『麗しのサブリナ』千秋楽、やたらラヴラヴだったのは、2組。

 ライナスとデイヴィッドと、ウィリスとマカードル。

 秘書コンビがバカップル化しているのはいい。演じているのがまっつだから、バカップルぶりがカユいんだけど、まっついちかは定番コンビだしまっつ組替えだし、なんつっても男女カップルだし。

 男と女がラヴラヴいちゃいちゃしているのはふつーなのでいいんだけど、問題は、もうひと組の方。

 兄と弟で、ナニをいちゃついてますか!!(笑)

 デイヴィッド@壮くんの愛されキャラぶりが、ハンパない。
 愛されていることにカケラの疑問もなく、ライナスにーちゃん@まとぶに甘えきっている。

「助けてくれるよね?」(小首かしげ・上目遣い)ってナニ?! どこの魔性キャラ?!(笑)

 対するライナスが「助けてやらない」とそっぽ向くのは、もちろんわざと。
「頼むよ兄貴。ねえ、兄貴~~(はぁと)」
 と、弟にかわいくおねだりさせるため。

 デイヴィッドのかわいさに負けて、笑いながら「助けてやるよ」とライナスが返すのがお約束。
 お約束なんだけど、千秋楽はほんっとに壮くんのかわいさがハンパなくて、まとぶんの吹き出しぶりも素で。

 初日にあんなに大人でかっこよかったライナスは、演じているのがまとぶんなので、回を重ねるごとに熱を帯びて若返っていき、千秋楽間際になるとかなり変な人になっていた。
 千秋楽はお遊びOKだから台詞が増えたり違ったりしていてもなんとも思わないが、千秋楽前ですでに、勝手に台詞がんがん増やしてるし。土曜日の段階で、増えた台詞14個までは数えたよ。途中でわかんなくなったの、あまりに多すぎて(笑)。
 いちいち相手に相槌打つのよ、「うん」って。本来は相手がひとりで喋っている台詞の合間にいちいち「うん」って入れる。目線と共に「ん?」って返したり。台詞の最後に「うん」って反復や確認の意味のうなずきを付けたり。あとは台詞に付随するツッコミをぼそりと入れたり。
 初日近辺はなかったですよ、ふつーに文章で喋ってました、文章の間や最後に「うん」はなかった。ツッコミもなかった。
 「ふつーの日でコレか(溜息)」な状態だったライナスさん、もちろん楽はさらに変な人で。

 人格が、一定していない。

 その場その場で、感情で突っ走って、なにがなんだか(笑)。

 その一環で、弟ともラヴラヴ。
 ライナスは弟をだましているわけで、あの場面であそこまで罪なくラヴラヴなのはおかしいんだけど、かわいいから、無問題。

 かわいいは正しい、かわいいは正義。

 おねだりする壮くんが、身もだえするほどかわいい。

 そんな壮くんを、たのしそーに見ているまとぶんがかわいい。
 かわいいえりたんが見たくて、それで余計にえりたんをいじってるんだよね? えりたんもそれがわかってて応えてるんだよね?
 ナニそのプレイ!

 おまえら、いちゃつきすぎだーー!!

 でもって、あのかわいいかわいい壮くん、実はまとぶんより実年齢は上だよねええ。年上のくせに、背も高いくせに、弟キャラであんなにあんなにかわいくおねだりしやがってー! くそー、たぎるーー!!(ジェンヌはフェアリーです、年齢なんてありません)

 んで、極め付けが「大好き(はぁと)」ですよ。
 ふたりのいちゃいちゃ場面の最後、暗転のどさくさにデイヴィッドがライナスにーちゃんに言うの。

 ちょっ……!

 30男が30男に言うなーーっ。語尾にハート付けんなーーっ。

 んで、デイヴィッドの「大好き」は罪がないの。アレは天使ってゆーか異次元生命体ソウカズホってナマモノのしていることだから。
 それに対する生身の人間、ライナスにーちゃん、まとぶさんが大変なの。
 告白されて、あわてて自分も返すの、「大好きだよ」って。でもこの告白返しがねー、がんばって、色気出してんの。

 なんつーか、「こう出られたから、負けるもんかとこう返した」というか……壮くんの「大好き」がのほほーんとしている分、まとぶんの「大好きだよ」は「がんばってる感」があるってゆーか。のほほーんと本能で返した風ではない。
 だからまとぶんはさらに「はは、兄弟愛」と付け加える。「大好き」だけでは太刀打ちできなかったのね、壮くんの天然さに。

 壮くんがトンデモナイ生き物で、年々その才能を開花しているのは周知のことだと思うが、彼ひとりではここまで魅力を発揮できていないだろう。
 壮くんの相棒が、まともなまとぶさんであること。それが相乗効果になってるんだよなあ。

 てことで、まとぶんのまともさと不器用さはイイですな。
 壮くんみたいな感覚派、理屈で説明できない世界で生きる人には、相棒はふつーの人がいいんですよ、ホームズとワトソンみたいなもんです。

 そして、天然さんに振り回されるふつーの人、てのは萌えシチュのひとつなわけで、だからこそ世の探偵モノは天才と常識人の組み合わせなわけで。

 壮くんとまとぶんって、いいよな。

 いつもまとぶんが可哀想な感じなのがまた、たまらんのです。
 トップスターがまとぶんで、2番手が壮くんだから、まとぶんが勝利したり恋愛成就したりして、壮くんは負けたり失恋したりする役回りなんだけど、それでもなんかいつも、まとぶんの方が割り食ってる感じが、萌えなのです。
 まとぶんって、可哀想な方が萌えるよなー。ふふふ。

 まとぶんの張り切りすぎて空回りしている感じ、熱演すぎて変な人になってるあたり、いいよなー。
 その横で壮くんがあっけらかーんと、のほほーんとしている感じもまた、いいよなー。

 そんでもって、このいちゃいちゃ兄弟。
 30男ふたりで「大好き(はぁと)」と言い合ったりしている、恥ずかしい兄弟。

 ああそれなのに。

 色気皆無なのは何故。

 ふつートップと2番手がこんだけいちゃいちゃしていたら、耽美とか淫靡とかそっち系の萌えにつながるもんだよ、おさあさとかちかゆみとかそーやって人気獲得していったじゃん。

 なのにまとえりって、どこまでいっても健全……色気ねえぇぇぇ。
 壮くんが異次元すぎるのかなー(笑)。まとぶさんは、相手次第でいい仕事すると思うのに(ヲイ)。

 いちゃいちゃラヴラヴ兄弟。
 作品的に正しいかどうかは置いておいて、千秋楽のふたりのバカップルっぷりは、かわいかったっす。
 すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。

 と、痛感しました。

 蘭寿とむコンサート『“R”ising!!』初日観劇。

 目に痛いよーなギラギラビラビラの衣装で、腰振って回して「クンバンチェロ」を熱唱すべきだ。
 それができてこそ、タカラヅカスタァだ。

 ……いやもお、すごかったです。
 濃ゆいのなんのって。
 なにをどうやっても濃ゆいわ。
 「クンバンチェロ」熱唱なんて、その1部。
 1部だからこそ、ある意味「全体」を表している。

 ラテン衣装着て厚化粧の日本人が「クンバンチェロ」歌って、たぶん今ここだけ切り取って一般人に見せたらドン引きすると思う。
 なんかトンデモナイ、ものすごい世界が展開されていることがわかる。

 でも、そのトンデモナイ、ものすごいモノが、「タカラヅカ」で。

 蘭寿とむは、まぎれもなく「タカラヅカ」のスターだ。

 
 んで、クンバンチェロ。
 これってものすごく、「スター力」を試されると思うのね。
 男役が出来上がっていない若者がやると寒いだけだし、技術があっても衣装や曲に飲まれる人がやると薄くなる。
 色気全開に客席釣りまくってアハン顔して、漢くささ爆発オラオラしまくって、客席を恥ずかしさで身もだえさせてくれないと。恥ずかしいけどかっこいい、と思わせてくれないと。

 たぶん「タカラヅカ」だけに存在する、まちがった「ラテン男」(笑)。ファンタジー、虚構の中の色男。
 現実にこんな男いねーよ、に、リアルに肉付けすることが、タカラヅカ・スターの力!

 だから、すべての男役スターは、クンバンチェロを歌い踊るべきだ。
 そーやって培ってきた「スター力」を示してみるといい。スベった人は修行し直し、ってことで(笑)。
 や、いろんなタイプのスターがいていいと思っているので、「クンバンチェロ」でスベって悲しい人、も個性のひとつだろーけど、個性とは別に基本スキルとしてクンバンチェロぐらいこなしてみせろ、とね(笑)。

 ちなみに、すべての娘役スターは、「私のヴァンパイア」を歌うべきだ、と思っている。
 初々しくかわいらしく歌わなければならないこの「かわいこちゃん曲」を、どんだけブリブリに……ぶりっこしてなおかつ女子の反感を買わず共感を生むキャラクタを確立できるか! を競うべきだ、と思っている(笑)。

 
 まあそんな、「スター登竜門」の話はともかく。
 『“R”ising!!』。
 
 えー、内容は、「蘭寿さんと一緒」の、バラエティ・ショー。
 らんとむを地球の中心に置いた、2幕構成のタカラヅカショーっす。

 ラテンもロックもJ-POPも懐メロも耽美(笑)もお笑いも、とにかく全部詰め込んである。全部やってのけている。
 そして、場面ごとにヒロインがチガウ。
 性転換も含め(笑)、いろんな女の子とらんとむが組んで踊っている。

 歌詞のものすごさ、台詞のものすごさもフジイくんクオリティなのかな。えーと、らんとむって松潤よりかわいいのか福山よりかっこいいのか、そうなのか。外タレと比べられても苦笑いだが、現役国内スターを列挙されると同じ地平にいるだけに思考が止まるというか。でもってダンシング・フェアリーなのか……フェアリー……らんとむもふぇありー……た、たしかにそうなんだけど……ふぇありー……。

 客席降りアリ、客席登場アリ、前見たり後ろ見たり忙しい。
 通路際美味しい。

 すずさんとかちゃの女装はマジ、十ちー大の女装はネタ……そして、いちくんの女装は……どっち?!
 ネタなのかマジなのかわかんなくて、口ぽかんと開いてしまったナリ……。

 フジイくんなので、見たことある場面、聴いたことある曲のオンパレード。
 チェンジBOXの代わりが魔法使いのまいらちゃんよねとか(いやその『シンデレラ』パロなのはわかるが)、しいちゃんが十でベニーが美月くんなのねとか(ペニーより有能そうなあたり……笑)、女の子の衣装も同じかいとか。挫折(死)→再生はフジイくんのお約束だとわかっちゃいるが、しかし、あの死に方は……思わず「ソコっ?!」と内心叫んじゃったよ。殺された彼も実際「俺かよ?!」と叫んでんぢゃないかと……。

 客席でうちわを振ったりスタンディングで踊ったりはなかったけれど、手振りはアリですよ。T・O・M・Rって、たぶん明日以降は本編内でファンも手振りするんだろう……よかった、初日で。
 や、初日狙って行ったのは、それ以降だとリピーターの間に入って浮くことになるのがわかりきっていたためです、はい。みんなが踊ってるときに、「はじめて見たからわかんない」と指くわえるのが嫌で(笑)。年寄り故、順応性低くて咄嗟に見よう見まねで混じれない(笑)。

 
 それにしても、オープニングがいろいろと恥ずかしくて。
 本人の名前連呼曲は恥ずかしいんですが、それにしてもらんとむ氏が歌う「ザ・青春ソング」が、恥ずかしすぎる。

 ベタなんですよ。歌詞がそのまんますぎる。ええ、本人が作詞作曲してるんですよ……。
 自分のことを歌っているんだって、飾らない正直な言葉なんだって、真のファンはそーゆーモノを聴きたいのかもしれないけれど、ヨゴレたファンハートしか持たないわたしは、客席でそのこっぱずかしさに身もだえしました。
 この歌、アンソニーがナンシーへ、「俺たちの愛の記念日」に歌ってイイ歌だよね、ってゆーかむしろそのものズバリだよね、フジイくんとスズキケイとらんとむさんの夢のコラボ作品だよね? ってくらい、恥ずかしかった。(アンソニーとスズキケイの恥ずかしさについては『摩天楼狂詩曲』感想で語ったので略)

 最初からこんな恥ずかしいモノ見せつけられて、どうしよう困ったな、と。
 「クンバンチェロ」の恥ずかしさはイイんですよ、あれは「タカラヅカ」の恥ずかしさだから。
 しかしこれは……いやこーゆー恥ずかしい歌を臆面もなく披露して「いい話」にしちゃうとこも、ある意味すっごく「タカラヅカ」らしい恥ずかしさだが……。

 と、とまどっていた、蘭寿さんのオリジナル曲。

 ああらびっくり、フィナーレでは泣けた。

 恥ずかしいの。
 ベタでストレートで「歯に衣着せろよ」な歌なのに、オープニングで聴いて「とほほ」だったのに、同じ歌なのに、コンサートの最後に聴くと、泣けるの。
 じんとするの。
 胸にアツいものがこみ上げるの。

 これぞタカラヅカ。これぞ蘭寿とむ。

 外の世界の常識とか目線とかをぶっとばし、異世界を構築する。その場所そのときだけ、別の世界にしてしまう。
 外から来たばかりだったわたしは、オープニングでは「うわっ、恥ずかし(笑)」と思った。それが2時間、彼の創る世界に浸っていると、彼が創るモノだけがすべてになる。外のことなんか忘れる。

 そして、彼の言葉に酔う。
 ベタで、ストレートで、恥ずかしい……飾らない愛と感謝の心に、酔う。

 らんとむ、かっけー。
 蘭寿とむコンサート『“R”ising!!』。 
 とにかく濃密な「タカラヅカ・ショー」で。
 バウという空間の贅沢さを堪能した。

 バウでコンサートやることもそりゃーあるけど、今回いつもよりお金かかってたみたいで(笑)。や、現実にどうなのかは知らないけど、そう見えた。
 だからセットも衣装も照明も外部振付家起用も含め、通常のバウ+東上公演より豪華に仕上がっているなーと。
 バウだけにこれほどお金を掛けられるはずもなく、そーすると人見で平日3日間の興行を付けるとそんだけ利潤率がいいのかとうがってみたり(笑)。
 そしてわたしが観たのはあくまでもバウホールという小さなハコなので、同じコトをあの人見という大きなハコでやって、同じように感じられるのかは謎。「いつもより豪華」に感じたセットだって、人見に置いたらちっぽけかもなー。

 また、場所がバウだから、観客はおとなしく着席したまま、うちわもライトもなく通常のショーを観る感覚でいた。
 が、これが人見になれば、立ち上がって踊るのもうちわもライトもアリぢゃね? と、思った。だって舞台、遠いもん。
 着席したまま得られる舞台との一体感は、バウと人見ではまったくチガウと思う。
 全部が全部スタンディングで騒げってんじゃなく、手振りとJ-POPあたりは無礼講にしてもいいんぢゃないかなー、人見では。
 と、勝手に思った。
 そして、そんな人見に行ってみたいなと、勝手に思った(笑)。

 で、この小さなバウホールという空間で。

 蘭寿とむというスターに、このバウというハコは小さすぎる。
 近くで観られてすっごくお得だったけど、らんとむのスケールだとバウは狭いわ。
 不景気の風吹き渡る世間とヅカの集客だの興行成績だのの話ではなくて、彼個人の「スター」としての大きさ。
 バウの空気を掌握できることはわかっているので、もっと大きなハコでどのように彼が「スター」として君臨するのか興味がある。や、いずれ彼は大劇場の真ん中に立つ人だろうけどな。
 バウと人見で、彼のスター力に酔ってみたいなあ、と心から思うよ。両方行ける人がうらやましい……。いやその、わたしにはお金がないので行けないのです……(笑)。贔屓組公演に通い倒した直後、贔屓組東宝公演前に金銭に余裕があるはずなく……。みんなびんぼーが悪いんや。

 バウの濃密さ、には人数も関係していると思う。
 19人って、多すぎね?!

