植爺の自称コメディ『パリの空よりも高く』を遠く眺めながら、心は別のことを考える。

 ゆーひでコメディ、ゆーひでお笑いモノ、というと。

 『血と砂』を思い出す。

 物語のトンデモさはともかく、とにかくドシリアスで大悲劇だったあの『血と砂』。
 主人公が死ぬのはとーぜん、主要キャラも皆殺し状態、生き残った者も生き地獄必至の究極悲劇作品なのにお笑いとゆーキーワードで思い出す。

 ええ。

 W主演のケロとゆーひが、日替わり漫才をやっていたから。

 幕が下りたあとの挨拶で。
 ケロゆひは毎日毎回、漫才やりーの一発ギャグやりーのと、飛ばしまくっていた。

 カーテンコールの挨拶は主演者がつとめる。通常主演はひとりだから、漫才はできない。ふつーに挨拶するのみ。
 だが、W主演ならふたりが挨拶することになる。ふたりで掛け合いができる。

 そうか、W主演の場合は、日替わりで漫才をするものなんだわ!

 そう、思い込んだよ。
 主演がふたりだとオイシイなー、幕が下りたあともおたのしみがあるわけかー、わくわく。

 おかげで、その後に観た他の人たちのW主演作品で漫才がなくて、ひどく落胆した。

 ええっ、なんで漫才しないの?! 主演ふたりが「本日は」「ご観劇」「(声を合わせて)ありがとうございました!」で終わりなんて、そんなバカな!
 芝居の台詞を使って寸劇したり、ポーズ決めたり、なにかしらネタを披露するのがW主演の挨拶なんじゃないのおおぉぉ?!!

 ……誤解でした。
 「W主演は日替わりで漫才披露」って、そんなルールはなかったです。はい。
 しょぼん。

 アレはケロゆひだからだったんだ……。
 カテコ挨拶で次はなにをやってくれるのか、それもたのしみにしてバウホールへ通ったわ。

 
 その直後の大劇場公演『ガイズ&ドールズ』でも、ケロゆひは毎日アドリブでじゃれてたしなー。
 「日替わりギャグ」を堪能するのがケロゆひクオリティ。

 それまでもクールなイメージのあるゆーひくんだったが、当時はなんか吹っ切れたかのよーな、素敵な体当たりのコメディアンぶりだった……。

 そして今。
 『パリの空よりも高く』が笑えないのがつらい。
 や、その、ファン的にな。……植爺め……。


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