劇場に足を踏み入れると、先に来ていた友人たちが「大丈夫?」「アタマ、煙出てない?」と声をかけてきた。

 千秋楽耐久レース、最終日。月組ドラマシティ公演『A-“R”ex』千秋楽。

 ははは。煙出てるかも。なんかもー、なにも考えられない。

 東宝でオサ様見送って、翌日がバウホールでゆーひくんの『HOLLYWOOD LOVER』千秋楽だった。
 まだ感想書いてないけど、作品とは別のところでけっこーキツい公演で。
 オサ様失った翌日に、何故よりによってこの作品を観ているんだあたし? とは、自問した(笑)。

 そしてその翌日が、オギー作品だ。
 オギー作品は体調、気分によってキ方がまったく変わってくる。万全の体調で臨むべくモノなのに……。
 ゆーひくん主演公演はやっぱり初日・楽にこだわりたいけれど、DCの方はそこまでじゃない。作品を楽しめる日程で観劇するべきだろう。
 や、シビさん退団でなければ、千秋楽にこだわることはなかったんだよ、ほんと。オギーファンとしては、シビさんの最後は見届けたいじゃないか……青年館までは行けないから、せめて大阪で。

 誰だよ、こんなスケジュール組んだの。
 と、嘆息しつつ。

 思い出すのは、2004年。
 ケロを東宝で見送って、1日かけて大阪に戻ってきて、その翌日にはドラマシティで『天の鼓』観てたんだ。

 なにしろ誰にでも太鼓判押せちゃうトンデモ公演、大笑い作品。抱腹絶倒のおもしろさ。

 ……ケロを見送ったあと、最初に観たのがオサ様だったんだなあ……。や、まっつでもあったわけだが。

 
 舞台で、ジェンヌで、どん底にも叩き落とされる。
 いいトシこいて信じられない泣き方して、仲間たちに捕獲されてなだめられて、なんとか人間に立ち戻って帰阪できた。
 舞台を観ていなければ、ジェンヌを好きになっていなければ、知らずに済んだ混乱や痛み。

 それでいて。

 舞台で、ジェンヌで、救われる。
 どんなに痛い目にあっても、大泣きしても、それでもわたしを救ってくれるのは舞台であり、ジェンヌである。

 3年前も今も。

 あのときは「チケット取ってあるから」と貧乏性で観劇した。ケロを見送ったばかりで心身共にボロボロだったが、それでも「オサ様観に行くべ」と劇場に向かった。

 それで、良かったのだと思う。

 タカラヅカを好きであること。
 それを確認するために。

 
 オサ様東宝楽、ゆーひバウ楽、あさこDC楽と、千秋楽3連発、耐久レース。誰だよこんなバカなスケジュール組んだの。
 そううそぶきながらの強行軍。

 走るのやめたら、倒れちゃうじゃん?
 で、倒れたら、立ち上がるのって大変だから。倒れないでいることより、大変だったりするから。
 とりあえず、走り続けよう。

 オサ様いなくなっても、まだ、タカラヅカは続いている。
 それを確認するために、劇場へ行く。

 オサ様がいた、オサ様と出会った花園は、消えていない。

 3年前、オサ様がソレを教えてくれたように。

 
 オサ様を失ってから、最初に会ったのがゆーひくん。
 美しい、美しすぎる人。
 「タカラヅカ」というファンタジーを体現するひとり。

 そして、思いがけず客席にいた、ナマまっつ。

 癒されて。
 なんかもー、泣けるほど癒されて。

 ありがとう。
 意味もなく、心の中で何度もつぶやいて。

 
 そして、翌日の『A-“R”ex』。
 幕間に信じられない発表があり、混乱しながらの第2幕。

 美しさが、まぶしくて。

 あさこが、かなみんが、きりやんが。
 美しくて、発光していて、透き通って輝いていて。

 なんて美しいんだろう。

 『A-“R”ex』自体は、いろいろイタい物語で。正視が辛い部分が多分にある。
 オギー作品にしては画面としての情報量が少なく(台詞での説明は膨大だが)、テーマに集中しやすい作りになっていることも観客を追いつめる効果があると思う。テレビ画面向きの作りっちゅーか、小劇場向けっちゅーか。やっぱコレ、ヅカでやるべきぢゃないよなあ、と思いつつも。

 やはり、タカラヅカであるからこそ。
 そんなものすら内包してしまう、許されてしまう特殊な世界だからこそ。

 たどり着くラストシーンの美しさに救われる。

 ニケ改めロクサーヌ@かなみちゃんが登場したあたりからもー、泣けて泣けて仕方ない。

 浄化される。
 様々なモノが。

 や、わたしは不純なまま、愚かでどーしよーもないままだが。
 それでも、救われるんだ。

 やさしい光が、包んでくれるから。

 
 千秋楽の挨拶では、退団者ふたりの挨拶もあった。 

 狂気の花嫁クレオパトラを演じたりんかちゃん。
 そして、屈指の歌姫、シビさん。

 りんかちゃんは端的にきびきびと挨拶をし、シビさんは……爆笑トークを繰り広げた。

 彼女が語るのは同期の立さんのことだ。
 退団挨拶どーしよー、と立さんに相談したところ、彼は「そんなん、なんでもええねん」てな実に豪快な返事をした。それを信じてシビさんはナニも考えずにいたらしい。
 が。
 当の立さんは東京へ向かう新幹線の中からすでに「かっこいい」退団挨拶を考え、何度も練習をし、2日前に東宝で「かっこよく」キメて来たとのこと。
 ナニそれ、ソレって「試験勉強どうする?」「そんなんせんでええ」「そやんな、せんでええよな」……と言って、隠れて猛勉強するノリ?(笑) で、成績発表で「がーん……」としているノリ?(笑)
 「ちょっとみなさん、聞いてくださいよー、どう思いますー?」てな、世間話の爆裂トークする勢いで、シビさん語る語る。
 で。
 途中で気付いたんだけど。

 立さん、客席にいるし。

 てゆーか、わたしらと同じ列じゃん!!
 おかげで、彼の表情や、爆笑しながら舞台のシビさんに向かってなにか言っている姿がよく見えた。

 え、えーと。
 立さん、わたし2日前、あなたのこと見送っていて。
 あの毅然とした挨拶に胸を熱くし、端正な姿に感動したひとりなんですが。

 ……すべて、ギャグになっとりますがな、シビさんのオチに使われてますがなっ(笑)。

 正直まだ、東宝楽のことは整理がつかないし、現実だとも思えていないのだけど。
 それでも、とも&しびで漫才を繰り広げる「生きた」ふたりの姿に胸が躍った。
 
 ありがとう。
 意味もなく、心の中で何度もつぶやいて。
  

 フィナーレがないのは相変わらずだが、最後に「すみれの花咲く頃」の歌があった。
 や、千秋楽にみんなで「すみれ…」を歌ってお別れ、はめずらしいことではないが。

 この「すみれの花咲く頃」で、美しい歌声をりんかちゃんが披露してくれた。
 コーラスではなく、ソロ。
 みんなで歌ってお別れ、はめずらしいことでなくても、退団者がソロで歌うのはめずらしい……てか、はじめて見た。
 正統派の、美しい「娘役」の歌声。培ってきたモノを最後に披露してくれたんだ。

 りんかちゃんがワンコーラス歌いきると、伴奏ががらりと変わった。

 同じ曲。「すみれの花咲く頃」だ。
 なのに、これは。

 ジャズ・アレンジだ!!

 大人っぽい粋なアレンジで、今度はシビさんが独唱した。

 すげえ。
 このためだけに、音楽録音したんだ。
 みんなで歌って、の「すみれの花咲く頃」ならいつもの録音テープで十分だけど、娘役ソロのあとにジャズ・バージョンってソレ、新録音じゃん、オリジナルじゃん。
 さすがオギー。「お帰りなさい壮くん」を、初日1回限りの演出した人だ。

 シビさんの歌声は、やがて全員でのコーラスにつながる。

 「すみれの花咲く頃」。
 ここは、美しいところ。

 美しい、夢の花園。これからも続いていく、「永遠」に消えない場所。消してはならない場所。
 

 ありがとう。
 意味もなく、心の中で何度もつぶやいて。

 救われるために、しあわせになるために、これからも劇場へ行く。
 「好き」だと思う気持ちが、力になる。

 この花園を、愛し続ける。


 えーと、なんですか、つまり、ゆーひくんはまた、『血と砂』に出演するってこと?

 や、同タイトルの別物であるとかそーゆーことは置いておいて。

 
 月組DC千秋楽。オギーだオギーだ、シビさんラストだ。見逃すわけにはいかないぞ。
 千秋楽耐久レース(って、ヲイ)もこれで最後、アタマからぷすぷす煙をたてながら、それでものそのそと梅田へ駆けつけた。家からいちばん近いハコがラストで助かった……。
 鞄の中身はハンカチなどの消耗品以外は東京からずっと一緒、オペラグラスもオサ様楽のペンライトも入ったままさ。今日は2列目だからオペラいらない、重いだけだっつーに。

 ゆーひくんはバウホールだからみんな観たくてもチケット取れず、でもDCならチケット余裕アリ、つーことで、仲間たちは1年の観劇納めにDC楽を選んだ模様。友だちがいっぱい客席にいてうれしい。
 1幕が終わり、幕間に顔を合わせた第一声が、「……オハヨウゴザイマス。よく寝ました……」だった某ちゃん、「……寝そうになった……」だった某さん、みんなお疲れモード。年末だもん、忙しいよなあ。
 たしかに、「ヅカ納めだ、わーい♪」という気分で観るには相応しくない作品だわ、『A-“R”ex』……。

 そーやって集まった幕間。
 チェリさんは「今日なにかしら発表あるんでしょ?」と携帯をチェック。
「あ、発表出てる。…………ゆーひ花?!」

 はあ?
 ナニソレ。
 寝耳に水な単語を聞いたぞ?

>【月組】
>大空 祐飛  2008年1月26日付で花組へ
>白華 れみ  2008年1月15日付で花組へ
>夢咲 ねね  2008年1月30日付で星組へ
>
>【雪組】
>純矢 ちとせ  2008年3月31日付で宙組へ
>
>【星組】
>羽桜 しずく  2008年2月12日付で月組へ

 ゆーひくんの他は、89期娘役シャッフル? ええ、咄嗟に名前聞いて「全員89期だ」と言えるくらいには、「それ、何組でいうと誰と同期?」と言われて、それぞれの組の主立った89期を答えられるくらいには、89期ファンですからわたし。

 DC幕間は、誰も『A-“R”ex』の話なんかしていない。誰も彼もが携帯片手に集まって話し込んでいる。

 ……劇団よ、何故このタイミングで発表?
 せめてDC楽が終わるまで待ってやれよぉ。2幕が目に映ってもアタマに入らない人たちだってきっとたくさんいたと思うぞ? スター個人の立場や胸の内に思いを馳せて見る人が増えたかもしれないが、それって「作品」を観るという意味ではどうなのよ?
 演じている人たちが気の毒だろうに。千秋楽なのに。
 
 DC楽の話は置くとして。

 観劇後はどりーず西会+αで忘年会予定。
 どりーず的には大きな発表のあった日が忘年会日だというのは、直接話し合えてありがたい。家でひとりで発表を知り、メールでやりとりするよりずっといい。
 オサ楽報告やパレードの劇団の仕切りの最悪さや、『ハリラバ』のアギラール(笑)のことや、話題はいろいろ、でもやっぱりメインを取るのは今回の人事異動。……今観たはずの『A-“R”ex』は、シビさんの挨拶以外話題にも上らない……タイミング悪すぎだー。

 
 2007-11-06の「2008 TAKARAZUKA REVUE SCHEDULE CALENDAR」についての日記で、「花組に、2番手がいない。」ということを、さんざん嘆きました。
 劇団発行のスケジュール帳巻末に、トップスター(+トド)と2番手の写真とプロフィールが載っているんたけど、花組だけ2番手が不在だった。
 前年のスケジュール帳の2番手は6人載っているし、実際今回も6人載せる紙面があるのに、わざわざ「MEMO」という欄を作ってまで、花組を載せなかった。

★2008年版掲載の2番手★
月・ゆーひ、きりやん
雪・ゆみこ
星・れおん
宙・らんとむ
 
 …………手帳を出して、ゆーひの上の「月」と書かれたマーク部分を隠してみる。
 ここに「花」とシールでも貼れば。

花・ゆーひ
月・きりやん
雪・ゆみこ
星・れおん
宙・らんとむ

 うわ。
 並び順も正しい。ふつーに花月雪星宙で5人だ。

「ほんとだ。すごい」
 と言いながらMyフレンズ、「なにこの手帳」と「この表紙、自分で作ったの?」と、わたしのまっつまっつな手作り表紙に注目しないでよ、プゲラしないでよ、わわわ。

 しかし、ヅカファンになって19年。
 スターの立場と学年が逆転しているのは、月組以外では見たことがない。
 ゆーひくんが下級生スターの下にいることが「ふつーにアリ」だと思えたのは、そこが月組だったからだ。
 天海にしろタニにしろ、月組だからアリだった。
 タニは宙組に行ったあとは学年順で、水くんより下の扱いになった。(すぐに水くんは組替えになったが、一緒にいたときの扱いは水>タニ)
 だから「月組だけの伝統」だと思っていたんだが。早期抜擢、実力よりもアイドル性重視。
 星組でれおんが上級生のしい・すずを抜いたけれど、これは月組で行われていた「番手逆転」ではない。しい・すずは脇に逸れたカタチになり、天海がトップになって卒業したあとのんちゃんがトップになったように、れおんがトップになったあとしいちゃんがトップになる、というわけではないだろう。

 番手逆転は、月組だけのお家芸。
 学年関係なく、スターをそれぞれのポジションに置く。

 ……だったんだけど、それが他組でも行われるのだろうか?
 だとしたら、ぐちゃぐちゃだな、歌劇団。なんでもアリになっちゃうよ。

 ゆーひくんの立場が、2番手なのか別格なのか、次期トップなのか、さーっぱりわかりませんが。
 でもって、まとぶ、ゆーひ、壮の並びというのも、今のところ想像もつきませんが。

 誰も不幸になることなく、最良の道を歩いて欲しいと願うばかりです。

 ……あたしはゆーひくんでブキャナン@『華麗なるギャツビー』が見たかったのよぉぉお。
 

 忘年会後、深夜に帰宅して。
 鞄からチラシ用クリアケースを取り出した。チラシを折らずに持って帰るために、クリアケースを利用しているの。そのケースには。
 表がもう何年もずーっと寿美礼サマの『I got music』のチラシ、裏がゆーひくんとまっつのポート。

 ……まさか、このふたりが同じ舞台に立つ日が来るとは。

 あと、「れみちゃんはまっつに似ている」と仲間内で言われていたので、彼女の組替えはえーとえーと……(汗)。
 や、なにが似ているって、「薄幸そうなところ」……。今年のTCAでまっつと組んで踊っていたときの、ふたり揃っての不幸オーラがわたしのツボを突きまくっていたので、わたしはうれしいんだけど、れみちゃん的にはどうなんだろう?


閑話休題。

2007年12月25日 タカラヅカ
 東京から、生還しました。
 オサ様サヨナラパレードの帝国前の大混乱は、よく大事故にならなかったもんだと幸運に胸を撫で下ろしています。限定ポスター販売のキャトレの手際の最悪さといい、劇団はいろいろ考え直さにゃならんと思いました。はい。

 しかし、わたしのここんとこのスケジュールって。

21日 夜行バスにて大阪を発つ
22日 昼・花東宝/夜・花東宝VISA貸切
23日 昼・花東宝/夜・花東宝前楽
24日 花東宝大楽/入りからパレードまで見たあと、夜行バス乗車
25日 月ゆひバウ楽
26日 月あさこDC楽

 ……誰だよ、こんなひでースケジュール立てたの。
 5日間で7公演……しかも、東京と宝塚と大阪。後半は千秋楽3連続。

 いやその、東宝行5泊3日の旅で、5公演観られるとは思ってなかったんだよ……チケット全部持ってたわけじゃないんだからさ。それがあれよあれよとこんなことに。
 てゆーか、前楽をサバキで取れたって、どーゆーこと? あまりの幸運にガクガク震えたよー。サバキの女神パクちゃん、ありがとーっ!!