 今ざーっと最近のコンサート(オサコン、タカコン、かしコン、トドコン、あさコン)を確かめたんだけど、こんなすごい人数のコンサート、他にナイよ?(笑)
 大抵13人(主演と共演者12人。タカコンは主演者が2人勘定なので合計14人)だ。

 通常の1.5倍の人数投入。
 しかも、バウ。
 そりゃ濃いわ。お得だわ。

 そう思うと、梅芸メインホール+人見を13人で構築したオサコンはすげえな……。他の人たちは大きくてもドラマシティ+人見だもの。

 出演者人数が多い分、画面に奥行きがあり、派手になっている。
 んで、人数が多いからといって、らんとむ以外がただの背景に終わる、なんてことはない。演出家的にも、この人数なら十分に掌握できるんだろう、みんなそれぞれ活躍している。
 芝居なら2時間ひとつの話しかないから、主要人物は誰と誰、それ以外は脇、と出番も立ち位置も決められてしまうけれど、2時間ショーだから。場面場面で別物語だから。
 場面ごとにヒロインは別の人だし、下級生たちの役割も変わるし。

 らんとむだけでなく、出演者みんなたくさんの出番と見せ場があり、ベクトルがひとつに向いた濃密な舞台だ、キャストのファンならリピートして楽しめるはず。いいなあ、贔屓もこーゆー公演に出て欲しい……。

 と考え、思い出した。
 そーいやわたし、その昔、やっぱりこーゆー公演に脇として出ている現在のご贔屓にすこーんとオチたんだわ。あんときコンサートがなかったらオチてないんだわ……。大阪でリピートして、東京・人見まで追っかけてリピートしたわ……。オチているという自覚もないまま、アホみたいに通っては、ここでまっつまっつ書いてた。
 そういう「力」があるんだよな。「スター」のコンサートには。他の出演者までガンガンに輝かせる。

 水しぇんをはじめて認識したのは『MIKI in BUDOKAN』だし、みーちゃんをはじめて認識したのも『W-WING-』だったし。
 フォーリンラブまでいかなくても、注目するきっかけになりやすい。

 つーことで、らんとむさんだけでなく、他キャストに興味がある人もオススメですよ。

 
 十ちー大がおいしいのは言うまでもなく。
 
 いりすくんは色悪としての道も歩きはじめている人なので、色っぽいダークな二枚目も演じているし、いつものお笑いキャラも演じてます。今までも『BOXMAN』『ステラマリス』新公他で見せつけてくれていたけれど、この人が、ぼそり、と口を開くとなんでこんなにおかしいんだろう(笑)。

 ちーちゃんはなにしろわたし、顔が好きなので、彼が盛大にイッちゃったカオで踊ってくれて、幸せです。佐助@『殉情』以降、わたしはどうも彼がキモチワルイようで、ますます好きです。
 矛盾してるよーだけど、人間そーゆーことってあるでしょ? ただキレイきれいとか完璧とかじゃ、遠くから「いいわねー」って眺めてるだけだけど、なんか欠点とかムカつくとことか見つけちゃうと、ばぴゅーんとキモチが近くなるっていうか。
 それがちーちゃんに関しては「キモチワルイ」ってことで、彼があの長い顔で自己愛に脳内麻薬出ている感じでちょっと残念な下半身を強調して踊っていたりすると、ムラムラくるんですよ。うわーやっば好きだやべー!てな。

 大ちゃんが女装する、ってのは前から聞いていたし、いろいろと技術がアレな大ちゃんには無理に踊ったり歌わせたりせず、美貌を利用して飾っておくのはいいアイディアだ、と仲間内でもささやかれていたわけですが。
 女装って、アレかよ?!(笑)
 てっきり、マジな女装だと思った、とびきり美形の大ちゃんだから、本気で美女でヒロインやるのかと。
 お笑い女装ばかりでした……(笑)。
 女装(盛り髪バッチリ!)大ちゃんと、ちーちゃん(男。アイドル・笑)のダンスなんか、どーしてくれようかとゆー、腹筋への挑戦。
 んで、男役としても大ちゃんはほら、すごい勢いで踊り、キザってくれる人なので。

 盛りだくさんで濃密な『“R”ising!!』、終了後のわたしの心と瞼に残ったモノは、らんとむさんの恥ずかしいソングでうっかり泣いちゃったことと、大ちゃんのどや顔と、いちくんの股間でした。

 大ちゃんが目の前のことがとても多かったの、座席的に。で、彼が鼻の穴ふくらませてどや顔で踊るのよ。目が離せないのよ。大ちゃんに釘付けになっているとき、ふと気配感じて真横見たら蘭寿さんがいて、あわててハイタッチしてもらった……ああああぶないっ、大ちゃんガン見しててらんとむ客席降り気付いてなかったっっ。

 んで、やはり座席的に女装いちくん、「パイナップルのよーなゴージャスビューティー」ないちくんが、目の前に来ることが多くて。座席の高さの関係で、なんか目の前が彼のハイレグの股間で。
 い、いろいろと衝撃的でした……(笑)。
(ちなみに、今こあらったさんには地味にいちくんブームが来ています)
 宙組全国ツアー『銀ちゃんの恋』、梅芸初日の2回目を観劇。
 いつも初日初回を観るのだけど、今回もまたチケット持ってなくて。サバキ待ちしよーと思っているところに「夜の回ならチケットあるよ」と声を掛けてもらったので、初回はあきらめてそっちを取った。

 わたしはイシダせんせとツボが違いまくるため、彼の作品は苦手。年を重ねるごとに苦手になってきている。イシダはダメ、わたし的に無理! という意識はあるものの、そこはそれとしてもうあきらめていて、それでも『銀ちゃんの恋』はイシダ作品にしてはマシな方、耐えられないほどの嫌悪感はナイので、そのへんは安心して観劇した。
 前回の花組版を観ているので、作品のどこが嫌でどこが楽しいかわかっている。嫌なところは考えないように、楽しいところだけを楽しみにして。
 なにしろ出演者は豪華。トップコンビと3番手と4番手が勢揃いし、きれいどころの中堅・若手も投入されている。出演者数だってはるかに多いし、フィナーレも付くらしい。
 グレードアップした『銀ちゃんの恋』が観られるのだと。

 そして、実際に観劇して。
 首を、かしげた。

 あんまし、お得感が、ナイ……。

 全国ツアーだからセットや演出に制限があるにしろ、このパワーダウンな印象はいったい?
 もちろんそれは、人間の生理として、「最初に観たモノが名作」てのが関係しているだろう。わたしがナマで『銀ちゃんの恋』体験をしたのが花組DC公演なので、わたしにとっての「2度目の邂逅」でしかない宙組版は目新しさがない分、物足りなく映る可能性はある。
 また、わたしが花組ファンでそれゆえの思い入れがあるため、つーのはさらに大いにある。

 それらの事情を自覚してなお。
 どーしたこったい、と思う。

 えーと。
 いちばんの原因は、ヤス@みっちゃんだと思う。

 キャスティングが発表になったとき、実はがっかりしたんだ。
 みっちゃんに不足があるわけじゃない。逆、みっちゃんなら、うまく出来ることがわかりきっているから。観る前から想像できる、すばらしいヤスになる。
 でもわたしは、そんな「わかっている」ヤスを見たいわけじゃなかった。
 また、みっちゃんにこれ以上変な役をして欲しくなかった。ヤスはもちろんいい役なんだけど、役者冥利に尽きる役だけど、もう何作も美形みっちゃんを見ていないので、ここでまたヒゲの不細工男を見たくなかったの。
 ウィリアム@『TRAFALGAR』は美形で色男だったと思ってる。でも、いわゆる「タカラヅカ」の路線スターの役じゃない。別格スターでも専科のおじさまでもいい役だ。ふつーの若いハンサム役を、みっちゃんはもう何作もまともにやっていない。(カイ@『シャングリラ』もわたし的にはルノーやヤスと同等の非ビジュアル役です・笑)
 普段から「若いハンサム」ばかりやっているキラキラ美形様が、不細工おっさんであるヤスを演じるのはいいんだ。意外性もあるし、本人の成長にもつながるし。
 でもみっちゃんはもうさんざん「芸達者な人しかできない不細工おっさん」をやってきたじゃん! 意外性も芸幅を広げることもない、今までの延長でしかない、そんなキャスティングはつまんないー!
 わたしに美形のみっちゃんを見せろ~~!!

 みっちゃんがヤスなのは、ハマリ過ぎ、うますぎて嫌だな、つまんないなと思っていた。見もしないで(笑)。
 そう、見もしないで。
 実際に、見てみたら。
 
 たしかに、うまい。
 もちろん、うまい。
 問題なく、うまい。

 だけど。
 だけど舞台って、芝居って、それだけぢゃないんだ。

 ヤスから光が感じられない。
 うまいけれど、小さく手堅くまとまっている。
 ヤスが薄い、小さい、地味……脇役風味。

 えええ。ほくしょーさんが、地味? 今よりはるかにビジュアルがアレだった新公学年時代だって、地味ではなかったよ、ハマコが地味とは程遠いように、どこにいても目立つ人だった。
 きれいじゃなくても(ごめん)、目立つ人だったよ。存在感のある人だったよ。

 『銀ちゃんの恋』自体がタカラヅカらしくない作品なんだが、そのなかでもヤスはとびきりタカラヅカらしくない。この役を、役のまんま、役割のまんま演じてしまっては、ダメなんだ。タカラヅカから遠ざかってしまう。
 とことんタカラヅカらしくない役だからこそ、とびきりタカラヅカな輝きで演じないと、沈んでしまう。役の持つ重さや濁った色に負けてしまう。

 みっちゃんは、うまい人だ。職人的技術のある人だ。
 だからこそ、うまくヤスを演じてしまい、「タカラヅカ・スター」として沈み込んでしまった。

 そしてここが「タカラヅカ」である以上、2番手役が沈んでいると作品がくすむ。力を失う。

 みっちゃんがヤスをうまく演じることなんか想定内、わかりきっていてしょぼん、だったのに、うまいゆえに期待に満たないモノになってしまうとは、夢にも思ってなかった。
 期待が大きすぎた、とはまたチガウと思うの。うまさと輝きの問題? つかこれって、演出家が考慮すべき部分じゃね?

 
 みっちゃんのヤスに首をかしげ。
 それと、橘@みーちゃんにも、なんつーか、こまったなあ、という感想で。

 キャスティング発表時、みっちゃんヤスにはしょぼんだったけど、純粋にみーちゃん橘にはテンション上がったですよ。
 みーちゃんが橘!! あの愉快な色男! 美少年に迫るシーンはあるし、泣かせる見せ場はあるし、オイシイ役。
 出演者の立ち位置的にともちんが橘かなと勝手に思っていたので意外だったけど、こーゆー意外さは歓迎だ。常々「みーちゃんにもっと出番を! 見せ場を!」と思っているクチなので、素直にわくわくしてました。

 んで実際、橘@みーちゃんは色男です。竜馬コスも素敵、単体で眺める分にはそりゃー眼福なイケメンっす。
 ただ。
 「銀ちゃん」という強烈なキャラクタに対峙するには……ふつー過ぎだ……。

 色男であることはもちろん必要、つか最低条件だけど、それだけじゃダメなんだ、橘って。
 技術とは別の部分でぺかーっと輝くナニか、人騒がせってゆーか迷惑だけど目を離せない、ある意味銀ちゃんに似通った部分が必要なんだ。

 そっかあ、そーいやみーちゃんはそっち系が苦手分野だったね……。ナニやってもうまい人だから、安心しきってた。

 とまあ、みっちゃんとみーちゃん、ふたりとも「うまい」けど、「うまい」ゆえに、『銀ちゃんの恋』という特殊な作品では魅力と才能を正しく発揮できていない印象。

 2番手役と3番手役が沈んでいると、そりゃ作品も沈むわ……。
 せっかくこんなに豪華なキャストが揃っているのに、正しく魅力発揮してないんぢゃ、お得感ナイわ……。

 と、わたしは勝手に肩を落としました。あああもったいないー。(いやそもそもこの題材を「タカラヅカ」で上演すること自体が……と、花組版時代からのループになるので略)

 でもまあそれはソレとして!
 楽しむ!ことは出来るし、実際楽しい部分も十分あるのだから、次はその話。
 宙組全国ツアー版『銀ちゃんの恋』

 銀ちゃん@ゆーひくん、ぶっちぎり態勢。

 経験者であるところのゆーひくん、そして小夏@すみかちゃんは強い。
 ヤス@みっちゃん、橘@みーちゃんが苦戦している分、このふたりが立ち上がっている。

 すみかに関しては本領発揮だろう(絶世の美女エマ@『TRAFALGAR』よりよっぽど・笑)と安心していたが、ゆーひくんの負けなさ、錆びなさはすごいなと。
 タカラヅカにそぐわないこの作品を、それでも「タカラヅカ」にするのはゆーひくんの仕事。そして彼は、力尽くで、輝いていた。
 それこそ大地に踏ん張って電飾を輝かせる通天閣張りに。

 ああまったく、なんて比重の高さだろう。あの広い肩にのっかっているものの大きさに、胸が熱くなりました。

 DC上演時も、この「なんでタカラヅカでやるのかわかんない」話を、ゆーひくんが力尽くで「タカラヅカ」にしていた。
 基本ファンしか観に来ない、お約束のわかったDCではなく、「タカラヅカって『ベルばら』やってるとこだよね?」程度の全国のヅカファン以外の人々に、「タカラヅカ」を届けなければならない。しかも、微妙にヅカっぽくなくなっているヤスと橘を両脇に従えて。

 その孤軍奮闘ぶりに、見えましたとも、背中に輝く「孤独の『孤』の字」が!!

 小夏ぢゃないけど、「見えるわよおおおっ」と号泣したくなりました(笑)。

 わたしはこの作品をヅカで観たいとは思わないし、全ツに持っていくことにはさらに懐疑的だし、贔屓に出て欲しくない作品だと思っているし、類は友を呼ぶのかわたしの周囲は大体同意見、ゆーひファンですらフクザツな反応を見せる、誰も喜んでいない興行。
 そんな興行の全責任をひっかぶって、男おーぞらゆーひが吠える。

 彼が支えるしか、ない。
 美しいキャラや場面やエピソードのない、昭和のドブ板通りのかほりのするこの作品。

 ここが「タカラヅカ」であることを、彼が示す。ドサ回りの芸人さんではなく、「タカラジェンヌ」という、美しいフェアリーであることを、彼が示す。

 ……芝居とか技術でいうならもちろん、みっちゃんがずば抜けてるんだけどねえ。歌声の安定、芝居の安定は半端ナイ。同じ台詞もみっちゃんが言うことではじめて「あ、そう言ってたんだ、ゆーひくんだと聞き取れなかった」なんてことがゴロゴロある(笑)。
 ただ、芝居がうまいことと、「タカラヅカ」的であることは、イコールではないので。
 あくまでもヅカファンであるわたしは、「どっか別の劇団の人みたいにうまい」みっちゃんの「ヤスという役はこうだよな的きれいじゃなくて地味な佇まい」は、わたしの求めるものではなかった、つーことで。みっちゃんが悪いわけではナイ。
 文句言いたいのは劇団にだ(笑)。
 わたしは『THE LAST PARTY』のアーネスト×スコットで萌えたクチなんですが。肉を喰らう野性的なみっちゃんにドキドキしたクチなんですが。……『銀恋』の焼肉のくだりはまーーったく萌えんわいっ。

 だがまあしかし。

 こんな状態なので、スター・ゆーひさんを眺める分にはイイ。

 意識して、自分で発光しているおーぞらゆーひ。
 覚悟のある男ってのかっこいいやね。

 トンデモ衣装の似合いっぷり、黒燕尾から鼻ティッシュまでこなしてしまうビジュアル王、コスプレまかせろの異世界キャラクタ。
 クールな持ち味、大人な姿で吠えまくる姿のギャップ。

 彼の「単体」っぷりが際立っている。
 てゆーか……誰とも「芝居」してないよーな……?

