけないルドルフ役@『エリザベート』だとあんなにダメダメだったのに、ヘタレ役ならちゃんとできるんだ。

 ルドルフのときは、彼自身なんか迷いとか自信のなさとかがまんま透けて見えて、んな半端な姿を舞台で見せられても観客としては困惑するよなあ、状態だったんだが、今回はチガウ。
 かなめくん自身が、すげーたのしそうだ。リラックスして「アルセスト」であることをたのしんでる。

 どよどよ落ち込みアルセストが、かわいくて。
 役者がほんとにその役を愛し、自然に息づいている姿を見るのは、たのしい。うれしい。

 アルセストがこんなにかわいいのは、かなめくんが前を向いているからだろう。や、アルセストは下を向いてるんだけど(笑)。

 臆病でなにもできない、そんな自分を変えたくても、それすらできない。
 悩むために悩んでいるよーな、どうしようもない泥沼。

 ほぼ同じ席に2回坐って観劇したんだけど、1回はnanaタンと一緒で。
 ふたりしてこのどよどよーんかなめくんに大ウケしたなー(笑)。

 でもってさらにステキなのは。
 顔に縦線、背景にも縦線と人魂背負っているアルセストが、
「悩むだけなんてつらいなあ」
 なーんてことをつぶやいたときに。

 上手から、フィラント@キムが登場する。

「♪悩むことはナっニっも、ない〜〜っ!!」

 その対比。コントラスト。
 キムと一緒に、太陽がぺかーっと照りつける。

 うっ・わー……。

 雨雲を一気に吹っ飛ばす太陽。
 晴天。
 雲ひとつない青空の、アホっぽさ。

 かなめくんの生き生きしたヘタレっぷりと、キムの力強いお気楽さ。

 ああもお、こいつら好きだ。
 なんかもお、いとしくてわくわくして、涙が出る。

 この物語のやさしさ、あまさ、あたたかさ。
 ひとりずつのキャラクタの輝き。

 それを間近で味わって、幸福感でいっぱいだった。

 ショー『ミロワール』ではキムかなめはえんえん2個イチで使われるので(ワンパターン過ぎ、中村A)下手はまさに、かなめ席。
 かなめくん登場率高し。

 うおお、なんて美しいんだ凰稀かなめ。お肌もつるつるっすよ。若いっていいなあ。

 
 あと、下手端のたのしさは、なんつってもヲヅキ、ヲヅキ。
 芝居で本舞台のハマコ氏についうっかり注目していると、真横にヲヅキがいてびびる。

 やー、気分的に真横ですから。下手花道。
 クレアント@ヲヅキが、アンジェリック@かおりちゃんのおなかに耳をあてている、あの場面。

 うおお、ヲヅキだヲヅキだ。うひょー、オトコマエ〜〜。センターパーツだよ、若作り〜〜(笑)。

 わたしはヲヅキ氏の「温度」や「厚み」が好き。
 体格だけでなく、その演技から感じるの。

 そのヲヅキが、全霊をあげて妻を愛しているのですよ。ソレが間近ですよ。
 うわーん、どきどきするぅ。

 ヲヅキはショーでも油断すると、登場する。

 「メドゥーサの鏡」にて、いきなり下手花道から現れるんだもん、彼。
 それが黒尽くめでオールバックでニヒルでクールなんだってば。

 あまりの色男ぶりに、息が止まります。ぜえはあ。今回下手端大当たりだニャ。

 
 水しぇん的にはあまり下手端は関係なくて残念なんだが、芝居でアルガン様@ゆみこがマルキーズ@となみちゃんの誕生パーティに乱入して来たのちから「サーカス魂」の歌の途中まで、ジョルジュ@水、フィラント、アルセストの3人が下手花道でずーーっとなにかしらもつれてるのね。
 歌のボリュームが大きいため、彼らがナニいってんのか聞き取れないんだけど、たしかになにか言いながらじたばたしてるのよ、ぼっちゃんトリオったら(笑)。
 それがもー、かわいくてかわいくて。
 「サーカス魂」そっちのけで、花道ガン見しちゃったわ。

 でもって水くんはほんとマメに目線くれる人なので。
 ショーでは最初の銀橋で目線と笑顔(あ、目があった、と思った瞬間「にこっ」とヤラレる)をくらい、一発で撃沈。

 や、最初だよ、これからはじまるんだよ。
 なのにこんなとこで「ぷしゅ〜〜」ってアタマから煙出しちゃったら、もう保たないよ、最後まで。アタマもカラダも、なによりハァトが。ヲトメゴコロがズッキュンですよ。ぜえはあ。

 んで、席が端っこゆえにメドゥーサ様のスタンバイ姿もガン見だ(笑)。
 銀橋中央でパフォーマンスする大男3人組の後ろで、水先輩が地道にスタンバッていらっしゃいます(笑)。

 
 あとは白雪姫@ひろみくんのかわいらしさを堪能……。うわー、すごいハイヒール履いてる〜〜。(ドレスの中が微妙にのぞけます)
 かわりに、シンデレラ@かなめくんは遠い〜〜(笑)。

 
 でもって雪組イケメン集団の破壊力を、身を持って知る。

 つか、どこ見ていいかわかんないよ。中詰めとかフィナーレとか。
 銀橋に出て来られたら。

 つか、そらくんの美貌はナニモノ?!

 あまりに美しくて、目の前に立たれても正視できず、目を泳がしちゃうんだけど、そしたら今度はラギくんと目があったりして、これまたその美貌にうろたえて、あわてて目をそらす。
 だってだって、美しすぎてこまるんだよお。どこ見ればいいの?

 はー。

 あ、ちなみに客席降りはキング席でした。笑顔いっぱいくれるよー。きゃー。

 
 たしかに最端席なんで舞台は見切れるとこがあったり、遠かったりすることもあるんだけどさ。
 やっぱ好きだよタケノコ席。

 これからもがんばる。努力だ根性だ。
 友会に見放されてもカルマを背負っていても、がんばって水くんを間近で見られる席を取るわっっ。

 ……や、ケロと水くんだけ取れないもんだから、「愛が深いと友会ははずれる」というジンクスなのかと思ってたんだけど。

 その後、見事にすこーんとまっつにハマり、わたしのご贔屓はまっつなわけだけど、花組チケットは適度に当たるんだよなー、友会。
 「愛の深さ」ではなく、たんに「水くんチケットは当たらない」ということらしい。
 ……何故。


 フィラント@キム萌え。

 ひさしぶりにキました。
 これほど好みド真中の萌えキャラは、そうそういない。

 『君を愛してる−Je t’aime−』の話っす。

 わたしは攻キャラスキーだ。片想いスキーであり、一方通行とか冷たいとか無神経とか報われないとか、せつない話がダイスキだ。
 なんつーの、異種族恋愛萌え属性つーのがあるんだわ。

 わたしが足りないところばかりの弱いうじうじした人間なので、すべてを持ち合わせた完璧な球体、太陽への憧景は半端じゃなく持っている。
 弱い、平凡な人間たちがうつむいてごちゃごちゃもつれていて、がんじがらめになっているとき、ぺかーっと現れてすべての陰をその光で包んで救ってしまう、圧倒的な太陽。天才。空を飛ぶのがとーぜんだから、地を這うものの気持ちなんかカケラもわかんない、でも翼があるものもないものも、すべて等しく愛している。
 ルフィ@『ワンピース』とか、榎木津@『京極堂シリーズ』とか、そーゆー人。
 わたしにとって……たぶん、ふつーの人にとっての「異種族」。

 フィラントはまさしく、太陽だ。

 あたりまえに完全体であるために、欠けた人間の悩みだとか機微だとかはわからない。だからといって傲っているわけではないし、見下しているわけでもない。彼にはそれが「ニュートラル」なだけで、ただ目に映るすべてを愛している。

