戦闘シーンってどこまで映像に収録されているんだろう?

 イヴァン中尉@央雅くんが足を斬られるところは、きちんと映してもらえるんだろうか?(斬るのはザッキーだっけ?)

 しつこく『黒い瞳』の話です。

 ベロゴールスクのみなさんが好きだ。
 イヴァン中尉もセルゲイエフ少尉@ハウルも、演技は微妙なんだが(笑)、それでも好きだ。
 短い出番ながら、人格者であることが感じられるミロノフ大尉@ナガさんのあたたかさなんかさすがだし、その妻ヴァシリーサ@ヒメもまたいい女だー。
 マーシャ@みみちゃんの友だちのお嬢様たち、アンナ@ひなちゃん、ナターリア@のあちゃんもかわいー。

 ベロゴールスク場面でのひそかなツボは、決闘後のニコライ@キムがマーシャとベッドでいちゃくらしている(語弊アリ)ときに、すぐ横の衝立の後ろで男たちがずーっと待っているんだろうな、ってこと(笑)。
「結婚しよう! ぼくは君と結婚したい」
「祝福されて結婚したいの」
 とかやってる横で、軍服の野郎ども……シヴァーブリンとセルゲイエフとイヴァン中尉が黙して出番を待っているかと思うと……。とくにシヴァ(笑)。
 けっこう長いよね、ニコライのプロポーズ。歌ったり打ち明け話したり。サヴェーリィチ@ヒロさんが飛び込んできたり。

 で、その長い場面のあと、彼らのいた隣の衝立が動き、司令官室になる。

 反乱軍襲撃予告を前に色めき立つ人々、ひとり冷め切っているシヴァーブリン。
 このとき、シヴァにキレるハウルのマイクがいつも不調なのが気になった。毎回台詞の最初の方が聞こえず、「ハウル、マイク忘れた?」と思う。
 叫んでいるウチにボリュームが大きくなり、最後の方はふつーに聞こえる。これってハウルのせいというより、音声さんの問題? 毎回ハウルが喋りだしてはじめて「おっといけねえ」とスイッチ入れて、ボリューム調節してる?
 ハウルのうまいとは言えない芝居、滑舌が良いとはいえない台詞が、マイクのせいでさらに大変な感じなのが、気になったなー。

 そんなシヴァーブリンをなじるヴァシリーサ、千秋楽だけ芝居が違っていた。
 それまではふつーに「アナタを見損なったわ!」と強く言い捨てていたのに、千秋楽は冷ややかに淡々と語っていて、それはソレでこわかった。

 とにかくこの公演で央雅くん株が上がっているもので(芝居うまくないとかさんざん書いておいてなんですが)、彼の役、出番があるとうれしいのですよ。
 イヴァン中尉が大砲を使える人だとか、副官らしくていいよなー。かっこいいよなー。
 彼のキリッとした顔と、笑顔のギャップが好きなの。
 ショーの客席降りが真横で、えんえん微笑みかけながら踊ってくれて、とろけたわー(笑)。ロケットでも見ちゃうわー。

 戦闘シーンでも、イヴァン中尉は目で追っちゃうしね。うわっ、足斬られた、痛そう!とかね。
 
 その後のプガチョフ@まっつによる裁きの場でも、イヴァン中尉が太股に包帯巻いてるのに萌えるしね。ああ、あのときの傷だわーと。
 足長いよね、包帯巻くから余計長さわかるよね、と。
 へんなとこで堪能(笑)。

 ぎゃんぎゃん吠えるセルゲイエフと、余計なことは強いて言わないイヴァン中尉のキャラクタの差がイイですな。

 ……みんな殺されちゃうんだねえ。
 もったいないなあ。みんなみんな、いいキャラなのに。個性的なのに。

 
 ところで、シヴァーブリンの暗黒がコワイです。

 いくら気にくわない同僚や上司だとしても、殺すまでいくだろーか、ふつー。

 ニコライのことをプガチョフに進言して、処刑させようとするのはいいのよ。
 シヴァーブリンはニコライに恨みがあるんだから。殺意があるんだから。
 行動の是非はともかく、ひととして心の流れはわかる。常々憎んでいた相手を、ときを得て殺そうとするのは。

 問題は、憎むまでいっていない「気にくわない」レベルの人たち。
 何年も寝食を共にしてきた仲間たちを裏切り、保身や出世欲を優先させる、ここまではわかる。ありえること。
 しかし、そんな元仲間たちを殺すようにプガチョフに進言し、処刑される様を笑いながら眺めるっちゅーのは、ひととしてコワイ。
 憎んでないのよ、気にくわないとかウザいとかのレベルなのよ? その程度の上司や同僚を笑いながら殺すのよ?
 会社とかクラスメイトとかに、ウザいなーと思う人は誰だっていると思うけど、だからといって殺さないよねええ? そこまで思わないよねええ? いくらしてもいいよと言われても、皆殺しにしないよねええ?
 シヴァ、こわい……。

 シヴァーブリンの転機は、ニコライがベロゴールスクにやってきたあと、決闘騒ぎまでの間。
 おそらく、マクシームィチ@がおりがコサックたちと連絡を取り、あーだこーだやっていたあたりかなと思う。

 ニコライがベロゴールスクに到着したときは、シヴァーブリンはまだ政府軍の軍人として話している。
 砦の兵士たちのふがいなさ、牛さんの相手で大騒ぎしているような日常に腹を立てている。「コサックと戦になるかもしれないのに」と。
 この怒りは、正規軍人としてのもの。

 それが、反乱軍襲撃が決まったときにはもう、「こんな軍隊では勝てない」と見放している。
 このときすでに、反乱軍と通じていたんだろう。

 んで、ニコライとの決闘騒ぎだけど。
 そのときに彼は自分で言ってるんだよね。
「俺はヤイーク・コサックの頭目に知り合いがいる」
 それって、プガチョフのこと……? プガチョフその人でなくても、あの辺の関係者のことよね。
 ロシア貴族のシヴァーブリンが、コサックの頭目と知り合うはずないじゃん、ふつーなら。
 このときすでにコサックと……反乱軍と通じているってことだ。

 プガチョフが刃向かう軍人は皆殺しでも、忠誠を誓う者には寛大だとわかっているから、村人や女子どもは安全だとわかってるんだよね、シヴァーブリン。
 邪魔なニコライたちは殺しても、マーシャは無事助けられるってわかってるんだよね。

 シヴァーブリンは嫌なヤツだけど、マーシャへの愛情を見ても、狂人ではないのよね。
 だからこそ、「気にくわない」レベルで砦の将校たちを皆殺し、それを笑って見物、てのはおかしいと思う。
 ほんとなら、マーシャのためにも父親のミロノフ大尉とかは助けそうなものだ。

 それをしないのだから、ニコライとの決闘騒ぎのあと、よほどナニかあったんだろうなと。
 シヴァーブリンにとっては正規の決闘、しかも先に剣を抜いたのはニコライの方、そして決闘中によそ見をして自滅ってとんでもなく不名誉、勝ったシヴァーブリンこそが英雄、正義のはずなのに。
 ミロノフ大尉他、砦の人たちはシヴァを責めたのかもな。ニコライの肩を持って。
 それでシヴァは彼らを憎んだのかもしれない。気にくわない同僚レベルではなく、殺意を持つほどの憎しみの対象に変化したのかも。

 そのへんの人間ドラマも、想像すると楽しい。
「また女をはべらして」
 と、ヒゲがステキなひろみちゃんが言うんだけど、プガ様って言うほど女をはべらしてないと思うの。

 『黒い瞳』、反乱軍の宴場面。

 ライトが点く前から、舞台奥で女の子をはべらしているプガチョフ@まっつをガン見していてます。女の子の顎をさわってニヤニヤしているおっさん顔の人しかオペラで捉えてませんがナニか?

 しかし、女の子相手にやに下がっているのは一瞬で、そのあとえんえん男たちにしか絡まないんですけど、プガ様?

「まあ飲め飲めー!」
 とか言って、後ろに並んでいる男たち全員に酌をして回るの。「俺の酒が飲めないのか」状態というか。
 しかも、自分の口を付けた酒を、飲ませる。

 男たち全員と、間接キッス!(笑)

 プガ様は片手に酒瓶(デキャンタ系のモノ)、片手に杯を持ってるんだけど、この人何故か、酒瓶から口飲みするのよ。杯使わず。
 で、自分が口を付けた酒瓶から、男たちに注いで回る。

 そっか、自分が口を付けたモノを、全員に配って回るのか……飲ませるのか……ソレって……。

 なんかエロいです、まっつさん。(役名ぢゃないの?!)

 女相手より、男相手にエロいと思うの、プガ様って。
 女は人生の一部、男たちは人生のすべてって感じ? 仕事に生きる男としては。
 妻よりも同僚や部下が大事なお父さんってゆーか。

 男たちに間接キス強要して回るプガ様(男たちも大喜び)を眺めていると、その前で踊っている女の子たちを見られないという……。
 や、踊り子さんたちのダンスはきっと、映像でいっぱい見られるから! その奥で男たちのアイドル!なプガ様はナマでないと見られないから!

 パルミラ@ひーことの関係は、梅芸あたりがいちばん萌えだった。なんつっても「おでこ、こつん」があったからなあ。
 その後はべつに、そんなことしなくなった……後ろから抱きしめたときの手の動きはエロいとしてもだ。

 
 プガチョフの衣装はどれがいちばん好きか、とよくまっつメイトと話すけれど、わたしはラストの茶色い長衣が好きだなー。
 戦闘シーンでロングコートをはためかすのがかっこいー。

 次に好きなのは、この宴会場面で着ている黒い衣装。
 まっつは黒が似合うよなー。
 色とデザインはこのときの衣装がいいんだけど、丈が短いので足元がまるっと出ているのが……まっつの小柄さの逃げ場がない感じ(笑)で、そこが惜しい。

 この黒い衣装の上に毛皮のコートと帽子を付けるもんで、ソリの場面とベロゴールスクの場面は大変そう。
 単純に、めーっちゃ暑そう。
 ソリの場面なんか、汗が目の下のシワに溜まっちゃって、泣いてるみたいに見える……。
 プガチョフ的にあの場面、あのやりとりで泣くのはチガウから、汗だと思って見ているけど、マジ暑そうだ。
 ただでさえシワが目立つ顔なのに、汗が溜まるとかソレってなんのいじめ……(笑)。
 ベロゴールスクでは、ニコライ@キムはコート脱ぐのに、プガチョフは帽子すらそのままだもん、暑そうだよ、見ていても違和感だよ。
 脱いだら着なきゃならないわけで、ニコライを残して舞台を去る都合上、プガ様は脱ぐわけにいかないんだろうけど、下っ端兵士@翼くんに脱いだモノを持っていかせるとかすりゃいいのに、と毎回思った。
 

 つくづく、プガチョフという役は、いろんな風に妄想できて楽しい役だなと。
 彼がナニを思い、どう行動しているのか。
 史実や初演とは無関係に、この舞台の上のプガチョフ像のみから想像するのが楽しい。

 まっつの芝居はいつも同じ、変化ナシというイメージが長い間あったのだけど、ベンヴォーリオ@『ロミオとジュリエット』で毎公演チガウ!てのを見たあとなわけだし、プガ様も微妙に違っていて、そのときどきでキャラクタというか、思想や思念を考えられる。
 彼の思いを、わたしがどう受け取ったかはここで文章にするより二次創作した方がより多面的に表現できるだろうなと思うヲタなので、考察はやめておく(笑)。
 

 柄違いではあるのだろうし、最初からまっつにアテ書きされるとしたらプガチョフはこんなに荒くれな男ではなく、もっと知将系に描かれたことだろう。
 はじまる前は、初演と同じ役作りでやっても仕方ないし、勝負しても勝てないことはわかりきっているから、まっつらしい知的でクールなプガチョフになるのかと思った。
 でも幕が上がってみれば、あくまでも初演を大切にしたプガチョフだった。だから余計にまっつだと小物感が出るというか、柄違いで勝負になってねえというかが全面に出ていたと思う。
 初演と比べても無意味なので、わたしは気にせずに楽しんでいたけど。これは贔屓云々ではなく、すべての公演がそう。その昔、大切な大切な公演だった『エリザベート』が同じ年の内に星組で再演されたときに、「再演」の葛藤は堪能したし、乗り越えた(笑)。
 どの組、どの作品でも、再演は再演として、初演とは別物として美味しく頂くことにしている。その方がヅカヲタ生活が楽しいから。

 で、そのまっつプガチョフ。
 初日あたりは最初から用意されていた「型」をなぞるのに苦労していた様子だったけれど、どんどん変わっていった。
 「プガチョフ」になっていった。
 柄じゃないこと、はわかった上で同じ役作りをして公演を重ね、自分の得意分野に当てはめるのではなく、自分の方を変えていったまっつを、役者なんだと思った。
 今までまっつがやったことのない役。体格のハンデゆえ、まず割り振られることなかったタイプ。
 それを克服していく様を、順を追って見られたのは幸福だった。

 いやあ、戦闘シーンのある役なんて、いつぶりよ?(笑)

 戦争物に出演しても、ひとりだけ戦わない役とか当たり前だったもんねえ。
 『ロミジュリ』はただひとりナイフを持たない、誰も刺さない刺されない役だったし、『虞美人』では戦闘シーンには一切出てなかったし、『ベルばら』は革命シーンはあくまでも革命のダンスで、斬り合う戦闘シーンじゃないし、黒い騎士はあとから出てきて、すぐ終了だったし。『太王四神記』は戦場には出るんだけど、お師匠様逃げ回るだけでろくに戦ってなかったし。
 とにかく、殺陣には縁のない人だったなああ……線が細すぎるせいか。

 戦うまっつを見られただけでもうれしい。
 ダンスが巧くて所作がきれいな人だから、殺陣もきれいだもんよー。
 ニコライとの一騎打ちで、剣を握り直すところとか、かっこよすぎだー。

 そして、彼の最大の武器である、声と歌。

 最初の神様ヒゲ姿(サヴェーリィチ@ヒロさんが「神様ー!」と叫んだときに、プガチョフ@まっつが登場する)で、センターで短くソロを歌う。
 その歌声の、ドラマチックさ。
 今ここからドラマがはじまる……!と思わせるような。

 ソリの歌の良さは語り尽くされたことだろうから置くとして。

 ラストの「雪の上に歌を書こう」の歌声の、すばらしさ。
 小さな身体が大きく見える。
 「聴かせる」歌を歌えるようになってきたんだなあ。今までも「うまい」歌は歌ってきたと思うけど、さらに面白い舞台人になってきてるんだなと。
 マーシャ@みみちゃんがかわいすぎる。

 『黒い瞳』はそれぞれ主人公たちのターンがある。
 ニコライ@キムのターン、プガチョフ@まっつのターン、てな風に。
 そしてニコライのターンが終わったあと、マーシャのターンが来る。

 マーシャ最大のターン、ペテルブルグへの道。
 ここのダンス、好きだー。
 雪の精たちのくるくるくるくる回る登場から、わくわくする。
 みみちゃんがかなり忙しそうに振付をこなしているのを「大変やなー」と思って見ているけど(笑)、ここのマーシャ好きだ。
 歌もいいよな。
「たとえこの身 朽ち果てようとも 祈り届けよう 愛する人のため」てな歌詞。
 雪に氷に翻弄されながらも前へ進もうとするマーシャの姿に、泣けてくる。

 当時の世界で、世間知らずの女の子がペテルブルグまで旅をするのって、すごい大変なことなんだろうなあ。勇気の必要なことなんだろうなあ。
 生まれた村から一歩も足を踏み出さずに一生を終える、それが当たり前の時代だよね?