 で、今日はゆひバウ楽。朝、バスで大阪に着き、老体を引きずって宝塚まで行った。
 カラダもだが、アタマもとっくに許容量オーバーしていて。
 アタマからぷすぷすと煙が出てると思う……あああ、明日のオギー楽、大丈夫かわたし。

 んで、ゆーひ絡みの公演時には必ずいる(笑)ユウさんと幕間に会う。
「ところで、『ハリラバ』の感想、いつ書くの? 私の気のせいでなかったら、まっつまっつなことしか書かれていなかったよーな?」

 ……ごめん、まっつまっつなことしか書いてないです。そのうち腰落ち着けて書くから許して。

 まっつもバウ観に来てたよね。そのか出てるもんね。愛だね。
 と、またまっつまっつな話になる……。

 書いてないのって、あとなにがあったっけ? そーいや『蜘蛛女のキス』も書いてないよーな気がする?
 昨日の花楽についても、整理がつかないし。てゆーかまだ、ムラの話も書き終わってないし。
 年賀状、1枚も書いてないし、猫の写真撮ってないし(毎年猫写真)。

 明日は12月26日。
 ケロを見送ったあの日が、またやってくる。


「永遠」物語・その3。
 2007年12月24日。
 早朝から日比谷に繰り出す。オサ様の入りから眺めるために、場所取り。
 到着したときすでに何重にも人だかりができていたシャンテ入口前に混ざる。目の前にある東宝劇場入口に、アーチが作られ、クリスマスツリーが飾られる様をぼーっと眺める。

 快晴で、クリスマスとは思えないあたたかな日だったので、晴れ男オサ様に感謝する。……が、場所取りしているうちに天気はよくてもビル風は容赦なく、結局凍えることになる。さ、さむいー。
 あまりの強風に、何度かクリスマスツリーが倒れる。がんばれツリー、踏ん張れツリー、オサ様が現れるまで。

 トップ退団時の会の動き、働きにはいつも感動する。何千人という素人たちを誘導し、秩序を保つ手腕。これがイベント・警備会社などがやっているのではなく、ファンという一般人が無償で行っているのだという、ものすごさ。
 好きなもののために、好きな人のために……「好き」という、ただそれだけの想いでこれだけの力が結集する、そのことに感動する。
 もちろん、ギャラリーとして集まった人々も。公的にはなんの権威もない会の人たちの指示に従い、黙って立ち続ける。彼女たちに従うことが、混乱を避け、大切な人の花道を見守ることにつながると信じ。

 立さんだけわかんなかったけれど、他の退団者の入りは、拍手と共に見届けた。としこさんは帽子を深くかぶっていたので、アゴくらいしか見えなかった。きよみとひーさんは、「やわらかな」笑顔だった。

 そして、オサ様は。

 目の前を、ゆっくり通ってくれて、沿道を埋めたファンのためにいろんな方向を向いて笑ってくれていたと思うけれど……それに対し、わたしはガン見して大喜びしていたはずなんだけど。

 よく、おぼえていない。

 生花で飾られたアーチをくぐったその先に待つのは、エントランス階段にスタンバイした組子たち。
 建物の中なので、残念ながらわたしたちのいる外からでは、顔は見えないし声も聞こえない。どんなイベントが繰り広げられているのやら。
 オサ様は階段を上り、たぶんその上でなにかしら話している様子。階段から階下にいる組子たちがぴょんぴょん跳ねて反応している。

 特別な1日がはじまる。

 最後の公演がはじまるまでに、食事をしたり限定ポスター購入のために奔走したりチケット受け渡しだのサバキだのばたばたしたり。
 なにか深く考えるヒマもないまま、時間は過ぎる。

 イベントだから。大きな大きな祭りだから。
 渇いたアタマの中で、冷静に計算している。どこでなにをする、どう行動する。
 食事はきちんと取らなきゃ。体調維持しなきゃ。
 防寒対策にと着てきたロングのダウンコートは、膝の上では万が一観劇中に音がするかもしれないから、無理矢理丸めて大きな鞄の中へ。鞄は椅子の下。足元だと邪魔になる。
 貴重品は身につけて。幕間はすぐにトイレへ走らなきゃ。極寒の中出待ちするんだから、オサ様見送るまでの数時間立ったままなんだから。
 考えていた手順通りに行動するの。冷静に。

 なのに、座席に着くまでにあわてふためくことになる。
 わたしチケット、落としてた。
 劇場係のおねーさんが、「落とされましたよ」と、チケットの半券を届けてくれた。
 び、びっくりした。
 何度も何度も眺めたチケット。いつどこで落としたんだ。
 席に着いてから、あわてて準備する。予定通りに。

 あっという間に、開演時刻になった。

 正直、夢を見ているようで。
 自分が劇場の椅子に坐っていること自体、ありえないことだし。

 舞台のオサ様は、どっから見てもオサ様で。
 昨日までもオサ様で、今日だってオサ様だ。
 なにもちがわない。どこもちがわない。
 今日は昨日の続きだ。

 じゃあ、明日だって、今日の続きじゃないのか?

 明日?
 明日はない?
 そんなバカな。
 わたしは明日だってわたしのままだし。世界だって、このまま明日に続いているだろう。

 なのにどうして、オサ様だけいなくなる?

 よくわからない。
 わからないまま、わたしはそこにいて、舞台を見ている。

 幕間も、無駄なく過ごして。トイレの大行列に勝利し、早々に戻った座席でペンライトの用意をする。点灯の仕方を確認し、添えられている紙に目を通し、ムラと点灯のタイミングがちがっていることをアタマに入れる。

 ショーがはじまり、終わり、サヨナラショーになり。
 きちんと準備していたから、最初の「世界の終わりの夜に」でペンライト振れたし、曲が終わるなりきちっと消せたし。
 冷静だし。……オペラグラス、膝から落としちゃったけど。自分で拾えないよーなとこまで転がしちゃって、暗転の際お隣さんが拾ってくれました。すすすすみません(平謝り)。

 組長の挨拶、みとさんの挨拶、さおたさんの挨拶、ちゃんと聞いたし。拍手したし。
 組長が読む退団者からのメッセージが、ムラと同じモノだってのも、ちゃんとわかったし。

 立さんの挨拶がムラに引き続きオトコマエでかっこいいこと、きよみもまたムラの挨拶に引き続いた導入で話しはじめたこと、ひーさんの挨拶が淀みなく美しかったこと、としこさんの挨拶に一瞬ピヨ?となったこと(ごめん、察し悪くて)でもその誠実な言葉に思い至って感動したこと、お花渡しになるぴょんがやって来たこと、そのおなかが大きかったこともおぼえているのに。

 オサ様のことは、あまりよくおぼえていない。

 オペラ使うのがもったいなくて、肉眼でガン見していた。
 ナマで、レンズ越しではない、自分の目で見なければならないと思った。……や、ナマ目じゃそんなによく見えないってゆーのに。
 でも、なんか。

 あそこに、オサ様がいる。

 それだけが、すべてだった。

 なにしろわたし、現実について行けてなくて。
 ココロはすこーんと渇いたまま。

 涙なんて出ませんことよ。だっていつも通りだもん。あのひとが「いなくなる」なんて、認めてないもん。
 や、もともと涙腺弱いから泣いてはいるけど、こんなの、「泣いた」うちに入らない。わたしが好きな人見送るならこんな半端な涙では済まないだろう。だから、泣いてない。涙なんか出てない。

 なにも感じられないから、ただ見つめる。
 記憶させておく。考えるのはあと。五感解放して、なんでもいいから触れておく。

 繰り返されるカーテンコール。幕が上がって。そのたびに、オサ様が笑っていて。
 閉まって、また上がって。
 そのたびに、笑顔があって。
 言葉なんておぼえてないけど、笑顔だけおぼえていて。

 きよみを皮切りに「アデュー!」と叫ぶ退団者に熱い拍手が送られて。
 マイクがないからナマ声、叫び声なの。みんな声よく通るよね。
 おかげでオサ様の最後の「アデュー(男役声)」が聞けた。

 
 イベントだから。大きな大きな祭りだから。
 渇いたアタマの中で、冷静に計算している。どこでなにをする、どう行動する。
 カテコに最後まで参加して、それから劇場を出てパレードの場所取りをする。わたしは西の人間で、東宝でのお見送りはろくにしたことないから、どこにいればいいのかわからない。流されるままに劇場入口前に立つ。
 見届けなきゃ。見届けなきゃ。
 納得していないし、現実感ないままなんだから、それこそきちんと見届けなければ。
 友人たちに「貧血起こさないでね」と何度も言われていた。トシのせいか感情が激し過ぎるとカラダに来る。友人たちはスクリーン組なので一緒に出待ちできない、気分が悪くなってもひとりでなんとかしなくてはならない。
 しっかりしなきゃ、体調管理して、誰にも迷惑かけないで、最後まできちんと見送るんだ。当たり前のことをしっかりやるんだ。

 この大きなイベントに、大きな祭りに、最後まで参加しきること。
 それをいちばんに考え、気張っていたんだと思う。

 人混みの後ろから、退団者たちを見送り。
 立さん、きよみ、ひーさん、としこさん、と数えるうちに、心臓がばくばくしてきて。
 なんかよくわかんないけど、すごくこわくなって。

 オサ様が現れたとき、そのばくばくは一気に消えた。

 それが何故かはわからないけど、なにかぱんと弾けたみたいにクリアになって、ただオサ様を見ていた。
 袴姿で、お花を持って歩く人。
 ちっちゃな姿、ちっちゃな顔。
 白くて、笑っていることだけわかる。透き通った姿。

 拍手と、叫び声。
「オサさん愛してる!」「ダイスキ!」……あちこちから、波みたいに声があがる。あがって、消えて、またあがって。

 寄せては引いていく、波みたいに。

 そしてオサ様は、海の真ん中を渡っていく。

 荷物全部握って、オサ様追いかけて移動した。人混みの後ろを、他の人たちと一緒に走った。わたしだけじゃない、たくさんの人が走り出している。
 オサ様の背中を追って。
 人口密度がすごいから、ちゃんとした走り方はできないが、ばらばらと移動していく。

 声が続く。
 愛を叫ぶ声が続く。
 瞬く光が、夜を切り取り続ける。
 人混みの向こう、あの光の中に、あの人がいる。

 劇場の角、帝国前の交差点あたりはすごいことになっていて。
 日比谷公園のクリスマス・イルミネーション帰りの人たちと、一般車、そしてヅカファンとで大混乱、クラクションと悲鳴と、愛を叫ぶ声と。
 あちこちから寿美礼サマを追いかけてきた人たち、少しでもその姿を見ようとあがいている人たちと、わけわかんないまま盛り上がっている一般通行人や野次馬などが一緒になって、歩道もパニック状態だった。

 ひとりの年輩の女性が叫んでいた。

「オサさんの車なら、行ってしまったよ!!」

 ほら、あれだ。
 彼女が指し示す向こうに、混乱の最中、帝国ホテルの方へ向かう車がちらりと見えた。

「オサさんは、行ってしまったよ!」

 その声に呼応して、浮き足立っていたファンは沈静化した。押し合いを繰り返していた人々がそれをやめ、三々五々散っていく。
 ヘタレなわたしはいつも人混みのいちばん後ろにいて、押し合うほどの気力もなかったが(まあ、後ろからでも見えるし)、前方で押し合っていた人たちが一気にいなくなったので、いきなり投げ出されたような感じになった。

 オサさんは、行ってしまったよ!

 その声が、何度も何度も胸の内で響いた。

 で。
 ……で。

 自分でも、わけわかんない。

 いきなり。
 涙が出た。

 泣かなかったのに。泣けなかったのに。むせび泣く劇場内で、渇いたまんま見送ったのに。
 ふつーに観劇していたのに。今までと同じで、チガウことなんかなにもなかったのに。すこーんと渇いていて、涙なんか出なかったのに。

 オサさんは、行ってしまった。

 オサ様は。春野寿美礼は。
 行ってしまった。

 なにか壊れたみたいな、ギャグマンガみたいな、蛇口ひねったみたいな、涙だ。
 自分でもびっくりして、混乱して、顔隠して声殺すのに必死だ。や、いくらなんでもみっともない。
 おかしい、恥ずかしい、みっともない。そんな、世間体を気にする部分と、なにが起こったの、という混乱と。

 アタマがぐちゃぐちゃでわけわかんなくなっているその胸の中で。
 繰り返されている。

 オサさんは、行ってしまった。

 あのおばさんの声。や、自分の声か?

 どうしよう。あたし、どうしたらいいんだろう。
 や、どーするもこうするもないが。ほんとにわかんなくて、ぐちゃぐちゃで、とにかく人目を避けてビルの隙間の小さな空間に逃げ込んで、そのまま坐り込んで泣き続けた。

 自分がなにを泣いているのかもわからない。
 考えることが出来ない。

 何年ぶりだろう。
 しゃくり上げるくらい泣くのって。

 よく泣く人間なんで、多少の涙は「泣いた」うちに数えないのだけど。ここまでアホみたいに大泣きしたのは、いつ以来だ?
 嗚咽を我慢しながら泣くとかはあっても、手放しで泣いたのはいつ以来だ?

 自分の反応自体についてゆけなくて、そのことでも混乱し、感情が激して余計不安定になったのだと思う。

 あとになってからだから。
 さんざんうだうだ考えて、わたしが答えにたどり着いたのは。

 わたしは、春野寿美礼に「永遠」を求めていたんだな。

 ……そんなこと、わたし自身思ってなかったから。ただもう、「永遠」を失ったことで、取り乱していた。

 「現実」に打ちのめされていた。


 公演ごと、観劇してすぐにメモを取らなきゃわけわかんなくなる、「本日のジェラールさん」。
 だってオサ様の演技は日替わり、回替わり。いつどの回でどんなだったか。1回1回メモらなきゃ混ざっちゃうよ、わけわかんなくなるよ。だってオサ様だもん。

 つーことで、メモも取らずに『アデュー・マルセイユ』5公演連続で観たので、いつどこでどうだったか忘却の彼方。わたしの貧弱な海馬じゃ記憶できないってばよ。

 だから順不同のジェラールさん。いくつかの回が混ざっている可能性もあるが、もう知らん。無理。いっぱいいっぱい。

 
 なんだかご機嫌なジェラールさん。
 マルセイユはなつかしく愛しいところであるらしい。
 とてもフレンドリーで誰にも彼にも優しい。笑顔笑顔。
 マリアンヌにも最初から好意的。モーリスには興味なし。
 シモンより、ジャンヌにやさしく、興味持ってる? ヲイ、それってただの女好き?(笑)
 ご機嫌が高じてホテル・ネプチューンでもハイテンション。「マリアンヌに惚れてるのかと思った」吹き出さんばかりの口調。ジェラールさん、笑いすぎ。
 シモンに詰め寄られるときも「今はナニも言えない」がやっぱりハイテンション……柔和すぎて笑っているよーに聞こえる背中。や、それじゃシモン怒るってば。
 だけど銀橋での絶唱は悲痛で。……やっぱりここもハイテンションなんだろう。
 反面、マリアンヌには怒鳴らない。彼女にはずっとやさしい。最後の別れも、笑顔笑顔。そんな風に笑われたら、行くしかないね、マリアンヌ。
 ……残酷かもよ、ジェラールさん。

 人格が一定していないジェラールさん。
 ご機嫌だったり、怒りっぽかったり、無関心だったり。場面ごとに性格ちがってるよヲイ。
 でもモーリスには興味アリってゆーか、壮くんいじるのたのしい?>オサ様
 ジェラールのモーリスに対する温度がいちいちチガウ。とびきり冷ややかだったり、熱かったり。
 壮くん大変だ、どう返し、どう演技を返すか。ぴりぴりしてるのがわかる。すげーな、あの壮くんを緊張させるオサ様。さすがオサ様(はぁと)。
 壮くんが毛を逆立てた猫みたいでたのしい。すごい集中してるね、彼。