 最近のゆーひくんは芝居もわりと出来る人になってきた……というか、相変わらず出来ないことはまったく出来ないけれど、出来ることでそれらをフォローできるよーになったというか、「出来ない」ことがマイナスにならない人になってきた、気がしていた。
 もともと芝居のうまい人ではなかったし、出来ない演技がいろいろとある人だった……が、最近は「けっこうイイんぢゃね?」って感じだったの、わりと。(『TRAFALGAR』はどうかと思ったが・笑)

 そんなゆーひくんが、今まで必死に足下見て「芝居」しようとやってきたことを、どーんっとちゃぶ台返ししたように見えた。
 出来る出来ない以前に、「おーぞらゆーひである」という原点に立ち返ったような。
 出来ない、それがどーした、真ん中はオレだ、てな。

 おかげで小夏ともヤスとも芝居が合っていないよーに見えるんだが(笑)、それすら銀ちゃんならアリでしょう。と思う。
 銀ちゃん、と書いて、「トップスター」と読んでくれ。本気と書いてマジと読む!のノリで。

 その単体ぶっちぎり上等!ぶりに、わくわくして、切なくなった。

 ああ、ほんとにこの人は、銀ちゃんなんだ。
 だから銀ちゃんって人は、主役であり、かっこいいんだ。
 (だから、銀ちゃんと書いてトップスターと読んでくれ)

 ゆーひくんはショースターではない。
 彼の持つ陰の魅力はキラキラでもギラギラでもない。歌唱力やダンス力にも欠ける。
 かといって、芝居巧者だとも、やっぱり思えない。ハマる役とそうでない役があり、得意なタイプが少なすぎる。
 それでもゆーひくんは、ショーより芝居で魅力を発揮すると思うから、芝居の人なのか。
 いや、そういうカテゴライズではなく、「タカラヅカ」という舞台で輝きを発する人なんだ。

 てなことを、痛感した。

 
 どんな作品でも、とにかくそこを「タカラヅカ」にし、自分の魅力を発揮する。
 ゆーひくんに、改めて拍手を。

 だがしかし。
 デュエットダンスの謎の歌は、どうかと思うの……。
 何語で歌ってるのかもわかんなかったし(笑)、どこから聞こえてくるのかも、わからなかった。
 あまりに不可思議な音がしているので、舞台上の美しい人が発しているとは思えなかったの。

 ゆーひに歌わせんでええやん、アレ……(笑)。
 えーとえーと。

 専務@ともちんは、どーしちゃったんでしょう、アレ……?

 宙組全ツ『銀ちゃんの恋』
 花組版では男役の番手は、銀ちゃん>ヤス>橘であり、専務は番手外の脇役だった。とはいえ、当時「この公演でいちばん株を上げたのは、王子かもしれない」と仲間内でささやかれていたように、専務@王子はいい役だった。

 だもんで、発表時に橘@みーちゃん、専務@ともちんという、宙組内での番手が逆転した配役になっていても、疑問はなかった。
 橘がみーちゃんだから、ともちんが落とされたとか、逆にみーちゃんがともちんを抜かしたとか、ポジション的なことはナニも考えなかった。
 わたしはともちんスキーでみーちゃんスキー。
 ふたりにいい役をやってほしい、いい役を演じるふたりが見たい。
 順番通りに橘@ともちんはアリだけど、そうするとみーちゃんの役がなくなる。みーちゃんより専務役に相応しい年配役者はいるわけだから、若いみーちゃんはマコトあたりの役になる? それはいくらなんでも役不足。
 みーちゃんに役を、と考えたら、橘@みー、専務@ともちんはすごくいいキャスティングだ。イシダうまいな! と思った。ともちは老け役もOKだし! 専務は地味にいい役だし!
 ともちに配慮するなら、専務をあそこまでおっさんにしないで、若めにすればいいだけだし。

 と、思って、わくわくしていたのよ。

 それが……。

 カラータイマーと、客席登場ソロに、びびった。

 えーとえーと。

 お、おいしい、のか、アレは……??

 いやもちろん、出番を、見せ場をもらっているんだからオイシイんだと思う。この公演での3番目ポジのスターだということを、内外に知らしめているのもわかる。

 しかし、その空気読めなさぶりっちゅーか、行き過ぎたおちゃらけぶりに、かなりびびった……。
 そうか、イシダだもんな。イシダならこれくらい、あり得るんだよな。
 でもなんか、専務という地味な役であるということ、これまでのイシダ芝居でもそんな扱いはされてこなかったことで、ともちは、大丈夫だと思っていたの。わたしが、勝手に。
 大丈夫、ってのは、ダーイシ菌に汚染されない、とか、そんな感覚。や、各方面に失礼な物言いだが、イシダせんせの悪趣味さとか下品さとかくだらなさを担う場面や台詞をやらされないで済む、せいぜい「デブノート」程度で勘弁してもらえると思っていただけに、ショッキングでした。
 現実としてありえないカラータイマー設定やセクハラ場面、「何故オマエが?!」なソロ、あらゆる意味で「イシダにヤラレた!」と肩を落としました(笑)。

 イシダせんせの悪趣味さとか下品さとかくだらなさはもお、つっこんでも時間の無駄なのであきらめてスルーするとしても。

 おちゃらけが過ぎていて、せっかくのスポンサーを殴るくだりが演出としてパワーダウンして見えたんだ、わたしには。

 橘がスポンサーを殴るところもなんか拍子抜けな感じに見えて「あれ、こんなにあっさりしてたっけ?」と思っていただけに、その直後おちゃらけ専務があとに続いても、さらにさらに、インパクトに欠けて見えて……。
 花組版では、橘と専務、どっちもオイシかったのに! 何故こんな?!

 イシダせんせが悪のりし過ぎているとしか思えん……しょぼん。

 だとしても、ともちんスキーとしては、ともちん単体を眺め、悠未ひろ、新境地開拓?! ということで、納得しまっつ。

 せっかくめがねっこなんだしねっ。二枚目風というより、老眼鏡っぽいけど(笑)。
 こんなアホアホな役、やったことなかったもんね。これも経験、芸幅を広げているんだよね。
 いきなり脱ぎ出すキャラなんだから、割り切ってソレも楽しまなきゃね。ともちんが舞台上で発作的に脱衣するのよー、きゃー(棒読み)。すごいしっかり作った胸板に、「専務、いくつの設定なん……?」ととまどうナリ。
 んで、せっかくカラータイマー鳴らすんだったら、もっとちゃんとキザっているところを見せて欲しかったわ。アホアホ設定だけ見せられて、かっこいい?キザりは寸止めって、なんの嫌がらせ……イシダめ……(笑)。

 
 秘書@ちさきちゃんは素敵でした、こんなに彼女をきれいだと思ったのははじめてだ(笑)。あの役は所作ができあがってないとダメだもんね。
 助監督@あもたま氏が、なんかやたら素敵でした……どうしよう、なんか彼好みだわ!! 出て来るたびにドキドキした!!
 トメさんの華のなさにびっくりし、こーゆー役なのかと思い返してみたり、ジミーがヲカマでもヘタレな男の子でもなく、ただの女のコでアゴが落ちたり、橘の子分たちにワクテカしてみたり。

 全ツだから仕方ないとはいえ、モニターがないことが残念でならない。アレ、あった方が絶対わかりやすくお客さんにウケるだろーに。

 イシダせんせとは致命的に気が合わないので、やっぱりこの作品も好きではないのだけれど、それでも泣けることは確か。
 ヤスの母@邦さんに泣かされ、小夏@ののすみに泣かされ、銀ちゃん@ゆーひさんに意外にも(意外言うな)泣かされた。

 イシダせんせ以外の演出家作品で、ゆーひくんだけを見つめるとしたら、きっときっと、すごく入り込んで楽しむことも出来るだろうなと思った。
 今は演出にあちこちノイズが多すぎて、センスが合わなさすぎて、入り込めない……入りかけるたびに冷水を掛けられる、の繰り返しだから(笑)。それでも泣けるんだけど。

 フィナーレがあるのはうれしいし、最後の銀ちゃんの電飾スーツも健在で、ライトが点く前のステージにあの電飾スーツの銀ちゃんがスタンバってる姿は、それだけで笑えた。

 んで、シャンシャンがあるんだ! ってことに、ひそかにツボった。
 そうだよな、フィナーレ付きで階段付き(笑)で大羽根付きなら、そりゃシャンシャンもあるよな。

 将棋の銀のコマに飾りを付けたシャンシャン……。
 アレ、携帯ストラップにして売ればいいのにー。
 『麗しのサブリナ』はいろいろと残念な部分がある。
 それはそれとして、今すぐ変更可能なプラスアルファの話。
 残念な部分をそのままに、「でもなんかイイもん観たかも?」と観客を煙に巻く方法。

 エンドロールを付ける!

 日本映画やドラマによくある、物語が終わったあと、最終回のラストに流れるキャスト・スタッフのテロップ、スタッフロール。
 洋画や海外ドラマにもあるぢゃないか……って、うん、テロップを流すだけならあるけど、邦画や日本ドラマだとオリジナルの映像もばっちり付けるでしょう?
 
 『麗しのサブリナ』後日談映像を流すの。

 ライナス@まとぶんとサブリナ@蘭ちゃんが船の上で抱き合ってハッピーエンド、そこで幕。よかったねー!!
 ……なのはわかるけど、イイけど、それをさらにパワーアップさせる。ハッピーアップさせる。

 この芝居、どうあがいても役不足、出番不足じゃん? 主役ふたり以外が消化不良じゃん?
 それなら、緞帳が降りたあとに、後日談で全員登場させればいいのよ。

 動画ではなく、静止画、スライドちっくにモノクロでもいいから。原作映画の雰囲気で。
 エリザベス@あまちゃきと無事挙式しているデイヴィッド@壮くん、なんか盛り上がっているタイソン氏@さおたさんとその奥方@くまくま、ほっとしている&おろおろしているララビーパパママ@まりんとちあきさん。
 ……な人々をサカナに、勝手にパーティで盛り上がっている、デイヴィッドの悪友たち@めおみつまーだい、それぞれのカノジョたちといちゃついたりなんか怒らせてたり、とにかくかわいい連中!な姿。
 ちゃっかりデキあがってる、秘書コンビ@まっつ&いちかのカユい日常のヒトコマ(笑)。
 サブリナからのパリ便りを読んで、大騒ぎの使用人ズ。
 そんな彼らの姿を、1枚ずつ、オケの演奏(録音でも可)をバックに流していく。場内は明るく、べつに立って退場してもいい雰囲気ななかで。

 んでラストはもちろん、幸せそうなライナスとサブリナの1枚。んでFinと文字が出て終了。

 いいと思うけどなー、ほっこりして。

 緞帳に映像を流せることは証明済みだし、さらにこれを日替わりってゆーか、数パターン抜き打ちで流すとか。
 大まかな画像は決まってるんだけど、中に数枚、日替わりピックアップがある、てな。
「今日はみつる×ひめかカップルの日だったね」とか、「今日はタイソンさん一家!」とか「美女秘書たちと重役たちの日」とか。
 捕獲するのもたのしーだろーに。

 
 まあわたしが、ウィリス@まっつとマカードル@いちかの、ラヴラヴ後日談を見たいっつーのが、第一の動機ですがね(笑)。
 『麗しのサブリナ』の個人的な目線。ツッコミと楽しみ、続き。

・テニスコートに、弟の代わりにやってきたライナス@まとぶん。「僕を置いてかい?」の台詞が嫌(笑)。
・話があるってストレートに言わない、上から目線な台詞。相手が自分に従うことを前提とした物言いですよ、「僕を置いてかい?」。やーだー、ムカつくー。まとぶんに、言われたい~~♪(どっちや)

・弟の代わり、にシャンパンを飲むのもダンスするのも許容範囲だが、チューするのはNGです、ライナスにーちゃん!!

・所詮日本人なので、どんだけイケメンでも恋人の家族に「代わり」にチューされるのはありえない、と思ってしまう。文化の違いだから仕方ない。

・またしても暗転が長い。下手にえっちらおっちら人が出てくる気配。なんですぐさまライトを点けて、次景に進まないのか謎。
・医者@みわっちがかわいい。どんだけ変装してても、初見からひとめでみわっちとわかる、その存在感に拍手!!(笑)
・使用人ズのリアクションに注目するのもイイが、ここはひとつ、デイヴィッド@壮くんの絶叫パフォーマンスにロックオン。
・医者が動くたび、いちいち「ぎゃ~~!!」とやる壮くんのカオ、顔、かお!!

・使用人ズはとてもいいキャラクタたちなのに、物語半ばのここで、もう出番がないんだね……尻切れトンボ感……。

・兄弟のいちゃいちゃタイム。ソファーのデイヴィッドと、腹に一物ライナス。
・おねだりデイヴィッドが、凶悪に可愛い。
・ナニあのあまえっぷり。笑顔。断られることなんか夢にも思っていない、愛されることが当たり前の顔。

・壮一帆最強伝説が、またひとつ。

・このデイヴィッドは、壮くんレジェンドの1ページを飾るに相応しいキャラクタだと思うわ。すごすぎるわ。強すぎるわ。

・デートを前に鼻歌ライナスはかわいい。クローゼットの中のパパ@まりんもかわいい。
・でもまとぶん、やりすぎは良くないと思うの……。

・クラブ・プルチネラは謎だらけ。
・タイソン夫人@くまくまがアルバイトしてる?!
・エミリー@はるちゃんがアルバイトしてる?!