 マーシャはもともと活発な女の子だったんだよね。
 遠乗りで周囲の大人たちが驚くようなところまで、するっと行っちゃうような子だったんたから。
 それが伏線というか、説得力にもなっているんだろうけど、それにしても、すごい冒険なんだろうなと。

 ……実際は彼女ひとりでこんな風に雪に翻弄されてたわけじゃなく、サヴェーリィチ@ヒロさんやパラーシカ@あゆみちゃんと一緒なわけで、お嬢様は彼らに守られながらの行程だったとは思うんだけど。
 だからこの雪の精にくるくる回されているマーシャは「注・イメージ映像です」ってヤツなんだけどね(笑)。
 それはわかってるけど、当時の可憐なお嬢様にとって、これくらい大変なことだったんだと。

 布を使ったダンスがきれいだ……。
 んで、トリオに次々リフトされるわけだけど、最後のレオくんのリフトが難易度高っ、でびっくりだし。

 ここで踊りまくって汗びっしょりのみみちゃんが、そのふたつあとの場面でエカテリーナ@かおりちゃんと会う場面……ずっと疑問だったんだ、どうして誰もみみちゃんの汗を拭いてあげないのか。
 サヴェーリィチたちのカーテン前場面の間に着替えて、板付きでスタンバッてないといかんので、時間ナイのはわかるけど……。
 場面的に、マーシャが汗だくなのは変だよー。
 みみちゃんが余裕なくて汗を拭けないのは仕方ないから、誰かせめて、着替えている彼女の汗を横から軽く拭くだけでも、してあげられる人はいなかったのかと。

 汗ひとつない涼しいお化粧のエカテリーナ様と、フルマラソン完走してきたかのよーなアスリート・マーシャ……。

 女帝様の手を取り頬にあてるところも、マーシャは触るふりだけ。だってあんだけ汗だくじゃあ、かおりちゃんの手を汚しちゃうから、下級生としては遠慮するしかないよなああ。
 芝居だからほんとに触れる必要はないにしろ、「間違っても触ってはいけない」と警戒した距離で、「手を頬にあてる」という慈愛の演技をされるのもなあ……。

 と、変なところが気になってました。おばちゃんってやーね、つまんない粗探しして!

 そこは最後まで改善されなくてしょぼんだったんだけど、エカテリーナとマーシャの場面が感動的だったのは確か!

 わたしは前の場面から続けてマーシャのいじらしさに泣きまくりなので、「命さえ投げ出して」でだーだー泣けます。
 や、「命投げ出すとは言ってないから、エカテリーナ様、飛躍しすぎだから!」とツッコミ入れてる自分もいるんだけどね。(いるのか)
 マーシャは「結ばれないのは覚悟の上」と言ったのであって、「代わりに死にます」と言ったわけぢゃない。マーシャの心の内はそうなんだけど、口にしてはいないのに、その段階で「命さえ」と先走る女帝様……。

 とにかくマーシャがいじらしすぎて!
 この子好きだー。
 こんな女の子、こんな恋愛、見ていてきゅんきゅんする。
 「タカラヅカ」万歳、そう思うよ。

 こんなマーシャだからこそ、氷の女がその心を溶かすんだよね。
 エカテリーナは難しい役。かおりちゃんはほんと、いい女役さんだなあ。

 マーシャを見送ったあと、表情を変えて、客席に背中を向ける瞬間が好きだ。

 
 最後に、狂言回しの三人組のこと。

 トリオ役の、りんきら、咲ちゃん、レオくん。
 声がいちばんいいのはりんきらかな。査問官が最初はりんきらひとりなのは、そーゆーことかと。
 姿ではレオくんひとり勝ちに、わたしには見える。ぷくぷくなりんきらと咲ちゃんはぱっと見どっちがどっちかわかんなくなっても、レオくんだけは間違えようがないもんなー。
 この全ツで、レオくんはかなり認知度が上がったんじゃないだろうか、ヅカファンや雪組ファンに。

 咲ちゃんは登場したときが、いちばんきれい。
 開演アナウンスが流れ、ライトが点くとトリオだけがカーテン前にいるわけだが、その瞬間はたしかに咲ちゃんは男前なのだ。
 しかし……場面が進むに従って、どんどんきれいじゃなくなっていくんだなー。これがなー。こまったなー。
 彼に与えられている仕事量が多すぎるのかな。仕事をこなすだけで精一杯、美しく見せるところまで神経が届いてない印象。
 近い将来トップスターになる宿命なら、早いとこきれいになって欲しいナリ。出番がひとより多いのがスターの使命、たくさん出るならきれいでいてほしいナリ。

 初日に観たときはなんつーんだ、3人揃ってつたなさがまず見えて、初演にてスターであるきりやん、タニちゃんだけでなく、実力者の嘉月さんを加えていた意味が改めてわかった。きりやんは実力もあったけど、狂言回しを下級生だけでやらせるのはこんなに危険なことなんだ、と教えられた気がした。

 初日はたしかにもお、えーらいこっちゃだったけど。
 若いっていいよね、短い間でたしかに成長していったよね。
 難しい役だからこそ、この経験は今後の彼らの血肉になるんだろうなと思った。

 りんきらと咲ちゃんはビジュアルがんばってくれー、レオくんは声と演技をがんばってくれー。

 
 下級生たちまで喋って踊って芝居して、大活躍だったもんなあ。
 全ツってすごいなあ。
 わたしヅカヲタ長いけど、基本関西限定だし、遠征しない地元宝塚だけで満足な人なんで、こんなに全ツを追いかけたことってなかったの。
 つっても5都市だけどさ。3分の1でしかないんだけどさ。
 またひとつ、ヅカヲタとして階段を上り、人間として格を落とした気がするんだが、悔いはない(笑)。

 この時点でまだ、前回の宙組本公演の感想をまったく書けていないことにアタマを抱えつつ。
 宙組『美しき生涯』『ルナロッサ』観てきました。

 とりあえず。

 大空祐飛と凰稀かなめを並べたい、という意図はわかった。

 わたしはちえねねテルの並びが大好きだったので、星組トリオ解散、かなめくんの宙組組替えはその点を残念に思ってました。
 ついでに、らんとむ氏はそのまま宙組を継いで欲しかったので、「組替えなんかしなくていいじゃん、星組でちえねねテルを、宙組でゆひすみとむを見させてくれよ」と思ってました。らんとむ氏はいつでもトップOKな人だけど、学年的にゆーひさんはいずれ卒業するんだから、そのまま宙でいいじゃんと。

 ちえテルになにかと萌えていたので、別れが残念で、寂しくて。
 ゆひテルになるんだっつーことはあんまし考えてなかった。あまりに接点のないふたりで、想像力も働かないというか。
 むしろ、実力微妙な者同士並べてどうすんだとか、ひどいことを思いました。ゲフンゲフン。

 『美しき生涯』のポスターはそりゃあ二次元的、ゲームCG的に美しかったけど、それはゆーひくんのデフォルトなので、あまりに気にしてなかったし。テルもまた、静止画が美しいのはわかってたし。

 あんましモノを考えないまま観に行って。

 あまりの美しさに、目が点になった。

 なんじゃこりゃあ。

 とにもかくにも、ビジュアル。
 なんか、すごいことになってる……。

 もちろん、らんとむだって美しい人だった。彼がいたときだってゆーひくんも宙組のみんなも美しかった。
 が、なんつーんだ、ゆーひくんとらんとむは、画風の違うコミックのようだった。
 『シャングリラ』がわかりやすいよね、アニメかゲームCGまんまの無国籍盛りまくりコスプレのソラ@ゆーひと、とってもタカラヅカな男役スターふつーにスーツ似合いすぎですのラン@らんとむ。君たち世界観チガウやん、どっちも美しいけど! という。
 ソラとランが並んで記念撮影した写真があっても、「別の舞台の登場人物の合成写真?」って感じだったよね。
 そういったふたりの個性の違いが、魅力だったわけだ。(おかげでふたりはいつも敵陣営、並び立つことが少なかったわけだが・笑)。

 それが、らんとむ君のかわりにかなめくんがやってる来たことで、絵柄が統一された。

 ゲームCGな人々がそこに……!!

 ゆーひくんとかなめくんって、同じ世界の人だったのか。
 同じアーティストによって描かれたイラスト。世界観統一、絵柄統一、ただひたすらに美の追究。

 うわー……。
 なるほど……コレがやりたかったのか……。
 たしかにこのふたり、並べたいと思っても仕方ないわ……。

 商品の売りを個別化するために、特色を大きく打ち出すのは商売としてアリだよね。
 宙組は、ビジュアル特化かあ……。や、今までもそうだったけど、さらにそれが顕著になったなと。

 方向性が見えただけに、他の組子たちもぴたりとハマってきたというか。娘役はともかく、男たちはみんな「いくぜビジュアル組!」って感じギラギラ。
 
 役というモノがほとんどない『美しき生涯』、いつも山盛りみんなでわいわい『ルナロッサ』という作品もが、ビジュアル組形成に一役買っている。
 なんつーんだ、作品構成が真ん中の少数にだけ焦点が合っていて、あとはそれに倣う感じになっているっていうか。真ん中が「美!」だから、その周囲の名もなき人たちも同系色でまとまっているというか。

 すみ花ちゃんはビジュアル売りとか二次元売りの人じゃないし、みっちゃんひとりえらくいろんな意味で浮いているんで、ここがアクセントかな。

 いやとりあえず、美しいモノを観た。
 「タカラヅカ」を観た。
 これって「タカラヅカ」だ、「タカラヅカ」でしかありえないものだ。
 口ぽかーん状態で、そう思った。

 星組の『ノバ・ボサ・ノバ』も、「タカラヅカ」でしかありえないもので、宙組の『美しき生涯』はソレとはまーーったく別のベクトルを持つんだが、それでもコレはたしかに「タカラヅカ」のひとつの形態だ。

 「タカラヅカ」ってほんと、すごいなー。
 大石静氏の代表作は、わたしにとっては『わたしってブスだったの?』だ。
 コレではじめて名前をおぼえた。それ以前に『トップスチュワーデス物語』も『ヴァンサンカン・結婚』も『おとなの選択』も見ていたけど、面白いと思ったことがなかった。
 はじめて面白いと思ったのが、『わたしってブスだったの?』。ドラマ好きな友人たちの間では人気だったけれど、世間的な人気はなかったんだと思う。なんせソフト化されなかったし。
 それ以降、面白くない作品があっても「でも大石静って『わたしってブスだったの?』の人でしょ? じゃあそのうち面白いモノも書くんじゃない?」って言ってたなあ。

 『わたしってブスだったの?』が人気なかった理由のひとつは、キャスティングじゃないのかなあ。
 松田聖子が主役だったんだなあ。
 聖子ちゃんって知名度はあるし、歌を好きだという人はいても、本人を好きだという人にまだ会ったことがない。演技がうまいとも思えない。
 何故彼女主演でドラマを作ろうなんて思ったんだろう、テレビ局の中の人。当時ですら「え、松田聖子? なんで今頃主演?」と思いっきり過去の人扱いだった記憶が。
 わたしはドラマヲタクでもあるので、連続ドラマの初回は全部見る!てことで見た。番組欄に「新」て書いてあったら全部見るので、誰が出演とか脚本とか、気にしてないのよ。今もだけど。
 見はじめて「え、主人公松田聖子か。んじゃもう見なくていいかな」と思うくらいには、萎えるキャスティングだった(笑)。主演が誰かで、そのドラマ視聴対象者がわかるじゃん? 松田聖子だという時点で、このドラマの視聴対象者にわたしは含まれてないだろうと思った。

 が。
 面白かったんだ。

 温泉の取材でモデルの女の子が「脱ぐなんて聞いてません」と拒否、温泉に入っている絵を撮らないでどーして温泉の取材になるのよ!と息巻く番組プロデューサーだか雑誌記者だかのヒロイン@聖子ちゃんが、「ならあたしが脱ぐわよっ」と裸になる。
 それくらい仕事に本気で一生懸命、気も強いし口も立つ美人キャリアウーマン。そんな彼女に、初対面の仕事相手@時任三郎が言い放つ。
「うるさいよ、このブス」

 ブスなんて、人生で一度も言われたことなかったろうデキル女が、面と向かって言い捨てられて、二の句がつなげない。

 この第1話の掴みだけで、全部見ちゃったようなもんだ。
 このドラマの良かったところは、テーマである「性格ブス」の美女たちが、言葉で「性格ブスというモノは」と語らなかったことだと思っている。
 印象的なタイトルなのに、作中では「ブス」を連呼することがなかった。1話で罵られたのみで、あとは出てこない。
 素直になれない女たちが、恋に仕事にじたばたする。かわいい子になれない、強がってしまう、がんばってしまう、攻撃してしまう。そんな女の子たちの間違っている部分も含め、人生を応援しているドラマだったと記憶。
 まあ、よくあるテーマだわな。でもその「よくある」を気持ちよく描いてあった。あとになってわたしはドラマヲタ友人とドラマ感想同人誌とか作ってたんだが、その相方にもこのドラマの評価は高かったなー。……主人公、大根だったけど(笑)。

 
 と、年寄りの昔語りが長くてすまんが。
 大石静という作家に対するわたしの記憶の原点は、『わたブス』だったと(笑)。

 それゆえに、「女の子」の自我をあざやかに描いてくれる作家、というイメージなのだわ。

 反面、男キャラがいまいちっつーか、記憶に残らない……。そんなにステキな男キャラいたっけ?
 あ、森山さん@『ふたりっこ』は萌えキャラだった!!(笑) あれでしばらくは内野聖陽フィーバーが続いたなー。
 でも『ふたりっこ』自体が迷走ドラマだったので、最後はどーでもよくなってたし……。

 あ、『功名が辻』は見てません。大河ドラマは肌に合わないことが多く(視聴対象者じゃないんだろうと思う)、最初から見ない場合が多いっす。
 
 近年でいちばん好きだったのは、『四つの嘘』かな。
 『セカンドバージン』もそこそこ面白かったけど、『四つの嘘』の方が好みだった。

 ああ、大石静と言えば『愛と青春の宝塚』だっけ。
 ドラマはツッコミの嵐だったので(笑)、よりファンタジーに見られる、舞台の方が好きです。ワタさん目当てに観に行きました。

 てことで、『美しき生涯』

 ナニこの女主人公ドラマ(笑)。

 自我と成長があるのはヒロインで、男たちは彼女の人生の飾りっすか?
 テレビドラマって大抵女性主人公で女性視聴者目線を意識して作られるからなあ。女性が感情移入できるヒロインがまず最初にあって、そのヒロインに対して映りの良い相手役を設置するからなあ。
 そーゆー構造だよね、コレも。

 茶々@ののすみはお姫様育ちの元気っ娘。お城でおとなしくなんてしてないぞ、男の子みたいに野に出ちゃうぞ。
 世間知らずゆえ、幼さゆえに暴走しちゃった彼女を優しくたしなめてくれた貴公子・三成@ゆーひにどっきん一目惚れ。
 戦国の世ゆえ女たちは儚い身の上、やんちゃ少女だった茶々は愛を胸に苛酷な運命を生き抜いていく。
 茶々の三成への愛は最初から揺るがず、その上茶々は成長する。出会ったときに大人だった三成は、良くも悪くもそのまま。気がつけば茶々は人間として三成を追い越していた。
 幼い茶々の目には、頼もしい正義の王子様に見えた三成だったけれど、大人になった茶々からすれば中二で心の成長が止まったよーなダメ男だった。
 子どもの頃なら「正義の味方ってかっこいー」と素直に思えたのに、大人になると「覆面して自分の日常は守った上で、目の前の悪だけ倒してなんになるの。子どもの正義だから仕方ないわね」と見下ろしてしまう、あの感じ。
 だけど愛してしまったものはしょうがない。茶々は三成の正義につきあう。
 忠義がどうのと言いながらダブスタ上等、子どもも作っちゃいますよ、愛は大事ですから。
 最後は三成追いかけて敵の城まで忍び込んじゃいますからな。お茶々様すげえ。

 三成もキャラは終始一貫ブレがないので(ダブスタだったり、子どもの正義のままだったりするところも含め・笑)、ヒロインの成長モノとして筋が通っていてソレはイイんじゃないかと。