 一見おちゃらけているだけに見えるがそうではなく、愛情も気遣いも持っている。だが彼個人があまりに強すぎるために、ふつーの人間には理解しづらい面がある。

 「結婚なんて嫌だぁ」と嘆くジョルジュ@水を「結婚した方がモテるぞ」とナイトクラブへ連れていくのは、善意であり友情である。おもしろがっているのもたしかだが、そこに悪意はない。こうした方がよくなる、に加えて、楽しんでいるだけのこと。
 フィラントにとって「結婚」は大した意味はないのだろう。だからその「大した意味のないこと」でジョルジュがなにを悩んでいるのかわかっていない。
 自分にとって「軽い」ことだから、ジョルジュにも「軽い」励ましをしてみせた。
 だがどうやら、自分とジョルジュでは考え方がチガウらしい。
 ジョルジュが本当に傷つき、悩んでいるのだと気づいたとき、フィラントはもう笑っていない。
 重い、苦い顔をしている。

 愉快な場面の続きだから、軽い行動の続きだから、見逃しがちだけど。
 ジョルジュの心の傷に気づいたフィラントは、この物語の彼で唯一?てくらい、マジな顔をしているってば。

 ここでジョルジュを笑い飛ばすことは簡単だと思う。
 ただのコメディなら、みっともないジョルジュを、軽薄友人が酒の肴にし、女の子たちの肴にし、へらへら笑いものにする。
 ……いくらでもありそうなエピソード、場面じゃん? こっちの方がありがちじゃん? フィラントは軽薄お気楽キャラとして描かれているんだから。
 なのに彼はここで「重い」表情をする。親友の心の傷に、自分も傷つく。
 悩みゆえ、心の傷ゆえにみっともなくなっている友人を笑ったりしない。むしろ共に苦しむ。

 だけど過度に心配したり甘やかしたりもしない。酔っ払って走り去ったジョルジュを、真剣に心配しているくせにあわてて追いかけたりはしない。
 ジョルジュが代金として置いていった時計を取り戻し、支払いは自分がすると言う。
 ここねー、もー、めっちゃ好き。
 お気楽フィラントが「大人の男の顔」をしているの。思慮深い男の顔なの。たぶんこの顔こそが、彼の本質なんだろうなって思わせる、すげーいい男の顔なの。

 お金持ちのジョルジュにとって、高価な持ち物を代金がわりに置いていくことなんて痛くもないんだろうけれど、それでもフィラントはそれをさせないのね。彼を守るのね。
 ジョルジュを傷つけることなく、彼がなにひとつ失うことがないように、自分が身代わりになるのね。
 や、支払いひとつの話だけど、性格って出るよ。それなりに愛着のあるだろう身に付けるものを置いていったジョルジュのために、女たちからさりげなくソレを取り返す仕草。
 そっかぁ、「ジョルジュを守る」ことを、ごくあたりまえにやってのけるんだね、フィラント。

 たぶんあの時計を、フィラントは何事もなかったかのよーに、いつもの笑顔でジョルジュに返すんだわ。ジョルジュは自分の醜態のみに気を取られて、「時計がここにある」→「支払いはどうなった?」とは思い至らない。そのへん、お金に不自由したことないから、鈍感だと思う。フィラントもまた、そんなはした金を親友に要求したりしないから、ただ時計を返し、あの夜のことをネタにして笑う、程度で終わるんだと思う。
 あああ、かっこいいなあ、フィラント。
 小さなカラダに、とびきりの度量の大きさ。(と、陽気な迷惑さ・笑)

 
 いつも満ち足りている彼は、自分がふつーの人とちがっていることも理解していない。てゆーか、理解する気もない。
 「愛について」というレオン神父@ハマコの、ストレートつーかシンプルっつーか、わざわざ言わなくてもそんなこと誰だって知ってるっつの、レベルのことを語る歌を聴いて、本気で感動している。
 自分がその歌のいうところの「愛」から、もっとも遠いところにいる……そしてある意味、具現しているのだということを、カケラも理解せずに。

 完全体であることにこだわるのは、欠けている人間だ。
 それを持ち得ないからこそ、そのことに敏感になる。
 フィラントの鈍感さは、彼が生まれつき完全体であるからだろう。これ以上成長しない、する必要もない。
 そのままで彼は、のんきにお気楽に生きていく。

 だからこそ、彼を本気で愛した者は、地獄だと思う。

 「彼のいちばん」には、なれないから。

 たとえフィラントがこの先「恋愛結婚」をしたとしても、その妻も、ショーガールの女の子たちも、男友だちも、きっと彼の中では「同じ比重」だ。区別はしても、本当の意味で差別はない。

 そのくせ、ヤツは「恋愛」しそうでさらにはた迷惑だ。
 自分を「ふつー」だと思っていて、レオン神父の歌で泣いちゃうよーな「ふつーの愛情感覚」を持っているから。

 「恋愛」はしても、恋人を至上の者とはしないんだろうな。表面ではそう思っていても、根っこでは他のすべての人への愛情と変わらない濃度でしかない。

 フィラントの恋人は、きっと一生満たされない。
 満ち足りた男を愛したがゆえに、満たされることがないんだ。

 どんなにやさしくされても、愛を語られても、一生片想いだ。

 ひとは欠けているからこそ、誰かを求める。愛する。
 ひとりで完全体なら、他者なんて必要ない。

 フィラントはその太陽たる光で、不特定多数の人々をしあわせにするだろうけれど、ただひとり、彼のパートナーだけはしあわせにできない。
 そして彼には、彼のパートナーが何故しあわせになれないのか、むしろ彼ゆえに不幸なのだということが、理解できない。

 ……とゆーよーなことまで、だだだーっと想像できちゃうので、すげー萌えなんです。
 
 わたしは攻キャラスキーで、片想いスキーで、一方通行とか冷たいとか無神経とか報われないとか、せつない話がダイスキだから。

 フィラントの太陽っぷりが、とことん萌えっす。
 彼がこれから誰を愛し、それゆえにどれほど鬼畜な結果になるか、考えるだけでハァハァします。

 ……ジョルジュとうっかりデキあがったりしねーかなー。ジョルジュは悲しいほど常識人だから、すっげーつらいぞー。わくわくっ。(M属性な水先輩は萌えですよ、はい)


 顔が好みである、というのは、ほんとーに大きなことなんだと思う。
 新人公演『君を愛してる』観劇後、仲間たちと感想を話しているとき、なんか話が通じないことがあった。
 たんにわたしが、ちゃんと舞台を見ていないんだ。「ここはこうだったでしょ?」と言われても、「見てないからわかんない」とゆーことになる。

 んじゃ、ナニ見てたかって。

 凰華れのくんの顔を見ていた。

 笑えるくらい、仲間と話が合わなくなる場面には、れのくんがいるんだわ。いろんなところを見たり主役を注目したり、つーことからはずれて、ただぼーっとれのくんを見ていた(笑)。

 れのくんは芸術家チーム。どんなキャラなのかわからない程度の役。
 だけどあちこちにいるんだわ。もともと芸術家たちいろんなとこに出てるし。
 つーことで、彼をぼーっと眺めている時間も多かった模様。好きだわー、あの顔。

 
 それともうひとり、実はすっげー好きな顔の子がいる。
 この子のことは、舞台で見つけたわけじゃない。普段のわたしとは逆。素顔に惚れこんだ。

 雪組の今年のスカフェ、梓晴輝くん……あずりん。
 彼の顔が、好きだっ。

 やー、スカフェが交代したときから「あれ?」とは思っていたのよ。なんかこの顔好きだぞ、と。
 そして月日が流れ、ニュースで見かけるたびに好感が募っていく。いつ見てもこの顔はイイと思うぞ。キャスターが雪組の週は「アタリ」とか思っちゃうぞ。