 ところどころとてもアンニュイなジェラールさん。黙っていると別次元? 戻ってきて。
 マリアンヌにやさしいのはデフォ? あんなにやさしくされたら、泣くしかないよなあ。黙って旅立つしかないよなあ。

 シモンとマリアンヌが近づいて来ているよーな。ジェラールさんの中で。どっちも大切な、守りたいモノ……。
 でもジェラールを守るために銃を抜くのはシモンで。シモンはマリアンヌぢゃないから、黙ってあきらめなくていいんだよ、ジェラールさん。

 モーリスとのバザー会場でのケンカっぷり(笑)は、彼に無関心に見えた1回以外はみんなノリノリで愉快なことに。
 握手で手を離さずモーリスに「イタタ」と言わせてみたり、「あんな構え方じゃやられるのはオマエだ」と「もっとマシな手を考えろ」が意地悪だったり、投げ捨てるようだったり、「オマエのかーさんデーベーソ」的だったり。
 石鹸販売に関しても、ふたりでがるがる牙をむきあっている、互いを出し抜こうと必死になっている様がもお……。

 えーとね、回を重ねるごとに、最後の「アデュー」の台詞が力強くなっていった。これだけは覚えている。
 カウントダウンしているみたいに、強く、覚悟のある声に、表情になっているの。

 アドリブ部分はさらにもー、よくおぼえてない。「物語」の中のジェラールさんを魂に入れ込むのに必死で、お遊び部分はわたしのなかに入ってこない。

 元石鹸工場で「こうやって作るんだ」と石鹸講座をご満悦で披露するシモンに、「それ、オレが言ったんだ」とジェラールさんが笑いながらぽそりと言ったの、いつだっけ。シモンのうんちくがその一言でまるっとジェラールさんの手柄に。
 かなり独り言めいた、タイミングもボリュームもけっこう微妙な感じの一言だったんだが。
 でも客席は爆笑しているし、なにより一瞬呆けたシモンの顔が見物だった。
 大変だな、まとぶ……(笑)。いじられるのは壮くんだけぢゃない。がんばれー。

 石鹸アーティスト・シモン作のレビュースタァ・ジャンヌ……もとい「雪だるま」を、ジャンヌが「シモン?」と言い出したのは、いつのアドリブだっけ?
 グッジョブ、ジャンヌ。
 てゆーかみんな、思っていたよね、あの雪だるまのアタマの曲線……シモンのぴったりオールバック頭を彷彿とさせるって。

 そして思い出すのは、ジェラールさんの、シモンの頭を撫でる手つき。
 大切に、愛しそうに、頭のカタチをなぞるように撫で撫でするあの手つき。
「アタシが雪だるまに見えるっ?!」と噛みついて去っていくジャンヌを見送り、ジェラールさんが「そっくりだ」とぼそりとつぶやくの……シモンのことだよねえ?
 話を聞いていて、雪だるまがシモンにそっくりって言って笑ってるんだよね? あの愛しい曲線、撫で撫でせずにはいられない曲線がそっくりだって……あ、あれ? チガウの??
 
 
 「本日のジェラールさん」の中に、『ラブ・シンフォニー』の話も混ぜてしまう。だって日替わり回替わりは同じだし(笑)。

 ちょうちょの前でスキャットなオサ様は、いちばん気分が出るところ。
 歌い終わって舞台中央に出てきて、「ホゥ!」とか声を上げるまでの空白部分の、あの緊張感がたまらないなあ。
 観客の集中力もすごいんだもん。食いつく食いつく。
 わざと長く長くタメてみたり、首をコキコキ鳴らしてみたり。みんなみんな、オサ様の手のひらの上。

 噂には聞いていたが「キンバラさ〜〜ん!」の掛け声はなくなったのね。
 それに、スパニッシュの銀橋スタンバイ時も靴音しか聞こえないし。

 なくなったといえば、開襟プレイがなくなったのは何故?!

 ちょうちょで登場した際に「あれ? なんか胸開いてるなぁ」と思ったら、帽子を投げたあとに開襟しない、胸をはだけない。
 最初から開いてるから、サービスなのか? や、でも、わざわざみんなの前で開けるつーのがサービスだったのでは?
 どーでもいいことなのかもしれんが、ショックでした(笑)。

 わかりやすいショーストップは、こちらに来てもないんだね。
 ファンはいつまでも拍手をしたいのに、オサ様がソレを許さない。いくらでもその音に空間に身を浸していられるだろうに、彼はすぐにソレを打ち切る。次へと進む。

 ソレが寂しく、また誇らしい気持ちにもなる。

 観客もまた、オサ様の気持ちと同じに、ぴたりと拍手をやめる。

 ショーストップはしない。
 進み続ける。

 確実に、終わりに向けて。

 
 
 どうしよう。
 終わってしまう?

 
 こわいのは、現実と直面すること。

 わたしは春野寿美礼に多大な期待を寄せすぎていて、ナニがわたしの思い込みで、ナニが現実なのかわからなくなっている。
 わたしは最近やって来たにわかファンで、その上オサ様いちばんの本物のファンでもない。
 真のファンの外側で、勝手にファンして崇拝して、舞い上がって大騒ぎしている。

 や、もお、ハルノスミレ、神! と、本気で思っていたので、神様相手にどう過ごせばいいのか混乱し、盛大に空回ることになった。
 「神」とか、冗談で言ってても、本気でそこまで傾倒したことないもん。はぢめてだもん。わかんないよ。

 空回り上等!な人生なんで、大変なのも辛いのも自業自得、ぜんぜんかまわないんだけど、や、それでもいろいろつらかったっす。

 東宝公演がはじまったあたりから、なんかヘコんでブログ半月以上放置したし。その間、書くつもりのことが溜まり続け、今もまだ追いついてないし。
 つーことで、東宝にもなかなか観に行けなかった。チケットがないこともあったが、「なくても行く!」というには、ヘコみすぎていて。

 いろいろ思って考えて悩んで、あとになって出てきた答えは。

 わたしは、春野寿美礼に「永遠」を求めていたんだな。

 ってこと。

 なにしろオサ様は「神」なので。「永遠」ぐらいあったりまえにわたしに与えてくれると思っていたのですよ。

 でも、そんなもんあるわけなくて。
 わたしを置き去りに、いなくなってしまうわけですよ。

 そのことが耐えられなくて、ぶっちゃけ、オサ様、うらみました。

 わたしがこんなに愛し、必要としているのに、なんでわたしがのぞむままのハルノスミレでいてくれないの。
 「卒業が夢でした」とか言って、わたしを置き去りにすることを宣言しちゃうの。わたしを捨てることが夢なの? ひどいっっ。

 オサ様が務めを果たし、透明になっている、今、卒業することが必然であることはわかっている。
 オサ様が今、しあわせそうなのもわかる。

 現実を認め、納得している部分と、絶対に嫌だと思っている部分がわたしの中にあり、もーどーしよーもない。

 自分がバカだとか理不尽だとかナニサマだとか、自覚はある。ほんとうに好きなら、相手のしあわせをいちばんに考えるべきだってのもわかるけど、アタマでわかっても感情が治まらない。

 ただ、嫌なんだ。
 「春野寿美礼」がいなくなることが。

 よーするに、それだけなんだ。

 寿美礼サマがなにをして、どんな演技をし、力をセーブしたり流したり、反対に暴走したり、なにをしてもいいの。

 春野寿美礼がタカラヅカにいてくれれば、なんでもいいの。

 タカラヅカは新陳代謝するところ、花の命は短くて、卒業するから美しいことも、また卒業の儀式が華々しくけじめとして重要なことも、後進に道を譲ることが大切なことも、ジェンヌが虚像でも偶像でもなくひとりの人間で女性でそのあともずっと人生は続いていて、そもそもわたしのために生きているわけぢゃないって、わかっていて。

 それでも、わたしは勝手にヘコんでいた。
 地球が、わたしを中心に回ってくれないことに。

 あのひとが、いなくなってしまうことに。

 「永遠」が存在しないことに。

 ……アホなんです。ほんとに。
 誰でもわかってることなのに、自分でもわかってるつもりなのに、悲しいのは止められなくて。腹立たしかったり口惜しかったりするのは止められなくて。

 勝手に、「世界」に裏切られた気がして、部屋で膝抱いて丸まってました。

 そうしていれば、「自分」を守れる気がして。

 現実を見るのが嫌で、大阪でくすぶっていた。とりあえず日常送って、観劇もして。ふつーに生きているつもりで。
 見なければ「なかった」ことになる。ハルノスミレが、わたしの神がわたしの永遠が、いなくなるなんて現実、「なかった」こと。

 だけど最後のときが近づいて、なんか自分でもナニやってんだかわかんないまま、チケットを探しはじめる。
 もっと早くから用意しときゃーいいのに、ほんとぎりぎりになってから。
 チケット探さずにいたのも、自分への言い訳だったんだよなあ。「チケット持ってないから、行けない」って、理由をつけるため。
 で、最後の最後にあわてて。こんなことなら、最初から腹くくって用意しときゃーいいのに、いらん苦労して。

 でも、「終わってしまうから、とにかく行かなきゃ」と思っただけで、心の整理もナニもナイままなので、オサ様を見て自分がどう思うか、どうなるのかもわかんない。
 見当つかないまま、とにかく東宝へ行った。

 そして。
 ムラ千秋楽の日からだから、およそ2ヶ月ぶりに、オサ様に再会した。

 で、わたしは。

 ふつーだった。

 いつもと同じ。
 『ファントム』とか『明智小五郎の事件簿』とかを観ていたときと同じ。
 ふつーにオサ様好きで彼の演技を、歌を、たのしんだ。

 退団? ナニそれ?

 涙なんて出ませんことよ。だっていつも通りだもん。退団公演なんかじゃないもん。

 ココロがどっか、すこーんと渇いていて。

 ふつうに、たのしんだ。

 つーことで、翌日欄は「本日のジェラールさん」いってみよー。


 猫を膝に載せてBSの『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』と『TUXEDO JAZZ』を見ているウチに、中日『メランコリック・ジゴロ』の配役が発表されてました。

 えーと。

 まっつ×一花キタ?!

 正塚、どんだけまっつ一花好きなん?! 何回このふたり組ませたら気が済むん?!
 新公時代からずっと、好みで配役してないか??

 うれしいっす。

 ありがとう正塚せんせー!
 まっつ×いちかダイスキ〜〜!!
 またこのカップリングが見られるなんてうれしいよー。

 ……て、CSのマミさんだかタモさんだかの映像特集で見ただけなんだけどな、バロット役が奥さんと夫婦漫才してるとこ。で、マミタモ一緒にいたし。

 そーゆー意味で、まっつの相方はまりんになるの? マミさんの役、タモさんの役、まっつがどっちになるにしろ、相方はてっきりみわさんだとばかり思ってた。
 『スカウト』のとき、まりんとみわっちの役は逆であるべきだとかなりの熱量でここで書いたと思うけど……ハリー、またそんなことを。
 で、その『スカウト』のときやっぱり、みわっちが演じているサムは、マヤさんがいたらマヤさんがやっている役だと書いたんだが……次はほんとにみわっちがマヤさんの役を?? いや、「演じ甲斐」といったらきっとすごーくある役なんだろう。サムもそうだったもんなぁ。
 しかし、正塚のみわっちへの評価はよくわからん……。いろんなことをやらせたいのかな。(ちなみに、水しぇんへの評価もよくわかんない)

  
 先のことはともかく。

 今晩から東宝へ向けて旅立ちます。

 『明智小五郎の事件簿』のオサ様も、『TUXEDO JAZZ』のオサ様も、あまりの美しさに溜息しか出なかった。
 これほどの美しさを持つ人と、別れなければならないなんて。

 なんかもう、オロオロしたままだ。
 自分でもわけわかんないけど、とにかく旅立つ。行く。

 それしかない。


 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる、その3。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 はい、スパニッシュです、まっつがなんかありがたいことになってます。

 下手花道で踊るまっつは、端正です。
 わたしはダンスの善し悪しはさっぱりわからんのですが、まっつの動きはなんかおぼえました。手の表情に特徴ある。
 大きくない踊り方。外へ向かうのではなく、確実に踊ることを念頭に置いたような。

 歌声は回数を重ねるごとに豊かさを増し、ついでに顔の表情が大きくなった。

 うっとりしてます。
 まっつ的キメ顔してます。

 表情ひとつひとつも、すげー作り込んでいる。計算している。指先の動きとか計算しているよーに。
 ラフに流すとか、感情にまかせるとか、そーゆーことがまったくない、すげー気張った姿。

 うっとりしたナルシーまっつが、なんかちと恥ずかしいです。背中がむずむずします。
 自分で自分を抱きしめる振りとか、アンニュイうっとりなままでやるので、さらにステキです。

 
 最後の場面は黒燕尾、まずは大階段に登場。
 まつださんの黒燕尾姿は、残念だが華やかではまったくない。衣装にきらきらがついてないからとか、そーゆー意味ではなくて。
 でも空気の緊張と、小細工ナシの「男役」としの技術が気持ちいい。
 それにしても髪型変わらないなあ、ショー全体通して……とか、ラスト場面だからこその感想を飲み込みつつ(や、多少は変わっているのよ、でも全部印象が同じっちゅーかええっと、ゲフンゲフン)、その端正さを堪能する。
 中村Bだから立ち位置は上から順番、探すまでもない(笑)。

 寿美礼サマがセリ下がったあと、後ろを向いて汗を指で拭くのは身だしなみ、歩きながら髪を撫でつけるのはかっこつけ、まとぶさんのドスの聞いた歌声に続き、みわっちとふたりで歌う、太い低音が好き。ときどきみわさんの声をかき消す勢いで声が響いているのを聴いては「ヲイヲイ(笑)」と思う。

 まっつが笑顔になるのは、デュエットダンスになってから。
 ひーさんとのダンスでは、とてもくだけた自然な笑い方をする。だからそれまでの大人っぽさ(落ち着き?)から、年相応の男の子になる感じ。
 パートナーの女の子の、顔やダンスの表情ひとつひとつに反応する、ご機嫌なあんちゃん。ひとりだけに向けられる「キミと踊れてたのしい!」オーラが心地いい。そのくせ、途中男役だけで一列に並ぶところでは、途端にかっこつけて客席に対していい男ぶっているのがいい(笑)。

 
 パレードはまさかのセンターひとり降り。階段上にスタンバイするところからオペラでガン見しているんだけど、歌位置にたどり着くまでにも口動いてるよね? 歌っている風でもなく、数でも数えているのかなあ、という印象。
 最初はすげー地味だった歌声が、日に日に場に相応しい力と色を帯びていくのがたのもしかった。(や、最初のうちはどーなることかと手に汗握った)

 なにはともあれ、まっつまっつまっつ。
 群舞の隅っこだとしても、探して眺めるわけだから。これから先なにがどうなるかわからないのがタカラヅカ、それでもまっつまっつな日々は続くのです。
 少しでも長く、続いて欲しい。

 
 キャトレで発売している、『ラブ・シンフォニー』東宝版のまっつ写真がかっこよくてお気に入りっす。
 いちばん好き!な、「ラブ・ゲーム」のモスグリーンのスーツ姿。

 わたしの目にアタマに、録画機能がついていればなぁ。まっつアングルを自在に再生できればいいのに。
 ……と、ヅカにハマったときから20年、変わらぬ欲望です。カタチに残ることはないから、せめて文字に残しておきましょう。

 まっつまっつまっつ。


 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる、その2。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 クールなまっつはコストパフォーマンス悪そうな、辛気くさそうな、気怠いっちゅーか不幸そうっちゅーか、ステキな雰囲気を持っている。
 が、ホットなまっつは一転してくすぐったいっちゅーか、いたたまれないっちゅーか、こまったなヲイ、てな、これまたステキな雰囲気を醸し出す。
 ……どっちにしろステキってゆーてるだけのよーな気もするが、気にしないように。

 ぴんくなまとぶさんたちがセリ下がっていくのと反対に、中央をせり上がってくる美女ひとり。
 パイナポーな彩音ちゃんだ!!
 彼女の両脇に躍り出る、テンション高いお祭り野郎ども! みわっちとまっつだ!! ……え。

 みわっちはわかる。ハイテンションはまかせとけ!なホットでスェクスィイイなあんちゃんだ。しかし、まっつは……。

 まっつのキャラクタと正反対っ!な、お祭り野郎まっつ! 白いスーツに緑のテロテロ開襟シャツ!

