そもそもの間違いは、スナイパーに素手で殺しをさせようとしたことだと思うの。

 殺し屋が、仕事現場を目撃されてしまったことからはじまる物語、『はじめて愛した』

 目撃者は殺す、口を封じる。それはお約束。
 だけどガイ@キムは、レイチェル@あゆっちを殺せなかった。
 何故ならレイチェルは、記憶を失っていたからだ……!

 ってことなんだけど。
 レイチェルの収容されている病院に、ガイが口封じに行くところ、違和感ばりばり。

 ガイは元狙撃兵で、今も狙撃専門の殺し屋。ビルの上からライフルでターゲットをヒットするのが仕事。
 そんな彼が、なんで素手で殺しに行くの??

 わざわざ黒手袋して、眠っているレイチェルに……って、絞殺??
 サイレンサーでプシュッですらなく?

 引き金を引く殺人と、その手で首を絞める殺人は、内容が違いすぎる。
 ぶっちゃけ、スコープをのぞいて引き金を引くことはできても、ナマの腕で人は殺せないんじゃないの? 伝わる感触がぜっんぜんチガウよ?
 一発で即死させる狙撃と違い、首絞めたら相手抵抗するよ? もがくよ? 体液ダダ漏れするよ? 音も臭いもないスコープ越しの世界とは違いすぎるよ?

 ガイはスナイパーなんだから、病室のレイチェルを遠くから狙撃するのがセオリーでしょ? 目撃者だという確証もないから、ろくな警備もされてなかったんだし。

 罪のない目撃者を殺すことに躊躇があるにしろ、それならなおさら、苦しませずに一発でしとめないか? 加えて、病院に忍び込んで殺害すれば、目撃者をさらに増やすおそれがあり、「殺さなければならない罪のない目撃者」がネズミ算式に増加するかもよ?
 そんなバカなことを、プロの殺し屋がしますか?

 マサツカせんせの設定の穴に、最初からつまずきまくりです……(笑)。
 
 でもま、手袋をはめるガイがカッコイイので、無問題。

 
 とゆーことで、「ガイがカッコイイ」話の続きです。

 全編通して格好いいけど、そのなかでもツボに入ったところだけ。

 ライフルを構えていたり、殺し用の手袋装着だったり、「殺し屋」としての姿が美しい、ってのはある。
 それがなんであれ、「プロ」の動きは美しいやね。

 また、実際の戦闘……アクションがカッコイイ、てのはある。
 やっぱ人間、「強い」てのは格好いいのだわ。
 簡単に殴り倒されちゃうクリッツィ@コマは観客に笑われるけれど、バカ息子@咲ちゃんを殴り倒しちゃうガイはカッコイイ。

 それは当たり前のことなんだけど、だからハリウッド映画でも少年マンガでもアクションシーンが念入りに描かれるわけなんだけど。

 そんな「物理的に腕っ節が強い」格好良さを前提として、さらにツボなのが、その「前提」っぷりなの。

 自宅でバカ息子を撃退したあと。
 話しながら、ガイがごくふつーに、ひっくり返った椅子だのスタンドだのを直しはじめるのが、イイ!!

 こっちは丸腰だってのに銃を見せびらかすバカギャング相手に一戦交えて、記憶喪失だとか刑事だとかいろいろありまくって。
 ものすげー大変だったはずなのに、ガイは「日常」の家具を直している。

 別に、大変でも危機でもなかったんだ?
 ガイにとっては「日常」を覆す、取り乱してわけわかんなくなるよーな事態では、まったくなかったんだ!
 という、格好良さ。

 スタンドは元に戻せば済むけど、椅子の脚が折れているのを見て軽く溜息つくのが最高ですねっ。
 ナニその落ち着きっぷり!!

 
 それと、もうひとつ。
 2幕になってから、アッシュ@まやさんが組織に狙われた、それはみんなレイチェルを生かしているせいだ!!と逆恨み逆ギレしたナタリー@夢華さんが、レイチェルを狙う場面がある。

 それに対し、ガイは説得を試みる。
 撃つな、レイチェルを殺したところで組織的にはナニも変わらない、アッシュが危険なのは同じだ、と。それより他に手を打つべきだ、と。

 銃を構えた冷静ではない女の子を説得するのは命がけ。
 ガイの腕ならナタリーを射殺することなんてたやすいだろうにそうはせず、真摯に語り続ける。
 ……てのがカッコイイ、とは思う。しかしこれは前哨戦。

 ときめくのは、彼が突然、「撃つなよ!」と叫ぶところ。

 ナタリーに言ってるんじゃないの。
 ナタリーに銃の照準を合わせている、アンリ@りんきらに言っているの!!

 アンリはガイを助けるために、やっているの。
 ナタリーが引き金を引こうとしたら、その前にアンリがナタリーを射殺するつもりなんだ。
 それがわかっていて、ガイは言う。「撃つな」と、アンリに。

 アンリが狙っていることなんて、ガイが言うまで誰も知らない。
 この場にいないアンリの気配を察して、先回りして牽制するのよ。

 も、役者がチガウって感じ。
 ナタリーがいくら銃口突きつけてすごんだって、格が違いすぎて話にならない。

 ここのアンリもまた、格好いいんだ。
 撃つなと言われても、銃口ははずさない。いつでも撃てる体勢で、姿を現す。
 ガイの言葉を尊重して現時点で発砲はしないけれど、退く気もないんだという意志。
 自分が銃口を向けている相手が、仲間だったアッシュの家族だと知っていてなお、「敵」ならば容赦しない、その冷酷さ。

 ガイとアンリが「プロ」同士であることがわかる。
 そして、お互いを思い合っていることも。絆がそこにあることも。

 うわーーーっ、カッコイイ~~!!

 
 多くは語らない、動作の中で、出来事の中で、男の格好良さを語る、これぞマサツカ節!(笑)
 男の友情はいいよなあ。
 てゆーかこーゆーのを、キムちぎでやってくれよ(笑)。さぞ美しいだろうに……(今回のお笑い刑事役ってば……)。

 いやその、アンリが美貌の男でない、イケてない太ったおっさんだっつーのが、実にリアルに「男の友情」って感じでイイんですけどね(笑)。

 
 修羅場をくぐってきた男だからこそ、あちこちに「本物」の強さが見える。
 ガイ本人はそれをことさら強さだとは思っていない、「当たり前」「日常」だと思っている。
 ソコが、カッコイイのっ!! 力説!

 
 正塚せんせの描くカップルたちは、「数年後には別れてそうだな」と思える人たちが少なくはないんだが(笑)、ガイとレイチェルはふつーに幸福に一緒になっていそうだ。
 それはひとえに、ガイのあたたかさゆえだと思う。

 マサツカ節な主人公はあんまし女を幸せにしそうにないし、ガイだって脚本だけでいうならひどい男だ。
 それでも彼の愛を、未来を信じたくなるのは、彼に体温があるからだ。

 中二病全開にうだうだモノローグしていても、彼の魂には健やかさがある。
 陰は陰として肯定して、そのうえで前を向いて歩いていく強さがある。あたたかさがある。

 彼が、やさしい男だと、わかるから。

 あのやさしい男が愛を誓うなら、きっと女は幸せになれるだろう。

 そう、素直に信じられる。

 だからガイは、こんなにカッコイイんだ。

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