 雪組スカフェは、番組内で「素顔(つまり、双方女の子のまま)で、新郎新婦として結婚式を挙げる」という、ありえないくらいイタい企画をさせられたりしていたんだが、それすらOK。あずりんが演じる素顔の新郎はトキメキでした(笑)。

 とまあ、ひそかに素顔萌えしていたので、『シルバー・ローズ・クロニクル』とかでもナニ気にチェック入れてました。でも正直今んとこ、顔が好みだということ以外、わかっていません。
 下手ではない。男役としてのたたずまいも、演技も。でも、うまいかとゆーと、それほどでもないっちゅーか、そもそもそれほど役を与えられていないっちゅーか。

 だから結局は、顔だ。
 顔が好き。
 見ているだけでしあわせ。
 だから舞台で探す。顔を眺める。うっとり。

 ……そこで止まってるんだよなー。

 れのくんにしろ、あずりんにしろ、好みの顔の男の子たちがこれからもっと舞台での露出が増えてくれたらいいのにな。

 ……このふたりの共通項は、だと思いますよ、たぶん……。

 横顔がわたし的にポイント高いので、横顔はもちろん、ナナメ向いたときとかの鼻筋のラインとか、すげー好みっす(笑)。


 いまごろこっそりと新人公演『君を愛してる』の話、その3。

 
 セリメーヌ@せーこちゃん。や、彼女単体より、彼女の家族ドビルバン@しゅうくん、エレーヌ@かおりちゃんとセットで語るべきだろう。
 セリメーヌ個人のキャラより、「この親にして」という、家族のカラーがとても強くて(笑)。
 新公演出で感心したのは、このドビルバン一家。よりコメディチックにより押し出しよく脚色してある。
 「愛がいちばん」で「娘の幸せ」をいちばんに考えていることは同じなんだけど、しゅうくんとかおりちゃん夫婦はさらに、ジョルジュとセリメーヌの結婚を強く願っている。多少強引でもくっつけちゃえ!的というか。や、金目当てなのではなく、そうすることが娘の幸福だと信じているがゆえ。
 自分たちの価値観に盲目的で、それゆえに言動のコメディ度が上がっている。
 セリメーヌもこの両親の娘だから、大柄さもあいまってまっすぐに進んでいく感じ。……ただ、「ジョルジュと結婚するわ」の歌はちょっとイケてなかったよーな。せーこちゃんならもっと聴かせてくれると思っていたっす。あの歌、難しいのかなー。
 かおりちゃんは余裕の役作り、存在感。つかやっぱ華やかだよなー。すげえや。長の挨拶も立派だった。
 しゅうくんもこんな役ができる人だったんだねー。こうやってひとつずつ芸幅を広げていってほしいな。

 ドビルバン一家の活躍は、本公では夫婦漫才……ぢゃねえや、デュエットのある1シーンのみなんだけど、よりコメディリリーフになっている新公では、クライマックスとなる「貸切公演」の導入部分でも彼らがごちゃごちゃやって笑いを取っている。

 今回さゆちゃんがピエロ役だから、ピエロの出番を増やす意味があったのかもしれないけれど、出演者ほぼ全員が銀橋を通ってサーカスへ行くところで、ピエロが銀橋から降りてなんやかやと目立ち、それに反応するドビルバン一家、という図になっていた。

 なんでもないところに笑いを入れて、彼らの存在がコメディなんだとアピールしてあるわけだな。

 悪役アルガンは「実はいい人」ではなく、アニメの美形悪役(主役より派手でオイシイ)だし、主人公ジョルジュはモラトリアムのヘタレ少年だし、アルセストはそれに輪を掛けたお子ちゃまだし、フィラントは牽引役には足りていないし、と、まあ新公らしくいろいろあるわけで。

 よりマンガ的に、コントラストをはっきりつけて、「気弱な少年が勇気を得て大人の階段を一段上る」(一段かよ!)、「華やかでオイシイ美形敵役、信念を持つ悪人」(実はいい人、ではナイ)、「政略結婚上等、貴族万歳〜〜♪なコメディ悪役」(ディズニー的憎めない障害)など、いかにも記号的に、キッチュに盛り上げている。
 演技としては多くの人たちが本役のコピーを真面目にやっているのに、作品全体としては、本公演のコピーにはなってないの。最初から別物の演出がしてある。

 そーだよなあ。
 本役のコピーをすることが上達の初歩で、代替わりした若い新人たちにはそうすることが最良なんだよな。
 でも、本役の演技をただコピーしただけの、おそろらくは劣化コピーになっているだけのものを「作品」として見せられても観客はつらい。

 ならば最初から、劣化コピーだとしてもそのありのままの能力・技術を味として活かし、作品全体を見たときに統一感があるものにすればいいんだ。

 新公演出家は大野せんせ。なるほど、うまいことまとめてるなー。

 
 レオン牧師@コマ。
 重要な役なので、新公主演経験豊富なコマくんがこの役を演じ、舞台を引き締める、という意味で必要なキャスティングだったのでしょう。
 実際、彼はよくやっていたし。

 でもなあ。
 わたしの個人的感想でいくと、コマがハマコの役を演じるのはよくない、と思う。

 てゆーか。
 これ以上コマが、ハマコに似たらどーすんのよ?!

 ただでさえ似てるのに……。外見も芸風もそっち系なのに。
 コマは熱量と粘度を持った大切な若手スター。あさこちゃんとかきりやんとかれおんに似ている美形さんなんだから、もっとこうスマートに育ててほしいっす。
 や、若いウチにいろんな役をするべきだと思うけど、それならハマコ系ではなくクールとか鬼畜とかそっちの色濃い役をやらせてやって。

 と、いらん心配をしてしまうくらいには、ナチュラルにハマコです……うおお。
 今はその、舞台姿があちこちたしかに丸いけど、きっと年齢を重ねるにつれフェイスラインもスタイルも変わってくるだろうから、そのときに芸風や立ち位置がまるきしハマコになっていたらどうしよう、と、余計なことを考えてしまいました。
 
 
 丸いつながりで思い出してナンですが。
 あーたんに怪力キャラをアテたのはダレですか(笑)。
 女の子ふたりを楽々持ち上げる姿に、客席から笑いが起こってたぞ。

 
 上流階級の歌手@剣崎くんも、クドくてきれいで、いい声なのになんともゴツいよなあ……。
 せめて文化祭のときくらい痩せてくれたらなあ。

 
 とまあ、主要キャラの感想はこんなもんで。
 立ち見だったのであんまし脇まで観られなかったんだよぅ。そしてさらに、主要キャラ以外でも「視点固定」されていることがちょくちょくあって、ほんとに視界が狭かったさ……。

 人をおぼえると観劇が加速的にたのしくなるから、もっともっと下級生おぼえたいなー。WSがたのしみだ。

 あれ。
 かおりちゃんとコマは研7? これが新公最後なのか。
 かおりちゃんのヒロイン、どこかでまた観たいんだが……。



 
 いまごろこっそりと新人公演『君を愛してる』の話、その2。
 や、『君愛』の話、わたし的にまだぜんぜん終わってませんから(笑)。
 

 アルガン@せしるは、まずなにをさておいて、美しい。

 なんなのよこの美貌。
 せしるって、どんどんいい男になってね?
 ちょっと前までのガキ臭さが抜けて、美青年となってきてるのが、すげーいい感じ。

 若い役をやると美貌ゆえに青さが前面に出ちゃうけど、こーゆー大人の男を演じると、美しさが前面に出る。

 でもってこのアルガン。温度がある。
 クールではまったくないし、あたたかいというのともチガウ。
 強引で冷徹に見えて、実はアツい。
 怜悧な美貌の奥に、ふつーに温度がある。見える。
 剣は常温でも凶器だけど、熱せられてても凶器だよな。温度ゆえにさらにすぱっと斬られそうでこわい。