 あのー。
 まっつの開襟シャツ姿って、なんかすげー新鮮なんですが。
 あんまし胸開けてるイメージないから。
 まっつは第一ボタンまで留めてネクタイきゅっと締めてるイメージだな。肌を見せるなんてとんでもない、お婿にいけなくなっちゃうわ的というか、ええっと。(まちがってます)

 基本1階席でしか見ていないので、回数は少ないんだが2階で見たとき、必死になってのぞき込んだんだが胸元はがっちりガードされてました。開けている部分以外見えない。……や、開襟シャツならのぞき込むのが人の常だろう! ゆーひくんとか、中を見せてくれる気前のいい男前だっているんだし!(まちがってます)

 本舞台で彩音ちゃんに絡んで踊っているときはまだいい。あくまでも、彼女相手にキザっているわけだから。

 銀橋に出てきてからですな。
 いたたまれなさMAX! に、なるのは(笑)。

 こっから先の振付がすごい。
 腰振り、腰回し、ホットホットホット! あちちあち。

 ……恥ずかしい。
 
 高温なまっつがなんか、恥ずかしいです。正視できません。ガン見してます。(まちがってます)

 ちょうちょなオサ様登場に合わせて一旦はけたあと、あの「太股上げ降ろしダンス」(ナニその表現)を踊るオサ様に加わるカタチでまとぶん、壮くんと登場し、ついにはまっつもみんなと一緒にわらわら現れる。

 帽子があるときはまだいいんだがな。
 彩音ちゃん率いる美女連合に場を譲って一旦下手に寄ったあと、それぞれが帽子を袖へ飛ばし、また中央に戻ることになるわけだが。

 まっつは寿美礼サマと一緒にいてくれるので、ひとつのフレームに収めやすくて助かる。なにをするでもなくセクスィなオサ様と、黄昏れてるまっつを心ゆくまでガン見。
 でもね、寿美礼サマが帽子を取り、続いてまっつが帽子を取る……様をぼーっと見ていちゃダメよ、まっつを見届けたらすぐにオサ様の開襟プレイを見なきゃ!!

 オサ様は帽子を袖へ放り投げたあと、何故か胸をはだけるから。
 なんでかわかんないけど、サービスしてくれるから。

 自分の胸元へ手をやり、シャツをくつろげるオサ様ガン見。あああありがとうございます、寿命がのびます。(まちがってます)

 オサ様と彩音ちゃんのダンスのあと、端っこにいたまっつたちもわーっと戻ってきて総踊り、帽子無し。

 さあ、全開で恥ずかしいです。

 テンション高いです、温度高いです。唇引き結んで、エロく腰回してます。
 らしくもない開襟シャツです。白いジャケットには謎なちょーちょついてます。

 ここで注意。
 まっつを見るのはいいが、大伴さんは視界に入れないようにしましょう。なんかひとりだけ別の振付で踊ってらっしゃるので、視界にうっかり入ると、目を奪われてしまいます。マジで危険だ、みおさん。

 まっつは笑わない。まっつだけでなく周囲の人誰も笑わない。真剣勝負にエロエロしている。そんななか、みおさんひとり、全開の笑顔だ。……や、だからそこで視界を奪われちゃダメだってばっ。がんばれわたしっ。

 まっつをはじめ、みおさん以外の人が笑顔になるのは、オサ様が途中退場し、オトコマエだぜラテン男@まとぶが「ハァーーッ!!」と叫んだあと。

 こっから先は無礼講。みんな笑顔全開、振りもちょっと(かなり?)自由にバラバラになる。
 赤ジャケットオサ様登場で、祭りは最高潮に。

 オサ様の銀橋大暴れは、途中からエアギターがなくなって寂しかったわ。でも「キンバラさ〜〜ん!」があるからヨシ。

 全開笑顔まっつの腰振り&腰回し、恥ずかしい〜〜っ!!(笑)

 温度高いよまっつ、テンション高いよまっつ。
 アツいまっつってなんでこんな恥ずかしいんだろう。いたたまれないんだろう。

 でもわたし、銀橋から本舞台に戻ったあとのまっつがのりのりでくるりと一回転するのが、すごーく好きだ。

 まわるまっつ。
 大口開けて笑いながら、腕を振り上げ腰でリズムを刻みながら、くるりと回るまっつ。

 最初に見たときは「アドリブ? 回っちゃうくらいハイテンション?!」とびびったが、よく見ると隣でめおちゃんも同じように時間差で回っているので、振付だと思う。
 しかし、かなり自由に踊っている場面なので、まわるまっつは新鮮というか見慣れないというか……微妙?(笑)

 いいなあ、かわいいなあ。

 ラテンまっつは、いたたまれなくて好きだ〜〜。

 
 そーして次がスパニッシュ。
 ありえないことにひとりで下手花道登場、ひとりでひとしきり踊って、本舞台に来て独唱ときたもんだ。

 まっつがそんな扱いしてもらえるはずがないと信じ切っていた初日の混乱は、すごかったです。や、わたし的に。

 まっつの歌で寿美礼サマはじめ、組子のみんなが踊り、まっつ自身踊る寿美礼サマに一瞬絡むことになるという、奇跡の場面。

 いかなる場合もここではまっつガン見、どこからでもオペラでピン撮りっす。おかげで他の人たちがどーゆーことになっているのかさーっぱりわかりません。や、中央のことはどーせDVDその他でフォローできるし。でも、「まっつアングル」は存在しないから、ナマで見届けなくちゃ!!

 ……てことで、続く。


 たかちゃんキタ〜〜っ!!

 『茶々 天涯の貴妃』試写会行ってきました。

 や、今日は午前午後とゆーひくんの『HOLLYWOOD LOVER』Wヘッダーして、それから『茶々 天涯の貴妃』試写会。宝塚から、大阪のリサイタルホールまで駆けつけましたよ。びんぼーなので阪急使って。梅田駅から20分でリサイタルホールまで踏破したぞ。帰宅ラッシュの波を逆走するのは消耗した……。(お金のある人は、宝塚からJRで北新地駅に行きましょう。もしくは西梅田から1駅だけ地下鉄に乗り、肥後橋駅で降りましょう)
 なんのなんの、同じようにゆひバウWしたあと、『A-“R”ex』を観に行ったnanakoさん(しかもサバキ待ち)にはかないませんとも(笑)。

 試写会告知時になんの予告もなかったけれど、試写会前の解説にて、「上映後に出演者の舞台挨拶があります」と言われ……出演者つったらふつー主演が来るじゃん? 以前同会場へ試写会見に来たとき、主演女優の長澤まさみちゃんとかも挨拶来てたし! リサイタルホールだから、舞台あるし! でもって、舞台があるからその分スクリーンが遠いので、前寄りの席に坐ってるしあたし! しかも、観劇帰りだからオペラグラス持ってるし!!

 たかちゃんが来るってみんな知ってたのかなあ。そのわりにヅカファンらしき人は少なかった。
 なにしろスポニチと競艇主催の試写会だからなあ……おじさん率おじーさん率高い。スポニチで試写会告知見たとき「この客層相手にこれだけの人数のご招待記事出しても、応募者少ないぞ? ハガキ出したら絶対当たるな」と思って1枚応募、当たる気満々行く気満々で予定を空けて当選通知を待っていた(笑)。

 まさか、主演女優と監督の舞台挨拶付きだとは思ってなかった。
 わーいわーい。

 て、ゆーか。

 はじめての、ナマたかちゃんなの。

 あの日。
 2006年7月2日。

 美しい美しいたかちゃんを、東宝前で見送ってから、はじめての逢瀬。
 コンサートもなにも、観てないし。FC入ってるわけじゃないから、イベントとか知らないし。

 1年半ぶりに会うたかちゃんは……ええっと。

 セミロングの茶髪に、黒のレギンスにピンヒール、黒のミニスカ……もしくはチュニックかな? 黒と茶でまとめているわりには「びみょー……」なファッション。
 もちろん、並び立つ監督より背が高かった(笑)。

 ありきたりな挨拶の他、テンション高い司会者さんがいろいろ話を振るんだが、たかちゃんの喋りは、ええっと、その。

 相変わらず、アタマ悪そう……。
 たかちゃん、変わってない。わーい。(←うれしいらしい・笑)

 すぐに場がしーんとしてね。会話が続かなくてね。司会者の質問の意図を、ぜんぜん酌んでいない返答したりね。
 いやあ、たかちゃんだわ。すっごくたかちゃんだわー(笑)。

 場が冷めているのを察してか、司会者さんが「大阪出身の和央さん」としきりに水を向けているのに、大阪弁で話したりしないしね。地元ならではのこととか言わないしね。

 そこはべったべたな大阪弁を披露するところだろう!! なにか地元ネタでも披露して「こんなに大阪人です」とアピールするところだろう!! と、じれじれした。
 客席にいるほとんどは「誰この人?」状態の大阪のおっちゃんたちなんだから、「大阪の女の子」をアピールすれば親近感持ってもらえるのにー。

 てゆーかこのトーク、台本ないんか……。
 司会者がなにか言うたび、たかちゃんが詰まるのが気になった。

 「タダだから見に来た」だけのおっちゃんおばちゃんたちに、たかちゃんのことを、好きになってもらいたい。好意を持ってもらいたい。
 そう思いながら客席にいる身としては、はらはらし通しでした。や、わたしが気をもんでも仕方ないんだが。

 男役時代のかっこいいたかちゃんは、そのままヅカファン以外の人にも「かっこいい」と思ってもらえる人だと思うから、服装も「かっこいい」系で来てくれた方がよかったかなぁ、とか。
 しかしびみょーだ……あの服装、あの髪型(笑)。

 や、トークがぐだぐだでも、服装ビミョンでも、とにかくたかちゃんに会えたのがうれしかった。
 うれしかった。
 もー、すげーうれしかった。

 
 で、問題の映画『茶々 天涯の貴妃』は。

 おもしろかった。

 意外。

 いやその。

 ゆりちゃんの例を知っているからさ。
 当時ものすげー人気で、ものすげー鳴り物入りで芸能界入りした天海祐希が、当初どんなへっぽこ映画でコケまくっていたか、刷り込まれているから。
 『MISTY』とか、ひどかったなー……。ガラガラの映画館で、ツレとふたりぽつんと見たなー。わざわざポスカ付き前売り券とか買って、見に行ったんだよ、ヅカファンとして。

 女優としては素人で、世間的知名度ゼロなヅカの男役をいきなり主役に使っての時代劇映画ときた。
 こりゃ絶対つまんないぞ、と。
 わざわざ史実無視の男装シーンまででっちあげての「ヅカファン動員」目当て。『千年の恋 ひかる源氏物語』くらいつまんなくてどーしよーもないものにちがいない。

 と、思い込んでいたので。(つかオレ、天海の映画けっこー見てるんだ……女優・天海祐希は好きよん)

 ふつうに、映画として、エンタメとしておもしろいので、おどろいた。

 茶々という女性がどーゆー人で、どんな人生をたどったのかは、ふつーに知っている。……て、みんな知ってるよな?
 信長の妹・お市の方の娘で、秀吉の側室で、秀頼の母で、淀殿で、大坂城で息子と共に果てる人。
 原作は読んだことナイ。わたしの戦国時代知識は司馬遼太郎に偏っている。司馬遼の淀殿はあんましいいイメージないっす……。

 その、よく知る女性の一代記を、エンタメとして気持ちよく再構築してくれた。
 現代女性が感情移入できるカタチで。

 秀吉@渡部篤郎がイイ。

 かわいい。
 秀吉は茶々よりはるかに年上の、権力尽くで彼女を手に入れる男なのだけど、設定だけ見るとひでー男なんだけど、この物語の中では十分魅力的なの。
 欠点はいろいろあれど、「恋」できる相手なの。
 この男を抱きしめ、この男の夢を、子どもを、守って生きていこうと思えるくらいの。

 やっぱ秀吉を愛せないと、はじまらないよなー。
 秀吉が愛すべき男だから、それだけでもたのしい。

 たかちゃんファンとしては、かなり安心して見られると思う。

 だって、男役時代と、違和感ないんだもんよ。

 でかいよ茶々、でかいよ(笑)。

 ときどき鴨居よりでかくてびびる(笑)。
 秀吉よりでかく見えてびびる(笑)。

 立ち居振る舞いもだが、なにより声が男役のままだ。
 ふつーの声はがんばってたおやかにしているが、高ぶるとまんま男役。いつものたかこ。
 男装してなくても、違和感なし。男装するとさらに、いつものたかこ。

 そして、「茶々だしな。ベッドシーンと、出産シーンは、絶対あるよな」と、おびえていたんだが。

 女になったたかちゃん、までは許容範囲だが、上記ふたつだけは、かなり抵抗ある。ぶっちゃけ、見たくない。

 大丈夫。
 どっちもなかった。

 それどころか、キスシーンもなかった……(笑)。
 すげーストイックに寄り添ったり抱きしめたり程度で、「儂の子を産んでくれ」(プロポーズの言葉)のわりに、性を感じさせる場面はナシ。
 ただ、別々の布団に並んで寝ている場面は何度も出てくる(笑)。

 豪華絢爛……を謳うわりに、女優陣はあまりキラキラしてない、いぶし銀オンパレード。つか、みんな年齢層高すぎないか……? もう少し若くてキラキラした子をそろえてもよかったんぢゃあ……? たかちゃんの年齢に合わせた?
 ええ、ぶっちゃけたかちゃんもあまり美しくないし。舞台では誰より美しいと思っているが、スクリーンではびみょー。なんつーか、地味な、映えない顔立ちだなぁ。
 ちゃんとしたエンタメ映画だったので、映画クオリティ的にはたかちゃんではなく、もっと美人のスクリーン向け女優使った方がよかったのでは? とか、思ってしまう。

 でもわたしはたかちゃんファンだから、ふつーにおもしろい映画に、たかちゃんが主演として出てくれるのはうれしい。……一般人の反応はわからんが。


 忘れちゃいそうだから、とにかくおぼえていることを書き残しておく、『エル・アルコン−鷹−』『レビュー・オルキス―蘭の星―』。今までの観劇時の記憶、思いつくままに、順不同。
 

 いついかなるときも、ゆーほさとるが、わたしの視界の中央にいる件。

 何故なんだ。場面変わってモブだ群衆だ群舞だイエーッ! てなときに、いちばん最初に目に飛び込んでくるのは、いつだってゆーほだ。芝居だろうとショーだろうと。しかも、わたしの真正面にいる。……いやそのわたし、センター坐ったことないから。
 今この瞬間、彼と見つめ合ってる?!(赤面) てな錯覚に陥る出会いばかり。
 あああ、ゆーほよ何故。
 

 最初はそんなことなかったのに、新公後はともみんに気を取られるよーになった。
 いつもの最前列下手端に今回2回坐ったんだけど、ここってとってもともみん席でもある。芝居もショーも、ともみんが何度も目の前に来る。
 1回目は「ふーん、ともみんか」でしかなかったのに、新公後の2回目に坐ったときは……どうしよう、ともみんばっか見てるよわたし!!
 ティリアン効果おそるべし! 新公ティリアンかっこよかったよー。ハートフルでパッショネイトで、かわいいティリアンだったよぉ。それってぜんぜん「ティリアン」ぢゃないけど、要は魅力的な男だったから無問題、ソレでよし。
 しかし極楽鳥んときのともみんの脚の長さは驚異ですわ。いやぁ、ボンバーだ。
 
 
 そのいつもの最前列下手端にて、友人のBe-Puちゃんと並んで観劇したとき。
「あー、おもしろかった」
 と、ショーの幕が下りるなりBe-Puちゃんはしみじみと言い……続けて、こう言った。

「こあらったさんが、いちばんおもしろかった」

 なにを言い出すんだMyフレンド。

「こあらったさん、ジェンヌに目線もらうたび、『はうッ!』ってなってんだもの。横ですっごく反応してるのわかるから、おもしろくておもしろくて。
 『1はうッ』千円として、『7はうッ』はしてたから、チケット代の元は取れたね(笑)。
 とくにしいちゃんに目線もらったとき、飛び上がって『はうッ』ってなってなかった?」

 ……バレてる。バレまくってますよ、どうしよう!