・プエルトリコで2番目の大富豪の奥方が何故、セクシードレスに身を包んで夜のクラブでアルバイト? てゆーか、みわっちと、浮気中?! タイソン氏@さおたさん可哀想!!(笑)
・くまちゃんはまだいいとして、エミリーはジョージ@めおくんのカノジョ……のはず。つり合いのとれたセレブ・カップルだと思っていたけど、実はエミリーはびんぼー少女? 夜の仕事してるの?
・そして、エミリーの目の前で、ジョージは他の女のコ@じゅりあとラヴラヴ・ダンシング。

・クラブの歌手はエミリーと別人設定だとしても、カノジョ持ちのジョージが別の女と組んで踊るのは変。他の仲間たちはみんな、ステディと一緒であるだけに、エミリーとは別れたの?って疑問が浮かぶ。さらに、エミリーと同じ人が同じ場面に出ているだけに……。
・歌ウマのはるちゃんに見せ場があるのはいいけど、それならジョージたちとは別の出番にするべきだし、同じ場面に出すならエミリーとして歌わせるべきだ。
・ジョージはひどい男に見えちゃうし、デイヴィッドの友人たちのかわいいカップルぶりに傷が付く。
・演出家のセンスのなさ、無神経さがすごい。

・で、デイヴィッドの友人たちもかわいいキャラクタたちなのに、物語半ばのここで、もう出番がないんだね……尻切れトンボ感……。ジョージに至っては、女替えてるし……。

・でもノリノリなんだ、この場面。美女トリオの歌声も素敵。
・まぁくん以外の88期男子全員のダンスパートに注目!
・使用人ズの若者たち、ちゃっかりカノジョ連れで楽しんでるんだね……(笑)。

・でもって、めぐむの手が気になる。女のコとチークタイムの、めぐむさんの手と表情……ぶっちゃけ、すけべオヤジっぽいんですが、いいんですかアレ。
・めぐむはどこへ向かってるのかなあ……(笑)。

・みわさんの総スパン衣装と、超ムーディ歌唱が癖になる。
・クラブ・プルチネラは楽しいなあ。

・「♪あの娘はステキじゃなかった キミほど♪」という歌詞は、どうかと思う。「ステキじゃないけど 僕はよかった」って、ナニそれ。
・翻訳そのままなのかもしれないけど、もう少し日本語の文章として書くことはできなかったのか。
・いきなり他の女の子の悪口を言い出すライナスさんに引いた。会ったこともない他人の悪口を突然言い出して、そのことで今のカノジョを持ち上げるって、わたしの逆ツボ。こんな男キライ。
・きっとこの男、次の女の子にわたしのことを「ステキじゃなかった」ってネタにして、その子のことを持ち上げるんだわ。と、思う。

・そんな間違った口説き方をしたライナスと別れたあと、サブリナ@蘭ちゃんは「♪彼が優しいことがわかる♪」と歌い出す……ちょっと待て。悪口とセットでしかひとを誉められない男だとわかるエピソードのあとに、その歌はよせ。

・父に呼ばれて下手花道にはけるサブリナは、ごめん、見ている暇がない。わたしはすでに上手花道にオペラ・ロックオン状態。
・せり上がった電話台、上手袖からつかつか登場するウィリス@まっつ。
・や、まだライト点いてません(笑)。
・「おはようございます、ララビー様」でライトが点く。その前からガン見は基本ですとも!!
・まっつ一人芝居。百面相。
・受話器をアゴに挟んで、メモを取る。

・ちなみに、メモボードは、白紙です。

・必死にペンを走らせてはいるけれど、なにも書かれていない。書いてるふりだけ。ええ、いろんな箇所で、オペラでしっかりチェックしました。
・しかしウィリスさんの中の人は「メモボードにはなにを書いているんですか」という質問に、「もちろん、ララビー様の指示を書いてます」と、しれっと言い切ったそうな。(お茶会情報・笑) 中の人、ナイス!!

 続く~~。
 『麗しのサブリナ』の個人的な目線。ツッコミと楽しみ、続き。

・ウィリス@まっつの「魅力的なご婦人です、ね」は絶対はずせないチェックポイント。
・「ウィリスくん、クリーブランドを買っちまえ!」とふざけたあと、真顔なライナス@まとぶんを見て、一瞬びびるサブリナ@蘭ちゃん。
・蘭ちゃんサブリナのいいところは、いつもどこかライナスに対して「おびえ」があるところ。図に乗ってない。「言い過ぎた?」とか「空気読めなかった?」とか、自問自答している感じが、リアルな女の子。

・ウィリスとマカードル@いちかの「♪ライナス・ララビー、あなたは大丈夫?」は大好物。
・恋愛に興味のないウィリスと、反対に女子らしい興味を示すマカードル。
・マカードルにあおられて、ウィリスも「その可能性もアリか」と気づく。そしてさらに、あの堅物ライナスが恋をする?、て流れで、ウィリスくんも恋愛アリなモードにチェンジするんだろうな。
・それまでマカードルを意識する場面はなかったのに、ここからスタート。

・ウィリスはコメディな存在だと思って見ていたはずが、どんどん二枚目に見えて困る(笑)。
・「プラスチックの件で女性どころじゃない」と言ってるあたりのウィリスさんは、ふつーに二枚目リーマンだと思うんですが?!

・車の運転をするライナスがカッコイイ。
・黙ってると格好いいんだ、ライナス。いや、初日付近は他も格好良かったけど、楽付近ではおちゃらけ熱血変な人だったから……モゴモゴ。
・そんなライナスの横顔を見つめるサブリナ。……蘭ちゃんの「恋」の演技、表現はいちいちリアルで見ていて胸がきゅんきゅんする!!
・レディファーストがたまらん。紳士。大富豪の大人の男性が、わざわざぐるっと回って、身分違いの小娘のために、助手席のドアを開けてくれるときめき。
・「お食事最高だった!」と喋りはじめる直前の、サブリナの心の変化もツボ。なんでこう、いちいちリアルかな。

・「ラヴィアンローズ」で幻想の女4人がせり上がってくるのに、けっこう無理矢理感を持つ。あー、ここで突然女の子たちに出番を作るわけかー。
・4人でもそうだったのに、さらにぞろりと何十人?!な場面になり、初見では口が開いた(笑)。
・すげー無理矢理!(笑)
・幻のダンスシーン、コロスが入るのはお約束とはいえ、それはこの場面、この台詞のあとではない気がするんだ。
・ライナスの真意もサブリナのキモチもはっきりしないところで、周囲だけ盛り上げられても……。
・それより、「君が弟を愛してなくて……」とつい本心を口走ってしまったライナス、そこから彼の心象ダンスとかの方が「恋愛」として盛り上がると思うんだが。
・ありがちに、幻のサブリナと踊り、そこに幻のデイヴィッド@壮くんが登場し、三角関係なダンス、組子の出番増やさなきゃ的意味では、周囲には幻のサブリナとライナスを表すダンスカップルたちが踊り……てな。
・それでも、電飾輝く「薔薇色の人生」はきれいだと思うけれど。

・よーやく登場したデイヴィッドはまたもガウン姿。おしりの詰め物はナシ(笑)。
・お気楽別次元に話すデイヴィッド、深刻なサブリナ。
・デイヴィッドに抱きつき、「話し続けて」と言うサブリナは切ない。が。
・サブリナに抱きつかれたあとの、デイヴィッドの表情が秀逸。

・ひょっとしてさおたさん、ここで初登場?!>タイソン氏。なんで夫婦でパーティに出ていないのか不思議。
・「エリザベスが待ちくたびれて、くちなしの花をかきむしる様子が目に浮かぶわ」でもれなく笑いが起こるのは、みんなナチュラルに想像するからだろう>くちなしの花とカピー(笑)。
・エリザベス@あまちゃき、かわいいなあ。デレデレ。
・サブリナの名は、詩が由来。……ウィリスが詩の本を用意しろと指示されて首をかしげていた、アレですな。
・デートでサブリナの名前の由来の話題になり、「知らないの、ミルトンの詩よ?」とか言われてあわてて手に入れて読んで、あとから得た知識なのに訳知り顔で語るわけですな、ライナスさん。流れが目に見えるようです(笑)。

・電話ボックスの男@みわっち。電話ボックスの男@みわっち。電話ボックスの男@みわっち。
・「聞いてるよ」のライナスのカッコつけが嫌だ(笑)。息せきって走ってきたくせに、それでもわざわざポーズを取る、男の悲しさっつーか可愛らしさ。
・「怒ってない? 理由があるのよ」……サブリナの「おびえ」がいちいちイイ。

・「私は行けないわ」でコートをめくってパンツの足をチラ見せ。ドレスを着てないと芝居に行けないわけですな……現代日本ならジーパンでも行くことは可能だけど。(モノによっては浮くかもしれないけど、だから「行けない」ってことはナイだろ)
・ウィリスさんしか見てなかったので、サブリナが足チラさせることに気づいたのは、実はずいぶんあとだ(笑)。
・しかし、コートの裾をまくって男に足を見せるって……ウィリスくん、ドキっとしたんぢゃあ……。

・トマトジュースとイワシの缶詰とクラッカーで、どんな料理ができるんだろう。イワシのトマトジュース煮込み? パリの料理学校ってすげえな。
・クラッカーだけでスフレって作れるんだろうか。パリの料理学校ってすげえな。

・「エプロンある?」で、ライナスが当たり前に取り出したピンクのエプロン……誰もが一瞬「ライナス??!」と目を見開いたことだろう。
・「マカードルが皆に食事を作った」と続き、ほっとする。ああ、マカードルのか。ピンクのワンピ(ツーピースか、スーツっつーより)で仕事している彼女なら、どんなオトメチックなエプロン使ってても変じゃない。
・サブリナのサブリナパンツ姿は……まあ、ふつう? がんばったなあ、というか。(ごめんよ蘭ちゃん)
・窓の外を見ているライナスがかっこいい。

・サブリナの表情が繊細かつ雄弁なだけに、ライナスがつまらない……。
・もう少し、なんとかならないのかなあ、ここ。演出の問題かなあ。

・サブリナに真実を話すところからは、腹芸なしの真実の表情でいいので、まとぶんすごくイイんだけど。
・彼女を傷つけてしまった、そのとっちらかり感というか、空回り感というか。愚かさと熱さが切ない。

・ところで、みょーに気になるのは、バーカウンターに出しっぱなしのクラッカーの箱。そして、椅子に置いたままのピンクのエプロン。

・翌朝、ラヴラヴいちゃいちゃの秘書コンビ登場。
・ここ、可愛すぎるっ。
・回を重ねるごとにラヴっぷりが上がり、肘で突つき合ったりして、もおたまらんっ。
・マカードルが髪を下ろしているのもポイント。ナニその女子っぷり。
・ライナス様の「そうだったのか?」で、背筋を正して一歩離れるのがイイ。
・ライナスの指示をクールに聞き……いちいち「ええっ?!」と驚くのがイイ。

・そしてデイヴィッド登場……続く。
 『麗しのサブリナ』にて、サブリナ@蘭ちゃんに感情移入しまくるのは、彼女の「恋」の演技がいちいちリアルに思えるから。
 わたしの胸きゅんポイントを刺激する。

 デイヴィッド@壮くんに恋したのが、9歳のとき。
 遊んでいるときにいきなりキスされて、以来ずーーっと好きだった、と。

 それって、ただのあこがれじゃん?
 運転手の娘が、お屋敷のおぼっちゃんにキスされて、舞い上がらないはずがない。
 小さな女の子の、小さなあこがれ、小さな恋。

 相手は名うてのプレイボーイ、女の子を取っかえ引っかえ。9歳のサブリナにキスしたのも軽いキモチ、中学か高校のころ? つか、絶対おぼえてねえ。ハイスクール時代にはもう遊びまくりだったわけだし。そして結婚→離婚を3セット経験だし。

 そんなひどい男に、子どもだからと相手にされず、あてつけ自殺を考えるくらい、思い詰めたのが20歳。

 手に入らないモノだからこそ、まぶしく見えるんだろう。
 木の上からパーティを見ているように。
 サブリナがあこがれていたのはデイヴィッド自身ではなく、デイヴィッドのいるあのきらびやかなパーティだったんじゃないか。
 ドレスを着て、パーティで王子様と踊る、自分自身だったんじゃないか。

 パリで大人の美女に変身して戻ってきたのが22歳。
 洗練された彼女の姿に、デイヴィッドもめろめろ。
 あこがれていたものが全部、彼女の手に入る。王子様みたいなデイヴィッド、お屋敷のパーティ。
 敵になると思っていた兄のライナス@まとぶんも、まさかの味方宣言。

 月が手をさしのべるほどの、奇跡。
 あこがれをすべて手に入れた少女は舞い上がる。

 そして。
 そこから、彼女の本当の恋がはじまる。

 デイヴィッドを10年以上好きだったのに、たかが数日で心変わり。結果としてはそうだけど、ほんとのとこはそうじゃない。
 デイヴィッドへの想いはたしかに「初恋」と呼んでいいものだけれど、あこがれが主成分だ。幼さゆえだ。
 本当に恋をしたのは、ライナス相手だ。

 戯れのキスであこがれがスタートした9歳のサブリナ。
 またしても、キスで恋がはじまるんだ。
 デイヴィッドを待っていたテニスコートで、ライナスから代理でキスをされた。……サブリナって、キスでスイッチ入っちゃう子なのな(笑)。
 

 サブリナにとってデイヴィッドは王子様だったけれど、ライナスは「こわいおじさん」か。
 彼女が9歳のとき、デイヴィッドはまだ少年だったけれど、ライナスはすでに青年だったろうし。
 子どもの目に最初から「大人」と映っていたなら、それはずっと変わらず「対象外」な姿だろう。

 デイヴィッドに口説かれて舞い上がるサブリナは、実に屈託なく接している。気取ったり甘えたり、てらいがない。
 でも、ライナスの前ではとても不安定。上から目線で語ってみたり、顔色をうかがったり。

 デイヴィッドを前にしているときの安定したキモチと、ライナスに対する「おびえ」。
 無意識のうちに彼女は、空想と現実を分けているのではないか。

 デイヴィッドはあくまでも空想上の王子様。なにを言ってもしてもかまわない。だってこれはわたしの夢。空想の中の恋だから、自由自在。
 でも、ライナスはチガウ。いつ嫌われるかわからない、思い通りになるはずのない、現実。だから、がんばる。顔色をうかがう、演技もする。オンナノコを全開にして、アンテナを全開にして、探る。ねえ、ワタシノコト、ドウオモッテルノ?

 まだ焦点がデイヴィッドに合っているうちは、ライナスに対してなんのおそれもない。最初のテニスコートではむしろ、「運命の恋を邪魔するなら、戦うわよ」ぐらいの気合いで接している。
 それが、キスされたことで、サブリナにスイッチが入る。
 対象外のおじさんではない、素敵な異性なんだということに、はじめて気づく。
 次に、最初のデート。ここでもまだ焦点はデイヴィッドなので、サブリナは無防備にライナスに接し、受け入れている。するとライナスは思っていたような堅いだけの男ではない上、しかも自分に気があるような言動を取る。

 ここから、生身の男女としてのつきあいがはじまる。

 サブリナは、女の本能でライナスの真意を探る。
 テンション高く話す、その裏にある計算。
 気持ちをコントロールしようとする努力。

 わざとふざけて失礼な物言いをした直後、「言い過ぎた?」と相手の顔色を見る。
 明るく振る舞う直前に、気合いを入れてわざとテンションを上げる。
 相手の反応がこわくて、ひとりで喋り続ける。
 沈黙をごまかすために、どうでもいいことに逃げる。

 そんな、「女の子」な部分が、切ない。
 計算、と言うのは勘弁して欲しい、好きな相手に本能でしてしまう、女の子の精一杯の闘い。

 相手の気持ちがわからない。
 弟の代わりにつきあってくれているだけの、大人の男性。ふつうならただのお義理で済むはずなのに、何故かそこに愛があるような言動を見せる。
 愛されている? いや、チガウかもしれない。
 ふつうなら相手にされっこないんだ。代わりだから、一緒に過ごしているだけ。

 身分違いで、年齢差も大きくて、代理で。
 立場がずーーっと下だからこそ、サブリナは懸命に背伸びをする。

 パリの話題は幸い。
 彼女が唯一ライナスに「勝つ」ことの出来る話題。
 だからサブリナは必死になってパリの話をする。上から目線でライナスに教える。

 いや、ほんとうはわかってる。
 ライナスはわざと負けてくれている。サブリナの話すパリでのルールなんか、どうでもいいとわかっている。わかっていてそれでも、話を聞いて感心してくれている。
 そのやさしさに触れたくて、彼の手の中で踊っている、踊らせてくれている感覚を味わいたくて、パリの話をする。

 運転する彼の横顔に見とれて、大人の彼につりあわない自分の卑小さを感じて、でもそんなキモチを悟られてはならないと必死にテンション上げて、ことさら陽気にはしゃいでみせて。
 想いを持てあまし、彼を見つめて沈黙してしまい、ごまかすために帽子のつばの話にしてしまったり。

 どうすればいいのかわからなくなって、デートをすっぽかそうとして、でも結局会いに行ってしまったり。
 感情をぶつけながら、そのたび相手の反応をこわがって、そのことによって嫌われたんじゃないかとおびえて。

 ひとつひとつの行動が、言葉が、リアル過ぎて痛い。
 
 新人公演でみりおん演じるサブリナが、そーゆー裏の心の動きや感情の脊髄反射みたいなところがなく、脚本に文字として書かれているだけの演技をしているのを見て、余計に蘭ちゃんの演技の細かさに瞠目したのね。
 たとえばみりおんだと、ほんとに楽しいデートだから「お食事最高だった!」と言ったように見えたし、帽子のつばが気になっただけに見えたから。

 蘭ちゃんの「恋」の演技は、わたしのツボにはまるんだろう。
 彼女を見ていると、ほんとにサブリナになってライナスに恋をしてしまう。
 切ない、身分違いの恋を。

 月が手を差しのばした……はずなのに、ドレスを着て舞踏会に出かけているのに、屋根裏部屋で膝を抱えているシンデレラみたいな切なさを抱えている、そんな恋。
 月を眺めながら涙を流している、そんな恋。
 デイヴィッド@壮くんが、かわいくてならない。
 ……て話は、何度も書いた。

 大富豪のおぼっちゃまで、気楽な次男坊で末っ子で、ハンサムで、家族からもそれ以外からも愛情とお金を山ほど与えられて甘やかされて育った夢の王子様。
 疑うことを知らない笑顔に、ムカつき無限大、こいつムカつくー、うきー、大好き。
 好きすぎてムカムカする(笑)。

 てなことは何度も書いたので、置くとして。

 『麗しのサブリナ』は、デイヴィッドの成長物語でもあるのだな、と。

 デイヴィッドはずるい。
 いつも女の子をとっかえひっかえ、お気軽に罪なく責任なく生きている。
 「エリザベスは好き、でも他の女の子も好き」と、堂々と言ってしまうくらい、ナチュラルに諸星あたる。

 そんなデイヴィッドだから、ふつーにサブリナ@蘭ちゃんの美貌に恋をして。
 軽いノリの恋。本人は運命の恋だと言い張るけれど、過去の恋もどうやら同じよーなことを言っていたみたいだし。アテにならんわなあ、ドンファンの言い分なんざ(笑)。

 そもそも、デイヴィッドがケガをして動けない自分の代わりに、ライナス@まとぶんにサブリナの相手を託したのって……いろいろとひどい理由だよね?

