どうしても、定点観測。

 染みついた習慣はそう簡単にぬぐい去れるモノではありません。
 自分でも意識してなかったけれど、『ファントム』がいざはじまると、わたしの視点は一箇所に固定されるのです。

 リシャール@だいもんに。

 だいもんは大好きだが、本公演で彼だけを見つめ続けることはかつてなかった。
 なんでそんなことになっているかというと、そりゃもうひとえに、彼が今回演じている役が「リシャール」であるということに尽きるんだ。

 はい。
 5年前わたしは、えんえん『ファントム』を観ていました。
 何回観たのかおぼえてないし思い出したくもないが(東西合わせて20回くらい?)、いつも必ず同じモノばかり見てました。
 すなわち、リシャールという名の、オペラ座団員を。

 カラダが覚えてる。
 この場面は、ここを見る。この音楽ならば、こっちを見る。
 ……おそろしい……染みついてるよ……。

 つーことで、最初のパリの場面からリシャール@だいもんと、セルジョ@まぁくん、ラシュナル@あきらに釘付け。
 どうやらビスコはナイみたいだ。これからなにかしら使うようになるのかな。

 オペラ座では、謎のローマ兵。
 うぞーむぞー、ただのモブでしかない扱いに胸熱。
 そうそう、そうよね、台詞もないのよね。背景のひとりなのよね。

 リシャールのはじめての台詞はそのあとの、ファントム@らんとむからの手紙をキャリエール@えりたんに渡すところ。
 ええ、おぼえているわ。貴重な台詞よ、「あなた宛です」とたったひとこと。

 が。
 リシャールに、台詞はなかった。
 手紙を拾ったリシャールは、宛先のキャリエールにではなく、メルシエ@さおたさんに渡す。
 そしてメルシエさんがキャリに「あなた宛です」と渡す。

 だいもん、台詞削られてる……っ!!

 き、貴重な台詞が。
 ぶっちゃけ、ふたつしかない台詞の片方が、削られてる。

 目が点。
 だいもんって、花組路線スターだよね? 5年前のまっつよりプログラムの扱い上だよね?(3番手みわっちの次のページに3人で1ページ写り、インタビューも掲載。ちなみに当時のまっつはまったくの学年順、まりんたちと一緒に脇役として5人で1ページ)
 何故、だいもんの台詞を削る……? むしろ増やして当然の子じゃ……?

 あとにもっとオイシイ演出があるのか、別のところで台詞を増やしてもらっているのかと思ったら。

 群舞センター、削られてる……っ!!

 「カルメン」場面、赤い闘牛服を着たリシャールが、群舞センターで踊る場面があったんだ。
 リシャールとラシュナルとセルジョがそれぞれ団員の花形として踊る場面。それぞれ見せ場があるんだけど、そのトップバッターがリシャール。
 最初だから驚いたんだ、えええまっつが派手な衣装で男たちのセンターで踊ってる?!と。
 そのあと同じ振り付けで下手側からラシュナル登場、最後にセンターからセルジョ登場で、別にリシャールひとりの見せ場じゃないんだが、最初だからとりあえずその一瞬だけは「群舞センター?! えええ?!」とうれしい驚愕を得られたし、短い間だけど確かに逆三角形の頂点で踊るわけだし。
 
 だいもんが同じ衣装を着ていたので、安心して眺めていたんだ。
 そしたらこの「カルメン」場面は、再演とはがらりと変えられていた……。

 白軍服+スターブーツのセルジョが最初からセンターで踊り、赤闘牛士服のリシャールは上手から、紺軍服のラシュナルは下手から、ふたり同時にバックダンサーと共に登場……リシャールとラシュナルふたり同時登場だし、センターはずーっとセルジョだし、一度もリシャールはひとりにならないし、センターにも立たない。

 なんで変えちゃうかなあ、導入部。
 群舞センターのだいもんが見たかったし、あきらが見たかったよ……。あきらなんか、こんな機会でもないとなかなか三角形の頂点位置でひとりチガウ衣装で踊らせてもらえないと思うのに……。