 女主人公と、彼女と精神的な関わりのあった人しか描かれないため、歴史物としても「タカラヅカ」としても半端であることは確か。
 あくまでも「精神的」。好であれ悪であれ、茶々に対してベクトルのあった人しか「人格」が描かれていない。
 おかげで三成、疾風@かなめ、秀吉@マヤさん、おね@圭子女史、しか、人格がない。(次点で福島さん@みっちゃん、さぎり@せーこがにぎやかし扱い)
 三成が主人公だったら、三成への好悪か利害で展開するはずなのになあ。

 男役がトップと2番手までにしか人格がない、描かれていないっつーのは、「タカラヅカ」として致命的な欠落だと思う。80人から出演者がいるのに、主要キャストが5人(うち2人は専科さん)ってのは、組制度への挑戦だな(笑)。

 でも外部の作家を呼んだってことは、「タカラヅカ」でないものをやりたかったのかもしれない。
 それならば、目にきれいで、ちゃんとまとまっているこの作品は、良い出来なんだと思う。
 ゆーひくんの役はね。
 愛する女に対して優柔不断ではっきりしなくて、女の方が押せ押せで積極的で、武将だから戦争もするけどメインはメロドラマで、誠実ぶってるけどやってることはけっこうひどくて、三角関係っつーか不倫で他の男のモノの女に自分の子ども生ませて、いっつもなんかやせ我慢してて苦悩していて、最後は死んじゃうの。

「えーっとソレ、『TRAFALGAR』?」

 再放送じゃないっす、今上演している『美しき生涯』のことだよー。

「『TRAFALGAR』と、どこがチガウの?」

 ヒロインが破綻してない。だってヒロインこそが主役だから。
 ソレだけはいいんだけど。
 今回の主人公が、ネルソンさん@『TRAFALGAR』と決定的、致命的にチガウことは。

 三成には、友だちがいない。

 ぼっち星人なのよ、主人公。
 孤高とか孤独とかじゃなく、単に友だちがいないの。

 ネルソンさんには友だちやら部下やらがたくさんいて、彼の周りはいつもにぎやかだった。
 彼を信頼している施政者とかえらいさんたち、敵だって彼を英雄視していた。
 みんながネルソンを愛していた。
 
 性格もやってることも変わらないのに、今回の三成さんってば。
 誰も彼を好きじゃないの。認めてないの。だから彼の周りには誰もいないの。
 部下もいないし、三成が仕えている秀吉@マヤさんだって、三成を利用しているだけで愛情はない。
 唯一友だちっぽくなるのが忍者の疾風@かなめくんだけど、これもまた利害の一致でとりあえず手を組む感じ。
 こんだけ誰からも愛されていない主人公もめずらしい。

 孤高のダーティヒーローだとか、心正しく厳格過ぎる人だとか、友だちがいない理由があればいいけど、「いい人っぽい」書き方なのに友だちがいないって……ソレ絶対いい人じゃない。利があってなお誰からも好かれていない人は、本人に問題があるよ、どのコミュニティでも。

 
 こんだけ同じよーな話なのに、これだけひどい主人公になっているのは何故か。
 それはひとえに、外部発注脚本だから、だと思った。

 タカラヅカには、明文されていないけど「お約束」っていうものがあるじゃん?
 80人も出演者がいて、主役や主要人物以外にも何人もキャラクタやオイシイ役がいなくてはならなくて。役の付け方は順番や決まりがあって。
 華やかに歌い踊るオープニングがあって、主役たちの銀橋ソロがあって、途中群舞や歌が絶対にあって……と、ここまでやらなきゃいけないことが決まっていて、それをたかだか90分とかでまとめ上げるために、いちばん効率のいい方法が生み出されたというか。
 ここを持つと決められたわけじゃないけど、ここを持つのがいちばん持ちやすいから、みんな同じところを持ってしまって、そこだけ擦れて色が落ちてしまった道具、みたいな。
 ヅカの大劇場芝居を作る上でのお約束。「こうやるとうまく作れるよ!」というハウツー的なモノ。

 絡ませなくてはならない役者が決まっていて、上演時間が限られているので、愛憎・利害関係は全部、スターたちで埋める。
 まず主人公とヒロイン、次に2番手は、戦争物なら敵、不倫モノなら恋敵、というように。そうすればストーリーに絡む人たちが主要スター、いくらでも書き込んで盛り上げていい。
 そして、主人公には家族や友だちなど、周辺の人たちを作る。2番手が敵なら3番手は親友、というように、主人公を中心に人間関係をスター順で埋める。
 物語の主軸に深く大きく絡む順番と番手順がイコールである、それがいちばん効率的。
 45分×10回の連続ドラマじゃなく、90分の単発ドラマだとしても主役とあとは数人だけで歌もダンスもなく終了していいわけじゃなく、90分で80人でミュージカルだもん。そこで描ける題材を選ぶところからスタートだよ。

 主人公がネルソン提督。だから2番手は敵のナポレオン。メロドラマだから、3番手はヒロインの夫、恋敵。4番手は親友。売り出し中の若手は、主人公を慕う若者役と、主人公の息子。2番手娘役は主人公の妻。
 主人公中心に、テンプレ的にあてはめましたー、なキャスティング。

 『TRAFALGAR』はタイトル通りの海戦モノと不倫メロドラマと両方やろうとして主軸がブレたために、決していい出来の作品ではないんだが、少なくともキャスティングというか、ヅカのお約束としての組み立て方は間違ってないんだな。

 一方『美しき生涯』。
 こちらはうまくまとまった作品なんだけど、なにしろ「タカラヅカ」のお約束無視して作ってある。まとまっているのは、それゆえ。
 誰だって、主役とヒロイン、その恋敵の3人だけ使って90分かけていいなら、まとまった話を書けるよ。
 タカラヅカにはタカラヅカならではの縛りがある。物語と縛りと両方こなさなきゃいけないから、物語が壊れるんだよ。

 『美しき生涯』をタカラヅカのお約束でキャスティングすると。
 主人公三成@ゆーひであり、ヒロイン茶々@すみ花である以上、2番手の役は恋敵の秀吉か、敵の家康になる。お約束には「2番手の役は敵か、もしくは親友」てのがあるから、この場合親友?疾風@かなめまではアリだろう。
 そして、親友が2番手だった場合は、敵役が3番手になる。重要な役からスターを振っていかないと、インフレになるから。
 メロドラマ主眼なら敵は秀吉、戦争主眼なら家康。今回は秀吉だった。
 ならば3番手のみっちゃんは、秀吉であるべきだった。

 秀吉のみっちゃんが見たいわけじゃない。もう老け役のみっちゃんは見たくない。うまかっただろうし、ミサノエールに遜色なく演じられたことはわかるけど。
 3番手男役に老け役、助平爺役はさせられない。というのなら、秀吉を壮年の男前として描くしかない。サルというのは身分からきた蔑称であり、顔立ちとは無関係であったと。史実なんか無視して。マッカーサー@『黎明の風』がおっさんではなく、とびきりの美青年であったように、タカラヅカなんだからなんでもアリだ。
 それができない、ちゃんと助平爺にしか描いてはならないというなら、そもそも三成×茶々の話なんかタカラヅカでやるなってことだな(笑)。

 物語的に三成と茶々と疾風と秀吉、秀吉の妻にしか役割がないのなら、これが前提だというのなら、これらの役を番手であてはめていくしかないじゃないか。
 だってソレがタカラヅカ。
 主人公と親友、主人公と恋敵、ならばいくらでも盛り上げてヨシな軸だ。
 秀吉がタカラヅカ的な二枚目キャラなら、三成との愛憎も書き込めただろう。あそこまで「どーでもいい、ただの悪役」ではなく。

 『TRAFALGAR』が良かったわけではまったくないが、ヅカの座付きと、外部の人では、同じ話を書いてもここまでチガウものなのだなと。
 ナポレオンが家康で、ウィリアムが秀吉だもんなあ。『TRAFALGAR』の2番手と3番手の役が、組長と専科さんだもんなあ。

 あ、それともうひとつ、決定的に違うことがある、ふたつの作品。

 『美しき生涯』は、『TRAFALGAR』より遙かにお金がかかってる!!(笑)

 『TRAFALGAR』は制作費のなさが一目瞭然で切なかったですね。
制作発表会に行きたい。@ハウ・トゥー・サクシード
 『ハウ・トゥー・サクシード』制作発表会に行ってきました。

 だって、制作発表っすよ? 贔屓がそんな晴れがましい席に出るなんて、夢にも思ったことなかった。直近でいうと『ファントム』や『ノバ・ボサ・ノバ』博多座の制作発表があったけど、トップコンビのみの出演だったっしょ? ふつーはそんなんだもん、出たとしてトップと2番手まで、脇までぞろりと出演する制作発表なんて、かなりレア。
 そのレアなケースに贔屓が引っかかるなんて幸運、もう二度とないかも?!

 となると、行くしかないっ。

宝塚歌劇雪組『ハウ・トゥー・サクシード』の制作発表決定!

【日時】2011年6月7日(火) 13:30 開始予定 ~ (約1時間程度)
【場所】宝塚バウホール(兵庫県宝塚市栄町1-1-57)
【出席者(予定)】脚色・演出:酒井澄夫、(雪組)音月桂、舞羽美海、早霧せいな、未涼亜希、緒月遠麻、沙央くらま

<制作発表に参加できるチャンス!>
宝塚歌劇雪組 ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』制作発表に参加できるチャンスは3タイプ
皆様、奮ってご参加下さい!

1.『ハウ・トゥー・サクシード』初演観劇レポートを投稿して応募!
抽選で20組40名様 ご招待
※5/23(月)~5/29(日)の間に投稿頂いた方の中から抽選。 当選発表5/31(火)
2.梅芸ネット会員に入会して応募!
抽選で100名様 ご招待
応募期間:5/24(火)~5/28(土) 当選発表6/1(水)
3.制作発表特典付公演チケットの購入
※6/2(木)より、チケットぴあ、イープラスにて限定販売(先着順)
  ↑ 梅芸サイトより。

 1は無理だ、初演は観たけど「なんでコレをタカラヅカでやるの? タカラヅカでこんなの観たくない、もう2度と観ない、と思いました。実際ナマで1回観ただけで、2度と観てないし、映像でも見てません」なんて率直な感想書いて送るわけにいかない!
 主催者側が期待する内容のレポートをてきとーに書くというテもあるし、やろうと思えばスキル的にはできるけど、そんなことまでしたくない。

 てことで、2だ、2。
 友だちまで巻き込んで応募! 当たりますように!!

 …………はずれました。もちろん。

 残る手段は3。
 前日からどの日にちがいちばんマシな席を買えるかしつこくシミュレートして、いちばん良い席が買える日を、発売当日朝10時ジャストにクリックしました。
 あ、席ってのは制作発表の席じゃないよ、『H2$』本編の座席のことだよ。システム的に、「制作発表付きチケット」はそれ専用の座席が決まっている(たとえば、2階1列目11~15番は制作発表付きチケット席、とかゆー)わけじゃなくて、その時点で販売しているいちばんマシな席から順番に売っていくらしいから。
 たとえば7月2日だと同じ「制作発表付きチケット」でも2階席しかないんだけど、別の某日は1階16列目センターとかなのよ?
 せめて、マシな席を買いたいじゃん?

 いやはや、びんぼーなのにはっせんごひゃくえんも余分に使っちゃったよ……。

 でもま、おかげで参加する権利を得ました。
 『H2$』は好きじゃないけど、まっつは好きだ! キムみみが好きで雪組が好きだ! 観れば観たできっと楽しめるはず。
 贔屓組ならなんでも楽しめるのがタカラヅカだもん(笑)。『H2$』だって結局好きになるだろう、と見切り発車。

 梅芸主催公演はいろいろと販促イベントやってくれるからいいよね。
 まあそんだけ、梅田でミュージカルやっても興行苦しいんだろうけど。ヅカに限らず、大阪はナマモノ不毛地帯だから。おかげでいろんな公演が、大阪には回って来ない、来ても日数すげータイトだったりするし。(大阪人は基本、お金出して娯楽は観ない。タダでないと!)
 でもなくなって欲しくない、大阪公演。……ヅカに限らず、いろんなモノ。
 だからがんばれ梅芸!

 てことで、『H2$』にイベントがあってうれしい。

 場所がバウホールっつーのが、さらにワクテカ。
 去年の星組『ロミオとジュリエット』制作発表はドラマシティだったぢゃないですか。
 座席は当日抽選、わたしのくじ運で前方席が当たるはずナイ、ドラマシティで最後列だとめーーっちゃ遠いですよ舞台。
 でもバウなら最後列でも近い!
 イヤッホウなキモチで出かけました。

 んで、本拠地宝塚大劇場、門を入ったところに看板出てるし、うちわ配ってるし。
 なんかトクベツっぽいというか、祭っぽくてイイですな。

 さっそく座席券の抽選に行ったんだけど、チケぴとイープラスでは配分がかなり違ったのかなあ。イープラス引換は階段下まで行列、チケぴは列ナシの無人状態でした。

 バウホールは500席だけど、500席全部を人で埋める気はなかったらしい。
 前方席はマスコミ・関係者席になっていて、一般招待客は段上がりから最後列までのみ?
 関係者席が埋まることはないから、定員いっぱいまで詰め込む予定はなかったらしい。
 去年のドラマシティも、座席全部は使ってなかったらしいし、チケ代取るイベントじゃないからそんなもんなのか。

 しかし、普段くじ運皆無のわたしが、なんかやたらいい席を引きましたよ……。
 おかげでキムくんの目線ばっちりだー! まっつの目線はカケラも来なかったけどなー(笑)←やっぱくじ運ナイ

 実は以前一度だけ別の制作発表にこっそりまざったことがあるんだが、そんときは参加者全員オリジナル制作のきれいなパンフレットがもらえたんだな。でも今回はそんなもん一切ナシ。
 注意書きのピラ紙1枚渡されただけだ。……そんなもんよね……。だってあの制作発表はホテルで立食付きだったもんね……。今回とは違い過ぎるよね……。

 グッズスキーなので、なんかトクベツな「制作発表用パンフレット」とか、欲しかったなああ(笑)。
 や、無理なのはわかってます、期待してなかったし。
 販促用のうちわだけでもうれしい。

 ポスターと同じ柄のうちわなので、まっつも、載っている。
 まっつが載ってる非売品グッズ!!(笑) すごーいすごーいすごーい。
 てことで、ありがたいですはい。

 と、四方山話で終了、肝心の制作発表の感想は翌日欄へ。
 つーことで、『ハウ・トゥー・サクシード』制作発表会に行ってきました。

 わたしにレポ機能はないので、感想だけ書きます。

 オープニングは出演者のパフォーマンス……ってことで、主題歌披露タイム。
 まっつの声からはじまった。……『太王四神記』『ロミオとジュリエット』に続き、1本物ミュージカルとゆーと、まっつナレーション。宝塚歌劇団的にお約束となるのか(笑)。
 ま、よーするに「本の声」です。初演はミサノエール。
 まっつのあまり男声に特化していない印象のナレーションに応えるカタチで、スーツ姿のフィンチ@キムくんが主題歌を歌い出す。あの「ハウツー♪ ハウツー♪」ってやつね。
 で、しばらくひとりで歌ったあとに、バド@ちぎくん登場。ポスターまんまの姿なので客席から笑いが起こる。続いて、ブラッド@まっつ登場。マンガ的なバドのあとに、なんと地味でふつーのおっさんが登場することか(笑)。
 3人でほんのちょっと歌い踊る。
 そして、ウォンパー@ヲヅキ、ギャッチ@コマが登場、5人で主題歌。

 なにもない、空っぽのバウホール舞台の上で、でかいマイク握って歌い踊る、5人のスーツ男。

 シュールです……。

 ソロパートがあったのは、キムのみ。
 だからまっつの声は単体では聞こえなかった。ちぎくんとユニゾンで歌っていた部分がいちばん、声が少ない部分だったか。あとは5人でふつーに歌うのでなんとも……。

 男たちと入れ替わりに、ローズマリー@みみちゃん登場。キムとふたりでラブソングとなる。「信じてる♪ アナタを信じてる♪」って歌。

 
 最初の、キムくんひとり舞台にマイク持って立っている状態で、すごく興奮した。
 あたし今、ふつーではない場にいるんだなと。
 バウホールで、この近さで、ショーではない芝居化粧と衣装のスターが、マイク持って歌うことってないじゃん?
 芝居ならマイクは胸か頭部に小さいのを付けているわけで、ショーならこんなに地味でリアル系の顔と衣装じゃない。

 ニコライ@『黒い瞳』が、ステージ中央でマイク持って客席と真正面に向かい合って主題歌熱唱する。……くらい、ありえない光景。

 いや、ソレを今やってるんだ。
 制作発表会だから。
 もしも『黒い瞳』で制作発表やってたら、キムはニコライの軍服姿でこうやってマイク握って真ん中立って歌ってたんだ。

 制作発表ってすげえ!!

