「いいお披露目公演だったね」

 花組中日公演『メランコリック・ジゴロ』『ラブ・シンフォニーII』千秋楽。

 幕間に会ったドリーさんは、しみじみと言う。

 うん。
 いいお披露目だった。
 あったかくて、しあわせで。

 まとぶさんは「真ん中」に相応しい人だ。
 そうなるべく育てられ、そうなるべく努力してきた人が、そうあるべき場所で最大限の力を放っている。
 それはとても、しあわせなことだ。

 3週間強の中日公演、4遠征だよ、週1以上の頻度、我ながらがんばった(笑)。名古屋はホテルが安くてありがたい。交通費もがんばれば切りつめられる。……や、過酷な日々だったが。
 そうまでして通って、出待ちとか一度もしてないんで、ナマまっつを見ることはかなわず(笑)。
 千秋楽ぐらい出待ちしてみよーかなー、とも思ったが、どこでギャラリーしていいのかもわかんないし、人がいっぱいいたのでやめた。
 久しぶりに会ったmaさんやユウさんとごはんする方がいいや。……てな優先順位。maさんとはひたすら「壮くんかっこいいよねーっ」と繰り返しつつ(笑)、ごはんのあと、ナース・コスプレしているナナちゃん人形を見に行きました……。なんなのあのシュールな光景。

 
 『メランコリック・ジゴロ』千秋楽、正塚芝居だからアドリブ禁止。ヅカでよくある千秋楽ゆえのお遊びはほぼナシといっていい。

 千秋楽はファンのためにあると思っているイタいヅカヲタなわたしは、千秋楽を免罪符に好き勝手に遊ぶジェンヌを見るのも好きだ。
 なにかやってくれるかな、こう来たか! みたいな、客席と舞台のかけひきみたいのも好きだ。

 そーゆー意味で、正塚作品は楽でもお遊び一切禁止、なにか特別なモノが観られるわけじゃない、とはじめからわかっているのは、つまらなくもある。
 正塚はほんと、自分の脚本に自信持ってんだなぁ。日替わりのアドリブなんかなくても客は何度でも通うと、完璧な作品だからなにひとつ変えてはならないと、そんなふーに思ってんのかなあ。
 他の先生ではそこまで厳しい「アドリブ禁止令」があるとは聞かないので、そう思っていた、ずーーっと。

 や、正塚が自作をどう思っているかはどーでもよくて。
 また、アドリブ禁止の是非を語りたいわけでもなくて。(役者のアドリブに頼らないとどーにもならないような駄作の方が悪い。まともな作品ならば禁止は正統。しかし舞台と客席との相互作用によって成り立つライブにおいて「禁止」を謳うのはどうなのか、とか、タカラヅカ演劇の根幹に迫る命題なので、今はスルー)

 アドリブは禁止、そして今日が千秋楽、という前提において。

 台詞も演出も変わらないのに、ちゃんと千秋楽仕様になっていた。

 すげえなヲイ。

「同じものを何回も見に行くの?」
 と、ふつーの人にはよく驚かれる。
 ふつーの、というのは、ヅカファンではないという意味ではなく、舞台とかコンサートとかに行かない、という意味だ。

 他のアイドルでも劇団でも、ナマのパフォーマンス業にハマっている人たちは大抵「わかる。何度でも行きたいよね」と言うけれど、それ以外の人たちには通じない。

「ああ、MCやアドリブがちがうのね」
 と言われ、まちがいではないのでここで頷いておくが、ほんとのとこはソレだけじゃない。

 MCがなくてもアドリブがなくても、一言一句同じ台詞で同じ演出だったとしても、ナマの舞台は「チガウ」のだ。
 オサ様みたく日替わりな人はめずらしいし、そうそう毎回「今日はここがチガウわ!」と実感しているわけでもないんだが、わたしみたいなアンテナ感度悪い人間にも「チガウ」とわかることがある。
 「チガウ」ものを見た、と感じられるときがある。

 それがたまらないから、何度でも観たいし、また、「チガウ」確率の高い千秋楽を観たいと思うんだ。

 いつ観ても同じ、初日でも楽でも同じ、な舞台を作るトドロキ氏のファンだったわたしは、このことに気づくまでにかなりの時間を要したけどな(笑)。

 『メランコリック・ジゴロ』千秋楽は、いつもにも増して、えーらいこっちゃになってました。

 ハジケっぷりがチガウ。
 台詞も演出も同じなのに、それをどう言うか、どんな声でどんなシチュエーションで言うかで、まったくちがってくる。

 『ガラスの仮面』でマヤが「はい、いいえ」だけで芝居をしなければならなかったときのように(笑)、同じ台詞でもどう言うか、どんな感情や表情で言うかで、別のモノを描くことができる。