 そして、このアルガン。黒い(笑)。
 悪い人に見える。
 本当はいい人、という設定を知って見ても、ふつーに悪い人、歪みを持った人に見える(笑)。
 正しいと信じているからそう言っている、というより、自分がこうしたいから言っている、正しいかどうかは関係ない、みたいな。

 てか、本役と違いすぎ(笑)。

 特に演技がうまいとか思わないんだけど、この黒い持ち味と熱と美貌だけで、「敵役」としての仕事を果たしているのでそれ以上がわかんないや。

 そして、「歌う悪役アルガン様」が、空気読めない痛々しい人、ではなく、ふつーに俺様でかっこいい人、に見えるからステキだ。
 サーカス団に団員引き抜きにやってきたり、パーティに招かれざる客としてやってきたりして、歌っていっても、ふつーにかっこいい。
 いやあ、美貌ってすごいなー。

 本役ゆみこちゃんが「変な人」になるノリノリのソロが、せしるの場合「あ、せしるらしくなった」と思えるあたりが、ふたりの個性の差。

 わたしは本役の不器用なアルガン様ダイスキだけど、新公せしるの「派手な悪役」アルガン様もアリだと思う。
 とてもわかりやすい派手さ、輝きがある。アニメとかに出てくるオイシイ悪役ってこーゆー感じだよな。

 その昔宙組の『ステラマリス』で、すっげー「変な人」だったガイという役が、役者が替わった全国ツアー版では「ふつーの人」になっていたことを思い出す。
 アレと同じくらい別人だー。

 フィラント@香綾しずるくん……ええっと、愛称ガオリくん、でいいのかな。「おとめ」によるとひらがな表記だが、ひらがなだと地の文に沈むのでカナ表記するわ。
 彼を最初に認識したのが、やはり『シルバー・ローズ・クロニクル』。
 スカフェだったらしいが、その、わたしが苦手な人と組んでいたので一緒に彼も目に入らず、記憶にすらなかった。「あのスカフェの子」と言われても、マジでなんのことかわからず首をかしげた。1年間タカラヅカニュースを見ていたはずなのに、彼の顔も名前も、つか存在すら気づいてなかった。
 や、舞台人は舞台の上が勝負ですから。ニュースでの記憶はなくても、舞台でちゃんと彼はわたしの視界に飛び込んできた。
 『銀薔薇』にて、ナニ気にわたしのお気に入りである愛輝ゆまくんとコンビを組んでいた、黒服の男。愛輝くんよりも「男役」度が高かったことをよーっくおぼえている。
 そして、今回の新公。

 うまかった。

 なんというか、すごく丁寧に演じていた。
 作りこんでるの。たぶん、かなり計算してる。カラダにパターンが叩きこまれるくらい、反復練習したんじゃないか?
 主要男役の中では、彼がいちばんうまかったと思う。
 それは天分ゆえ、というよりも、ひたむきさにあるんじゃないかと思った。
 見ていて泣けてくるくらい、彼の努力が見えるのね。ここまで作り上げてくるまでに、どんだけ努力したんだこの子、って感じに。
 精密機械を見るようだった。
 そして人間は機械じゃないから、機械に見えるくらい精密に計算された動きをしようと思ったら、どれくらい練習しなければならないんだろう、とか思うと、たまりませんわ。や、わたしの勝手な思い込みかもしれませんが。
 ごめんよ、これからキミのこともっとちゃんと見るよ!! と、思わせるくらいには、印象的な演技でした。

 ただ、フィラントってのはほんとーに難しい役なんだと思う。
 本役キムの演技を、動きを、全部見事にコピーしているのだけれど、キムにはなれない。持って生まれた輝度のちがいは、どうしようもない。
 フィラントって、出てきただけでぱあぁぁっとそのへんが明るくなるような、お気楽な輝きが必要なんだなー。
 お気楽ソングを歌ったからってお気楽に見えるわけじゃない。輝きと日照角度の広さ。全方向に光が広がる力。……てのは、キムの持ち味だから、ガオリくんがソレを持たないってのは「だって別の人だから」ってだけのこと。無問題。むしろ輝度がここまでチガウのによくやった。
 ……で、輝度が低いまま演じると、フィラントってのはこんなにふつーで、大しておいしくもない役でしかないんだなあ、と思い知る。

 や、わたしを含め仲間たちは、彼が「ゆみこに似てる……」ってことにウケてて、それだけでもポイント上がってるんですが(笑)。顔というか頭のカタチというか(笑)。

 
 アルセスト@凛城きらくんは、92期……って、まだ研2かぁ。抜擢だな。きっとすげー大変だったろうな。よくやった。
 えーと……学年なりの仕事をしていたのではないかと。
 キングが若さゆえの持ち味だけでヘタレ男ジョルジュを演じられたように、アルセストみたいな愛すべきヘタレキャラも、若い子が演じやすい。
 だから、劇団的に期待の若手くんに演じさせるのは、正しい。若さだけである程度なんとかなるもんだから。
 凛城くんがこの役のあと、どんなふうに成長していくのかたのしみだー。

 てことで、続く。


 水くんジョルジュを「へタレ」なんて言って悪かった。
 水ジョルジュはへタレじゃない、乙男なだけだ(笑)。

 新人公演『君を愛してる』のジョルジュ@キングは、正しくヘタレ男だった。
 や、ヘタレが悪いとゆーわけではなく(笑)。

 長い手足をもてあましている風な、なさけない男のコ。
 たぶん、フェンシングは苦手。てゆーか、とにかく側転が苦手なことはわかった。

 初主演だいっぱいいっぱいだ、だけどがんばってやりぬいたぞ、と。
 水くんアテ書きな役だが、キングがやると等身大の役になるんだね。アテ書きと等身大の違いをまざまざと見せつけられました(笑)。
 大学出たてのボクちゃん、パパの会社に縁故就職、学性気分のまま悪友たちと遊んでいる。世間知らずでヘタレだが善良な少年。
 自分の周囲の小さな世界しか知らなかったのが、マルキーズという異世界の住人と知り合うことで世界が広がり、モラトリアムを卒業する。
 ソレはそれでアリかと。

 さて、蓮城まことくんという人。
 もっと下級性のころは、怖いもの知らずの芸風が目立っていたと思う。
 なんつーか、「引くこと」を知らない、攻め込むだけの演技。『エンカレッジ・コンサート』のときなんかもそうだった。なんか鼻息荒いっちゅーか。
 でも若いころはソレでいいんだと思う。多少無鉄砲っていうか、ブレーキの存在忘れているくらいの方が舞台はおもしろい。実際わたしは、最初彼の押し出しの強さ、「前へ出ることがたのしい!」という演技に注目した。……好きだもん、そーゆー芸風。
 でもいい加減ソレしかないのかなー、てなときに『堕天使の涙』新公で「弱さ」を出す演技をして見せた。なんだ、弱弱しい役もできるんじゃん、と思ったら……そっから先は、へタレ一直線。ど、どーしたんだ?