 サブリナは超美女。男たちが放っておかない。
 だからひとりで放置は危険。どんなムシが寄ってくるかわからない。
 かといって、友人たちには頼めない。友人たちもカノジョ持ちだが、デイヴィッドと一緒で「カノジョも好きだけど、他の女の子も好き」なチャラ男ども。
 パーティでサブリナに群がっていたくらいだ、あいつらに任せるのは危険。
 それに、友人たちもまたセレブなイケメンたちだ、サブリナがうっかり恋しちゃうかもしれない、危険危険。

 サブリナのムシ除けをしてくれて、サブリナが決して惚れたりしない、魅力のない男……ライナスが適任!

 ……ひどい。ひどいわデイヴィッド!!(笑)
 自分の味方で、言うことを聞いてくれて、男として安全牌、それがライナス・ララビー、アナタなら大丈夫!

 堅物兄貴ならどんなにサブリナが魅力的でもなんとも思わないだろうし。
 それに。

 それに、弟の恋人を、取るはずがないし。

 そう、デイヴィッドは自惚れている。
 ライナスに、愛されていること。

 美女よりも、かわいい弟を兄が優先すると、疑いもせずに信じている(笑)。

 ……ったく、デイヴィッドめ!
 重ね重ねひどい。どんだけ上から目線、どんだけ自惚れ屋。

「兄貴は、芝居は半分眠ってて、株と税金のことばかり話していただろう」
 と、見事に侮った発言をするデイヴィッド。

 男としての魅力を認める友人たちは信用せず、男として侮りまくりの兄のことは信じきって。

 そうして、悲劇は起こる。

 二重の裏切り。

 恋人のはずのサブリナが、心変わりして兄ライナスを取った!!
 ブラコンの兄ライナスが、心変わりして恋人のサブリナを取った!!

 ふたりとも、僕のことを愛してくれていたはずなのに?! 恋人と兄、両方に裏切られたんですけど?! どーゆーことよ?!!

 サブリナに「別れのキス」をされたデイヴィッドは、兄のオフィスへ行く。
 昼~夜しかタイムテーブルのないデイヴィッドが、わざわざ午前中にだ。
 きっと、眠らなかったんだ。眠れなかったんだ。本人の言葉通り。

 そこで、兄をぶん殴る。「覚えがあるだろう」と。

 サブリナを傷つけた。デイヴィッドを傷つけた。
 不器用な兄。

 そしてその兄は、デイヴィッドにサブリナと一緒になれと言う。2000万ドルの事業を棒に振ってでも。

 そこで、知るわけだ。
 デイヴィッドにパリへ行けと言うライナスが守りたいモノは、サブリナだと。

 おにーちゃんは、会社でも自分でも弟でもなく、サブリナという小娘を守るため、一生懸命になっているんだってことを。

 誰からも愛され、甘やかされていたデイヴィッド。
 ライナス兄ちゃんだって、なんやかんや言ってもいつも、いちばんの味方だったのに。
 愛されるまま、なんの責任もなく人生を謳歌していたデイヴィッドは、いちばん侮っていた、愛情を疑っていなかった相手から、裏切られた。

 おにーちゃんに、捨てられた。

 ライナスは、デイヴィッドよりも、サブリナが大事だって。

 あの堅物兄貴が、そこまでしますか。
 変わってしまった兄、捨てられた自分。
 がーん、とした顔をしつつ、捨て台詞を残して退場、するしかない。

 だって、デイヴィッドにもわかるから。
 裏切ったのはライナス、傷つけたのもライナス。
 でも、ライナス自身も傷ついている。そして、不器用な彼が、彼に出来る限りの誠意を尽くそうとしている。

 それは、サブリナと同じで。
 サブリナもまた、ライナスの裏切りと不器用な誠意を見せられ、傷つきながらも、全部受け入れるしかなかった。
 デイヴィッドも、全部受け入れるしかないんだ。傷つきながら。

 3人が3人とも傷ついた。3人分、傷ついた。

 さて、そーやって捨て台詞を残して飛び出していったデイヴィッドは、一計を案じて戻ってくる。
 新聞にライナスとサブリナのことを書かせたのは、その通りにしないと、事実チガウってことで株価に影響が? サブリナを騙してひとりパリへ送ったとばれると、非人道的だと醜聞になる?
 社交欄のある世界のことはよくわかんないけど、「決心させてやったんだ」と言うからには、退路を断つ意味だろう。

 デイヴィッドは、そーやってライナスのお尻を蹴り上げる、わけだ。
 愛しているなら、行けよ、と。

 傷ついたお尻をさらして兄に甘えていたデイヴィッドが。
 兄に自由を与える代わりに、義務と責任を、自分が引き受けた。

 罪なく責任なく、お気楽に他人の愛だけを食べて生きていた、極楽トンボが、他人の愛のために、地に足をつけた。

 はじめて、裏切られて。
 愛する者を裏切らずにはいられないほどの、恋を見せつけられて。

 デイヴィッドはひとつ、大人になったわけだ。

 ……そーゆー話だよね、『麗しのサブリナ』!!
 てゆーかデイヴィッド、いい男ぢゃね? やっぱイイよ、すげー好きだー、もームカつくーー!!

 義務と責任を引き受けたっつっても、またすぐ彼がひょろひょろチャラチャラすることは、想像に難くないとしても。
 大いなる進歩、成長だよね(笑)。

 すべては、愛の名のもとに。
光に舞う。@ロック・オン!
 夢の国、タカラヅカを卒業する人は、最後の公演で「退団者オーラ」というものが出て、現実の人間にはない輝きや、透明感を持つ。
 ということを、経験上知っていたけれど、水しぇんにはそれを特に感じていなかった。

 わたしが、水くんを身近に感じすぎていたのかもしれない。
 や、もちろん彼は大スターで、わたしの手の届かないところにいるのだけど、何故か勝手に「水先輩」的なシンパシーを感じる。彼がいい人だとか、真面目な人だとか面倒見がいいとか、オネエ言葉だとか(笑)、その人格に、キャラクタに、全面の安心感があるというか。

 ある意味非人間的な、神格的な退団者オーラではなく、いつもの水先輩として眺めてしまったので、ムラでは前楽、千秋楽とナマで見てもなお、信じ切れていなかった。
 袴姿のパレードを見てなお、信じていなかった。

 水夏希が、いなくなってしまうこと。

 どこか他人事な、「だって、水くんはいなくならないもん! みんな嘘だもん! てゆーか、時間はまだまだあって、止まっていて、流れていなくて、水くんはずっとそこにいるんだもん!」的な、わけのわからない思いこみ、自己暗示があって。

 わかっていなかったのですよ。
 いくらアタマで理解しても、心は止まったままというか。

 そんなこんなで、9月12日。
 花組公演中だましだましで乗り切った体調不良のツケが一気に押し寄せ、病院通いだの検査続きだのでへろへろよろよろの状態で、夜行バスに乗って早朝に東京着、「我ながらひでー顔色(苦笑)」なまま、東宝前へ行く。
 遠征すること、前もって誰にもなにも言わなかったけれど、案の定、kineさんとドリーさんがいつもの場所でギャラリーしていたので合流、一緒になって雪組のみなさんを、そして退団者を待った。

 素顔のあずりんを見て、「ほんっとに緑野さんの好きそーな顔だわ」と、ツッコミ担当のドリーさんがしみじみ言っていたのが忘れられない(笑)。そうなの、ほんっとに好きな顔なの。

 ムラの千秋楽は入りから出のパレードまで、見事にひとりだったからなあ。友だちと一緒のギャラリーはいいな。
 「効率的な雪組、効率的な水さん」を合い言葉に、短時間ですっきりさっぱり行われた入りを堪能。退団者も「これぞ退団者ですわ!」という大仰な感じはなく、わりとふつーに……つーか、いろいろとゆるめ(笑)に、入っていったのがイイ。
 効率的なのよね、きっと。
 当の水くんだって、ふつーの車がふつーにやってきて(車のふつーさに、ギャラリーが一瞬ぴよってた)、本人もふつーに黒服だし、オープンカーだのなんだので登場してとかいう大騒ぎはやらなくて、実に効率的だった。
 
 大袈裟なことはしなくても、水くんは広範囲に渡って歩いてくれて、早朝から駆けつけた人たちのほとんどが、その姿を見られたことと思う。

 わたしはやはり、水くんについて、ギャラリーの後ろを追いかけて。
 人混みのいちばん後ろから、ずっとずっと眺めていた。
 白い花のゲートをくぐって、劇場ロビーで階段に勢揃いした組子たちが、なにかしら歌を歌って迎えているのを大ウケしながら味わっている水くんの背中を、ずっとずっと眺めていた。

 自分の体調がヤバいこともあり、「体力温存、最後まで参加する」ことが今回のテーマ、まだこれから1日長いぞという気負いもあり、「段取り」として必死に計算している部分があった。
 心を全開に、無防備にはできないというか。
 家で飲むならどんな醜態をさらしてもイイからいくらでも酔えるけど、外ではそうもいかないからどこかでサーモスタット入っているっていうか。

 気負っていて、角張っていて、頑張っていて、「現実」はどこか他人事だった。

 最後の『ロジェ』で、今までない大泣きをしつつも、幕間はべそかきながらミニパソに感想書き殴っていても、それでもなんかどこか、違っていた。

 水くん、ほんとに、いなくなっちゃうの?
 ……受け止めきれないままに。

 それが。

 『ロック・オン!』の、月の王の場面にて。
 ええ、金髪耽美水しぇんが登場するあの場面にて。

 ラストシーン、たったひとりで踊り狂う月の王。
 長い金髪を振り乱して。

 なにもない舞台、空っぽの舞台。
 そこにあるのは、月の王……水夏希だけ。

 踊る水しぇんに、ライトが当たる。
 暗い舞台の中、水くんにだけライトが集まる。
 集まった光の中、ひとり踊る水くんが。

 浮かんで、いた。

 宙に。
 金色の光の中に。

 地面を離れ、なにもない空間に、浮かんでいた。
 光の中にいた。

 夢の国、タカラヅカを卒業する人は、最後の公演で「退団者オーラ」というものが出て、現実の人間にはない輝きや、透明感を持つ。
 でも水しぇんには、それを感じていなかった……はず。
 感じられなかったんだ、わたしが。
 現実をうまく受け入れられなくて。

 それが、今。

 水くんは、宙を舞っている。
 光の中、靴先が舞台を離れている。

 う……わ。

 思わず、口元を押さえた。
 声を抑えるために。

 水夏希は、こんなところにいた。

 わたしが気づいていなかった、認めていなかっただけで、ここまで来ていた。退団オーラなんてシラナイ、だって水先輩はここにいるもん……そうやって見ないでいた、彼の集大成の輝き。
 水くんは、重力無視して宙に浮かんでしまうくらい、「タカラジェンヌ」として「夢を与えるフェアリー」として、完成されていたんだ。

 目の錯覚でも思いこみゆえの脳内映像でも、なんと評してくれてもいいよ。

 でも、わたしの目には、そう見えたんだ。
 水くんが、光の中で浮かんでたんだ。
 現実とか常識とか無関係に。
 そしてわたしは、ほんとうに彼がそこまで到達したんだと、すこんと受け入れたんだ。そんなのあり得ない、と思うのではなく、あるだろう、だって彼はフェアリーだもん!と。

 もお、がつんと。

 クチを覆わないといけないくらいに。
 思い知らされた。

 水くんは、いなくなる。

 だって、宙飛んじゃうんだよ?
 そこまでフェアリー極めたら、そりゃもう、この地にはいられないじゃないか。

 水くんはそこまでたどり着き、他の誰もたどり着けない境地にたどり着き(実際、宙に浮いて見えたジェンヌは彼がはじめてだ)、光の中に、消えてしまった。
 満場の拍手の中、月の王の場面は終わった。

 いや、もおね。
 あまりに急に、がつんと来て。
 ぐわーって涙の固まりが襲ってきて。
 そっから先は、しばらく記憶朦朧。

 なんか、すごいもん見た。
 すごいもん見た。すごいもん見た。

 光の中の水しぇん。金髪と、満面の笑顔。
 行ってしまったよ。行ってしまうんだよ。
 光の中へ、あのひとは行ってしまうの。

 止まっていた時が、涙が、一気に動き出して。
 どうしていいか、わからない。

 
 退団挨拶とか、カーテンコールの仕切ぶりとか。
 それはいつもの水しぇんで、ほっこりして笑って終わったのだけど。

 「舞台」の上で、タカラジェンヌ水夏希のすごさは、思い知らされたよ。
 ああわたし、すごい人を好きだったんだな。
 そう、しみじみと思った。

 
 劇場前のパレードまで全部全部終わってしまったあと。
 ドリーさんとkineさんと夜道をてくてく歩きながら。

「あたし、水、好きだった。そうだ、あたし、好きだったんだ」
 ツッコミ担当のドリーさんが、なんか憑かれたみたいに繰り返してたのが、忘れられない。
 今まで水くんを好きだなんて、とくに聞いたおぼえのない人なのに。『マリポサ』とか『ロジェ』とか、「あんな男嫌いっ!!」てな話は山ほど聞いたが。←正塚作品嫌い(笑)

「もともと好きは好きだったよ、いい男役だと思ってた、でもほんとに好きだったんだ。うわああん、好きだったよ!」
 誰に言うでもなく、ひとりで言ってる、勝手に言ってる。言わずには、いられない。そんな想い、そんな日。