 しいちゃんはね、銀橋から花道へ出るときに、まず、目があって、そこでわたしは十分「はうッ」ってなってたのに、わたしが反応したのを見て、にーーっこり笑いかけたんですよあの人! しいちゃんですよ?! あの太陽の笑顔ですよ?! あの大きな目で、口で、表情で、わたしに、笑いかけたんですよおーっ。ななななんてことするんですか、わたしを殺す気ですか?!!
 ぜえはあ。
 しいちゃんがいってしまったあとも、わたしがしばらく椅子に沈み込んでぜえはあしていたのを、「基本トウコちゃんしか見ません」な顔してBE-PUちゃんたらしっかり見てたのよ! やーねー、もー。

 次はBe-Puちゃんと一緒だったのは千秋楽だったんだけど、そこで会った他の友人たちにもわたしの「はうッ」ぶりを語り出すしな……ええいっ、放っておいてくれ〜〜。

 そのしいちゃんはすずみんとふたりで、千秋楽にクリスマスなとんがり帽子をかぶって現れ、そのかわいらしさで客席をわかせてくれました。
 しいちゃんととんがり帽子というと、『SAY IT AGAIN』を思い出すんだけど……あんときはかっこよかったなあ……ステキに攻キャラでさ……あ、今も攻だと思ってるけど、ヘタレ攻にジョブチェンジしてるからなぁ(笑)。

 で、そのとんがり帽子な千秋楽。曲の終わりに帽子を取ると、アタマの上には蘭の花。しいちゃんは成功したが、すずみんの花は落ちちゃった。残念。
 や、脳天に花載せてるしいちゃんもかわいいんだが、その仕込みをしている姿を想像する方が、かわいくて萌える……しいすずで互いにアタマに花を載せっこしたのかしら。絶対ふたりで確認してるよね、花載せた姿で。
 かわいい……かわいすぎる……。

 
 やはりBe-Puちゃんと観に行ったときのこと。
 クリスマスカード・プレゼントの抽選だっけかをやっていて、わたしはいそいそとあかしの名前に○を付けていた。トウコに○つけて意気揚々なBe-Puちゃんは「誰それ」。
「利助」
「……誰」
「だから利助、『厳流』のときのケロ武蔵の弟分で色気のカケラもなかった小うるさいガキで……」
「あたし、こあらったさんと違って『厳流』3回くらいしか観てないから、おぼえてない」
「3回観てたら十分だろ」
 あのチケ難公演で、会にも友会にも入らずそんだけ観てたら大したもんだ。

 てな会話のあと、芝居が終わって幕間。

「……わかったわ、こあらったさんが言ってた子。顔見たらわかった」
「かっこよかったでしょう?」
「空気読まずにアツ過ぎる演技する子よね、上手ですごいことになっていた、あのエチオピア人」
 キミのあかしインプリンティングは、『王家に捧ぐ歌』、しかも中日公演かよっ?!(笑)
「かっこよかったでしょ? 美形でしょ?」
「……こあらったさんが好きな子だってことはわかった」
「だから、ステキでしょ?」
「こあらったさんの好みだってことはわかった」

 意地でも、誉めないな、こいつ(笑)。

 えんえん実のない攻防を繰り返し、ショーになり。
 わたしがいろーんなスターさんそっちのけで下手端にいるあかしにかまってもらい、舞い上がっている様をつぶさに目撃される結果となる……。

 でもさでもさ、あかし、かっこいいよねっ? 美形だよねっ?
 利助のくせにさっ。利助だったのにさっ。

 ……あかしのクリスマスカードは、当たりませんでした……くすん。
 

「千秋楽のジジババに期待よっ、今からなにするか考えてるってトウコちゃんお茶会で言ってたから!」
 と、トウコファンの友人がすげー熱量で会うたびに語っていた。
 ので、千秋楽の『レビュー・オルキス―蘭の星―』にて、心構えはしていたんだけど。

 トウコちゃんとあすかちゃんのジジババが登場しても、わたしはすっかり油断していた。なにかするとしたら、あの悪趣味なゴンドラを降りてからだろうと思っていたから。

 ところが、周囲に五月雨のように笑いと息をのむ気配が広がっている。ちなみに、千秋楽のわたしは立ち見だ。肉眼ではなにが起こっているのかわからない。
 だってジジババはなにをするでもなく、ゴンドラに乗っているだけっしょ?

 あわててオペラグラスをのぞいた。そこには衣装も髪型もいつと同じなふたりが……同じ……な、ふたり……が……?

 ??!

 ジジババが、逆になってる!!

 トウコばあさんに、あすかじいさんになってる! なにそれぇ〜〜!(笑)

 トウコじいさんは、かわいらしく首を振り振りかわいらしい声で歌っている。ゴンドラから降りたあともかわいこちゃんぶり続行。ばあさんだけどヲトメ。ぶりぶりにかわいこぶりっこ。

 ヒゲでうまったあすかちゃんの声はほとんど聞こえない。そんなじいさんをリードして歌声では置き去りにして、ばあさん絶好調。
 ずけえよヲイ!

 芸人魂を見た。

 
 そんなこんな。

 
 誰を見るのか。見送るのか。
 ソレは正直、そのときになってみないとわからないもんだ。

 星組千秋楽。『エル・アルコン−鷹−』『レビュー・オルキス―蘭の星―』

 退団者、ということでなりふり構わず見つめていたのは、南海まりちゃんだった。

 みなみちゃんは、特別だった。
 その娘役らしい美しさと気品、昨今めずらしい姫役者であること、たしかな実力と華やかさ……それらすべてが好感だったし、ダイスキだったけれど。

 これが最後……そう思って見つめると、思い出されるのは「あのころ」の記憶なんだ。

 『ドルチェ・ヴィータ!』のデュエット・ダンス。
 そして、『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のすべて。とくに、「夜のボート」。

 わたしのシシィが、いってしまうんだ。

 そう思うと、悲しいというよりどーんと胸の中が重くなる。なにか他のものが詰まってしまったかのように。

 シグリット@みなみちゃんは、コケティッシュさが増していて、その賢しさが「うっとうしい女」であり、肉体と狡賢さを武器にのし上がってきた女のしたたかさを感じさせて、ぞくぞくした。
 すっげーヤな女なんだもの!! でも、すっげーかわいい女なんだもの!!
 キライだけどスキ。そんな、魔性の女、小悪魔。くうぅぅ、この女相手なら、そりゃーどんな男もオチるわ。そして、オチないティリアンのオトコマエが上がるってもんだわ。

 ショーでは、最初の白い服で蘭をくわえている場面……鳩なんですかアレって?のところで、すでに退団者たちは胸に花を付けていて、ずきりとさせてくれた。
 なんかイメージ的に、花を付けるのは後半、と思っていたから。
 最初から来るとは思ってなくて、はっとした。

 みなみちゃんの端正な姿を、目で追っていた。

 その長いおみ足も、堪能しましたよ。歌声と共に。

 袴姿での挨拶時、みなみちゃんのパールの入ったアイメイクに、意味もなく見入っていた。
 ああ、きらきらしているなあ。
 瞳がきらきらしていて、目の周りもきらきらしていて。
 特に目の下にまろやかな艶があることに、注目していた。

 涙ではなく、でも、しっとりと濡れているような。

 きれいなきれいな、笑顔なのだけど。

 どこか濡れているように見えて。
 濡れて見えるのは、わたしの目が濡れているせいなのかもしれないけれど。

 
 とくに誰を見るとか、決めていたわけじゃない。意識していたわけじゃない。
 ゆかりくんだってダイスキだし、退団しないからといって他の人を見ないですむわけでもない。トウコちゃん見てあすかちゃん見て、でもって今すげーブーム(笑)なしいちゃんを見て「はうっ」とときめいて(笑)。

 それでもなんか、要所要所でオペラがみなみちゃんを探しだし、喪失感に浸っている。

 わたしの、しあわせの記憶。

 ほんとうに、いい娘役さんだった。

 しあわせでいてほしい。ずっと。ずっと。

 他の退団者のみんなも。これからも花園に残り、戦い続ける人たちも。
 みんなみんな、しあわせで。
 

 ……さびしくてたまらないカーテンコール、退団者を眺め、トウコちゃんを眺め……で、しいちゃんの太陽の笑顔を見て、癒される。

 や、ほんとにクるよ、あの人の笑顔。
 どーんっと飛び込んでくる。
 胸の中の重いモノが、一気に流される。

 『Good Bye,Good Guy,Good Fellow』のときも、そうだったな。
 客席にいたジェンヌはゆうひくんも含めダダ泣きしていたというのに。トウコちゃんとか顔ぐちゃぐちゃにしていたというのに。

 しいちゃんは、笑顔だった。

 彼が泣いていなかったとかゆーことではなくて。
 ただ彼は、ディナーショーが終わって退出するとき、いつものあの大輪の笑顔だった、ということ。

 そしてそのことが、救いだったということ。

 理屈ではなく、癒された。
 あたたかいものに、ひとのこころは救われるんだ。

 
 そんなことを、思い出した。


 発売日なので、朝から梅田へ行きました。
 いつもの時間、いつもの電車。
 いつもの道を通って、できているだろう行列の最後尾を目指す。

 三番街の並びの最後尾といえば、総合案内所の横のムービング・ウォークがない通路。三番街プレイガイドをスタート地点として、ぐるりと回ってコインロッカー前あたりがわたし的いつもの並び位置。

 大劇もバウも、大体同じくらい。
 大劇場公演はムラでの発売が主だから、梅田に並ぶ人は多くない。バウはムラでの発売がないので、その分にぎわう。
 どちらにしろ最近は600人くらいが平均的かな。コインロッカー前が最後尾だと、それくらいの人数。

 ……2007-11-10の日記のコピペで悪いね。なにしろいつもの行動だから。

 ゆーひくんのときは、いつもの場所に最後尾がなかった。いつもの場所をはるか超えて、進めども進めども最後尾がなくて青ざめた。

 そして今回も。
 いつもの時間にいつもの場所に行ったのに、最後尾がなかった。
 つか。
 行列自体が、なかった。

 青ざめた。
 並びの日にち、まちがえた? そんなバカな。前日デイジーちゃんから並び要請来てる、今日で間違いない。

 あわてて、三番街プレイガイドの方へ向かった。

 そう。並んでいる人数が少なすぎて、いつもの場所まで列が伸びなかったんだ。
 よーやくたどり着いた最後尾、周囲の人たちが「人、少ないね」「少ないですね」とポツポツ話している。

 並んだ人数は、なんと約350人だった。

 通常600人ほどだから、半数強、ですか。どんだけ人気ないんだ、宙組。

 しかしわたしは内心ガッツポーズ。
 並んでいる人が少ない、つーことは、当たる確率が高い、とゆーことだ。
 アタリの数は同じなわけだからなっ。

 いちおートドファンの端くれ。最前列でトド様を見るぞっと。

 180番位までを引けば、日にちさえ選ばなければ1列目の隅っこで見られるぞ。2分の1以上の確率じゃん?
 苦手な石田作品だからとりあえず1枚だけ買って、あとの購入権利は宙組ファンのデイジーちゃんに譲って、と算段。

 はりきって抽選して。

 312番を引きました。

 350人中、312番て!
 フタ桁引くより難しいっつの!! どんだけくじ運ないんだわたし!!

「その台詞、前も聞きました」
 嘆くわたしに、kineさんはクールに言う。
 そうよ、いつものことよ。

 でもね、すごいのはここからよ。
 チケットの購入券は番号順に「9時」「10時」「11時」と時間が区切られている。
 並んだ人数が少ないから、9時と10時の購入時刻の人がほとんどで、11時の人はあまりいないわけ。
 312番のわたしは、もちろん11時。

 抽選を終えて、デイジーちゃんとCANちゃんのところへ行ったの。
 そしたらふたりも乾いた笑いと共に、見せるわけよ。11時の購入券を!!

 引く方が難しいカス番号を、3人揃って引いたのよ?
 どんな確率ソレって??

「買うなってことですかね、コレは」
「今日はもう帰れってことよね」

 つーことで、3人揃っていつもの店で朝ごはんして、解散しました。

「朝ごはん食べるために来たのよね、あたしたち」
「そうよね」
 と、慰め合いながら。

 今日は星組千秋楽でもある。ゆーひくんバウの初日でもある。
 星楽とゆひバウ初日チケット、両方手に入れていたわたしは、本気で悩んださ。どちらを観るか。
 なんでズラしてくんないんだよバカ劇団め。

 1時から『エル・アルコン』観て、ラストシーンをあきらめてバウへ直行、2時半から『ハリラバ』を観る。バウは大体1時間ほどだから、3時半過ぎには1幕が終わる。大劇2幕は3時過ぎから開始だから、ショーははじまってるけど草野ショーだし、ここはあきらめることにして、ショーが終わるのは4時過ぎか。とにかく退団者の挨拶にさえ間に合えばいいわけで……ああっ、これじゃダメだ、ゆーひくんの2幕が観られないっ。バウ2幕は4時くらいからはじまるっつの!