 『ハロー!ダンシング』の精彩のなさが気になった。ヲヅキ休演のため急遽『ノン・ノン・シュガー』に出演することになり、大変だったとは思うけれど。
 今まで男っぽさを作ってきた彼が、『無糖』の役では、男役以前の「女の子」になってしまっているように見えて、首をかしげたさ。いやその、そーゆー情けない役だったんだけどさ。
 そして『エリザベート』でもどーにもくすんだまま……。
 せっかくビジュアルに恵まれているのに、なんかしら弱いっちゅーか後ろ向きな芸風になっちまったなあ、と、じれったく思っていたところだった。

 『シルバー・ローズ・クロニクル』でなんかはじけて、見るからにたのしそーだったので今回の新公は楽しみだった。
 やっぱ舞台に対するアグレッシブさが欲しいから。
 ジョルジュ役は、へタレはヘタレなんだけど、とりあえず「前へ」のベクトルを感じたのでよかったなと。
 初主演でいっぱいいっぱいでそれどころじゃなかったろうけど、それでも「なんとか」しようとしていたよね。
 役が『銀薔薇』のティムとかぶるってゆーか、引出しの中にあるものだけでなんとかなる役だったことが幸いしたとは思うけど。

 相手役のみなこちゃんもまた初ヒロインでテンパッていたっぽいので、若いふたりでよくやったと思う。
 また『エンカレ』のときみたいな不敵さを感じさせてほしーなー。キングに関しては、ヘタレよりそっちの方が好みだわ(笑)。

 
 マルキーズ@みなこちゃんは、本役となみちゃんまんまコピーしていて、おどろいた。
 声まで似てるんですけど……。

 わたしはみなこちゃんの素顔が苦手で、それゆえあまり舞台でも注目していなかった。わたし、苦手な人は視界に入らないから。
 されど。
 前回の『エリザベート』のマデレーネ役からちょっと気になっている。

 黒天使がマデレーネのバスタブを押して来るじゃん? マデレーネはお肌艶々ポーズ(ってなにソレ)しながら運ばれてくるわけだが。
 黒天使の子がなにかドジったのか、バスタブがなにかに引っかかるように、ガックン、となったことがあって。
 そのときのマデレーネ@みなこがステキだった。
 「ナニ?」と舌打ちせんばかりの表情で、黒天使たちを睨め付けた。

 うわ、マデレーネだ!
 ふつー無防備なとこにアクシデントがあったら、素の顔が出るじゃん?
 いきなりガックンとバスタブが揺れて、ナニが起こったかわかんないだろーに、みなこちゃんはマデレーネの仮面をつけたままだった。
 すっげーこわい女王様だったよ、マデレーネ。

 それ以来、なんか「役者」として彼女を見るよーになり。
 『シルバー・ローズ・クロニクル』のヴァージニア役もいい感じだったし、今後たのしみかも? と。
 黒い役が出来る、つーのがいいよな。

 だから今回の初ヒロインも注目していた。……ら、となみコピーでびっくり。
 もっと挑戦的にまったく別の役作りをしてくるかと思った。や、みなこちゃん実力派だから、本役のとなみちゃんとは別の切り口でも役作りできんじゃないかとか、勝手に思っていたのよ。
 芝居に「正しい」も「まちがい」もないし、答えはひとつじゃない。
 本役とはあえてちがった役作りで、新たな可能性を探すのもアリかと。
 そしたら、ふつーにコピーだし。

 そうか、みなこちゃんがうまいから忘れてたけど、下級生抜擢の初ヒロインだっけ。それなら変な冒険せずに、基本に忠実に本役コピーでも不思議はない。
 キングはコピーできず別物になっているだけで(笑)、コピーしきっちゃうみなこちゃんがすごいってことだな。
 スタイルの良さを武器に、どんどん「美女」になってほしい。

 
 主役カップルは、下級生抜擢の初主演同士。無理はさせず、コピーに努めたのは新公演出の大野せんせのGJっつーことで。

 本公演が役者アテ書きで書かれ、それゆえに成り立っているところが多分にあるので、新公で別の人がただ役だの芝居だのをコピーしても、全体としては成り立たなくなる。
 そのあたりのバランス調整を大野せんせが細かくしているな、という印象。ばっさり大きく変えたりはせず、微調整って感じなのがステキ。

 つーことで、続く。


 もしも『君を愛してる−Je t’aime−』の中で、誰でも好きなキャラクタになれるとしたら。

 セリメーヌ@さゆちゃんになりたい。

 アンジェリック@かおりちゃんと迷ったんだけどねー。
 クレアント@ヲヅキとラヴラヴって、うらやましすぎる、そんなのしあわせすぎる。
 でもいきなり妊婦はなぁ。
 やっぱ、恋人→求婚→結婚とフルコース味わいたいじゃん?

 でもってそもそもセリメーヌって、ジョルジュ@水、フィラント@キム、アルセスト@かなめと友だちなの? ふつーにみんな顔見知りってゆーかふつうなら仲良く過ごしてそうだったじゃん?
 それって美味しすぎる。ナニ、紅一点ってヤツ?
 イケメン・トリオはべらせてプリンセス気分味わえるの? うおー、考えただけでヨダレが……っ。

 で、この3人の中で、よりによってアルセストに惚れるわけで。
 愉快だよなー。

 ジョルジュ、フィラント、アルセスト、みんな劣らずイイ男で。
 アルセストがダメダメヘタレの分、他のふたりより落ちるのかもしれないけど、ヘタレなのがかわいいわけだから無問題。
 つか、ヘタレ上等、ヘタレてこそのアルセスト。
 この3人を並べた場合、わたしとしてはアルセストを選ぶことはないので(ジョルジュとフィラントで死ぬほど悩んで結局フィラントにオチてると思う・笑)、余計にアルセストとラヴラヴなセリメーヌになってみたいなーと思う。
 自分とかけ離れているとこがまたヨシ、みたいな。

 セリメーヌになって、アルセストに「アナタから告白してよ」ってもじもじして。
 そんでもって。

 ジョルジュにプロポーズするの(笑)。

 あああ……「私、アナタと結婚するわ」って、水しぇんに言ってみたい。

 水しぇんがドン引きしていよーが関係ない。堂々と「言える」ことにまずときめく。
 んでもって、水くんに抱かれてポーズ決めるのー。うっとりー。そこを通りかかったマルキーズ@となみににらまれるのー。うっとりー。

 ……って、水くんとチガウから、ジョルジュだから!!(笑)

 ここまででも十分オイシイのに。

 なに、あのステキ家族!!

 パパ@ヒロさん、ママン@いづるん、って、すごすぎ。

 わたしは一樹千尋氏のがものすげー好きだ。
 耳に心地よいベルベットな音色。
 彼が余裕ぶっこいた親父喋りで「日本男性は云々」とか語ってると、話の内容以前にその声にうっとり。
 やーん、もっと喋って〜〜。

 対するいづるんが、絵から抜け出たよーな浮世離れしたセレブ妻で。
 年齢不詳なのがイイよね。ママンらしい演技しているからそう見えるけど、黙って立ってたらいづるんとさゆちゃんが親子とか思えないじゃん?
 や、ファンタジーを具現する美女は年を取ってはイカンのだ(笑)。
 男は相応に老けても良いが、女はダメ。いつまでも、時代年代関係なく、若く美しいままでなきゃ。

 この『君愛』というファンタジーを象徴する夫婦だよね、ドビルバン夫妻。
 結婚20年、未だラヴラヴ、愛がすべてだと信じているステキ夫婦。

 目先の欲に飛びついたり貴族だからと連呼したりなんだりしているけれど、そーゆー俗な部分とは別に愛のファンタジーを信じている。具現している。
 俗や濁を背負いながらも、根っこにあるのはバカみたいに純で美しいもの。
 「夫婦は愛し合うモノ」だと、「愛は永遠」だと本気で陶然と歌う彼らだから、クライマックスでセリメーヌとアルセストの結婚を認めてしまうんだ。
 自分たちの思惑とチガウ結果になっても、それが愛ゆえならばと、笑ってシアワセになれてしまうんだ。