 と、改めて思った(笑)。
 いやその、制作発表にまざって参加するの2回目だけど、いつも観ているバウのステージで、てのは破壊力高い。ホテル宴会場の特設ステージなら「そーゆーもん」と思えるけど、いつも観ている舞台でなんだもん。てゆーかそもそも昔参加した制作発表ってジェンヌさん素顔だったわ。主題歌披露してくれたけど。

 セットもナニもない(ビルの絵が描かれた幕がホリゾントにあるだけ)、振付すらろくにない、ほんっとに「舞台です」というだけの空っぽの空間で、ただ自分のスキルのみを武器に歌い出す。
 キムくんすげえな。
 まだ客席はカケラも暖まってない、そんな状態なのにいきなりひとりで歌い出してるんですよ。
 難易度高いわー、トップスターって大変。

 ちぎはまだいいんだ、キムが口火を切ったあとだし、なによりそのマンガ的なキャラクタで底上げされる。
 爆発したトサカ頭にアラレちゃんみたいな黒縁眼鏡、コミカルなビビッドスーツ、表情も仕草もとびきりギャグでよし!だから。
 お笑いやってもいいキャラと、「ふつーに二枚目の範疇で」盛り上げなければならなかったキムくんは、難易度に相当差があったと思う。

 いやあ、最初キムひとりで「ハウ・トゥー・サクシード」をはじめたときは、びみょーなキモチになったからなあ(笑)。
 ちぎが登場してくれて、ほっとしたというか。

 登場人物板付き総踊り!からはじめるくらいでいいんだと思った、空気が暖まっていない場合。
 『ノバ・ボサ・ノバ』前夜祭とかでも、ふつーにオープニング場面からはじめるのはそのためだよな。幕が上がりましたー、観客はナニが起こるのかわかってません、てな温度が低い状態で、突然セットもなんもナシの空っぽの空間でソールひとりが本舞台でシナーマン歌い出しても、観客はぽかーんとしたままになるだろーからなー。段階踏んで行かなきゃなー。
 もしくはトークとかいろんな説明とかで盛り上げたあとだよなー。
 幕開きから突然、なにもないとこにトップひとりで……って、えらいこっちゃだよな。

 キムくんひとりで「うわー、大変だなあ」と思い、ちぎくん登場で「よかった」と思い……そこにまっつが登場し、さらに「いたたまれない」と思った……(笑)。

 バドほどかっ飛んでないとはいえ、フィンチはいちおーミュージカル的というか、かわいい嘘くさい衣装を着ているの。白地に細かいピンクラインの入ったスーツ。ぱっと見には全身ベビーピンク? かわいらしいパステルカラー?
 現実には絶対いない、こんな服着た男。
 だって舞台だもの、ミュージカルだもの。って、そんな格好。
 そこへバド、もっと嘘全開のおバカな格好。
 嘘くささ、フィクション臭さが跳ね上がり、このまま「そうよ、だってミュージカルだもの!」という雰囲気になるのかと思いきや。

 容赦なくリアルな、リーマンスーツ男登場。

 いや、実際のリーマンがこんなにかっこよくないだろとか、現実にいたらソレでも十分派手だよとか、そんな話ではなくて。
 「舞台」の上では、グレーのふつーの会社員スーツなの。フィクションよりは現実臭い衣装なの。

 こ、困る……っ。

 見た目がシュールすぎて、処理しきれない! 困るよこの絵面!!(笑)

 現実ではあり得ないし、十分嘘くさくて派手だけど、ショーではなくあくまでも芝居のスーツ姿のキム。
 ミュージカルですよ嘘世界の話ですよみんな笑ってね!のちぎ。
 現実と地続きのサラリーマン男まっつ。

 この3人で、しれっと歌い踊られても……!!

 あたし今、すげーもん見てる……!(白目)
 って感じでした。

 そこへ、さらに完璧リアルスーツ男ヲヅキ、ふつーにスーツですがナニか?のコマが加わると、もお。

 ナニこれ、ここ、なんの店? どーゆープレイなのよ??!
 って感じがして。(取り乱してます)

 ミュージカルからホストクラブ寄りになったよーな……ええっと。
 そんなカオスな世界が繰り広げられ、キムくんを中心にばんっ、とポーズつけて曲が終わったりなんかして。

 とりあえず、この5人でユニット組んで売り出してください……衣装もこのままでイイです。わけわかんなすぎて、どこへ行っても「コンセプトなんなんですか??」と聞かれること受け合い。

 
 続く(笑)。
 NHKの『あほやねん!すきやねん!』の本の声は、初演の音源? まっつの声ではなかったよーな。というか、ミサノエールの声だったような。
 NHK様でまっつの声が聞けるのかと、一瞬心が躍ったのですが(笑)。

 とはいえ、流れた制作発表の映像に、まっつがちらりと映り込んでいてうれしかったっす。

 タカラジェンヌが一般放送バラエティに出演したときに必ずやらされる「男役講座」、『あほすき』さんカメラアングル懲りすぎで、ナニがなんだかわからない……。
 他のレギュラー出演者さんたちが「おおー、すげー!!」と盛り上げてくれてるけど、カメラがじっとしてないから、見ている側はナニがすごいのかよくわかんない(笑)。
 気を遣ってくれてる感じでした、終始一貫「タカラヅカ」というモノに対して。

 キムみみはかわいかったっす。
 すごくかわいい。
 てゆーか、この人たちテレビ放送でもこうやって見つめ合ってデレってのをやってくれるんだなと胸熱。
 トップコンビはこうでなきゃ!(笑)

 
 てことで、『ハウ・トゥー・サクシード』制作発表会の感想続き。

 スーツ男5人が歌い踊っていたときは、「この近さならオペラいらないなー」とのんびり眺めていたのですが、ローズマリー@みみちゃん登場、フィンチ@キムとのデュエットになった途端、オペラグラス上げた。

 キムくんが、みみちゃんを見つめる眼差しにきゅんとして。

 男5人でポーズ取ってるわけですよ。
 そこに、上手後方からローズマリーが登場するわけですよ。フィンチが彼女に気づき、微笑む。その間に他の男たちは下手袖へはける。
 ローズマリーがフィンチに駆け寄って、ふたりでしばらく向かい合ったまま歌う……てな流れだったかと。

 この、「彼女を見つけて、微笑む」「見つめ合う」ってゆーのがもー!
 このときのキムくんの顔を見たくて、膝の上に載せたまま使う気のなかったオペラグラスを握りましたね。
 ナニあの顔。あの瞳。いいなあ、あんな目で見つめられたいよー。

 やっぱ相手役って必要だわ。タカラヅカはトップコンビのラヴラヴっぷりを見るためにあるのよ!と、しみじみ思った。

 キムの瞳から愛がこぼれていて。
 愛しくてならない、かわいくてならない、うれしくて仕方がない……って風にみみちゃんを見る。
 みみちゃんはただきらきらとその瞳を受け止める。
 デレてるのがキムの方で、みみちゃんはデレ方も控えめ、ってのがまたイイの。女の子の方がヤニ下がっちゃうと存在感が強くなりすぎるから。
 うれしそうにきらきらと相手の愛情を受ける、というみみちゃんに、こんなに感情移入しやすいものなのかと目からウロコ。

 フィンチとローズマリー、いいなあ。
 見ていてうれしくなる。わくわくする。きゅんとする。

 キムみみを好き、と思う気持ちと、とても素直にシンクロする。
 かわいいカップル。

 で、パフォーマンス終了。
 舞台には椅子が7つ並べられ、改めて下手袖から出演者7名が出てくる。
 このとき、1列になって出てくるわけなんだけど、先頭が演出家の酒井先生で、次がヲヅキ。
 酒井せんせとヲヅキの並びに、なんかウケる。
 なんつーんだ、リアル男ふたり……酒井さんのしょぼくれたオサーン風とあくまでダンディなヲヅキさんはチガウんだけど……しかしふつーに男!であるところが共通項で。
 なんかイイなあ……。

 
 んでこっから先は、出演者のトークになるわけだが。
 わたしにレポ機能はないので、あくまでも自分がツボったことの感想のみ。

 酒井せんせは、アイドル。

 酒井せんせが喋るたび、話を振られるたび、みんなすごく喜ぶんですけど、雪の6人。
 べつになーんにもおもしろいこと言ってなくても、「ウチの子がなんか言ってる!」と喜ぶ父兄のように。
 とくに上級生な人たち。席は離れているのに、キムまつは同時に笑うかニラニラするかしてる。
 彼らがこんなに酒井せんせを好きだとは、知らなかったよ……。

 実際、澄夫ちゃんはなんかかわいかった……。小動物で愛されキャラというか。
 新聞の4コママンガのリーマンとして出てきそうな外見。姿勢の不思議さ。キャラ立ってる……(笑)。
 もっとも、ナニ喋ってんのか、わかんねえ。
 滑舌悪いし、声小さいしボソボソ喋るし、文章組み立てるの苦手なわりに、なにかしら洒落たことを言おうと努力していて、さっぱりわかんねー。
 にこやかに話してくれているので、好感度はあるんだけど。司会者さんが要約してくんないとさっぱりわからんし、要約されても「? 今、澄夫ちゃん、チガウこと言ってなかった??」な感じだったり。

 サイトーくんはアタマ良かったんだなあ、と、『カラマーゾフな夕べ』だっけを遠く思い出す。
 演出家が喋れる人だと、ああいうイベントも可能なんだなー。澄夫ちゃんぢゃ無理だ……。
 同じ雪組なのに、まだほんの数年なのに、こーゆーファン参加の公演プレイベントで、共通の出演者はコマひとりなんだ……怒濤だなあ、タカラヅカ。

 自己紹介の他に、作品への意気込みや演じるキャラの紹介を自分でする場があったんだが、ヲヅキさんがあの「怒ってる? 機嫌悪いの?」なヲヅキさん口調で「色の濃いキャラの中で、埋もれないようにがんばります」みたいなことを言っているときに、ふたつ横にいるキムラさんが「ナイ、ナイ(笑)」とゼスチャーでツッコミ入れているのがステキでした。
 客席はおかげで爆笑。でも大真面目に正面を向いて喋っているヲヅキさんは気付いてない……それがまたおかしいという(笑)。

 ところでキムくんは、「予科生時代に花組の『H2$』を観に行って感激した」ってなことを、アツく語っていました。
 ……はい、この舞台上にはもうひとりいるんですよ、『H2$』上演時予科生だった人が。でもそのもうひとりは、初演のことなんざ、ひとっことも触れませんでした。
 だって、観てないもんな、まっつ(笑)。
 
 デジャヴ……。
 わたしこの会話、別の舞台で観たわ……。

 同期が「予科生時代に『H2$』を観に行って感激した」と語る横で、観てません、と沈黙するまっつ。
 観に行けよ!と、観客が心の中で総ツッコミを入れただろう、あの会話の流れ。
 『H2$』をアツく語るそのかと、話題に入れず曖昧に笑っているまっつ……『I got music』で見たわ、そんな84期男ふたり。

 と、遠く思い出していたら、「初演メンバーからのビデオレター」でオサさん登場して、ウケた(笑)。

 続く。
 真矢みきの美貌はハンパねぇなと思いました。

 『ハウ・トゥー・サクシード』制作発表会、初演キャストからのビデオレターを見て。

 バウホールの舞台に、大きなスクリーンが設置され、そこに映像が映し出されるわけですよ。
 ミキちゃん、純名、タモさん、タータン、ガイチ、あきちゃん、オサ様、コム姫……だっけ。
 この中ではミキちゃんがいちばん年長なのかな? 実年齢と学年の関係性、すでに忘却の彼方なんだけど。
 なのにいちばん美しいのは、間違いなくミキちゃんだー。
 初演『H2$』の映像も流れたけど、ミキちゃん、若返ってる……。
 フィンチ@ミキちゃんは、けっこうシワが……目の下とか……ハードだったんだろうなあ、トップスター人生。

 OGの中では若いはずのオサ様とコム姫がなかなか微妙な映像写りで、77期ファンとしてはちと微妙だったり(笑)。

 さて、このビデオレターを見ている間は、出演者は上手側下手側に別れて坐っているわけなんだけど。
 上手側がキムみみヲヅキ澄夫ちゃん、下手側がちぎまっつコマ。

 ヲヅキ可哀想。と思った(笑)。

 新婚カップルと同席してしまった独り身男。
 隣のみみちゃん、キムしか見てねええ(笑)。
 キムみみがふたりでくすくすやっている横で、ヲヅキさんは直立不動。反対側の隣が先生だからヘタに話しかけられないのか、孤高にいらっしゃいます。

 そしてまた、ヲヅキ氏の坐り方が。

 素顔のトーク番組ならば、男役でも女性である。しかし、ヅカメイクをして、しかもコスプレとかじゃないスーツ姿というリアル男性な格好で、どう過ごせばいいのか。居住まいの難しさハンパない。『ガラスの仮面』の「若草物語」のオーディション場面とか思い出しちゃったよ(笑)。

 ええ、スーツ姿の男6人(ひとりは酒井せんせですが)で、ただひとり膝をぴっちり揃え、女子坐りをしているヲヅキさん。
 スーツ姿の男6人(だから、ひとりは酒井せんせ)で、もっとも男らしい姿の、ヲヅキさん。

 このギャップ……(笑)。

 ちなみに、もっとも自然に男らしい坐り方をしているのは、まっつでした。

 まっつ……膝も足も開いてる……。

 他のみんなは膝は閉じてない+足を閉じる感じにしてるんですね。男役がよくやる、完全に男でもないけど女らしくない坐り方。
 ただひとりまっつだけ、膝も足も開いた完全な男坐り。ヲヅキさんだけが膝も足もぴったり閉じた女子坐り。そして、このふたりのおっさん度は、極めて高い。

 際立っておっさんなふたりがとても対照的で、ひそかにウケてました。

 で、まっつは隣のちぎくんとなにやらひそひそくすくすやっていて、とても眼福だったです。
 ええ、ビデオレターは所詮映像のビデオレターを見るモノではなく、それを見ているナマのスターたちを見るモノでしょう?
 まっつの横顔スキーとしては、これだけ長いまとまった時間ずーっと横顔を見られるなんて幸福です。

 
 そのあと、マスコミ関係者からの質疑応答……なんだけど、浜村淳オンリーステージ。ひとりで時間フルに使っちゃって、他の記者が質問する時間がなかったという。
 浜村淳が客席にいることは気付いてたけど、あの人は「マスコミ」の人だったのか。肩書きは「毎日放送の浜村淳」だった。
 さすがに彼ひとりで質疑応答を終わらせたらそれは「マスコミ関係者の質疑応答コーナー」ではなく、「浜村淳のパフォーマンスコーナー」になってしまうので、無理矢理もうひとり、「月刊ミュージカル」さんかな、記者さんの質問を入れて、制作発表は終了になった。ミュージカルの記者さんは出演者全員への質問で、実に空気の読める人だった(笑)。