 や、最初から最後まで、きちんと観たいのは当然で、キャストと他観客への礼儀だともわかっておりますが、どちらも選びがたくて、本気で悩んだのですよ。
 星楽は立ち見だったので、途中退場可能だったしな。どーせわたし、後ろの壁にもたれて観るから、手すりにはいないし。誰かの視界を遮ることなく退場できる。
 バウはもちろん座席だから、途中の入退場はできないと思っていた。星の退団者挨拶を聞いたあと、バウの2幕途中から入場はできない。

 つーことで、断腸の思いでバウチケを手放す。しくしくしく。
 ゆーひくんの初日は観たくて観たくて観たくてあきらめきれずにかなしくてくやしくて仕方ないのだけど、それでもっ、星の退団者を見送る方がわたしには重要だったのですよ。

 で、退団者を見送るためにいつもならしない出待ちまでして。
 ひとりならまずしないが、kineさんたちと一緒だったから、そのまま現役の出までなんとなく見送って。

 早朝から夜まで、いったい何時間立ち通しだっただろう……。
 ちょっと考えたくない。

 トシなので、腰にきましたよ、ヨボヨボ。

 次は、寿美礼サマなんだな、と思って覚悟して、その日もまた早朝から夜まで、こうやって立ちつくすんだなと思ってみたりで、イロイロイロイロつらかったり悲しかったり。

 冬の別れは染み入るね。
 心もだが、カラダにも過酷だね。

 あと1週間強か。

 
 この日のムラは、宙並び、星楽、ゆひバウ初日と、朝から晩まですごい人口密度でした。
 並びは見てないけど、きっと宙ファンだけでなくたくさんの人たちが押しかけて来ていたのだろうし、退団者のいる星楽がすごいことになっているのも当然、また、人気のゆーひくんの初日だから、バウの出待ちもそりゃーすげえ人だった。
 すっかり陽の暮れたムラに、シルエットがいっぱい。

 タカラヅカって、すごいところだ。


 瀬奈じゅんの美しさを、思い知る。

 初日に行ってきました、『A-“R”ex』

 チケット持ってなかったけど、行けばなんとかなるさと。や、オペラグラスも持ってなかったんだけど、オギーだし初日だし。チケット掲示板の手応えから、こりゃサバキはけっこー出るなと踏んで。

 びんぼーなので後方の安い席で観劇。
 肉眼でも出演者少ないし半分以上役者の区別つくし、前方席のチケットはすでに押さえてあるし。最初は後方でざーっとオギー体験しましょ。

 予備知識ナシ。
 タイトルとあさことかなみん、シビさんラストってことと、マチオ先輩が出ることしか、知らなかった。
 「半分以上役者の区別がつく」ってのは、出演者の発表があったときにそう思った、という記憶があるだけで、実際は誰が出るかわかっていないという(笑)。

 だから誰か出てくるたびに、「あ、この子出てるんだ」と新鮮な驚きでした。
 ええ、きりやんの登場にすら、驚いた。きりやん、出てたんだ!みたいな。

 正直、あさこでオギーがナニやるんだろう、と思っていた。
 あさこちゃんはオギー世界の住人ではないよなぁ、と。
 かなみちゃんときりやんは、「毒」や「闇」も演じられる人たちだから問題ないだろうけど、あさこちゃんはどうなるんだろう? と。

 まあ、太陽のワタル兄貴主役で作品書ける人だから、誰が主役でも良い仕事はするんだろうという安心感もあったけどな。

 しかし……。
 こうなるとは、思ってなかった。

 
 これは、タカラヅカではない。

 最初から、オギーの外部芝居のノリだった。今は亡きスパークヒップス系。

 タキさん、シビさんがまた、容赦なく実力を見せつける。
 かなみん、きりやんも安定した技術と華と「毒」を披露する。

 脇の子たちもまた、それぞれ役割に応じて「仕事」をしている。

 女の子たちはそれぞれ見せ場があってキャラがあってオイシイ。
 狂気の花嫁@りんかの美しさとヒビの入った透明さがこわい。

 まさきの華と実力、強さのある毒がまぶしい。

 だがソレは、「タカラヅカ」ではない。

 舞台構成も、衣装も、セットも、なにもかも「タカラヅカ」ではない。

 美しくない。
 キャラクタも、ストーリーも、美術も、画面も。

 どろどろと、おぞましい。

 これは、外部でタカラヅカOGを使ってやるべき芝居だ。
 その方が、さらに「活きた」と思う。

 だって。

 その「タカラヅカ」的でない世界の真ん中で、アレックス@瀬奈じゅんが、あまりにも「タカラヅカ」だからだ。

 「タカラヅカ」であることを否定した世界で、アレックスひとりが「タカラヅカ」なんだ。

 彼ひとりが場にも役にもそぐわない、世界観を無視した「タカラヅカ」な衣装を着る。
 彼ひとり、演技の質が違い、存在がチガウ。

 彼ひとりが、美しい。

 壮絶に。

 悲しくて。
 痛くて。

 あさこファンでなくてよかった、と思った。
 わたしなら、自分の贔屓がこんな痛々しい役を演じている様を見るのはつらい。

 最初から、なにもかも語られている。
 台詞の洪水。
 テーマもストーリーも、なにもかも言葉遊びのように皮肉のように風刺のように、なにもかも投げ出されている。

 アレクサンダーを演じる役者でもあるあさこは、最初から「世界」から突き放されている。
 彼は「主役」であり、「ナニを着ても良い」「なんでもいい」と烙印を押されている。

 彼がどうであれ、彼は「真ん中」に立ち、彼を中心に物語は進む。
 いや、進んでいるのは「世界」でしかなく、彼はそこに「在る」だけだ。

 ひとりだけ、きれいな衣装を着て。

 ぽつんと。

 ひとりぼっちで。

 同じ舞台にいるのに、彼だけが、別の世界にいる。

 彼が放つ、真っ白い光。
 現実ではない、美しすぎる光。

 その無意味さ、無力さが、かなしくて。つらくて。痛くて。

 なんでオギー、ここまでやる?
 あさこに対して、ここまでやっちゃうのかよ。

 外部で、卒業したばかりのヅカOGでやるべき芝居だ。
 本物の男性がいた方がいい。そして、アレックス役はヅカOGの男役が演じる。
 その方が、さらに世界観とアレックスの孤独が浮き彫りになっただろう。

 現役で見るのは、つらい。痛い。

 あさこがオギー世界の住人でないからこその扱いがまた、痛い。ソレを逆手にとって出来た作品だと、つまりあさこへのアテ書きだとこうなるのだということがまた、痛い。

 あさこがどれほど美しいか、これほど堪能できる作品はない。

 だけど、彼の美しさが、つらすぎる。

 
 ナニもかも「語りすぎ」な作品なんだけど、初日の組長の挨拶まで「語りすぎ」だったことには笑った。
 タキさん、「この作品の見方」を、説明してました。げげげ。あ、ありえねー。出演者が「この作品は、こんなふうに見るもんなんですよ」と例を出して解説するなんて。
 でもまあ、仕方ないわなあ。
 客席はぽかーんとしていて、幕間の他の客の会話を聞いていたけどみんな「わけわかんねー」「こんな芝居やりたいなら、どっか他でやってよ」系のことを言ってたしなー。
 オギーの芝居がわけわからんのはいつものことだが、それでも今までの作品は最低限「美しかった」からな。
 美しくもないんじゃ、そりゃ苦情も出るわ。
 だからこそ、タキさんが挨拶でわざわざ事細かに「解説」したんだな。
 や、あくまでも「挨拶」の範疇に収めていたけど、アレはまちがいなく「作品の見方」「解説」ですよ(笑)。
 

 あ、マチオ先輩はナレーターです。
 大仰な衣装で登場して、空気をぶっ壊して行きます。この作品の、大切な「癒し系」です(笑)。


 今さらこっそりと『ラブ・シンフォニー』のまっつ語りをしてみる。

 えー、テキストの元は10月中に書いたモノであって、ムラでの記憶でしかないし、ソレを加筆修正しつつブログに転記している今、すでに東宝公演も終了しているわけで。
 ここでナニを書いても「まっつのここを見てね!」にはならない……もう見られないんだもの。だからほんと、無意味もいいとこなんだけど、それでも書く。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 『ラブ・シンフォニー』のまっつで、実はみょーに気になってしまうことがひとつある。

 まつださんはオープニングと最後のパレードで同じ衣装を着ている。
 ナニも考えずすべて上から順に割り振る中村Bなので、寿美礼サマ、まとぶ、壮くんとわかりやすく衣装のグレードを付けられている。みわっち・まっつはそれらに次ぐグレードのお衣装。
 襟に黒のアクセントがついた白燕尾。中のベストは黒。
 まっつは白燕尾が似合う人なので、この衣装は似合う。好き。

 ただ……。
 右襟がいつも、変ぢゃないですか?

 いつ見ても、ジャケットが右側だけ大きく開き、中のシャツというかベストというかが引っかかったような、微妙な着こなしになっている。
 ベストの肩ぐりのラインとかウエストのラインとか、ふつーは見えないだろうに右側だけ見える。
 いやその、別に気にならない程度だとは思うよ。大きく開き、てのは、左側と比べて、という意味で、見苦しいとか脱げそうとかいうほどではなくて。
 たんに、左右非対称である。それだけのこと。人間だから偏りがあるのは当然のことだと思う。
 ただ、一旦気になると、いつ見てもそうだから気になってしまって。

 そーゆー衣装なのかなと思ったが、みわっちをはじめ他の人たちは右だけはだけるなんてことはない。

 振付のせいなのかなあ?
 最後のパレードのときなんかは、羽根扇を左手で持っていても(つまり左手だけ動かしていても)、やっぱ右側だけがはだける。

 あの引っかかったようなめくれかけた襟や合わせの部分が気になって気になって、指でピッと引っ張って直してやりたいと、毎回じれじれしてました(笑)。
 やー、もー、かわいいー。(結局ソレか)

 
 板付きで登場のオープニングのわりに、まっつはライトがなかなか当たらなかったり、客席に背中を向けて寿美礼サマ見てたりで、顔をちゃんと見せてくれない。
 そしてよーやく前を見て踊ってくれたと思ったら、すぐにいなくなる。
 ……まあその、オサ様見たい気持ちとまっつ見たい気持ちとでせめぎ合うので、オサ様場面にまっつがいないと心穏やかになれる、というのはあるんだが。

 一旦下手にはけたまっつが再登場するのは、壮くんを中心にみわっちと3人で奥の階段から。
 オサ様、彩音ちゃん、まとぶんとわかりやすく「順番」にスター登場したオープニング。
 それに次いでトリオで歌いながらの登場。

 そこで、まっつの声を拾うのが楽しい。

 人間の耳って不思議だよねー。コーラスでも、聴きたい人の声を拾い上げてくれるもんねー。
 トリオの中からまっつの声を聞き分け、うっとりする(笑)。

 オープニングの振付は謎なんだが、この3人が舞台中央でガッツポーズをするのが三者三様でおかしい。
 みわさんのやる気溢れるポーズっぷりと、壮くんのちょっと異次元風味のサワヤカポーズと……薄幸オーラ漂う、ガッツ、という言葉となんともミスマッチなまっつと。
 3人揃うと、変。いやむしろ恋。(わけわからん・笑)

 そしてまた、オサ様が現れるとすれ違うよーにいなくなる3人……。

 なんでいなくなるかって、着替えのためですよね。
 スタンバイのためですよね。

 次の場面、「ラブ・ゲーム」のカードから出てくるギャンブラーたち。
 まっつが出てくるのはハートのAから。真ん中の左隣のカードをガン見だ。

 中央から壮くんが出て、右隣のカードからみわっちが出て、次にまっつが出る。

 この場面のまっつが、いちばん好きです。

 カードから気前よくどんどんスーツの男たちが出てきて、舞台びっしり大盤振る舞いに踊るアレです。銀橋では壮くんが「きーぽんきーぽん♪」歌ってます。

 モスグリーンのギャンブラー・スーツ姿の美しさと、まっつの不景気そうな顔がたまりません。
 あのクールっつーか辛気くささがいいんです。コスパ悪そうでそそるわー。

 でもって、まっつの背中が好きです。

 このカード背景場面にて、壁に貼り付いているときの背中が良いんです。
 薄いカラダが良いんです。作られた肩のラインが良いんです。

 この場面での壮くんの歌声も好き。壮くんいい声になったなあ。どんどん深みが出ていいわー。

 ムラではけっこー前方席でまっつのみガン見していたけど、目線をもらったことはナシ。
 が、もれなくみわさんに持って行かれる(笑)。

 あのマメさはなに? 絶対釣ってくれるよね? 目線来まくるよ、目を合わせてニヤッとかされるよ。うおおおまっつ〜〜。

 
 背景が開いて次の場面になると、まっつは下手に移動。さおたさん、みわっち、しゅん様と一緒。銀橋を渡り終わった壮くんは下手花道壁に貼り付いてる。
 まっつはいつも、さおたさんとナニか話している。なに話してるのかなあ。
 で、寿美礼サマが舞台中央に登場、ギャンブラーとしてカードのことを歌う。

 その歌詞に合わせて、まっつたち4人はカードを投げる仕草。出したカード(パントマイムだから実在しない)で勝敗が決まる。
 このへんはアドリブらしく、誰が勝つかはそのときでないとわからない。

 にしても、まっつ弱い。
 勝率低いだろ絶対。いちばん多く勝ったところを見たのはしゅん様。
 まっつが勝つとこは結局1回しか見ていない。

 1回だけ見た、勝利のまっつは、ものごっつーかわいかった。

 高速で万歳して、全開で笑ってるの。子どもみたいに。
 かかかかわいいー。
 高速キリキリまっつはツボだー。

 こんなにかわいいまっつが見られるなら、何回でも勝って下さいよ。勝つとこが見たいよ……と、オサ様から目を離してこの場面はずーっとまっつ見てたのにぃ。
 まっつ、弱い……。(肩を落とす)

 セクシー彩音登場で、まっつたちもライトの中へ、決められた振付の中へ戻っていく。
 ええ、辛気くさそうクールでセクシーなアンニュイまっつになって、彩音ちゃんに絡む。

 みわっちのキザりがあまりに濃いので目を奪われそうになりつつも、視界はまっつ固定だ、うおおお。

 彩音ちゃんをオサ様に取られてしまったあと、4人組はそれぞれ下手袖へはけていく。

 ええ、このときですよ。

 まっつが、さおたさんを抱くの。

 さおたさんはまっつの肩抱いて。互いに腰とか腕回して。
 とってもラヴく去っていく。

 なななななにやってんですかあんたらっ。

 と、初見では目が飛び出ました。
 毎回必ずやっていたので、すでに振付の類なのかもしれないけど……何故抱き合う。

 考えれば、カード場面でもさおたさんはまっつに触れて登場するし、このカード勝負の直前でもさおたさんは必ずまっつの肩に手を置いて静止する。

 中村B的に、まっつ×さおた? あ、逆も可。つか、Bに聞いてみたい……どっちですかって(笑)。

 芝居の方でも書いたけど、オサ様のことはろくに触れないまっつが、さおたさんとはこのスキンシップぶり……。
 目に楽しいっす。腐脳にオイシイっす。

 あれ、もう文字数ナイ……続く。


 今さらこっそりと『アデュー・マルセイユ』のまっつ語りその3。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

「あなたたちがホテルの部屋から出てくるところを見たって人がいるのよ!」
 と、夫の浮気を責める妻のようで、ちょっとトキメキます、シモンの「お前たちが同じ部屋から出てくるのを見た」って台詞。

 ジェラールをジオラモに取られた! と、傷ついているシモンがツボです。リシャール云々は言い訳だよね? たしかにジオラモを紹介したのはオレだけど、まさかこんなことになるなんて……。
 夫の気を引きたくて離婚届を突きつける妻のようで、ちょっとトキメキます。破り捨ててくれると思ったのに、受け取るなんて……!!

 いやその。
 ジオラモとジェラールとシモンは、ちょっと昼メロちっくだな、と。
 ……え? そんなことない?