 あーもー、好きだなこの夫婦。

 このふたりの娘だから、セリメーヌがあーゆー女の子なんだよなー。
 あの夫婦の愛の誓いソングを、次はかなめくんとさゆちゃんが歌うんだと思うと、すげー愉快なんですが。
 や、歌うよね? 結婚したからには。
 ドビルバン夫妻とアルセスト&セリメーヌ夫婦で、Wで歌って暮らすんだよね?……アルセスト、似合いそうだ……(笑)。

 そんな夫婦生活が想像できるところも含め、セリメーヌになりたい。


 『君を愛してる−Je t’aime−』のいいところのひとつは、登場人物それぞれの視点に、それぞれの物語があること。

 物語とは人間が関わり合うことで成り立っている。多くの人間、多くの人生が交差した物語ほど、視点を変えるおもしろさがある。
 まあ、「キャラが立っている」という一言に集約できるんだけどね(笑)。

 つーことで、今回はアルガン様@ゆみこの視点で考えてみる。
 

 アルガンってさ、ジョルジュのこと、「知らない」よね?(笑)

 大物プロデューサー、アルガン氏。若くして成功した時の人。強引で俺様。
 弱小サーカスを出発点にしたが、今は大きなサーカスを経営する身。恋人アリ。

 そう、「恋人アリ」。

 アルガンは、マルキーズと別れたつもりナイよね?(笑)

 「生き方がチガウ」ということで、マルキーズ@となみはアルガンとは「別れた」と言っている。
 実際、「わたしたち、もう終わりね」「別れましょう」とか、すげー身も蓋もない定例句をマルキーズは言ったんだと思う。なにしろキムシン脚本だし。

 でもアルガンは、それを本気にしていない。
 ただの「ケンカ」だと思っている。アルガンがマルキーズのサーカス団を出て別の道を選んだことで、ギクシャクしてしまったのだと。
 いろいろあって今はうまくいってない。でもきっと彼女はわかってくれる。いや、わからせてみせる。
 強引で俺様な彼は、ナチュラルにそう信じている。

 でないと、プロポーズしないって。

 とっくに別れた、別の男のいる女に、いきなり脅迫まがいのプロポーズしないって。

 アルガンは、ジョルジュ@水を知らない。
 だって彼の世界では、マルキーズは変わらず彼の恋人。スターのマルキーズに入れあげたファンが彼女の周りをちょろちょろしていることなんて、別にめずらしくない。
 だから何度か目が合うくらいのことはあっても、その存在を認知していない。気にしていない。

 ケンカしたまま、ぎこちなくなってしまっている恋人。
 彼女をしあわせにしたい。彼女としあわせに生きたい。
 彼女をしあわせにする術が、彼にはある。その明確なプランがあるのに、彼女はうんと言わない。
 彼女が求めるモノは彼が信じる道に不要だと思うモノが多いのだけど、それを彼女が欲するなら受け入れよう。すべては、彼女のために。
 彼にとって不要なモノでも、それがあることで彼女が満ち足りるなら、譲歩しよう。

 素直じゃない恋人。強情な恋人。
 あまりにこじれてしまっているし、彼もまた言葉が足りない、誤解されやすい人間だということは自覚している。
 ここはひとつ、強引に出よう。
 彼がアクションを起こすことで、アクシデントを乗り越えられるはず。

 だってふたりは、愛し合っているのだから。

 つーことで、プロポーズ。
 アルガン視点では、長年つきあってきた恋人に結婚を申し込んだだけ。

 自分が悪役になっているなんて、知らないから。
 や、多少悪だとは思っているけど、それは「俺って強引だな。悪い男だ。フッ」てな程度で、自分のやっていることが金にものを言わせて、泣いて嫌がる娘(恋人アリ)を妻にしようとする成金エロじじいみたいだなんて、わかってないから。

 サーカス団千秋楽貸切公演にて、乱入してきたジョルジュの「君を愛してる」、応えるマルキーズの「あなたを愛してる」は、寝耳に水。

 サーカス団のメンバー全員引き取るって言ったのに。ただの給料泥棒になるだけだとわかっている使えない団員まで全部、金を捨てるつもりで引き受けると言ったのに。
 団員たちはそれを断るし。
 そしてマルキーズもまた、自分との婚約を無視して知らない男と盛り上がっているし。

 ちょっと待て、なんだこの展開。
 俺、なに?
 俺、悪役?
 俺、空気読めない奴?
 俺、いい面の皮?

 いやあ、アルセストが飛び出してきたときのアルガン様がステキです。

 アルガンにとってはジョルジュだって十分知らない人。何度かサーカスで会ったというかすれ違ったというか「いたな、そんな奴」程度だっつーに、アルセスト@かなめに至っては「誰?」状態。
 人生の一大事、「ちょっと待て、僕との婚約はどーなった?!」と恋人に問いただしている肝心要なときに、いきなりまったく知らない男が飛び出してきて「君を愛してるっっ。許してくれ、ボクは臆病だったっっ」とかなんとか、いきなり別世界。
 でもってこれまたまったく知らない女が「ゆるしてあげるっ、だってあなたを愛してるっっ」で、ちからいっぱいラヴシーン・クライマックス。

 あの、俺の物語……俺が主役の……?

 目の前で突然怒濤の展開を見せる、ひとさまの物語についてゆけず、ぼーぜんと立ちつくすアルガン様が傑作です。

 すごすごと舞台奥へ退場していくアルガン様は、そこではじめて知るのだと思う。ここに、自分の「居場所」がないことに。

 彼の中の「物語」では、サーカス団の「時」は止まっていたのだと思う。
 彼がいた頃……彼が「このままじゃダメだ」と見捨てた頃のまま。
 シャルル@ひろみは頼りない若手のままだし、アルガンがいなくてはどーしよーもないのんきものたちの集まり、「仲間」だった頃のアルガンが見ていたままの世界。

 だから彼は知らなかった。
 シャルルが成長していることも、仲間たちが彼をもう仲間だと思っていないことも、マルキーズが本当に彼に反発し、嫌がっていることも。

 ジョルジュという知らない男がサーカス団に受け入れられ、「仲間」として輪の中で笑い、マルキーズに愛されていることにも。

 なにも、気付かなかった。
 気付けなかった。

 彼は、自分が見たいモノしか、見なかったから。

 マルキーズが他の男と婚約したとか、自分が振られたとか。
 それもたしかにヘヴィな事実で、彼を打ちのめしただろうけれど。

 それだけじゃなくて。

 アルガンに突きつけられたのは、「現実」。

 彼が彼であるがゆえに「見なかった」ものたち。
 彼の狭量さ。彼の愚かさ。

 だから。

 アルガンは、歌うんだ。

 なにもかも受け入れて。
 や、だって、振られても仕方ないじゃん? 自分が狭量だったせいなんだから。
 事実はずっとそこにあったのに、見なかったのは自分の愚かさ。都合良く解釈していた自分勝手さ。

 横から強引に恋人を奪われたなら、いくらマルキーズがその男を愛していたとしたって、許したりしない。自分の方がマルキーズを愛している、しあわせにできると信じられるなら、正面から闘うだろう。

 自分の足りなさ、至らなさを見せつけられたから。痛感したから。

 歌うしかない。肯定し、祝福するしかない。
 そうやって、前へ進むしかない。

 アルガンは、いろいろと不器用なだけの「イイ奴」だから。悪人でも理不尽でもない、等身大の青年だから。
 強引でも俺様でも、心に曇りのない人間だから。

 
 わたしはどっぷり三角関係が好きなので、主人公と恋敵の関係は濃ければ濃い方が好きだ。
 相手に対し深い感情を持っている方が、ひとりの女をめぐる関係がおもしろいものになるからだ。
 てゆーか主人公を中心に物語を描くのだから、2番手演じる恋敵は主人公に深く関係し、見せ場をいっぱい描くべきだと思っている。
 だからキムシンの前作『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』では、「2番手演じる恋敵」を主人公が存在すら認識していないのが不満だった。恋敵もまた、主人公のことを大して重要視してなかったしな。不満不満。
 でも。