 さてその浜村淳パフォーマンスコーナー。
 人の話を聞くというより、自分が喋る、ツッコミを入れる、ことを主眼とした自己主張の場なので、トークの誘導っぷりがすごいです。
 自分がした質問に対し、相手の答えを誘導するのね、自分の思い通りに。勝手に話をまとめたり、決めつけたり。
 酒井先生はうまく喋れない人だからしどろもどろ、ちゃんとした答えを出せないままに、勝手に浜村淳にまとめられて終了。
 「初演と変わった場面はありますか」「ありますけど……」「企業秘密で教えられない、そうですね」「いや、あの、少しぐらいは……」「コーヒーブレイクの群舞はありますか」「はい、ありますけど、振付が……」「あるんですね!」「いやそのだから、あるけど、振付を新しく……」みたいな。
 澄夫ちゃんに喋らせてやれよ!!(笑) 新しい場面、澄夫ちゃんはもっと喋りたそうだったのに、浜村淳が流してしまった。アンタなんのために質問してんのよー。フィンチと社長の場面が新しくなった? つっこんで欲しいところをスルーされて、ストレス(笑)。

 そして、浜村淳の次のターゲットは、バド@ちぎ。
 ちぎに質問したかったというよりは、バドというキャラがいじりやすいため、パフォーマンスしやすいという判断か。ちぎくんは真面目に答えているんだけど、浜村淳、聞いてねえ。ちぎが話していることを、自分で決めていた方向へねじ曲げていく。
「バドって早霧さん地のままでしょ?」「いえ、そういうわけでは……」「地のままですね、はい、地のままだ」「あの……」てな勢い。
 もちろん、地のままだっつーことにした方が、話が盛り上がるので客席の笑いは取れてるんだけど。それは質問者が決めつけることではなくて、ちぎくんが自分の言葉で語るところだろう。

 ちぎへの質問……というか、まさにちぎをいじって浜村淳が楽しそうにワンマンショーやっている時間がやたら長かったので、この作品の主役がちぎくんみたいでした。
 や、楽しかったけどね(笑)。
 キムくんは向かいで爆笑しているし、みみちゃんといちゃついてるし、ヲヅキさんはオトメのまま直立不動だし。
 あまりにいじられまくるのでちぎが取り乱し、隣で大笑いしているまっつになついたのが萌え。
 彼らの椅子はそれなりに間を取って設置されていて、隣の人に触れるのは「あ、触っちゃった」とか「当たっちゃった」レベルではなく、触るつもりで行かないと触れない、くらい離れている。
 のに、ちぎくんがまっつの肩にしなだれかかるよーに手を置いたのは、「憎しみ」のベンマーコンビのようで萌えでした。うわー、わざわざ触りにいったよ、下級生から触ってヨシなくらい、ふつーに気安いわけかー。と。
 それが見られたので、浜村淳GJ! ということにしておきます(笑)。

 浜村淳はあとコマに質問していたけれど、彼はどうも『ロミオとジュリエット』のあとに全国ツアーがあったのは知らない模様。コマが乳母役だった、女役だったことにこだわっていた印象。あのー、そのあとにもうちゃんと男役やってますから。
 ヒメの名前まちがったり、知識の半端さが耳につく。

 そのあとだから、ミュージカルの記者さんはまともにいい人だったなあ(笑)。

 
 まっつはよーっく見ると茶髪なんだけど、6人ずらりと並んで「あの黒髪の人」と言われるくらいには、ふつーに黒髪です。
 ブラックまっつ記録更新中(笑)。
 最近記憶の衰えが激しいなあ……と、つぶやきつつ、新人公演『美しき生涯』覚え書き。

 うれしい驚きは、疾風@りくくんの声。
 あれ、こんな声だっけ? ちゃんと男役の声になってる。
 声がイイと芝居もうまく見えるし、舞台映えするよねー。これから楽しみだわ。
 顔立ちが舞台向け……というか、個性的だから、コスプレ似合う。となみちゃんがスーツよりドレスがハマったのと同じ方程式。

 温度のある、人間くさい疾風。
 ちゃんと茶々@瀬音リサちゃんを想っているのがわかる。
 冷徹なことを言っても、まず心があって温度があって、その上で冷たいことや厳しいことを言っているらしいよ、この忍者さん。
 ついでに、銀橋で三成@愛ちゃんと「光と影」って歌われると納得する(笑)。

 さぎり@えりちゃんを口説くシーンに色気がないことと、最後たつの@うららちゃんに刺されて死ぬところに色気がないことに、本役さんの妙な得意分野っちゅーか味?に思いを馳せつつ「がんばれ(笑)」と思った。
 そーいや死ぬところの衣装、膝が見えないんだね……テルの膝見せはファンサービスだったのか……?

 
 主人公三成@愛ちゃんは、期待したほどコスプレが似合っていない気がした。何故だ。
 前回のロバート@『誰がために鐘は鳴る』は美しかったのに。ブルース@『記者と皇帝』だって格好良かったのに。
 もちろん、長身小顔さんなんで、頭身の高さは気持ちいいんだけど……あのみょーに肩幅ばかり強調した衣装の数々は、もっとアニメ的な顔立ちや芸風の人が似合うのかもしれない。

 とても素直で可愛い三成で、本役さんより説得力があった。
 というのは新公でよくあることなんだけど、人間として幼い思考や言動の主人公を演じる場合、大人である本役さんより、若者が演じる新公の方がすんなりハマって無理がないんだよね。
 キャラが中二だから、愛ちゃんが若々しく青春芝居をしていると違和感がない。
 いるいる、こーゆー男の子! 思春期ゆえの潔癖さと理想の高さで、自分でこうと目標掲げたら、それ以外はやせ我慢しちゃう子。間違ってるんだけど、本人は大真面目、自分の正義に酔っている。いい子なんだけどなあ、周りの大人がしっかりと彼のことを見て、アドバイスしてあげたら、もっと楽に生きる方法も気づけるだろうに。親とか先生とかは彼の優等生で手が掛からないところばかり見て安心して、放置しちゃうんだよね。鈴木先生がここにいたら、どんな指導をしたんだろう、と思ってしまうような男の子。(ドラマ『鈴木先生』がナニ気に好きな人の感想である・笑)

 また、三成がちゃんと光……タカラヅカの主人公らしい、まっすぐな輝きを持っていることに着目。
 裏方じゃないですよ、支えに回る人じゃないですよ、そんなややこしいことしなくても、まっすぐに真ん中で主役ですよ、な光。
 主演するに相応しい資質だね、愛ちゃん。
 この健やかな光が、派手で豪華、だけど太陽というよりは月や闇のある蒔絵のイメージの、今回の三成コスプレ群に合わなかったのかな。

 
 さぎり@えりちゃん。色気のない疾風相手に、ひとりでお色気を放っているのがツボだった(笑)。
 そう、女が悶えて見せたら、とりあえず男がうまいよーに見えるのよ!(笑) さすがクノイチ、男を騙す(「こんなに喘いでるんだから、オレ、うまいんだよな」と自惚れさせる)演技に長けている。
 えりちゃんってほんと、コスプレの人で、アニメキャラの人だと思う。
 さぎりという女がどうというより、「クノイチの悲劇ってこんな感じ」という、アニメ・マンガ的設定が彼女が演じることによって際立っている。
 寂しげな顔とか、決意の顔とか、二次元萌えキャラ系。
 タカラヅカでは良い資質だと思う。わかりやすいのはイイ。

 あとはスタイルのバランスがよければなあ。
 衣装を選ぶというか、脚は出さない方がいいというのは、萌えキャラとしては残念だなー。
 細すぎて痛々しい。蘭はなちゃんやみみちゃんの脚と共通項。
 美貌と萌えキャラ特質をさらに活かしていってほしいなー。実力は問題ないし。つか、えりちゃんアテ書きの主要な役を見てみたいっす。

 そして彼女が新公の長として挨拶をしたことに、軽く驚く。
 そうか、そんな学年なのか……月日が流れるのは早いなあ。

 
 茶々@瀬音リサちゃんは、うまかった。
 実力には問題なし? ふつうに眺めていられたし、三成とも恋愛しているのがわかった。
 でも見ていてときめかないのは、なんでだろう……。
 せっかくのヒロイン物芝居で、これだけお飾りではない重要なヒロインなのに、吸引されない。ここが舞台の真ん中!とわからない。
 ヒロイン経験の少なさゆえかな? 慣れてくればもっときれいに華やかに、タカラヅカのヒロインに見えてくるのかしら。
 日本物は難しいよね。
 新人公演『美しき生涯』覚え書き、その2。ほんとに、さらに備忘録、メモ系。

 福島さん@あっきー、きれいだった。人形みたいな顔だなあ。
 最初の七本槍せり上がりで、真ん中としての仕事は出来ていたと思う……って、あの7人の中で際立っていてくれなきゃ学年的にも経験的にもまずいわけだが、それでもちゃんときれい。
 本役さんの歌が耳の奥に響いて残っているから(笑)、銀橋の歌はきびしい。でも本役さんとはちがったわかりやすい二枚目なので、タカラヅカとしてはいいんじゃないかな。優等生主人公に嫉妬する、学年2位の努力家二枚目的っていうか。
 最後の牢獄場面は、やりすぎていない新公の方がよかった気がする。……いや、あのこってり感が本公演の福島さんならではの味で、すっきり抑えめが新公の福島さんの持ち味か。

 しかし、七本槍のみなさんって、ほんっとしどころがないというか……大変だなあ。
 本公演だと新公や別箱も含めセンターで活躍経験のある人たちだからなんとか持っているけど、新公だとなにがなんだか。
 奥方のくだりはおもしろかったし、おてもやん@りりこの独壇場はすごかったけど。

 市@れーれがうまかった。やっぱりもお、新公の中では群を抜いてうまいし、目立つなあ。
 短い出番で市の立ち位置や考え方がよーっくわかったよ。頑固でカッコイイ女性だ。

 秀吉@松風くんはふつうにうまい。ある意味準主役でしょ、いきなりよくがんばったなあ。
 で、わたしは秀吉役って、これくらい若さがあってもいいと思った。
 主人公の恋敵で準主役、助演だもの、史実なんか無視して若い二枚目でいいのよ。
 松風くん自身はちゃんと老け役としてがんばっているんだけど、やっぱり本来の若さは出てしまう。重厚さや老獪さは難しい。
 でも三成とあまり年齢差が開きすぎていない、現役感がある方が、タカラヅカの三角関係としてアリじゃないかと。
 (昔、『ささら笹舟』という作品があってな、美貌の貴公子かしげが、チャルさんよりミサノエールのより年上の役を演じていたんだよ。秀吉@ミサノエールで今と同じ感じなんだけど、ここはタカラヅカだからって、年齢無視してかしげは美青年のままだったの)

 おね@ももちもうまいので、秀吉&おね夫婦はいい感じ。
 おねには何故か謎の銀橋ソロがある(専科さんの銀橋ソロはタカラヅカ的に謎だろう)ので、歌ウマももちだったんだろうなあと。期待通りうまいのだけど、ももちの歌声って主役系の声じゃないのかな。本人がヒロインタイプかどうかではなく、歌声として。
 文化祭で「清く正しく」を独唱したときは、そんな風には思わなかったんだが……曲の違いと場の違いゆえか。

 家康@天玲氏がふつーでおどろいた。……って、ナニその感想。いやその、もっとナニか起こるかと思ってたんだ……(笑)。まともに家康をやっていたと思う。

 たつの@うららちゃんは美貌で目立つ。が、えりちゃんの妹って設定は苦しいなあ(笑)。ふたりの画風がちがいすぎて。芸風というほどのものは伝わらないため、見た目だけの話。
 えりちゃんがアニメ系で、うららちゃんが劇画系なので、姉妹と言われてもなあ、というか(笑)。
 いや、美人姉妹で眼福です。

 
 名前のある役ってこれぐらい? ……少なっ。
 あ、トニカくんモブでセンター、歌、がんばってたね。彼は目立つ顔だなあ、本公演も含め。彼もスカフェゆえにおぼえた子だ。スカフェがなくなると、若い子をおぼえるきっかけが減っちゃうんだな。
 顔でいうと、七生くんも目につく……やっぱアレ系の顔は好きだ(笑)。

 あと、じゅまくんの歌をどーんと聴きたいなあ、とモブをやっている姿を見て思った。(七本槍はモブぢゃありません! ……でも新公だと……あうう)
 どうしよう、楽しみすぎる……!!
2011/06/13

2011年 公演ラインアップ【宝塚バウホール】<9月・専科『おかしな二人』>


6月13日(月)、2011年宝塚歌劇公演ラインアップにつきまして、宝塚バウホール公演の上演作品が決定いたしましたのでお知らせいたします。

専科公演
■出演者・・・(専科)轟 悠、未沙のえる
        (星組)美稀千種、碧海りま、如月 蓮、天寿光希、妃白ゆあ、夢妃杏瑠

◆宝塚バウホール:2011年9月15日(木)~9月26日(月)
一般前売:2011年8月13日(土)
座席料金:全席6,000円(税込)

バウ・コメディ
『おかしな二人』
-THE ODD COUPLE by Neil Simon-
原作/ニール・サイモン 脚色・演出/石田昌也

ブロードウェイの喜劇王ニール・サイモンの傑作戯曲「おかしな二人」は、妻と離婚したずぼらな性格のオスカーと、「妻に逃げられた」と彼の部屋に転がり込んできた几帳面な性格のフェリックスが巻き起こす騒動を描いたコメディ。1965年にブロードウェイで上演、舞台の好評を受けて1968年に映画化、続いてドラマ化もされている作品です。演技巧者である専科の轟悠、未沙のえるの、軽妙なユーモア溢れる丁々発止の演技による抱腹絶倒の舞台が大いに見ものです。

 トド様とミサノエール!!
 てゆーか、ミサノエール主演……!

 すげーすげーすげー。
 ポスターどうなるんだろ、楽しみだー。

 他の星組出演者も豪華! どこまで俺得な公演なの。
 演出家がイシダせんせだということ以外は、好みど真ん中。でもイシダせんせのオリジナルぢゃないから大丈夫だと思いたい。……臓器移植の話と現代人カップルと老人の解説者は出ないよね?

 しかし、「専科公演」という表記をはじめて見た気がする。
 
 
 そして、月組『アルジェの男』の新公配役。

 ジュリアン・クレール@紫門ゆりや
 サビーヌ@愛希れいか

 ゆりやくんだーー!!
 もう無理なのかと思ったよ、ラストチャンスだね、良かった~。

 でもって、ヒロインちゃぴ!!
 なんてイヤッホウな配役。うれしい。

 ちゃぴの娘役転向は、予想通りってゆーか、この身長と線の細さで男役を続けても、目指すモノがかなり限られるっちゅーか難しいだろうなと思われたので、賢明な判断だと思う。
 が、なにしろわたしは彼が男の子だったからこそ注目したわけで(笑)。
 文化祭のあのときめきは稀ですよ、騒ぎすぎたので友人に「95期生を応援するって、その子が一人前になって卒業する頃、アンタはいくつになってると思うの」とたしなめられるほど。や、そこまでの覚悟で騒いだわけぢゃなかったんだが(笑)。
 もしも文化祭から女の子だったら、あそこまでご贔屓に似ているとは思わなかっただろうから、出会っていなかったかもな。そりゃまあ、音校ポスター時で「まっつに似ている」と人の口にはのぼっていたけどさー、そんなのスルーしてたから、ナマで観て驚いたんだよ、なんじゃこりゃあ?!と。
 きっとこれから顔も変わっていくだろうし、ちゃぴちゃん自身の、美しい娘役さんとしてのビジュアルを磨いていくんだろう。期待している。

 わずかな間だけでも、男役でいてくれて良かった。音校入学時は娘役だったわけだし、ほんっとにわずかな間。
 それでも、男の子でいてくれたから、文化祭、初舞台と注目して眺めることが出来た。娘役人生も、まったり眺めていくよー。
 そして、95期文化祭のあの衝撃は、思い出として大切にしておく(笑)。

 で。あの顔であの身長であの華奢さで、男役で居続けてくれたまっつを、今さらながらにすげえなと思う。
 よく転向しないでいてくれた(笑)。
 あ、まっつの場合、声が男過ぎたのか……?
 (ちゃぴとまっつの公式身長は同じです)


 宙組さんは『ヴァレンチノ』再演ですか。
 というか、中止になった公演を予定していた劇場でやるわけだから、いわゆる再演とはチガウか。
 実際、劇団からの発表文も

>宙組 東京特別公演『ヴァレンチノ』(日本青年館)公演実施のお知らせ

 であり、再演ではない。あくまでも、「公演実施」なんだね。予定がズレただけってことなのか。

 よい作品だったので、多くの人にナマを観る機会が出来たのはよかったかと。
 でも東京だから観に行けないなああ。もう一度観たいなああ。オレがここまでびんぼーでなければなああ。

 しかし、驚いたのは。
2011/06/13

宙組 退団者のお知らせ

下記の生徒の退団日の変更がありましたのでお知らせいたします。

 (宙組)   
  妃宮 さくら
     
     2011年8月19日(宙組 東京特別公演千秋楽)付で退団

 退団日変更、ってはじめて見た……。
 変更してもいいもんなんだ、劇団都合なら。

 それなら変更して欲しかった人や事情が、この春はいろいろあったのになあ。
 や、仕方のないことなんでしょうけれど。

 よい舞台を期待してます。
 らんとむさん、トップお披露目初日おめでとう!

