初演は知りません、花組WS『蒼いくちづけ』
 だって21年前でしょ? わたしまだ歩きはじめたぐらいのころじゃん(大嘘。単に観ていない)。
 や、とりあえずヅカにはまだハマってないころだな。
 もしハマっていたとしても、最初の数年間は贔屓組の大劇場しか観ていないし、バウホールなんてどーやってチケット取るのかもわかんなかったし、シメさん主演バウなんて絶対無理、取れるわけない。
 この作品に出会うことは、ありえなかった。

 そして21世紀の今、WSとして出会い……アゴを落とす。

 小池修一郎は、21年間成長がなかったのか??

 創作者として現役でやってきて、ただずーーっと同じ話の焼きなおしだけをしてきたの??

 すげえなヲイ。
 よくぞこの作品の再演を許可したなー。わたしなら絶対封印するわ。だってお里が知れちゃうじゃない(笑)。映像も残っていないのなら、シメさんの人気や実力のイメージに頼って「幻の」とか「伝説の」とか冠付けて、「名作」ってことにしておけばよかったじゃん。
 実際にバウを観たことのある人なんて少数だし、そのなかで21年間ずっとヅカを観ている人なんてさらに少数だし、作品を封印してしまえば、いくらでも評価を装飾して改竄して、「名作」とゆーことにできたのでは?

 や、再演WSを観る限り、『蒼いくちづけ』はよくできた作品だと思う。
 問題はそのあとの小池作品が全部『蒼いくちづけ』の劣化コピーだということだ。

 『蒼いくちづけ』が「原点」である、という言い方をすれば耳障りはいいけどさ……。
 原点てのはコピー原本のこととはチガウから。

 クリエイターとしての小池氏のアレっぷりに眩暈と笑いの連続だったが、それはさておき、たのしかった。
 月組の「書き取り練習帳」を見せられたあとに、「ライトノベル」を見せられたわけだから、字の下手さは似たりよったりでも、楽しめた度がぜんぜんチガウ。
 やっぱストーリーがあるっていいなあ(笑)。

 初演はまったく知らないし、予備知識もナニもない、主演以外誰が出ているのか、なんの役をやっているのかもわかっていない、しかもうっかり母と一緒に観劇したので、幕間にヅカ友と感想を言いあうこともできず、周囲の観客の声が耳に入ることもなく……これ以上なくなーんもわかっていない状態での観劇。

(母はヅカに対してまったくの無関心、無理解。過去数回観劇したことはあるが、ナニを観ても客席で熟睡する。……そんな人が突然「タカラヅカ観たいわ、連れていって」と言ったのさ……大劇場に連れて行こうかとチラシを見せたら、「戦中戦後モノは嫌。タカラヅカでそんなの観たくない。お姫様が出るやつがいい」とゆーので、消去法でバウになったさ……)

 そーやってあらゆる情報を遮断した状況だったため、いちばんのキモである、「2幕は1幕の『オチ』」であることを知らずに観た。
 そっかぁ、『蒼いくちづけ』って『リンダキューブ』(わたしがめっさ入れこんでいるRPG)みたいな作りになってるんだー。『リンダキューブ』は1話と2話があまりにへヴィな物語だっただけに、お気楽な3話に救われたなあ。……てなふーに、とっても素直に受け止めた。

 1幕は大真面目な「ドラキュラもの」。
 ドラキュラ伯爵@めおくんと、その獲物である「世界一の美女」ルーシー@きらりちゃんをめぐる物語。「ドラキュラもの」のお約束をひとつずつ踏まえてゴシックホラーな雰囲気出して。
 ところが2幕では、ソレを全部自分たちでひっくり返す。「ドラキュラもの」というジャンルが確立した現代、それをネタにしてさまざまな商売が成り立っている。そんな2008年にドラキュラ伯爵がよみがえり、ルーシーの曾々孫ヴィーナス@きらりと出会う。

 1幕は『エリザベート』風味、2幕は小池のいつもの駄……その、オリジナル作品まんま。

 2幕は2008年版にリニューアルしてあるそーだが(音楽変更されてるんだって?)、よーするにただのいつものパターンの定番のお約束の、小池作品。

 「ここからはじまった」とわかるのは、悪役のスケールが小さい。

 小池オリジナル作品といえば、世界征服を歌う悪役。

 2番手が演じる、スーパーロボットアニメ世代のわっかりやすい悪役。
 「悪=世界征服」という図式が単純ですばらしい。まあ、男子のアタマの中なんてそんなもんだわな(「男はみんな王になりたい」てな・笑)。

 それがコピー原本ではまだ、世界征服をたくらんでないの。たかだか目をつけたアイドルをモノにすることだけを考えてるの(笑)。
 やーん、ステキだわ、その小物っぷり。

 ここからスタートして、「もっと悪役をグレードアップしてかっこよくしよう」と考えた結果が「世界征服」なのねっ。わくわくっ。

 『蒼いくちづけ』は小さく無駄なくまとまっているので、アホアホ感も少ない。
 パロディである2幕をやりたいがために、1幕をことさらクラシックにしていることに、ズルさというか小役人根性を感じないでもないが(笑)、許容範囲。
 風呂敷を広げすぎるからいつも失敗するんだね。とゆーか、小池って1時間モノの短編書いてた方がいいんじゃないの? ストーリー作れないんだから「ネタ一発勝負、瞬発力だけでカタがつく短距離走」専門で。
 心理描写の浅さというか無さというかも、「短編だから」で言い訳つくし。

 脚本はともかく、やはり演出はすばらしい。
 バウのコンパクトな空間で、よくもあれだけいろいろやってみせるよなー。

 「シメさん主演で観たかったなあ」と、心から思った。きっとすっごくたのしかったろう。

 シメさんでないのは残念だけど、それでも物語が愉快で目に美しいので、ふつうに観劇してたのしかった。

 バウで大階段も羽根もない芝居1本物で、しかも演じているのが新人たちのWSで、ヅカに無関心無理解な母は大丈夫なのか……と思ったら、寝ることもせず、ふつーにたのしんで観劇したようだ。2幕はよく笑っていた。

「端っこで踊っていた、あのチョッキを着た子がいいわ!」
 ……って、誰だよソレ。
 つか、さすが緑野母、主役ではなく脇役に目をとめますか……血は争えない……?


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