 ホテル・ネプチューンのジオラモの部屋にて、ジェラールが坐る長椅子を悪党たちが囲む一瞬が好き。最初は断ったグラスを、最終的には受け取ったジェラール。隣にはモーリス。近いよ距離!(笑)
 最後のキメは悪党たちがそれぞれの位置に散ってしまうので、椅子の周囲に集まるのはほんの一瞬。だけどそれぞれ個性を出した悪党たち(含むジェラール)が不敵で不遜ですげーかっこいい。
 『凍てついた明日』の2幕冒頭のソファの場面みたいでわくわくする。
 この椅子の周囲でキメにしてくれればいいのになー、イケコ。散ってしまうとふつうの終わり方になっちゃうよー。

 さて、ジオラモ@まっつの次の出番は、カーテン前のモーリス@壮くんの駄々っ子ソング。
 ここのジオ様のなにがステキかって、一生懸命駄々をこねているモーリスを口先でなだめつつ、一歩離れると「バカだこいつ」と頭の横で指をつんつんすること。
 クラウディア@としこさんに向かって、どんだけモーリスをバカにしているかさらりと表現。「アタマおかしいって」とやったあと、また「仲間」の顔をして説得ソングを歌ってしまうのが素晴らしい。

 ええもちろん、モーリスの肩を抱いて、頬をつつくのは、最高峰に愉快です。

 寿美礼サマのことはろくに触れないままなのに、壮くんのことはどんどん触れるよーになっているのがステキです。

 ジオラモ的には他の悪党ふたり、リシャール@はっちさん、ペラン@星原先輩のことは、それなりに認めているんだと思う。が、モーリスのことは完全にバカにしきっている。
 リシャールとペランが「目的」を歌うときはふつーなのに、モーリスが「父の意志を達成するんだ」と歌うときは鼻で笑う。
 私欲で集まった悪党たちなのに、モーリスひとり義憤ゆえと信じている、その矛盾、幼稚さ、責任転嫁っぷりを軽蔑しているのだろう。

 ジオラモさんはここでもグラス片手です。ほんとに好きなんやな。

 このそうそうたるメンバーの中で、まっつがどさくさにまぎれてセンターで歌っていたりするのを、ほんとーにすごいことだと思う。
 
 どさくさにまぎれてセンター、はこのあとにもあるわけで。
 アルテミス婦人同盟主催の舞踏会、そのダンス・コンテストにおいて。女の子たち@いちか、ののすみがコンテスト開始を高らかに宣言したあと。
 またしてもカーテンが上がると紗の向こうに、まっつととしこさんがいる。
 センター。
 ……退団するとしこさんへの配慮だと思うが、それにしてもまたまっつがドセンにいる、つーのは心臓に悪い。イケコありがとう、他ではありえないまっつ使い。

 このタンゴ場面はジオラモとクラウディアの湿度を堪能する。
 ベッタベタ。
 他のどのカップルよりも顔を近づけて踊っている。

 まっつほんと、ちっちゃいんだけどね。
 女性とほぼ同じ体格だからこそ、あれだけリアルに顔を近づけられるんだと思う。身長差あったら大変だもんなー、おでこくっつけて踊るの。
 いったん下手にはけていくときの無理矢理な密着ぶりがツボ。

 コンテストで優勝できるとは思ってなかったのか、自分たちが選ばれなくてもまったく気にしていない。いや、「ここは若い人たちに花を持たせようか」てなキモチなのかしら。
 踊り終わったあとはずーっと下手端。
 銃を抜く騒ぎになっても下手端。
 ここでのポイントは、クラウディアをかばうところ。
 ナニかあると、咄嗟に女をかばうのね。新公が特にかばっていなかったので、まっつジオ様ならではなんだろう。

 シモン@まとぶが銃を抜いて云々、とやりだし人々が騒然となったとき、ジオラモは、ジャケットの中に右手を入れている。
 ええ。彼もまた銃を持つ男であり、必要があれば凶器を使う準備と覚悟のある男である。

 ジャケットの中で銃を握るジオ様がかっこいいっす。
 むやみやたらと銃を出さないの。でも、服の中で握っているの。

 
 騒ぎの中ずーっと下手でモブに混ざっていたジオ様、次の舞台となる地下水道では上手に登場、しかしここでも気分はモブ。

 舞台中央でドラマが進み、モブの男たちがわいわい取り囲んでいる中に、どさくさまぎれに登場するので、オペラグラスでジェラールだけ見ている観客には「ジオラモ? 出てた? いつからいたの?」てなもんかもしれません。

 ここでは最初から銃を抜いて登場。クラウディアもくっついて来るが、彼女は武装しない。ジオラモさんが守ることが前提なのね。

 ジオ様の最後の見せ場は、言わずとしれた「弁護士を呼べ」。

 「イタリア人だからカンケーないね」とやった直後に「そのための国際警察だ!」とフィリップ@立さんに一喝され、態度急変。
 その虚勢と撤退の速さがお笑い一直線。

 ええ、ムラで観劇したウチいったい何回、わたしの周囲の見知らぬ観客たちがそこで吹き出していたことでしょう……遠い目。

 後半になるとさすがにみんなあまり笑わなくなっていたけど……たんにリピーターが増えたのかな。

 いや、ジオ様の演技もふてぶてしさを増していたので、小物っぷりお笑いっぷりは激減していたと思う。
 「弁護士を呼べ!」のひとことも、負け犬の遠吠えではなく「皮肉」に聞こえていたしな。含み笑いながら言っていたり。
 たぶん彼は裁かれることなく、権力や金に守られ、切り抜けられるんだろうな。それを見越しての含み笑いであり、皮肉なんだな。
 そう思える演技に変わっていった。

 
 ジオラモというキャラクタは、感情移入できるタイプではないので、好きだとはとても思えないが、「未涼亜希」という人を見る上ではとてもたのしかった。
 「笑えた」ということも大きいが……演じることで、成長していく様を見られたことがいちばんうれしかった。

 歌声もビジュアルも演技も。
 そして、いちばん感心したのは「声」だと思う。

 ジオラモは、声がチガウ。
 まっつの通常の男役声とは別の声なんだよね。
 わざとしわがれさせた、喉にこもらせたよーな声。歌も通常の語りも自在に巻き舌を入れる。
 なのに、発声は明瞭。口跡良く言葉が、歌詞が耳に入る。

 まっつって、いろんな声を持った人なんだ。
 通常のクリアな声も好きだけど、このわざとしわがれさせたイヤラシイ声も、すごく好き。
 あたしゃ元アニメヲタクだからさー、男には声で惚れるんだよー。声の振り幅の大きな人は、それだけでポイントアップ。

 外見は化粧や衣装でなんとでもなる。表情なども含め「視覚に対する演技」はわりと取り繕いやすいんだ。
 だが「聴覚に対する演技」は難しい。
 たとえ無表情でも台詞声に感情があれば演技は成り立つが、逆はめちゃくちゃになる。台詞棒読みがいちばん芝居を壊す。

 ジオラモさんはビジュアルその他でいろいろ話題を提供してくれたが、なによりその「声」の能力を最大級に表現してくれたことが、うれしい。
 まっつの声、好きだな。

 
 今さらこっそりと『アデュー・マルセイユ』のまっつ語り。

 ★★こあらった目線の、見どころまっつ。★★

 ホテル・ネプチューンのスイートにて、「まあ一杯やりたまえ♪」と酒を勧めるところからはじまるジオ様@まっつ。
 次々登場する悪役たち。

 気になるのは、グラスの行方。

 悪党ズの紹介したりなんだりで、ジオ様は一旦グラスを手放します。ジェラール@オサ様もまた、一度はグラスを返す。
 グラスはサイドテーブルへ。
 人数分用意されたグラスの中へ混ざってしまう。

 そして悪党たちはそれぞれグラスを手に「乾杯」することになるわけだが。

 ちょっと待て。
 そのグラス、すでに2個は使用済みだったのよ? 小道具だから空のままできれいなままだけど、実際には使用済みなのよ?
 さも新しいみたいに全員に配っちゃっていいものなの?

 ……いいんです。

 確認しましたよ、あたしゃ。

 ジオ様は、自分とジェラールのグラスをきちんと選んで、勧めてます。

 一旦集められたグラス。クラウディア@としこさんが悪党たちに配るのは、まっさらなグラス。
 ジオ様はちゃんと自分が飲んだグラスを手に取り、さらにジェラールが飲んだグラスを手に取って、彼に勧めてるの。

 あ、細かい。
 小道具だからきれいなままなのに、ちゃんと「Myグラス」「彼のグラス」を決めた上で演技してるんだ。

 あたりまえのことかもしれないが、そんなことに感動する。

 最初はそのへんのことが、観ててもわからなくて。
 使用済みグラスとか未使用まっさらグラスとか、区別なく眺めているだけだったし。

 よーするに。
 ジョジョとジオラモ(モーリスでも可)が、間接キスしてたらおもしろいのに。……と、思ったことがグラスの行方に注目した動機です(笑)。はい。

 気になるのは、グラスの行方。
 グラスを戻したりまた手に取ったりしているのに、間接キスしてないんですよ、誰とも!

 つまんね〜〜。
 つまんねーよなあ?

 ジオ様1回くらい、グラス交換しちゃえよ。でもってオサ様と間接キスしちゃえ(笑)。とか、仲の悪いモーリスとジェラールを間接キスさせちゃえ、いたずらしちゃえ(笑)。とか、思ってました。……や、小道具ですから舞台ですから、実際に口は付けないですけどね。わかって言ってますけどね。でも、誰にも内緒でジオ様がそんないたずらしてたら、すげーたのしいのになあ。
 や、たとえグラスが入れ替わっていても誰も気づかないだろうし、気づいたとして「まっつ、間違えたんだな」で終わるだろーけど。
 ひそかに萌えさせてくれてもいーじゃんかよぅ。

 まっつの「ひとりミュージカル」は回数を重ねるほど巧くなっていって、「もともと『歌手』カテゴリで、歌ウマさんだと思っていたけど、まだ伸びるのか!」とうれしいおどろきだった。
 語りかけるよーに歌うところも好きだが、途中何カ所かある「歌い上げ」部分が特に好き。ぞくぞくするほど好き(笑)。

 『舞姫』のときにパクちゃんが「まっつって歌うときに後ろへ反り返る(笑)」と指摘してくれたけど、ええ、その通りっすね。彼は歌への気合い度によって姿勢が変わります。「ここぞ」というときは胸を反らし、のけぞるよーに声を出します。
 だからもちろん、「私の出身はシシリア島だ〜〜♪」とか、「マルセイユ・ルート〜〜♪」とかのときは、のけぞってますねっ(笑)。好きですよ、コンパクトなカラダ全体を使って声を出しているまっつ。

 ええ、ジオラモの部屋になるなり流れるあの「♪ズンチャ・ズンチャ・ズンチャ♪」のメロディが大好きだー。うさんくさい〜〜♪

 さて、男女問わずスキンシップ過多なジオ様は、ジェラールにも臆せず触ります。……触っているはず。演出上では。肩を抱き寄せてひとりミュージカル続行。
 前にも書きましたが、まっつはついにオサ様に遠慮なく触ることはありませんでした……。いつもいつも、ずっとずっと、「触っている」ふりで、実はほとんど触れていないという。
 さおたさんのことは抱けるくせに、何故っ?! ……失礼、ショーの話です。まっつ、さおたさんには平気で腰に手を回したりなんだりしてるんだけどね……密着度平気で高いんだけどね……オサ様相手だとダメみたい。
 「上級生相手だから畏れ多くてダメ」というなら、オサ様よりさらに上級生のさおたさんはどーしていいんだ? 彼だけ特別? 反対に、オサ様は特別だけどさおたさんならいいや、ってこと? ソレは、どっちに萌えればいいの? てな話は置いておいて。(どっちのパターンもそれぞれ萌えです、ハァハァ)

 一度くらい、本気で抱き寄せてほしかったなあ。
 まっつそんなの、一生の記念じゃん? あの春野寿美礼を強引に抱き寄せた男、なんてさー。
 また、これまでがんとして触ってこなかったまっつが、一度だけそんな真似をしたら、寿美礼サマがどんだけ驚くか、反応が見たいっす。

 まあ、まっつのヘタレっぷりはともかく。
 ジオ様は余裕でジェラールを口説く。

 なにがステキかって、ジオ様「オレが口説いてオチない奴はいない」と思い込んでるよね?
 最初からジェラールが自分のものになるって信じ切ってるよね? 疑ってないよね?
 この調子で生きてきたんだろうなあ。いいなあ(笑)。

 でもってここがさらに愉快なのは、ジェラールが快く了承したのは、ジオラモの誘いだけだということ。

 「仲間を紹介しよう」とジオ様がリシャール他をひとりずつ部屋に入れるわけだが、ジェラールはそれを喜ばない。
 マフィアのボスや刑事という「仲間」にすればお得な人たちが紹介されているっつーに、頼もしい顔をしないのね。
 むしろ憮然としている。極めつけはモーリス@壮くん登場、反感を皮肉にこめて表現しちゃう。

 ねえねえこれってさ、最初のわたしの「ジオ様に誘われちゃった(はぁと)、ホテルだよスイートだよ、どーしよー。なに着て行こうかしらっ!!」のわくわくぶりと重ならないか?
 クラウディアは女だから対象外として、男として誘われたのはオレひとり♪と思ってホテルに出向いて。
 案の定「ずっと前からキミのことを見ていたんだ。キミが必要だ。私と共に生きてくれ」てな甘い言葉で口説かれて「はい、末永くヨロシクお願いします。ぽっ」てな展開になってだよ?
 「じゃあ仲間を紹介しよう」ってナニ?! ジオ様とふたりっきりぢゃないのかよ?!(クラウディア、アウト・オブ眼中)
 リシャール@はっちさん、ペラン警部@星原先輩ときて、「げ、おっさんばっか。……若さでオレの勝ち?」と思っているところへ、キラキラ美青年笑顔でモーリス登場。ジェラール不機嫌絶好調!!
 なんつーか、王子様にプロポーズされ、舞い上がってOKしたら「妻たちを紹介しよう。キミは4番目の妻だ」と言われたような展開ぢゃね?(微妙に『有閑倶楽部』ネタ)
 ……え、チガウ?

 なんにせよ、グラスが最初からあれだけ用意してあるのに、ジェラールは他の連中が登場すると驚くし、誘いを快諾するのがジオ様単体のときだけなの。
 ふふふ。

 つーことで、まだ続く〜〜。


 需要はなくても語りましょう。語らずにはいられないのだ、見どころまっつ。
 や、元のテキストを最初に書いたのは10月だ。書くことが他にありすぎてUPできないまま現在に至る。まっつファンの端くれとして、毎公演まっつまっつな話を書かなくては!とゆー意気込み……だったんだが、ぜんぜん書けてないっすよ。
 もう今さらだし、東宝では変更があるかもしれないが、それでも今さらムラまっつの話。

 
 スタートから40分出てこない『アデュー・マルセイユ』でのまっつ。
 や、ふつー出てこないったって、本編とは関係ないプロローグには群舞として出ていたりするじゃないですか。登場が遅い壮くんだって、ヒゲつけて謎のボス代理やってるし。なのにまっつは出てこない。プロローグにもいないし、待てど暮らせど出て来ない。登場が遅いっつたら『エル・アルコン』の和くんとかもそーだけど、彼はプロローグには出ているから「いる」ことだけは観客にもわかる。もし急用で途中退場するお客さんがいたら、ヘタすりゃまっつは存在すら知られないままっすよ(笑)。
 さすがに40分は長いねえぇ。それでも「良い役」と思える役だっつーのがありがたいが。

 登場はカジノ・オリオンにて、カッコつけたりせの後ろ。や、個人的にツボなんですが。盆が回り、スポットライトがひとりの男を照らし出す。ポーズを決めたその男は、なんと、へなちょこりせだ!!
 初日はりせのものすげー登場に爆笑し、その直後にちょい悪まっつ登場で、笑いのコンボ攻撃をくらった。もー、どうしようかと。
 舞台が暗転していることもあり、スポットライトの輝度はりせのものの方が高い。りせより地味に登場するところが、まっつらしくってツボなのだ。……てか、りせのパフォーマンスが謎なんですが。カジノの支配人っつったって、あの演出は変だろ。

 黒髪オールバックはてーっかてか。黒塗り口ひげぎーっらぎら。銀のタキシードはきーっらきら。……どうしましょう、外見だけで笑えます。
 なんともわかりやすい「金持ち」ぶり。セレブではなく、成金。なんともわかりやすい「権力」ぶり。貴族ではなく、マフィア。
 ジオラモ@まっつはいつも、クラウディア@としこさんと一緒にいる。マドモアゼル、だから妻ではなく愛人だろう。彼女を抱く手つきに注目。
 ソフトタッチ。角度や仕草を変え、すごーくがんばっていろいろやっているが、ほんとのとこ、ろくに触っていない。エロオヤジ設定なんだから、もっとわかりやすくがしっとかべーーったりとか、本気でイロイロ触り放題でもいいだろうに、実際触る仕草を繰り返しているのに、実はまともに触っていない。
 触れるか触れないかの微妙なラインを、羽のようにくすぐるように、なぞっていく。
 や、実際に触っちゃうとドーランがついてしまうからとか、理由があるのかもしれないが。それでも触っているかいないかわかる程度に触っていないというのは、なんか愉快です。
 いつも生真面目に、本気で触ってしまわないように空間を確保し、だけどさも「触りまくりのエロオヤジ」風に手つき指つきに細心の気を配って演技している、まっつがステキです。

 大物っぽく見せるためか、動作はわりとゆるやか。そんなジオラモさんが高速で動く瞬間があります。
 クラウディアがうっかりばらまいてしまったお札を、拾おうとしゃがむところ。無邪気ぶったジェラール@オサが手に取り、眺めるのを、横から奪い取る。
 ここの場面の意味はついにわからないままだったが(偽札を混ぜたのがジオラモだった、という意味か? だとしてもなんの説明もない)、いかなる場合も大仰にスローモーなジオラモさんが、突然高速キリキリまっつ!になるのは、純粋になので、愉快です。キュートです。

 さて、フィリップ@立さんにラヴコールしたあとジェラールは、ジオラモの待つホテルに行きます。
 長椅子が中央からせり上がって来て、カーテンが開いてジオラモさんが登場します。

 はい、ここ見逃さないで。
 カーテンが開く瞬間、ジオラモさん、なんかやってます。

 クラウディアさんのアゴに手をかけているところを見ると、チューの前後なのかもしれません。
 カーテンが開くとなにごともなかったかのように「♪ルイ・マレー」なヒトになりますが。

 イケコ的にまっつは「中央カーテンから主役の前に割って入る男」なのかもしれません。海馬教授もまったく同じ登場をしていたのでデジャヴに襲われます。……イケコぐらいだよなあ、まっつを真ん中に持ってくる演出家って。ありがたやありがたや。

 さて、ホテル・ネプチューンのスイートでのジオラモさんは全部ステキですが、なかでも気になるのはグラスの行方です。

「まあ一杯やりたまえ♪」
 とワインのグラスを薦めるジオラモさん。
 サイドテーブルにはグラスがどっさり。

 わたしがジェラールなら「ジオ様に誘われちゃった(はぁと)、ホテルだよスイートだよ、どーしよー。なに着て行こうかしらっ!!」なピンクなキモチでドキドキですから、まず部屋に通されて「ちっ、女(クラウディア)付きかよ」とがっかりしてるのに、そのうえこのグラスの数を見たら、「何人来るんだよ!」と、さらに落胆することでしょう。
 わ〜〜ん、ジオ様とふたりっきりぢゃないのかよ〜〜っ。
 ……や、ジェラールはわたしのようにジオ様に期待(なんの?)はしないと思うので、落胆はしないだろーけど。でも捜査員ならグラスの数には注目し、心構えているはずよね?