 うん。

 勝手に言うよ。
 好きだったよ。好きだったんだ。

 ただ、それだけ。
 アンジーのお伽噺を思い出した。

 夜の街を、ケガをした少年が歩いている。血を流しながら歩いている。
 それに気づいた見知らぬ少女が、少年の傷口に触れる。
 少年は触れられた痛みに、少女を罵る。
「あなたは何故ボクの傷口にふれるのですか? ふれて…この傷を癒せるというのですか? ではせめて包帯を巻いてくださるというのか?」
 なにも出来ない少女は泣き崩れ、ひとり去る少年は以前よりもっと辛い痛みを抱えて歩く。
 泣く少女と同じ夜空の下を。

 この物語に、小さなマックスは異を唱える。そんな結末はいやだ、と。
 グレアムは問う。「それじゃマックスはどうしたいの?」

 少女に触れられた少年は、少女を罵る。そしてひとりで歩き去る。
 そこまでは同じ。

 でも少女は、泣き崩れるのではなく、少年のあとをずっとついていく。
 ナニもできないのに。
 傷を癒すことも包帯を巻くことも、なにひとつできないのに、ただ少年のあとをついていく。
 そんな少女の足音が、ひとり歩く少年の耳に届いている。
 そして少年は言うんだ、やがて。
「ありがとう」
 と。

「ボクなら、“ありがとう”って言うもン!」
「うん…男の子ならね…そして…マックスがその女の子なら、ずっと男の子の後ろをついていってあげるんだね」
 マックスはグレアムに約束する。「きっとそうする!」と。

 ……いつもいつも、同じ出典で恐縮だが。わたしの根幹にある物語なのでご容赦を。

 ロジェをひとりにできなくて、「殴るぞ」と罵られながらも、ただそばにいるレアは、マックスの語る物語の「女の子」なんだなと。
 血を流す少年を放っておけず、なにもできなくても、あとをついていく女の子なんだな。

 そしてロジェは。
 「ありがとう」とは言わないけれど、「謝ろうと思ってた」とは言える男の子なんだな。
 そんなことを、思った。

 『ロジェ』東宝千秋楽。

 ムラ楽を観たとき、レア@みなこがロジェ@水くんに恋をしている、女性視点で恋を味わえると思った。が、今回のレアからは、色恋なんていう艶っぽいものは伝わらなかった。人間、とか、同志、とか、そんな堅いものを感じた。
 反対に、恋を感じたのは、ロジェの方だ。
 レアを求めているのは、恋情ゆえに見えた。

 『ロジェ』という作品のストーリーは好きじゃないし、作者にいろいろ物申したいことはあるんだけれど、「水夏希」を眺める雛形としては、優秀な作品なんだろうなと思う。
 スーツの着こなしや骨太な漢っぽい雰囲気、ハードな世界観で、「男役」としての水くんを眺める、という目的で、ストーリーだのキャラクタだのは後付ででっち上げられた、とすれば。

 シュミット@ヲヅキとの対峙場面、苦悩全開のロジェにオペラグラスをロックオンしたまま、だーだー泣いた。
 なにがどうじゃなく、もお、彼の慟哭に巻き込まれて泣いた。泣けてしょうがなかった。

 とにかくロジェからオペラ離さないもんで、他のキャラクタたちは声だけの出演になりがちなんだが、リオン@キムの「お前と同じだけ、お前の気持ちはわからない」の声だけの台詞にも、アホみたく泣けた。

 ストーリーが、とか、キャラクタが、とかじゃなく、そこにある「ロジェ」という男の存在感、彼が今苦悩している事実のみに胸が圧迫され、苦しくて悲しくて、切なくてたまらなかった。

 だから最後のタンゴ酒場で、レアを相手に話しているところで……だから、水夏希が好きなんだと、改めて思った。

 彼は暗く熱のこもった瞳でレアを見つめていて。
 恋とか愛とか、誰かに向かって動く心っていうのは、なにかしらプラスのモノじゃない、ふつう。明るさやあたたかさがあるっていうか。
 なのにロジェの瞳には、あたたかさとは別の暗い熱があって、その心の動きが彼を幸せにしていないこと、苦しめていることを思い知らせる。

 彼がレアを愛しているとして、その愛が彼を幸福にするためには、まだいくつものものを乗り越えなくちゃいけないんだろうな。
 それが、24年間復讐だけに生きてきた男なんだ。復讐から解き放たれたとしても、彼はいきなりジョルジュ@『君を愛してる』みたいにのーてんきに恋したりはできないんだ。

 最後の最後に、この眼を見られた。
 そのための、『ロジェ』なんだ。
 ショーの水くんはたしかにかっこいいけれど、ショーでは基本的に本人>役だから、どうしても水しぇん自身の顔になる。
 もちろん、水夏希として舞台に立つ水くんが好きだけど、素の彼では決してしない表情を、「役」としてならするんだ。
 そのために「役」があり、最後の作品、最後の役で、作者の問題で物語としてもキャラクタとしても欠陥だらけだけど、水くんのハードな表情を見せるために、この『ロジェ』があったんだ。

 と、思うくらいに、ロジェの表情は、美しかった。好みど真ん中だった。

 その美しさに射抜かれて、改めて好みの人なのだと思い知らされて。
 最後の最後に、こんなに好きでいさせてくれてありがとう。

 
 そういやリオンの「お前と同じだけ、お前の気持ちはわからない」という台詞は、ブラッドのこの台詞を思い出させるな、と、この日記を書いていて思った。『奴らが消えた夜』のアンジーのお伽噺の隣のページにあるんだもの。
「君達は傷ついて…そして言うんだ“君にはわからない、この痛みはわかりはしない!!”って。そうかもしれない、ボクには! 君達が傷つけられたのを見て…察することしかできない…だけど君達…知っているかい? 君達がそう言う時には、君達が拒まれているのと同様に、ボク達を拒んでいるんだって!!」

 君の気持ちはわからない。誰だって、他人の気持ちを完全に理解することなんか出来ない。
 だけど。
 だけど……。

 誰にもわからない、と拒絶する生き方をしていたロジェは、リオンの言葉に異を唱えずに去る。否定せずに去る。

 彼の人生は、いろんなものを肯定するところから、はじまるんだ。
 見送る、ことに全力を傾ける。
 これはヅカファンの習性。
 退団は最大のイベント……祭りである。
 日常ではない、特別の時間、ハレの日。
 そうやって、花園を卒業していく人を見送る。

 ヅカファンやって20年余、何人もの「大好きな人」を見送ってきて。
 実はこれほど、不安というか、心許ないキモチになったことはない。

 次期トップスターに。

 9月12日、水くんは卒業し、翌13日からは、キムくんが雪組トップスターになった。

 キム個人の、「トップスター」としての資質、実力にはなんの不安もない。彼に関しては、別に3年前とかでもトップになっていておかしくないくらい、早熟な、出来上がった人だと思っている。
 だから、不安なのはすべて、外側の状況と、それがキムくんに与える影響だ。

 ゆみこちゃんの退団発表からずっとずっと、雪組人事は荒れまくり、落ち着くことがない。
 せっかくの新体制、トップお披露目だって、相手役ナシでプレと合わせて3人の娘役と組むというイレギュラー。しかもそのうちのひとりは、問題山積みの研1の彼女。
 トップになれればそれでいい、てなもんじゃなく、もっと彼に負担のないトップ就任あれこれは用意できたはずなのに、劇団はこれでもかと向かい風を彼に叩きつける。
 キムくんはトップスターに相応しい人だと思っている……てのは、舞台技術や美貌だけではなく、人間としての強さや大きさも含まれている。それらも含め、彼の能力になんの心配もしていないけれど……けれど、彼だって人間だ、こんだけいろいろあったら、正直大変だろう。
 てなことを、勝手に考えて、心配していたんだ。

 だから。

 キムの笑顔は、救いだった。

 ムラ楽の日。
 退団者たちを見送ったあと、その退団者たちが歩いた花道を、ただひとり次期トップスターが歩く。
 ムラは退団パレードと楽屋口が別なので、出演者たちの楽屋出と、退団者のパレードは場所がチガウのね。他の雪組生たちは楽屋から出るけれど、キムだけは、パレード用の花道を歩く。

 水しぇんを見送って、なんかアタマがぼーぜんとしていたわたしは、まだキムくんがこれから出てくる、と理屈ではわかっていたが、足が勝手にふらふらと駅に向かっていた。疲れていたんだ、心底。
 また、キムくんを見るのはなんかつらいな、という思いもあった。
 それで門の外まで出たのだけど。

 そこでちょうど、キムくんが出たらしい。
 拍手とストロボの光がそれを教えた。

 花の道で足を止めて、そちらを見た。キムくんを見られるかどうかわからない……門の中で車に乗られてしまったら、姿は見えないわけだし……けれど、立ち止まってみた。

 すると、キムくんは歓声に応えながら、門の外まで来てくれた。

 キムくんは、笑っていた。

 「きゃ~~!!」「かわいい~~!!」という黄色い声ががんがん飛び交い、周囲が一気に華やいだ。

 キムは笑って両手を振り、軽やかにファンの間を駆け回っていた。
 沿道のファンが「きゃ~~!!」と手を振れば、そちらに向かって手を振る。
 小動物のように、フットワーク軽く、笑顔を振りまいていた。

 うわー。
 わたしは、ぽかーんとそれを眺めた。
 楽屋入りのギャラリーとかはしたことあっても、ここまで四方八方に人がいる状況ではないし、会の人たちがガードしている中ではここまでみんな「かわい~~!!」と叫びまくらない。
 ここに集まっている人々の多くは、統制された会のガードの人たちではなく、トップ退団というイベントに集まった一般ファンだ。現役会の人たちは懸命にガードしているのだと思うが、この場の人数割合からすれば、たかがしれている。退団者のファンはすでにフェアウェル会場へ移動していたり、お目当てのスターの袴姿を見て帰路についているだろうし。
 新聞に「何千人のファンが別れを惜しんだ」と書かれる、その何分の1かの人々が、まだそこに残っている、その人たちが、きゃーきゃー声を上げているんだから、かなりの人数、かなりの声だ。

 その人々の歓声を浴びて、キムくんは笑っていた。
 きれいなきれいな、屈託のない笑顔だった。

 その笑顔に、救われた。

 たとえナニがあっても、この人は、ファンに笑顔を見せる。
 「タカラヅカスター・音月桂」としての務めを果たす。

 退団は、別れは寂しいけれど、タカラヅカはこれからも続く。雪組は続く。先人たちの築いたモノを受け継いで、現役生たちが続けていく。
 キムくん自身、退団者との別れはつらいだろうし、これからの不安だのプレッシャーだのしこたま抱えているだろうけれど、それでも彼はファンの前では笑うんだ。
 ファンが見たいであろう、元気で明るいキム、の、屈託ない笑顔を見せるんだ。

 東宝楽のキムくんの入りも見たが、やはり彼は全開で笑っていて、ギャラリーに「かわい~~!!」と叫ばれていた。
 交通機関の関係で、出は見られなかったけれど、きっと笑顔だったんだと思う。

 
 贔屓が雪組に組替えになる、こと以前に、キムを好きだと思い、彼を見守りたいと思う。
 彼の笑顔を信じて、ついて行こうと思う。
 「タカラヅカ」ってなんだろう。
 てのは、わたしにとって、わりによくあるテーマだが。
 そしてその都度、同じような、いろんなことを考えるわけだが。

 『麗しのサブリナ』を観ていて思うんだな。

 「タカラヅカ」とはなにか。
 それは、ひろがるペチコートである。

 
 大昔、わたしが小さな少女だったころ。
 外国を舞台にした少女マンガを読んで、なんとなくあこがれるわけですよ。そのかわいらしい世界に。
 大きなリボンやフリル、広がったスカートに編み上げのブーツ。
 『ベルサイユのばら』みたいな時代劇ではなくて、現代の異国。自分でも着られそうな服、食べられそうなお菓子。
 あわあわのお風呂、広がったスカートの下からのぞく、ペチコート。

 『キャンディ・キャンディ』のコミックスを手に、わたしは大真面目に一緒に暮らしていた祖母に相談した。
 こんな服が着てみたいと。こんな髪型がしてみたいと。

 髪型については、速攻NO!だ。
 わたしの髪は超ストレートで、まっすぐ以外のどんなスタイルにもなりゃーしねえ。大人になってパーマを掛けたときも「ここまでパーマが掛かりにくい髪質もめずらしい」と言われたもんだ。
 ついでにいうと、ショートカット以外の髪型も、認められていなかった。
 「子どもは清潔感第一!」「手入れ簡単第一!」という大正生まれの祖母の方針から、わたしに髪型の自由はなかった。長い髪に憧れていたが、少しでも伸びるとばっさり切られた。

 たしかに髪は持って生まれたものだから無理がある。第一金髪じゃないしな。
 だが、服ならば。ワンピースやスカートなら、後天的になんとかできるだろう。
 マンガのヒロインの着ている服はたしかにかわいいが、異世界なかわいさではない。実際に着ることが出来る、似たようなテイストの服を探すことが不可能ではないと思えるようなかわいさだった。

 この膝下スカートなんか、ふつーにアリそうじゃね? それで編み上げのロングブーツを履けばいいのよ。
 でも、そこで問題。

 ヒロインのスカートからいつもちらちら見えている、このフリルだかレースだかは、なんだろう。
 正直、すごくかわいい。
 ふつーのスカートでも、このちらちらがあるからすごく「トクベツ」な感じに見える。
 ヒロインは活発な女の子だから、いつもスカートの端はめくれ上がり、下から白いレースがのぞいていた。

 このちらちらレースがあれば、わたしもキャンディになれる!
 そう意気込んで、大正生まれの祖母に聞いた。「ねえねえ、これってなんやろ。こあらもこれ着たい」
 すると祖母は、興味なさそうに言い切った。

「これは、シュミーズや。こあらかて持ってるやん」

 え。
 しゅみーず?
 しゅみーずって、アレ? おばーちゃんが着ている、よれよれの下着? わたしも持ってるけど、必要を感じないのでほとんど着たことナイ、アレ?

 えええっ?! アレが、このヒラヒラちらちらなの?!