 千秋楽だから、という以前に、後半戦、回を重ねるごとにそのキライはあったが、楽は野放しって感じ。
 笑わせていい場面での、まとぶや壮くんの張り切りはすごかったっす。
 てゆーかダニエル@まとぶん、フェリシア@彩音と出会ってからしばらくまともな声で喋ってない(笑)。

 壮くんは「笑わせよう」と思う気持ちが先走って空回りしている感は大いにあるんだが(や、もともと彼演技はあまり得意ではないし)、そんなこともぶっ飛ばす勢いで走り抜けてくれた。

 反面バロット@まっつは、周囲のハイテンション用に演技を変えてはいなかったような? もう少し変えてきてもよかったのでは? ちょっと惜しいなー。
 まっつ単体ではいいんだけど、やっぱ主役に合わせるべきだと思うし。

 フォンダリ@みわさんは、我が道を行く。周囲がどうあろうと、あのままでヨシ(笑)。

 
 芝居はほっこりあたたかくて、何度見てもたのしくて、ヲトメ心がきゅんきゅんいう切なくてかわいいお話で。

 まとぶんがかっこよくて、「こんな男のコと恋愛したいなぁ」と素直に思わせるような、ステキな子で。
 彩音ちゃんが「ソレなんのプレイ? 妹萌えってジャンル?」を体現するかわいらしさで。この子に「おにいちゃん(はぁと)」って言われてとろけない男なんているのか?

 これからこのふたりが、わたしたちに極上の夢を見せてくれるんだ。オサ様が遺したモノを受け継いで、形作っていってくれるんだ。

 そして、ふたりを取り巻く、花組のみんな。

 『ラブ・シンフォニーII』では、「どこが2やねん、バグ取りすらしてへんやろ」てな演出家の怠惰をあからさまにしたアペンド版でしかないけれど、それでもまとぶんと花組メンバーが見事に盛り上げた。

 まとぶんを中心に、結束する力。
 大きな羽根を背負って真ん中に立つ彼に、素直に祝福を贈る。

 客席と、舞台のベクトルがひとつになって、きらきらした空気に満ちていた。

 よいお披露目公演だった。
 終わってしまうのが惜しい。切ない。

 ただただしあわせなキモチになれる、そんな時間だった。

 
 カーテンコールの挨拶で、上がる声援にいちいち礼を返すまとぶんが、かわいくて。
 ああ、いい人だなあ。ほっこり。

 雪担だったmaさんが「客席の反応が、組によってまったくチガウ?!」とカルチャーショックを受けていた(笑)。
 やー、客席騒いでたからねえ。歓声上げてたからねえ。雪組ではありえないねえ。
 わたしも昔雪組しか観てなくて、はじめて他組の楽とか観たら、客席と舞台のやりとりの差、反応の差にカルチャーショック受けたよ。雪組は代々ファンがおとなしいんだ。
 でもってわたしは一時期星担でもあったので、花組ファンのおとなしさにびっくりしているクチなんだが……そ、そーだよな、雪組ファンに比べればにぎやかだよなあ。

 や、どの組ファン気質がいい悪いという話ではなくて。
 そうやって組ファンに特色があるってのが、いいところなんだ。
 雪組がおとなしい、からといって「つまらない、もっと盛り上げなきゃ」とは思わないでしょ? 「おとなしいウチの組が愛しい」って思うでしょ? ……ファンってそーゆーもん(笑)。
 「さっさと帰れアナウンス」が流れてなお拍手をやめず、幕を開けさせる星ファンのアツさもステキだと思うし、それまでさんざん騒いでいるのにアナウンスが流れるとぴたりと手を止めて帰り出す花ファンも愛しい(笑)。
 個性があるから、5組ある意味があるんだ。

 相変わらずアナウンスと共にぴたりと拍手は止んで、みんなわらわら帰り出す。
 ああ、終わってしまった。

 次は本拠地大劇場での、本格お披露目公演が待っているね。
 芝居がこれくらいたのしめるものならいいんだけど。……谷せんせ、がんばってくれ。
 

 新生花組スタートが、しあわせなものでよかった。


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