 『君愛』に関しては、未認識が萌え(笑)。

 それぞれの人生、それぞれの視点。
 アリでしょ、こーゆーの。

 あー、アルガン様、好きだなー。
 すげーいいキャラだ。

 レイチェル@圭子女史がんばれー(笑)。


「レオン神父。以前、僕がマルキーズとサーカス団を救うためにセリメーヌと結婚しようとしたとき、おっしゃいましたよね。『馬鹿者、お前まで偽りの人生を生きるつもりか』と。お前まで……と。僕と、誰のことを言われていたのですか?
 あのときは、心を偽ってアルガンと結婚しようとしているマルキーズのことだと思ったんですが。
 でも、神父が叱られたのは僕だけですよね。マルキーズのことはあんな風に叱らなかった。
 何故、僕のときだけあんなに声を荒らげて叱ったのか。何故、あんなにも取り乱したのか。
 お前まで、というのは、どういう意味なのか。
 ずっと、引っかかっていたんです。でも、このたび父の若い頃の日記を見つけて……」

 語るジョルジュを、レオン神父は静かに制した。

「ジョルジュ。君はアンリに……君の父上によく似ている。姿はまさに、生き写しだ。君と話していると、アンリと話している気分になる。
 私も、アンリも若かった。彼もまた不器用で、やさしい男だったよ。君と同じように。ひどくロマンチストで……永遠の愛を信じていた」

「父は、『私は神を裏切った。いや、私の犯したもっとも深い罪は、愛する人に神を裏切らせてしまったことだ』と書いていました」

「アンリは、悔いていたのかね?」

「……いいえ。苦しんではいましたが、後悔はしていませんでした。父の日記には、愛する人への気遣いと、ただ、愛する気持ちだけが綴られていました。
 父の恋人は、とても奔放な人だったようです。幼い頃から神に仕えるよう義務づけられていたそうですが、枠に収まりきらない生命力を持ち、陽気で型破りでいつも父を驚かせていました。
 修道院を抜け出し、臆する父の腕を取り駆け出すような人だったと。大きな声で笑い、歌う人だと。
 父の日記には、ただ、その人のことだけが書かれていました。『Lが笑った。Lが歌った。Lがこう言った』と。前後のつながりもなく、ただ、恋人の行動だけが書かれていました。まるで、彼の世界のすべてがそのLという人物であるかのように。
 それだけで、どれほど愛しているかが伝わってきました。恋人の行動の羅列だけなのに、その表現のひとつひとつが、とてもやさしいんです。愛しみに満ちているんです。
 恋人の全存在を肯定し、ただ、愛していました」

「アンリらしい文章だね。出来事の羅列……なのに、愛が見える、か」

「疑問に思っていました。何故父は、あんな遺言を残したのか。半年以内に貴族の女性と結婚しなければ、家督は継がせない。結婚相手はドビルバン氏が認めた者だけ……ではドビルバン氏だけが判断、許可を委ねられたのかと思えば、『教会へ行け』と……つまり、レオン神父に相談しろとある。
 結局父がすべての判断を委ねたのはレオン神父、あなただ。ドビルバン氏に否を言わせない権力を持つあなたが、僕の人生を統べる権利を持っていた。
 父はあなたが、僕にとってもっとも善い、正しい道を選んでくれる、尽力してくれるとわかっていたんです。だから僕にあなたのところへ行くようし向けた。
 実際あなたは、そうしてくれました。迷う僕を叱り、励まし、なにもかも受け止めてくれた。
 僕とマルキーズが結婚できるように、権力まで駆使して立ち回って下さった。
 マルキーズのためじゃない。僕のためだ。マルキーズがアルガンと結婚することは、怒鳴ってまで止めなかった。本人が決めたことだからと、ふたりが内緒で結婚式を挙げることに同意していた。なのに、僕のときだけ、あなたは我を忘れた。
 僕は父に連れられて子どもの頃からこの教会に出入りしていたし、あなたのことも慕っていました。はじめからあなたが遺言の執行人であれば、なんの問題もなかったのに。いやそもそも、父の性格からして、貴族の娘と結婚しなければ、とか、半年、とか、おかしいことだらけだ」

「もし、半年以内に君が真の愛を見つけられず、偽りの結婚をしようとしていたら、やはり私は叱りつけていただろうね」

「そして結婚しなくても家督を継げるよう、その権力を使ってくれていた……あなたにはそれだけの力がある。父はそれを見越して、あなたを頼るよう遺言したんだ」

「君がドビルバンの娘と愛し合い、結婚を決めていたなら、私の出る幕はなかったよ。アンリも本当のところは、そう願っていたのだろう」

「あなたの存在は隠したかった。だけど、あなたに委ねたかった」

「なつかしいな……貴族の娘と結婚。そして、半年というキーワード。アンリも昔、父親にそんな条件を突きつけられていた。恋人と別れ、立場に相応しい女性と結婚をしろと」

「父には愛する人がいた。だけど、結ばれることが許されない相手だった。祖父は父とその人のつきあいを認めず、引き裂くために強引な条件を出した。『半年以内に貴族の娘と結婚しろ。さもなくば後継者と認めない』……」

「アンリは君と似ている。君と、同じことを言ったよ。愛を選び、他のすべてを捨てると」

「だが、父の恋人はうんとは言わなかったんです。身を引いたんだ。
 父のどのような説得にも頷かなかった。短剣を自らの首筋に当て、父が身分に相応しい人生に戻らないとこの手を引くとまで言った。神を裏切って父を愛し、そのうえ自ら命を絶ち、地獄に堕ちると宣言した。
 その人の奔放さと力強さを愛していた父は、それがただの脅しや演技ではないことを知っていた。
 父は、その人と別れ、祖父の選んだ女性と結婚しました。祖父が出した条件通り、半年以内に」

「そして、君や弟のクレアントが生まれた」

「……母のことを、父はたしかに愛していました。それは、僕たち兄弟がいちばんよく知っています。でも。
 日記に綴られていた、Lという人物への思いとは、まったく違ったものでした。
 父はLを愛していました。ずっと。日記はもう綴られなくなっていたけれど、それでも、言葉にしない、文字にしない、心の奥底でずっと愛し続けていたんです。共に生きることは出来なくても、この世から先に去ることになったとしても。
 だから」

 再び、語るジョルジュを、レオン神父が静かに制した。

「ジョルジュ。君の幸福を、心から祈っている。見守り続けたいと思っている。
 君と、アンリは似ている。彼も、一途に信じていた。

 永遠の愛を」

「僕への遺言だと思うから、おかしなことばかりだったんです。あれは、父からの恋文でした。生涯懸けて愛した、ただひとりの人への」

 愛のために、心を偽って生きるしかなかった、不器用な恋人への。
 

「レオン神父。あなたも、信じているのでしょう?