 カルチャーショック。
 たしかに、貫頭衣っつーかワンピース状になった下着の裾には、レースが付いている。ついてるけど、すごく地味でババ臭くて、こんなの着るくらいなら小学校の体育で使う汗取りタオル着てた方がマシだっつー感じの、少女心を萎えさせるシロモノだった。

 ぜんぜんチガウもん、よく見て、このスカートの下でちらちらしているやつのことよ!
「だから、シュミーズやろ。スカートの下に着るんや。それはマンガやから、嘘が描いてあるんや」

 がーーーーん。
 マンガは、嘘。
 キャンディの着ている服は、嘘。
 現実は、おばーちゃんのシュミーズ。

 そう、やはり小学生のころ、はじめて洋式のバスタブを使ったとき、マンガの中のようなあわあわにならなくて、ショックを受けた。

 それと同じことなんだ。
 キャンディのふくらんだスカートも、その下からちらちらのぞくかわいいレースも、みんなみんな嘘。
 現実には、ありえない。

 
 えー。
 こあらったは、おばあちゃん子で、大正生まれの祖母に育てられました。祖母はがんばって「ばばが育てている子だから、時代遅れ」にならないよう、気を遣ってくれていたけれど。祖母が知らないモノは、わたしも知らないままでした。「ピザ」という食べ物を知ったのが中学生になってからだったりな。餃子を食べたことなかったりな。
 時代劇の主題歌は歌えたし、杉良太郎のキメ台詞のまねっこはできたけど、ピンクレディは踊れなかったし、聖子ちゃんの新曲も知らない子どもでした。

 ペチコート、という概念はなかった。
 また、当時手に入るペチコートでも、マンガの中のようなふくらみ方やちらちら見えることはない、幾重にもフリルを重ねるのはまた別であることとか、知ることもなく。
 バカなガキだったので、『キャンディ・キャンディ』の舞台が現代ではないことも、あまりよく理解していなかった。レトロな部分は全部、外国だからチガウんだ、で片づけていた。
 仲の良かった友だちと一緒に、「どうやったらキャンディの服を着られるか」で真面目に悩んでいた。
 今ならキャンディの衣装の再現は容易いと思うし、コスプレではなく現実の範囲内でかわいく着ることも可能な時代だと思う。
 だが、小学生のわたしには、知るよしもない。

 そう、「マンガの中の嘘」だと切り捨てられた、「少女のあこがれ」のひとつの集束した形が「ひろがるペチコート」だった。

 
 『麗しのサブリナ』を観て、思う。
 ああこれは、わたしが「タカラヅカ」に求めるモノだと。

 サブリナ@蘭ちゃんの、広がるスカート。その下からのぞく、幾重にも重なった白いフリルのペチコート。

 チケットレートが格安のため、わたしみたいなびんぼー人でも少々の金額を積むだけで、最前列チケットが手に入ってしまったため、銀橋かぶりつきの観劇も複数回したさ、できたさ。
 そーやって目の前で、ペチコートがふわふわするのを見たさ。

 サブリナだけじゃない、他の女の子たちのスカートにも、もれなくフリルのペチコート。
 広がったスカートが揺れて、その下から白いペチコートが見える。
 そのたびに、心震える。ときめく。
 あああ、これがわたしの少女心、少女のころの憧れ。

 おばさんになってしまった今では絶対着ることのできない、ガーリーなドレス。
 オンナノコな髪型、アクセ、背伸びした恋。

 もう手に入らないけれど、鮮明に心に残っている「少女」の部分が焦がれて溜息になる。
 「タカラヅカ」って、そうだよなあ。
 子どもの頃から観ているけれど。いつだってここは、わたしの「あこがれ」の詰まった舞台だった。

 娘役のドレスを見ているだけで、たのしかった。うれしかった。
 子どもだったから、男役には興味なくて。夢中なのは娘役とその衣装だったっけ。
 一生懸命おぼえて帰って、家でそのドレスを絵に描いて、自分で紙の着せ替え人形を作ったりした。

 あの感覚を思い出し、なつかしさと切なさで胸が熱い。
 『麗しのサブリナ』って、すごくかわいい。物語もだけど、衣装も。女の子たちも。

 なんかすごくすごく「タカラヅカ」で、泣けてくる。
 (花組)未涼亜希(※)、に、いちいち反応する……。
(2)宝塚卓上カレンダー
◎発売日 10月8日(金)
◎規格  B6判/13枚(表紙とも、両面仕様、A面:縦置き/B面:横置き)
◎価格  700円(税込)
◎掲載メンバー(計25名) ※下線は今回初登場者

表紙  (月組)明日海りお
      A面            B面
1月  (宙組)大空祐飛    (花組)愛音羽麗
2月  (星組)凰稀かなめ   (花組)真野すがた
3月  (専科)轟 悠       (月組)桐生園加
4月  (花組)真飛 聖      (花組)未涼亜希(※)
5月  (月組)霧矢大夢    (星組)紅ゆずる
6月  (星組)柚希礼音    (星組)涼 紫央
7月  (宙組)蘭寿とむ      (宙組)悠未ひろ
8月  (月組)龍 真咲      (花組)華形ひかる
9月  (雪組)音月 桂      (月組)青樹 泉
10月  (雪組)早霧せいな   (花組)朝夏まなと
11月  (花組)壮 一帆     (星組)夢乃聖夏
12月  (宙組)北翔海莉    (宙組)凪七瑠海

※未涼 亜希は2010年10月18日付で雪組へ組替えとなります。

 ※印なんか付けられて、イレギュラー扱いされているのが、いろいろと複雑だ……。

 ただ今回は、とても平静にカレンダーの掲載月発表を見ることが出来た。

 カレンダーは、興行スケジュールとは別に、スターの「在団時期」を計るツールである。
 歌劇団的に、「もういない」人が「宝塚歌劇団」の名前を背負ってカレンダーで微笑んでいるのは良くない、と判断しているらしい。
 その月に「もういない」ことがわかっている人は、載せない。確実に在団している月に載せる。
 得意先に配布したり、関連会社で利用する「スターカレンダー」(関西で生活していたら、「**阪急関連(株)」の社名印刷入りのスタカレをもらったり目にしたりする機会はいくらでもある)は特に、その辺は気を遣っているんだろう。
 スタカレ掲載のトップスターやその周辺の人たちは、掲載月にかなり配慮されている気配がある。

 我がご贔屓はスタカレとは無関係だが、それでも後半に載ってくれている方が、安心する。ああ、この月まではいてくれるのね、と。
 過去に何人も掲載月以前に退団した人がいるとしても、そうでない人がほとんどであり、掲載月には「もういない」状態になった人こそが「イレギュラー」だとわかる。
 そりゃそうだ、カレンダーの企画や撮影等の時期に、すでに退団が決まっていたら、わざわざ「もういない」とわかっている月に掲載はしないだろう。そのときすでに進退が決まっていれば、それに合わせた月に掲載すれば済む。
 その後、予定が変わって「イレギュラー」な事態になることはあっても、企画時にわざわざそんな状態にはしない。

 だからとりあえず、来年のカレンダー企画時には、この月までは在団している、とわかっている情報が、「掲載月」として発表されるわけだ。
 
 まっつは別に掲載月について劇団から配慮される立場の人ではないが、なにしろわたしがファンになってから退団の噂が絶えたことのない人で(笑)、集合日ごとに不安でしょーがなかったもんでな、カレンダーが出るたびに「来年の1回目の公演で退団?!」とか、おびえていたもんじゃよ……。
 いやそもそも「来年のカレンダーには、まっついるのかしら。はずされてたりして?!」とか、そんな不安と戦ってましたわ(笑)。

 組替えが決まった、組替えを承諾したってことは、しばらくはいてくれるのかな、と思えるので、今回の掲載月発表は心穏やかだったのよ。

 また、掲載月は公演月と概ねリンクしているので、「ほお、まっつは4月か。全ツの月ですな」と関連づけて納得したり。
 雪組4月は全国ツアーとバウ+青年館。バウがきっとちぎくん主演だろうから、まっつは全ツだよなと。
 
 
 まっつ以外では、壮くんが11月に掲載されていて、花組11月というと全国ツアーとドラマシティ、このどちらかに壮くんが出演しているということ、2番手スターが全ツやDCで卒業するはずがないので、彼は来年いっぱいは在団予定である、ということがわかって胸をなで下ろす。
 予定は未定だが、少なくともカレンダー企画時期には、彼の来年の退団予定はなかったってことだ。そのあとに、なにがどうなるかわからないご時世だとしても、あくまでも、その時点では。
 なにごともなく、当初の予定通り彼が在団してくれますように。あの天衣無縫な芸風というかキャラクタのまま突き進んでくれますように。
 花組東宝初日……だけどわたしは自宅で忙しい。
 HDDを整理して、空きを作らなければ!!(笑) たった2回しかない『スカーレット・ピンパーネル』のファースト・ランだ、録り逃がしてはならないっ!
 そしてさらに、東宝初日の夜11時は、「NOW ON STAGE」のファースト・ランでもある!
 正直、金曜夜11時に「NOW ON STAGE」のファースト・ランするのやめてほしいんですけど。今回に限らず、スカチャンと丸かぶりだから、ファースト・ランが見られないじゃないすか。

 ええ、わたしは花担当、まっつ担当ですが、20回近く放送予定のある「NOW ON STAGE」と、たった2回の『スカーレット・ピンパーネル』なら、迷わず『スカーレット・ピンパーネル』を選びます。天候その他によって、録画失敗する場合もあるので、ファースト・ランで捕獲して安心したいもの。

 つーことで、『スカピン』を無事に録画し、エンドロールまでしっかり録画したあと、あわててチャンネルを替えた。

 すると。

 いきなり、まっつが組替えについて、語ってた。

 う・わー。

 なんかもー、椅子の上に正座して見ちゃうよ。
 まつださんが語ってるー。つか、語る場を与えてもらってるー。

 なんなの、あの可愛いイキモノ?!

 クールビューティのはずが、あまえっこモードになってますがな!!
 つか、ナニあの、まと×まつっぷり?!
 まとぶさん、まっつに触りすぎっ!!(笑) いや、ありがとう!!(笑) まとぶんが触ってくれるから、まっつの肩だのカラダだのの質感が伝わる。(ナニソレ)

 鼻にかかった甘えた声で話すまつださんにアゴが落ちたまま戻らないし、Tシャツ1枚のおかげでカラダの薄さと、立派にまっすぐな肩の線がリアルでなんかドキドキして(笑)。二の腕と腕時計をいじる癖と、怪獣みたいな歯並びだの、横を向いたときのきれいにカールした睫毛の長さだのに注目して。もちろん、特徴のある長くて高い鼻はどの角度からでも完璧に好みだとしみじみして。

 「GOGO5」のときもそうだったけど、まとぶんと話していると、まっつは下級生モード、年下モードになるのね。もちろん、下級生で年下だから当然っちゃー当然だけど、普段がクールピューティだから、ギャップがすごい。

 まとぶんにいじってもらって、かわいこちゃん全開なまつださんになっているのも、見られてよかったと感謝感激だが、もうひとつ。

 まっつ×いちかを、見られて良かった。

 まっつはいまいちわかってなさそうなんだが、賢いいちかちゃんはわかっている様子。
 自分たちが、対外的にもコンビとして認識されていること、それがこれで終わってしまうこと。
 それでいちかちゃんは、ちゃんと自分からネタを出してくれた。

「はじめてのキスシーンの相手が、まっつさんなんです」

 まっつはウケてるだけだけど、まとぶさんは「責任取れよ(笑)」とまっつを肘でぐりぐり。

 そうか、はじめての相手か。
 あのいちかちゃんの、はじめての相手がまっつなのかー。
 そして、ずっとずっと、何度も何度もカップルを演じ、コンビを組み。
 今回の芝居でも、ショーでも、恋人なんだよね。

 先生方にも「離婚ですか」「別居ですか」と聞かれたりしているように、マジで公認コンビなんだね。
 水かなとか、ちえウメとか、あんな感じ? 路線スターでもないのに、相手役がいるなんてめずらしい……と考え、ハマコ×あみという、雪組裏トップコンビがいたな、と思い出してみたり。……あああ、未涼亜希さんってば、どんだけ未来優希さんと同じ道を……(笑)。

 旅立つモノと残されるモノだと、残されるモノの方が寂しかったりする。
 組替えという特殊な状況にあるまっつはそのことでいっぱいいっぱいで、この「NOW ON STAGE」でもえらくハイテンションにはしゃいじゃってるのかもしれないが、いちかの方は「喪失」の意味をよくわかっているように見えた。
 場をわきまえ節度を守った……ある意味、隙のない喋り方に、いちかちゃんの賢さと抑え込んだ感情を感じて、なんか、胸が詰まった。

 この馬鹿男、ちゃんと責任取りなさいよ?! と、まつださんを見て思いました(笑)。
 出来たカノジョだから、アンタが好き放題やったって、黙って待っていてくれるかもしれないけど、つか、手綱の端は実は彼女が握ったままかもしれないけれど、でも男だったらケジメをつけてから旅立ちなさいよ?! と。いやその、現実と役柄での関係はチガウけど、そのへんの混同がヅカの醍醐味でもあるわけで(笑)。

 まとぶさんが仕切って、『麗しのサブリナ』の終演後に、まっつといちかの結婚式をしてくれるそうなので、「責任を取る」ことはできそうですよ、まつださん(笑)。
 や、ウィリスとマカードルの、ですが。
 はじめてのキス、の責任を、男らしく取るわけですよ、まつださん。もう何年もつきあっていたわけだし、転勤するならその前に式だけでも挙げていけ、てなもんですな。でないと彼女、宙ぶらりんじゃん。

 えー、ほんとにまっつといちかを男と女だと思っているわけではなく、彼らの関係性をドラマっぽく当てはめているだけです、誤解なきよう。
 喋りまくるまっつの無頓着さと、いちかの黙して語らずな感じが、実にいいコントラスト。萌えな関係です。

 あー、ウィリスとマカードルの結婚式、見たいよー。見たいよー。
 まっつといちかのカップルが大好きだ。

 「NOW ON STAGE」は、まっつ単体のかわいさにアゴが落ち、まと×まつのいちゃいちゃぶりに身もだえ、まっつ×いちかの「最後まで責任取れよ」「思い残すことはありません」に両手を上げて降参しました。

 あー、まっつ可愛い……キモチワルイくらい、可愛い。(その表現はどうなの)
『麗しのサブリナ』の個人的な目線。ツッコミと楽しみ、続き。

・「抜糸した、新品同様だ!」……よくわかんないけど、この台詞がこんなにキラキラおかしいデイヴィッド@壮くんはすごい。
・デイヴィッドの服は、どうかと思う……。
・ひとりの女をめぐって、男ふたりのやりとり……えー、腐女子的に美味しくいただける展開&シチュのはずが、色気欠如のため、センサー反応ナシな、トップと2番手って、どうなの……と、首をかしげはする。
・それでも好きだけどね、壮まと。
・悪いのは異次元生命体ソウカズホであって、まとぶさん自身はそれなりに色気はあるんじゃないかと思うんだが。
・壮くんは雪にいたときも腐な萌えの外側にいる……つーか、他の萌えまで打ち消す勢いでぴかーっとかてかーっとか輝いていたな。
・壮くんの異次元ぶりに対抗できたのは、やはり別の宇宙の異次元生命体ハルノスミレだけだったなあ、としみじみしてみたり。

・ところで、みょーに気になるのは、バーカウンターに出しっぱなしのクラッカーの箱。そして、椅子に置いたままのピンクのエプロン。

・多くを語らず旅立っていくサブリナ@蘭ちゃんがいい女だ。
・「お父さんのせいじゃない」「パパは言ったわ」……呼び掛け統一せんかい、とか突っ込んじゃいかんのよね。「お父様」とも呼んでたよね。運転手の娘だけど。
・「車には前の席と後ろの席があって……」それを話したのはライナス@まとぶん相手であって、サブリナぢゃないよ? とか、突っ込んじゃいかんのよね。
・短いシーン、わずかな会話、しかも「いい場面、いい会話」にいくつもツッコミが発生することに、「演出家、ちょっとそこ坐って?(笑顔)」と言いたくなる。
・本舞台のライナスの背中もかっこいい。
・で、このサブリナのいい場面、いい演技、とわかっていてなお、最後まで見られないことが何度もあるのは、ヲタの習性、サガゆえのつらいところ。

・真っ暗な本舞台に、ウィリス@まっつとマカードル@いちかが登場しているんですよ、サブリナとパパ@はっちさんの花道芝居の間に!
・サブリナを見たいけれど、ファン心理として、暗闇のまっつをオペラでロックオンしてしまいまつ……。

・そして運命の重役会議。
・本舞台にライトが点くと、そこにはタイソン氏@さおたんやエリザベス@あまちゃき、ララビー氏@まりんを含めた、スーツの重役たちもずらりと勢揃いしている。

・ところで、みょーに気になるのは、バーカウンターに出しっぱなしのクラッカーの箱。そして、椅子に置いたままのピンクのエプロン。

・重役会議なんですけど?! なんで出しっぱなし? 暗転の間に、誰か片付けろよ。
・ライナス社長が昨夜オフィスに女の子を連れ込んでアレコレしたって、丸わかりぢゃないですか。ライナス、すけべオヤジ説が社内に飛び交うと思いますよ、いいんですか?
・ナニかするまでもなく女の子に逃げられたとは誰も思うまい、オフィスの乱れ具合だけ見れば、「社長……(にやにや)」な状態なんですが? いいんですか?
・会議がはじまる前の、定位置に付く動作にて、重役のひとりが顔色も変えず、椅子の上のピンクのエプロンを片付けていた。それは重役役の子が客に見えるところでするべき作業ではないでしょう。演出家の気配りのなさに溜息。重役会議の前の暗転で、きれいに整えておくべき。なんのために暗転してるの? この暗転だらけの芝居。

