『TUXEDO JAZZ』の「街角」場面の、歌手トリオが好きだ。

 だいもん、ネコ、アーサー。

 『エンカレ』で活躍した若手の歌得意っ子たち。
 オギーは、自分とは関係ない過去の公演でもちゃんと踏まえてくれてるんだね。本公演でろくに声を出したことがない子たちでも、特性にあった使い方をしてくれる。

 初日に観たときは、驚愕したさ。
 だいもんがソロ?! えええ? てゆーか、歌い継いでるオトコマエ誰だよ、あのダメっ子レア@『Young Bloods!! 』かよ?! でもってアーサー?!!

 この面子を、ここで、ここまで大きく使うなんて。
 ふつーのヅカ公演ではありえない。新公でだって、ろくに歌の場面なんかもらえやしないのに。オギーすげー。

 初日はこのトリオにアゴを落としていたために、舞台中央をろくに観られなかった。まっつのことは必死で捕獲したものの、その他っちゅーか車のタイヤ役の人たちは一切観られなかった。そんなものがあることさえ……。

 その他大勢にまぜられるのではなく、舞台の隅でただ揺れてトリオでコーラスをするのでなく。
 「物語」の中で動きながらソロを歌う。

 そのことの、意味。

 それまで超脇役、背景しかしたことのなかったひよっこたちが、得がたい機会を得て、みるみる成長している。

 スポンジが水を吸い込んでいる様を見ているよう。

 なんなのこいつら。発芽ビデオの早回し?
 目に見えて成長するって……若いってすげえ。
 舞台人は、舞台に立つことがいちばんの薬なんだなあ。

 
 89期、この4月から研5になっただいもん。
 感心するのは、彼の「華」。
 
 だいもんは「スター」としての歌い方をしている。BGMではなく、自分がライトを浴びていることを示す歌手。
 「歌う」ことでナニかを表現しようと、前へ進もうとしている、その明確な意志が美しい。
 ミュージカルが好き、と公言する彼らしい、「ドラマ」のある歌い方。
 声の使い方もそうだが、実際に舞台で「美しくある」ことを知っているのは、路線スターとして早くから新公で役をもらってきた経験ゆえか。
 積み重ねてきたものが、正しく力となって花開いている。
 まっすぐ成長していく若者を見るのは楽しい。

 あー、だいもん好きだー。
 顔が好き、声が好き、鼻が好き、温度が好き、やりすぎな芝居が好き。
 素顔が美人なことも好きよ(笑)。

 
 成長のすさまじさでいえば、なんといっても90期のネコくん。

 『Young Bloods!! 』で喘息持ちの虚弱眼鏡っこ(『A/L』にもいた、主役の友人。サイトーくんの定番キャラクタらしい)を演じ、ショーでもソロをもらったりしてがんばってはいたが。
 いろいろいろいろ(笑)大変なことになっていて、自爆気味の舞台を披露したのち、千秋楽の挨拶では号泣してまともに喋れないとゆー、潔いダメっぷり。
 スウィートなかわいこちゃん顔で、舌っ足らずにあうあうしゃくりあげられたら、たまりません(笑)。その印象がこびりついてますがな。

 それが、次の『エンカレ』では、ピアノ弾き語りしてみたり、意欲的。彼が目指す「男役」の方向は、どーやら顔通りの「かわいこちゃん」ではないらしい?
 とはいえ歌自体は、声の素直さは買うものの、まだまだいろんな意味で幼かった。

 その後の従者@『ファントム』でも、なんか必死にかっこつけているのがわかる、正しい花男ぶりを発揮。
 彼が目指すのは、素のかわいらしさや若さを言い訳にしたアイドル系、男装したオンナノコではないらしい?

 そんな彼が、今回『TUXEDO JAZZ』でソロをもらって。

 ものすげー気合い入ってます。

 トリオの中で、もっとも甘いかわいこちゃん顔だってのに、「オレが目指すのはセクシーでワイルドな大人の男だぜ!!」と言わんばかりのキザりぶり。
 きれいにおとなしく、ではなく、多少歪んでいても、男っぽく!!

 やりすぎてるから!! 表情とか、はっきり言って歪みすぎ、キレイを通り過ぎちゃってるから!!
 だけど、その心意気が愛しい。

 あの泣きべそレアちゃん(だから、役名が「レア」)は、それでも男の子だった。
 自分が目指すモノに向かって、力強く進んでいる。
 できているかどうかはともかく(笑)、その野心がカッコイイ。

 高見を目指すのは、自分自身。「これでいいや」とゴールを決めてしまうのも、自分自身。
 もっと上を、今日手が届かない場所に明日届くことを願って、希望して、努力し続ける。
 立ち止まらない。進み続ける。

 うわー、男だ。この子、こんなにかわいいガキ臭いカオした少年なのにもその心根はちゃんと「男」なんだ。

 それを感じさせてくれる様が、カッコイイ。

 ネコくんはねー、『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』のホテルのボーイででも、ものごっつーキザっててねー。
 あの弱肉強食のアピール合戦、椅子を使ってのダンスシーンでも、えらいことになってるよ(笑)。
 『TUXEDO JAZZ』ではこの歌手トリオ場面のあと、雨の中ソロを歌うもえりちゃんをエスコートするんだが、ここでもひとりで、濃い〜〜ぃ小芝居を繰り広げている。
 アグレッシヴだなあ。どこまで行くんだろ、この子。

 
 で。
 トリオ3人目、同じく90期研4のアーサー。

 ……ははは。
 ははははは。

 「表現すること」「目立つこと」に命懸けた兄ふたりに囲まれ。

 ひとり、能面です。

 それでも、こーまでしてもなお、表情ナイのか、アーサーよ(笑)。
 や、彼なりに表情つけてはいるんだけど。どうも彼の表情はバリエーションが少ないというか、あらかじめ決まった型どおりにしか表情筋が動いていないというか、「笑う」はこの表情、「悲しむ」はこの表情、「怒る」はこの表情、と、決まっているような。
 その不自然さが、能面みたいなの。役に合わせて面を付け替えているよーな感じというか。

 その印象に拍車をかける、歌声の饒舌さ。

 歌声には表情があるし、実際巧いし、華のあるいい声なのよ。
 だから、ますます歌っている本人とのギャップが大きく、コーシツテイオンカチンコチンのムヒョージョー、の印象が大きくなるの。

 うまいのに。いい声なのに。抜擢されて気合いだって入っているだろーに。
 それでもモアイ・テイストってどーなの、こーがあさひ。おもしろすぎ。

 にーちゃんふたりが濃いせいもあるけどさー。あれだけ顔芸しまくる男たちと一緒にいるのは不利かもしんないけどさー。
 それにしても不自由な男だな、アーサー。

 彼の歌の実力と、足りなさすぎる本人の表現力がツボです。注目株(笑)。

 

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