 永遠の愛を」

 レオン神父は答えず、ただ静かに微笑んだ。

             ☆

 アンリ・ドシャレット氏は、水先輩の2役でお願いします(笑)。


 植爺と『ベルばら』が「避けられない天災」であるこの現実において、もっとも良い災害対策ではなかろうか。

 もちろん、災害はないに越したことはない。地震も台風もなくなればいい。……が、人類の英知をもってしても天災を「なくす」ことはできない。
 ならば、どうやったら被害を最小限に抑えられるかを考えるべきだろう。
 そこで必殺技。

 全国ツアー『ベルばら』祭り!!(大山のぶ代の声希望。背景は紅白の集中線が点滅)

>雪組 『外伝 ベルサイユのばら−ジェローデル編−』『ミロワール』
>花組『外伝 ベルサイユのばら−アラン編−』『エンター・ザ・レビュー』
>星組『外伝 ベルサイユのばら−ベルナール編−』『ネオ・ダンディズム!III』

 うわー、すごいことになってるなあ。
 てゆーか、演出全部植爺なんだー。うわー。

 はい、見事な力業です。天災被害を抑えるための苦肉の策だよねコレ。拍手拍手。

 つーことで、今回の「災害対策」の良かった点。

・芝居とショーの2本立て。
 どれだけ芝居が破壊されたとんでもないものであっても、ショーを楽しみにすることができる。

・役替わりがない。
 どれだけ芝居が破壊されたとんでもないものであっても、とりあえず1回観るだけで済む。役替わり回数観ないで済む。

・貴重な本公演を消費しない。
 どれだけ芝居が破壊されたとんでもないものであっても、全ツは全ツ、1会場数日、全日程合わせても公演数は少ない。本拠地・東京とで2ヶ月半もの長期上演は避けられた。

 災害対策本部、グッジョブ☆

 
 繰り返すが、災害はないに越したことはないんだ。わたしだって嫌だ。肯定しているわけでも、存在を歓迎しているわけでもない。心の底から「なくなれ。消えろ」と思っているさ。
 しかし現実問題、「ある」んだ。「なくす」ことは不可能なんだ。いつかなくなる未来がくるかもしれないが、今現在でソレは絵空事でしかないんだから、語っても仕方がない。
 避けられない不幸として植爺と『ベルばら』がある現実を見つめ、最良の方法であった、というハナシをしている。

 話の種に地元で1回観ておしまい、あとは「宝塚=ベルパラ」と思い込んでいる一般の方々に観ていただこうじゃないですか。

 
 配役がどうなるかさっぱりわかりませんが、壮くんオスカルが見たい。

 えりカル見たい〜〜見たい〜〜、じたばた。
 んでもって、まとぶアランに無理矢理チューされるの。見たい〜〜見たい〜〜(笑)。

 2006年雪組全国ツアー『ベルサイユのばら』の、壮アンドレがあまりにステキ過ぎた……。壮くんって植田芝居に合う人だったんだ……と、目からウロコ。
 あのキラメキの日々を再びプリーズ!!

 
 で。
 まつださんはそのころナニやってんですかね?

 花組全ツの裏はDC公演があるので、振り分け発表があるまでどちらに出るかわからないから、今「上から順」に配役しても意味はないんですが。

 とりあえずまっつファンとしては、まっつオスカルだけはありえないとわかっているんで、心穏やかです。

 や、『ベルばら』において「オスカル」だけは特別な役なんで、劇団的に押すつもりのある人にしかやらせないっす。
 万が一、ゆーひくん、壮くん、みわっちがDCで、まっつが全ツでも、まっつにオスカルは回ってきません。まぁくんとか下級生がやるんじゃないですか?
 なんかのはずみでまっつにアンドレが回ってくる可能性ならゼロじゃなくても、オスカルはゼロだと断言できる(笑)。

 そーだなー、妄想配役でいいなら、みわカルとまつドレが見たいっす。
 豊太郎と相沢で「今宵一夜」はお願いしたいっす。や、『ベルばら』でやんなくても、『舞姫』後日談でもいいから。(今宵一夜の台詞のやりとり、まんま豊太郎と相沢でハマる……)

 ……まー、まっつはいつものよーにDCかなー、とゆー気もしますが。(番手外の場合、ショースター・ダンサーは全ツ、歌と芝居が得意な人はバウ・DCに出演しがちだという慣例により)

 まっつが『ベルばら』に出るとして、ありえそーなとこで希望を言うなら、栄養失調の衛兵隊士ですわね。
 貧血で倒れるとこプリーズ。


 霊石ラジオ、というものがある。
 某ホラーゲームに出てくるアイテムで、霊の声を聴くことができるの。
 ゲーム中に拾う「石」をラジオにセットし、再生を押すと、「……(雑音)……ぃたい……痛いぃ……(雑音)……苦しぃぃぃい……(雑音)(啜り泣きらしい音)……(無音)……(雑音)……呪ってやるぅぅぅぅ……(雑音)……」てなステキな声が聞こえてくるのよ。
 音が割れていて、突然聞こえなくなったり、ざらざら雑音がして、聞き取りにくくて、またそれがこわくて、すっごいステキなの。
 霊の声を聴かなくてもゲームのクリアはできるから、ただの盛り上げアイテムでしかないんだけどね。

 いやあ、なつかしいなあ、霊石ラジオ。

 「宝塚友の会電話予約システム」で、悪霊の声を聴けるなんて。

 巷で噂の、新しい電話ガイダンス。
 「ひどい」とは聞いていたけど、ほんとにひどかった(笑)。

「こチラは、タカらヅカともノカイ、デんワよやクしすてムデス。がーがーぴー」

 てな感じで。

 気味の悪い合成音。複数の声が重なって、そのくせ微妙にズレて聞こえる気持ち悪さ。発音のおかしさ、不明瞭さ。そして回転数を間違ったような冗長さ。
 不要な説明がえんえん流れ、「ソレ、さっきも聞いた」なことを何度も繰り返し、スキップすることはできず、操作途中で不気味な無音時間が何度もあり「電話、切れた? なにか間違いがあった?」と不安に陥れる。

 すごいよなあ、宝塚歌劇団。
 聞いた人を「不快にさせる」ために想像力と技術の限りを駆使して作り上げた「悪霊の声」を、こんなに簡単に作り上げて、客に向かって有料で流すなんて。
 聞いた途端、「うわコレ、霊石ラジオだ!」と思った。いつも友会入力は受話器を置いたままのスピーカ通話なんで余計。電話機のスピーカからざらざらと流れてくる現実ではありえない音声。
 悪霊の声だ。この世のすべてを呪い、恨んでいる声だ。わたしたちと同じ言葉を話しながら、どこか欠けている、間違っている、壊れている声だ。
 まったくチガウ言葉、チガウ世界の音声ならこわくない。同じ、でありながら、「どこか狂う」ことが、はてしなくこわいんだ。

 てなキモチになるステキ音声。
 友会に入っていない人でも、是非一度体験してみてくださいよ。電話番号は調べればどっかに載っているんだと思う。あ、もちろん体験するのは真夜中にお願いします(笑)。

 音声の気持ち悪さはこーやってネタとして笑い飛ばすとしても、純粋に操作が不便過ぎるっつーのは考え物だ。
 あんまり面倒なんで、4公演入力する予定が、2公演でやめてしまった。わたしのよーに根性ない人が他にも大勢いたりしたら、売り上げに響くこともあるんじゃないかなぁ。

 
 霊石ラジオ、より一般的な、明るいものにたとえるならば。

 まだ白黒だったころの『鉄腕アトム』とかの、SFアニメ。よく2時間バラエティとかで、「なつかしアニメ」とかゆってやってるやつ。
 昭和中期、日本が「未来」に「科学文明」に夢を見ていたころのアニメ。

 四角い箱が市松模様に点滅しながら、「キンきゅウじたイ、きンキゅうジたい」とか棒読みにがなっていた。アレですよ。
 白黒アニメに出てきた「スーパー・コンピュータ」。カタコトの日本語を発し(話すわけではない)、なにかしら計算したものをレシートみたいな細長い紙に点々と穴を開けて吐き出す。
 すばらしい「未来」「科学文明」の賜物。

 50年前の日本人が夢見ていたまんまの音声が、今ここに。

 ずけえや、宝塚歌劇団。
 50年前の夢を叶えるなんて!
 21世紀万歳、科学文明万歳。

 ……うん、今が50年前ならよかったね。


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