今さら言うことでもないが、わたしは轟悠ファンだ。

 今さら言うことでもない、のは、わたしの気持ち的にな。

 あれは今から19年前。……目眩がするほど大昔だが、わたしからすりゃーついこの間のことじゃ。よぼよぼ。
 うっかり轟悠の美貌にハマってしまい、そのやんちゃな芸風に心躍り、機嫌良く彼を眺めるためにタカラヅカへ通っていたさ。
 友の会すら入らず、機関誌も買わない、ましてやFCには恐怖感しかなく(なんでお揃いの服着てるの? こわい団体! 目を合わさないようにしなきゃ! ……てなもん)、チケットの買い方もわからないまま壁にぶちあたりつづけていた、そんな初心者ファンライフ。
 舞台の隅っこにいるトドをオペラグラスで追いかけ、ドキドキしていたさ。
 数少ない出番を見逃さないよう、まずプログラムを買って、出演場面には蛍光マーカーで印を付けた。踊る男Bとか、10人以上いる役だと、短い時間で探しださなきゃなんないからねー。
 端までスポットライト当たらないことだってあたりまえにあるし。トドは1列目の端とか、2列目の端寄り(真ん中にはいない)あたりにいることが多かった。真ん中のスターさんを見ていたら目に入らない場所。おかげで、映像にはほとんど残ってない。この場面、トドも出てるのに! 端の方で踊ってるのに、ぜんぜん映ってない! ……が、あたたりまえ。

 そんなところからスタートして、気が付くと19年経っていた。

 トドのことはずっと好き。
 あまりに「好き」でいることが日常なので、なんとも思わない。

 『清く正しく美しく』で活躍するトド様を見ても、ときめくことはない。

 第1部の芝居で主役を務めたっつーに、第3部の歌謡ショウでもやたら登場。
 各組2・3番手の男前たちを両側にはべらし、4組分歌い継ぐ。
 若者ふたりの間にトド様。キムやれおんとも並んぢゃうんだー。

 トドかいるから絶対にトドを見なきゃ、とは特に思わない。
 ファンだけど。
 見るとか見ないとか、とくになにも考えることなく、そのままを受け止めている感じ。

 トド様が相変わらずきれいで、あいかわらず野太い声で、あいかわらずの重い芸風で、舞台にいる。
 それはすでに日常だから、とくになにも思わないし、ときめきもない。

 だけど、うれしい。

 特別彼を見なくても。オペラグラスでガン見したり、一挙手一投足を追いかけたりしなくても。

 ああ、いる。
 それだけのことを、うれしく思う。

 や、トップ専科としてのトドの使い方云々とかゆー話とはまったく別な。
 組トップを差し置いて、通常公演で主役級の扱いをされ続けることの是非とか、そーゆー話ではなく。

 彼の扱い云々とは別の次元で、彼がいることは、安心でありよろこびであるんだ。わたしには。
 ずーっと好きでいたから。ずーっと好きでいるから。

 変わらないモノという、「ファンタジー(嘘)」を愛している。

 変わらないモノなんて、この世には存在しない。
 トドも変わり続けているし、わたしも変わり続けている。

 それがわかっていて、わかっているからこそ、ファンタジー。
 嘘だと知りつつ、絵空事だと、男役は女が無理してわざわざ男を演じているありえない存在だと、わかったうえで夢を見る。夢に酔う。
 「タカラヅカ」という虚構をたのしむ。

 轟悠は、タカラヅカだ。

 端的に、タカラヅカだ。

 わたしを19年、この夢の花園に足を止めさせる(てゆーかどっぷり浸らせる)「タカラヅカ」という嘘の世界を象徴する、そーゆー存在だと思う。

 わたしより上の世代の人にとって、ソレが鳳蘭なのかもしれないし、あるいは深緑先生なのかもしれないね。

 今のトップスター、オサ様やあさこちゃんやトウコちゃんが、今と未来の人たちの「タカラヅカ」になるのかもしれない。

 退団したあとも、なにかっちゃーイベントに戻ってきて、男役時代の歌を歌って。
 戻ってきた彼らを見て「あのころ」にタイムワープして。
 若かった自分自身ごと、愛しく想う。

 ヅカファンとしての濃度が変わっても、卒業してしまったとしても。
 「タカラヅカ」として、刻まれるタカラヅカ・スター。

 わたしにとっては、轟悠。

 だから、いてくれる、それだけでうれしい。

 や、ほんと、ときめかないけどな(笑)。
 我が家のおとーさん的ポジション。長生きしてね、元気でいてね、みたいな。今さら彼氏にも旦那にもなれないけど、大切だよ、みたいな。

 ディナーショーに行く金はないが、彼の出る舞台は全部観る。観たいと思う。
 彼の「タカラヅカ」としての力を信じている。その心地よさを知っている。

 最近はイベントが多くて、そのたびいつものOGと、いつものトドロキを見ている気がする(笑)。
 まったく、タカラヅカはすごいところだ。
 こーやって、受け継がれてきて、受け継いでいくんだものな。

 2・3番手とのメドレーの他は、イベントのトリのソロ、持ち歌来ました「雨の凱旋門」。
 好きだよ、この歌を歌うトド様。
 枯れていて(笑)、色っぽくて。


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