 新しくなった「カルメン」は、今までよりずっとわかりやすくなっていて、それはイイと思っている。
 白軍服を着こなしたまぁくんのかっこよさは半端ナイ。てゆーかセルジョ役のまぁくんマジかっこいい。センターパーツ、センターパーツ! イイよーイイよー、いつもそーゆービジュアルでいてくれよお。
 カルロッタ@いちかが、相手役のセルジョではなく、ファントムを選んでしまう、それくらいファントムがかっこいいのだという解説にもなっていてイイ。
 や、らんとむはもちろんかっこいいけど、作中では「醜い」と言われる役でしょ。顔の痣さえ見えなければ本当に美形なんだという証明ですよ。そういう「解説」は作中にあってヨシ。

 だから展開と意図はいいんだけど、導入部分は別に変えなくてもいいじゃないか。
 これからの花組をにぎやかす、若手の美形ふたりをセンターに立たせるぐらい、減るもんぢゃなし。

 リシャールの見せ場、イロモノ妖精王のソロではなく、ど真ん中ストレートに美形でカッコイイ見せ場が、削られていることに衝撃。

 そしてこの新しい「カルメン」では、リシャールは三枚目役なんだ……。
 いや、セルジョにしろラシュナルにしろ、団員たちはみんなファントムに翻弄され、きりきり舞するわけなんだけど、その姿が再演時よりもさらにコミカルに、ギャグっぽくなっている。セルジョはまだ二枚目系として描かれているけど、リシャールはお笑い一直線。
 リシャールはカルロッタに吹っ飛ばされてギャフンとなってたり、してる……。

 えーと。これは、オイシイ、のか?
 ギャグで笑われる役っつーのは。
 そういう目にあって笑われるのがひとりだけならともかく、ラシュナルや他のモブたちと同じよーに、十把一絡げ的にへっぽこ扱い、ってのは……ただきれいでかっこいいより、オイシイ、の、か……?

 ぼーぜん。

 もうひとつの台詞は削られてなかった。
 ビストロで「フェアリークイーンのですか?」と一言。

 ……他に、リシャールくんに台詞ありました? 一本モノ2時間半で、モブとしてマイクなしで勝手に喋ってるんじゃなくて、台本に書いてある台詞って、ナニかありました?

 もちろん、リシャール最大の見せ場、オーベロンのソロはありましたけどね、ほんのわずか数小節の。

 1幕も終わりってときに「はぢめて、歌ウマさんの歌声だわ!」と感動させてくれる、見事な声でした。……主要キャラに歌ウマいないもんだから……(笑)。
 しかしほんと、ここの歌は一瞬で終わる。
 だいもんの見せ場も、一瞬で終わる。

 2幕は見せ場皆無、ほぼ出番無し。名もなきコロスと団員モブのみ。

 だいもんランクで、コレだもんよ……だから嫌なんだ、海外ミュージカル。
 タカラヅカなのに、スターがこんな扱いになる。
 それで名作なら仕方ないなと思えるけど、『ファントム』って別に名作ぢゃないし。変な話だし。

 当時のまっつはもともと台詞が2つ3つしかもらえない人だったので、オーベロンのソロがあるだけでもめっけもんと喜んでいたし、なによりまさかの一瞬群舞センターでテンション上がりまくりだった。
 しかし、今の立場のだいもんでコレっつーのは……花組プロデューサーはナニをしたいんだろう。
 だいもん以下は、もちろんそれ以下の扱いなわけだしね。新公がある子はまだいいけど、新公卒業したスタークラスで台詞1個とかナシとか、初演のたかはな時代宙組だからこそ許された配役と作品だよなあ。
 溜息。

 まだフィナーレでメドレーがあるからいいのか……。
 フィナーレはふつーのショーの中詰めっぽくてイイよね。歌い継ぎメドレーがあって、スターの顔見せしてるし。

 
 で、ついでにまっつ誕生日おめでと。(ついでっ?!)

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