・どんでん返しの重役会議。深刻に語り出すライナス、そこにあっけらかーんと登場するデイヴィッド。
・デイヴィッドの輝きがすごい。彼が登場するたび、そこがてかーっと光る。
・まだマシだけど、やっぱりデイヴィッドの服は、どうかと思う……。髪の色に合ってないと思うの、みんな。
・わざと悪ぶって、ライナスを、サブリナを悪く言うデイヴィッドが素敵。
・エリザベスの「サブリナって誰?!」は名台詞(笑)。
・しかしここでは、わたしのオペラはほぼ秘書コンビに固定。「サブリナって誰?」で混乱する場でふたりして困惑、「や、知りません」と手と首を振ってみたり。
・デイヴィッドに「愛してるんだろ?」と言われるライナス、ライナスの代わりに「うん、うん」とうなずく秘書コンビ。
・ライナスの決心を察して、同時に動く秘書コンビ。いちいち同時だからおかしい。
・帽子を取りに行くマカードルの、両手を上にあげてあわあわするのが、すごくかわいい。
・なにも指示されないのに、洞察して的確に動いてますよ、デイヴィッドに帽子を手渡すマカードル。
・そしてふたりして、ライナスを見送るモード。
・飛び出していったライナスを見送り、ふたりして手を取り合って喜ぶ……照明さん、もう少し、もう少しこのふたりを見せて~~!!
・どーでもいいことだが、「ララビー埠頭」という言葉に反応する。埠頭まで持ってるんや……どんだけ金持ち……。

・ところで、最後まで気になるのは、バーカウンターに出しっぱなしのクラッカーの箱。重大な会議、物語のどんでん返しな場面の間中ずーっと、結局出しっぱなしだった。……演出家……。

・銀橋のライナスのソロ、かっこいい。……けど、これがはじめてなんだよね、心情吐露をまともに歌うのも、銀橋も。サブリナは何度も何度もあったのに。(銀橋半分とかカーテン前であっても)

・船の上、月とサブリナ。
・結局、月に手は届かなかった……。また、甲板上がわざとらしくもカップル・オンリー(笑)。
・船員@みわっち。船員@みわっち。船員@みわっち。
・待ってましたのライナス登場! ……コートが微妙にカラダに合っていない気がするのは、気のせいでしょうか。
・サブリナ、うれしかったろうなあ。
・サブリナの表情はあまり見えない。それまでずーっとサブリナ視点の物語だったのに、ラストだけとってつけたライナス視点。
・サブリナを抱きしめるライナスの顔、手つきがいい。ほんとに、うれしそう、大事そう。

・ほっこり幸せに、幕。

 ツッコミし山ほど、演出家へもの申したいことも山ほどあるが、それでも好きよ、『麗しのサブリナ』。
 1ヶ月公演って、ほんとにあわただしい。
 8月最終週~9月アタマの1週間は、花楽、らんとむコン初日、月初日、宙全ツ初日と目白押しだった。1週間は7日間しかないのに、そのうち4日が楽・初日などの特別な日って。そしてその翌週は雪東宝楽。わたしはここに検査だのレッスンだの一気に重なって、さすがに身動きが取れなかった。
 どれかあきらめなきゃ、カラダも時間も追いつかない……てときに、消去法で選んだのが、月組公演だ。2日しかない全ツや、チケ難で四の五の言ってられない取れた日に行かなきゃ!のらんとむコンを優先するしかない。月組公演は「この日を逃したらもう二度と観られない」ものではなく、通常公演で来月までやっているんだもの。
 加えて、わたしのアタマも相当キャパ超えで、まっつまっつと水しぇんでいっぱいいっぱい、正直他を考える余裕がなかった。東宝で水しぇん見送ったあとは、しばらくヅカ観る気にならなかったし。

 てなことをしていたら、もう中日、折り返しに来てるではないですか! 月組見逃しちゃう!! 1ヶ月公演ってこわい!

 つーことで、重い腰を気合いで上げて観劇、『ジプシー男爵』
 予備知識ナシ、教養もナシ。ヨハン・シュトラウスとゆー名前は知っていても、原作オペレッタなんてカケラも知らないし、劇中曲も有名なのかもしれんが、まーーったくわかってないっす。

 えーと、月組、3年ぶりの、ふつーの通常公演?

 ふつーの通常……日本語としてどうかと思うが、「トップコンビがいて、スターたちが自分の役を演じている、退団公演以外」の、公演。

 なんと2007年8月の『マジシャンの憂鬱』『MAHOROBA』までさかのぼるんだよ、こんなふつーの公演が。
 そっから先の「男役トップ退団公演」以外はほぼ全部役替わり公演だったんだよな。唯一チガウのが、『夢の浮橋』『Apasionado!!』だけ。でもこれも、娘役トップ不在の最初の公演という、イレギュラー。
 3年間で、役替わりがなかったのが、『夢の浮橋』とあさこちゃん退団の『ラストプレイ』の2作だけって、どんだけ……。
 そして、そのすべての役替わりに関わっているみりおくんは、どんだけ劇団期待の星か、わかろうってもんですな。

 さて、『ジプシー男爵』。

 谷せんせのおとぎ話系コメディ。ファンタジーというか、「野暮なツッコミは勘弁」てな、スピリッツ優先で細かいことは気にするなというスタンスの物語。

 トルコ総督の隠し財宝があるという町テメシュバールでは、豚飼いジュパン@汝鳥サマが使用人たちを使って財宝探しに明け暮れている。
 そこへ、町の正当な領主シュテルク・バリンカイ@きりやんがやってきた。濡れ衣で亡命させられていた前領主の息子、だから正当な現在の領主。ジュパンは町の王様気取りの我が立場を守るため、シュテルクの取り込みにかかる。シュテルクと自分の娘を結婚させようというんだ。
 ジュパンの娘のひとり、アルゼナ@りっちーは、オトカー@みりおという恋人がいるため、難癖を付けてシュテルクとの結婚を承諾しない。いやその、シュテルクも別に彼女と結婚したがっているわけではないんだが。
 当のシュテルクは、ジプシー娘ザッフィ@まりもに一目惚れ。歌声がどうとか言っていたけど、第一印象から決めてました!系でしょアレは。ふつーはジプシーなんか相手にしないもんだけど、シュテルクの父もジプシー擁護派、ジプシー男爵と呼ばれていた。血は争えない……というか、運命でしょこの恋は。
 てことで、シュテルクとザッフィが結ばれたことにより、財宝がせり上がってくる!! どんな仕組みなんだ、隠し財宝。すげーや愛の力。
 愛の力はすごいんだけど、現実は身分違いの恋であり、ジプシーとの結婚は認められない。ここでさらに、ザッフィは実はトルコ総督の娘だとか出生の秘密入りましたー!な展開にぽかーん。ジプシーでもダメ、お姫様でもダメ、でどっちにしろダメならここでばばーんと言い放つ必要ないやん、なんの解決にもならない「出生の秘密、実はお姫様でした!」ネタにぽかーん。ヴィットリオ@『落陽のパレルモ』でも、マルキーズ@『君を愛してる』でも、それによってどんでん返しになったのに……なんのための暴露。
 どーしよーもねーな状態から、どう話を展開をするのかと思ったら、それは置いておいて入りましたー!! ええ、棚上げ? 解決せずに、置いておくの??
 現状の問題そのままに、別の戦争にみんなで行くことになりました。すげえな。
 そして戦争に勝利、武勲あげたシュテルクは行け行けGO!GO! すべては彼の思うがままの展開に。まあ、おとぎ話だし、いっか。な物語。

 あ、パリ@まさおがあらすじに登場していない……。


 何年も役替わりばかり観てきたせいか、カラダがすっかり役替わりデフォルトになってしまったのか、オトカーとパリ、役替わりで観てみたいわあ、とか思っちゃいました。パリ役のみりおくん、かっこいいだろうなあ、と。オトカー役のまさおは別に見たくないけど(笑)。

 いやいや、役替わりはもうノーサンキュー、ノーモア役替わり。月組に落ち着きを、まさみり……特に、みりおくんに彼だけの役を。

 原作があるとはいえ、海外ミュージカルなどをまるっと移植したわけではないので、アテ書きっていいなと思える作品でした。それぞれの役が、キャストに合っている。や、なまじ合っているだけに、目新しさや発見はなかったりするんだけども。

 ブタのぬいぐるみを抱いた汝鳥サマとか、どこの『THE SECOND LIFE』だって絵面だし、うさんくさい使用人のマギーも既視感。
 スタイル良しのもりえは軍服、みりおはヘタレかわいこちゃん、まさおは不良少年、てのもひねりはないが、安全牌の配役。
 そしてきりやさんは、絶対ヒーロー(笑)。

 少しはひねれよ、目新しさがない、安全牌過ぎる、今の月組主要キャストをテンプレ化したらこうなるキャラ立ての見本的……と、いろいろ言えるけれど、それもまた良し。キャラクタ無視のお仕着せ配役・作品よりはいいやね。

 つーことで、まあぼつぼつ感想を。
 『ジプシー男爵』は、主人公のシュテルク@きりやんをどう捉えて観るか、で没入感が大きく変わるよなと。

 きりやんは陽性のキャラクタで、骨太で力強い。だから、彼にヒーローをやらせたくなる演出家の気持ちはわかる。
 が。

 きりやさんねえ。ヒーローやると、実はあちこち黒くなるんだよねえ、あの人(笑)。

 ツッコミどころ満載で力業で進むこのおとぎ話。
 主人公シュテルクを、おとぎ話のヒーローだと思って観ていると、違和感が大きくなる。物語に置き去りされる。

 そーじゃない。シュテルクはヒーローでも陽性のキャラでもない。

 アレは、黒い人だから。毒のある人だから(笑)。

 コメディっぽく誤魔化してはいるけど。
 シュテルクってひどいわー。黒いわー。素敵だわー。

 台詞とか展開とかいう表面的な問題ではなく、シュテルク個人から、匂い立つ毒がある。
 ああ、だからこそ、霧矢大夢という役者は魅力的なのだと思う。表面にあるものと、醸し出すモノのアンバランスさ、深さがあるから。

 てことで、シュテルク悪いヤツ!と思って見れば、この物語はなかなか痛快だ。

 マリア・テレジア@あーちゃんの前でも傍若無人にふるまったりするが、それは天真爛漫とか育ちが悪いとか信念があるとか、そんなことではなく、彼が「黒い男」だからなのよ。
 いろんな計算があって、そう振る舞ってるの。

 彼は基本人の話は聞かないし、自分の思った通りにしか行動しない。それも器が大きいからではなく、「黒い男」だからなのよ。
 ぜんぜん、善人じゃないのよ。

 ただ、彼の価値観は通俗的なモノではないので、ほんとうに身分やお金には興味ないのだと思う。貴族様として宮廷でぶいぶい言わせたいわけでもなく、財宝を手に遊び暮らしたいわけでもない。
 差別意識もないから、ジプシーを見下さないし、女王様にもへつらわない。

 彼は、「自分が心地よく生きる」ということにのみ興味を持って、生きている。

 同じ黒い男でも、たとえば星組のれおんくんなんかは、「王者ゆえの傲慢さ」を持ったキャラだと思う。獅子だから、ウサギの気持ちなんかわかりませんっていうか。シマウマなんか食べちゃいますよとか。
 きりやんには、そういう「王者」系の黒さは感じない。
 きりやんは道の真ん中を行くブルドーザーやローラーカーではなく、もっとトリッキーな動きをするモノ、だな。
 明るく強いんだけど、他者を圧倒するのではなく、浸透する感じというか。抑えつける、ような直接的な行動には出ていないのに、彼をふりほどくことはできないっていうか。
 狡賢いのではない。彼の魂の強さが、弱者を取り込んでしまうんだ。
 しかも彼には、天性の愛嬌がある。だから、取り込まれたモノたちも、支配されたとか食われたとかは思わず、気づかず、彼のために道を譲る。

 シュテルクってのは、そーゆー人なんだと思う。
 谷せんせの描くテンプレ英雄キャラに、きりやんの持ち味が絶妙ブレンド(笑)。

 天性の華。存在感。説得力。
 シュテルクが突然ザッフィ@まりもちゃんと「結婚する」と言い出したとこなんか、ソレが実に現れているよなー。
 まだふたりっきりでなにかしら語り合ったこともない、歌聴いたぐらいの関係の娘つかまえて、ナニ勝手に宣言してんだ!だけど、なんか納得。
 きりやんが……いやいや、シュテルクが言うなら、そうだろうよ、と。アリだろうよと。

 でもって、ジプシーのツンデレ美青年パリ@まさお。
 彼なんかもまさに、シュテルクの犠牲者……ゲフンゲフン、もとい、心酔者。ザッフィがそうであるように、簡単にシュテルクにコマされちゃった人。
 クールキャラだったのに、デレたあとは人格崩壊、別人になっちゃってます(笑)。

 そうやってシュテルクは、人生を思い通りにしていく。
 明るさと強さと、黒さを持って。

 いいなあ、シュテルク。

 
 相手役のザッフィ@まりもちゃんは、いろんな意味でシュテルク@きりやんにお似合い。
 彼女の持つ骨太な野性味が、自然の嗅覚、獣の本能でシュテルクを選ぶのが、わかるの。納得できるの。
 彼女なら、そうだろう、と。
 だから最後の場面で、華美なドレスを捨て、ジプシー娘としてシュテルクについていくことに、無理がない。
 彼女なら、そうだろう、と。

 ワイズな獣、っていいなあ。

 こちらも本能部分でわくわくする。

 でもってザッフィはきれいだね。宮廷ドレスより、ジプシーの情熱的な衣装が似合う。
 なんつっても、あの肩。あの脚。
 そうか、マルグリット@『スカピン』じゃあ、肩は出せても脚を出せないもんなー。あの脚はいいわー、眼福だわー(笑)。

 
 きりやんとまりものカップルは良いし、『ジプシー男爵』のはじまり方は好き。
 暗い、広い舞台にふたりの男女、そしてふたりをつなぐ一条の光。そこからはじまるデュエットダンス。 ああ、美しい。
 と、しみじみ思った。

 思った……けど。
 あのー、このダンス、いつまでやんの? とは思った……。

 オープニングに、ストーリーとは無関係のショーを長々付けるのは植爺・谷コンビのお約束、伝統芸。オープニングをストーリーに絡めれば、もっと話が破綻せずにすむのに、とか、時間短縮してストーリー破綻の補足に当てろよとか、不遇なキャストの救済に使えよとか、いろいろあるけれど。
 『JAZZYな妖精たち』のオープニングも長かった、えんえんえんえん長かった。『パリの空よりも高く』のオープニングも長かった。えんえんえんえん長かった。
 しかし。
 スター総動員だったじゃないか、ストーリーと無関係でも、別物のショーでしかなくても、とりあえず、みんな出ていた。
 つまんなくても、贔屓が出ていればリピートできる・するのがヅカファン。どんだけ長い場面でも、贔屓が出ていればなんとでもなる。

 が、誰も出てないって……。

 きりやんとまりもちゃん以外のファンには、長すぎないか、コレ……?

 美しい、素晴らしいダンスだとは思うが、1回2回ならそれでいいが、10回20回前提の人たちには、長すぎると思う……。
 ショーならともかく、芝居だからなー。ストーリー展開として必要だというならともかく(主人公とヒロインの愛のダンスは必須ですから! それはふたりっきりである程度の長さ踊ってくれても文句なし)、無関係でコレってのは、演出家KYだなと。
 トップコンビの退団公演みたいな作りの最初と最後だよな。

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