 気になるのは、グラスの行方。
 ジオ様はMyグラスを手にしている。で、クラウディアはジェラールにグラスを薦め、ジェラールが受け取る。
 そしてジオ様のひとりミュージカルスタート。
 うさんくさいですねえ。まっつだと思えると笑えてしょーがないですねえ。それでも「かっこいい」とか「ステキ」とか「……ポッ」とか、思ってしまうあたり、ファンってすげえよな。自分でも「アレにときめくのかよ」とセルフツッコミ入れちゃいますからねー。まっつならなんでもいいんだな、すでに。いいんだよ。

 グラスを片手に歌い、オサ様を口説く。オサ様の肩を抱いても、あくまでもソフトタッチ。がしっ、と握ったりはしない。ついにムラでは一度も。ちっ、小心者め。(暴言)
 まっつの攻キャラは大好物なので、ジオラモさんはその点ではいい感じです。「恋愛アドベンチャー『アデュー・マルセイユ』」では、是非ジェラールを口説いて欲しいもんです。モーリスを口説き落としてくれても萌えだが(笑)。

 ジオラモさんとグラス。
 ……はい、文字数ないので続きます。


 べつに、悪かったワケじゃないんだよ、新人公演『エル・アルコン−鷹−』の、ジェラード@どいちゃん。
 彼はよくやっていました。丁寧で、役に対する誠意が見えた。……正直なとこ、うまいとは思わなかったけれど、それはなんつーても難しい役だから仕方ないってば。

 しかし、ジェラードが、パーシモン卿の愛人にまざってて、驚いた(笑)。

 さすが新公。
 ジェラードやってる役者が、何故ドレス着て愛人を(笑)。
 アルバイトにしたって無意味でステキ。

 しかもどいちゃん、マジでキレイだし。
 

 んじゃ、他の役のこととか、おぼえている範囲でざーっと記録。

 ベニーが、美しかった。

 や、スペイン海将でヒゲ姿で、めちゃくちゃ美しいってナニ?(笑)
 予備知識ナシで観ているため、彼がヒゲの海将役だとは知らずにいて、後半内心ウケまくった。場を壊してるぞ、あの美貌は(笑)。

 しかしなんでベニーの役付は上がらないのだろう?
 『龍星』や『ソウル・オブ・シバ!!』のころの方が役付が良く、年々下がっていくなんて変だよなあ。演技ができないわけでもないのに。
 美貌とスタイルだけでも、十分際立っているのに。

 
 美貌といえば、イザベラ@しずくちゃん。
 キャスティングをざーっと眺めたときに、仲間内でいちばん危惧されていたのが、実は彼女だ(笑)。
 その演技力のアレさは、前回の新公ヒロインで記憶に強烈すぎて。
 イザベラは難しい役だぞ? 大丈夫か??

 や、大丈夫でした。
 そうか、イザベラって美貌さえあれば、演技しなくてもなんとかなるんだ!(暴言)

 イザベラは、「過ぎ去りし幸福」の象徴。無責任に美しい「夢」。
 ただひたすら美しく、弱々しければそれでOK。
 しずくちゃんは美しく、少女の姿まんまで、ガラスケースの中のお人形のようでした。
 それはソレで、イメージとしてアリだ。

 
 で、美貌といえばティリアン側近のマスターズ@みやるり。
 どんだけ美しいんだ。
 本役のあかしも「本当にあかし??」と目を疑いたくなるほど美しいが、新公のみやるりは砂糖菓子のように甘い、正統派の美しさだ。
 こちらもお人形のよう。
 最初の「ミッション」の歌がまーったく歌えていなかったり、演技してるのかどうかも、実は美貌だけしか目に入らなかったからぜんぜんわかんないんだけど、とりあえずきれいだった。
 眼福。

 もうひとりの側近スコット@ミッキーも、美形ではあるんだが……丸い。
 スカステの旅行番組で見かける素顔の彼は、びっくりするほど「ふつーに芸能人」として美形だ。ジェンヌというより外部のタレントさんみたい。
 女性としては理想的な美しさなんだろうな。
 ただ、「男役」としては、まだまだ丸い。
 本公演のティリアンの子役ぶりがどんどん熱を帯びてきているので、成長をたのしみにしているひとりなんだけど……今はまだ舞台人としては目にはとまらず。

 
 ペネロープ@まりもちゃんは、うまかった。
 本役コトコトとは、まったくチガウ、強さというか野性味のあるペネロープだった。
 貴族のお人形さんではなく、芯に強いものを持った、それゆえにわがままだったり生意気な口をきく女の子だった。
 それゆえに、剣を握る女の子だった。

 この強い少女が、恋に狂い、滅びていく様は哀れだった。

 
 エリザベス@コロちゃんは、もちろんうまかった。
 歌がうまい〜〜、歌詞がはっきり聞こえる〜〜(笑)、そして、嘘くさく可愛い〜〜(誉め言葉)。

 
 シグリット@せあらはふつーにうまくて、色っぽくて適度に下品で、とっても「愛人」らしかった。
 このシグリットならコールサックと兄妹でもおかしくないな。本役のみなみちゃんは品がありすぎてなー(笑)。

 
 レッド父とスペイン提督@水輝涼は、地味に巧い。本役の組長ほど声に特徴がないので、2役に無理がない。
 彼はこのまま脇一直線なのかなあ。たしかにまるまるしすぎている気はするけど、一度思いっきり二枚目役で見てみたいんだけどなあ。
 エンカレのときの色男ぶりが忘れられないんだよ……。
 なまじ実力あるしさー。なんとかなんないのかニャ。

 
 エドウィン@しーらんは、なんか目立たなかったなあ。難しい役なんだなあ、コレ。
 あれだけ派手に見えるのは、すずみんの力業なんだなぁ、と改めて思う。

 しかし、アルバイトのパーシモン卿の愛人役は、こわくてステキだった。
 やりすぎだからキミ!! や、それでこそしーらん!! 期待を裏切らないヤツだ〜〜(笑)。

 
 ニコラス@れんたは、ええっと……がんばってくれ、と。
 『Kean』でもなかなか謎な使われ方をしていたが、劇団的に期待の新人くんなのかな?
 テレビで見る素顔はかわいいし、学年から考えてもなにが悪いってこともないんだが、まだ男役になっていないのが気になる。やる気は見えるから、前進してくれるといいなあ。

 
 ええっと、こんなとこで。
 

 『エル・アルコン−鷹−』の新人公演を観て、しみじみと思う。

 ジェラード@立樹遥の魅力について。

 今回わたしは、ジェラード@しいちゃんがダイスキだ。や、もともとしいちゃん好きだけど、ソレとは別にジェラードが好きだ。

 彼を見ていると、せつなくてせつなくて胸が痛い。
 それはつらい、かなしい痛みであるのに、とびきりあまくもあるんだ。

 大人になったティリアン@トウコと再会したときの、ヒゲのおっさん姿には、あまりときめかない(笑)。や、ソレはソレで萌えではあるので、好きは好きなんだけど、意味がチガウので今は置いておく。

 ティリアンの記憶にある、青年時代の「若く、強く、美しい」ジェラードにときめくの。

 わたしが年寄りだからかもしれない。
 「若さ」が象徴する痛さ……傲慢さや愚かさ、無意味な攻撃性などが、愛しいんだ。
 「若さ」が象徴するはかなさ……壊れやすさや繊細さ、いずれ失うことがわかっている刹那性などが、愛しいんだ。

 ジェラードの美しさは、「青春の象徴」だ。
 ティリアンが葬り去ることになる「少年時代」だ。

 何故ジェラードと、母イザベラ@柚長との記憶があんなにも美しいのか。
 それが「聖域」であるからだ。
 ティリアンの野望の原動力というより、「癒し」だったのだと思う。
 彼の強く固い精神の中にある、やわらかな美しいもの。それがあるからこそ彼は冷酷になれたし、また、彼なりのやさしさを心に残したまま戦えた。

 ティリアンが悲しいのは、その「美しいもの」を、自分で葬り去るからだ。

 ふつーの人には、そんなことできないし、また、する必要もない。
 だけど前へ進むことを強く欲するティリアンは、自ら自分の中の大切な「聖域」を葬り去った。
 母の死を道具にし、ジェラード自身をその手に掛けた。

 母の墓の前で、ティリアンがふと、「ここにオレンジの木を植えては?」と口にする。

 そのときの、トウコの表情を見て欲しい。
 大きなつばの帽子をかぶっているし、客席には斜めに背を向けているのでろくに見えないと思うが。
 前方下手からなら見える。

 ぽつんと。
 それまでとはチガウ、空白な表情で。
 あまりに真っ白な、いや、色がないから白い、透明な顔で言う。

 少年というにも痛々しい、生まれたままの、むき出しの魂がふと浮かんできたように。

 ぽつんと、本人の意識とは関係なくこぼれ出て。
 その「意志の不在」さが、横顔の幼さが、切なすぎて。
 
 ……ほんとうに一瞬で、彼はすぐにいつものティリアンにもどるのだけど。
 帽子に隠れて、彼のそんな表情は誰にも見とがめられないし、他愛ない一言も彼自身に否定されてしまうのだけど。

 この一瞬の表情が出来る人だから、安蘭けいはとんでもない「役者」なんだと思う。

 そして彼のこの表情は、まっすぐにつづいている。彼の、「あの日」に。

 若き日のジェラードとイザベラと、少年だったティリアン自身。

 オレンジを語った、ただ、美しかった日々。幸福だった日々に。

 「若く、強く、美しい」ジェラードに。

 まっすぐに、せつないほどのか細い美しさで、続いているから。

 ジェラードは、「青春の象徴」だ。
 無知だからこそ幸福だった「少年時代」の記憶だ。

 ジェラードが持つ若さ、美しさ、力強さ、やさしさ、そしていくばくかの愚鈍さと無神経さが、愛しくてならない。
 彼は若く、自分の能力と可能性を信じている。
 傲慢で、無神経でもある。
 人妻と不倫関係にあり、その女に不義の子を産ませ、夫の実子として育てさせている。父親の名乗りはせずに、しかし父としての情愛で息子に会いに来る。
 その厚顔さ。その傲慢さ。

 立樹遥の太陽の笑顔が、その歪みを覆い隠す。

 ジェラードの歪み、過ちが、しいちゃんの大きさでかすむ。それは、少年時代のティリアンが、自身の幼さゆえにジェラードの卑小さに気付かなかったように。

 しいちゃんは、「失った夢」だ。

 わたしはもう若くない。わたしはもう、失望とか傷とか涙とか、いろんなものを知っている。
 ただ無邪気に笑っていられた子どもの頃には戻れない。

 だから、なんの傷も歪みもない、美しいだけの夢やあまいだけの美には酔えない。

 歪みを内包した太陽にしか、惹かれないんだ。

 しいちゃんは太陽だ。
 若い頃の彼……それこそ雪組でロケット・ボーイをやっていたり、新公主演をしていた頃の、なんの傷もないキラキラキラキラ無邪気に輝いていた頃のアイドルとしての光ではなく。
 年齢と経験を重ね、だけど演技がうまくなったわけではなく(笑)、あちこち年相応のほつれや傷を重ねながら、それでも、太陽であり続けることができる、魂の大きさ……そのことが、泣けるほど愛しい。

 だから、彼の演じるジェラードが痛いほど愛しい。涙が止まらなくなるほどせつない。

 ジェラードが美しければ美しいほど、格好良ければ格好良いほど、切なくて仕方がない。

 
 ティリアンは、ジェラードを殺す。
 これは決定事項だ。
 彼が七つの海七つの空を、鷹のような生き方を志したときから、決まっていた。

 ジェラードは英雄でも偉人でもなんでもない。ただの卑小な野心家だ。
 ジェラードが幼いティリアンを誉めたのは、「自分の息子」だからだ。
 彼は「自分自身」を誉めたんだ。
 その厚顔さで。その傲慢さで。

 だからティリアンは、ジェラードを殺さなければならない。
 その手で葬り、超えてゆかねばならない。

 サンクチュアリを、葬らなければならない。

 
 安蘭けいと立樹遥は、正反対でありながら、どこかしら似たカタチの影を持つ。
 トウコは月の魅力、陰と淫の魅力を持つ役者であり、しいちゃんは太陽の魅力、光と康(ゆたか、すこやか、おおきい等)の魅力を持つ。
 トウコの影は大きく濃く、しいちゃんの影は少ない。
 だけどふたりの影は意外なところで重なる。大きさが違っても濃さが違っても、形が似ているから。影の伸びた長さはチガウのに、相似形になる。

 このふたりが並び立つとき、他にはない魅力を感じるのは、そのためかと思う。

 それはオスカルとアンドレだったり、ウッドロウとカールトン監督だったり、ティリアンとジェラードだったりと、トウコを抱擁する立場にしいちゃんが来たとき。
 そのとき艶めいた月は、いびつな太陽と同じ影を描く。太陽は影を増す。

 ……ティリアンが、ヒゲ中年男ジェラードを殺す前に抱きしめるのが、萌えです。
 しいちゃんはヘタレても別の芳醇さを発するステキなヒトですから。
 青年時代の美しさや切なさとは、まったく別。
 こちらは純粋に萌えです。ヘタレっぷりが(笑)。

 新人公演を見て、「ジェラードがチガウと、こんなにつまんないのか……」と愕然としたもので。
 しいちゃんが特別に演技しているとか、とくに思わないから(しいちゃんはいつでも、ナニをやってもしいちゃん♪)、ほんとにキャラクタだけで勝負してるんだよなあ。
 そして、新公だからもちろん足りない部分は大いにあるにしろ、敗因のほとんどが「しいちゃんぢゃないから」だけだなんて、あんまりだよなあ。

 ティリアンの少年時代のエピソードに重点を置いたこの作品において、ティリアンが魅力的になる要因の何割かは、ジェラードが魅力的であること、にかかってると思うんだが、どうだろう。

 ジェラード@しいちゃんが、格好良すぎるんだってば。
 ステキすぎるんだってば。
 ときめいちゃうんだってば。


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