 花組下級生時代からずっと、トップになることを宿命付けられ、正しく大きく育ったスターさん。
 さまざまな思い出を噛みしめつつ、お披露目に拍手した。

 花組公演『ファントム』開幕。

 数日前からテンション上がっているせいか、らんとむの登場する夢を見たり、今朝はみわさんとよっちが登場する夢を見たりしてました……そしてテレビを点けたら、まっつがらんとむにえらそーに女のことで指図していて驚いた……。
 スカステはらんとむDAYなのね。『琥珀色の雨に濡れて』新人公演が流れていたわけですが、らんとむ、変わらないわ……新公学年からこの出来あがりっぷり。まっつのうまくなさが目立つったら……ゲフンゲフン。

 チケット完売、立ち見も鈴なり、盛況なお披露目初日。
 キャトルレーヴのプログラム売り場に商品がなくなってたりと、はじまる前からわくわく。
 プログラムが完売したということではなく、売れるスピードが速すぎて、商品の補充が間に合ってない状態なの。プログラムを陳列しているあの台が、からっぽになってるのよ? 「GRAPH」は横に積み上がってるのに。
 で、なんか宙組さんがすげー人数現れてました。席はバラバラ、いろんなとこに、あちこちに、あっちもこっちも宙組さん。

 塩田せんせの指揮もステキ、オーバーチュアから盛り上がり。

 で。

 えーとえーと。

 らんとむさんは、とてもらんとむさんでした。

 エリック@らんとむは、とてもらんとむだった……(笑)。
 そりゃあもお、いろんな意味で。

 わたしは、すごく運動神経の良さそうなファントムだ、と思った……。
 インドアタイプぢゃないっすね、彼。多分、オペラ座の外にふつーに出没していると思います。
 だって花束持って、ビストロで成功したクリスティーヌ@蘭ちゃんに会いに行こうとしたくらい、ふつーに外で生活してそうだ。
 いやあ、あの「いそいそ」した感じがたまらん……なのにクリスティーヌはフィリップ@みわっちとデートに行っちゃうし……エリック可哀想!!
 あと、カルメン場面の軽快さ……脳裏に焼き付いているのがオサ様なので、動きの違いにツボる。

 そしてなんつっても、クリスティーヌに「顔を見せて」と操られる……ぢゃねえ、お願いされる場面のらんとむさんが、大変正しいらんとむさんでした。あの、動き……!(震撼)

 で、わたしには今のところ、蘭ちゃんとの相性がいまいちに見えたんだけど……。
 フィナーレではそんなことなかったので、芝居の中、そしてこれはエリックの問題というより、クリスティーヌ側の問題な気がする。

 クリスティーヌがあんなに難しい役だとは、思ってなかった。
 や、歌が難しいのはわかってるけど、役としては若い可憐な女の子ならその持ち味とビジュアルだけで説得力になるので、その後押しと共にけっこーイケるんじゃないかとか、勝手に思っていた。
 なにしろ彩音ちゃんのトップお披露目作品だったんだし。歌が壊滅でしかもお芝居も苦手、『二都物語』のときなんか「標準語を喋れるだけの女の子」とまで思った棒読み大根ぶりだったあの彩音ちゃん……。『二都物語』に比べれば格段の進歩だったとはいえ、やっぱりまだそれほど芝居がうまいわけでもなかった彼女でも、可憐な美少女という持ち味だけでなんとかなっていた、と。

 蘭ちゃんは若くて可憐な美少女なんだけど……なんつーんだ、ファンタジー界の住人ではなかった。もっと現実的というか、リアルな女の子だった。
 だもんで、ファンタジーな設定のファントム氏をそのまま受け入れるには無理がある気がした。

 なんかひたすら微笑んでるんだけど、彼女がナニを考えてナニを感じて微笑んでいるのか見えない……。
 だもんでときどき、こわかった。
 最高にこわかったのが「顔を見せて」と歌うところ……妖術でも掛けているかのような……アレ慈愛の表情なの? 張り付いたままでこわかったよ……らんとむがその歌に合わせてぴくんぴくんしてるし。

 なんか今回蘭ちゃんの芝居が誰とも合っていない気がした。みわさんとの並びもなかなか異次元……って、コレはみわっちにも問題あるんだけど(笑)。

 でもフィナーレはキュートで魅力的な、いつもの蘭ちゃんだった。
 中村Bはいつも、娘トップに娘役率いて登場させるよねええ……すげーいつもの中村Bショー的フィナーレだった。

 キャリエール@壮くんは……えーっと、親子銀橋は良かったっす。
 最後にらんとむの頬を指でぬぐうところなんか、この天然タラシ男!!と思った(笑)。同期男タラシてどーすんだっ。

 ただ、いろいろ首をひねった。
 キャリエールってこんなに目立たない役だっけ?
 スター仕様な演出をされていた初演の樹里ちゃんはともかくとして、再演のゆみこと出番も演出も同じだろうに、何故かとても脇の役に思えた。
 シャンドン伯爵が2番手で、キャリエールは番手外の役なんだなって感じ。
 もともと押さえ役、支え役を得意としたゆみこと、そーゆー人に支えられて真ん中でぴかーっと光る役を得意とする壮くんの、芸風の違いゆえだろうか。

 しみじみ、キャリエールってえりたんの魅力を全開に出来る役ではないんだなと。
 えりたんのえりたんらしい輝き、あのトンデモな力を発揮できるのは、こーゆー押さえに回った役ぢゃない。
 もちろん役者なんだからいろんな役を演じるべきだ。しかしここはタカラヅカ、脇の人はそれでいいけど、真ん中寄りのスターはいわゆる「アテ書き」とやらでそのスターがもっとも魅力的に見える役をもらうもの。
 えりたんはなにをやってもえりたん!な、とてもタカラヅカらしいスターさんのひとりなので、ちょっと残念だ。

 ビジュアルはすばらしいですよ、ヒゲかっけー。

 ビジュアルといえば、今回もっともツボったのは、音楽教師@さおたさん!!

 かっけーーっ!!

 油断してた。
 めーっちゃ油断してた。
 だもんで登場するなり、目ェ剥きました。ナニあの美男子。
 好みど真ん中。

 音楽室の壁に貼られていそうなロン毛にヒゲ姿で、超絶美中年。
 そして気品。
 ふつーにおだやかにしている紳士なんだけど、音楽指導中とか、どことなくエキセントリック。
 この人絶対貴族出身の芸術家だわ。

 幕間に友人とさおたさんビジュの麗しさについて盛り上がるとは思ってなかったよ……なんたる伏兵。

 
 初日なので、メインどころの人々に感じたことなんぞはきっと、これから変わっていくと思う。
 彼らが変わるのか、わたしが変わるのかはともかく。
 だからこそ、記憶に留めておきたい。
 
 役替わりも楽しみだしなっ。

 んで、きらりの復活を待つよ……。あああ、きらり……。
 初日の素直な感想は、

「『ファントム』ってほんとーに、変な話だ」

 でした。
 『ファントム』再々演観劇にて。

 初演もそれなりの回数観てるし、再演なんかアホみたいな回数観てました。
 正直なとこ、わたしの人生でもう二度と観なくていいや、なくらいは、すでに観た。
 見飽きた物語を再度同じ花組で観て……しみじみ思った。やっぱ変な話、と。

「そのとき私はすでに結婚していたのだー!!」(がーーん)とか、客席から総ツッコミだよなあ。
 まあソレはさておき。

 なまじよく知る作品だからこそのツボもツッコミどころも満載。

 なにしろ幕間でワクテカ話題にしていたのが「母子像の絵はあるのか?」だったりするしなっ。
 初演であまりのひどさに伝説と化す勢いだった母子像イラスト。赤ん坊の手が母の髪の毛から生えているホラー絵。素人が描いたとしか思えないヘタを通り越したよーな絵を商業演劇で使う不思議さが、観客の話題のひとつだった。
 そこまで不評だったのに、再演でも母子像イラスト健在。あれはVISA社長直筆絵を元にしたとかで、援助の見返りとして使わざるを得ないのでは? とまで客席でささやかれた、ひっでー絵。
 再々演でも使うのかしら、どんな大人の事情があって使わなければならないのかしら……? と、ワクテカしていたんですが、なかった。
 使わなくてはならない事情があるわけじゃないなら、何故初演と再演で使ったんだ??
 あってもなくても、謎は深まる……(笑)。

 
 それはともかく、キャストの話。

 フィリップ@みわっちが、大変イイみわっちでした。

 みわさん……(笑)。

 今回の『ファントム』、初日限定ですが、キャストの持ち味がそれぞれバラバラで、大変愉快でした。

 芝居が合ってないというか、みんな好き勝手演じていてすごく面白い。

 ファントム@らんとむは、子ども芝居と自分の持ち味とで模索している印象。母性本能くすぐり系耽美青年だったたかこエリック、無垢な少年で設定年齢低すぎのオサエリックともチガウ、どっちつかずさ。
 彼はまともな人で知性も分別もふつーにありそうなので、子ども喋りが落ち着かない。
 恋に暴走するようになると、ハートフルな持ち味で馴染んでくるんだけど、最初の駄々っ子あたりは……違和感。

 対するキャリエール@えりたんは、彼の得意技の駄々っ子さややんちゃさを封じられ、固く地味な印象。こんなにモブに埋没しているえりたんも、キャリエールという役も、はじめて見た。

 ヒロインのクリスティーヌ@蘭ちゃんは、歌を一生懸命歌っていることが伝わるのみで、クリスティーヌとしての人間性が見えない。
 リアルで等身大の女の子に見えるため、仮面の先生を素直に受け入れたり、他人の言いなりになったりするように見えない。もっと自我と知性で、自分で行動しそうな女の子だ。母性や包容力は感じられない。

 そして、シャンパンの王様、フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵@みわっち。
 さすがタカラヅカの申し子、代表的花男。
 大芝居ぶっちぎり。
 植爺芝居がハマるだけのことはある、すごい型芝居っぷり。
 ひとりだけ時代劇なたたずまいと喋り方。

 伯爵様なの、パトロン様なの。
 他の人たちとは格がちがうの。

 まとぶんがおぼっちゃまだったあのフィリップ役が、けっこうな大人の男なの。
 キャリエールと友人だというのがよくわかる、同世代だよね? キャリよりちょい若いかもしんないけど、あの貫禄と浮世離れさは絶対若造ではないよね?

 だからそんな伯爵様がクリスティーヌに夢中になるのが、なかなか香ばしい(笑)。
 30代男が女子高生を口説いてる感じ。
 そりゃクリスティーヌも相手にしないわ……「おとうさんと同じくらいの年齢の、寛大なパトロンさん」と思ってスルーしてたんぢゃ?
 蘭ちゃんの演技が現代っ子風なので余計に、大芝居のシャンドン伯爵と不協和音。
 キャシー@『サンタモニカの風』(ん?)と、ジェローデル@『ベルばら』がデートしてるみたい……。みわっちがジェローデルを演じたらこんな感じかなと思った、シャンドン伯爵。

 そして、1幕の終わり、怪人に連れさらわれるクリスを思って、「クリスティーヌ~~っ!!」と絶叫するとこなんか、ものすげーイイみわっちぶりですよ。あの大芝居!! くどいわ濃いわ、たまりません。

 銀橋のとーとつなソロも、『ベルばら』系大芝居ソングで、みわっちアテ書き?! 外国の作曲家さんなのに、『ベルばら』の映像見て勉強してくれたのかしら?! と、白目を剥きたくなるクオリティだし。

 面白いです。
 4人とも芝居も持ち味もバラバラ。すげー面白い。
 特にみわっちのトバし方が半端ナイ。

 ここにディズニーの悪役のようなカルロッタ@いちかが加わる。
 いちかが、すげーうまいの。
 この人ほんとに芝居がうまいんだ、って感心した。
 
 ショレ@みつるはヒゲの色男。でもいちかに負けてる……届いてない感じ。役の大きさ的にそれは仕方ないかもしれないが、これからに期待。

 文化大臣@ふみかが、色男。
 えええ、色男でイイの? だってこの間はまりんで、三枚目だったじゃん……。
 胡散臭い二枚目ぶりが余裕。ふみか得意だよね、こーゆーの。
 どさくさまぎれにヴァレリウス@さあやとイイ感じになってる? 組んで踊ったりスキンシップしてるよねえ?
 まさか文化大臣にそんなドラマが……(笑)。

 ルドゥ警部@まりんが、優秀そうに見える! 空気を壊してない!
 ……すみません、みおさんのイメージが強すぎて、花組が誇る芝居クラッシャーのみおさん演じる警部が、どんだけ空気を壊して乱入突入ドタバタしていたかを改めて思い知らせてくれました。
 ふつーに演じることができる役だったんだ、警部。
 そして警部がまともに見えるだけに、キャリエールの三文芝居を信じるのが違和感。
 エリックをかくまったキャリエールが「ここは私が」と警官たちを遠ざける場面、キャリがすごくわざとらしく「ここに怪人がいますよ」と言わんぱかりに両手を広げて後ろを隠す演出に変わっていた。キャリを共犯者だとわかっていて、泳がせて急襲する作戦だと思ったよ……警部絶対気付いてると思った……。
 警部がふつうに優秀だと、演出的に変なんだということも、よーっくわかった(笑)。

 そーいやキャリがエリックの肩を抱いて隠れる場面もなくなってたなー。アレってファンサービスだったはずなのになー。オサゆみのときなんて、確実にオペラがざっと上がっていたのに。

 みんなの芝居がかみ合う日が来るのか、それはそれで楽しみだし、このままでもなかなか楽しいと思う(笑)。
 どうしても、定点観測。

 染みついた習慣はそう簡単にぬぐい去れるモノではありません。
 自分でも意識してなかったけれど、『ファントム』がいざはじまると、わたしの視点は一箇所に固定されるのです。

 リシャール@だいもんに。

 だいもんは大好きだが、本公演で彼だけを見つめ続けることはかつてなかった。
 なんでそんなことになっているかというと、そりゃもうひとえに、彼が今回演じている役が「リシャール」であるということに尽きるんだ。

 はい。
 5年前わたしは、えんえん『ファントム』を観ていました。
 何回観たのかおぼえてないし思い出したくもないが(東西合わせて20回くらい?)、いつも必ず同じモノばかり見てました。
 すなわち、リシャールという名の、オペラ座団員を。

 カラダが覚えてる。
 この場面は、ここを見る。この音楽ならば、こっちを見る。
 ……おそろしい……染みついてるよ……。

 つーことで、最初のパリの場面からリシャール@だいもんと、セルジョ@まぁくん、ラシュナル@あきらに釘付け。
 どうやらビスコはナイみたいだ。これからなにかしら使うようになるのかな。

 オペラ座では、謎のローマ兵。
 うぞーむぞー、ただのモブでしかない扱いに胸熱。
 そうそう、そうよね、台詞もないのよね。背景のひとりなのよね。

 リシャールのはじめての台詞はそのあとの、ファントム@らんとむからの手紙をキャリエール@えりたんに渡すところ。
 ええ、おぼえているわ。貴重な台詞よ、「あなた宛です」とたったひとこと。

 が。
 リシャールに、台詞はなかった。
 手紙を拾ったリシャールは、宛先のキャリエールにではなく、メルシエ@さおたさんに渡す。
 そしてメルシエさんがキャリに「あなた宛です」と渡す。

 だいもん、台詞削られてる……っ!!

 き、貴重な台詞が。
 ぶっちゃけ、ふたつしかない台詞の片方が、削られてる。

 目が点。
 だいもんって、花組路線スターだよね? 5年前のまっつよりプログラムの扱い上だよね?(3番手みわっちの次のページに3人で1ページ写り、インタビューも掲載。ちなみに当時のまっつはまったくの学年順、まりんたちと一緒に脇役として5人で1ページ)
 何故、だいもんの台詞を削る……? むしろ増やして当然の子じゃ……?

 あとにもっとオイシイ演出があるのか、別のところで台詞を増やしてもらっているのかと思ったら。

 群舞センター、削られてる……っ!!

 「カルメン」場面、赤い闘牛服を着たリシャールが、群舞センターで踊る場面があったんだ。
 リシャールとラシュナルとセルジョがそれぞれ団員の花形として踊る場面。それぞれ見せ場があるんだけど、そのトップバッターがリシャール。
 最初だから驚いたんだ、えええまっつが派手な衣装で男たちのセンターで踊ってる?!と。
 そのあと同じ振り付けで下手側からラシュナル登場、最後にセンターからセルジョ登場で、別にリシャールひとりの見せ場じゃないんだが、最初だからとりあえずその一瞬だけは「群舞センター?! えええ?!」とうれしい驚愕を得られたし、短い間だけど確かに逆三角形の頂点で踊るわけだし。
 
 だいもんが同じ衣装を着ていたので、安心して眺めていたんだ。
 そしたらこの「カルメン」場面は、再演とはがらりと変えられていた……。

 白軍服+スターブーツのセルジョが最初からセンターで踊り、赤闘牛士服のリシャールは上手から、紺軍服のラシュナルは下手から、ふたり同時にバックダンサーと共に登場……リシャールとラシュナルふたり同時登場だし、センターはずーっとセルジョだし、一度もリシャールはひとりにならないし、センターにも立たない。

 なんで変えちゃうかなあ、導入部。
 群舞センターのだいもんが見たかったし、あきらが見たかったよ……。あきらなんか、こんな機会でもないとなかなか三角形の頂点位置でひとりチガウ衣装で踊らせてもらえないと思うのに……。

 新しくなった「カルメン」は、今までよりずっとわかりやすくなっていて、それはイイと思っている。
 白軍服を着こなしたまぁくんのかっこよさは半端ナイ。てゆーかセルジョ役のまぁくんマジかっこいい。センターパーツ、センターパーツ! イイよーイイよー、いつもそーゆービジュアルでいてくれよお。
 カルロッタ@いちかが、相手役のセルジョではなく、ファントムを選んでしまう、それくらいファントムがかっこいいのだという解説にもなっていてイイ。
 や、らんとむはもちろんかっこいいけど、作中では「醜い」と言われる役でしょ。顔の痣さえ見えなければ本当に美形なんだという証明ですよ。そういう「解説」は作中にあってヨシ。

 だから展開と意図はいいんだけど、導入部分は別に変えなくてもいいじゃないか。
 これからの花組をにぎやかす、若手の美形ふたりをセンターに立たせるぐらい、減るもんぢゃなし。

 リシャールの見せ場、イロモノ妖精王のソロではなく、ど真ん中ストレートに美形でカッコイイ見せ場が、削られていることに衝撃。

 そしてこの新しい「カルメン」では、リシャールは三枚目役なんだ……。
 いや、セルジョにしろラシュナルにしろ、団員たちはみんなファントムに翻弄され、きりきり舞するわけなんだけど、その姿が再演時よりもさらにコミカルに、ギャグっぽくなっている。セルジョはまだ二枚目系として描かれているけど、リシャールはお笑い一直線。
 リシャールはカルロッタに吹っ飛ばされてギャフンとなってたり、してる……。

 えーと。これは、オイシイ、のか?
 ギャグで笑われる役っつーのは。
 そういう目にあって笑われるのがひとりだけならともかく、ラシュナルや他のモブたちと同じよーに、十把一絡げ的にへっぽこ扱い、ってのは……ただきれいでかっこいいより、オイシイ、の、か……?

 ぼーぜん。

 もうひとつの台詞は削られてなかった。
 ビストロで「フェアリークイーンのですか?」と一言。

 ……他に、リシャールくんに台詞ありました? 一本モノ2時間半で、モブとしてマイクなしで勝手に喋ってるんじゃなくて、台本に書いてある台詞って、ナニかありました?

 もちろん、リシャール最大の見せ場、オーベロンのソロはありましたけどね、ほんのわずか数小節の。

 1幕も終わりってときに「はぢめて、歌ウマさんの歌声だわ!」と感動させてくれる、見事な声でした。……主要キャラに歌ウマいないもんだから……(笑)。
 しかしほんと、ここの歌は一瞬で終わる。
 だいもんの見せ場も、一瞬で終わる。

 2幕は見せ場皆無、ほぼ出番無し。名もなきコロスと団員モブのみ。

 だいもんランクで、コレだもんよ……だから嫌なんだ、海外ミュージカル。
 タカラヅカなのに、スターがこんな扱いになる。
 それで名作なら仕方ないなと思えるけど、『ファントム』って別に名作ぢゃないし。変な話だし。

 当時のまっつはもともと台詞が2つ3つしかもらえない人だったので、オーベロンのソロがあるだけでもめっけもんと喜んでいたし、なによりまさかの一瞬群舞センターでテンション上がりまくりだった。
 しかし、今の立場のだいもんでコレっつーのは……花組プロデューサーはナニをしたいんだろう。
 だいもん以下は、もちろんそれ以下の扱いなわけだしね。新公がある子はまだいいけど、新公卒業したスタークラスで台詞1個とかナシとか、初演のたかはな時代宙組だからこそ許された配役と作品だよなあ。
 溜息。

 まだフィナーレでメドレーがあるからいいのか……。
 フィナーレはふつーのショーの中詰めっぽくてイイよね。歌い継ぎメドレーがあって、スターの顔見せしてるし。

 
 で、ついでにまっつ誕生日おめでと。(ついでっ?!)
 再々演『ファントム』の初日感想いろいろ。1回じゃとても見切れない。見たいところが多すぎる。

 なんか全体的にセットや画面が豪華な気がした。
 って、単に過去2回が安っぽすぎたせいかしら。それに慣れてしまったから、「今回なんか豪華っぽい?」と思えたのか。
 衣装にあまりお金を掛けなくていい(使い回し)分、他のところに使えたとか?

 最初のカーテン前の背景に使われる、そのカーテンにロウソクは何本描かれているのか。ただのイラストでなく明かりちらちら、そんなとこもちょっと豪華?(笑)
 しかしわたしは「なんだろうコレ、なんかに似ている……そうか、迷図だ」とか、関係ないことを思った。入口の矢印が右端にあって、左端にゴールがある。指でたどりながら、行き止まりとか回り道とかしながら、ゴールにたどりつくアレ。
 ほんとにどうでもいいことを……。

 オープニングの黒鳥さん@ゆまちゃんを見て、「ああ、この谷間も見納めなのか」としみじみする。白鳥さんから黒鳥さんに変わるとその分衣装の露出が上がるのかな、谷間がよく見えた……。

 1回こっきりの観劇では従者を見ているヒマがない。マメの幻影を見ている場合か。次はもっと従者眺めるんだー。
 立ち位置的にいちばんいい従者くんであろう鳳くんばかりが目に入るし、輝良まさとは放っておいても絶対目に飛び込んでくる。で、ところどころで「かっこいい人がっ」と思うと日高くんだったりする。
 その日の朝、何故か夢によっちが出てきたので、「よっちが夢の中と髪の毛がチガウ……!」と、これまた関係ないことに感じ入る。夢の中のよっちはド金髪のベリーショートで、前髪をすごい気合いの入った角度で立たせてたのだよ(笑)。

 ここ数日で、エルモクラート先生と旅芸人みきちぐのデート(ふたりで食事してた)と、派手派手スーツらんとむ(単体登場)と、みわっちと娘役さんが買い物している横を素通りするよっちの夢(ナニこのシチュ?)を続け様に見たわたしはなんてヅカヲタ脳。
 そして贔屓はカケラも夢に出てきてくれない。

 ファントム@らんとむ、キャリエール@壮くん。
 このふたりに対し、なんかとても素直に「今回の『ファントム』って、美しい」と思った。
 なにしろほら、脳裏に焼き付いているのが5年前のオサゆみだから。オサ様のあのビミョーなファントム……誰も彼もが「アレ、いいの……?」とおそるおそる口にした、ヅラの似合わなさ……(笑)。ゆみこキャリエールは年喰い過ぎっつーか、枯れまくってたし(オサ様の父親役ぢゃ仕方あるまい)。
 ソレに比べ、らんとむさんもえりたんも、なんてストレートに美しいんだろう!!
 これぞタカラヅカ。
 怪人だろうとイケメン、おっさんだろうと美形。

 ところで、地味にショックを受けているのが、ふみか×だいもん再びぢゃなかった!ってことなんですが(笑)。

 5年前は、文化大臣@まりんとリシャール@まっつは、なにかとスキンシップ多めでした。いつも一緒、気がつくと横にいる、触るな抱きつくな!てな。
 リシャールがいちばんよく絡む相手って、セルジョ@みわっちでもラシュナル@そのかでもなく、よりによって文化大臣かよっ?!
 いやそのぶっちゃけ美しくない絡みなので、とまどってました(笑)。

 それが今回、文化大臣@ふみかじゃないですか。
 しかも、今回の文化大臣は色男系じゃないですか。
 ふみかがふみからしい二枚目ぶりで登場したとき、期待したんですよ、あのビジュアルでだいもんと絡むのか!!と。
 そしたら。
 ぜーんっぜんっ、絡みませんでした。
 立ち位置違いすぎ、そばにも寄らない。

 なんなの、文化大臣×リシャールっつーのはまりんとまっつ専用の演出だったのかよ。それって誰の趣味? 中村Bなの? なんつーマニアックな(笑)。

 ファントム係ことメグたん@仙名さんの落ち着きっぷり。
 メグって若手娘役の花形役だと思ってるんですよ。初演がアリスで、再演がきらり。とびきりのかわいこちゃんが演じる役。
 仙名さんはたしかに美少女なんだけど……なんなんだ、あの芸風の貫禄は(笑)。
 メグたんがあまりに易々で軽々な感じ……。震撼。

 ベラドーヴァ@くまくまもまた……。
 ごめんよくまちゃん、キミが満面の笑みでせり上がってきた瞬間、「こわっ」と思ってしまった……。
 くまくまは美人だし歌ウマなんだけど、可憐さとか儚さとかとは、対極にある持ち味の歌姫だよね。
 くまちゃんすげーや、と感心して眺める。

 ところでこのくまちゃんの相手役、若き日のキャリエール@まぁくん。カツラが、えらいことに。

 今回のまぁくんは、セルジョ役が、すげーかっこいい。
 長年見ていなかった、「似合う髪型のまぁくん」がそこにいた。
 何故か彼はずっと、その特徴的な顔を強調するようなリーゼントだのオールバックだのばかりしてきた印象。
 ふつーの青年の髪型だと、こんなにかっこいいのに。
 等身大の男の子でいられるセルジョ役は、センターパーツで素直にかわいこちゃんビジュアル。
 白い軍服とか似合いすぎですよ。うっわー、王子様だあ、と思う。
 群舞の中でも、そのスタイルで目立ちまくるし。やっぱ華やかだなあ。……劇団ももう少しプロデュースうまければなあ、こんなにかっこいいのに似合わない役とか過剰なひとりっことかで埋没させて……と、口惜しくなる老婆心。

 そのセルジョ役との差別化なのか。
 セルジョ=とても似合うかっこいい髪型。その差別化として、若キャリ=めちゃくちゃ似合わないひでー髪型、ということなのか、まぁくん?! たしかに同一人物とは思えないくらいアレな感じになってるけど、ほんとにソレでいいのか、まぁくん?!
 初見のライト客に、モブのセルジョは「あ、なんかかっこいい人がいる」と思っても名前がナイも同然だから覚えてもらえないけど、若キャリだと「あ、あのイケてない人」ってモロに記憶に残されちゃう役だぞ?!

 ……翌日には髪型が変わっていたそうですね、若キャリ。
 やっぱり誰が見ても変だったんだ、アレ……(笑)。

 バレエ教師@じゅりあがかっけー。黒いドレスの迫力。クールなじゅりあってなんか新鮮。

 ジョセフ・ブケー@タソは、死体がさすが。
 しかしタソくん、モブにまじっているときもけっこー目立ってると思うんだがキミいいのか?(笑)

 あ、そーいやエリックくんの地下の楽園で、せり上がってくるのはピクニックセットだけぢゃなかった。従者も一緒。……やっぱピクニックセットだけってのは、悪目立ちだったよなあ(笑)。
 この森の美術がけっこう変わっていた。のを見て、キムシン演出『ファントム』を観てみたいと思った。
 この楽園なんか、すげーシュールなビジュアルになるんだろうなと(笑)。
 現在上演されている再々演『ファントム』を離れて、わたしの「こんな『ファントム』が観てみたい」語り。
 原作がどうだからどうだとか、過去に舞台・映像になったものがどうだったからどうだとかいうことではなく。

 あくまでも、タカラヅカの『ファントム』で、わたしが、観てみたいと思うものを語る。

 「いい人」の話ではなく、「怪人」の話。
 誤解されちゃって可哀想ないい人だからヒロインに愛されるのではなく、いろいろ歪んで間違っちゃってるけど魅力的だからヒロインに愛される主人公が見たい。

 そんなのヅカぢゃねーってことになるのかもしれんが。
 でもキャリエールを「いい人」として描くより、「間違ってるんだよ、ソレのどこが悪いんだ」として描いてくれる方が、すっきりする。
 初見ではストーリーを知らないからキャリエールのやっていることも「ふうん?」と観ていられるけど、ネタバレしたあとでは無駄に難易度高いよね、彼のしたことを「仕方なかった」とか、彼を「いい人」「いい父親」と思うのは。

 キャリエールさんのしたこと。
 既婚者でありながら、そのことをナイショにして少女とつきあい、妊娠させた。結婚できると信じていた少女は失踪、心を病む。堕胎薬の影響だかで生まれた子どもは奇形児、少女は狂ったまま早世。
 醜い息子に仮面を与え、オペラ座の地下へ幽閉。自分が父だともすべての元凶だとも告げず、息子を「オペラ座の怪人」に仕立て上げ、自分は社会的地位も信頼も失わずにずーっと見守る。

 これで最後の銀橋で「愛する息子」とか歌われても。

 もちろん、キャリエールさんにはそうせざるを得ない事情とか時代とかしがらみとかあったんでしょーけど、描かれていないので「ナイ」と判断。
 こんだけ変な人だとわかって観ると、やっぱ『ファントム』って変な話だと思える。

 キャリエールを「いい人」にしたいなら、それを納得させてくれるくらい「仕方なかった」ことを教えてもらわないと。
 やっていることがひどすぎて、今のままでは「いい人」になれない。
 なのに「いい人」と描くから、混乱する。

 やってることがひどいんだから、それなら素直に「ひどい人」にすればいいんだ。
 ひどい人、間違った人だけど、魅力的なのだ、と。

 これは、オペラ座の怪人こと、エリックにも言える。
 こんなひどい人に育てられたんだから、無理に「いい人」にしなくてもいい。
 ひどいことをする「怪人」だけど、抗いがたい魅力のある男にすればいいのに。

 いや、明らかにひどいのはキャリエールだけなので、悪魔に育てられた天使設定もアリだとは思うけど。
 エリックの場合は、天使と悪魔は紙一重だと思う。どっちもアリだが、結局根っこは同じになるというか。

 
 初演の『ファントム』は、ホラーテイストであり、エリックもまた「可哀想ないい人」ではなく「歪んだ怪人」だった。ヅカなのでいい人寄りに描いてはいるけれど、まだちゃんと怪人。

 従者は街のホームレスで、エリックが食べ物を与えないと死んでしまう人間たちではなく、現実に存在するのかどうかわからない怪しい存在だった。舞台だから役者が演じているだけで、映像作品なら実態を持たないのではないかと思えるような。
 エリックのそばに仕え、彼の意を汲んで動いていたけれど、エリックもキャリエールも従者の存在には言及しない。
 エリックはまさに「ひとりぼっちで」オペラ座の地下に住んでいた。

 そしてエリックは、殺人者だった。
 侵入者ジョセフ・ブケーを殺す。当然のこととして。
 今平気で人を殺す彼は、これまでも、そしてこれからも、平気で人を殺すのだろう。何故なら彼は「怪人」であり、オペラ座の地下に君臨する王、地上のわたしたちの法の外側に存在する者だからだ。
 彼をわたしたちの法で裁くことは出来ない。

 また、そんなエリックが少年じみた喋り方をしても、ピュアとゆーよりは歪みを感じるだろう。殺人平気でぼくちゃん喋りですよ。
 クリスティーヌを案内する地下の楽園……「ぼくの美しい森」とやらが、ほんとうはかなり怪しいものだったらしい。
 狂ったエリックの目には、なにやら美しいところに映っているらしいが、クリスティーヌには「うわ、この人やばい」としか見えなかったんだろう。盗撮写真の切り抜きが壁一面に貼られた部屋に案内され「こんなに君を愛してるんだよ」とどや顔で男に言われたのと同じくらい、同意を求められた彼女が苦しそうに頷いていた。

 いい感じにこわかったんだけどなあ、初演『ファントム』。
 だからこの路線を貫き、もっと「歪んだ愛」を突き詰めて欲しかったんだ。
 エリックがどんだけ間違っていても歪んでいても血塗れていても、彼を「天使」と描くことは可能だったから。
 善悪について教わっていないんだもの。蝶の羽根をちぎって遊ぶ子どものように、純粋であるがゆえに恐ろしい存在であることはできた。

 だから再演ではそっち方面の進化を期待したんだがなあ。
 所詮はタカラヅカってことですか? 大衆演劇だからですか?
 ファントムは「いい人」になってました。がっくり。

 行き場のない従者たちを養ってあげるイイ子で、オペラ座の地下で大所帯で暮らしているそうです。殺人なんてとんでもない、ブケーは勝手に死んだんです。それも、可哀想なエリックの顔を見て、誤解して差別して。なんて可哀想なエリック! ぜんぜんひとつも悪くないのに、見た目だけで誤解されて!!

 おかげでエリックは「狂っているから少年喋り」なのではなく、「本当に身も心も子ども」になってました。
 またキャリエールがエリックにベタ甘でなあ……。甘やかしすぎだよおとーさん……。

 そしてクリスティーヌは母性のカタマリ、お子ちゃまエリックが惚れるに相応しいときたもんだ。

 タカラヅカだから、主人公は「いい人」でなきゃダメなのか。
 だから「怪人」ではなく、全部誤解、悪いのは他の人、エリックは悪くない、可哀想! でなきゃいかんのか。

 いや、ソレはそれで楽しく観ましたが。

 単に方向性として、せっかく「オペラ座の怪人」という、歪んだ男が主人公の物語を持ってきておきながら、「オペラ座の怪人」でなくてもイイじゃん、な「いい人」の「お涙ちょうだい」に着地しないといかん、つーのは残念だなと。

 オサ様を擁してなおそんな改変をされた『ファントム』ですから。
 彼よりさらに前向きの明るい力を持ったらんとむ氏を主人公にする以上、ホラー寄りに戻るはずもなく、歪んだ愛の物語になるはずもなく。

 とても人間くさい……オサ様エリックよりさらに地に足のついた人間くさいエリックと物語『ファントム』に、「ああ、やっぱりなあ」と思ったのでした。

 いや、ソレはそれで楽しく観ましたが。

 タカラヅカの『ファントム』は、これから何度再演されても「いい人」路線「健康」路線なんだろうなあ。
 仕方ないよな。それが「タカラヅカ」だもんな。
 でもって、個人的な『ファントム』語りの続き。

 現在上演中のものも含め、どの公演をも否定する意味ではなく、過去2公演もとっても楽しんだし、現公演も楽しむ気満々であるがゆえに、『ファントム』という作品について思うところを記す。
 実は以前も書いたけれど、今回も同じことを思ったので、再度記す。

 
 キャリエールさんのしたこと。
 既婚者でありながら、そのことをナイショにして少女とつきあい、妊娠させた。結婚できると信じていた少女は失踪、心を病む。堕胎薬の影響だかで生まれた子どもは奇形児、少女は狂ったまま早世。
 醜い息子に仮面を与え、オペラ座の地下へ幽閉。自分が父だともすべての元凶だとも告げず、息子を「オペラ座の怪人」に仕立て上げ、自分は社会的地位も信頼も失わずにずーっと見守る。

 さて、このような行動を取る人を、フィクション界で「是」とするのに必要な要因は、なんでしょうか。
 現実なら完全アウト、どんなことがあっても許されることぢゃないが、『ファントム』はフィクションなので。ええでも、フィクションだとしても、さすがに彼の行動はひどいです、ふつーならアウトです、でもなんとか「仕方ないね」と観客を思わせるだけの理由が必要です。

 わたしは、「愛」だと思います。

 今の『ファントム』がいろいろ誤魔化した上で描いている愛じゃないです。
 誤魔化しナシで真っ向勝負、「仕方ない、仕方ないよソレは!」と全部答え合わせしてくれるだけの、究極の愛です。

 すなわち。

 キャリエールはエリックを愛していた。自分ひとりだけのモノにしたかったから、地下に幽閉した。

 ザッツ監禁愛。

 エリックの幸福とか人権とかは関係ない。
 あるのはエゴのみ。
 自分のためだけに、エリックを閉じこめた。

 誰にも見せたくないから、ホームレスを拾ってきたりしない。従者とはこの世のものではない存在、孤独なエリックが創りだした幻。エリックの影。

 外の世界を知らせず、人間の社会を教えず、自分だけを頼り、自分だけを愛するように洗脳して。
 だからエリックは人殺しがいけないことだとも知らないし、自分から外に出て行こうともしない。
 キャリエールが与える詩集だの戯曲だのだけを読んで、オペラ座の出し物の音だけ聴いて育つ。
 天使のように。

 キャリエールのお人形。それがエリック。

 
 さて、タカラヅカの『ファントム』の特徴は、エリックが美青年であるということ。
 地下に閉じこめなければならないほど醜い、怪物呼ばわりされてしまうほど醜い、愛する少女が悲鳴を上げて逃げ出すほど醜い……という設定のエリックが、とことん美青年であるという、矛盾。

 タカラヅカだから、美しくなくてはならない。だけど、オペラ座の怪人は醜くなくてはならない。
 ということで折衷案、顔にちょっとだけ痣がある。ほんとにちょっとだけで、別にぜんぜん醜くないしこわくもないけど、すごーく醜いってことにしておいて。そういうつもりで見て。
 という、無言のルール。

 空気を読めばルールには気付くけど、でもやっぱ、視覚というのは大きくて。
 エリック、きれいじゃん。ちっとも醜くないじゃん。
 それが事実なのに、あんなに愛を歌ったヒロインがそんなエリックの素顔を見て泣いて逃げ出すのは、変。
 ヒロイン、心せまっ。と、思えてしまう。

 これを解決する方法も、ひとつだと思う。
 すなわち。

 キャリエールはエリックを愛していた。自分ひとりだけのモノにしたかったから、彼に「ぼくは醜い」と信じ込ませた。

 ザッツ洗脳愛。

 確かに生まれながら痣はあったし、子どもの頃は今より酷かった。
 幼いエリックが自分の顔を見てびっくりするくらいには、ひどい痣だった。
 でもソレ、成長するに従って治っていったんだよね。
 その程度の痣や皮膚のトラブルを抱えている人は世間にいくらでもいるし、エリックは元の顔立ちの美しさでお釣りが来る、てなもん。

 だけどエリックは、キャリエールによって「醜い」と教え込まれた。
 信じ込まされた。
 二目と見られないバケモノなんだと刷り込まれた。

 年端もいかない子どもに「お前は醜い」と仮面を与えるんだよ、キャリエールは。克服するよう導くのではなく、さらに追いつめたんだ。
 少年の心を、壊した。歪ませた。

「ぼくは醜い」と。「ぼくはバケモノだ」と。

 それが可能なんだ。
 だってエリックは地下に幽閉されていて、誰とも会わない。トラウマゆえ仮面ナシでは鏡も見られない。
 外の世界なら、誰か真実を教えることも出来たろうけど。監禁されている少年には、真実などわからない。

 クリスティーヌがショックを受けたのは、エリックが醜かったからではない。
 美しかったからだ。

 問題なく美しい、十分外の世界で生活できる青年が、「自分は醜い怪物」と信じ込まされて20年ほども地下に監禁されていた現実に、耐えられなかった。
 エリックの美しい素顔を見た途端、キャリエールの犯罪に気がついた。
 クリスティーヌをエリックから遠ざけようと必死だったあの男が、犯したほんとうの罪に。

 哀れなエリックは、自分が美しいことも知らず、劣等感と飢餓感を抱えて孤独の底にいる。
 手をさしのべてくれるのはキャリエールのみ。だから、キャリエールだけを信じる。彼の言葉をすべて、なにもかも。

 愛した女性に瓜二つの美貌と、天使の歌声を持つエリック。
 愛ゆえにキャリエールは罪を犯した。
 愛するひとを、自分ひとりの宝箱に隠した……。

 
 で、最後の銀橋場面になる。
 警察が踏み込み、これ以上キャリエールは「地下の楽園」を守れない。このままでは、彼の罪が白日のもとに晒される。
 美しい青年を「醜い」と信じ込ませて監禁した。
 罪を問われて投獄されるより、キャリエールがおそれたのは、愛する青年が遠くへ行ってしまうこと。
 エリックは醜くもなんともない、ただの監禁事件の被害者だ。罪を犯しはしたけれど、それは善悪の区別がなかったため。キャリエールがそう育てたため。外の世界へ出れば、新しい人生が待っているだろう。

 キャリエールは、エリックを殺さねばならなかった。
 自分ひとりのものとしておくために。

 エリックがすべてに気付いてキャリエールの歪んだ愛に殉じようとしているとしてもいいし、なにも知らないまま、親子の名乗りに感動していることにしてもいい。
 キャリエールとエリックの親子銀橋は、演出も台詞も歌詞も、なにもかもそのままで十分できる。

 エリックはクリスティーヌを愛している。クリスティーヌもエリックを愛している。
 それもそのままに。
 クライマックスの「助けてくれジェラルド」もそのままに。
 

 主人公はエリック。ヒロインはクリスティーヌ。その大前提のまま。

 キャリエールはエリックを愛していた。自分ひとりだけのモノにしたかった。

 というだけで、このいろいろと変な物語は、全部辻褄が合う。
 歪んでいても、確かに「愛」。
 まぎれもない「愛」の物語は、美しいだろう。
 哀しいだろう。
 花組の秋の全ツとドラマシティの振り分けが出ました。

 感想をひとことで表すと。

 正塚ェ……。
 

 『カナリア』にみわっちを召喚したのは正塚だよね? 彼の趣味だよね?
 ミサノエールの役があるのにミサノエールが出演していない、ってことは、ええっとまさか、そういうことなのか?
 ミサノエールの役は、みわさんが演じれば胡散臭くてオトコマエな2番手の役になると思うけど……。
 ぶっちゃけ、ラブロー神父より。(神父は2番手役としては微妙。オサ様めちゃかわいかったけど!)

 でもでも、全ツのみわさんが見たかったよーっ。
 『ル・ポァゾン 愛の媚薬II』のみわっちが見たかった。ザ・昭和なクドギトさ加減がみわっち十八番だったのにー。

 『カナリア』出演者を見て、「正塚好きそう」と思う面子がぞろぞろ揃っていて、彼の慎みのなさに目眩がします(笑)。

 まりんのことは好きだよね、『スカウト』で二枚目役やらせたり、『メランコリック・ジゴロ』でキーパーソンやらせたりしているし。
 いちかのことは、言うまでもなく大好きだよね。役者としてめちゃくちゃ買ってるよね。なまじっかのヒロイン系より、よっぽど好きだよね。
 さあやのことも、2回にわたる『メランコリック・ジゴロ』でわかるよね。
 めぐむのことは『La Esperanza』新公でのものすげー抜擢とか、『スカウト』での扱いからしてもわかるよね。
 いまっちとタソは文化祭の親友コンビだよね。熱情標準装備のアツいハートの役をWキャストでやらせていたよね。
 仙名さんもまた、文化祭で「正塚、この役いちばん好きだよね(笑)」系の脇の女役をやらせてたよね。
 
 と、主立った人たちが過去の正塚作品でオイシイ使われ方をし、それゆえに記憶に焼き付いている人ばかりで……。
 正塚せんせが臆面なく自分のお気に入りをピックアップしたんじゃないかと、気恥ずかしくなります(笑)。
 あくまでも、個人的な思い込みです。ほんとのとこなんて知りません、わかりません。
 でも、演出家が惚れ込んだ役者で創る芝居って、わくわくしませんか?

 だからこそ、「芝居」を観る上で、すげーたのしみだ、この面子!!

 
 そして、『ル・ポァゾン 愛の媚薬II』は、「ショー」を観る上で楽しみです。
 若手スターは軒並み全ツですよ!
 やっぱショーは場数だものな、経験値だもんな。某星組が「トマケ」の羞恥プレイ全国巡りで経験値の圧倒的に少ない子たちを鍛えたように、花組若手スターたちにも全ツで経験を積ませようということですかな。

 個人的にだいもんの歌が聴きたいです……。彼の番手的に、本公演では歌がまったく回ってこないんだもの。年功序列大事の花組ゆえ、歌ウマは若いウチは出番がなさ過ぎる……。

 芝居は苦手作品なので、語る言葉ナシ。演目が決まったときに、盛大に凹みましたから(笑)。
 わたしがヅカでもっとも苦手としているのが「大人が演じるわざとらしい子ども」なんです。洋ものならまだマシだけど、日本物の子ども芝居は、裸足で逃げ出したいくらい苦手。
 青天物で子どもで人情物と、わたしの地雷が三点セットになっているので演目知ったときは悲鳴上げました(笑)。
 いや、あくまでもわたし個人の話なので、世の中的には名作なんだと思いますよ。わたしが「初演当時は名作だったのかしら」としか理解できなかった『誰がために鐘は鳴る』とか『バレンシアの熱い花』とか『赤と黒』とか『星影の人』とかも、世の中的には大傑作の名作様なんですもの。理解できないわたしが悪いんですとも。

 植爺の『おーい春風さん』よりはマシだもん、ぜんぜんイイよね……。(青天物で子どもで人情物、つーことで挙げてみました)

 らんとむは青天も人情物も似合う人だから、そこは楽しみだが。

 とにかく、全ツはショーがたのしみっす。

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